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特開2023-160866ペリクルフレーム、ペリクル、ペリクル付フォトマスク、露光方法、半導体の製造方法及び液晶ディスプレイの製造方法
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  • 特開-ペリクルフレーム、ペリクル、ペリクル付フォトマスク、露光方法、半導体の製造方法及び液晶ディスプレイの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160866
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ペリクルフレーム、ペリクル、ペリクル付フォトマスク、露光方法、半導体の製造方法及び液晶ディスプレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/64 20120101AFI20231026BHJP
【FI】
G03F1/64
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138970
(22)【出願日】2023-08-29
(62)【分割の表示】P 2021102979の分割
【原出願日】2017-10-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】簗瀬 優
(57)【要約】
【課題】EUV露光技術を使用して、フォトレジスト膜に10nm以下の微細パターンを形成する場合において、ペリクル膜にシワが入ったり、ペリクルフレームからペリクル膜が剥がれたり、破れたり、割れてしまう事態を有効に防止することができ、そのうえ、軽量で破損する危険性の少ないペリクルフレーム及びそれを用いたペリクルを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、線膨張係数が10×10-6(1/K)以下であり、且つ、密度が4.6g/cm3以下の金属又は合金からなることを特徴とするペリクルフレーム、及び、該ペリクルフレームを構成要素として含むことを特徴とするペリクルを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線膨張係数が10×10-6(1/K)以下であり、且つ、密度が4.6g/cm3以下の金属又は合金を材質とし、EUV露光用であることを特徴とするペリクルフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI、超LSIなどの半導体デバイス、プリント基板、液晶ディスプレイ等を製造する際のゴミ除けとして使用されるリソグラフィー用ペリクルに関する。
【背景技術】
【0002】
LSI、超LSI等の半導体デバイスや液晶ディスプレイ等を製造する際、半導体ウェハー或いは液晶用原板に光を照射してパターンを作製するが、このときに用いるフォトマスク或いはレチクル(以下、これらを単に「フォトマスク」と記述する。)にゴミが付着していると、パターンのエッジががさついたものとなるほか、下地が黒く汚れたりするなど、得られる製品の寸法、品質、外観等が損なわれるという問題があった。
【0003】
このため、パターンの作製作業は通常クリーンルーム内で行われているが、それでもフォトマスクを常に清浄に保つことは難しい。そこで、フォトマスク表面にゴミ除けとしてペリクルを貼り付けた後に露光が行われている。この場合、異物はフォトマスクの表面には直接付着せず、ペリクル膜上に付着するため、リソグラフィー時に焦点をフォトマスクのパターン上に合わせておけば、ペリクル膜上の異物は転写に無関係となる。
【0004】
一般に、ペリクルは光を良く透過させるニトロセルロース、酢酸セルロース、フッ素樹脂等からなる透明なペリクル膜を、アルミニウム、ステンレス、ポリエチレン等からなるペリクルフレームの上端面にペリクル膜の良溶媒を塗布した後、風乾して接着するか(特許文献1参照)、アクリル樹脂やエポキシ樹脂等の接着剤で接着している(特許文献2,3参照)。さらに、ペリクルフレームの下端には、フォトマスクに貼り付けるための、ポリブテン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等からなる粘着剤層、及び粘着剤層の保護を目的とした離型層(セパレータ)が設けられている。
【0005】
そして、このようなペリクルをフォトマスクの表面に取り付けて、フォトマスクを介して半導体ウエハー或いは液晶用原版に形成されたフォトレジスト膜を露光する場合には、ゴミなどの異物は、ペリクルの表面に付着しフォトマスクの表面には直接付着しないため、フォトマスクに形成されたパターン上に焦点が位置するように露光用の光を照射すれば、ゴミなどの異物の影響を回避することが可能になる。
【0006】
ところで、近年では、半導体デバイス及び液晶ディスプレイは、ますます高集積化、微細化してきているのが実情である。現在では、32nm程度の微細パターンをフォトレジスト膜に形成する技術も実用化されつつある。32nm程度のパターンであれば、半導体ウエハー或いは液晶用原版と投影レンズとの間を超純水などの液体で満たし、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザーを用いて、フォトレジスト膜を露光する液浸露光技術や二重露光などの従来のエキシマレーザーを用いた改良技術によって対応可能である。
【0007】
しかし、次世代の半導体デバイスや液晶ディスプレイにはさらに微細化した10nm以下のパターン形成が要求されており、このような微細化した10nm以下のパターン形成のためには、もはや、従来のエキシマレーザーを用いた露光技術の改良では対応することは不可能である。
【0008】
そこで、10nm以下のパターンを形成するための方法として、13.5nmを主波長とするEUV(Extreme Ultra Violet)光を使用したEUV露光技術が本命視されている。このEUV露光技術を使用して、フォトレジスト膜に10nm以下の微細なパターンを形成する場合には、どのような光源を用いるか、どのようなフォトレジストを用いるか、どのようなペリクルを用いるかなどの技術的課題を解決することが必要であり、これら技術的課題のうち、新たな光源と新たなフォトレジスト材料については、開発が進み、種々の提案がなされている。
【0009】
半導体デバイス或いは液晶ディスプレイの歩留りを左右するペリクルについては、例えば、特許文献3には、EUVリソグラフィーに用いるペリクル膜として、透明で光学的歪みを生じない厚さ0.1~2.0μmのシリコン製フィルムが記載されているものの、実際に適用するには未解決な問題も残っており、EUV露光技術を実用化する上で大きな障害となっているのが実情である。
【0010】
従来、ペリクルを構成するペリクルフレームの材質については、i線(波長365nm)、フッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザー光(波長248nm)、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザー光(波長193nm)を用いた露光においては、その剛性と加工性のみを考慮して選択されており、通常、アルミニウム、ステンレス、ポリエチレンなどが使用されている。
【0011】
一方、フォトマスクの材質については、通常、石英ガラスが使用されることが多く、また、ペリクル膜にはi線用、KrF用、ArF用であれば、ニトロセルロース、酢酸セルロース或いはフッ素樹脂など、EUV用としては、シリコンなど、光源に応じた透明膜が使用される。
【0012】
しかしながら、EUV露光技術を使用して、フォトレジスト膜に10nm以下の微細なパターンを形成する場合に、従来のペリクルを使用すると、ペリクル膜にシワが入ってしまったり、ペリクル用フレームからペリクル膜が剥がれてしまったり、破れてしまったり、割れてしまう。
【0013】
特許文献4では、ペリクル膜の膜シワ発生や破損は、露光時の光エネルギーによる温度上昇によって生じ得るペリクルフレームの伸縮、歪みが原因であることを見出し、線膨張係数10×10-6(1/K)以下の材質をフレームに使用することが提案されている。
【0014】
しかしながら、熱膨張係数の低いSi、SiO2、SiC、SiNなどの材料は脆く加工が難しいという問題がある。特に、EUVペリクルは、EUV露光装置内のペリクル配置スペースが小さいために高さを2.5mm以下にする必要がある。
【0015】
また、通常、ペリクルのペリクルフレーム側面には、ハンドリングやペリクルをフォトマスクから剥離する際に用いられる治具穴や、ペリクル内外の圧力差を緩和するための通気部が設けられる。また、EUVリソグラフィーでは、露光装置内を真空にするため、EUV用ペリクルは大気圧から真空への圧力変化に耐える必要があり、EUVペリクルの通気部は大面積であることが要求される。
【0016】
例えば、EUVペリクルのペリクルフレームの厚みは2.5mmよりも小さくなるが、Si、SiO2、SiC、SiNなどの材料から成るペリクルフレームの側面に直径1mmの穴を設けようとした場合には、ペリクルフレームの穴近傍の厚みが小さくなることもあり、穴の加工時やペリクルの剥離時に、ペリクルフレームが破損する可能性が高い。通気部の大面積化が求められれば、さらに破損の可能性が高まることになる。
【0017】
そこで、熱膨張係数の低い材料としてインバーのような金属を用いることも考えられる。金属や合金は加工が容易であり、ペリクルフレーム側面に穴を設けても破損しない。
【0018】
ところで、ペリクルフレームの幅は露光領域を広くとるためになるべく小さい方が好ましく、従来は2mm程度であった。ところが、EUVペリクルの場合は、ペリクルフレームの幅がペリクル膜により制限されて、3~4mm程度と大きくする必要があることがわかった。
【0019】
また、近年では、EUV製造のスループット向上を目的として、マスクステージのより高速な移動が要求されており、ペリクルの総重量は15g以下であることが求められる。
【0020】
ところが、幅が2mmから4mmになった場合、ペリクルフレームの体積は約2倍に、3mmでも約1.5倍にもなる。そうすると、インバーで作製したペリクルフレームでは重くなりすぎてしまうことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開昭58-219023号公報
【特許文献2】米国特許第4861402号明細書
【特許文献3】特公昭63-27707号公報
【特許文献4】特開2016-200616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、EUV露光技術を使用して、フォトレジスト膜に10nm以下の微細パターンを形成する場合において、ペリクル膜にシワが入ったり、ペリクルフレームからペリクル膜が剥がれたり、破れたり、割れてしまう事態を有効に防止することができ、そのうえ、軽量で破損する危険性の少ないペリクルフレーム及びそれを用いたペリクルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者は、ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームとして、線膨張係数が10×10-6(1/K)以下であり、且つ、密度が4.6g/cm3以下の金属又は合金を用いることにより、ペリクル膜にシワや破損を発生させず、更に軽量であるため最新のEUV露光技術に最適であることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0024】
従って、本発明は、以下のペリクルフレーム及びペリクルを提供する。
1.線膨張係数が10×10-6(1/K)以下であり、且つ、密度が4.6g/cm3以下の金属又は合金からなることを特徴とするペリクルフレーム。
2.上記金属又は合金が、チタン又はチタン合金である1記載のペリクルフレーム。
3.厚みが2.5mm未満である1又は2記載のペリクルフレーム。
4.側面に1個又は複数個の穴が設けられている1~3のいずれかに記載のペリクルフレーム。
5.1~4のいずれかに記載のペリクルフレームを構成要素として含むことを特徴とするペリクル。
【発明の効果】
【0025】
本発明のペリクルフレーム及びペリクルによれば、露光による光エネルギーによってペリクルフレームの温度が上昇しても、ペリクルフレームの伸縮、歪みを小さく抑えることができ、ペリクル膜にシワや破損を発生させないものである。また、本発明のペリクルフレーム及びペリクルは、加工性に優れるため歩留りの向上が見込め、通気部の面積を大きくとることもでき、更には、ペリクル剥離時などに破損する危険性も少なく、軽量であるため最新のEUV露光技術に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のペリクルフレームの一実施形態を示す模式図(実施例)であり、(A)は下端面側から見た図であり、(B)は長辺外側面側から見た図であり、(C)は短辺外側面側から見た図である。
図2】本発明のペリクルフレームの他の実施形態を示す模式図であり、(A)は下端面側から見た図であり、(B)は長辺外側面側から見た図であり、(C)は短辺外側面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のペリクルフレームは、通常、ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する。また、その形状はペリクルを装着するフォトマスクの形状に対応した枠状である。一般的には、四角形(長方形又は正方形)枠状である。
【0028】
ペリクルフレームには、ペリクル膜を設けるための上端面と、フォトマスク装着時にフォトマスクに面する下端面があり、通常、上端面には、接着剤等を介してペリクル膜が設けられ、下端面には、ペリクルをフォトマスクに装着するための粘着剤等が設けられるが、この限りではない。
【0029】
ペリクルフレームの寸法は、特に限定されないが、EUV用ペリクルの高さは2.5mm以下に制限されることから、EUV用のペリクルフレームの厚みはそれよりも小さくなり2.5mm未満である。実際には、ペリクル膜やマスク粘着剤等の厚みを勘案すると、2.0mm以下であることが好ましく、1.6mm以下であることがより好ましい。
【0030】
また、ペリクルとしての機能を十分に発揮するためには、高さが1.5mm以上必要である。そうすると、EUV用のペリクルフレームの厚みは、ペリクル膜やマスク粘着剤等の厚みを勘案すると、1.0mm以上であることが好ましい。
【0031】
さらに、通常、ペリクルフレーム側面には、ハンドリングやペリクルをフォトマスクから剥離する際に用いられる治具穴や、ペリクル内外の圧力差を緩和するための通気部が設けられる。また、EUVリソグラフィーでは、露光装置内を真空にするため、EUV用ペリクルは大気圧から真空への圧力変化に耐える必要があり、EUVペリクルの通気部はなるべく大面積であることが好ましい。
【0032】
したがって、ペリクルフレームの側面には、穴が設けられることが好ましく、治具穴や通気孔の大きさはフレームの厚み方向の長さ(円形の場合は直径)が0.5~1.0mmである。穴の形状に制限はなく、円形や矩形であっても構わない。また、通常、治具穴は外側面から内側面に貫通しない穴であり、通気孔は外側面から内側面に貫通する穴となっている。
【0033】
ペリクルフレームの側面に穴を設ける場合、加工上の制約やフレームの強度を保つため、加工穴の周囲には少なくとも0.2mmのマージンが必要である。大きさがフレームの厚み方向の長さで1.0mm以上の治具穴や通気孔を設けようとすれば、フレームの厚みは1.4mm以上であることが好ましい。
【0034】
EUVペリクルフレームの寸法は、通常、外寸で長辺の長さが145~152mm、短辺の長さが113~120mm、厚みが1.0~2.0mmであり、幅は3.0~4.0mmである。また、ペリクルフレームの体積は3.2cm3以下であることが好ましく、2.6cm3以下であることがより好ましい。
【0035】
本発明において、ペリクルフレームの材料は、線膨張係数が10×10-6(1/K)以下、且つ、密度が5g/cm3以下の金属又は合金を用いる。
【0036】
本発明では、ペリクルフレームの材料として金属又は合金を用いることにより、0.2mmのマージンでも側面に穴を設けることができる。例えば、厚み1.5mmのペリクルフレームの側面に直径1.0mmの穴を設けられる。このとき穴の上下のマージンは、0.25mmである。
【0037】
なお、シリコン単結晶のような脆性材料からなるペリクルフレームに、穴を形成する場合には、穴の周囲に少なくとも0.5mmのマージンが必要である。したがって、厚み1.5mmのペリクルフレームの側面には、直径0.5mmまでの穴しか形成できない。これでは、EUVペリクルとしては通気部の大きさが不十分となるおそれがある他、直径0.5mmの治具穴で確実に保持や剥離するためには、穴の個数を増やす必要があり、歩留りも低下する。更に、マージンが0.5mmあっても剥離時のように大きな力がかかる際は破損する可能性が高い。
【0038】
本発明では、ペリクルフレームの材料の線膨張係数が10×10-6(1/K)以下であり、この範囲内であれば、露光時の光エネルギーによる温度上昇によって生じ得るペリクルフレームの伸縮、歪みを十分に小さく抑えることができ、ペリクル膜にシワや破損を発生させずに済む。
【0039】
また、本発明では、ペリクルフレーム材料である金属又は合金の密度は4.6g/cm3以下である。この密度の範囲内であれば、体積が3.2cm3以下のペリクルフレームにおいて、重量を15g以下にすることが可能となる。但し、ペリクルフレームの体積が2.6cm3超える場合には、ペリクルフレーム以外のペリクル膜やマスク粘着剤の重量を3g以下にする必要がある。したがって、ペリクルフレームの体積は2.6cm3以下とすることが好ましく、密度もより好ましくは4.5g/cm3以下である。
【0040】
このような金属又は合金としては、チタンやTi-V-Al合金、Ti-V-Cr-Sn-Al合金等のチタン合金が挙げられ、これらを用いることが好ましい。
【0041】
本発明のペリクルでは、上記のペリクルフレームの上端面に、粘着剤又は接着剤を介して、ペリクル膜が設けられる。粘着剤や接着剤の材料に制限はなく、公知のものを使用することができる。例えば、ペリクル膜の良溶媒を塗布した後、風乾して接着してもよいし、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の接着剤や粘着剤を用いてもよい。
【0042】
また、ペリクル膜の材質に制限はないが、露光光源の波長における透過率が高く耐光性の高いものが好ましい。例えば、エキシマレーザー用としては非晶質フッ素ポリマー等を用いることができる。非晶質フッ素ポリマーの例としては、サイトップ[旭硝子株式会社製:商品名]、テフロン(登録商標)AF[デュポン株式会社製:商品名]等が挙げられる。
【0043】
また、EUV露光に対しては単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンから構成される極薄シリコン膜や炭素膜等が用いられる。ペリクル膜には、SiC、SiO2、Si34、SiON、Y23、YN、Mo、Ru及びRhなどの保護膜を備えてもよい。
【0044】
更にペリクルフレームの下端面には、フォトマスクに装着するための粘着剤が形成される。マスク粘着剤としては、公知のものを使用することができ、ポリブテン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、SEBS(ポリ(スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン))樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等からなる粘着剤を使用することができる。特にアクリル樹脂、シリコーン樹脂からなる粘着剤が好ましい。
【0045】
ペリクル膜接着剤、及びマスク粘着剤の塗布は、例えば、ディップ、スプレー、刷毛塗り、ディスペンサーによる塗布装置等にて行うことができるが、ディスペンサーによる塗布装置を使用した塗布が、安定性、作業性、歩留り等の点から好ましい。
【0046】
また、粘着剤や接着剤は、一般的にペリクルフレーム端面の周方向全周に亘って、ペリクルフレーム幅と同じ又はそれ以下の幅に形成される。
【0047】
さらに、ペリクル膜接着剤、及びマスク粘着剤の粘度が高くて塗布装置による塗布が困難な場合には、必要に応じて、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、イソパラフィン等の脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジイソプルピルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤を添加することができる。
【0048】
マスク粘着剤の下端面には、粘着剤を保護するための離型層(セパレータ)が貼り付けられていてもよい。離型層の材質は、特に制限されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)等を使用することができる。また、必要に応じて、シリコーン系離型剤やフッ素系離型剤等の離型剤を離型層の表面に塗布してもよい。
【0049】
ペリクルフレームに外側面から内側面に貫通する穴を設けた場合は、パーティクル除去の目的で除塵用フィルターが設けられてもよい。フィルターは穴の内部に設置されていてもよいし、穴の開口部を覆うように側面に設置されてもよい。
【0050】
なお、EUV用ペリクルフレームでは、通気孔の開口部の面積が合計で5mm2以上とすることが好ましく、10mm2以上とすることがより好ましい。通気孔は、例えば、下端面に凹部ができるように外側面から内側面に向かって貫通させてもよい。
【0051】
ここで、図1及び図2は、本発明のペリクルフレーム2を構成要素として含むペリクル1の一例を示す。ペリクルフレーム2の上端面には接着剤5によりペリクル膜3が接着,張設されている。また、ペリクルフレーム2の下端面には、フォトマスク(特に図示せず)に装着するための粘着剤4が設けられている。また、図中、符号6は通気孔であり、図2のペリクルフレームは、図1とは異なり通気孔が下端面に凹部6ができるように形成されている。なお、符号7は、通常、治具を使ってフォトマスクからペリクルを剥離するために形成される治具穴を示す。
【実施例0052】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0053】
[実施例1]
チタン(線膨張係数:8.4×10-6(1/K)、密度:4.5g/cm3)製のペリクルフレーム(外寸150mm×118mm×1.5mm、フレーム幅3.0mm)を作製した。
【0054】
ペリクルフレーム長辺の外側面に、辺中央からコーナー方向へ52mm離れた2箇所に、直径1mm×奥行1.2mmの治具穴を設けた。また、長辺中央からコーナー方向へ10mm、30mm、65mm離れた6箇所と、短辺中央からコーナー方向へ10mm、30mm離れた4箇所に貫通孔を設けた。
【0055】
このペリクルフレームを中性洗剤と純水により洗浄して乾燥させた後、フレーム上端面と下端面にシリコーン粘着剤(信越化学工業(株)製X-40-3264)を全周に渡り塗布した。
【0056】
その後、ペリクルフレームを90℃で12時間加熱して、上下端面の粘着剤を硬化させた。続いて、ペリクル膜として極薄シリコン膜を、フレーム上端面に形成した粘着剤に圧着させて、ペリクルを完成させた。
【0057】
ここで、ペリクルフレームの体積は約2.4cm3であり、ペリクル膜と粘着剤の合計重量は約3.1gである。
【0058】
[実施例2]
ペリクルフレームの材料として、チタンとアルミとバナジウムの合金であるTi-Al6-V4チタン合金(線膨張係数:8.8×10-6(1/K)、密度:4.4g/cm3)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にペリクルを作製した。
【0059】
[比較例1]
ペリクルフレームの材料として、石英ガラス(SiO2)(線膨張係数:0.5×10-6(1/K)、密度:2.2g/cm3)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にペリクルを作製した。
【0060】
ここでは、ペリクルフレームに治具穴又は貫通孔を設ける際に、10個中7個が破損してしまった。また、後述するヒートサイクル試験後に、剥離治具を用いて石英基板からペリクルを剥離しようとすると、治具穴が破損してしまった。
【0061】
[比較例2]
ペリクルフレームの材料として、窒化ケイ素(Si34)(線膨張係数:2.8×10-6(1/K)、密度:3.2g/cm3)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にペリクルを作製した。
【0062】
ここでは、ペリクルフレームに治具穴又は貫通孔を設ける際に、10個中9個が破損してしまった。また、後述するヒートサイクル試験後に、剥離治具を用いて石英基板からペリクルを剥離しようとすると、治具穴が破損してしまった。
【0063】
[比較例3]
ペリクルフレームの材料として、インバー(Fe-Ni36)(線膨張係数:1.5×10-6(1/K)、密度:8.1g/cm3)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にペリクルを作製した。
【0064】
[比較例4]
ペリクルフレームの材料として、アルミ(Al)(線膨張係数:23×10-6(1/K)、密度:2.7g/cm3)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にペリクルを作製した。
【0065】
実施例1、2、比較例1~4で作製したペリクルについて、以下に示すヒートサイクル試験を実施した。表1には、各材料のペリクルフレームとしての加工性、ヒートサイクル試験結果、ペリクル重量、及び、各ペリクルの総合評価結果を示す。
【0066】
[ヒートサイクル試験]
石英基板に貼り付けたペリクルを、オーブンで200℃に加熱して24時間静置した後、さらに室温で24時間静置する、というサイクルを5回繰り返した。その後、ペリクルの状態を目視にて確認した。
【0067】
【表1】
【0068】
表1の結果によれば、実施例1、2のペリクルは、ヒートサイクル試験結果、加工性ともに良好であり、ペリクル重量も15g以下に抑えることができた。
一方、比較例1、2のペリクルは、加工性に問題があり、側面部に穴を設けるのが困難であった。
比較例3のペリクルは、ヒートサイクル試験結果、加工性ともに良好であったが、ペリクル重量が15gを超えてしまうため、EUVリソグラフィーに適用することができない。
比較例4のペリクルフレームは、ヒートサイクル試験によるペリクル用フレームの伸縮が大きく、ペリクル膜に割れが生じてしまった。
【符号の説明】
【0069】
1 ペリクル
2 ペリクルフレーム
3 ペリクル膜
4 フォトマスク粘着剤
5 ペリクル膜接着剤
6 通気孔
7 治具穴
図1
図2