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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159831
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】エッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20231025BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20231025BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
H01L21/302 201B
C23C14/34 D
H01L21/31 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069772
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 敏治
(72)【発明者】
【氏名】菅原 洋紀
【テーマコード(参考)】
4K029
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K029CA05
4K029CA08
4K029CA15
4K029KA01
5F004AA01
5F004AA16
5F004BA11
5F004BB12
5F004BB18
5F004BB24
5F004BB26
5F004BC06
5F004BD05
5F004CA03
5F004CA05
5F004CA08
5F004DA23
5F004DA25
5F004DA26
5F004DB03
5F004DB07
5F004DB08
5F004DB09
5F004DB23
5F004EA19
5F004EA28
5F004EB04
5F045AA19
5F045AB32
5F045AB33
5F045AB39
5F045AC11
5F045AC15
5F045AC16
5F045AF08
5F045BB19
5F045DP03
5F045DP23
5F045EK07
5F045EN04
5F045HA13
5F045HA25
(57)【要約】
【課題】より簡素な装置を用いてエッチングを行う技術を提供する。
【解決手段】基板にエッチング用のイオンビームを照射するイオンソースを含む照射装置と、基板を搬送して、複数回、イオンビームの照射領域の基板による通過を行わせる搬送装置を備え、イオンビームの照射方向は、照射領域にある基板の表面の法線に対して傾斜しており、複数回の照射領域の基板による通過には、第1の通過と第2の通過が少なくとも含まれ、第1の通過におけるイオンビームの基板に対する照射方向と、第2の通過におけるイオンビームの基板に対する照射方向は、互いに異なるエッチング装置を用いる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にエッチング用のイオンビームを照射するイオンソースを含む照射装置と、
前記基板を搬送して、複数回、前記イオンビームの照射領域の前記基板による通過を行わせる搬送装置と、
を備え、
前記イオンビームの照射方向は、前記照射領域にある前記基板の表面の法線に対して傾斜しており、
前記複数回の前記照射領域の前記基板による通過には、第1の通過と第2の通過が少なくとも含まれ、
前記第1の通過における前記イオンビームの前記基板に対する照射方向と、前記第2の通過における前記イオンビームの前記基板に対する照射方向は、互いに異なる
ことを特徴とするエッチング装置。
【請求項2】
前記イオンソースは、前記イオンビームを照射する開口部が長手方向を有するリニアイオンソースである
ことを特徴とする請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記イオンソースの設置方向は、前記長手方向が前記搬送装置による前記基板の搬送方向に対して斜めになるような方向である
ことを特徴とする請求項2に記載のエッチング装置。
【請求項4】
前記照射装置は、2つの前記イオンソースを含み、
前記2つのイオンソースの前記搬送方向に対する設置方向は互いに異なる
ことを特徴とする請求項3に記載のエッチング装置。
【請求項5】
前記イオンソースの設置方向は、前記長手方向が前記搬送方向に対して45°±15°となるような方向である
ことを特徴とする請求項4に記載のエッチング装置。
【請求項6】
前記イオンソースの設置方向は、前記長手方向が前記搬送方向に対して45°±5°となるような方向である
ことを特徴とする請求項5に記載のエッチング装置。
【請求項7】
前記照射装置は、4つの前記イオンソースを含み、
前記4つのイオンソースの前記搬送方向に対する設置方向は互いに異なる
ことを特徴とする請求項3に記載のエッチング装置。
【請求項8】
前記4つのイオンソースの設置方向は、略90°ずつ異なる
ことを特徴とする請求項7に記載のエッチング装置。
【請求項9】
前記搬送装置は、前記基板を前記搬送方向において往復移動させることが可能であり、
前記照射装置は、2つの前記イオンソースを含み、
前記2つのイオンソースの前記搬送方向に対する設置方向は互いに異なる
ことを特徴とする請求項3に記載のエッチング装置。
【請求項10】
前記基板の前記法線を含む断面を、前記法線を境界として第1の側と第2の側に分けたとき、前記2つのイオンソースはそれぞれ、前記イオンビームが前記第1の側に照射されるように前記照射方向が前記法線から傾斜している第1の状態と、前記イオンビームが前記第2の側に照射されるように前記照射方向が前記法線から傾斜している第2の状態と、
の間で切り替え可能である
ことを特徴とする請求項9に記載のエッチング装置。
【請求項11】
前記2つのイオンソースは、前記基板が前記搬送方向の往路を移動している間は、前記第1の状態で前記イオンビームを照射し、前記基板が前記搬送方向の復路を移動している間は、前記第2の状態で前記イオンビームを照射する
ことを特徴とする請求項10に記載のエッチング装置。
【請求項12】
前記2つのイオンソースの設置方向は、略90°異なる
ことを特徴とする請求項11に記載のエッチング装置。
【請求項13】
前記2つのイオンソースの設置方向は、略180°異なり、
前記2つのイオンソースはそれぞれ、前記搬送方向に対する前記長手方向の角度を略90°変更することが可能である
ことを特徴とする請求項9に記載のエッチング装置。
【請求項14】
前記2つのイオンソースは、前記基板が前記搬送方向の往路を移動している間と、前記基板が前記搬送方向の復路を移動している間とで、前記搬送方向に対する前記長手方向の角度を異ならせる
ことを特徴とする請求項13に記載のエッチング装置。
【請求項15】
前記搬送装置は、前記基板を前記搬送方向において往復移動させることが可能であり、
前記基板の前記法線を含む断面を、前記法線を境界として第1の側と第2の側に分けたとき、前記イオンソースは、前記イオンビームが前記第1の側に照射されるように前記照射方向が前記法線から傾斜している第1の状態と、前記イオンビームが前記第2の側に照射されるように前記照射方向が前記法線から傾斜している第2の状態と、の間で切り替え可能であり、
前記イオンソースは、前記搬送方向に対する前記長手方向の角度を変更することが可能である
ことを特徴とする請求項3に記載のエッチング装置。
【請求項16】
前記イオンソースは、前記第1の状態と前記第2の状態の間の切り替えと、前記搬送方向に対する前記長手方向の角度の変更と、を組み合わせることにより、前記基板に対して前記イオンビームを四方向から照射することが可能である
ことを特徴とする請求項15に記載のエッチング装置。
【請求項17】
前記イオンビームの照射領域の外において、前記基板の表面と平行な面内で前記基板を回転させる回転装置をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載のエッチング装置。
【請求項18】
前記搬送装置は、前記基板を前記搬送装置による搬送方向において往復移動させることが可能であり、
前記回転装置は、前記基板が前記搬送方向の往路を移動しながら前記イオンビームの照射を受けた後に前記基板を回転させることにより、前記基板が前記搬送方向の復路において、前記往路とは異なる角度から前記イオンビームの照射を受けるようにする
ことを特徴とする請求項17に記載のエッチング装置。
【請求項19】
基板にエッチング用のイオンビームを照射するイオンソースを含む照射装置と、
前記基板を搬送して、複数回、前記イオンビームの照射領域の前記基板による通過を行わせる搬送装置と、
を備え、
前記イオンビームの照射方向は、前記照射領域にある前記基板の表面の法線に対して傾斜しており、
前記複数回の前記照射領域の前記基板による通過には、第1の通過と第2の通過が少なくとも含まれ、
前記第1の通過と前記第2の通過の間に、前記イオンビームの照射領域の外において、前記基板の表面と平行な面内で前記基板を回転させる回転装置をさらに備える
ことを特徴とするエッチング装置。
【請求項20】
前記イオンソースは、前記イオンビームを照射する開口部が長手方向を有するリニアイオンソースである
ことを特徴とする請求項19に記載のエッチング装置。
【請求項21】
前記搬送装置は、前記基板を前記搬送装置による搬送方向において往復移動させることが可能であり、
前記回転装置は、前記基板が前記搬送方向の往路を移動しながら前記イオンビームの照射を受けた後に前記基板を回転させることにより、前記基板が前記搬送方向の復路において、前記往路とは異なる角度から前記イオンビームの照射を受けるようにする
ことを特徴とする請求項20に記載のエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置や液晶表示装置などのフラットパネル表示装置が用いられている。例えば有機EL表示装置は、2つの向かい合う電極の間に、発光を起こす有機物層である発光層を有する機能層が形成された、多層構成の有機EL素子を含んでいる。有機EL素子の機能層や電極層は、成膜装置のチャンバ内で、スパッタリングや蒸着などの手法により、ガラス基板にマスクを介して成膜材料を付着させることで形成される。また、スパッタリング等によって形成された膜に対して、イオンビームを照射するイオンビームエッチングにより、膜の一部を削って除去する処理を行うことが知られている。
【0003】
イオンビームエッチングについて、被照射対象を回転または移動させながらイオンビームを照射する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1(特表2013-503414号公報)には、平行イオンビームが照射されるインライン処理システムにおいて、円形基板を回転させながら移動させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-503414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、基板を回転させながら搬送させるために、基板を特殊なキャリアに載置している。そのため、大型の基板に対応すると装置が大型になるという課題がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、より簡素な装置を用いてエッチングを行う技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
基板にエッチング用のイオンビームを照射するイオンソースを含む照射装置と、
前記基板を搬送して、複数回、前記イオンビームの照射領域の前記基板による通過を行わせる搬送装置と、
を備え、
前記イオンビームの照射方向は、前記照射領域にある前記基板の表面の法線に対して傾斜しており、
前記複数回の前記照射領域の前記基板による通過には、第1の通過と第2の通過が少なくとも含まれ、前記第1の通過における前記イオンビームの前記基板に対する照射方向と、前記第2の通過における前記イオンビームの前記基板に対する照射方向は、互いに異なる
ことを特徴とするエッチング装置である。
【0009】
本発明は、また、以下の構成を採用する。すなわち、
基板にエッチング用のイオンビームを照射するイオンソースを含む照射装置と、
前記基板を搬送して、複数回、前記イオンビームの照射領域の前記基板による通過を行わせる搬送装置と、
を備え、
前記イオンビームの照射方向は、前記照射領域にある前記基板の表面の法線に対して傾斜しており、
前記複数回の前記照射領域の前記基板による通過には、第1の通過と第2の通過が少なくとも含まれ、
前記第1の通過と前記第2の通過の間に、前記イオンビームの照射領域の外において、前記基板の表面と平行な面内で前記基板を回転させる回転装置をさらに備える
ことを特徴とするエッチング装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より簡素な装置を用いてエッチングを行う技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1に係る成膜装置の内部の概略構成図である。
図2】実施例1に係る成膜装置の動作を示すフローチャートである。
図3】実施例1に係る成膜装置におけるエッチング動作説明図である。
図4】実施例1に係る成膜装置の内部の概略構成図である。
図5】実施例1に係るイオンソースの説明図である。
図6】実施例1に係るエッチングエリアの説明図である。
図7】実施例1に係るイオンビーム照射方向の説明図である。
図8】実施例1に係るイオンビーム照射により形成される膜の説明図である。
図9】実施例2に係るエッチングエリアの説明図である。
図10】実施例2に係るイオンビームの照射方向の可変機構の説明図である。
図11】実施例3に係るエッチングエリアの説明図である。
図12】実施例4に係るエッチングエリアの説明図である。
図13】実施例5に係るエッチングエリアの説明図である。
図14】実施例6に係るエッチングエリアの説明図である。
図15】実施例7に係るエッチングエリアの説明図である。
図16】実施例7に係るエッチングエリアの変形例の説明図である。
図17】実施例8に係るエッチングエリアの説明図である。
図18】実施例8に係るエッチングエリアの説明図の続きである。
図19】実施例8に係るエッチングエリアの変形例の説明図である。
図20】凹凸基板に形成される膜を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成およびソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
本発明は、基板等の成膜対象物の表面にスパッタリングや蒸着により成膜材料の薄膜を形成する成膜装置に好適である。本発明は、成膜装置、成膜方法、エッチング装置、エッチング方法、成膜装置やエッチング装置の制御方法、として捉えられる。本発明はまた、電子デバイスの製造装置やその制御方法、電子デバイスの製造方法としても捉えられる。本発明はまた、成膜方法、エッチング方法や制御方法をコンピュータに実行させるプログラムや、当該プログラムを格納した記憶媒体としても捉えられる。記憶媒体は、コンピュ
ータにより読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。
【0014】
本発明は、被処理対象である基板の表面に所望のパターンの薄膜を形成する成膜装置に好ましく適用できる。基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属、シリコンなど任意のものを利用できる。成膜材料としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物)など任意のものを利用できる。基板には、基板材料の表面に既に1つ以上の成膜が行われたものを含んでもよい。本発明の技術は、典型的には、電子デバイスや光学部材の製造装置に適用される。特に、有機EL素子を備える有機ELディスプレイ、それを用いた有機EL表示装置などの有機電子デバイスに好適である。本発明はまた、薄膜太陽電池、有機CMOSイメージセンサにも利用できる。
【0015】
(実施例1)
図1図8を参照して、本発明の実施例1に係る成膜方法及び成膜装置について説明する。図1は本発明の実施例1に係る成膜装置の内部の概略構成を示す断面図であり、成膜装置の内部全体を上方から見た場合の概略構成を示している。図2は本発明の実施例1に係る成膜装置の動作を示すフローチャートである。図3は本発明の実施例1に係る成膜装置におけるエッチング動作説明図である。図4は本発明の実施例1に係る成膜装置の内部の概略構成図であり、エッチング用ビーム照射装置が設けられている付近を、基板の搬送方向に見た概略構成を示している。図5は本発明の実施例1に係るエッチング用ビーム照射装置としてのイオンソースの説明図であり、図5(a)はイオンソースのビーム照射面を示す正面図であり、図5(b)は図5(a)中のAA断面図であり、図5(c)はイオンビームの長手方向のエッチング強度を示すグラフである。図6は本実施例のエッチングエリア300cの構成を側面から見た図である。図7はイオンビーム照射方向と基板の凹凸の関係を示す図である。図8は本発明の実施例1に係るイオンビーム照射の効果についての説明図である。
【0016】
<成膜装置の全体構成>
特に、図1を参照して、本実施例に係る成膜装置1の全体構成について説明する。成膜装置1は、成膜処理される基板10が収容されるストッカ室100と、室内を大気状態と真空状態とに切り替える気圧切替室200と、基板10の処理面に各種処理を行う処理室300とを備えている。
【0017】
ストッカ室100は、基板10を保持しながら搬送可能な基板搬送装置15を複数収容する役割を担っている。このストッカ室100には、複数の基板搬送装置15が載置される載置台111と、載置台111を往復移動させる駆動機構とを備えている。この駆動機構は、ボールねじを回転させるモータなどの駆動源121と、載置台111の移動方向を規制するガイドレール122などにより構成される。ただし、載置台111を往復移動させる駆動機構については、このような構成に限られることはなく、各種公知技術を採用し得る。また、載置台111には、基板搬送装置15の移動方向を規制するガイドレール112が複数設けられている。成膜装置1は、基板10が基板搬送装置に搬送されながら各種の処理を受ける、インライン搬送型の装置である。
【0018】
気圧切替室200は、大気状態にあるストッカ室100から搬入される基板搬送装置15を、真空状態にある処理室300に送り込むために、処理室300に送られるよりも前の段階で、室内を大気状態から真空状態に切り替える役割を担っている。また、本実施例に係る気圧切替室200には、基板10を加熱するヒータ221、222が設けられている。すなわち、基板10の材料によっては、常温のまま処理室300に搬送されると、基板10から各種ガスが発生し、成膜時に悪影響が出てしまう。そこで、そのような基板10については、ヒータ221、222により加熱してガスを強制的に早期に発生させてしまうことで、処理室300内でのガス発生を抑制する。また、気圧切替室200にも、基
板搬送装置15の移動方向を規制するガイドレール210が設けられている。
【0019】
処理室300は、内部が真空雰囲気となるチャンバー301と、基板搬送装置15の移動方向を規制するガイドレール302とを備えている。なお、実施例によっては、処理室300において基板搬送装置15を往復移動させる場合がある。往復移動のための機構については、ボールねじによる駆動機構やラックアンドピニオン機構などの各種公知技術を適用できる。
【0020】
処理室300内には、前処理エリア300aと、成膜エリア300bと、エッチングエリア300cとが設けられている。前処理エリア300aには、成膜処理に先立って基板10の処理面の洗浄等の前処理を行うための基板処理装置310が設けられている。成膜エリア300bには、基板10の処理面に成膜処理を行う成膜材料照射装置としてのスパッタ装置320が設けられている。エッチングエリア300cには、スパッタ装置320により基板10上に形成された膜に対してエッチングを行うエッチング用ビーム照射装置330が設けられている。なお、図1のエッチングエリア300cは簡略化されたものであり、より詳細な構成については実施例ごとに説明する。
【0021】
前処理エリア300aの基板処理装置310の前段に設けられた空間は、基板処理装置310による前処理を施す前の基板搬送装置15が待機するスペースである。本実施例に係る成膜装置1は、基板10を保持しながら搬送しつつ、基板10に対して一連の処理を施す、いわゆるインライン型の構成をなしている。
【0022】
図1に示した構成は一例を示したに過ぎず、本発明の成膜装置はこれに限定されない。例えば、基板10が、被成膜面が上(または下)を向いた状態で基板キャリアに保持されたまま、基板キャリアの移動に伴って複数のチャンバー間を移動する構成であってもよい。
【0023】
<成膜装置の全体的な動作>
成膜装置1が備える制御装置Cは、載置台111を往復移動させる駆動機構、気圧切替室200内の気圧、ヒータ221、222、処理室300内の気圧、基板処理装置310、スパッタ装置320、及び、エッチング用ビーム照射装置330の制御の他、基板搬送装置15による基板10の搬送制御を行う。制御装置Cは、処理フローの種々の動作(成膜工程、エッチング工程など)の制御を実行する。制御装置Cは、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/Oなどを有するコンピュータにより構成可能である。この場合、制御装置Cの機能は、メモリ又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御装置Cの機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。また、制御装置Cは、制御対象となる各種装置等と接続された配線を通じて、制御命令を伝達するように構成してもよいし、無線により、各種装置等に対して制御命令を伝達するように構成してもよい。
【0024】
(処理フロー)
以下、特に、図2を参照して、成膜装置1の全体的な動作について説明する。
【0025】
<<準備工程>>
ストッカ室100には、それぞれ基板10を保持する基板搬送装置15が複数収容されている。そのうち処理対象となる基板10を保持する基板搬送装置15が、ストッカ室100から気圧切替室200に搬送される(ステップS101)。気圧切替室200において、減圧動作が行われ、室内が大気状態から真空状態に切り替えられる。また、基板10
の材料によっては、基板10への加熱処理が同時に行われる(ステップS102)。例えば、約十分ほどの加熱処理により、100℃から180℃程度まで基板10が加熱される。その後、基板10は、気圧切替室200から処理室300の前処理エリア300aに搬送される(ステップS103)。前処理エリア300aでは、基板処理装置310により基板10の処理面に対してイオンビーム照射による表面処理が施される(ステップS104)。
【0026】
<<成膜工程>>
次に、基板10は成膜エリア300bに搬送され(ステップS105)、スパッタ装置320により基板10の処理面に対しスパッタリング処理が施される(ステップS106)。スパッタ装置320については、公知技術であるので、その詳細な説明は省略するが、高電圧が印加されることにより、成膜材料が放出されるターゲット等を備えている。なお、ターゲットについては、平板状のものを採用することもできるし、回転可能に構成された円筒状のものを採用することもできる。
【0027】
<<エッチング工程>>
成膜処理が施された基板10は、エッチングエリア300cに搬送され(ステップS107)、エッチング用ビーム照射装置330によるエッチング処理が施される(ステップS108)。
【0028】
なお、図1のような、処理室300の一端側に設けられたストッカ室100と気圧切替室200において、基板搬送装置15の搬入と搬出を行う構成には限定されない。例えば、処理室300の一端側に設けられたストッカ室100と気圧切替室200については、基板搬送装置15の搬入動作のみ行うようにして、処理室300の他端側に基板搬送装置15の搬出を行うための気圧切替室と、処理後の基板10を収容するためのストッカ室とを設ける構成を採用することもできる。基板の搬出入に関する構成は、エッチング処理を行う際の基板10の搬送経路に応じて、適宜設計すればよい。
【0029】
本実施例に係る成膜装置1は、例えば、前処理を伴う種々の電極形成に適用可能である。具体例としては、例えば、FC-BGA(Flip-Chip Ball Grid Array)実装基板向けのメッキシード膜や、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス向けのメタル積層膜の成膜が挙げられる。また、LEDのボンディング部における導電性硬質膜、MLCC(Multi-Layered Ceramic Capacitor)の端子部膜の成膜なども挙げられる。その他、電子部品パッケージにおける電磁シールド膜やチップ抵抗器の端子部膜の成膜にも適用可能である。基板10のサイズは特に限定されないが、本実施例では、200mm×200mm程度のサイズの基板10を用いている。また、基板10の材料は任意であり、例えば、ポリイミド、ガラス、シリコン、金属、セラミックなどの基板が用いられる。
【0030】
なお、1つの変形例として、ステップS107~S108の処理を繰り返してもよい。その場合、S108のエッチング処理後に、制御装置Cによって、スパッタリング回数Xが所定の回数Nに達したか否かが判定される。Nに達していない場合には、基板10は、成膜エリア300bに戻されて、成膜処理とエッチング処理が再度施される。成膜処理とエッチング処理がN回繰り返された後に、処理後の基板10は、気圧切替室200に送られて、真空状態から大気状態に切り替えられた後に、ストッカ室100に搬出される。
【0031】
この変形例によれば、1回のスパッタリングにより形成された膜厚の不均衡が、そのスパッタリングの直後のエッチング処理により解消される。そして、スパッタリングとエッチング処理を繰り返すことで徐々に膜厚が厚くなっていくので、形成される膜の厚さを一様にすることができる。また、ここで、図20(b)の状態からさらにスパッタリングを
進めると、頂面11aに堆積した膜20がオーバーハングする場合がある。その結果、底面12aに堆積した膜20の凸形状の裾の部分と、頂面11aに堆積した膜20のオーバーハング部分との間に隙間(ボイド)ができる可能性がある。しかし、この変形例によれば、スパッタリングとエッチング処理が交互に繰り返されるので、膜20における隙間の発生を防止できる。この変形例のように、エッチングエリア300cと成膜エリア300bの処理を繰り返し行う手法は、後掲の各実施例にも適用可能である。
【0032】
<基板処理装置及びエッチング用ビーム照射装置>
特に、図3及び図4を参照して、基板処理装置310及びエッチング用ビーム照射装置330について説明する。基板処理装置310とエッチング用ビーム照射装置330の基本的な構成は同一である。すなわち、これら基板処理装置310とエッチング用ビーム照射装置330は、イオンビーム照射により基板の表面(処理面)に対し洗浄ないしエッチングの処理を行うための装置である。よってここでは、エッチング用ビーム照射装置330について説明する。エッチング用ビーム照射装置330は、イオンソース331と、イオンソース331に電圧を印加する高圧電源336とを備えている。図4には、イオンソース331から照射されたイオンビーム341も示している。
【0033】
処理室300におけるチャンバー301は気密容器であり、排気ポンプ303によって、その内部は真空状態(又は減圧状態)に維持される。ガス供給弁304を開き、チャンバー301内にガスを供給することで、処理に対する適切なガス雰囲気(又は圧力帯)に適宜変更ができる。チャンバー301全体は電気的に接地されている。基板搬送装置15は、基板10の処理面が鉛直方向に沿うように基板10を垂直な姿勢で保持しつつ、チャンバー301の底面に敷設されたガイドレール302上を移動可能に構成されている。ガイドレール302は基板10の表面と平行な方向に延設されており、不図示の駆動機構により基板搬送装置15は基板10の表面に平行な方向に沿って移動する。
【0034】
基板搬送装置15は、基板10を保持する保持部材(基板ホルダ)15aと、保持部材15aを支える支持部材(搬送キャリア)15bと、保持部材15aと支持部材15bとを電気的には絶縁しつつ機械的に接続する接続部材15cと、支持部材15bの下端に設けられる転動体15dとを備えている。転動体15dがガイドレール302上を転動することにより、基板搬送装置15は、ガイドレール302に沿って移動する。ここで、保持部材15aによる基板10を保持する面を保持面Fと称する。
【0035】
図3は、基板搬送装置15がY方向に移動しながらエッチング処理がなされるエッチング工程中の、エッチング用ビーム照射装置330と基板搬送装置15の様子を示している。なお、イオンソース331と基板10と間の距離は約100~200mmに設定されている。また、高圧電源336はイオンソース331にアノード電圧(~数kV)を印加するように構成されている。
【0036】
<イオンソース>
特に、図5を参照して、イオンソース331について、より詳細に説明する。イオンソース331は、カソード332と、ビーム照射面333と、アノード334と、永久磁石335とを備えている。本実施例ではカソード332がイオンソース331の筐体を兼ねている。カソード332とアノード334はそれぞれSUSにより形成され、両者は電気的に絶縁されている。カソード332はチャンバー301に固定されることで、電気的に接地されている。一方、アノード334は高圧電源336に接続されている。この構成において、高圧電源336からアノード334に対し高圧が印加されると、筐体(カソード332)のビーム照射面333に設けられた出射開口からイオンビームが出射する。なお、イオンソース331の原理としては、筐体の背面側からガスを導入して筐体内部でイオンを発生するタイプと、筐体の外側に存在する雰囲気ガスをイオン化するタイプとがある
が、いずれを用いてもよい。図4においては、後者の場合を示しており、ガス供給弁304を開くことで、チャンバー301内にガスが供給される。ガスとしては、アルゴンガス、酸素ガス、窒素ガスなどを用いることができる。
【0037】
本実施例に係るイオンソース331は、出射開口の開口部が長手方向と短手方向を持つように、約300~400mm×約70mmの長細い形状(ライン形状又はトラック形状)のビーム照射面333を有している。これによりイオンソース331は、リニアイオンソースとして構成される。そして、出射開口の長手方向が基板10の搬送方向に対して交差するように、イオンソース331が配置されている。このような縦長のイオンソース331を用いることで、基板10の縦方向(搬送方向に対して直交する方向)全域に渡ってイオンビームが照射可能となる。言い換えると、基板10の、搬送方向に直交するZ方向における上辺に位置する点から、下辺に位置する点までの間をまたぐような、イオンビームの照射領域を設定できる。このようなイオンビームの照射領域を通過するように基板10を搬送することで、搬送方向に沿った1回のビーム走査で基板10の全面に対しビームを照射できる。その結果、表面処理の高速化(生産性向上)を図ることができる。
【0038】
図5(c)は、イオンソース331から出射されるイオンビームの長手方向のエッチング強度を示している。同図に示されるように、イオンビームの長手方向の強度は一様ではなく、イオンソース331の磁場設計に依存して、破線L2のように中央部分の強度が大きくなるか、実線L1のように中央部分の強度が小さくなるかのいずれかの分布をとる。図5(c)のようなエッチング強度の分布に偏りがあると、エッチング量にムラが生じるため望ましくない。そこで、基板10に対して、1.5~2倍程度のサイズのビーム照射面333を用いることで、エッチング強度の分布を均一することができる。
【0039】
<基板処理装置による表面処理の流れ>
上記のように構成される基板処理装置310によれば、基板10が処理室300の前処理エリア300aに搬送されると、制御装置Cが、高圧電源を制御し、イオンソースによるビーム照射を開始する。その状態で、制御装置Cが、基板搬送装置15を一定速度で移動させ、基板10をイオンビームに通過させる。このような方法により、基板10の表面にイオンビームが照射され、基板10の表面側は表面処理(洗浄処理)が施される。このようなビーム走査を行う構成を採用したことで、基板10の面積よりも小さい照射範囲のイオンビームで基板全体の処理を行うことができるため、イオンソースの小型化、ひいては装置全体の小型化を図ることができる。また、基板10の処理面が鉛直方向に沿うような姿勢で基板10を支持し、処理面に対して水平方向にイオンビームを照射する構成を採用したことで、エッチングによって削られたパーティクルが重力によって落下し、基板10の処理面に残留しないため、パーティクルの残留による処理ムラの発生を防止することができるという利点もある。
【0040】
<エッチング工程>
エッチング工程について説明する。まず、図20を参照して、凹凸のある基板への成膜について説明する。図20(a)は、凸部11と凹部12を有する基板10に対してスパッタ装置320によるスパッタリングが行われる様子を示し、スパッタ装置320のターゲットから放出される成膜材料が矢印で示されている。図20(b)は、スパッタリングの結果、基板10の表面に形成された膜20を示している。このように、凹凸基板への成膜において、凸部11の頂面11aや凹部12の底面12aと比べて側壁部13に膜が形成されにくい、つまり、サイドウォールカバレッジが低くなるという課題を、本願発明者らは発見した。そこで、凹凸基板に形成された膜に対してイオンビームを用いたエッチング処理を行い、膜厚を一様にすることを検討した。
【0041】
図6及び図7を参照して、エッチング工程について、より詳細に説明する。本実施例に
係る成膜方法及び成膜装置は、凸部11と凹部12が形成された基板10の表面上に薄膜を形成する際に好適に用いられる。本実施例のエッチング工程は、基板10における凹凸の方向を問わず好適に用いられる。例えば、基板10上に平行に溝が掘られて凹凸を成す場合でも、縦横方向に凹凸形状が形成される場合でも、直線的ではなく曲線的な溝が掘られて凹凸を成している場合でもよい。また、複数の直線または曲線の凹凸が組み合わさって複雑な形状を成していてもよい。また、基板10に穴が設けられている場合でもよい。本実施例に係るエッチング工程においては、上記のような様々な凹凸がある場合でも、多方向からイオンビームが斜めに照射されるようなエッチングを行うことで、成膜時の膜厚を一様にできる。
【0042】
図6は、本実施例でのエッチングエリア300cの構成を示す側面図である。基板10は、イオンビームを照射されながらエッチングエリア300cを移動する。基板10には、目印としてのオリフラ10aを設けている。図中では基板搬送装置15の保持部材15aは省略しているが、便宜上、保持部材15aの外周の軌跡を破線15a’で示している。以下の説明において、搬送される基板10を保持する保持部材15aによる保持面Fの法線を、便宜上、「法線N」と称する。
【0043】
図示したように、エッチングエリア300cには、4つのイオンソース331a~331dが設けられている。まず、各イオンソースの設置角度について説明する。X方向の正側からYZ平面を見たとき(すなわち図6の紙面に正対視したとき)、イオンソース331a及びイオンソース331bの長手方向が搬送方向であるY方向と成す角度は、イオンソース331c及びイオンソース331dの長手方向がY方向と成す角度と異なっている。本実施例では、イオンソース331a及び331bの長手方向は、Y方向に対して紙面で-45°傾いている。また、イオンソース331c及び331dの長手方向は、Y方向に対して紙面で45°傾いている。各イオンソースの長手方向の長さは、このような傾き角をもって設置した場合に、基板10のZ方向での上端部と下端部を含むように設計される。これにより、基板10が移動しながら各イオンソースの照射領域を通過するときに、基板10の全面にイオンビームが照射される。イオンソース331aによる照射領域の通過を第1の通過とし、以下、イオンソース331b~イオンソース331dによる照射領域の通過を、第2の通過~第4の通過とする。
【0044】
なお、ここでは基板搬送方向とイオンソースの長手方向の角度を45°としたが、これに限定されない。例えば、45°からずれがあってもよいし、イオンソースごとに角度が異なっていてもよい。基板10に対して多方向からイオンビームを照射できるのであれば、搬送方向とイオンソース長手方向の角度は問わない。ただし、搬送方向とイオンソース長手方向が平行に近づくほど、イオンソースのサイズを大きくする必要があるため、典型的には45°±15°の範囲とするとよい。より好ましくは、45°±5°の範囲とするとよい。
【0045】
次に、各イオンソースからのイオンビーム照射方向について説明する。イオンソース331aからのイオンビーム341aの照射方向(第1の照射方向)は、イオンソース331bからのイオンビーム341bの照射方向(第2の照射方向)と異なっている。ここで、図6のB-B線での断面、すなわち、保持面Fに直交し、かつ、イオンソース331a及びイオンソース331bの長手方向と直交する面を第1の面とする。第1の面において、第1の照射方向と第2の照射方向は、法線Nに対して線対称となるように、法線Nに対して傾斜している。すなわち、第1の通過と第2の通過におけるイオンビームの照射方向は互いに異なる。
【0046】
同様に、イオンソース331cからのイオンビーム341cの照射方向(第3の照射方向)は、イオンソース331dからのイオンビーム341dの照射方向(第4の照射方向
)と異なっている。図6のC-C線での断面、すなわち、保持面Fに直交し、かつ、イオンソース331c及びイオンソース331dの長手方向と直交する面を第2の面とする。第2の面において、第3の照射方向と第4の照射方向は、法線Nに対して線対称となるように、法線Nに対して傾斜している。すなわち、第3の通過と第4の通過におけるイオンビームの照射方向は互いに異なる。なお本実施例では、第1の通過~第4の通過の照射方向は互いに異なっている。ただし、複数回の通過の中に、同じ照射方向からイオンビームの照射を受ける場合があってもよい。複数回の通過の中に、異なる照射方向から照射を行う組み合わせが少なくとも一組あればよい。
【0047】
4つのイオンソース331a~331dの設置角度と、イオンビーム341a~341dの照射方向が上記のように設定されることにより、基板10の全面に対して4方向から斜めにイオンビームを照射することが可能になる。図7は、凹凸のある基板10がエッチングエリア300cを移動する際のイオンビーム照射方向の変化を示す。ここでは、図6のD-D線における基板10の断面を示している。
【0048】
基板10がエッチングエリア300cに搬入されると、まず、イオンソース331aからのイオンビーム341aの照射領域を通過する。このとき図7(a)に示すように、イオンビーム341aは、基板10に対して法線Nから角度αだけ傾いて照射される。次に基板10は、イオンソース331bからのイオンビーム341bの照射領域を通過する。このとき図7(b)に示すように、イオンビーム341bは、基板10に対して法線Nから角度βだけ傾いて照射される。本実施例では、角度αと角度βは同一であり、イオンビーム341aの照射角度とイオンビーム341bの照射角度が法線Nに対して線対称となるように設計されている。
【0049】
次に基板10は、イオンソース331cからのイオンビーム341cの照射領域を通過する。このとき図7(c)に示すように、イオンビーム341cは、紙面において奥側から手前側に向かって傾いて照射される。次に基板10は、イオンソース331dからのイオンビーム341dの照射領域を通過する。このとき図7(d)に示すように、イオンビーム341は、紙面において手前側から奥側に向かって傾いて照射される。本実施例では、イオンビーム341cの照射角度とイオンビーム341dの照射角度が法線Nに対して線対称となるように設計されている。
【0050】
なお、イオンビーム341aと法線Nがなす角度α、及びイオンビーム341bと法線Nがなす角度βは、30°±10°程度が好適である。角度αや角度βが小さすぎると、法線方向から通常のエッチング処理を行った場合と大差ない効果しか得られなくなる。一方、角度αや角度βが大きすぎると、イオンビームが凹部12の底面まで届かなくなる。ただし角度はこれに限定されず、凹凸の形状やピッチ、凹部底面の幅や側壁部の高さに応じて適宜定めることができる。また、イオンビーム341c及び341dが法線Nとなす角についても同様である。また、エッチング処理後の膜厚の一様性を高める観点からは、凸部11の断面形状と凹部12の断面形状が対称的な形状の場合には、α=βとすると好適である。ただし、角度αとβは必ずしも同一でなくてもよい。
【0051】
図8は、実施例1に係るイオンビーム照射により形成される膜の説明図である。図8(a)は、基板10表面の凹凸形状の一例を模式的に説明する図であり、膜20を取り除いた状態を示している。図示例の基板10には、縦横方向に井桁状の凹部12が形成されている。この基板10に対して、イオンビーム341a~341dは90度ずつ向きを変えて四方向から照射される。
【0052】
図8(b)は、図8(a)のE-E線に対応する断面図である。図8(b)は、凹凸のある基板10にスパッタリングをしたときに、凸部11の頂部や凹部12の底面と比べて
側壁部13に膜20が形成されにくい様子を示している。しかし、搬送される基板10に対して本実施例の構成でエッチング処理を行うことにより、基板10の表面全体に対して、四方向から、斜めに(法線Nに対して傾き角を持った状態で)、イオンビーム341a~341dを照射することができる。
【0053】
ここで、イオンビームが膜20に照射されると、膜20はイオンビームの照射方向に対して垂直状に徐々に削られる。従って、イオンビーム341aが基板10に照射されると、図8(b)中、凸部11の頂面に形成された膜20のうち、図中右側付近を中心に削られる(符号20a1)。また、凹部12の底面に形成された膜20のうち、図中左側付近を中心に削られる(符号20b1)。なお、エッチングにより削られた材料の一部は、膜に付着して、膜の一部となる。このとき、特に、エッチング用ビームが照射されない部分に付着し易いため、膜厚の薄い部分が付着した材料により厚くなる傾向となる。続いて、イオンビーム341bが基板10に照射されると、凸部11の頂面に形成された膜20のうち、図中左側付近を中心に削られる(符号20a2)。また、凹部12の底面に形成された膜20のうち、図中右側付近を中心に削られる(符号20b2)。このときも同様に、削られた成膜材料の一部が、膜に付着してその一部となる。
【0054】
その後、イオンビーム341c及び341dについても同様に、凸部11の頂面に形成された膜や凹部12の底面に形成された膜を削り取り、一部が側壁部に付着して膜の一部となる。図8(c)は、四方向からのイオンビーム照射が終了してエッチング処理が完了したときの基板10の断面図であり、膜20の膜厚がエッチング処理前と比べて一様になっている。言い換えると、側壁部における相対的な膜厚不足が解消され、サイドウォールカバレッジが良好になっている。
【0055】
<効果>
本実施例に係る成膜方法及び成膜装置によれば、スパッタリングによる成膜後に、基板の搬送方向に対して複数の方向からのエッチングが行われる。その結果、膜厚の厚い部分は削られ、膜の薄い部分は厚くなる。これにより膜の表面が平坦となり膜厚が一様に均される。
【0056】
なお、本実施例では四方向からのエッチングとしたが、これには限定されない。例えば、基板上の凹凸の形状やサイズ(幅や高さ)によっては、120度ずつ三方向からのイオンビーム照射や、60度ずつ六方向からのイオンビーム照射など、四方向以外でもよい。また、本実施例では90°ずつ角度を変えて4回のイオンビーム照射を行ったが、厳密に90度ずつでなくてもよく、例えば90°から±15°程度のずれがあってもよい。より好ましくは、4回のイオンビーム照射の角度が略90°ずつ異なっていればよい。略90°とは、多方向からエッチングを行うことによる効果に大きな影響のない範囲で90°に近接する角度範囲を指し、典型的には90°±5°である。
【0057】
また、本実施例ではスパッタリングとエッチング処理を1回ずつ行ったが、スパッタリングとエッチング処理の組み合わせを複数回繰り返してもよい。これにより、膜全体の膜厚を徐々に厚くすることができる。さらに、スパッタリングとエッチング処理の繰り返し回数を一定以上にすることで、上面が平面状の膜20を形成することもできる。もちろん、スパッタリングによる成膜後の基板や、凹凸のある基板に限らず、複数の方向からイオンビームを照射してエッチングを行う処置一般に、本実施例の装置を用いることができる。
【0058】
(実施例2)
図9及び図10を用いて、本発明の実施例2について説明する。上記実施例1では、基板10がエッチングエリア300cを1回通過する間に四方向からイオンビームを照射し
た。本実施例では、基板10がエッチングエリア300c内を往復する間に、四方向からエッチングビームを照射する。基本的な構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0059】
図9(a)に示したように、本実施例のエッチングエリア300cには、2つのイオンソース331e、331fが設けられている。まず、各イオンソースの設置角度について説明する。図の紙面に正対視したとき、イオンソース331eの長手方向が搬送方向と成す角度は、イオンソース331fの長手方向が搬送方向と成す角度と異なっている。本実施例では、イオンソース331eの長手方向は搬送方向に対して-45°傾いており、イオンソース331fの長手方向は搬送方向に対して45°傾いている。これにより、基板10が移動しながら各イオンソースの照射領域を通過するときに、基板10の全面にイオンビームが照射される。その他の点では、基板搬送方向とイオンソースの長手方向の角度の関係は上記実施例1と同様である。
【0060】
次に、各イオンソースからのイオンビーム照射方向について説明する。図9(a)において、イオンソース331eからのイオンビーム341eは、照射方向が紙面左下向きであり、法線Nに対して斜めに照射される。また、イオンソース331fからのイオンビーム341fは、照射方向が紙面左上向きであり、法線Nに対して斜めに照射される。
【0061】
図9(a)において基板10がエッチングエリア300cを下から上へ通過し終えると、基板搬送装置15は、図9(b)に示すように、基板10を逆向きに(上から下へ)搬送する。このときのイオンビーム照射方向について説明する。本実施例のエッチング用ビーム照射装置330は、イオンソース331の向きを変更して、イオンビーム341の照射方向を可変とする可変機構を備えている。可変機構はイオンビーム341の照射方向を、図10(a)のように基板10に対して斜め向き(紙面において右下向き)から、図10(b)のように逆向き(紙面において左下向き)に切り替えることができる。可変機構としては例えば、イオンソース331の回転軸を回転させるモータと、回転軸の軸受と、からなる構成を採用できる。ただし、可変機構についてはこれに限定されず、各種公知技術を採用し得る。なお、基板処理装置310の場合には、このような可変機構を設ける必要はない。もちろん、何らかの技術的理由によっては、基板処理装置310においても、イオンビームの照射方向を可変とする可変機構を設けても構わない。
【0062】
イオンビーム照射方向の切り替え後の状態を示す図10(b)においては、イオンソース331fからのイオンビーム341fの照射方向は紙面右下向きに切り替わり(符号341f’で示す)、イオンソース331eからのイオンビーム341eの照射方向は紙面右上向きに切り替わる(符号341e’で示す)。
【0063】
イオンビームの照射方向を、基板10の法線Nを含む断面において考えると、法線Nを境界として断面を第1の側と第2の側に分けたとき、可変機構は、イオンソース331eのイオンビーム341eが第1の側に照射されるように照射方向が法線Nから傾斜している第1の状態と、イオンビーム341eが第2の側に照射されるように照射方向が法線Nから傾斜している第2の状態と、を切り替え可能であると言える。これは、イオンソース331fについても同様である。
【0064】
このように本実施例では、2つのイオンソース331eと331fからのイオンビーム照射方向が搬送方向に対して互いに異なっており、かつ、イオンビーム照射方向を可変機構により切り替えることができる。さらに、基板搬送装置15は、基板10がエッチングエリア300cを往復するように搬送する。このように本実施例では、基板10の往復搬送と、イオンビームの照射方向変換を組み合わせることで、基板10に対して四方向からイオンビームを照射してエッチングを行うことができる。その結果、凹凸がある形状の基
板10であっても、頂面や底面と側壁部の膜厚を一様にすることが可能となる。本実施例を実施例1と比較すると、エッチング用ビーム照射装置330に可変機構が必要となる。また、基板10を往復移動させる必要があるため、基板搬送装置15の構成や基板10の搬送経路が複雑化する可能性がある。また、タクトタイムが長くなる可能性がある。その反面、照射装置の数自体は減らすことができるため、コスト面や装置の設置スペースの面で削減効果がある。
【0065】
(実施例3)
図11を用いて、本発明の実施例3について説明する。基本的な構成および作用については実施例2と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施例のイオンソース331は、イオンビーム照射方向を可変にする機構の点で実施例2と異なる。
【0066】
図11(a)に示したように、本実施例のエッチングエリア300cには、2つのイオンソース331g及び331hが設けられている。まず、各イオンソースの設置角度について説明する。紙面に正対視したとき、図11(a)の状態では、イオンソース331gおよび331hの長手方向は、搬送方向に対して-45°傾いている。本実施例のエッチング用ビーム照射装置330は、イオンソース331gおよび331hを、YZ平面内で90°回転させるイオンソース回転機構370(回転装置)を備えている(回転を矢印Rで示す)。図11(b)はイオンソース回転機構370による回転後の状態を示しており、イオンソース331gおよび331hの長手方向は、搬送方向に対して45°傾いている。イオンソース回転機構370としては例えば、イオンソース331gおよび331hを含むエッチング用ビーム照射装置330を支持するベースと、当該ベースをYZ面内で回転させる回転軸および駆動機構と、からなる構成を採用できる。ただし、回転機構についてはこれに限定されず、各種公知技術を採用し得る。なお、基板処理装置310の場合には、このような回転機構を設ける必要はない。もちろん、何らかの技術的理由によっては、基板処理装置310においても回転機構を設けても構わない。
【0067】
このような構成により。図11(a)におけるイオンソース331gからのイオンビーム341gは、照射方向が紙面左下向きとなり、イオンソース331hからのイオンビーム341hは、照射方向が紙面右上向きとなる。また、図9(b)におけるイオンソース331gからのイオンビーム341g’は、照射方向が紙面右下向きとなり、イオンソース331hからのイオンビーム341h’は、照射方向が紙面左上向きとなる。
【0068】
さらに実施例2と同様に、基板搬送装置15は、基板10を往復移動させることができる。このように本実施例では、基板10の往復搬送と、イオンソースを回転させることでイオンビームの照射方向を変換する機構を組み合わせることで、基板10に対して四方向からイオンビームを照射することができる。したがって、凹凸がある形状の基板10であっても、頂面や底面と側壁部の膜厚を一様にすることが可能となる。本実施例を実施例1と比較すると、イオンソース回転機構が必要となる。また、基板10を往復移動させる必要があるため、基板搬送装置15の構成や基板10の搬送経路が複雑化する可能性がある。また、タクトタイムが長くなる可能性がある。その反面、照射装置の数自体は減らすことができるため、コスト面や装置の設置スペースの面で削減効果がある。
【0069】
(実施例4)
図12を用いて、本発明の実施例4について説明する。基本的な構成および作用については実施例2、実施例3と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施例のエッチング用ビーム照射装置330は、イオンビーム照射方向を可変にする機構の点で、実施例2と実施例3を組み合わせている。
【0070】
図12(a)に示したように、本実施例のエッチングエリア300cには、イオンソース331iが設けられている。まず、イオンソースの設置角度について説明する。紙面に正対視したとき、図12(a)の状態では、イオンソース331iの長手方向は、搬送方向に対して-45°傾いている。この状態で基板10が紙面上方に向けて搬送されると、紙面右上方向からイオンビーム341i1が照射される。
【0071】
本実施例のエッチング用ビーム照射装置330は、実施例2と同様に、イオンビーム341の照射方向を可変にする可変機構を備えている。図12(a)で基板10の搬送が完了すると、矢印S1に示したように可変機構が動作して、イオンビーム341の照射方向が変化する。図12(b)の状態で基板10が紙面下方に向けて搬送されると、紙面左下方向からイオンビーム341i2が照射される。
【0072】
本実施例のエッチング用ビーム照射装置330は、さらに、実施例3と同様にイオンソース331をYZ平面内で90°回転させる回転機構を備えている(矢印Rで示す)。図12(c)は回転機構による回転後の状態を示しており、イオンソース331iの長手方向は、搬送方向に対して45°傾いている。この状態で基板10が紙面上方に向けて搬送されると、紙面右下方向からイオンビーム341i3が照射される。
【0073】
続いて、可変機構が、矢印S1で示すように、イオンビーム341の照射方向を再度変更して図12(d)の状態となる。この状態で基板10が紙面下方に向けて搬送されると、紙面左上方向からイオンビーム341i4が照射される。
【0074】
さらに実施例2、実施例3と同様に、基板搬送装置15は基板10を往復移動させる。本実施例の構成においても、基板10に対して四方向からイオンビームを照射することができる。したがって、凹凸がある形状の基板10であっても、頂面や底面と側壁部の膜厚を一様にすることが可能となる。本実施例では、エッチング用ビーム照射装置330において、照射角度の可変機構と、イオンソース長手方向の回転機構と、が必要となる。また、基板10を往復移動させる必要があるため、基板搬送装置15の構成や基板10の搬送経路が複雑化する可能性がある。また、タクトタイムが長くなる可能性がある。その反面、照射装置の数が1個となるため、コスト面や装置の設置スペースの面で削減効果がある。
【0075】
(実施例5)
図13を用いて、本発明の実施例5について説明する。本実施例の説明において、実施例1~4と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施例では、基板の被成膜面がZ方向上側を向いている構成とし、エッチング用のイオンビームはZ方向の上方から照射される。すなわち基板10は、XY平面内を移動する。このような構成は、基板10を保持する基板キャリアがレールによって支持されながら移動する平面移動機構により実現できる。かかる基板キャリアとその駆動機構を備えるインライン型の移動機構については既知であるため、詳細な説明を省略する。
【0076】
本実施例のエッチングエリア300cは、基板10がY方向に搬送される第1のエッチングエリア300c1、基板10がX方向に搬送される第2のエッチングエリア300c2、基板10がY方向に搬出される搬出エリア300dを含む。本実施例の基板搬送装置15は、基板10のXY平面内での向きを変えずに、移動方向を変化させる。すなわち基板搬送装置15は、基板10について、前後方向を保ったまま(XY平面におけるオリフラ10aの向きを一定にしたまま)、基板10の搬送方向をY方向からX方向に、またX方向からY方向に変化させる、基板方向転換機構の役割を兼ねている。
【0077】
第1のエッチングエリア300c1には、イオンソース331j及び331kが設けら
れている。イオンソース331j及び331kの長手方向は基板10の搬送方向(Y方向)に対して直交している。またイオンソース331j、331kの長手方向の長さは、イオンビーム341j、341kの照射領域が基板10のX方向の両端を含むように設計される。イオンビーム341jと341kの照射方向は、基板10に対して斜めに固定されている。これにより、イオンビーム341jは基板10に対して前側から照射され、イオンビーム341kは基板10に対して後側から照射される。基板10がこのような第1のエッチングエリア300c1を通過することで、基板10の全面に前後からのイオンビームが照射される。
【0078】
同様に、第2のエッチングエリア300c2には、イオンソース331l、331mが設けられている。イオンソース331l、331mの長手方向は基板10の搬送方向(X方向)に対して直交している。またイオンソース331l、331mの長手方向の長さは、イオンビーム341l、341mの照射領域が基板10のY方向の両端を含むように設計される。イオンビーム341lと341mの照射方向は、基板10に対して斜めに固定されている。これにより、イオンビーム341lは基板10に対して右側から照射され、イオンビーム341mは基板10に対して左側から照射される。基板10がこのような第1のエッチングエリア300c2を通過することで、基板10の全面に左右からのイオンビームが照射される。
【0079】
本実施例の構成においても、基板10に対して四方向からイオンビームを照射することができる。したがって、凹凸がある形状の基板10であっても、頂面や底面と側壁部の膜厚を一様にすることが可能となる。なお、本実施例では基板10がXY平面内を移動するものとしたが、上記各実施例と同様にYZ平面内を移動する構成であっても構わない。装置内での基板10の前後方向を変更せずに移動方向を変更するとともに、移動中の基板に対して複数の方向からイオンビームを照射できるのであればよい。また、基板10の移動方向に対してイオンソースの長手方向を直交するものとしたが、必ずしも直交に限る必要はなく、基板10の全面にイオンビームを照射できるのであればよい。
【0080】
(実施例6)
図14を用いて、本発明の実施例6について説明する。本実施例の説明において、実施例5と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0081】
本実施例のエッチングエリア300cでは、基板10がY方向に搬送される。エッチングエリア300cには、第1のエッチングエリア300c1、第2のエッチングエリア300c2が含まれ、さらに第1のエッチングエリア300c1と第2のエッチングエリア300c2の間に、基板10を90°回転させる面内回転機構380が配置された回転エリア300c3が設けられている。基板搬送装置15と面内回転機構380の間の基板10の受け渡しについては、ロボットアームなど任意の既存技術を採用できる。あるいは、面内回転機構380に、基板搬送装置15の基板キャリア用ガイドレールと連続するようなレールを配置してもよい。
【0082】
第1のエッチングエリア300c1には、イオンソース331n、331oが設けられている。イオンソース331n、331oの長手方向は基板10の搬送方向に対して直交している。またイオンソース331j、331kの長手方向の長さは、イオンビーム341n、341oの照射領域が基板10のX方向の両端を含むように設計される。イオンビーム341nと341oの照射方向は、基板10に対して斜めに固定されている。これにより、イオンビーム341nは基板10に対して前側から照射され、イオンビーム341oは基板10に対して後側から照射される。基板10がこのような第1のエッチングエリア300c1を通過することで、基板10の全面に前後からのイオンビームが照射される。続いて、面内回転機構380によって、基板10が90°回転される(矢印T)。
【0083】
同様に、第2のエッチングエリア300c2には、イオンソース331p、331qが設けられている。イオンソース331p及び331qの設置方向や、イオンビーム341p及び341qの照射方向は、第1のエッチングエリア300c1と同様に設計されている。このような第2のエッチングエリア300c2を、面内回転機構380により90°回転された基板10が通過することによって、基板10の全面に、第1のエッチングエリア300c1とは90°異なる方向から、イオンビームが照射される。
【0084】
本実施例の構成においても、基板10に対して四方向からイオンビームを照射することができる。したがって、凹凸がある形状の基板10であっても、頂面や底面と側壁部の膜厚を一様にすることが可能となる。なお、本実施例では実施例5と同様、基板10がXY平面内を移動するものとしたが、上記各実施例と同様にYZ平面内を移動する構成であっても構わない。また、基板10の移動方向に対してイオンソースの長手方向を直交するものとしたが、必ずしも直交に限る必要はなく、基板10の全面にイオンビームを照射できるのであればよい。
【0085】
(実施例7)
図15を用いて、本発明の実施例7について説明する。本実施例の説明において、実施例6と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0086】
本実施例のエッチングエリア300cでは、基板10がY方向に往復して搬送される。エッチングエリア300cには、第1のエッチングエリア300c1と、基板10を90°回転させる面内回転機構380が配置された回転エリア300c3が設けられている。
【0087】
第1のエッチングエリア300c1には、イオンソース331r、331sが設けられている。イオンソース331r、331sの長手方向は基板10の搬送方向に対して直交している。またイオンソース331r、331sの長手方向の長さは、基板10がどの向きに回転していてもイオンビーム341r、341sの照射領域が基板10の両端を含むように設計される。イオンビーム341rと341sの照射方向は、基板10に対して斜めに固定されている。これにより、往路においては、イオンビーム341rは基板10に対して前側から照射され、イオンビーム341sは基板10に対して後側から照射される。続いて、面内回転機構380によって、基板10が90°回転される(矢印T)。
【0088】
復路においては、第1のエッチングエリア300c1を面内回転機構380により90°回転された基板10が通過することによって、基板10の全面に、往路とは90°異なる方向からイオンビームが照射される。
【0089】
本実施例の構成においても、基板10に対して四方向からイオンビームを照射することができる。したがって、凹凸がある形状の基板10であっても、頂面や底面と側壁部の膜厚を一様にすることが可能となる。なお、基板10の搬送方向に対してイオンソースの長手方向を直交するものとしたが、必ずしも直交に限る必要はなく、基板10の全面にイオンビームを照射できるのであればよい。例えば、図16に示すように、イオンソースの長手方向が搬送方向に対して45°傾く構成であってもよい。また、この傾き角は45°に限定されない。
【0090】
(実施例8)
図17図18を用いて、本発明の実施例8について説明する。本実施例の説明において、実施例7と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0091】
本実施例のエッチングエリア300cでは、基板10がY方向に往復して搬送される。
エッチングエリア300cには、第1のエッチングエリア300c1が設けられている。第1のエッチングエリア300c1の両端には、基板10を90°回転させる面内回転機構380が配置された回転エリア300c3及び300c4が設けられている。2つの回転エリア300c3と300c4は、同様の構成をとることができる。
【0092】
第1のエッチングエリア300c1には、単一のイオンソース331tが設けられている。イオンソース331tの長手方向は基板10の搬送方向に対して直交している。またイオンソース331tの長手方向の長さは、基板10がどの向きに回転していてもイオンビーム341tの照射領域が基板10の両端を含むように設計される。イオンビーム341tの照射方向は、基板10に対して斜めに固定されている。
【0093】
エッチングが開始されると、まず図17(a)のように、オリフラ10aが右上を向いた状態で基板10が第1のエッチングエリア300c1内を搬送されながら、イオンビーム341tの照射を受ける。照射の後、回転エリア300c4の面内回転機構380が、基板10を90°回転させる(矢印T1)。次に図17(b)のように、オリフラ10aが右下を向いた状態で基板10が第1のエッチングエリア300c1内を搬送されながら、イオンビーム341tの照射を受ける。照射の後、回転エリア300c3の面内回転機構380が、基板10を90°回転させる(矢印T2)。以下同様に、図18(a)、図18(b)の順に、基板10の90°回転とイオンビームの照射が繰り返される。
【0094】
本実施例の構成においても、基板10に対して四方向からイオンビームを照射することができる。したがって、凹凸がある形状の基板10であっても、頂面や底面と側壁部の膜厚を一様にすることが可能となる。なお、本実施例では実施例5と同様、基板10がXY平面内を移動するものとしたが、上記各実施例と同様にYZ平面内を移動する構成であっても構わない。また、基板10の搬送方向に対してイオンソースの長手方向を直交するものとしたが、必ずしも直交に限る必要はなく、基板10の全面にイオンビームを照射できるのであればよい。例えば、図19に示すように、イオンソースの長手方向が搬送方向に対して45°傾く構成であってもよい。また、この傾き角は45°に限定されない。
【0095】
(その他)
上記の実施例においては、エッチング用ビームがイオンビームの場合について説明した。しかしながら、エッチング用ビームは、イオンビームに限られず、レーザービームを用いることもできる。例えば、エッチングの対象となる膜の材料が、無機膜(SiNなど)、酸化物膜(SiO、ITOなど)、金属膜(Al、Cuなど)の場合には、イオンビーム(Ar、Xeなどの希ガスにより生成されるイオンビーム)を用いると好適である。これに対して、エッチングの対象となる膜の材料が、有機膜(有機化合物など)の場合には、レーザービームを用いると好適である。前者の場合にはビーム径が比較的大きいのに対して、後者の場合にはビーム径が比較的小さいといった特徴がある。また、後者の場合には、膜中か下地層に光熱変換材料が含まれていると更に有効である。
【符号の説明】
【0096】
10…基板、11…凸部、12…凹部、15…基板搬送装置、20…膜、300…処理室、300c…エッチングエリア、330…エッチング用ビーム照射装置、331…イオンソース、341…イオンビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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