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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159511
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】保持ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231025BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231025BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231025BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/78 N
B24B41/06 L
B24B49/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069207
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】政田 孝行
(72)【発明者】
【氏名】松田 智人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雄平
(72)【発明者】
【氏名】武末 直也
【テーマコード(参考)】
3C034
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
3C034AA07
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB72
3C034BB73
3C034BB92
3C034BB93
3C034CA11
3C034CA16
3C034CB14
3C034DD10
3C034DD18
5F063AA15
5F063BA42
5F063BA43
5F063BA44
5F063BA45
5F063BA48
5F063FF04
5F063FF06
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA12
5F131AA21
5F131AA22
5F131AA23
5F131BA37
5F131BA52
5F131CA09
5F131CA12
5F131CA53
5F131DA13
5F131DA33
5F131DA42
5F131DA54
5F131EA05
5F131EB01
5F131EB03
5F131EB32
5F131EB37
5F131EB38
5F131EB63
(57)【要約】
【課題】対象物を保持テーブルで適切に保持可能であるか否かを検査することが可能な保持ユニットを提供する。
【解決手段】対象物を保持テーブルの保持面で保持する保持ユニットであって、対象物を保持面に固定する固定機構と、固定機構を移動させる移動機構と、判定部と、を備え、固定機構は、対象物を押さえて保持面に固定する固定位置と対象物を解放する解放位置とに配置可能な押さえ部材と、押さえ部材を固定位置側に付勢する付勢部材と、を備え、移動機構は、押さえ部材を押圧する押圧部材と、押圧部材を移動させて押さえ部材を解放位置に位置付けるアクチュエータと、を備え、判定部は、押さえ部材を固定位置から解放位置に移動させる際のアクチュエータの押圧力に基づいて、付勢部材が正常状態であるか異常状態であるかを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持テーブルの保持面で保持する保持ユニットであって、
該対象物を該保持面に固定する固定機構と、
該固定機構を移動させる移動機構と、
判定部と、を備え、
該固定機構は、該対象物を押さえて該保持面に固定する固定位置と該対象物を解放する解放位置とに配置可能な押さえ部材と、該押さえ部材を該固定位置側に付勢する付勢部材と、を備え、
該移動機構は、該押さえ部材を押圧する押圧部材と、該押圧部材を移動させて該押さえ部材を該解放位置に位置付けるアクチュエータと、を備え、
該判定部は、該押さえ部材を該固定位置から該解放位置に移動させる際の該アクチュエータの押圧力に基づいて、該付勢部材が正常状態であるか異常状態であるかを判定することを特徴とする保持ユニット。
【請求項2】
該付勢部材は、ねじりコイルばねであり、
該アクチュエータは、エアシリンダであることを特徴とする請求項1に記載の保持ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を保持テーブルの保持面で保持する保持ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造プロセスでは、格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)によって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたウェーハが用いられる。このウェーハをストリートに沿って分割することにより、デバイスを備えるチップ(デバイスチップ)が得られる。デバイスチップは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
ウェーハの分割には、環状の切削ブレードでウェーハを切削する切削装置が用いられる。一方、近年では、レーザー加工装置を用いたレーザー加工によってウェーハを分割するプロセスの開発も進められている。例えば特許文献1には、ウェーハに対して透過性を有するレーザービームをウェーハの内部で集光させ、ウェーハの内部に改質層(変質層)をストリートに沿って形成する手法が開示されている。ウェーハの改質層が形成された領域は、他の領域よりも脆くなる。そのため、ストリートに沿って改質層が形成されたウェーハに対して外力を付与すると、ウェーハがストリートに沿って破断して複数のデバイスチップに分割される。
【0004】
外力の付与によってウェーハを分割すると、分割時に破断面において発生した粉塵が飛散してウェーハに付着し、ウェーハやデバイスチップの品質低下の原因となる。そこで、ウェーハを下向きに保持した状態で分割する分割装置が提案されている(特許文献2、3参照)。この分割装置を用いると、ウェーハの分割時に発生した粉塵がウェーハの下に落下するため、分割後のウェーハに粉塵が付着しにくくなる。そして、分割後のウェーハは分割装置に搭載されている洗浄ユニットに搬送され、洗浄ユニットはウェーハを下向きに保持して洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-129607号公報
【特許文献2】特開2020-96177号公報
【特許文献3】特開2021-15998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
切削装置、レーザー加工装置等の加工装置には、被加工物の加工時や洗浄時に被加工物を保持する保持テーブルが搭載される。保持テーブルは対象物を保持する保持面を備えており、保持テーブルの周囲には対象物を固定する複数のクランプ機構が設けられている。対象物を保持面で支持し、複数のクランプ機構で対象物の外周部を把持することにより、対象物が保持テーブルによって保持される。
【0007】
クランプ機構は、対象物を押さえて保持テーブルの保持面に固定する押さえ部材を備えており、押さえ部材はコイルばね等の付勢部材によって付勢されている。対象物を保持テーブルで保持する際には、付勢部材から押さえ部材に付与される付勢力(復元力)によって押さえ部材が対象物に押し付けられ、対象物が保持テーブルの保持面に固定される。一方、対象物を保持テーブルから搬送する際には、外力の付与によって押さえ部材を付勢部材の付勢力に逆らう方向に移動させる。これにより、押さえ部材が対象物から離れ、対象物が解放される。
【0008】
しかしながら、付勢部材の経年劣化や故障が生じると、付勢部材から押さえ部材に十分な付勢力が付与されず、クランプ機構による対象物の固定が不完全になる。その結果、対象物が加工や洗浄の際に適切に保持されず、加工不良や洗浄不良が発生することがある。特に、保持テーブルが対象物を下向きに保持する場合には、クランプ機構の異常によって対象物が落下し、対象物に修復不可能な損傷が生じるおそれがある。
【0009】
そのため、対象物の保持にクランプ機構を用いる場合には、クランプ機構の状態を監視し、クランプ機構に異常が発生した場合には速やかにクランプ機構の点検、修理、交換等を行うことが求められる。しかしながら、付勢部材の劣化や故障は外見から判断することが難しいことも多く、クランプ機構の異常の発見が遅れやすい。その結果、対象物の保持が不完全なまま加工や洗浄が続行され、加工不良や洗浄不良を回避できないことがある。
【0010】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、対象物を保持テーブルで適切に保持可能であるか否かを検査することが可能な保持ユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、対象物を保持テーブルの保持面で保持する保持ユニットであって、該対象物を該保持面に固定する固定機構と、該固定機構を移動させる移動機構と、判定部と、を備え、該固定機構は、該対象物を押さえて該保持面に固定する固定位置と該対象物を解放する解放位置とに配置可能な押さえ部材と、該押さえ部材を該固定位置側に付勢する付勢部材と、を備え、該移動機構は、該押さえ部材を押圧する押圧部材と、該押圧部材を移動させて該押さえ部材を該解放位置に位置付けるアクチュエータと、を備え、該判定部は、該押さえ部材を該固定位置から該解放位置に移動させる際の該アクチュエータの押圧力に基づいて、該付勢部材が正常状態であるか異常状態であるかを判定する保持ユニットが提供される。
【0012】
なお、好ましくは、該付勢部材は、ねじりコイルばねであり、該アクチュエータは、エアシリンダである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る保持ユニットでは、押さえ部材を固定位置から解放位置に移動させる際のアクチュエータの押圧力に基づいて、付勢部材が正常状態であるか異常状態であるかが判定される。これにより、付勢部材の異常を速やかに発見することができ、対象物の固定が不完全なまま対象物の加工、洗浄等が続行されてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】保持ユニットを示す斜視図である。
図2】保持テーブルを示す斜視図である。
図3】固定機構を示す分解斜視図である。
図4】移動機構を示す斜視図である。
図5】対象物の搬送時における保持ユニットを示す側面図である。
図6】対象物の固定時における保持ユニットを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る保持ユニットの構成例について説明する。図1は、保持ユニット(保持機構)2を示す斜視図である。例えば保持ユニット2は、切削装置、研削装置、研磨装置、レーザー加工装置、プラズマ処理装置等の各種の加工装置に搭載され、加工装置によって加工又は洗浄される対象物を保持する。
【0016】
保持ユニット2は、板状の基台4を備える。基台4は、金属、ガラス、セラミックス、樹脂等でなり、互いに概ね平行な第1面(下面)4a及び第2面(上面)4bを備える。基台4の第1面4a側には、所定の対象物を保持する保持テーブル(チャックテーブル)6が設けられている。なお、図1では説明の便宜上、基台4と保持テーブル6とを分離して異なる角度で図示している。
【0017】
図2は、対象物11を保持する保持テーブル6を示す斜視図である。対象物11は、保持テーブル6によって保持される被保持物であり、保持テーブル6は用途に応じて様々な種類の対象物11を保持できる。保持テーブル6が加工装置に搭載される場合には、対象物11は、加工装置によって加工される被加工物、及び、加工装置によって洗浄される被洗浄物に相当する。
【0018】
例えば対象物11は、単結晶シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハ13を含む。ウェーハ13は、互いに概ね平行な表面13a及び裏面13bを備える。また、ウェーハ13は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)15によって、複数の矩形状の領域に区画されている。ストリート15によって区画された複数の領域の表面13a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス17が形成されている。
【0019】
例えば、切削装置、レーザー加工装置、プラズマ処理装置等の加工装置を用いてウェーハ13をストリート15に沿って分割して個片化することにより、デバイス17をそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。また、ウェーハ13の分割前に研削装置、研磨装置等の加工装置を用いてウェーハ13を薄化しておくことにより、薄型化されたデバイスチップが得られる。
【0020】
ただし、ウェーハ13の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えばウェーハ13は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなる基板であってもよい。また、デバイス17の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、ウェーハ13にはデバイス17が形成されていなくてもよい。
【0021】
ウェーハ13を加工又は洗浄する際には、ウェーハ13の取り扱いの便宜のため、ウェーハ13が環状のフレーム19によって支持される。フレーム19は、例えばSUS(ステンレス鋼)等の金属でなり、フレーム19の中央部にはフレーム19を厚さ方向に貫通する円形の開口19aが設けられている。なお、開口19aの直径はウェーハ13の直径よりも大きい。
【0022】
ウェーハ13及びフレーム19には、シート21が固定される。例えばシート21として、円形に形成されたフィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを含むテープが用いられる。基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなり、粘着層はエポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。なお、粘着層は紫外線硬化性樹脂であってもよい。
【0023】
ウェーハ13がフレーム19の開口19aの内側に配置された状態で、シート21の中央部がウェーハ13の裏面13b側に貼付され、シート21の外周部がフレーム19に貼付される。これにより、ウェーハ13がシート21を介してフレーム19によって支持され、ウェーハ13、フレーム19及びシート21を含む対象物11(ウェーハユニット、フレームユニット)が構成される。
【0024】
ただし、対象物11の構成は上記に限定されない。例えば、ウェーハ13の代わりにCSP(Chip Size Package)基板、QFN(Quad Flat Non-leaded package)基板等のパッケージ基板がシート21を介してフレーム19で支持されてもよい。パッケージ基板は、ベース基板上に実装された複数のデバイスチップを樹脂層(モールド樹脂)で封止することによって形成される。パッケージ基板を分割して個片化することにより、パッケージ化された複数のデバイスチップを備えるパッケージデバイスが製造される。また、ウェーハ13やパッケージ基板は、取り扱いに支障がなければフレーム19によって支持されていなくてもよい。この場合には、ウェーハ13やパッケージ基板自体が対象物11に相当する。
【0025】
保持テーブル6は、SUS(ステンレス鋼)等の金属、ガラス、セラミックス、樹脂等でなる円盤状の枠体(本体部)8を備える。枠体8は、互いに概ね平行な第1面(下面)8a及び第2面(上面)8bを含む。また、枠体8の第1面8a側の中央部には、円柱状の凹部8cが設けられている。
【0026】
凹部8cには、ポーラスセラミックス等の多孔質部材でなる円盤状の保持部材10が嵌め込まれている。保持部材10は、保持部材10の上面から下面まで連通する複数の空孔によって構成される流路を含む。保持部材10の下面は、保持テーブル6で対象物11を保持する際に対象物11を吸引する円形の吸引面10aを構成している。
【0027】
凹部8cの深さと保持部材10の厚さとは概ね同一であり、枠体8の第1面8aと保持部材10の吸引面10aとは概ね同一平面上に配置されている。そして、枠体8の第1面8aと保持部材10の吸引面10aとによって、対象物11を保持する保持面(支持面)6aが構成される。また、吸引面10aは、保持部材10に含まれる空孔、枠体8の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続される。
【0028】
例えば対象物11は、ウェーハ13の表面13a側が下方に露出し、ウェーハ13の裏面13b側(シート21側)が保持面6aに対面するように、保持テーブル6の保持面6a側に配置される。この状態で、吸引面10aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、ウェーハ13がシート21を介して保持テーブル6によって吸引保持される。
【0029】
ただし、対象物11を保持する保持テーブルの構成に制限はない。例えば、保持テーブル6に代えて、保持面に対象物11を吸引するための溝(吸引溝)が形成された保持テーブルを用いることもできる。この種の保持テーブルは、金属、ガラス、セラミックス、樹脂等でなる円盤状の部材によって構成されており、保持テーブルの表面(下面)が保持面を構成している。また、保持テーブルの保持面側には、保持面に沿って形成された複数の吸引溝が設けられている。
【0030】
例えば、複数の吸引溝は、保持テーブルの保持面の全体にわたって直線状、曲線状、又は環状に形成される。また、複数の吸引溝は、保持テーブルの中心から外周縁に向かって放射状に形成されてもよい。そして、複数の吸引溝は、保持テーブルの内部に形成された流路を介して吸引源に接続される。対象物11を保持面に接触させた状態で、複数の吸引溝に吸引源の吸引力を作用させることにより、対象物が保持テーブルの保持面で吸引保持される。
【0031】
図1に示すように、保持テーブル6は、枠体8の第2面8bが基台4の第1面4aと対面するように、基台4の下側に設置される。これにより、保持テーブル6の保持面6aが基台4の第1面4a及び第2面4bと概ね平行に配置される。なお、基台4と保持テーブル6とは、互いに連結されていてもよいし、それぞれ異なる部材によって独立に支持されていてもよい。
【0032】
また、保持ユニット2は、対象物11の外周部を把持して固定する複数のクランプ機構12を備える。例えばクランプ機構12は、保持テーブル6の外周部に、保持テーブル6の周方向に沿って概ね等間隔に配列される。なお、図1には4組のクランプ機構12が90°間隔で配列された例を図示しているが、クランプ機構12の数及び間隔は自由に設定できる。
【0033】
クランプ機構12はそれぞれ、対象物11(図2参照)を保持テーブル6の保持面6aに固定する固定機構14と、固定機構14を移動させる移動機構16とを備える。例えば固定機構14は、保持テーブル6の枠体8の外周部に装着され、保持テーブル6とともに基台4の第1面4a側(下側)に配置されている。一方、移動機構16は、基台4の第2面4b上に配置されている。
【0034】
固定機構14は、対象物11の外周部(フレーム19、図2参照)を下側から保持テーブル6の保持面6a側に押圧する固定状態と、対象物11の外周部の押圧を解除する解放状態とに切り替え可能に構成されている。固定機構14が固定状態になると、対象物11の外周部が下側から保持テーブル6の保持面6a側に押し付けられ、対象物11が保持面6aに固定される。一方、固定機構14が解放状態になると、固定機構14が対象物11の外周部から離れ、対象物11の固定が解除される。
【0035】
図3は、固定機構14を示す分解斜視図である。固定機構14は、保持テーブル6(図1及び図2参照)の外周部に固定される固定部材20を備える。固定部材20は、矩形状に形成された板状の固定部20aと、固定部20aの両側端部から前方に突出する一対の板状の支持部20bとを備える。固定部20aと支持部20bとは概ね垂直に配置されており、一対の支持部20bは互いに概ね平行に配置されている。一対の支持部20bにはそれぞれ、支持部20bを厚さ方向に貫通する円形の貫通孔20cが設けられている。
【0036】
固定部材20には、対象物11(図2参照)を押さえる押さえ部材22と、押さえ部材22を押圧して付勢する付勢部材28とが装着される。押さえ部材22は、対象物11(図2参照)の外周部に接触して対象物11を固定する接触部材24と、接触部材24に連結された柱状の押圧ピン26とを備える。
【0037】
例えば接触部材24は、略L字型に形成され、一対の支持部20bの間に回転可能に設置される。接触部材24の一端部には、対象物11に接触する接触部24aが設けられている。接触部24aは、接触部材24の一端部から突出する突起部(凸部)であり、接触部24aの先端部は曲面状に形成されている。また、接触部材24の他端部には、押圧ピン26が連結される。例えば押圧ピン26は、接触部材24の他端部に設けられた貫通孔24bに挿入され、接触部材24の厚さ方向に沿うように固定される。さらに、接触部材24の接触部24aと貫通孔24bとの間には、接触部材24を厚さ方向に貫通する円形の貫通孔24cが設けられている。
【0038】
押さえ部材22には、付勢部材28が連結される。付勢部材28は、コイルばね等の弾性体であり、復元力によって押さえ部材22を押圧して付勢する。例えば、付勢部材28としてねじりコイルばね(トーションばね、キックばね)が用いられる。ただし、押さえ部材22を付勢することが可能であれば、付勢部材28の種類に制限はない。
【0039】
押さえ部材22及び付勢部材28は、一対の支持部20bの間に配置される。そして、柱状の支持ピン30が、一方の支持部20bの貫通孔20c、付勢部材28、接触部材24の貫通孔24c、他方の支持部20bの貫通孔20cに順に挿入され、支持ピン30の先端部に留め具32が装着される。これにより、支持ピン30が固定部材20に固定され、押さえ部材22及び付勢部材28が支持ピン30によって支持される。
【0040】
押さえ部材22は、支持ピン30の周りを回転可能な状態で、支持ピン30によって支持される。また、付勢部材28の一端側は支持ピン30に固定され、付勢部材28の他端側は例えば固定部材20の固定部20aの上端部に固定される。なお、支持ピン30には、支持ピン30の長さ方向における押さえ部材22及び付勢部材28の移動を制止するワッシャー、クッションゴム等の部品が装着されてもよい。
【0041】
押圧ピン26を固定部材20の固定部20a側に押圧すると、付勢部材28が変形して押さえ部材22が押圧方向に回転する。これにより、接触部材24の接触部24aが固定部20aから離れるように移動し、押圧ピン26が固定部20aに近づくように移動する。また、押圧ピン26の押圧が解除されると、付勢部材28の付勢力(復元力)によって押さえ部材22が押圧時とは逆方向に回転する。これにより、接触部材24の接触部24aが固定部20aに近づくように移動し、押圧ピン26が固定部20aから離れるように移動する。
【0042】
図4は、移動機構16を示す斜視図である。移動機構16は、固定機構14の押さえ部材22(図3参照)を押圧する押圧部材42と、押圧部材42を移動させるアクチュエータ44とを備える。例えば移動機構16は、基台4の第2面4b側に固定された支持台40上に設置される。
【0043】
押圧部材42は、矩形状に形成された板状の支持部42aと、支持部42aの側端部から前方に突出する板状の押圧部42bとを備える。支持部42aと押圧部42bとは、概ね垂直に配置されている。なお、押圧部42bの高さは支持部42aの高さよりも大きく、押圧部42bの下端部は支持部42aの下面よりも下方に位置付けられている。
【0044】
また、基台4には、第1面4aから第2面4bに至るスリット(貫通孔)4cが設けられている。スリット4cは、保持テーブル6(図1参照)の径方向に沿って線状に形成されており、基台4を厚さ方向に貫通している。押圧部42bの下端側は、スリット4cに挿入され、基台4の第1面4aから下方に突出している(図5及び図6参照)。
【0045】
押圧部材42には、アクチュエータ44が連結されている。アクチュエータ44は、押圧部材42をスリット4cと概ね平行な直線状の移動経路に沿って移動(往復)させる直動アクチュエータである。例えば、アクチュエータ44としてエアシリンダが用いられる。具体的には、アクチュエータ44は、筒状のシリンダ46と、シリンダ46に収容された複数のロッド48とを備える。複数のロッド48の先端部には、ロッド48を他の部材に接続するための接続部材50が接続されている。押圧部材42の支持部42aは、ねじ等の固定具によって接続部材50に固定される。
【0046】
シリンダ46には、シリンダ46の内部を第1室と第2室とに区画するピストン(不図示)が内蔵されており、複数のロッド48はピストンに固定されている。また、シリンダ46には、第1室に接続されたエアー供給口46aと、第2室に接続されたエアー供給口46bとが設けられている。
【0047】
エアー供給口46a,46bはそれぞれ、エアーを供給するエアー供給源52に接続されている。エアー供給口46aとエアー供給源52との間には、バルブ54aが接続されている。バルブ54aは、エアー供給源52からエアー供給口46aを介してシリンダ46の第1室に供給されるエアーの圧力を制御する。同様に、エアー供給口46bとエアー供給源52との間には、バルブ54bが接続されている。バルブ54bは、エアー供給源52からエアー供給口46bを介してシリンダ46の第2室に供給されるエアーの圧力を制御する。例えば、バルブ54a,54bとして圧力レギュレータが用いられる。
【0048】
バルブ54aを閉じてエアー供給口46aを大気開放した状態で、バルブ54bを開いてエアー供給口46bにエアーを所定の圧力で供給すると、ロッド48がシリンダ46から射出される方向に移動する。これにより、押圧部材42の押圧部42bがスリット4cの一端側(基台4の外周縁側)に移動する。一方、バルブ54bを閉じてエアー供給口46bを大気開放した状態で、バルブ54aを開いてエアー供給口46aにエアーを所定の圧力で供給すると、ロッド48がシリンダ46に収容される方向に移動する。これにより、押圧部材42の押圧部42bがスリット4cの他端側(基台4の中心側)に移動する。
【0049】
図1に示すように、保持ユニット2は、保持ユニット2を制御する制御ユニット(制御部、制御装置)60を備える。制御ユニット60は、保持ユニット2を構成する各構成要素(移動機構16等)に接続されている。制御ユニット60は、制御信号を生成して保持ユニット2の構成要素に出力することにより、保持ユニット2を駆動させる。
【0050】
例えば、制御ユニット60はコンピュータによって構成される。具体的には、制御ユニット60は、保持ユニット2の駆動に必要な各種の演算を行う演算部と、保持ユニット2の駆動に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを備える。演算部はCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成され、記憶部はROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成される。
【0051】
さらに、保持ユニット2は、オペレーターに情報を報知する報知ユニット(報知部、報知装置)62を備える。例えば報知ユニット62は、情報を表示可能な表示ユニット(表示部、表示装置)であり、タッチパネル式のディスプレイ等によって構成される。制御ユニット60は、報知ユニット62に制御信号を出力することにより、報知ユニット62に所定の情報(操作画面、メッセージ、画像等)を表示させる。
【0052】
ただし、報知ユニット62の種類に制限はない。例えば報知ユニット62は、表示灯(警告灯)やスピーカーであってもよい。表示灯は、点灯又は点滅することにより、所定の情報をオペレーターに通知する。また、スピーカーは、音又は音声を発することにより、所定の情報をオペレーターに通知する。
【0053】
例えば報知ユニット62は、保持ユニット2の状態(正常又は異常)を報知する。これにより、オペレーターは保持ユニット2の状態を随時確認でき、保持ユニット2に異常が発生した際に速やかに対処することが可能になる。なお、保持ユニット2が加工装置に搭載される場合には、加工装置の制御ユニットが制御ユニット60を兼ねていてもよいし、加工装置の報知ユニットが報知ユニット62を兼ねていてもよい。
【0054】
次に、保持ユニット2の具体的な機能及び動作について説明する。保持ユニット2で対象物11を保持する際には、制御ユニット60がバルブ54a,54bに制御信号を出力することにより、シリンダ46の第1室及び第2室に供給されるエアーの圧力が制御され、アクチュエータ44が駆動する。
【0055】
図5は、対象物11の搬送時における保持ユニット2を示す側面図である。まず、バルブ54a,54bが制御ユニット60によって制御され、エアー供給口46aにエアーが所定の圧力(例えば、0.5MPa)で供給されるとともに、エアー供給口46bが大気開放される。これにより、ロッド48がシリンダ46に収容される方向に移動して、収容位置に位置付けられる。また、押圧部材42の押圧部42bが移動して押圧ピン26を押圧する。
【0056】
押圧部材42の押圧部42bが押圧ピン26を押圧すると、押さえ部材22が押圧部材42から付与される力によって、付勢部材28の付勢力に逆らって回転する。これにより、押さえ部材22が対象物11を解放する位置(解放位置)に配置され、押さえ部材22の接触部24aが固定部材20に収容される。
【0057】
次に、対象物11が搬送機構(不図示)によって搬送され、保持テーブル6の保持面6aに位置付けられる。この状態で、保持面6aに吸引源の吸引力を作用させると、対象物11が保持テーブル6によって吸引される。
【0058】
図6は、対象物11の固定時における保持ユニット2を示す側面図である。対象物11が保持テーブル6の保持面6aに配置されると、バルブ54a,54bが制御ユニット60によって制御され、エアー供給口46aが大気開放されるとともに、エアー供給口46bにエアーが所定の圧力(例えば、0.5MPa)で供給される。これにより、ロッド48がシリンダ46から射出される方向に移動して、射出位置に位置付けられる。また、押圧部材42の押圧部42bが移動して押圧ピン26から離れる。
【0059】
押圧部材42の押圧部42bが押圧ピン26から離れると、押さえ部材22が付勢部材28から付与される付勢力(復元力)によって付勢されて回転する。これにより、押さえ部材22が対象物11を押さえて保持テーブル6の保持面6aに固定する位置(固定位置)に配置され、接触部材24の接触部24aが対象物11の外周部(フレーム19、図2参照)に接触する。その結果、対象物11の外周部が接触部24aによって下側から保持面6a側に向かって押圧され、保持面6a及び固定部材20に固定される。
【0060】
このようにして、対象物11の外周部がクランプ機構12によって把持、固定され、対象物11が保持テーブル6の保持面6aによって保持される。その後、搬送機構が対象物11から離脱する。
【0061】
対象物11を保持テーブル6から搬送する際は、まず、対象物11が搬送機構(不図示)によって下側から支持される。そして、保持面6aに作用する吸引源の吸引力が解除される。次に、ロッド48がシリンダ46に収容されて収容位置に位置付けられ、押さえ部材22が解放位置に配置される(図5参照)。これにより、接触部材24の接触部24aが対象物11の外周部から離れて固定部材20に収容される。その結果、押さえ部材22による対象物11の押圧が解除され、対象物11が解放される。その後、対象物11が搬送機構によって保持テーブル6から所定の場所に搬送される。
【0062】
なお、付勢部材28に経年劣化や故障が生じると、付勢部材28から押さえ部材22に十分な付勢力が付与されず、クランプ機構12による対象物11の固定が不完全になる。その結果、対象物11が加工や洗浄の際に適切に保持されず、加工不良や洗浄不良が発生することがある。特に、図6に示すように保持テーブル6が対象物11を下向きに保持する場合には、クランプ機構12の異常によって対象物11が落下し、対象物11に修復不可能な損傷が生じるおそれがある。
【0063】
そこで、本実施形態においては、押さえ部材22を移動させるアクチュエータ44の押圧力に基づいて、付勢部材28の状態を判定する。これにより、クランプ機構12の異常を速やかに発見することができ、対象物11の固定が不完全なまま対象物11の加工、洗浄等が続行されてしまうことを防止できる。
【0064】
付勢部材28の状態の判定は、制御ユニット60によって実行される。制御ユニット60は、付勢部材28の状態を判定する判定部60aを含む。判定部60aは、押さえ部材22を固定位置から解放位置に移動させる際にアクチュエータ44が押さえ部材22に付与する押圧力に基づいて、付勢部材28が正常状態であるか異常状態であるかを判定する。
【0065】
具体的には、判定部60aには、アクチュエータ44が押さえ部材22に付与する押圧力に対応する信号(押圧力信号)が入力される。例えば、エアー供給源52からバルブ54a及びエアー供給口46aを介してシリンダ46の第1室に供給されるエアーの圧力は、ロッド48を射出位置から収容位置に移動させる押圧力、すなわち、押さえ部材22を固定位置から解放位置に移動させる押圧力に相当する。そして、制御ユニット60は、シリンダ46の第1室にエアーが所定の圧力で供給されるようにバルブ54aを制御するとともに、その所定の圧力を示す信号を押圧力信号として判定部60aに入力する。
【0066】
また、判定部60aには、押さえ部材22の位置に対応する信号(位置信号)が入力される。例えば、シリンダ46には、ロッド48の位置を検出するセンサ56が内蔵されている。センサ56は、ロッド48が収容位置(図5参照)に位置付けられると、ロッド48を検出する。
【0067】
エアー供給源52からバルブ54a及びエアー供給口46aを介してシリンダ46の第1室に所定のエアーが供給されると、ロッド48が射出位置(図6参照)から収容位置(図5参照)に移動し、シリンダ46に収容される。また、押さえ部材22が押圧部材42によって押圧されて回転し、固定位置(図6参照)から解放位置(図5参照)に移動する。その結果、センサ56によってロッド48が検出される。すなわち、センサ56は、ロッド48が収容位置に位置付けられ、押さえ部材22が解放位置に位置付けられたことを検出する。そして、センサ56は、検出結果を示す信号を位置信号として判定部60aに入力する。
【0068】
センサ56としては、例えば磁気センサ(磁気シリンダセンサ)が用いられる。この場合、センサ56は、ロッド48に組み込まれた磁石の磁場を検出することにより、ロッド48の位置を特定する。ただし、センサ56の種類に制限はない。例えばセンサ56は、ロッド48がセンサ56に接近するとロッド48を検出する光学式センサであってもよい。また、センサ56は、タッチスイッチ、押しボタン等のスイッチであってもよい。この場合には、ロッド48がスイッチに接触すると、スイッチが作動してロッド48が検出される。
【0069】
なお、センサ56は、ロッド48の代わりにシリンダ46に収容されているピストンを検出することにより、押さえ部材22が解放位置に位置付けられたことを検出してもよい。また、アクチュエータ44のピストン又はロッド48を検出するセンサ56の代わりに、解放位置に位置付けられた押さえ部材22を直接検出するセンサが設置されてもよい。
【0070】
そして、判定部60aは、アクチュエータ44に供給されるエアーの圧力と、押さえ部材22の位置とに基づいて、付勢部材28が正常状態であるか異常状態であるかを判定する。具体的には、まず、制御ユニット60は、センサ56を作動させてロッド48を検出可能な状態とする。次に、制御ユニット60は、バルブ54aに制御信号を出力して、バルブ54aからエアー供給口46aを介してシリンダ46の第1室にエアーを所定の圧力で供給する。
【0071】
なお、アクチュエータ44の通常の駆動時には、バルブ54aからシリンダ46の第1室に供給される圧力は、押さえ部材22を正常な付勢部材28の付勢力(復元力)に逆らって固定位置(図6参照)から解放位置(図5参照)に移動させることが可能な圧力(基準圧力)に設定される。一方、付勢部材28の状態の検査を行う際には、バルブ54aからシリンダ46の第1室にエアーが基準圧力よりも低い圧力(参照圧力)で供給される。例えば、基準圧力が0.5MPaに設定されている場合には、参照圧力を0.5MPa未満(0.1MPa等)に設定できる。
【0072】
ここで、付勢部材28が正常状態であり、付勢部材28の付勢力(復元力)が正常に作用する場合には、シリンダ46の第1室にエアーを参照圧力で供給しても、押さえ部材22及び押圧部材42の移動が付勢部材28の付勢力によって妨げられる。その結果、ロッド48はシリンダ46に収容されず、センサ56によって検出されない。
【0073】
一方、付勢部材28に経年劣化や故障が生じると、付勢部材28が異常状態となり、付勢部材28の付勢力(復元力)が低下し、又は作用しなくなる。そのため、シリンダ46の第1室に供給されるエアーの圧力が参照圧力であっても、押さえ部材22及び押圧部材42が付勢部材28の付勢力に逆らって移動し、ロッド48がシリンダ46に収容される。その結果、ロッド48がセンサ56によって検出される。
【0074】
そこで、判定部60aは、バルブ54aからシリンダ46にエアーが参照圧力で供給された際にロッド48がセンサ56によって検出されるか否かに基づいて、付勢部材28の状態を判定する。具体的には、バルブ54aからシリンダ46にエアーを参照圧力で供給した際に、センサ56からロッド48を検出したことを示す信号が入力されないと、判定部60aは付勢部材28が正常状態であると判定する。一方、バルブ54aからシリンダ46にエアーを参照圧力で供給した際に、センサ56からロッド48を検出したことを示す信号が入力されると、判定部60aは付勢部材28が異常状態であると判定する。
【0075】
判定部60aによる判定の結果は、報知ユニット62(図1参照)によってオペレーターに報知される。例えば、報知ユニット62がディスプレイである場合には、制御ユニット60は報知ユニット62に制御信号を出力して、報知ユニット62に判定結果を示すメッセージ等を表示させる。これにより、付勢部材28の異常がオペレーターに速やかに通知される。
【0076】
なお、付勢部材28の状態を判定するための具体的な処理の内容は、自由に設定できる。例えば制御ユニット60は、バルブ54aを段階的に制御し、逐次的に増加又は減少する参照圧力をシリンダ46に供給してもよい。具体的には、基準圧力が0.5MPaである場合、センサ56を作動させた状態で、0.1MPaから0.4MPaまで0.1MPaずつ上昇する参照圧力がシリンダ46に供給されてもよい。この場合、ロッド48がセンサ56によって検出されるか否かが、逐次的に変化する参照圧力ごとに判定される。これにより、エアーがどの程度の圧力でシリンダ46に供給されるとロッド48が収容位置に到達するのかが特定され、付勢部材28の劣化(付勢力の低下)の程度を評価することが可能になる。
【0077】
また、付勢部材28の検査を行うタイミングも自由に設定できる。例えば、一の対象物11が保持ユニット2から搬出された後、次の対象物11が保持ユニット2によって保持されるまでの間に、付勢部材28の状態が判定される。これにより、対象物11が保持ユニット2によって保持されるごとに、付勢部材28の状態を事前に確認することができる。また、保持ユニット2が加工装置に搭載される場合には、加工装置のメンテナンス時に付勢部材28の検査を実施してもよい。
【0078】
以上の通り、本実施形態に係る保持ユニット2では、押さえ部材22を固定位置から解放位置に移動させる際のアクチュエータ44の押圧力に基づいて、付勢部材28が正常状態であるか異常状態であるかが判定される。これにより、付勢部材28の異常を速やかに発見することができ、対象物11の固定が不完全なまま対象物11の加工、洗浄等が続行されてしまうことを防止できる。
【0079】
なお、本実施形態では、保持ユニット2が対象物11を下向きに保持する例について説明したが(図2参照)、保持ユニット2は対象物11を上向きに保持してもよい。具体的には、保持テーブル6及び複数の固定機構14を基台4の第2面4b側に配置し、複数の移動機構16を基台4の第1面4a側に配置することもできる。
【0080】
また、本実施形態に係る保持ユニット2の用途に制限はない。例えば保持ユニット2は、切削装置、研削装置、研磨装置、レーザー加工装置等の各種の加工装置に搭載される。
【0081】
切削装置は、被加工物を切削する加工ユニット(切削ユニット)を備える。切削ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には環状の切削ブレードが装着される。切削ブレードを回転させつつ被加工物に切り込ませることにより、被加工物が切削される。
【0082】
研削装置は、被加工物を研削する加工ユニット(切削ユニット)を備える。研削ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には複数の研削砥石を備える環状の研削ホイールが装着される。研削ホイールを回転させつつ研削砥石を被加工物に接触させることにより、被加工物が研削される。
【0083】
研磨装置は、被加工物を研磨する加工ユニット(研磨ユニット)を備える。研磨ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には円盤状の研磨パッドが装着される。研磨パッドを回転させつつ被加工物に接触させることにより、被加工物が研磨される。
【0084】
レーザー加工装置は、被加工物にレーザービームを照射する加工ユニット(レーザー照射ユニット)を備える。レーザー照射ユニットは、所定の波長のレーザーを発振するレーザー発振器と、レーザー発振器から出射したレーザービームを被加工物へと導く光学系とを備える。レーザー照射ユニットから被加工物にレーザービームを照射することにより、被加工物にレーザー加工が施される。
【0085】
また、保持ユニット2は、被加工物にプラズマエッチングを施すプラズマ処理装置に搭載することもできる。プラズマ処理装置は、被加工物にプラズマ状態のエッチングガスを供給することにより、被加工物をエッチングする。
【0086】
上記のような加工装置には、被加工物の加工中に被加工物を保持するチャックテーブルや、被加工物の洗浄中に被加工物を保持して回転するスピンナテーブルが搭載される。そして、本実施形態に係る保持ユニット2は、加工装置に搭載されるチャックテーブルやスピンナテーブルとして用いることができる。
【0087】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0088】
11 対象物(被加工物、被洗浄物)
13 ウェーハ
13a 表面(第1面)
13b 裏面(第2面)
15 ストリート(分割予定ライン)
17 デバイス
19 フレーム
19a 開口
21 シート
2 保持ユニット(保持機構)
4 基台
4a 第1面(下面)
4b 第2面(上面)
4c スリット(貫通孔)
6 保持テーブル
6a 保持面(支持面)
8 枠体(本体部)
8a 第1面(下面)
8b 第2面(上面)
8c 凹部
10 保持部材
10a 吸引面
12 クランプ機構
14 固定機構
16 移動機構
20 固定部材
20a 固定部
20b 支持部
20c 貫通孔
22 押さえ部材
24 接触部材
24a 接触部
24b 貫通孔
24c 貫通孔
26 押圧ピン
28 付勢部材
30 支持ピン
32 留め具
40 支持台
42 押圧部材
42a 支持部
42b 押圧部
44 アクチュエータ
46 シリンダ
46a,46b エアー供給口
48 ロッド
50 接続部材
52 エアー供給源
54a,54b バルブ
56 センサ
60 制御ユニット(制御部、制御装置)
60a 判定部
62 報知ユニット(報知部、報知装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6