IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特開-塗工ノズル及び塗工装置 図1
  • 特開-塗工ノズル及び塗工装置 図2
  • 特開-塗工ノズル及び塗工装置 図3
  • 特開-塗工ノズル及び塗工装置 図4
  • 特開-塗工ノズル及び塗工装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159558
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】塗工ノズル及び塗工装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20231025BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069307
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】江川 和宏
(72)【発明者】
【氏名】村松 進
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 浩司
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA35
4F041BA60
4F042AA03
4F042AB00
4F042BA08
4F042CB02
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB19
4F042CC04
4F042CC08
4F042DF07
4F042DF32
(57)【要約】
【課題】洗浄作業の時間を短縮化して、塗工生産性の低下を抑制することを課題とする。
【解決手段】液体塗料が吐出されるノズル孔1と、前記ノズル孔1に連通する液室2と、前記液室2に液体塗料を供給する塗料供給部3と、前記ノズル孔1からの前記液体塗料の吐出の可否を切り替える切替部4と、を有する塗工ノズル10であって、前記液室2に洗浄液を供給する洗浄液供給部7を設けたものである。これにより、洗浄作業の時間を短縮化して、塗工生産性の低下を抑制する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体塗料が吐出されるノズル孔と、
前記ノズル孔に連通する液室と、
前記液室に液体塗料を供給する塗料供給部と、
前記ノズル孔からの前記液体塗料の吐出の可否を切り替える切替部と、を有する塗工ノズルであって、
前記液室に洗浄液を供給する洗浄液供給部を設けたことを特徴とする塗工ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の塗工ノズルにおいて、
前記ノズル孔の吐出側開口を含むノズル部品が塗工ノズル本体に対して交換可能に構成されていることを特徴とする塗工ノズル。
【請求項3】
請求項1に記載の塗工ノズルにおいて、
前記洗浄液供給部から前記洗浄液が供給される前記液室の洗浄液入口は、前記塗料供給部から液体塗料が供給される前記液室の塗料入口よりも前記ノズル孔に近い位置に配置されていることを特徴とする塗工ノズル。
【請求項4】
請求項1に記載の塗工ノズルにおいて、
前記切替部は、前記塗料供給部から液体塗料が供給される前記液室の塗料入口を開閉する開閉部であることを特徴とする塗工ノズル。
【請求項5】
請求項4に記載の塗工ノズルにおいて、
前記開閉部は、ニードル弁を含むことを特徴とする塗工ノズル。
【請求項6】
請求項5に記載の塗工ノズルにおいて、
前記ニードル弁を駆動する駆動部と、
前記駆動部を収容する収容空間に前記塗料供給部の液体塗料が侵入するのを阻止する侵入阻止部とを有することを特徴とする塗工ノズル。
【請求項7】
請求項6に記載の塗工ノズルにおいて、
前記駆動部は、電磁駆動、圧電素子駆動、エア駆動のいずれかによって前記ニードル弁を駆動するものであることを特徴とする塗工ノズル。
【請求項8】
請求項6に記載の塗工ノズルにおいて、
前記侵入阻止部は、前記液体塗料又は前記洗浄液に含まれる溶剤に対して耐溶剤性を有することを特徴とする塗工ノズル。
【請求項9】
請求項1に記載の塗工ノズルにおいて、
前記ノズル孔の開口寸法は、最小寸法が20μm以上であり、最大寸法が500μm以下であることを特徴とする塗工ノズル。
【請求項10】
請求項1に記載の塗工ノズルにおいて、
前記塗料供給部は、前記液体塗料を循環させるための循環路を有することを特徴とする塗工ノズル。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の塗工ノズルを具備することを特徴とする塗工装置。
【請求項12】
請求項11に記載の塗工装置において、
塗工対象物を回転させる回転部を有し、
前記回転部によって回転している塗工対象物に対して前記ノズル孔から液体塗料を吐出することを特徴とする塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工ノズル及び塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体塗料が吐出されるノズル孔と、前記ノズル孔に連通する液室と、前記液室に液体塗料を供給する塗料供給部と、前記ノズル孔からの前記液体塗料の吐出の可否を切り替える切替部と、を有する塗工ノズルが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ノズル孔に連通するインク室(液室)内に配置されているニードル弁(切替部)によりノズル孔を開閉することで、ノズル孔からのインク(液体塗料)の吐出の可否を切り替えるインクジェットノズル(塗工ノズル)が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗工ノズルにおけるノズル孔や液室内で液体塗料が詰まってしまう塗料詰まりを抑制するためにノズル孔や液室内を洗浄液で洗浄する場合、洗浄作業に時間がかかり、塗工生産性が低下してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、液体塗料が吐出されるノズル孔と、前記ノズル孔に連通する液室と、前記液室に液体塗料を供給する塗料供給部と、前記ノズル孔からの前記液体塗料の吐出の可否を切り替える切替部と、を有する塗工ノズルであって、前記切替部は、前記塗料供給部から液体塗料が供給される前記液室の塗料入口を開閉する開閉部であり、前記液室に洗浄液を供給する洗浄液供給部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、洗浄用の治具を用いることなく、液室及びノズル孔に洗浄液を導入して洗浄作業を行うことができるので、洗浄作業の時間を短縮化し、塗工生産性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る塗工ノズルにおいてニードル弁が閉塞位置にある状態を模式的に示す説明図。
図2】同塗工ノズルにおいてニードル弁が開放位置にある状態を模式的に示す説明図。
図3】ノズル部品を塗工ノズル本体に対して交換可能に構成した一例を示す説明図。
図4】塗料を循環させる循環路を有する塗工ノズルの一例を示す説明図。
図5】実施形態における塗工ノズルを用いた塗工装置の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、塗工装置に用いられる塗工ノズルに適用した一実施形態について説明する。
図1及び図2は、本実施形態に係る塗工ノズル10を模式的に示す説明図である。
本実施形態の塗工ノズル10は、液体塗料(以下、単に「塗料」という。)が吐出されるノズル孔1と、ノズル孔1に連通する液室2と、液室2に塗料を供給する塗料供給部3とを備えている。また、塗工ノズル10は、ノズル孔1からの塗料の吐出の可否を切り替える切替部として、液室2の塗料入口2aを開閉する開閉部としてのニードル弁4を備えている。また、塗工ノズル10は、ニードル弁を駆動する駆動部5と、駆動部5を収容する収容空間11に塗料供給部3の塗料が侵入するのを阻止する侵入阻止部としての弾性体隔膜6とを備えている。更に、本実施形態の塗工ノズル10は、液室2に洗浄液を供給する洗浄液供給部7を備えている。
【0009】
本実施形態の塗工ノズル10において、塗料供給部3には塗料用送液機構21が接続され、洗浄液供給部7には洗浄液用送液機構22が接続される。塗料用送液機構21及び洗浄液用送液機構22は、互いに独立して送液動作を実行することができる。したがって、洗浄液用送液機構22から洗浄液供給部7への洗浄液の送り込み動作を停止した状態で、塗料用送液機構21から塗料供給部3への塗料の送り込み動作を実行できる。逆に、塗料用送液機構21から塗料供給部3への塗料の送り込み動作を停止した状態で、洗浄液用送液機構22から洗浄液供給部7への洗浄液の送り込み動作を実行できる。
【0010】
塗料用送液機構21及び洗浄液用送液機構22については特段の制約はないが、シリンジポンプ、加圧タンクなどを好適に利用することができる。ただし、塗料用送液機構21については、ノズル孔1から吐出される塗料の着弾効率が非常に高い場合、微量の塗料でも供給制御が可能であるものが好ましい。
【0011】
また、本実施形態の塗工ノズル10において、ノズル孔1から塗料を吐出しない時には、図1に示すように、液室2の塗料入口2aを閉塞する閉塞位置にニードル弁4を移動させ、塗料供給部3から液室2への塗料供給を禁止する。一方、ノズル孔1から塗料を吐出する時には、図2に示すように、液室2の塗料入口2aを開放する開放位置にニードル弁4を移動させ、塗料供給部3から液室2への塗料供給を可能にする。これにより、駆動部5を制御してニードル弁4を開放位置と閉塞位置とに切り替えることで、塗料用送液機構21から塗料供給部3へ送り込まれる塗料を、液室2を介してノズル孔1から吐出したり吐出させなかったりすることができる。
【0012】
本実施形態のノズル孔1は、塗工作業時には液室2内の塗料を吐出させ、洗浄作業時には液室2内の塗料や洗浄液を吐出させる。ノズル孔1の吐出方向に対して直交する断面の形状は、塗工対象物や塗料の特性などを考慮して適宜選定される。一般には、ノズル孔1の加工しやすさを考慮して、断面円形状や断面四角形状であるのが好ましい。
【0013】
ノズル孔1の開口寸法は、塗膜ムラの低減や塗工タクトの低減の観点から、最小寸法が20μm以上であり、最大寸法が500μm以下であるのが好ましい。例えば、ノズル孔1の開口形状が円形である場合には、その直径が20μm以上500μm以下であるのが好ましい。また、例えばノズル孔1の開口形状が四角形である場合には、短辺が20μm以上で、対角線が500μm以下であるのが好ましい。ノズル孔1の開口の最小寸法が20μm未満であるとノズル孔1が異物によって詰まりやすく、ノズル孔1の開口の最大寸法が500μmを超えると、塗膜ムラが悪化しやすい傾向がある。
【0014】
ノズル孔1は、ノズル孔1を塗工ノズル本体に直接形成したり、ノズル孔1の吐出側開口を含むノズル部品を塗工ノズル本体に対して一体的に固定したりしたものであってもよい。ただし、メンテナンス性の観点から、図3に示すように、ノズル孔1の開口(吐出側開口)を含むノズル部品12を塗工ノズル本体に対して交換可能に構成してもよい。このようにノズル部品12を交換式にすることで、ノズル孔1をメンテナンス(洗浄等)したり、塗工用途に応じてノズル孔1の形状や寸法を変更したりすることが容易になる。
【0015】
ノズル孔1を形成する部材の材質については特に制限はないが、使用する塗料や洗浄液に対して耐腐食性を持つ材質であるのが好ましい。
【0016】
本実施形態の塗工ノズル10に使用可能な塗料については特に制限はないが、ノズル孔1の開口寸法や塗工作業時の吐出量等に応じて、粘度や固形分濃度などを適切に選択することが好ましい。ノズル孔1の開口寸法が小さいとき、塗料の粘度が高いと吐出ができない若しくは吐出が安定しない場合がある。一方で、塗料の固形分濃度を下げて塗料の粘度を低くすると、吐出は安定しやすくなるものの、狙いの膜厚を得るのに必要な吐出量が多くなったり、塗工対象物中のウェット膜厚が厚くなるために膜厚ムラが大きくなったり、指触乾燥時間が長くなったりするなどの不具合が生じ得る。
【0017】
塗料には微粒子が含まれていても良いが、ノズル孔1の開口寸法よりも大きい微粒子だと吐出不良を発生させやすく、洗浄しても吐出不良を回復できないおそれがあるので、微粒子の粒径の選定には十分な考慮が必要である。
【0018】
塗工ノズル10におけるノズル孔や液室内で液体塗料が詰まってしまう塗料詰まりを抑制するためには、ノズル孔や液室内を洗浄液で洗浄する方法が有効である。しかしながら、従来の洗浄液で洗浄する方法は、洗浄用の治具を用いてノズル孔の出口側から洗浄液を導入して洗浄するという方法であるため、洗浄作業が煩雑で時間がかかり、塗工生産性が低下してしまう。
本態様では、液室に洗浄液を供給する洗浄液供給部が設けられているので、洗浄用の治具を用いることなく、液室及びノズル孔に洗浄液を導入して洗浄作業を行うことができる。
【0019】
本実施形態の塗工ノズル10に使用可能な洗浄液については特段の制約はないが、一般には、塗料に含まれる溶媒と同じか、より溶解性の強い溶媒を使った洗浄液が望ましい。具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
塗料供給部3は、塗料用送液機構21から送り込まれる塗料を液室2まで搬送するための流路を含む。液室2の塗料入口2aに接続される塗料供給部3の流路下流端部は、図1及び図2に示すように、先細り形状となっている。塗料供給部3には、ニードル弁4の先端側が配置されている。図1に示すように、ニードル弁4の先端部が塗料供給部3の流路下流端(液室2の塗料入口2a)を塞ぐことで(閉塞位置)、塗料供給部3から液室2への塗料供給が禁止される。一方、図2に示すように、ニードル弁4の先端部が塗料供給部3の流路下流端(液室2の塗料入口2a)から退避することで(開放位置)、塗料供給部3から液室2への塗料供給が可能になる。
【0021】
ニードル弁4を駆動する駆動部5は、バネ等の付勢部材の付勢力によってニードル弁4を液室2の塗料入口2a側へ付勢することにより、ニードル弁4を閉塞位置に位置させる。一方、駆動部5は、ニードル弁4を開放位置に位置させるとき、付勢部材の付勢力を超える力でニードル弁4を後方へ移動させて開放位置に位置させる駆動機構を備えている。この駆動機構については特に制約はないが、応答性、安全性、利便性の観点から、一般には、電磁駆動若しくはエア駆動のものであるのが好ましい。
【0022】
電磁駆動の駆動機構としては、例えばソレノイドを用いることができる。ニードル弁の後端部に設けられる磁性体部と対向するようにソレノイドの固定鉄心を配置し、ソレノイドに電流を流して磁界を発生させ、ニードル弁の後端部を固定鉄心に吸着させることにより、ニードル弁4を後方に引き下げ、開放位置に位置させる。このような駆動機構は、ソレノイドに供給する電流を制御することで、ニードル弁4による塗料入口2aの開閉動作を精密に制御できるので、ノズル孔1から吐出される塗料の吐出パターンや吐出量を高い精度で制御することが可能である。
【0023】
エア駆動の駆動機構としては、安全性や利便性を優先する場合に適している。このような駆動機構では、圧縮エアの圧力を利用してニードル弁を後方に下げるように駆動する。
【0024】
また、駆動部5の駆動機構としては、圧電素子駆動のものであるのも好ましい。例えば、ニードル弁4の後端部を圧電素子に固定し、印加電圧に応じた圧電素子の変位を利用して、ニードル弁4を閉塞位置と開放位置とに移動させる。これによれば、ニードル弁4の位置を高速に制御できるので、塗料入口2aの開閉動作を高い応答性で制御することができる。
【0025】
本実施形態においては、ニードル弁4の先端側が塗料と一緒に配置される塗料供給部3と、ニードル弁4の後端側に配置される駆動部5が収容される収容空間11とを仕切る弾性体隔膜6が配置されている。弾性体隔膜6は、閉塞位置と開放位置との間のニードル弁4の移動を可能にしつつ、塗料供給部3と収容空間11との隙間を塞ぐように設けられている。塗料供給部3内の塗料には塗料用送液機構21からの塗料供給により圧力がかけられているが、弾性体隔膜6により塗料供給部3内の塗料が収容空間11へ侵入することが阻止されている。
【0026】
弾性体隔膜6の材質は、塗料に使用する溶媒(溶剤)に合わせて選定することが好ましい。特に有機溶剤を使用する場合、弾性体隔膜6の材質は耐溶剤性の材料であることで弾性体隔膜6の寿命を延ばし、長期にわたって安定した駆動を実現することができる。また、塗料供給部3内に洗浄液が混入するおそれがある場合には、弾性体隔膜6の材質は洗浄液に含まれる溶剤に対しても耐溶剤性の材料であるのが好ましい。
【0027】
塗工ノズル10により塗工作業を行う場合、まず、洗浄液用送液機構22から洗浄液供給部7への洗浄液の送り込み動作を停止した状態で、塗料用送液機構21から塗料供給部3へ塗料を送り込む。このとき、ニードル弁4が駆動部5により閉塞位置に位置され、液室2の塗料入口2aがニードル弁4によって閉塞されている場合、塗料供給部3に送り込まれた塗料は、液室2へは供給されず、ノズル孔1から塗料は吐出されない。
【0028】
塗料供給部3に塗料が充填された状態でニードル弁4が駆動部5により開放位置に位置されると、ニードル弁4の先端部と塗料供給部3の流路下流端部との間に隙間ができ、流路下流端部が接続されている液室2の塗料入口2aが開放される。これにより、塗料供給部3内の塗料は塗料入口2aから液室2に供給され、液室2に連通しているノズル孔1から塗料が吐出される。
【0029】
このとき、洗浄液用送液機構22から洗浄液供給部7への洗浄液の送り込み動作が停止しているので、洗浄液供給部7から液室2へ洗浄液が供給されず、塗料のみがノズル孔1から吐出される。なお、本実施形態においては、洗浄液供給部7から洗浄液が供給される液室2の洗浄液入口2bは常時開放された状態になっているが、洗浄液入口2bを開閉する開閉部を設けてもよい。この場合、塗料を吐出する際に、洗浄液入口2bを当該開閉部により閉塞しておくことで、塗料に洗浄液が混入することを安定して抑制することができる。
【0030】
塗工作業が終了した時点では、ノズル孔1及び液室2は、塗料が付着した状態若しくは塗料が充填された状態となっている。そのため、この状態のまま放置すると、塗料が固まったり、塗料成分が沈降したりして、ノズル孔1や液室2の詰まりが発生し得る。この詰まりを抑制する方法としては、ノズル孔1や液室2内を洗浄液で洗浄する方法が有効である。しかしながら、従来の洗浄液で洗浄する方法は、洗浄用の治具を用いてノズル孔1の出口側から洗浄液を導入して洗浄するという方法であるため、洗浄作業が煩雑で時間がかかり、塗工生産性が低下してしまう。
【0031】
そこで、本実施形態における塗工ノズル10には、液室2に洗浄液を供給する洗浄液供給部7が設けられている。そのため、洗浄液用送液機構22により洗浄液供給部7に供給された洗浄液を液室2に供給して、液室2内の洗浄液をノズル孔1から排出することにより、洗浄用の治具を用いることなく、ノズル孔1や液室2内を洗浄液で洗浄する洗浄作業を行うことができる。しかも、塗工作業の途中で洗浄作業を適宜実行することにより、塗工と洗浄とを繰り返しながら塗工作業を継続することができるので、メンテナンス負荷を抑えることができる。
【0032】
ここで、この洗浄作業後に塗工作業を再開までの間に(例えば塗工作業開始直前に)、液室2及びノズル孔1内に残っている洗浄液をノズル孔1から排出し、液室2及びノズル孔1内に再び塗料を充填する塗料充填作業を行う必要がある。このとき、洗浄作業時に液室2に導入した洗浄液が塗料供給部3に侵入してしまう構成である場合、塗料供給部3内の塗料に洗浄液が混じってしまう。この場合、塗料充填作業時には、液室2及びノズル孔1内の洗浄液だけでなく、洗浄液が混じった塗料供給部3内の塗料も、ノズル孔1から排出する必要が生じる。そのため、塗料の不要な消費を発生させることになる。
【0033】
本実施形態においては、ノズル孔1からの塗料の吐出の可否を切り替える切替部として、液室2の塗料入口2aを開閉する開閉部としてのニードル弁4を採用している。これによれば、洗浄作業時に、このニードル弁4を用いて液室2の塗料入口2aを閉塞させた状態にすることで、洗浄液供給部7から液室2に供給される洗浄液が塗料供給部3に侵入することを防止することができる。したがって、塗料供給部3内の塗料に対する洗浄液の混入が発生せず、塗料充填作業時には、液室2及びノズル孔1内の洗浄液だけをノズル孔1から排出すればよい。したがって、塗料の不要な消費を抑制することができる。
【0034】
特に、本実施形態においては、洗浄作業時に塗料供給部3内へ洗浄液が混入するのを防止する構成として、ノズル孔1からの塗料の吐出の可否を切り替えるためのニードル弁4を利用している。そのため、洗浄作業時に塗料供給部3内へ洗浄液が混入するのを防止するための新たな構成を設ける必要がない。
【0035】
なお、洗浄作業時に塗料供給部3内へ洗浄液が混入するのを防止する構成としては、これに限られるものではない。例えば、本実施形態では、上述したように、塗料用送液機構21及び洗浄液用送液機構22が互いに独立して送液動作を実行できる構成となっている。この構成によれば、洗浄作業時に、塗料用送液機構21を停止させて塗料の逆流が発生しないようにすることで、洗浄液供給部7から液室2に供給される洗浄液が塗料供給部3に侵入することを防止することができる。
【0036】
特に、本実施形態における液室2では、洗浄液入口2bが塗料入口2aよりもノズル孔1に近い位置に配置することで、洗浄作業時に洗浄液入口2bから液室2へ供給された洗浄液が塗料入口2aへ移動しにくくなり、塗料供給部3内へ洗浄液が混入することが抑制される。
【0037】
また、塗料入口2aと洗浄液入口2bとは近接して配置するのが好ましい。本実施形態では、洗浄作業時にニードル弁4は閉塞位置にあり、ニードル弁4の先端部が塗料入口2aから液室2の内部へと突出した状態になっている。そのため、塗料入口2aと洗浄液入口2bとは近接して配置することで、洗浄液入口2bから液室2へ流入する洗浄液によって塗料入口2aから突出するニードル弁4の先端部を洗浄することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態の塗工ノズル10において、図4に示すように、塗料を循環させるための循環路8を塗料供給部3に設けてもよい。この場合、塗工ノズル10の循環路8の出口に、塗料供給部3へ戻す戻し流路を接続することで、塗料供給部3内の塗料を循環させることが可能となる。ノズル孔1からの塗料の吐出を行わないときに塗料を循環させることで、塗料の成分の分離や沈澱を抑制することができるので、成分が分離しやすい塗料や沈澱しやすい塗料なども使用することが可能となり、本塗工ノズル10に使用できる塗料の種類の幅を広げることができる。なお、塗料の循環は、例えば、液室2の塗料入口2aをニードル弁4で閉塞させた状態で、ギアポンプ、エアードポンプ等からの印加されるエネルギーにより、塗料を循環させればよい。
【0039】
次に、本実施形態における塗工ノズル10を用いた塗工装置の一例について説明する。
図5は、本実施形態における塗工ノズル10を用いた塗工装置30の一例を示す模式図である。
本実施形態における塗工ノズル10を用いる塗工装置には特に制約はなく、例えば、スプレー塗工装置や他の一般的なノズル塗工装置に対して好適に用いることができる。中でも、図5に示すように、円筒状部材またはベルト状部材などの塗工対象物Wを回転部であるホルダ31に保持し、モータ32によって回転されるホルダ31上の塗工対象物Wに対して、塗工ノズル10から塗料を吐出して塗工作業を行う塗工装置30が好ましい。この塗工装置30であれば、塗膜の均一性や塗工タクトのコントロールがしやすい点で好ましい。
【0040】
図5に示す塗工装置30では、モータ33でスライドユニット34の軸を回転させることにより、軸上に取り付けられた塗工ノズル10を、ホルダ31の回転軸方向に沿って移動させることができる。これにより、塗工幅の広い塗工対象物Wに対しても、塗膜の均一性を維持しやすい。
【0041】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、液体塗料が吐出されるノズル孔1と、前記ノズル孔に連通する液室2と、前記液室に液体塗料を供給する塗料供給部3と、前記ノズル孔からの前記液体塗料の吐出の可否を切り替える切替部(例えばニードル弁4)と、を有する塗工ノズル10であって、前記液室に洗浄液を供給する洗浄液供給部7を設けたことを特徴とするものである。
塗工ノズルにおけるノズル孔や液室内で液体塗料が詰まってしまう塗料詰まりを抑制するためには、ノズル孔や液室内を洗浄液で洗浄する方法が有効である。しかしながら、従来の洗浄液で洗浄する方法は、洗浄用の治具を用いてノズル孔の出口側から洗浄液を導入して洗浄するという方法であるため、洗浄作業が煩雑で時間がかかり、塗工生産性が低下してしまう。
本態様では、液室に洗浄液を供給する洗浄液供給部が設けられているので、洗浄用の治具を用いることなく、液室及びノズル孔に洗浄液を導入して洗浄作業を行うことができる。よって、洗浄用の治具を用いて洗浄作業を行う場合よりも、洗浄作業の時間を短縮化し、塗工生産性の低下を抑制することができる。
【0042】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記ノズル孔の吐出側開口を含むノズル部品12が本体に対して交換可能に構成されていることを特徴とするものである。
これによれば、ノズル孔をメンテナンス(洗浄等)したり、塗工用途に応じてノズル孔の形状や寸法を変更したりすることが容易になる。
【0043】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記洗浄液供給部から前記洗浄液が供給される前記液室の洗浄液入口2bは、前記塗料供給部から液体塗料が供給される前記液室の塗料入口2aよりも前記ノズル孔に近い位置に配置されていることを特徴とするものである。
これによれば、洗浄作業時に洗浄液入口2bから液室2へ供給された洗浄液が塗料入口2aへ移動しにくくなり、塗料供給部3内へ洗浄液が混入することが抑制される。
【0044】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記切替部は、前記塗料供給部から液体塗料が供給される前記液室の塗料入口2aを開閉する開閉部(例えばニードル弁4)であることを特徴とするものである。
洗浄作業後に塗工作業を再開までの間に、液室及びノズル孔内に残っている洗浄液をノズル孔から排出し、液室及びノズル孔内に再び塗料を充填する塗料充填作業を行う必要がある。このとき、洗浄作業時に液室に導入された洗浄液が塗料供給部に侵入してしまう構成である場合、塗料供給部内の塗料に洗浄液が混じってしまう。この場合、塗料充填作業時には、液室及びノズル孔内の洗浄液だけでなく、洗浄液が混じった塗料供給部内の塗料も、ノズル孔から排出する必要が生じる。そのため、塗料の不要な消費を発生させることになる。
本態様においては、ノズル孔からの液体塗料の吐出の可否を切り替える切替部として、塗料供給部から液体塗料が供給される液室の塗料入口を開閉する開閉部を採用している。これによれば、洗浄作業時に、この開閉部を用いて液室の塗料入口を閉じた状態にすることにより、洗浄液供給部から液室に供給した洗浄液が塗料供給部に侵入することを防止することができる。
しかも、ノズル孔からの液体塗料の吐出の可否を切り替えるための開閉部を用いて、液室の塗料入口を閉じた状態にすることができることから、液室に供給した洗浄液が塗料供給部に侵入することを防止するために新たな構成を設ける必要がない。
【0045】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記開閉部は、ニードル弁4を含むことを特徴とするものである。
これによれば、液室の塗料入口2aを開閉する開閉部を簡易に構成することができる。
【0046】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記ニードル弁を駆動する駆動部5と、前記駆動部を収容する収容空間11に前記塗料供給部3の液体塗料が侵入するのを阻止する侵入阻止部(例えば弾性体隔膜6)とを有することを特徴とするものである。
これによれば、侵入阻止部により塗料供給部3内の塗料が収容空間11へ侵入することを阻止することができるので、駆動部5の動作が塗料に接触して不安定になることを抑制することができる。
【0047】
[第7態様]
第7態様は、第6態様において、前記駆動部は、電磁駆動、圧電素子駆動、エア駆動のいずれかによって前記ニードル弁を駆動するものであることを特徴とするものである。
これによれば、ニードル弁を適切に駆動することができる。
【0048】
[第8態様]
第8態様は、第6又は第7態様において、前記侵入阻止部は、前記液体塗料又は前記洗浄液に含まれる溶剤に対して耐溶剤性を有することを特徴とするものである。
これによれば、侵入阻止部の寿命を延ばし、長期にわたって安定した駆動を実現することができる。
【0049】
[第9態様]
第9態様は、第1乃至第8態様のいずれかにおいて、前記ノズル孔の開口寸法は、最小寸法が20μm以上であり、最大寸法が500μm以下であることを特徴とするものである。
これによれば、ノズル孔に異物が詰まることを抑制しつつも、ノズル孔の開口が大きすぎることによる塗膜ムラの悪化を抑制することができる。
【0050】
[第10態様]
第10態様は、第1乃至第9態様のいずれかにおいて、前記塗料供給部は、前記液体塗料を循環させるための循環路8を有することを特徴とするものである。
これによれば、塗料を循環させることで、塗料の成分の分離や沈澱を抑制することができる。その結果、成分が分離しやすい塗料や沈澱しやすい塗料なども使用することが可能となり、本塗工ノズルに使用できる塗料の種類の幅を広げることができる。
【0051】
[第11態様]
第11態様は、塗工装置であって、第1乃至第10態様のいずれかの塗工ノズルを具備することを特徴とするものである。
本態様によれば、洗浄作業の時間を短縮化して塗工生産性の低下を抑制できる塗工装置を提供することができる。
【0052】
[第12態様]
第12態様は、第11態様において、塗工対象物を回転させる回転部(例えばホルダ31)を有し、前記回転部によって回転している塗工対象物Wに対して前記ノズル孔から液体塗料を吐出することを特徴とするものである。
本態様によれば、塗膜の均一性や塗工タクトのコントロールがしやすい塗工装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 :ノズル孔
2 :液室
2a :塗料入口
2b :洗浄液入口
3 :塗料供給部
4 :ニードル弁
5 :駆動部
6 :弾性体隔膜
7 :洗浄液供給部
8 :循環路
10 :塗工ノズル
11 :収容空間
12 :ノズル部品
21 :塗料用送液機構
22 :洗浄液用送液機構
30 :塗工装置
31 :ホルダ
32,33:モータ
34 :スライドユニット
W :塗工対象物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特許第4123897号公報
図1
図2
図3
図4
図5