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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160632
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】植物クロマチンの試験管内再構築法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20231026BHJP
   C12N 15/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C12Q1/68 100Z
C12Q1/68 ZNA
C12N15/00 100Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071114
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】高須賀 太一
(72)【発明者】
【氏名】沖宗 慶一
(72)【発明者】
【氏名】バンコ,ペトラ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ53
4B063QR48
4B063QR49
(57)【要約】
【課題】一般的な構造のクロマチンおよび/または変種ヒストンからなるクロマチンを生理的条件下で、クロマチン再構成因子を用いることなく、イン・ビトロで再構築する方法を開発すること。
【解決手段】小麦胚芽無細胞抽出液、植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNA、および鋳型DNAを含む混合物をインキュベートすることを含む、または小麦胚芽無細胞抽出液および植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAを含む混合物をインキュベートした後に鋳型DNAと共にインキュベートすることを含む、植物クロマチンの再構築方法等が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦胚芽無細胞抽出液、植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNA、および鋳型DNAを含む混合物をインキュベートすることを含む、または小麦胚芽無細胞抽出液および植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAを含む混合物をインキュベートした後に鋳型DNAと共にインキュベートすることを含む、植物クロマチンの再構築方法。
【請求項2】
4種のコアヒストンが少なくとも1種の変種ヒストンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記混合物がさらにクロマチン再構成因子をコードするmRNAを含むか、または前記混合物をクロマチン再構成因子と共にさらにインキュベートすることを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
小麦胚芽無細胞抽出液中で発現された植物由来の4種のコアヒストンと、鋳型DNAとからなる、再構築された植物クロマチン。
【請求項5】
4種のコアヒストンが少なくとも1種の変種ヒストンを含む、請求項4記載の再構築された植物クロマチン。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項記載の方法によって再構築された、植物クロマチン。
【請求項7】
クロマチンの構築を促進または阻害する物質をスクリーニングするための方法であって、
(1)
(a)小麦胚芽無細胞抽出液、植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNA、および鋳型DNAを含む混合物を候補物質の存在下でインキュベートすること、
(b)小麦胚芽無細胞抽出液および植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAを含む混合物を候補物質の存在下でインキュベートした後に鋳型DNAと共にインキュベートすること、または
(c)小麦胚芽無細胞抽出液および植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAを含む混合物をインキュベートした後に鋳型DNAと共に候補物質の存在下でインキュベートすること、および
(2)クロマチンが再構築されたか否かを評価すること
を含む、方法。
【請求項8】
前記(a)または(b)において、前記候補物質が小麦胚芽無細胞抽出液中で共発現されている、請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験管内で植物クロマチンの再構築を行う方法、および該方法によって構築されたクロマチンに関する。
【背景技術】
【0002】
真核生物において、ゲノム情報(DNA)はクロマチン高次構造によってコンパクトに収納されていることが知られている。クロマチンの最少機能性単位はヌクレオソームであり、ヌクレオソームは、各2コピーの4種のヒストンからなるヒストン八量体と、該ヒストンの周囲に巻き付いた約150bpのDNAとから構成される。クロマチンの生化学的解析によって、これまでに、クロマチン立体構造や真核生物細胞核内におけるクロマチン構成因子などの機能の同定が進んでいる。また、クロマチンは一般的な構造に加え、セントロメアなどに特徴的に見られる変種ヒストンから構成される特殊な構造をとることが知られている。
【0003】
試験管内においてクロマチンを再構築する方法として、二本鎖DNAと大腸菌異種発現したヒストン(組換えヒストン)を塩透析する方法や、二本鎖DNAと大腸菌異種発現したヒストンにクロマチン再構成因子を作用させる方法が報告されている。しかしながら、これらの技術では、1)大腸菌異種発現したヒストンは構造が壊れ不溶化するため、非生理的条件下で可溶化する必要があること;2)塩透析法によるクロマチン再構築は、塩濃度依存的に(すなわち、非生理的条件下で)クロマチンを再構築することなど、天然に近い状態で再構成されたクロマチンを提供できないという問題があった。これらの問題を打破するため、最近、発明者らのグループは、小麦胚芽無細胞抽出液を用いて、ヒトおよびショウジョウバエ由来の可溶化ヒストンとクロマチン再構成因子の共発現反応によりクロマチン再構築を行える技術を開発した(非特許文献1および2)。
【0004】
しかしながら、クロマチン再構成因子を用いずに生理的条件下でクロマチンを再構築する方法は、発明者らの知る限りまだ存在しない。さらに、変種ヒストンから成るクロマチンの再構築については、塩透析による方法しか報告されていない。染色体のクロマチン構造については不明な点が多く、ゲノム編集や組換え体作製における基礎的知見を得るためには、天然に近い状態での評価用クロマチン構造が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Okimuneら、BMC Biotechnol. 20,, 62(2020)
【非特許文献2】Endoら、FEBS Open Bio, 11(2021), 1552-1564
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような情況下において、本発明は、一般的な構造のクロマチンおよび/または変種ヒストンからなるクロマチンを生理的条件下で、クロマチン再構成因子を用いることなく、イン・ビトロで再構築する方法を開発することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは鋭意研究の結果、驚くべきことに、小麦胚芽無細胞抽出液、4種のコアヒストンをコードするmRNA、および鋳型DNAの混合物をアミノ酸混合物等のタンパク質翻訳のための反応基質の存在下でインキュベートすることにより、植物クロマチンが再構築されることを見出した。さらに、用いるヒストンの種類によりクロマチン再構築が困難な場合は、クロマチン再構成因子をコードするmRNAを加えて共発現させることにより、植物クロマチンを再構築できることを見出した。かくして、本発明を完成させた。
【0008】
したがって、本発明は以下の態様を提供する。
[1]小麦胚芽無細胞抽出液、植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNA、および鋳型DNAを含む混合物をインキュベートすることを含む、または小麦胚芽無細胞抽出液および植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAを含む混合物をインキュベートした後に鋳型DNAと共にインキュベートすることを含む、植物クロマチンの再構築方法、
[2]4種のコアヒストンが少なくとも1種の変種ヒストンを含む、[1]記載の方法、
[3]前記混合物がさらにクロマチン再構成因子をコードするmRNAを含むか、または前記混合物をクロマチン再構成因子と共にさらにインキュベートすることを含む、[2]記載の方法、
[4]小麦胚芽無細胞抽出液中で発現された植物由来の4種のコアヒストンと、鋳型DNAとからなる、再構築された植物クロマチン、
[5]4種のコアヒストンが少なくとも1種の変種ヒストンを含む、[4]記載の再構築された植物クロマチン、
[6][1]~[3]のいずれか1項記載の方法によって再構築された、植物クロマチン、
[7]クロマチンの構築を促進または阻害する物質をスクリーニングするための方法であって、
(1)
(a)小麦胚芽無細胞抽出液、植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNA、および鋳型DNAを含む混合物を候補物質の存在下でインキュベートすること、
(b)小麦胚芽無細胞抽出液および植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAを含む混合物を候補物質の存在下でインキュベートした後に鋳型DNAと共にインキュベートすること、または
(c)小麦胚芽無細胞抽出液および植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAを含む混合物をインキュベートした後に鋳型DNAと共に候補物質の存在下でインキュベートすること、および
(2)クロマチンが再構築されたか否かを評価すること
を含む、方法、
[8]前記(a)または(b)において、前記候補物質が小麦胚芽無細胞抽出液中で共発現されている、[7]記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、これまでに報告のない生理的条件下において植物クロマチンを試験管内で簡便に再構築することができる。具体的には、本発明は、小麦胚芽無細胞抽出液を用いることで、クロマチン再構成因子を用いずに、かつ、生理的条件下で、変種ヒストンを含むヒストンおよび鋳型DNAから植物クロマチンを再構築できる技術を提供する。クロマチンを再構築し難いヒストンの組み合わせについては、さらにクロマチン再構成因子を用いることにより再構築を可能にした。さらに、本発明のクロマチン再構築過程は、クロマチン再構築機能を促進あるいは阻害する新規因子をスクリーニングする方法に利用できる。本発明によれば、生理的条件下で再構成された植物クロマチンが提供されるので、本発明は、エピジェネティクスの研究を行う上で重要な評価系を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、小麦胚芽無細胞抽出液によって発現された各ヒストンタンパク質を示す。
図2図2は、小麦胚芽無細胞抽出液によるクロマチン再構築について、スーパーコイリングアッセイの結果を示す。図中、RCは「リラックス型DNA」を示し、SCは「スーパーコイル化DNA」を示す。
図3図3は、小麦胚芽無細胞抽出液によるクロマチン再構築について、スーパーコイリングアッセイの結果を示す。図中、RCは「リラックス型DNA」を示し、SCは「スーパーコイル化DNA」を示す。
図4図4は、小麦胚芽無細胞抽出液によるクロマチン再構築について、スーパーコイリングアッセイの結果を示す。図中、RCは「リラックス型DNA」を示し、SCは「スーパーコイル化DNA」を示す。
図5図5は、推定クロマチン再構成因子を用いた小麦胚芽無細胞抽出液によるクロマチン再構築について、スーパーコイリングアッセイの結果を示す。
図6図6は、推定クロマチン再構成因子を用いた小麦胚芽無細胞抽出液によるクロマチン再構築について、スーパーコイリングアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
小麦胚芽無細胞抽出液は、無細胞タンパク質合成系として知られている。小麦胚芽より抽出した溶液にはタンパク質合成を行うために必要なリボソームやtRNA等の装置が含まれるため、所望のタンパク質をコードするmRNAおよびタンパク質翻訳のための反応基質(各種アミノ酸、ATP等のエネルギー源等)を加えることにより、所望のタンパク質が合成される。該無細胞タンパク質合成系は、複数のタンパク質を同時に発現させることもできる。このような小麦胚芽無細胞抽出液は、当該分野で既知の方法によって調製することができる。小麦胚芽抽出液を用いる無細胞タンパク質合成系はよく確立されており、また、様々な試薬およびキットが市販されている。本発明において使用される小麦胚芽無細胞抽出液は、当該分野で既知の方法によって調製してもよく、または市販の小麦胚芽無細胞抽出液を用いてもよい。
【0012】
小麦胚芽無細胞抽出液は、内因性DNAが混入している場合があるため、該内因性DNAを排除するために非特異的エンドヌクレアーゼによって前処理されていてもよい。非特異的エンドヌクレアーゼとしては、例えば、限定するものではないが、マイクロコッカルヌクレアーゼが挙げられる。
【0013】
コアヒストンには、H2A、H2B、H3、およびH4の4種がある。コアヒストンにはそれぞれ、変種ヒストンと称される複数のサブタイプが存在するが、H4の変種はこれまでに報告されていない。本発明において、4種のコアヒストンは、コアヒストンまたはその変種ヒストンのいずれであってもよく、コアヒストンと変種ヒストンの組み合わせであってもよい。
【0014】
本発明において、コアヒストンは、いずれの植物由来であってもよい。例えば、限定するものではないが、モデル植物として汎用されているシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のコアヒストンが用いられる。シロイヌナズナは多くの変種ヒストンを持つことが知られており、例えば、表1に示される変種ヒストンが挙げられる。
【0015】
【表1】
【0016】
コアヒストンをコードするmRNAは、当該分野で既知の方法によって調製すればよく、また、市販のキットや試薬を用いて調製することもできる。コアヒストンをコードするmRNAは、例えば、植物細胞から抽出された全RNAを用いてcDNAライブラリを作製し、該ライブラリから所望の遺伝子をクローニングして試験管内転写することによって調製してもよく、あるいは既知の遺伝子情報に基づいて化学合成したcDNAを試験管内転写することによって調製してもよい。例えば、コアヒストンをコードするmRNAとして、cDNAからの転写溶液をそのまま(未精製の状態で)用いてもよく、または転写溶液からmRNAを単離・精製して用いてもよい。シロイヌナズナのコアヒストンをコードするmRNAの例として、限定するものではないが、H2AをコードするmRNA(遺伝子座番号AT1G51060)、H2A.XをコードするmRNA(遺伝子座番号AT1G54690)、H2A.WをコードするmRNA(遺伝子座番号AT5G59870)、H2A.ZをコードするmRNA(遺伝子座番号AT2G38810)、H2B.9をコードするmRNA(遺伝子座番号AT3G45980)、H2B.7をコードするmRNA(遺伝子座番号AT3G09480)、H3.1をコードするmRNA(遺伝子座番号AT1G09200)、H3.3をコードするmRNA(遺伝子座番号AT4G40030)、CENH3をコードするmRNA(遺伝子座番号AT1G01370)、およびH4をコードするmRNA(遺伝子座番号AT2G28740)が挙げられる。シロイヌナズナのゲノム情報は、例えば、TAIR(The Arabidopsis Information Resource)などの公共のデータベースから得ることができる。
【0017】
4種のコアヒストンをコードするmRNAの使用量は特に限定されないが、好ましくは、各mRNAが等量の重量で用いられる。
【0018】
本明細書において、鋳型DNAとは、小麦胚芽無細胞抽出液中で発現されたヒストン分子の周囲に巻き付いて、ヒストンと共にクロマチンを再構築するDNAをいう。鋳型DNAは、小麦胚芽抽出液に含まれない外来性DNAである。鋳型DNAの配列は限定されず、いずれの配列を有していてもよい。鋳型DNAは、好ましくは非翻訳配列を有する。鋳型DNAは、好ましくは二本鎖DNAである。鋳型DNAは、環状であってもよく、または線状であってもよい。鋳型DNAの長さは、150bp以上であれば特に限定されないが、好ましくは160bp以上、例えば2000bp~10,000bpであってもよい。
【0019】
本発明では、コアヒストンをコードするmRNAを無細胞タンパク質合成系である小麦胚芽無細胞抽出液中でインキュベートすることによって、コアヒストンタンパク質を発現させ、発現されたコアヒストンと鋳型DNAによってクロマチンが再構築される。本発明の一の態様では、小麦胚芽無細胞抽出液、植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNA、および鋳型DNAを含む混合物をインキュベートすることを含む、一段階の植物クロマチンの再構築方法(共発現構築法)が提供される。また、本発明の別の態様では、小麦胚芽無細胞抽出液および植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAを含む混合物をインキュベートした後に鋳型DNAと共にインキュベートすることを含む、二段階の植物クロマチンの再構築方法(翻訳後構築法)が提供される。
【0020】
上記のように、本発明では小麦胚芽無細胞抽出液中でコアヒストンをコードするmRNAからヒストンタンパク質を発現させるため、上記混合物のインキュベートはタンパク質翻訳のための反応基質溶液の共存下で行われる。タンパク質翻訳のための反応基質溶液は、アミノ酸混合物、エネルギー源としてATP(アデノシン三リン酸)を産生するためのクレアチンキナーゼ等を含む。アミノ酸混合物は、好ましくは、全てのコドンに対応している少なくとも20種のL型アミノ酸を含む。アミノ酸混合物は、目的に応じて、アミノ酸アナログや異性体、または同位体元素等で標識されたアミノ酸を含んでいてもよい。タンパク質翻訳のための反応基質溶液は、好ましくは、アミノ酸混合物およびATPを含む。タンパク質翻訳のための反応基質溶液は、さらに、各種イオン(例えば、カリウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオン等)、核酸分解酵素阻害剤(例えば、リボヌクレアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤等)、還元剤(例えば、ジチオスレイトール等)、抗菌剤(例えば、アジ化ナトリウム、アンピシリン等)、緩衝剤、ポリエチレングリコール、葉酸塩等を含んでいてもよい。上記の成分の使用量は、無細胞タンパク質合成において通常使用される範囲に基づき当業者が適宜決定することができる。タンパク質翻訳のための反応基質溶液として様々な試薬が市販されている。本発明においては、これらの市販の試薬を用いてもよい。
【0021】
上記混合物のインキュベートは、重層法、透析法、バッチ法等の既知の様式で行うことができる。重層法は、反応基質溶液の上層の下に上記混合物を注入するか、または上記混合物の上に反応基質溶液を載せることによって二層を形成させてインキュベートする方法である。透析法は、透析膜内に上記混合物を入れ、外側に反応基質溶液を入れてインキュベートする方法である。
【0022】
上記混合物のインキュベートの時間および温度は、タンパク質の翻訳反応に適した時間および温度であれば特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。例えば、限定するものではないが、約17~26℃で約2~24時間であってもよい。さらに、翻訳後構築法において、鋳型DNAとのインキュベートの時間および温度もまた当業者が適宜決定すればよく、例えば、約17~26℃で約2~24時間であってもよい。
【0023】
翻訳後構築法では、小麦胚芽無細胞抽出液中で発現させたヒストンタンパク質を単離した後に鋳型DNAとインキュベートしてもよく、または小麦胚芽無細胞抽出液中で発現させたヒストンタンパク質を含む翻訳反応液を用いて鋳型DNAとインキュベートしてもよい。
【0024】
かくして、本発明の方法によれば、クロマチン再構成因子を用いることなく(特に、外因性のクロマチン再構成因子を用いることなく)、生理的条件下で植物クロマチンがイン・ビトロで再構築される。本発明の方法によれば、4種のコアヒストンの組み合わせだけでなく、変種ヒストンを含む組み合わせを含むクロマチンを再構築することもできる。後述する実施例では、シロイヌナズナの4種のコアヒストンに加え、変種ヒストン6種を用いて、全24通りの組み合わせ(4種のヒストンH2A、2種のヒストンH2B、3種のヒストンH3、および1個のヒストンH4)のうち7通りの組み合せで、外因性のクロマチン再構成因子を用いることなく、生理的条件下でクロマチンが再構築できることを証明した。
【0025】
本明細書において「生理的条件下」とは、生体内と同様の塩濃度やpH等をいう。したがって、本発明の方法によって再構築された植物クロマチンは、植物の生体内と同様の条件下で構築されており、植物の生体内で生じる天然の植物クロマチンと同様の構造を有すると考えられる。
【0026】
本発明の方法においては、さらに、クロマチン再構成因子を用いてもよい。用いられる4種のヒストンをコードするmRNAの組み合わせが変種ヒストンをコードするmRNAを含む場合、ヒストンの組み合わせによってはクロマチン再構築の効率が低いか、またはクロマチン再構築が困難な場合がある。このような場合は、クロマチン再構成因子を用いることが好ましい。クロマチン再構成因子としては、植物クロマチンの再構成因子を用いてもよく、あるいは、ヒストンの由来とは異なる動物や真菌などのクロマチン再構成因子を用いてもよい。クロマチン再構成因子としては、例えば、限定するものではないが、Nap1、Acf1、ISWI、NRP1、NPR2等が挙げられる。植物クロマチンの再構成因子としては、ヒストンの由来と同じ植物または異なる植物のクロマチン再構成因子を用いてもよい。例えば、シロイヌナズナのクロマチンの再構成因子であるAtNRP1またNRP2を用いることができる。2種以上のクロマチン再構成因子を用いてもよい。
【0027】
クロマチン再構成因子の使用は、クロマチン再構成因子をコードするmRNAを上記混合物に加えることによって行ってもよく、または上記混合物をクロマチン再構成因子と共にインキュベートすることによって行ってもよい。すなわち、小麦胚芽無細胞抽出液、植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNA、クロマチン再構成因子をコードするmRNA、および鋳型DNAを含む混合物、または小麦胚芽無細胞抽出液、植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAおよびクロマチン再構成因子をコードするmRNAを含む混合物を上記のようにインキュベートして、クロマチン再構成因子をコアヒストンと共発現させてもよく、あるいは、小麦胚芽無細胞抽出液、植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAおよび鋳型DNAを含む混合物をクロマチン再構成因子の存在下でインキュベートするか、または小麦胚芽無細胞抽出液および植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAを含む混合物をインキュベートしてコアヒストンを発現させた後、鋳型DNAおよびクロマチン再構成因子と共にインキュベートしてもよい。クロマチン再構成因子の使用量は、特に限定されず、当業者が適宜決定すればよい。
【0028】
本発明の方法によって再構築された植物クロマチンは、その反応液より単離・精製してもよい。単離・精製は、当該分野で既知の方法によって行えばよく、例えば多価陽イオンを用いた沈殿法や、ショ糖濃度勾配超遠心法等が挙げられる。
【0029】
本発明のさらなる態様において、小麦胚芽無細胞抽出液中で発現された植物由来の4種のコアヒストンと、鋳型DNAとからなる、再構築された植物クロマチンが提供される。4種のコアヒストンは、上記したように、変種ヒストンを含んでいてもよい。該再構成された植物クロマチンは、本発明の方法によって再構築された植物クロマチンである。
【0030】
かくしてイン・ビトロで再構築された植物クロマチンは、例えば、エピジェネティクス研究において有用である。例えば、イン・ビトロで再構築された植物クロマチンは、ヌクレオソーム修飾酵素の探索に利用することができる。例えば、本発明の方法によりイン・ビトロで再構築した未修飾クロマチンに種々のヌクレオソーム修飾酵素を添加して反応させ、ヌクレオソーム内ヒストン上の修飾アミノ酸残基を同定することができる。修飾アミノ酸残基の同定は、既知の方法で行えばよく、例えば、液体クロマトグラフ質量計等を用いることができる。
【0031】
本発明のさらなる態様において、クロマチンの構築を促進または阻害する物質をスクリーニングするための方法であって、上記の本発明の植物クロマチンの再構築方法において、クロマチン再構築のための反応液を候補物質と共にインキュベートすることを含む方法を提供する。したがって、該スクリーニング方法は、(1)(a)小麦胚芽無細胞抽出液、植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNA、および鋳型DNAを含む混合物を候補物質の存在下でインキュベートすること、(b)小麦胚芽無細胞抽出液および植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAを含む混合物を候補物質の存在下でインキュベートした後に鋳型DNAと共にインキュベートすること、または(c)小麦胚芽無細胞抽出液および植物由来の4種のコアヒストンをコードするmRNAを含む混合物をインキュベートした後に鋳型DNAと共に候補物質の存在下でインキュベートすること、および(2)クロマチンが再構築されたか否かを評価すること、を含む。
【0032】
候補物質としては、クロマチン再構築機能があること、クロマチン再構築を促進すること、またはクロマチン再構築を抑制することが既知または推定されるいずれの物質であってもよい。例えば、限定するものではないが、他の種でクロマチン再構成因子として知られている物質、NAP1やヌクレオプラスミン等が挙げられる。例えば、シロイヌナズナのNAP1(AtNAP1)が挙げられる。NAP1は、シロイヌナズナ以外の他の種でクロマチン構築を改善することが知られているが、シロイヌナズナのNAP1のクロマチン再構築機能はまだ証明されておらず、推定されるに過ぎない。
【0033】
候補物質は、単離されたタンパク質としてクロマチン再構築のための反応液に加えられてもよく、または候補物質をコードするmRNAとして、小麦胚芽無細胞抽出液を含む混合物中に含まれて4種のコアヒストンと共に発現されてもよい。
【0034】
クロマチンが再構築されたか否かの評価は、当該分野で既知の方法によって行えばよい。例えば、スーパーコイリング法(supercoiling assay)、マイクロコッカルヌクレアーゼ(MNase)による限定消化法、原子間力顕微鏡(AFM)またはCryo電子顕微鏡等による観察等によって、インキュベート後の反応液中におけるクロマチン形成の有無およびレベルを評価することができる。スーパーコイリング法は、クロマチン形成が引き起こすDNAトポロジー変化を分析することによってスーパーコイル化効率を評価する方法であり、再構築されたクロマチンからヒストン分子を除去することによって生じた、スーパーコイル化した鋳型DNAを電気泳動において検出することによって、クロマチン形成の有無およびそのレベルを測定することができる。クロマチンが正常に形成している場合は、ヒストンを分解することによってスーパーコイル化したDNAが生じる。一方、ヌクレオソームの取込が不完全な場合など、不完全なクロマチンが形成している場合やクロマチン自体が形成していない場合は、ヒストンを分解するとスーパーコイル化していない緩い(リラックス型)DNAや線状DNAが生じる。電気泳動において、スーパーコイル化DNAは、リラックス型DNAや線状DNAよりも早く移動する。スーパーコイリング法は、特に環状の鋳型DNAを用いる場合に好適である。
【0035】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例では、モデル植物であるシロイヌナズナのクロマチンの再構築実験を行った。
【実施例0036】
[材料]
実施例において、特記しない限り、以下の試薬を用いた。タンパク質発現には、小麦胚芽無細胞抽出液(CellFree Sciences社製)、SUB-AMIX翻訳バッファー(CellFree Sciences社製)、クレアチンキナーゼ(Roche Dignostics, GmbH)を用いた。クロマチン構築(assembly)反応には、pBluescript II SKプラスミドDNA(Addgene社製)(以下、「pBSKプラスミド」と表記する)、SUB-AMIX溶液(CellFree Sciences社製)、クレアチンキナーゼ(Roche Dignostics, GmbH)、トポイソメラーゼI(Takara Bio Inc.)を用いた。ゲル分析には、1kbp DNA分子量マーカー(Toyobo)およびタンパク質サイズマーカー(Bio-Rad Laboratories)を用いた。
【0037】
実施例1:ヒストンmRNAおよびクロマチン再構成因子mRNAの調製
実施例で使用したシロイヌナズナタンパク質をコードした遺伝子は全て、発明者らが独自に作製したシロイヌナズナcDNAライブラリから小麦胚芽無細胞タンパク質発現用ベクター(pEUベクター、CellFree Sciences社)にクローニングすることによって調製した。簡単に言うと、シロイヌナズナの全RNAを常法により抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAライブラリを合成した。シロイヌナズナの4種のコアヒストンおよび6種の変種ヒストンとシロイヌナズナクロマチン再構成因子)をコードする遺伝子をそれぞれ、cDNAライブラリから増幅し、pEUベクターに挿入した。なお、4種のコアヒストンとして、H2A(遺伝子HTA10;遺伝子座番号AT1G51060;配列番号1)、H2B クラスI(本明細書において「H2B.9」と称する)(遺伝子HTB9;遺伝子座番号AT3G45980;配列番号2)、H3.1(遺伝子HTR2;遺伝子座番号AT1G09200;配列番号3)、およびH4(遺伝子HFO1;遺伝子座番号AT2G28740;配列番号4)を用いた。6種の変種ヒストンとして、H2A.X(遺伝子HTA3;遺伝子座番号AT1G54690;配列番号5)、H2A.W(遺伝子HTA6;遺伝子座番号AT5G59870;配列番号6)、H2A.Z(遺伝子HTA8;遺伝子座番号AT2G38810;配列番号7)、H2B クラスII(本明細書において「H2B.7」と称する)(遺伝子HTB7;遺伝子座番号AT3G09480;配列番号8)、H3.3(遺伝子HTR4;遺伝子座番号AT4G40030;配列番号9)、CENH3(遺伝子HTR12;遺伝子座番号AT1G01370;配列番号10)を用いた。シロイヌナズナ再構成因子として、AtNAP1(遺伝子座番号AT5G56950;配列番号11)を用いた。
【0038】
上記プラスミド構築物(転写鋳型DNA)を、WEPRO7240タンパク質合成キット(CellFree Sciences社)中の転写キットを用いて、製造者のプロトコールにしたがって37℃で4時間の試験管内転写反応に付してmRNA合成液を得た。該mRNA合成液に、DNA分解酵素(RNase-free DNase I、Nippon Gene社製)を容量40μL当たり1μL加え、37℃で30分間保温することによって、転写鋳型DNAを実質的に完全に消化した。pH5.5に合わせたフェノール(50容)/クロロホルム(50容)/イソアミルアルコール(1容)で2回抽出を繰り返した後、水層に1/10容量の3M NaOAcを加え、2.5容量のエタノールでmRNAを沈殿回収した。該沈殿を70%エタノールで1回洗浄することによって遊離ヌクレオチドを除去した後、RNase-free水(Nippon Gene社製)に溶解し、NanoDrop1000(Thermofisher Scientific社製)でRNA濃度を測定した。mRNA濃度を1μg/μLに調整して以下の実施例に用いた。
【0039】
実施例2:小麦胚芽無細胞タンパク質合成重層法によるヒストンの合成
WEPRO7240タンパク質合成キットを用い、製造者のプロトコールにしたがって、反応容器として96穴プレートを用いて翻訳反応を行った。キットに含まれる翻訳反応基質溶液(1x SUB-AMIXxSGC)206μLを入れたウェルに、キットに含まれる小麦胚芽無細胞抽出液(WEPRO7240)10μL、クレアチンキナーゼ0.8μg、および実施例1で調製した各種ヒストンをコードするmRNAの混合物8μgを前記翻訳反応基質溶液の下層になるよう注入し、26℃で4時間インキュベートした。インキュベーション後、反応液中で合成されたタンパク質をSDS-PAGEによって分析し、小麦胚芽無細胞タンパク質合成法を用いたシロイヌナズナヒストンおよび変種ヒストンの合成と可溶化の有無を検証した。
【0040】
可溶化の有無は、合成産物を10分間程遠心分離(12,000 xg)し、得られた上清において合成産物を検出することによって評価した。可溶化した合成産物は上清に含まれ、不溶化形態の合成産物は沈殿物する。その結果、いずれの合成産物も可溶性であることが分かった。SDS-PAGEには、18%SDS-アクリルアミドゲル電気泳動を用いた。タンパク質バンドは、CBB(Coomassie Brilliant Blue)染色によって検出した。結果を図1に示す。図1中、標的タンパク質を矢印で示す。すべての生成物が予測されたサイズで観察された。
【0041】
実施例3:小麦胚芽無細胞タンパク質合成によるクロマチンの再構築
小麦胚芽無細胞抽出液を用いたシロイヌナズナクロマチン(変異ヒストンを含まない一般的なクロマチン)の再構築を重層法により行い、スーパーコイリング法によって確認した。簡単に言うと、実施例1で調製したH2A、H2B.9、H3.1、およびH4の4種のコアヒストンをコードするmRNAの等量混合物1.0μL(各mRNAを~2.5μg含む)、0.25μgのpBSKプラスミド(鋳型DNA)、2UのトポイソメラーゼI、5.0μLの小麦胚芽無細胞抽出液(WEPRO7240)、および0.4μgのクレアチンキナーゼを混合し、1xSUB-AMIX溶液を用いて最終容量10.4μLに調整した。該混合物を、96穴プレートの各ウェルにおいて、103.0μL/ウェルの1xSUB-AMIX溶液の下層になるように静かに置いて二層を形成させた。26℃で4時間反応させて、クロマチンを構築させた。コントロール実験として、クロマチン鋳型として用いたpBSKプラスミド、およびヒストンH3.1とH4のみを共発現させる反応を行った。
【0042】
上記で得られたクロマチン構築反応液55.0μLをフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1,v/v)抽出(pH8.0)、次いでエタノール沈殿によって精製し、精製されたDNAを微量のリボヌクレアーゼA(Macherey-Nagel GmbH & Co.)を含有するHDバッファー(25mM HEPES,1mM DTT,pH7.6)中に再懸濁した。スーパーコイル化プラスミドDNAを0.5xTBEバッファー中の0.8%TBEアガロースゲルによって分離し、エチジウムブロマイド(Nippon Gene)で可視化し、ゲル・ドキュメンテーション・システム(Bio-Rad Laboratories)によって分析した。結果を図2(レーン3)に示す。
【0043】
図2に示されるように、小麦胚芽無細胞抽出液、4種のコアヒストンをコードするmRNA、および鋳型DNAの混合物をインキュベートすることによってクロマチンが再構築された(レーン3)。一方、2種のコアヒストンのみを共発現させた場合はクロマチンが再構築されなかった(レーン2)。本実施例においてクロマチン再構成因子は添加していないことから、外因性のクロマチン再構成因子を用いることなく、小麦胚芽無細胞抽出液を用いて植物クロマチンを再構築できることを初めて見出した。
【0044】
実施例4:変種ヒストンを含むクロマチンの再構築
4種のコアヒストンをコードするmRNAのいずれかを実施例1で調製した6種の変種ヒストンをコードするmRNAのいずれかに置き換えた、23通りのヒストンmRNAの組み合わせを用いて実施例3と同様にクロマチン構築反応を行い、スーパーコイリング法によって確認した。
【0045】
その結果、4種のヒストンのうちH2AをH2A.XまたはH2A.Wに置き換えた組み合わせ(図2)、4種のヒストンのうちH3.1をH3.3に置き換えた組み合わせ(図3)、4種のヒストンのうちH3.1をH3.3に置き換え、かつ、H2AをH2A.XまたはH2A.Wに置き換えた組み合わせ(図3)、4種のヒストンのうちH3.1をCENH3に置き換えた組み合わせ(図4)、4種のヒストンのうちH3.1をCENH3に置き換え、かつ、H2AをH2A.Xに置き換えた組み合わせ(図4)の、合計7通りの組み合わせでクロマチンを再構築できた。
【0046】
実施例5:推定ヒストン再構成因子を用いるクロマチンの再構築
実施例4でクロマチンが再構築しなかった、または再構築効率が低かった組み合わせについて、推定のクロマチン再構成因子であるAtNAP1を用いてクロマチンを再構築できるか実験した。4種のコアヒストンの組み合わせとして、4種のヒストンのうちH2AをH2A.Zに置き換えた組み合わせ、4種のヒストンのうちH2AをH2A.Wに置き換え、かつ、H3.1をH3.3に置き換えた組み合わせ、および4種のヒストンのうちH2AをH2A.Zに置き換え、かつ、H3.1をH3.3に置き換えた組み合わせを用いた。上記のmRNAの各組み合わせ、実施例1で調製したAtNAP1をコードするmRNA、pBSKプラスミド(鋳型DNA)、および小麦胚芽無細胞抽出液を含む混合物を用いて実施例3と同様にクロマチン構築反応を行い、スーパーコイリング法によって確認した。
【0047】
その結果、シロイヌナズナの推定クロマチン再構成因子AtNAP1を共発現することで、上記の変種ヒストンを含む組み合わせにおいてクロマチンの再構築が改善された(図5、および図6のレーン4および6)。したがって、AtNAP1がクロマチン再構成因子であることが証明され、かつ、小麦胚芽無細胞抽出液中でクロマチン再構築が困難な場合は、外因性クロマチン再構成因子を加えることにより植物クロマチンを再構築できることが分かった。また、推定のクロマチン再構成因子であったAtNAP1のクロマチン再構築機能が証明されたことから、本発明のクロマチン再構築のための系が、クロマチン再構築の促進または抑制候補物質のスクリーニングに利用できることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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