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特開2023-161258ファラデー回転子及び光アイソレータの製造方法
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  • 特開-ファラデー回転子及び光アイソレータの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161258
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】ファラデー回転子及び光アイソレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/28 20060101AFI20231030BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20231030BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20231030BHJP
   B08B 7/00 20060101ALI20231030BHJP
   G02F 1/09 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
G02B27/28 A
G02B5/30
G02B1/11
B08B7/00
G02F1/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071518
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 光人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 聡明
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
2K009
2K102
3B116
【Fターム(参考)】
2H149AA22
2H149AA24
2H149AB02
2H149BA02
2H149DA06
2H149DA11
2H149FA43Y
2H149FB06
2H149FD48
2H199AA13
2H199AA23
2H199AA41
2K009AA02
2K102AA27
2K102BB05
2K102BC09
2K102CA28
3B116AA02
3B116BA06
3B116BB90
(57)【要約】
【課題】安定して高品質なファラデー回転子を製造すること、特にファラデー回転子の光透過面に反射防止膜を形成する際に高品質な反射防止膜を得ることを可能にするファラデー回転子の製造方法を提供する。
【解決手段】液化炭酸ガスから生成されるドライアイス微粒子を、好ましくは所定範囲の粒子径と所定範囲の噴射圧の設定下で、ファラデー回転子の先駆体である略方形平板の光透過面、又は光透過面と側面とに吹き付けて清浄し、その光透過面上に反射防止膜を形成させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファラデー回転子として使用する略方形平板を単結晶円形ウェーハから切り出す切断工程と、該略方形平板を洗浄する工程とを含むファラデー回転子の製造方法であって、
前記略方形平板を洗浄する工程が、液化炭酸ガスから生成されるドライアイス微粒子を該略方形平板の少なくとも光透過面に吹き付けることを含むことを特徴とするファラデー回転子の製造方法。
【請求項2】
前記ドライアイス微粒子を該略方形平板の側面にも吹き付けることを特徴とする請求項1に記載のファラデー回転子の製造方法。
【請求項3】
前記ドライアイス微粒子の、レーザー回折散乱法により測定される粒子径が5μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のファラデー回転子の製造方法。
【請求項4】
前記ドライアイス微粒子の粒子径が10μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項3に記載のファラデー回転子の製造方法。
【請求項5】
前記ドライアイス微粒子を吹き付ける圧力が0.1MPa以上5MPa以下であることを特徴とする請求項1又は2項に記載のファラデー回転子の製造方法。
【請求項6】
前記ドライアイス微粒子の、レーザー回折散乱法により測定される粒子径が5μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項5に記載のファラデー回転子の製造方法。
【請求項7】
前記ドライアイス微粒子の粒子径が10μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項6に記載のファラデー回転子の製造方法。
【請求項8】
前記略方形平板を洗浄する工程の後に、該略方形平板の光透過面に反射防止膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のファラデー回転子の製造方法。
【請求項9】
前記ドライアイス微粒子の、レーザー回折散乱法により測定される粒子径が5μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項8に記載のファラデー回転子の製造方法。
【請求項10】
前記ドライアイス微粒子の粒子径が10μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項9に記載のファラデー回転子の製造方法。
【請求項11】
前記ドライアイス微粒子を吹き付ける圧力が0.1MPa以上5MPa以下であることを特徴とする請求項8項に記載のファラデー回転子の製造方法。
【請求項12】
前記ドライアイス微粒子の、レーザー回折散乱法により測定される粒子径が5μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項11に記載のファラデー回転子の製造方法。
【請求項13】
前記ドライアイス微粒子の粒子径が10μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項12に記載のファラデー回転子の製造方法。
【請求項14】
偏光子、検光子、ファラデー回転子、及び該ファラデー回転子を磁化しファラデー回転角を誘起する永久磁石を含んで構成される光アイソレータの製造方法であって、
前記ファラデー回転子が、ファラデー回転子として使用する略方形平板を単結晶円形ウェーハから切り出す切断工程と、該略方形平板を洗浄する工程とを含む過程で作成され、
前記略方形平板を洗浄する工程が、液化炭酸ガスから生成されるドライアイス微粒子を該略方形平板の少なくとも光透過面に吹き付けることを含むことを特徴とする光アイソレータの製造方法。
【請求項15】
前記ドライアイス微粒子を該略方形平板の側面にも吹き付けることを特徴とする請求項14に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項16】
前記ドライアイス微粒子の、レーザー回折散乱法により測定される粒子径が5μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項14又は15に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項17】
前記ドライアイス微粒子の粒子径が10μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項16に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項18】
前記ドライアイス微粒子を吹き付ける圧力が0.1MPa以上5MPa以下であることを特徴とする請求項14又は15に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項19】
前記ドライアイス微粒子の、レーザー回折散乱法により測定される粒子径が5μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項18に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項20】
前記ドライアイス微粒子の粒子径が10μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項19に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項21】
前記略方形平板を洗浄する工程の後に、該略方形平板の光透過面に反射防止膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項14又は15に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項22】
前記ドライアイス微粒子の、レーザー回折散乱法により測定される粒子径が5μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項21に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項23】
前記ドライアイス微粒子の粒子径が10μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項22に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項24】
前記ドライアイス微粒子を吹き付ける圧力が0.1MPa以上5MPa以下であることを特徴とする請求項14又は15に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項25】
前記ドライアイス微粒子の、レーザー回折散乱法により測定される粒子径が5μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項24に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項26】
前記ドライアイス微粒子の粒子径が10μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項25に記載の光アイソレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に用いられる光アイソレータの製造方法、特に光アイソレータに用いられるファラデー回転子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光加工機や光計測機、光通信に用いられるレーザー光源は、出射したレーザー光が伝送路途中に設けられた部材表面で反射して、その反射光の一部がレーザー光源に戻って入射すると、レーザー発振が不安定になってしまう。このような反射戻り光を遮断するために、反射戻り光の偏光面を非相反で回転させるファラデー回転子を用いた光アイソレータが用いられる。
【0003】
光アイソレータは主に、偏光子、検光子、ファラデー回転子、及びファラデー回転子を磁化しファラデー回転角を誘起する永久磁石より構成され、光源と光伝送部品との間に設けられ、光伝送部品の方に進む光だけを透過させ、光源方向に向かう反射戻り光を遮断するものである。
【0004】
例えば、偏波依存型の光アイソレータの構造は、入射側に偏光子が設けられ出射側には検光子が設けられている。ファラデー回転子(外部に磁場印加用の磁石を配置している)は偏光子と検光子との間に配置され、入射した光の偏光軸を45度回転させるものである。また、偏光子と検光子は、互いに透過偏光軸の相対角度が45度に配置されている。
光アイソレータに入射した光は、偏光子を通過しファラデー回転子によって偏光面が45度回転する。その後、検光子の偏光面と一致するので、光は検光子を透過する。
【0005】
一方、反射戻り光は 検光子に入射した後、ファラデー回転子に入射する。反射光はファラデー回転子により更に偏光面が45度回転して偏光子の透過偏光軸と直交するので、偏光子を通過することが出来なくなる。よって、反射戻り光はレーザー光源に戻れないので、レーザー発振に悪影響を与えない。
【0006】
光通信では、光アイソレータのファラデー回転子として、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のような磁気をもった材料が用いられ、極めて清浄な洗浄が要求されている。単結晶育成後の円形ウェーハをダイシングソーなどの切断装置で要求仕様に合わせた寸法に切断されるが、一般的には一辺の寸法が11mmから15mm□の略方形チップ形状に切断加工される。そして、その後の工程で、通例、異物(パーティクル)検査を効率よくする目的で、チップの両面に反射防止膜を形成するが、良い品質の反射防止膜を形成するためには、反射防止膜を形成する前にチップの表面に付着しているパーティクルを洗浄により完全に除去することが極めて重要である。前記切断加工では、通常ダイシング装置が用いられるが、砥粒を埋め込んだブレードで切断を行う際に、ワーク自体の粉体などが発生し、また、切削やラッピング加工、研磨加工においても、ワーク自体の微粉などが発生して、これらがパーティクルとしてチップの表面に付着する。このチップの洗浄方法としては、多数のチップを洗浄治具に取り付け、超音波を用いた洗浄装置によって、アルカリ洗剤や純水を用いて洗浄する方法が利用されている。
【0007】
しかし、ファラデー回転子の材料自体が絶縁体であるため、切断加工や研磨加工などで発生するワーク自体の切削粉・研磨粉、破片や周辺異物などのパーティクルが付着し易く、上記のような洗浄方法では、洗浄前に付着していたパーティクルをチップから完全に除去することができない。そして、パーティクルがチップに付着したままの状態で反射防止膜を形成すると、付着したパーティクルの上に反射防止膜が施されるため、そのパーティクルが何らかの原因により脱落すると、その部分の反射防止膜が欠落してしまうという大きな問題があった。
【0008】
また、ファラデー回転子の洗浄は、超音波洗浄装置による洗浄で仕上げることができない。そのため、溶剤等をつけた綿棒やクリーニングペーパーでパーティクルを拭き取る作業が必要となっており、作業効率の向上の妨げとなっている。
【0009】
このような問題に対して、特許文献1には、超音波洗浄装置によるファラデー回転子の洗浄を、磁場の中に設置した状態で超音波を当てて洗浄する方法が記載されている。
しかしながら、このように磁場の中で超音波を当てて洗浄しても、完全にパーティクルを除去することは難しく、そのため、高品質な反射防止膜の形成、ひいては高品質なファラデー回転子の製造は難しかった。
【0010】
また、特許文献2には、チップ形状に加工したファラデー回転子の側面部分を樹脂層で覆い保護した上で、超音波洗浄装置により洗浄する方法が記載されている。
しかしながら、この方法では、側面部からのパーティクルの付着は防げるものの、超音波洗浄による洗浄では光透過面に付着したパーティクルを完全に除去することができないため、高品質な反射防止膜の形成、ひいては高品質なファラデー回転子の製造は難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007-121992号公報
【特許文献2】特許2849655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述のような問題に鑑みてなされたものであり、ファラデー回転子材料の光透過面に反射防止膜を形成した際に、高品質な反射防止膜を得ることが可能なファラデー回転子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、高品質なファラデー回転子、特には高品質な反射防止膜を有するファラデー回転子を形成することが可能なファラデー回転子の製造方法を提供する。詳しくは、本発明は、ファラデー回転子として使用する略方形平板(以下、「略方形平板」という。)を単結晶円形ウェーハから切り出す切断工程と、前記略方形平板を洗浄する工程とを含むファラデー回転子の製造方法であって、前記略方形平板を洗浄する工程が、液化炭酸ガスから生成されるドライアイス微粒子を該略方形平板の光透過面、好ましくは該光透過面及び側面に吹き付けることを含むファラデー回転子の製造方法であり、ファラデー回転子として使用する前記略方形平板(チップ)の光透過面、好ましくは該光透過面及び側面に対し、反射防止膜を形成する場合はその形成前に、液化炭酸ガスから生成される好ましくは粒子径5μm以上100μm以下の(更に好ましくは、10μm以上50μm以下の)ドライアイス微粒子を吹き付けることを特徴とするファラデー回転子の製造方法を提供する。
【0014】
前記ドライアイス微粒子の粒子径が5μm以上100μm以下であることが好ましいのは、ドライアイス微粒子の大きさを100μm以下とすることで、ファラデー回転子として使用する前記略方形平板に吹き付けることによるダメージが確実に無くなり、また5μm未満の大きさではパーティクル除去が不完全になる恐れがあるからである。
【0015】
このような大きさのドライアイス微粒子により前記略方形平板を洗浄することで、超音波洗浄装置では不完全であったパーティクルの除去が可能となり、その後の反射防止膜の形成で高品質な反射防止膜を得ることができる。したがって、本発明は、改善された光アイソレータ製造方法、特には改良されたファラデー回転子の製造方法を提供する。
【0016】
すなわち、本発明は、洗浄工程を含む平板状ファラデー回転子を製造する方法において、前記洗浄工程の一つに、液化炭酸ガスから生成されるドライアイス微粒子を前記略方形平板の光透過面、好ましくは該光透過面及び側面に吹き付けて洗浄し、このときのドライアイス微粒子が、例えば、レーザー回折散乱法により求められる粒子径が5μm以上100μm以下であるドライアイス微粒子で洗浄することを特徴とするファラデー回転子の製造方法を提供するものである。なお、レーザー回折散乱法は、粒子群にレーザー光を当てると、同心円状の回折・散乱光が生じ、その強度の分布は粒子の粒径と存在量に依存することから、存在量を固定配置し、受光部で回折・散乱光の強度を測定し、その分布から粒子径を求める方法である。本発明において、ドライアイス微粒子の粒子径は、このレーザー回折散乱法を用いて求めた、ドライアイス微粒子の体積基準累積分布の50%に相当する径である。また、本発明で用いるドライアイス微粒子は、高圧液化炭酸ガスを断熱膨張させてジュールトムソン効果を用いて温度を下げることにより形成することができる。
【0017】
好ましい態様の例としては、前記ドライアイス微粒子の粒子径が10μm以上50μm以下であることが挙げられる。また、ドライアイス微粒子を前記略方形平板に吹き付ける圧力は、0.1MPa~5MPaであることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、偏光子、検光子、ファラデー回転子、及び該ファラデー回転子を磁化しファラデー回転角を誘起する永久磁石を含んで構成される光アイソレータの製造方法であって、前記ファラデー回転子が、ファラデー回転子として使用する略方形平板を単結晶円形ウェーハから切り出す切断工程と、該略方形平板を洗浄する工程とを含む過程で作成され、前記略方形平板を洗浄する工程が、液化炭酸ガスから生成される好ましくは粒子径5μm以上100μm以下の(更に好ましくは、10μm以上50μm以下の)ドライアイス微粒子を該略方形平板の光透過面、好ましくは該光透過面及び側面に対し、反射防止膜を形成する場合はその形成前に、吹き付けることを含むことを特徴とする光アイソレータの製造方法を提供するものである。前述した本発明のファラデー回転子の製造方法を適用してファラデー回転子を得、その後は、従来の方法に従って光アイソレータが製造される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ファラデー回転子の光透過面に反射防止膜を蒸着する前に、ドライアイス微粒子を、前記略方形平板の光透過面(及び側面)に吹き付けることにより、ファラデー回転子の光透過面を傷つけることなく、付着しているパーティクルの除去が可能となり、高品質な反射防止膜の蒸着が可能となる。また、反射防止膜上にパーティクルが見つかった場合には、さらにドライアイス微粒子を反射防止膜上に吹き付けることも可能である。この場合は、ドライアイス微粒子径が5μm強、且つ後述するドライアイス吹き付け圧力が0.1MPa強であることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明における略方形平板の洗浄工程と該洗浄工程で使用される洗浄装置を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明について、図面を参照しつつ、さらに詳細に説明する。図1は本発明のファラデー回転子の製造方法において、略方形平板6の洗浄工程の一態様を示す概念図である。この図からわかるように、略方形平板6の光透過面にドライアイス微粒子を吹き付けることにより略方形平板6を洗浄する。図1に示すように、液化炭酸ガス容器1内の液化炭酸ガスが、窒素容器2内の推進ガスとしての窒素とともに、ドライアイス洗浄装置3(エア・ウォーター社製)に供給され、洗浄ノズルユニット4を経て、洗浄ノズル5からドライアイス微粒子として略方形平板6に噴射される。図1では略方形平板6の光透過面を洗浄しているが、ノズル5の向き又は略方形平板6の配置を変えることにより、略方形平板6の側面を洗浄することができる。なお、本発明において、略方形平板の側面とは、略方形平板の光透過面以外の面である。
【0022】
ドライアイス微粒子を吹き付ける圧力としては、0.1MPa~5MPaが望ましい。0.1MPa未満では圧力が不足し、光透過面に付着しているパーティクルの除去ができない恐れがある。また、5MPaを超えると、圧力が高すぎることにより、ファラデー回転子として使用する略方形平板にダメージを与える可能性がある。
【0023】
レーザー回折散乱法で測定されるドライアイス微粒子の粒子径の大きさとしては5μm以上100μm以下の範囲が望ましく、より好ましくは10μm以上50μm以下の範囲がさらに好ましい。ドライアイス微粒子の粒子径が5μm未満では、ファラデー回転子として使用する略方形平板の光透過面に衝突した際の急激な温度変化により、ドライアイス微粒子の昇華エネルギーが不足し、光透過面に付着しているパーティクルを飛散させることによる除去効果が得られなくなる可能性がある。一方、粒子径が100μmを超えると、光透過面に衝突した際の衝撃が大きくなり、ファラデー回転子として使用する略方形平板にダメージを与える可能性がある。また、ドライアイス微粒子の大きさはドライアイスを照射するノズル形状を選択することで調整可能となる。
【実施例0024】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0025】
[実施例1]
液相エピタキシャル法により、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶膜を3インチの円形のCa、Mg、Zr等を置換したガドリニウムーガリウムーガーネット基板(SGGG基板:サンゴバン社製)上に成長させた。続いて、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶膜の厚さを調整するため、両面研磨により、厚さが0.4mmで、光透過面が鏡面になるように研磨加工を行った。
次に、外周刃式ダイシング装置にて、厚さ0.1mmのダイヤモンドブレード(#600)で切断加工を行い、11mm×11mm□のチップを、1枚のビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶膜から20枚得た。
前記チップの光透過面を、ドライアイス微粒子径が30μm(レーザー回折散乱法)となる噴射ノズルを取り付けたドライアイス洗浄装置(QuickSnow QS‐A1321F-R:エア・ウォーター社製)により、ドライアイス微粒子を3MPaの圧力で吹き付けて洗浄を行った。その後、真空蒸着装置にセットして前記チップ表面に反射防止膜を、イオンビームアシストを用いて形成した。形成した反射防止膜を光学顕微鏡にて観察し、反射防止膜の欠落箇所及びチップ周辺部欠けの個数をそれぞれ求めた。
【0026】
[実施例2]
前記チップの光透過面に加え側面をも、ドライアイス微粒子を吹き付けて洗浄した以外は、実施例1と同様にして、前記チップ表面に反射防止膜を形成し、反射防止膜の欠落箇所及びチップ周辺部欠けの個数をそれぞれ求めた。
【0027】
[実施例3]
ドライアイス微粒子径が10μm(レーザー回折散乱法)となる噴射ノズルを取り付けたドライアイス洗浄装置により、ドライアイス微粒子を吹き付けて洗浄した以外は、実施例2と同様にして、前記チップ表面に反射防止膜を形成し、反射防止膜の欠落箇所及びチップ周辺部欠けの個数をそれぞれ求めた。
【0028】
[実施例4]
ドライアイス微粒子径が90μm(レーザー回折散乱法)となる噴射ノズルを取り付けたドライアイス洗浄装置により、ドライアイス微粒子を吹き付けて洗浄した以外は、実施例2と同様にして、前記チップ表面に反射防止膜を形成し、反射防止膜の欠落箇所及びチップ周辺部欠けの個数をそれぞれ求めた。
【0029】
[実施例5]
ドライアイス微粒子径が1μm(レーザー回折散乱法)となる噴射ノズルを取り付けたドライアイス洗浄装置により、ドライアイス微粒子を吹き付けて洗浄した以外は、実施例2と同様にして、前記チップ表面に反射防止膜を形成し、反射防止膜の欠落箇所及びチップ周辺部欠けの個数をそれぞれ求めた。
【0030】
[実施例6]
ドライアイス微粒子径が150μm(レーザー回折散乱法)となる噴射ノズルを取り付けたドライアイス洗浄装置により、ドライアイス微粒子を吹き付けて洗浄した以外は、実施例2と同様にして、前記チップ表面に反射防止膜を形成し、反射防止膜の欠落箇所及びチップ周辺部欠けの個数をそれぞれ求めた。
【0031】
[実施例7]
ドライアイス微粒子を0.08MPaの圧力で吹き付けて洗浄を行った以外は、実施例2と同様にして、前記チップ表面に反射防止膜を形成し、反射防止膜の欠落箇所及びチップ周辺部欠けの個数をそれぞれ求めた。
【0032】
[実施例8]
ドライアイス微粒子を6MPaの圧力で吹き付けて洗浄を行った以外は、実施例2と同様にして、前記チップ表面に反射防止膜を形成し、反射防止膜の欠落箇所及びチップ周辺部欠けの個数をそれぞれ求めた。
【0033】
[比較例1]
ドライアイス洗浄装置に代わって、超音波洗浄装置にアンモニア水と過酸化水素水と超純水を1:1:18の割合(体積比率)で混合した洗浄液を準備し、60℃に加熱した該洗浄液に前記チップを浸漬させて、950kHz、1200Wの条件で20分間、超音波洗浄を行った。その後、アルコールによるスピン乾燥を行った後は、実施例2と同様に、真空蒸着装置にセットして前記チップ表面に反射防止膜を形成した。形成した反射防止膜を光学顕微鏡にて観察し、反射防止膜の欠落箇所及びチップ周辺部欠けの個数をそれぞれ求めた。
【0034】
上記実施例1~8及び比較例1の結果を表1に示す。なお、表中の反射防止膜欠落箇所数及びチップ周辺欠け個数の数字は、実施例1~8及び比較例1における洗浄した11mm×11mm□チップ5枚の平均値である。
【0035】
【表1】
【0036】
[結果・考察]
実施例1~4では、ドライアイス微粒子の粒子径が10μm以上90μm以下のドライアイス微粒子を使用し、反射防止膜を形成する前にファラデー回転子を洗浄することで、形成後の反射防止膜の欠落による欠陥の発生を防ぐことができた。また、ドライアイス微粒子を吹き付けることによる洗浄でのファラデー回転子へのダメージも確認されなかった。
【0037】
一方、本発明で好ましいものとして規定する粒子径を有してないドライアイス微粒子を使用した実施例5及び6では、反射防止膜形成後の反射防止膜の欠落による欠陥がやや多いか、チップ周辺の欠けによる欠陥個数がやや多く、他の実施例と比較して結果が劣っていた。また、ドライアイス洗浄に代わって、洗浄液による超音波洗浄装置により洗浄した、本発明を採用しない比較例1では、すべての実施例と比較して結果がはなはだ劣っていた。
【0038】
さらに、ドライアイス微粒子を吹き付ける圧力が不十分だった実施例7においては、パーティクルが完全に除去されなかったことによると思われる反射防止膜欠落があり、一方、吹き付け圧力が過度であった実施例8においては、チップの欠けがわずかに生じた。但し、これら2例も、本発明の効果を無効とするほどのものではなかった。
【0039】
以上のように、ファラデー回転子として使用するチップの光透過面に反射防止膜を形成する前に、液化炭酸ガスから生成される粒子径5μm以上100μm以下のドライアイス微粒子をチップの光透過面(及び側面)に吹き付けて洗浄した後に反射防止膜を形成することで、形成後の反射防止膜の欠落箇所がなく高品質な反射防止膜を形成することができることがわかった。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。反射防止膜を形成することで顕微鏡下のパーティクル観察が容易になるため、反射防止膜を形成する前の工程を中心に記述したが、付着パーティクルの洗浄除去効果は反射防止膜の形成有無に関わらず、有効である。また特に本実施例のような絶縁体材料では除去効果が大きくなる。
【0041】
上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0042】
1…液化炭酸ガス容器
2…窒素容器
3…ドライアイス洗浄装置
4…洗浄ノズルユニット
5…洗浄ノズル
6…略方形平板
図1