(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160910
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ホットメルト接着性樹脂積層体及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 123/00 20060101AFI20231026BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20231026BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231026BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231026BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231026BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20231026BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20231026BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20231026BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C09J123/00
C09J7/35
B32B27/00 D
B32B27/30 A
B32B27/32 Z
B32B27/34
B32B27/38
B32B27/36
B32B27/42 101
B32B27/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142349
(22)【出願日】2023-09-01
(62)【分割の表示】P 2019018942の分割
【原出願日】2019-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2018018659
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】武井 邦浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 宏和
(57)【要約】
【課題】被着体との接着力が強く、過酷な耐久条件の後において接着力を維持できるホットメルト接着性樹脂積層体及びこれを用いた積層体の提供。
【解決手段】樹脂を形成材料とする基材層と、接着層とを有するホットメルト接着性樹脂積層体であって、前記基材層の少なくとも片方の面に接着層を備え、前記基材層は、前記接着層に接する面に、コロナ処理又は酸素プラズマ処理により基材表面に露出させた酸性基を有し、前記接着層を構成する接着剤組成物は、接着性ポリオレフィン系樹脂を含み、前記接着性ポリオレフィン系樹脂は、イミン変性ポリオレフィン又はカルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンであり、前記イミン変性ポリオレフィン又はカルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンのメルトフローレートが、2g/10分以上25g/10分以下であることを特徴とする、ホットメルト接着性樹脂積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリケトン、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレンからなる群より選択される1種以上の樹脂を形成材料とする基材層と、接着層とを有するホットメルト接着性樹脂積層体であって、
前記基材層の少なくとも片方の面に接着層を備え、
前記基材層は、前記接着層に接する面に、コロナ処理又は酸素プラズマ処理により基材表面に露出させた酸性基を有し、
前記接着層を構成する接着剤組成物は、接着性ポリオレフィン系樹脂を含み、前記接着性ポリオレフィン系樹脂は、イミン変性ポリオレフィンであり、前記イミン変性ポリオレフィンのメルトフローレートが、2g/10分以上25g/10分以下であることを特徴とする、ホットメルト接着性樹脂積層体。
【請求項2】
前記イミン変性ポリオレフィンが、イミン変性ポリプロピレンである、請求項1に記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
【請求項3】
ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂を形成材料とする基材層と、接着層とを有するホットメルト接着性樹脂積層体であって、
前記基材層の少なくとも片方の面に接着層を備え、
前記基材層は、前記接着層に接する面に、コロナ処理又は酸素プラズマ処理により基材表面に露出させた酸性基を有し、
前記接着層を構成する接着剤組成物は、接着性ポリオレフィン系樹脂を含み、前記接着性ポリオレフィン系樹脂は、カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンであり、前記カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンのメルトフローレートが、2g/10分以上25g/10分以下であることを特徴とする、ホットメルト接着性樹脂積層体。
【請求項4】
前記基材層の厚みが10μm以上200μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
【請求項5】
前記基材層が、前記樹脂を成型したフィルム、又は前記樹脂と不織布若しくは織布から選ばれる1種との複合体である、請求項1~4のいずれか1項に記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
【請求項6】
前記接着剤組成物がオレフィン系エラストマーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
【請求項7】
前記接着剤組成物が、メルトフローレートが2g/10分以上25g/10分以下の未変性のポリオレフィンを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のホットメルト接着性樹脂積層体と、被着体とを備える積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着性樹脂積層体及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被着体に接着する接着フィルムとしては、特許文献1に記載されているような、耐熱性樹脂フィルムからなる基材の両面に熱硬化性のエポキシ系接着剤層が形成されてなる3層構造からなる積層フィルムが知られている。
このような積層フィルムは、車載部品の接着に使用されることがある。車載部品は高温や高湿度に曝されることがある。そのため、車載部品用に用いられる積層フィルムには、接着力の向上に加えて過酷な条件下における耐久性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の積層フィルムは、被着体として特に金属との接着を行ったときに、被着体との接着力をより強くする観点や、過酷な耐久条件の後において接着力を十分に保つという観点から、改良の余地があった。
特許文献1に記載の積層フィルムは、積層体としたときに、積層体の強度を確保できず、積層体の層間で剥離が起こってしまい、接着剤として十分な強度を保てないという課題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、被着体との接着力が強く、過酷な耐久条件の後において接着力を維持できるホットメルト接着性樹脂積層体及びこれを用いた積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]樹脂を形成材料とする基材層と、接着層とを有するホットメルト接着性樹脂積層体であって、前記基材層の少なくとも片方の面に接着層を備え、前記基材層は、前記接着層に接する面に酸性基を有し、前記接着層を構成する接着剤組成物は、接着性ポリオレフィン系樹脂を含み、前記接着性ポリオレフィン系樹脂は、イミン変性ポリオレフィンであり、前記イミン変性ポリオレフィンのメルトフローレートが、2g/10分以上25g/10分以下であることを特徴とする、ホットメルト接着性樹脂積層体。
[2]前記イミン変性ポリオレフィンが、イミン変性ポリプロピレンである、[1]に記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
[3]樹脂を形成材料とする基材層と、接着層とを有するホットメルト接着性樹脂積層体であって、前記基材層の少なくとも片方の面に接着層を備え、前記基材層は、前記接着層に接する面に酸性基を有し、前記接着層を構成する接着剤組成物は、接着性ポリオレフィン系樹脂を含み、前記接着性ポリオレフィン系樹脂は、カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンであり、前記カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンのメルトフローレートが、2g/10分以上25g/10分以下であることを特徴とする、ホットメルト接着性樹脂積層体。
[4]前記酸性基が、カルボキシル基、カルボニル基、リン酸基、水酸基又はスルホ基である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
[5]前記樹脂が、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリケトン、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレンからなる群より選択される1種以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
[6]前記基材層の厚みが10μm以上200μm以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
[7]前記基材層が、前記樹脂を成型したフィルム、又は前記樹脂と不織布若しくは織布から選ばれる1種との複合体である、[1]~[6]のいずれか1つに記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
[8]前記接着剤組成物がオレフィン系エラストマーを含む、[1]~[7]のいずれか1つに記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
[9]前記接着剤組成物が、メルトフローレートが2g/10分以上25g/10分以下の未変性のポリオレフィンを含む、[1]~[8]のいずれか1つに記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
[10][1]~[9]のいずれか1つに記載のホットメルト接着性樹脂積層体と、被着体とを備える積層体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被着体との接着力が強く、過酷な耐久条件の後において接着力を維持できるホットメルト接着性樹脂積層体及びこれを用いた積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のホットメルト接着性樹脂積層体の一例を示す図である。
【
図2】本発明のホットメルト接着性樹脂積層体の一例を示す図である。
【
図3】本発明のホットメルト接着性樹脂積層体の一例を示す図である。
【
図4】本発明のホットメルト積層体の一例を示す図である。
【
図5】本発明のホットメルト積層体の一例を示す図である。
【
図6】本発明のホットメルト積層体の一例を示す図である。
【
図7】剥離試験に用いる試験片の積層状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例であり、これに限定されるものではない。
【0009】
<ホットメルト接着性樹脂積層体1>
本発明の第一の実施形態に係るホットメルト接着性樹脂積層体1は、基材層と、接着層とを有する。本実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体10を
図1に示す。本実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体は、基材層2の少なくとも片方の面3に接着層1を備える。基材層2は、前記接着層1に接する面3に酸性基を有する。
接着層1は、接着剤組成物から構成される。ホットメルト接着性樹脂積層体1において、接着剤組成物は、接着性ポリオレフィン系樹脂を含み、前記接着性ポリオレフィン系樹脂は、イミン変性ポリオレフィンである。イミン変性ポリオレフィンのメルトフローレートが、2g/10分以上25g/10分以下である。
【0010】
<ホットメルト接着性樹脂積層体2>
本発明の第二の実施形態に係るホットメルト接着性樹脂積層体2は、基材層と、接着層とを有する。本実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体10を
図1に示す。本実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体は、基材層2の少なくとも片方の面3に接着層1を備える。基材層2は、前記接着層1に接する面3に酸性基を有する。
接着層1は、接着剤組成物から構成される。ホットメルト接着性樹脂積層体2において、接着剤組成物は、接着性ポリオレフィン系樹脂を含み、前記接着性ポリオレフィン系樹脂は、カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンである。変性ポリオレフィンのメルトフローレートが、2g/10分以上25g/10分以下である。
【0011】
本実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体は、基材層の表面に酸性基を有する。この酸性基と、接着層を構成する接着剤組成物中のイミン変性ポリオレフィンとが反応し、強固に結合する。これにより、接着層が基材層と強固に接着することに加え、ホットメルト接着性樹脂積層体の強度を確保できる。この結果、例えば高温下や高湿度下等の過酷な条件下においても基材層と接着層との間での層間剥離の発生を抑制し、高い接着力を維持できる。
以下、本発明を構成する各材料について説明する。
【0012】
[基材層]
基材層2を構成する樹脂としては、十分な耐熱性を有する樹脂であれば特に限定されない。本実施形態において、例えば、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド樹脂(SPS)、ポリフェニレンエーテル、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリケトン、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレンからなる群より選択される1種以上が挙げられる。
本実施形態においては、上記のなかでも、フッ素樹脂、PET又はSPSが好ましい。
【0013】
基材層2の厚みは、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上が特に好ましい。また、220μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、190μm以下が特に好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。本実施形態においては、10μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0014】
本実施形態において、基材層2は接着層1に接する面3に酸性基を有する。酸性基としては、カルボキシ基、カルボニル基、リン酸基、水酸基又はスルホ基が挙げられる。酸性基が水酸基である場合、フェノール性水酸基が好ましい。
本実施形態において、基材層の表面に酸性基を導入する方法としては、予め表面が酸変性された樹脂材料を使用する方法、コロナ処理又は酸素プラズマ処理により基材表面に酸性基を露出させる方法が挙げられる。
【0015】
本実施形態でのプラズマ処理とは、ヘリウム、アルゴンなどの希ガスあるいは窒素ガス雰囲気での大気圧グロープラズマ処理であり、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス等を反応ガスとすることができる。
酸素ガスを反応ガスとする大気圧プラズマ処理では、基材の表面において、高分子の主鎖や側鎖に、カルボニル基(>CO)やカルボキシル基(-COOH)などの酸素官能基を生成させることができる。また、反応ガスには、CH4、CO2等を添加してもよい。CO2を反応ガスを添加した場合には、基材の表面に弱い酸化が起こり、酸素官能基が主に生成する。
【0016】
本実施形態において、基材層は前記樹脂を成型したフィルム、又は前記樹脂と不織布若しくは織布から選ばれる1種との複合体であってもよい。
【0017】
[接着層]
本実施形態において、接着層1は接着剤組成物から構成される。本実施形態に使用される接着剤組成物は、接着性ポリオレフィン系樹脂を含み、前記接着性ポリオレフィン系樹脂は、イミン変性ポリオレフィンである。また、イミン変性ポリオレフィンのメルトフローレートは、2g/10分以上25g/10分以下である。また、他の態様においては、前記接着性ポリオレフィン系樹脂は、カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンである。前記カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンのメルトフローレートが、2g/10分以上25g/10分以下である。
【0018】
接着層1の厚みは特に限定されず、例えば10μm以上50μm以下、15μm以上45μm以下とすればよい。
【0019】
・接着剤組成物
本実施形態に用いられる接着剤組成物は、イミン変性ポリオレフィン又はカルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンを必須成分とし、任意の未変性ポリオレフィンと、任意のオレフィン系エラストマーを含有していてもよい。
【0020】
・・イミン変性ポリオレフィン
本実施形態においてイミン変性ポリオレフィンは、接着性ポリオレフィンにイミノ基を複数有するポリイミン化合物を、ラジカル発生剤の存在下でグラフト処理することによって得ることが好ましい。本実施形態においては、ポリプロピレンイミンをグラフト処理した、イミン変性ポリプロピレンであることが好ましい。
【0021】
また、本実施形態において、温度190℃又は230℃、荷重2.16kgの条件下でASTM D1238に準拠して測定されるメルトフローレートが2g/10分以上25g/10分以下であることが好ましく、2.5g/10分以上20g/10分以下がより好ましく、2.8g/10分以上18g/10分以下がさらに好ましい。
【0022】
接着性ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンとオレフィン系モノマーとの共重合体等が挙げられる。
共重合する場合の前記オレフィン系モノマーとしては、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン等が挙げられる。
共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0023】
なかでも接着性ポリオレフィンとしては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンとブテンとの共重合体等のプロピレンを原料として重合されるポリプロピレン系樹脂が好ましく;特にプロピレン-1-ブテン共重合体、すなわち側鎖にメチル基及びエチル基を有するポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0024】
・・・ポリイミン化合物
本実施形態において、ポリイミン化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0025】
【化1】
[式中のR
1、R
2、R
3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、非反応性の原子又は有機基を表し、R
1とR
2は互いに結合して環を形成していても良い。nは自然数であり、n
1は20~2000の整数を表す。]
【0026】
式中のR1、R2、R3としては、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基又はアルコキシ基であることが好ましい。
R1、R2、R3の、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ベンチル基、イソピロピル基、イソブチル基等を含む炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、炭素数1~5アルキル基がさらに好ましく、炭素数1~3のアルキル基が特に好ましい。
【0027】
上記アルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基が好ましく、炭素数2~8のアルケニル基がより好ましく、炭素数2~5のアルケニル基がさらに好ましく、炭素数2~4のアルケニル基が特に好ましい。
【0028】
上記アルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、1-ヘプチニル基などの、炭素数2~18のアルキニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキニル基がより好ましく、炭素数2~6のアルキニル基がさらに好ましく、炭素数2~4のアルキニル基が特に好ましい。
【0029】
上記シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの、炭素数3~10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3~6のシクロアルキル基がより好ましく、炭素数5~6のシクロアルキル基が特に好ましい。
【0030】
上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基が好ましい。
【0031】
上記複素環基としては、例えば、フラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、テトラヒドロフラン環などの5員環、ピラン環などの6員環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、キサントン環、キサンテン環、クロマン環、イソクロマン環、クロメン環などの縮合環に代表されるヘテロ原子として酸素原子を含む複素環、あるいは、例えば、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチオフェン環などに代表されるヘテロ原子として硫黄原子を含む複素環、さらに、例えば、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピロリジン環などの5員環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、モルホリン環などの6員環、インドール環、インドレン環、イソインドール環、インダゾール環、インドリン環、イソインドリン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリンキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、プリン環、カルバゾール環、アクリジン環、ナフトキノリン環、フェナントロジン環、フェナントロリン環、ナフチリジン環、ベンゾキノリン環、フェノキサジン環、フタロシアニン環、アントラシアニン環などの縮合環に代表されるヘテロ原子として窒素原子を含む複素環などが挙げられる。
【0032】
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1~10、好ましくは1~6のアルコキシ基が挙げられる。
【0033】
ポリイミン化合物の好適な具体例としては、例えば、ポリプロピレンイミンが挙げられる。
【0034】
ポリイミン化合物は、分子量が1,000以上であることが好ましいが、活性化処理後のオレフィンとの反応性等の観点から、より高分子量であることが好ましい。
具体的には、分子量が1,000~200,000であることが好ましく、分子量が3,000~200,000であることがより好ましく、分子量が15,000~200,000であることが特に好ましい。
【0035】
グラフト処理する際に用いるラジカル発生剤としては、有機過酸化物、有機パーエステルが挙げられる。ベンゾイルパーオキシド、ジクロルベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(パーオキシドベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルパーオキシド、tert-ブチルペルアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルフェニルアセテート、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペル-sec-オクトエート、tert-ブチルペルピバレート、クミルペルピバレートおよびtert-ブチルペルジエチルアセテート、その他アゾ化合物、たとえばアゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレートが用いられる。これらのうちではジクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキシドが好ましい。
【0036】
中でも、ラジカル発生剤としては、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、半減期1分の分解温度が100℃以上のものが好適である。また、有機過酸化物として具体的には、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン-3、ラウロイルパーオキサイド、及び、t-ブチルパーオキシベンゾエートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0037】
ラジカル発生剤の使用割合は、ポリオレフィン100質量部に対して通常0.001~1質量部である。
【0038】
上記イミン変性オレフィンは、ポリオレフィンと、ポリイミン化合物と、ラジカル発生剤とを均一混合し処理することにより製造することができる。具体的には、押出機やバンバリーミキサー、ニーダーなどを用いる溶融混練法、適当な溶媒に溶解させる溶液法、適当な溶媒中に懸濁させるスラリー法、又は、いわゆる気相グラフト法等が挙げられる。上記処理の温度としては、ポリオレフィンの劣化、ポリイミン化合物の分解、使用するラジカル発生剤の分解温度などを考慮して適宜選択される。例えば、上記溶融混練法の場合、通常、60~350℃の温度で行われる。上記処理の温度として好ましくは、190~350℃であり、より好ましくは、200~300℃である。
【0039】
・・カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィン
カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンは、カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィンと、カルボジイミド基含有化合物とを、未変性ポリオレフィンの存在下で反応させて得られるものであることが好ましい。反応させる方法としては、230℃以上の温度で溶融混練する方法が挙げられる。
【0040】
ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、テトラシクロドデセン、ノルボルネンの単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0041】
カルボジイミド基と反応する基を有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、またはこれらの酸無水物あるいはこれらの誘導体(例えば酸ハライド、アミド、イミド、エステルなど)が挙げられる。これらの中では、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸アミノプロピルが好ましい。
【0042】
カルボジイミド基と反応する基を有する化合物をポリオレフィンに導入する方法としては、周知の方法を採用することが可能であるが、例えば、ポリオレフィン主鎖にカルボジイミド基と反応する基を有する化合物をグラフト共重合する方法や、オレフィンとカルボジイミド基と反応する基を有する化合物をラジカル共重合する方法等を例示することができる。
【0043】
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン1、ポリ-4-メチルペンテン-1およびこれらのα-オレフィン共重合体などの結晶性ポリオレフィンの無水マレイン酸グラフト共重合体が好ましく、ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト共重合体がより好ましい。特に、密度0.915g/cm3以上のポリエチレンの無水マレイン酸グラフト共重合体が好ましい。
【0044】
カルボジイミド基含有化合物は、下記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリカルボジイミドが好ましい。
-N=C=N-R4- ・・・(2)
(式中、R4は炭素数2から40の2価の有機基を表す)
【0045】
ポリカルボジイミドは、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどの有機ジイソシアネートを縮合触媒の存在下、無溶媒又は不活性溶媒中で、脱炭酸縮合反応を行なうことにより製造することができる。有機ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート等を使用することができる。
【0046】
未変性ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、ポリブテン-1、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、ポリ-3-メチル-1-ブテン、エチレン-テトラシクロドデセン共重合体などの環状ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0047】
・・未変性ポリオレフィン
本実施形態において、接着剤組成物は未変性ポリオレフィンを含有していてもよい。未変性ポリオレフィンとしては、上記カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンの説明において記載した未変性ポリオレフィンが挙げられ、中でもポリプロピレンが好ましい。
【0048】
また、本実施形態において、未変性ポリオレフィンは、温度190℃又は230℃、荷重2.16kgの条件下でASTM D1238に準拠して測定されるメルトフローレートが2g/10分以上25g/10分以下が好ましく、2.5g/10分以上20g/10分以下がより好ましく、2.8g/10分以上18g/10分以下がさらに好ましい。
【0049】
本実施形態において、接着剤組成物が未変性ポリオレフィンを含有する場合、未変性ポリオレフィンは接着剤組成物の全量を100質量部とした場合に、1質量部以上40質量部以下が好ましく、5質量部以上35質量部以下がより好ましい。
【0050】
・・オレフィン系エラストマー
本実施形態において、接着剤組成物はオレフィン系エラストマーを含有していてもよい。オレフィン系エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン等からなるハードセグメントと、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等からなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体が挙げられる。オレフィン系エラストマーに使用可能なオレフィン系重合体としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-エチレン共重合体等の芳香族オレフィン-脂肪族オレフィンの共重合体が挙げられる。
【0051】
本実施形態において、接着剤組成物がオレフィン系エラストマーを含有する場合、オレフィン系エラストマーは接着剤組成物の全量を100質量部とした場合に、1質量部以上40質量部以下が好ましく、5質量部以上35質量部以下がより好ましい。
【0052】
本実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体は、
図1に示す接着層1と基材層2をこの順で備える2層構成のホットメルト接着性樹脂積層体10であってもよい。
また、
図2に示すように、第1の接着層21、基材層22、第2の接着層23をこの順で備える3層構成のホットメルト接着性樹脂積層体20であってもよい。
また、
図3に示すように、第1の接着層41、第1の基材層42、第2の接着層43、第2の基材層44、第3の接着層45をこの順で備える5層構成のホットメルト接着性樹脂積層体40であってもよい。
【0053】
[ホットメルト接着性樹脂積層体の製造方法]
本発明の一実施形態であるホットメルト接着性樹脂積層体の製造方法としては、例えば、共押出法が挙げられる。
共押出法を用いて2層構成のホットメルト接着性樹脂積層体を製造する場合、基材層を構成する樹脂、接着剤層を構成する樹脂をそれぞれ、異なる押出機から別々に押し出す。これら別々に溶融した樹脂は、ダイの中で、接着剤層/基材層の順となるように積層され複合フィルムを形成する。その複合フィルムを延伸して、所定の厚みのホットメルト接着性樹脂積層体を得る。
【0054】
3層構成とする場合には、2層構成のホットメルト接着性樹脂積層体と、第2の接着層とを、接着剤層/基材層/第2の接着層の順となるように、第2の接着層を構成する樹脂を押し出し機から押し出して積層しもよい。また、第2の接着層を構成する樹脂を接着剤層/基材層/第2の接着層の順となるように、熱ラミネートしてもよい。
【0055】
本発明のホットメルト接着性樹脂積層体の層構成の例として、下記の層構成の積層例1~6が挙げられる。
・積層例1
接着層/基材層を、この順で積層した積層体。
・積層例2
接着層/基材層/接着層を、この順で積層した積層体。
・積層例3
接着層/中間層/基材層を、この順で積層した積層体。
・積層例4
接着層/中間層/基材層/中間層/接着層を、この順で積層した積層体。
・積層例5
接着層/第1の基材層/接着層/第2の基材層/接着層をこの順で積層した積層体。
・積層例6
接着層/中間層/第1の基材層/接着層/第2の基材層/中間層/接着層をこの順で積層した積層体。
・積層例7
被着体接着層/接着層/基材層をこの順で積層した積層体。
・積層例8
被着体接着層/接着層/基材層/接着層/被着体接着層をこの順で積層した積層体。
【0056】
本実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体は積層例1に示すように少なくとも片面に接着層を含む。他の実施形態として、積層例2、4~6に示すように基材層の両面に接着層を備えていてもよい。
また、積層例3及び4に示すように、接着層と基材層の間に中間層を設けてもよい。中間層を設けることにより、各層の間の接着力を向上させることができる。この中間層は、樹脂材料からなる層であることが好ましい。中間層は前記接着剤組成物を用いて形成することが好ましく、接着層に用いる材料とは異なる接着性ポリオレフィンを用いることが好ましい。
「接着層に用いる材料とは異なる接着性ポリオレフィン」とは、一例を挙げると、メルトフローレートが異なる接着性ポリオレフィンが挙げられる。
積層例3や4において、接着層に酸性基を有し、中間層にイミン変性ポリオレフィン又はカルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンを含むと、接着層の酸性基と、中間層の置換基の反応により強固に接着し、接着積層体全体の強度が向上する。
【0057】
本実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体は、積層例5、6のように、複数の基材層を備える形態であってもよい。この形態の場合、複数(例えば2枚)の基材層を接着する接着層は、表面の接着層とは異なる接着層を用いてもよく、同一の接着層を用いてもよい。
積層例5、6のように、複数の基材層を備える場合、基材層の膜厚を任意に調整できるため好ましい。またこのような構成とすることにより、接着層の柔軟性を向上させることができる。
本実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体は、積層例7、8のように、接着層の外側に被着体に応じた各種の接着層を備える形態であってもよい。この形態の場合、被着体と接着する被着体接着層は、基材面の接着層とは異なる接着性ポリオレフィン樹脂を用いる方が好ましい。異なる接着性ポリオレフィン樹脂の一例としてはエポキシ変性ポリオレフィンである。
積層例7、8のように、被着体に応じた被着体接着層を備える場合、被着体に最適な接着性ポリオレフィンを選定でき、被着体面の接着力を向上できるため好ましい。また基材面は接着層と酸性基の反応により強固に接着しており、接着積層体の強度も確保できる。
【0058】
接着剤層を構成する樹脂として、接着剤組成物を用いる場合、イミン変性ポリオレフィン又はカルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンと、他の任意の樹脂成分とを溶融混練する。
【0059】
溶融混練の装置としては、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダー等を用いることができる。
【0060】
溶融混練時の加熱温度は、イミン変性ポリオレフィン又はカルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンと、他の任意の樹脂成分とが十分に溶融し、かつ熱分解しないという点で、240℃~300℃の範囲内から選択することが好ましい。
なお、混練温度は、溶融混練装置から押し出された直後における、溶融状態の接着剤樹脂組成物に、熱電対を接触させる等の方法によって測定することが可能である。
【0061】
<積層体>
本発明は、上記本発明のホットメルト接着性樹脂積層体と、被着体とを備える積層体である。
本発明の積層体は、
図4に示すように、被着体5と、前記本発明のホットメルト接着性樹脂積層体10をこの順に備えていてもよい。
また、
図5に示すように、第1の被着体5と、前記本発明のホットメルト接着性樹脂積層体20と、第2の被着体6とをこの順で備える積層体であってもよい。
また、
図6に示すように、第1の被着体5と、前記本発明のホットメルト接着性樹脂積層体40と、第2の被着体6とをこの順で備える積層体であってもよい。
【0062】
接着層が、本発明のホットメルト接着性樹脂積層体を形成材料とする接着層を備えるものであるため、被着体同士を接着した場合にも良好な接着性及び耐久性を得ることが可能となる。
本発明の積層体を用いて接着する被着体は、金属、ガラス、プラスチックなど各種の被着体を用いることができる。上記本発明のホットメルト接着性樹脂積層体は金属に対して高い接着性を発揮できるため、被着体として金属を好適に用いることができる。
金属は一般に知られている金属板、金属平面板もしくは金属箔を用いることができる。これらに用いられる金属としては例えば、鉄、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛、チタン、クロムであってよく、合金であるステンレス等であってもよい。また、金属によるめっきや金属を含む塗料による塗布加工により表面加工処理をされた金属もしくは非金属を被着体として用いてもよい。特に好ましくは、鉄、アルミニウム、チタン、ステンレス、表面加工処理をされた金属からなる金属平面板もしくは金属箔であり、これらを被着体として用いることにより、本発明のホットメルト接着性樹脂積層体が特に強固な接着力を発揮する。
【実施例0063】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0064】
<熱水浸漬後剥離強度試験>
剥離強度試験について、
図7、8を用いて説明する。
まず、
図7に示す積層体を試験片とした。厚さ(L
3)30μm、長さ(L
1)150mm×幅(L
2)10mmのステンレス箔31に、各実施例および比較例のホットメルト接着性樹脂積層体30を10mm(L
7)×10mm(L
8)に切り出したものを積層し、その上に厚さ(L
6)30μm、長さ(L
4)150mm×幅(L
5)10mmにカットしたステンレス箔32を載せて0.4MPaの圧力をかけながら、200℃で5秒間貼り合わせることで、積層体とした。積層の態様は、
図7に示すように一端を揃えて積層した。
熱水試験の場合は、この積層体を、95℃の純水に1000時間浸漬した。
その後、積層体を引き上げ、23℃55%Rhで1時間乾燥させた。
【0065】
その後、
図8に示すように、ステンレス箔31を引張側になるように、ホットメルト接着性樹脂積層体30の端部の位置でステンレス箔31及びステンレス箔32をそれぞれ屈曲させ、把持具33で把持し、ステンレス箔32を把持具34で把持して固定し、ステンレス箔31を、符号35に示す引張方向に引張、剥離強度を測定した。
引張速度は300mm/分で測定した。
【0066】
ホットメルト接着性樹脂積層体30として、接着層/基材層をこの順で積層した2層構成のホットメルト接着性樹脂積層体を使用する場合には、接着層とステンレス箔が接するように、ホットメルト接着性樹脂積層体とステンレス箔とを積層し、ステンレス箔/接着層/基材層がこの順で積層された積層体を製造した。この積層体について、
図8に示すように、ステンレス箔を引張側になるように、ホットメルト接着性樹脂積層体の端部の位置でステンレス箔及び基材層をそれぞれ屈曲させ、把持具でそれぞれ把持し、ステンレス箔を把持具で把持して固定し、基材層を、上記と同様の引張方向に引張、剥離強度を測定した。
引張速度は300mm/分で測定した。
【0067】
<酸溶液浸漬後剥離強度試験>
この積層体を、フッ化水素を500ppm含有するpH2の酸溶液に1000時間浸漬した以外は、上記<熱水浸漬後剥離強度試験>と同様の方法により実施した。
【0068】
<プラズマ処理>
大気圧プラズマ処理の処理条件において、放電量を1600W・min/m2、放電雰囲気ガス中の酸素濃度を10%、放電時間を1秒として、基材層の片面に大気圧プラズマ処理を行った。
【0069】
<コロナ処理>
大気圧下で、基材層の片面に600W・min/m2のコロナ放電処理を行った。
【0070】
<接着剤組成物の製造>
下記表1に示す接着性ポリオレフィン樹脂、オレフィン系エラストマー及び未変性ポリオレフィン、任意の添加材を、280℃で2分間溶融混練し、接着剤組成物1~9を製造した。
【0071】
【0072】
上記表1中、各記号は以下の材料を意味する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
・(A)-1:イミン変性ポリオレフィン(三井化学社製、アドマーIP、メルトフローレート;3g/10分)。
・(A)-2:イミン変性ポリオレフィン(三井化学社製、アドマーIP、メルトフローレート;15g/10分)。
・(A)-3:カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィン
・(A)-4:イミン変性ポリオレフィン(三井化学社製、アドマーIP、メルトフローレート;1g/10分)。
・(A)-5:イミン変性ポリオレフィン(三井化学社製、アドマーIP、メルトフローレート;30g/10分)。
・(A)-6:酸変性ポリオレフィン(三井化学社製、アドマー)
・(B):・オレフィン系エラストマー樹脂(MP:120℃)。
・(C):サンアロマー社製ポリプロピレン樹脂(メルトフローレート;3g/10分)
・(D):特殊ノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点70℃)、
分子内にビスフェノールA骨格を含み、ノボラック構造のエポキシ基を含む。
【0073】
<カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィン(A―3)の製造>
マレイン酸変性ポリプロピレン25重量部に、三井化学製ポリプロピレン25重量部、ポリカルボジイミド(日清紡社製、商品名カルボジライトHMV-8CA)を3重量部配合し、65mmφの1軸押出機(モダンマシナリ社製)にて250℃(滞留時間=2分間)で溶融混練し、カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィン(A―3)を得た。
【0074】
<ホットメルト接着性樹脂積層体の製造>
下記表2に示す各接着剤組成物を、押出成形により50μmのフィルムに成形して接着層をそれぞれを得た。得られた接着層に表2に示す各基材層を積層し、実施例1~12、比較例1~4のホットメルト接着性樹脂積層体を得た。なお、比較例1はメルトフローレートが低く流涎に適さず製膜することができなかった。ただし、「5層構成-2」の層構成のものは、第1の基材層の膜厚を90μm、第2の基材層の膜厚を90μmとして製造した。
【0075】
【0076】
上記表2中、各実施例の層構成は下記のような構成を示す。
2層構成:接着層/基材層
3層構成:接着層/基材層/接着層
5層構成-1:接着層/中間層/基材層/中間層/接着層
5層構成-2:接着層/第1の基材層/接着層/第2の基材層/接着層
【0077】
得られた、実施例1~11、比較例1~4のホットメルト接着性樹脂積層体について、被着体をステンレス箔(30μm)として接着を行い積層体を製造し、その製造後の剥離強度を測定した。その結果を「浸漬試験前」として表3に記載する。また、剥離界面の状態について、下記の項目に従って評価し、その結果を表3に記載する。
得られた、実施例1~11、比較例1~4のホットメルト接着性樹脂積層体について、上記で得られた積層体の熱水浸漬後又は酸溶液浸漬後の剥離強度を測定した。その結果を「熱水浸漬後」又は「酸溶液浸漬後」として表3に記載する。また、剥離界面の状態について、下記の項目に従って評価し、その結果を表3に記載する。
【0078】
・剥離界面の状態
A:剥離界面を観察したときに、被着体側で剥離している部分と、基材層側で剥離している部分が混在しており、被着体側の接着と基材層側の接着が一定上の接着強度であることが分かった。
B:剥離界面を観察したときに、基材層側での剥離部分が多かった。
C:剥離界面を観察したときに、全面にわたって基材層側で剥離が起こっていた。
【0079】
【0080】
上記結果に示したとおり、本発明を適用した実施例1~11は、熱水浸漬後又は酸溶液浸漬後においても剥離強度を維持していた。
実施例1~7は比較例と比べても剥離強度が良好であり、剥離界面を見ても接着層の強度が良好であることが分かった。
実施例8、実施例9の接着性樹脂積層体は、接着剤組成物を中間層として積層した積層体であるが、接着剤の選定により層間剥離が抑えられ特に層間剥離が起きづらい構成であった。
実施例10の接着性樹脂積層体は、基材層が2枚備える積層体であるため、基材層それぞれの柔軟性が単層の基材層であるときよりも高く、しなやかな接着性樹脂積層体であった。
実施例11の接着性樹脂積層体は2層構成であり、片面のみにしか接着剤がないため、片面のみの剥離強度を測定したが、良好な接着性を示した。
【0081】
得られた、実施例9、12、比較例3のホットメルト接着性樹脂積層体について、前記「熱水浸漬後剥離強度試験」のステンレス箔を表面に特別な処理を施していないナイロン6シート(100μm)に変えた以外は同様にして接着を行い積層体を製造し、その製造後の剥離強度を測定した。その結果を「浸漬試験前」として表4に記載する。また、剥離界面の状態について、下記の項目に従って評価し、その結果を表4に記載する。
実施例9、12、比較例3のホットメルト接着性樹脂積層体について、上記で得られた積層体の熱水浸漬後又は酸溶液浸漬後の剥離強度を測定した。その結果を「熱水浸漬後」又は「酸溶液浸漬後」として表4に記載する。また、剥離界面の状態について、下記の項目に従って評価し、その結果を表4に記載する。
【0082】
・剥離界面の状態
A:剥離界面を観察したときに、被着体側で剥離している部分と、基材層側で剥離している部分が混在しており、被着体側の接着と基材層側の接着が一定上の接着強度であることが分かった。
B:剥離界面を観察したときに、被着体側での剥離部分が多かった。
C:剥離界面を観察したときに、基材層側での剥離部分が多かった。
【0083】
【0084】
上記結果に示したとおり、本発明を適用した5層構成の積層体である実施例9、12は、被着体をナイロンとした熱水浸漬後又は酸溶液浸漬後においても剥離強度を維持していた。