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特開2023-161885化学増幅ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161885
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】化学増幅ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20231031BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20231031BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072507
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小竹 正晃
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】増永 恵一
(72)【発明者】
【氏名】福島 将大
(72)【発明者】
【氏名】船津 顕之
(72)【発明者】
【氏名】松澤 雄太
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197AA24
2H197CA03
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE10
2H197GA01
2H197HA03
2H197JA22
2H225AF11P
2H225AF24P
2H225AF25P
2H225AF29P
2H225AF41P
2H225AF48P
2H225AF52P
2H225AF53P
2H225AF54P
2H225AF64P
2H225AF71P
2H225AF98P
2H225AH03
2H225AH11
2H225AH19
2H225AH38
2H225AH39
2H225AH49
2H225AJ04
2H225AJ42
2H225AJ44
2H225AJ48
2H225AJ51
2H225AJ54
2H225AJ58
2H225AJ60
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN57P
2H225BA02P
2H225BA26P
2H225CA08
2H225CB18
2H225CC03
2H225CC15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】パターン形成時の解像性を向上し、かつLER及びCDUが改善されたレジストパターンを得ることができ、欠陥が少なく、かつ300~400nmの短波長を使用した欠陥検査が可能な化学増幅ポジ型レジスト組成物、及びレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)下記式(A1)で表されるオニウム塩化合物、及び(B)特定の式で表される繰り返し単位を含み、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大するポリマーを含むベースポリマー(ただし、ラクトン環を有する繰り返し単位を含むポリマーを含まない。)、及び(C)光酸発生剤をそれぞれ所定量で含む化学増幅ポジ型レジスト組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(A1)で表されるオニウム塩化合物、及び(B)下記式(B1)で表される繰り返し単位を含み、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大するポリマーを含むベースポリマー(ただし、ラクトン環を有する繰り返し単位を含むポリマーを含まない。)、及び(C)光酸発生剤を含む化学増幅ポジ型レジスト組成物であって、
前記ベースポリマーに含まれるポリマーの全繰り返し単位中、芳香環骨格を有する繰り返し単位の含有量が65モル%以上であり、式(A1)で表されるオニウム塩化合物に対する前記光酸発生剤の含有比率が4未満であり、前記光酸発生剤の含有量が、ポリマー80質量部に対し、5質量部以上であり、かつ式(A1)で表されるオニウム塩化合物及び前記光酸発生剤の含有量の総和が、ポリマー80質量部に対し、10質量部以上である化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化1】
[式中、R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~18のヒドロカルビル基、-C(O)OR6、-C(O)R7、-OR8、-S(O)29又は-S(O)2N(R10)2である。R6及びR7は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~19のヒドロカルビル基である。R8及びR9は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。R10は、それぞれ独立に、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。
+は、下記式(A2)で表されるスルホニウムカチオン又は下記式(A3)で表されるヨードニウムカチオンである。
【化2】
(式中、R11~R15は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基を示す。また、R11及びR12が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。)]
【化3】
(式中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
a1は、0又は1である。a2は、0~2の整数である。a3は、0≦a3≦5+2a2-a4を満たす整数である。a4は、1~3の整数である。
21は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。
1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH2-が-O-で置換されていてもよい。)
【請求項2】
1~R5の少なくとも1つが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を含む基である請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
式(B1)で表される繰り返し単位が、下記式(B1-1)で表されるものである請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化4】
(式中、RA及びa4は、前記と同じ。)
【請求項4】
前記ポリマーが、更に、下記式(B2)で表される繰り返し単位を含むものである請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化5】
(式中、RAは、前記と同じ。
b1は、0又は1である。b2は、0~2の整数である。b3は、0≦b3≦5+2b2-b4を満たす整数である。b4は、1~3の整数である。b5は、0又は1である。
22は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。
2は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH2-が-O-で置換されていてもよい。
Xは、b4が1のときは酸不安定基であり、b4が2以上のときは水素原子又は酸不安定基であるが、少なくとも1つは酸不安定基である。)
【請求項5】
前記ポリマーが、更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位、下記式(B4)で表される繰り返し単位及び下記式(B5)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1つを含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化6】
(式中、RAは、前記と同じ。
c及びdは、それぞれ独立に、0~4の整数である。e1は、0又は1である。e2は、0~5の整数である。e3は、0~2の整数である。
23及びR24は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
25は、アセチル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルチオヒドロカルビル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基又はスルホニル基である。
3は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH2-が-O-で置換されていてもよい。)
【請求項6】
前記ポリマーが、更に、下記式(B6)~(B13)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1つを含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化7】
(式中、RBは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、-O-Z11-、-C(=O)-O-Z11-又は-C(=O)-NH-Z11-であり、Z11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
2は、単結合又は-Z21-C(=O)-O-であり、Z21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Z31-、-C(=O)-O-Z31-又は-C(=O)-NH-Z31-であり、Z31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
4は、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。f1及びf2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Z4が単結合のとき、f1及びf2は、0である。
31~R48は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R31及びR32が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33及びR34、R36及びR37、又はR39及びR40が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
Xa-は、非求核性対向イオンである。)
【請求項7】
更に、(D)下記式(D1)で表される繰り返し単位及び式(D2)~(D5)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1つを含むポリマーを含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化8】
(式中、RCは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
Dは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
51は、水素原子、又は炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。
52は、炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。
53、R54、R56及びR37は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基である。
55、R58、R59及びR60は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のヒドロカルビル基、フッ素化ヒドロカルビル基又は酸不安定基であり、R55、R58、R59及びR60が、ヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基のとき、炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。
k1は、1~3の整数である。k2は、0≦k2≦5+2k3-k1を満たす整数である。k3は、0又は1である。mは、1~3の整数である。
1は、単結合、-C(=O)-O-又は-C(=O)-NH-である。
2は、炭素数1~20の(m+1)価の炭化水素基又は炭素数1~20の(m+1)価のフッ素化炭化水素基である。)
【請求項8】
更に、(E)有機溶剤を含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項9】
波長が300~400nmである検査光に対して、消衰係数(k値)が0.01以下であるレジスト膜を与えるものである請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記パターンを照射したレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターン形成方法。
【請求項11】
前記高エネルギー線が、極端紫外線又は電子線である請求項10記載のレジストパターン形成方法。
【請求項12】
前記基板の最表面が、クロム、ケイ素、タンタル、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン及びスズから選ばれる少なくとも1つを含む材料からなる請求項10記載のレジストパターン形成方法。
【請求項13】
前記基板が、フォトマスクブランクである請求項10記載のレジストパターン形成方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか1項記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物から得られるレジスト膜を備えるフォトマスクブランク。
【請求項15】
更に、帯電防止膜を備える請求項14記載のフォトマスクブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学増幅ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。このうち、0.2μm以下のパターンの加工では、もっぱら酸を触媒とした化学増幅レジスト組成物が使用されている。また、露光源として紫外線、遠紫外線、電子線(EB)等の高エネルギー線が用いられており、特に超微細加工技術として利用されているEBリソグラフィーは、半導体製造用のフォトマスクを作製する際のフォトマスクブランクの加工方法としても不可欠となっている。
【0003】
酸性側鎖を有する芳香族骨格を多量に有するポリマー、例えばポリヒドロキシスチレンは、KrFエキシマレーザーを用いるKrFリソグラフィー用レジスト組成物の材料として有用であるが、波長200nm付近の光に対して大きな吸収を示すため、ArFエキシマレーザーを用いるArFリソグラフィー用レジスト組成物の材料としては使用されなかった。しかし、ArFエキシマレーザーによる加工限界よりも小さなパターンを形成するための有力な技術であるEBリソグラフィー用レジスト組成物や、極端紫外線(EUV)リソグラフィー用レジスト組成物の材料としては高いエッチング耐性が得られる点で重要な材料となっている。
【0004】
通常、ポジ型のEBリソグラフィー用レジスト組成物やEUVリソグラフィー用レジスト組成物のベースポリマーとしては、高エネルギー線を照射することで光酸発生剤より発生した酸を触媒として、ベースポリマーが持つフェノール側鎖の酸性官能基をマスクしている酸分解性保護基(酸不安定基)を脱保護させて、アルカリ現像液に可溶化する材料が主に用いられている。
【0005】
感度やパターンプロファイルの制御について、レジスト組成物に使用する材料の選択や組み合わせ、プロセス条件等によって種々の改良がなされてきた。その改良の1つとして、酸の拡散の問題がある。この酸の拡散については、化学増幅レジスト組成物の感度と解像性に大きな影響を与えることから多くの検討がされてきた。
【0006】
特許文献1や特許文献2には、露光により光酸発生剤から発生するベンゼンスルホン酸を嵩高くすることで酸拡散を抑制し、ラフネス(LER)を低減する例が記載されている。しかし、前記酸発生剤では酸拡散の抑制が未だ不十分であるので、より拡散の小さい酸発生剤の開発が望まれていた。
【0007】
特許文献3には、露光により発生するスルホン酸をレジスト組成物に使用するポリマーに結合させて拡散を抑制することで、酸拡散を制御する例が記載されている。このような露光により酸を発生する繰り返し単位をベースポリマーに含ませて酸拡散を抑える方法は、LERの小さなパターンを得るのに有効である。しかし、このような繰り返し単位の構造や導入率によっては、露光により酸を発生する繰り返し単位を結合させたベースポリマーの有機溶剤に対する溶解性に問題が生じることがあった。
【0008】
酸の拡散を抑制するには、前述の発生酸を嵩高くする方法のほかに、酸拡散制御剤(クエンチャー)を改良する方法も考えられる。酸拡散制御剤は、酸拡散を抑制するものであり、レジスト組成物の性能を向上させるためには事実上必須成分である。酸拡散制御剤は、これまで様々な検討がなされており、一般的にアミン類や弱酸オニウム塩が用いられている。弱酸オニウム塩の例として、特許文献4には、トリフェニルスルホニウムアセテートの添加により、T-トップの形成、孤立パターンと密集パターンとの線幅の差及びスタンディングウエーブのない良好なレジストパターンを形成できることが記載されている。特許文献5には、スルホン酸アンモニウム塩又はカルボン酸アンモニウム塩の添加により、感度、解像性及び露光マージンが改善されたことが記載されている。また、特許文献6には、フッ素原子含有カルボン酸を発生する光酸発生剤を含む組み合わせのKrFリソグラフィー及びEBリソグラフィー用レジスト組成物が解像力に優れ、露光マージン、焦点深度等のプロセス許容性が改善されたことが記載されている。これらは、KrFリソグラフィー、EBリソグラフィー又はF2リソグラフィーに用いられているものである。
【0009】
特許文献7には、カルボン酸オニウム塩を含むArFリソグラフィー用ポジ型感光性組成物が記載されている。これらは、露光によって光酸発生剤から生じた強酸(スルホン酸)が弱酸オニウム塩と交換し、弱酸及び強酸オニウム塩を形成することで酸性度の高い強酸(スルホン酸)から弱酸(カルボン酸)に置き換わることによって酸不安定基の酸分解反応を抑制し、酸拡散距離を小さくする(制御する)ものであり、見かけ上酸拡散制御剤として機能する。
【0010】
しかしながら、前述したカルボン酸オニウム塩やフルオロカルボン酸オニウム塩を含むレジスト組成物を用いてパターニングを行った際、より微細化が進んだ近年では未だLERが大きい問題があるため、よりLERを低減できる酸拡散制御剤の開発が望まれていた。
【0011】
さらに、LERの低減のため、酸拡散制御剤を酸発生剤に対して多量に添加することで酸拡散を抑制する方法も用いられるが、その際、オニウム塩型の酸拡散制御剤のレジスト溶剤への溶解性が悪いため、凝集物が生成され、欠陥を引き起こす問題が生じる。
【0012】
また、近年の形成パターンの微細化に伴い、微小欠陥を検出するため、検査波長の短い検査装置の適用が求められているが、400nm以下の波長の短い検査光は、レジスト材料が吸収を持つため、感光によりレジスト膜が劣化する問題が生じる。
【0013】
特許文献8には、トリフェニルスルホニウムフェノラートを含むレジスト組成物が記載されている。しかし、近年の寸法均一性(CDU)への要求に対して、特許文献8に記載のレジスト組成物では、CDUが不足する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009-53518号公報
【特許文献2】特開2010-100604号公報
【特許文献3】特開2011-22564号公報
【特許文献4】特許第3955384号公報
【特許文献5】特開平11-327143号公報
【特許文献6】特許第4231622号公報
【特許文献7】特許第4226803号公報
【特許文献8】特開2016-6495号公報
【特許文献9】特許第4575479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、パターン形成時の解像性を向上し、かつLER及びCDUが改善されたレジストパターンを得ることができ、欠陥が少なく、かつ300~400nmの短波長を使用した欠陥検査が可能な化学増幅ポジ型レジスト組成物、及びレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定のフェノキシドアニオンを有するオニウム塩化合物からなる酸拡散制御剤を含むレジスト組成物が、良好な解像性やパターン形状を示し、LER及びCDUが改善されたパターンが得られ、欠陥が少なく、また300~400nmの短波長の光の吸収を持たないことを知見し、本発明をなすに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、下記化学増幅ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法を提供する。
1.(A)下記式(A1)で表されるオニウム塩化合物、及び(B)下記式(B1)で表される繰り返し単位を含み、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大するポリマーを含むベースポリマー(ただし、ラクトン環を有する繰り返し単位を含むポリマーを含まない。)、及び(C)光酸発生剤を含む化学増幅ポジ型レジスト組成物であって、
前記ベースポリマーに含まれるポリマーの全繰り返し単位中、芳香環骨格を有する繰り返し単位の含有量が65モル%以上であり、式(A1)で表されるオニウム塩化合物に対する前記光酸発生剤の含有比率が4未満であり、前記光酸発生剤の含有量が、ポリマー80質量部に対し、5質量部以上であり、かつ式(A1)で表されるオニウム塩化合物及び前記光酸発生剤の含有量の総和が、ポリマー80質量部に対し、10質量部以上である化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化1】
[式中、R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~18のヒドロカルビル基、-C(O)OR6、-C(O)R7、-OR8、-S(O)29又は-S(O)2N(R10)2である。R6及びR7は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~19のヒドロカルビル基である。R8及びR9は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。R10は、それぞれ独立に、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。
+は、下記式(A2)で表されるスルホニウムカチオン又は下記式(A3)で表されるヨードニウムカチオンである。
【化2】
(式中、R11~R15は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基を示す。また、R11及びR12が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。)]
【化3】
(式中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
a1は、0又は1である。a2は、0~2の整数である。a3は、0≦a3≦5+2a2-a4を満たす整数である。a4は、1~3の整数である。
21は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。
1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH2-が-O-で置換されていてもよい。)
2.R1~R5の少なくとも1つが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を含む基である1の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
3.式(B1)で表される繰り返し単位が、下記式(B1-1)で表されるものである1又は2の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化4】
(式中、RA及びa4は、前記と同じ。)
4.前記ポリマーが、更に、下記式(B2)で表される繰り返し単位を含むものである1~3のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化5】
(式中、RAは、前記と同じ。
b1は、0又は1である。b2は、0~2の整数である。b3は、0≦b3≦5+2b2-b4を満たす整数である。b4は、1~3の整数である。b5は、0又は1である。
22は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。
2は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH2-が-O-で置換されていてもよい。
Xは、b4が1のときは酸不安定基であり、b4が2以上のときは水素原子又は酸不安定基であるが、少なくとも1つは酸不安定基である。)
5.前記ポリマーが、更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位、下記式(B4)で表される繰り返し単位及び下記式(B5)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1つを含む1~4のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化6】
(式中、RAは、前記と同じ。
c及びdは、それぞれ独立に、0~4の整数である。e1は、0又は1である。e2は、0~5の整数である。e3は、0~2の整数である。
23及びR24は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
25は、アセチル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルチオヒドロカルビル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基又はスルホニル基である。
3は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH2-が-O-で置換されていてもよい。)
6.前記ポリマーが、更に、下記式(B6)~(B13)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1つを含む1~5のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化7】
(式中、RBは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、-O-Z11-、-C(=O)-O-Z11-又は-C(=O)-NH-Z11-であり、Z11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
2は、単結合又は-Z21-C(=O)-O-であり、Z21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Z31-、-C(=O)-O-Z31-又は-C(=O)-NH-Z31-であり、Z31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
4は、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。f1及びf2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Z4が単結合のとき、f1及びf2は、0である。
31~R48は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R31及びR32が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33及びR34、R36及びR37、又はR39及びR40が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
Xa-は、非求核性対向イオンである。)
7.更に、(D)下記式(D1)で表される繰り返し単位及び式(D2)~(D5)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1つを含むポリマーを含む1~6のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化8】
(式中、RCは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
Dは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
51は、水素原子、又は炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。
52は、炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。
53、R54、R56及びR37は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基である。
55、R58、R59及びR60は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のヒドロカルビル基、フッ素化ヒドロカルビル基又は酸不安定基であり、R55、R58、R59及びR60が、ヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基のとき、炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。
k1は、1~3の整数である。k2は、0≦k2≦5+2k3-k1を満たす整数である。k3は、0又は1である。mは、1~3の整数である。
1は、単結合、-C(=O)-O-又は-C(=O)-NH-である。
2は、炭素数1~20の(m+1)価の炭化水素基又は炭素数1~20の(m+1)価のフッ素化炭化水素基である。)
8.更に、(E)有機溶剤を含む1~7のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
9.波長が300~400nmである検査光に対して、消衰係数(k値)が0.01以下であるレジスト膜を与えるものである1~8のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
10.1~9のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記パターンを照射したレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターン形成方法。
11.前記高エネルギー線が、EUV又はEBである10のレジストパターン形成方法。
12.前記基板の最表面が、クロム、ケイ素、タンタル、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン及びスズから選ばれる少なくとも1つを含む材料からなる10又は11のレジストパターン形成方法。
13.前記基板が、フォトマスクブランクである10~12のいずれかのレジストパターン形成方法。
14.1~9のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物から得られるレジスト膜を備えるフォトマスクブランク。
15.更に、帯電防止膜を備える14のフォトマスクブランク。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、式(A1)で表されるオニウム塩化合物の作用により、パターン形成時の露光による酸拡散を効果的に制御することができ、レジスト膜として成膜してパターンを形成する際に極めて高い解像性を有し、LER及びCDUが改善されたパターンを得ることができる。また、レジスト組成物に使用する溶剤への溶解性が高いため、酸拡散制御剤の凝集を防ぎ、欠陥の発生を抑制する。さらに、300~400nmの短波長の検査光に対して感光しないため、短波長の検査光を用いた微小欠陥の検査も可能となる。また、式(B1)で表される繰り返し単位の作用により、アルカリ現像液に対して良好な溶解性を示すものとなるほか、レジスト膜を成膜する際の基板への密着性を向上させることができる。
【0019】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法は、高い解像性を有しつつLER及びCDUが改善されたパターンを形成でき、欠陥を抑制し、かつ短波長を用いた微小欠陥の検査も可能であるため、微細加工技術、特にEUVリソグラフィーやEBリソグラフィーに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】合成例1-1で得られた化合物Q-Aの1H-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に記述する。なお、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオマーやジアステレオマーが存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は、1種単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0022】
[化学増幅ポジ型レジスト組成物]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、(A)所定のオニウム塩化合物、(B)所定のポリマーを含むベースポリマー及び(C)光酸発生剤を含むことを特徴とする。
【0023】
[(A)オニウム塩化合物]
(A)成分のオニウム塩化合物は、下記式(A1)で表されるものである。
【化9】
【0024】
式(A1)中、R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~18のヒドロカルビル基、-C(O)OR6、-C(O)R7、-OR8、-S(O)29又は-S(O)2N(R10)2である。R6及びR7は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~19のヒドロカルビル基である。R8及びR9は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。R10は、それぞれ独立に、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。
【0025】
1~R5で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0026】
1~R10で表されるヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の炭素数6~20のアリール基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0027】
1~R5としては、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数1~6のハロゲン化アルキルオキシ基等が好ましい。
【0028】
式(A1)で表されるオニウム塩化合物のアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化10】
【0029】
【化11】
【0030】
【化12】
【0031】
式(A1)中、Q+は、下記式(A2)で表されるスルホニウムカチオン又は下記式(A3)で表されるヨードニウムカチオンである。
【化13】
【0032】
式(A2)及び(A3)中、R11~R15は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R11及びR12が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0033】
11~R15で表されるヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、式(A1)の説明においてR1~R10で表されるヒドロカルビル基として例示したものと同様のものが挙げられる。R11~R15としては、特にアリール基が好ましい。
【0034】
また、R11及びR12が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。このとき、前記環としては、以下に示す構造のものが好ましい。
【化14】
(式中、破線は、結合手である。)
【0035】
式(A2)で表されるスルホニウムカチオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化15】
【0036】
式(A3)で表されるヨードニウムカチオンの具体例としては、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-エチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス[4-(1,1-ジメチルプロピル)フェニル]ヨードニウム、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウム、4-tert-ブトキシフェニルフェニルヨードニウム、4-アクリロイルオキシフェニルフェニルヨードニウム、4-メタクリロイルオキシフェニルフェニルヨードニウム等が挙げられる。これらのうち、特にビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムが好ましい。
【0037】
前記オニウム塩の具体的な構造としては、前述したアニオンの具体例とカチオンの具体例との任意の組み合わせが挙げられる。
【0038】
式(A1)で表されるオニウム塩化合物は、化学増幅ポジ型レジスト組成物に適用することで、酸拡散制御剤として極めて有効に機能する。なお、本発明において酸拡散制御剤とは、化学増幅ポジ型レジスト組成物中の光酸発生剤より発生した酸をトラップすることで未露光部への拡散を防ぎ、所望のパターンを形成するための材料のことである。
【0039】
前記オニウム塩化合物の酸拡散制御機構は、以下のように考えられる。レジスト組成物中の光酸発生剤より発生した酸は、ベースポリマーの酸不安定基を脱保護するために強酸性である必要があり、例えばEBリソグラフィーではスルホ基のα位がフッ素化されたスルホン酸やフッ素化されていないスルホン酸が一般的には使用される。ここで、レジスト組成物中に光酸発生剤と前記オニウム塩化合物とを共存させると、光酸発生剤から生じた酸は、前記オニウム塩化合物によってトラップされ、前記オニウム塩化合物はフェノール化合物となる。前記オニウム塩化合物自身が光分解する場合も考えられるが、その場合発生するのは弱酸のフェノール化合物であり、ベースポリマー中の酸不安定基を脱保護するには至らず、従って酸拡散制御剤として強力に機能するものと推察される。
【0040】
このオニウム塩型クエンチャーとも言える酸拡散制御剤は、一般的にアミン化合物を用いた酸拡散制御剤よりもレジストパターンのLERが小さくなる傾向にある。これは、強酸と前記オニウム塩化合物との塩交換が、数限りなく繰り返されることに起因すると推定される。すなわち、露光の最後に強酸が発生する場所は、最初の強酸発生型オニウム塩が存在している場所とは異なっている。光による酸の発生と塩交換のサイクルが何度も繰り返されることによって酸の発生ポイントが平均化され、このスムージング効果によって現像後のレジストパターンのLERが小さくなるものと推定される。
【0041】
式(A1)で表されるオニウム塩化合物は、300~400nmの短波長領域に吸収を持たないため、短波長の検査光を用いた検査装置で、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物から得られるレジスト膜の微小欠陥の検査を実施することができる。ここで、前記レジスト膜の微小欠陥を確認するための検査装置に用いられる検査光の波長としては、355nmを挙げることができるが、これに限定されない。
【0042】
ここで、検査光による感光を起こさないためには、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物から得られるレジスト膜の消衰係数(k値)が0.01以下であることが好ましく、0.005以下であることがより好ましく、0.003以下であることが更に好ましい。
【0043】
式(A1)中のR1~R5のうち、少なくとも1つにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれていることが好ましい。特に、R1~R5のうち少なくとも1つが、ハロゲン原子、炭素数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素数1~6のハロゲン化アルキルオキシ基であることが好ましい。これにより、レジスト組成物の溶剤として使用する有機溶剤への溶解性が向上し、LER改善を目的に式(A1)を酸発生剤に対して多量に添加した場合でも、凝集を起こすことがなく、欠陥の発生を防ぐことができる。
【0044】
また、レジスト膜の上に帯電防止膜を形成する場合、式(A1)で表されるオニウム塩化合物のR1~R5のうち、少なくとも1つにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれていることが好ましい。特に、R1~R5のうち少なくとも1つが、ハロゲン原子、炭素数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素数1~6のハロゲン化アルキルオキシ基であることが好ましい。これにより、式(A1)で表されるオニウム塩化合物は、レジスト膜中で凝集を起こさずに分散しているため、効果的に帯電防止膜に含まれる微弱な酸をトラップすることができる。さらに、式(A1)中のR1~R5のうち、少なくとも1つがフッ素原子を含む場合、レジスト膜と帯電防止膜の界面付近に式(A1)で表されるオニウム塩化合物を局在させ、帯電防止膜に含まれる微弱な酸を極めて効率的にトラップすることができる。その結果、帯電防止膜が引き起こすレジストの解像性劣化を抑えることができ、帯電防止膜を用いた場合でも良好な解像性を得ることができる。
【0045】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物中、式(A1)で表されるオニウム塩化合物の含有量は、後述する(B)ベースポリマー80質量部に対し、0.1~100質量部が好ましく、1~80質量部がより好ましい。式(A1)で表されるオニウム塩化合物の含有量が前記範囲であれば、酸拡散制御剤として十分に機能し、感度低下や溶解性不足で欠陥が発生したりする等の性能劣化を起こすおそれがない。式(A1)で表されるオニウム塩化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
また、後述する光酸発生剤との含有量の比率として、式(A1)で表されるオニウム塩化合物に対する光酸発生剤の含有比率(光酸発生剤/式(A1)で表されるオニウム塩化合物)が4未満であることが好ましく、3未満であることがより好ましい。前記含有比率が前記範囲内であれば、酸拡散を十分に抑制することが可能になり、優れた解像性やCDUを得ることができる。
【0047】
さらに、後述する光酸発生剤の添加量が、ポリマー80質量部に対し、5質量部以上であり、かつ式(A1)で表されるオニウム塩化合物及び光酸発生剤の添加量の総和が、ポリマー80質量部に対し、10質量部以上であることが好ましい。この条件を満たす添加量であり、かつ光酸発生剤/式(A1)で表されるオニウム塩化合物の比率が前述の4未満であれば、露光部の酸の発生点を十分に得ることができ、更に酸拡散を抑えることができるため、優れた解像性やCDUを得ることができる。
【0048】
[(B)ベースポリマー]
(B)成分のベースポリマーは、下記式(B1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B1ともいう。)を含むポリマーを含むものである。
【化16】
【0049】
式(B1)中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0050】
式(B1)中、a1は、0又は1である。a2は、0~2の整数であり、0の場合はベンゼン骨格を、1の場合はナフタレン骨格を、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。a3は、0≦a3≦5+2a2-a4を満たす整数であり、a4は、1~3の整数である。a2が0の場合、好ましくは、a3は0~3の整数であり、a4は1~3の整数であり、a2が1又は2の場合、好ましくは、a3は0~4の整数であり、a4は1~3の整数である。
【0051】
式(B1)中、R21は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。前記飽和ヒドロカルビル基、並びに飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルオキシ基の飽和ヒドロカルビル部は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。a3が2以上のとき、各R21は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0052】
式(B1)中、A1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH2-が-O-で置換されていてもよい。前記飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、これらの構造異性体等のアルカンジイル基;シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。前記飽和ヒドロカルビレン基がエーテル結合を含む場合には、式(B1)中のa1が1のときはエステル酸素に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、a1が0のときは主鎖と結合する原子がエーテル性酸素となり、該エーテル性酸素に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記飽和ヒドロカルビレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0053】
a1が0かつA1が単結合である場合、つまり芳香環がポリマーの主鎖に直接結合した(すなわち、リンカー(-C(=O)-O-A1-)を有しない)場合、繰り返し単位B1の好ましい例としては、3-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、5-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン、6-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。繰り返し単位B1としては、特に優れたCDUを達成する観点から、下記式(B1-1)で表される繰り返し単位が好ましい。式(B1-1)で表される繰り返し単位を含むことにより、露光エリアのアルカリ現像液に対する溶解性が向上し、現像液の接触インパクトの微小な差異が引き起こす寸法誤差が緩和され、優れたCDUを達成することができる。
【化17】
(式中、RA及びa4は、前記と同じ。)
【0054】
また、a1が1である(すなわち、リンカーとして-C(=O)-O-A1-を有する)場合、繰り返し単位B1の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化18】
(式中、RAは、前記と同じ。)
【0055】
繰り返し単位B1の含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、10~95モル%が好ましく、40~90モル%がより好ましい。ただし、後述する本発明で使用するポリマーにより高いエッチング耐性を与える式(B3)で表される繰り返し単位及び式(B4)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含み、その単位が置換基としてフェノール性ヒドロキシ基を有する場合には、その比率も加えて前記範囲内とされることが好ましい。繰り返し単位B1は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
前記ポリマーは、ポジ型レジスト組成物として露光部がアルカリ水溶液に溶解する特性を与えるため、酸不安定基により保護された酸性官能基を有する単位(酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位)が含まれることが好ましい。この場合、前記繰り返し単位中の酸不安定基(保護基)が酸の作用により脱保護反応を起こすため、前記ポリマーがアルカリ現像液に対してより良好な溶解性を示すものとなる。
【0057】
このような繰り返し単位としては、下記式(B2)で表されるもの(以下、繰り返し単位B2ともいう。)が挙げられる。
【化19】
【0058】
式(B2)中、RAは、前記と同じ。b1は、0又は1である。b2は、0~2の整数であり、0の場合はベンゼン骨格を、1の場合はナフタレン骨格を、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。b3は、0≦b3≦5+2b2-b4を満たす整数である。b4は、1~3の整数である。b5は、0又は1である。b2が0の場合、好ましくは、b3は0~3の整数であり、b4は1~3の整数であり、b2が1又は2の場合、好ましくは、b3は0~4の整数であり、b4は1~3の整数である。
【0059】
式(B2)中、R22は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。前記飽和ヒドロカルビル基、並びに飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルオキシ基の飽和ヒドロカルビル部は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。b3が2以上のとき、各R22は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0060】
式(B2)中、A2は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH2-が-O-で置換されていてもよい。前記飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、これらの構造異性体等のアルカンジイル基;シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。前記飽和ヒドロカルビレン基がエーテル結合を含む場合には、式(B2)中のb1が1のときはエステル酸素に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、b1が0のときは主鎖と結合する原子がエーテル性酸素となり、該エーテル性酸素に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記飽和ヒドロカルビレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0061】
式(B2)中、Xは、b4が1のときは酸不安定基であり、b4が2以上のときは水素原子又は酸不安定基であるが、少なくとも1つは酸不安定基である。すなわち、繰り返し単位B2は、芳香環に結合したフェノール性ヒドロキシ基の少なくとも1つが酸不安定基で保護されたもの、あるいは芳香環に結合したカルボキシ基が酸不安定基で保護されたものである。このような酸不安定基としては、既に公知の多数の化学増幅レジスト組成物で用いられてきた、酸によって脱離して酸性基を与えるものであれば、特に限定されることなくいずれも使用することができる。
【0062】
前記酸不安定基として第3級飽和ヒドロカルビル基を選択すると、レジスト膜厚が、例えば、10~100nmになるように成膜され、45nm以下の線幅を持つような微細パターンを形成した場合にも、LERが小さなパターンを与えるため好ましい。前記第3級飽和ヒドロカルビル基としては、得られた重合用のモノマーを蒸留によって得るために、炭素数4~18のものであることが好ましい。また、前記第3級飽和ヒドロカルビル基の第3級炭素原子に結合する基としては、エーテル結合やカルボニル基のような酸素含有官能基を含んでいてもよい炭素数1~15の飽和ヒドロカルビル基が挙げられ、前記第3級炭素原子に結合する基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0063】
前記第3級炭素原子に結合する基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラヒドロフラン-2-イル基、7-オキサノルボルナン-2-イル基、シクロペンチル基、2-テトラヒドロフリル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、3-オキソ-1-シクロヘキシル基が挙げられる。
【0064】
また、これらを置換基として有する第3級飽和ヒドロカルビル基としては、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1-アダマンチル-1-メチルエチル基、1-メチル-1-(2-ノルボルニル)エチル基、1-メチル-1-(テトラヒドロフラン-2-イル)エチル基、1-メチル-1-(7-オキサノルボルナン-2-イル)エチル基、1-メチルシクロペンチル基、1-エチルシクロペンチル基、1-プロピルシクロペンチル基、1-イソプロピルシクロペンチル基、1-シクロペンチルシクロペンチル基、1-シクロヘキシルシクロペンチル基、1-(2-テトラヒドロフリル)シクロペンチル基、1-(7-オキサノルボルナン-2-イル)シクロペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-エチルシクロヘキシル基、1-シクロペンチルシクロヘキシル基、1-シクロヘキシルシクロヘキシル基、2-メチル-2-ノルボニル基、2-エチル-2-ノルボニル基、8-メチル-8-トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、8-エチル-8-トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3-メチル-3-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、3-エチル-3-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、2-メチル-2-アダマンチル基、2-エチル-2-アダマンチル基、1-メチル-3-オキソ-1-シクロヘキシル基、1-メチル-1-(テトラヒドロフラン-2-イル)エチル基、5-ヒドロキシ-2-メチル-2-アダマンチル基、5-ヒドロキシ-2-エチル-2-アダマンチル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
また、前記酸不安定基として、下記式(B2-1)で表される基が挙げられる。式(B2-1)で表される基は、酸不安定基としてよく利用され、パターンと基板の界面が比較的矩形であるパターンを安定して与える酸不安定基として好適な選択肢である。Xが式(B2-1)で表される基である場合、アセタール構造が形成される。
【化20】
【0066】
式(B2-1)中、RL1は、水素原子又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基である。RL2は、炭素数1~30の飽和ヒドロカルビル基である。前記飽和ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0067】
L1は、酸に対する分解性基の感度の設計に応じて適宜選択される。例えば、比較的高い安定性を確保した上で強い酸で分解するという設計であれば水素原子が選択され、比較的高い反応性を用いてpH変化に対して高感度化という設計であれば、直鎖状アルキル基が選択される。レジスト組成物に配合する酸発生剤や塩基性化合物との組み合わせにもよるが、RL2として末端に比較的大きなアルキル基が選択され、分解による溶解性変化が大きく設計されている場合には、RL1としては、アセタール炭素と結合する炭素が第2級炭素原子であるものが好ましい。第2級炭素原子によってアセタール炭素と結合するRL1の例としては、イソプロピル基、sec-ブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等を挙げることができる。
【0068】
前記アセタール基のうち、より高い解像性を得るためには、RL2は、炭素数7~30の多環式アルキル基であることが好ましい。また、RL2が多環式アルキル基である場合、該多環式環構造を構成する第2級炭素原子とアセタール酸素との間で結合を形成していることが好ましい。環構造の第2級炭素原子上で結合している場合、第3級炭素原子上で結合している場合に比べて、ポリマーが安定な化合物となり、レジスト組成物として保存安定性が良好となり、解像力も劣化することがない。また、RL2が炭素数1以上の直鎖状のアルキル基を介在した第1級炭素原子上で結合している場合と比べても、ポリマーのガラス転移温度(Tg)が良好なものとなり、現像後のレジストパターンがベークにより形状不良を起こすことがない。
【0069】
式(B2-1)で表される基の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RL1は、前記と同じである。
【化21】
【0070】
その他の酸不安定基としては、フェノール性ヒドロキシ基の水素原子が-CH2COO-(第3級飽和ヒドロカルビル基)で置換されたものを使用することもできる。このとき前記第3級飽和ヒドロカルビル基としては、前述したフェノール性ヒドロキシ基の保護に用いる第3級飽和ヒドロカルビル基と同じものを使用することができる。
【0071】
繰り返し単位B2の含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、5~45モル%が好ましい。繰り返し単位B2は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
前記ポリマーは、更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B3ともいう。)、下記式(B4)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B4ともいう。)及び下記式(B5)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B5ともいう。)から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。
【化22】
【0073】
式(B3)及び(B4)中、c及びdは、それぞれ独立に、0~4の整数である。
【0074】
式(B3)及び(B4)中、R23及びR24は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。前記飽和ヒドロカルビル基、飽和ヒドロカルビルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。cが2以上のとき、各R23は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。dが2以上のとき、各R24は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0075】
式(B5)中、e1は、0又は1である。e2は、0~5の整数である。e3は、0~2の整数であり、0の場合はベンゼン骨格を、1の場合はナフタレン骨格を、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。e3が0の場合、e2は、好ましくは0~3の整数であり、e3が、1又は2の場合、e2は、好ましくは0~4の整数である。
【0076】
式(B5)中、RAは、前記と同じ。R25は、アセチル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルチオヒドロカルビル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基又はスルホニル基である。前記飽和ヒドロカルビル基、飽和ヒドロカルビルオキシ基、飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、飽和ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基及び飽和ヒドロカルビルチオヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。e2が2以上のとき、各R25は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0077】
25としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、これらの構造異性体等の飽和ヒドロカルビル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、これらの炭化水素部の構造異性体等の飽和ヒドロカルビルオキシ基が好ましい。これらのうち、特にメトキシ基及びエトキシ基が好適である。
【0078】
また、飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基は、ポリマーの重合後でも容易に化学修飾法で導入することができ、ベースポリマーのアルカリ現像液に対する溶解性の微調整に用いることができる。前記飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、これらの炭化水素部の構造異性体等が挙げられる。炭素数が20以下であれば、ベースポリマーとしてのアルカリ現像液に対する溶解性を制御・調整する効果(主に下げる効果)を適切なものとすることができ、スカム(現像欠陥)の発生を抑制することができる。
【0079】
前述した好ましい置換基の中で、特にモノマーとして準備しやすく、好適に用いられる置換基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基等が挙げられる。
【0080】
式(B5)中、A3は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH2-が-O-で置換されていてもよい。前記飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、これらの構造異性体等のアルカンジイル基;シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。前記飽和ヒドロカルビレン基がエーテル結合を含む場合には、式(B5)中のe1が1のときはエステル酸素に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、e1が0のときは主鎖と結合する原子がエーテル性酸素となり、該エーテル性酸素に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記飽和ヒドロカルビレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0081】
e1が0かつA3が単結合である場合、つまり芳香環がポリマーの主鎖に直接結合した(すなわち、リンカー(-C(=O)-O-A3-)を有しない)場合、繰り返し単位B5の好ましい例としては、スチレン、4-クロロスチレン、4-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-ブロモスチレン、4-アセトキシスチレン、2-ヒドロキシプロピルスチレン、2-ビニルナフタレン、3-ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。
【0082】
また、e1が1である場合(すなわち、リンカーとして-C(=O)-O-A3-を有する場合)、繰り返し単位B5の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化23】
【0083】
【化24】
【0084】
繰り返し単位B3~B5のうち少なくとも1つを構成単位として使用した場合には、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチング耐性やパターン検査の際のEB照射耐性を高めるという効果が得られる。
【0085】
繰り返し単位B3~B5の含有量は、エッチング耐性を向上させるという効果を得るためには、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、5モル%以上が好ましい。また、繰り返し単位B3~B5の含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、35モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合の導入量が35モル%以下であれば、現像欠陥が発生するおそれがないため好ましい。繰り返し単位B3~B5は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0086】
前記ポリマーは、構成単位として、繰り返し単位B1、繰り返し単位B2、及び繰り返し単位B3~B5から選ばれる少なくとも1種を含むことが、高いエッチング耐性と解像性の両立に優れるという点から好ましい。このとき、これらの繰り返し単位が、全繰り返し単位中、60モル%以上含まれることが好ましく、70モル%以上含まれることがより好ましく、80モル%以上含まれることが更に好ましい。
【0087】
前記ポリマーは、更に、下記式(B6)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B6ともいう。)、下記式(B7)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B7ともいう。)、下記式(B8)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B8ともいう。)、下記式(B9)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B9ともいう。)、下記式(B10)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B10ともいう。)、下記式(B11)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B11ともいう。)、下記式(B12)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B12ともいう。)及び下記式(B13)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B13ともいう。)から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。この場合、酸拡散を効果的に抑制することができ、解像性が向上し、かつ、LERの低減されたパターンを得ることができる。
【化25】
【0088】
式(B6)~(B13)中、RBは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Z1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、-O-Z11-、-C(=O)-O-Z11-又は-C(=O)-NH-Z11-であり、Z11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z2は、単結合又は-Z21-C(=O)-O-であり、Z21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。Z3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Z31-、-C(=O)-O-Z31-又は-C(=O)-NH-Z31-であり、Z31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z4は、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。f1及びf2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Z4が単結合のとき、f1及びf2は、0である。
【0089】
式(B7)及び(B11)中、Z2が-Z21-C(=O)-O-のとき、Z21で表されるヘテロ原子を含んでいてもよいヒドロカルビレン基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化26】
(式中、破線は、結合手である。)
【0090】
式(B7)及び(B11)中、RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。繰り返し単位B7及びB11において、RHFが水素原子である場合の具体例としては、特開2010-116550号公報に記載されたものが挙げられ、RHFがトリフルオロメチル基である場合の具体例としては、特開2010-77404号公報に記載されたものが挙げられる。繰り返し単位B8及びB12としては、特開2012-246265号公報や特開2012-246426号公報に記載されたものが挙げられる。
【0091】
式(B6)及び(B10)中、Xa-は、非求核性対向イオンである。Xa-で表される非求核性対向イオンの例としては、特開2010-113209号公報や特開2007-145797号公報に記載されたものが挙げられる。
【0092】
繰り返し単位B9及びB13を与えるモノマーのアニオンの好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化27】
【0093】
【化28】
【0094】
式(B6)~(B13)中、R31~R48は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、式(A1)の説明においてR1~R10で表されるヒドロカルビル基として例示したものと同様のものが挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0095】
また、R31及びR32が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33及びR34、R36及びR37、又はR39及びR40が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。このとき形成される環としては、以下に示すもの等が挙げられる。
【化29】
(式中、破線は、結合手である。)
【0096】
式(B7)~(B9)中、スルホニウムカチオンの具体的な構造としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化30】
【0097】
【化31】
【0098】
式(B11)~(B13)中、ヨードニウムカチオンの具体的な構造としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化32】
【0099】
【化33】
【0100】
繰り返し単位B6~B13は、高エネルギー線の照射により酸を発生させる単位である。これらの単位がポリマー中に含まれることで、酸拡散が適度に抑制され、LER及びCDUが改善されたパターンを得ることができると考えられる。また、これらの単位がポリマーに含まれていることで、真空中でのベーク時に、露光部から酸が揮発し、未露光部へ再付着するという現象が抑制され、LER及びCDUの改善や、未露光部での望まない脱保護化反応抑制によるパターン欠陥の低減等に効果的であると考えられる。繰り返し単位B6~B13を含む場合、その含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、0.5~30モル%が好ましい。繰り返し単位B6~B13は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0101】
(B)ベースポリマーは、繰り返し単位B1に加えて繰り返し単位B6~B13から選ばれる少なくとも1つを含むポリマーと、繰り返し単位B1を含み、繰り返し単位B6~B13を含まないポリマーとの混合物であってもよい。このとき、繰り返し単位B1を含み、繰り返し単位B6~B13を含まないポリマーの含有量は、繰り返し単位B6~B13を含むポリマー100質量部に対し、2~5000質量部が好ましく、10~1000質量部がより好ましい。
【0102】
前記ベースポリマーに含まれるポリマーの全繰り返し単位中、芳香環骨格を有する繰り返し単位の含有量は、65モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましく、全ての単位が芳香環骨格を有する繰り返し単位であることが更に好ましい。これにより、ポリマーの重合均一性が向上し、レジスト膜の面内均一性が向上することで、優れたCDUを得ることができる。
【0103】
前記ベースポリマーとして、特許文献8に記載されているように、ラクトン官能基を含む例が知られているが、ラクトン官能基を有するポリマーは、脂溶性の低下から、アルカリ現像液耐性の低下を招く。これにより、パターン形状の劣化を引き起こし、CDUを低下させる要因となるため、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物のポリマーは、ラクトン官能基を含まないものであることが好ましい。
【0104】
前記ポリマーは、公知の方法によって、必要に応じて保護基で保護した各モノマーを共重合させ、その後必要に応じて脱保護反応を行うことで合成することができる。共重合反応は、特に限定されないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については、特開2004-115630号公報を参考にすることができる。
【0105】
前記ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が1000~50000であることが好ましく、2000~20000であることが更に好ましい。Mwが1000以上であれば、従来知られているように、パターンの頭が丸くなって解像力が低下するとともに、LER及びCDUが劣化するといった現象が生じるおそれがない。一方、Mwが50000以下であれば、特にパターン線幅が100nm以下のパターンを形成する場合においてLER及びCDUが劣化するおそれがない。なお、本発明においてMwは、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0106】
前記ポリマーは、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~2.0、特に1.0~1.8と狭分散であることが好ましい。このように狭分散である場合には、現像後、パターン上に異物が生じたり、パターンの形状が悪化したりすることがない。
【0107】
[(C)光酸発生剤]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、(C)成分として光酸発生剤(以下、添加型光酸発生剤ともいう。)を含んでもよい。前記添加型光酸発生剤としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であれば、特に限定されない。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシイミド、オキシム-O-スルホネート型酸発生剤等がある。
【0108】
前記光酸発生剤の具体例としては、ノナフルオロブタンスルホネートや、特開2012-189977号公報の段落[0247]~[0251]に記載の部分フッ素化スルホネート、特開2013-101271号公報の段落[0261]~[0265]に記載の部分フッ素化スルホネート、特開2008-111103号公報の段落[0122]~[0142]、特開2010-215608号公報の段落[0080]~[0081]に記載されているもの等が挙げられる。これらの中でも、アリールスルホネート型又はアルカンスルホネート型の光酸発生剤が、式(B2)で表される繰り返し単位の酸不安定基を脱保護するのに適度な強度の酸を発生させるため好ましい。
【0109】
このような光酸発生剤としては、以下に示す構造のスルホン酸アニオンを有する化合物が好ましい。対をなすカチオンとしては、式(B7)~(B9)中のスルホニウムカチオンの具体例として前述したものや、式(B11)~(B13)中のヨードニウムカチオンの具体例として前述したものが挙げられる。
【化34】
【0110】
【化35】
【0111】
【化36】
【0112】
【化37】
【0113】
【化38】
【0114】
【化39】
【0115】
【化40】
【0116】
【化41】
【0117】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物中、(C)添加型光酸発生剤の含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、5~30質量部が好ましく、5~20質量部がより好ましい。なお、ベースポリマーが繰り返し単位B6~B13を含む場合(すなわち、ポリマーバウンド型酸発生剤である場合)には、添加型光酸発生剤の配合を省略してもよい。(C)添加型光酸発生剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0118】
[(D)フッ素含有ポリマー]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、高コントラスト化、高エネルギー線照射における酸のケミカルフレア及び帯電防止膜材料をレジスト膜上に塗布するプロセスにおける帯電防止膜からの酸のミキシングを遮蔽し、予期しない不要なパターン劣化を抑制する目的で、(D)成分として、下記式(D1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位D1ともいう。)、並びに下記式(D2)、(D3)、(D4)及び(D5)で表される繰り返し単位(以下、それぞれ繰り返し単位D2、D3、D4及びD5ともいう。)から選ばれる少なくとも1つを含むフッ素含有ポリマーを含んでもよい。前記フッ素含有ポリマーは、界面活性機能も有することから、現像プロセス中に生じうる不溶物の基板への再付着を防止できるため、現像欠陥に対する効果も発揮する。
【化42】
【0119】
式(D1)~(D5)中、RCは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。RDは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R51は、水素原子、又は炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。R52は、炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。R53、R54、R56及びR37は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基である。R55、R58、R59及びR60は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のヒドロカルビル基、フッ素化ヒドロカルビル基又は酸不安定基であり、R55、R58、R59及びR60が、ヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基のとき、炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。k1は、1~3の整数である。k2は、0≦k2≦5+2k3-k1を満たす整数である。k3は、0又は1である。mは、1~3の整数である。X1は、単結合、-C(=O)-O-又は-C(=O)-NH-である。X2は、炭素数1~20の(m+1)価の炭化水素基又は炭素数1~20の(m+1)価のフッ素化炭化水素基である。
【0120】
51及びR52で表される炭素数1~5のヒドロカルビル基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられるが、アルキル基が好ましい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。また、これらの基の炭素-炭素結合間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基が介在していてもよい。
【0121】
式(D1)中、-OR51は親水性基であることが好ましい。この場合、R51としては水素原子、炭素-炭素結合間に酸素原子が介在した炭素数1~5のアルキル基等が好ましい。
【0122】
繰り返し単位D1としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RCは、前記と同じである。
【化43】
【0123】
【化44】
【0124】
繰り返し単位D1において、X1は、-C(=O)-O-又は-C(=O)-NH-であることが好ましい。更に、RCがメチル基であることが好ましい。X1にカルボニル基が存在することにより、帯電防止膜由来の酸のトラップ能が向上する。また、RCがメチル基であると、よりガラス転移温度(Tg)が高い剛直なポリマーとなるため、酸の拡散が抑制される。これにより、レジスト膜の経時安定性が良好なものとなり、解像力やパターン形状も劣化することがない。
【0125】
式(D2)及び(D3)中、R53、R54、R56及びR37で表される炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等の環式飽和ヒドロカルビル基が挙げられる。これらのうち、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基が好ましい。
【0126】
式(D2)~(D5)中、R55、R58、R59及びR60で表される炭素数1~15のヒドロカルビル基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられるが、アルキル基が好ましい。前記アルキル基としては前述したもののほか、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。また、フッ素化ヒドロカルビル基としては、前述したヒドロカルビル基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0127】
2で表される炭素数1~20の(m+1)価の炭化水素基及び炭素数1~20の(m+1)価のフッ素化炭化水素基としては、それぞれ前述したヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基等から更に水素原子をm個除いた基が挙げられる
【0128】
繰り返し単位D2~D5の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RDは、前記と同じである。
【化45】
【0129】
【化46】
【0130】
【化47】
【0131】
繰り返し単位D1の含有量は、(D)フッ素含有ポリマーの全繰り返し単位中、5~85モル%が好ましく、15~80モル%がより好ましい。繰り返し単位D2~D5の含有量は、(D)フッ素含有ポリマーの全繰り返し単位中、15~95モル%が好ましく、20~85モル%がより好ましい。繰り返し単位D1~D5は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0132】
(D)フッ素含有ポリマーは、前述した繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を含んでもよい。このような繰り返し単位としては、特開2014-177407号公報の段落[0046]~[0078]に記載されているもの等が挙げられる。(D)フッ素含有ポリマーがその他の繰り返し単位を含む場合、その含有量は、全繰り返し単位中、50モル%以下が好ましい。
【0133】
(D)フッ素含有ポリマーは、公知の方法によって、必要に応じて保護基で保護した各モノマーを共重合させ、その後必要に応じて脱保護反応を行うことで合成することができる。共重合反応は特に限定されないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については、特開2004-115630号公報を参考にすることができる。
【0134】
(D)フッ素含有ポリマーのMwは、2000~50000であることが好ましく、3000~20000であることがより好ましい。Mwが2000未満であると、酸の拡散を助長し、解像性の劣化や経時安定性が損なわれることがある。Mwが大きすぎると、溶剤への溶解度が小さくなり、塗布欠陥を生じることがある。また、(D)フッ素含有ポリマーは、Mw/Mnが1.0~2.2であることが好ましく、1.0~1.7であることがより好ましい。
【0135】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物中、(D)フッ素含有ポリマーの含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~20質量部がより好ましい。(D)フッ素含有ポリマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0136】
[(E)有機溶剤]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、(E)成分として有機溶剤を含んでもよい。前記有機溶剤としては、各成分を溶解可能なものであれば特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載の、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル-2-n-ペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;及びこれらの混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるため、高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等を加えることもできる。
【0137】
これらの有機溶剤の中でも、1-エトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、及びこれらの混合溶剤が好ましい。
【0138】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物中、(E)有機溶剤の含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、200~10000質量部が好ましく、400~5000質量部がより好ましい。(E)有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0139】
[(F)塩基性化合物]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、パターンの形状補正等を目的に、(A)成分以外の酸拡散制御剤として(F)塩基性化合物を含んでもよい。塩基性化合物を添加することにより、酸拡散を効果的に制御することができ、かつ、基板として最表面がクロムを含む材料からなる基板を用いた場合でも、レジスト膜内に発生する酸によるクロムを含む材料への影響を抑えることができる。
【0140】
塩基性化合物としては、多数が知られており、第1級、第2級又は第3級脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が挙げられる。これらの具体例は、特許文献9に多数例示されているが、基本的にはこれらの全てを使用することができる。特に、好ましいものとしては、トリス[2-(メトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2-(メトキシメトキシ)エチル]アミン-N-オキシド、ジブチルアミノ安息香酸、モルホリン誘導体、イミダゾール誘導体等が挙げられる。
【0141】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物中、(F)塩基性化合物の含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、0~10質量部が好ましく、0~5質量部がより好ましい。(F)塩基性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0142】
[(G)界面活性剤]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、基板への塗布性を向上させるため、慣用されている界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤を用いる場合、特開2004-115630号公報にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物中、(G)界面活性剤の含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、0~5質量部が好ましい。(G)界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0143】
[レジストパターン形成方法]
本発明のレジストパターン形成方法は、前述した化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程(すなわち、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光する工程)、及びアルカリ現像液を用いて前記パターンを照射したレジスト膜を現像する工程を含む。
【0144】
前記基板としては、例えば、集積回路製造用の基板(Si、SiO、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi2、Si、SiO、SiO2、SiON、SiN、SiONC、CoTa、NiTa、TaBN、SnO2等)等を用いることができる。前記基板上に、スピンコーティング等の方法で膜厚が0.03~2μmとなるように前述したレジスト組成物を塗布し、これをホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0145】
次いで、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光し、パターンを照射する。前記高エネルギー線としては、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光(KrF、ArF等)、EUV、X線、γ線、シンクロトロン放射線、EB等が挙げられる。本発明においては、EUV又はEBを用いて露光することが好ましい。
【0146】
前記高エネルギー線として紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光、EUV、X線、γ線又はシンクロトロン放射線を用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~500mJ/cm2、より好ましくは10~400mJ/cm2となるように照射する。EBを用いる場合は、直接、露光量が好ましくは1~500μC/cm2、より好ましくは10~400μC/cm2となるように照射する。
【0147】
露光は、通常の露光法のほか、場合によってはマスクとレジスト膜との間を液浸する液浸法を用いることも可能である。その場合には、水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0148】
次いで、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。
【0149】
その後、0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、好ましくは0.1~3分間、より好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することで、基板上に目的のパターンが形成される。
【0150】
なお、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、特に解像性が良好で、LER及びCDUに優れたパターンを形成することができるため、有用である。また、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、レジストパターンの密着性が取りやすいことから、パターン剥がれやパターン崩壊を起こしやすい材料を表面に持つ基板のパターン形成に特に有用である。このような基板として、金属クロムや酸素原子、窒素原子及び炭素原子から選ばれる1以上の軽元素を含むクロム化合物を最表面にスパッタリング成膜した基板、金属タンタルや酸素原子、窒素原子及び炭素原子から選ばれる1以上の軽元素を含むタンタル化合物を最表面にスパッタリング成膜した基板、SiOxを最表層に含む基板等が挙げられる。本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、特に、基板としてフォトマスクブランクを用いたパターン形成に有用である。
【0151】
本発明のレジストパターン形成方法であれば、最表面が、クロム、ケイ素、タンタル、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン及びスズから選ばれる少なくとも1つを含む材料等のレジストパターン形状に影響を与えやすい材料からなる基板(例えば、フォトマスクブランク)を用いた場合であっても、基板界面で効率的に本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物が酸拡散を制御することで、露光により高解像かつLER及びCDUに優れたパターンを形成することができる。
【0152】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、欠陥の発生を抑えることができるため、微小パターンを形成する場合でも、欠陥数の少ないパターン形成基板を作製することができる。
【0153】
さらに、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いてパターン形成をした場合、400nm以下の短波長で欠陥検査をすることができるため、微小欠陥を検知することが可能である。
【実施例0154】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、共重合組成比はモル比であり、Mwは、GPCによるポリスチレン換算測定値である。また、使用した装置は、以下のとおりである。
1H-NMR:日本電子(株)製、ECA-500
【0155】
[1]酸拡散制御剤の合成
[合成例1-1]トリフェニルスルホニウム3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノラート(Q-A)の合成
【化48】
【0156】
原料である3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノール50gに純水200gを加え、これに25質量%水酸化ナトリウム水溶液34.8gを加えて30分間攪拌した。攪拌後、塩化メチレン400g及び塩化合物であるトリフェニルスルホニウムクロリドの10質量%水溶液648.5gを加えて有機層を分取し、更に有機層を水洗浄し、減圧濃縮を行った。濃縮残渣にメチルイソブチルケトンを加えて再び減圧濃縮を行い、得られた残渣にヘキサンを加えて再結晶を行い、得られた結晶を回収した後、真空乾燥させることで、目的物であるトリフェニルスルホニウム3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノラート(Q-A)を得た(収量100.8g、収率94%)。化合物Q-Aの核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR/DMSO-d6)を図1に示す。
【0157】
[合成例1-2、1-3]化合物Q-B及びQ-Cの合成
原料及び塩化合物を変えた以外は、合成例1-1と同様の方法で下記化合物Q-B及びQ-Cを合成した。
【化49】
【0158】
[2]ポリマーの合成
[合成例2-1]ポリマーA1の合成
3Lのフラスコに、アセトキシスチレン407.5g、アセナフチレン42.5g、及び溶剤としてトルエンを1275g添加した。この反応容器を、窒素雰囲気下、-70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬(株)製V-65)を34.7g加え、55℃まで昇温後、40時間反応させた。この反応溶液に、攪拌しながらメタノール970g及び水180gの混合溶剤を滴下した。滴下終了後、30分間静置し、2層に分離させた。下層(ポリマー層)を減圧濃縮し、このポリマー層をメタノール0.45L及びTHF0.54Lの混合溶剤に再度溶解し、そこへトリエチルアミン160g及び水30gを加え、60℃で40時間脱保護反応を行った。この脱保護反応溶液を減圧濃縮し、濃縮液にメタノール548g及びアセトン112gを加えて溶液化した。そこへ攪拌しながらヘキサンを990g滴下した。滴下終了後、30分間静置し、2層に分離させた。下層(ポリマー層)にTHF300gを加え、そこへ攪拌しながらヘキサンを1030g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮した。得られたポリマー溶液を酢酸82gを用いて中和し、該溶液を濃縮した後、アセトン0.3Lに溶解し、更に水10Lに添加して沈澱させ、濾過、乾燥を行い、白色重合体280gを得た。得られた重合体を1H-NMR及びGPCで測定したところ、共重合組成比が、ヒドロキシスチレン:アセナフチレン=89.3:10.7、Mwが5000、及びMw/Mnが1.63のポリマーであった。
得られたポリマー100gに、(2-メチル-1-プロペニル)メチルエーテル50gを酸性条件下反応させて、中和、分液処理、晶出工程を経て、ポリマーA1を得た。収量は125gであった。
【0159】
[合成例2-2]ポリマーA-2~A-7及びポリマーP-1の合成
使用する原料化合物を変えた以外は、合成例2-1と同様の方法でポリマーA-2~A-7及びポリマーP-1を合成した。
【0160】
ポリマーA-1~A-6の構造を以下に示す。
【化50】
【0161】
比較例用のポリマーA-7の構造を以下に示す。
【化51】
【0162】
ポリマーP-1の構造を以下に示す。
【化52】
【0163】
[3]ポジ型レジスト組成物の調製
[実施例1-1~1-35、比較例1-1~1-12]
下記表1~3に示す組成で、各成分を有機溶剤に溶解し、得られた各溶液を0.02μmサイズのUPEフィルターで濾過することにより、化学増幅ポジ型レジスト組成物(R-1~R-35、CR-1~CR-12)を調製した。
【0164】
なお、表1~3中、有機溶剤は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EL(乳酸エチル)及びPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)である。
【0165】
表1~3中、比較例用の酸拡散制御剤Q-D及びQ-E、光酸発生剤PAG-A~PAG-C並びにフッ素含有ポリマーC-1及びC-2の構造は、以下のとおりである。
・Q-D、Q-E:
【化53】
【0166】
・PAG-A~PAG-C:
【化54】
【0167】
・C-1、C-2:
【化55】
【0168】
【表1】
【0169】
【表2】
【0170】
【表3】
【0171】
[4]欠陥評価
[実施例2-1~2-35、比較例2-1~2-9]
各化学増幅ポジ型レジスト組成物(R-1~R-35、CR-1~CR-9)を調製し、8時間スターラーを用いて攪拌した。その後、レジスト組成物が溶剤に溶解していることを目視によって検査した。
【0172】
調製したレジスト組成物(R-1~R-35、CR-1~CR-9)をACT-M(東京エレクトロン(株)製)を最表面がCr膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で、110℃で600秒間プリベークして膜厚80nmのレジスト膜を作製した。続いて、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製EBM-5000plus、加速電圧50kV)を用いて全面描画し、110℃で600秒間PEBを施し、2.38質量%TMAH水溶液で現像を行い、マスク欠陥検査装置(レーザーテック(株)製M9650)で現像残渣の評価を行った。結果を表4及び5に示す。
【0173】
【表4】
【0174】
【表5】
【0175】
式(A1)で表されるオニウム塩化合物を含む本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物(R-1~R-35)は、比較例のレジスト組成物(CR-1~CR-9)と比較して、いずれも良好な欠陥性能を示した。また、式(A1)で表されるオニウム塩化合物のうち、ハロゲン原子を有するQ-A及びQ-Bについては、添加量を35質量部まで増加しても欠陥数の増加が確認されなかったが、Q-C~Q-Eについては、添加量が増えるに従い、凝集体が形成され、欠陥数の増加や不溶化が確認された。
【0176】
[5]EBリソグラフィー評価
[実施例3-1~3-34、比較例3-1~3-10]
各化学増幅ポジ型レジスト組成物を、ACT-M(東京エレクトロン(株)製)を用いて152mm角の最表面がCr膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で、110℃で600秒間プリベークして膜厚80nmのレジスト膜を作製した。続いて、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製EBM-5000plus、加速電圧50kV)を用いて露光し、110℃で600秒間PEBを施し、2.38質量%TMAH水溶液で現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
【0177】
得られたレジストパターンを次のように評価した。作製したパターン付きマスクブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、200nmの1:1のラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm2)とし、200nmのLSを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)とした。SEMを用いて200nmLSパターン32本のエッジ各々について80点のエッジ検出を行い、そのばらつき(標準偏差、σ)の3倍値(3σ)を求め、LER(nm)とした。また、最適露光量で照射して得た200nmLSパターンについて、ブランク基板面内144箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をCDUとして求めた。この値が小さいほど、LSパターンのCDUが優れる。結果を表6及び7に示す。
【0178】
【表6】
【0179】
【表7】
【0180】
式(A1)で表されるオニウム塩化合物を含む本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、比較例のレジスト組成物と比較して、いずれも良好な解像性を示し、LER及びCDUも良好な値を示した。
【0181】
式(A1)で表されるオニウム塩化合物のうち、Q-A及びQ-Bのように少なくとも1つにフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を含む化合物を用いた場合、有機溶剤への溶解性が高いことから、多量に本化合物を添加しても凝集せず、実施例3-7、実施例3-24に示すように、極めて良好なLER及びCDUを達成した。
【0182】
ラクトン骨格を有するA-7ポリマーを含むレジスト組成物(CR-10)は、脂溶性の低下により、現像液耐性が低下したことで、パターン形状が劣化し、比較例3-8に示すように、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物と比較して、解像性、LER及びCDUが劣る結果となった。
【0183】
式(A1)で表されるオニウム塩化合物に対する光酸発生剤の含有比率が4以上となるレジスト組成物(CR-11)は、酸拡散を十分に抑えることができないため、比較例3-9に示すように、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物と比較して、解像性、LER及びCDUが劣る結果となった。
【0184】
光酸発生剤及び式(A1)で表されるオニウム塩化合物の添加量の総和が10質量部未満であるレジスト組成物(CR-12)は、露光部の酸の発生点を十分に得ることができず、また、酸拡散を十分に抑えることができないため、比較例3-10に示すように、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物と比較して、解像性、LER及びCDUが劣る結果となった。
【0185】
[6]消衰係数(k値)測定
[実施例4-1~4-9、比較例4-1~4-3]
シリコンウエハ上に表8に示す各化学増幅ポジ型レジスト組成物を膜厚100nmになるようにスピンコーティングし、評価基板を作製した。作製した基板を、VUV-VASE(J. A. Woollam社製)を用いて、400nm、355nm、330nm及び300nmの波長の光を照射した際の消衰係数(k値)を測定した。検査光の照射によるレジスト膜の感光を防ぐため、k値は0.01以下であることが好ましく、0.003以下であることがより好ましい。結果を表8に示す。
【0186】
【表8】
【0187】
式(A1)で表されるオニウム塩化合物は、いずれの波長においてもk値が0.01以下と良好な値を示し、400nm、355nm及び330nmの波長に対しては、k値が0.003以下と極めて良好な値を示した。一方、比較例では、いずれの波長に対しても、k値が0.01を超え、レジスト膜を感光させる値を示した。
【0188】
[7]帯電防止膜塗布時のEBリソグラフィー評価
[実施例5-1~5-9、比較例5-1~5-5]
表9に示す各化学増幅ポジ型レジスト組成物を、ACT-M(東京エレクトロン(株)製)を用いて152mm角の最表面がCr膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で、110℃で600秒間プリベークして膜厚80nmのレジスト膜を作製した。更に、導電性高分子組成物をレジスト膜上にスピンコーティングし、ホットプレート上で、70℃で600秒間プリベークして膜厚15nmの帯電防止膜を得た。続いて、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製EBM-5000plus、加速電圧50kV)を用いて露光し、110℃で600秒間PEBを施し、2.38質量%TMAH水溶液で現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
【0189】
得られたレジストパターンを次のように評価した。作製したパターン付きマスクブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、200nmの1:1のラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm2)とし、200nmのLSを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)とした。結果を表9に示す。
【0190】
【表9】
【0191】
式(A1)で表されるオニウム塩化合物のうちハロゲン原子を含むQ-A又はQ-Bを含む本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、帯電防止膜を塗布した場合でも極めて良好な解像性を示した。一方、Q-C又はQ-Dを含むレジスト組成物は良好な解像性を示し、Q-Eを含むレジスト組成物は悪い解像性を示した。これは、帯電防止膜中に存在する微弱な酸によって、未露光部でベースポリマー中の保護基をわずかに脱保護してしまうという望ましくない反応が起きた結果と考えられる。化合物Q-A~Q-Dは、塩基性が高く、酸をトラップしやすい構造を有するため、前述の望ましくない反応は起こりにくい。さらに、化合物Q-Aは、フッ素原子を含むことで、レジスト膜の上部に塗布された帯電防止膜との界面付近に局在することができるため、帯電防止膜中の微弱な酸を効果的にトラップし、極めて良好な解像性を得ることができた。また、化合物Q-Bは、ヨウ素原子を含むことで、レジスト膜中で凝集が起こらず、均一分散性が高いため、帯電防止膜中の微弱な酸を効果的にトラップし、極めて良好な解像性を得ることができた。
【0192】
以上説明したことから明らかなように、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いれば、解像性が極めて高く、LER及びCDUが良好であり、かつ欠陥が少ないパターンを形成することができる。また、短波長の光に対して感光しない特性を有するため、短波長光源を用いた欠陥検査により、より微小な欠陥を検出することができる。本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法は、半導体素子製造、特にフォトマスクブランクの加工におけるフォトリソグラフィーに有用である。
図1