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特開2023-160883芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール組成物及びその製造方法、ポリカーボネート樹脂及びその製造方法、並びに、ビスフェノールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160883
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール組成物及びその製造方法、ポリカーボネート樹脂及びその製造方法、並びに、ビスフェノールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/20 20060101AFI20231026BHJP
   C07C 39/16 20060101ALI20231026BHJP
   C07C 309/42 20060101ALI20231026BHJP
   C07C 39/15 20060101ALI20231026BHJP
   C08G 64/04 20060101ALI20231026BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231026BHJP
【FI】
C07C37/20
C07C39/16
C07C309/42
C07C39/15
C08G64/04
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140374
(22)【出願日】2023-08-30
(62)【分割の表示】P 2019537662の分割
【原出願日】2018-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2017159687
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017234313
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 馨
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小西 利恵
(72)【発明者】
【氏名】廣渡 和生
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴治
(57)【要約】
【課題】芳香族アルコールスルホン酸塩を特定量含有するビスフェノール組成物及びその簡便な製造方法を提供する。また、上記芳香族アルコールスルホン酸塩を特定量含有するビスフェノール組成物を使用することにより、溶融重合反応を効率的に進行させ、色調に優れたポリカーボネート樹脂を製造できるポリカーボネート樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】ビスフェノールに対して0.1質量ppb以上の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール組成物。また、ケトン又はアルデヒドと芳香族アルコールとを、硫酸の存在下で反応させて当該ビスフェノール組成物を製造するビスフェノール組成物の製造方法。また、当該ビスフェノール組成物を用いてポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート樹脂の製造方法。また、特定量の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するポリカーボネート樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトン又はアルデヒドと芳香族アルコールとを、硫酸の存在下で反応させて、ビスフェノール組成物を製造し、
前記組成物中のビスフェノールの含有量が95.0質量%以上であり、
前記組成物が、前記ビスフェノールに対して1質量ppb以上の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有する、
ビスフェノール組成物の製造方法。
【請求項2】
前記ビスフェノールに対する炭酸ジフェニルの物質量比が1.1である前記ビスフェノールと前記炭酸ジフェニルとの混合物を、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した後に得られる反応液中のフェノール生成率が0.3面積%以上である請求項1に記載のビスフェノール組成物の製造方法。
【請求項3】
前記芳香族アルコールスルホン酸塩が、一般式(1)及び/又は一般式(2)に示される化合物を含む、請求項1又は2に記載のビスフェノール組成物の製造方法。
【化1】


(式中、R1~R4はそれぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示す。Xは、金属原子を示す。)
【化2】
(式中、R5~R8はそれぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示す。Xは、金属原子を示す。)
【請求項4】
前記一般式(1)及び/又は一般式(2)のXがナトリウム原子又はカリウム原子である、請求項3に記載のビスフェノール組成物の製造方法。
【請求項5】
前記ビスフェノールに対する芳香族アルコールスルホン酸塩の含有量が、1.0質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のビスフェノール組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のビスフェノール組成物の製造方法によりビスフェノール組成物を製造し、得られたビスフェノール組成物を反応させてポリカーボネート樹脂を製造する、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項7】
樹脂中に、1質量ppb以上の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有する、ポリカーボ
ネート樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール組成物及びその製造方法に関する。また、該ビスフェノール組成物を用いたポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。また、芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するポリカーボネート樹脂に関する。さらに、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとの反応からビスフェノールを生成するビスフェノールの製造方法に関する。
本発明の一実施形態であるビスフェノール組成物は、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として有用である。代表的なビスフェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンなどが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、ビスフェノールの製法として、例えば塩化水素ガスを触媒とする製造方法(特許文献2)、塩酸を触媒とする製造方法(特許文献1)、塩酸と硫酸の混合物を触媒とする製造方法(特許文献3)、硫酸を触媒とする製造方法(特許文献4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-214248号公報
【特許文献2】特開昭62-138443号公報
【特許文献3】特開2014-40376号公報
【特許文献4】特開2015-51935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが特許文献1に記載の方法で2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンを製造し、得られた2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンを用いて、溶融重合反応によりポリカーボネート樹脂を製造したところ、該溶融重合反応が期待通り進行しなかった。また、該ポリカーボネート樹脂を製造するためには、該溶融重合反応における触媒量を増加させることが必要であることが判明した。更に、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンの製造ロットによって、該溶融重合反応を進行させるための触媒の増加量にばらつきが生じてしまい、安定的に該溶融重合反応を実施して目的のポリカーボネート樹脂を製造することは困難であった。
【0006】
本発明の第1の課題は、このような事情に鑑みなされたものであって、芳香族アルコールスルホン酸塩を特定量含有するビスフェノール組成物及びその簡便な製造方法を提供することである。また、上記芳香族アルコールスルホン酸塩を特定量含有するビスフェノール組成物を使用することにより、溶融重合反応を効率的に進行させ、ポリカーボネート樹脂を製造できるポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することである。さらに、芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するポリカーボネート樹脂を提供することである。
【0007】
また、塩化水素ガスを触媒とする製造方法(特許文献2)は、ビスフェノールの汎用性の高い製造方法として知られているが、該塩化水素ガスは腐食性が高く、工業的に実施する場合は専用の設備が必要である。塩酸を触媒とする製造方法(特許文献1)は、塩化水素ガスを触媒とする製造方法より塩化水素の取扱い量は少ないが、濃塩酸は、腐食性があり取扱いが容易ではない。また、反応時間を要する問題がある。また、塩酸と硫酸の混合物を触媒とする製造方法(特許文献3)は、塩酸を使用しているため腐食性の問題がある。硫酸を触媒とする製造方法(特許文献4)では、フェノールのスルホン化等の副反応が起こりやすく、それを抑制するために種々の溶媒を比較的多量に使用する必要がある(非特許文献1)。また、硫酸を用いる必要があり、そのため原料であるケトン類やアルデヒド類が縮合(多量化)などの副反応が起き、着色成分となることが知られている。さらに、本発明者らが検討した結果、ビスフェノールの反応液が固化し、反応時間を要するという問題が発生することが判明した。
【0008】
本発明の第2の課題は、このような事情に鑑みなされたものであって、樹脂原料や顕色剤として使用した場合にも色相を損なうことのなく、副生物の少ない、簡便で、効率的で、工業的に有利なビスフェノールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記第1の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定量の芳香族アルコールスルホン酸塩を含むビスフェノール組成物を用いることによって、効率的にポリカーボネート樹脂を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、上記第一の課題を解決する本発明の要旨は、以下の[1]~[9]に存する。
[1] ビスフェノールに対して0.1質量ppb以上の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール組成物。
[2] 前記ビスフェノールに対する炭酸ジフェニルの物質量比が1.1である前記ビスフェノールと前記炭酸ジフェニルとの混合物を、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した後に得られる反応液中のフェノール生成率が0.3面積%以上である[1]に記載のビスフェノール組成物。
[3] 前記芳香族アルコールスルホン酸塩が、一般式(1)及び/又は一般式(2)に示される化合物を含む、[1]又は[2]に記載のビスフェノール組成物。
【化1】


(式中、R1~R4はそれぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示す。Xは、金属原子を示す。)
【化2】


(式中、R5~R8はそれぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示す。Xは、水素原子又は金属原子を示す。)
[4] 前記一般式(1)及び/又は一般式(2)のXがナトリウム原子又はカリウム原子である、[3]に記載のビスフェノール組成物。
[5] ビスフェノールに対する芳香族アルコールスルホン酸塩の含有量が、1.0質量%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のビスフェノール組成物。
[6] 組成物中のビスフェノールの含有量が95.0質量%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のビスフェノール組成物。
[7] ケトン又はアルデヒドと芳香族アルコールとを、硫酸の存在下で反応させて、[1]~[6]のいずれかに記載のビスフェノール組成物を製造する、ビスフェノール組成物の製造方法。
[8] [1]~[6]のいずれかに記載のビスフェノール組成物を反応させてポリカーボネート樹脂を製造する、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
[9] 樹脂中に、1質量ppb以上の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有する、ポリカーボネート樹脂。
【0011】
本発明者らは、上記第2の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、硫酸と脂肪族アルコールを混合して得られた硫酸モノアルキルを触媒とするビスフェノールの製造方法を見出し、簡便で、効率的で、工業的に有利なビスフェノールの製造方法の発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、以下の[10]~[16]に存する。
[10] 芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとの反応からビスフェノールを生成する工程を有するビスフェノールの製造方法であって、前記反応に用いられる反応液が、有機相と水相とに分離しており、前記水相が硫酸モノアルキルを含有する、ビスフェノールの製造方法。
[11] 前記硫酸モノアルキルが、硫酸と脂肪酸アルコールとの反応から生成される、[10]に記載のビスフェノールの製造方法。
[12] 前記硫酸と前記脂肪酸アルコールとを混合して前記硫酸モノアルキルを生成させた後に、芳香族アルコールを含む反応液に前記硫酸モノアルキルが混合される、[11]に記載のビスフェノールの製造方法。
[13] 前記水相中における前記硫酸モノアルキルの濃度が、0.0001質量%以上50質量%以下である、[10]~[12]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[14] 前記ビスフェノールを生成する工程が、チオールの存在下で行われる、[10]~[13]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[15] 前記チオールと前記ケトン又は前記アルデヒドを混合させた後、前記硫酸モノアルキルを混合する、[14]に記載のビスフェノールの製造方法。
[16] [10]~[15]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法によりビスフェノールを製造し、得られたビスフェノールを反応させてポリカーボネート樹脂を製造
する、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一の態様によれば、芳香族アルコールスルホン酸塩を特定量含有するビスフェノール組成物及びその簡便な製造方法が提供される。
即ち、本発明によれば、ビスフェノールからのポリカーボネート樹脂製造における溶融重合反応を効率的に進行させることができ、かつ、色調に優れたポリカーボネート樹脂を製造できる芳香族アルコールスルホン酸塩を特定量含有するビスフェノール組成物を提供することができる。
また、芳香族アルコールスルホン酸塩を特定量含有するビスフェノール晶析用組成物を用いることで、洗浄における油水界面上の水泡消失時間を早めることができ、適切量の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール組成物を、簡便、かつ、生産性良く調製することができる、上記ビスフェノール組成物の製造方法が提供される。
さらには、溶融重合反応が効率的であり、かつ、製造されるポリカーボネート樹脂の色調に優れたポリカーボネート樹脂の製造方法、及び色調に優れたポリカーボネートを提供することができる。
【0014】
本発明の別の態様によれば、触媒として硫酸モノアルキルを用いることで、触媒の酸強度を制御し、原料のケトン類及びアルデヒド類の縮合(多量化)及び着色化を抑制し、副反応物の生成及び生成物の着色が低減されたビスフェノールを、簡便に効率よく、高収率で製造することが可能である。また、該ビスフェノールを用いて着色が低減されたポリカーボネートなどの高分子材料を製造することが可能である。
【0015】
このように、本発明によれば、様々なビスフェノールについて、簡便で、効率的で、工業的に有利なビスフェノールの製造方法を提供することができる。さらには、本発明の製造方法により製造されたビスフェノールを、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として用いることにより、これらの樹脂を効率よく製造することができ、また、着色による色相の低下を抑制して、物性に優れたポリカーボネート樹脂等の高分子材料を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0017】
[ビスフェノール組成物]
本発明の一実施形態であるビスフェノール組成物は、ビスフェノールに対して0.1質量ppb以上の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するものである。
このようなビスフェノール組成物は、ポリカーボネート樹脂等の高分子の原料として好適であり、効率的に重合反応を進行させ高分子を製造できるという効果が得られる。
【0018】
なお、ビスフェノール組成物は、ビスフェノールと、ビスフェノールに対して0.1質量ppb以上の芳香族アルコールスルホン酸塩を含むものである為、単に「ビスフェノール組成物」とも称すが、「芳香族アルコールスルホン酸塩を含むビスフェノール組成物」とも称すことができるものである。
【0019】
以下、ビスフェノール組成物の各成分について説明する。
【0020】
<芳香族アルコールスルホン酸塩>
「芳香族アルコールスルホン酸塩」とは、芳香族アルコールスルホン酸の塩であり、芳香族アルコールスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられる。
「芳香族アルコールスルホン酸」とは、芳香族炭化水素の有する水素原子の1つがヒドロキシル基(OH基)で置換され、芳香環の有する別の水素原子の1つがスルホン酸基(SO2OH基)で置換された化合物である。
また、芳香族アルコールスルホン酸は、置換基を有する構造(すなわち、OH基とSO2OH基以外の置換基を有する構造)であっても、無置換の構造であってもよい。
【0021】
また、芳香族アルコールスルホン酸塩の主骨格である芳香族炭化水素は、単環(ベンゼン環)であっても、多環(ナフタレン環やアントラセン環等)であってもよい。
芳香族アルコールスルホン酸塩は、好ましくは、ヒドロキシベンゼンスルホン酸である。なお、ヒドロキシベンゼンスルホン酸は、置換基を有してもよい。
この中でも、置換基を有してもよい、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸塩及び/又は2-ヒドロキシベンゼンスルホン酸塩であることがより好ましい。具体的には、芳香族アルコールスルホン酸塩は、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される化合物であることがより好ましい。
以下、下記一般式(1)及び一般式(2)について説明する。
【0022】
4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸塩としては、下記一般式(1)に示される、置換基を含んでいてもよい、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
【0023】
【化3】

【0024】
一般式(1)において、R1~R4としては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは置換あるいは無置換のいずれであってもよい。例えば、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨ-ド基等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等の炭素数3~12の環状アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基等の炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルコキシ基、ベンジル基等の置換基としてアリール基を有するアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等の置換基としてアルキル基を有していてもよいアリール基などが挙げられる。
【0025】
これらのうちR1~R4の炭素数が多いと、後述のビスフェノールの製造時に反応系内で副生させる場合においてヒドロキシベンゼンスルホン酸塩の親油性が増加し、界面活性剤の効果が低減し、ビスフェノールに対するベンゼンスルホン酸塩の残存量が増加し、ポリカーボネートの色調が悪化する傾向にある。R1~R4の炭素数が少ないと、ビスフェノールに対するベンゼンスルホン酸塩の残存量を少なく制御することが可能となり、ポリカーボネートの重合安定性が向上することから、好ましくは水素原子又は炭素数1~2のアルキル基である。
【0026】
一般式(1)において、R1~R4を有する4-ヒドロキシフェニル基であるアリール基としては、具体的には、4-ヒドロキシフェニル基(R1~R4が水素原子)、4-ヒドロキシトリル基(例えば、R1がメチル基でR2~R4が水素原子)、4-ヒドロキシキシリ
ル基(例えば、R1,R4がメチル基でR2,R3が水素原子)が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0027】
一般式(1)において、Xは、金属原子である。金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、セシウム原子などの周期表の1族元素が挙げられる。これらのうち、工業的に安価であることから好ましくはナトリウム原子又はカリウム原子であり、より好ましくはナトリウム原子であるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0028】
また、2-ヒドロキシベンゼンスルホン酸塩としては、下記一般式(2)に示される、置換基を有していてもよい、2-ヒドロキシベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
【0029】
【化4】

【0030】
一般式(2)において、R5~R8としては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは置換あるいは無置換のいずれであってもよい。例えば、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨ-ド基等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等の炭素数3~12の環状アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基等の炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルコキシ基、ベンジル基等の置換基としてアリール基を有するアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等の置換基としてアルキル基を有していてもよいアリール基などが挙げられる。
【0031】
これらのうちR5~R8の炭素数が多いと、後述のビスフェノールの製造時に反応系内で副生させる場合においてヒドロキシベンゼンスルホン酸塩の親油性が増加し、界面活性剤の効果が低減し、ビスフェノールに対するベンゼンスルホン酸塩の残存量が増加し、ポリカーボネートの色調が悪化する傾向にある。R1~R4の炭素数が少ないと、ビスフェノールに対するベンゼンスルホン酸塩の残存量を少なく制御することが可能となり、ポリカーボネートの重合安定性が向上することから、好ましくは水素原子又は炭素数1~2のアルキル基である。
【0032】
一般式(2)において、R5~R8を有する2-ヒドロキシフェニル基であるアリール基としては、具体的には、2-ヒドロキシフェニル基(R5~R8が水素原子)、2-ヒドロキシトリル基(例えば、R7がメチル基で,R5、R6、R8が水素原子)が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0033】
一般式(2)において、Xは、金属原子である。金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、セシウム原子などの周期表の1族元素が挙げられる。これらのうち、工業的に安価であることから好ましくはナトリウム原子又はカリウム原子であり、より好ましくはナトリウム原子であるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0034】
上記した一般式(1)又一般式(2)で表されるヒドロキシベンゼンスルホン酸塩としては、具体的には4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、2-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0035】
上記のうち、特に4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウムは後述のビスフェノールの製造において反応系内で副生させることでビスフェノール生成物中に含有させることができる点において好ましい。
【0036】
ビスフェノール組成物は、芳香族アルコールスルホン酸塩の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0037】
例えば、ビスフェノール組成物は、所定量の芳香族アルコールスルホン酸塩を含むものであるが、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸塩と2-ヒドロキシベンゼンスルホン酸塩とを合計でビスフェノールに対して1質量ppb以上、100質量ppm以下含むビスフェノール組成物であってもよい。
【0038】
なお、一般的に、特別な処理をしていない組成物中にはナトリウム元素が数十ppbオーダーで検出される。当該ナトリウム元素がスルホン酸と塩を形成しているか否かの判断は、炭酸ジフェニルと反応するか否かにより明確に判断することができる。つまり、スルホン酸塩が存在する場合には、炭酸ジフェニルとの反応が進行してビスフェノールが生成する一方で、スルホン酸塩が存在していない場合には、ビスフェノールは生成しない。
本発明においては、ビスフェノールに対する炭酸ジフェニルの物質量比が1.1である前記ビスフェノールと前記炭酸ジフェニルとの混合物を、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した後に得られる反応液中のフェノール生成率が0.3面積%以上であれば、本発明に要するスルホン酸塩が生成していると判断することができる。
【0039】
<ビスフェノール>
ビスフェノール組成物に含まれるビスフェノールは、通常、以下の一般式(3)で表さ
れる化合物である。
【0040】
【化5】

【0041】
上記一般式(3)において、R11,R12,R13,R14は同一であってもよく、異なるものであってもよい。また、一般式(3)中に2つずつあるR11,R12,R13,R14も互いに異なるものであってもよいが、合成上の利便性、入手の容易性から、各々2つのR11,R12,R13,R14は同一であることが好ましい。R11~R14としては、一般式(1)のR1~R4及び一般式(2)のR5~R8として例示したものと同様のものが挙げられ(R1
びR7がR11に、R2及びR8がR12に、R3及びR6がR13に、R4がR14にそれぞれ対応する。)、好ましいものも同様である。
【0042】
15,R16としては、それぞれに独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは置換あるいは無置換のいずれであってもよい。例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルへキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数1~20の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等の炭素数3~20の環状アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基等の炭素数1~20の直鎖又は分岐のアルコキシ基、ベンジル基等の置換基としてアリール基を有するアルキル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基等の置換基としてアルキル基を有していてもよいアリール基などが挙げられる。
【0043】
一般式(3)において、R15とR16は、2つの基の間で互いに結合又は架橋していてもよく、このようなR15,R16としては、例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどの連結基が挙げられる。
【0044】
ビスフェノール組成物に含まれるビスフェノールとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3
-メチルフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタンなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
この中でも好適なビスフェノールのひとつとして、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンが挙げられる。
【0045】
ビスフェノール組成物に含有される芳香族アルコールスルホン酸塩が、ポリカーボネート樹脂等の高分子の製造時の重合触媒としての効果を十分に発揮するためには、ビスフェノールに対する芳香族アルコールスルホン酸塩の含有量は、0.1質量ppb以上であり、1質量ppb以上が好ましく、5質量ppb以上がより好ましく、8質量ppb以上がさらに好ましく、10質量ppb以上が特に好ましい。
一方、ビスフェノールに対する芳香族アルコールスルホン酸塩の含有量が多いと、ビスフェノール組成物を用いたポリカーボネートの色調が悪化することから、通常1.0質量%以下であり、100質量ppm以下が好ましく、80質量ppm以下がより好ましく、50質量ppm以下がさらに好ましい。
【0046】
また、ビスフェノール組成物は、ビスフェノールを主成分とし、通常、ビスフェノール組成物中にビスフェノールを95.0質量%以上含むものである。ビスフェノール組成物中のビスフェノールの含有量は、好ましくは、97.0質量%以上であり、より好ましくは、98.0質量%以上であり、さらに好ましくは、98.5質量%以上であり、最も好ましくは、99.0質量%以上である。
また、ビスフェノール組成物は、ビスフェノールと芳香族アルコールスルホン酸塩以外の成分の含有量が少ないことが好ましい。
特に、ポリカーボネート樹脂の原料として使用する場合、炭酸ジエステルとの重合を阻害する成分の含有量が少ないビスフェノール組成物であることが好ましい。
後述するビスフェノール組成物の製造方法の(方法4)では、炭酸ジエステルとの重合を阻害する成分を効率的に除去し、炭酸ジエステルとの重合を阻害する成分の含有量が極めて少ないビスフェノール組成物とすることができるため、ビスフェノール組成物の製造方法の(方法4)により得られたビスフェノール組成物は、ポリカーボネート樹脂の原料として好適に使用できる。
【0047】
[ビスフェノール組成物の製造方法]
ビスフェノール組成物の製造方法としては特に制限はないが、例えば次のような方法が挙げられる。
(方法1) 固体のビスフェノールと、ビスフェノールに対する含有量が0.1質量ppb以上の芳香族アルコールスルホン酸塩とを混合して、ビスフェノール組成物を得る方法
(方法2) 溶融したビスフェノールと、ビスフェノールに対する含有量が0.1質量ppb以上の芳香族アルコールスルホン酸塩とを混合して、ビスフェノール組成物を得る方法
(方法3) ビスフェノールを製造する際に芳香族アルコールスルホン酸塩を副生させて、必要に応じて精製し、ビスフェノール組成物を得る方法
(方法4)ビスフェノールに対して100質量ppm超、1質量%以下の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール晶析用組成物を溶媒に溶解させて溶液とし、前記溶液を水洗後に得られた有機相から晶析によりビスフェノール組成物を得る方法
【0048】
(方法1)、(方法2)の固体又は溶融したビスフェノールに芳香族アルコールスルホ
ン酸塩を混合する方法においては、使用する固体又は溶融したビスフェノールの品質によってビスフェノール組成物の品質が影響されるため、得られるビスフェノール組成物の品質にばらつきが生じやすい。また、芳香族アルコールスルホン酸塩を別途準備する必要がある。
このことから、(方法3)ビスフェノールを製造する反応系において芳香族アルコールスルホン酸塩を副生させてビスフェノール組成物にヒドロキシベンゼンスルホン酸塩を含有させる方法や、(方法4)ビスフェノール晶析用組成物の晶析によりビスフェノール組成物を得る方法が好ましい。
【0049】
以下、上記(方法3)及び(方法4)について詳しく説明する。
【0050】
<(方法3)の製造方法>
ビスフェノールの製造時に反応系内でビスフェノールと共に芳香族アルコールスルホン酸塩を副生させてビスフェノール組成物を得る方法としては、ケトン又はアルデヒドと芳香族アルコールとを酸触媒である硫酸の存在下で縮合させてビスフェノールを製造する方法が挙げられる。この方法によれば、芳香族アルコールに由来する芳香族アルコールスルホン酸塩を反応系内で生成させることができる。
【0051】
なお、ビスフェノールの反応系で副生した芳香族アルコールスルホン酸塩が多過ぎる場合は、精製して、ビスフェノール組成物の規定範囲内の芳香族アルコールスルホン酸塩を含むように調製することができる。例えば、得られたビスフェノール生成物を更に水洗、晶析、懸濁洗浄及び振りかけ洗浄して、ビスフェノール生成物に含まれる芳香族アルコールスルホン酸塩の一部を除去することによりビスフェノール組成物の規定範囲内の芳香族アルコールスルホン酸塩を含むように制御することができる。詳細は後述する。
【0052】
ケトン又はアルデヒドと芳香族アルコールとの反応を利用するビスフェノールの製造方法としては、本発明の一実施形態あるビスフェノールの製造方法を採用することができ、これは、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとの反応からビスフェノールを生成する工程を有するビスフェノールの製造方法であって、前記反応に用いられる反応液が、有機相と水相とに分離しており、前記水相が硫酸モノアルキルを含有する、ビスフェノールの製造方法である。
当該実施形態に係る製造方法により得られるビスフェノールは、非常に高純度であり、着色が少ないことから、高純度なポリカーボネートの製造方法に用いることができ、例えば、本発明の製造方法により得られるビスフェノールと炭酸ジフェニルとをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることにより高純度なポリカーボネートを得ることができる。
【0053】
ビスフェノールの製造において、硫酸を触媒とし、更に脂肪族アルコールを用いて、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させることによりビスフェノールを製造することが好ましい。
【0054】
ビスフェノールの生成反応は、例えば、以下に示す反応式(4)に従って行われる。この反応において触媒として、例えば硫酸を用いることで、原料の芳香族アルコールに対応する、下記一般式(1A)及び/又は(2A)で表されるヒドロキシベンゼンスルホン酸塩を副生させることができる。
【0055】
【化6】


(式中、R11~R16は、一般式(3)におけるものと同義である。また、R12とR13は立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから、好ましくはプロトンである。)
【0056】
【化7】


(式中、R11~R14は、一般式(3)におけるものと同義である。)
【0057】
【化8】


(式中、R12~R14は、一般式(3)におけるものと同義である。)
【0058】
(芳香族アルコール)
ビスフェノールの原料として使用する芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(5)で表される化合物である。
【0059】
【化9】


(式中、R11~R14は、一般式(3)におけるものと同義である。また、R12とR13は立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから、好ましくはプロトンである。)
【0060】
上記一般式(5)で表される化合物として、具体的には、フェノール、メチルフェノール、ジメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェフェノール、ブチルフェノール、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノール、アミノフェノール、ベンジルフェニル、フェニルフェノールなどが挙げられる。
【0061】
(ケトン又はアルデヒド)
ケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(6)で表される化合物である。
【0062】
【化10】


(式中、R15,R16は、一般式(3)におけるものと同義である。)
【0063】
上記一般式(6)で表される化合物として、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタンアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、ヘプタンアルデヒド、オクタンアルデヒド、ノナンアルデヒド、デカンアルデヒド、ウンデカンアルデヒド、ドデカンアルデヒドなどのアルデヒド類、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、ウンデカノン、ドデカノンなどのケトン類、ベンズアルデヒド、フェニルメチルケトン、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケトン、クレジルメチルケトン、クレジルエチルケトン、クレジルプロピルケトン、キシリルメチルケトン、キシリルエチルケトン、キシリルプロピルケトンなどのアリールアルキルケトン、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノンなどの環状アルカンケトン類等が挙げられる。
【0064】
芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させる反応において、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比((芳香族アルコールのモル数/ケトンのモル数)又は(芳香族アルコールのモル数/アルデヒドのモル数))は、低いとケトン又はアルデヒドが多量化してしやすく、高いと芳香族アルコールを未反応のまま損失する。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくはモル比1.7以上であり、また、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
【0065】
芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させる反応では、通常、芳香族アルコールと酸触媒との混合溶液に、ケトン又はアルデヒドが供給される。このケトン又はアルデヒドの供給方法は、一括で供給する方法や、分割して供給する方法を用いることができるが、ビスフェノールを生成する反応が発熱反応であることから、少しずつ滴下して供給するなど分割して供給する方法が好ましい。
【0066】
(硫酸)
触媒として用いることができる硫酸は、濃硫酸や希硫酸と呼ばれる、硫酸が水で希釈された硫酸の水溶液(原料硫酸)を使用することで、反応系内に供給することができる。原料硫酸としては、濃硫酸を用いても希硫酸を用いてもよい。しかし、該原料硫酸の濃度が高すぎると、ケトン又はアルデヒドの多量化を促進させたり、生成したビスフェノールのスルホン化を引き起こす場合がある。また、後述する脂肪族アルコールやチオールを併用する時には、脂肪族アルコールの脱水2量化を促進させたり、チオールの劣化を引き起こす場合がある。一方、用いる原料硫酸の濃度が低すぎると、反応時間が長くなり、効率的にビスフェノールを製造することができない。そのため、用いられる原料硫酸の質量濃度は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。また、硫酸濃度が高く(即ち、該硫酸中の水の濃度が低く)、かつ、硫酸に含まれる水の量に対する、アセトンと予め混合する溶媒(詳細は後述)の量が少ない場合には、アセトンがメシチルオキサイド(2量化生成物)などに多量化し、脂肪族アルコールの脱水2量化を促進させ、チオールを酸化分解させてしまう怖れがあることから、用いられる原料硫酸の質量濃度は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。一方で、該硫酸濃度が高く(即ち、該硫酸中の水の濃度が低く)、かつ、該硫酸に含まれる水の量対する、アセトンと予め混合する溶媒(詳細は後述)の量が多い場合には、アセトンがメシチルオキサイド(2量化生成物)などの多量化を抑制し、脂肪族アルコールの脱水2量化を抑制し、チオールの酸化分解を抑制できることから、用いられる硫酸の濃度は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。
【0067】
ケトン又はアルデヒドに対する硫酸のモル比((硫酸のモル数/ケトンのモル数)又は(硫酸のモル数/アルデヒドのモル数))は、低いと縮合反応時に副生する水によって硫酸が希釈されて長い反応時間を要することになる。一方、高いとケトン又はアルデヒドの多量化が進行する場合がある。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する硫酸のモル比は、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.1以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。
【0068】
(反応液)
芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとの反応に用いられる反応液は、有機相と水相とに分離しており、前記水相が硫酸モノアルキルを含有する。芳香族アルコールは有機相に含有され、ケトン又はアルデヒドは有機相に分離される。
硫酸モノアルキルを含有することにより、触媒の酸強度を制御し、原料のケトン又はアルデヒドの縮合(多量化)及び着色を抑制することができる。このため、芳香族アルコールスルホン酸の過剰な生成が抑制され、かつ、生成物の着色が低減されたビスフェノールを簡便かつ効率よく製造することが可能となる。また、同時に硫酸モノアルキルを発生させる際に使用した脂肪族アルコールの残存分で、生成したビスフェノールを溶解させて反応液の固化を抑制し、混合状態を改善し、反応時間を短縮することが可能であるという利点もある。
【0069】
(硫酸モノアルキル)
硫酸モノアルキルとしては、例えば、硫酸モノメチル、硫酸モノエチル、硫酸モノプロピル、硫酸モノイソプロピル、硫酸モノブチル、硫酸モノイソブチル、硫酸モノt-ブチル、硫酸モノペンチル、硫酸モノイソペンチル、硫酸モノへキシル、硫酸モノへプチル、硫酸モノオクチル、硫酸モノノニル、硫酸モノデシル、硫酸モノウンデシル、硫酸モノドデシル、硫酸モノ(ヒドロキシエチル)、硫酸モノ(2-ヒドロキシエトキシエチル)、硫酸モノ(2-(2’-ヒドロキシエトキシ)エトキシエチル)などを挙げることができる。これらの中で、炭素数が多くなると親油性が増加し、硫酸モノアルキルが有機相と水相を行き来し難くなることから、炭素数が8以下の硫酸モノアルキルが好ましく用いられ
る。
硫酸モノアルキルを製造する方法は、特に限定されないが、簡便かつ安価に硫酸モノアルキルを得ることができるため、硫酸と脂肪族アルコールとの反応から製造する方法が挙げられる。
【0070】
硫酸モノアルキルの濃度は、例えば、脂肪族アルコールと硫酸とを混合した後に得られる水相の一部を取出し、該水相をHNMRにより分析することにより求めることができる。脂肪族アルコールと硫酸とを混合した後に得られる水相としては、(1)脂肪族アルコールと硫酸を混合した水相、(2)脂肪族アルコール、芳香族アルコール、溶媒、チオール、硫酸を混合し、静置して得られた水相、(3)脂肪族アルコール、芳香族アルコールを混合した後に硫酸を供給し、混合後に静置して得られた水相、(4)脂肪族アルコール、溶媒、芳香族アルコールを混合した後に硫酸を供給し、混合後に静置して得られた水相、(5)ビスフェノール反応液を静置して得られた水相が挙げられる。反応液中の硫酸モノアルキルの濃度としては、0.0001重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。
硫酸モノアルキルの調製方法はとしては、下記に示す硫酸と下記に示す脂肪族アルコールを混合させて得る方法、硫酸モノアルキルナトリウムなどの硫酸モノアルキル金属塩と硫酸を混合させて得る方法が挙げられる。なお、本発明において、ビスフェノールの生成工程において存在させる硫酸モノアルキルは、予め調整したものを反応原料の少なくとも一部と混合することにより存在させても、ビスフェノールを生成させる反応系に硫酸と脂肪族アルコールを共存させることで、硫酸モノアルキルを生成させ、反応系に存在させてもよい。
【0071】
脂肪族アルコールと硫酸を混合すると発熱することから、その混合は該脂肪族アルコールの沸点以下で行うことが好ましい。
なお、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドからビスフェノールを製造する反応は、好ましくは、溶媒中で行われる。したがって、硫酸モノアルキルは、芳香族アルコール、溶媒、ケトン又はアルデヒド、必要によりチオール、を反応器に供給した後に供給する方法、又はケトン又はアルデヒドを反応器に供給・混合する前に硫酸モノアルキルを反応器に供給して、硫酸モノアルキルを芳香族アルコール等と混合し、これにケトン又はアルデヒドを混合する方法が挙げられるが、ケトン又はアルデヒドが多量化してしまう怖れがあることから、ケトン又はアルデヒドを反応器に供給する前に硫酸モノアルキルを反応器に供給し、これにケトン又はアルデヒドを混合する方法が好ましい。
【0072】
(脂肪族アルコール)
脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコールなどの炭素数1~12のアルキルアルコール類などを挙げることができる。該脂肪族アルコールは、炭素数が多くなると親油性が増加し、硫酸と混ざりにくくなり硫酸モノアルキルを得にくくなることから、炭素数が8以下のアルキルアルコールが好ましく、特にメタノールが好ましい。
【0073】
硫酸に対する脂肪族アルコールのモル比(脂肪族アルコールのモル数/硫酸のモル数)は、低いと発生する硫酸モノアルキルの量が少なくなり反応に長時間を要し、また、高いと硫酸濃度が低下する。これらのことから、硫酸に対する脂肪族アルコールのモル比は、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.1以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
【0074】
(チオール)
また、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させる反応では、助触媒としてチオールを用いることができる。助触媒として用いるチオールとしては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタンなどが挙げられる。
【0075】
ケトン又はアルデヒドに対する該チオールのモル比((該チオールのモル数/ケトンのモル数)又は(該チオールのモル数/アルデヒドのモル数))は、低いとチオール助触媒を用いることによるビスフェノールの選択性改善の効果が得られず、高いとビスフェノールに混入して品質が悪化する場合がある。これらのことから、ケトン及びアルデヒドに対する該チオールのモル比は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上であり、また、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
【0076】
チオールは、チオールの酸化分解を抑制する観点から、ケトン又はアルデヒドと予め混合してから反応に供することが好ましい。チオールとケトン又はアルデヒドとの混合方法は、チオールにケトン又はアルデヒドを混合してもよく、ケトン又はアルデヒドにチオールを混合してもよい。また、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液と、原料硫酸との混合方法は、該混合液に原料硫酸を混合してもよく、原料硫酸に該混合液を混合してもよいが、原料硫酸に該混合液を混合する方が好ましい。更に、反応槽に原料硫酸と芳香族アルコールを供給した後に、該混合液を反応槽に供給して混合する方がより好ましい。
【0077】
(溶媒)
ビスフェノール組成物の生成反応に用いる溶媒として、芳香族炭化水素を使用することが可能である。また、ビスフェノールの製造に使用した溶媒を、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。用いる芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。該溶媒を再利用する場合は、沸点が低い溶媒が好ましい。
また、溶媒を使わず原料の芳香族アルコールを多量に使用して溶媒の代わりにしてもよい。この場合、未反応の芳香族アルコールは損失となるが、蒸留などにより回収及び精製して再使用することで損失を低減できる。
【0078】
ビスフェノールを生成する反応に供給する溶媒の使用量は、例えば、硫酸モノアルキルの調製に用いられる硫酸の量に対して少な過ぎる場合、生成したビスフェノールが分解する場合があり、得られるビスフェノールが減少してしまう可能性がある。一方で、硫酸の量に対して多すぎる場合、ケトン又はアルデヒドと芳香族アルコールと縮合反応速度が低下し、ビスフェノールを生成する時間を要する可能性がある。したがって、該溶媒の使用量は、硫酸の量に対して、0.05倍以上が好ましく、0.1倍以上がより好ましく、10倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましい。特に、濃度の高い硫酸を用いる場合は、硫酸の量に対して、1倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましく、10倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましい。
また、溶媒を使わず芳香族アルコールを多量に使用して溶媒の代わりにしても良い。未反応の芳香族アルコールはロスとなることから、蒸留などにより回収及び精製して再使用することが可能である。
【0079】
(ビスフェノールの生成反応)
ビスフェノールの生成反応は縮合反応であるが、生成反応の反応温度が高すぎると触媒による助触媒の酸化分解が進行しやすく、低すぎると反応に要する時間が長時間化することから、好ましくは0℃以上50℃以下である。
【0080】
生成反応の反応時間は、長すぎると生成したビスフェノールが分解する場合があることから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好ましくは20時間以内であり、また、通常15時間以上である。なお、用いる硫酸と同等量以上の水を加えて硫酸濃度を低下させ、反応を停止することが可能である。
【0081】
(ビスフェノールの精製)
上記のビスフェノール生成反応によって得られたビスフェノールの精製は、常法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。一例として、縮合反応後、反応液を分液して得られた有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄する。必要に応じ、洗浄後の有機相を冷却し晶析させてもよい。芳香族アルコールを多量に用いる場合は、精製時の該晶析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させることが好ましい。
【0082】
<(方法4)の製造方法>
(方法4)は、ビスフェノールに対して100質量ppm超、1質量%以下の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール晶析用組成物を溶媒に溶解させて溶液とし、前記溶液を水洗後に得られた有機相から晶析によりビスフェノール組成物を得る方法である。
上述のように、ビスフェノール組成物は、溶融重合反応阻害成分の含有量が少ないことが好ましい。このようなビスフェノール組成物を製造するために、(方法4)の製造方法は好適である。
【0083】
本発明者らは、溶融重合反応を阻害する成分がビスフェノールに含まれやすいことを明らかにした。そして、ビスフェノールに対して100質量ppm超、1質量%以下の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール晶析用組成物(以下、単に、「ビスフェノール晶析用組成物」と記載する場合がある。)を用い、前記ビスフェノール晶析用組成物を溶解した溶液を水洗後に油水分離し、その有機相を晶析することで、溶融重合反応を阻害する成分(溶融重合反応阻害成分)を容易に除去できることを見出した。
【0084】
これは、ビスフェノールに対して100質量ppm超、1質量%以下の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール晶析用組成物を用いることで、ビスフェノール晶析用組成物に含有される芳香族アルコールスルホン酸が界面活性剤として作用し、水洗時に水相と有機相に分離しやすく、ビスフェノール組成物が溶解する有機相における溶融重合反応阻害成分の残存を低減し、溶融重合反応阻害成分を水相に容易にかつ効率的に除去できるためと推察できる。
【0085】
このように、(方法4)の製造方法を使用することで、ビスフェノール組成物、特に、溶融重合反応阻害成分の含有量が少ないビスフェノール組成物を、簡便にかつ効率的に得ることができる。
また、(方法4)の製造方法に得られたビスフェノール組成物を用いて、溶融重合反応を安定に実施し、溶融重合反応によるポリカーボネート樹脂を安定して製造することができる。
【0086】
ビスフェノール晶析用組成物は、ビスフェノールに対する芳香族アルコールスルホン酸塩が1質量%より多い場合、晶析後のビスフェノール組成物中に芳香族アルコールスルホン酸塩が過剰に残存しやすく、炭酸ジエステルとの反応性が低下する場合がある。ビスフェノールに対する芳香族アルコールスルホン酸塩は、通常1質量%以下であり、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
また、ビスフェノールに対する芳香族アルコールスルホン酸塩の量が100質量ppm以下の場合、界面活性剤として効果が十分でなく、油水分離にて有機相と水相とが分離しにくく、ビスフェノールに含まれる炭酸ジエステルとの反応を阻害する成分が有機相に多く残存しやすい。また、有機相と水相に分離するまでに時間かかり、経済的な観点からも好ましくない。ビスフェノール晶析用組成物に含まれる、ビスフェノールに対する芳香族アルコールスルホン酸塩は、通常100質量ppm超であり、150質量ppm以上であることが好ましく、195質量ppm以上であることがより好ましく、300質量ppm以上であることがさらに好ましい。
【0087】
(方法4)の製造方法について、一例を挙げると、以下の方法により、ビスフェノール粗生成物からビスフェノール組成物を製造することができる。
ビスフェノールに対して100質量ppm超、1質量%以下の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール晶析用組成物と有機溶媒(例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等)とを混合し、60~95℃で撹拌して、ビスフェノールと芳香族アルコールスルホン酸塩を溶解させた溶液(A)を得る。前記溶液(A)1質量部に対して0.1~10質量部の水(例えば、脱塩水、イオン交換水等)を加え、60~95℃で、0.1~1時間撹拌する。撹拌終了後、60~95℃で、静置し、油水分離させる。油水分離後させた後、水相を除去し、有機相(A)を得る。前記有機相(A)からビスフェノールを析出させる。その後、固液分離、乾燥をすることでビスフェノール組成物が得られる。
【0088】
上記有機相(A)からビスフェノールを析出させる方法としては、例えば、60~95℃から、0~20℃に1~10時間かけて降温し晶析する方法等が挙げられる。晶析時間は1~10時間程度である。
【0089】
析出したビスフェノール組成物を固液分離する方法は、特に限定されず、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の常法を用いることができる。
また、乾燥の方法は、減圧乾燥であっても、常圧での乾燥であってもよい。乾燥温度は、適宜決定することができるが、乾燥温度が高いとビスフェノール組成物が融着して装置から取り出すことができなくなる観点から、50~120℃であることが好ましい。
【0090】
なお、ビスフェノールに対して100質量ppm超、1質量%以下の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール晶析用組成物は、上記(方法3)と同様に、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを硫酸触媒の存在下で反応させて得ることが好ましい。かかる特定量の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール晶析用組成物は、例えば、芳香族アルコールに対する硫酸のモル比(硫酸のモル数/芳香族アルコールのモル数)を0.1~10(好ましくは0.3~5、より好ましくは0.5~3)とし、0~80℃(好ましくは5~70℃、より好ましくは10~60℃)で0.05~10時間(好ましくは0.1~5時間)反応させることで得ることができる。
【0091】
また、ビスフェノールに対して100質量ppm超、1質量%以下の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール晶析用組成物は、市販のビスフェノール等に所定量の芳香族アルコールスルホン酸塩を混合することにより得ることが可能である。
【0092】
<ビスフェノール組成物の用途>
ビスフェノール組成物は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
【0093】
これらのうち、良好な機械物性を付与できることから、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の原料(モノマ-)として用いることが好ましく、なかでもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
【0094】
[ポリカーボネート樹脂及びその製造方法]
次に、ビスフェノール組成物を原料とするポリカーボネート樹脂及びその製造方法につき説明する。
本発明の一実施形態であるポリカーボネート樹脂は、樹脂中に1質量ppb以上の芳香族アルコールスルホン酸塩を含有する、ポリカーボネート樹脂である。
樹脂中の芳香族アルコールスルホン酸塩の含有量は、優れた色調を確保する観点から、1質量ppb以上が好ましく、5質量ppb以上がより好ましく、8質量ppb以上がさらに好ましく、10質量ppb以上が特に好ましく、また、1.0質量%以下であり、100質量ppm以下が好ましく、80質量ppm以下がより好ましく、50質量ppm以下がさらに好ましい。
また、色調を評価する指標として、黄色度(「YI値」又は「イエローネスインデックス値」とも称する)があり、ASTM D1925に従って測定することができる。ポリカーボネート樹脂の色調の評価においては、YIが50以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
【0095】
ビスフェノール組成物を原料とするポリカーボネート樹脂は、前述のビスフェノール組成物や、前述のビスフェノールの製造方法により得られたビスフェノールを反応させて製造することができ、当該ビスフェノール組成物と、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造することができる。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下にビスフェノール組成物と炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
【0096】
ポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジフェニルは、ビスフェノール組成物中のビスフェノールに対して過剰量用いることが好ましい。該ビスフェノールに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。これらのことから、ビスフェノール1モルに対して使用する炭酸ジフェニルの量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上である。また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
【0097】
原料の供給方法としては、ビスフェノール組成物及び炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
【0098】
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。上記のポリカーボネート樹脂の製造
方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物を用いることが望ましい。
【0099】
ビスフェノール又は炭酸ジフェニル1モルに対して用いられるエステル交換触媒の触媒量は、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上であり、また、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、さらに好ましくは20μモル以下である。
【0100】
エステル交換触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成形時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
【0101】
上記方法によりポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
【0102】
特に、上述した本発明の一実施形態であるビスフェノールの製造方法により製造されたビスフェノールは、非常に高純度であり、着色が少ないことから、高純度なポリカーボネートの製造方法に用いることができ、例えば、本発明の製造方法により得られるビスフェノールと炭酸ジフェニルとをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることにより高純度なポリカーボネートを得ることができる。
【実施例0103】
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0104】
[実験I]
[原料及び試薬]
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールC」と称する)、トルエン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、原料硫酸、ドデカンチオール、メタノール、アセトン、炭酸セシウムは、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。なお、ビスフェノールC中に含まれるクレゾールスルホン酸の濃度は、後述するように、検出限界以下(1ppb未満)であった。ここで、測定対象に対して特段の処理を行わない場合、検出限界は通常1ppbであるが、濃縮等の処理を行うことで検出限界を0.1ppbとすることができる。
フェノールスルホン酸ナトリウムは、東京化成株式会社の試薬を使用した。
クレゾールスルホン酸(以下、「4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸」又は「2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸」と称することがある)溶液は、キシダ化学株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
【0105】
[分析]
(油水界面の水泡消失時間)
油水界面上の水泡消失時間は、目視で界面上の水泡を数え、水泡の数が10個以下とな
った時間とした。なお、油水界面上の水泡消失時間の評価方法は、10分未満を「S」、10分以上30分未満を「A」、30分以上1時間未満を「B」、1時間以上を「C」とした。
【0106】
(4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウムの定性・定量分析)
4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウムの定性分析は、1H-NMR及びICP質量分析装
置によるNa分析により行った。
H-NMR(プロトン核磁気共鳴(HNMR))測定は、日本電子株式会社製のJNM=ECS400型を用いて実施した。
ナトリウム原子濃度の測定は、以下の手順で実施した。ビスフェノールに硝酸を加え、マイクロウェーブ分解装置を用いて、加圧密閉分解した。得られた分解液を純水に希釈し、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製ELEMENT2を用いてビスフェノールに含まれるナトリウム原子濃度を測定した。
【0107】
また、4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウムの定量分析は、高速液体クロマトグラフ質量分析計により、以下の手順と条件で高速液体クロマトグラフ質量分析計により測定を行い、標準物質を用いて作成した検量線を用いて行った。
・高速液体クロマトグラフ装置:Agilent 1200、Capcellpak C18 MG3 3μm 75mm×4.6mmID
・方式:低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液1mモル/Lギ酸アンモニウム水溶液酢酸、B液 アセトニトリル
分析時間0分ではA液:B液=99.5:0.5(体積比、以下同様。)
分析時間0~15分は溶離液組成をA液:B液=5:95へ徐々に変化させ、
分析時間15~25分はA液:B液=5:95に維持、
流速1ミリリットル/分にて分析した。
・質量分析計:Agilent LC/MS 6130
・方式:ESI(AJSプローブ使用)
【0108】
(フェノールの生成率)
ビスフェノールCと、炭酸ジフェニルとの反応によるフェノールの生成率は、高速液体クロマトグラフィー(以下、LCと称する)により、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製カラム恒温槽CTO-10
島津製作所社製検出器SPD―M10AVP
島津製作所社製ポンプLC-10AD
GLサイエンス株式会社製Inertsil ODS-II 5μm 150mm×4.6mmID
・方式:アイソククラティック法
・分析温度:40℃
・溶離液組成 水:アセトニトリル=10:90(体積比)
・分析時間0分ではポンプ流量0.5ミリリットル/分、
分析時間0~15分はポンプ流量2ミリリットル/分へ徐々に変化させ、
分析時間15~30分はポンプ流量2ミリリットル/分を維持して、分析した。
検出波長は、210nmとした。
ビスフェノールCに、炭酸ジフェニルとの反応を阻害する成分の存在量が多いほどフェノール生成率は少なく、反応を阻害する成分が少ないほどフェノールの生成率は多くなる

フェノール生成率(重合初期活性)は、下式で算出した。
フェノール生成率(重合初期活性)=フェノールのLC面積÷(フェノールのLC面積+炭酸ジフェニルのLC面積+ビスフェノールCのLC面積)×100(%)
なお、LC面積とは、高速クロマトグラフィーで検出されたピークの面積を示す。
【0109】
(ビスフェノールC生成反応液の組成)
ビスフェノールC生成反応液の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC-2010A、Imtakt ScherzoSM-C18
3μm 150mm×4.6mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩素水=3.000g:1ミリリットル:1リットルの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1ミリリットル:900ミリリットルの溶液
・分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、
分析時間25~30分はA液:B液=90:10に維持、
流速0.8ミリリットル/分にて分析した。
【0110】
(ビスフェノールの反応収率(アセトン基準))
アセトン基準のビスフェノールCの反応収率(モル%)は、高速液体クロマトグラフィーで波長280nmにより検出されたピークより反応液中に含まれるビスフェノールCの濃度を算出し、その濃度よりビスフェノールC生成反応液中に含まれる該ビスフェノールCのモル量を算出して、該ビスフェノールCのモル量÷原料アセトンのモル量×100%で算出した。
【0111】
(粘度平均分子量)
粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
【0112】
(ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度)
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH濃度)は、四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem. 88,215(1965)参照)に準拠し、比色定量を行うことにより測定した。
【0113】
(ペレットYI)
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM-5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM-A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM-A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM-A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が
-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
【0114】
[参考例1]
磁気回転子を備えた1Lのナス型フラスコに、クレゾールスルホン酸溶液(組成;オルトクレゾールスルホン酸63質量%、クレゾール1.5質量%、硫酸3質量%、水32.5%)242gと水酸化ナトリウム38.4g及び脱塩水32gを入れ、該ナス型フラスコを氷浴して撹拌した。該ナス型フラスコの水酸化ナトリウムが完全に溶解したことを確認し、55.6質量%のクレゾールスルホン酸ナトリウム溶液を調製した。
【0115】
[参考例2]
参考例1で得られたクレゾールスルホン酸ナトリウム溶液の一部を500mLのナス型フラスコに取り、オイルバスを備えたエバポレータを用いて減圧下で、乾固させた。得られた白色固体の一部をアセトン100gで懸濁洗浄した後、トルエン100gで懸濁洗浄し、クレゾールスルホン酸ナトリウム1.5gを得た。該クレゾールスルホン酸ナトリウムを用いて、2.3質量%のクレゾールスルホン酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0116】
[参考例3]
フェノールスルホン酸ナトリウムを用いて、2.3質量%のフェノールスルホン酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0117】
[参考例4]
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、キシレノール100g、トルエン10gを入れた後に、98%硫酸100gをゆっくり供給し、50℃で1時間撹拌した。得られた反応液はスラリーであったので、減圧濾過をした。得られたケーキを、500mLのナス型フラスコに入れ、トルエンと25%水酸化ナトリウム水溶液を、pH計を見ながら、中和するまで加えた。得られたスラリーを減圧濾過し、得られたケーキをルエンで懸濁洗浄し、水で振りかけ洗浄し、減圧下ロータリーエバポレータで乾燥した、白色の固体10gが得られた。得られた白色の固体のNMRを測定したところキシレノールスルホン酸(以下、4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンゼンスルホン酸と称することがある)であり、ICP質量分析から白色の固体に含まれるNa濃度が10質量%であることから、白色の固体は4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンゼンスルホン酸ナトリウムであった。該キシレノールスルホン酸ナトリウムを用いて、2.3質量%のキシレノールスルホン酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0118】
[実施例1]
市販のビスフェノールC(和光純薬社製) 4.7g及び参考例2で調製したクレゾールスルホン酸ナトリウム溶液20μLを加え、ビスフェノールCに対してクレゾールスルホン酸ナトリウムを100質量ppm含有するビスフェノールC組成物を調製した。
テフロン(登録商標)製試験管に、ビスフェノールC組成物 4.7g及び炭酸ジフェニル 4.5gを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成率を確認したところ、フェノールが0.5面積%生成していた。
【0119】
[実施例2]
市販のビスフェノールC 4.7g及び参考例4で調製したキシレノールスルホン酸ナトリウム溶液20μLを加え、ビスフェノールCに対してキシレノールスルホン酸ナトリウムを100質量ppm含有するビスフェノールC組成物を調製した。
テフロン製試験管に、ビスフェノールC組成物 4.7g及び炭酸ジフェニル 4.5gを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成率を確認したところ、フェノールが0.4面積%生成していた。
【0120】
[実施例3]
市販のビスフェノールC 4.7g及び参考例3で調製したフェノールスルホン酸ナトリウム溶液20μLを加え、ビスフェノールCに対してフェノールスルホン酸ナトリウムを100質量ppm含有するビスフェノールC組成物を調製した。
テフロン製試験管に、ビスフェノールC組成物 4.7g及び炭酸ジフェニル 4.5gを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成率を確認したところ、フェノールが0.6面積%生成していた。
【0121】
[実施例4]
市販のビスフェノールC 4.7g及び参考例2で調製したクレゾールスルホン酸ナトリウム溶液を用いて、ビスフェノールC組成物に対する濃度が230質量ppmのクレゾールスルホン酸ナトリウム溶液を調製して得られた水溶液20μLを加え、ビスフェノールCに対してクレゾールスルホン酸ナトリウムを1質量ppb含有するビスフェノールC組成物を調製した。
テフロン製試験管に、ビスフェノールC組成物 4.7g及び炭酸ジフェニル 4.5gを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成率を確認したところ、フェノールが0.3面積%生成していた。
【0122】
[比較例1]
ビスフェノールC組成物として、市販のビスフェノールCをそのまま使用した。
テフロン(登録商標)製試験管に、ビスフェノールC組成物 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7μg/gの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成率を確認したところ、フェノールが0.1面積%生成していた。
なお、ビスフェノール中の芳香族アルコールスルホン酸塩の含有量を正確に求めるため、該ビスフェノールC組成物10g、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.0mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。得られた溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、ガラスフィルターと受器を設置して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。上記のようにビスフェノールC組成物を濃縮した後に、芳香族アルコールスルホン酸塩の分析を行った。しかし、検出限界の0.1質量ppb未満であり、芳香族アルコールスルホン酸塩は検出できなかった。
【0123】
[比較例2]
市販のビスフェノールC 4.7g及び市販のクレゾール酸溶液を希釈して加え、ビスフェノールCに対してクレゾールスルホン酸を5質量ppm含有するビスフェノールC組成物を調製した。
テフロン製試験管に、ビスフェノールC組成物 4.7g及び炭酸ジフェニル 4.5gを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成率を確認したところ、フェノールの生成は見られなかった。
【0124】
[比較例3]
市販のビスフェノールC 4.7g及び市販のクレゾール酸溶液を加え、ビスフェノールCに対してクレゾール酸を100質量ppm含有するビスフェノールC組成物を調製した。
テフロン製試験管に、ビスフェノールC組成物 4.7g及び炭酸ジフェニル 4.5gを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成率を確認したところ、フェノールの生成は見られなかった。
【0125】
実施例1~4及び比較例1~3について、炭酸ジフェニルとの反応によるフェノールの生成率を表1に纏めた。実施例1と比較例1との比較より、クレゾールスルホン酸ナトリウムを含有するビスフェノールC組成物は、重合初期活性(フェノール生成率)が高いことが分かる。また、実施例1,4と比較例2,3の比較より、ビスフェノールC組成物に含まれるクレゾールスルホン酸がクレゾールスルホン酸ナトリウムの塩であることで、重合初期活性が高くなることが分かる。
【0126】
【表1】


【0127】
[実施例5]
(ビスフェノール晶析用組成物の製造)
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、市販のビスフェノールC 100g及び参考例1で調製したクレゾールスルホン酸ナトリウム溶液0.18gを入れ、オルトクレゾールスルホン酸ナトリウムを0.1質量%含有するビスフェノールC組成物を調製した。
【0128】
(ビスフェノール組成物の製造)
上記セパラブルフラスコにトルエン163gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。
油水界面上の水泡消失時間は、1分34秒であった。その後、該セパラブルフラスコか
ら水相を除去し、有機相を得た。
得られた有機相を、80℃から10℃に降温させることでビスフェノールCを晶出させ、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のビスフェノールCを得た。
該湿潤状態のビスフェノールCを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下乾燥させ、水洗及び乾燥したビスフェノールC組成物95gを得た。
上記ビスフェノールC組成物の一部を取出し、高速液体クロマトグラフ質量分析計で4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量を確認したところ、4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム 35質量ppm、2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム 2質量ppmが含まれていた。
【0129】
(フェノール生成率の測定)
テフロン(登録商標)製試験管に、該水洗及び乾燥したビスフェノールC組成物 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成率を確認したところ、フェノールが1.2面積%生成していた。
【0130】
[実施例6]
実施例5で使用した市販のビスフェノールCと製造ロットの異なる市販のビスフェノールCとを用いたこと以外は、実施例5と同様に実施した。その結果、得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成率を確認したところ、フェノールが1.2面積%生成していた。
【0131】
[実施例7]
実施例5及び6で使用したビスフェノールCと製造ロットの異なる市販のビスフェノールCとを用いたこと以外は、実施例5と同様に実施した。その結果、得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成率を確認したところ、フェノールが1.2面積%生成していた。
【0132】
[比較例4]
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、市販のビスフェノールC 100g、トルエン163gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。油水界面上の水泡は、5時間経っても消失しなかった。該セパラブルフラスコから水相を除去し、若干水泡が残存した状態のままの得られた有機相を、80℃から10℃に降温させることでビスフェノールCを晶出させ、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のビスフェノールCを得た。該湿潤状態のビスフェノールCを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下乾燥させ、水洗及び乾燥したビスフェノールC96gを得た。
【0133】
テフロン(登録商標)製試験管に、前記ビスフェノールC 4.7g、炭酸ジフェニル
4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成率を確認したところ、フェノールが0.2面積%生成していた。
なお、ビスフェノール中の芳香族アルコールスルホン酸塩の含有量を正確に求めるため、該ビスフェノールC組成物10g、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.0mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とし
た。得られた溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、ガラスフィルターと受器を設置して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。上記のようにビスフェノールC組成物を濃縮した後に、芳香族アルコールスルホン酸塩の分析を行った。しかし、検出限界の0.1質量ppb未満であり、芳香族アルコールスルホン酸塩は検出できなかった。
【0134】
実施例5~7及び比較例4について、ビスフェノール晶析用組成物(洗浄(水洗及び晶析)前のビスフェノールC)に含まれるクレゾールスルホン酸ナトリウム量(4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸及び2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウムの合計量)、油水界面上の水泡消失時間、ビスフェノール組成物(洗浄(水洗、晶析及び乾燥)後のビスフェノールC)に含まれるクレゾールスルホン酸ナトリウム量(4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウムの合計量)、炭酸ジフェニルとの反応によるフェノールの生成率を表2に纏めた。
【0135】
実施例5より、クレゾールスルホン酸ナトリウム塩を添加しビスフェノール晶析用組成物を得た後、洗浄(水洗及び晶析)によって得られたビスフェノールC組成物は、油水界面上の水泡消失時間が短いことからクレゾールスルホン酸ナトリウム塩が界面活性剤として作用することが分かる。また、実施例5は、炭酸ジフェニルとの反応によるフェノールの生成率が実施例1よりも多いことから、炭酸ジフェニルとの反応を進行させる触媒作用の効果に加えて、クレゾールスルホン酸ナトリウムを添加しビスフェノール晶析用組成物を得た後、洗浄することで、ビスフェノールC組成物に含有される、炭酸ジフェニルとの反応を阻害する成分が効率的に除去されていると推察できる。
更に、実施例5~7より、製造ロットが異なるビスフェノールCを原料として用いても、クレゾールスルホン酸を添加しビスフェノール粗生成物とした後、洗浄することで、ビスフェノールCに含有する、炭酸ジフェニルとの反応を阻害する成分を同様に除去することが可能であり、品質の安定したビスフェノールC組成物を安定して製造することができる。また、実施例5~7の炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成率の結果から、得られたビスフェノールC組成物は、炭酸ジフェニルとの反応を安定的に実施することが可能であることが分かる。
【0136】
なお、比較例4は、市販のビスフェノールCにクレゾールスルホン酸ナトリウムを添加しビスフェノール晶析用組成物とせず、市販のビスフェノールCをそのまま用いたこと以外は実施例5~7と同様の方法でビスフェノールCを製造した例である。比較例4より、市販のビスフェノールCを洗浄(水洗及び晶析)することによって得られたビスフェノールCも炭酸ジフェニルとの反応によるフェノールの生成率は少なく、該洗浄によって反応を阻害する成分は十分に除去できないことが分かる。
【0137】
【表2】


【0138】
[実施例8]
(ビスフェノール晶析用組成物の製造)
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール35.0g(1.1モル)を入れた後に、88重量%原料硫酸77.7g(0.7モル)をゆっくり加えた。その後、反応器にトルエン72.6g、オルトクレゾール255.0g(2.4モル)及びドデカンチオール7.3g(0.04モル)をセパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにアセトン57.0g(1.0モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、反応液の色は橙色であった。この反応液を15時間、50℃で反応させた。
反応終了後、トルエン135.0g及び脱塩素水175.5gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下相の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下相の水相pHが9以上になったことを確認した。下相の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。
得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は85モル%であった。
この有機相を80℃から30℃まで冷却して、30℃に到達時にした時に種晶ビスフェノールC 1gを添加させて析出を確認した。その後、10℃まで冷却して10℃到達後、ガラスフィルターを用いて減圧濾過を行い、ウェットケーキとしてビスフェノールC晶析用組成物239.9gを得た。
【0139】
該ビスフェノールC晶析用組成物の一部を取出し、高速液体クロマトグラフ質量分析計で4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量を確認したところ、4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム 35質量ppm、2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム 160質量ppmが含まれていた。
【0140】
(ビスフェノール組成物の製造)
温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、前記ビスフェノールC晶析用組成物全量とトルエン449gを入れ、80℃に昇温した。均一
溶液となったことを確認し、該有機相を脱塩水600gで2回に分けて、十分洗浄した。この油水界面上の水泡消失時間は、5分程度であった。
得られた有機相を、80℃から10℃まで冷却した。その後、遠心分離器(毎分3000回転で10分間)を用いて濾過を行い、湿潤状態の精ビスフェノールCを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、ビスフェノールC組成物 180.9gを得た。
【0141】
該ビスフェノールC組成物10g、オルトキシレン1.5mL及びアセトニトリル1.5mLを10mLの遠沈専用のガラス容器に入れ、加熱して完全溶解させて均一溶液とした。該溶液を室温まで放冷させ、固体を得た。その後、該ガラス容器にガラスフィルターと受器を設置して遠沈管とし、遠心分離機(毎分2000回転で10分間)を用いて、該固体から液体1gを抽出した。得られた液体の一部を取出し、高速液体クロマトグラフ質量分析計で4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸及び2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量を確認したところ、4-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5質量ppb、2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム 3質量ppbが含まれていた。
【0142】
(フェノール生成率の測定)
テフロン(登録商標)製試験管に、得られたビスフェノールC組成物 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで初期重合活性を確認したところ、フェノールが1.6面積%生成していた。
【0143】
(ポリカーボネート樹脂の製造)
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、該ビスフェノールC組成物100.00g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールCと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネートをストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
該ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は24800であり、末端水酸基濃度(OH濃度)は769質量ppmであった。またペレットYIは、7.62であった。
該ポリカーボネートの一部を、ICP質量分析計でNa濃度を測定したところ、0.1質量ppm検出された。
(ポリカーボネート樹脂中の芳香族アルコールスルホン酸塩の含有量)
撹拌子を備えた50mLの三角フラスコに、得られた該ポリカーボネート0.2g及び塩化メチレン1mLを入れ、溶解させた。その後、十分撹拌しながら、メタノール4mL
をゆっくり滴下し、滴下終了後に該三角フラスコを水浴させ、30分間抽出した。得られた溶液を15mLの遠沈管に全量採取し、毎分5000回転で15分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液3mLを50mLナス型フラスコに採取した。該50mLナス型フラスコをウォーターバスを備えたロータリーエバポレータに設置し、該ウォーターバスを45℃に設定し、蒸発乾固させた。蒸発乾固によって得られた乾固物にメタノール0.5mLを加え、密栓した後に超音波で5分間抽出し、得られた溶液の一部を高速液体クロマトグラフ質量計で分析したところ、2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸が3質量ppb検出された。該ポリカーボネートに含まれる2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸の物質量に比べて、該ポリカーボネートに含まれるNa量の物質量が多いことから、該ポリカーボネートに含まれる2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸は2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウムであり、その濃度は3質量ppb(3質量ppb÷2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸の分子量188.2g/モル×2-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム210.2g/モル)である。
【0144】
[実験2]
[原料及び試薬]
オルトクレゾールは、和光純薬株式会社製特級試薬又は新日本製鐵化学株式会社製の製品を使用した。
アセトンとメタノールは、和光純薬株式会社製特級試薬又は大伸化学株式会社製の製品を使用した。
ドデカンチオールは、和光純薬株式会社製特級試薬又は花王株式会社製の製品を使用した。
トルエンは、和光純薬株式会社製特級試薬又はコスモ石油株式会社製の製品を使用した。
【0145】
硫酸は、和光純薬株式会社製特級試薬又は要薬品株式会社製の製品を使用した。
アセトニトリル、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸エチル、オルトキシレン、パラキシレン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、イソプロピルアルコール、1-オクタノール、エチレングリコール、2,6-キシレノール、フェノール、ドデカナール、シクロヘキサノン、シクロへプタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、3.3.5-トリメチルシクロヘキサノン、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アセトフェノン、重クロロホルム、ヘプタン、炭酸セシウム、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンは、和光純薬株式会社製特級試薬を使用した。
【0146】
3-メルカプトプロピオン酸、フルオレノン、2-エチルヘキサナール、2-フェニルフェノール、2-シクロへキシルフェノール、2-シクロへキシルフェノール、2-ベンジルフェノールは東京化成工業株式会社製試薬を使用した。
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン及び炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
1,1―ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンは、株式会社新菱製の製品を使用した。
【0147】
[分析]
硫酸モノメチル及び硫酸モノ(2-ヒドロキシエチル)の分析は、プロトン核磁気共鳴(HNMR)を用いて測定することにより実施した。プロトン核磁気共鳴(HNMR)測定は、日本電子株式会社製のJNM=ECS400型を用いて実施した。
生成したビスフェノールの分析は、高速液体クロマトグラフ質量分析(LCMS)を用
いて測定することにより実施した。高速液体クロマトグラフ質量分析(LCMS)は、以下の手順と条件で行った。
【0148】
(分離装置):アジレント・テクノロジー株式会社製 Agilent1200、ImtaktScherzoSM-C18 3μm 150mm×4.6mmID。低圧グラジェント法。分析温度40℃。溶離液組成:A液酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩素水=3.000g:1ミリリットル:1リットルの溶液。B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1ミリリットル:1000ミリリットルの溶液。分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)分析時間0~25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、分析時間25~30分はA液:B液=90:10に維持、流速1.0ミリリットル/分にて分析した。検出波長は、280nmとした。
【0149】
(質量分析装置):アジレント・テクノロジー株式会社製AgilentLC/MS 6130。イオン源は、ESI(Postive/Negative) AJSプローブ使用。
ビスフェノール反応液の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
【0150】
(分離装置):島津製作所社製LC-2010A、ImtaktScherzoSM-C18 3μm 150mm×4.6mmID。低圧グラジェント法。分析温度40℃。溶離液組成:A液酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩素水=3.000g:1ミリリットル:1リットルの溶液。B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1ミリリットル:900ミリリットルの溶液。分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)分析時間0~25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、分析時間25~30分はA液:B液=90:10に維持、流速0.8ミリリットル/分にて分析した。検出波長は、280nmとした。
【0151】
アセトン基準の反応収率(モル%)は、高速液体クロマトグラフィーにより得られたビスフェノールの分析値から反応液中に含まれるビスフェノールのモル量を算出し、該ビスフェノールのモル量÷原料アセトンのモル量×100%で算出した。
イソペニルクレゾールの2量体の反応収率(面積%)(「生成率」とも称する)は、高速液体クロマトグラフィーで得られたイソペニルクレゾールの2量体の面積÷2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンの面積×100(面積%)で算出した。なお、イソペニルクレゾールの2量体以外の物質の生成率(面積%)についても、同様の方法で算出することができる。
本発明に係るアセトン基準の収率(モル%)は、得られたビスフェノールのモル量÷原料アセトンのモル量×100%で算出した。
【0152】
[参考例5]
50ミリリットルのナス型フラスコにメタノール0.2gを取り、そこに92重量%硫酸0.5gをゆっくり加えて1分間振り混ぜた。この液を5mmφのNMR試料管に入れ、ロック用の重クロロホルム管(2mmφ封管)を試料中に挿入してHNMRを測定した。HNMRスペクトル上、δ4.0ppmにシグナルが観測された。試薬の硫酸モノメチルナトリウム9.7mgを当該NMR試料管に添加したところδ4.0ppmのピークが増加したことから、該ピークが硫酸モノメチルのプロトンのシグナルであることを確認した。この結果より、硫酸とメタノールを混合すると硫酸モノメチルが生成することを確認した。
【0153】
[参考例6]
50ミリリットルのナス型フラスコにエチレングリコール0.2gを取り、そこに92重量%硫酸0.5gをゆっくり加えて1分間振り混ぜた。この液を5mmφのNMR試料管に入れ、ロック用の重クロロホルム管(2mmφ封管)を試料中に挿入してHNMRを測定した。HNMRスペクトル上、硫酸(2-ヒドロキシエチル)と考えられるブロードなシグナルがδ3.98-3.99ppm及び4.19-4.21ppmに検出された。この結果より、硫酸とエチレングリコールを混合することで硫酸モノ(2-ヒドロキシエチル)が生成することを確認した。
【0154】
[実施例9]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール35.0g(1.1モル)を入れた後に、88重量%硫酸77.7g(0.7モル)をゆっくり加えた。得られた溶液の一部を取り出し、5mmφのNMR試料管に入れ、ロック用の重クロロホルム管(2mmφ封管)を試料中に挿入してHNMRを測定した。HNMRスペクトル上、δ4.0ppmにシグナルが観測されたことから、硫酸モノメチルが発生していることを確認した。また、硫酸モノメチルに帰属されるδ4.0ppmとメタノールの帰属されるピークの積分値から硫酸モノメチルの発生量を算出したところ、硫酸モノメチルの発生量は30重量%であった。その後、反応器にトルエン72.6g、オルトクレゾール255.0g(2.4モル)及びドデカンチオール7.3g(0.04モル)をセパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにアセトン57.0g(1.0モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、反応液の色は橙色であった。この反応液を15時間、50℃で反応させた。反応終了後、トルエン135.0g及び脱塩素水175.5gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は85モル%であった。また、該高速液体クロマトグラフにおいて保持時間15.7分に見られたピークを高速液体クロマトグラフ質量分析のNegativeモードで測定したところ、マスナンバー295(M-1)が観測され、該保持時間15.7分のピークがイソプロペニルクレゾールの2量体であることが判明した。該イソプロペニルクレゾールの2量体の生成率は、0.7面積%であった。この有機相を80~30℃まで冷却して、30℃に到達時にした時に種晶2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールCと称する)1gを添加させて析出を確認した。その後、10℃まで冷却して10℃到達後、ガラスフィルターを用いて減圧濾過を行い、ウェットケーキとして粗ビスフェノールC239.9gを得た。
【0155】
温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、前記粗ビスフェノールC全量とトルエン449gを入れ、80℃に昇温した。均一溶液となったことを確認して、10℃まで冷却した。その後、ガラスフィルターを用いた減圧濾過を行い、ウエット精ビスフェノールCを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、ビスフェノールC 180.9g(0.7モル、アセトン基準の収率72モル%)を得た。
【0156】
[実施例10]
温度計、撹拌機及び滴下ロートを備えたフルジャケット式1.5リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール0.1g(3.1ミリモル)を入れた後に、80重量%硫酸250g(0.7モル)をゆっくり加えた。得られた溶液の一部を取り出し、
HNMRスペクトルを測定したところ、該硫酸モノメチルが10wtppm発生していた。その後、反応器にトルエン320g、及びオルトクレゾール230.0g(2.1モル)をセパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコ内の温度を30℃にした。前記滴下ロートにアセトン51.0g(0.9モル)とドデカンチオール5.3g(0.03モル)を入れて、内温が30℃に維持するように、60分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンとドデカンチオールの混合物を滴下終了後、反応液の色は橙色であった。得られた反応液を30℃で1時間混合した後、45℃に昇温させて反応させた。45℃到達(反応終了)後、脱塩水175.5gと28%水酸化ナトリウム水溶液135gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は69モル%であった。また、イソプロペニルクレゾールの2量体の生成率は、0.24面積%であった。
【0157】
[実施例11]
温度計、撹拌機及び滴下ロートを備えたフルジャケット式1.5リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール12g(3.1ミリモル)を入れた後に、80重量%硫酸250g(0.7モル)をゆっくり加えた。得られた溶液の一部を取り出し、HNMRスペクトルを測定したところ、該硫酸モノメチルが0.1wt%発生していた。その後、反応器にトルエン320g、及びオルトクレゾール230.0g(2.1モル)をセパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコ内の温度を30℃にした。前記滴下ロートにアセトン51.0g(0.9モル)とドデカンチオール5.3g(0.03モル)を入れて、内温が30℃に維持するように、60分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンとドデカンチオールの混合物の滴下終了後、反応液の色は橙色であった。得られた反応液を30℃で1時間混合した後、45℃に昇温させて反応させた。45℃到達(反応終了)後、脱塩水175.5gと28%水酸化ナトリウム水溶液135gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は63モル%であった。また、イソプロペニルクレゾールの2量体の生成率は、0.13面積%であった。
【0158】
[比較例5]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で92重量%硫酸58.5g(0.6モル)、トルエン54.3g、オルトクレゾール191.5g(1.8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにアセトン42.5g(0.7モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、赤茶色の反応液であった。この反応液を30分間、50℃で反応させたところ、反応液は完全に固化してしまい、混合不可になった。その後、脱塩素水100g、酢酸エチル200gを入れた後、5分間混合して析出物を溶解させた。得られた溶液を静置させ、水相を除去した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10
分間撹拌した。撹拌後、静置して水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、40モル%であった。また、イソプロペニルクレゾールの2量体の生成率は、6.2面積%であった。
【0159】
[参考例7]
温度計、撹拌機及び滴下ロートを備えたフルジャケット式1.5リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール12g(3.1ミリモル)、トルエン320g、オルトクレゾール230.0g(2.1モル)、アセトン51.0g(0.9モル)、及びドデカンチオール5.3g(0.03モル)をセパラブルフラスコに入れ、30℃にした。前記滴下ロートに70%硫酸250g(0.7モル)を入れ、内温が30℃に維持するように、ゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。該硫酸の滴下終了後、反応液の色は赤褐色であった。この反応液を30℃で1時間混合した後、45℃に昇温させて反応させた。反応終了後、脱塩素水175.5gと28%水酸化ナトリウム水溶液125gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は53モル%であった。また、イソプロペニルクレゾールの2量体の生成率は、0.3面積%であった。
【0160】
[参考例8]
温度計、撹拌機及び滴下ロートを備えたフルジャケット式1.5リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール85g、オルトクレゾール168g(1.6モル)、アセトン30g(0.5モル)をセパラブルフラスコに入れ、10℃にした。前記滴下ロートに98%硫酸100gを入れ、内温が10℃に維持するように、ゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。該硫酸の滴下終了後、反応液は赤褐色の均一溶液であった。この反応液をそのまま10℃で1時間混合した後、トルエン200gを入れて、30℃とし、2相分離させた。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、ビスフェノールCは痕跡量(1モル%)であり、その他複数の副生物が生成していた。
【0161】
実施例9~11、比較例5、参考例7、8について、触媒の種類や反応液の色調、反応液の性状、ビスフェノールCの反応収率等を表3にまとめた。
【0162】
【表3】


【0163】
表3より、硫酸モノメチルを触媒として用いた場合、反応液の着色化及び副生物であるイソプロペニルクレゾールの2量体の生成を抑制し、反応液を固化させることなく、色調に優れたビスフェノールCを収率良く得られることがわかった。
【0164】
[実施例12]
温度計、撹拌機及び滴下器を備えたフルジャケット式1立方メートルのグラスライニング製反応槽に88%硫酸566kgを供給し、該滴下器にメタノール255kgを供給して、該メタノールをゆっくり該反応槽に滴下して、硫酸モノメチル溶液を得た。温度計、撹拌機及び滴下槽を備えたフルジャケット式8立方メートルのグラスライニング製反応槽にトルエン530kg、オルトクレゾール1861kg(17.2キロモル)、ドデシルメルカプタン53kgを供給し、該滴下槽にアセトン413kg(7.1キロモル)を供給した。その後、前記硫酸モノメチル溶液を該8立方メートルのグラスライニング製反応槽にゆっくり送液した後、反応槽の内温が30℃を越えないようにアセトンをゆっくり供給した。アセトン供給後、反応槽の内温を50℃に昇温して15時間混合して反応を完結させた。その後、トルエン985kg、水1278kg、28重量%水酸化ナトリウム溶液1160kgを該反応槽の内温が50℃以下になるようにゆっくり供給した。その後、80℃まで昇温し、静置して下層の水相を抜き出した。得られた有機相に、1.5重量%の炭酸水素ナトリウム溶液599kgを加えて混合し、静置して下層の水相を抜き出した。得られた有機相をゆっくり10℃まで冷却したところ、ビスフェノールCが析出したスラリー液が得られた。このスラリー液を遠心分離機で濾液を分離し、ウェットケーキ1627kgを得た。このウェットケーキをフルジャケット式の6.8立方メートルのステンレス製晶析槽に供給後、トルエン2442kgを供給した。該晶析槽を80℃まで昇温し、純水551kgを加えて混合し、静置して下層の水相を抜き出した。更に、該晶析槽に純水552kgを加えて混合し、静置して下層の水相を抜き出した。得られた有機相に0.001重量%の塩化ナトリウム溶液27kgを加え、10℃まで冷却したところ、ビスフェノールCが析出し、スラリー液を得た。このスラリー液を遠心分離機で濾液を分離し、トルエン780kgで振りかけ洗浄し、ウェットケーキ1537kgを得た。得られたウェットケーキを6.5立方メートルの乾燥機に供給して十分に乾燥させビスフェノール
1440kg(5.6キロモル、アセトン基準の収率79モル%)を得た。実施例9及び12について、使用したアセトン量とビスフェノールCの反応収率を表4に纏めた。その結果、アセトンの量を増加させても同様にビスフェノールを製造することができることがわかった。
【0165】
【表4】

【0166】
[実施例13]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式200ミリリットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール6.9g(0.2モル)を入れた後に、92重量%硫酸15.4g(0.1モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン14.4g、オルトクレゾール50.6g(0.5モル)及びドデカンチオール1.4g(0.01モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン11.2g(0.20モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、5時間40℃で反応させた。反応終了後、トルエン50.0g及び脱塩素水50.0gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は89モル%であった。
【0167】
[実施例14]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール21.2g(0.7モル)を入れた後に、92重量%硫酸46.5g(0.4モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、オルトキシレン122.4g、オルトクレゾール137.7g(1.3モル)及びドデカンチオール4.4g(0.02モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン34.3g(0.6モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、オルトキシレン100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は88モル%であった。
【0168】
[実施例15]
セパラブルフラスコにオルトキシレン122.4gの代わりにパラキシレン137.4g、反応終了後オルトキシレン100gの代わりにパラキシレン100gを加えた以外は、実施例14と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は91モル%であった。
【0169】
[実施例16]
セパラブルフラスコにオルトキシレン122.4gの代わりにキシレン122.4g、反応終了後オルトキシレン100gの代わりにキシレン100gを加えた以外は、実施例114と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は88モル%であった。
【0170】
[実施例17]
セパラブルフラスコにオルトキシレン122.4gの代わりにメシチレン122.2g、反応終了後オルトキシレン100gの代わりにメシチレン100gを加えた以外は、実施例14と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は85モル%であった。
【0171】
[実施例18]
セパラブルフラスコにオルトキシレン122.4gの代わりにクロロベンゼン65.0g、反応終了後オルトキシレン100gの代わりにクロロベンゼン100gを加えた以外は、実施例14と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は60モル%であった。
【0172】
実施例13~18について、溶媒の種類と反応収率を表5に纏めた。その結果、溶媒の種類が変わってもビスフェノールCが収率良く得られることが明らかとなった。
【0173】
【表5】


【0174】
[実施例19]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でイソプロピルアルコール26.1g(0.4モル)を入れた後に、90重量%硫酸58.3g(0.5モル)をゆっくり加えた。その後、トルエン54.5g、オルトクレゾール191.5g(1.8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン42.5g(0.7モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、トルエン100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は84モル%であった。
【0175】
[実施例20]
イソプロピルアルコール26.1gの代わりに1-オクタノール26.2g(0.2モル)を供給した以外は、実施例19と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は82モル%であった。
【0176】
[実施例21]
イソプロピルアルコール26.1gの代わりにエチレングリコール18.4g(0.3モル)を供給した以外は、実施例19と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は75モル%であった。
【0177】
実施例13、実施例19~21について、脂肪族アルコールの種類と反応収率を表6に纏めた。その結果、脂肪族アルコールの種類が変わってもビスフェノールCが収率良く得られることが明らかとなった。
【0178】
【表6】


【0179】
[実施例22]
ドデカンチオール5.5gの代わりに3―メルカプトプロピオン酸2.9g(0.01
モル)、イソプロピルアルコール26.1gの代わりにメタノール26.3g(0.8モル)を供給した以外は、実施例19と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は98モル%であった。
【0180】
[実施例23]
ドデカンチオール5.5gの代わりに3―メルカプトプロピオン酸2.9g(0.01モル)、イソプロピルアルコール26.1gの代わりにエチレングリコール18.4g(0.3モル)を供給した以外は、実施例19と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は89モル%であった。
【0181】
実施例13、実施例21~23について、脂肪族アルコールの種類、チオールの種類と反応収率について表7に纏めた。その結果、脂肪族アルコールやチオールの種類が変わってもビスフェノールCが収率良く得られることが明らかとなった。
【0182】
【表7】


【0183】
[実施例24]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール1.7g(0.1モル)を入れた後に、92重量%硫酸33.0g(0.3モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン18g、フェノール63.0g(0.7モル)及びドデカンチオール1.7g(0.05モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン16.0g(0.3モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プ
ロパン(以下、ビスフェノールAと称する)が生成していることがわかった。その量は、73.2面積%であった。
【0184】
[実施例25]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール8.7g(0.3モル)を入れた後に、90重量%硫酸19.4g(0.2モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン18.1g、フェノール63.8g(0.7モル)及びドデカンチオール1.8g(0.01モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにドデカナール44.9g(0.2モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。ドデカナールの滴下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンが生成していることがわかった。得られた有機相を1リットルのナス型フラスコに移し、エバポレータを用いて、トルエン、酢酸エチル及びフェノールを留去した。残液に、ヘプタンとイソプロピルアルコールを供給し、晶出させた。得られたスラリー液を、ガラスフィルターを備えた減圧濾過器で固液分離し、白色固体を得た。この白色固体を500ミリリットルのナス型フラスコに移し、エバポレータを用いて乾燥させ、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン30.5g(0.1モル、収率35モル%)を得た。
【0185】
[実施例26]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール8.7g(0.3モル)を入れた後に、90重量%硫酸19.4g(0.2モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン18.2g、オルトクレゾール63.8g(0.6モル)及びドデカンチオール1.8g(0.01モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにドデカナール44.9g(0.2モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。ドデカナール滴下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー381(M-1)が観測され、1,1―ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ドデカンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて1,1―ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ドデカンの生成を確認したところ、60.7面積%であった。
【0186】
[実施例27]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26g(0.8モル)を入れた後に、90重量%硫酸58.5g(0.5モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン60g、オルトクレゾール197.0g(1.8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を
50℃にした。そこにフルオレノン136g(0.8モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。その後、2時間50℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーを測定したところ、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが生成していることがわかった。その生成率は、85.6面積%であった。
【0187】
[実施例28]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26.2g(モル)を入れた後に、92重量%硫酸58.5g(0.6モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン58.5g、オルトクレゾール192g(1.8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにシクロヘキサノン71.8g(0.7モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。シクロヘキサノンの滴下終了後、5時間50℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー295(M-1)が観測され、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサンの生成率を確認したところ、70.8面積%であった。
【0188】
[実施例29]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26.2g(0.8モル)を入れた後に、92重量%硫酸58.5g(0.6モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン58.5g、オルトクレゾール191g(1.8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにシクロへプタノン42.5g(0.4モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。シクロへプタノンの滴下終了後、5時間50℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー309(M-1)が観測され、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘプタンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘプタンの生成率を確認したところ、25.9面積%であった。
【0189】
[実施例30]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26.2g(0.8モル)を入れた後に、92重量%硫酸58.5g(0.6モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン58.5g、オルトクレゾール191.5g(1.8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにメチルエチルケトン52.7g(0.7モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。メチルエチルケトンの滴下終了後、5時間50℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー269(M-1)が観測され、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ブタンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ブタンの生成率を確認したところ、47.6面積%であった。
【0190】
[実施例31]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26.2g(0.8モル)を入れた後に、92重量%硫酸58.5g(0.6モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン58.5g、オルトクレゾール191.5g(1,8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにメチルイソブチルケトン73.2g(0.7モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。メチルイソブチルケトンの滴下終了後、5時間50℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー297(M-1)が観測され、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4-メチルペンタンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4-メチルペンタンの生成率を確認したところ、65.7面積%であった。
【0191】
[実施例32]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26.2g(0.8モル)を入れた後に、92重量%硫酸58.5g(0.6モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン18g、2,6-キシレノール72g(0.6モル)及びドデカンチオール1.8g(0.01モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン14.6g(0.3モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出
し、高速液体クロマトグラフィーを測定したところ、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンが生成していることを確認した。その2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンの生成率は、41.9面積%であった。
【0192】
[実施例33]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール5.0g(0.2モル)を入れた後に、92重量%硫酸100g(0.9モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン54.3g、フェノール152g(1.6モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートに3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン81g(0.6モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンの滴下終了後、2時間50℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー309(M-1)が観測され、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの生成率を確認したところ、62.5面積%であった。
【0193】
[実施例34]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール4g(0.1モル)を入れた後に、85重量%硫酸84g(0.7モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン54g、オルトクレゾール151g(1.4モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトフェノン70g(0.6モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトフェノンの滴下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー317(M-1)が観測され、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-フェニルエタンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-フェニルエタンの生成率を確認したところ、48.2面積%であった。
【0194】
[実施例35]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール18g(0.6モル)を入れた後に、85重量%硫酸25.8g(0.2モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン24g、2-フェニルフェノール75g(0.4モル)及びドデカンチオール2.4g(0.01モル)を入れ、セパラブルフラス
コ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン10.5g(0.2モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー379(M-1)が観測され、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパンの生成率を確認したところ、9.0面積%であった。
【0195】
[実施例36]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール9g(0.3モル)を入れた後に、85重量%硫酸22g(0.2モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン24g、2-シクロへキシルフェノール50g(0.3モル)及びドデカンチオール2.4g(0.01モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン9g(0.2モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー391(M-1)が観測され、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロへキシルフェニル)プロパンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロへキシルフェニル)プロパンの生成率を確認したところ、22.9面積%であった。
【0196】
[実施例37]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール1.1g(0.03モル)を入れた後に、85重量%硫酸25.8g(0.2モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン7.5g、2-ベンジルフェノール50g(0.3モル)及びドデカンチオール2.7g(0.01モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン7.7g(0.1モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー407(M-1)が観測され、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ベンジルフェニル)プロパンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ベンジルフェニル)プロパンの生成率を確認したところ、60.0面積%であった。
【0197】
[実施例38]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール41.6g(1.3モル)を入れた後に、80重量%硫酸100g(0.8モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン54.3g、フェノール130g(1.4モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を30℃にした。前記滴下ロートに2-エチルヘキサナール73g(0.5モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。2-エチルヘキサナールの滴下終了後、2時間30℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー297(M-1)が観測され、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサンの生成率を確認したところ、52.4面積%であった。
【0198】
[実施例39]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール41.6g(1.3モル)を入れた後に、80重量%硫酸100g(0.8モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン54.3g、オルトクレゾール150g(1.4モル)及びドデカンチオール5,5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を30℃にした。前記滴下ロートに2-エチルヘキサナール73g(0.5モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。2-エチルヘキサナールの滴下終了後、2時間30℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー325(M-1)が観測され、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-エチルヘキサンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-エチルヘキサンの生成率を確認したところ、67.4面積%であった。実施例23~39について、芳香族アルコール、ケトン又はアルデヒド及び合成したビスフェノールについて表8に纏めた。その結果、硫酸モノアルキルを触媒として用いることで、様々なビスフェノールが合成できることが明らかとなった。
【0199】
【表8a】


【0200】
【表8b】


【0201】
[実施例40]
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコのジャケットに、-10℃の冷媒を流した。そこへ窒素雰囲気下で、トルエン240g、メタノール9g、及びオルトクレゾール172.5g(1.60モル)を入れ、内温を―5℃まで冷却した。その後、98重量%硫酸67.5gを加えた。該滴下ロートに、ドデカンチオール4.1g及びアセトン45.8g(0.79モル)の混合物を入れた。該セパラブルフラスコの内温が―5℃となったところで、該混合物を1時間かけてゆっくり滴下した。滴下後、10℃で1時間撹拌した後、更に45℃に昇
温して45℃のまま1時間撹拌した。得られた反応液に、28重量%の水酸化ナトリウム
水溶液を128g加えた。80℃に昇温しながら、pHが5-8の間となるように28重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えた。内温が80℃に到達後、水相を抜出し、飽和重曹水で洗浄及び水洗した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は80モル%であった。
【0202】
[実施例41]
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、実施例9で得られたビスフェノールC100g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.5g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールCと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネートをストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
【0203】
該ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は25000であった。またペレットYIは、7.6であった。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂の製造の原料として適したビスフェノール組成物およびその製造方法が提供される。また、本発明のビスフェノール組成物は、芳香族アルコールスルホン酸塩を含有しているため、炭酸ジエステルとの溶融重合反応を効率的に進行させ、色調に優れたポリカーボネート樹脂を製造できる。