(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159661
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】複合フィルム
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20231025BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231025BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20231025BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20231025BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231025BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20231025BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20231025BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231025BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20231025BHJP
【FI】
H05K9/00 W
H05K9/00 Q
H05K1/03 650
H05K3/38 E
H05K3/28 C
B32B15/08 N
B32B15/20
B32B27/20 Z
B32B27/00 L
B32B7/06
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069502
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐野 惇郎
(72)【発明者】
【氏名】中津川 達也
(72)【発明者】
【氏名】片平 周介
【テーマコード(参考)】
4F100
5E314
5E321
5E343
【Fターム(参考)】
4F100AB05B
4F100AB17A
4F100AB17B
4F100AB33A
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4F100BA10D
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4F100DE01B
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5E314AA31
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5E343GG13
(57)【要約】
【課題】接続電気抵抗が低い複合フィルムを提供する。
【解決手段】複合フィルム1は、銅箔10と、導電性フィラーを含有する導電性粘着剤又は導電性フィラーを含有する導電性接着剤からなり且つ銅箔10が有する2つの表面のうち少なくとも一方の表面10aに積層された導電層20と、を有する。そして、導電性フィラーの数平均粒子径が0.12μm以上7μm以下である。また、銅箔10が有する2つの表面のうち導電層20が積層された表面10aの展開面積比Sdrが0.01%以上40%以下、スキューネスSskが-1.0以上1.0以下、接触抵抗が2mΩ以上30mΩ以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔と、導電性フィラーを含有する導電性粘着剤又は導電性フィラーを含有する導電性接着剤からなり且つ前記銅箔が有する2つの表面のうち少なくとも一方の表面に積層された導電層と、を有する複合フィルムであって、
前記導電性フィラーの数平均粒子径が0.12μm以上7μm以下であり、
前記銅箔が有する2つの表面のうち前記導電層が積層された表面の展開面積比Sdrが0.01%以上40%以下、スキューネスSskが-1.0以上1.0以下、接触抵抗が2mΩ以上30mΩ以下である複合フィルム。
【請求項2】
前記銅箔の表面に直交する平面で前記導電層を切断した場合に現れる前記導電層の断面において、前記導電層の断面の面積に対する前記導電性フィラーの断面の面積の割合が30%以上85%以下である請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記銅箔が有する2つの表面のうち前記導電層が積層された表面のクルトシスSkuが3.0以上3.6以下である請求項1又は請求項2に記載の複合フィルム。
【請求項4】
前記導電層の上に離型フィルムがさらに積層された請求項1又は請求項2に記載の複合フィルム。
【請求項5】
前記導電層の上に離型フィルムがさらに積層された請求項3に記載の複合フィルム。
【請求項6】
前記銅箔が有する2つの表面のうち前記導電層が積層された表面とは反対側の表面に、前記銅箔を電気的に保護する絶縁層がさらに積層された請求項1又は請求項2に記載の複合フィルム。
【請求項7】
前記銅箔が有する2つの表面のうち前記導電層が積層された表面とは反対側の表面に、前記銅箔を電気的に保護する絶縁層がさらに積層された請求項3に記載の複合フィルム。
【請求項8】
支持体であるキャリアフィルムが前記絶縁層の上にさらに積層された請求項6に記載の複合フィルム。
【請求項9】
支持体であるキャリアフィルムが前記絶縁層の上にさらに積層された請求項7に記載の複合フィルム。
【請求項10】
EMI対策フィルムとして使用される請求項1又は請求項2に記載の複合フィルム。
【請求項11】
EMI対策フィルムとして使用される請求項3に記載の複合フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、医療機器、自動車等の電子機器については、高集積化、高性能化が進んでおり、それとともに電子機器の電磁干渉(EMI:Electromagnetic Interference)を抑制するEMI対策の重要性が増している。そのため、電子機器の筐体内外からの電磁波による該電子機器の誤作動、通信データ品質の劣化などの不具合を防ぐために、ノイズフィルタ、電磁波吸収シート等の部材が電子機器に用いられている。
このような部材の中でも、EMI対策フィルムと呼ばれる複合フィルムが、多くの電子機器に用いられている。EMI対策フィルムは、金属等からなる電磁波遮蔽層と、導電性粘着剤又は導電性接着剤からなる導電層とが積層された構造を有する複合フィルムである。電磁波遮蔽層としては、高い導電率、シールド性、工業生産性の観点から、銅箔が用いられることがある。
【0003】
そして、EMI対策フィルムは、フレキシブル基板(FPC:Flexible printed circuits)やチップ・オン・フィルム技術(COF:Chip on Film)におけるシールドフィルムとして、あるいは、電子機器の筐体内での接地強化用の導電テープとして、非常に多く用いられている。
電子機器にEMI対策フィルムを装着する際には、通常は、電磁波遮蔽層が導電層を介して電子機器内の金属部分に貼り付けられる。そして、EMI対策フィルムの電磁波遮蔽層が電子機器内の金属部分に貼り付けられた際に、電磁波遮蔽層から電子機器内の金属部分までの接続電気抵抗が低いほど、電磁干渉を抑制する性能が優れている(以下、EMI対策フィルムが有する、電磁干渉を抑制する性能を「EMI耐性」と記すこともある)。このEMI耐性は上記接続電気抵抗で評価することができるが、配線抵抗によって模擬的に評価されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、近年においてはEMI対策の重要性が増しているので、接続電気抵抗がより低い複合フィルムが求められている。
本発明は、接続電気抵抗が低い複合フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者らは、複合フィルムの接続電気抵抗(配線抵抗)を低減するためには、電磁波遮蔽層である銅箔として接触抵抗の低い銅箔を使用することが有効であると考え、銅箔の表面形状に注目した。しかしながら、原理上は最も接触抵抗が低くなる、表面が清浄且つ平滑な(表面粗度の小さい)銅箔を使用してEMI対策フィルムを作製しても、EMI対策フィルムの配線抵抗が予測していたほど低くならないことが分かった。一方で、平滑で表面粗度の小さい銅箔よりも、表面粗度が比較的大きい銅箔を使用した方が、EMI対策フィルムの配線抵抗が低い場合がある実験結果が得られ、本発明者らはここに注目した。
【0007】
「日本伸銅協会技術標準JCBA T323:2011の表面接触電気抵抗の測定方法」では、被測定物と金(Au)プローブとの間の接触抵抗を測定すると定められている。銅箔の接触抵抗を測定する場合には、金属剛体同士の間の接触抵抗になるために、自ずと互いの表面形状に応じた空隙が接触界面に生じるので、その分、微視的な真実接触面積が小さくなる。したがって、銅箔の表面粗度が大きくAuプローブとの真実接触面積が小さいと、接触抵抗の測定値は大きくなり、銅箔の表面粗度が小さくAuプローブとの真実接触面積が大きいと、接触抵抗の測定値は低い傾向になると理解されている。
【0008】
一方、EMI対策フィルムの用途に用いられる複合フィルムの場合においては、銅箔と接触するのは導電性粘着剤又は導電性接着剤であり、銅箔と貼り合わせた際には銅箔の表面形状に導電性粘着剤又は導電性接着剤が追従するため、銅箔と導電性粘着剤又は導電性接着剤との接触界面には基本的には空隙は生じにくい。
【0009】
このことから、複合フィルムがEMI対策フィルムとして使用される場合には、表面粗度が最も小さい銅箔よりも、すなわち完全平滑な表面を有する銅箔よりも、表面粗度が比較的大きい銅箔を用いた方が、銅箔の接触抵抗は小さくなると考えられる。すなわち、銅箔の表面の表面粗度が大きくなっても、その形状に導電層が追従するため、銅箔と導電層の接触界面には空隙が生じにくく、銅箔の表面の表面粗度が大きい分、真実接触面積が大きくなるので、銅箔の接触抵抗は小さくなると考えられる。
【0010】
本発明者らが上記の考え方を検証したところ、表面粗度が比較的大きい銅箔を用いたEMI対策フィルムは、完全平滑な表面を有する銅箔を用いたEMI対策フィルムよりも、配線抵抗が低いことが明らかとなった。
また、これらの知見を基礎として本発明者らが鋭意研究を行った結果、配線抵抗がより低いEMI対策フィルムを得るためには、導電層に含有される導電性フィラーの数平均粒子径と銅箔の表面粗度との関係性が重要であることが明らかとなった。すなわち、本発明者らは、銅箔の表面形状に応じて導電層が追従するだけではなく、導電性フィラーの分布も銅箔の表面形状に追従することによって、導電性フィラーと銅箔の表面との接触点を増やすことが必要であること、そのためには導電性フィラーの数平均粒子径と銅箔の表面粗度との関係が重要であることを見出した。
【0011】
具体的には、導電性フィラーの数平均粒子径、銅箔の表面の展開面積比Sdr、銅箔の表面のスキューネスSsk、及び銅箔の接触抵抗を所定の範囲内に制御すれば、単に平滑で接触抵抗の低い銅箔を使用するよりも、EMI対策フィルムの配線抵抗を大幅に低減できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の一態様に係る複合フィルムは、銅箔と、導電性フィラーを含有する導電性粘着剤又は導電性フィラーを含有する導電性接着剤からなり且つ銅箔が有する2つの表面のうち少なくとも一方の表面に積層された導電層と、を有する複合フィルムである。そして、本発明の一態様に係る複合フィルムは、導電性フィラーの数平均粒子径が0.12μm以上7μm以下であり、銅箔が有する2つの表面のうち導電層が積層された表面の展開面積比Sdrが0.01%以上40%以下、スキューネスSskが-1.0以上1.0以下、接触抵抗が2mΩ以上30mΩ以下であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る複合フィルムは、接続電気抵抗が低い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複合フィルムを説明する断面図である。
【
図2】
図1の複合フィルムの変形例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の一例を示したものである。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0016】
本実施形態に係る複合フィルム1は、
図1に示すように、電磁波遮蔽層をなす銅箔10と、導電性フィラーを含有する導電性粘着剤又は導電性フィラーを含有する導電性接着剤からなり且つ銅箔10が有する2つの表面のうち少なくとも一方の表面10aに積層された導電層20と、を有する。
図1の複合フィルム1は、銅箔10が有する2つの表面のうち一方の表面10aのみに導電層20が積層された例である。
【0017】
導電層20に含有される導電性フィラーの数平均粒子径は、0.12μm以上7μm以下である。また、銅箔10が有する2つの表面のうち導電層20が積層された表面10aの展開面積比Sdrは、0.01%以上40%以下であり、同じく表面10aのスキューネスSskは、-1.0以上1.0以下である。さらに、銅箔10が有する2つの表面のうち導電層20が積層された表面10aの接触抵抗は、2mΩ以上30mΩ以下である。
【0018】
このような構成から、本実施形態に係る複合フィルム1は、接続電気抵抗(配線抵抗)が低い。よって、本実施形態に係る複合フィルム1は、シールド性が高く電磁干渉を抑制する性能(EMI耐性)が優れているので、EMI対策フィルムとして好適に用いることができる。
【0019】
したがって、本実施形態に係る複合フィルム1は、各種電子機器に対してEMI対策フィルムとして用いることができ、優れたEMI耐性を示す。本実施形態に係る複合フィルム1は、スマートフォン、医療機器、自動車等の電子機器に対して好適に使用することができ、特にスマートフォン等のモバイル型の電子機器に対して好適に使用可能である。
【0020】
なお、本実施形態に係る複合フィルム1は、離型フィルム30、絶縁層40、及びキャリアフィルム50のうち少なくとも1つをさらに備えていてもよい。すなわち、本実施形態に係る複合フィルム1の変形例は、
図2に示すように、導電層20の上に離型フィルム30がさらに積層された構造を有していてもよい。また、本実施形態に係る複合フィルム1の変形例は、
図2に示すように、銅箔10が有する2つの表面のうち導電層20が積層された表面10aとは反対側の表面10bに、銅箔10を電気的に保護する絶縁層40がさらに積層された構造を有していてもよい。さらに、本実施形態に係る複合フィルム1の変形例は、
図2に示すように、支持体であるキャリアフィルム50が絶縁層40の上にさらに積層された構造を有していてもよい。
【0021】
図2には、離型フィルム30、絶縁層40、キャリアフィルム50を全て備える複合フィルム1の例を示したが、本実施形態に係る複合フィルム1の変形例は、これに限定されるものではない。ただし、銅箔10が有する2つの表面10a、10bの両方に導電層20が積層されている場合には、複合フィルム1は絶縁層40とキャリアフィルム50を備えることはない。
【0022】
以下に、本実施形態に係る複合フィルム1について、さらに詳細に説明する。
(1)銅箔について
本実施形態に係る複合フィルム1の銅箔10として、電解銅箔、圧延銅箔のいずれも用いることができるし、蒸着、スパッタリング等の既知の方法にて形成された銅箔も用いることができる。また、エッチング、電解研磨等の既知の方法にて表面形状及び厚さを調整した銅箔を、本実施形態に係る複合フィルム1の銅箔10として用いてもよい。
【0023】
エッチングに使用するエッチング液の一例としては、メック株式会社製のCZ-8100、CB-5602AYが挙げられる。エッチング液の温度、エッチング時間、エッチング液の撹拌条件等のエッチングの条件は、適宜調整することができる。
粗化めっきを施した銅箔も使用できるが、表面の展開面積比Sdrが過剰に大きくなりやすいので、粗化めっき時の電流密度や電解時間を小さくするなどの対処がなされることが好ましい。めっき法を用いる場合は、導電率や接触抵抗の観点から、銅(Cu)によるめっきが好ましい。
【0024】
本実施形態に係る複合フィルム1の銅箔10の厚さは、2μm以上40μm以下であることが好ましい。
また、保管時の変色を防ぐ目的や、複合フィルムの製造時及び使用時の熱履歴での変色を防ぐ目的で、表面形状及び厚さを調整した後に防錆処理を施した銅箔を、本実施形態に係る複合フィルム1の銅箔10として用いてもよい。防錆処理の例としては、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ケイ素(Si)、及びタングステン(W)のうちの少なくとも1種の金属を含有するめっき処理や、ベンゾトリアゾール等の有機化合物を用いた有機処理が挙げられる。
【0025】
本実施形態に係る複合フィルム1の銅箔10が有する2つの表面10a、10bのうち導電層20が積層された表面10aの展開面積比Sdrは、0.01%以上40%以下である必要があるが、複合フィルム1の接続電気抵抗をより低くするためには、0.01%以上10%以下であることが好ましく、0.05%以上10%以下であることがより好ましい。
【0026】
また、銅箔10が有する2つの表面10a、10bのうち導電層20が積層された表面10aのスキューネスSskは、-1.0以上1.0以下である必要があるが、複合フィルム1の接続電気抵抗をより低くするためには、-0.7以上1.0以下であることが好ましく、-0.5以上0.8以下であることがより好ましい。
【0027】
さらに、銅箔10が有する2つの表面10a、10bのうち導電層20が積層された表面10aの接触抵抗は、2mΩ以上30mΩ以下である必要があるが、複合フィルム1の接続電気抵抗をより低くするためには、2mΩ以上25mΩ以下であることが好ましく、2mΩ以上20mΩ以下であることがより好ましい。
さらに、銅箔10が有する2つの表面10a、10bのうち導電層20が積層された表面10aのクルトシスSkuは、複合フィルム1の接続電気抵抗をより低くするためには、3.0以上3.6以下であることが好ましい。
【0028】
(2)導電層について
本実施形態に係る複合フィルム1の導電層20は、導電性フィラーを含有する導電性粘着剤又は導電性フィラーを含有する導電性接着剤からなる。導電性粘着剤及び導電性接着剤は、導電層20に導電性を付与する導電性フィラーと樹脂を含有する。
【0029】
導電性粘着剤は、常温での粘着性を有してもよい。導電性接着剤に含有される樹脂は、熱硬化性樹脂でもよいし、熱可塑性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂を含有する導電性接着剤は、複合フィルム1において、未硬化、Bステージ、硬化済みのいずれの状態であってもよい。
【0030】
導電性粘着剤、導電性接着剤に含有される樹脂の例としては、エポキシ系、フェノール系、アミノ系、アルキッド系、ウレタン系、合成ゴム系、アクリレート系、アクリル系、シリコーン系、イミド系、イソシアネート系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、スチレン系、ハイドロカーボン系の樹脂及び粘着剤が挙げられる。これらの樹脂の中では、耐熱性に優れる点からエポキシ樹脂が好ましい。
【0031】
導電性フィラーの例としては、金属の粒子や、炭素の粒子が挙げられる。金属の種類は、例えば、銀(Ag)、白金(Pt)、金、銅、ニッケル、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ハンダ、又はこれらの合金が挙げられる。炭素の粒子の例としては、黒鉛粒子、焼成カーボン粒子、めっきされた焼成カーボン粒子が挙げられる。これらの粒子の中では、導電層20を作製する際の成形性、工業生産性の観点から、銅粒子、黒鉛粒子が好ましい。
【0032】
導電性フィラーの数平均粒子径は0.12μm以上7μm以下である必要がある。導電性フィラーの数平均粒子径が0.12μm以上であれば、導電性フィラーと銅箔10との接触点数と導電性フィラーの表面積を増やすことができるので、導電層20の導電性が優れたものとなる。一方、導電性フィラーの数平均粒子径が7μm以下であれば、プリント配線板や金属筐体のグランド(GND)開口部の形状や段差に対して、導電性粘着剤、導電性接着剤が流動して導電層20が追従しやすくなるので、目的箇所を導電層20で十分に充填できる。
【0033】
さらに、銅箔10の表面に直交する平面で導電層20を切断した場合に現れる導電層20の断面において、導電層20の断面の面積に対する導電性フィラーの断面の面積の割合(以下、「導電性フィラーの断面面積率」と記すこともある)は、30%以上85%以下であることが好ましく、45%以上80%以下であることがより好ましい。
【0034】
導電性フィラーの断面面積率が30%以上であれば、導電性フィラーと銅箔10との接触点数と導電性フィラーの表面積を増やすことができるので、導電層20の導電性が優れたものとなる。一方、導電性フィラーの断面面積率が85%以下であれば、複合フィルム1の可撓性が優れたものとなる。
【0035】
導電層20の厚さは、5μm以上50μm以下であることが好ましい。導電層20の厚さが5μm以上であれば、プリント配線板や電子機器の金属筐体のグランド(GND)開口部の形状や段差に対して、導電層20が追従しやすくなるので、目的箇所を導電層20で十分に充填できる。一方、導電層20の厚さが50μm以下であれば、複合フィルム1の可撓性が優れたものとなるので、より薄いスペースへの複合フィルム1の実装が可能になる。
【0036】
なお、導電層20は、等方導電性を有していてもよいし、異方導電性を有していてもよい。
また、導電性フィラーは粒子状であってもよいが、針状、繊維状であってもよい。導電性フィラーが針状又は繊維状である場合は、導電性フィラーの数平均粒子径は、針状又は繊維状の導電性フィラーの直径に基づいて算出される数平均直径である。
【0037】
さらに、導電層20に可撓性を付与するために、ゴム成分(カルボキシ変性ニトリルゴム、アクリルゴム等)、粘着付与剤、硬化剤(イソシアネート化合物等)等の添加剤を導電性粘着剤、導電性接着剤に添加してもよい。また、導電層20の難燃性、成形性、機械的特性を高めるために、それらの性能を高める添加剤を導電性粘着剤、導電性接着剤に添加してもよい。
【0038】
(3)離型フィルムについて
離型フィルム30は、基材の表面を離型剤で処理したものであり、導電層20を保護するためのものである。すなわち、導電層20が有する2つの表面のうち銅箔10に対向する表面とは反対側の表面を離型フィルム30で覆うことにより、導電層20が有する粘着性、接着性の低下を防いでいる。なお、離型フィルム30の離型剤で処理された表面が導電層20に対向するように、導電層20上に離型フィルム30が積層される。
【0039】
離型フィルム30の基材の材質としては、例えば樹脂、紙が挙げられる。樹脂の種類としては、例えば、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム、液晶ポリマー等が挙げられる。また、基材として紙を用いた離型フィルム30の例としては、剥離紙が挙げられる。
【0040】
(4)絶縁層について
絶縁層40は、電子機器等に複合フィルム1を実装した際に銅箔10を保護するためのものである。すなわち、銅箔10を絶縁層40で覆うことにより、銅箔10に対する電気的接触を防いでいる。
【0041】
絶縁層40は、例えば、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含有する塗料を、銅箔10が有する2つの表面のうち導電層20が積層された表面10aとは反対側の表面10bに塗布し、半硬化又は硬化させることによって形成することができる。また、絶縁層40は、例えば、熱可塑性樹脂を含有する塗料を、銅箔10が有する2つの表面のうち導電層20が積層された表面10aとは反対側の表面10bに塗布することによっても形成することができる。さらに、絶縁層40は、例えば、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を、銅箔10が有する2つの表面のうち導電層20が積層された表面10aとは反対側の表面10b上に、フィルム状に溶融成形することによっても形成することができる。
電子機器等に複合フィルム1をハンダ付け等によって実装する場合があるので、絶縁層40は耐熱性を有することが好ましいが、この点からは、絶縁層40は、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含有する塗料を用いて形成することが好ましい。
【0042】
絶縁層40の形成に用いる熱硬化性樹脂の例としては、アミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、合成ゴム、紫外線硬化アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂の中では、耐熱性に優れる点から、アミド樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0043】
絶縁層40の形成に用いる熱可塑性樹脂の例としては、芳香族ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンサルフィドサルホン、ポリフェニレンサルフィドケトン等が挙げられる。
絶縁層40には、耐候性、隠蔽性、難燃性、意匠性等の付与や着色を目的として、公知のフィラーを配合してもよい。
【0044】
(5)キャリアフィルムについて
キャリアフィルム50は、複合フィルム1を補強し保護する支持体である。また、キャリアフィルム50は、絶縁層40が有する2つの表面のうち銅箔10に対向する表面とは反対側の表面上に積層される。キャリアフィルム50の構造の例としては、基材と接着層の積層構造が挙げられる。キャリアフィルム50の基材としては、離型フィルム30の基材として例示したものと同様のものが使用できる。接着層を形成する材料としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
【0045】
〔実施例〕
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
(A)銅箔
実施例1~16及び比較例1~5の複合フィルムを製造するための原料である銅箔として、表1に示す表面粗度(表面の展開面積比Sdr、スキューネスSsk、クルトシスSku)を有する厚さ6μmの銅箔を用意した。これらの銅箔は、市販の電解銅箔、又は、該市販の電解銅箔をエッチング処理して表面粗度を調整した銅箔である。エッチング処理のエッチング液にはメック株式会社製のCB-5601AYを用い、エッチング液の温度、エッチング時間、エッチング液の撹拌条件等の調整によって表面粗度を調整した。
【0046】
銅箔の表面粗度は、株式会社キーエンス製の共焦点レーザー顕微鏡VK-X1050及びVK-X1000を用いて測定した。表1に示した数値は、表面の展開面積比Sdr、スキューネスSsk、クルトシスSkuいずれについても、任意の3点の測定値の平均値である。
なお、共焦点レーザー顕微鏡の対物レンズ倍率は100倍、スキャンモードはレーザーコンフォーカル、測定サイズは2048×1536、測定品質はHigh Precision、ピッチは0.08μmである。
【0047】
また、表面の展開面積比Sdr、スキューネスSsk、クルトシスSkuは、付属の解析ソフトウェアを用いて、測定データに対して下記に示す基準面補正、平滑化画像処理、及びフィルター処理を行った後に、100μm×100μmの任意の視野で演算を行うことによって算出した。
基準面補正:全面
平滑化:3×3、ガウシアン
フィルター処理:Lフィルター0.025mm
【0048】
さらに、これらの銅箔が有する2つの表面のうち導電層を積層する表面について、導電層を積層する前に、「日本伸銅協会技術標準JCBA T323:2011の表面接触電気抵抗の測定方法」で定められている方法によって、接触抵抗を測定した。接触抵抗の測定には、株式会社山崎精機研究所製の電気接点シミュレーターCRS-113-AUを用い、プローブとしては直径1mmのAuプローブを用いた。測定条件は、接触荷重0.1N、交流周波数287Hz、測定電流1mAである。結果を表1に示す。なお、表1に示した数値は、任意の10点の測定値の平均値である。
【0049】
【0050】
(B)導電層
銅箔が有する2つの表面のうち一方の表面に導電層を積層して、実施例1~16及び比較例1~5の複合フィルムを作製した。この導電層は、アクリル系樹脂と導電性フィラーを含有する導電性粘着剤を銅箔上に膜状に塗工した後に、80℃で3分間加熱して溶剤を揮発させることによって形成した。
【0051】
アクリル系樹脂は、DIC株式会社製のアクリル系粘着剤ファインタックCT-5030であり、導電性フィラーは銅粉である。銅粉の数平均粒子径は、表1に示すとおりである。
導電層における導電性フィラーの断面面積率が表1に記載の数値となるように、導電性粘着剤中の導電性フィラーの含有量を調整した。また、複合フィルムの導電層の厚さが30μmとなるように、銅箔上に塗工した膜状の導電性粘着剤の厚さを調整した。
【0052】
(C)複合フィルム
作製した実施例1~16及び比較例1~5の複合フィルムについて、導電性フィラーの数平均粒子径と断面面積率を算出した。結果を表1に示す。
導電性フィラーの断面面積率の算出方法について、以下に説明する。まず、導電層の断面のうち任意の正方形状の領域を走査電子顕微鏡で観察し、上記の正方形状の領域の画像データを得た。導電層の断面は、銅箔の表面に直交する平面(すなわち、導電層の厚さ方向に対して平行な平面)で導電層を切断した場合に現れる導電層の断面である。また、観察する正方形状の領域の一辺は25μmとした。
【0053】
次に、その画像データを画像編集ソフトによって処理して、導電性フィラーの粒子の部分とそれ以外の部分とに分けた2値化画像を作製した。そして、得られた2値化画像から、導電層の断面の面積(すなわち、上記の正方形状の領域の面積)と導電性フィラーの断面の面積とを求め、導電性フィラーの断面の面積を上記の正方形状の領域の面積で除することによって導電性フィラーの断面面積率を算出した。以上の手順を任意の3か所に対して行い、それら断面面積率の平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0054】
導電性フィラーの数平均粒子径の算出方法について、以下に説明する。上記の正方形状の領域内に存在する導電性フィラーの粒子について、その最小径及び最大径を測定し、最小径と最大径の平均値をその粒子の粒子径とした。そして、上記の正方形状の領域内に存在する全ての導電性フィラーの粒子について粒子径を測定し、その算術平均値を導電性フィラーの数平均粒子径とした。結果を表1に示す。
【0055】
実施例1~16及び比較例1~5の複合フィルムについて、配線抵抗の測定を行った。配線抵抗の測定方法について、以下に説明する。銅からなるサンプル貼付用電極が2個並んで露出しているプリント配線板を用意した。これらのサンプル貼付用電極は、一辺4mmの正方形状であり、2個のサンプル貼付用電極の中心間距離は12mmとした。
【0056】
2個のサンプル貼付用電極のそれぞれの近傍に、抵抗測定用電極を露出させた。詳述すると、サンプル貼付用電極の近傍部分のうち、隣接するサンプル貼付用電極が有る側とは異なる側に、抵抗測定用電極を形成した。サンプル貼付用電極とその近傍に形成されている抵抗測定用電極とは、プリント配線板の内層回路を通して電気的に接続されていて一対をなしているが、2個のサンプル貼付用電極同士は電気的に接続されていない。なお、2個のサンプル貼付用電極と2個の抵抗測定用電極とには、いずれもプリント配線板用途で一般的な無電解ニッケルめっきと金めっきが施されており、電極表面の酸化等の影響を最小化してある。
【0057】
まず、二対のサンプル貼付用電極と抵抗測定用電極について、サンプル貼付用電極に複合フィルムを貼り付けていない状態で、サンプル貼付用電極と抵抗測定用電極との間の電気抵抗をそれぞれ4端子法によって測定した。そして、得られた2つの電気抵抗の和を、測定基板抵抗として記録した。
【0058】
次に、2個のサンプル貼付用電極間に跨がるように実施例又は比較例の複合フィルムを貼り付け、株式会社イマダ製の剥離試験用圧着ローラーAPR-97を用いて圧着させた後に、30分間静置した。そして、2個の抵抗測定用電極の間の電気抵抗を4端子法によって測定し、この測定値から測定基板抵抗を差し引いた値を、該複合フィルムの配線抵抗とした。配線抵抗の測定は5回行い、その平均値を、実施例1~16及び比較例1~5の複合フィルムのそれぞれの配線抵抗とした。上記の電気抵抗の測定は、いずれも温度25℃、湿度40~50%RHの環境下で行った。
【0059】
配線抵抗の測定結果を表1に示す。なお、表1に示した配線抵抗の測定結果は、下記の評価基準に基づいて評価した結果を示してある。
AA(合格):配線抵抗が10mΩ未満
A(合格):配線抵抗が10mΩ以上30mΩ未満
B(合格):配線抵抗が30mΩ以上100mΩ未満
C(不合格):配線抵抗が100mΩ以上500mΩ未満
D(不合格):配線抵抗が500mΩ以上
【0060】
表1から分かるように、実施例1~16の複合フィルムは、比較例1~5の複合フィルムに比べて、配線抵抗が低かった。よって、実施例1~16の複合フィルムは、比較例1~5の複合フィルムに比べて、電磁干渉を抑制する性能(EMI耐性)が優れていると言える。したがって、実施例1~16の複合フィルムは、EMI対策フィルムとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1・・・複合フィルム
10・・・銅箔
10a・・・導電層が積層された表面
10b・・・導電層が積層された表面とは反対側の表面
20・・・導電層
30・・・離型フィルム
40・・・絶縁層
50・・・キャリアフィルム