(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161239
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20231030BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/455
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071477
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】坂下 訓康
(72)【発明者】
【氏名】城 俊彦
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030EA03
4K030EA04
4K030EA05
4K030EA06
4K030EA08
4K030KA05
4K030KA09
5F045AA06
5F045AB31
5F045AB32
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5F045AC15
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5F045EF11
5F045EG01
5F045EG02
5F045EK06
5F045EM10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】処理容器内におけるガスの流れの偏りを抑制する基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、基板が収容される第1領域R1を内部に形成する内筒11と、内筒の外側に第2領域R2を隔てて設けられ、側壁の端部に排気ポート28を有する外筒12と、第1領域R1にガスを吐出するノズル31、32、33と、第1領域R1から排気ポート28までのガスの流路内に、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって設けられる複数のスリットを含むガス流調整部80と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が収容される第1領域を内部に形成する内筒と、
前記内筒の外側に第2領域を隔てて設けられ、側壁の端部に排気ポートを有する外筒と、
前記第1領域にガスを吐出するノズルと、
前記第1領域から前記排気ポートまでの前記ガスの流路内に、前記ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって設けられる複数のスリットを含むガス流調整部と、
を備える、
基板処理装置。
【請求項2】
前記複数のスリットは、前記内筒に設けられる1つのスリットと、前記第2領域に設けられる2つのスリットとを少なくとも含む、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ガス流調整部は、
前記1つのスリットを覆うように前記第2領域に設けられ、前記内筒の側壁との間に第3領域を形成する覆い部材と、
前記第3領域に設けられ、前記第3領域を2つの領域に区画する区画板と、
を有し、
前記2つのスリットの一方は前記区画板に設けられ、前記2つのスリットの他方は前記覆い部材に設けられる、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記ガス流調整部は、
前記内筒の側壁と前記外筒の側壁との隙間を狭窄して前記2つのスリットの一方を形成する第1板状部材と、
前記第1板状部材よりも前記ガスの流通方向の下流側に設けられ、前記内筒の側壁と前記外筒の側壁との隙間を狭窄して前記2つのスリットの他方を形成する第2板状部材と、
を有する、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1板状部材及び前記第2板状部材は、前記内筒の側壁から前記外筒の側壁に向かって前記内筒の半径方向に沿って延在する、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1板状部材及び前記第2板状部材は、前記外筒の側壁から前記内筒の側壁に向かって前記内筒の半径方向に沿って延在する、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記複数のスリットの各々は、前記内筒の軸方向を長手方向とする矩形状、長穴状又は楕円状を有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記複数のスリットは、互いに同じスリット長さを有する、
請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記複数のスリットのうち前記ガスの流通方向の最も上流側に位置するスリットは、前記複数のスリットの中で最も広いスリット幅を有する、
請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記複数のスリットのうち少なくとも1つは、前記内筒の軸方向において複数に分割されている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同心的に配置された内筒と外筒とを含む処理容器を有する基板処理装置において、内筒と外筒との間に板状の整流板を設ける構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、処理容器内におけるガスの流れの偏りを抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理装置は、基板が収容される第1領域を内部に形成する内筒と、前記内筒の外側に第2領域を隔てて設けられ、側壁の端部に排気ポートを有する外筒と、前記第1領域にガスを吐出するノズルと、前記第1領域から前記排気ポートまでの前記ガスの流路内に、前記ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって設けられる複数のスリットを含むガス流調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、処理容器内におけるガスの流れの偏りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】鉛直方向におけるガスの流量分布の解析結果を示す図
【
図8】鉛直方向におけるガスの流量分布の解析結果を示す図
【
図10】鉛直方向におけるガスの流量分布の解析結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔基板処理装置〕
図1及び
図2を参照し、実施形態に係る基板処理装置1について説明する。
図1に示されるように、基板処理装置1は、複数枚の基板Wに対して一度に熱処理を行うバッチ式の縦型熱処理装置である。基板Wは、例えば半導体ウエハである。
【0010】
基板処理装置1は、処理容器10と、ガス供給部30と、排気部50と、加熱部70と、ガス流調整部80と、制御部90とを備える。
【0011】
処理容器10は、内部を減圧可能である。処理容器10は、内管11と外管12とが同軸状に配置された2重管構造を有する。
【0012】
内管11は、下端が開放された有天井の円筒形状を有する。内管11は、基板Wが収容される第1領域R1を内部に形成する。内管11の天井は、例えば平坦である。内管11は、例えば石英等の耐熱材料により形成される。
【0013】
外管12は、下端が開放された有天井の円筒形状を有する。外管12は、内管11の側壁及び天井を覆うように設けられる。外管12は、内管11の外側に第2領域R2を隔てて設けられる。外管12は、石英等の耐熱材料により形成される。
【0014】
内管11の一側には、その軸方向(鉛直方向)に沿ってノズルを収容する収容部13が形成される。例えば、内管11の側壁の一部を外側へ向かって突出させて凸部14を形成し、凸部14内を収容部13として形成している。
【0015】
収容部13に対応させて内管11の反対側の側壁には、スリットA1が形成される。スリットA1は、第1領域R1のガスを排気するための排気口である。スリットA1は、鉛直方向を長手方向とする矩形状を有する。スリットA1のスリット長さは、ボート16の長さと同じであってよく、ボート16の長さより長くてもよい。
【0016】
処理容器10の下端は、円筒形状のマニホールド17により支持される。マニホールド17は、例えばステンレス鋼により形成される。マニホールド17の上端には、フランジ18が形成される。フランジ18は、外管12の下端を設置して支持する。フランジ18と外管12の下端との間には、Oリング等のシール部材19が設けられる。
【0017】
マニホールド17の上部の内壁には、円環状の支持部20が設けられる。支持部20は、内管11の下端を設置して支持する。マニホールド17の下端の開口には、蓋体21がOリング等のシール部材22を介して気密に取り付けられる。蓋体21及びシール部材22は、処理容器10の下端の開口、すなわち、マニホールド17の開口を気密に塞ぐ。蓋体21は、例えばステンレス鋼により形成される。
【0018】
蓋体21の中央部には、磁性流体シール23を介してボート16を回転可能に支持する回転軸24が貫通させて設けられる。回転軸24の下部は、ボートエレベータよりなる昇降機構25のアーム25aに回転自在に支持される。
【0019】
回転軸24の上端には、回転プレート26が設けられる。回転プレート26上には、石英製の保温台27を介してボート16が載置される。従って、昇降機構25を昇降させることによって蓋体21とボート16とは一体として上下動し、ボート16を処理容器10内に対して挿脱できる。ボート16は、処理容器10内に収容可能である。ボート16は、鉛直方向に沿って複数枚(例えば50枚~150枚)の基板Wを棚状に保持する。
【0020】
ガス供給部30は、複数(例えば3本)のノズル31~33を有する。複数のノズル31~33は、内管11の収容部13内に周方向に沿って一列になるように設けられる。各ノズル31~33は、内管11内に鉛直方向に沿って設けられると共に、その基端がL字状に屈曲されてマニホールド17を貫通するようにして支持される。各ノズル31~33は、例えば石英により形成される。
【0021】
ノズル31には、鉛直方向に沿って所定の間隔を空けて複数のガス孔31aが設けられる。複数のガス孔31aは、例えば内管11の中心側(基板W側)に配向する。ノズル31は、原料ガス供給源(図示せず)から導入される原料ガスを複数のガス孔31aから基板Wに向かって水平方向に吐出する。原料ガスは、例えばシリコンや金属を含有するガスである。
【0022】
ノズル32には、鉛直方向に沿って所定の間隔を空けて複数のガス孔32aが設けられる。複数のガス孔32aは、例えば内管11の中心側(基板W側)に配向する。ノズル32は、反応ガス供給源(図示せず)から導入される反応ガスを複数のガス孔32aから基板Wに向かって水平方向に吐出する。反応ガスは、原料ガスと反応して反応生成物を生成するためのガスである。反応ガスは、例えば酸化ガス、窒化ガスである。
【0023】
ノズル33には、鉛直方向に沿って所定の間隔を空けて複数のガス孔33aが設けられる。複数のガス孔33aは、例えば内管11の中心側(基板W側)に配向する。ノズル33は、パージガス供給源(図示せず)から導入されるパージガスを複数のガス孔33aから基板Wに向かって水平方向に吐出する。パージガスは、処理容器10内に残留する原料ガスや反応ガスをパージするためのガスである。パージガスは、例えば窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスである。
【0024】
ガス供給部30は、複数種類のガスを混合して1つのノズルから吐出してもよい。各ノズルは、互いに異なる形状や配置であってもよい。ガス供給部30は、原料ガス、反応ガス、パージガスの他に、別のガスを供給する構成でもよい。別のガスとしては、クリーニングガスやエッチングガスが挙げられる。
【0025】
排気部50は、内管11内からスリットA1を介して排出され、内管11と外管12との間の第2領域R2を介して排気ポート28から排出されるガスを排気する。排気ポート28は、マニホールド17の上部の側壁であって、支持部20の上方に形成されている。排気ポート28には、排気管51が接続されている。排気管51には、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、圧力調整弁52及び真空ポンプ53が設けられる。排気部50は、制御部90による制御の下、真空ポンプ53により処理容器10内のガスを吸引しながら、圧力調整弁52により処理容器10内の圧力を調整する。
【0026】
加熱部70は、円筒形状のヒータ71を有する。ヒータ71は、外管12の径方向外側において外管12を囲むように設けられる。ヒータ71は、処理容器10の側周囲全体を加熱することで、処理容器10内に収容された各基板Wを加熱する。加熱部70は、更に断熱材を有していてもよい。
【0027】
ガス流調整部80は、第1領域R1から排気ポート28までのガスの流路内に設けられる。ガス流調整部80は、覆い部材81と、区画板82とを有する。
【0028】
覆い部材81は、第2領域R2に設けられる。覆い部材81は、スリットA1を覆うように内管11の側壁から外管12に向かって突出させて設けられ、内管11の側壁との間に第3領域R3を形成する。覆い部材81は、内管11の側壁に沿って設けられ、水平断面において中心角が所定角度の円弧をなす円弧部を含む。所定角度は、例えば45°以上、90°以下である。覆い部材81の鉛直方向の長さは、スリットA1のスリット長さより長く、内管11の鉛直方向の長さ以下である。覆い部材81は、例えば石英等の耐熱材料により形成される。覆い部材81は、内管11と一体で形成されてもよく、内管11と別体で形成されてもよい。
【0029】
区画板82は、第3領域R3に設けられる。区画板82は、内管11の半径方向に沿って延在し、第3領域R3を2つの領域R3a,R3bに区画する。領域R3aは、スリットA1に面する領域である。領域R3bは、領域R3aよりもガスの流通方向の下流側に位置し、後述するスリットA3に面する領域である。区画板82は、例えば石英等の耐熱材料により形成される。区画板82は、覆い部材81と一体で形成されてもよく、別体で形成されてもよい。区画板82には、領域R3aと領域R3bとを連通させるスリットA2が設けられる。スリットA2は、スリットA1よりもガスの流通方向の下流側に設けられる。
【0030】
覆い部材81の排気ポート28に近い側の端部の側壁には、スリットA3が設けられる。スリットA3は、スリットA2よりもガスの流通方向の下流側に設けられる。スリットA3は、排気ポート28の側に配向する。ただし、スリットA3は外管12の側壁の側に配向してもよい。
【0031】
各スリットA1~A3は、鉛直方向を長手方向とし、水平方向を短手方向とする矩形状、長穴状又は楕円状を有する。スリットA1~A3は、互いに同じスリット長さを有する。ただし、スリットA1~A3は、互いに異なるスリット長さを有していてもよい。スリットA1は、3つのスリットA1~A3の中で最も広いスリット幅を有することが好ましい。この場合、スリットA1近傍の流速集中が緩和される。スリットA1~A3のうち少なくとも1つが、鉛直方向において複数に分割されていてもよい。
【0032】
係るガス流調整部80は、第1領域R1のガスをスリットA1、スリットA2、スリットA3の順に通過させることで、ガスの流れを調整して排気ポート28に導く。
【0033】
制御部90は、1以上のプロセッサ91、メモリ92、図示しない入出力インタフェース及び電子回路を有するコンピュータを適用し得る。プロセッサ91は、CPU、ASIC、FPGA、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つ又は複数を組み合わせたものである。メモリ92は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(例えば、コンパクトディスク、DVD、ハードディスク、フラッシュメモリ等)を含み、基板処理装置1を動作させるプログラム、基板処理のプロセス条件等のレシピを記憶している。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラム及びレシピを実行することで、基板処理装置1の各構成を制御して各種の処理を実施する。
【0034】
以上に説明したように、実施形態に係る基板処理装置1は、第1領域R1から排気ポート28までのガスの流路内に、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって設けられる複数のスリットA1~A3を含むガス流調整部80を備える。このように、ガスの流通方向に沿ってスリットを多重化させることによって、第1領域R1の鉛直方向におけるガスの流れの偏りを抑制できる。その結果、成膜特性の基板W間での均一性(以下「面間均一性」という。)が向上する。
【0035】
また、実施形態に係る基板処理装置1によれば、ガスの流通方向に沿ってスリットを多重化させると共に、第1領域R1の最も近くに位置するスリットA1のスリット幅を拡げることによって、スリットA1近傍の流速集中を緩和できる。その結果、成膜特性の基板W面内での均一性(以下「面内均一性」という。)が向上する。
【0036】
また、実施形態に係る基板処理装置1によれば、ガスの流通方向に沿ってスリットを多重化させると共に、スリットA1~A3のスリット長さを可変させることによって、鉛直方向の排気分布を制御できる。
【0037】
一方、ガス流調整部80を備えていない基板処理装置では、基板Wが収容される高さ領域(以下「プロセス領域」という。)の下部からのガスの排出が多くなり、プロセス領域の上部からのガスの排出が少なくなる。このため、内管11内のプロセス領域の上部にガスが滞留し、原料ガスの過分解や、反応ガスの失活が生じ、成膜特性の面間均一性が低下する場合がある。また、スリットA1のスリット幅が狭い場合、スリットA1の近傍に過分解ガスが集中することで基板Wの周縁部に膜が堆積しやすくなり、面内均一性が低下する場合がある。
【0038】
次に、
図3を参照し、第1変形例に係るガス流調整部80Aについて説明する。ガス流調整部80Aは、第1領域R1から排気ポート28までのガスの流路内に設けられる。ガス流調整部80Aは、第1板状部材86と、第2板状部材87とを有する。
【0039】
第1板状部材86は、内管11の側壁から外管12の側壁に向かって内管11の半径方向に沿って延在し、内管11の側壁と外管12の側壁との隙間を狭窄してスリットA2を形成する。第1板状部材86の鉛直方向の長さは、例えばプロセス領域の鉛直方向の長さ以上であり、かつ内管11の鉛直方向の長さ以下である。
【0040】
第2板状部材87は、第1板状部材86よりもガスの流通方向の下流側に設けられる。第2板状部材87は、内管11の側壁から外管12の側壁に向かって内管11の半径方向に沿って延在し、内管11の側壁と外管12の側壁との隙間を狭窄してスリットA3を形成する。第2板状部材87の鉛直方向の長さは、例えばプロセス領域の鉛直方向の長さ以上であり、かつ内管11の鉛直方向の長さ以下である。
【0041】
係るガス流調整部80Aは、ガス流調整部80と同様に、第1領域R1のガスをスリットA1、スリットA2、スリットA3の順に通過させることで、ガスの流れを調整して排気ポート28に導く。ガス流調整部80Aを備える基板処理装置においても、前述の基板処理装置1と同様の効果が奏される。
【0042】
次に、
図4を参照し、第2変形例に係るガス流調整部80Bについて説明する。ガス流調整部80Bは、第1板状部材86及び第2板状部材87が外管12の側壁から内管11の側壁に向かって内管11の半径方向に沿って延在する点で、ガス流調整部80Aと異なる。
【0043】
第1板状部材86は、外管12の側壁から内管11の側壁に向かって内管11の半径方向に沿って延在し、内管11の側壁と外管12の側壁との隙間を狭窄してスリットA2を形成する。第1板状部材86の鉛直方向の長さは、例えばプロセス領域の鉛直方向の長さ以上であり、かつ内管11の鉛直方向の長さ以下である。
【0044】
第2板状部材87は、第1板状部材86よりもガスの流通方向の下流側に設けられる。第2板状部材87は、外管12の側壁から内管11の側壁に向かって内管11の半径方向に沿って延在し、内管11の側壁と外管12の側壁との隙間を狭窄してスリットA3を形成する。第2板状部材87の鉛直方向の長さは、例えばプロセス領域の鉛直方向の長さ以上であり、かつ内管11の鉛直方向の長さ以下である。
【0045】
係るガス流調整部80Bは、ガス流調整部80Aと同様に、第1領域R1のガスをスリットA1、スリットA2、スリットA3の順に通過させることで、ガスの流れを調整して排気ポート28に導く。ガス流調整部80Bを備える基板処理装置においても、前述の基板処理装置1と同様の効果が奏される。
【0046】
〔解析結果〕
実施形態に係る基板処理装置1を用いることで、第1領域R1の鉛直方向におけるガスの流れの偏りが改善することを確認した解析結果について説明する。
【0047】
(解析A)
解析Aでは、基板処理装置1において、ノズル31から第1領域R1にガスを吐出し、排気ポート28を介してガスを排出した場合の、スリットA1~A3の位置での鉛直方向のガスの流量分布をシミュレーションにより算出した。解析Aでは、スリットA1のスリット幅を40mm、スリットA2のスリット幅を10mm、スリットA3のスリット幅を5mmに設定した。なお、スリットA1~A3のスリット長さは、プロセス領域の長さより長く鉛直方向へ延びるように設定した。また、スリットA1~A3のスリット長さは、互いに同じ長さに設定した。
【0048】
図5は、鉛直方向におけるガスの流量分布の解析結果を示す図である。
図5中、プロセス領域を鉛直方向に8等分したときの鉛直方向の各領域を横軸に示し、各領域でのガスの流量比を縦軸に示す。なお、流量比は以下の数式(1)により算出した。
【0049】
流量比=各領域での流量/スリットA1の8つの領域での流量の平均値 … (1)
【0050】
図5中、菱形印、四角印及び三角印はそれぞれスリットA1、スリットA2及びスリットA3の位置での流量比を示す。
【0051】
図5に示されるように、スリットA3の位置では上部よりも下部の流量が大きくなっているのに対し、スリットA1の位置では上部と下部との間で流量の差がほとんどないことが分かる。この結果からスリット幅40mmのスリットA1、スリット幅10mmのスリットA2及びスリット幅5mmのスリットA3をガスの流通方向の上流側から下流側に向かって設けることで、第1領域R1での鉛直方向のガスの流れの偏りを抑制できることが示された。
【0052】
(解析B)
解析Bでは、基板処理装置1において、ノズル31から第1領域R1にガスを吐出し、排気ポート28を介してガスを排出した場合の、スリットA1の位置での鉛直方向のガスの流量分布をシミュレーションにより算出した。解析Bでは、スリットA1~A3のスリット幅を変更してシミュレーションを行った。なお、スリットA1~A3のスリット長さは、プロセス領域の長さより長く鉛直方向へ延びるように設定した。また、スリットA1~A3のスリットの長さは、互いに同じ長さに設定した。解析Bでは、比較のためにスリットA2,A3がなく1つのスリットA1がある基板処理装置においても同様にシミュレーションを行った。
【0053】
図6は、ガス流量の均一性の解析結果を示す図であり、各基板処理装置での鉛直方向のガス流量の均一性を示す。なお、均一性は以下の数式(2)により算出した。
【0054】
均一性=(最大値-最小値)/平均値 … (2)
ただし、数式(2)中、最大値、最小値及び平均値はそれぞれスリットA1の8つの領域での流量の最大値、最小値及び平均値である。
【0055】
図6中、左から1番目の棒グラフは、単独のスリットA1(スリット幅:40mm)を有する場合の結果を示す。左から2番目の棒グラフは、単独のスリットA1(スリット幅:5mm)を有する場合の結果を示す。左から3番目の棒グラフは、スリットA1(スリット幅:40mm)、スリットA2(スリット幅:10mm)及びスリットA3(スリット幅:5mm)を有する場合の結果を示す。左から4番目の棒グラフは、スリットA1(スリット幅:20mm)、スリットA2(スリット幅:10mm)及びスリットA3(スリット幅:5mm)を有する場合の結果を示す。左から5番目の棒グラフは、スリットA1(スリット幅:5mm)、スリットA2(スリット幅:10mm)及びスリットA3(スリット幅:20mm)を有する場合の結果を示す。
【0056】
図6に示されるように、基板処理装置が3つのスリットA1~A3を有する場合、スリットA1の位置での鉛直方向のガス流量の均一性が1.2%~1.6%であることが分かる。一方、基板処理装置が単独のスリットA1を有する場合、スリットA1の位置での鉛直方向のガス流量の均一性が2.3%~10.6%であることが分かる。この結果から、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって多重のスリットを設けることで、第1領域R1での鉛直方向のガスの流れの偏りを抑制できることが示された。
【0057】
また、
図6に示されるように、基板処理装置が3つのスリットA1~A3を有する場合、スリットA3のスリット幅を5mmに設定することで、スリットA3のスリット幅を20mmに設定するよりも、スリットA1の位置での鉛直方向のガス流量の均一性が良好であることが分かる。この結果から、スリットA3のスリット幅を狭くすることで、第1領域R1での鉛直方向のガスの流れの偏りを特に抑制できることが示された。これは、第2領域R2に面するスリットA3のスリット幅を狭くすることによってスリットA3近傍での排気コンダクタンスが悪化するためと考えられる。つまり、排気ポート28に近いスリットA3の下方領域は排気流速が高い傾向にあるが、排気コンダクタンスが悪化することによってスリットA3の下方領域での高い排気流速が緩和されるためと考えられる。
【0058】
(解析C)
解析Cでは、基板処理装置1において、解析Aと同様に、ノズル31から第1領域R1にガスを吐出し、排気ポート28を介してガスを排出した場合の、スリットA1~A3の位置での鉛直方向のガスの流量分布をシミュレーションにより算出した。解析Cでは、2つのスリットA2,A3のスリット長さを変更してシミュレーションを行った。なお、スリットA1~A3のスリット幅は、解析AのスリットA1~A3と同じスリット幅に設定した。
【0059】
図7は、スリットの開口位置を説明する図である。
図7中、数値「2」~「8」の領域はプロセス領域を鉛直方向に8等分したときの鉛直方向の各領域を示し、数値「2」の領域がプロセス領域の最も上部に位置し、数値「8」の領域がプロセス領域の最も下部に位置する。数値「1」の領域はプロセス領域よりも上方の領域を示し、数値「10」の領域はプロセス領域よりも下方の領域を示す。また、梨地のハッチングが付されている数値の領域は開口がある領域を示し、梨地のハッチングが付されていない数値の領域は開口がない領域を示す。すなわち、
図7では、スリットA1,A2はプロセス領域の上方から下方まで開口するスリットである。また、スリットA3はプロセス領域を8等分したときの中央部の2つ領域が開口し、その他の領域が開口しないスリットである。
【0060】
図8は、鉛直方向におけるガスの流量分布の解析結果を示す図であり、基板処理装置が
図7に示される3つのスリットA1~A3を有する場合の結果を示す。
図8中、プロセス領域を鉛直方向に8等分したときの鉛直方向の各領域を横軸に示し、各領域でのガスの流量比を縦軸に示す。なお、流量比は前述した数式(1)により算出した。また、
図8中、菱形印、四角印及び三角印はそれぞれスリットA1、スリットA2及びスリットA3の位置での流量比を示す。
【0061】
図8に示されるように、スリットA1の位置では、鉛直方向の中央部が下部及び上部よりも流量が大きい凸状を示すことが分かる。
【0062】
図9は、スリットの開口位置を説明する図である。
図9中、数値「2」~「8」の領域はプロセス領域を鉛直方向に8等分したときの鉛直方向の各領域を示し、数値「2」の領域がプロセス領域の最も上部に位置し、数値「8」の領域がプロセス領域の最も下部に位置する。数値「1」の領域はプロセス領域よりも上方の領域を示し、数値「10」の領域はプロセス領域よりも下方の領域を示す。また、梨地のハッチングが付されている数値の領域は開口がある領域を示し、梨地のハッチングが付されていない数値の領域は開口がない領域を示す。すなわち、
図9では、スリットA1はプロセス領域の上方から下方まで開口するスリットである。また、スリットA2はプロセス領域を8等分したときの上部の2つの領域と下部の2つの領域とが開口し、その他の領域が開口しないスリットである。また、スリットA3はプロセス領域を8等分したときの中央部の2つ領域が開口し、その他の領域が開口しないスリットである。
【0063】
図10は、鉛直方向におけるガスの流量分布の解析結果を示す図であり、基板処理装置が
図9に示される3つのスリットA1~A3を有する場合の結果を示す。
図10中、プロセス領域を鉛直方向に8等分したときの鉛直方向の各領域を横軸に示し、各領域でのガスの流量比を縦軸に示す。なお、流量比は前述した数式(1)により算出した。また、
図10中、菱形印、四角印及び三角印はそれぞれスリットA1、スリットA2及びスリットA3の位置での流量比を示す。
【0064】
図10に示されるように、スリットA1の位置では、鉛直方向の中央部が下部及び上部よりも流量が小さい凹状を示すことが分かる。
【0065】
以上、
図8及び
図10に示される結果から、スリットA2,A3のスリット長さを変更することで、鉛直方向の排気分布を制御できることが示された。
【0066】
なお、上記の実施形態において、内管11は内筒の一例であり、外管12及びマニホールド17は外筒の一例である。
【0067】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0068】
上記の実施形態では、別材料で形成される外管12とマニホールド17とが外筒を構成する場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、外管12とマニホールド17とが同じ材料、かつ一体で形成されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 基板処理装置
11 内管
12 外管
17 マニホールド
28 排気ポート
31~33 ノズル
80,80A,80B ガス流調整部
A1~A3 スリット
R1 第1領域
R2 第2領域