(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001619
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】測定方法および測定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20221226BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20221226BHJP
H05H 1/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
H01L21/302 103
H01L21/66 H
H05H1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102450
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 敬
(72)【発明者】
【氏名】杉田 吉平
(72)【発明者】
【氏名】島津 悠平
【テーマコード(参考)】
2G084
4M106
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA04
2G084AA05
2G084AA07
2G084BB21
2G084CC04
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2G084HH31
2G084HH34
2G084HH42
2G084HH56
4M106AA01
4M106AA10
4M106AA11
4M106AA12
4M106CA21
4M106DH12
4M106DH40
4M106DH55
4M106DJ27
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB26
5F004BB28
5F004CA06
5F004CB02
5F004CB16
(57)【要約】
【課題】プラズマから検出される光の波長毎の発光強度の分布の変化を精度よく検出する。
【解決手段】測定方法は、工程a)、工程b)、工程c)、および工程d)を含む。工程a)では、受光素子を用いて、異なる露光時間毎に、プラズマ処理装置内で生成されたプラズマから検出される光の波長毎の発光強度を測定する。工程b)では、予め定められた波長範囲を構成する複数の異なる個別波長範囲のそれぞれについて、個別波長範囲に含まれる予め定められた波長の発光強度が予め定められた範囲内の発光強度となる露光時間で測定された個別波長範囲における発光強度の分布を特定する。工程c)では、特定された発光強度の分布から、個別波長範囲の発光強度の分布を選択する。工程d)では、個別波長範囲毎に選択された発光強度の分布を出力する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 受光素子を用いて、異なる露光時間毎に、プラズマ処理装置内で生成されたプラズマから検出される光の波長毎の発光強度を測定する工程と、
b) 予め定められた波長範囲を構成する複数の異なる個別波長範囲のそれぞれについて、前記個別波長範囲に含まれる予め定められた波長の発光強度が予め定められた範囲内の発光強度となる露光時間で測定された前記個別波長範囲における発光強度の分布を特定する工程と、
c) 特定された発光強度の分布から、前記個別波長範囲の発光強度の分布を選択する工程と、
d) 前記個別波長範囲毎に選択された発光強度の分布を出力する工程と
を含む測定方法。
【請求項2】
前記工程d)では、
前記個別波長範囲毎に選択された発光強度の2つ以上の分布が合成されて出力される請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記工程a)からd)は、この順番で複数回繰り返し実行される請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項4】
e) 前記個別波長範囲毎に選択された発光強度の分布が、予め定められた分布に変化した場合に、通知を出力する工程
を含む請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
a) 受光素子を用いて、異なる露光時間毎に、プラズマ処理装置内で生成されたプラズマから検出される光の波長毎の発光強度を測定する工程と、
b) 波長毎に、露光時間に対する発光強度の変化率を算出する工程と、
c) 波長毎の前記変化率の大きさの分布を示す発光状態情報を出力する工程と
を含む測定方法。
【請求項6】
前記工程b)では、予め定められた発光強度の範囲内における、露光時間に対する発光強度の変化が直線または曲線で近似され、前記直線または曲線の変化率を表す係数が前記変化率として算出される請求項5に記載の測定方法。
【請求項7】
前記工程a)からc)は、この順番で複数回繰り返し実行される請求項5または6に記載の測定方法。
【請求項8】
d) 前記発光状態情報における波長毎の前記変化率の大きさの分布が、予め定められた分布に変化した場合に、通知を出力する工程
を含む請求項5から7のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項9】
前記工程a)では、100nm以上かつ1000nm以下の範囲内の波長について、受光素子を用いて異なる露光時間毎に、波長毎の発光強度が測定される請求項1から8のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項10】
前記工程a)では、1msec以上かつ1000msec以下の範囲内の露光時間において、受光素子を用いて異なる露光時間毎に、波長毎の発光強度が測定される請求項1から9のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項11】
プラズマ処理装置内で生成されたプラズマから検出される光を受光した受光素子から、異なる露光時間毎に測定された波長毎の発光強度を取得する取得部と、
予め定められた波長範囲を構成する複数の異なる個別波長範囲のそれぞれについて、前記個別波長範囲に含まれる予め定められた波長の発光強度が予め定められた範囲内の発光強度となる露光時間で測定された前記個別波長範囲における発光強度の分布を特定する特定部と、
特定された発光強度の分布から、前記個別波長範囲の発光強度の分布を選択する選択部と、
前記個別波長範囲毎に選択された発光強度の分布を出力する出力部と
を備える測定装置。
【請求項12】
プラズマ処理装置内で生成されたプラズマから検出される光を受光した受光素子から、異なる露光時間毎に測定された波長毎の発光強度を取得する取得部と、
波長毎に、露光時間に対する発光強度の変化率を算出する算出部と、
波長毎の前記変化率の大きさの分布を示す発光状態情報を出力する出力部と
を備える測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、測定方法および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1には、プラズマの発光強度の測定を安定して行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマから検出される光の波長毎の発光強度の分布の変化を精度よく検出することができる測定方法および測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、測定方法であって、工程a)、工程b)、工程c)、および工程d)を含む。工程a)では、受光素子を用いて、異なる露光時間毎に、プラズマ処理装置内で生成されたプラズマから検出される光の波長毎の発光強度を測定する。工程b)では、予め定められた波長範囲を構成する複数の異なる個別波長範囲のそれぞれについて、個別波長範囲に含まれる予め定められた波長の発光強度が予め定められた範囲内の発光強度となる露光時間で測定された個別波長範囲における発光強度の分布を特定する。工程c)では、特定された発光強度の分布から、個別波長範囲の発光強度の分布を選択する。工程d)では、個別波長範囲毎に選択された発光強度の分布を出力する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、プラズマから検出される光の波長毎の発光強度の分布の変化を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態における処理システムの一例を示すシステム構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理システムの一例を示すシステム構成図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態における受光装置の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1の実施形態における測定装置の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1の実施形態における測定方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、受光装置から出力された発光強度の分布の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、受光装置から出力された発光強度の分布の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、受光装置から出力された発光強度の分布の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、個別波長範囲毎に特定された発光強度の分布の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の第2の実施形態における測定装置の一例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、発光強度が大きい光における露光時間と発光強度の関係の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、発光強度が小さい光における露光時間と発光強度の関係の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の第2の実施形態における測定方法の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、測定装置を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、測定方法および測定装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示される測定方法および測定装置が限定されるものではない。
【0009】
ところで、プラズマを用いた半導体製造プロセスにおいて、プラズマから検出される光にはプラズマに含まれる物質に起因する様々な波長の光が含まれる。それぞれの波長の発光強度は、プラズマに含まれる物質の量に依存するため、それぞれの波長の発光強度を監視することにより、プラズマ処理の進行の度合いを推定することができる。例えば、エッチングの対象となる膜のエッチングにおいて、エッチングの対象となる膜の下層の膜(以下、下層膜と記載する)の物質に対応する波長の発光強度が増加した場合、エッチングの対象となる膜に形成された凹部の底部が下層膜に達したと推定することができる。
【0010】
しかし、近年、半導体製造プロセスの微細化に伴い、凹部の開口が小さくなる傾向にある。凹部の開口が小さくなると、エッチングの対象となる膜に形成された凹部の底部が下層膜に達したとしても、下層膜のエッチングにより放出される物質が少なくなる。そのため、エッチングの対象となる膜に形成された凹部の底部が下層膜に達した際の下層膜の物質に対応する波長の発光強度の変化量が小さくなる。そのため、発光強度の僅かな変化を精度よく監視する技術が求められている。
【0011】
そこで、本開示は、プラズマから検出される光の波長毎の発光強度の分布の変化を精度よく検出することができる技術を提供する。
【0012】
(第1の実施形態)
[処理システム1の構成]
図1は、本開示の一実施形態における処理システム1の一例を示すシステム構成図である。処理システム1は、プラズマ処理システム2、受光装置3、および測定装置4を備える。
【0013】
プラズマ処理システム2は、基板Wに対してプラズマを用いたエッチングを行う。また、プラズマ処理システム2は、プラズマから検出された光の波長毎の発光強度に関する情報を測定装置4から取得する。そして、波長毎の発光強度の分布が、例えば処理条件を変更するタイミングにおける発光強度の分布である予め定められた分布に変化した場合に、エッチングの終了またはエッチング条件の変更等の処理を行う。なお、プラズマ処理システム2によって行われる処理は、プラズマを用いた処理であれば、成膜、改質、またはクリーニング等の処理であってもよい。
【0014】
受光装置3は、プラズマ処理システム2によって行われるプラズマ処理において生成されるプラズマから検出される光を受光する。そして、受光装置3は、測定装置4から指示された露光時間で、プラズマから検出される光の波長毎の発光強度を測定する。そして、受光装置3は、波長毎の発光強度の情報を測定装置4へ出力する。
【0015】
測定装置4は、プラズマ処理システム2によってプラズマを用いた処理が実行されている間、異なる露光時間毎に、プラズマから検出される光の波長毎の発光強度を、受光装置3に測定させる。そして、受光装置3によって測定された露光時間毎の発光強度の分布の情報を加工し、加工された発光強度の分布の情報をプラズマ処理システム2へ出力する。
【0016】
[プラズマ処理システム2の構成]
以下に、プラズマ処理システム2の構成例について説明する。
図2は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理システム2の一例を示すシステム構成図である。プラズマ処理システム2は、容量結合型のプラズマ処理装置20および制御部21を含む。プラズマ処理装置20は、プラズマ処理チャンバ210、ガス供給部220、電源230、および排気システム240を含む。また、プラズマ処理装置20は、基板支持部211およびガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ210内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド213を含む。基板支持部211は、プラズマ処理チャンバ210内に配置されている。シャワーヘッド213は、基板支持部211の上方に配置されている。一実施形態において、シャワーヘッド213は、プラズマ処理チャンバ210の天部(Ceiling)の少なくとも一部を構成する。
【0017】
プラズマ処理チャンバ210は、シャワーヘッド213、プラズマ処理チャンバ210の側壁210a、および基板支持部211により規定されたプラズマ処理空間210sを有する。プラズマ処理チャンバ210は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間210sに供給するための少なくとも1つのガス供給口213aと、プラズマ処理空間210sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口210eとを有する。側壁210aは接地されている。側壁210aには、例えば石英等の光を透過する材料により形成された窓210bが設けられている。窓210bには、レンズ等の光学部材を有する集光部30が設けられている。集光部30は、プラズマ処理空間210s内で生成されたプラズマが発する光を窓210bを介して集光し、集光された光を例えば光ファイバ等の導光部31に導く。導光部31は、受光装置3に接続されており、集光部30によって集光された光を受光装置3に導く。シャワーヘッド213および基板支持部211は、プラズマ処理チャンバ210の筐体とは電気的に絶縁されている。
【0018】
基板支持部211は、本体部2111およびリングアセンブリ2112を含む。本体部2111は、基板Wを支持するための中央領域である基板支持面2111aと、リングアセンブリ2112を支持するための環状領域であるリング支持面2111bとを有する。基板Wはウエハと呼ばれることもある。本体部2111のリング支持面2111bは、平面視で本体部2111の基板支持面2111aを囲んでいる。基板Wは、本体部2111の基板支持面2111a上に配置され、リングアセンブリ2112は、本体部2111の基板支持面2111a上の基板Wを囲むように本体部2111のリング支持面2111b上に配置されている。
【0019】
一実施形態において、本体部2111は、静電チャックおよび基台を含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置されている。静電チャックの上面は、基板支持面2111aである。
【0020】
リングアセンブリ2112は、1または複数の環状部材を含む。1または複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部211は、静電チャック、リングアセンブリ2112、および基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部211は、基板Wと基板支持面2111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0021】
シャワーヘッド213は、ガス供給部220からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間210s内に導入するように構成される。シャワーヘッド213は、少なくとも1つのガス供給口213a、少なくとも1つのガス拡散室213b、および複数のガス導入口213cを有する。ガス供給口213aに供給された処理ガスは、ガス拡散室213bを通過して複数のガス導入口213cからプラズマ処理空間210s内に導入される。また、シャワーヘッド213は、導電性部材を含む。シャワーヘッド213の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド213に加えて、側壁210aに形成された1または複数の開口部に取り付けられる1または複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0022】
ガス供給部220は、少なくとも1つのガスソース221および少なくとも1つの流量制御器222を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部220は、少なくとも1つの処理ガスを、対応するガスソース221から対応する流量制御器222を介してシャワーヘッド213に供給するように構成されている。流量制御器222は、例えばマスフローコントローラまたは圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部220は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調またはパルス化する1またはそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0023】
電源230は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF(Radio Frequency)電源231を含む。RF電源231は、ソースRF信号およびバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号を、基板支持部211の導電性部材、シャワーヘッド213の導電性部材、またはその両方に供給するように構成されている。これにより、プラズマ処理空間210sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源231は、プラズマ処理チャンバ210において1またはそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部211の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0024】
一実施形態において、RF電源231は、第1のRF生成部231aおよび第2のRF生成部231bを含む。第1のRF生成部231aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部211の導電性部材、シャワーヘッド213の導電性部材、またはその両方に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号を生成するように構成される。ソースRF信号は、ソースRF電力と呼んでもよい。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数の信号を有する。一実施形態において、第1のRF生成部231aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1または複数のソースRF信号は、基板支持部211の導電性部材、シャワーヘッド213の導電性部材、またはその両方に供給される。
【0025】
第2のRF生成部231bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部211の導電性部材に結合され、バイアスRF信号を生成するように構成される。バイアスRF信号は、バイアスRF電力と呼んでもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数の信号を有する。一実施形態において、第2のRF生成部231bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1または複数のバイアスRF信号は、基板支持部211の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号およびバイアスRF信号のうち少なくとも1つはパルス化されてもよい。
【0026】
また、電源230は、プラズマ処理チャンバ210に結合されるDC(Direct Current)電源232を含んでもよい。DC電源232は、第1のDC生成部232aおよび第2のDC生成部232bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部232aは、基板支持部211の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、基板支持部211の導電性部材に印加される。他の実施形態において、第1のDC信号は、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部232bは、シャワーヘッド213の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド213の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1および第2のDC信号のうち少なくとも1つはパルス化されてもよい。なお、第1のDC生成部232aおよび第2のDC生成部232bは、RF電源231に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部232aが第2のRF生成部231bに代えて設けられてもよい。
【0027】
排気システム240は、例えばプラズマ処理チャンバ210の底部に設けられたガス排出口210eに接続され得る。排気システム240は、圧力調整弁および真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間210s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0028】
制御部21は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置20に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部21は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置20の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部21の一部または全部がプラズマ処理装置20に含まれてもよい。制御部21は、例えばコンピュータ21aを含んでもよい。コンピュータ21aは、例えば、処理部21a1、記憶部21a2、および通信インターフェイス21a3を含んでもよい。処理部21a1は、記憶部21a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。処理部21a1は、CPU(Central Processing Unit)を含んでもよい。記憶部21a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェイス21a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置20との間で通信を行う。
【0029】
[受光装置3の構成]
図3は、本開示の一実施形態における受光装置3の一例を示す図である。受光装置3は、導光部31、回折格子32、受光素子33、および制御部34を有する。導光部31は、例えば光ファイバであり、集光部30によって集光された光を受光装置3内に導き、回折格子32に照射する。
【0030】
回折格子32は、導光部31によって導かれた光を波長毎に分離して受光素子33に照射する。受光素子33は、制御部34から指示された露光時間で、回折格子32から照射された波長毎の光の発光強度を測定し、測定値を制御部34へ出力する。本実施形態において、受光素子33は、例えば、100nm以上かつ1000nm以下の範囲内の波長について、回折格子32から照射された波長毎の発光強度を測定する。制御部34は、測定装置4から指示された露光時間を受光素子33へ指示する。そして、受光素子33から出力された波長毎の発光強度の測定値を測定装置4へ出力する。
【0031】
[測定装置4の構成]
図4は、本開示の第1の実施形態における測定装置4の一例を示すブロック図である。取得部40、特定部41、選択部42、出力部43、およびDB(Data Base)44を有する。
【0032】
取得部40は、異なる露光時間を受光装置3に指示する。本実施形態において、露光時間は、例えば、1msec以上かつ1000msec以下の範囲内において選択される。本実施形態において、取得部40は、10msec、20msec、および60msecの露光時間を、それぞれ受光装置3に指示する。そして、取得部40は、それぞれの露光時間において、波長毎の発光強度のデータを受光装置3から取得する。そして、取得部40は、取得した波長毎の発光強度のデータを、露光時間に対応付けてDB44に保存する。
【0033】
特定部41は、DB44を参照し、予め定められた波長範囲を構成する複数の個別波長範囲のそれぞれについて、個別波長範囲に含まれる予め定められた波長の発光強度が予め定められた範囲内の発光強度となる露光時間で測定された発光強度の分布を特定する。本実施形態において、予め定められた波長範囲は、例えば100nm以上かつ1000nm以下の波長範囲である。また、本実施形態において、予め定められた波長範囲は、3つの個別波長範囲R1~R3に分けられている。
【0034】
選択部42は、特定部41によって特定された発光強度の分布から、個別波長範囲の発光強度の分布を選択する。出力部43は、選択部42によって個別波長範囲毎に選択された発光強度の分布をプラズマ処理システム2へ出力する。
【0035】
[測定方法]
図5は、本開示の第1の実施形態における測定方法の一例を示すフローチャートである。
図5のフローチャートに例示される各処理は、測定装置4によって実行される。以下では、
図6~
図9を参照しながら説明を行う。
【0036】
まず、取得部40は変数mの値を1に初期化し、特定部41は変数nの値を1に初期化する(S100)。そして、取得部40は、m番目の露光時間を受光装置3に指示する。そして、取得部40は、m番目の露光時間で測定された波長毎の発光強度の分布を受光装置3から取得する(S101)。ステップS101は、工程a)の一例である。そして、取得部40は、m番目の露光時間で測定された波長毎の発光強度の分布のデータを、露光時間に対応付けてDB44に保存する(S102)。
【0037】
次に、取得部40は、変数mの値を1増やし(S103)、変数mの値が最大値mmaxを超えたか否かを判定する(S104)。本実施形態において、最大値mmaxは、例えば3である。変数mの値が最大値mmaxを超えていない場合(S104:No)、再びステップS101に示された処理が実行される。
【0038】
ここで、本実施形態において、1番目の露光時間は例えば10msecであり、2番目の露光時間は例えば20msecであり、3番目の露光時間は例えば60msecである。10msecの露光時間では、例えば
図6に示されるような波長毎の発光強度の分布が測定される。20msecの露光時間では、例えば
図7に示されるような波長毎の発光強度の分布が測定される。60msecの露光時間では、例えば
図8に示されるような波長毎の発光強度の分布が測定される。
【0039】
図6~
図8において、R1~R3は、個別波長範囲である。本実施形態において、個別波長範囲とは、例えば、処理条件の変更のタイミングにおいて発光強度の特徴的な変化を示す特定の波長を少なくとも1つ含む波長範囲である。個別波長範囲R1には波長λ1が含まれ、個別波長範囲R2には波長λ2が含まれ、個別波長範囲R3には波長λ3が含まれている。即ち、n番目の個別波長範囲Rnには波長λnが含まれる。波長λ1~λ3は、プラズマ処理システム2よって実行されるプラズマ処理の進行に応じて発光強度が変化する波長である。波長λ1~λ3の発光強度の変化を監視することにより、プラズマ処理の進行の度合いを推定することができる。なお、本実施形態において、それぞれの個別波長範囲には、プラズマ処理システム2によって実行されるプラズマ処理の進行に応じて発光強度が変化する波長が1つ含まれる。しかし、開示の技術はこれに限られず、それぞれの個別波長範囲には、プラズマ処理システム2によって実行されるプラズマ処理の進行に応じて発光強度が変化する波長が2つ以上含まれていてもよい。
【0040】
図6~
図8の例において、波長λ1の発光強度は波長λ2の発光強度よりも高く、波長λ3の発光強度は波長λ1の発光強度よりも高きい。
図6~
図8から明らかなように、露光時間が長いほど、発光強度の測定値が大きい。そのため、プラズマから検出される光に含まれる波長の中で、発光強度が高い波長の光は、露光時間が長くなると、受光素子33による測定値が大きくなり過ぎる場合がある。露光時間が20msecになると、例えば
図7に示されるように、波長λ3の発光強度が発光強度の測定範囲を超えてしまう。さらに、露光時間が60msecになると、例えば
図8に示されるように、波長λ1の発光強度も発光強度の測定範囲を超えてしまう。
【0041】
一方、露光時間が10msecである
図6の発光強度の分布では、波長λ2の発光強度が小さく、波長λ2の発光強度がノイズに埋もれている。そのため、例えば
図6の発光強度分布では、波長λ2の発光強度の僅かな変化を検出することが難しい。なお、露光時間が20msecになると、例えば
図7に示されるように、波長λ2の発光強度が増加するが、まだノイズの影響が大きい。しかし、露光時間が60msecになると、例えば
図8に示されるように、ノイズの影響が小さくなり、波長λ2の発光強度の僅かな変化を検出することが可能となる。
【0042】
図5に戻って説明を続ける。変数mの値が最大値m
maxを超えた場合(S104:Yes)、特定部41は、DB44を参照する。そして、特定部41は、n番目の個別波長範囲Rnに含まれる波長λnの発光強度のピークが予め定められた発光強度の範囲ΔIに含まれる露光時間で測定された発光強度の分布を特定する(S105)。予め定められた発光強度の範囲ΔIは、例えば、発光強度の測定値が飽和せず、かつ、ノイズに埋もれない範囲である。ステップS105は、工程b)の一例である。本実施形態において、予め定められた発光強度の範囲ΔIは、例えば測定値の範囲の30%から80%の範囲である。
図6~
図8の例では、測定値の範囲が0~65000であるため、測定値の範囲の30%である19500に対応する下限値I
Lから測定値の範囲の80%である52000に対応する上限値I
Uまでが範囲ΔIとなる。
【0043】
例えば1番目の個別波長範囲R1に含まれる波長λ1の発光強度のピークが範囲ΔIに含まれる発光強度の分布は、
図7に例示された分布である。そのため、特定部41は、1番目の個別波長範囲R1に含まれる波長λ1については、露光時間が20msecである
図7に例示された発光強度の分布を特定する。
【0044】
同様に、例えば2番目の個別波長範囲R2に含まれる波長λ2の発光強度のピークが範囲ΔIに含まれる発光強度の分布は、
図8に例示された分布である。そのため、特定部41は、2番目の個別波長範囲R2に含まれる波長λ2については、露光時間が60msecである
図8に例示された発光強度の分布を特定する。
【0045】
同様に、例えば3番目の個別波長範囲R3に含まれる波長λ3の発光強度のピークが範囲ΔIに含まれる発光強度の分布は、
図6に例示された分布である。そのため、特定部41は、3番目の個別波長範囲R3に含まれる波長λ3については、露光時間が10msecである
図6の発光強度の分布を特定する。
【0046】
次に、選択部42は、ステップS105で特定された発光強度の分布から、n番目の個別波長範囲Rnの発光強度の分布を選択する(S106)。ステップS106は、工程c)の一例である。そして、選択部42は、選択された発光強度の分布のデータを、n番目の個別波長範囲Rnの情報に対応付けてDB44に保存する(S107)。例えば1番目の個別波長範囲R1に含まれる波長λ1について、
図7に例示された発光強度の分布が特定された場合、選択部42は、
図7に例示された発光強度の分布から個別波長範囲R1の発光強度の分布を選択する。
【0047】
次に、特定部41は、変数nの値を1増やし(S108)、変数nの値が最大値nmaxを超えたか否かを判定する(S109)。本実施形態において、最大値nmaxは、例えば3である。変数nの値が最大値nmaxを超えていない場合(S109:No)、再びステップS105に示された処理が実行される。
【0048】
一方、変数nの値が最大値n
maxを超えた場合(S109:Yes)、出力部43は、DB44を参照し、個別波長範囲毎に選択部42によって選択された発光強度の分布のデータをプラズマ処理システム2へ出力する(S110)。ステップS110は、工程d)の一例である。出力部43は、個別波長範囲毎の発光強度の分布のデータを合成し、例えば
図9に示されるような発光強度の分布を示す1つのデータとしてプラズマ処理システム2へ出力してもよい。
【0049】
次に、取得部40は、プラズマ処理システム2によって実行されているプラズマ処理が終了したか否かを判定する(S111)。プラズマ処理が終了していない場合(S111:No)、再びステップS100に示された処理が実行される。一方、プラズマ処理が終了した場合(S111:Yes)、本フローチャートに示された測定方法が終了する。
【0050】
以上、第1の実施形態について説明した。上記したように、本実施形態における測定方法は、工程a)、工程b)、工程c)、および工程d)を含む。工程a)では、受光素子33を用いて、異なる露光時間毎に、プラズマ処理装置20内で生成されたプラズマから検出される光の波長毎の発光強度を測定する。工程b)では、予め定められた波長範囲を構成する複数の個別波長範囲のそれぞれについて、個別波長範囲に含まれる予め定められた波長の発光強度が予め定められた範囲内の発光強度となる露光時間で測定された発光強度の分布を特定する。工程c)では、特定された発光強度の分布から、個別波長範囲の発光強度の分布を選択する。工程d)では、個別波長範囲毎に選択された発光強度の分布を出力する。これにより、プラズマから検出される光の波長毎の発光強度の分布の変化を精度よく検出することができる。
【0051】
また、上記した実施形態において、工程d)では、個別波長範囲毎に選択された発光強度の分布が合成されて出力されてもよい。これにより、複数の個別波長範囲全体における発光強度の分布に基づいて、発光強度の分布の変化を精度よく検出することができる。
【0052】
また、上記した実施形態において、工程a)からd)は、この順番で複数回繰り返し実行される。これにより、発光強度の変化に追従して、プラズマから検出される光の波長毎の発光強度の分布の変化を精度よく検出することができる。
【0053】
また、上記した実施形態において、工程a)では、100nm以上かつ1000nm以下の範囲内の波長について、受光素子33を用いて異なる露光時間毎に、波長毎の発光強度が測定される。これにより、プラズマ処理の進行の度合いに関連する物質から放射される光の波長を網羅することができる。
【0054】
また、上記した実施形態において、工程a)では、1msec以上かつ1000msec以下の範囲内の露光時間において、受光素子を用いて異なる露光時間毎に、波長毎の発光強度が測定される。これにより、予め定められた波長の発光強度が予め定められた範囲内の発光強度となる露光時間で測定された発光強度の分布を特定することができる。
【0055】
また、上記した実施形態における測定装置4は、取得部40と、特定部41と、選択部42と、出力部43とを備える。取得部40は、プラズマ処理装置20内で生成されたプラズマから検出される光を受光した受光素子33から、異なる露光時間毎に測定された波長毎の発光強度を取得する。特定部41は、予め定められた波長範囲を構成する複数の個別波長範囲のそれぞれについて、個別波長範囲に含まれる予め定められた波長の発光強度が予め定められた範囲内の発光強度となる露光時間で測定された発光強度の分布を特定する。選択部42は、特定された発光強度の分布から、個別波長範囲の発光強度の分布を選択する。出力部43は、個別波長範囲毎に選択された発光強度の分布を出力する。これにより、プラズマから検出される光の波長毎の発光強度の分布の変化を精度よく検出することができる。
【0056】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、個別波長範囲毎に、個別波長範囲に含まれる予め定められた波長の発光強度が範囲ΔI内の発光強度となる露光時間で測定された発光強度の分布が選択された。これに対し、本実施形態では、波長毎に露光時間に対する発光強度の変化率が算出され、算出された波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の大きさの分布を示す発光状態情報が出力される。このような発光状態情報を参照することにより、波長毎の発光強度の変化を精度よく検出することができる。以下では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0057】
[測定装置4の構成]
図10は、本開示の第2の実施形態における測定装置4の一例を示すブロック図である。本実施形態における測定装置4は、取得部40、DB44、算出部45、および出力部46を備える。なお、以下に説明する点を除き、
図10において、
図4と同じ符号を付した構成は、
図4における構成と同一または同様の機能を有するため説明を省略する。
【0058】
算出部45は、DB44に保存された露光時間毎の発光強度の分布を参照し、波長毎に、露光時間に対する発光強度の変化率を算出する。ここで、例えば
図11および
図12に示されるように、発光強度は、露光時間に依存して変化する。また、露光時間が短い場合には、発光強度の測定値がノイズに埋もれるため、発光強度の測定値がノイズレベルI
NOISEとなる。また、露光時間が長い場合には、発光強度の測定値が測定値の上限値I
LIMITに達する。
【0059】
また、露光時間に対する発光強度の変化率は、発光強度の大きさに依存する。例えば、発光強度が大きい波長については、例えば
図11に示されるように、露光時間に対する発光強度の変化率が大きい。
図11の例では、ノイズレベルI
NOISEと上限値I
LIMITの間における発光強度の変化は、直線L
1で近似される。
【0060】
一方、発光強度が小さい波長については、例えば
図12に示されるように、露光時間に対する発光強度の変化率が、
図11に例示された露光時間に対する発光強度の変化率よりも小さい。
図12の例では、ノイズレベルI
NOISEと上限値I
LIMITの間における発光強度の変化は、直線L
2で近似される。
【0061】
算出部45は、例えば、予め定められた発光強度の範囲内における発光強度の変化を直線で近似し、直線の変化率を表す係数を露光時間に対する発光強度の変化率として算出する。直線の変化率は、例えば直線を表す数式を露光時間について微分した係数を用いることができる。予め定められた発光強度の範囲とは、例えばノイズレベルI
NOISEと上限値I
LIMITの間の発光強度の測定値の範囲である。
図11に例示された直線L
1および
図12に例示された直線L
2は、例えば下記の(1)式で近似される。
【数1】
上記した(1)式において、tは露光時間を示し、Iは発光強度の測定値を示し、aおよびbは係数を示す。
【0062】
算出部45は、例えば、波長毎に、上記した(1)式における係数aを、露光時間に対する発光強度の変化率として算出する。そして、算出部45は、算出された変化率を、波長の情報に対応付けてDB44に保存する。
【0063】
なお、算出部45は、予め定められた発光強度の範囲内における発光強度の変化を曲線で近似し、曲線の変化率を表す係数を露光時間に対する発光強度の変化率として算出してもよい。例えば、算出部45は、
図11および
図12において、ノイズレベルI
NOISEと上限値I
LIMITの間における発光強度の変化を、例えば下記の(2)式に示されるような曲線で近似してもよい。
【数2】
上記した(2)式において、tは露光時間を示し、Iは発光強度の測定値を示し、AおよびBは係数を示す。係数AおよびBは、上記した(2)式で表される曲線の、露光時間に対する発光強度の変化率を表す係数の一例である。
【0064】
そして、算出部45は、例えば、波長毎に、上記した(2)式における係数AまたはB、あるいは、(2)式を露光時間について微分した係数を、露光時間に対する発光強度の変化率として算出してもよい。
【0065】
出力部46は、DB44に保存された波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の情報を参照し、波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の大きさの分布を示す発光状態情報を作成する。そして、出力部46は、作成された発光状態情報を、プラズマ処理システム2へ出力する。
図13は、発光状態情報の一例を示す図である。発光状態情報では、波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の大きさが示されており、露光時間に対する発光強度の変化率の大きさは、発光強度の大きさに依存する。そのため、発光状態情報を参照することにより、波長毎の発光強度の大きさの変化を監視することができる。
【0066】
[測定方法]
図14は、本開示の第2の実施形態における測定方法の一例を示すフローチャートである。
図14のフローチャートに例示される各処理は、測定装置4によって実行される。なお、以下に説明する点を除き、
図14において、
図5と同じ符号を付した処理は、
図5において説明された処理と同様であるため説明を省略する。
【0067】
ステップS100において、取得部40は変数mの値を1に初期化し、算出部45は変数kの値を1に初期化する(S100)。
【0068】
変数mの値が最大値mmaxを超えた場合(S104:Yes)、算出部45は、DB44に保存されている露光時間毎の発光強度の分布を参照し、k番目の波長について、露光時間に対する発光強度の変化率を算出する(S200)。ステップS205は、工程b)の一例である。そして、算出部45は、算出された変化率のデータを、k番目の波長の情報に対応付けてDB44に保存する(S201)。
【0069】
次に、算出部45は、変数kの値を1増やし(S202)、変数kの値が最大値kmaxを超えたか否かを判定する(S203)。本実施形態において、最大値kmaxは、例えば1,000~1,000,000である。変数kの値が最大値kmaxを超えていない場合(S203:No)、再びステップS200に示された処理が実行される。
【0070】
一方、変数kの値が最大値kmaxを超えた場合(S203:Yes)、出力部46は、DB44に保存された波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の情報を参照し、波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の大きさの分布を示す発光状態情報を作成する(S204)。そして、出力部46は、作成された発光状態情報のデータをプラズマ処理システム2へ出力する(S205)。ステップS205は、工程c)の一例である。そして、ステップS111に示された処理が実行される。
【0071】
以上、第2の実施形態について説明した。上記したように、本実施形態における測定方法は、工程a)、工程b)、および工程c)を含む。工程a)では、受光素子33を用いて、異なる露光時間毎に、プラズマ処理装置20内で生成されたプラズマから検出される光の波長毎の発光強度を測定する。工程b)では、波長毎に、露光時間に対する発光強度の変化率を算出する。工程c)では、波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の大きさの分布を示す発光状態情報を出力する。これにより、プラズマから検出される光の波長毎の発光強度の分布の変化を精度よく検出することができる。
【0072】
また、上記した実施形態において、工程b)では、予め定められた発光強度の範囲内における発光強度の変化が直線または曲線で近似され、直線または曲線の変化率を表す係数が露光時間に対する発光強度の変化率として算出される。これにより、プラズマから検出される光の波長毎の発光強度の分布の変化を精度よく検出することができる。
【0073】
また、上記した実施形態において、工程a)からc)は、この順番で複数回繰り返し実行される。これにより、発光強度の変化に追従して、プラズマから検出される光の波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率を精度よく検出することができる。
【0074】
また、上記した実施形態における測定装置4は、取得部40と、算出部45と、出力部46とを備える。取得部40は、プラズマ処理装置20内で生成されたプラズマから検出される光を受光した受光素子33から、異なる露光時間毎に測定された波長毎の発光強度を取得する。算出部45は、波長毎に、露光時間に対する発光強度の変化率を算出する。出力部46は、波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の大きさの分布を示す発光状態情報を出力する。これにより、プラズマから検出される光の波長毎の発光強度の分布の変化を精度よく検出することができる。
【0075】
[ハードウェア]
測定装置4は、例えば
図13に示すような構成のコンピュータ90により実現される。
図15は、測定装置4を実現するコンピュータ90の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ90は、CPU91、RAM92、ROM93、補助記憶装置94、通信I/F(インターフェイス)95、入出力I/F96、およびメディアI/F97を備える。
【0076】
CPU91は、ROM93または補助記憶装置94に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM93は、コンピュータ90の起動時にCPU91によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ90のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0077】
補助記憶装置94は、例えばHDDまたはSSD等であり、CPU91によって実行されるプログラムおよび当該プログラムによって使用されるデータ等を格納する。CPU91は、当該プログラムを、補助記憶装置94から読み出してRAM92上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。
【0078】
通信I/F95は、LAN等の通信回線を介してプラズマ処理システム2および受光装置3との間で通信を行う。通信I/F95は、通信回線を介してプラズマ処理システム2または受光装置3からデータを受信してCPU91へ送り、CPU91が生成したデータを、通信回線を介してプラズマ処理システム2または受光装置3へ送信する。
【0079】
CPU91は、入出力I/F96を介して、キーボード等の入力装置およびディスプレイ等の出力装置を制御する。CPU91は、入出力I/F96を介して、入力装置から入力された信号を取得してCPU91へ送る。また、CPU91は、生成したデータを、入出力I/F96を介して出力装置へ出力する。
【0080】
メディアI/F97は、記録媒体98に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、補助記憶装置94に格納する。記録媒体98は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0081】
コンピュータ90が第1の実施形態における測定装置4として機能する場合、コンピュータ90のCPU91は、RAM92上にロードされたプログラムを実行することにより、取得部40、特定部41、選択部42、および出力部43の各機能を実現する。発光強度等のデータは、RAM92またはROM93に格納される。
【0082】
また、コンピュータ90が第2の実施形態における測定装置4として機能する場合、コンピュータ90のCPU91は、RAM92上にロードされたプログラムを実行することにより、取得部40、算出部45、および出力部46の各機能を実現する。発光強度のデータおよび露光時間に対する発光強度の変化率等のデータは、RAM92またはROM93に格納される。
【0083】
コンピュータ90のCPU91は、RAM92上にロードされるプログラムを、記録媒体98から読み取って補助記憶装置94に格納するが、他の例として、他の装置から、通信回線を介してプログラムを取得して補助記憶装置94に格納してもよい。あるいは、コンピュータ90のCPU91は、他の装置から、通信回線を介してプログラムを取得し、取得したプログラムをRAM92上にロードして実行してもよい。
【0084】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0085】
例えば、上記した第1の実施形態では、プラズマ処理システム2の制御部21は、測定装置4から出力された波長毎の発光強度の分布に基づいて、波長毎の発光強度の分布が予め定められた分布に変化したか否かを監視する。そして、制御部21は、波長毎の発光強度の分布が予め定められた分布に変化した場合に、エッチングの終了またはエッチング条件の変更等の処理を行う。しかし、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、測定装置4内に、波長毎の発光強度の分布が予め定められた分布に変化したか否かを監視する機能が設けられていてもよい。この場合、プラズマ処理システム2は、波長毎の発光強度の分布が予め定められた分布に変化したことが測定装置4から通知された場合に、エッチングの終了またはエッチング条件の変更等の処理を行う。
【0086】
また、上記した第2の実施形態では、プラズマ処理システム2の制御部21は、測定装置4から出力された波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の大きさの分布に基づいて、波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の大きさの分布が予め定められた分布に変化したか否かを監視する。そして、制御部21は、波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の大きさの分布が予め定められた分布に変化した場合に、エッチングの終了またはエッチング条件の変更等の処理を行う。しかし、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、測定装置4内に、波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の大きさの分布が予め定められた分布に変化したか否かを監視する機能が設けられていてもよい。この場合、プラズマ処理システム2は、波長毎の露光時間に対する発光強度の変化率の大きさの分布が予め定められた分布に変化したことが測定装置4から通知された場合に、エッチングの終了またはエッチング条件の変更等の処理を行う。
【0087】
また、上記した各実施形態では、受光装置3と測定装置4とが別な装置として説明されたが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、受光装置3と測定装置4とは1つの装置として実現されてもよい。
【0088】
また、上記した実施形態では、プラズマ源の一例として、容量結合型プラズマ(CCP)を用いて処理を行う処理システム1を説明したが、プラズマ源はこれに限られない。容量結合型プラズマ以外のプラズマ源としては、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)、マイクロ波励起表面波プラズマ(SWP)、電子サイクロトン共鳴プラズマ(ECP)、およびヘリコン波励起プラズマ(HWP)等が挙げられる。
【0089】
本願に開示された測定方法又は測定装置は、プラズマ処理装置に組み込むことにより、例えば、プラズマ処理反応の終点検出に用いることができる。より具体的には、プラズマ処理装置がエッチング装置である場合に、本願に開示された測定方法又は測定装置は、エッチング反応の終点検出に用いることができる。
【0090】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
W 基板
1 処理システム
2 プラズマ処理システム
20 プラズマ処理装置
21 制御部
21a コンピュータ
210 プラズマ処理チャンバ
210a 側壁
210b 窓
3 受光装置
30 集光部
31 導光部
32 回折格子
33 受光素子
34 制御部
4 測定装置
90 コンピュータ