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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016170
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/17 20060101AFI20230126BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20230126BHJP
   G07D 7/12 20160101ALI20230126BHJP
【FI】
H04N1/17 B
G06T1/00 420C
G07D7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120310
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 奈緒美
(72)【発明者】
【氏名】米田 優
(72)【発明者】
【氏名】和田 雄二
【テーマコード(参考)】
3E041
5B047
5C072
【Fターム(参考)】
3E041AA01
3E041AA02
3E041AA03
3E041BA20
3E041BB03
3E041BC01
3E041CB03
3E041EA03
5B047AA04
5B047AB02
5B047AB04
5B047BA01
5B047BA02
5B047BB03
5B047BC01
5B047BC05
5B047BC11
5B047BC14
5B047CB16
5B047CB22
5B047DA04
5B047DB01
5B047DC09
5B047EA01
5C072AA01
5C072BA16
5C072CA02
5C072DA02
5C072DA04
5C072DA12
5C072DA21
5C072DA23
5C072EA05
5C072FB12
5C072LA03
5C072LA18
5C072MA02
5C072MB06
5C072NA01
5C072NA06
5C072RA16
5C072TA04
5C072UA02
5C072UA11
5C072UA13
5C072WA01
5C072WA07
5C072XA01
5C072XA04
(57)【要約】
【課題】真贋判定精度が高い画像読取装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る画像読取装置は、照明部と、前記照明部により照明された対象物を第1読取倍率により読み取った第1読取画像を出力する第1読取部と、前記照明部により照明された前記対象物を第2読取倍率により読み取った第2読取画像を出力する第2読取部と、前記第2読取画像に基づき判定した前記対象物の真贋情報を出力する判定部と、を有し、前記第2読取倍率は前記第1読取倍率よりも高い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明部と、
前記照明部により照明された対象物を第1読取倍率により読み取った第1読取画像を出力する第1読取部と、
前記照明部により照明された前記対象物を第2読取倍率により読み取った第2読取画像を出力する第2読取部と、
前記第2読取画像に基づき判定した前記対象物の真贋情報を出力する判定部と、を有し、
前記第2読取倍率は前記第1読取倍率よりも高い画像読取装置。
【請求項2】
前記第2読取倍率は、前記第1読取倍率の2倍以上で且つ5倍以下である請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第2読取倍率は、等倍である請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1読取画像と、前記第2読取画像と、に基づいて、前記対象物の真贋を判定する請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記判定部は、
前記第1読取画像に基づき、前記対象物の位置ずれを検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記位置ずれを報知する報知部と、を有する請求項4項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記第1読取部は、前記対象物内において前記第1読取部により読み取る位置を所定方向に沿って変化させる可変機構を有し、
前記可変機構は、前記第2読取部を前記所定方向に沿って移動させる請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像読取装置と、を有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタによる画像形成の性能向上に伴い、紙幣、有価証券、旅券、権利書、戸籍謄本、住民票、各種証明書、保険証書又は機密文書等の対象物が複写される懸念が生じ、対象物の真贋判定を行う装置が求められている。
【0003】
このような装置として、ランダム性を有する読取可能な固有の特徴が表面に沿って分布している個体に関し、真の個体の特徴を表す基準データを取得すると共に、対象物の個体の特徴を表す照合データを求め、基準データ及び照合データに基づいて真贋判定を行う画像読取装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の装置では、対象物の色や反射率に基づいて基準データ及び照合データを取得するため、真贋判定精度が低くなる懸念がある。
【0005】
本発明は、真贋判定精度が高い画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る画像読取装置は、照明部と、前記照明部により照明された対象物を第1読取倍率により読み取った第1読取画像を出力する第1読取部と、前記照明部により照明された前記対象物を第2読取倍率により読み取った第2読取画像を出力する第2読取部と、前記第2読取画像に基づき判定した前記対象物の真贋情報を出力する判定部と、を有し、前記第2読取倍率は前記第1読取倍率よりも高い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、真贋判定精度が高い画像読取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る印刷物の読取画像の一例を示す図である。
図2】実施形態に係る印刷物における微小領域の濃度分布例を示す図である。
図3】実施形態に係る真贋判定で使用する微小領域の濃度分布例を示す図である。
図4】実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成例のブロック図である。
図5】実施形態に係る画像形成装置の機能構成例のブロック図である。
図6】実施形態に係る画像形成装置の全体構成例を示す図である。
図7】実施形態に係るスキャナユニットの構成例を示す図である。
図8】実施形態に係るスキャナユニットの駆動方式を説明する図である。
図9】実施形態に係るスキャナユニットのハードウェア構成例のブロック図である。
図10】第1実施形態に係る判定部の機能構成例を示すブロック図である。
図11】第1実施形態に係る画像読取装置による登録処理例のフロー図である。
図12】第1実施形態に係る画像読取装置による判定処理例のフロー図である。
図13】第2実施形態に係る判定部の機能構成例を示すブロック図である。
図14】位置ずれがない場合の第1読取画像を例示する図である。
図15】位置ずれがある場合の第1読取画像を例示する図である。
図16】第2実施形態に係る画像形成装置による判定処理例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
実施形態に係る画像読取装置は、照明部と、照明部により照明された対象物を第1読取倍率により読み取った第1読取画像を出力する第1読取部と、を有する。この画像読取装置は、例えば複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)である画像形成装置に搭載されているスキャナ等である。対象物は、例えば、電子写真方式又はインクジェット方式等によって用紙等の記録媒体に画像が形成された印刷物である。
【0011】
電子写真方式又はインクジェット方式により用紙に形成された画像は、用紙上の部分領域を拡大すると、トナーやインクの付着ムラや、文字等のパターンの端部におけるトナーやインクの滲み又は飛散(いわゆるチリ)等に応じた濃度分布を含んでいる。
【0012】
図1及び図2は、このような微小領域における濃度分布を説明する図である。図1は電子写真方式の画像形成装置により用紙Pに文字画像が形成された印刷物の読取画像の一例を示す図である。図1に示すように、読取画像110は、用紙Pに形成された「秘密保」の文字画像を含んでいる。図2は、図1の読取画像110における文字画像「密」の一部である部分領域111を拡大した拡大画像120を示す図である。拡大画像120において、例えば微小領域121にはトナーの付着ムラによる濃度分布が生じている。また微小領域122a及び122bには、トナーが飛散した黒点状のチリに応じた濃度分布が生じている。このような読取画像110の微小領域における濃度分布は、再現性がなく、印刷物ごとに異なる固有の情報となる。
【0013】
本実施形態では、このような印刷物等の対象物の微小領域における濃度分布を利用することにより、対象物の真贋判定を行う。例えば、本物の印刷物の読取画像110であることを示す個体識別情報として、図2に示すような拡大画像120をデータベース等の登録部に登録しておく。そして、真贋判定を行う際に、偽物の印刷物において、読取画像110とほぼ同じ位置における微小領域を読み取り、図3に示すような拡大画像130を取得する。拡大画像130においては、拡大画像120のように微小領域131及び132にトナーが飛散した黒点状のチリが生じていない。この差異に基づいて、拡大画像130に対応する微小領域を含む印刷物は、偽物であることを判定できる。
【0014】
但し、スキャナとして使用する第1読取部の第1読取倍率を、微小領域における濃度分布を読み取り可能な程度に高くすると、第1読取倍率に応じて読取範囲が狭くなるため、画像読取装置の主機能である複写機能を損なう。
【0015】
そのため、実施形態に係る画像読取装置は、照明部により照明された印刷物を第2読取倍率により読み取った第2読取画像を出力する第2読取部と、第2読取画像に基づき判定した対象物の真贋情報を出力する判定部と、を有し、第2読取倍率は第1読取倍率よりも高い。
【0016】
実施形態に係る画像読取装置は、第1読取部よりも読取倍率が高い第2読取部によって読み取った第2読取画像における微小領域の濃度分布を用いて真贋判定を行うことにより、画像読取装置の主機能である複写機能を損なうことなく、高精度の真贋判定を可能にする。
【0017】
以下に示す実施形態においては、複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)である画像形成装置を一例として説明する。実施形態に係る画像形成装置は、電子写真方式により用紙(記録媒体の一例)に画像を形成するものであり、対象物の一例としての印刷物を読取る画像読取装置を備えるものである。
【0018】
<画像形成装置1の構成例>
(画像形成装置1のハードウェア構成例)
図4は、本実施形態に係る画像形成装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。画像形成装置1は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等の情報処理端末と同様の構成に加えて、画像形成を実行するエンジンを有する。
【0019】
画像形成装置1は、CPU(Central Processing Unit)10と、RAM(Random Access Memory)11と、ROM(Read Only Memory)12と、エンジン13と、HDD(Hard Disk Drive)14と、I/F(Interface)15を、を有する。これらはバス18を介して相互に電気的に接続している。また、I/F15は、LCD(Liquid Crystal Display)16及び入力操作部17に接続している。
【0020】
CPU10は演算手段であり、画像形成装置1全体の動作を制御する。RAM11は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体である。CPU10は、情報を処理する際の作業領域としてRAM11を用いる。ROM12は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムを格納している。エンジン13は、画像形成装置1において実際に画像形成を実行する機構である。エンジン13以外の構成部をまとめて情報処理装置2とする。
【0021】
HDD14は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラム等を格納している。I/F15は、バス18と、各種のハードウェアやネットワーク等と、を接続して制御するインターフェースである。表示装置16は、ユーザが画像形成装置1の状態を確認するための視覚的ユーザインターフェースである。入力操作部17は、キーボードやマウス等、ユーザが画像形成装置1に情報を入力するためのユーザインターフェースである。
【0022】
画像形成装置1は、上記のハードウェア構成において、ROM12やHDD14又は光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムをRAM11に読み出し、CPU10の制御に従って動作させることにより、ソフトウェア制御部を構成する。画像形成装置1は、このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアと、を組み合わせることによって、画像形成装置1の機能を実現する機能ブロックを構成する。
【0023】
(画像形成装置1の機能構成例)
図5は、画像形成装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。画像形成装置1は、コントローラ20と、画像読取装置100と、ディスプレイパネル24と、給紙テーブル25と、プリントエンジン26と、排紙トレイ27と、ネットワークI/F28と、を有する。また、画像読取装置100は、ADF21と、スキャナユニット22と、排紙トレイ23と、を有する。
【0024】
コントローラ20は、主制御部30と、エンジン制御部31と、入出力制御部32と、画像処理部33と、操作表示制御部34と、判定部35と、を有する。画像形成装置1は、スキャナユニット22及びプリントエンジン26を有する複合機として構成されている。なお、図5においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、用紙の流れを破線の矢印で示している。
【0025】
ディスプレイパネル24は、画像形成装置1の状態を視覚的に表示する出力インターフェースである。またディスプレイパネル24は、タッチパネルとしてユーザが画像形成装置1を直接操作し、或いは画像形成装置1に対して情報を入力する際の入力インターフェース(入力操作部)である。
【0026】
ネットワークI/F28は、画像形成装置1がネットワークを介して他の機器と通信するためのEthernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)等のインターフェースである。
【0027】
コントローラ20は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM12や不揮発性メモリ並びにHDD14や光学ディスク等の不揮発性記録媒体に格納されたファームウェア等の制御プログラムが、RAM11等の揮発性メモリにロードされ、CPU10の制御に従って構成されるソフトウェア制御部と集積回路等のハードウェアとによってコントローラ20が構成される。コントローラ20は、画像形成装置1全体を制御する制御部として機能する。
【0028】
主制御部30は、コントローラ20に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ20の各部に命令を与える。エンジン制御部31は、プリントエンジン26やスキャナユニット22等を制御又は駆動する駆動手段としての役割を担う。
【0029】
入出力制御部32は、ネットワークI/F28を介して入力される信号や命令を主制御部30に入力する。また、主制御部30は、入出力制御部32を制御し、ネットワークI/F28を介して他の機器にアクセスする。
【0030】
画像処理部33は、主制御部30の制御に従い、入力された印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成する電気回路である。この描画情報とは、プリントエンジン26が画像形成動作において形成すべき画像を描画するための情報である。また、印刷ジョブに含まれる印刷情報とは、PC等の情報処理装置にインストールされたプリンタドライバによって画像形成装置1が認識可能な形式に変換された画像情報である。操作表示制御部34は、ディスプレイパネル24に情報表示を行い又はディスプレイパネル24を介して入力された情報を主制御部30に通知する。
【0031】
画像形成装置1がプリンタとして動作する場合には、まず、入出力制御部32がネットワークI/F28を介して印刷ジョブを受信する。入出力制御部32は、受信した印刷ジョブを主制御部30に転送する。主制御部30は、印刷ジョブを受信すると、画像処理部33を制御して、印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成させる。
【0032】
画像処理部33によって描画情報が生成されると、エンジン制御部31は、生成された描画情報に基づき、給紙テーブル25から搬送される用紙に対して画像形成を実行する。すなわち、プリントエンジン26が画像形成部として機能する。プリントエンジン26によって画像形成が施された用紙は排紙トレイ27に排紙される。
【0033】
画像形成装置1がスキャナとして動作する場合には、画像形成装置1の操作者(以下、単に操作者という)によるディスプレイパネル24の操作や、ネットワークI/F28を介して外部のPC等から入力されるスキャン実行指示等に応じ、操作表示制御部34又は入出力制御部32が主制御部30にスキャン実行信号を転送する。主制御部30は、受信したスキャン実行信号に基づき、エンジン制御部31を制御する。
【0034】
エンジン制御部31は、ADF21を駆動させ、ADF21にセットされた印刷物をスキャナユニット22に搬送する。またエンジン制御部31は、スキャナユニット22を駆動させ、ADF21から搬送される印刷物を撮像させる。ADF21に印刷物がセットされておらず、スキャナユニット22に直接印刷物がセットされた場合には、スキャナユニット22は、エンジン制御部31の制御に従い、セットされた印刷物を撮像する。すなわち、スキャナユニット22が印刷物の撮像部として動作する。
【0035】
撮像動作においては、スキャナユニット22に含まれる撮像素子は、所定方向に移動されながら印刷物を撮像し、スキャナユニット22は、撮像情報を生成する。エンジン制御部31は、スキャナユニット22により生成された撮像情報を画像処理部33に転送する。画像処理部33は、主制御部30の制御に従い、エンジン制御部31から受信した撮像情報に基づき読取画像を生成する。
【0036】
画像処理部33によって生成された読取画像は、操作者の指示に応じてそのままHDD14等に格納されるか、或いは入出力制御部32及びネットワークI/F28を介して外部の装置に送信される。
【0037】
画像形成装置1が複写機として動作する場合には、エンジン制御部31がスキャナユニット22から受信した撮像情報又は画像処理部33が生成した読取画像に基づき、画像処理部33が描画情報を生成する。エンジン制御部31は、この描画情報に基づいてプリンタ動作の場合と同様にプリントエンジン26を駆動させる。
【0038】
判定部35は、スキャナユニット22により生成された印刷物の読取画像に基づき、印刷物の真贋判定処理を実行する。この判定部35の機能については、別途図10を参照して詳述する。
【0039】
(画像形成装置1の全体構成例)
図6は、画像形成装置1の概略構成の一例を示す図である。図6に示すように、画像形成装置1は、画像読取装置100と、画像形成部300と、給紙部400と、を有する。
【0040】
給紙部400は、サイズの異なる用紙を収納する給紙カセット421及び422と、給紙カセット421及び422に収納された用紙を画像形成部300の画像形成位置まで搬送する各種ローラからなる給紙手段423と、を有する。
【0041】
画像形成部300は、露光装置331と、感光体ドラム332と、現像装置333と、転写ベルト334と、定着装置335と、を有する。画像形成部300は、画像読取装置100により読取られた印刷物の画像データ、或いはネットワークI/F28を介して外部のPC等から入力された画像データに基づいて、露光装置331により感光体ドラム332を露光して感光体ドラム332に潜像を形成する。画像形成部300は、現像装置333により感光体ドラム332に異なる色のトナーを供給して現像する。画像形成部300は、転写ベルト334により感光体ドラム332に現像された像を給紙部400から供給された用紙に転写した後、定着装置335により用紙に転写されたトナー像を構成するトナーを溶融させて、用紙にカラー画像を定着させる。
【0042】
<スキャナユニット22の構成例>
(スキャナユニット22の全体構成例)
図7は、画像形成装置1が有するスキャナユニット22の構成の一例を示す図である。スキャナユニット22は、例えば差動ミラー駆動方式であって、光学センサ一体型駆動方式の画像読取装置である。図7中に示した一点鎖線は印刷物により反射された光を表している。
【0043】
図7に示すように、スキャナユニット22は、第1ミラーユニット204と、第2ミラーユニット210と、レンズ216と、第1センサボード215と、を有する。第1ミラーユニット204は、光源200と、両端支持された第1ミラー202と、CCD(Charge Coupled Device)等の第2光電変換素子222が実装されている第2センサボード223と、を有する。第2ミラーユニット210は、両端支持された第2ミラー206及び第3ミラー208等を有する。第1ミラー202等の各ミラーは、光源200による照明光が印刷物により反射された光をさらに反射する反射部材である。
【0044】
光源200は、LED(Light Emitting Diode)等の発光部を含んで構成されており、白色の光を印刷物に照明する照明部の一例である。但し、光源200が照射する光の色は、白色に限定されるものではなく、任意の色の単色光であってもよい。レンズ216は、光源200による照明光が印刷物により反射された光をCCD等の第1光電変換素子214上に結像させる。第1光電変換素子214は、例えば他のハードウェアと共に第1センサボード215に実装されている。第1光電変換素子214は、例えばCCDである。
【0045】
光源200は、原稿読取ガラス212上に載置された印刷物に、原稿読取ガラス212を通して光を照射することによって照明する。印刷物による反射光は、原稿読取ガラス212を通った後、第1ミラー202、第2ミラー206及び第3ミラー208それぞれにより、この順で反射されてレンズ216に導かれる。その後、反射光は、レンズ216によって第1光電変換素子214上において略結像する。結像した印刷物の像は、第1光電変換素子214が光電変換してアナログ画像信号とすることにより、印刷物の読み取りが行われる。白基準板218は、白レベルを補正するために、光源200が照射する光を反射させる白色の部材である。
【0046】
スキャナユニット22において、第1ミラー202、第2ミラーユニット210、レンズ216及び第1光電変換素子214は、第1読取部3を構成している。第1読取部3は、光源200により照明された印刷物を第1読取倍率に読み取った撮像情報を第1読取画像として出力することができる。第1ミラー202、第2ミラー206及び第3ミラー208を経由した、印刷物からレンズ216における主平面までの距離である被写体距離aと、レンズ216の主平面から第1光電変換素子214の撮像面までの距離である撮像距離bとの比であるb/aが第1読取倍率に対応する。撮像距離bは被写体距離aよりも短いため、第1読取倍率は1よりも小さく、第1読取部3は、縮小光学系により縮小された印刷物の第1読取画像を出力する。
【0047】
第2光電変換素子222は、光源200により照明された印刷物を第2読取倍率により読み取った撮像情報を第2読取画像として出力する第2読取部の一例である。第2光電変換素子222は、主走査方向240に沿って並んでいる複数の画素を有し、主走査方向240に沿った印刷物の全幅を読取可能である。但し、必ずしも印刷物の全幅を読取可能でなくてもよく、第2光電変換素子222は、主走査方向240に沿った印刷物の一部を読み取るものであってもよい。
【0048】
本実施形態では、印刷物と第2光電変換素子222との間にレンズは設けられておらず、且つ印刷物と第2光電変換素子222とは近接しているため、第2光電変換素子222は等倍により印刷物を読み取ることができる。つまり、第2読取倍率は等倍(1倍)であり、第1読取倍率よりも大きい。
【0049】
例えば、第1読取部3は、600[dpi:dots per inch]又は1200[dpi]の解像度で印刷物を読み取る。600[dpi]におけるドット間隔は42.3[μm]となり、1200[dpi]におけるドット間隔は21.2[μm]となる。第2光電変換素子222は、第2読取倍率を第1読取倍率よりも高くすることにより、第1読取部3よりも高い解像度で印刷物を読み取ることができる。印刷物に形成された画像における1個のトナーの像を読み取るためには、第2光電変換素子222による解像度は2400[dpi]以上であり、10.0[μm]以下のドット間隔を解像可能であることが好ましい。従って、第2読取倍率は、第1読取倍率の2倍以上で且つ5倍以下であることが好ましい。
【0050】
より具体的には、第2光電変換素子222は、例えば正方格子状の形状を有する1300個の画素が主走査方向240に沿って並んでいるモノクロームの第2読取画像を出力するCCDである。第2光電変換素子222は、1画素当たりの大きさ約4.9[μm]×4.9[μm]に略一致する印刷物上の領域を、最小領域として撮像できる。従って、第2光電変換素子222は、トナーの最小直径が約5[μm]である場合にも、印刷物に形成された画像における1個のトナーの画像を第2光電変換素子222により読み取ることができる。
【0051】
第2光電変換素子222における有効撮像領域の面積は、第1光電変換素子214における有効撮像領域の面積よりも大きく、第2光電変換素子222は、第1読取部3よりも高い解像度(空間分解能)によって印刷物を読み取る。その反面で、第2光電変換素子222により撮像可能な印刷物上の範囲は、第1読取部3により撮像可能な印刷物上の範囲よりも狭くなる。
【0052】
印刷物を読み取る際には、第1ミラーユニット204は、副走査方向250に沿って一定の速度により移動する。また第2ミラーユニット210は、第1ミラーユニット204に連動し、第1ミラーユニット204の移動速度の略1/2である速度により副走査方向250に沿って移動する。図4において、破線で示されている第1ミラーユニット204及び第2ミラーユニット210それぞれは、副走査方向250に沿って移動した後の第1ミラーユニット204及び第2ミラーユニット210を表している。
【0053】
第1読取部3は、第1ミラーユニット204及び第2ミラーユニット210が連動して副走査方向250に沿って移動することにより、被写体距離aを略一定に保ったまま、副走査方向250に沿った印刷物の全幅を読み取ることができる。
【0054】
第1ミラーユニット204に設けられている第2光電変換素子222は、副走査方向250に沿った第1ミラーユニット204の移動に伴って移動し、副走査方向250に沿った印刷物の全幅を読み取ることができる。
【0055】
シート状の印刷物を連続で自動読み取りする場合には、ADF21によって印刷物がシート原稿読取ガラス220上を搬送され、光源200はシート原稿読取ガラス220を通して光を照射する。照射された光が印刷物により反射された反射光は、シート原稿読取ガラス220を通って、第1ミラー202、第2ミラー206及び第3ミラー208それぞれにより、この順で反射されてレンズ216に導かれる。その後、この反射光は、レンズ216によって第1光電変換素子214上において略結像する。このとき、第1ミラーユニット204及び第2ミラーユニット210は、固定された状態において、搬送されるシート状の印刷物の画像を読み取る。読み取りの動作は、入力操作部17に設けられたスタートキーが押下されることにより開始される。
【0056】
なお、第1読取部3は、ミラー及び光電変換素子を一体としたユニット型のものや、等倍密着イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)を用いたものであってもよい。
【0057】
(スキャナユニット22の駆動方式例)
図8は、スキャナユニット22の駆動方式を示す図である。スキャナモータ230は、ステッピングモータである。スキャナモータ230の軸が回転すると、タイミングベルト232を経由して軸234に回転駆動力が伝達される。軸234に備えられたワイヤプーリ236a及び236bが回転することにより、ワイヤ238a及び238bに接続された第1ミラーユニット204及び第2ミラーユニット210が移動する。このとき、第2ミラーユニット210が第1ミラーユニット204に対して半分の速度で移動を行う。なお、スキャナユニット22の駆動方式は、ワイヤではなくタイミングベルトを介する方式等であってもよい。
【0058】
(スキャナユニット22の電気的構成例)
図9は、スキャナユニット22の電気的な構成の概要を示すブロック図である。スキャナユニット22は、図9に示した電気的な構成により、ホーミング動作、読取り画像の信号処理特性の調整(黒レベル調整及び白レベル調整)等の初期化処理を実行する。
【0059】
CPU(制御部)10は、スキャナユニット22を構成する各部を制御することにより、作像シーケンスを含むスキャナユニット22の全体動作を制御する。また、CPU10は、ホーミング動作に必要な位置検出信号をホームポジションセンサ64から受入れる。CPU10は、スキャナモータ230が駆動を行うことにより、第1ミラーユニット204を移動させるようにスキャナモータ230を制御する。
【0060】
モータドライバ62は、第1ミラーユニット204及び第2ミラーユニット210を移動させるスキャナモータ230を駆動させる。第1センサボード215には第1光電変換素子214等が実装されており、第1光電変換素子214は、第1読取画像Im1をCPU10に対して出力する。第2センサボード223には、第2光電変換素子222等が実装されており、第2光電変換素子222は、第2読取画像Im2をCPU10に対して出力する。
【0061】
CPU10は、第1読取画像Im1及び第2読取画像Im2に対してデジタル処理を施す。例えば、CPU10は、第1読取画像Im1及び第2読取画像Im2のデジタルデータに対し、シェーディング処理、ガンマ補正処理、変倍処理又はフィルター処理等の画像補正処理を施す。また、CPU10は、入力されたデジタル画像データから、第1センサボード215及び第2センサボード223上でクランプ及びゲイン補正を行うための調整値を求めるために必要な黒レベル及び白レベルのデータを演算により検出できる。
【0062】
ホームポジションセンサ64は、例えばフォトインタラプタであり、第1ミラーユニット204の位置を検出する位置検出信号を出力する。NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)65は、初期化処理の制御に必要なデータを保存する。
【0063】
第1光電変換素子214により読み取られた第1読取画像Im1は、例えば図1に示した読取画像110に対応する。画像形成装置1は、第1読取画像Im1に基づいて、用紙Pに画像を形成することにより、印刷物を複写した複写物を提供できる。
【0064】
第2光電変換素子222により読み取られた第2読取画像Im2は、例えば図2に示した拡大画像120及び図3に示した拡大画像130それぞれに対応する。画像形成装置1は、第2読取画像Im2を用いて印刷物の真贋判定を行うことができる。
【0065】
本実施形態では、真の印刷物は、例えば、画像形成装置1によって用紙Pに画像が形成されたものである。特に黒色のトナーにより形成された画像を用いて真贋判定を行うと、判定精度をより高めることができる。
【0066】
電子写真方式の画像形成装置により用紙等の記録媒体に形成された画像は、ドット単位での再現性でいえば、全く同じトナー付着状態をもつ用紙が存在する可能性は極めて低い。電子写真方式の画像形成装置においては、感光体に潜像を形成し、その後現像器により静電気力で感光体上にトナーを現像し、その後転写ベルトにトナーを転写した後、さらに用紙に転写する。現像、1次転写及び2次転写の一連のプロセスにおいて、トナーは像担持体への移動を合計3回繰り返すこととなり、1ドットごとにみると同じ状態になる確率が極めて低くなる。
【0067】
また、1ドットサイズと比較して大きな汚れ、例えばトナーの染みやごみの付着等明らかに目視確認できる汚れが発生する可能性はあるものの、1ドットサイズ以下の微小な汚れの付着が起きることは起こりにくいため、ドットを含む微小領域の濃度分布は、真贋判定に用いる情報として好適である。
【0068】
(第1実施形態に係る判定部35の機能構成例)
次に図10は、判定部35の機能構成の一例を示す図である。判定部35は、特徴量抽出部281と、登録部282と、比較部283と、出力部284と、を有する。これらのうち、特徴量抽出部281及び比較部283の各機能は、CPU10がROM12又はHDD14に記憶されているプログラムを実行すること等により実現される。また登録部282の機能は、CPU10がROM12又はHDD14に記憶されているプログラムを実行し、HDD14を制御すること等により実現される。出力部284の機能は、CPU10がROM12又はHDD14に記憶されているプログラムを実行し、表示装置16又は通信I/F15を制御すること等により実現される。
【0069】
判定部35は、第2光電変換素子222により読み取られた印刷物の第2読取画像Im2から、特徴量抽出部281により特徴量を抽出する。判定部35は、特徴量データの登録処理を行う際には、抽出した特徴量データを登録部282により登録し、真贋判定処理を行う際には、抽出した特徴量データを比較部283に出力する。
【0070】
特徴量抽出部281は、入力した第2読取画像Im2を適切な大きさのメッシュに区切ることによって量子化する。メッシュ数dは、縦M[個]×横N[個]の個数となる。また特徴量抽出部281は、各メッシュを所定の濃度レベルqの濃度値で代表させて標本化することにより、第2読取画像Im2をモザイク状の画像に変換する。特徴量抽出部281は、量子化及び標本化後に、j番目のメッシュの濃度をxjとし、x=(x1,x2,・・・xd)Tからなるベクトルにより第2読取画像Im2を表現する。なお、Tは転置行列を表す。このように表現されたベクトルが特徴量データに対応する。ベクトルの各要素は対応する画像領域の濃度を与える。第2読取画像Im2は、ベクトルによって表現された特徴空間上の1点として表される。微小領域においては印刷物ごとにそれぞれ異なる濃度分布が得られるため、特徴量も印刷物ごとに固有の特徴を表すものとなる。
【0071】
印刷物に形成されている画像自体に再現不能なランダムな濃度分布が含まれているため、読み取られた第2読取画像Im2の濃度分布そのものを特徴量データとしてもよい。但し、第2読取画像を量子化及び標本化して特徴量を求めると、印刷物ごとの特徴量がより明確になるため、真贋判定処理を簡略化できる。
【0072】
比較部283は、真贋判定の際に、登録部282に登録されている登録特徴量データを登録部282から順次読み出しながら、特徴量抽出部281により抽出された第2読取画像Im2の抽出特徴量データと、全ての登録特徴量データと、を比較する。比較部283は、両者の類似度に応じて印刷物の真贋を判定する。
【0073】
真贋判定に用いられる抽出特徴量データと登録特徴量データの類似度は、特徴空間上における両者の間の距離から算出できる。この距離は、例えばユークリッド距離又はマハラノビス距離である。算出された距離が近いほど両者が似ていることを示す。比較部283は、抽出特徴量データと全ての登録特徴量データとを比較し、類似度が所定の閾値以上の登録特徴量データが登録部282に既に登録されている場合には、印刷物は本物であると判定する。一方、類似度が所定の閾値以上の登録特徴量データが登録部282に登録されていない場合には、印刷物は偽物であると判定する。
【0074】
本実施形態では、抽出特徴量データと登録特徴量データとの特徴空間上における距離により真贋を判定する構成を例示するが、ベクトルの成す角度を用いて判定することもできる。またモザイク処理をせず、画像同士の相関値や累積2乗誤差等によって類似度を評価することもできる。
【0075】
さらに第2読取画像を2次元フーリエ変換により周波数領域へ変換し、周波数空間上で判定を行ってもよい。この場合には、予め登録された第2読取画像と、真贋判定の際に取得された第2読取画像と、を周波数空間上で合成し、合成結果を逆フーリエ変換することによって相関強度画像を得る。相関強度画像におけるピーク値から2つの画像の類似度を評価できる。例えば振幅スペクトルのピーク値が所定の振幅閾値以上である場合に本物であると判定できる。
【0076】
また、特徴量データにおいて島状に点在する微小な点の重心位置を計算し、重心間の距離や位置に基づき、類似度を評価することもできる。この方法によれば、判定処理において使用されるデータ量を削減する効果が得られる。
【0077】
判定部35は、比較部283による判定結果を、出力部284を介して外部装置に出力する。この外部装置には、画像形成装置1の表示装置16や、外部PC等が挙げられる。例えば、画像形成装置1は、表示装置16により判定結果を表示することにより、画像形成装置1の操作者に印刷物が本物であるか否かを報知できる。また画像形成装置1は、ネットワークI/F28を介して外部PCに判定結果を出力することにより、印刷物が本物であるか否かの真贋情報を記憶できる。
【0078】
<第1実施形態に係る画像読取装置100による処理例>
(登録処理例)
図11は、画像形成装置1が有する画像読取装置100による特徴量データの登録処理の一例を示すフローチャートである。画像形成装置1の操作者は、登録対象である印刷物を原稿読取ガラス212に載置するか、或いは該印刷物をADF21に挿入し、突き当て部材に突き当てられることにより位置決めする。その後、操作者が画像形成装置1の操作部を介して登録開始操作を入力したタイミングにおいて、画像読取装置100は図11の処理を開始する。
【0079】
まず、ステップS211において、画像読取装置100は、第2光電変換素子222が印刷物における所定位置の微小領域を読み取った第2読取画像Im2を、特徴量抽出部281によって入力する。印刷物は、原稿読取ガラス212及びADF21の突き当て部材により印刷物が位置決めされている。そのため画像読取装置100は、印刷物の端部からの距離に基づき、微小領域の所定位置を容易に特定できる。
【0080】
続いて、ステップS212において、画像読取装置100は、特徴量抽出部281により、第2読取画像Im2を量子化及び標本化することにより、第2読取画像Im2をモザイク状の画像に変換する。
【0081】
続いて、ステップS213において、画像読取装置100は、特徴量抽出部281によって、変換後のモザイク状の画像から特徴量を抽出する。
【0082】
続いて、ステップS214において、画像読取装置100は、抽出された特徴量データを、登録部282により登録する。
【0083】
このようにして、画像読取装置100は、真贋判定の基準となる特徴量データを登録部282に登録することができる。
【0084】
(真贋判定処理例)
図12は、画像形成装置1が有する画像読取装置100による真贋判定処理の一例を示すフローチャートである。画像形成装置1の操作者は、真贋判定対象である印刷物を原稿読取ガラス212に載置するか、或いは該印刷物をADF21に挿入し、突き当て部材に突き当てられることにより位置決めする。その後、操作者が画像形成装置1の操作部を介して真贋判定開始操作を入力したタイミングにおいて、画像読取装置100は図12の処理を開始する。
【0085】
ステップS221からステップS223の処理は、図11におけるステップS211からステップS213の処理と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0086】
ステップS224において、画像読取装置100は、比較部283により、登録部282から登録特徴量データを順次読み出しながら、第2読取画像Im2の抽出特徴量データと、全ての登録特徴量データと、を比較し、両者の類似度を算出する。
【0087】
続いて、ステップS225において、画像読取装置100は、抽出特徴量データとの間において特徴量の類似度が所定の類似閾値以上の登録特徴量データがあるか否かを、比較部283により判定する。
【0088】
類似閾値は、読取誤差又は量子化標本化誤差等に伴う登録特徴量データや抽出特徴量データの誤差を考慮し、許容範囲を設けて設定することが好ましい。また類似閾値は、真贋判定を厳しく行うか否かの要求に応じて適宜選択される。また、画像読取装置100は、印刷物の種類に応じて許容範囲が異なる場合には、特徴量データを登録する際に登録特徴量データに対応付けて類似閾値を登録しておき、真贋判定の際に登録特徴量データと共に読み出した類似閾値を用いて、ステップS225の処理を行うこともできる。
【0089】
ステップS225において、類似閾値以上の登録特徴量データが登録されていると判定された場合には(ステップS225、Yes)、ステップS226において、画像読取装置100は、比較部283により、印刷物は本物であると判定する。一方、類似閾値以上の登録特徴量データが登録されていないと判定された場合には(ステップS225、No)、ステップS227において、画像読取装置100は、比較部283により、印刷物は偽物であると判定する。
【0090】
続いて、ステップS228において、画像読取装置100は、出力部284により、判定結果を外部装置に出力する。
【0091】
このようにして、画像読取装置100は、印刷物の真贋判定を行うことができる。なお、真贋判定の際に、操作者による操作ミスや印刷物の位置ずれ等が発生する場合があるため、これらの影響を抑制するために、複数回の判定結果に応じて最終的な判定を行うようにしてもよい。
【0092】
本実施形態では、登録部282により登録されている全ての登録特徴量データを抽出特徴量データと比較する処理を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、登録特徴量データを登録する際に、印刷物の識別符号を登録特徴量データに対応付けて登録部282に登録しておき、真贋判定の際に、識別符号に基づいて読み出した登録特徴量データと抽出特徴量データとを比較してもよい。この場合には、全ての登録特徴量データに対して比較処理を行わないため、処理負荷を低減すると共に、処理時間を短縮できる。
【0093】
図11及び図12の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供することもできる。記録媒体としては、例えば、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)であって、DVDフォーラムで策定された規格である「DVD-R、DVD-RW、DVD-RAM等」、DVD+RWで策定された規格である「DVD+R、DVD+RW等」、コンパクトディスク(CD)であって、読出し専用メモリ(CD-ROM)、CDレコーダブル(CD-R)、CDリライタブル(CD-RW)等、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、ハードディスク、読出し専用メモリ(ROM)、電気的消去および書換可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)等が含まれる。
【0094】
上記のプログラムまたはその一部は、上記記録媒体に記録して保存や流通等させることが可能である。また、通信によって、例えば、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、メトロポリタン・エリア・ネットワーク(MAN)、ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネット、エクストラネット等に用いられる有線ネットワーク、あるいは無線通信ネットワーク、さらにはこれらの組合せ等の伝送媒体を用いて伝送することが可能であり、また、搬送波に乗せて搬送することも可能である。
【0095】
さらに、上記のプログラムは、他のプログラムの一部分であってもよく、あるいは別個のプログラムと共に記録媒体に記録されていてもよい。また、複数の記録媒体に分割して記録されていてもよい。
【0096】
<第1実施形態に係る画像読取装置100の作用効果>
以上説明したように画像形成装置1が備える画像読取装置100は、光源200(照明部)と、光源200により照明された印刷物(対象物)を第1読取倍率により読み取った第1読取画像Im1を出力する第1読取部3と、を有するものである。また画像読取装置100は、光源200により照明された印刷物を第2読取倍率により読み取った第2読取画像Im2を出力する第2光電変換素子222(第2読取部)と、第2読取画像Im2に基づき判定した印刷物の真贋判定結果(真贋情報)を出力する判定部35と、を有し、第2読取倍率は第1読取倍率よりも高い。
【0097】
第1読取倍率よりも高い第2読取倍率によって印刷物を読み取ることにより、印刷物における所定の微小領域を拡大した濃度分布を得ることができる。この微小領域の濃度分布を用いて真贋判定を行うことにより、例えば印刷物の色や反射率を用いて真贋判定を行う場合と比較して情報量が多くなるため、真贋判定の精度をより高くすることができる。換言すると、真贋判定精度が高い画像読取装置100を提供できる。情報量は、第2光電変換素子222の画素数を増やすほど多くなる。画像読取装置100による原稿等の印刷物の複写は第1読取部3を用いて行われるため、画像読取装置100は、主機能である複写機能を損なうことなく、高精度に真贋判定処理を実行できる。
【0098】
印刷物の複写のためには、600[dpi]又は1200[dpi]の解像度により読取可能に第1読取倍率を定めることが好ましい。また、電子写真方式おけるトナー1個の直径は5[μm]から10[μm]程度であるため、これを読み取るためには第2光電変換素子222の読取解像度は2400[dpi]以上にすることが好ましい。従って、本実施形態においては、第2読取倍率は、第1読取倍率の2倍以上で且つ5倍以下であることが好ましい。このようにすることで、トナー1個1個のランダムな分布を検出できるため、真贋判定のためにより多くの情報を取得可能になる。
【0099】
一方、読取倍率が高すぎると、トナー1個を撮像するために多くの画素数が使用されるため、トナー1個1個のランダムな分布を検出できずに真贋判定のための情報量が逆に減少する場合がある。第2読取倍率を第1読取倍率の2倍以上で且つ5倍以下にすることにより、このような情報量の減少を回避できる。
【0100】
また本実施形態では、第2読取倍率は等倍であることが好ましい。等倍にすることにより、画像読取装置100は、第1読取部3における600[dpi]又は1200[dpi]の読取解像度を実現するための第1読取倍率に対し、第2読取倍率を2倍以上で且つ5倍以下とすることができる。また第2光電変換素子222を印刷物に近接配置すると、レンズを用いずに第2読取倍率を等倍にできるため、構成を簡素化する観点において、より好適である。
【0101】
また本実施形態では、第1読取部3は、印刷物内において第1読取部3により読み取る位置を副走査方向250(所定方向)に沿って変化させる第1ミラーユニット204(可変機構)を有する。この第1ミラーユニット204には第2光電変換素子222が設置されており、第1ミラーユニット204は、第2光電変換素子222を副走査方向250に沿って移動させる。これにより、第2読取倍率が等倍である第2光電変換素子222により、副走査方向250に沿った印刷物の全幅を撮像可能になる。
【0102】
第2読取画像Im2は、印刷物の一部の微小領域を撮像できればよいため、副走査方向250に沿った印刷物の全幅を必ずしも撮像しなくてもよいが、印刷物の中で特に特徴的な微小領域を任意に選択可能にする観点では、印刷物の全幅を撮像できることが好ましい。
【0103】
また第2光電変換素子222は移動可能でなくてもよく、所定の位置に固定された構成であってもよい。例えば、高い第2読取倍率を得るために高倍率の対物レンズを用いるような場合には、ワーキングディスタンスが狭くなるため、第2光電変換素子222が移動すると、対物レンズが原稿読取ガラス212等に衝突するリスクがある。第2光電変換素子222を固定することにより、このようなリスクを低減できる。
【0104】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る画像読取装置100aについて説明する。画像読取装置100aは、画像形成装置1に備えられている。なお、第1実施形態と同じ構成部には同じ符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0105】
図13は、画像読取装置100aが有する判定部35aの機能構成の一例を示すブロック図である。判定部35aは、検出部285と、報知部286と、を有する。検出部285の機能は、CPU10がROM12又はHDD14に記憶されているプログラムを実行すること等により実現される。また報知部286の機能は、CPU10がROM12又はHDD14に記憶されているプログラムを実行し、表示装置16を制御すること等により実現される。
【0106】
検出部285は、第1光電変換素子214により読み取られた第1読取画像Im1に基づき、原稿読取ガラス212又はADF21における印刷物の位置ずれを検出する。この位置ずれには、原稿読取ガラス212又はADF21に対し、印刷物が傾いて(面内回転して)設置されるチルトずれや、印刷物がシフトして設置されるシフトずれ等が含まれる。検出部285は、予め定められたチルト閾値以上のチルトずれを検出した場合、或いは予め定められたシフト閾値以上のシフトずれを検出した場合に、検出結果を報知部286に出力する。
【0107】
報知部286は、検出部285により検出された原稿読取ガラス212又はADF21における印刷物の位置ずれを報知する。例えば、報知部286は、検出部285により位置ずれが検出された場合に、その旨を示すメッセージを、出力部284を介して表示装置16出力する。報知部286は、表示装置16にメッセージを表示させることによって、画像形成装置1の操作者に報知する。メッセージを視認した操作者は、真贋判定結果を消去したり、真贋判定をやり直したりすることができる。
【0108】
判定部35aは、第1読取画像Im1に基づいて印刷物の位置ずれが検出された場合には、位置ずれを報知しつつ、第2読取画像Im2に基づいて印刷物の真贋を判定する。換言すると、判定部は、第1読取画像Im1と、第2読取画像Im2と、に基づいて、印刷物の真贋を判定することができる。
【0109】
図14は、位置ずれがない場合の第1読取画像Im1を例示する図である。図15は、位置ずれがある場合の第1読取画像Im1を例示する図である。
【0110】
印刷物141に位置ずれがない場合には、図14に示すように、第1読取画像Im1には印刷物141の読取画像のみが含まれ、印刷物141の端部(エッジ)は含まれない。一方、印刷物141に位置ずれがあると、図15に示すように、第1読取画像Im1には、印刷物141の端部が含まれる。検出部285は、この端部のシフト量sとチルト量tから印刷物141のシフトずれ及びチルトずれを検出できる。
【0111】
図16は、画像形成装置1が有する画像読取装置100aによる真贋判定処理の一例を示すフローチャートである。画像形成装置1の操作者は、真贋判定対象である印刷物を原稿読取ガラス212に載置するか、或いは該印刷物をADF21に挿入し、突き当て部材に突き当てられることにより位置決めする。その後、操作者が画像形成装置1の操作部を介して真贋判定開始操作を入力したタイミングにおいて、画像読取装置100aは図16の処理を開始する。
【0112】
まず、ステップS161において、画像読取装置100aは、検出部285により、第1光電変換素子214が読み取った第1読取画像Im1を入力する。
【0113】
続いて、ステップS162において、画像読取装置100aは、検出部285により、印刷物141の位置ずれ、すなわちシフトずれ及びチルトずれを検出する。
【0114】
続いて、ステップS163において、画像読取装置100aは、検出部285により、印刷物141のシフトずれは所定のシフト閾値以上であるか否か、或いはチルトずれは所定のチルト閾値以上であるか否かを判定する。
【0115】
ステップS163において、印刷物141のシフトずれが所定のシフト閾値以上であるか、或いはチルトずれが所定のチルト閾値以上であると判定された場合には(ステップS163、Yes)、ステップS164において、画像読取装置100aは、検出部285により検出結果を報知部286に出力する。そして画像読取装置100aは、報知部286により印刷物141が位置ずれしていることを報知する所定のメッセージを表示装置16に表示させる。その後、画像読取装置100aは、ステップS165に処理を移行する。
【0116】
一方、ステップS163において、印刷物141のシフトずれは所定のシフト閾値より小さく、且つチルトずれは所定のチルト閾値より小さいと判定された場合には(ステップS163、No)、画像読取装置100aは、ステップS165に処理を移行する。
【0117】
ステップS165からステップS172の処理は、図13におけるステップS221からステップS228の処理と同じであるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0118】
このようにして、画像読取装置100aは、第1読取画像Im1と、第2読取画像Im2と、に基づいて、印刷物141の真贋を判定することができる。
【0119】
以上説明したように、本実施形態では、判定部35aは、第1読取画像Im1と、第2読取画像Im2と、に基づいて、印刷物141の真贋を判定する。例えば判定部35aは、第1読取画像Im1に基づき、印刷物141の位置ずれを検出する検出部285と、検出部285により検出された位置ずれを報知する報知部286と、を有する。
【0120】
原稿読取ガラス212又はADF21において印刷物141が位置ずれしていると、印刷物141が本物であるにも関わらず、抽出特徴量データと登録特徴量データの類似度が低くなり、誤判定をする場合がある。本実施形態では、画像読取装置100aは、原稿読取ガラス212又はADF21において印刷物141が位置ずれしている場合には、報知部286によりその旨を報知できる。これにより、画像形成装置1の操作者に位置ずれを報知し、誤判定が生じ得ることを認識させることができる。
【0121】
本実施形態では、印刷物141の位置ずれが検出された場合に、該位置ずれを報知する構成を示したが、これに限定されるものではない。例えば判定部35aは、検出部285により、印刷物141の位置ずれが検出された場合に、該位置ずれに応じて第2読取画像Im2を補正することもできる。例えばチルトずれtに応じて第2読取画像Im2を回転させる画像処理を施したり、シフトずれsに応じて第2読取画像Im2をシフトさせる画像処理を施したりして、第2読取画像Im2を補正できる。このようにすると、画像読取装置100aは、印刷物141が位置ずれしている場合にも、正確に真贋判定を行うことができる。
【0122】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0123】
上述した実施形態では、トナーを用いる電子写真方式の画像形成装置を例示したが、これに限定されるものではなく、インク等の液体を用いる液体吐出方式の画像形成装置にも実施形態を適用可能である。インクにおいてもトナーと同様に記録媒体への付着ムラ、飛散、滲み等が生じるため、トナーを用いる場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0124】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【0125】
実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0126】
1 画像形成装置
3 第1読取部
21 ADF
212 原稿読取ガラス
22 スキャナユニット
23 排紙トレイ
35 判定部
100 画像読取装置
200 光源(照明部の一例)
202 第1ミラー
204 第1ミラーユニット(可変機構の一例)
206 第2ミラー
208 第3ミラー
210 第2ミラーユニット
214 第1光電変換素子
215 第1センサボード
216 レンズ
222 第2光電変換素子(第2読取部の一例)
223 第2センサボード
300 画像形成部
240 主走査方向
250 副走査方向
281 特徴量抽出部
282 登録部
283 比較部
284 出力部
285 検出部
286 報知部
400 給紙部
110 読取画像
111 部分領域
120、130 拡大画像
121、122a、122b、131、132 微小領域
Im1 第1読取画像
Im2 第2読取画像
P 用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】
【特許文献1】特開2005-038389号公報
図1
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