(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159873
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】化合物
(51)【国際特許分類】
C09B 69/02 20060101AFI20231025BHJP
C09B 23/14 20060101ALI20231025BHJP
C09B 23/01 20060101ALI20231025BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20231025BHJP
C07D 209/14 20060101ALI20231025BHJP
C07D 209/60 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C09B69/02
C09B23/14 CSP
C09B23/01
C09K11/06
C09K11/06 645
C07D209/14
C07D209/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065798
(22)【出願日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2022069559
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】竹下 慶
(72)【発明者】
【氏名】秋山 誠治
(57)【要約】 (修正有)
【課題】量子収率が高く、樹脂中での分散性、分子同士の会合抑制に優れた、生体イメージング用蛍光プローブ等に使用される蛍光色素化合物を提供する。
【解決手段】式1で表されるカチオン部を有する化合物。
(R
1は、分岐アルキル基、C数6以上の直鎖アルキル基、又はハロゲン化メチル基;R
2~R
7は、それぞれ、C数1~24の直鎖又は分岐アルキル基;ZはCH
2、O、S、NH又は直接結合;YはCH
2又は直接結合を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表されるカチオン部を有する化合物。
【化1】
(式1において、R
1は、分岐アルキル基、炭素数6以上の直鎖アルキル基、又はハロゲン化メチル基であり、前記分岐アルキル基のアルキル分岐鎖は芳香環基で置換されていてもよい。nは1~5の整数である。nが2以上の場合、複数のR
1は互いに同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して環を巻いてもよい。
R
2~R
7は、それぞれ独立して、炭素数1~24の直鎖又は分岐アルキル基である。
ZはCH
2、O、S、NH又は直接結合を示す。
YはCH
2又は直接結合を示す。)
【請求項2】
前記式1において、R1が炭素数3~24の分岐アルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式1において、R2、R3が炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基である、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
対アニオンとしてボレートアニオンまたはリン含有アニオンを含む、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の化合物を含む樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の化合物を含む成形体。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の化合物を含む生体標識用化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光色素化合物として有用な量子収率の高い化合物と、前記化合物を含む樹脂組成物、成形体及び生体標識用化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外領域に蛍光を示す色素は、生体イメージング用蛍光プローブ、検査薬等の医療用途、有機EL素子用蛍光材料、偽造防止など、種々の識別等に利用されている。
例えば、特許文献1には、特定構造の色素を含む、医療用機器に使用される蛍光ポリマーコーティングフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の色素は、蛍光量子収率が十分ではなく、種々の用途に使用することも困難であった。本発明はこれらの問題点を解決することを目的とするものであり、量子収率が高く、樹脂中での分散性、分子同士の会合抑制に優れた蛍光色素化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造のカチオン部を有する化合物が高い蛍光量子収率を示し、樹脂中での分散性、分子同士の会合抑制にも優れることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0006】
[1] 下記式1で表されるカチオン部を有する化合物。
【0007】
【0008】
(式1において、R1は、分岐アルキル基、炭素数6以上の直鎖アルキル基、又はハロゲン化メチル基であり、前記分岐アルキル基のアルキル分岐鎖は芳香環基で置換されていてもよい。nは1~5の整数である。nが2以上の場合、複数のR1は互いに同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して環を巻いてもよい。
R2~R7は、それぞれ独立して、炭素数1~24の直鎖又は分岐アルキル基である。
ZはCH2、O、S、NH又は直接結合を示す。
YはCH2又は直接結合を示す。)
【0009】
[2] 前記式1において、R1が炭素数3~24の分岐アルキル基である、[1]に記載の化合物。
【0010】
[3] 前記式1において、R2、R3が炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基である、[1]または[2]に記載の化合物。
【0011】
[4] 対アニオンとしてボレートアニオンまたはリン含有アニオンを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の化合物。
【0012】
[5] [1]~[3]のいずれかに記載の化合物を含む樹脂組成物。
【0013】
[6] [1]~[3]のいずれかに記載の化合物を含む成形体。
【0014】
[7] [1]~[3]のいずれかに記載の化合物を含む生体標識用化合物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の化合物によれば、量子収率が高く、樹脂中での分散性、分子同士の会合抑制に優れた蛍光色素が提供される。前記蛍光色素は、生体イメージング用蛍光プローブ、カテーテルチューブ、注射針、ドレーンチューブ、インプラント等の医療用途、有機EL素子、偽造防止など、種々の識別等に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
[本発明の化合物]
本発明の化合物は、下記式1で表されるカチオン部を有する化合物である。
【0018】
【0019】
(式1において、R1は、分岐アルキル基、炭素数6以上の直鎖アルキル基、又はハロゲン化メチル基であり、前記分岐アルキル基のアルキル分岐鎖は芳香環基で置換されていてもよい。nは1~5の整数である。nが2以上の場合、複数のR1は互いに同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して環を巻いてもよい。
R2~R7は、それぞれ独立して、炭素数1~24の直鎖又は分岐アルキル基である。
ZはCH2、O、S、NH又は直接結合を示す。
YはCH2又は直接結合を示す。)
【0020】
<本発明の化合物が高い蛍光量子収率を示すメカニズム>
前述の特許文献1には、本発明の化合物と類似した構造の化合物が示されているが、特許文献1において、具体的に示されている化合物のカチオン部は、両端が3H-インドール環ではなく、ベンゾインドール環であることにおいて、本発明の化合物とは大きく異なる。
この構造上の差異により、π共役が狭まることで振動伸縮等の分子運動による熱失活を抑制することが可能であり、本発明の化合物は、特許文献1の化合物に比べて、後掲の実施例3の色素2-3と比較例1の色素3-1との対比からも明らかなように、高い外部量子収率を達成することができる。
【0021】
<R1>
R1は、アルキル分岐鎖が芳香環基で置換されていてもよい分岐アルキル基、炭素数6以上の直鎖アルキル基又はハロゲン化メチル基である。
【0022】
分岐アルキル基としては、炭素数3~30の分岐アルキル基が好ましく、分岐アルキル基のアルキル分岐鎖は、直鎖アルキル鎖であっても、アルキル分岐鎖であっても、シクロアルキル鎖であってもよい。
【0023】
分岐アルキル基としては、具体的には、1-メチルエチル基、1,1-ジメチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-プロピルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,3,3-トリメチルブチル基、2,3,3-トリメチルブチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、1,2,2-トリメチルブチル基、1,1,3,3,-テトラメチルブチル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、3,4,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1,4,4-トリメチルペンチル基、3,3,4-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、1,3,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、1,2,2-トリメチルペンチル基、5-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、5,5-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、2,2,5-トリメチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、2-プロピルヘプチル基、6,6-ジメチルヘプチル基、6-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、1-メチルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、1-メチルノニル基、3-メチルノニル基、3-ブチルノニル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、1-メチルトリデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-メチルヘキサデシル基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基、3-シクロヘキシルプロピル基、4-シクロヘキシルブチル基、3-シクロヘキシル-2,2-ジメチルプロピル基、2-シクロヘプチルメチル基が挙げられる。
【0024】
アルキル分岐鎖に置換される芳香環基としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ナフタセン基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、フルオレニル基等の芳香族炭化水素基や、フリル基、チオフェニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラニル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、インドリニル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キヌクリジニル基、クロメニル基、チアントレニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、キサンテニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、カルバゾリル基等の芳香族複素環基が挙げられ、これらは更にアルキル基で置換されていてもよい。アルキル分岐鎖に置換される芳香環基としては、好ましくはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基である。
芳香環基で置換されたアルキル分岐鎖としては、ベンジル鎖、メチルベンジル鎖等が挙げられる。
【0025】
アルキル分岐鎖が芳香環基で置換された分岐アルキル基としては、具体的には、3-ベンジル-3,3-ジメチルプロピル基、3-ベンジル-2,2-ジメチルプロピル基、3-(2-メチルベンジル)-2,2-ジメチルプロピル基、3-(3-メチルベンジル)-2,2-ジメチルプロピル基、3-(4-メチルベンジル)-2,2-ジメチルプロピル基が挙げられる。
【0026】
炭素数6以上の直鎖のアルキル基としては、炭素数6~24の直鎖アルキル基が好ましく、具体的には、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0027】
R1のハロゲン化メチル基としては、1~3個のハロゲン原子、好ましくは3個のハロゲン原子で置換されたメチル基が挙げられ、具体的には、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基が挙げられる。合成の容易さの点でトリフルオロメチル基が好ましい。
【0028】
nは1~5の整数である。分子同士の会合抑制の点でnは1~2が好ましい。
【0029】
nが2以上の場合、複数のR1は互いに同一であってもよく、異なるものであってもよい。
また、nが2以上の場合、2以上のR1は互いに結合して環を巻いてもよい。このようなものの具体例としては、-(R1)nを有するベンゼン環と共に、フルオレニル基を形成するものが挙げられ、該フルオレニル基としては、2-フルオレニル基、9,9-ジメチル-2-フルオレニル基、9,9-ジエチルー2-フルオレニル基、9,9-ジイソプロピルー2-フルオレニル基、9,9-ジペンチルー2-フルオレニル基、9,9-ジヘキシルー2-フルオレニル基、9,9-ジオクチルー2-フルオレニル基、9,9-ジフェニルー2-フルオレニル基、9,9-ジメチルフェニルー2-フルオレニル基などが挙げられる。
【0030】
R1としては、分子同士の会合が抑制される点でかさ高い分岐アルキル基が望ましく、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、3,3-ジメチルブチル基、1,3,3-トリメチルブチル基、2,3,3-トリメチルブチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、1,2,2-トリメチルブチル基、1,1,3,3,-テトラメチルブチル基、4,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、3,4,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1,4,4-トリメチルペンチル基、3,3,4-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、1,3,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、1,2,2-トリメチルペンチル基、5,5-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、2,2,5-トリメチルヘキシル基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基、3-シクロヘキシル-2,2-ジメチルプロピル基、3-ベンジル-3,3-ジメチルプロピル基、3-ベンジル-2,2-ジメチルプロピル基、3-(2-メチルベンジル)-2,2-ジメチルプロピル基、3-(3-メチルベンジル)-2,2-ジメチルプロピル基、3-(4-メチルベンジル)-2,2-ジメチルプロピル基や、前記フルオレニル基が好ましい。
【0031】
本発明の化合物が、R1としてこれらの分岐アルキル基又はそれらが互いに結合して環を巻いた基を有することで、色素同士の会合が抑制され、樹脂中での分散性に優れたものとなる。
一方、耐熱性向上の点ではR1は、ハロゲン化メチル基が好ましく、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0032】
<R2~R7>
R2~R7は、炭素数1~24の直鎖又は分岐アルキル基である。これらは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
R2、R3は、炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基が好ましく、量子収率が良好となる点で、それぞれ独立して、プロピル基又はブチル基がより好ましい。
R4~R7は、合成法が簡便である点でメチル基が好ましい。
【0034】
<Y>
YはCH2又は直接結合を示す。量子収率が良好となる点でYはCH2が好ましい。
【0035】
<Z>
ZはCH2、O、S、NH又は直接結合を示す。量子収率が良好となる点でZはO又は直接結合が好ましい。
【0036】
<対イオン>
前記式1で表されるカチオン部の対イオンとしては、ハロゲンアニオン、p-トルエンスルホン酸アニオン等、一価のアニオンであれば特に限定されないが、ボレートアニオンまたはリン含有アニオンであることが、量子収率、耐光性が良好である点で好ましい。
【0037】
ボレートアニオンとしては、テトラフルオロホウ酸アニオン、(4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)トリス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、(4-クロロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)トリス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、(4-ブロモメチル-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)トリス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、トリス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)フェニルボレートアニオン、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボレートアニオン、(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)トリス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボレートアニオン、ビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボレートアニオン、(4-エテニル-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)トリス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロポキシ)ボレートアニオンが挙げられる。
【0038】
リン含有アニオンとしては、ヘキサフルオロリン酸アニオンが挙げられる。
【0039】
より好ましい対アニオンは、テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオンである。
【0040】
<本発明の化合物の物性>
本発明の化合物の吸収極大波長は700~850nmが好ましく、750~800nmがより好ましい。
本発明の化合物の蛍光極大波長は750~1200nmが好ましく、790~840nmがより好ましい。
本発明の化合物の外部量子収率は10.0%以上が好ましく、12.0%以上がより好ましい。
【0041】
<本発明の化合物の製造方法>
以下に、本発明の化合物の製造方法の一例を示す。
本発明の化合物は、例えば、以下の方法により製造することができる。
IR-775クロリド(東京化成工業株式会社製)等の市販のシアニン化合物に、鈴木-宮浦クロスカップリング、求核置換反応等の公知の手順により置換基の導入を行う。その後、塩交換反応を経て、対アニオンをボレートアニオン又はリン含有アニオンとする。対アニオンは市販のブロモペンタフルオロベンゼン(東京化成工業株式会社製)等の原料からホウ素化等の反応を利用して合成してもよく、市販のNH4PF6水溶液(富士フィルム和光純薬株式会社製)等を使用してもよい。
【0042】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、本発明の化合物と樹脂を含むものであり、通常、本発明の化合物と樹脂とを溶融混練して製造される。
【0043】
本発明の化合物と溶融混練できる樹脂としては、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、イソシアヌレート系エポキシ樹脂、メラミン系樹脂、ユリア樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
耐久性等の観点から、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、シリコーンが好ましく、熱可塑性ポリウレタン、シリコーンがより好ましい。
【0044】
蛍光強度と色素会合抑制の観点から、本発明の化合物は、樹脂組成物中に1~500ppm含まれていることが好ましく、10~200ppm含まれていることがより好ましく、50~150ppm含まれていることがさらに好ましい。
【0045】
なお、本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、本発明の化合物と樹脂の他、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、結晶化促進剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、離型剤等の添加剤や、粘度調整のための溶剤を含んでいてもよい。
【0046】
[成形体]
本発明の成形体は、本発明の化合物を含むものであり、通常、本発明の樹脂組成物を成形することで製造される。
その成形方法としては、射出成形、押し出し成形、ブロー成形などの公知の成形方法が挙げられる。
【0047】
[用途]
本発明の化合物は、単独でまたは生体物質と結合して生体標識用化合物として使用することができる。生体物質としては、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸、糖鎖及び脂質等が挙げられる。
また、本発明の化合物は、樹脂、有機溶剤と混合しコーティング剤として、各種基材の表面に塗布して使用してもよい。
【0048】
本発明の化合物を含む樹脂組成物やその成形体(フィルムを含む)は、高い量子収率で蛍光を発し、蛍光プローブ、カテーテル、注射針、ドレーンチューブ、インプラント等の医療用途に適している。その他、有機EL素子、偽造防止など、種々の識別等にも使用できる。
【実施例0049】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0050】
以下において、合成した化合物(色素)の外部量子収率は以下の方法で測定した。
<溶液中の外部量子収率>
色素を5ppmの濃度になるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、専用のサンプルチューブに封入した。
外部量子収率の測定には浜松ホトニクス株式会社製「Quantaurus-QY C11347-2」を使用し、励起波長を700~850nmに設定し測定を行った。
光吸収率の測定値と内部量子収率の測定値の積を%表示した値を外部量子収率とし、外部量子収率が最大となるところの値を読み取った。外部量子収率が10.0%以上あれば蛍光量子収率が十分である。
【0051】
<アニオン1-1の合成>
アルゴン雰囲気下、500mL容四頸反応器にて、ブロモペンタフルオロベンゼン(10.13g,4.1eq.)のn-ペンタン(200mL)溶液を室温で撹拌し、内温-70℃に冷却した。1.6M n-BuLi-ヘキサン溶液(25.0mL,4.0eq.)を内温-68℃以内で22分間掛けて滴下し、30分間撹拌した。1M BCl3-ヘキサン溶液(10.0mL,1.0eq.)を内温-65℃以内で4分間掛けて滴下し、室温へ戻しながら一夜撹拌した。
再度内温-10℃まで冷却後、精製水(25mL)でクエンチし、ジエチルエーテル(100mL×2回)で抽出した。有機層を減圧濃縮した後に得られた濃縮残渣(12.1g)をショートカラム精製(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,63-210μm,40gをジエチルエーテルで充填し、ジエチルエーテルで溶出)にて分離精製し、アニオン1-1(6.89g,収率90.6%)を得た。
【0052】
【0053】
<化合物2-1-1の合成>
窒素雰囲気下、250mL容三頸反応器に、IR-775クロリド(東京化成工業株式会社製)(883mg,1.700mmol)、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(631mg,1.8eq.)、ジメチルホルムアミド(以下「DMF」と記載する。)(57mL)を仕込み、トリエチルアミン(0.59mL,2.5eq.)を滴下し、85℃にて8時間加熱撹拌した。室温へ冷却後、精製水(60mL)でクエンチし、ジクロロメタン(60mL×2回)で抽出した。有機層を精製水(60mL×2回)、ブライン(60mL)で順次洗浄後、無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、暗褐色ペースト状粗体(2.0g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,63-210μm,120gをジクロロメタンで充填し、メタノール/ジクロロメタン=0/1~1/19で溶出)にて分離精製し、化合物2-1-1(328mg,収率28.0%)を得た。
【0054】
【0055】
<色素2-1の合成>
窒素雰囲気下、60mL容Schlenk管にて、化合物2-1-1(320mg,0.464mmol)のジクロロメタン(16mL)溶液を室温撹拌し、アニオン1-1(458mg,1.3eq.)を分割投入した。室温にて3時間撹拌後、精製水(5mL)を加え油水分離し、有機層を無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、粗体(1.0g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,45gをヘキサン/ジクロロメタン=2/1で充填し、ヘキサン/ジクロロメタン=2/1で溶出)にて分離精製し、実施例1の色素2-1(222mg,収率35.9%)を得た。
【0056】
【0057】
<化合物2-2-1の合成>
アルゴン雰囲気下、20mL容Schlenk管に、IR-775クロリド(東京化成工業株式会社製)(520mg,1.00mmol)、9,9-ジメチルフルオレン-2-ボロン酸(321mg,1.35eq.)、無水燐酸三カリウム(206mg,0.97eq.)、精製水(2mL)、エタノール(8mL)を室温にて仕込み、真空減圧とアルゴン置換を繰り返して脱気した。酢酸パラジウム(22mg,0.1eq.)とt-BuXPhos(85mg,0.2eq.)を一気に投入後、17時間還流撹拌した。室温へ冷却後、ジクロロメタン(30mL×2回)で抽出した。有機層を精製水(10mL)、ブライン(10mL)で順次洗浄後、無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、粗体(0.96g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,40gをジクロロメタンで充填し、メタノール/ジクロロメタン=1/19~1/9で溶出)にて分離精製し、化合物2-2-1(359mg,収率53.0%)を得た。
【0058】
【0059】
<色素2-2の合成>
窒素雰囲気下、60mL容Schlenk管に、化合物2-2-1(350mg,0.517mmol)のジクロロメタン(17mL)溶液を室温撹拌し、アニオン1-1(511mg,1.3eq.)を分割投入した。室温にて3時間撹拌後、精製水(5mL)を加え油水分離し、有機層を無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、粗体(1.1g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,40gをヘキサン/ジクロロメタン=2/1で充填し、ヘキサン/ジクロロメタン=1/1~1/2で溶出)にて分離精製し、実施例2の色素2-2(459mg,収率67.3%)を得た。
【0060】
【0061】
<化合物2-3-1の合成>
窒素雰囲気下、1L容四頸反応器に、IR-780ヨージド(東京化成工業株式会社製)(9.00g,13.5mmol)、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(5.01g,1.8eq.)、DMF(450mL)を仕込み、トリエチルアミン(4.7mL,2.5eq.)を滴下し、85℃にて8時間加熱撹拌した。室温へ冷却後、精製水(500mL)でクエンチし、ジクロロメタン(500mL×2回)で抽出した。有機層を精製水(250mL×2回)、ブライン(150mL)で順次洗浄後、無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、暗褐色ペースト状粗体(25.0g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,63-210μm,1.25kgをジクロロメタンで充填し、メタノール/ジクロロメタン=0/1~1/15で溶出)にて分離精製を繰り返し行い、化合物2-3-1(202mg,収率2.0%)を得た。
【0062】
【0063】
<色素2-3の合成>
窒素雰囲気下、20mL容Schlenk管にて、化合物2-3-1(194mg,0.260mmol)のジクロロメタン(9mL)溶液を室温撹拌し、アニオン1-1(257mg,1.3eq.)を分割投入した。室温にて3時間撹拌後、精製水(3mL)を加え油水分離し、有機層を無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、粗体を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,45gをヘキサン/ジクロロメタン=5/1で充填し、ヘキサン/ジクロロメタン=3/2~2/1で溶出)にて分離精製し、実施例3の色素2-3(278mg,収率77.0%)を得た。
【0064】
【0065】
<化合物2-4-1の合成>
窒素雰囲気下、300mL容三頸反応器に、IR-780ヨージド(東京化成工業株式会社製)(2.00g,3.00mmol)、o-トリフルオロメチルフェノール(875mg,1.8eq.)、DMF(100mL)を仕込み、トリエチルアミン(1.1mL,2.5eq.)を滴下し、85℃にて8時間加熱撹拌した。室温へ冷却後、精製水(100mL)でクエンチし、ジクロロメタン(100mL×2回)で抽出した。有機層を精製水(100mL×2回)、ブライン(50mL)で順次洗浄後、無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、暗褐色ペースト状粗体(5.8g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,150gをジクロロメタンで充填し、メタノール/ジクロロメタン=0/1~1/19で溶出)にて分離精製を繰り返し行い、化合物2-4-1(229mg,収率9.6%)を得た。
【0066】
【0067】
<色素2-4の合成>
窒素雰囲気下、20mL容Schlenk管にて、化合物2-4-1(220mg,0.278mmol)のジクロロメタン(9mL)溶液を室温撹拌し、アニオン1-1(275mg,1.3eq.)を分割投入した。室温にて3時間撹拌後、精製水(3mL)を加え油水分離し、有機層を無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、暗緑色無定形粗体(911mg)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,45gをヘキサン/ジクロロメタン=2/1で充填し、ヘキサン/ジクロロメタン=2/1~1/1で溶出)にて分離精製し、実施例4の色素2-4(190mg,収率50.9%)を得た。
【0068】
【0069】
<化合物2-5-1の合成>
窒素気流下、1L容四頸反応器に、IR775クロリド(東京化成工業品:5.751g,11.07mmol)、4-n-オクチルフェノール(4.111g,1.8eq.)、DMF(369mL)を仕込み、トリエチルアミン(2.800g,2.5eq.)を滴下し、85℃にて8時間加熱撹拌した。室温へ冷却後、精製水(400mL)でクエンチし、ジクロロメタン(400mL×2回)で抽出した。有機層を精製水(100mL×2回)、ブライン(100mL)で順次洗浄後、無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して暗褐色油状粗体(13.0g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,63-210μm,1.20kgをジクロロメタンで充填し、ジクロロメタン~メタノール/ジクロロメタン=1/19で溶出)にて分離精製し、化合物2-5-1(2.890g,収率37.9%)を得た。
【0070】
【0071】
<色素2-5の合成>
窒素雰囲気下、250mL容四頸反応器に、化合物2-5-1(1.880g,2.727mmol)のジクロロメタン(91mL)溶液を室温撹拌し、アニオン1-1(2.695g,1.3eq.)を分割投入した。室温にて2時間30分間撹拌後、精製水(15mL)を加え油水分離し、有機層を無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して粗体(3.3g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,180gをヘキサン/ジクロロメタン=9/1で充填し、ヘキサン/ジクロロメタン=1/1~1/2で溶出)にて分離精製し、実施例5の色素2-5(3.834g,収率78.0%)を得た。
【0072】
【0073】
<化合物2-6-1の合成>
窒素雰囲気下、60mL容Schlenk管に、2,3,3-トリメチルインドレニン(15.92g,0.100mol)、1-ヨードヘキサン(42.41g,2.0eq.)を仕込み、ヒートブロック110℃設定で18時間加熱撹拌した。室温へ放冷後、固体を解砕しながらジエチルエーテル(20mL×3回)でデカンテーションして懸洗し、残渣を真空減圧下50℃5時間乾燥し、化合物2-6-1(38.31g,100%)を得た。
【0074】
【0075】
<化合物2-6-2の合成>
窒素雰囲気下、2L容四頸反応器に、DMF(超脱水,120mL)を仕込み、内温0℃に冷却後、オキシ塩化燐(101mL,4.6eq.)を内温6℃以内で滴下し、内温0~6℃で20分間撹拌した。次いで、シクロヘキサノン(23.5g,0.239mol)のジクロロメタン(超脱水,50mL)溶液を、内温10℃以内で滴下し、還流温度までゆっくり昇温しながら撹拌し、100℃で2時間撹拌した。再度0℃まで冷却後、アニリン(87.5mL,4.0eq.)のエタノール(87.5mL)溶液を、内温10℃以内で滴下した。
得られた溶液を内温0~6℃で1時間撹拌後、0℃で撹拌した塩酸水(=6M塩酸,72mL,1.8eq.+精製水,2.4L)中に注ぎ30分間撹拌した。沈殿を吸引濾取し、得られた濾滓をメタノール(720mL)で溶解し、0℃で撹拌した混合溶媒(=ヘキサン,2.4L+TBME,2.4L)中に注ぎ、0℃で30分間撹拌した。沈殿を吸引濾取した後、窒素雰囲気下ジエチルエーテル(200mL)を加え、室温にて20分間懸濁撹拌した。沈殿を吸引濾取し、得られた濾滓を真空減圧下40℃4時間乾燥し、化合物2-6-2(55.6g,粗収率64.6%)を得た。
【0076】
【0077】
<化合物2-6-3の合成>
窒素気流下、2L容四頸反応器に、化合物2-6-2(13.56g,37.74mmol)、エタノール(800mL)、化合物2-6-1(30.83g,2.2eq.)を仕込み、室温にて10分間撹拌後、酢酸ナトリウム(7.21g,2.3eq.)を加えた。油浴80℃設定にして10時間撹拌した後、室温まで放冷した。
減圧下に溶媒を留去し、残渣の青紫色粘体粗体(44.4g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N
球状中性,63-210um,750gをジクロロメタンで充填し、ジクロロメタン/メタノール=9/1で溶出)にて分離精製した。濃縮残渣(12.0g)にヘキサン(40mL)を加え、室温にて暫く懸濁撹拌した後に吸引濾取、ヘキサン(40mL)でリンスした。得られた結晶を真空減圧下40℃4時間乾燥し、化合物2-6-3(8.820g,収率35.4%)を得た。
【0078】
【0079】
<化合物2-6-4の合成>
窒素雰囲気下、500mL容四頸反応器に、化合物2-6-3(3.000g,4.547mmol)、T0144(東京化成工業株式会社製)(1.689g,1.8eq.)、DMF(152mL)を仕込み、トリエチルアミン(1.150g,2.5eq.)を滴下し、85℃にて8時間加熱撹拌した。室温へ冷却後、精製水(150mL)でクエンチし、ジクロロメタン(150mL×2回)で抽出した。有機層を精製水(80mL×2回)、birne(30mL)で順次洗浄後、無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して暗褐色ペースト状粗体(9.4g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,63-210μm,380gをジクロロメタンで充填し、ジクロロメタン~メタノール/ジクロロメタン=1/19で溶出)にて分離精製し、化合物2-6-4(1.04g,収率27.5%)を得た。
【0080】
【0081】
<色素2-6の合成>
窒素雰囲気下、60mL容Schlenk管に、化合物2-6-4(980mg,1.185mmol)のジクロロメタン(39mL)溶液を室温撹拌し、アニオン1-1(1.17g,1.3eq.)を分割投入した。室温にて3時間撹拌後、精製水(5mL)を加え油水分離し、有機層を無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して粗体(3.2g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,80gをヘキサン/ジクロロメタン=9/1で充填し、ヘキサン/ジクロロメタン=1/1~1/2で溶出)にて分離精製し、粗体(1.234g,収率70.9%)を得た。
不純物を除去するため、この粗体を再度カラム精製(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,80gをヘキサン/ジクロロメタン=9/1で充填し、1/1で溶出)し、実施例6の色素2-6(914mg,収率52.5%)を得た。
【0082】
【0083】
<化合物3-1-1の合成>
窒素雰囲気下、250mL容四頸反応器に、IR-813 p-トルエンスルホナート(東京化成工業株式会社製)(2.000g,2.648mmol)、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(983mg,1.8eq.)、DMF(88mL)を仕込み、トリエチルアミン(923μL,2.5eq.)を滴下し、85℃にて8時間加熱撹拌した。室温へ冷却後、精製水(100mL)でクエンチし、ジクロロメタン(100mL×2回)で抽出した。有機層を精製水(50mL×2回)、ブライン(50mL)で順次洗浄後、無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、暗褐色ペースト状粗体(3.46g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,63-210μm,123gをジクロロメタンで充填し、メタノール/ジクロロメタン=0/1~1/9で溶出)にて分離精製を繰り返し行い、化合物3-1-1(173mg,収率7.1%)を得た。
【0084】
【0085】
<色素3-1の合成>
窒素雰囲気下20mL容Schlenk管にて、化合物3-1-1(144mg,0.156mmol)のジクロロメタン(5.2mL)溶液を室温撹拌し、アニオン1-1(154mg,1.3eq.)を分割投入した。室温にて3時間撹拌後、精製水(1mL)を加え油水分離し、有機層を無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、粗体(0.40g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,22gをヘキサン/ジクロロメタン=1/1で充填し、ジクロロメタンで溶出)にて分離精製し、比較例1の色素3-1(138mg,収率61.8%)を得た。
【0086】
【0087】
<化合物3-2-1の合成>
アルゴン雰囲気下、60mL容Schlenk管に、IR-813p-トルエンスルホナート(東京化成工業株式会社製)(1.000g,1.324mmol)、9,9-ジメチルフルオレン-2-ボロン酸(425mg,1.35eq.)、無水燐酸三カリウム(273mg,0.97eq.)、精製水(4mL)、エタノール(16mL)を室温にて仕込み、真空減圧とアルゴン置換を繰り返して脱気した。酢酸パラジウム(30mg,0.1eq.)とt-BuXPhos(112mg,0.2eq.)を一気に投入後、18時間還流撹拌した。室温へ冷却後、ジクロロメタン(50mL×2回)で抽出した。有機層を精製水(10mL)、ブライン(10mL)で順次洗浄後、無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、粗体(2.0g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,75gをジクロロメタンで充填し、メタノール/ジクロロメタン=1/19~1/9で溶出)にて分離精製し、化合物3-2-1(208mg,収率20.2%)を得た。
【0088】
【0089】
<色素3-2の合成>
窒素雰囲気下、20mL容Schlenk管にて、化合物3-2-1(199mg,0.256mmol)のジクロロメタン(8.5mL)溶液を室温撹拌し、アニオン1-1(253mg,1.3eq.)を分割投入した。室温にて3時間撹拌後、精製水(5mL)を加え油水分離し、有機層を無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、粗体(0.9g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,45gをヘキサン/ジクロロメタン=2/1で充填し、ヘキサン/ジクロロメタン=2/1で溶出)にて分離精製し、比較例2の色素3-2(122mg,収率33.5%)を得た。
【0090】
【0091】
<色素3-3の合成>
窒素雰囲気下、60mL容Schlenk管にて、IR-775クロリド(東京化成工業株式会社製)(250mg,0.481mmol)のジクロロメタン(16mL)溶液を室温撹拌し、アニオン1-1(330mg,1.0eq.)を分割投入した。室温にて3時間撹拌後、精製水(5mL)を加え油水分離し、有機層を無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して、粗体(1.0g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N 球状中性,40-50μm,45gをヘキサン/ジクロロメタン=2/1で充填し、ヘキサン/ジクロロメタン=2/1で溶出)にて分離精製し、比較例3の色素3-3(412mg,収率73.6%)を得た。
【0092】
【0093】
<化合物3-4-1の合成>
窒素雰囲気下、100mL容三頸反応器に、IR775クロリド(東京化成工業品:520mg,1.00mmol)、4-ペンチルフェノール(296mg,1.8eq.)、DMF(33mL)を仕込み、トリエチルアミン(0.35mL,2.5eq.)を滴下し、85℃にて4時間加熱撹拌した。室温へ冷却後、精製水(33mL)でクエンチし、ジクロロメタン(50mL×2回)で抽出した。有機層を精製水(15mL×2回)、ブライン(15mL)で順次洗浄後、無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して暗褐色無定形粗体(2.2g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N
球状中性,63-210μm,65gをジクロロメタンで充填し、ジクロロメタン~メタノール/ジクロロメタン=1/19で溶出)にて分離精製し、化合物3-4-1(289mg,収率42.7%)を得た。
【0094】
【0095】
<色素3-4の合成>
窒素雰囲気下、60mL容Schlenk管に、化合物3-4-1(230mg,0.340mmol)のジクロロメタン(11mL)溶液を室温撹拌し、アニオン1-1(336mg,1.3eq.)を分割投入した。室温にて3時間撹拌後、精製水(5mL)を加え油水分離し、有機層を無水芒硝で脱水後、濾過し、濾液を濃縮して粗体(1g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル 60N
球状中性,40-50μm,65gをヘキサン/ジクロロメタン=9/1で充填し、ヘキサン/ジクロロメタン=1/1~1/2で溶出)にて分離精製し、比較例4の色素3-4(263mg,収率59.9%)を得た。
【0096】
【0097】
<実施例1~6、比較例1~4>
得られた各色素を、THFに対して5ppmとなるよう溶解させてサンプルを調製し、前述の方法で外部量子収率を求めた。
評価結果を表1に示す。
【0098】
【0099】
本発明の式1の構造に該当しない比較例1~4の構造では、外部量子収率が不十分であったのに対して、本発明の式1の構造に該当する実施例1~6では、高い外部量子収率を達成することができた。