(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161269
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】車両用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20231030BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071537
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北出 聡太郎
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA08
5J046AA09
5J046AB06
5J046LA02
5J046LA08
5J046LA15
5J046LA18
5J047AA08
5J047AA09
5J047AB06
5J047EC01
(57)【要約】
【課題】異なる周波数帯の電波を受信する車両用窓ガラスに備えられた複数種のアンテナの信号処理を行うための、簡易的な回路構成を備えた車両用アンテナ装置を提供する。
【解決手段】車両用アンテナ装置1は、ガラス板10と、アンテナ20と、アンプモジュール30と、を備え、アンテナ20は、VHF帯の電波を受信可能な第1アンテナ20Aと、UHF帯の電波を受信可能な第2アンテナ20Bと、を有し、アンプモジュール30には、第1アンテナ20Aで受信した電波の信号を増幅する第1アンプ30Aと、第2アンテナ20Bで受信した電波の信号を増幅する第2アンプ30Bと、が一体的に組み込まれ、アンテナ20は、1つ又は2つの給電部21と、給電部21から延伸するアンテナエレメント22と、を有し、アンプモジュール30は、給電部21と電気的に接続される1つ又は2つの導体部31を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のガラス板と、
前記ガラス板に設けられるアンテナと、
前記アンテナで受信した電波の信号を増幅するアンプモジュールと、を備え、
前記アンテナは、VHF帯の電波を受信可能な第1アンテナと、UHF帯の電波を受信可能な第2アンテナと、を有し、
前記アンプモジュールには、前記第1アンテナで受信した電波の信号を増幅する第1アンプと、前記第2アンテナで受信した電波の信号を増幅する第2アンプと、が一体的に組み込まれ、
前記アンテナは、1つ又は2つの給電部と、前記給電部から延伸するアンテナエレメントと、を有し、
前記アンプモジュールは、前記給電部と電気的に接続される1つ又は2つの導体部を有する、車両用アンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナは、前記給電部として、第1給電部のみを有し、
前記アンプモジュールは、前記導体部として、前記第1給電部と電気的に接続される第1導体部のみを有し、前記第1導体部を介して前記アンテナから受けた信号を増幅する、請求項1に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナは、前記給電部として、第1給電部及び第2給電部を有し、
前記アンプモジュールは、前記導体部として、前記第1給電部と電気的に接続される第1導体部と、前記第2給電部と電気的に接続される第2導体部と、を有し、
前記第2給電部は、電気的に接地されており、
前記アンプモジュールは、前記第1導体部を介して前記アンテナから受けた信号を増幅する、請求項1に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項4】
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、前記第1給電部及び前記第2給電部を有するダイポールアンテナである、請求項3に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項5】
前記アンプモジュールで増幅された信号を処理する信号処理装置と、
前記アンプモジュールで増幅された信号を前記信号処理装置に伝送する伝送線路と、を備え、
前記伝送線路は、前記ガラス板が設けられる車両と電気的に接続されるアース部を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項6】
前記伝送線路において、前記アンプモジュールから前記アース部までの長さは、前記第1アンテナが受信する下限周波数から前記第2アンテナが受信する上限周波数までの周波数帯の中心周波数における、空気中の波長をλ、周辺媒質の波長短縮率をkとしたとき、0.6×k×λ以内である、請求項5に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項7】
前記伝送線路は、
前記第1アンプで増幅された信号を前記信号処理装置に伝送する第1伝送線路と、
前記第2アンプで増幅された信号を前記信号処理装置に伝送する第2伝送線路と、を有する、請求項5に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項8】
前記アース部として、前記第1伝送線路が有する第1アース部と、前記第2伝送線路が有する第2アース部と、を統合した共通アース部を有する、請求項7に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項9】
前記伝送線路は、前記第1アンプで増幅された信号及び前記第2アンプで増幅された信号の両方が重畳された信号を前記信号処理装置に伝送する、請求項5に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項10】
前記アンプモジュールは、前記導体部として、導電端子を有し、
前記導電端子が、前記給電部に固定される、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項11】
前記導電端子は、前記ガラス板に向かって突出するばね端子であり、
前記ばね端子は、前記給電部と弾性的に接触している、請求項10に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項12】
前記導電端子と前記給電部とは鉛フリー半田で固定される、請求項10に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項13】
前記アンプモジュールは、前記導体部として、アース端子及び接続線を有し、
前記アース端子は、前記ガラス板とは異なる位置に配置されるとともに、前記ガラス板が設けられる車両と電気的に接続され、
前記接続線は、前記給電部と電気的に接続される、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項14】
前記接続線の長さは、前記第1アンテナが受信する下限周波数から前記第2アンテナが受信する上限周波数までの周波数帯の中心周波数における、空気中の波長をλ、周辺媒質の波長短縮率をkとしたとき、0.35×k×λ以内である、請求項13に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項15】
前記第1アンテナは、FM放送波の周波数帯の電波を受信する、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項16】
前記第1アンテナは、さらに、AM放送波の周波数帯の電波を受信する、請求項15に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項17】
前記第2アンテナは、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯の電波を受信する、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項18】
前記ガラス板は、ウィンドシールド、リアガラス又はサイドガラスである、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用アンテナ装置として、AM放送波、FM放送波、欧州規格のDAB(Band III)放送波、地上デジタルテレビ放送波等の様々な周波数帯の電波を受信できるアンテナが、車両用窓ガラスに搭載されている。これらのアンテナは、車両用窓ガラスの開口部に、例えば、線状のアンテナパターンを形成し、各々の放送波の周波数帯にチューニングされたアンテナの給電部に接続されたケーブルなどを経由してアンプ回路に接続されている。
【0003】
車両用窓ガラスの開口部に複数の周波数帯の信号を受信できるアンテナを配置するときに、例えば、FM放送波(76MHz~108MHz)のようにVHF帯(30MHz~300MHz)のような低域の周波数帯の電波を受信するアンテナを含む場合、UHF帯(300MHz~3GHz)のような高域の周波数帯の電波に比べて波長が長いため、受信に適したアンテナパターンを配置するための領域の確保、即ち、車両用窓ガラスの開口部を広く確保する必要がある。
【0004】
以下の特許文献1には、FM放送波用アンテナと地上デジタルテレビ放送波(DTV)用アンテナを共存させる場合、FMアンテナ用に給電するための給電部(例えば単極)と、DTV用アンテナに給電するための給電部(とくに双極)と、を車両用窓ガラス上に設け、これらの給電部に、給電する(同軸ケーブル等の)伝送線路を経由して受信器に接続されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1に開示された技術では、FM用アンテナとDTV用アンテナのように、異なる周波数帯の放送波用のアンテナから受信した信号を処理するため、各々のアンテナに適したアンプやチューナーを含む電子回路を備える必要があり、回路構成が煩雑になる傾向があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、異なる周波数帯の電波を受信する車両用窓ガラスに備えられた複数種のアンテナの信号処理を行うための、簡易的な回路構成を備えた車両用アンテナ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を備える。
[1]車両用のガラス板と、前記ガラス板に設けられるアンテナと、前記アンテナで受信した電波の信号を増幅するアンプモジュールと、を備え、前記アンテナは、VHF帯の電波を受信可能な第1アンテナと、UHF帯の電波を受信可能な第2アンテナと、を有し、前記アンプモジュールには、前記第1アンテナで受信した電波の信号を増幅する第1アンプと、前記第2アンテナで受信した電波の信号を増幅する第2アンプと、が一体的に組み込まれ、前記アンテナは、1つ又は2つの給電部と、前記給電部から延伸するアンテナエレメントと、を有し、前記アンプモジュールは、前記給電部と電気的に接続される1つ又は2つの導体部を有する、車両用アンテナ装置。
【0009】
[2]前記アンテナは、前記給電部として、第1給電部のみを有し、前記アンプモジュールは、前記導体部として、前記第1給電部と電気的に接続される第1導体部のみを有し、前記第1導体部を介して前記アンテナから受けた信号を増幅する、[1]に記載の車両用アンテナ装置。
【0010】
[3]前記アンテナは、前記給電部として、第1給電部及び第2給電部を有し、前記アンプモジュールは、前記導体部として、前記第1給電部と電気的に接続される第1導体部と、前記第2給電部と電気的に接続される第2導体部と、を有し、前記第2給電部は、電気的に接地されており、前記アンプモジュールは、前記第1導体部を介して前記アンテナから受けた信号を増幅する、[1]に記載の車両用アンテナ装置。
【0011】
[4]前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、前記第1給電部及び前記第2給電部を有するダイポールアンテナである、[3]に記載の車両用アンテナ装置。
【0012】
[5]前記アンプモジュールで増幅された信号を処理する信号処理装置と、前記アンプモジュールで増幅された信号を前記信号処理装置に伝送する伝送線路と、を備え、前記伝送線路は、前記ガラス板が設けられる車両と電気的に接続されるアース部を有する、[1]から[4]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【0013】
[6]前記伝送線路において、前記アンプモジュールから前記アース部までの長さは、前記第1アンテナが受信する下限周波数から前記第2アンテナが受信する上限周波数までの周波数帯の中心周波数における、空気中の波長をλ、周辺媒質の波長短縮率をkとしたとき、0.6×k×λ以内である、[5]に記載の車両用アンテナ装置。
【0014】
[7]前記伝送線路は、前記第1アンプで増幅された信号を前記信号処理装置に伝送する第1伝送線路と、前記第2アンプで増幅された信号を前記信号処理装置に伝送する第2伝送線路と、を有する、[5]又は[6]に記載の車両用アンテナ装置。
【0015】
[8]前記アース部として、前記第1伝送線路が有する第1アース部と、前記第2伝送線路が有する第2アース部と、を統合した共通アース部を有する、[7]に記載の車両用アンテナ装置。
【0016】
[9]前記伝送線路は、前記第1アンプで増幅された信号及び前記第2アンプで増幅された信号の両方が重畳された信号を前記信号処理装置に伝送する、[5]又は[6]に記載の車両用アンテナ装置。
【0017】
[10]前記アンプモジュールは、前記導体部として、導電端子を有し、前記導電端子が、前記給電部に固定される、[1]から[9]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【0018】
[11]前記導電端子は、前記ガラス板に向かって突出するばね端子であり、前記ばね端子は、前記給電部と弾性的に接触している、[10]に記載の車両用アンテナ装置。
【0019】
[12]前記導電端子と前記給電部とは鉛フリー半田で固定される、[10]又は[11]に記載の車両用アンテナ装置。
【0020】
[13]前記アンプモジュールは、前記導体部として、アース端子及び接続線を有し、前記アース端子は、前記ガラス板とは異なる位置に配置されるとともに、前記ガラス板が設けられる車両と電気的に接続され、前記接続線は、前記給電部と電気的に接続される、[1]から[9]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【0021】
[14]前記接続線の長さは、前記第1アンテナが受信する下限周波数から前記第2アンテナが受信する上限周波数までの周波数帯の中心周波数における、空気中の波長をλ、周辺媒質の波長短縮率をkとしたとき、0.35×k×λ以内である、[13]に記載の車両用アンテナ装置。
【0022】
[15]前記第1アンテナは、FM放送波の周波数帯の電波を受信する、[1]から[14]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【0023】
[16]前記第1アンテナは、さらに、AM放送波の周波数帯の電波を受信する、[15]に記載の車両用アンテナ装置。
【0024】
[17]前記第2アンテナは、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯の電波を受信する、[1]から[16]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【0025】
[18]前記ガラス板は、ウィンドシールド、リアガラス又はサイドガラスである、[1]から[17]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、異なる周波数帯の電波を受信する車両用窓ガラスに備えられた複数種のアンテナの信号処理を行うための、簡易的な回路構成を備えた車両用アンテナ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態による車両用アンテナ装置を搭載した車両の後方上部の斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による車両用アンテナ装置の構成図である。
【
図3】本発明の第1実施形態によるアンプモジュールの回路図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による車両用アンテナ装置の試験装置の構成図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による車両用アンテナ装置の試験結果をまとめた表である。
【
図6】本発明の第1実施形態による車両用アンテナ装置のFM水平偏波の利得の変化を示すグラフである。
【
図7】本発明の第1実施形態による車両用アンテナ装置のFM垂直偏波の利得の変化を示すグラフである。
【
図8】本発明の第2実施形態による車両用アンテナ装置の構成図である。
【
図9】本発明の第3実施形態による車両用アンテナ装置を搭載した車両の後方上部の斜視図である。
【
図10】本発明の第3実施形態による車両用アンテナ装置の構成図である。
【
図11】本発明の第4実施形態による車両用アンテナ装置の構成図である。
【
図12】本発明の第4実施形態によるアンプモジュールの回路図である。
【
図13】本発明の第5実施形態によるアンプモジュールの回路図である。
【
図14】本発明の第6実施形態による車両用アンテナ装置の構成図である。
【
図15】本発明の第6実施形態によるアンプモジュールの回路図である。
【
図16】本発明の第6実施形態による車両用アンテナ装置の変形例を示す構成図である。
【
図17】本発明の第6実施形態による車両用アンテナ装置の他の変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による車両用アンテナ装置について詳細に説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右等の方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0029】
また、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。また、2つの周波数帯の間に挿入された「/」は、異なる周波数帯の電波を受信する組み合わせを意味する。また、前後、左右、上下は、車両用アンテナ装置が搭載される車両の前後、左右、上下を意味する。
【0030】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による車両用アンテナ装置1を搭載した車両100の後方上部の斜視図である。
図1に示すように、車両用アンテナ装置1は、リアガラス11及び車両100のバックドア102に取り付けられる構成を例示している。バックドア102は、車体110の後部に開閉可能に取り付けられている。なお、車両用アンテナ装置1を搭載した車両100は、一例であって、車両用アンテナ装置1が搭載される部位として、開閉式のバックドア102がない、セダンタイプの車両のリアガラスを含んでもよい。
【0031】
車両100は、図示しないウィンドシールド(フロントガラス)と、リアガラス11と、サイドガラス12と、を備えている。ウィンドシールド、サイドガラス12は、車体110側に取り付けられている。リアガラス11は、バックドア102側に取り付けられている。車体110は、ルーフ111(屋根部)と、ルーフ111を支持する複数のピラー112(柱部)と、を備えている。
【0032】
バックドア102は、ルーフ111の後部に取り付けられたヒンジ113によって、上下方向に回動する。バックドア102の左右は、車体110の後部に配置された2本のピラー112と、ガススプリング114を介して連結されている。ガススプリング114は、バックドア102の開閉をアシストする。
【0033】
車両用アンテナ装置1は、車両用のガラス板10と、ガラス板10に設けられるアンテナ20と、アンテナ20で受信した電波の信号を増幅するアンプモジュール30と、を備えている。アンテナ20は、車両用のガラス板10の一つである、リアガラス11に設けられている。なお、アンテナ20は、リアガラス11に限らず、サイドガラス12や、図示しないウィンドシールドに設けられてもよいが、とくにことわりが無い場合、アンテナ20はリアガラスに設けられる、として説明する。
【0034】
アンプモジュール30は、後述する信号処理装置60(
図2参照)と、伝送線路40を介して接続されている。伝送線路40は、例えば同軸ケーブルであるが、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等も使用できる。以降、とくにことわりが無い場合、伝送線路40は同軸ケーブルとして説明する。伝送線路40は、グロメット115を介して、車体110側に引き回されて、信号処理装置60と接続されている。信号処理装置60は、アンプモジュール30で増幅された信号を処理し、車体110側に設けられた図示しないスピーカーやディスプレイに信号を出力する。
【0035】
図2は、本発明の第1実施形態による車両用アンテナ装置1の構成図である。
図2に示すように、車両用アンテナ装置1は、ガラス板10(リアガラス11)と、アンテナ20と、アンプモジュール30と、伝送線路40と、アース部50と、信号処理装置60と、を備えている。
【0036】
アンテナ20は、ガラス板10上に形成された1つの給電部21と、給電部21からガラス板10に沿って延伸するアンテナエレメント22と、を有する。つまり、アンテナ20は、給電部21として、1つの給電部、つまり、第1給電部21aのみを有するモノポールアンテナである。第1給電部21aは、平面状の導体パターンである。なお、第1給電部21aの形状は、
図2に示すような平面視で四角形に限定されない。
【0037】
アンテナ20は、アンテナエレメント22として、第1給電部21aから延伸する第1アンテナエレメント22aを有する。第1アンテナエレメント22aは、第1給電部21aから延伸する線状の導体パターンである。なお、第1アンテナエレメント22aの形状は、線状に限定されず、帯状や平面状であっても構わない。
【0038】
第1アンテナエレメント22aは、複数の異なる周波数帯の電波を受信可能で、例えば、VHF帯(30MHz~300MHz)の電波を受信可能なアンテナパターンと、UHF帯(300MHz~3GHz)の電波を受信可能なアンテナパターンと、を含む。したがって、この場合、アンテナ20は、VHF帯の電波を受信可能な第1アンテナ20Aと、UHF帯の電波を受信可能な第2アンテナ20Bと、を有する。
【0039】
アンプモジュール30は、ガラス板10上に露出した1つの導体部31を有する。つまり、アンプモジュール30は、導体部31として、第1給電部21aと電気的に接続される第1導体部31aのみを有する。第1導体部31aは、第1給電部21aに固定される導電端子である。当該導電端子は、ガラス板10に向かって突出するばね端子を例示でき、該ばね端子は、アンプモジュール30の外側に凸状の形状を有し、第1給電部21aと弾性的に接触している。なお、導電端子は、ばね端子に限らず、給電部21と電気的に接続できれば、例えば、ばねのような弾性変形を有しない任意の形状を有する導体でもよい。
【0040】
図2に示す第1導体部31aは、ガラス板10に対向するアンプモジュール30の矩形箱状の筐体の底面に設けられている。第1導体部31aがばね端子である場合、第1導体部31aと第1給電部21aとは、半田を用いずに接続固定できる。さらに、アンプモジュール30は、車体110の任意の部分に固定されて、ばね端子である第1導体部31aと第1給電部21aとが位置ずれを生じないように安定して接続できる構成が好ましい。なお、第1導体部31aと第1給電部21aとは、半田での接続、とくに環境対応として鉛フリー半田により固定接続されてもよい。そして、アンプモジュール30は、ガラス板10上に取り付けられている。アンプモジュール30は、第1導体部31aを介してアンテナ20から受けた信号を増幅する。
【0041】
アンプモジュール30には、第1アンテナ20Aで受信した電波の信号を増幅する第1アンプ30Aと、第2アンテナ20Bで受信した電波の信号を増幅する第2アンプ30Bと、が一体的に組み込まれている。ここで、一体的に組み込まれているとは、アンプモジュール30の1つの筐体の中に、第1アンプ30A及び第2アンプ30Bが含まれていることをいう。
【0042】
図3は、本発明の第1実施形態によるアンプモジュール30の回路図である。
図3に示すように、アンプモジュール30は、1つの第1導体部31aから信号が入力され、2つの出力部32(第1出力部32a及び第2出力部32b)から信号を出力する。
【0043】
第1出力部32aからは、第1アンプ30Aで増幅されたFM放送波の周波数帯(76MHz~108MHz)の信号が出力される。また、第2出力部32bからは、第2アンプ30Bで増幅された地上デジタルテレビ放送波(DTV)の周波数帯(470MHz~710MHz)の信号が出力される。
【0044】
第1アンプ30Aは、FMバンドパスフィルタ回路71と、自動利得制御回路72と、FM増幅回路73と、FMバンドパスフィルタ整合回路74と、電源ノイズフィルタ75と、を有する。FMバンドパスフィルタ回路71は、第1導体部31aからの信号に含まれるFM放送波の周波数帯の信号だけを通過させ、他の周波数成分をカットする。
【0045】
自動利得制御回路72は、FM増幅回路73から出力されるピーク信号レベルをフィードバックすることで利得がFMバンドパスフィルタ回路71からの入力信号レベルに対して適切な範囲になるよう調整する。FM増幅回路73は、自動利得制御回路72からの信号を増幅することで、分配損失やケーブル損失を補償し信号レベルを推奨レベル値内に維持する。
【0046】
FMバンドパスフィルタ整合回路74は、FM増幅回路73で増幅された信号に含まれるFM放送波の周波数帯以外の周波数成分をカットするとともに、FM増幅回路73の出力インピーダンスを第1出力部32aのインピーダンス(例えば50Ω)に整合させることで、反射損失の小さい良好な増幅特性を得る。電源ノイズフィルタ75は、車両100に搭載された他の電子機器からノイズが電源を通して各回路に混入すること防止する。
【0047】
第2アンプ30Bは、第1のDTVバンドパスフィルタ回路81と、DTV増幅回路82と、整合回路83と、第2のDTVバンドパスフィルタ回路84と、電源ノイズフィルタ85と、を有する。第1のDTVバンドパスフィルタ回路81は、第1導体部31aからの信号に含まれるDTV放送波の周波数帯の信号だけを通過させ、他の周波数帯の信号成分をカットする。
【0048】
DTV増幅回路82は、第1のDTVバンドパスフィルタ回路81からの信号を増幅することで、分配損失やケーブル損失を補償し信号レベルを推奨レベル値内に維持する。整合回路83は、DTV増幅回路82の出力インピーダンスを第2出力部32bのインピーダンス(例えば50Ω)に整合させることで、反射損失の小さい良好な増幅特性を得る。
【0049】
第2のDTVバンドパスフィルタ回路84は、整合回路83から出力されDTV増幅回路82で増幅された信号に含まれるDTV放送波の周波数帯以外の周波数成分をカットする。電源ノイズフィルタ85は、車両100に搭載された他の電子機器からノイズが電源を通して各回路に混入すること防止する。
【0050】
図2に戻り、伝送線路40は、アンプモジュール30で増幅された信号を信号処理装置60に伝送する。伝送線路40は、第1出力部32aと接続され、第1アンプ30Aで増幅された信号を信号処理装置60に伝送する第1伝送線路41と、第2出力部32bと接続され、第2アンプ30Bで増幅された信号を信号処理装置60に伝送する第2伝送線路42と、を有する。
【0051】
伝送線路40は、
図3に示すように、内部導体40aと、絶縁体を介して内部導体40aの外側を覆う外部導体40bと、を備える同軸ケーブルである。この伝送線路40は、
図1に示すように、グロメット115を介して、バックドア102から車体110側に引き回されて、車体110側に設けられた信号処理装置60と接続されている。
【0052】
伝送線路40の外部導体40bは、アース部50により、車体110の金属部分に接続されている。アース部50は、アンプモジュール30と信号処理装置60との間で電気的な接地をとる中点アース端子である。アース部50は、例えば、ねじ止め等により車体110の金属部分に固定されている。アース部50は、第1伝送線路41として使用する同軸ケーブルの外部導体40bを車体110の金属部分と接続する第1アース部51と、第2伝送線路42として使用する同軸ケーブルの外部導体40bを車体110の金属部分と接続する第2アース部52と、を有する。なお、各伝送線路40は、同軸ケーブル以外を用いる場合は、各伝送線路40のアース電位を車体110の金属部分と接続すればよい。
【0053】
本実施形態の例では、バックドア102が樹脂製であるため、グロメット115を介して車体110側に引き回した伝送線路40の外部導体40bを、アース部50を介して車体110の金属部分と接続することで電気的に接地している。アース部50が接続される車体110の金属部分としては、例えばルーフ111やピラー112の金属部分が好ましい。なお、バックドア102が金属製であれば、バックドア102の金属部分にアース部50を接続してもよい。なお、第1アース部51及び第2アース部52は、中点アース端子に相当する。
【0054】
伝送線路40において、アンプモジュール30からアース部50(中点アース端子)までの長さL(後述する
図4参照)は、第1アンテナ20Aが受信する下限周波数から第2アンテナ20Bが受信する上限周波数までの周波数帯の中心周波数における、空気中の波長をλ、周辺媒質の波長短縮率をkとしたとき、0.6×k×λ以内であるとよい。これにより、アンテナ20の利得の低下を抑制できる。なお、Lは、0.4×k×λ以内が好ましく、0.3×k×λがより好ましい。
【0055】
図4は、本発明の第1実施形態による車両用アンテナ装置1の試験装置の構成図である。
図5は、本発明の第1実施形態による車両用アンテナ装置1の試験結果をまとめた表である。
図4に示すように、本試験では、伝送線路40におけるアンプモジュール30からアース部50までの長さLを変化させ、アンテナ20の利得の変化を測定した。
図5に示すように、アンテナ20が受信する異なる周波数帯の電波の組み合わせは、FM/DTVのパターンである。
【0056】
試験結果より、FM/DTVの場合、伝送線路40におけるアンプモジュール30からアース部50(中点アース端子)までの長さL(
図5においてアースまでの最長長さ[m])は、0.45m以内である場合、アンテナ20の利得の低下を抑制できた。
【0057】
FM/DTVの場合、第1アンテナ20Aが受信する下限周波数から第2アンテナ20Bが受信する上限周波数までの周波数帯は、76MHz~710MHzである。その中心周波数(393MHz)における、空気中の波長は、λ=0.72である。そして、波長短縮率は、一般的ケーブルの周辺媒質(空気:k=1)として計算したとき、0.6×k×λ(中心周波数の波長0.76m)≦アース部(中点アース端子)までの長さ(0.45m)の関係を満たす。具体的に、アースまでの最長長さ[m]が0.45m、そのときの係数が0.590である場合、アンテナ20の利得低下抑制効果が得られた。また、アースまでの最長長さ[m]が0.30m、そのときの係数が0.393である場合、好ましいアンテナ20の利得低下抑制効果が得られた。また、アースまでの最長長さ[m]が0.20m、そのときの係数が0.262である場合、より好ましいアンテナ20の利得低下抑制効果が得られた。
【0058】
図6は、本発明の第1実施形態による車両用アンテナ装置1のFM水平偏波の利得の変化を示すグラフである。
図7は、本発明の第1実施形態による車両用アンテナ装置1のFM垂直偏波の利得の変化を示すグラフである。
図6及び
図7に示す縦軸は利得[dB]であり、横軸は周波数[MHz]である。
図6及び
図7は、FM/DTVの場合の追試験であり、伝送線路40におけるアンプモジュール30からアース部50(中点アース端子)までの長さLを変化させたときの、FM帯の利得の変化を示している。
【0059】
図6及び
図7に示すように、アンプモジュール30が無い場合(アンプ無し(基準))に比べて、L=150mmとL=200mmの場合は、約アンプゲイン分(8dB)の利得向上が見られる。また、L=400mmでは、利得が若干低下し始める。また、L=500mmでは、利得が若干低下し始める。よって、FM帯では、L≦450mmとするとよく、即ち、L≦0.6×k×λであるとよい(k=1,λ=0.72)。
【0060】
以上の通り、本実施形態の車両用アンテナ装置1は、車両用のガラス板10と、ガラス板10に設けられるアンテナ20と、アンテナ20で受信した電波の信号を増幅するアンプモジュール30と、を備える。アンテナ20は、VHF帯の電波を受信可能な第1アンテナ20Aと、UHF帯の電波を受信可能な第2アンテナ20Bと、を有し、アンプモジュール30には、第1アンテナ20Aで受信した電波の信号を増幅する第1アンプ30Aと、第2アンテナ20Bで受信した電波の信号を増幅する第2アンプ30Bと、が一体的に組み込まれる。アンテナ20は、1つ又は2つの給電部21と、給電部21から延伸するアンテナエレメント22と、を有し、アンプモジュール30は、給電部21と電気的に接続される1つ又は2つの導体部31を有する。これにより、第1アンプ30Aと第2アンプ30Bとが1つのアンプモジュール30として一体化され、コンパクトになる。したがって、異なる周波数帯の電波を受信する車両用窓ガラスに備えられた複数種のアンテナ20の信号処理を行うための、簡易的な回路構成を備えた車両用アンテナ装置1を提供できる。
【0061】
また、本実施形態の車両用アンテナ装置1では、アンテナ20は、給電部21として、第1給電部21aのみを有するいわゆる単極(モノポール)アンテナであり、アンプモジュール30は、導体部31として、第1給電部21aと電気的に接続される第1導体部31aのみを有し、第1導体部31aを介してアンテナ20から受けた信号を増幅する。
【0062】
また、本実施形態の車両用アンテナ装置1では、アンプモジュール30で増幅された信号を処理する信号処理装置60と、アンプモジュール30で増幅された信号を信号処理装置60に伝送する伝送線路40と、を備え、伝送線路40は、ガラス板10が設けられる車両100と電気的に接続されるアース部50を有する。これにより、アンテナ20の利得の低下を抑制できる。
【0063】
また、本実施形態の車両用アンテナ装置1では、伝送線路40において、アンプモジュール30からアース部50(中点アース端子)までの長さLは、第1アンテナ20Aが受信する下限周波数から第2アンテナ20Bが受信する上限周波数までの周波数帯の中心周波数における、空気中の波長をλ、周辺媒質の波長短縮率をkとしたとき、0.6×k×λ以内である。これにより、アンテナ20の利得の低下をさらに抑制できる。
【0064】
また、本実施形態の車両用アンテナ装置1では、伝送線路40は、第1アンプ30Aで増幅された信号を信号処理装置60に伝送する第1伝送線路41と、第2アンプ30Bで増幅された信号を信号処理装置60に伝送する第2伝送線路42と、を有する。これにより、異なる周波数帯の信号を、別の線路で信号処理装置60に伝送できる。
【0065】
また、本実施形態の車両用アンテナ装置1では、アンプモジュール30は、導体部31として、導電端子を有し、導電端子が、給電部21に固定される。これにより、アンプモジュール30がガラス板10上に配置されるため、アンプモジュール30の設置スペースが確保しやすくなる。
【0066】
また、本実施形態の車両用アンテナ装置1では、導電端子と給電部21とは半田を用いない手段としてばね端子も使用でき、さらに、ばね端子とは異なる導電端子として環境を考慮して鉛フリー半田を用いて接続固定してもよい。
【0067】
また、本実施形態の車両用アンテナ装置1では、導電端子は、ガラス板10に向かって突出するばね端子であり、ばね端子は、給電部21と弾性的に接触している。これにより、ガラス板10上に配置されたアンプモジュール30が受ける振動を緩和できる。
【0068】
また、本実施形態の車両用アンテナ装置1では、第1アンテナ20Aは、FM放送波の周波数帯の電波を受信してもよい。さらに、本実施形態の車両用アンテナ装置1では、第2アンテナ20Bは、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯の電波を受信してもよい。
【0069】
また、本実施形態の車両用アンテナ装置1では、ガラス板10は、ウィンドシールド、リアガラス11又はサイドガラス12に適用できるが、これらに限らず、ルーフガラス、フロントベンチガラス、リアクオータガラス等にも適用できる。
【0070】
〔第2実施形態〕
図8は、本発明の第2実施形態による車両用アンテナ装置1の構成図である。なお、
図8においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
図8に示すように、第2実施形態の車両用アンテナ装置1は、アース部50として、第1伝送線路41が有する第1アース部51(
図2参照)と、第2伝送線路42が有する第2アース部52(
図2参照)と、を統合した共通アース部53(中点アース端子)を有する点で、上述した実施形態と異なる。
【0071】
共通アース部53は、第1伝送線路41の外部導体40bと、第2伝送線路42の外部導体40bと、をまとめて車体110の金属部分と接続する。伝送線路40において、アンプモジュール30から共通アース部53までの長さDは、第1アンテナ20Aが受信する下限周波数から第2アンテナ20Bが受信する上限周波数までの周波数帯の中心周波数における、空気中の波長をλ、周辺媒質の波長短縮率をkとしたとき、0.6×k×λ以内であるとよい。これにより、第1アンテナ20A、第2アンテナ20Bの利得の低下を抑制できる。なお、Dは、0.4×k×λ以内が好ましく、0.3×k×λがより好ましい。
【0072】
なお、信号処理装置60は、第1伝送線路41からの信号を処理するFM帯用バイアスティー61と、第2伝送線路42からの信号を処理するDTV合成ユニットバイアスティー62と、を有する。DTV合成ユニットバイアスティー62には、第2伝送線路42の内部導体40aに含まれる各チャンネルの信号線40cが接続されている。
【0073】
以上の通り、第2実施形態の車両用アンテナ装置1では、アース部50(中点アース端子)として、第1伝送線路41が有する第1アース部51と、第2伝送線路42が有する第2アース部52と、を統合した共通アース部53を有する。これにより、第1伝送線路41と第2伝送線路42を束ねて中点アースをとることができるため、アース部50の部品点数を削減し、コンパクトにできる。
【0074】
〔第3実施形態〕
図9は、本発明の第3実施形態による車両用アンテナ装置1を搭載した車両100の後方上部の斜視図である。
図10は、本発明の第3実施形態による車両用アンテナ装置1の構成図である。なお、
図9及び
図10においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
図9に示すように、第3実施形態の車両用アンテナ装置1は、アンプモジュール30がガラス板10と異なる位置に配置されている点で、上述した実施形態と異なる。
【0075】
アンプモジュール30は、例えば車体110のルーフ111(の車内側)に取り付けられている。なお、アンプモジュール30は、車体110のピラー112やその他の部分(ハッチバック等)に取り付けられてもよい。アンプモジュール30は、導体部31として、接続線34を有する。接続線34は、車体110からグロメット115を介してバックドア102側に引き回され、アンテナ20の給電部21と接続されている。
【0076】
図10に示すように、アンテナ20は、第1給電部21aに接続された接続端子24を有する。接続端子24には、アンプモジュール30から延伸する接続線34の先端に設けられたコネクタ36が接続されている。アンプモジュール30は、導体部31として、接続線34の他に、アース端子35を有する。アース端子35は、アンプモジュール30の筐体の一部から突出し、車体110の金属部分と接続されている。
【0077】
接続線34の長さEは、第1アンテナ20Aが受信する下限周波数から第2アンテナ20Bが受信する上限周波数までの周波数帯の中心周波数における、空気中の波長をλ、周辺媒質の波長短縮率をkとしたとき、0.35×k×λ以内であるとよい。この数値範囲は、上述した
図4~
図7に示す試験と同様の試験により導き出したものである。これにより、アンテナ20の利得の低下を抑制できる。なお、Eは、0.26×k×λ以内が好ましく、0.2×k×λがより好ましい。
【0078】
以上の通り、第3実施形態の車両用アンテナ装置1では、アンプモジュール30は、導体部31として、アース端子35及び接続線34を有し、アース端子35は、ガラス板10とは異なる位置に配置されるとともに、ガラス板10が設けられる車両100と電気的に接続され、接続線34は、給電部21と電気的に接続される。これにより、アンプモジュール30のレイアウトの応用性が高まる。
【0079】
また、本実施形態の車両用アンテナ装置1では、接続線34の長さは、第1アンテナ20Aが受信する下限周波数から第2アンテナ20Bが受信する上限周波数までの周波数帯の中心周波数における、空気中の波長をλ、周辺媒質の波長短縮率をkとしたとき、0.35×k×λ以内である。これにより、アンテナ20の利得の低下を抑制できる。
【0080】
〔第4実施形態〕
図11は、本発明の第4実施形態による車両用アンテナ装置1の構成図である。
図12は、本発明の第4実施形態によるアンプモジュール30の回路図である。なお、
図11及び
図12においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
図11に示すように、第4実施形態の車両用アンテナ装置1は、伝送線路40が、第1アンプ30Aで増幅された信号及び第2アンプ30Bで増幅された信号の両方が重畳された信号を信号処理装置60に伝送する点で、上述した実施形態と異なる。
【0081】
車両用アンテナ装置1は、1本の伝送線路40のみを有する。
図12に示すように、アンプモジュール30は、1つの第1導体部31aから信号が入力され、1つの出力部32から信号を出力する。出力部32からは、第1アンプ30Aで増幅されたFM放送波の周波数帯(76MHz~108MHz)の信号と、第2アンプ30Bで増幅された地上デジタルテレビ放送波(DTV)の周波数帯(470MHz~710MHz)の信号が重畳された信号が出力される。
【0082】
図12に示すように、第1アンプ30Aは、FMバンドパスフィルタ回路71と、自動利得制御回路72と、FM増幅回路73と、FMバンドパスフィルタ整合回路74と、電源ノイズフィルタ75と、を有する。また、第2アンプ30Bは、第1のDTVバンドパスフィルタ回路81と、DTV増幅回路82と、整合回路83と、第2のDTVバンドパスフィルタ回路84と、を有する。第4実施形態では、第1アンプ30Aの電源ノイズフィルタ75が、第2アンプ30Bの電源ノイズフィルタとしても使用されている。
【0083】
図11に戻り、信号処理装置60は、FM帯用バイアスティー61と、DTV合成ユニットバイアスティー62と、分波回路63と、を有する。分波回路63は、伝送線路40からの信号を処理し、FM帯の信号をFM帯用バイアスティー61に分波し、DTV帯の信号をDTV合成ユニットバイアスティー62に分波する。DTV合成ユニットバイアスティー62は、合成した各チャンネルの信号を出力する信号線64が接続されている。
【0084】
以上の通り、第4実施形態の車両用アンテナ装置1では、伝送線路40は、第1アンプ30Aで増幅された信号及び第2アンプ30Bで増幅された信号の両方が重畳された信号を信号処理装置60に伝送する。これにより、伝送線路40が1本で済み、またアース部50も1つで済むため、車両用アンテナ装置1の部品点数を少なく簡素化できる。
【0085】
〔第5実施形態〕
図13は、本発明の第5実施形態によるアンプモジュール30の回路図である。なお、
図13においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
図13に示すように、第5実施形態の車両用アンテナ装置1は、第1アンテナ20Aが、さらに、AM放送波の周波数帯(522kHz~1710kHz)の電波を受信する点で、上述した実施形態と異なる。
【0086】
第1アンプ30Aは、上述したFMバンドパスフィルタ回路71、自動利得制御回路72、FM増幅回路73、FMバンドパスフィルタ整合回路74、及び電源ノイズフィルタ75に加えて、AMバンドパスフィルタ回路76と、AM増幅回路77と、整合回路78と、FM阻止回路79と、を有する。
【0087】
AMバンドパスフィルタ回路76は、第1導体部31aからの信号に含まれるAM放送波の周波数帯の信号だけを通過させ、他の周波数成分をカットする。AM増幅回路77は、AMバンドパスフィルタ回路76からの信号を増幅することで、分配損失やケーブル損失を補償し信号レベルを推奨レベル値内に維持する。
【0088】
整合回路78は、AM増幅回路77の出力インピーダンスを第1出力部32aのインピーダンス(例えば50Ω)に整合させることで、反射損失の小さい良好な増幅特性を得る。FM阻止回路79は、FMバンドパスフィルタ整合回路74からの出力信号が整合回路78(AM側)に流れ込むのを阻止する。
なお、第1出力部32aから第1伝送線路41を介して信号を受ける信号処理装置60は、FM帯だけでなくAM帯の信号を処理できるFM/AM帯用バイアスティーを備えるとよい。
【0089】
以上の通り、第5実施形態の車両用アンテナ装置1では、第1アンテナ20Aは、さらに、AM放送波の周波数帯の電波を受信する。これにより、FM放送波の周波数帯の電波だけでなく、AM放送波の周波数帯の電波を受信できる。
【0090】
〔第6実施形態〕
図14は、本発明の第6実施形態による車両用アンテナ装置1の構成図である。
図15は、本発明の第6実施形態によるアンプモジュール30の回路図である。なお、
図14及び
図15においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
図14に示すように、第6実施形態の車両用アンテナ装置1は、アンテナ20が、給電部21として、第1給電部21a及び第2給電部21bを有する点で、上述した実施形態と異なる。なお、
図14では図示しないが、車両用アンテナ装置1は、ガラス板10、アンテナ20、及びアンプモジュール30の他に、伝送線路40、アース部50、及び信号処理装置60を備えている。
【0091】
アンテナ20は、2つの第1給電部21a及び第2給電部21bを有するダイポールアンテナである。第1給電部21aと第2給電部21bとは、一定間隔を置いて並ぶように配置されている。第2給電部21bは、平面状の導体パターンである。なお、第1給電部21a及び第2給電部21bの形状は、
図14に示すような平面視で四角形に限定されない。また、第2給電部21bは、電気的に接地されている。
【0092】
アンテナ20は、アンテナエレメント22として、第2給電部21bから延伸する第2アンテナエレメント22bを有する。第2アンテナエレメント22bは、第2給電部21bから延伸する線状の導体パターンである。なお、第2アンテナエレメント22bの形状は、線状に限定されず、帯状や平面状であっても構わない。
【0093】
アンプモジュール30は、ガラス板10上に露出した2つの導体部31を有する。つまり、アンプモジュール30は、導体部31として、第2給電部21bと電気的に接続される第1導体部31aと、第2給電部21bと電気的に接続される第2導体部31bと、を有する。第2導体部31bは、第2給電部21bに固定される導電端子である。当該導電端子は、ガラス板10に向かって突出するばね端子を例示でき、該ばね端子は、アンプモジュール30の外側に凸状の形状を有し、各々、第1給電部21aと第2給電部21bと弾性的に接触している。なお、本実施形態においても、導電端子は、ばね端子に限らず、第1給電部21a及び第2給電部21bと電気的に接続できれば、例えば、ばねのような弾性変形を有しない任意の形状を有する導体でもよい。
【0094】
図14に示す、第1導体部31a及び第2導体部31bは、ガラス板10に対向するアンプモジュール30の矩形箱状の筐体の底面に設けられている。第1導体部31a及び第2導体部31bがばね端子である場合、第1導体部31aと第1給電部21a、そして、第2導体部31bと第2給電部21bとは、半田を用いずに接続固定できる。本実施形態においても、アンプモジュールは、車体の任意の部分に固定されて、ばね端子である第1導体部31aと第1給電部21a、そして、第2導体部31bと第2給電部21bとが位置ずれを生じないように安定して接続できる構成が好ましい。なお、第1導体部31aと第1給電部21a、そして、第2導体部31bと第2給電部21bとは、半田での接続、とくに環境対応として鉛フリー半田により固定接続されてもよい。そして、アンプモジュール30は、ガラス板10上に取り付けられている。アンプモジュール30は、第2導体部31bを介して電気的に接地され、第1導体部31aから受けた信号を増幅する。
【0095】
図15に示すように、アンプモジュール30は、2つの導体部31のうち、第1導体部31a(HOT側)から信号が入力され、2つの出力部32(第1出力部32a及び第2出力部32b)から信号を出力する。アンプモジュール30は、2つの導体部31のうち、第2導体部31b(アース側)で電気的に接地されている。
【0096】
第1アンプ30Aは、上述したように、FMバンドパスフィルタ回路71と、自動利得制御回路72と、FM増幅回路73と、FMバンドパスフィルタ整合回路74と、電源ノイズフィルタ75と、AMバンドパスフィルタ回路76と、AM増幅回路77と、整合回路78と、FM阻止回路79と、を有する。
【0097】
第2アンプ30Bは、上述したように、第1のDTVバンドパスフィルタ回路81と、DTV増幅回路82と、整合回路83と、第2のDTVバンドパスフィルタ回路84と、電源ノイズフィルタ85と、を有する。なお、各回路の説明については、説明が重複するため割愛する。また、
図15に示す回路は一例であって、上述した
図3、
図12に示す回路に、第2導体部31b(アース側)を追加した構成でもよい。
【0098】
以上の通り、第6実施形態の車両用アンテナ装置1では、アンテナ20は、給電部21として、第1給電部21a及び第2給電部21bを有し、アンプモジュール30は、導体部31として、第1給電部21aと電気的に接続される第1導体部31aと、第2給電部21bと電気的に接続される第2導体部31bと、を有し、第2給電部21bは、電気的に接地されており、アンプモジュール30は、第1導体部31aを介してアンテナ20から受けた信号を増幅する。
【0099】
また、第6実施形態の車両用アンテナ装置1では、第1アンテナ20A及び第2アンテナ20Bは、第1給電部21a及び第2給電部21bを有するいわゆる双極(ダイポール)アンテナである。
【0100】
〈変形例〉
図16は、本発明の第6実施形態による車両用アンテナ装置1の変形例を示す構成図である。なお、
図16においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
第6実施形態の車両用アンテナ装置1(双極)においても、上述した
図10に示す第3実施形態の車両用アンテナ装置1(単極)と同様に、アンプモジュール30がガラス板10と異なる位置に配置されてもよい。
【0101】
アンプモジュール30は、例えば車体110のルーフ111(の車内側)に取り付けられている。なお、アンプモジュール30は、車体110のピラー112やその他の部分(ハッチバック等)に取り付けられてもよい。アンプモジュール30は、導体部31として、第1接続線34a及び第2接続線34bを有する。なお、第1接続線34a及び第2接続線34bは、同軸ケーブルでなく、自動車用電線がビニル(絶縁体)で被覆された一般電線である。
【0102】
アンテナ20は、第1給電部21a及び第2給電部21bのそれぞれに接続端子24を有する。第1接続線34aは、接続端子24を介して第1給電部21aに接続されるコネクタ36を有する。第2接続線34bは、接続端子24を介して第2給電部21bに接続されるコネクタ36を有する。
【0103】
アンプモジュール30は、導体部31として、第1接続線34a及び第2接続線34bの他に、アース端子35を有する。アース端子35は、アンプモジュール30の筐体の一部から突出し、車体110の金属部分と接続されている。第1接続線34a及び第2接続線34bの長さ(
図10に示すEに相当)は、第1アンテナ20Aが受信する下限周波数から第2アンテナ20Bが受信する上限周波数までの周波数帯の中心周波数における、空気中の波長をλ、周辺媒質の波長短縮率をkとしたとき、0.35×k×λ以内であるとよい。これにより、第1アンテナ20A、第2アンテナ20Bの利得の低下を抑制できる。なお、Eは、0.26×k×λ以内が好ましく、0.2×k×λがより好ましい。
【0104】
図17は、本発明の第6実施形態による車両用アンテナ装置1の他の変形例を示す構成図である。なお、
図17においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
さらに第6実施形態の他の変形例では、双極のアンプモジュール30が、1本の接続線34(同軸ケーブル)で第1給電部21a及び第2給電部21bと接続されてもよい。
【0105】
ガラス板10上には、同軸コネクタ25が取り付けられている。同軸コネクタ25は、2つの接続端子26を備え、第1給電部21a及び第2給電部21bに接続されている。接続線34は、内部導体と、絶縁体を介して内部導体の外側を覆う外部導体と、を備える。接続線34の内部導体は、同軸コネクタ25を介して第1給電部21aと接続されている。接続線34の外部導体は、同軸コネクタ25を介して第2給電部21bと接続されている。これにより、接続線34が1本で済み、車両用アンテナ装置1がコンパクトになる。
【0106】
以上、本発明の実施形態による車両用アンテナ装置について説明したが、本発明は上記実施形態に制限される訳ではなく、本発明の範囲内で自由に変更できる。例えば、各実施形態の一部又は全部を組み合わせて実施してもよい。また、アンテナの形状及び配置は、実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で形状及び配置を変更してもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 車両用アンテナ装置
10 ガラス板
11 リアガラス
12 サイドガラス
20 アンテナ
20A 第1アンテナ
20B 第2アンテナ
21 給電部
21a 第1給電部
21b 第2給電部
22 アンテナエレメント
30 アンプモジュール
30A 第1アンプ
30B 第2アンプ
31 導体部
31a 第1導体部
31b 第2導体部
34 接続線
35 アース端子
40 伝送線路
41 第1伝送線路
42 第2伝送線路
50 アース部
51 第1アース部
52 第2アース部
53 共通アース部
60 信号処理装置
100 車両