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特開2023-159508多結晶シリコンロッド及び多結晶シリコンロッドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159508
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】多結晶シリコンロッド及び多結晶シリコンロッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/035 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
C01B33/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069194
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 成大
(72)【発明者】
【氏名】石田 昌彦
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072AA02
4G072BB03
4G072BB12
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH09
4G072JJ01
4G072MM21
4G072NN17
4G072RR11
4G072RR23
4G072RR28
4G072TT30
4G072UU01
4G072UU02
(57)【要約】
【課題】生産効率を極力下げることなく多結晶シリコンロッドの残留応力を低減させ、加工時にクラック伝播によって崩壊するリスクを低減させた多結晶シリコンロッドを提供する。
【解決手段】多結晶シリコンロッドは、シーメンス法により製造される長手方向の長さ1m以上の多結晶シリコンロッドであって、ロッド側面長手方向の残留応力の圧縮応力と引っ張り応力の差の絶対値が22Mpa以下となる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーメンス法により製造される長手方向の長さ1m以上の多結晶シリコンロッドであって、ロッド側面長手方向の残留応力の圧縮応力と引っ張り応力の差の絶対値が22Mpa以下であることを特徴とした多結晶シリコンロッド。
【請求項2】
シーメンス法によりシリコン芯線上に多結晶シリコンを析出させる多結晶シリコンロッドの製造方法であって、前記多結晶シリコンロッドは反応終了前1時間以上でシリコン多結晶ロッド断面における温度差ΔTが200℃以下となるようにして、請求項1の記載の多結晶シリコンロッドを製造する、多結晶シリコンロッドの製造方法。
【請求項3】
反応終了前1時間以上において、多結晶シリコンロッドを製造するための供給電流を連続的又は断続的に下げるとともに、原料ガス量を連続的又は断続的に下げる、請求項2に記載の多結晶シリコンロッドの製造方法。
【請求項4】
反応終了前1時間以上において、高周波電源装置によって多結晶シリコンロッドの表面に高周波を提供する、請求項2又は3に記載の多結晶シリコンロッドの製造方法。
【請求項5】
反応終了前1時間以上において、供給ガスにドーパントを含めて多結晶シリコンロッドを成長させる、請求項2又は3に記載の多結晶シリコンロッドの製造方法。
【請求項6】
前記多結晶シリコンを析出させる際に、当該多結晶シリコンの周縁外方でダミーの多結晶シリコンロッドを成長させる、請求項2又は3に記載の多結晶シリコンロッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシーメンス法によって作成される多結晶シリコン及び多結晶シリコンロッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコンは、半導体製造用の単結晶シリコンや太陽電池製造用シリコンの原料である。多結晶シリコンの製造方法としてはシーメンス法が知られており、この方法では、一般に、シラン系原料ガスを加熱されたシリコン芯線に接触させることにより、該シリコン芯線の表面にCVD(Chemical Vapor Deposition)法で多結晶シリコンを析出させる。
【0003】
シーメンス法は、シリコン芯線を鉛直方向2本、水平方向1本の鳥居型(逆U字型)に組み立て、その両端部のそれぞれを芯線ホルダに接続し、ベースプレート上に配置した一対の金属製の電極に固定する。一般的には反応炉内には複数組の逆U字型シリコン芯線を配置した構成となっている。
【0004】
逆U字型のシリコン芯線表面を900℃~1200℃まで通電により加熱し、原料ガスとして例えばトリクロロシランと水素の混合ガスをシリコン芯線上に接触させると、多結晶シリコンがシリコン芯線上で気相成長し、所望の直径の多結晶シリコンロッドが逆U字状に形成される。
【0005】
多結晶シリコンロッドは周辺技術の向上とともに要求される直径が徐々に増大し、より大口径化、長尺化が進む傾向にある。大径化、長尺化が進むほど製造時に必要となる電力は増す。
【0006】
多結晶シリコンは高温になるほど電気抵抗率が下がる特性があるため、中心付近で高温となり、表面付近で低温となる傾向があり、大口径化が進むとともにその温度差も大きくなっていく。
【0007】
そのため、多結晶シリコンロッドの直径が大きくなるにつれ、反応途中や特に蒸着終了後の冷却時に多結晶シリコンロッドに内包される応力が大きくなりクラックや剥離などの損傷やさらには倒壊といった不具合が発生しやすくなる。その対策として特許文献1などで電極を稼働可能にすることで多結晶シリコンロッドに加わる力を低減させ、損傷を低減させる方法が提案されている。
【0008】
ただ、それらの方法で作成された損傷の少ない多結晶シリコンロッドは応力が開放されることなく室温まで冷却されるため必然的に残留応力が大きくなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2805457号
【特許文献2】特開2017-48098号公報
【特許文献3】WO97/44277
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、ロッドを所定の長さにするなど次工程で加工する際に、ロッドの切削により一部で応力解放されることによって残留応力のバランスが崩れることを原因としたクラックが発生しやすい。また、一度クラックが発生するとロッド全体にクラックが伝播するためロッド形状で出荷する必要のある製品には使用できなくなってしまう問題があった。
【0011】
また、伝播によって全身にクラックが入った多結晶シリコンロッドはその衝撃で特にロッド長手方向に破片が飛散するため作業員への危険があり改善が急務であった。
【0012】
多結晶シリコンロッドの残留応力の低減方法には、これまでも新規な提案されてきている。
【0013】
例えば、特許文献2には、析出時の多結晶シリコンロッド析出段階をシリコン芯線の近傍領域、R/2領域、最表面領域に分け、それぞれ反応後期に行くに連れて多結晶シリコンロッド表面温度を下げていく方法が提案されている。この方法では多結晶シリコンロッドの表面温度を随時下げなければいけないため反応速度が低下し、生産率の低下を招くといった欠点があった。
【0014】
特許文献3では、反応終了後に改めて熱処理をすることで歪を減少させる方法を提案している。この方法では通常の析出工程に加えて熱処理工程をしなければならず、こちらも生産率の低下といった欠点がある。
【0015】
上述のように、大口径、長尺の多結晶シリコンロッドを従来技術で残留応力(ひずみ)低減させるために生産効率の大幅な低下を引き起こしていた。よって本発明は生産効率を極力下げることなく多結晶シリコンロッドの残留応力を低減させ、加工時にクラック伝播によって崩壊するリスクを低減させた多結晶シリコンロッドを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明のシーメンス法により製造される1m以上の多結晶シリコンロッドは、ロッド側面長手方向の残留応力の圧縮応力と引っ張り応力の差の絶対値が22Mpa以下であることを特徴とする。
【0017】
またシーメンス法によりシリコン芯線上に多結晶シリコンを析出させる多結晶シリコンロッドの製造方法であって、前記多結晶シリコンロッドは反応終了前1時間以上でシリコン多結晶ロッド断面における温度差ΔTが200℃以下となるように製造する方法を特徴とする。
【0018】
上記製造方法としては、
(1)反応終了前1時間以上において、多結晶シリコンロッドを製造するための供給電流を連続的又は断続的に下げるとともに、原料ガス量を連続的又は断続的に下げる態様、
(2)反応終了前1時間以上において、高周波電源装置によって多結晶シリコンロッドの表面に高周波を提供する態様、
(3)反応終了前1時間以上において、供給ガスにドーパントを含めて多結晶シリコンロッドを成長させる態様、及び/又は
(4)前記多結晶シリコンを析出させる際に、当該多結晶シリコンの周縁外方でダミーの多結晶シリコンロッドを成長させる態様
を採用してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、成長終了後の多結晶シリコンの加工時に発生するクラックなどの損傷を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態による反応装置を示した概略図。
図2】本発明の実施形態において高周波電源装置を用いた態様を示した反応容器内の上方平面図。
図3】本発明の実施形態においてダミー多結晶シリコンロッドを周縁外方で成長させる態様を示した反応容器内の上方平面図。
図4】多結晶シリコンロッドにひずみゲージを取り付けた態様を示した上方平面図。
図5】多結晶シリコンロッドにひずみゲージを取り付けた態様を示した斜視図。
図6】ひずみゲージを取り付けた多結晶シリコンロッドを切断する態様を示した斜視図。
図7】従来型及び本発明の実施の形態による多結晶シリコンロッドの残留応力を歪み開放法により測定した際のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
多結晶シリコンロッドを製造するために用いられる製造装置(反応装置)は、図1に示すように、反応容器10と、反応容器10に設けられた1又は複数の対になった電極220と、対になった電極220に取り付けられたU字型の電極線210と、反応容器10への原料ガスを含む供給ガスを供給するための供給部260と、反応容器10から排出ガスを排出するための排出部270と、を有している。反応装置では、例えばCVD反応によってポリシリコンを成長させるシーメンス法を用いて、多結晶シリコンロッドが生成されることになる。
【0022】
多結晶シリコンロッドの製造装置は、操作者が入力を行うパソコン、スマートフォン、タブレット端末などからなる入力部370と、多結晶シリコンロッドの製造装置における様々な制御を行う制御部350と、様々な情報を記憶している記憶部360とを有してもよい。レシピといった一連の手順が記憶部360で記憶されており、レシピを制御部350が読み出すことで、所定の手順で多結晶シリコンロッドの製造が行われてもよい。
【0023】
従来は反応温度となる表面温度が最終的な残留応力に影響すると考えられていたが、発明者らが確認したところによると、析出停止させる少なくとも1時間前のシリコン多結晶ロッド断面(シリコン多結晶ロッドの延在する長手方向に直交する横断面)における温度差を小さくすることで十分に低い残留応力を得ることができた。なお、本実施の形態では、ロッド側面長手方向の残留応力の圧縮応力と引っ張り応力の差の絶対値は22MPa以下になるが、20MPa以下となることが好ましく、16MPa以下となることがより好ましく、10MPa以下となることがさらにより好ましい。
【0024】
シリコン多結晶ロッドの任意の断面における温度差ΔTを200℃以下とする方法は任意であるが例えば以下のような方法が考えられる。∪字型に成長した多結晶シリコンロッドは、直胴部はロッドの中心ほど電流が流れてより高温となっていくが、直胴とブリッジの間の曲率部では電流は曲率部の内側表面近くほど電流が流れて単位体積あたりの発熱量は直胴部ロッド中心より高い値となる。一方で熱放射や対流による除熱量があるためロッド曲率部内側と直胴部中心は近い温度となる。これら温度は、一例として熱流体及び電磁場を連成した有限要素法(FEM)数値解析により解析することができる。各種反応に関わる条件によってその差はあるが、概ね多結晶シリコンロッドの直径に比例した差ができる。このことから曲率部内側を放射温度計で測定することによって直胴内部の温度を推定し、多結晶シリコンロッド直胴の温度差ΔTを求めるといった態様によってシリコン多結晶ロッド断面における温度差ΔTが求められる。また、単純に各種反応条件を設定したFEM解析によってロッド温度を計算しΔTを求めても良い。なお、温度差ΔTが200℃以下となる時間の下限値は1時間であることが好ましい。圧縮応力と引張応力の差を小さくするという観点からは、温度差ΔTが200℃以下となる時間の下限値は1.5時間であることがより好ましく、2時間であることがさらにより好ましい。他方、生産効率をあまり下げないという観点からは、温度差ΔTが200℃以下となる時間の上限値は5時間であることが好ましく、3.5時間であることがより好ましく、2時間であることがさらにより好ましい。
【0025】
(手法1)
反応終了前に電流を減らし、多結晶シリコン内部の温度を下げるとともに、反応ガスを低下させることにより、表面温度の低下を防ぎ、温度差を低減することが考えられる(後述する実施例1参照)。この場合には、多結晶シリコン内部の温度を下げるために電流を最大電流の70%まで3~5時間かけて連続的又は断続的に減らしてもよい。また表面温度の低下を防ぐために原料ガス量(kg/h)を最大時の30%まで3~5時間かけて連続的に減らしてもよい。この制御は制御部350が記憶部360で記憶されたレシピを読み出すことで行われてもよいし、入力部370からの操作者の指示によって行われてもよい。
【0026】
(手法2)
また、多結晶シリコンロッドの表面温度を均一にするため、高周波電源装置400によりロッド表面にジュール熱を集中させ、反応終了前1時間以上において、温度差を低減させることも考えられる(図2参照)。図2に示すように、反応容器10の内面に高周波電源装置400のアンテナ410が設けられ、高周波電源本体400からの出力を受けて反応容器10内に高周波を提供するようにしてもよい。
【0027】
表面温度を堆積反応できる温度に高めるために、電極220に電力を送って多結晶シリコンロッドの表面温度を高めるが、径が大きくなるにつれ、堆積する表面が増えるため、電極20に送る電力も大きくなる。Siは温度が上がるほど電気抵抗率が下がることから、ロッド中心の温度上昇と電流増加が相乗効果で効いてくることになる。この結果、堆積した多結晶シリコンの内部及びシリコン芯線等の電極線210の温度が上昇し、多結晶シリコンロッドの表面との温度差が増加することとなる。その温度差を解消するために表面温度のみを上げる手段として、図2に示すような高周波電源装置400を用い、高周波をシリコンロッドの表面に発生させ、シリコンロッドの内部と表面の温度差を低くすることが考えられる。高周波電源装置400も制御部350が記憶部360で記憶されたレシピを読み出すことで行われてもよいし、入力部370からの操作者の指示によって行われてもよい。
【0028】
(手法3)
反応後半(反応終了前1時間以上)でトリクロロシラン及び水素を含む原料ガスにB、P、As、Alなどのドーパントを含め、多結晶シリコンロッドの電気抵抗率がロッド外周部で下がりジュール熱を集中させ、温度差を低減させるようにしてもよい。この態様を採用した場合には、多結晶シリコンとなるときに奪われる熱を少なくすることができ、相対的に多結晶シリコンロッドの内部温度と表面温度の差を減少させることができる。つまり、ドーパントを意図的に増やすことで、ロッド外周の電気抵抗率を中心部と比較して下げることができ、外周に流れる電流を増やすことができる。なお、原料ガスを高温にしすぎると、多結晶シリコンが表面で正しく発生するのみならず、反応容器10内で発生し、反応容器10内のパーティクルとなる可能性が出てくることから、温度の制御には注意が必要である。トリクロロシラン及び水素を含む原料ガスは原料ガス供給部110から供給され、ドーパントはドーパント供給部120から供給されることになる、ドーパント供給部120を供給するドーパント供給管121と原料ガスを供給する原料ガス供給管111とはバルブ123を介して連結され、バルブ123の開閉が制御部350からの制御によって行われるようにしてもよい(図1参照)。バルブ123が開状態になるとドーパントが原料ガスに混入されることになり、バルブ123が閉状態になるとドーパントの原料ガスへの混入が停止されることになる。
【0029】
(手法4)
また、多結晶シリコンロッドの外周を囲うように破砕されることを前提とした多結晶シリコンロッド(ダミー多結晶シリコンロッド)を配置してもよい(図3参照)。電極220dに提供される電力を高めて電極線210dの温度を上げることで、電極線210dの周りにシリコンが析出して成長するダミー多結晶シリコンロッドからの放射熱により製造対象となる多結晶シリコンロッド(ダミー多結晶シリコンロッドとは異なる多結晶シリコンロッド)の表面と内部との温度差を低減させることも考えられる(後述する実施例2参照)。ダミー多結晶シリコンロッドは複数設けられてもよく、製造対象となる多結晶シリコンロッドの数に対してダミー多結晶シリコンロッドの数は1.5~3倍の数となってもよい。一例としては、対象となる多結晶シリコンロッドを4~8本(2~4対)成長させ、その周縁に6~24本(3~12対)のダミー多結晶シリコンロッドを成長させてもよい。図3ではダミー多結晶シリコンロッドを生成するために用いられる電極を220dとして示し、ダミー多結晶シリコンロッドを生成するために用いられるU字型の電極線を210dとして示している。
【0030】
(手法5)
その他、炉内の圧力を低下させることで供給ガスによる多結晶シリコンロッド表面からの除熱量を低減でき、温度差ΔTを低下することが可能となる。
【0031】
また前述した手法1~5で挙げた態様の2つ以上を適宜組み合わせて、温度差ΔTを低下させるようにしてもよい。
【0032】
多結晶シリコンロッドの内部温度を測るためにサンプルの多結晶シリコンロッドを準備し、多結晶シリコンロッドの成長の過程において半径方向の適宜の位置に温度計を設置していき、多結晶シリコンロッドの内部でどのように温度が変化するかを測定してもよい。この場合には、同じ条件で成長する多結晶シリコンロッドの内部温度は同じ挙動を示すと仮定してもよい。この際、複数の多結晶シリコンロッドをサンプルとして準備し、それらの平均値から多結晶シリコンロッドの内部温度を測定するようにしてもよい。多結晶シリコンロッド表面における除熱要因をできるだけ減らし、ロッド表面温度に合わせて電流をコントロールするようにしてもよい。なお、除熱要因としては、例えば原料ガスといった供給ガスによる対流を挙げることができ、例えば供給ガスの供給量を減らして除熱要因を減らすことなどを挙げることができる。
【実施例0033】
[比較例]
多結晶シリコンロッドを表面温度1050~950℃程度でφ125mm(直胴部直径125mm)まで成長させた後、電流及び供給ガスを止め、十分に冷却された後に反応器内を窒素で置換し、開放、取り出しを行った。
【0034】
[実施例1]
多結晶シリコンロッドを表面温度1050~950℃でφ121mmまで、通常の製造方法に従い成長させた。その後、表面温度よりも高い内部温度を下げるために、電流を減らして内部温度-30°と想定されるUロッド曲げ内側の温度を下げた。具体的には2012Aであった電流を1490Aまで2時間かけて連続的に減らした。また、反応中の表面温度を1050~950℃に保つために、供給ガスを徐々に減らし最大量の供給ガス量の60%まで2時間かけて連続的に減らした。このようにして内部温度と外部温度の差が200℃以下となる時間を2時間以上保つようにした。その後、多結晶シリコンロッドがφ125mmまで成長したところで電流の供給を止め、供給ガスを停止し、十分に冷却された後に反応器内を窒素で置換し、開放、取り出しを行った。
【0035】
[実施例2]
6本の多結晶シリコンロッドを囲むように12本の多結晶シリコンロッドを立て表面温度1050~950℃でφ121mmまで成長させた後、[実施例1]と同様に供給ガスを徐々に減らしながらロッド表面温度を1050~950℃で維持するように電流を減らした。具体的には実施例1と同じ条件で連続的に電流を減らしたが、302kg/hであった供給ガス量を181kg/hまで2時間かけて連続的に減らした。このようにして内部温度と外部温度の差が200℃以下となる時間を2時間以上保つようにした。このとき、6本の多結晶シリコンロッドを囲む12本の多結晶シリコンロッドの輻射熱を利用するため、供給ガスを実施例1より下げる必要が無く、生産効率が向上する。6本の多結晶シリコンロッドの電流の供給を止め、1時間後に周りの12本の多結晶シリコンロッドの電流供給を止めた。ロッドが十分に冷却された後に反応器内を窒素で置換し、開放、取り出し、この6本のロッドを実施例2のロッドとした。
【0036】
取り出した比較例の多結晶シリコンロッド、実施例1の多結晶シリコンロッド、実施例2の6本の多結晶シリコンロッドの内の1本の多結晶シリコンロッドのそれぞれの中央部を輪切りにし、長さ1mの円筒形状に整えた後、ロッド側面長手方向に、円周方向に等間隔(120度の角度)となるようにひずみゲージ510を3箇所貼り(図4参照)、ひずみゲージ510を含めたロッド先端から50mmを、ロッド表面から切り込みが360度一定となるようにロッド回転させながら一定の速度で切断していった(図5参照)。この際には、チャック530によって多結晶シリコンロッドを保持し、外周刃540によって多結晶シリコンロッドを切断し、切断の過程でのロッド側面長手方向の残留応力の圧縮応力と引っ張り応力の差をデータロガー520で記録した(図6参照)。
【0037】
多結晶シリコンのヤング率を165GPaとし、得られた歪を残留応力としたものの平均値を図7に示す。縦軸の開放応力はロッド側面長手方向の残留応力の圧縮応力と引っ張り応力の差を示している。
【0038】
比較例で作製した多結晶シリコンロッドは切断が半径方向に60mmを過ぎたところでひずみゲージ510を含むブロックが破壊された。破壊される直前の応力は約23MPaであったため、それ以上の残留応力がロッドにあったことは明らかである。
【0039】
実施例1で作成したロッドは16MPaまで低減され、実施例2で作成したロッドは比較例で観測された約23MPaに比べ半分以下まで低下していることが確認できた。
【0040】
上述した実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、出願当初の特許請求の範囲の記載は出願時での権利要求範囲に過ぎず、適宜変更できる点では留意が必要である。
【符号の説明】
【0041】
10 反応容器
110 原料ガス供給部
120 ドーパント供給部
210 電極線
220 電極
350 制御部
400 高周波電源装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7