(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015981
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】トナー、トナー収容ユニット、画像形成方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20230125BHJP
G03G 9/093 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
G03G9/097 372
G03G9/093
G03G9/097 375
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057796
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2021119232
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田中 昌
(72)【発明者】
【氏名】竹林 冬馬
(72)【発明者】
【氏名】込戸 健司
(72)【発明者】
【氏名】茂木 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 博
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA09
2H500AA10
2H500BA16
2H500CA03
2H500CB12
2H500EA57A
2H500EA58A
2H500EA60A
(57)【要約】
【課題】低温定着性及びクリーニング性を両立させることができるトナーの提供。
【解決手段】結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子と、外添剤と、を含み、形状指数SF2の平均値が112以上124以下であり、表面の算術平均高さSaが1μm以下における凹凸形状指数Sdrが18%以上34%以下であるトナーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子と、外添剤と、を含み、
形状指数SF2の平均値が112以上124以下であり、
表面の算術平均高さSaが1μm以下における凹凸形状指数Sdrが18%以上34%以下である、ことを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記トナー母体粒子の表面に有機微粒子を有し、
前記有機微粒子が2種以上の樹脂を含有し、
前記トナー母体粒子がコアシェル構造を有する、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記有機微粒子がスチレン-アクリル樹脂を含有する、請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記外添剤がシリカである、請求項1から3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のトナーを収容することを特徴とするトナー収容ユニット。
【請求項6】
静電潜像担持体と、
該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を請求項1から4のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
記録媒体に転写された転写像を定着部材により定着させる定着手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を請求項1から4のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、
記録媒体に転写された転写像を定着部材により定着させる定着工程と、を含むことを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、トナー収容ユニット、画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置では、像担持体について、転写紙や中間転写体へトナー像を転写した後の表面に付着した不必要な転写残トナーなどの付着物はクリーニング手段によって除去していることが知られている。
【0003】
前記クリーニング手段のクリーニング部材としては、短冊形状のクリーニングブレードを用いたものが良く知られており、装置構成を簡単にでき、クリーニング性能にも優れている。具体的には、前記クリーニングブレードの基端を支持部材で支持して当接部(先端稜線部)を像担持体の周面に押し当て、像担持体上に残留するトナーを堰き止めて掻き落とし除去する。
しかしながら、近年の高画質化の要求に対して、ケミカル工法等により製造された小粒径且つ球形に近いトナーを用いた画像形成装置のニーズが増えており、従来の混練粉砕法トナーに比べてクリーニングブレードによるトナーの除去が困難になってきた。これは、小粒径且つ球形度が高いトナーが、クリーニングブレードと像担持体との間に形成される僅かな隙間を擦り抜けるためである。このようなトナーの擦り抜けを抑えるには、像担持体とクリーニングブレードとの当接圧力を高める方法があるが、当接圧力を高めるとブレードにめくれが生じてしまう。また、めくれた状態で使用すると、局所的な摩耗が生じてしまい、結果的にクリーニングブレードの寿命を縮め、クリーニング不良が発生しやすくなる。
【0004】
このような問題を解決するため、トナーの表面粗さをある一定範囲に制御することで、トナーの外添被覆率をシステム内において一定に保ち、画像品質を担保できることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、乾式製法シリカよりも大粒径まで制御可能な湿式製法シリカを使用することで、スペーサー効果をもたせてトナー同士、トナー、クリーニングブレード間の接触を防ぎ、クリーニング性を向上させることが提案されている。例えば、結晶性樹脂と、シリコーンオイル処理された平均一次粒径が50nm以上150nm以下であるシリカを含有することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、トナーの表面には、流動性や帯電性を付与するため、シリカや酸化チタンなどの無機微粒子からなる添加剤が添加されている。クリーニングブレードによって像担持体上で堰き止められたトナーから、遊離した添加剤がクリーニングブレードと像担持体の当接部に供給され、添加剤による溜まり層が形成されることが知られており、クリーニングブレードと像担持体の間の潤滑剤として働く。
【0007】
上記にようにシリカや酸化チタンのような無機微粒子を添加することでクリーニング性を向上させることは可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低温定着性及びクリーニング性を両立させることができるトナーを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としての本発明のトナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子と、外添剤と、を含み、
形状指数SF2の平均値が112以上124以下であり、
表面の算術平均高さSaが1μm以下における凹凸形状指数Sdrが18%以上34%以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、低温定着性及びクリーニング性を両立させることができるトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、画像形成装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明のタンデム型の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図4】
図4は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(トナー)
本発明のトナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子と、外添剤と、を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
本発明のトナーは、形状指数SF2の平均値が112以上124以下であり、表面の算術平均高さSaが1μm以下における凹凸形状指数Sdrが18%以上34%以下である。
【0013】
従来の技術では、トナーの表面粗さが大きい場合、システム内においてトナーが劣化した際に、外添剤の被覆率が低下し、転写効率やクリーニング不良などのシステム課題を誘発することがあるという問題があった。
また、従来の技術では、シリカや酸化チタンのような無機微粒子を添加することでクリーニング性を向上させる一方で、これらの無機微粒子の処方量が増えることで、低温定着性が阻害されるといった副作用が発生することがあるという問題があった。
【0014】
本発明では、トナーの形状を一定の範囲内で制御し、かつトナー表面の算術平均高さSaが1μm以下における凹凸形状を制御することで、クリーニングブレード部でのトナーの転がり性を向上できることを見出した。また、トナー表面の外添剤を有効的に機能させることで、トナー表面凹部への外添剤の埋没を抑制し、効率的にスペーサー効果を発揮させることができ、クリーニング性を向上させることができることを見出した。さらに、添加剤によるトナーの定着阻害を防ぎ、長期に渡って良好なクリーニング性と、低温定着性とを維持し、異常画像を抑制することができることを見出した。
【0015】
本発明における、トナー粒子のSF2はトナー形状を表している。SF2はクリーニングブレード部でのトナーの転がり性に寄与している。SF2を最適な範囲にすることで、クリーニングブレード部でのトナーの転がり性を制御し、クリーニング性を向上させることができる。
前記SF2が低すぎる場合は、トナーの転がり性が高くなりすぎしまい、クリーニングブレード部でトナーのすり抜けが発生し、LL環境でのクリーニング性が悪化してしまう。
また、前記SF2が高すぎる場合は、感光体への接点が増えて感光体への付着力が高くなるため、HM環境におけるクリーニング性が悪化してしまう。
【0016】
前記トナーの形状指数SF2は、以下の手順で算出することができる。
まず、下記の外添剤の遊離方法によってトナーにおける外添剤を極力除去し、トナー母体粒子のみに近い状態にする。
-外添剤の遊離方法-
[1] 100mlのスクリュー管に、界面活性剤を含有した5%水溶液(商品名ノイゲンET-165、第一工業製薬株式会社製)を50ml添加し、その混合液にトナー3gを加えて静かに上下左右に動かす。その後、トナーが分散溶液になじむようにボールミルで30min撹拌する。
[2] その後、超音波ホモジナイザー(商品名homogenizer、形式VCX750、CV33、SONICS&MATERIALS有限会社製)を用いて、出力40Wに設定し、60分間超音波エネルギーを付与する。
--超音波処理条件--
振動時間:60分連続
振幅:40W
振動開始温度:23±1.5℃。
振動中温度:23±1.5℃
[3] 分散液をろ紙(商品名定性ろ紙(No.2、110mm)、アドバンテック東洋株式会社製)で吸引ろ過し、再度イオン交換水で2回洗浄しろ過し、遊離した添加剤を除去後、トナー粒子を乾燥させる。
次に、得られたトナー粒子を下記条件により走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られた画像からSF2を算出する。
--撮影条件--
走査型電子顕微鏡:SU-8230
撮影倍率:5000倍
撮影像:SE(L):二次電子、BSE(反射電子)、
加速電圧:2.0kV
加速電流:1.0μA
プローブ電流:Normal
焦点モード:UHR
WD:8.0mm
-SF2の算出-
走査型電子顕微鏡(FE-SEM)により得られる画像より直接粒径、粒径分布、形状、形状分布を求める。
FE-SEMを用いる場合は、白金蒸着等により、本来の形状を損なう場合があるため、蒸着する場合でも蒸着膜厚を1nm程度まで薄くしたり、加速電圧を低下させても高分解能である超高分解能FE-SEM(例えば、Zeiss社製、Ultra55)等を用い、低加速電圧(数eV~10keV)により未蒸着で測定する。少なくとも100個以上の酸化微粒子を観察し、Image-Pro Plus等の画像処理ソフトウエア等により統計的に粒径分布と、円形度SF1、SF2を算出する。特に、Media Cybernetics社製のImage-Pro Plus4.5.1を用いて解析し、下式より算出し得られた値をSF1、SF2と定義する。
SF1、SF2の値は上記ソフトウエアにより求めた値が好ましいが、同様の解析結果が得られるのであれば特に上記FE-SEM装置、画像解析装置、ソフトウエアに限定されない。
SF1=(L2/A)×(π/4)×100
SF2=(P2/A)×(1/4π)×100
ここで、
トナーの絶対最大長をL
トナーの投影面積をA
トナーの最大周長をPとする。
真球であれば、いずれも100となり、100より値が大きくなるにつれて球形から不定形になる。
また、特にSF1はトナー全体の形状(楕円や球等)を表し、SF2は表面の凹凸程度を示す形状係数となる。
【0017】
また、トナー表面の凹凸形状を表すSdrは、トナー粒子表面の平滑性を表している。本発明のトナーは、トナー粒子表面粗さを制御することでクリーニング性と低温定着性を両立させることができる。通常、平均面粗さが大きい場合、外添剤の被覆率が低下し、スペーサー効果が減少するため、トナー間、トナー、ブレード間の接触が増え、クリーニング性が低下する。
トナーの平均面粗さ(Sdr)を小さくすることで、外添剤の被覆率が向上し、スペーサー効果を十分に発揮することで、クリーニング性を向上させることができる。逆に、表面粗さが小さすぎる場合、外添剤の被覆率が高くなりすぎてしまい、外添剤が定着阻害することで低温定着性を悪化させてしまう。
【0018】
前記Sdrは、以下の手順で算出することができる。
「トナーの形状指数SF2」における外添剤を極力除去したトナー粒子を用いて、下記の手順で、トナー表面の算術平均高さSaが1μm以下における凹凸形状指数Sdr(%)を算出する。
-トナー粒子固定-
[1] 1cm角Siウェハーをアセトンにて10分間超音波洗浄
[2] SPM試料台に両面テープで[1]を貼り付ける
[3] 2液硬化型エポキシ接着剤(デブコン デブチューブ30分硬化型)をSiウェハー上に適量塗布。
[4] Siウェハー上のエポキシ接着剤をすり切り、薄く平らに伸ばす。
[5] エポキシ接着剤を1.25時間放置した後、トナー粒子を散布する。
[6] トナー粒子を散布した後、ブロアーで未固定のトナー粒子を飛ばす。
[7] 24時間硬化させる。
-測定-
[8] カンチレバー校正用の1cm角Siウェハーを、蒸留水で10分間、アセトンで10分間超音波洗浄。
[9] 試料台に[8]を両面テープで固定する。
[10] 母体サンプルと[9]をSPMステージに固定。
[11] カンチレバーセット。
[12] レーザーアライメント。
[13] [9]にて、カンチレバーの反り感度校正。
[14] カンチレバーのバネ定数校正(ThermalTune)
[15] 広範囲スキャンにて、トナー1粒子の位置を把握。
[16] Zoom機能にて、1粒子がちょうど収まる程度に測定範囲を調節する。
[17] 下記測定条件にて測定を行う。5μm×5μmの範囲だと測定時間は9分程度である。
--測定条件--
・Scanパラメーター
ScanSize:任意
ScanRate:0.5Hz
Resolution:256
・Feedbackパラメーター
PeakForceSetpoint:10nN
ScanAsyst:AutoGainのみOn
・PeakForce TappingControlパラメーター
PeakForce Amplitude:200nm
PeakForce Frequency:2kHz
トナー表面の算術平均高さSaが1μm以下における凹凸形状指数Sdr(%、面粗さパラメーター)は、原子間力顕微鏡の表面測定により得られた3次元データを、解析ソフトNanoScope Analysis(Bruker)を用いて解析することで求める。
具体的には、まず、1次方程式を用いたPlaneFit機能にて3次元データの傾きを補正する。次に、2次方程式を用いたPlaneFit機能にて、トナーの粒子形状の情報を除去する。それから、Roughness機能を用いて面粗さパラメーターSdrを算出する。なお、面粗さパラメーターSdrを算出する領域は、トナー粒子以外の領域を含まないように適宜解析領域を調整する。
また、前記凹凸形状指数Sdr(%、面粗さパラメーター)は、ISO25178に準拠して測定できる面粗さパラメーターであり、「界面の展開面積比」と称される場合がある。
前記界面の展開面積比Sdrは、下記式で表され、定義領域の展開面積(表面積)が、定義領域の面積に対してどれだけ増大しているかを表しており、完全に平坦な面のSdrは0となる。
Sdr=(定義された領域における表面積の面積に対する増加分)/(定義された領域の面積)・・・数式
本発明における前記Sdrは、面粗さパラメーターを算出する領域の面積に対して、トナー表面の凹凸によってどれくらい表面積が増加しているのかを示すパラメーターである。
なお、定義領域の面積とは、面粗さパラメーターを算出するために指定した領域(平面)の面積を意味する。
具体的には、前記凹凸形状指数Sdr(%、面粗さパラメーター)は、SPM(Scanning Probe Microscope)法などにより測定することができる。
【0019】
前記SPM(Scanning Probe Microscope)法は、先端の直径が10nm位の探針を走査して、探針と試料表面の原子との間に働く原子間力を感知し、試料表面形状等を測定する方法である。非常に分解能が高く、探針の走査方向(X方向)に対するZ方向の凹凸形状の測定ができる。例えば、トナー粒子表面をSPMの探針で走査し、トナー粒子表面の形状測定を行うことができる。
前記SPMにてトナー表面を計測する際には、あるトナー粒子の頂上付近を、表面に沿って1μm四方程度の領域のTIPを走査する。このときの垂直変位をZ軸方向の情報とする。この計測は、測定個所や試料のトナー粒子を変えて3~10回行い、粒子全体の様子を把握する。まずは、SPMによる観察像で表面状態を評価し、添加剤の付着表面を確認した上で、定量的な凹凸分析を実施することが実用的である。また、本発明で規定する凹凸(振幅)は、SPM計測で得られたプロファイルの小さな周期の凹凸及び大きな周期の凹凸の、Z方向における凹部と凸部の差を求めるものとする。
SPM測定装置条件は以下の通りである。
・測定装置;
原子間力顕微鏡システムBruker AXS製 Dimension Icon
測定モード;
PeakForceQNM
OMCL-AC240TS
材質Si
共振周波数70[Hz]
バネ定数2[N/m]カンチレバー
平均面における表面の増加割合としてのSdr[%]は、表面積A1とその表面をXY平面に投影したときの面積A0としたとき、下記式によって算出する。なお、前記SPMによるトナー粒子表面の形状測定により得られた3次元データを、解析ソフトNanoScope Analysis(Bruker)を用いて求めるときにおける、面粗さパラメーターを算出するために指定した領域の面積をA0、指定した領域における粒子形状除去後のトナーの表面積をA1とする。面粗さパラメーターを算出する領域は、トナー粒子以外の領域を含まないように指定する。
【数1】
【0020】
<トナー母体粒子>
前記トナー母体粒子(以下、「トナー母体」、「母体粒子」とも称することがある)は、結着樹脂、着色剤、及びワックスを含有し、更に必要に応じてその他成分を含有する。また、前記トナー母体粒子がコアシェル構造を有している。
【0021】
<<結着樹脂>>
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、ポリオール樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トナーに可撓性を与えることができる点から、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0022】
<<<ポリエステル樹脂>>>
前記ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非晶性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
-非晶性ポリエステル樹脂-
前記非晶性ポリエステル樹脂(以下、「非晶性ポリエステル」、「非晶質ポリエステル」、「非晶質ポリエステル樹脂」、「未変性ポリエステル樹脂」、「ポリエステル樹脂成分A」、とも称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られる非晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
なお、本発明において非晶性ポリエステル樹脂とは、上記のごとく、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、後述するプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる変性ポリエステル樹脂は、本発明においては前記非晶性ポリエステル樹脂には含めず、変性ポリエステル樹脂として扱う。
前記非晶質ポリエステルは、テトラヒドロフラン(THF)に可溶なポリエステル樹脂成分である。
前記非晶質ポリエステル(ポリエステル樹脂成分A)としては、非線状のポリエステル樹脂が好ましい。
【0024】
前記ポリオールとしては、例えば、ジオールなどが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記ポリオールとしては、アルキレングリコールを40モル%以上含有することが好ましい。
【0025】
前記ポリカルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1~20のアルキル基;炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸などが挙げられる。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記ポリカルボン酸としては、テレフタル酸を50モル%以上含有することが好ましい。
【0026】
前記非晶質ポリエステル樹脂と、後述するプレポリマー並びにこのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂とは、少なくとも一部が相溶していることが好ましい。これらが相溶していることにより、低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させることができる。このため、非晶質ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分と、後述するプレポリマーを構成する多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分とは、類似の組成であることが好ましい。
【0027】
前記ポリエステル樹脂成分Aは、酸価、水酸基価を調整するため、その樹脂鎖の末端に3価以上のカルボン酸及び/又は3価以上のアルコール、3価以上のエポキシ化合物等を含んでもよい。
これらの中でも、ムラが発生しにくく、十分な光沢や画像濃度が得られるという観点から、3価以上の脂肪族アルコールを含有することが好ましい。
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はそれらの酸無水物などが挙げられる。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0028】
前記ポリエステル樹脂成分Aの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下の範囲であることが好ましい。
前記ポリエステル樹脂成分Aの重量平均分子量(Mw)としては、2,500~10,000が好ましく、4,000~7,000がより好ましい。
前記ポリエステル樹脂成分Aの数平均分子量(Mn)としては、1,000~4,000が好ましく、1,500~3,000がより好ましい。
前記ポリエステル樹脂成分Aの分子量の比(Mw/Mn)としては、1.0~4.0が好ましく、1.0~3.5がより好ましい。
前記分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定できる。
前記分子量が上記の範囲が好ましい理由としては、分子量が低すぎると、トナーの耐熱保存性、現像機内での撹拌等のストレスに対する耐久性に劣る場合があり、分子量が高すぎると、トナーの溶融時の粘弾性が高くなり低温定着性に劣る場合がある。また分子量600以下の成分が多すぎると、トナーの耐熱保存性、現像機内での撹拌等のストレスに対する耐久性に劣る場合があり、分子量600以下の成分が少なすぎると、低温定着性に劣る場合がある。
【0029】
THF可溶分の分子量600以下の成分は2質量%~10質量%が好ましい。
この成分の含有量を調節する方法としては、ポリエステル樹脂成分Aをメタノールにより抽出し、分子量600以下の成分を除去し、精製する方法が挙げられる。
【0030】
前記ポリエステル樹脂成分Aの酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gがより好ましい。前記酸価が1mgKOH/g以上であると、トナーが負帯電性となりやすく、更には、紙への定着時に紙とトナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。一方、前記酸価が、50mgKOH/g以下であると、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下するという不具合を防止できる。
【0031】
前記ポリエステル樹脂成分Aの水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mgKOH/g以上が好ましい。
【0032】
前記ポリエステル樹脂成分AのTgとしては、40℃以上70℃以下が好ましく、40℃以上60℃以下がより好ましく、50℃以上60℃以下がさらに好ましい。前記Tgが40℃以上であると、トナーの耐熱保存性、及び現像機内での撹拌等のストレスに対する耐久性が向上し、また、耐フィルミング性が向上する。一方、前記Tgが70℃以下であると、トナーの定着時における加熱及び加圧による変形が良好になり、低温定着性が向上する。
【0033】
前記ポリエステル樹脂成分Aの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、50質量部以上95質量部以下が好ましく、60質量部以上90質量部以下がより好ましい。前記含有量が、50質量部未満であると、トナー中の顔料、離型剤の分散性が悪化し、画像のかぶり、乱れを生じやすくなることがあり、95質量部を超えると、結晶性ポリエステルの含有量が少なくなるため、低温定着性に劣ることがある。前記含有量が、前記より好ましい範囲であると、高画質、高安定、低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0034】
-変性ポリエステル―
前記変性ポリエステル樹脂(以下、「変性ポリエステル」、「ポリエステル樹脂成分C」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂(本明細書において、「プレポリマー」、「ポリエステルプレポリマー」と称することがある。)との反応生成物などが挙げられる。
前記変性ポリエステルは、テトラヒドロフラン(THF)に不溶なポリエステル樹脂である。テトラヒドロフラン(THF)に不溶なポリエステル樹脂成分は、Tgや溶融粘性を低下させ、低温定着性を担保しつつ、分子骨格中に分岐構造を有し、分子鎖が三次元的な網目構造となるため、低温で変形するが流動しないというゴム的な性質を有することになる。
前記ポリエステル樹脂成分Cは、活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するため、これらの部位が擬似架橋点のような挙動を示し、前記非晶質ポリエステル樹脂Aのゴム的性質が強くなり、耐熱保存性、耐高温オフセット性に優れたトナーを作製することができる。
【0035】
前記プレポリマーが有する活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、イソシアネート基、エポキシ基、カルボンキシル基、-COClで示される官能基、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、イソシアネート基が好ましい。
【0036】
前記プレポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に、定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構が無い場合でも、良好な離型性及び定着性を確保できる点で、ウレア結合を生成することが可能なイソシアネート基等を有するポリエステル樹脂が好ましい。
【0037】
--活性水素基含有化合物--
前記活性水素基含有化合物は、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂と反応する化合物である。
【0038】
前記活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記活性水素基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂がイソシアネート基を含有するポリエステル樹脂である場合には、該ポリエステル樹脂と伸長反応、架橋反応等により前記ポリエステル樹脂を高分子量化できる点で、アミン類が好ましい。
前記アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン、3価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ジアミン、ジアミンと少量の3価以上のアミンとの混合物が好ましい。
【0040】
前記ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミンなどが挙げられる。前記芳香族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。前記脂環式ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。前記脂肪族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0041】
前記3価以上のアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
【0042】
前記アミノアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
【0043】
前記アミノメルカプタンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
【0044】
前記アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
【0045】
前記アミノ基をブロックしたものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物などが挙げられる。
【0046】
--活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂--
前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂(以下、「イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー」と称することがある。)などが挙げられる。前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールとポリカルボン酸を重縮合することにより得られる活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。
【0047】
前記ポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコール、ジオールと3価以上のアルコールとの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ジオール、ジオールと少量の3価以上のアルコールとの混合物が好ましい。
【0048】
前記ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鎖状アルキレングリコール、オキシアルキレン基を有するジオール、脂環式ジオール、ビスフェノール類、脂環式ジオールのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記鎖状アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
前記オキシアルキレン基を有するジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
前記脂環式ジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどが挙げられる。
なお、前記鎖状アルキレングリコールの炭素数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2~12が好ましい。
これらの中でも、炭素数が2~12である鎖状アルキレングリコール、及びビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物の少なくともいずれかが好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と炭素数が2~12の鎖状アルキレングリコールとの混合物がより好ましい。
【0049】
前記3価以上のアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価以上の脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記3価以上の脂肪族アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
前記3価以上のポリフェノール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが挙げられる。
前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したものなどが挙げられる。
前記ジオールと前記3価以上のアルコールを混合して用いる場合、前記ジオールに対する前記3価以上のアルコールの質量比(3価以上のアルコール/ジオール)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.01質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0050】
前記ポリカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、ジカルボン酸と3価以上のカルボン酸との混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ジカルボン酸、ジカルボン酸と少量の3価以上のポリカルボン酸との混合物が好ましい。
【0051】
前記ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のアルカン酸、2価のアルケン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
前記2価のアルカン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。
前記2価のアルケン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数4~20の2価のアルケン酸が好ましい。前記炭素数4~20の2価のアルケン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。前記炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0052】
前記3価以上のカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価以上の芳香族カルボン酸などが挙げられる。
前記3価以上の芳香族カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数9~20の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。前記炭素数9~20の3価以上の芳香族カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
【0053】
前記ポリカルボン酸として、ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、及びジカルボン酸と3価以上のカルボン酸との混合物のいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。
前記低級アルキルエステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなどが挙げられる。
前記ジカルボン酸と前記3価以上のカルボン酸とを混合して用いる場合、前記ジカルボン酸に対する前記3価以上のカルボン酸の質量比(3価以上のカルボン酸/ジカルボン酸)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.01質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0054】
前記ポリオールと前記ポリカルボン酸とを重縮合させる際の、前記ポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリオールの水酸基の当量比(ポリオールの水酸基/ポリカルボン酸のカルボキシル基)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1~2が好ましく、1~1.5がより好ましく、1.02~1.3が特に好ましい。
【0055】
前記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリオール由来の構成単位の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%~40質量%が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、2質量%以上20質量%以下が特に好ましい。
前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が低下し、トナーの耐熱保存性と低温定着性との両立が困難となることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0056】
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたものなどが挙げられる。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3-メチルジフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナト-ジフェニルエーテルなどが挙げられる。
前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記イソシアヌレート類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
前記ポリイソシアネートと、水酸基を有するポリエステル樹脂を反応させる場合、前記ポリエステル樹脂の水酸基に対する前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1~5が好ましく、1.2~4がより好ましく、1.5~2.5が特に好ましい。前記当量比が、1未満であると、耐ホットオフセット性が低下することがあり、5を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0058】
前記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリイソシアネート由来の構成単位の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、2質量%以上20質量%以下が特に好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が低下することがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0059】
前記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーが一分子当たりに有するイソシアネート基の平均数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1以上が好ましく、1.5~3がより好ましく、1.8~2.5が特に好ましい。前記平均数が、1未満であると、変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0060】
前記多価アルコール成分中にビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物を50モル%以上含有し、特定の水酸基価と酸価を有するポリエステル樹脂に対する、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーの質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5未満/95超~25超/75未満が好ましく、10/90~25/75がより好ましい。前記質量比が、5/95未満であると、耐高温オフセット性が低下することがあり、25/75を超えると、低温定着性や画像の光沢性が低下することがある。
【0061】
前記変性ポリエステル樹脂は、ワンショット法等により製造することができる。一例として、ウレア変性ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
まず、ポリオールとポリカルボン酸を、テトラブトキシチタネート、ジブチルスズオキサイド等の触媒の存在下で、150℃~280℃に加熱し、必要に応じて、減圧しながら生成する水を除去して、水酸基を有するポリエステル樹脂を得る。次に、水酸基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートを40℃~140℃で反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを得る。更に、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類を0℃~140℃で反応させ、ウレア変性ポリエステル樹脂を得る。
【0062】
前記変性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、1,000~10,000が好ましく、1,500~6,000がより好ましい。
前記変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、20,000以上1,000,000以下が好ましい。
前記重量平均分子量が、20,000以上であると、トナーが低温で流動しやすくなり、耐熱保存性に劣るという不具合、溶融時の粘性が低くなり、高温オフセット性が低下する不具合を防止できる。
【0063】
なお、水酸基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートを反応させる場合及びイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類を反応させる場合には、必要に応じて、溶媒を用いることもできる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族溶媒、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類等のイソシアネート基に対して不活性なものが挙げられる。前記芳香族溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。前記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。前記エステル類としては、例えば、酢酸エチルなどが挙げられる。前記アミド類としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。前記エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0064】
前記変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度としては、-60℃以上0℃以下であることが好ましく、-40℃以上-20℃以下がより好ましい。
前記ガラス転移温度が、-60℃以上であると、低温でのトナーの流動が抑制できずに、耐熱保存性が悪化し、また、耐フィルミング性が悪化するという不具合を防止できる。
前記ガラス転移温度が、0℃以下であると、定着時の加熱及び加圧によるトナーが十分に変形できず、低温定着性が不十分となる不具合を防止できる。
【0065】
前記変性ポリエステルの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部中、1質量部~15質量部が好ましく、5質量部~10質量部がより好ましい。
前記ポリエステル樹脂成分A、Cの分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。
簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを非晶質ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0066】
-結晶性ポリエステル樹脂-
前記結晶性ポリエステル樹脂(以下、「結晶性ポリエステル」、「ポリエステル樹脂成分D」とも称する)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られる結晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0067】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、高い結晶性をもつために、定着開始温度付近において急激な粘度低下を示す熱溶融特性を示す。
このような特性を有する前記結晶性ポリエステル樹脂を前記非晶質ポリエステル樹脂と共に用いることで、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性がよく、溶融開始温度では結晶性ポリエステル樹脂の融解による急激な粘度低下(シャープメルト)を起こし、それに伴い前記非晶質ポリエステル樹脂と相溶し、共に急激に粘度低下することで定着することから、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。また、離型幅(定着下限温度と耐高温オフセット発生温度との差)についても、良好な結果を示す。
なお、本発明において結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のごとく、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、前記プレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0068】
--ポリオール--
前記ポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のなどが挙げられる。
【0069】
前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。
前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、結晶性を向上させ、かつ融点の低下を防ぐことができる点から、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。
【0070】
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンジオールなどが挙げられる。
これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0071】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0072】
--ポリカルボン酸--
前記ポリカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸などが挙げられる。
【0073】
前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、更に、これらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルも挙げられる。
【0074】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。
【0075】
前記ポリカルボン酸としては、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸が含まれていてもよい。更に、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸を含有してもよい。 これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。即ち、前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4以上12以下の飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と、炭素数2以上12以下の飽和脂肪族ジオールに由来する構成単位とを有することが好ましい。そうすることにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れることから、優れた低温定着性を発揮できる点で好ましい。
【0077】
本発明での結晶性ポリエステル樹脂の結晶性の有無は、結晶解析X線回折装置(例えばX’Pert Pro MRD フィリップス社)により確認することができる。以下測定方法を記す。
まず、対象試料を乳鉢によりすり潰し試料粉体を作成し、得られた試料粉体を試料ホルダーに均一に塗布する。その後、回折装置内に試料ホルダーをセットし、測定を行い、回折スペクトルを得る。
得られた回折ピークに20°<2θ<25°の範囲に得られたピークのうち最もピーク強度が大きいピークのピーク半値幅が2.0以下である場合結晶性を有すると判断する
結晶性ポリエステル樹脂に対し、上記状態を示さないポリエステル樹脂を、本発明では、非晶質ポリエステル樹脂という。
以下にX線回折の測定条件を記す。
〔測定条件〕
Tension kV: 45kV
Current: 40mA
MPSS
Upper
Gonio
Scanmode: continuos
Start angle : 3°
End angle : 35°
Angle Step:0.02°
Lucident beam optics
Divergence slit : Div slit 1/2
Difflection beam optics
Anti scatter slit: As Fixed 1/2
Receiving slit : Prog rec slit
【0078】
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下であることが好ましい。前記融点が、60℃以上であると、結晶性ポリエステル樹脂が低温で溶融しやすく、トナーの耐熱保存性が低下する不具合を防止でき、80℃以下であると、定着時の加熱による結晶性ポリエステル樹脂の溶融が不十分で、低温定着性が低下するという不具合を防止できる。
前記融点は、示差走査熱量計(DSC)測定におけるDSCチャートの吸熱ピーク値により測定することができる。
【0079】
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分が、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)が3,000~30,000が好ましく、5,000~15,000がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分が、GPC測定において、数平均分子量(Mn)が1,000~10,000が好ましく、2,000~10,000がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子量の比Mw/Mnとしては、1.0~10が好ましく、1.0~5.0がより好ましい。
これは、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、かつ分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が低下するためである。
【0080】
前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、紙と樹脂との親和性の観点から、所望の低温定着性を達成するためには、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。一方、耐高温オフセット性を向上させるには、45mgKOH/g以下が好ましい。
【0081】
前記結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所望の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには、0mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~50mgKOH/gがより好ましい。
【0082】
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。 簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1又は990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを結晶性ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0083】
前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、2質量部以上20質量部以下が好ましく、5質量部以上15質量部以下がより好ましい。前記含有量が、2質量部以上であると、結晶性ポリエステル樹脂によるシャープメルト化が不十分なため低温定着性に劣るという不具合を防止できる。また、20質量部以下であると、耐熱保存性が低下すること、画像のかぶりが生じやすくなるという不具合を防止できる。
【0084】
<<着色剤>>
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。
【0085】
前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下が好ましく、3質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0086】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練される樹脂としては、例えば、前記他のポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合し、混練して得ることができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練を行い、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0088】
<<ワックス>>
前記ワックス(離型剤)としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、天然ワックス、合成ワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
前記天然ワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックスなどが挙げられる。
前記合成ワックスとしては、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド系化合物;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子などが挙げられる。
これらの中でも、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの炭化水素系ワックスが好ましい。
【0090】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上95℃以下が好ましい。前記融点が、60℃以上であると、低温で離型剤が溶融しやすくなり、耐熱保存性が劣るという不具合を防止できる。前記融点が、95℃以下であると、樹脂が溶融して定着温度領域にある場合でも、離型剤が充分溶融せずに定着オフセットを生じ、画像の欠損を生じるという不具合を防止できる。
【0091】
前記離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下が好ましく、3質量部以上8質量部以下がより好ましい。前記含有量が、2質量部以上であると、定着時の耐高温オフセット性、及び低温定着性に劣るという不具合を防止でき、10質量部以下であると、耐熱保存性が低下すること、及び画像のかぶりなどが生じやすくなるという不具合を防止できる。
【0092】
前記トナー母体粒子には、通常のトナー母体粒子に用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択したその他の成分を含有することができる。
前記その他の成分の含有量としては、トナーの性質を害することがない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0093】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、通常のトナーに用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、変性層状無機鉱物(異形化剤)、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料などが挙げられる。
【0094】
-変性層状無機鉱物(異形化剤)-
前記変性層状無機鉱物(異形化剤)は、金属カチオンの少なくとも一部が有機カチオンでイオン交換されている。
前記変性層状無機鉱物は、スメクタイト系の基本結晶構造を有する層状無機鉱物の金属カチオンの一部が有機カチオンでイオン交換された有機変性スメクタイトであることがより好ましい。これにより、トナー母体粒子の形状を制御し、トナーの帯電性能を向上させることができる。
層状無機鉱物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどが挙げられ、二種以上併用してもよい。
有機カチオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、4級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、イミダゾリウムイオンなどが挙げられる。 中でも、4級アンモニウムイオンが好ましい。
4級アンモニウムイオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、トリメチルステアリルアンモニウムイオン、ジメチルステアリルベンジルアンモニウムイオン、ジメチルオクタデシルアンモニウムイオン、オレイルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0095】
前記有機変性スメクタイトの市販品としては、例えば、BENTONE34、BENTONE52、BENTONE38、BENTONE27、BENTONE57、BENTONE SD1、BENTONE SD2、BENTONE SD3(以上、ELEMENTIS社製)、CRAYTONE34、CRAYTONE40、CRAYTONE HT、CRAYTONE2000、CRAYTONE AF、CRAYTONE APA、CRAYTONE HY(以上、SCP社製)、エスベン、エスベンE、エスベンC、エスベンNZ、エスベンNZ70、エスベンW、エスベンN400、エスベンNX、エスベンNX80、エスベンNO12S、エスベンNEZ、エスベンNO12、エスベンWX、エスベンNE(以上、HOJUN社製)、クニビス110、クニビス120、クニビス127(以上、クニミネ工業社製)などが挙げられる。
【0096】
トナー母体粒子中の前記有機変性スメクタイトの含有量としては、0.1質量%~5質量%であることが好ましい。含有量が0.1質量%未満であると、帯電性能に及ぼす効果が低下することがあり、5質量%を超えると、定着性能が低下することがある。
【0097】
-外添剤-
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ微粒子、疎水性シリカ、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等)、金属酸化物(例えばチタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモン等)、フルオロポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、疎水化処理無機微粒子が好ましい。
シリカ微粒子としては、例えば、R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(いずれも、日本アエロジル社製)などが挙げられる。
また、前記チタニア微粒子としては、例えばP-25(日本アエロジル社製)、STT-30、STT-65C-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-140(富士チタン工業株式会社製)、MT-150W、MT-500B、MT-600B、MT-150A(いずれも、テイカ株式会社製)などが挙げられる。
【0098】
前記疎水化処理された酸化チタン微粒子としては、例えば、T-805(日本アエロジル株式会社製)、STT-30A、STT-65S-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-500T、TAF-1500T(いずれも、富士チタン工業株式会社製)、MT-100S、MT-100T(いずれも、テイカ株式会社製)、IT-S(石原産業株式会社製)などが挙げられる。
【0099】
前記疎水化処理された酸化物微粒子、疎水化処理されたシリカ微粒子、疎水化処理されたチタニア微粒子、疎水化処理されたアルミナ微粒子は、例えば、親水性の微粒子をメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤で処理して得ることができる。また、シリコーンオイルを必要ならば熱を加えて無機微粒子に処理した、シリコーンオイル処理酸化物微粒子、無機微粒子も好適である。
【0100】
前記シリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アクリル、メタクリル変性シリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイル等が使用できる。
前記無機微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸パリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。これらの中でも、シリカと二酸化チタンが特に好ましい。
【0101】
前記外添剤の一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が更に好ましい。一次粒子の平均粒径が、この範囲であると、無機微粒子がトナー中に埋没し、その機能が有効に発揮されにくいという不具合、及び感光体表面を不均一に傷つけるという不具合を防止できる。
外添剤としては、疎水化処理された一次粒子の平均粒径が30nm以下の無機微粒子を少なくとも1種類以上含み、かつ50nm以上の無機微粒子を少なくとも1種類含むことが好ましい。無機微粒子の平均粒径が50nm以上の場合、ブレードに堰き止められやすく、フィルミング、またクリーニング性が改善する。
前記外添剤のBET法による比表面積としては、20m2/g~500m2/gが好ましい。
【0102】
前記外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.3質量部以上3質量部以下がより好ましい。
【0103】
-流動性向上剤-
前記流動性向上剤はとして、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記シリカ、前記酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0104】
-クリーニング性向上剤-
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。
前記ポリマー微粒子としては、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm以上1μm以下のものが好適である。
【0105】
-磁性材料-
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライトなどが挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0106】
トナーの諸特性については、例えば、以下に示すような方法で測定することができる。
【0107】
<酸価、水酸基価の測定方法>
水酸基価は、JIS K0070-1966に準拠した方法を用いて測定することができる。
具体的には、まず、試料0.5gを100mLのメスフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5mLを加える。次に、100±5℃の温浴中で1時間~2時間加熱した後、フラスコを温浴から取り出して放冷する。さらに、水を加えて振り動かして無水酢酸を分解する。次に、無水酢酸を完全に分解させるために、再びフラスコを温浴中で10分以上加熱して放冷した後、有機溶剤でフラスコの壁を十分に洗う。
さらに、電位差自動滴定装置DL-53 Titrator(メトラー・トレド社製)及び電極DG113-SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23℃で水酸基価を測定し、解析ソフトLabX Light Version 1.00.000を用いて解析する。なお、装置の校正には、トルエン120mLとエタノール30mLの混合溶媒を用いる。
このとき、測定条件は、以下の通りである。
【0108】
〔測定条件〕
Stir
Speed[%] 25
Time[s] 15
EQP titration
Titrant/Sensor
Titrant CH3ONa
Concentration[mol/L] 0.1
Sensor DG115
Unit of measurement mV
Predispensing to volume
Volume[mL] 1.0
Wait time[s] 0
Titrant addition Dynamic
dE(set)[mV] 8.0
dV(min)[mL] 0.03
dV(max)[mL] 0.5
Measure mode Equilibrium controlled
dE[mV] 0.5
dt[s] 1.0
t(min)[s] 2.0
t(max)[s] 20.0
Recognition
Threshold 100.0
Steepest jump only No
Range No
Tendency None
Termination
at maximum volume[mL] 10.0
at potential No
at slope No
after number EQPs Yes
n=1
comb.termination conditions No
Evaluation
Procedure Standard
Potential1 No
Potential2 No
Stop for reevaluation No
【0109】
前記酸価は、JIS K0070-1992に準拠した方法を用いて測定することができる。
具体的には、まず、試料0.5g(酢酸エチル可溶分では0.3g)をトルエン120mLに添加して、23℃で約10時間撹拌することにより溶解させる。次に、エタノール30mLを添加して試料溶液とする。なお、試料が溶解しない場合は、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒を用いる。さらに、電位差自動滴定装置DL-53 Titrator(メトラー・トレド社製)及び電極DG113-SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23℃で酸価を測定し、解析ソフトLabX Light Version 1.00.000を用いて解析する。なお、装置の校正には、トルエン120mLとエタノール30mLの混合溶媒を用いる。
このとき、測定条件は、上記した水酸基価の場合と同様である。
【0110】
前記酸価は、以上のようにして測定することができるが、具体的には、予め標定された0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、滴定量から、酸価[mgKOH/g]=滴定量[mL]×N×56.1[mg/mL]/試料質量[g](ただし、Nは、0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液のファクター)により酸価を算出する。
【0111】
前記トナーの酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低温定着性(定着下限温度)、ホットオフセット発生温度等を制御する点から、0.5mgKOH/g~40mgKOH/gであることが好ましい。前記酸価が、0.5mgKOH/g未満であると、製造時の塩基による分散安定性を向上させる効果が得られなくなったり、前記プレポリマーを用いた場合に伸長反応及び/又は架橋反応が進行しやすくなったりして、製造安定性が低下することがある。前記酸価が、40mgKOH/gを超えると、前記プレポリマーを用いた場合に伸長反応及び/又は架橋反応が不十分となり、耐高温オフセット性が低下することがある。
【0112】
<融点、及びガラス転移温度(Tg)の測定方法>
本発明における融点、ガラス転移温度(Tg)は、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(「DSC-60」、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
具体的には、対象試料の融点、ガラス転移温度は、下記手順により測定できる。
まず、対象試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、0℃から昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱する。その後、150℃から降温速度10℃/minにて0℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱し、示差走査熱量計(「DSC-60」、島津製作所社製)を用いてDSC曲線を計測する。
得られるDSC曲線から、DSC-60システム中の解析プログラム『吸熱ショルダー温度』を用いて、一回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温一回目におけるガラス転移温度を求めることができる。また、『吸熱ショルダー温度』を用いて、二回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温二回目におけるガラス転移温度を求めることができる。
また、得られるDSC曲線から、DSC-60システム中の解析プログラム『吸熱ピーク温度』を用いて、一回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温一回目における融点を求めることができる。また、『吸熱ピーク温度』を用いて、二回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温二回目における融点を求めることができる。
【0113】
本発明では、対象試料としてトナーを用いた際の一回目昇温時におけるガラス転移温度をTg1st、同二回目昇温時におけるガラス転移温度をTg2ndとする。
また本発明では、各構成成分の二回目昇温時における融点、Tgを各対象試料の融点、Tgとする。
【0114】
前記トナーのガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、DSC測定において昇温一回目に算出されるガラス転移温度(Tg1st)が、45℃以上65℃未満であることが好ましく、50℃以上60℃以下であることがより好ましい。これにより、低温定着性、耐熱保存性及び高耐久性を得ることができる。前記Tg1stが、45℃未満であると、現像機内でのブロッキングや感光体へのフィルミングが発生することがあり、65℃以上であると、低温定着性が低下することがある。
また、前記トナーのDSC測定において昇温二回目に算出されるガラス転移温度(Tg2nd)は、20℃以上40℃未満であることが好ましい。前記Tg2ndが20℃未満であると、現像機内でのブロッキングや感光体へのフィルミングが発生することがあり、40℃を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0115】
<粒度分布の測定方法>
前記トナーの体積平均粒径(D4)と個数平均粒径(Dn)、その比(D4/Dn)は、例えば、コールターカウンターTA-II、コールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)等を用いて測定することができる。本発明ではコールターマルチサイザーIIを使用した。以下に測定方法について述べる。
まず、電解水溶液100mL~150mL中に分散剤として界面活性剤(好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性の界面活性剤))を0.1mL~5mL加える。ここで、電解水溶液とは1級塩化ナトリウムを用いて1質量%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON-II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2mg~20mg加える。試料を懸濁した電解水溶液は、超音波分散器で約1分間~3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個
数分布を算出する。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(D4)、個数平均粒径(Dn)を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0116】
前記トナーの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm以上7μm以下であることが好ましい。また、個数平均粒径に対する体積平均粒径の比は1.2以下であることが好ましい。また、体積平均粒径が2μm以下である成分を1個数%以上10個数%以下含有することが好ましい。
【0117】
(トナーの製造方法)
前記トナーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナーは、少なくとも前記非晶質ポリエステル樹脂、前記結晶性ポリエステル樹脂、前記離型剤、及び前記着色剤を含む油相を水系媒体中で分散させることにより造粒されることが好ましい。
このような前記トナーの製造方法の一例としては、公知の溶解懸濁法が挙げられる。
また、前記トナーの製造方法の他の一例として、前記活性水素基含有化合物と該活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体との伸長反応及び/又は架橋反応により生成するもの(以下、「接着性基材」、「結着樹脂」と称することがある)を生成しながら、トナー母体粒子を形成する方法を以下に示す。このような方法においては、水系媒体の調製、トナー材料を含有する油相の調製、トナー材料の乳化乃至分散、有機溶媒の除去等を行う。
【0118】
-水系媒体(水相)の調製-
前記水系媒体の調製は、例えば、樹脂粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。前記樹脂粒子の水系媒体中の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%~10質量%が好ましい。前記樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、たとえば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイドなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい、これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0119】
前記水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、水が好ましい。
前記水と混和可能な溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類、低級ケトン類、などが挙げられる。前記アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、などが挙げられる。前記低級ケトン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、などが挙げられる。
【0120】
-油相の調製-
前記トナー材料を含有する油相の調製は、有機溶媒中に、前記活性水素基含有化合物、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、前記結晶性ポリエステル樹脂、前記非晶質ポリエステル樹脂、前記離型剤、前記ハイブリッド樹脂、前記変性層状無機鉱物(異形化剤)、及び前記着色剤などを含むトナー材料を、溶解乃至分散させることにより行うことができる。
前記変性層状無機鉱物(異形化剤)は、乳化乃至分散の工程において、油滴表面のチクソ性を付与するため、トナー母体の形状を制御することができる。
前記変性層状無機鉱物の含有量は、0.7質量部以上1.5質量部以下が好ましく、0.9質量部以上1.1質量部以下がより好ましい。
【0121】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
前記沸点が150℃未満の有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0122】
-乳化乃至分散-
前記トナー材料の乳化乃至分散は、前記トナー材料を含有する油相を、前記水系媒体中に分散させることにより行うことができる。そして、前記トナー材料を乳化乃至分散させる際に、活性水素基含有化合物と活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより、結着樹脂が生成する。
【0123】
前記結着樹脂は、例えば、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー等の活性水素基に対する反応性を有する重合体を含有する油相を、アミン類等の活性水素基を含有する化合物と共に、水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよく、トナー材料を含有する油相を、予め活性水素基を有する化合物を添加した水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよく、トナー材料を含有する油相を水系媒体中で乳化又は分散させた後で、活性水素基を有する化合物を添加し、水系媒体中で粒子界面から両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよい。なお、粒子界面から両者を伸長反応及び/又は架橋反応させる場合、生成するトナーの表面に優先的にウレア変性ポリエステル樹脂が形成され、トナー中にウレア変性ポリエステル樹脂の濃度勾配を設けることもできる。
【0124】
前記結着樹脂を生成させるための反応条件(反応時間、反応温度)としては、特に制限はなく、活性水素基含有化合物と、該活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体との組み合わせに応じて、適宜選択することができる。
前記反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間~40時間が好ましく、2時間~24時間がより好ましい。
前記反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。
【0125】
前記水系媒体中において、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー等の活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を含有する分散液を安定に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水系媒体相中に、トナー材料を溶媒に溶解乃至分散させて調製した油相を添加し、せん断力により分散させる方法、などが挙げられる。
【0126】
前記分散のための分散機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、などが挙げられる。
これらの中でも、分散体(油滴)の粒子径を2μm~20μmに制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。
前記高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。
前記回転数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000rpm~30,000rpmが好ましく、5,000rpm~20,000rpmがより好ましい。
前記分散時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、バッチ方式の場合、0.1分間~5分間が好ましい。
前記分散温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加圧下において、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。なお、一般に、前記分散温度が高温である方が分散は容易である。
【0127】
前記トナー材料を乳化乃至分散させる際の、水系媒体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対して、50質量部~2,000質量部が好ましく、100質量部~1,000質量部がより好ましい。
前記水系媒体の使用量が、50質量部未満であると、前記トナー材料の分散状態が悪くなって、所定の粒子径のトナー母体粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
【0128】
前記トナー材料を含有する油相を乳化乃至分散する際には、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にすると共に粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0129】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、などを用いることができる。
前記陰イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル、などが挙げられる。
これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0130】
前記結着樹脂を生成させる際の伸長反応及び/又は架橋反応には、触媒を用いることができる。
前記触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート、などが挙げられる。
【0131】
-有機溶媒の除去-
前記乳化スラリー等の分散液から有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を除去する方法、などが挙げられる。
前記有機溶媒が除去されると、トナー母体粒子が形成される。トナー母体粒子に対しては、洗浄を行いトナー表面の不純物を除去する。その後、水中にトナー粒子を分散させた状態で加温処理することでトナー表面の微小な凹凸を制御することができる。この時の温度は使用している樹脂のTg付近の温度で1時間以上6時間以下で処理することが好ましく、3時間以上4時間以下で処理することがより好ましい。その後、乾燥を行うことができ、さらに分級等を行うことができる。前記分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離、などにより、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
【0132】
前記得られたトナー母体粒子は、前記外添剤、前記変性層状無機鉱物(異形化剤)等の粒子と混合してもよい。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、トナー母体粒子の表面から前記外添剤等の粒子が脱離するのを抑制することができる。
前記機械的衝撃力を印加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法、などが挙げられる。
前記方法に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢、などが挙げられる。
【0133】
(現像剤)
本発明の現像剤は、少なくとも前記トナーを含み、必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含む。
このため、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定に形成することができる。なお、現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命が向上することから、二成分現像剤が好ましい。
前記現像剤を一成分現像剤として用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
前記現像剤を二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
前記トナーを二成分系現像剤に用いる場合には、前記キャリアと混合して用いればよい。前記二成分現像剤中の前記キャリアの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90質量%~98質量%が好ましく、93質量%~97質量%がより好ましい。
【0134】
<キャリア>
前記キャリアには特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。
【0135】
-芯材-
前記芯材の材料としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、50~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料などが挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75~120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30~80emu/gの銅-亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0136】
前記芯材の体積平均粒径には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上100μm以下がより好ましい。体積平均粒径が10μm未満では、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることがある。一方、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0137】
-樹脂層-
前記樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリハロゲン化オレフィン、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとアクリルモノマーの共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとフルオロ基を有さないモノマーの共重合体等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0138】
前記アミノ系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
前記ポリビニル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、などが挙げられる。
前記ポリスチレン系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、スチレン-アクリル共重合体、などが挙げられる。
前記ポリハロゲン化オレフィンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル、などが挙げられる。
前記ポリエステル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、などが挙げられる。
【0139】
前記樹脂層は、必要に応じて、導電粉等を含有してもよい。前記導電粉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、などが挙げられる。前記導電粉の平均粒径は、1μm以下であることが好ましい。平均粒径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0140】
前記樹脂層は、シリコーン樹脂等を溶媒に溶解させて塗布液を調製した後、塗布液を芯材の表面に公知の塗布方法を用いて塗布、乾燥した後、焼き付けを行うことにより形成することができる。
前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬塗工法、スプレー法、ハケ塗り法、などを用いることができる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチルセロソルブ、などが挙げられる。
前記焼き付けは、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロ波を用いる方法、などが挙げられる。
【0141】
前記キャリア中の樹脂層の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%~5.0質量%が好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満であると、芯材の表面に均一な樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、樹脂層が厚いためにキャリア同士の融着が起こり、キャリアの均一性が低下することがある。
【0142】
本発明のトナーは、前記キャリアと混合して二成分系現像剤に用いることができる。
前記二成分現像剤中の前記キャリアの含有量には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記二成分現像剤100質量部に対して、90~98質量部が好ましく、93~97質量部がより好ましい。
本発明の現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0143】
(トナー収容ユニット)
本発明におけるトナー収容ユニットは、トナーを収容する機能を有するユニットに、上述した本発明のトナーを収容したものをいう。
ここで、トナー収容ユニットの態様としては、例えば、トナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジなどが挙げられる。
前記トナー収容容器とは、前記トナーを収容した容器をいう。
前記現像器は、前記トナーを収容し現像する手段を有するものをいう。
前記プロセスカートリッジとは、少なくとも像担持体と現像手段とを一体とし、前記トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に帯電手段、露光手段、及びクリーニング手段のから選ばれる少なくとも一つを備えてもよい。
【0144】
本発明のトナー収容ユニットを、画像形成装置に装着して画像形成することで、本発明のトナーを用いて画像形成が行われるため、低温定着性及びクリーニング性を両立させることができる。
【0145】
ここで、前記プロセスカートリッジとしては、
図4に示すように、感光体101を内蔵し、その他として帯電手段102、現像手段104、転写手段108、クリーニング手段107、除電手段(不図示)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
ここで、
図4に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、感光体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段104でトナー現像され、該トナー現像は転写手段108により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【0146】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
本発明の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
【0147】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記静電潜像形成工程は前記静電潜像形成手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記定着工程は前記定着手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0148】
-静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段-
前記静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
前記静電潜像担持体(「光導電性絶縁体」、「電子写真用感光体」、「感光体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
【0149】
前記アモルファスシリコン感光体としては、例えば、支持体を50℃~400℃に加熱し、該支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法によりa-Siからなる光導電層を有する感光体(以下、「a-Si系感光体」と称することがある)を用いることができる。これらの中でも、プラズマCVD法、即ち、原料ガスを直流又は高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa-Si堆積膜を形成する方法が好適である。
【0150】
前記静電潜像の形成は、例えば前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。
前記静電潜像形成手段は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0151】
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
【0152】
前記帯電器の形状としてはローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等、どのような形態をとってもよく、画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは例えばZn-Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電器として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。又はブラシを用いる場合、例えば、ファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属又は金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで帯電器とする。
前記帯電器は、上記のような接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電器を用いることが好ましい。
【0153】
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0154】
-現像工程及び現像手段-
前記現像工程は、前記静電潜像を、本発明の前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を本発明の前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、本発明の前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、本発明の前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられ、本発明の前記トナー入り容器を備えた現像器などがより好ましい。
【0155】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦撹拌させて帯電させる撹拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0156】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合撹拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0157】
前記現像器に収容させる現像剤は、本発明の前記トナーを含む現像剤であるが、該現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。該現像剤に含まれるトナーは、本発明の前記トナーである。
【0158】
-転写工程及び転写手段-
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記静電潜像担持体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0159】
前記中間転写体の静止摩擦係数は、0.1~0.6が好ましく、0.3~0.5がより好ましい。中間転写体の体積抵抗は数Ωcm以上103Ωcm以下であることが好ましい。体積抵抗を数Ωcm以上103Ωcm以下とすることにより、中間転写体自身の帯電を防ぐとともに、電荷付与手段により付与された電荷が該中間転写体上に残留しにくくなるので、二次転写時の転写ムラを防止できる。また、二次転写時の転写バイアス印加を容易にできる。
【0160】
前記中間転写体の材質は、特に制限はなく、公知の材料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)ヤング率(引張弾性率)の高い材料を単層ベルトとして用いたものであり、PC(ポリカーボネート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PAT(ポリアルキレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)/PAT(ポリアルキレンテレフタレート)のブレンド材料、ETFE(エチレンテトラフロロエチレン共重合体)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、カーボンブラック分散の熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。これらヤング率の高い単層ベルトは画像形成時の応力に対する変形量が少なく、特にカラー画像形成時にレジズレを生じにくいとの利点を有している。(2)上記のヤング率の高いベルトを基層とし、その外周上に表面層又は中間層を付与した2~3層構成のベルトであり、これら2~3層構成のベルトは単層ベルトの硬さに起因し発生するライン画像の中抜けを防止しうる性能を有している。(3)ゴム及びエラストマーを用いたヤング率の比較的低いベルトであり、これらのベルトは、その柔らかさによりライン画像の中抜けが殆ど生じない利点を有している。また、ベルトの幅を駆動ロール及び張架ロールより大きくし、ロールより突出したベルト耳部の弾力性を利用して蛇行を防止するので、リブや蛇行防止装置を必要とせず低コストを実現できる。
【0161】
前記中間転写ベルトは、従来から弗素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂等が使用されてきていたが、近年ベルトの全層や、ベルトの一部を弾性部材にした弾性ベルトが使用されてきている。樹脂ベルトを用いたカラー画像の転写は以下の課題がある。
カラー画像は通常4色の着色トナーで形成される。1枚のカラー画像には、1層から4層までのトナー層が形成されている。トナー層は1次転写(感光体から中間転写ベルトへの転写)や、二次転写(中間転写ベルトからシートへの転写)を通過することで圧力を受け、トナー同士の凝集力が高くなる。トナー同士の凝集力が高くなると文字の中抜けやベタ部画像のエッジ抜けの現象が発生しやすくなる。樹脂ベルトは硬度が高くトナー層に応じて変形しないため、トナー層を圧縮させやすく文字の中抜け現象が発生しやすくなる。
また、最近はフルカラー画像を様々な用紙、例えば和紙や意図的に凹凸を付けや用紙に画像を形成したいという要求が高くなってきている。しかし、平滑性の悪い用紙は転写時にトナーと空隙が発生しやすく、転写抜けが発生しやすくなる。密着性を高めるために二次転写部の転写圧を高めると、トナー層の凝縮力を高めることになり、上述したような文字の中抜けを発生させることになる。
弾性ベルトは次の目的で使用される。弾性ベルトは、転写部でトナー層、平滑性の悪い用紙に対応して変形する。つまり、局部的な凹凸に追従して弾性ベルトは変形するため、過度にトナー層に対して転写圧を高めることなく、良好な密着性が得られ文字の中抜けの無い、平面性の悪い用紙に対しても均一性の優れた転写画像を得ることができる。
【0162】
前記弾性ベルトの樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(ETFE,PVDF)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-塩化ビニル共重合体、スチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン-アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン-α-クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(例えば、シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上の組み合わせを使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではないことは当然である。
【0163】
前記弾性材ゴム又はエラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、リコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア,ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上の組み合わせを使用することができる。
【0164】
抵抗値調節用導電剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン-酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム-酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。上記導電剤に限定されるものではないことは当然である。
表層材料、表層は弾性材料による感光体への汚染防止と、転写ベルト表面への表面摩擦抵抗を低減させてトナーの付着力を小さくしてクリーニング性、二次転写性を高めるものが要求される。例えばポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上の組み合わせを使用し表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、例えばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、2酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体、粒子を1種類あるいは2種類以上又は粒径が異なるものの組み合わせを分散させ使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素リッチな層を形成させ表面エネルギーを小さくさせたものを使用することもできる。
ベルトの製造方法は限定されるものではなく、例えば、回転する円筒形の型に材料を流し込みベルトを形成する遠心成型法、液体塗料を噴霧し膜を形成させるスプレー塗工法、円筒形の型を材料の溶液の中に浸けて引き上げるディッピング法、内型,外型の中に注入する注型法、円筒形の型にコンパウンドを巻き付け,加硫研磨を行う方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、複数の製法を組み合わせてベルトを製造することが一般的である。
【0165】
弾性ベルトとして伸びを防止する方法として、伸びの少ない芯体樹脂層にゴム層を形成する方法、芯体層に伸びを防止する材料を入れる方法等があるが、特定の製法に限定されるものではない。
伸びを防止する芯体層を構成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、綿、絹、等の天然繊維;ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、ポリフロロエチレン繊維、フェノール繊維等の合成繊維;炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等の無機繊維;鉄繊維、銅繊維等の金属繊維、などを用いて、織布状又は糸状としたものも用いられる。
糸は1本又は複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸等、どのような撚り方であってもよい。また、例えば上記材料群から選択された材質の繊維を混紡してもよい。また、糸に適当な導電処理を施して使用することもできる。一方織布は、メリヤス織り等どのような織り方の織布でも使用可能であり、交織した織布も使用可能であり当然導電処理を施すこともできる。
芯体層を設ける製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、筒状に織った織布を金型等に被せ、その上に被覆層を設ける方法、筒状に織った織布を液状ゴム等に浸漬して芯体層の片面あるいは両面に被覆層を設ける方法、糸を金型等に任意のピッ次いで螺旋状に巻き付け、その上に被覆層を設ける方法等を挙げることができる。
前記弾性層の厚みは、弾性層の硬度にもよるが、厚すぎると表面の伸縮が大きくなり表層に亀裂の発生しやすくなる。又、伸縮量が大きくなることから画像に伸びちじみが大きくなること等から厚すぎる(約1mm以上)ことは好ましくない。
【0166】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記静電潜像担持体(感光体)上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0167】
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着部材を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。
前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃~200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0168】
前記除電工程は、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0169】
前記クリーニング工程は、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0170】
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記電子写真用トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0171】
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0172】
次に、本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する一の態様について、
図1を参照しながら説明する。
図1に示す画像形成装置100は、前記静電潜像担持体としての感光体ドラム10(以下「感光体10」と称することがある)と、前記帯電手段としての帯電ローラ20と、前記露光手段としての露光装置30と、前記現像手段としての現像器40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有する前記クリーニング手段としてのクリーニング装置60と、前記除電手段としての除電ランプ70とを備える。
【0173】
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50には、その近傍にクリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されており、また、最終記録媒体としての転写紙95に現像像(トナー画像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー画像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、該中間転写体50の回転方向において、感光体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と転写紙95との接触部との間に配置されている。
【0174】
現像器40は、感光体10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えており、イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えており、マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えており、シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。
【0175】
図1に示す画像形成装置100において、例えば、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光ドラム10上に形成された静電潜像を、現像器40からトナーを供給して現像してトナー画像を形成する。該トナー画像が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、感光体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
【0176】
図2に示すタンデム画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置である。タンデム画像形成装置は、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、
図2中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、露光装置21が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される転写紙と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。
なお、タンデム画像形成装置においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために該転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
【0177】
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、まず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0178】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動し、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
【0179】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達され、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。即ち、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、
図3に示すように、それぞれ、静電潜像担持体10(ブラック用静電潜像担持体10K、イエロー用静電潜像担持体10Y、マゼンタ用静電潜像担持体10M、及びシアン用静電潜像担持体10C)と、該静電潜像担持体10を一様に帯電させる帯電装置160と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に前記静電潜像担持体を露光(
図8中、L)し、該静電潜像担持体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する現像装置61と、該トナー画像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置63と、除電器64とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成された該ブラック画像、該イエロー画像、該マゼンタ画像及び該シアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用静電潜像担持体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用静電潜像担持体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用静電潜像担持体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用静電潜像担持体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0180】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該シート(記録紙)上に転写(二次転写)することにより、該シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0181】
カラー画像が転写され形成された前記シート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。その後、該シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされ、あるいは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【0182】
本発明の画像形成方法及び画像形成装置では、究極の低温定着性、耐定着巻き付き防止性、耐熱保存性、耐圧保存性、現像安定性、及び高速印字対応性を兼ね備えた本発明の前記トナーを用いているので、高画質な画像を効率よく形成できる。
【実施例0183】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中において「質量部」を「部」と表記する場合がある。
【0184】
(製造例a1)
<結晶性ポリエステル樹脂a1の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌器、及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、セバシン酸、及び1,6-ヘキサンジオールを、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが0.9となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)とともに、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、更に8.3kPaの圧力にて2時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂a1]を得た。
【0185】
(製造例b1)
<非晶質ポリエステル樹脂b1の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAプロピレンオキサイドサイド2モル付加物 1427.5g、トリメチロールプロパン 20.2g、テレフタル酸 512.7g、及びアジピン酸 119.9gを入れ、常圧、230℃で10時間反応させた。
さらに、10mmHg~15mmHg減圧環境下で5時間反応させた後、反応容器に無水トリメリット酸 41.0gを入れ、180℃、常圧で3時間反応させ、非晶質ポリエステル樹脂b1を得た。
非晶質ポリエステル樹脂b1は、重量平均分子量10,000、数平均分子量2,900、Tg57.5℃、酸価20mgKOH/gであった。
【0186】
(調製例1)
<結晶性ポリエステル樹脂分散液A1の調製>
金属製2L容器に、結晶性ポリエステル樹脂a1 100部、及び酢酸エチル 200部を入れ、75℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で27℃/分の速度で急冷した。これにガラスビーズ(3mmφ)500mLを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で10時間粉砕を行い、結晶性ポリエステル樹脂分散液A1を得た。
【0187】
(実施例1)
<トナー1の調製>
-油相-
--プレポリマーの合成--
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 81部、テレフタル酸 283部、無水トリメリット酸 22部、及びジブチルチンオキサイド 2部を入れ、常圧、230℃で8時間反応させた。さらに10mmHg~15mmHgの減圧で5時間反応させ、[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2,100、重量平均分子量9,500、Tg55℃、酸価0.5mgKOH/g、水酸基価51mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1] 410部、イソホロンジイソシアネート 89部、及び酢酸エチル 500部を入れ100℃で5時間反応させ、[プレポリマー1]を得た。[プレポリマー1]の遊離イソシアネート量は1.53質量%であった。
【0188】
--ケチミンの合成--
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン 170部、及びメチルエチルケトン 75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は418mgKOH/gであった。
【0189】
--マスターバッチ(MB)の合成--
水 1,200部、カーボンブラック(Printex35デクサ製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕 540部、及び非晶質ポリエステル樹脂b1 1,200部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合させた。混合物を2本ロールを用いて150℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【0190】
--WAX分散液の作製--
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に離型剤1としてパラフィンワックス(日本精鑞株式会社製、HNP-9、炭化水素系ワックス、融点75℃、SP値8.8) 50部、及び酢酸エチル 450部を仕込み、撹拌下、80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行い[WAX分散液1]を得た。
【0191】
--油相の調製--
[WAX分散液1]500部、[プレポリマー1]200部、[結晶性ポリエステル樹脂分散液A1]500部、[非晶質ポリエステル樹脂b1]750部、[マスターバッチ1]100部、及び硬化剤として[ケチミン化合物1]2部、変性層状無機鉱物(異形化剤)(CRATONE APA SCP社製)1.0部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmで60分間混合し、[油相1]を得た。
【0192】
-水相-
-微粒子分散液1(有機微粒子エマルション1)の合成-
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水 683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS-30:三洋化成工業社製) 11部、スチレン 138部、メタクリル酸 138部、及び過硫酸アンモニウム 1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液 30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]をLA-920(HORIBA社製)で測定した体積平均粒径は、0.14μmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。
【0193】
--水相の調製--
水 990部、[微粒子分散液1]83部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON-7:三洋化成工業社製) 37部、及び酢酸エチル 90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とした。
【0194】
[トナー母体粒子の製造]
-乳化及び脱溶剤-
前記[油相1]が入った容器に、[水相1]1,200部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。
撹拌機および温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0195】
-洗浄、加熱処理及び乾燥-
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、以下の(1)から(6)の処理を行った。
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過する。
(1)~(4)の操作を2回行った。
(5):(4)の濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合し、50℃で4時間加熱処理した後、濾過し、[濾過ケーキ1]を得た。
(6):[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い[トナー母体粒子1]を得た。
【0196】
[トナー母体粒子1]に対し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて、トナー母体粒子 100部、個数平均一次粒径が50nmの疎水性シリカ 1.5部及び個数平均一次粒径が20nmの疎水性酸化チタン 1.0部を、周速40m、撹拌時間6分の条件で混合し、[トナー1]を得た。[トナー1]は、体積平均粒径5.5μm、個数平均粒径に対する体積平均粒径の比(体積平均粒径/個数平均粒径)は1.1、体積平均粒径が2μm以下である成分が4個数%であった。
【0197】
(実施例2)
実施例1において、変性層状無機鉱物(異形化剤)の含有量を1.0部から1.5部に、「洗浄、加熱処理及び乾燥」の(5)における分散スラリーの50℃での加熱処理時間を4時間から6時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー2を得た。
【0198】
(実施例3)
実施例1において、変性層状無機鉱物(異形化剤)の含有量を1.0部から1.5部に、「洗浄、加熱処理及び乾燥」の(5)における分散スラリーの50℃での加熱処理時間を4時間から1時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー3を得た。
【0199】
(実施例4)
実施例1において、変性層状無機鉱物(異形化剤)の含有量を1.0部から0.7部に、「洗浄、加熱処理及び乾燥」の(5)における分散スラリーの50℃での加熱処理時間を4時間から6時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー4を得た。
【0200】
(実施例5)
実施例1において、変性層状無機鉱物(異形化剤)の含有量を1.0部から0.7部に、「洗浄、加熱処理及び乾燥」の(5)における分散スラリーの50℃での加熱処理時間を4時間から1時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー5を得た。
【0201】
(比較例1)
実施例1において、変性層状無機鉱物(異形化剤)の含有量を1.0部から0部に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー6を得た。
【0202】
(比較例2)
実施例1において、変性層状無機鉱物(異形化剤)の含有量を1.0部から2.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー7を得た。
【0203】
(比較例3)
実施例1において、「洗浄、加熱処理及び乾燥」の(5)における分散スラリーの50℃での加熱処理時間を4時間の条件を、55℃、1時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー8を得た。
【0204】
(比較例4)
実施例1において、「洗浄、加熱処理及び乾燥」の(5)における分散スラリーの50℃での加熱処理時間を4時間の条件を、40℃、1時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー9を得た。
【0205】
得られたトナー1~トナー9について、「トナーの形状指数SF2」、「トナー表面の算術平均高さSaが1μm以下における凹凸形状指数Sdr(%)」を下記方法により解析及び算出した。結果を表1~表2に示す。
【0206】
(トナーの形状指数SF2)
まず、下記の外添剤の遊離方法によってトナーにおける外添剤を極力除去し、トナー母体粒子のみに近い状態にした。
-外添剤の遊離方法-
[1]100mlのスクリュー管に、界面活性剤を含有した5%水溶液(商品名ノイゲンET-165、第一工業製薬株式会社製)を50ml添加し、その混合液にトナー3gを加えて静かに上下左右に動かす。その後、トナーが分散溶液になじむようにボールミルで30min撹拌した。
[2]その後、超音波ホモジナイザー(商品名homogenizer、形式VCX750、CV33、SONICS&MATERIALS有限会社製)を用いて、出力40Wに設定し、60分間超音波エネルギーを付与した。
--超音波処理条件--
振動時間:60分連続
振幅:40W
振動開始温度:23±1.5℃。
振動中温度:23±1.5℃
[3]分散液をろ紙(商品名定性ろ紙(No.2、110mm)、アドバンテック東洋株式会社製)で吸引ろ過し、再度イオン交換水で2回洗浄しろ過し、遊離した添加剤を除去後、トナー粒子を乾燥させた。
次に、得られたトナー粒子を下記条件により走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られた画像からSF2を算出した。
--撮影条件--
走査型電子顕微鏡:SU-8230
撮影倍率:5000倍
撮影像:SE(L):二次電子、BSE(反射電子)、
加速電圧:2.0kV
加速電流:1.0μA
プローブ電流:Normal
焦点モード:UHR
WD:8.0mm
走査型電子顕微鏡(FE-SEM)により得られる画像より直接粒径、粒径分布、形状、形状分布を求めた。
FE-SEMを用いる場合は、白金蒸着等により、本来の形状を損なう場合があるため、超高分解能FE-SEM(例えば、Zeiss社製、Ultra55)を用い、低加速電圧(数eV~10keV)により未蒸着で測定した。少なくとも100個以上の酸化微粒子を観察し、Media Cybernetics社製のImage-Pro Plus4.5.1を用いて統計的に粒径分布と、円形度SF1、SF2を定義した。
SF1=(L2/A)×(π/4)×100
SF2=(P2/A)×(1/4π)×100
ここで、
トナーの絶対最大長をL
トナーの投影面積をA
トナーの最大周長をPとする。
真球であれば、いずれも100となり、100より値が大きくなるにつれて球形から不定形になる。
また、特にSF1はトナー全体の形状(楕円や球等)を表し、SF2は表面の凹凸程度を示す形状係数となる。
【0207】
(トナー表面の算術平均高さSaが1μm以下における凹凸形状指数Sdr(%))
「トナーの形状指数SF2」における外添剤を極力除去したトナー粒子を用いて、下記の手順で、トナー表面の算術平均高さSaが1μm以下における凹凸形状指数Sdr(%)を算出した。
-トナー粒子固定-
[1] 1cm角Siウェハーをアセトンにて10分間超音波洗浄
[2] SPM試料台に両面テープで[1]を貼り付ける
[3] 2液硬化型エポキシ接着剤(デブコン デブチューブ30分硬化型)をSiウェハー上に適量塗布。
[4] Siウェハー上のエポキシ接着剤をすり切り、薄く平らに伸ばす。
[5] エポキシ接着剤を1.25時間放置した後、トナー粒子を散布する。
[6] トナー粒子を散布した後、ブロアーで未固定のトナー粒子を飛ばす。
[7] 24時間硬化させる。
[8] -測定-
[9] カンチレバー校正用の1cm角Siウェハーを、蒸留水で10分間、アセトンで10分間超音波洗浄。
[10] 試料台に[8]を両面テープで固定する。
[11] 母体サンプルと[9]をSPMステージに固定。
[12] カンチレバーセット。
[13] レーザーアライメント。
[14] カンチレバーの反り感度校正。
[15] カンチレバーのバネ定数校正(ThermalTune)
[16] 広範囲スキャンにて、トナー1粒子の位置を把握。
[17] Zoom機能にて、1粒子がちょうど収まる程度に測定範囲を調節する。
[18] 下記測定条件にて測定を行う。5μm×5μmの範囲だと測定時間は9分程度である。
--測定条件--
・Scanパラメーター
ScanSize:任意
ScanRate:0.5Hz
Resolution:256
・Feedbackパラメーター
PeakForceSetpoint:10nN
ScanAsyst:AutoGainのみOn
・PeakForce TappingControlパラメーター
PeakForce Amplitude:200nm
PeakForce Frequency:2kHz
トナー表面の算術平均高さSaが1μm以下における凹凸形状指数Sdr(%、面粗さパラメーター)は、原子間力顕微鏡の表面測定により得られた3次元データを、解析ソフトNanoScope Analysis(Bruker)を用いて解析することで求めた。
具体的には、まず、1次方程式を用いたPlaneFit機能にて3次元データの傾きを補正した。次に、2次方程式を用いたPlaneFit機能にて、トナーの粒子形状の情報を除去した。それから、Roughness機能を用いて面粗さパラメーターを算出した。面粗さパラメーターを算出する領域は、トナー粒子以外の領域を含まないように適宜解析領域を調整した。
【0208】
<トナー平均面における表面の増加割合の測定>
前記凹凸形状指数Sdr(%、面粗さパラメーター)は、ISO25178に準拠して測定できる面粗さパラメーターであり、「界面の展開面積比」と称される場合がある。
前記界面の展開面積比Sdrは、下記式で表され、定義領域の展開面積(表面積)が、定義領域の面積に対してどれだけ増大しているかを表しており、完全に平坦な面のSdrは0となる。
Sdr=(定義された領域における表面積の面積に対する増加分)/(定義された領域の面積)・・・数式
本発明における前記Sdrは、面粗さパラメーターを算出する領域の面積に対して、トナー表面の凹凸によってどれくらい表面積が増加しているのかを示すパラメーターである。
なお、定義領域の面積とは、面粗さパラメーターを算出するために指定した領域(平面)の面積を意味する。
具体的には、前記凹凸形状指数Sdr(%、面粗さパラメーター)は、SPM(Scanning Probe Microscope)法などにより測定することができる。
【0209】
SPM(Scanning Probe Microscope)法は、先端の直径が10nm位の探針を走査して、探針と試料表面の原子との間に働く原子間力を感知し、試料表面形状等を測定する方法である。非常に分解能が高く、探針の走査方向(X方向)に対するZ方向の凹凸形状の測定ができる。本発明では、トナー粒子表面をSPMの探針で走査し、トナー粒子表面の形状測定を行なった。
SPMにてトナー表面を計測する際には、あるトナー粒子の頂上付近を、表面に沿って1μm四方程度の領域のTIPを走査する。このときの垂直変位をZ軸方向の情報とする。この計測は、測定個所や試料のトナー粒子を変えて3~10回行い、粒子全体の様子を把握する。まずは、SPMによる観察像で表面状態を評価し、添加剤の付着表面を確認した上で、定量的な凹凸分析を実施することが実用的である。また、本発明で規定する凹凸(振幅)は、SPM計測で得られたプロファイルの小さな周期の凹凸及び大きな周期の凹凸の、Z方向における凹部と凸部の差を求めるものとする。
SPM測定装置条件は以下の通りである。
・測定装置;
原子間力顕微鏡システムBruker AXS製 Dimension Icon
測定モード;
PeakForceQNM
OMCL-AC240TS
材質Si
共振周波数70[Hz]
バネ定数2[N/m]カンチレバー
平均面における表面の増加割合としてのSdr[%]は、表面積A1とその表面をXY平面に投影したときの面積A0とし、下記式によって算出した。
【数2】
具体的には、前記Sdr[%]は、前記SPMによるトナー粒子表面の形状測定により得られた3次元データを、解析ソフトNanoScope Analysis(Bruker)を用いて求めた。
より、具体的には、まず、1次方程式を用いたPlaneFit機能にて3次元データの傾きを補正した。次に、2次方程式を用いたPlaneFit機能にて、トナーの粒子形状情報を除去する。次に、Roughness機能を用いて面粗さパラメーターを算出した。
このとき、面粗さパラメーターを算出するために指定した領域の面積をA0、指定した領域における、粒子形状除去後のトナーの表面積をA1とした。面粗さパラメーターを算出する領域は、トナー粒子以外の領域を含まないように指定した。
【0210】
次に、調製したトナー1~トナー9を用いて、下記画像形成装置で画像を形成し、「クリーニング性(LL環境クリーニング性、HM環境クリーニング性)」、「低温定着性」、「保存性」の評価を行った。
【0211】
-画像形成装置-
作製したクリーニングブレードをカラー複合機(imagio MP C4500、リコー社製)(プリンタ部は
図1に示す画像形成装置500と同様の構成)のプロセスカートリッジに取り付け、画像形成装置を組み立てた。
なお、クリーニングブレードは、線圧:15g/cm、クリーニング角:79°となるように画像形成装置に取り付けた。また、上記装置は感光体表面への潤滑剤塗布装置を備えており、潤滑剤塗布により感光体表面の静止摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。なお、感光体表面の静止摩擦係数の測定方法については、オイラーベルトの方法で、例えば、特開平9-166919号公報の段落番号0046に記載されている。
【0212】
<クリーニング性(LL環境クリーニング性、HM環境クリーニング性)>
<<LL環境クリーニング性>>
前記画像形成装置を用い、実験室環境下(21℃、65%RH)で、画像面積率5%チャートを3プリント/ジョブで、50,000枚(A4サイズ横)を出力した。
その後、LL環境(10℃、15%RH)にて、評価画像として、縦帯パターン(紙進行方向に対して)43mm幅、3本チャートをA4サイズ横で、100枚出力し、得られた画像を目視観察し、クリーニング不良による画像異常の有無により、以下の評価基準に基づき、クリーニング性を評価した。
-評価基準-
◎:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上に目視で確認できず、感光体上を長手方向に顕微鏡で観察してもトナーのスジ状のすり抜けが確認できない。
○:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上にも目視で確認できない。
△:クリーニング不良ですり抜けたトナーが感光体上は目視でわずかに確認できるが、印刷紙上では確認できない。
×:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上にも目視で確認できる。
【0213】
<<HM環境クリーニング性>>
前記画像形成装置を用い、実験室環境21℃で65%RHで、画像面積率5%チャートを3プリント/ジョブで、50,000枚(A4サイズ横)を出力した。
その後、HM環境(32℃、54%RH)にて、評価画像として、縦帯パターン(紙進行方向に対して)43mm幅、3本チャートをA4サイズ横で、100枚出力し、得られた画像を目視観察し、クリーニング不良による画像異常の有無により、以下の評価基準に基づき、クリーニング性を評価した。
-評価基準-
◎:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上に目視で確認できず、感光体上を長手方向に顕微鏡で観察してもトナーのスジ状のすり抜けが確認できない。
○:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上にも目視で確認できない。
△:クリーニング不良ですり抜けたトナーが感光体上は目視でわずかに確認できるが、印刷紙上では確認できない。
×:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上にも目視で確認できる。
【0214】
<低温定着性>
定着ローラーとしてテフロン(登録商標)ローラーを使用した複写機MF2200(株式会社リコー製)の定着部を改造した装置を用いて、タイプ6,200紙(株式会社リコー製)に複写テストを行った。
具体的には、定着温度を変化させてコールドオフセット温度(定着下限温度)を求め、下記評価基準に基づき評価した。
定着下限温度の評価条件は、紙送りの線速度を120mm/秒間~150mm/秒間、面圧を1.2kgf/cm2、ニップ幅を3mmとした。
-評価基準-
◎:110℃未満
○:110℃以上、120℃未満
△:120℃以上、130℃未満
×:130℃以上
【0215】
<耐熱保存性>
各トナーを50℃で8時間保管した後、42メッシュの篩で2分間篩い、金網上の残存量(g)を測定し、篩にかける前のトナーの量(g)と篩にかけた後の残存量(g)とから、金網上の残存率(%)を測定し、下記の評価基準で評価した。 このとき、耐熱保存性が良好なトナーほど、残存率は小さい。
-評価基準-
◎:残存率が10%未満
○:残存率が10%以上、20%未満
△:残存率が20%以上、30%未満
×:残存率が30%以上
【0216】
【0217】
【0218】
表1~表2に示すように、実施例1から実施例5のトナーでは、クリーニング性、低温定着性、耐熱保存性に優れることが示された。
これに対して、比較例1では、SF2が低いためクリーニング部でのトナー粒子の転がり性が高くなりすぎ、クリーニング性が悪化する。また、外添剤の被覆率も高くなるため定着性が悪化した。
比較例2では、SF2が高いためクリーニング部でのトナー付着力が高くなり、HM環境でのクリーニング性が悪化する。また、トナー表面のシリカ被覆率が低くなるためスペーサー効果がなくなり、保存性が悪化した。
比較例3では、Sdrが小さく、また、外添剤の遊離量が増えるため、定着性が悪化しまた、LL環境でのクリーニング性が悪化した。
比較例4では、Sdrが大きく、外添剤の被覆率が低下し、クリーニング部での付着力が高くなりHM環境でのクリーニング性が悪化した。
【0219】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子と、外添剤と、を含み、
形状指数SF2の平均値が112以上124以下であり、
表面の算術平均高さSaが1μm以下における凹凸形状指数Sdrが18%以上34%以下である、ことを特徴とするトナーである。
<2> 前記トナー母体粒子の表面に有機微粒子を有し、
前記有機微粒子が2種以上の樹脂を含有し、
前記トナー母体粒子がコアシェル構造を有する、前記<1>に記載のトナーである。
<3> 前記有機微粒子がスチレン-アクリル樹脂を含有する、前記<2>に記載のトナーである。
<4> 前記外添剤がシリカである、前記<1>から<3>のいずれかに記載のトナーである。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナーを収容することを特徴とするトナー収容ユニットである。
<6> 静電潜像担持体と、
該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
記録媒体に転写された転写像を定着部材により定着させる定着手段と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
<7> 静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、
記録媒体に転写された転写像を定着部材により定着させる定着工程と、を含むことを特徴とする画像形成方法である。
【0220】
前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナー、前記<5>に記載のトナー収容ユニット、前記<6>に記載の画像形成装置、及び前記<7>に記載の画像形成方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。