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特開2023-160972荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160972
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
H01L21/30 541D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148240
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2018107945の分割
【原出願日】2018-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】東矢 高尚
(72)【発明者】
【氏名】森田 博文
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 宗博
(57)【要約】
【課題】焦点補正静電レンズをプラスバイアスで運用しつつ、ビーム位置精度の劣化を防止する。
【解決手段】荷電粒子ビーム描画装置は、荷電粒子ビームを放出する放出部と、前記荷電粒子ビームを成形する第1アパーチャと、前記荷電粒子ビームを前記第1アパーチャに照明する照明レンズと、前記第1アパーチャを透過した荷電粒子ビームを成形する第2アパーチャと、前記第1アパーチャを透過した荷電粒子ビームを前記第2アパーチャに投影する投影レンズと、前記第2アパーチャを透過した荷電粒子ビームの焦点を合わせる磁界型レンズである対物レンズと、描画対象の基板の表面高さに合わせて荷電粒子ビームの焦点補正を行う静電レンズと、を備え、前記静電レンズは前記対物レンズ内に配置され、該静電レンズの電極には正の電圧が印加され、該電極の上端における該対物レンズの磁場の強さが所定値以下となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを放出する放出部と、
前記荷電粒子ビームを成形する第1アパーチャと、
前記荷電粒子ビームを前記第1アパーチャに照明する照明レンズと、
前記第1アパーチャを透過した荷電粒子ビームを成形する第2アパーチャと、
前記第1アパーチャを透過した荷電粒子ビームを前記第2アパーチャに投影する投影レンズと、
前記第2アパーチャを透過した荷電粒子ビームの焦点を合わせる磁界型レンズである対物レンズと、
描画対象の基板の表面高さに合わせて荷電粒子ビームの焦点補正を行う静電レンズと、
を備え、
前記静電レンズは前記対物レンズ内に配置され、該静電レンズの電極には正の電圧が印加され、
予め求められた、前記電極の上端における前記対物レンズの磁場の強さと、前記荷電粒子ビームのビーム電流値と、ビームエネルギーと、前記基板の表面からの二次電子の減速領域の高さと、の関係から得られた計算式を用いて求められる前記基板の表面におけるビーム照射位置の位置ずれ量が所定値以下となるように、前記電極の上端における前記対物レンズの磁場の強さを制御する、荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記対物レンズのコイルに印加する電流量を制御するレンズ制御回路をさらに備え、
前記レンズ制御回路は、前記電極の上端における前記対物レンズの磁場の強さBが、前記基板の表面におけるビーム照射位置の位置ずれ量の許容上限Δpos、比例定数C、前記荷電粒子ビームのビーム電流I、ビームエネルギーV0及び前記基板の表面からの二次電子の減速領域の高さhを含む以下の式を満たす値となるように、前記コイルに印加する電流量を制御する、請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
Δpos=C×B×I×h/V0
【請求項3】
前記静電レンズは、上段電極、中段電極及び下段電極の3段の電極を有し、
前記上段電極及び前記下段電極には0Vの電圧が印加され、前記中段電極に前記正の電圧が印加されることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
荷電粒子ビームを放出する工程と、
磁界型レンズである対物レンズを用いて、前記荷電粒子ビームの焦点を合わせて描画対象の基板に前記荷電粒子ビームを照射してパターンを形成する工程と、
前記対物レンズ内に配置された静電レンズを用いて、前記基板の表面高さに合わせて前記荷電粒子ビームの焦点補正を行う工程と、
を備え、
前記静電レンズの電極に正の電圧を印加し、
予め求められた、前記電極の上端における前記対物レンズの磁場の強さと、前記荷電粒子ビームのビーム電流値と、ビームエネルギーと、前記基板の表面からの二次電子の減速領域の高さと、の関係から得られた計算式を用いて求められる前記基板の表面におけるビーム照射位置の位置ずれ量が所定値以下となるように、前記電極の上端における前記対物レンズの磁場の強さを制御する、荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
前記電極の上端における前記対物レンズの磁場の強さBが、前記基板の表面におけるビーム照射位置の位置ずれ量の許容上限Δpos、比例定数C、前記荷電粒子ビームのビーム電流I、ビームエネルギーV0及び前記基板の表面からの二次電子の減速領域の高さhを含む以下の式を満たす値となるように、前記対物レンズのコイルに印加する電流量を制御する、請求項4に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
Δpos=C×B×I×h/V0
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターン(マスク、或いは特にステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。)をウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンは、電子ビーム描画装置によって描画され、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画装置では、各ショットのビームを対物レンズで試料面上に焦点を合わせると共に、静電レンズを使って、試料面の凹凸に対応するように描画中にダイナミックに焦点補正(ダイナミックフォーカス)を行っている。この静電レンズに印加するバイアス電圧をマイナスにした場合、フォギング電子が増え、描画パターンの寸法精度向上の妨げとなっていた。
【0004】
フォギング電子の影響を抑えるためには、静電レンズに印加するバイアス電圧をプラスにすることが好ましい。しかし、静電レンズにプラスのバイアス電圧を印加した場合、試料面からの二次電子(反射電子含む)がビーム軌道上に高密度に滞留し、電子ビームの軌道を変化させ、ビーム位置精度を劣化させ得るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-113846号公報
【特許文献2】特開2015-109323号公報
【特許文献3】特開2001-93831号公報
【特許文献4】特開2013-191841号公報
【特許文献5】特開2013-168589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであり、焦点補正静電レンズをプラスバイアスで運用しつつ、ビーム位置精度の劣化を防止する荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置は、荷電粒子ビームを放出する放出部と、前記荷電粒子ビームを成形する第1アパーチャと、前記荷電粒子ビームを前記第1アパーチャに照明する照明レンズと、前記第1アパーチャを透過した荷電粒子ビームを成形する第2アパーチャと、前記第1アパーチャを透過した荷電粒子ビームを前記第2アパーチャに投影する投影レンズと、前記第2アパーチャを透過した荷電粒子ビームの焦点を合わせる磁界型レンズである対物レンズと、描画対象の基板の表面高さに合わせて荷電粒子ビームの焦点補正を行う静電レンズと、を備え、前記静電レンズは前記対物レンズ内に配置され、該静電レンズの電極には正の電圧が印加され、該電極の上端における該対物レンズの磁場の強さが所定値以下となるものである。
【0008】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置において、前記対物レンズの磁場の強さが前記所定値より大きくなる領域に前記電極の少なくとも一部が延在している。
【0009】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置において、前記電極の下端における前記対物レンズの磁場の強さが前記所定値以下となる。
【0010】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置において、前記静電レンズは、上段電極、中段電極及び下段電極の3段の電極を有し、前記上段電極及び前記下段電極には0Vの電圧が印加され、前記中段電極に前記正の電圧が印加される。
【0011】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、荷電粒子ビームを放出する工程と、磁界型レンズである対物レンズを用いて、前記荷電粒子ビームの焦点を合わせて描画対象の基板に前記荷電粒子ビームを照射してパターンを形成する工程と、前記対物レンズ内に配置された静電レンズを用いて、前記基板の表面高さに合わせて前記荷電粒子ビームの焦点補正を行う工程と、を備え、前記静電レンズの電極に正の電圧を印加し、前記電極の上端における前記対物レンズの磁場の強さが所定値以下となるように、該対物レンズのコイルに電流を供給するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、焦点補正静電レンズをプラスバイアスで運用しつつ、ビーム位置精度の劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る電子ビーム描画装置の概略図である。
図2】第1成形アパーチャ及び第2成形アパーチャの斜視図である。
図3】対物レンズ及び焦点補正静電レンズの断面図である。
図4】対物レンズの磁場分布と焦点補正静電レンズの位置を説明する図である。
図5】ビーム位置ずれ量の計算方法を説明する図である。
図6】焦点補正静電レンズの電極先端における磁場の強さとビーム位置ずれ量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る電子ビーム描画装置の概略図である。図1に示す電子ビーム描画装置は、制御部100と描画部200とを備えた可変成形型の描画装置である。
【0016】
描画部200は、電子鏡筒220と描画室230を備えている。電子鏡筒220内には、電子銃201、照明レンズ202、ブランカ203、第1成形アパーチャ204、投影レンズ205、成形偏向器206、第2成形アパーチャ207、対物レンズ208、偏向器209、及び焦点補正レンズ210が配置されている。
【0017】
描画室230内には、XYステージ211が配置されている。XYステージ211上には、描画対象の基板240が載置される。描画室230の上部には、基板240の高さ方向(Z方向)の位置を検出するZセンサ250が配置されている。Zセンサ250は、投光器と受光器の組み合わせから構成され、投光器から照射された光を基板240の表面で反射させ、この反射光を受光器が受光することで、基板240の表面高さを測定することができる。
【0018】
Zセンサ250によって検出された高さデータは、検出回路150によってデジタルデータに変換された後、制御計算機110へ転送される。
【0019】
電子鏡筒220内に設けられた電子銃201(放出部)から放出された電子ビームBは、ブランカ(ブランキング偏向器)203内を通過する際にブランカ203によって、電子ビームを基板に照射するか否か切り替えられる。
【0020】
電子ビームBは、照明レンズ202により、矩形の開口32(図2参照)を有する第1成形アパーチャ204全体に照射される。第1成形アパーチャ204の開口32を通過することで、電子ビームBは矩形に成形される。
【0021】
第1成形アパーチャ204を通過した第1アパーチャ像の電子ビームBは、投影レンズ205により、可変成形開口34(図2参照)を有した第2成形アパーチャ207上に投影される。その際、偏向器206によって、第2成形アパーチャ207上に投影される第1アパーチャ像が偏向制御され、可変成形開口34を通過する電子ビームの形状と寸法を変化させる(可変成形を行う)ことができる。
【0022】
第2成形アパーチャ207の可変成形開口34を通過した第2アパーチャ像の電子ビームBは、対物レンズ208及び焦点補正レンズ210により焦点を合わせ、偏向器209によって偏向され、連続的に移動するXYステージ211上に載置された基板240に照射される。
【0023】
偏向器209は偏向領域の大きさの異なる複数段の偏向器で構成されている。例えば、主偏向器及び副偏向器の2段構成でもよいし、主偏向器、副偏向器及び副副偏向器の3段構成でもよい。
【0024】
照明レンズ202、投影レンズ205及び対物レンズ208には、電磁レンズ(磁界型レンズ)が用いられる。焦点補正レンズ210は基板240の表面の高さ変動に対するダイナミックフォーカス調整を行うものであり、静電レンズが用いられる。
【0025】
図2は、第1成形アパーチャ204及び第2成形アパーチャ207によるビーム成形を説明するための概略図である。第1成形アパーチャ204には、電子ビームBを成形するための矩形の開口32が形成されている。
【0026】
また、第2成形アパーチャ207には、第1成形アパーチャ204の開口32を通過した電子ビームBを所望の形状に成形するための可変成形開口34が形成されている。第1成形アパーチャ204の開口32と第2成形アパーチャ207の可変成形開口34との両方を通過したビーム形状が、連続的に移動するXYステージ211上に搭載された基板240の描画領域に描画される。
【0027】
図1に示すように、制御部100は、制御計算機110、偏向制御回路120、記憶部130、レンズ制御回路140、及び検出回路150を有する。記憶部130には、レイアウトデータとなる描画データが外部から入力され、格納されている。
【0028】
制御計算機110は、ショットデータ生成部111及び描画制御部112を有する。制御計算機110の各部は、電気回路等のハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、制御計算機110の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを記録媒体に収納し、電気回路を含むコンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0029】
ショットデータ生成部111は、記憶部130から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行ってショットデータを生成する。ショットデータには、ショット形状、ショットサイズ、ショット位置、ショット時間等の情報が含まれている。
【0030】
描画制御部112は、ショットデータをショット順に偏向制御回路120へ転送する。偏向制御回路120は、ショットデータを用いて、ブランカ203、偏向器206及び偏向器209の偏向量を制御し、描画処理を行う。
【0031】
レンズ制御回路140は、描画部200に設けられた各レンズの制御を行う。例えば、レンズ制御回路140は、対物レンズ208のコイルに印加する電流量を制御する。また、レンズ制御回路140は、Zセンサ250で検出された基板240の表面高さに基づいて、焦点補正レンズ210に印加する電圧を制御する。
【0032】
次に、対物レンズ208及び焦点補正レンズ210の構成について説明する。対物レンズ208は電磁レンズであり、図3に示すように、コイル208aと、コイル208aを収容するヨーク208bとを有する。ヨーク208bは鉄などの透磁率の高い材料で構成され、一部に切り欠き(ポールピース208c)が設けられている。
【0033】
コイル208aに電流を流して作られた磁力線が、ポールピース208cを介して空間に漏洩し、磁界が作られる。
【0034】
焦点補正レンズ210は対物レンズ208の内部、例えばポールピース208cの高さに合わせて配置される。焦点補正レンズ210は静電レンズであり、リング状の3段の電極210a、210b及び210cを有する。上下の電極210a及び210cには0Vの電圧を印加し、中段の電極210bには正の電圧を印加して、焦点補正レンズ210をプラスバイアスで運用する。
【0035】
電子ビームが基板240に照射されると、基板240に入射して発生した二次電子(基板240に当たって反射した反射電子を含む)が電子鏡筒220内を上方へ進む。この二次電子は、対物レンズ208の磁界中で螺旋運動する。二次電子の軌道半径は、磁場が強い領域では小さく、磁場が弱い領域では大きくなる。
【0036】
また、二次電子は、焦点補正レンズ210の電極210b内を進む際は、電極210bに印加されている電圧の影響により、速度が大きくなる。二次電子は、電極210bを抜けると減速し、速度が小さくなる。
【0037】
二次電子の軌道半径が小さくても、速度が大きい場合は、二次電子の密度が低くなり、電子銃201から出力された電子ビームの軌道に対する影響は小さい。また、二次電子の速度が小さくても、軌道半径が大きい場合は、二次電子密度が低くなり、電子銃201から出力された電子ビームの軌道に対する影響は小さい。
【0038】
一方、二次電子の軌道半径が小さく、かつ速度が小さい場合は、二次電子密度が高くなり、電子銃201から出力された電子ビームの軌道を変化させ、ビーム位置精度を劣化させ得る。つまり、電極210bを抜けた後の領域の磁場が強いと、ビーム位置精度が劣化し得る。
【0039】
そこで、本実施形態では、図4に示すように、静電レンズ210の電極210bの上端が、磁場(軸上磁場)の強さが所定値Bth以下となる領域に位置するような構成とする。これにより、磁場が強く、二次電子の軌道半径が小さい領域では二次電子の速度が大きく、二次電子密度が低くなる。電極210bを抜けて二次電子速度が小さくなる領域では、磁場が弱く二次電子の軌道半径が大きくなり、二次電子密度が低くなる。
【0040】
二次電子密度の高い領域が発生することを防止できるため、ビーム位置精度の劣化を防止できる。また、焦点補正レンズ210をプラスバイアスで運用しているため、フォギング電子の影響を抑えることができる。
【0041】
磁場強度Bthは、ビーム照射位置の位置ずれ量が所定値以下となるように設定される。図5に示すような計算式からビーム照射位置の位置ずれ量Δposが求められる。図5においてεは真空の誘電率、Qは領域の電荷量、mは電子の質量、vは二次電子の半径方向速度、vは二次電子のz方向速度、Lは減速領域の長さ、hは減速領域の基板240表面からの高さである。また、klは対物レンズ208の縮小率、eは電子素量、Iはビーム電流、Vはビームエネルギー、ηは反射効率、Vsは二次電子エネルギーである。二次電子の出射角度は45°とした。
【0042】
図6は、この計算式から求めた位置ずれ量と、位置ずれ量の実験値とを示す。図6から、計算式と実験値のトレンドがほぼ一致することがわかる。
【0043】
実験値から不定のパラメータを推測すると、位置ずれ量Δposは以下のような計算式から求めることが可能となる。Cは比例定数である。
Δpos=C×B×I×h/V0
【0044】
この式から、例えば比例定数C=100000のとき、ビーム電流Iを1μA、高さh=10mm、ビームエネルギーV0を50keVとした場合、位置ずれ量Δposを1nm未満とするためには、所定値Bthを0.05T(テスラ)未満とすればよいことが求まる。すなわち、磁場の強さが0.05T未満となる領域にまで静電レンズ210の電極210bが延在することで、ビーム照射位置の位置ずれ量を1nm未満に抑えることができる。言い換えれば、静電レンズ210の電極210bの上端の位置における磁場の強さが0.05T未満となるように対物レンズ208のコイルに供給する電流を調整することで、ビーム照射位置の位置ずれ量を1nm未満に抑えることができる。
【0045】
上記実施形態では、静電レンズ210の電極210bの下端も、磁場の強さが所定値Bth以下となる領域に位置する構成とすることが好ましい。すなわち、磁場の強さが所定値Bthよりも大きくなる領域の全体にわたって電極210bが延在していることが好ましい。対物レンズ208の磁場の最も強い箇所は、電極210bの上端と下端との間にある。
【0046】
上記実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明したが、荷電粒子ビームは電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
【0047】
上記実施形態では描画装置の例について説明したが、荷電粒子ビームを用いた検査装置にも適用できる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0049】
100 制御部
110 制御計算機
111 ショットデータ生成部
112 描画制御部
140 レンズ制御回路
150 検出回路
208 対物レンズ
210 静電レンズ
250 Zセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6