(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160598
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】学習装置、推定装置、学習方法、推定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20231026BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071057
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】奥津 大
(72)【発明者】
【氏名】古川 愛子
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】災害による設備への被害を予測する技術を改善する。
【解決手段】
学習装置10は、設備に関する情報と、設備の環境条件と、設備の劣化の程度とを含む劣化データを訓練データとした機械学習により、設備の劣化の程度を算出する第1モデルを生成する第1モデル生成部112と、設備に対する災害の災害条件と、災害による被害の程度と、第1モデルが算出した劣化の程度とを含む被害データを訓練データとした機械学習により、設備の被害の程度を算出する第2モデルを生成する第2モデル生成部114と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備に関する情報と、前記設備の環境条件と、前記設備の劣化の程度とを含む劣化データを訓練データとした機械学習により、前記設備の劣化の程度を算出する第1モデルを生成する第1モデル生成部と、
前記設備に対する災害の災害条件と、前記災害による被害の程度と、前記第1モデルが算出した前記劣化の程度とを含む被害データを訓練データとした機械学習により、前記設備の被害の程度を算出する第2モデルを生成する第2モデル生成部と、
を備える学習装置。
【請求項2】
前記設備は地下管路又は電柱を含むインフラ設備を含み、前記災害は地震、液状化、台風のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の学習装置。
【請求項3】
設備に関する情報、前記設備の環境条件、及び前記設備の劣化の程度を含む劣化データを訓練データとした機械学習により学習された、前記設備の劣化の程度を算出する第1モデルと、前記設備に対する災害の災害条件、前記災害による被害の程度、及び前記第1モデルが算出した前記劣化の程度を含む被害データを訓練データとした機械学習により学習された、前記設備の被害の程度を算出する第2モデルと、を取得するモデル取得部と、
対象設備の設備に関する情報、前記対象設備の環境条件、及び前記対象設備の災害条件を含む対象データを、前記第1モデル及び前記第2モデルに適用し、前記対象設備の被害の程度を推定する推定部と、
を備える推定装置。
【請求項4】
前記対象データは、複数の災害のそれぞれについての災害条件を含み、
前記災害ごとに前記対象データを分割する分割部をさらに備え、
前記推定部は、前記分割部により分割された前記対象データを、前記第1モデルと、前記第2モデルに適用し、前記対象設備の被害の程度を前記複数の災害のそれぞれについて推定する、請求項3に記載の推定装置。
【請求項5】
学習装置が実行する学習方法であって、
設備に関する情報と、前記設備の環境条件と、前記設備の劣化の程度とを含む劣化データを訓練データとした機械学習により、前記設備の劣化の程度を算出する第1モデルを生成する第1モデル生成ステップと、
前記設備に対する災害の災害条件と、前記災害による被害の程度と、前記第1モデルが算出した前記劣化の程度とを含む被害データを訓練データとした機械学習により、前記設備の被害の程度を算出する第2モデルを生成する第2モデル生成ステップと、
を含む学習方法。
【請求項6】
推定装置が実行する推定方法であって、
設備に関する情報、前記設備の環境条件、及び前記設備の劣化の程度を含む劣化データを訓練データとした機械学習により学習された、前記設備の劣化の程度を算出する第1モデルと、前記設備に対する災害の災害条件、前記災害による被害の程度、及び前記第1モデルが算出した前記劣化の程度を含む被害データを訓練データとした機械学習により学習された、前記設備の被害の程度を算出する第2モデルと、を取得する取得ステップと、
対象設備の設備に関する情報、前記対象設備の環境条件、及び前記対象設備の災害条件を含む対象データを、前記第1モデル及び前記第2モデルに適用し、前記対象設備の被害の程度を推定する推定ステップと、
を含む、推定方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1又は2に記載の学習装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習装置、推定装置、学習方法、推定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害発生時のインフラ設備への被害を事前に想定するための手法が存在する。地震発生時の被害の予測については、統計的に地表面最大速度に対する関数(地震被害率関数)をもとに予測を行う手法が存在する(例えば、非特許文献1及び2参照)。地震以外の災害発生時の被害の予測としては、台風の情報を入力することで電柱、電線等に関する被害を予測する手法が提案されている(例えば、非特許文献3参照)。また、設備が劣化することによって被害を受けやすくなる可能性が示唆されている(例えば、非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】丸山喜久、外1名、「近年の地震被害データを加味したマクロな配水管被害予測式の改良」、土木学会論文集A1(構造・地震工学)、Vol.65、No.1(地震工学論文集第30巻)、pp.565-574、2009年
【非特許文献2】山村猛、外3名、「道路橋の地震被害率関数の一作成法」、土木学会地震工学論文集、pp.674-679、2007年
【非特許文献3】中部電力、「台風風速予測システム(RAMP-T)」、[online]、[2022年3月22日検索]、インターネット<URL: https://www.chuden.co.jp/resource/seicho_kaihatsu/kaihatsu/techno/techno_naiyou2013/techno_gaiyou_16.pdf>
【非特許文献4】伊藤陽、外2名、「通信用地下管路における腐食による耐震性能低下の定量化とその予測」、材料試験技術、Vol.59、No.4、pp.188-193、2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
設備の劣化があると災害時に被害を受けやすい可能性があるが、従来の技術では、どの程度被害を受けやすくなるかについて定量的に評価し、設備の劣化を被害の予測に反映させられていなかった。劣化に関するデータが全ての設備にない限り、当該設備の被害の予測を定量的に行うことができなかった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、災害による設備への被害を予測する技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に係る学習装置は、設備に関する情報と、前記設備の環境条件と、前記設備の劣化の程度とを含む劣化データを訓練データとした機械学習により、前記設備の劣化の程度を算出する第1モデルを生成する第1モデル生成部と、前記設備に対する災害の災害条件と、前記災害による被害の程度と、前記第1モデルが算出した前記劣化の程度とを含む被害データを訓練データとした機械学習により、前記設備の被害の程度を算出する第2モデルを生成する第2モデル生成部と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る推定装置は、設備に関する情報、前記設備の環境条件、及び前記設備の劣化の程度を含む劣化データを訓練データとした機械学習により学習された、前記設備の劣化の程度を算出する第1モデルと、前記設備に対する災害の災害条件、前記災害による被害の程度、及び前記第1モデルが算出した前記劣化の程度を含む被害データを訓練データとした機械学習により学習された、前記設備の被害の程度を算出する第2モデルと、を取得するモデル取得部と、対象設備の設備に関する情報、前記対象設備の環境条件、及び前記対象設備の災害条件を含む対象データを、前記第1モデル及び前記第2モデルに適用し、前記対象設備の被害の程度を推定する推定部と、を備える。
【0008】
また、本発明に係る学習方法は、学習装置が実行する学習方法であって、設備に関する情報と、前記設備の環境条件と、前記設備の劣化の程度とを含む劣化データを訓練データとした機械学習により、前記設備の劣化の程度を算出する第1モデルを生成する第1モデル生成ステップと、前記設備に対する災害の災害条件と、前記災害による被害の程度と、前記第1モデルが算出した前記劣化の程度とを含む被害データを訓練データとした機械学習により、前記設備の被害の程度を算出する第2モデルを生成する第2モデル生成ステップと、を含む。
【0009】
また、本発明に係る推定方法は、推定装置が実行する推定方法であって、設備に関する情報、前記設備の環境条件、及び前記設備の劣化の程度を含む劣化データを訓練データとした機械学習により学習された、前記設備の劣化の程度を算出する第1モデルと、前記設備に対する災害の災害条件、前記災害による被害の程度、及び前記第1モデルが算出した前記劣化の程度を含む被害データを訓練データとした機械学習により学習された、前記設備の被害の程度を算出する第2モデルと、を取得する取得ステップと、対象設備の設備に関する情報、前記対象設備の環境条件、及び前記対象設備の災害条件を含む対象データを、前記第1モデル及び前記第2モデルに適用し、前記対象設備の被害の程度を推定する推定ステップと、を含む。
【0010】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、本発明に係る学習装置として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、災害による設備への被害を予測する技術を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る被害予測システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る劣化データの例を示す図である。
【
図3】第1モデルの学習アルゴリズムの一例として勾配ブースティング決定木の一部の例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る被害データの例を示す図である。
【
図5】第1モデルの生成に用いられた説明変数の例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る対象データの例を示す図である。
【
図7A】本実施形態に係る被害予測システムの動作を示す図である。
【
図7B】本実施形態に係る被害予測システムの動作を示す図である。
【
図8】変形例に係る被害予測システムの概略構成を示す図である。
【
図9】変形例に係る対象データの例を示す図である。
【
図10A】分割された対象データの例を示す図である。
【
図10B】分割された対象データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。
【0014】
<被害予測システム1の概略構成>
図1は、本実施形態に係る被害予測システム1の構成を示す図である。
図1に示すように、被害予測システム1は、学習装置10と、推定装置20とを備える。学習装置10と推定装置20とは、例えばインターネット及び移動体通信網等を含むネットワーク30と有線又は無線により通信可能に接続される。各装置間で情報を送受信するための通信方法は、特に限定されない。学習装置10と推定装置20とは、一体化されていてもよい。
【0015】
学習装置10及び推定装置20は、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属するサーバ等のコンピュータである。
【0016】
ネットワーク30は、インターネット、少なくとも1つWAN(Wide Area Network)、少なくとも1つのMAN(Metropolitan Area Network)、又はこれらの任意の組合せを含む。ネットワーク30は、少なくとも1つの無線ネットワーク、少なくとも1つの光ネットワーク、又はこれらの任意の組合せを含んでもよい。無線ネットワークは、例えば、アドホックネットワーク、セルラーネットワーク、無線LAN(local area network)、衛星通信ネットワーク、又は地上マイクロ波ネットワークである。
【0017】
まず、本実施形態の概要について説明し、詳細については後述する。学習装置10は、設備に関する情報と、設備の環境条件と、設備の劣化の程度とを含む劣化データを訓練データとした機械学習により、設備の劣化の程度を算出する第1モデルを生成する。学習装置10は、設備に対する災害の災害条件と、災害による被害の程度と、第1モデルが算出した劣化の程度とを含む被害データを訓練データとした機械学習により、設備の被害の程度を算出する第2モデルを生成する。学習装置10は、生成したモデルを推定装置20に出力する。
【0018】
推定装置20は、学習装置10が生成した第1モデルと第2モデルとを用いて対象設備の被害の程度を推定する。推定装置20は、対象設備の設備に関する情報、対象設備の環境条件、及び対象設備の災害条件を含む対象データを、当該第1モデル及び第2モデルに適用し、対象設備の被害の程度を推定する。
【0019】
本実施形態によれば、対象設備の劣化の程度を予測した上で、災害による当該対象設備への被害の程度を精度よく予測することができる。よって、災害による設備への被害を予測する技術を改善することができる。
【0020】
<学習装置10の構成>
図1に示すように、学習装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、入力部14と、出力部15とを備える。
【0021】
記憶部12は、1つ以上のメモリを含み、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリなどを含んでもよい。記憶部12に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部12は、学習装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部12は、必ずしも学習装置10が内部に備える必要はなく、学習装置10の外部に備える構成としてもよい。
【0022】
通信部13は、ネットワーク30に接続する1つ以上の通信用インターフェースを含む。当該通信用インターフェースは、例えば移動通信規格、有線LAN規格、又は無線LAN規格に対応するが、これらに限られず、任意の通信規格に対応してもよい。通信部13は、学習装置10の動作に用いられる情報を受信し、また学習装置10の動作によって得られる情報を送信する。
【0023】
入力部14には、少なくとも1つの入力用インターフェースが含まれる。入力用インターフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又はマイクである。入力部14は、学習装置10の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付ける。入力部14は、学習装置10に備えられる代わりに、外部の入力機器として学習装置10に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0024】
出力部15には、少なくとも1つの出力用インターフェースが含まれる。出力用インターフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。出力部15は、学習装置10の動作によって得られる情報を出力する。出力部15は、学習装置10に備えられる代わりに、外部の出力機器として学習装置10に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0025】
制御部11は、制御演算回路(コントローラ)により実現される。該制御演算回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。制御部11は、学習装置10の各部を制御しながら、学習装置10の動作に関わる処理を実行する。制御部11は、外部装置との情報の送受信を、通信部13及びネットワーク30を介して行うことができる。
【0026】
制御部11は、劣化データ取得部111と、第1モデル生成部112と、被害データ取得部113と、第2モデル生成部114とを備える。
【0027】
(第1モデルの生成)
劣化データ取得部111は劣化データを取得する。劣化データ取得部111は、劣化データを記憶部12から読み出すことで取得してもよいし、ユーザによって入力された劣化データを、入力部14を介して取得してもよい。
【0028】
図2は劣化データの一例である。
図2では、劣化データをテーブル形式で表すが、劣化データの形式はこれに限られない。劣化データは、設備ごとに当該設備に関する情報、設備の環境条件、及び設備の劣化の程度を含む。
【0029】
設備とは、管路又は電柱等のインフラ設備を含む。管路は例えば通信ケーブルを保護する通信用管路であって、地下に埋設される地下管路を含む。管路は水道用管路、ガス用管路、電力用管路等であってもよい。電柱は地上に設置され、電力線、通信線等が架設される。これに限られず、設備は、マンホール、とう道等の地下設備、橋、道路、トンネル、ビル等の地上設備を含んでよい。
図2を参照すると、劣化データは管路及び電柱の2種の設備を含む。
【0030】
設備に関する情報とは、設備の材質、設備が建築されてからの経過年数等を示す情報を含む。設備に関する情報は複数あってよく、例えば設備の修理履歴、設備のサイズ、設備の特性等任意の情報を含んでよい。例えば設備としての管路の亘長、継ぎ手部の材質、管径、埋設深さ等が設備に関する情報として含まれてよい。
【0031】
環境条件は、設備が設けられた場所の環境を示す情報を含む。環境条件は複数あってよく、例えば設備がある地域の地形区分、地盤、地盤の岩石又は土の種類、気候、緯度、経度及び標高等の設備が設けられた位置の情報等を含んでよい。地形は低地、高地、平野、台地、丘陵、山地、山脈、谷等を含む。地盤は、岩盤層、硬質砂れき層等を含む。気候は、平均気温、平均湿度、平均日照時間、平均日射量、平均風速、飛来塩分量、年間降水量等を含む。これらに限られず、環境条件は設備が設けられる土地の土壌中の成分、地中温度、含水量、酸性度(pH)等を含んでもよい。
【0032】
劣化の程度は、設備の点検の結果を示す情報を含む。劣化の程度は、設備に生じた破損箇所の長さ、深さ、面積等の連続値であってもよいし、劣化の有無又は程度を段階的に示す離散値であってもよい。
【0033】
図2を参照すると、タイトル行の下の管路についての劣化データを示す行では、設備に関する情報としての設備の材質は「鋼管」であり、経過年数は「3年」である。管路の環境条件としての地盤は「硬質砂れき層」であり、年間降水量は「XX mm」である。管路の劣化の程度として、点検の結果劣化の程度が「大」であったことが示される。電柱についての劣化データを示す次の行では、電柱に関する情報としての設備の材質は「コンクリート」であり、経過年数は「5年」である。電柱の環境条件としての地盤は「岩盤層」であり、年間降水量は「YY mm」である。電柱の劣化の程度として、点検の結果劣化の程度が「中」であったことが示される。
【0034】
劣化データが含む設備に関する情報及び環境条件は、設備ごとに異なってよい。例えば地下に埋設された管路は継手部の材質を設備に関する情報として、また、地中の含水量を環境条件として含み、電柱は配電線の本数を設備に関する情報として、また、年間平均風速を環境条件として含んでよい。
【0035】
劣化データ取得部111は、劣化データのうち、値が入っていない項目については任意の値を入力できる。劣化データ取得部111は、任意の値を記憶部12、又は外部装置から通信部13を介して取得できてよい。例えば劣化データのうち、管路の地盤を示す値が不明であったとする。この場合劣化データ取得部111は、当該管路の位置を示す情報を取得し、当該位置から所定の距離以内にある他の設備を特定し、特定した設備の地盤を示す値を、当該管路の地盤を示す値として入力してよい。この場合、各設備の位置を示す情報は劣化データに含まれていてもよいし、任意の他のデータベースに含まれていてもよい。これに限られず、劣化データ取得部111は、取得した劣化データに未入力の値がある場合に、入力を促す表示を出力部15に表示させ、入力部14にユーザが入力した値を取得し、当該値を劣化データに反映できてもよい。これにより、劣化データ中に値が入っていない箇所がある場合でも、生成される第1モデルの精度が向上する。
【0036】
劣化データ取得部111は、取得した劣化データを第1モデル生成部112に出力する。
【0037】
第1モデル生成部112は、劣化データ取得部111が取得した劣化データに基づき、設備に関する情報及び環境条件を数値化して説明変数とし、劣化の程度を数値化して目的変数とした第1モデルを生成する。第1モデル生成部112は、第1モデルを、ニューラルネットワーク、回帰分析等の任意の機械学習手法、深層学習手法又は統計的手法により生成してよい。第1モデルは、設備の劣化の程度を任意の離散値又は連続値で算出する。第1モデルは、劣化の程度を、劣化の有無を表す0及び1の二値により、又はカテゴリ値で算出してもよい。カテゴリ値は、例えばA、B、C等の数値以外の値であってもよい。
【0038】
以下の式1は、本実施形態にかかる第1モデルの関数を係数ベクトルaとベクトルxとの内積で表す。式2及び式3に示すように、係数ベクトルaとベクトルxとはそれぞれm個の要素を有する。要素数のm個とは、設備に関する情報及び環境条件の合計数を表す。第1モデルは、説明変数としてのベクトルxに係数ベクトルaを乗じて、劣化の程度f(x)を算出する。係数ベクトルaは任意のフィッティング手法を適用して得ることができる。第1モデル生成部112は、第1モデルを設備の種類のそれぞれについて生成できる。
【0039】
【0040】
第1モデル生成部112が生成する第1モデルは上述に限られない。例えば第1モデル生成部112は、勾配ブースティング等のアンサンブル学習により第1モデルを生成してもよい。
図3は第1モデルの学習アルゴリズムの一例として勾配ブースティング決定木の一部の例を示す。当該決定木は、平均気温、平均標高、平均降水量、及び地形の各値との比較により、対象設備を最終的にAからEに分類する。AからEは第1モデルが算出した劣化の程度を示すカテゴリ値である。
【0041】
第1モデル生成部112は、生成した第1モデルを記憶部12に格納する。第1モデル生成部112は、設備ごとに算出した被害の程度を示す情報を被害データ取得部113へ出力する。
【0042】
(第2モデルの生成)
被害データ取得部113は被害データを取得する。被害データ取得部113は、設備ごとの災害条件と被害の程度とに、第1モデル生成部112から出力された各設備の劣化の程度を付加して被害データを生成することで、被害データを取得できる。
【0043】
図4は被害データの例である。
図4は、被害データをテーブル形式で表すが、被害データの形式はこれに限られない。
図4に示すように、被害データは、設備ごとに、災害条件、災害による被害の程度、及び第1モデルが算出した劣化の程度を含む。
【0044】
災害条件は、設備に対し発生した災害に関する各種測定値を示す情報を含む。災害条件は複数あってよく、例えば災害が地震動である場合、設備が設けられた位置の地表面最大速度、地表面最大加速度、地盤に伝わる波の平均速度等を含む。これに限られず、災害条件として地表面最大変位、計測震度、リアルタイム震度、SI(Spectral Intensity)値等が含まれてもよい。災害が液状化である場合、災害条件は過去に液状化したかどうかを示す液状化履歴、液状化指数等を含む。災害が台風である場合、災害条件は風速、雨量、設備の周辺への飛来物の有無を示す飛来物履歴等を含む。
【0045】
災害による被害の程度は、災害後の設備の点検の結果を示す情報を含む。被害の程度は、設備に生じた設備の傾きの角度、設備のある土地の地盤沈下量、破損箇所の長さ、深さ、又は面積等の連続値であってもよいし、被害の有無又は程度を段階的に示す離散値であってもよい。
【0046】
劣化の程度は、対応する設備について第1モデルにより算出された値である。被害データ取得部113は、対応する設備の特定を任意の手法により行ってよい。被害データ取得部113は、第1モデルが劣化の程度を算出した設備と設備の種類等の特徴が近似する設備を、被害データの設備の中から特定し、特定した設備の被害データに、当該第1モデルで算出された劣化の程度を付加してよい。
【0047】
図4を参照すると、タイトル行の下の管路についての被害データを示す行では、管路に対する地震動の災害条件としての地表面最大速度は「K cm/s」、地表面最大加速度は「M cm/s
2」である。管路の被害の程度として、点検の結果被害の程度は「小」であったことが示される。管路について、第1モデルにより算出された劣化の程度「大」が、右端の列に付加されている。電柱についての被害データを示す次の行では、電柱の災害条件としての地表面最大速度は「L cm/s」、地表面最大加速度は「N cm/s
2」である。電柱の被害の程度として、点検の結果被害の程度は「大」であったことが示される。電柱について、第1モデルにより算出された劣化の程度「中」が、右端の列に付加されている。
【0048】
被害データが含む災害条件は、設備の種類ごとに異なってよい。例えば設備が電柱等の地上の構造物である場合、災害が台風である場合の災害条件として飛来物の有無を示す飛来物履歴を含み、設備が地下の管路である場合、飛来物履歴は災害条件として含まれなくてもよい。
【0049】
被害データ取得部113は、被害データのうち、値が入っていない項目については任意の値を入力できる。被害データ取得部113は、任意の値を記憶部12、又は外部装置から通信部13を介して取得できてよい。例えば被害データのうち、管路の地表面最大速度を示す値が不明であったとする。この場合被害データ取得部113は、当該管路の位置を示す情報を取得し、当該位置から所定の距離以内にある他の設備を特定し、特定した設備の地表面最大速度を示す値を、当該管路の地表面最大速度を示す値として入力してよい。この場合、各設備の位置を示す情報は被害データに含まれていてもよいし、任意の他のデータベースに含まれていてもよい。これに限られず、被害データ取得部113は、劣化データ取得部111と同様に、ユーザが入力した値を取得し、当該値を被害データに入力できてもよい。
【0050】
被害データ取得部113は、取得した被害データを第2モデル生成部114に出力する。
【0051】
第2モデル生成部114は、取得した被害データが含む災害条件および劣化の程度を数値化して説明変数とし、被害の程度を数値化して目的変数とした第2モデルを生成する。第1モデル生成部112と同様に、第2モデル生成部114は、第2モデルを、ニューラルネットワーク、回帰分析等の任意の機械学習手法、深層学習手法又は統計的手法により生成してよい。第2モデルは、設備の被害の程度を任意の離散値又は連続値で算出する。第2モデルは、被害の程度を、被害の有無を表す0及び1の二値により、又はカテゴリ値で算出してもよい。カテゴリ値は、例えばA、B、C等の数値以外の値であってもよい。
【0052】
以下の式4は、本実施形態にかかる第2モデルの関数を係数ベクトルbとベクトルpとの内積で表す。式5及び式6に示すように、係数ベクトルbとベクトルpとはそれぞれn+1個の要素を有する。要素数のn個とは、災害条件の合計数を表す。n+1個目の要素は第1モデルが算出した劣化の程度を表す。第2モデルは、説明変数としてのベクトルpに係数ベクトルbを乗じて、被害の程度g(p)を算出する。係数ベクトルbは任意のフィッティング手法を適用して得ることができる。第2モデル生成部114は、第2モデルを、設備の種類と災害との組合せ数分生成できる。
【0053】
【0054】
第2モデル生成部114が生成する第2モデルは上述に限られない。例えば第2モデル生成部114は、第1モデル生成部112と同様に、勾配ブースティング等のアンサンブル学習により第2モデルを生成してもよい。
【0055】
第2モデル生成部114は、生成した第2モデルを記憶部12に格納する。
【0056】
制御部11は、記憶部12から第1モデル及び第2モデルをそれぞれ読み出す。制御部11は、推定装置20からの要求に応じて、又は自動的に、読み出した第1モデル及び第2モデルを、通信部13を介して推定装置20へ送信する。
【0057】
第1モデル生成部112は生成した第1モデルについて、第2モデル生成部114は生成した第2モデルについて、用いられた説明変数を、出力部15を介して表示できてもよい。この場合、第1モデル生成部112又は第2モデル生成部114は、生成したモデル全てにおける説明変数を係数の値が大きい順に表示できてよい。
図5は、第1モデル生成部112が出力部15を介して表示する、第1モデルの説明変数としての環境条件をその係数の値が高い順に示す図である。
図5を参照すると、環境条件として平均日射量が第1モデルに高く寄与して劣化の程度が算出され、次に高く寄与した環境条件は地形の「低地」区分であったことがわかる。説明変数を確認できることにより、ユーザが第1モデル及び第2モデルの精度を考慮し、算出結果を採用してよいかについての判断材料とすることができる。
【0058】
<推定装置20の構成>
再び
図1を参照すると、推定装置20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、入力部24と、出力部25とを備える。
【0059】
記憶部22は、1つ以上のメモリを含み、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリなどを含んでもよい。記憶部22に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部22は、推定装置20の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部22は、必ずしも推定装置20が内部に備える必要はなく、推定装置20の外部に備える構成としてもよい。
【0060】
通信部23は、ネットワーク30に接続する1つ以上の通信用インターフェースを含む。当該通信用インターフェースは、例えば移動通信規格、有線LAN規格、又は無線LAN規格に対応するが、これらに限られず、任意の通信規格に対応してもよい。通信部23は、推定装置20の動作に用いられる情報を受信し、また推定装置20の動作によって得られる情報を送信する。
【0061】
入力部24には、少なくとも1つの入力用インターフェースが含まれる。入力用インターフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又はマイクである。入力部24は、推定装置20の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付ける。入力部24は、推定装置20に備えられる代わりに、外部の入力機器として推定装置20に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0062】
出力部25には、少なくとも1つの出力用インターフェースが含まれる。出力用インターフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。出力部25は、推定装置20の動作によって得られる情報を出力する。出力部25は、推定装置20に備えられる代わりに、外部の出力機器として推定装置20に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0063】
制御部21は、制御演算回路(コントローラ)により実現される。該制御演算回路は、ASIC、FPGA等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。制御部21は、推定装置20の各部を制御しながら、推定装置20の動作に関わる処理を実行する。制御部21は、外部装置との情報の送受信を、通信部23及びネットワーク30を介して行うことができる。
【0064】
制御部21は、モデル取得部211、対象データ取得部212、及び推定部213を備える。
【0065】
(対象設備の被害の程度の推定)
モデル取得部211は、学習装置10から、第1モデル生成部112が生成した第1モデル、及び第2モデル生成部114が生成した第2モデルを、通信部23を介して受信することで取得する。モデル取得部211は取得した第1モデル及び第2モデルを推定部213に出力する。
【0066】
対象データ取得部212は、対象設備の設備に関する情報、対象設備の環境条件、及び対象設備の災害条件を含む対象データを取得する。対象データの取得には任意の手法が採用されてよい。例えば対象データ取得部212は、対象設備の環境条件、及び対象設備の災害条件の入力を促す表示を、出力部25を介して行い、ユーザが入力部24を介して入力した値を対象データとして取得できる。対象データ取得部212は、ユーザが保持する端末装置と通信し、当該端末装置にユーザが入力した値を当該端末装置から受信し、対象データとして取得してもよい。
【0067】
図6は対象データの一例である。
図6では、対象データをテーブル形式で表すが、対象データの形式はこれに限られない。
図6を参照すると、タイトル行の下の対象設備としての管路についての対象データを示す行では、設備に関する情報としての設備の材質は「ビニル管」であり、経過年数は「5年」である。管路の環境条件としての地盤は「岩盤層」であり、年間降水量は「VV mm」である。管路に対する地震動の災害条件としての地表面最大速度は「P cm/s」、地表面最大加速度は「R cm/s
2」である。電柱についての対象データを示す次の行では、設備に関する情報としての設備の材質は「コンクリート」であり、経過年数は「10年」である。電柱の環境条件としての地盤は「岩盤層」であり、年間降水量は「WW mm」である。電柱に対する地震動の災害条件としての地表面最大速度は「Q cm/s」、地表面最大加速度は「S cm/s
2」である。対象データ取得部212は、取得した対象データを推定部213に出力する。
【0068】
推定部213は、対象データ取得部212が取得した対象データを、モデル取得部211が取得した第1モデル及び第2モデルに適用し、対象設備の被害の程度を推定する。具体的には、推定部213はまず、対象データが含む対象設備の設備に関する情報と対象設備の環境条件とをそれぞれ数値化して対象設備に対応する設備についての第1モデルに入力する。推定部213は、第1モデルが出力した劣化の程度を取得し、当該劣化の程度と、対象データが含む対象設備の災害条件とをそれぞれ数値化し、対象設備及び対象設備に対する災害についての第2モデルに入力する。推定部213は、第2モデルが算出した被害の程度を取得する。
【0069】
例えば推定部213が、
図6の対象データのうち管路についての被害の程度を推定するとする。この場合推定部213はまず、管路に関する情報の「材質」、「経過年数」等、及び環境条件の「地盤」、「年間降水量」等の値をそれぞれ数値化して、学習装置10から取得した管路についての第1モデルに入力する。第1モデルが算出した劣化の程度が「中」であるとする。推定部213は、算出された劣化の程度と、対象データが含む管路の災害条件の「地表面最大速度」、「地表面最大加速度」等の値をそれぞれ数値化して、学習装置10から取得した管路及び地震動についての第2モデルに入力する。第2モデルが算出した被害の程度が「大」であるとする。推定部213は、算出された被害の程度を取得する。電柱についても同様にして、推定部213は被害の程度を推定する。このようにして推定部213は対象設備の被害の程度を推定する。
【0070】
推定部213は、推定した被害の程度を、出力部25を介して表示する。表示には任意の手法が用いられてよい。例えば推定部213は、対象設備の位置を地図上で示す表示を、出力部25を介して行い、当該設備の位置の上に、推定した被害の程度を表示してもよい。
【0071】
<プログラム>
上述した学習装置10又は推定装置20として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0072】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)等であり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インターフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マウスなどである。出力部は、情報を出力する出力インターフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インターフェースは、外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0073】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0074】
<被害予測システム1の動作>
次に、
図7A及び
図7Bを参照して、本実施形態に係る学習装置10及び推定装置20を含む被害予測システム1の動作について説明する。被害予測システム1の動作のうち、学習装置10の動作は、本実施形態に係る学習方法に相当し、推定装置20の動作は、本実施形態に係る推定方法に相当する。
【0075】
図7AのステップS1において、学習装置10の劣化データ取得部111は劣化データを取得する。劣化データの取得には任意の手法が採用されてよい。
【0076】
ステップS2において、劣化データ取得部111は、取得した劣化データを第1モデル生成部112に出力する。
【0077】
ステップS3において、第1モデル生成部112は、劣化データ取得部111が取得した劣化データに基づき、設備に関する情報及び環境条件を数値化して説明変数とし、劣化の程度を数値化して目的変数とした第1モデルを生成する。第1モデル生成部112は、第1モデルを、ニューラルネットワーク、回帰分析等の任意の機械学習手法、深層学習手法又は統計的手法により生成してよい。
【0078】
ステップS4において、第1モデル生成部112は、生成した第1モデルを記憶部12に格納し、設備ごとに算出した被害の程度を示す情報を被害データ取得部113へ出力する。
【0079】
ステップS5において、被害データ取得部113は被害データを取得する。被害データ取得部113は、設備ごとの災害条件と被害の程度とを示す情報に、第1モデル生成部112から出力された各設備の劣化の程度を示す情報を付加して被害データを生成することで被害データを取得できる。
【0080】
ステップS6において、被害データ取得部113は、取得した被害データを第2モデル生成部114に出力する。
【0081】
ステップS7において、第2モデル生成部114は、取得した被害データが含む災害条件および劣化の程度を数値化して説明変数とし、被害の程度を数値化して目的変数とした第2モデルを生成する。第1モデル生成部112と同様に、第2モデル生成部114は、第2モデルを、ニューラルネットワーク、回帰分析等の任意の機械学習手法、深層学習手法又は統計的手法により生成してよい。
【0082】
ステップS8において、第2モデル生成部114は、生成した第2モデルを記憶部12に格納する。
【0083】
ステップS9において、制御部11は、記憶部22から第1モデル及び第2モデルをそれぞれ読み出し、通信部13を介して推定装置20へ送信する。
【0084】
ステップS10において、推定装置20のモデル取得部211は、学習装置10から、第1モデル生成部112が生成した第1モデル、及び第2モデル生成部114が生成した第2モデルを、通信部23を介して受信することで取得する。
【0085】
図7BのステップS11において、モデル取得部211は取得した第1モデル及び第2モデルを推定部213に出力する。
【0086】
ステップS12において、対象データ取得部212は対象データを取得する。対象データの取得には任意の手法が採用されてよい。
【0087】
ステップS13において、対象データ取得部212は、取得した対象データを推定部213に出力する。
【0088】
ステップS14において、推定部213は、対象データ取得部212が取得した対象データを、モデル取得部211が取得した第1モデル及び第2モデルに適用し、対象設備の被害の程度を推定する。具体的には、推定部213は、対象データが含む対象設備の設備に関する情報と対象設備の環境条件とをそれぞれ数値化して対象設備に対応する設備についての第1モデルに入力する。推定部213は、第1モデルが出力した劣化の程度を取得し、当該劣化の程度と、対象データが含む対象設備の災害条件とをそれぞれ数値化し、対象設備及び対象設備に対する災害についての第2モデルに入力する。推定部213は、第2モデルが算出した被害の程度を取得する。このようにして推定部213は対象設備の被害の程度を推定する。
【0089】
ステップS15において、推定部213は、推定した被害の程度を出力部25を介して表示する。表示には任意の手法が用いられてよい。例えば出力部25は、推定した被害の程度を音声又は映像で出力してもよい。その後、被害予測システム1の動作は終了する。
【0090】
上述の通り、本実施形態の学習装置10は、設備に関する情報と、設備の環境条件と、設備の劣化の程度とを含む劣化データを訓練データとした機械学習により、設備の劣化の程度を算出する第1モデルを生成する第1モデル生成部112と、設備に対する災害の災害条件と、災害による被害の程度と、第1モデルが算出した劣化の程度とを含む被害データを訓練データとした機械学習により、設備の被害の程度を算出する第2モデルを生成する第2モデル生成部114とを備える。
【0091】
本実施形態の学習装置10によれば、設備の劣化の程度の予測結果を反映させた、災害による被害の程度を予測するモデルを簡便に生成できる。対象設備の劣化の程度を加味した上で、災害による被害を精度よく予測することが可能となるため、災害による設備への被害を予測する技術を改善することができる。
【0092】
上述の通り、本実施形態の学習装置10において、設備は地下管路又は電柱を含むインフラ設備を含み、災害は地震、液状化、台風のうち少なくとも1つを含む。
【0093】
本実施形態の学習装置10によれば、公益に関わる重要な設備であるインフラ設備に対し、災害の中でも高頻度で重大な影響が想定される地震、液状化又は台風による被害を推定することができる。よって、災害による設備への被害を予測する技術を改善することができる。
【0094】
上述の通り、本実施形態の推定装置20は、設備に関する情報、設備の環境条件、及び設備の劣化の程度を含む劣化データを訓練データとした機械学習により学習された、設備の劣化の程度を算出する第1モデルと、設備に対する災害の災害条件、災害による被害の程度、及び第1モデルが算出した劣化の程度を含む被害データを訓練データとした機械学習により学習された、設備の被害の程度を算出する第2モデルと、を取得するモデル取得部211と、対象設備の設備に関する情報、対象設備の環境条件、及び対象設備の災害条件を含む対象データを、第1モデル及び第2モデルに適用し、対象設備の被害の程度を推定する推定部213と、を備える。
【0095】
本実施形態の推定装置20によれば、対象設備について劣化の程度を予め点検せずとも、当該対象設備の劣化の程度を予測できるため、点検コストを低減させることができる。劣化の程度の予測を加味して災害時の被害の程度を精度よく推定することができるため、災害による設備への被害を予測する技術を改善することができる。
【0096】
本発明を諸図面や実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0097】
(変形例)
本開示の変形例について説明する。
【0098】
図8は、本変形例に係る被害予測システム1の構成を示す図である。
図8に示すように、本変形例に係る推定装置20の制御部21は、モデル取得部211、対象データ取得部212及び推定部213に加えて、分割部214をさらに備える。本変形例に係る推定装置20の制御部21以外の各部の構成は、上述の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0099】
本変形例に係る推定装置20の対象データ取得部212は、対象設備の設備に関する情報、対象設備の環境条件、及び対象設備の複数の災害のそれぞれについての災害条件を含む対象データを取得する。対象データの取得には任意の手法が採用されてよい。例えば対象データ取得部212は、上述の実施形態と同様に、対象設備の環境条件、及び複数の災害それぞれについての災害条件の入力を促す表示を、出力部25を介して行い、ユーザが入力部24を介して入力した値を対象データとして取得できる。対象データ取得部212は、ユーザが保持する端末装置と通信し、当該端末装置にユーザが入力した値を当該端末装置から受信し、対象データとして取得してもよい。対象データ取得部212は、取得した対象データを分割部214に出力する。
【0100】
対象データの例を
図9に示す。
図9を参照すると、対象設備としての管路についての設備に関する情報、環境条件、及び地震動の災害条件は上述の実施形態と同様である。これに加えて、本変形例の対象データは、さらに他の災害としての液状化の災害条件を含む。
図9を参照すると、管路に対する液状化の災害条件としての液状化履歴は「あり」であり、液状化指数は「TT」である。次の行の、対象設備としての電柱についての設備に関する情報、環境条件、及び地震動の災害条件は上述の実施形態と同様であり、液状化の災害条件としての液状化履歴は「なし」であり、液状化指数は「UU」である。このように、本変形例において取得された対象データは、複数の災害のそれぞれについての災害条件を含む。
【0101】
分割部214は、対象データ取得部212が取得した対象データを災害ごとに分割する。
図10A及び
図10Bは、
図9の対象データを分割部214が分割した結果である。
図10Aは管路及び電柱に対する地震動の災害条件を含む対象データ、
図10Bは管路及び電柱に対する液状化の災害条件を含む対象データである。分割部214は、分割した対象データを推定部213に出力する。
【0102】
推定部213は、分割部214が分割した対象データのそれぞれを、モデル取得部211が取得した第1モデル及び第2モデルに、上述の実施形態と同様に適用し、対象設備それぞれについての被害の程度を推定する。
【0103】
推定部213は、分割された対象データのそれぞれについて推定した被害の程度を、出力部25を介して表示する。表示には任意の手法が用いられてよい。例えば推定部213は、各災害に対して推定した被害の程度を、災害ごとに別々に表示してもよいし、全ての災害についての被害の程度を統合して表示してもよい。この場合、推定部213は推定した被害の程度を示すカテゴリ値を合計することで統合してもよい。例えば推定部213は、対象設備の位置を地図上で示す表示を、出力部25を介して行い、当該設備の位置の上に、推定した被害の程度を災害ごとに一覧で表示させてもよい。
【0104】
上述のとおり、本変形例において、対象データは、複数の災害のそれぞれについての災害条件を含む。本変形例に係る推定装置20は、災害ごとに対象データを分割する分割部214をさらに備え、推定部213は、分割部214により分割された対象データを、第1モデルと、第2モデルに適用し、対象設備の被害の程度を複数の災害のそれぞれについて推定する。
【0105】
本変形例の推定装置20によれば、複数の災害について災害条件が入力された対象データを用いて、一つの対象設備について複数の災害のそれぞれについての被害の程度を一度に推定することができる。様々な災害を想定した被害の程度の推定結果を一覧で見られるため、ユーザにとって、対象設備のメンテナンスの計画がよりたてやすくなる。よって、災害による設備への被害を予測する技術を改善することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 被害予測システム
10 学習装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 入力部
15 出力部
20 推定装置20
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 入力部
25 出力部
30 ネットワーク
111 劣化データ取得部
112 第1モデル生成部
113 被害データ取得部
114 第2モデル生成部
211 モデル取得部
212 対象データ取得部
213 推定部
214 分割部