(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160865
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ビスフェノール組成物及びその製造方法、並びにポリカーボネート樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 37/88 20060101AFI20231026BHJP
C07C 39/17 20060101ALI20231026BHJP
C07C 39/16 20060101ALI20231026BHJP
C07C 37/20 20060101ALI20231026BHJP
C08G 64/04 20060101ALI20231026BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231026BHJP
【FI】
C07C37/88
C07C39/17
C07C39/16
C07C37/20
C08G64/04
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138959
(22)【出願日】2023-08-29
(62)【分割の表示】P 2019537659の分割
【原出願日】2018-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2017159687
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017234313
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 馨
(72)【発明者】
【氏名】畠山 和久
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】内堀 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 道隆
(57)【要約】
【課題】より高温の条件下においてもハーゼン色数の増加が抑制された、熱的に安定なビスフェノール組成物を提供する。
【解決手段】ビスフェノールに対して0.1質量ppb以上、1質量%以下のアリールアルキルスルフィド又はジアルキルジスルフィドを含むビスフェノール組成物。アリールアルキルスルフィド又はジアルキルジスルフィドを所定の割合で含有するビスフェノール組成物は、ハーゼン色数において熱的に安定であり、高温条件下での着色の問題がない。このようなビスフェノール組成物を用いて、色調に優れたポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールに対して1質量ppb以上、1質量%以下のアリールアルキルスルフィドを含む、ビスフェノール組成物。
【請求項2】
前記アリールアルキルスルフィドのアリール基が、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシトリル基又はヒドロキシキシリル基である、請求項1に記載のビスフェノール組成物。
【請求項3】
前記アリールアルキルスルフィドのアルキル基の炭素数が8以上、30以下である、請求項1又は2に記載のビスフェノール組成物。
【請求項4】
ビスフェノールに対して1質量ppb以上、1質量%以下のジアルキルジスルフィドを含む、ビスフェノール組成物。
【請求項5】
前記ジアルキルジスルフィドのアルキル基の炭素数が8以上、30以下である、請求項4に記載のビスフェノール組成物。
【請求項6】
ビスフェノールの含有量が95.0質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のビスフェノール組成物。
【請求項7】
ケトン又はアルデヒドと芳香族アルコールとを、硫酸、及びアルキルチオール触媒の存在下で反応させるビスフェノール組成物の製造方法であり、前記硫酸の濃度が60質量%以上95質量%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のビスフェノール組成物を製造する、ビスフェノール組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のビスフェノール組成物を反応させてポリカーボネート樹脂を製造する、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項9】
ビスフェノール構造単位に対して1質量ppb以上のアリールアルキルスルフィド構造単位を含有する、ポリカーボネート樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルフィド及びジスルフィドを含有するビスフェノール組成物及びその製造方法、並びに該ビスフェノール組成物を用いたポリカーボネート樹脂及びその製造方法に関する。
本発明の一実施形態であるビスフェノール組成物は、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として有用である。代表的なビスフェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンなどが知られている(特許文献1)。また、色相(APHA)の良い2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンの製造方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-138443号公報
【特許文献2】特開2008-214248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが特許文献2に記載の方法で2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンを製造したところ、150℃で1時間加熱して溶融させたときのハーゼン色数は良好、即ち、着色の問題はなかったが、一般的なポリカーボネート樹脂製造時の反応温度である190℃で2時間加熱して溶融させたときのハーゼン色数は増加(悪化)することが判明した。ポリカーボネート樹脂の溶融製造法においては、原料ビスフェノールを溶融させて使用するため、ハーゼン色数におけるその熱的な安定性は重要な課題である。また、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤等の添加剤用途においても、着色の抑制は重要な課題である。
【0005】
本発明は、より高温の条件下においてもハーゼン色数の増加が抑制された、熱的に安定なビスフェノール組成物を提供することを目的とする。
本発明はまた、ビスフェノール組成物を反応させて得られるポリカーボネート樹脂及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、アルキルアリールスルフィド又はジアルキルジスルフィドを所定の割合で含有するビスフェノール組成物が190℃以上の高温下、溶融状態で2時間以上加熱した条件におけるハーゼン色数の増加が抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[6]に存する。
【0008】
[1] ビスフェノールに対して0.1質量ppb以上、1質量%以下のアリールアルキ
ルスルフィドを含む、ビスフェノール組成物。
【0009】
[2] 前記アリールアルキルスルフィドのアリール基が、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシトリル基又はヒドロキシキシリル基である、[1]に記載のビスフェノール組成物。
【0010】
[3] 前記アリールアルキルスルフィドのアルキル基の炭素数が8以上、30以下である、[1]又は[2]に記載のビスフェノール組成物。
【0011】
[4] ビスフェノールに対して0.1質量ppb以上、1質量%以下のジアルキルジスルフィドを含む、ビスフェノール組成物。
【0012】
[5] 前記ジアルキルジスルフィドのアルキル基の炭素数が8以上、30以下である、[4]に記載のビスフェノール組成物。
【0013】
[6] ビスフェノールの含有量が95.0質量%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のビスフェノール組成物。
【0014】
[7] ケトン又はアルデヒドと芳香族とを、酸触媒、及びアルキルチオール触媒の存在下で反応させて[1]~[6]のいずれかに記載のビスフェノール組成物を製造する、ビスフェノール組成物の製造方法。
【0015】
[8] 前記酸触媒が、硫酸モノアルキルである、[7]に記載のビスフェノール組成物の製造方法。
【0016】
[9] [1]~[6]のいずれかに記載のビスフェノール組成物を反応させてポリカーボネート樹脂を製造する、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
[10] ビスフェノール構造単位に対して1質量ppb以上のアリールアルキルスルフィド構造単位を含有する、ポリカーボネート樹脂。
【発明の効果】
【0017】
アリールアルキルスルフィド又はジアルキルジスルフィドを所定の割合で含有するビスフェノール組成物は、ハーゼン色数において熱的に安定であり、高温条件下での着色の問題がない。このようなビスフェノール組成物を用いて、色調に優れたポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0019】
[ビスフェノール組成物]
本発明の一実施形態であるビスフェノール組成物(以下、単に「ビスフェノール組成物」とも称する)は、ビスフェノールに対して0.1質量ppb以上、1質量%以下のアリールアルキルスルフィド又はジアルキルジスルフィドを含有するものである。
ビスフェノール組成物は、所定量のアリールアルキルスルフィド又はジアルキルジスルフィドを含むものであるが、アリールアルキルスルフィドとジアルキルジスルフィドとを合計でビスフェノールに対して0.1質量ppb以上、1質量%以下含んでいてもよい。
なお、以下において、アリールアルキルスルフィド及び/又はジアルキルジスルフィドを「(ジ)スルフィド」と称す場合がある。
【0020】
ビスフェノール組成物は、ビスフェノールと、ビスフェノールに対して0.1質量ppb以上、1質量%以下の(ジ)スルフィドを含むものであるため、「ビスフェノール組成物」と称すが、「(ジ)スルフィドを含むビスフェノール」とも称すことができるものである。
【0021】
<(ジ)スルフィド>
アリールアルキルスルフィドとしては、下記一般式(1)に示される、置換基を有していてもよい、4-ヒドロキシフェニルアルキルスルフィドが挙げられる。
【0022】
【0023】
一般式(1)において、R1~R4としては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられ、例えば、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨ-ド基等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数1~20の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等の炭素数3~20の環状アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基等の炭素数1~20の直鎖又は分岐のアルコキシ基、ベンジル基等の置換基としてアリール基を有するアルキル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基等の置換基としてアルキル基を有していてもよいアリール基などが挙げられる。これらのうちR2とR3は立体的に嵩高いと、後述の(ジ)スルフィドを含むビスフェノール生成物を得る際に、(ジ)スルフィド生成反応が進行しにくいことから、好ましくは水素原子である。
【0024】
一般式(1)において、R1~R4を有する4-ヒドロキシフェニル基であるアリール基としては、具体的には、4-ヒドロキシフェニル基(R1~R4が水素原子)、4-ヒドロキシトリル基(例えば、R1がメチル基でR2~R4が水素原子)、4-ヒドロキシキシリル基(例えば、R1,R2がメチル基でR3,R4が水素原子)が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0025】
一般式(1)において、R5は、アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、ベンジル基などの置換基
としてアリール基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。R5のアルキル基の炭素数が小さいと、ビスフェノール組成物の溶融時に蒸発して留去されてしまうことから、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などの炭素数が8以上、特に10以上のアルキル基が好ましい。一方で、R5のアルキル基の炭素数が大きいとビスフェノールとの相溶性が低下することから、R5は炭素数30以下、特に20以下のアルキル基が好ましい。R5は工業的に安価に製造できるとの観点から、特に鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖アルキル基であることがより好ましい。
【0026】
アリールアルキルスルフィドとしては、具体的にはオクチル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、オクチル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ノニル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ノニル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ウンデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、デシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ウンデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、デシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ドデシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドなど、これらのアリールアルキルスルフィドのアルキル基がオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基に置き換えられたものなどが挙げられるが、何らこれらの限定されるものではない。上記のアリールアルキルスルフィドのうち、特にオクチル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、オクチル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ノニル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ノニル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ウンデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、デシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ウンデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、デシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ドデシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、これらのアリールアルキルスルフィドのアルキル基がオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基に置き換えられたものは、後述のビスフェノールの製造において、反応系内で副生させてビスフェノール生成物中に含有させることができる点において好ましい。
【0027】
ビスフェノール組成物は、上記のアリールアルキルスルフィドの1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0028】
ジアルキルジスルフィドは、下記一般式(2)に示されるものである。
【0029】
【0030】
上記一般式(2)において、R5A,R5Bは同一であってもよく、異なるものであってもよいが、合成上の利便性、入手の容易性から、同一であることが好ましい。R5A,R5Bとしては、一般式(1)におけるR5として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0031】
ジアルキルジスルフィドとしては、具体的にはジドデシルジスルフィド、ジデシルジスルフィド、ジノニルジスルフィド、ジオクチルジスルフィド、ジウンデシルジスルフィド等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。上記のジアルキルジスルフィドのうち、特にジドデシルジスルフィド、ジデシルジスルフィドは、後述のビスフェノールの製造において反応系内で副生させることでビスフェノール生成物中含有させることができる点において好ましい。
【0032】
ビスフェノール組成物は、上記のジアルキルジスルフィドの1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよく、前述の通り、アリールアルキルスルフィドの1種以上とジアルキルジスルフィドの1種以上を含むものであってもよい。
【0033】
ビスフェノール組成物において、ビスフェノールに対する(ジ)スルフィドの含有量は、少ないとハーゼン色数に対する熱的安定性の効果が得られないことから、0.1質量ppb以上であり、0.5質量ppb以上が好ましく、1質量ppb以上がより好ましく、10質量ppb以上がさらに好ましい。一方、ビスフェノールに対する(ジ)スルフィドの含有量が多いと、(ジ)スルフィドを含むビスフェノール組成物を用いたポリカーボネートの製造において、炭酸ジフェニルとのモル比の制御が困難となることから、1質量%以下であり、5000質量ppm以下が好ましく、1000質量ppm以下がより好ましい。
【0034】
なお、ハーゼン色数は具体的には、後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
【0035】
<ビスフェノール>
ビスフェノール組成物に含まれるビスフェノールは、通常、以下の一般式(3)で表される化合物である。
【0036】
【0037】
上記一般式(3)において、R11,R12,R13,R14は同一であってもよく、異なるものであってもよい。また、一般式(3)中に2つずつあるR11,R12,R13,R14も互いに異なるものであってもよいが、合成上の利便性、入手の容易性から、各々2つのR11,R12,R13,R14は同一であることが好ましい。R11~R14としては、一般式(1)におけるR1~R4として例示したものと同様のものが挙げられ(R1がR11に、R2がR12に、R3がR13に、R4がR14にそれぞれ対応する。)、好ましいものも同様である。また、R12とR13は立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから、好ましくはプロトンである。
【0038】
R15,R16としては、それぞれに独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられ、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルへキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数1~20の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等の炭素数3~20の環状アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基等の炭素数1~20の直鎖又は分岐のアルコキシ基、ベンジル基等の置換基としてアリール基を有するアルキル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基等の
置換基としてアルキル基を有していてもよいアリール基などが挙げられる。
【0039】
一般式(3)において、R15とR16は、2つの基の間で互いに結合又は架橋していてもよく、このようなR15,R16としては、例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどの連結基が挙げられる。
【0040】
ビスフェノール組成物に含まれるビスフェノールとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタンなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0041】
また、ビスフェノール組成物は、ビスフェノールを主成分とし、通常、ビスフェノール組成物中にビスフェノールを95.0質量%以上含むものである。ビスフェノール組成物中のビスフェノールの含有量は、好ましくは、97.0質量%以上であり、より好ましくは、98.0質量%以上であり、さらに好ましくは、98.5質量%以上であり、最も好ましくは、99.0質量%以上である。
また、ビスフェノール組成物は、ビスフェノールと芳香族アルコールスルホン酸塩以外の成分の含有量が少ないことが好ましい。
特に、ポリカーボネート樹脂の原料として使用する場合、炭酸ジエステルとの重合を阻害する成分の含有量が少ないビスフェノール組成物であることが好ましい。
【0042】
<ビスフェノール組成物の製造方法>
ビスフェノール組成物の製造方法としては特に制限はないが、例えば次のような方法が挙げられる。
(1) 固体のビスフェノールに所定量の(ジ)スルフィドを添加する方法
(2) 溶融したビスフェノールに所定量の(ジ)スルフィドを添加する方法
(3) ビスフェノールを製造する際に(ジ)スルフィドを副生させて(ジ)スルフィドを含有するビスフェノール生成物を得る方法
【0043】
(1)、(2)の固体又は溶融したビスフェノールに(ジ)スルフィドを添加する方法においては、(ジ)スルフィドを別途準備する必要があることから、(3)ビスフェノールを製造する反応系において(ジ)スルフィドを副生させてビスフェノール生成物に(ジ)スルフィドを含有させる方法が好ましい。
【0044】
なお、ビスフェノールの反応系で副生した(ジ)スルフィドが多過ぎる場合は、得られたビスフェノール生成物を更に晶析、懸濁洗浄及び振りかけ洗浄して、ビスフェノール生成物に含まれる(ジ)スルフィドの一部を除去することにより本発明の規定範囲内の(ジ)スルフィドを含むビスフェノール生成物が得られるように制御することができる。
【0045】
<(ジ)スルフィドを含むビスフェノール生成物を得る方法>
ビスフェノールの製造時に反応系内でビスフェノールと共に(ジ)スルフィドを生成させて(ジ)スルフィドを含むビスフェノール生成物をビスフェノール組成物として得る方法としては、ケトン又はアルデヒドと芳香族アルコールを酸触媒及びチオール触媒の存在下で縮合させてビスフェノールを製造する方法が挙げられ、この方法によれば、チオール触媒に由来して(ジ)スルフィドを反応系内で生成させることができる。
以下、この方法について説明する。
【0046】
この方法では、好ましくは硫酸を触媒とし、チオールを助触媒として、好ましくは更に脂肪族アルコールを用いて、芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドを縮合させることによりビスフェノールを製造する。
【0047】
ビスフェノールの生成反応は、以下に示す反応式(4)に従って行われ、この反応において(ジ)スルフィドとして、例えばチオールとしてRSH(Rは好ましくは炭素数8~30のアルキル基を示す。)で表されるアルカンチオールを用いることで、下記一般式(1A)で表されるアリールアルキルスルフィドを生成させることができる。
【0048】
【0049】
【0050】
(式中、R11~R16は、一般式(3)におけると同義である。)
【0051】
ビスフェノールの原料として使用する芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(5)で表される化合物である。
【0052】
【0053】
(式中、R11~R14は、一般式(3)におけると同義である。)
【0054】
一方、ケトン及びアルデヒドは、通常、以下の一般式(6)で表される化合物である。
【0055】
【0056】
(式中、R15,R16は、一般式(3)におけると同義である。)
【0057】
芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドを縮合させる反応において、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比は、低いとケトン又はアルデヒドが多量化してしまうが、高いと芳香族アルコールを未反応のままロスする。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくはモル比1.7以上であり、また、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
【0058】
ケトン及びアルデヒドの供給方法は、一括で供給する方法、及び分割して供給する方法を用いることができるが、ビスフェノールを生成する反応が発熱反応であることから、少しずつ滴下して供給するなど分割して供給する方法が好ましい。
【0059】
触媒として用いる硫酸としては、濃硫酸を用いることができる。しかし、該硫酸の濃度が高すぎると、ケトン又はアルデヒドの多量化及び脂肪族アルコールの脱水2量化を促進させ、チオールの劣化及び生成したビスフェノールのスルホン化を引き起こす。一方、用いる硫酸の濃度が低すぎると、反応時間が長くなり、効率的にビスフェノールを製造することができない。そのため、用いられる硫酸の濃度は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、好ましくは95質量以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0060】
ケトン又はアルデヒドに対する硫酸のモル比は、低いと縮合反応時に副生する水によって硫酸が希釈されて長い反応時間を要することになるが、高いとケトン又はアルデヒドの多量化が進行する。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する硫酸のモル比は、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。
【0061】
この反応には、脂肪族アルコールを用い、硫酸と脂肪族アルコールとの反応で生成した硫酸モノアルキルを触媒とすることが、触媒の酸強度を制御し、原料のケトン又はアルデヒドの縮合(多量化)及び着色を抑制し、副反応物の生成及び生成物の着色が低減されたビスフェノールを簡便かつ効率よく製造することが可能となることから、好ましい。本願では、硫酸と脂肪族アルコールとの反応を利用してビスフェノールを調製する方法を「硫酸アルコール法」とも称し、例えば、硫酸とメタノールとの反応を利用する場合には、硫酸メタノール法(硫酸MET法)とも称する。また、同時に硫酸モノアルキルを発生させる際に使用した脂肪族アルコールの残存分で生成したビスフェノールを溶解させて反応液の固化を抑制し、混合状態を改善し、反応時間を短縮することが可能であるという利点もある。
【0062】
硫酸モノアルキルとしては、例えば、硫酸モノメチル、硫酸モノエチル、硫酸モノプロピル、硫酸モノイソプロピル、硫酸モノブチル、硫酸モノイソブチル、硫酸モノt-ブチル、硫酸モノペンチル、硫酸モノイソペンチル、硫酸モノへキシル、硫酸モノへプチル、硫酸モノオクチル、硫酸モノノニル、硫酸モノデシル、硫酸モノウンデシル、硫酸モノドデシル、硫酸モノ(ヒドロキシエチル)、硫酸モノ(2-ヒドロキシエトキシエチル)、硫酸モノ(2-(2’-ヒドロキシエトキシ)エトキシエチル)などを挙げることができる。これらの中で、炭素数が多くなると親油性が増加し、硫酸モノアルキルが有機相と水相を行き来し難くなることから、炭素数が8以下の硫酸モノアルキルが好ましく用いられる。
硫酸モノアルキルを製造する方法は、特に限定されないが、硫酸モノアルキルを安価に得られるため 、硫酸と脂肪族アルコールとの反応から製造する方法が挙げられる。
反応液中の硫酸モノアルキルの濃度としては、0.0001重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。
【0063】
脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコールなどの炭素数1~12のアルキルアルコール類などを挙げることができる。該脂肪族アルコールは、炭素数が多くなると親油性が増加し、硫酸と混ざりにくくなり硫酸モノアルキルを得にくくなることから、炭素数が8以下のアルキルアルコールが好ましい。
【0064】
上記の通り、脂肪族アルコールは、硫酸と混合して反応させ硫酸モノアルキルとして用いる。硫酸に対する脂肪族アルコールのモル比は、低いと発生する硫酸モノアルキルの量が少なくなり反応に長時間を要し、また、高いと硫酸濃度が低下する。これらのことから、硫酸に対する脂肪族アルコールのモル比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
反応液中の脂肪族アルコールの濃度としては、0.01重量%以上であることが好ましく、0.05重量%以上であることがより好ましく、40重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0065】
助触媒として用いるチオールとしては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタンなどが挙げられるが、前述の本実施形態に好適な(ジ)スルフィドを副生させるために、炭素数8以上、30以下、特に炭素数10以上、20以下のアルキル基を有するアルカンチオールを用いることが好ましい。
反応液中のチオールとしては、0.01重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
【0066】
ケトン又はアルデヒドに対する該チオールのモル比は、低いとチオール助触媒を用いることによる選択性改善の効果が得られず、高いとビスフェノールに混入して品質が悪化する。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する該チオールのモル比は、好ましく
は0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
【0067】
チオールは、チオールの酸化分解を抑制する観点から、ケトン又はアルデヒドを予め混合してから反応に供することが好ましい。チオールとケトン又はアルデヒドの供給方法は、チオールにケトン又はアルデヒドを混合してもよく、ケトン又はアルデヒドにチオールを混合してもよい。また、チオールとケトン又はアルデヒドの混合液と硫酸の混合方法は、該混合液に硫酸を混合してもよく、硫酸に該混合液を混合してもよいが、硫酸に該混合液を混合する方が好ましい。更に、反応槽に硫酸と芳香族アルコールを供給した後に、該混合液を反応槽に供給して混合する方がより好ましい。
【0068】
ビスフェノールの生成反応は、トルエン、キシレンなどの溶媒の存在下で行ってもよい。ビスフェノールの製造に使用した溶媒は、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。
また、溶媒を使わず原料の芳香族アルコールを多量に使用して溶媒の代わりにしてもよい。この場合、未反応の芳香族アルコールはロスとなるが、蒸留などにより回収及び精製して再使用することでロスを低減できる。
【0069】
ビスフェノールの生成反応は縮合反応であるが、生成反応の反応温度が高すぎるとチオールの酸化分解が進行し、低すぎると反応に要する時間が長時間化することから、好ましくは0℃以上50℃以下である。
生成反応の反応時間は、長すぎると生成したビスフェノールが分解することから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好ましくは20時間以内である。反応時間の下限は通常15時間以上である。なお、用いる硫酸と同等量以上の水を加えて硫酸濃度を低下させ、反応を停止することが可能である。
【0070】
上記のビスフェノール生成反応によって得られたビスフェノール生成物の精製は、常法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。具体的には、縮合反応後、反応液を分液して得られた有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄する。次いで、洗浄後の有機相を冷却し晶析させる。芳香族アルコールを多量に用いる場合は、該晶析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させる。
【0071】
ビスフェノール生成反応系内で副生した(ジ)スルフィドを残存させて、(ジ)スルフィドを含むビスフェノール生成物をビスフェノール組成物として得るために、上記のビスフェノール生成物の精製方法では、例えば晶析、懸濁洗浄及び振りかけ洗浄することにより、精製されたビスフェノール生成物中に所定量の(ジ)スルフィドが残留するように精製条件を調整することが好ましい。
【0072】
<ビスフェノール組成物の用途>
ビスフェノール組成物は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
【0073】
これらのうち、良好な機械物性を付与できることより、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマ-)として用いることが好ましく、なかでもポリカーボネート樹脂、エポキ
シ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
【0074】
[ポリカーボネート樹脂及びその製造方法]
次に、ビスフェノール組成物を原料とするポリカーボネート樹脂及びその製造方法につき説明する。
本発明の一実施形態であるポリカーボネート樹脂は、ビスフェノール構造単位に対して1質量ppb以上のアリールアルキルスルフィド構造単位を含有する、ポリカーボネート樹脂である。
【0075】
ビスフェノール組成物を原料とするポリカーボネート樹脂は、前述のビスフェノール組成物を反応させて製造することができ、当該ビスフェノール組成物と、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造することができる。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下にビスフェノール組成物と炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
樹脂中のビスフェノール構造単位に対するジアルキルジスルフィド構造単位又はアリールアルキルスルフィド構造単位の含有量は、優れた色調を確保する観点から、1質量ppb以上が好ましく、5質量ppb以上がより好ましく、8質量ppb以上がさらに好ましく、10質量ppb以上がよりさらに好ましく、20質量ppb以上が特に好ましく、また、1.0質量%以下であり、100質量ppm以下が好ましく、80質量ppm以下がより好ましく、50質量ppm以下がさらに好ましい。
【0076】
上記のポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジフェニルは、ビスフェノール組成物中のビスフェノールに対して過剰量用いることが好ましい。該ビスフェノールに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。これらのことから、ビスフェノール1モルに対する使用する炭酸ジフェニルの量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上であり、また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
【0077】
原料の供給方法としては、ビスフェノール組成物及び炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。ビスフェノール組成物は、前述の通り、熱的に安定で、加熱溶融させた高温条件下に長時間晒してもハーゼン色数の増加が少なく、着色の問題がないため、特に溶融させて供給する場合に有効である。
【0078】
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、触媒が使用される。上記のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物を用いることが望ましい。
【0079】
ビスフェノール又は炭酸ジフェニル1モルに対して用いられる触媒量は、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上であり、また、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、さらに好ましくは20μモル以下である。
【0080】
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成形時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
【0081】
上記方法によりポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
【0082】
ビスフェノール組成物は、(ジ)スルフィドを含有していることで、溶融時におけるハーゼン色数の増加が抑制されている(着色が少ない)ことから、ビスフェノール組成物と炭酸ジフェニルとをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることにより着色の少ないポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【実施例0083】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0084】
[原料及び試薬]
以下の実施例及び比較例において、ドデカンチオール、エタノール、ヨウ素、塩化メチレン、チオ硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、アセトン、アセトニトリル、オルトクレゾール、チオシアン酸ナトリウム、メタノール、臭素、臭化ナトリウム、酢酸エチル、水素化リチウムハイドライド、テトラヒドロフラン、塩酸、重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸セシウム、ヘキサン、オルトキシレン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールCと称する)、オルトキシレン、硫酸、トルエン、シクロヘキサノンは、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
1-ブロモドデカン、4-ヒドロキシチオフェノール、1-ブロモデカン、ジデシルジスルフィド、9-フルオレノン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンは、東京化成株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
【0085】
[分析]
<ビスフェノール生成物の組成分析>
ビスフェノール生成物(反応生成液)の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
装置:島津製作所社製LC-2010A、Imtakt ScherzoSM-C18
3μm 150mm×4.6mmID
低圧グラジェント法
分析温度:40℃
溶離液組成
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1mL:900mLの溶液
分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)、
分析時間0~25分では溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、
分析時間25~30分ではA液:B液=90:10に維持し、
流速0.8mL/分で分析した。
【0086】
<アセトン基準のビスフェノールの反応収率(モル%)>
アセトン基準のビスフェノールCの反応収率(モル%)は、高速液体クロマトグラフィーで波長280nmにより検出されたピークより反応液中に含まれるビスフェノールCの濃度を算出し、その濃度よりビスフェノールC生成反応液中に含まれる該ビスフェノールCのモル量を算出して、該ビスフェノールCのモル量÷原料アセトンのモル量×100%で算出した。
1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンの生成量は、高速液体クロマトグラフィーで波長280nmにより検出されたピークの面積から、面積%を算出した。
【0087】
<ドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、デシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、デシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドの同定>
ドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、デシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、デシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドの同定は、ガスクロマト質量計を用いて、以下の手順と条件で行った。
装置は、アジレント・テクノロジー社製「Agilent6890」を使用した。カラムはアジレント・テクノロジー社製「DB-1MS」(内径0.25mm×30m×0.25μm)を使用した。キャリアーガスはヘリウムとして、その流量を毎分1cm3とした。注入口温度を280℃、トランスファー温度を250℃、イオンソース温度を250℃とした。カラムの昇温パターンは、先ず60℃で3分間保持させた後に毎分10℃で280℃まで昇温させ、280℃で5分間保持させて分析した。
【0088】
<ドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィドの分析>
ドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィドの分析は、ガスクロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
装置は、島津製作所社製「GC-17A」を使用した。カラムは、アジレント・テクノロジー社製「DB-1」(内径0.53mm、カラム長30m、膜厚1μm)を使用した。キャリア-ガスはヘリウムとし、その流量を毎分5.58cm3、線速を毎秒47.4cmとした。注入口温度を250℃、検出器温度を280℃とした。カラムの昇温パターンは、先ず150℃で5分間保持させた後に毎分13℃で295℃まで昇温させ、295℃で15分間保持させて分析した。
【0089】
<ビスフェノール組成物又はビスフェノールの溶融時のハーゼン色数の測定>
ビスフェノール組成物又はビスフェノールの溶融時のハーゼン色数の測定は、色差計を用いて、以下の手順と条件で行った。
分光色差計用の試験管は、日本理化硝子製の試験管(24mm×200m/m P-24)を使用した。装置は、日本電色工業株式会社製「SE-6000」を使用した。ハーゼン色数の測定は、ビスフェノール又はビスフェノール組成物(ビスフェノール生成物)を入れた分光色差計用の試験管をアルミブロックヒーターで所定の温度で加熱し、所定時間となったところで30秒以内に行った。
【0090】
ビスフェノールC中に含まれるアリールアルキルスルフィド又はジアルキルジスルフィドの濃度について、測定対象に対して特段の処理を行わない場合、検出限界は通常0.1ppmであるが、濃縮等の処理を行うことで検出限界を0.5ppbとすることができる。
【0091】
[参考例1]
ジドデシルジスルフィド(以下、C12SSC12と称する)は、Langmuir 2001,17,7735-7741を参考にして合成した。
【0092】
磁気撹拌子を備えた500mLのナス型フラスコに、ドデカンチオール20g(0.1モル)とエタノール200mLを入れて溶液を得た。室温下で該溶液が着色するまでヨウ素をゆっくり加え、着色後30分間撹拌した。該溶液に塩化メチレンを加えた後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液で3回洗浄し、更に飽和食塩水で2回洗浄した。得られた有機相を、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた有機相の一部を取り、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、Angene International Limited社製試薬のC12SSC12と同保持時間にピークを検出したことから、C12SSC12が生成していることを確認した。エバポレータを用いて該有機相から軽沸分を留去し、得られた残渣に対してアセトンとアセトニトリルを用いた再結晶を3回繰り返して乾燥させることで、C12SSC12 15gを得た。
【0093】
[参考例2]
ドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド(以下、C12SoCRSと称する)は、以下の通り合成した。
【0094】
磁気撹拌子及び滴下ロートを備えた500mLのナス型フラスコに、オルトクレゾール34g(0.3モル)、チオシアン酸ナトリウム82g(1.0モル)及びメタノール174gを入れた。該滴下ロートに、臭素50g(0.3モル)、メタノール300g、臭化ナトリウム32gを入れた。該ナス型フラスコを氷浴し、滴下ロートより臭素溶液をゆっくり滴下した。滴下後、6時間撹拌して混合させた。得られた反応混合物に、脱塩水を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。磁気撹拌子及び滴下ロートを備えた500mLのナス型フラスコに水素化リチウムハイドライド7.5g(0.2モル)及びテトラヒドロフラン100gを加え、得られた濃縮物とテトラヒドロフラン100gを滴下ロートに加えた。該フラスコを氷浴し、該濃縮物のテトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下した。滴下後、1時間撹拌した後、希塩酸をゆっくり加え、更に酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を飽和重曹溶液で中和した後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた残渣を、クーゲルロア蒸留で蒸留精製することで、中間体4-ヒドロキシ-3-メチルフェニルメルカプタン13.6gを得た。
【0095】
磁気撹拌子を備えた500mLのナス型フラスコに、該中間体13.6g(0.1モル)、炭酸セシウム28g(0.1モル)、1-ブロモドデカン18g(0.1モル)、及びアセトニトリル160mLを入れた。該スラリー溶液を室温で18時間撹拌した後、10質量%の塩酸を入れて反応を停止させた。この混合液に、酢酸エチルを入れて抽出した。得られた有機相を、飽和重曹溶液、水、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水した。得られた有機相の一部を取り、ガスクロマト質量計を用いて測定したところ、電子衝撃法でマスナンバー280(M+)が観測されたことから、C12SoCRSが生成していることを確認した。脱水された有機相の残りを、エバポレータを用いて軽沸分を留去させたところ、白色固体が得られた。該白色固体を、ヘキサンを用いて再結晶を3回繰り返し、乾燥させることで、C12SoCRS 5gを得た。
【0096】
[参考例3]
デシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド(以下、C10SPhlと称する)は、国際公開2000/034254号の実施例13を参考にして合成した。
【0097】
磁気撹拌子を備えた500mLのナス型フラスコに、4-ヒドロキシチオフェノール11g(87ミリモル)、1-ブロモデカン19g(86ミリモル)、炭酸セシウム28g、及びアセトニトリル160mLを入れ、スラリー溶液を得た。該スラリー溶液を室温で18時間撹拌した後、10質量%の塩酸を入れて反応を停止させた。この混合液に、酢酸
エチルを入れて抽出した。得られた有機相を、飽和重曹溶液、水、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水した。脱水された有機相の一部を取り、ガスクロマト質量計を用いて測定したところ、電子衝撃法でマスナンバー266(M+)が観測されたことから、C10SPhlが生成していることを確認した。脱水された有機相の残りを、エバポレータを用いて軽沸分を留去させたところ、白色固体が得られた。該白色固体を、ヘキサンを用いて再結晶を3回繰り返し、乾燥させることで、C10SPhl 10gを得た。
【0098】
[参考例4]
ドデシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド(以下、C12SPhlと称する)は、国際公開2000/034254号の実施例13を参考にして合成した。
【0099】
磁気撹拌子を備えた500mLのナス型フラスコに、4-ヒドロキシチオフェノール13g(104ミリモル)、1-ブロモドデカン33g(117ミリモル)、炭酸セシウム40g、及びアセトニトリル200mLを入れ、スラリー溶液を得た。該スラリー溶液を室温で18時間撹拌した後、10質量%の塩酸を入れて反応を停止させた。この混合液に、酢酸エチルを入れて抽出した。得られた有機相を、飽和重曹溶液、水、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水した。脱水された有機相の一部を取り、ガスクロマト質量計を用いて測定したところ、電子衝撃法でマスナンバー294(M+)が観測されたことから、C12SPhlが生成していることを確認した。脱水された有機相の残りを、エバポレータを用いて軽沸分を留去させたところ、白色固体が得られた。該白色固体を、ヘキサンを用いて再結晶を3回繰り返し、乾燥させることで、C12SPhl 15gを得た。
【0100】
[実施例1]
分光色差計用の試験管に試薬のビスフェノールC15g及び参考例2で合成したドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド(C12SoCRS)1.3mgを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、ビスフェノールCの溶融液を調製した。加熱開始から15分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は40であった。該溶液を更に2時間加熱した後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は50であった。
【0101】
[実施例2]
分光色差計用の試験管に試薬のビスフェノールC15g及び参考例3で合成したデシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド(C12SPhl)1.7mgを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、ビスフェノールCの溶融液を調製した。加熱開始から15分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は50であった。該溶液を更に2時間加熱した後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は70であった。
【0102】
[実施例3]
分光色差計用の試験管に試薬のビスフェノールC15g及び参考例4で合成したドデシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド(C12SPhl)5.3mgを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、ビスフェノールCの溶融液を調製した。加熱開始から15分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は50であった。該溶液を更に2時間加熱した後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は75であった。
【0103】
[実施例4]
分光色差計用の試験管に試薬の1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン7.5g、炭酸ジフェニル7.5g及びドデシル(4-ヒドロキシフェニル)スルフィ
ド(C12Phl)10mgを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、溶融液を調製した。加熱開始から15分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は15であった。該溶融液を更に2時間加熱した後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は25であった。
【0104】
[比較例1]
分光色差計用の試験管に試薬のビスフェノールC(和光純薬社製)15gを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、ビスフェノールCの溶融液を調製した。加熱開始から15分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は60であった。該溶液を更に2時間加熱した後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は100であった。
なお、ビスフェノール中のアリールアルキルスルフィドの含有量を正確に求めるため、以下の濃縮を行った。該ビスフェノール組成物20g、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.0mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。得られた溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、ガラスフィルターと受器を設置して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。この抽出操作を10回行い、得られた液10gを100mLのフラスコに入れ、減圧下、軽沸成分を留去したところ、固体が得られた。得られた固体に、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.0mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。得られた溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、ガラスフィルターと受器を世知して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。上記のようにビスフェノールC組成物を濃縮した後に、アリールアルキルスルフィドの分析を行った。しかし、検出限界の0.5質量ppb未満であり、アリールアルキルスルフィドは検出できなかった。
【0105】
[比較例2]
分光色差計用の試験管に試薬の1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン7.5g及び炭酸ジフェニル7.5gを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、溶融液を調製した。加熱開始から15分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は20であった。該溶融液を更に2時間加熱した後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は60であった。
なお、ビスフェノール中のアリールアルキルスルフィドの含有量を正確に求めるため、以下の濃縮を行った。該ビスフェノール組成物20g、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.0mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。得られた溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、ガラスフィルターと受器を設置して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。この抽出操作を10回行い、得られた液10gを100mLのフラスコに入れ、減圧下、軽沸成分を留去したところ、固体が得られた。得られた固体に、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.0mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。得られた溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、ガラスフィルターと受器を世知して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。上記のようにビスフェノールC組成物を濃縮した後に、アリールアルキルスルフィドの分析を行った。しかし、検出限界の0.5質量ppb未満であり、アリールアルキルスルフィドは検出できなかった。
【0106】
実施例1~3、比較例1について、ビスフェノールCに添加した(ジ)スルフィドの種類と濃度、15分後及び2時間後の溶融液のハーゼン色数、2時間後-15分後の溶融液のハーゼン色数差を表1に纏めた。表1より、ビスフェノールCに(ジ)スルフィドを添
加することで、溶融時の色調を安定化できることが分かる。
また、実施例4及び比較例2について、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンに添加したC12SPhlの濃度、15分後及び2時間後の溶融液のハーゼン色数、2時間後-15分後の溶融液のハーゼン色数差を表1に纏めた。表1より、4-ヒドロキシフェニル基を有するビスフェノールにおいても(ジ)スルフィドを添加することで、溶融時の色調を安定化できることが分かる。
【0107】
【0108】
[実施例5]
温度計、撹拌機及び100mLの滴下ロートを備えたフルジャケット式1Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール35.0g(1.1モル)を入れた後に、88質量%硫酸77.7g(0.7モル)をゆっくり加えた。その後、反応器にトルエン72.6g、オルトクレゾール255.0g(2.4モル)及びドデカンチオール7.3g(0.04モル)をセパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにアセトン57.0g(1.0モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、反応液の色は橙色であった。この反応液を15時間、50℃で反応させた。反応終了後、トルエン135.0g及び脱塩水175.5gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していたものが有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下相の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下相の水相pHが9以上になったことを確認した。下相の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は85モル%であった。また、該有機相の一部を取出し、ガスクロマトグラフィーで生成したジドデシルジスルフィド(C12SSC12)及びドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド(C12SoCRS)の量を確認したところ、各々61面積%と24面積%であった(該面積%は、C12SSC12、C12SoCRS及びドデカンチオールの面積の合計が100面積%となるように算出)。この有機相を80~30℃まで冷却して、30℃に到達時にした時に種晶
ビスフェノールC 1gを添加させて析出を確認した。その後、10℃まで冷却して10℃到達後、ガラスフィルターを用いて減圧濾過を行い、ウェットケーキとして粗ビスフェノールC生成物239.9gを得た。
【0109】
温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1Lのセパラブルフラスコに、前記粗ビスフェノールC生成物全量とトルエン449gを入れ、80℃に昇温した。均一溶液となったことを確認して、10℃まで冷却した。その後、ガラスフィルターを用いた減圧濾過を行い、ウエット精ビスフェノールC生成物を得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、ビスフェノールC生成物180.9gを得た。
【0110】
該ビスフェノールC生成物10g、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.5mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。該溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、該ガラス容器にガラスフィルターと受器を設置して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。得られた液体の一部を取出し、ガスクロマトグラフで該液体に含まれるドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド(C12SoCRS)の量を確認したところ、0.2質量ppmであり、ジドデシルジスルフィド(C12SSC12)は含まれていなかった。この結果より、該ビスフェノールC生成物に含まれるC12SoCRSの量はビスフェノールCの純分に対して約0.02質量ppmと見積もられた。該C12SoCRSは、ドデカンチオールがビスフェノールCを生成する反応で反応した成分であり、ビスフェノールC生成物中に残存したものである。
【0111】
分光色差計用の試験管に該ビスフェノールC生成物15gを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、ビスフェノールC生成物の溶融液を調製した。加熱開始から15分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は5であった。該溶融液を更に2時間加熱した後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は20であった。
【0112】
[実施例6]
温度計、撹拌機及び100mLの滴下ロートを備えたフルジャケット式1Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26.2g(モル)を入れた後に、92質量%硫酸58.5g(0.6モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン58.5g、オルトクレゾール192g(1.8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにシクロヘキサノン71.8g(0.7モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。シクロヘキサノンの滴下終了後、5時間、50℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下相の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下相の水相pHが9以上になったことを確認した。下相の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を用いて測定したところ、Negativeモードでマスナンバー295(M+-1)が観測され、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサンの生成量を確認したところ、70.8面積%であった。エバポレータを用いて、残りの有機相から溶媒を留去し、トルエンとアセトンを用いて再結晶を2回繰り返すことで、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン生成物90gを得た。ガスクロマトグラフで該1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン生成
物に含まれるドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド(C12SoCRS)の量を確認したところ、1500質量ppmであった。
【0113】
分光色差計用の試験管に該1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン生成物7.5g及び炭酸ジフェニル7.5gを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、溶融液を調製した。加熱開始から15分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は40であった。該溶融液を更に2時間加熱した後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は55であった。
【0114】
[実施例7]
温度計、撹拌機及び100mLの滴下ロートを備えたフルジャケット式1Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26g(0.8モル)を入れた後に、90質量%硫酸58.5g(0.5モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン60g、オルトクレゾール197.0g(1.8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。そこに9-フルオレノン136g(0.8モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。その後、2時間、50℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下相の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下相の水相pHが9以上になったことを確認した。下相の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーを測定したところ、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが生成していることがわかった。その生成量は、85.6面積%であった。エバポレータを用いて、残りの有機相から溶媒を留去し、トルエンとアセトンを用いて再結晶を2回繰り返すことで、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン生成物116gを得た。ガスクロマトグラフで該9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン生成物に含まれるドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド(C12SoCRS)の量を確認したところ、3000質量ppmであった。
【0115】
分光色差計用の試験管に該9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン生成物7.5g及び炭酸ジフェニル7.5gを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、溶融液を調製した。加熱開始から15分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は225であった。該溶融液を更に2時間加熱した後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は250であった。
【0116】
[比較例3]
分光色差計用の試験管に試薬の1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン7.5g及び炭酸ジフェニル7.5gを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、溶融液を調製した。加熱開始から15分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は200であった。該溶融液を更に2時間加熱した後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は250であった。
なお、ビスフェノール中のアリールアルキルスルフィドの含有量を正確に求めるため、以下の濃縮を行った。該ビスフェノール組成物20g、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.0mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。得られた溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、ガラスフィルターと受器を設置して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用
いて、該固体から液体1gを抽出した。この抽出操作を10回行い、得られた液10gを100mLのフラスコに入れ、減圧下、軽沸成分を留去したところ、固体が得られた。得られた固体に、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.0mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。得られた溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、ガラスフィルターと受器を世知して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。上記のようにビスフェノールC組成物を濃縮した後に、アリールアルキルスルフィドの分析を行った。しかし、検出限界の0.5質量ppb未満であり、アリールアルキルスルフィドは検出できなかった。
【0117】
[比較例4]
分光色差計用の試験管に試薬の9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン7.5g及び炭酸ジフェニル7.5gを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、溶融液を調製した。加熱開始から15分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は測定装置の上限値である500であった。上限値であることから、更に加熱してハーゼン色数を測定することを断念した。
なお、ビスフェノール中のアリールアルキルスルフィドの含有量を正確に求めるため、以下の濃縮を行った。該ビスフェノール組成物20g、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.0mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。得られた溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、ガラスフィルターと受器を設置して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。この抽出操作を10回行い、得られた液10gを100mLのフラスコに入れ、減圧下、軽沸成分を留去したところ、固体が得られた。得られた固体に、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.0mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。得られた溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、ガラスフィルターと受器を世知して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。上記のようにビスフェノールC組成物を濃縮した後に、アリールアルキルスルフィドの分析を行った。しかし、検出限界の0.5質量ppb未満であり、アリールアルキルスルフィドは検出できなかった。
【0118】
実施例5~7及び比較例1、3、4について、ビスフェノール生成物に含まれるC12SoCRSの濃度、15分後及び2時間後の溶融液のハーゼン色数、2時間後-15分後の溶融液のハーゼン色数差を表2に纏めた。表2より、ビスフェノールを生成する反応において、(ジ)スルフィドを生成させ、ビスフェノール生成物に含有させることで溶融時の色調を安定化できることが分かる。
【0119】
【表2】
[実施例8]
温度計、撹拌機及び100mLの滴下ロートを備えたフルジャケット式1Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール35.0g(1.1モル)を入れた後に、88質量%硫酸79.2g(0.7モル)をゆっくり加えた。その後、反応器にトルエン72.6g、オルトクレゾール255.0g(2.4モル)及びドデカンチオール7.3g(0.04モル)をセパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにアセトン57.0g(1.0モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、反応液の色は橙色であった。この反応液を15時間、50℃で反応させた。反応終了後、トルエン135.0g及び脱塩水175.5gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していたものが有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下相の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下相の水相pHが9以上になったことを確認した。下相の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は87モル%であった。また、該有機相の一部を取出し、ガスクロマトグラフィーで生成したジドデシルジスルフィド(C12SSC12)及びドデシル(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド(C12SoCRS)の量を確認したところ、各々61面積%と24面積%であった(該面積%は、C12SSC12、C12SoCRS及びドデカンチオールの面積の合計が100面積%となるように算出)。この有機相を80~30℃まで冷却して、30℃に到達時にした時に種晶ビスフェノールC 1gを添加させて析出を確認した。その後、10℃まで冷却して10℃到達後、遠心分離機(毎分2500回転で10分間)を用いて濾過を行い、ウェットケーキとして粗ビスフェノールC生成物241.2gを得た。
【0120】
温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1Lのセパラブルフラスコに、前記粗ビス
フェノールC生成物全量とトルエン449gを入れ、80℃に昇温した。均一溶液となったことを確認して、10℃まで冷却した。その後、遠心分離機(毎分2500回転で10分間)を用いて濾過を行い、ウエット精ビスフェノールC生成物を得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、ビスフェノールC生成物190.1gを得た。
【0121】
該ビスフェノール組成物C20g、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。得られた溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、ガラスフィルターと受器を設置して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。この抽出操作を10回行い、得られた液10gを100mLのフラスコに入れ、減圧下、軽沸成分を留去したところ、固体が得られた。得られた固体に、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。得られた溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、ガラスフィルターと受器を設置して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。上記のようにビスフェノールC組成物を濃縮した後に、アリールアルキルスルフィド(C12SoCRS)の分析を行ったところ、0.2質量ppm検出した。この結果より、該ビスフェノールC生成物に含まれるC12SoCRSの量はビスフェノールCの純分に対して約1質量ppbと見積もられた。該C12SoCRSは、ドデカンチオールがビスフェノールCを生成する反応で反応した成分であり、ビスフェノールC生成物中に残存したものである。
【0122】
分光色差計用の試験管に該ビスフェノールC生成物15gを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、ビスフェノールC生成物の溶融液を調製した。加熱開始から15分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は5であった。該溶融液を更に2時間加熱した後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は20であった。つまり、2時間後-15分後のハーゼン色数差(APHA)は15であった。