(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160318
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ドレッシング工具、及びドレッシング工具の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/00 20060101AFI20231026BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20231026BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B24B53/00 K
B24B53/12 Z
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070612
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】星川 裕俊
(72)【発明者】
【氏名】飯田 勝文
(72)【発明者】
【氏名】福原 潤一
(72)【発明者】
【氏名】関 竜也
(72)【発明者】
【氏名】木原 智治
【テーマコード(参考)】
3C047
5F063
【Fターム(参考)】
3C047AA16
3C047AA32
3C047EE09
3C047EE18
3C047EE19
5F063AA16
5F063AA21
5F063CA04
5F063DD22
(57)【要約】
【課題】粘着テープが不要であり切削屑が付着しにくいドレッシング工具を提供する。
【解決手段】ドレッシング工具であって、熱可塑性樹脂層を含む支持基板と、該支持基板に支持され一体化されたドレッシング部材と、を備え、該支持基板は、粘着層を有さない。好ましくは、該熱可塑性樹脂層と、該ドレッシング部材と、は直接接触している。または、好ましくは、該支持基板は、該熱可塑性樹脂層のみからなる。より好ましくは、該熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィン系材料またはポリエステル系材料で構成されている。さらに好ましくは、該ドレッシング部材は、熱圧着された状態で該支持基板に一体化されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレッシング工具であって、
熱可塑性樹脂層を含む支持基板と、
該支持基板に支持され一体化されたドレッシング部材と、を備え、
該支持基板は、粘着層を有さないことを特徴とするドレッシング工具。
【請求項2】
該熱可塑性樹脂層と、該ドレッシング部材と、は直接接触していることを特徴とする請求項1に記載のドレッシング工具。
【請求項3】
該支持基板は、該熱可塑性樹脂層のみからなることを特徴とする請求項1に記載のドレッシング工具。
【請求項4】
該熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィン系材料またはポリエステル系材料で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のドレッシング工具。
【請求項5】
該ドレッシング部材は、熱圧着された状態で該支持基板に一体化されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のドレッシング工具。
【請求項6】
該支持基板は、チャックテーブルの保持面の全面を覆う大きさ及び形状であり、
該チャックテーブルに吸引保持された被加工物を切削する切削ブレードのドレッシングに使用可能であり、該チャックテーブルに吸引保持された状態で該切削ブレードによって該ドレッシング部材が切削されることで該切削ブレードをドレッシングできることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のドレッシング工具。
【請求項7】
ドレッシング工具の製造方法であって、
熱可塑性樹脂層を含む支持基板の上にドレッシング部材を載せる配設ステップと、
該配設ステップの後、該支持基板と、該ドレッシング部材と、を一体化させる一体化ステップと、を含み、
該支持基板は、粘着層を有さないことを特徴とするドレッシング工具の製造方法。
【請求項8】
該配設ステップでは、該熱可塑性樹脂層と、該ドレッシング部材と、を直接接触させることを特徴とする請求項7に記載のドレッシング工具の製造方法。
【請求項9】
該支持基板は、該熱可塑性樹脂層のみからなることを特徴とする請求項7に記載のドレッシング工具の製造方法。
【請求項10】
該熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィン系材料またはポリエステル系材料で構成されていることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれかに記載のドレッシング工具の製造方法。
【請求項11】
該一体化ステップでは、該ドレッシング部材は、熱圧着により該支持基板と一体化されることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれかに記載のドレッシング工具の製造方法。
【請求項12】
該一体化ステップの後、一体化した該支持基板及び該ドレッシング部材を該ドレッシング部材が上方に露出するように保持テーブルに載せ、一体化した該支持基板及び該ドレッシング部材を該保持テーブルに保持させ、加工具で該ドレッシング部材の上面を加工して平坦化する平坦化ステップをさらに含むことを特徴とする請求項7から請求項9のいずれかに記載のドレッシング工具の製造方法。
【請求項13】
該加工具は、研削砥石を備え該研削砥石で該ドレッシング部材の該上面を研削する研削ホイール、該ドレッシング部材の該上面を研磨する研磨パッド、または、該ドレッシング部材の該上面をバイト切削するバイト切削工具であることを特徴とする請求項12に記載のドレッシング工具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の被加工物を切削する切削ブレードの使用を開始する際、または、使用により切削能力の低下した切削ブレードの切削能力を回復する際に実施されるドレッシングにおいて使用されるドレッシング工具、及びドレッシング工具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピュータ等の電子機器に使用されるデバイスチップは、表面に複数のデバイスが並べて配設された半導体ウェーハをデバイス毎に分割することで形成される。半導体ウェーハを分割する際には、例えば、環状の切削ブレード(特許文献1参照)を備える切削装置(特許文献2参照)が使用される。高速に回転する切削ブレードを被加工物に対して切り込ませながら、切削ブレードと被加工物とを相対的に移動させることで、この移動の経路に沿って被加工物を切削できる。
【0003】
切削ブレードは、ダイヤモンド等の砥粒と、該砥粒を分散固定するボンド(結合材)と、を有する。切削ブレードの外周側の切削面は、ボンドと、該ボンドから突出した砥粒と、により凹凸形状が形成されている。そして、回転する切削ブレードを被加工物に切り込ませると、ボンドから適度に露出した砥粒が被加工物に接触し、被加工物が切削される。このとき、切削に伴い被加工物から生じた切削屑は、チップポケットとして機能する該凹凸形状に一時的に収容され、該凹凸形状から脱離することで効率的に排除される。
【0004】
ところで、未使用の切削ブレードは、砥粒がボンドから適度に露出されておらず、外周側にチップポケットとして機能できる大きさの凹凸形状が形成されていない。そのため、そのままでは被加工物を適切に切削できず、十分な性能を発揮できない。また、切削装置に装着した直後の切削ブレードの中心は、回転軸となるスピンドルと僅かにずれるため、回転軸から遠方に偏って突出した部分を除去する必要がある。また、被加工物を切削して消耗した切削ブレードの切削能力が低下したとき、これを回復させる必要がある。
【0005】
そこで、未使用の切削ブレードを切削装置に装着したとき、または、切削ブレードの切削能力が低下したとき、ドレッサーボードと呼ばれる基板が該切削ブレードに切削されることによってドレッシングや目立てと呼ばれる処理が実施される。ドレッサーボードは、砥粒と、該砥粒を分散固定するボンドと、を有する(例えば、特許文献3参照)。ドレッサーボードは、切削装置で切削される被加工物と同様に、外周にリングフレームが固定された粘着テープに貼着された状態でチャックテーブルに保持され、切削ブレードに切削される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-87282号公報
【特許文献2】特開2005-51094号公報
【特許文献3】特開2011-11280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、リングフレーム及び粘着テープと一体化されたドレッサーボードを切削ブレードに切削させると、発生する切削屑が粘着テープの粘着層に付着する。ドレッサーボードは、複数の被加工物を収容できるカセットに収容されて保管されるため、粘着層に付着した切削屑がカセットの内部で粘着テープから脱離して飛散し、カセット内部を汚染するという問題が生じる。
【0008】
また、ドレッサーボードに貼着される粘着テープには、切削装置で切削される被加工物に貼着されて使用される粘着テープが流用される。この粘着テープは、被加工物等を所定の粘着力で保持するとともに、被加工物等の切削後に容易に被加工物等から剥離できる適度な性能を有するため、高価である。そのため、高価な粘着テープを使用せずにドレッサーボードをリングフレームに固定したいという要望がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、粘着テープが不要であり切削屑が付着しにくいドレッシング工具、及びドレッシング工具の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、ドレッシング工具であって、熱可塑性樹脂層を含む支持基板と、該支持基板に支持され一体化されたドレッシング部材と、を備え、該支持基板は、粘着層を有さないことを特徴とするドレッシング工具が提供される。
【0011】
好ましくは、該熱可塑性樹脂層と、該ドレッシング部材と、は直接接触している。
【0012】
または、好ましくは、該支持基板は、該熱可塑性樹脂層のみからなる。
【0013】
より好ましくは、該熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィン系材料またはポリエステル系材料で構成されている。
【0014】
また、好ましくは、該ドレッシング部材は、熱圧着された状態で該支持基板に一体化されている。
【0015】
さらに好ましくは、該支持基板は、チャックテーブルの保持面の全面を覆う大きさ及び形状であり、該チャックテーブルに吸引保持された被加工物を切削する切削ブレードのドレッシングに使用可能であり、該チャックテーブルに吸引保持された状態で該切削ブレードによって該ドレッシング部材が切削されることで該切削ブレードをドレッシングできる。
【0016】
また、本発明の他の一態様によれば、ドレッシング工具の製造方法であって、熱可塑性樹脂層を含む支持基板の上にドレッシング部材を載せる配設ステップと、該配設ステップの後、該支持基板と、該ドレッシング部材と、を一体化させる一体化ステップと、を含み、該支持基板は、粘着層を有さないことを特徴とするドレッシング工具の製造方法が提供される。
【0017】
好ましくは、該配設ステップでは、該熱可塑性樹脂層と、該ドレッシング部材と、を直接接触させる。
【0018】
または、好ましくは、該支持基板は、該熱可塑性樹脂層のみからなる。
【0019】
より好ましくは、該熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィン系材料またはポリエステル系材料で構成されている。
【0020】
また、好ましくは、該一体化ステップでは、該ドレッシング部材は、熱圧着により該支持基板と一体化される。
【0021】
さらに好ましくは、該一体化ステップの後、一体化した該支持基板及び該ドレッシング部材を該ドレッシング部材が上方に露出するように保持テーブルに載せ、一体化した該支持基板及び該ドレッシング部材を該保持テーブルに保持させ、加工具で該ドレッシング部材の上面を加工して平坦化する平坦化ステップをさらに含む。
【0022】
より好ましくは、該加工具は、研削砥石を備え該研削砥石で該ドレッシング部材の該上面を研削する研削ホイール、該ドレッシング部材の該上面を研磨する研磨パッド、または、該ドレッシング部材の該上面をバイト切削するバイト切削工具である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様に係るドレッシング工具及びその製造方法では、ドレッシング部材は熱可塑性樹脂層を含む支持基板に支持され一体化されている。そして、この支持基板は、粘着層を有さない。そのため、切削屑が付着しやすい粘着層を有する粘着テープと比較して、このドレッシング工具には切削屑が付着しにくい。そのため、ドレッシング工具が収容されるカセット等が切削屑により汚染されにくくなる。また、粘着層を有する高価な粘着テープを使用しないため、ドレッシング工具は安価である。
【0024】
したがって、本発明の一態様によると、粘着テープが不要であり切削屑が付着しにくいドレッシング工具、及びドレッシング工具の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】被加工物を切削する切削装置を模式的に示す斜視図である。
【
図3】ドレッシング工具を模式的に示す斜視図である。
【
図4】ドレッシング工具を模式的に示す断面図である。
【
図5】一体化ステップを模式的に示す斜視図である。
【
図6】平坦化ステップを模式的に示す斜視図である。
【
図7】ドレッシング工具の製造方法の各ステップの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係るドレッシング工具は、半導体ウェーハ等の被加工物を切削する切削装置において、切削ブレードに切削されることで使用される。まず、切削ブレードにより切削される被加工物と、切削装置と、について説明する。
図1は、切削装置2を模式的に示す斜視図である。また、
図2には、切削装置2で切削される被加工物1を模式的に示す斜視図が含まれている。
【0027】
被加工物1は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体等の材料から形成されるウェーハである。または、LT(タンタル酸リチウム)、若しくは、LN(ニオブ酸リチウム)等の複酸化物から形成されるウェーハである。
【0028】
被加工物1の表面1aは、互いに交差する複数の分割予定ライン3により区画される。そして、被加工物1の表面1aの分割予定ライン3で区画された各領域には、それぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス5が形成されている。被加工物1を分割予定ライン3に沿って分割すると、それぞれデバイス5を含む個々のデバイスチップを形成できる。
【0029】
または、被加工物1は、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円板状の基板等である。該ガラスは、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等である。または、被加工物1は、複数のデバイスチップが縦横に配置されて樹脂で封止されて形成されたパッケージ基板でもよい。以下、被加工物1が半導体ウェーハである場合を例に説明するが、被加工物1はこれに限定されない。
【0030】
切削装置2に被加工物1を搬入する際には、予め、金属等により形成されたリングフレーム7の開口を塞ぐように貼られた粘着テープ9が被加工物1の裏面1b側に貼着される。そして、被加工物1と、粘着テープ9と、リングフレーム7と、が一体化されたフレームユニット11の状態で被加工物1が切削装置2に搬入され、切削される。被加工物1が分割されて形成される個々のデバイスチップは粘着テープ9により支持され、その後、粘着テープ9からピックアップされる。
【0031】
次に、切削装置2について説明する。
図1に示す通り、切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の前方の角部6には開口8が形成されており、この開口8内には昇降機構(不図示)によって昇降するカセット支持台10が設けられている。カセット支持台10の上面には、複数の被加工物1を収容するカセット12が搭載される。なお、
図1では説明の便宜上、破線でカセット12の輪郭のみを示している。
【0032】
カセット支持台10の側方には、長手方向がX軸方向(前後方向、加工送り方向)に沿うように矩形の開口14が形成されている。開口14内には、ボールネジ式のX軸移動機構(不図示)と、X軸移動機構の上部を覆うテーブルカバー16及び防塵防滴カバー18
と、が配置されている。X軸移動機構は、テーブルカバー16によって覆われたX軸移動テーブル(不図示)を備えており、このX軸移動テーブルをX軸方向に移動させる。
【0033】
X軸移動テーブルの上面には、被加工物1を吸引保持するチャックテーブル20がテーブルカバー16から露出するように設けられている。このチャックテーブル20はモータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル20はX軸移動機構によってX軸移動テーブルとともにX軸方向に移動する。このとき、チャックテーブル20の移動に追従して防塵防滴カバー18が伸縮する。
【0034】
チャックテーブル20の上面は、被加工物1を吸引保持する保持面22となっている。保持面22は、X軸方向及びY軸方向に対して概ね平行に形成されており、チャックテーブル20の内部に設けられた吸引路(不図示)等を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。チャックテーブル20の周囲には、被加工物1を支持するリングフレーム7を四方から把持するための複数のクランプ24が設けられている。
【0035】
また、開口14に隣接する領域には、被加工物1をチャックテーブル20等へと搬送する搬送ユニット(不図示)が配置されている。カセット12に収容された被加工物1は、搬送ユニットによりカセット12から引き出されてチャックテーブル20に搬送される。
【0036】
そして、粘着テープ9を介して被加工物1を支持するリングフレーム7をクランプ24で把持する。さらに、チャックテーブル20に接続された吸引源を作動させて保持面22から粘着テープ9を介して被加工物1に負圧を作用させる。すると、被加工物1がチャックテーブル20で吸引保持される。
【0037】
基台4の上面には、被加工物1を切削する切削ユニット26を支持する支持構造28が、開口14の上方に張り出すように配置されている。支持構造28の前面上部には、切削ユニット26を割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って移動させる割り出し送りユニット30aと、切削ユニット26をZ軸方向に沿って昇降させる昇降ユニット30bと、が設けられている。
【0038】
割り出し送りユニット30aは、支持構造28の前面に配置されY軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール32を備えている。Y軸ガイドレール32には、Y軸移動プレート34がスライド可能に取り付けられている。Y軸移動プレート34の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール32に平行なY軸ボールねじ36が螺合されている。
【0039】
Y軸ボールねじ36の一端部には、Y軸パルスモータ(不図示)が連結されている。Y軸パルスモータでY軸ボールねじ36を回転させると、Y軸移動プレート34は、Y軸ガイドレール32に沿ってY軸方向に移動する。
【0040】
Y軸移動プレート34の表面(前面)には、昇降ユニット30bが設けられている。昇降ユニット30bは、Y軸移動プレート34の表面に固定されたZ軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール38を備える。Z軸ガイドレール38には、Z軸移動プレート40がスライド可能に取り付けられている。
【0041】
Z軸移動プレート40の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール38に平行なZ軸ボールねじ42が螺合されている。Z軸ボールねじ42の一端部には、Z軸パルスモータ44が連結されている。Z軸パルスモータ44でZ軸ボールねじ42を回転させれば、Z軸移動プレート40は、Z軸ガイドレール38に沿ってZ軸方向に移動する。
【0042】
Z軸移動プレート40の下部には、チャックテーブル20で保持された被加工物1を切削する切削ユニット26と、チャックテーブル20で保持された被加工物1の上面を撮像する撮像ユニット(カメラユニット)46と、が固定されている。割り出し送りユニット30aでY軸移動プレート34をY軸方向に移動させると、切削ユニット26及び撮像ユニット46は割り出し送りされる。また、昇降ユニット30bでZ軸移動プレート40をZ軸方向に移動させると、切削ユニット26及び撮像ユニット46は昇降する。
【0043】
図2には切削ユニット26を模式的に示す斜視図が含まれている。切削ユニット26は、円環状の切削ブレード48を備え、切削ブレード48で被加工物1を切削する。切削ユニット26は、Y軸方向に平行な回転軸を構成するスピンドル(不図示)の基端側を回転可能に収容するスピンドルハウジング50を備える。
【0044】
スピンドルハウジング50の内部には、スピンドルを回転させるモータ等の回転駆動源が収容されており、この回転駆動源を作動させるとスピンドルが回転する。スピンドルの先端には、円環状の切削ブレード48が固定される。スピンドルを回転させると切削ブレード48を回転できる。切削ブレード48は、金属材料または樹脂材料等で円環状に形成された結合材と、ダイヤモンド等で形成され結合材中に分散固定された砥粒と、を含む砥石部を備える。切削ブレード48について、詳細は後述する。
【0045】
Z軸移動プレート40を移動させ切削ブレード48を所定の高さまで下降させ、加工送りユニット(X軸移動機構)を作動させてチャックテーブル20を加工送りして回転する切削ブレード48の砥石部を被加工物1に接触させると、被加工物1が切削される。被加工物1が分割予定ライン3に沿って切削されると、被加工物1に分割溝13が形成される。被加工物1の全て分割予定ライン3に沿って分割溝13が形成されると、被加工物1が個々のデバイスチップに分割される。
【0046】
図4に示す通り、切削ユニット26は、切削ブレード48を覆うブレードカバー52と、ブレードカバー52に接続された切削水供給ノズル54と、をさらに備える。切削ブレード48で被加工物1を切削すると、砥石部及び被加工物1から切削屑と加工熱が生じる。そこで、切削ブレード48で被加工物1を切削する間、切削水供給ノズル54から切削ブレード48及び被加工物1に純水等で構成される切削水が噴射される。切削水は、切削屑及び加工熱を除去する。
【0047】
図1に示す撮像ユニット46は、チャックテーブル20で保持された被加工物1の表面1aを撮像する。撮像ユニット46は、例えばCCDカメラやCMOSセンサ等の撮像素子を備える。撮像ユニット46により得られた撮像画像は、所定の箇所を加工するよう切削ユニット26を位置付ける際に用いられる。また、被加工物1の加工後の領域が写る撮像画像を取得することにより、加工結果の良否を評価できる。
【0048】
基台4の開口14よりも後方側には、加工後の被加工物1を洗浄する洗浄ユニット56が設けられている。加工後の被加工物1は、図示しない搬送ユニットによってチャックテーブル20から洗浄ユニット56へと搬送される。
【0049】
洗浄ユニット56は、筒状の洗浄空間内で被加工物1を吸引保持するスピンナテーブル58を備えている。また、スピンナテーブル58の上方には、被加工物1に向けて洗浄用の流体(代表的には、水とエアーとを混合した二流体)を噴射する噴射ノズル60が配置されている。被加工物1を保持したスピンナテーブル58を回転させて、噴射ノズル60から洗浄用の流体を噴射すると、被加工物1を洗浄できる。洗浄ユニット56で洗浄された被加工物1は、例えば、搬送ユニット(不図示)でカセット12に収容される。
【0050】
ここで、切削ブレード48について説明する。切削ブレード48は、ダイヤモンド等で構成された砥粒を樹脂またはニッケル等の金属で構成されたボンド(結合材)で分散固定した砥石部を外周部に備える。砥石部は、例えば、金属からなる環状基台の外周部に形成される。この環状基台を備える切削ブレードは、ハブタイプと呼ばれる。また、切削ブレード48は、環状基台を有していなくてもよい。環状基台を有さない切削ブレードは、ワッシャータイプと呼ばれる。
【0051】
切削ブレードには、複数の種別が存在する。例えば、砥石部に含まれる砥粒の形状、大きさ、及び量が異なる複数の種別の切削ブレードが存在し、また、ボンドの材質、ブレードの刃厚、径等が異なる複数の種別の切削ブレードが存在する。被加工物1を切削する際、被加工物1の材質、大きさ、及び形状や、切削加工の内容により、切削加工に適した種別の切削ブレードが選択されてスピンドルの先端に装着される。
【0052】
砥石部の表面では、ボンドから砥粒が適度に露出している。切削ブレード48を回転させ、チャックテーブル20で保持された被加工物1に切り込ませると、砥粒が被加工物1に当たり、被加工物1が切削される。切削に伴い被加工物1から生じた切削屑は、チップポケットとして機能する砥石部表面の凹凸形状に一時的に収容され、該凹凸形状から脱離することで効率的に排除される。
【0053】
被加工物1を切削すると、切削ブレード48が次第に消耗するため、切削ブレード48は、定期的に交換される。ここで、未使用の切削ブレード48は、砥粒がボンドから適度に露出しておらず、砥石部の外周面にチップポケットとして機能できる大きさの凹凸形状が形成されていない。そのため、そのままでは被加工物1を適切に切削できず、十分な性能を発揮できない。
【0054】
そこで、未使用の切削ブレード48をスピンドルに装着した際、被加工物1を切削する前に、ドレッシングや目立てと呼ばれる処理が切削ブレード48に実施される。また、被加工物1を切削して消耗した切削ブレード48の切削能力が低下したとき、切削能力を回復させるためにドレッシングが実施される。従来、切削ブレード48のドレッシングは、ドレッサーボードと呼ばれる基板が切削ブレード48に切削されることによって実施される。ドレッサーボードは、砥粒と、該砥粒を分散固定するボンドと、を有する。
【0055】
ドレッサーボードは、切削装置2で切削される被加工物1と同様に、外周にリングフレーム7が固定された粘着テープ9に貼着された状態でチャックテーブル20に保持され、切削ブレード48に切削される。ドレッシングを実施すると、切削ブレード48のボンドが適度に消耗し、砥粒が適度に露出するとともにチップポケットとして機能できる大きさの凹凸形状が砥石部の外周面に形成される。
【0056】
しかしながら、リングフレーム7及び粘着テープ9と一体化されたドレッサーボードを切削ブレード48に切削させると、発生する切削屑が粘着テープ9の粘着層に付着する。ドレッサーボードは、複数の被加工物1を収容できるカセット12に収容されて保管されるため、粘着層に付着した切削屑がカセット12の内部で粘着テープ9から脱離して飛散し、カセット12内部を汚染するという問題が生じる。
【0057】
また、ドレッサーボードに貼着される粘着テープ9には、切削装置2で切削される被加工物1に貼着されて使用される粘着テープ9が流用される。この粘着テープ9は、被加工物1等を所定の粘着力で保持するとともに、被加工物1等の切削後に容易に被加工物1等から剥離できる適度な性能を有するため、高価である。そのため、高価な粘着テープ9を使用せずにドレッサーボードをリングフレーム7に固定したいという要望がある。
【0058】
そこで、切削ブレード48のドレッシングに従来のドレッサーボードに代えて本実施形態に係るドレッシング工具が使用されるとよい。以下、本実施形態に係るドレッシング工具について説明する。
図3は、本実施形態に係るドレッシング工具15を模式的に示す斜視図であり、
図4は、本実施形態に係るドレッシング工具15を模式的に示す断面図である。
【0059】
ドレッシング工具15は、熱可塑性樹脂層を含む支持基板17と、支持基板17に支持され一体化されたドレッシング部材19と、を備える。ドレッシング工具15は、切削装置2のチャックテーブル20に搬送され、保持面22に載せられる。そして、支持基板17の下面17bが保持面22に接触した状態において、チャックテーブル20で吸引保持された状態でドレッシング工具15が使用される。
【0060】
このときにチャックテーブル20の保持面22の全面が支持基板17に覆われていなければ、チャックテーブル20がドレッシング工具15に作用させる負圧が漏れる。そのため、支持基板17は、チャックテーブル20の保持面22を覆う大きさ及び形状とされるとよい。
【0061】
例えば、支持基板17の外縁の形状及び大きさは、切削装置2で切削される被加工物1を含むフレームユニット11のリングフレーム7の外縁の形状及び大きさと一致するとよい。この場合、ドレッシング工具15をチャックテーブル20に吸引保持させる際に、クランプ24に支持基板17を把持させることが可能となる。ただし、支持基板17の大きさ及び形状はこれに限定されず、支持基板17をクランプ24が把持する必要はない。
【0062】
被加工物1や従来のドレッサーボードの支持に使用される粘着テープ9とは異なり、ドレッシング工具15の支持基板17は、粘着層を有さない。また、支持基板17は、リングフレーム7を用いずにドレッシング部材19を支持できるように、粘着テープ9よりも硬く変形しにくい態様とされる。より詳細には、支持基板17はドレッシング部材19を安定的に支持できるように材質及び厚さ等が決定される。
【0063】
例えば、支持基板17は、ドレッシング部材19に直接接触する熱可塑性樹脂層(不図示)と、熱可塑性樹脂層を支持する支持層(不図示)と、を有してもよい。または、支持基板17は、熱可塑性樹脂層のみにより形成されてもよい。
図4には、熱可塑性樹脂層17dのみにより形成された支持基板17が模式的に示されている。
【0064】
熱可塑性樹脂層17dと、ドレッシング部材19と、は直接接触する。すなわち、支持基板17の上面17aに露出する熱可塑性樹脂層17dは、ドレッシング部材19の下面19bと、接触する。支持基板17と、ドレッシング部材19と、はこの態様で一体化される。支持基板17と、ドレッシング部材19と、の一体化の手順について、詳細は後述する。
【0065】
この熱可塑性樹脂層17dは、例えば、ポリオレフィン系材料またはポリエステル系材料で構成されている。ポリエステル系材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。また、ポリエステル系材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。ただし、支持基板17に含まれる熱可塑性樹脂層17dの材質はこれに限定されない。
【0066】
ドレッシング部材19は、樹脂材料または金属材料等で形成されたボンド(結合材)と、ボンド中に分散固定されたGC(グリーンカーボナイト)またはWA(ホワイトアランダム)等の砥粒と、により構成される。ドレッシング工具15は、チャックテーブル20に吸引保持された状態でドレッシング部材19が切削ブレード48に切削されることにより切削ブレード48を消耗させてドレッシングできる。
【0067】
より詳細に説明する。チャックテーブル20に吸引保持されたドレッシング工具15で切削ブレード48をドレッシングするには、切削ブレード48で被加工物1を切削するときと同様に切削ブレード48にドレッシング工具15を切削させる。
【0068】
まず、ドレッシングの対象となる切削ブレード48を回転させ、昇降ユニット30bを作動させて切削ユニット26の高さを調整する。このとき、切削ブレード48の砥石部の最下点がドレッシング部材19の上面19aよりも低い高さ位置に位置付けられる。さらに、切削ブレード48の最下点がドレッシング部材19の下面19bよりも高い高さ位置に位置付けられるように切削ユニット26の高さが調整されてもよい。
【0069】
次に、加工送りユニットを作動させてチャックテーブル20を加工送り方向(X軸方向)に沿って移動させる。そして、切削ブレード48の砥石部がドレッシング部材19に接触すると、ドレッシング部材19が切削ブレード48に切削され、切削ブレード48がドレッシング部材19にドレッシングされる。
【0070】
ドレッシング部材19が切削ブレード48に切削されると、ドレッシング部材19や切削ブレード48の砥石部から切削屑が発生する。ドレッシング工具15を使用した切削ブレード48のドレッシングが完了した後、チャックテーブル20からドレッシング工具15が搬出され、例えば、カセット12に収容される。このときにドレッシング工具15に切削屑が付着していると、カセット12の内外で切削屑が飛散して、カセット12や切削装置2の内部を汚染する。
【0071】
しかしながら、本実施形態に係るドレッシング工具15の支持基板17は粘着層を有さないため、切削屑がドレッシング工具15に強固に付着することがない。または、ドレッシング工具15に切削屑が付着していても、切削屑を容易に除去できる。そのため、ドレッシング工具15から飛散する切削屑の量を大きく低減でき、カセット12や切削装置2が切削屑に汚染されにくくなる。
【0072】
また、本実施形態に係るドレッシング工具15では、適度な粘着力を粘着層が有する粘着テープ9を使用せず、粘着層を有さない支持基板17を使用する。そのため、高価な粘着テープ9が不要であり、切削ブレード48のドレッシングを低コストに実施できる。
【0073】
また、支持基板17の外縁の形状及び大きさをリングフレーム7の外縁の形状及び大きさに合わせると、切削装置2は、フレームユニット11と同様にドレッシング工具15を扱える。そのため、ドレッシング工具15を扱うための特別な機構を切削装置2が備える必要がない。
【0074】
また、フレームユニット11を収容できるカセット12にドレッシング工具15を収容できる。そのため、ドレッシング工具15の収容のために特別なカセットを準備する必要がなく、本実施形態に係るドレッシング工具15によると切削ブレード48のドレッシングを低コストに実施できる。
【0075】
次に、本実施形態に係るドレッシング工具15の製造方法について説明する。
図7は、ドレッシング工具15の製造方法の各ステップの流れを示すフローチャートである。まず、当該製造方法では、支持基板17の上面17aの上にドレッシング部材19を載せる配設ステップS10を実施する。
【0076】
後に説明する一体化ステップS20において熱圧着を実施する場合、配設ステップS10では支持基板17は熱圧着装置のテーブル上に載置される。支持基板17が熱可塑性樹脂層以外の構造物を含む場合、このときに熱可塑性樹脂層が上方に露出するように支持基板17の向き(表裏)が決定される。すなわち、支持基板17の上面17aには熱可塑性樹脂層が露出する。
【0077】
そして、配設ステップS10では、支持基板17にドレッシング部材19を載せたとき、支持基板17にドレッシング部材19が直接接触する。すなわち、ドレッシング部材19は、支持基板17の熱可塑性樹脂層に直接接触する。
【0078】
なお、支持基板17にドレッシング部材19が載せられた後、ドレッシング部材19の位置及び向きが調整されてもよい。支持基板17は粘着層を有さないため、この時点ではドレッシング部材19は支持基板17に固定されない。そのため、ドレッシング部材19の位置及び向きの調整を自由に実施できる。
【0079】
ここで、位置及び向きの調整の目的について説明する。支持基板17の外縁の形状がフレームユニット11のリングフレーム7の外縁の形状に合わせられている場合、リングフレーム7の外縁に設けられた特定の意味を有する形状及び構造が支持基板17の外縁にも形成される。この特定の意味を有する形状及び構造は、様々な目的でリングフレーム7の外縁に形成される。
【0080】
例えば、カセット12にフレームユニット11を安定的に収容できるように、また、クランプ24やフレームユニット11を搬送する搬送ユニットがリングフレーム7を容易かつ安定的に保持できるようにリングフレーム7の形状が決められる。また、リングフレーム7の外縁に形成される特定の形状及び構造は、フレームユニット11の向きを外見から特定する為にも有用である。
【0081】
さらに、フレームユニット11が形成される際、被加工物1のおおよその向きがリングフレーム7の外見から特定されるように、被加工物1及びリングフレーム7の向きが調整される場合もある。そして、例えば、ドレッシング工具15を切削装置2においてフレームユニット11と同様に取り扱えるように、支持基板17及びドレッシング部材19の位置及び向きが調整されるとよい。
【0082】
矩形状のドレッシング部材19には、ドレッシング部材19が切削ブレード48のドレッシングのために切削される際に加工送りされるべき方向、すなわち、切削が進行するべき方向が決められている。そこで、チャックテーブル20にドレッシング工具15が搬送された後この切削が進行するべき方向がチャックテーブル20の加工送り方向(X軸方向)に容易に合わせられるように、支持基板17及びドレッシング部材19の位置及び向きが予め調整されるとよい。支持基板17は粘着層を有さないため、調整は容易である。
【0083】
図5には、支持基板17の上にドレッシング部材19が載せられて形成された積層体15aを模式的に示す斜視図が含まれている。支持基板17が粘着層を有さず、この時点では支持基板17及びドレッシング部材19は一体化されていないため、次に両者を一体化させる。
【0084】
本実施形態に係るドレッシング工具15の製造方法では、配設ステップS10の後、支持基板17と、ドレッシング部材19と、を一体化させる一体化ステップS20が実施される。
図5は、一体化ステップS20の一例を模式的に示す斜視図である。一体化ステップS20では、例えば、ドレッシング部材19は、熱圧着により支持基板17と一体化される。
【0085】
図5には、熱圧着を実施する熱圧着装置62が模式的に示されている。熱圧着装置62は、積層体15aを支持する支持テーブル(不図示)と、支持テーブルに支持された積層体15aに下方から赤外線64を照射する赤外線源63と、積層体15aを上方から押圧する押圧ユニット(不図示)と、を備える。
【0086】
支持テーブルは、赤外線64を透過する部材で形成されている。赤外線源63は、例えば、キセノンランプ、IR―LED等である。ただし、赤外線源63はこれに限定されない。押圧ユニットは、例えば、平坦な底面を有する押圧部材であり、上方から下降してドレッシング部材19を押圧する。または、ドレッシング部材19の上面19aで転がりつつドレッシング部材19を上方から押圧できるローラーである。
【0087】
一体化ステップS20では、押圧ユニットで上方からドレッシング部材19を押圧しつつ赤外線源63を作動させて下方から支持基板17に赤外線64を照射して支持基板17を加熱する。このとき支持基板17を加熱する温度は、支持基板17の熱可塑性樹脂層が軟化する温度以上であり、かつ、完全に溶融する温度以下である。
【0088】
すなわち、支持基板17の熱可塑性樹脂層を適度に軟化させつつドレッシング部材19を上方から熱可塑性樹脂層に押圧することで熱圧着を実施する。その後、赤外線源63を停止させると、熱可塑性樹脂層の温度が低下して固化する。これにより、支持基板17及びドレッシング部材19の一体化が完了する。
【0089】
なお、一体化ステップS20は、熱圧着以外の方法により実施されてもよい。例えば、ドレッシング部材19は、接着剤により支持基板17に貼着されてもよい。または、ドレッシング部材19の上面19aと支持基板17の上面17aが粘着テープに貼着されることにより一体化が実施されてもよい。これらの場合においても、支持基板17は粘着層を備えないため、支持基板17及びドレッシング部材19が一体化されるまでの間、ドレッシング部材19の位置及び向きの調整は自由に実施可能である。
【0090】
本実施形態に係るドレッシング工具15の製造方法では、一体化ステップS20の後加工具でドレッシング部材19の上面19aを加工して平坦化する平坦化ステップS30をさらに実施してもよい。
【0091】
ドレッシング部材19は、ボンドに無数の砥粒を分散させて板状に成形してボンドを固化させることで形成される。このとき、ドレッシング部材19の上面19aには微小な凹凸が残り、上面19aの高さが不均一となる。そのため、ドレッシング部材19の上面19aを平坦化せず切削ブレード48にドレッシング部材19を切削させると、ドレッシング部材19の切削される位置によって切削ブレード48の切り込み深さが変化してしまう。すなわち、ドレッシングが一定の強度で進行しない。
【0092】
そこで、ドレッシング部材19の上面19aを加工して平坦化して、上面19aの高さを各所で均一にする。さらに、平坦化ステップS30では、ドレッシング工具15を平坦化するとともに所定の厚さに薄化してもよい。製造される各ドレッシング工具15の厚さを統一できると、新しいドレッシング工具15の使用を開始する毎に切削装置2にドレッシング工具15の厚さに関する情報を作業者が入力する必要がない。そして、各ドレッシング工具15を使用して同様にドレッシングを実施できる。
【0093】
図6は、平坦化ステップS30の一例を模式的に示す斜視図である。平坦化ステップS30は、ドレッシング部材19を研削装置65で研削することで平坦化する。研削装置65は、ドレッシング工具15を保持する保持テーブル67と、保持テーブル67で保持されたドレッシング工具15を研削する研削ユニット66と、を備える。保持テーブル67は、例えば、切削装置2のチャックテーブル20と同様に構成され、モータ等の回転駆動源に接続され、上面に垂直な軸の周りに回転できる。
【0094】
研削ユニット66は、保持テーブル67の上面に概ね垂直な方向に沿ったスピンドル68と、スピンドル68の上端に連結されたスピンドルモータ(不図示)と、を有する。スピンドルモータを作動させると、スピンドル68は回転する。スピンドル68の下端には、円盤状のホイールマウント70の上面側が連結されている。スピンドル68の下端側には、ホイールマウント70を介して円環状の研削ホイール(加工具)72が装着されている。
【0095】
研削ホイール72は、円環状のホイール基台74を有する。ホイール基台74は、アルミニウム等の金属で形成される。このホイール基台74の上面側がホイールマウント70の下面側に連結される。つまり、研削ホイール72は、ホイールマウント70を介してスピンドル68に装着される。
【0096】
ホイール基台74の下面側には、環状に配置された研削砥石76が設けられている。研削砥石76は、例えば、ビトリファイドやレジノイド等の結合材に、ダイヤモンドやcBN(cubic boron nitride)等の砥粒を混合し、混合体を焼結することで形成されている。スピンドルモータを作動させてスピンドル68を回転させて研削ホイール72を回転させると、研削砥石76が円環軌道上を回転移動する。
【0097】
研削装置65でドレッシング部材19を研削する際には、一体化した支持基板17及びドレッシング部材19を保持テーブル67に載せ、保持テーブル67でドレッシング工具15を保持し、被研削面となるドレッシング部材19の上面19aを上方に露出させる。
【0098】
そして、研削ホイール72と、保持テーブル67と、をそれぞれの回転軸の周りに回転させ、研削ユニット66の下降を開始する。そして、円環軌道上を移動する研削砥石76の下面がドレッシング部材19の上面19aに当たると、ドレッシング部材19の研削が始まる。研削装置65は、被加工物の厚みを測定できる図示しない厚み測定ユニットを備え、厚み測定ユニットでドレッシング工具15の厚みを監視しながら研削ユニット66の下降を継続する。
【0099】
その後、ドレッシング部材19の上面19aが所定の高さ位置に達したときに研削ユニット66の下降を終了し研削ユニット66を上昇させる。すると、ドレッシング部材19の上面19aが平坦化され、所定の厚みに薄化されたドレッシング工具15が得られる。なお、ドレッシング部材19を加工すると、ドレッシング部材19等から加工屑が発生する。しかしながら、ドレッシング部材19を支持する支持基板17は粘着層を有さないため、加工屑が粘着層に付着して汚染源となることはない。
【0100】
例えば、従来使用されていたドレッサーボードでは、粘着テープに貼り付けられた後に平坦化を実施すると、発生した加工屑が粘着テープの粘着層に付着するという問題が生じる。
【0101】
その一方で、粘着テープに貼り付ける前にドレッサーボードを平坦化しても、その後に粘着テープにドレッサーボードを貼着したとき、粘着テープの厚みのばらつきや部分的な偏りによりドレッサーボードの上面の高さが一定とならない場合があった。そのため、ドレッサーボードの上面の高さを測定して、測定の結果を切削装置2に入力した上で切削ブレード48のドレッシングを実施しなければならなかった。
【0102】
これに対して、ドレッシング工具15は、支持基板17及びドレッシング部材19が一体化され、ドレッシング部材19が平坦化されて所定の厚みで形成された後、そのままの態様にて、切削装置2に搬送され切削ブレード48のドレッシングに使用される。そのため、切削装置2に搬入する前にドレッシング工具15のドレッシング部材19の上面19aの高さを測定する必要がない。
【0103】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、平坦化ステップS30でドレッシング部材19の上面19aの平坦化に使用される加工具が研削砥石76を備える研削ホイール72である場合について説明したが、加工具はこれに限定されない。
【0104】
平坦化ステップS30で使用される加工具は、ドレッシング部材19の上面19aを研磨する研磨パッドでもよく、平坦化ステップS30は研磨パッドで被加工物を研磨する研磨装置で実施されてもよい。または、加工具は、ドレッシング部材19の上面19aをバイト切削するバイト切削工具でもよく、平坦化ステップS30はバイト切削工具で被加工物をバイト切削するバイト切削装置(サーフェイスプレーナー)で実施されてもよい。
【0105】
その他、上記実施形態及び変形例に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0106】
1 被加工物
1a 表面
1b 裏面
3 分割予定ライン
5 デバイス
7 リングフレーム
9 粘着テープ
11 フレームユニット
13 分割溝
15 ドレッシング工具
15a 積層体
17 支持基板
17a,19a 上面
17b,19b 下面
17d 熱可塑性樹脂層
19 ドレッシング部材
2 切削装置
4 基台
6 角部
8 開口
10 カセット支持台
12 カセット
14 開口
16 テーブルカバー
18 防塵防滴カバー
20 チャックテーブル
22 保持面
24 クランプ
26 切削ユニット
28 支持構造
30a 割り出し送りユニット
30b 昇降ユニット
32,38 Y軸ガイドレール
34,40 Y軸移動プレート
36,42 Y軸ボールねじ
44 パルスモータ
46 撮像ユニット
48 切削ブレード
50 スピンドルハウジング
52 ブレードカバー
54 切削水供給ノズル
56 洗浄ユニット
58 スピンナテーブル
60 噴射ノズル
62 熱圧着装置
63 赤外線源
64 赤外線
65 研削装置
66 研削ユニット
67 保持テーブル
68 スピンドル
70 ホイールマウント
72 研削ホイール
74 ホイール基台
76 研削砥石