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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016204
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20230126BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20230126BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230126BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230126BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230126BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
H01L21/318 B
G01N21/3563
H01L21/318 A
H01L21/302 103
H01L21/31 C
H01L21/66 N
C23C16/44 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120366
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 友志
【テーマコード(参考)】
2G059
4K030
4M106
5F004
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB10
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE09
2G059EE12
2G059GG04
2G059HH01
2G059MM01
4K030HA13
4M106AA01
4M106AA10
4M106BA08
4M106CA21
4M106CA22
4M106DH13
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB28
5F004CB02
5F004DA17
5F004DB07
5F004EB04
5F045AA08
5F045AA15
5F045AA20
5F045AB33
5F045BB02
5F045BB19
5F045DP03
5F045EF05
5F045EH05
5F045EK06
5F045EM05
5F045GB08
5F045GB11
5F058BA06
5F058BC08
5F058BF07
5F058BF74
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】基板処理による基板の状態を検出すること。
【解決手段】第1の測定工程は、干渉信号が基板での吸光による変化よりも低下する第1の入射角で基板に対してP偏光の赤外光を照射し、基板を透過した透過光又は反射した反射光を測定する。基板処理工程は、第1の測定工程の後、基板に対して基板処理を行う。第2の測定工程は、基板処理工程の後、干渉信号が基板での吸光による変化よりも低下する第2の入射角で基板に対してP偏光の赤外光を照射し、基板を透過した透過光又は反射した反射光を測定する。抽出工程は、第1の測定工程により測定した透過光又は反射した反射光のスペクトルと第2の測定工程により測定した透過光又は反射した反射光のスペクトルとの差分スペクトルを抽出する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を含むパターンが形成された基板に対して第1の入射角でP偏光の赤外光を照射し、前記基板を透過した透過光又は反射した反射光を測定する第1の測定工程と、
前記第1の測定工程の後、前記基板に対して基板処理を行う基板処理工程と、
前記基板処理工程の後、前記基板処理された前記基板に対して第2の入射角でP偏光の赤外光を照射し、前記基板を透過した透過光又は反射した反射光を測定する第2の測定工程と、
前記第1の測定工程により測定した透過光又は反射光の波数毎の赤外光の吸光度を示すスペクトルと前記第2の測定工程により測定した透過光又は反射光の波数毎の赤外光の吸光度を示すスペクトルとの差分スペクトルを抽出する抽出工程と、
を有し、
前記第1の入射角及び前記第2の入射角は、照射されたP偏光の赤外光が前記基板を透過した透過光又は反射した反射光のスペクトルにおいて、干渉信号が前記基板での吸光による変化よりも低下する入射角である、
基板処理方法。
【請求項2】
前記基板に応じた前記第1の入射角及び前記第2の入射角を特定する特定工程をさらに有し、
前記第1の測定工程は、前記基板に対して、前記特定工程により特定した前記第1の入射角でP偏光の赤外光を照射し、前記基板の透過光又は反射光を測定し、
前記第2の測定工程は、前記基板処理工程の後、前記基板に対して、前記特定工程により特定した前記第2の入射角でP偏光の赤外光を照射し、前記基板の透過光又は反射光を測定する
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板に対して複数の入射角でP偏光の赤外光を照射し、前記複数の入射角でそれぞれ前記基板の透過光又は反射光を測定する調整測定工程をさらに有し、
前記特定工程は、前記調整測定工程により前記複数の入射角でそれぞれ測定された透過光又は反射光のスペクトルに基づいて、前記第1の入射角及び前記第2の入射角を特定する
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記特定工程は、前記調整測定工程により前記複数の入射角でそれぞれ測定された透過光又は反射光のスペクトルから、干渉信号が最も小さくなる入射角を求め、求めた入射角を基準とした所定角度範囲から前記第1の入射角及び前記第2の入射角を特定する
請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記特定工程は、前記基板に形成された前記パターン部分と当該パターン部分の下層の屈折率から演算によりブリュースター角を算出し、算出したブリュースター角を基準とした所定角度範囲から前記第1の入射角及び前記第2の入射角を特定する
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記特定工程は、前記第1の入射角及び前記第2の入射角を同じ角度として特定する
請求項2~5の何れか1つに記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記調整測定工程は、前記基板処理前の前記基板、及び前記基板処理後の前記基板に対して複数の入射角からP偏光の赤外光を照射し、前記複数の入射角で前記基板の透過光又は反射光を測定し、
前記特定工程は、前記基板処理前の前記基板及び前記基板処理後の前記基板に対して前記複数の入射角でそれぞれ測定された透過光又は反射光のスペクトルから、前記基板処理前の前記基板と前記基板処理後の前記基板についてそれぞれ干渉信号が最も小さくなる入射角を求め、前記基板処理前の前記基板で干渉信号が最も小さくなる入射角と前記基板処理後の前記基板で干渉信号が最も小さくなる入射角から前記第1の入射角及び前記第2の入射角を特定する
請求項3又は4に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記特定工程は、前記基板処理前の前記基板で干渉信号が最も小さくなる入射角を基準とした所定角度範囲から前記第1の入射角を特定し、前記基板処理後の前記基板で干渉信号が最も小さくなる入射角を基準とした所定角度範囲から前記第2の入射角を特定する
請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記特定工程は、前記基板処理前の前記基板で干渉信号が最も小さくなる入射角と前記基板処理後の前記基板で干渉信号が最も小さくなる入射角の中間の角度を基準とした所定角度範囲から前記第1の入射角と前記第2の入射角を同じ角度として特定する
請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1の入射角及び前記第2の入射角は、照射されたP偏光の赤外光の前記基板に対するブリュースター角を基準とした所定角度範囲内の入射角である
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記第1の入射角及び前記第2の入射角は、同じ入射角とする
請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記基板は、前記パターンの前記凹部の深さが700nm以上とされた
請求項1~11の何れか1つに記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記抽出工程は、前記第2の測定工程により測定した透過光又は反射光のスペクトルから前記第1の測定工程により測定した透過光又は反射光のスペクトルを減算して、波数毎の赤外光の吸光度を示す差分スペクトルを抽出する
請求項1~12の何れか1つに記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記抽出工程により抽出された差分スペクトルに基づき、前記基板処理工程により基板処理された前記基板の状態を表示する表示工程
請求項1~13の何れか1つに記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記抽出工程により抽出された差分スペクトルに基づき、前記基板処理工程のプロセスパラメータを制御する制御工程
請求項1~14の何れか1つに記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記制御工程は、複数の基板の前記差分スペクトルから基板間の差分スペクトルの比較に基づいて前記基板処理工程のプロセスパラメータを制御する
請求項15に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記第1の測定工程及び前記第2の測定工程は、前記基板の面内の複数個所でそれぞれ実施し、
前記制御工程は、前記複数個所のそれぞれで、前記第1の測定工程により測定した透過光又は反射光のスペクトルと前記第2の測定工程により測定した透過光又は反射光のスペクトルとの差分スペクトルを抽出し、抽出した前記複数個所の差分スペクトルに基づいてプロセスパラメータを制御する
請求項15に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記基板処理工程は、前記基板に成膜する工程であり、
前記制御工程は、前記複数個所の差分スペクトルから前記基板に成膜された膜の膜厚の分布と膜質を求め、膜厚の分布を均一化しつつ所定の膜質となるようにプロセスパラメータを制御する
請求項17に記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記基板処理工程は、前記基板をエッチングする工程であり、
前記制御工程は、前記複数個所の差分スペクトルからエッチングされた膜の体積の分布と組成を求め、エッチング量の分布を均一化しつつ所定の膜がエッチングされるようにプロセスパラメータを制御する
請求項17に記載の基板処理方法。
【請求項20】
前記基板処理工程は、定期的に同じ処理条件で基板に基板処理を行い、
同じ処理条件で基板処理された複数の基板の前記差分スペクトルから基板間の差分スペクトルの比較に基づいて前記基板処理工程を実施する装置のコンディションを診断する診断工程
をさらに有する請求項1~19の何れか1つに記載の基板処理方法。
【請求項21】
凹部を含むパターンが形成された基板を載置する載置台と、
前記基板に基板処理を行う基板処理部と、
前記基板に対してP偏光の赤外光を照射して赤外分光法により測定を行う測定部と、
前記測定部により、基板処理前の前記基板に対して第1の入射角でP偏光の赤外光を照射して前記基板を透過した透過光又は反射した反射光を測定し、前記基板処理部により前記基板に基板処理を行い、前記測定部により、基板処理後の前記基板に対して第2の入射角でP偏光の赤外光を照射して前記基板を透過した透過光又は反射した反射光を測定し、測定した基板処理前の前記基板の透過光又は反射光の波数毎の赤外光の吸光度を示すスペクトルと基板処理後の前記基板の透過光又は反射光の波数毎の赤外光の吸光度を示すスペクトルとの差分スペクトルを抽出する制御を行う制御部と、
を有し、
前記第1の入射角及び前記第2の入射角は、照射されたP偏光の赤外光が前記基板を透過した透過光又は反射した反射光のスペクトルにおいて、干渉信号が前記基板での吸光による変化よりも低下する入射角である、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、成膜用基板とモニタ用基板とを載置して成膜を行い、モニタ用基板に形成された薄膜を赤外分光法により分析し、分析値に基づいて成膜用基板に形成する膜の膜質を適正化する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-56010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理による基板の状態を検出する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理方法は、第1の測定工程と、基板処理工程と、第2の測定工程と、抽出工程とを有する。第1の測定工程は、凹部を含むパターンが形成された基板に対して第1の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板を透過した透過光又は反射した反射光を測定する。基板処理工程は、第1の測定工程の後、基板に対して基板処理を行う。第2の測定工程は、基板処理工程の後、基板処理された基板に対して第2の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板を透過した透過光又は反射した反射光を測定する。抽出工程は、第1の測定工程により測定した透過光又は反射光の波数毎の赤外光の吸光度を示すスペクトルと第2の測定工程により測定した透過光又は反射光の波数毎の赤外光の吸光度を示すスペクトルとの差分スペクトルを抽出する。第1の入射角及び第2の入射角は、照射されたP偏光の赤外光が基板を透過した透過光又は反射した反射光のスペクトルにおいて、干渉信号が基板での吸光による変化よりも低下する入射角である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板処理による基板の状態を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る成膜装置の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、実施形態に係る成膜装置において基板を載置台から上昇させた状態を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る成膜装置の他の一例を示す概略構成図である。
図4図4は、実施形態に係るプラズマによる成膜を説明する図である。
図5図5は、実施形態に係る膜を成膜した基板の一例を示す図である。
図6図6は、従来のFT-IR分析を説明する図である。
図7A図7Aは、干渉信号の発生原因を説明する図である。
図7B図7Bは、干渉信号の発生原因を説明する図である。
図8図8は、分析結果の一例を示す図である。
図9図9は、基板に対する赤外光の入射角と赤外光の偏光の制御を説明する図である。
図10図10は、実施形態に係る基板を概略的に示した図である。
図11図11は、基板に対する赤外光の入射角と透過率の変化の一例を説明する図である。
図12図12は、実施形態に係る特定方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図13図13は、実施形態に係る基板処理方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図14図14は、実施形態に係る差分データを説明する図である。
図15A図15Aは、成膜した膜のスペクトルの一例を示す図である。
図15B図15Bは、干渉信号を抽出した結果の一例を示す図である。
図15C図15Cは、干渉強度の入射角依存性の一例を示す図である。
図16図16は、成膜した膜のスペクトルの一例を示す図である。
図17図17は、成膜した膜のスペクトルの一例を示す図である。
図18図18は、実施形態に係る成膜装置の他の一例を示す概略断面図である。
図19図19は、実施形態に係る成膜装置の他の一例を示す概略構成図である。
図20図20は、実施形態に係る基板処理工程の一例を示す図である。
図21図21は、スペクトルの一例を示す図である。
図22図22は、差分スペクトルの一例を示す図である。
図23図23は、実施形態に係る基板処理工程の一例を示す図である。
図24図24は、差分スペクトルの一例を示す図である。
図25図25は、実施形態に係る基板処理工程の一例を示す図である。
図26図26は、差分スペクトルの一例を示す図である。
図27図27は、実施形態に係る基板処理工程の一例を示す図である。
図28図28は、差分スペクトルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本願の開示する基板処理方法及び基板処理装置の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、開示する基板処理方法及び基板処理装置が限定されるものではない。
【0009】
半導体デバイスの製造では、凹部を含むパターンが形成された半導体ウエハ等の基板に対して、成膜装置によって成膜が行われる。成膜装置は、所定の真空度にされたチャンバ(処理容器)内に基板を配置し、チャンバ内に成膜原料ガスを供給する共にプラズマを生成して、基板に対して成膜を行う。成膜技術として、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)、ALD(Atomic Layer Deposition)等が知られている。
【0010】
ところで、基板に形成されるパターンの微細化が進み、プラズマを用いた成膜では、パターンに含まれる凹部の側壁・底部の膜質が悪くなりやすい。基板に形成された膜が所望の組成、膜質であるかを分析するために、しばしば赤外分光法が用いられる。具体的には、半導体デバイスを製造する実際の基板とは別に、平坦なモニタ用基板に成膜を行い、モニタ用基板に形成した膜を赤外分光法により分析することで、実際の基板に成膜した膜の状態を類推する。
【0011】
しかし、実際の基板とモニタ用基板では、成膜される膜の状態が異なり、モニタ用基板に成膜した膜を赤外分光法で分析しても、実際の基板に成膜された膜の状態を求めることができない。また、赤外分光法では、試料内での赤外光の多重反射の影響により干渉信号が発生する場合があり、干渉信号の影響により基板に成膜した膜の状態が検出し難い。
【0012】
なお、凹部を含むパターンが形成された基板に成膜した膜などの基板(試料)の状態を赤外分光法により検出する場合を例に課題を説明した。しかし、このような課題は、凹部を含むパターンが形成された基板に対して成膜やエッチング、改質などの各種の基板処理を行い、基板処理による試料の状態を赤外分光法により検出する場合全般に発生するものである。
【0013】
そこで、基板処理による試料の状態を検出する技術が期待されている。
【0014】
[実施形態]
[成膜装置の構成]
次に、実施形態について説明する。最初に、本開示の基板処理装置の一例について説明する。以下では、本開示の基板処理装置を成膜装置100とし、成膜装置100により、基板処理として成膜を行う場合を主な例として説明する。図1は、実施形態に係る成膜装置100の概略構成の一例を示す概略断面図である。本実施形態では、成膜装置100が本開示の基板処理装置に対応する。成膜装置100は、1つの実施形態において、基板Wに対して成膜を行う装置である。図1に示す成膜装置100は、気密に構成され、電気的に接地電位とされたチャンバ1を有している。このチャンバ1は、円筒状とされ、例えば表面に陽極酸化被膜を形成されたアルミニウム、ニッケル等から構成されている。チャンバ1内には、載置台2が設けられている。
【0015】
載置台2は、例えばアルミニウム、ニッケル等の金属により形成されている。載置台2の上面には、半導体ウエハ等の基板Wが載置される。載置台2は、載置された基板Wを水平に支持する。載置台2の下面は、導電性材料により形成された支持部材4に電気的に接続されている。載置台2は、支持部材4によって支持されている。支持部材4は、チャンバ1の底面で支持されている。支持部材4の下端は、チャンバ1の底面に電気的に接続されており、チャンバ1を介して接地されている。支持部材4の下端は、載置台2とグランド電位との間のインピーダンスを下げるように調整された回路を介してチャンバ1の底面に電気的に接続されていてもよい。
【0016】
載置台2には、ヒータ5が内蔵されており、載置台2に載置される基板Wをヒータ5によって所定の温度に加熱することができる。載置台2は、冷媒を流通させるための流路(図示せず)が内部に形成され、チャンバ1の外部に設けられたチラーユニットによって温度制御された冷媒が流路内に循環供給されてもよい。ヒータ5による加熱と、チラーユニットから供給された冷媒による冷却とにより、載置台2は、基板Wを所定の温度に制御してもよい。なお、載置台2は、ヒータ5を搭載せず、チラーユニットから供給される冷媒のみで基板Wの温度制御を行ってもよい。
【0017】
なお、載置台2には、電極が埋め込まれていてもよい。この電極に供給された直流電圧によって発生した静電気力により、載置台2は、上面に載置された基板Wを吸着させることができる。
【0018】
載置台2は、基板Wを昇降するためのリフターピン6が設けられている。成膜装置100では、基板Wを搬送する場合や、基板Wに対して赤外分光法による分析を行う場合、載置台2からリフターピン6を突出させ、リフターピン6で基板Wを裏面から支持して基板Wを載置台2から上昇させる。図2は、実施形態に係る成膜装置100において基板Wを載置台2から上昇させた状態を示す図である。成膜装置100には、基板Wが搬送される。例えば、チャンバ1の側壁には、基板Wを搬入出するための不図示の搬入出口が設けられている。この搬入出口には、当該搬入出口を開閉するゲートバルブが設けられている。基板Wを搬入出する際、ゲートバルブは、開状態とされる。基板Wは、搬送室内の搬送機構(図示せず)により搬入出口からチャンバ1内に搬入される。成膜装置100は、チャンバ1外に設けられた昇降機構(図示せず)を制御してリフターピン6を上昇させて搬送機構から基板Wを受け取る。成膜装置100は、搬送機構の退出後、昇降機構を制御してリフターピン6を下降させて基板Wを載置台2に載置する。
【0019】
載置台2の上方であってチャンバ1の内側面には、略円盤状に形成されたシャワーヘッド16が設けられている。シャワーヘッド16は、セラミックス等の絶縁部材45を介して、載置台2の上部に支持されている。これにより、チャンバ1とシャワーヘッド16とは、電気的に絶縁されている。シャワーヘッド16は、例えばニッケル等の導電性の金属により形成されている。
【0020】
シャワーヘッド16は、天板部材16aと、シャワープレート16bとを有する。天板部材16aは、チャンバ1内を上側から塞ぐように設けられている。シャワープレート16bは、天板部材16aの下方に、載置台2に対向するように設けられている。天板部材16aには、ガス拡散空間16cが形成されている。天板部材16aとシャワープレート16bは、ガス拡散空間16cに向けて開口する多数のガス吐出孔16dが分散して形成されている。
【0021】
天板部材16aには、ガス拡散空間16cへ各種のガスを導入するためのガス導入口16eが形成されている。ガス導入口16eには、ガス供給路15aが接続されている。ガス供給路15aには、ガス供給部15が接続されている。
【0022】
ガス供給部15は、成膜に用いる各種のガスのガス供給源にそれぞれ接続されたガス供給ラインを有している。各ガス供給ラインは、成膜のプロセスに対応して適宜分岐し、開閉バルブなどのバルブや、マスフローコントローラなどの流量制御器など、ガスの流量を制御する制御機器が設けられている。ガス供給部15は、各ガス供給ラインに設けられた開閉バルブや流量制御器などの制御機器を制御することにより、各種のガスの流量の制御が可能とされている。
【0023】
ガス供給部15は、ガス供給路15aに成膜に用いる各種のガスを供給する。例えば、ガス供給部15は、成膜の原料ガスをガス供給路15aに供給する。また、ガス供給部15は、パージガスや原料ガスと反応する反応ガスをガス供給路15aに供給する。ガス供給路15aに供給されたガスは、ガス拡散空間16cで拡散されて各ガス吐出孔16dから吐出される。
【0024】
シャワープレート16bの下面と載置台2の上面とによって囲まれた空間は、成膜処理が行われる処理空間をなす。また、シャワープレート16bは、載置台2と対になり、処理空間に容量結合プラズマ(CCP)を形成するための電極板として構成されている。シャワーヘッド16には、整合器11を介して高周波電源10が接続されている。高周波電源10からシャワーヘッド16を介して処理空間40に供給されたガスに高周波電力(RF電力)が印加されると共にシャワーヘッド16からガスが供給されることで、処理空間にプラズマが形成される。なお、高周波電源10は、シャワーヘッド16に接続される代わりに載置台2に接続され、シャワーヘッド16が接地されるようにしてもよい。本実施形態では、シャワーヘッド16、ガス供給部15、高周波電源10などの成膜を実施する部分が本開示の基板処理部に対応する。本実施形態では、基板処理部により、基板Wに対して、基板処理として、成膜処理を行う。
【0025】
チャンバ1の底部には、排気口71が形成されている。排気口71には、排気管72を介して排気装置73が接続されている。排気装置73は、真空ポンプや圧力調整バルブを有する。排気装置73は、真空ポンプや圧力調整バルブを作動させることにより、チャンバ1内を所定の真空度まで減圧、調整できる。
【0026】
本実形態に係る成膜装置100は、チャンバ1内の基板Wに対して赤外分光法(IR:infrared spectroscopy)の分析を行い、基板Wに成膜した膜の状態の検出が可能とされている。赤外分光法には、基板Wに赤外光を照射し、基板Wを透過した光(透過光)を測定する手法(透過法)と、基板Wを反射した光(反射光)を測定する手法(反射法)がある。図1に示した成膜装置100は、基板Wを透過した透過光を測定する構成とした場合の例を示している。チャンバ1は、載置台2を介して相対する側壁に、窓80a、窓80bが設けられている。窓80aは、側壁の高い位置に設けられている。窓80bは、側壁の低い位置に設けられている。窓80a、窓80bは、例えば石英などの赤外光に対して透過性を有する部材がはめ込まれ、封止されている。窓80aの外側には、赤外光を照射する照射部81が設けられている。窓80bの外側には、赤外光を検出可能な検出部82が設けられている。
【0027】
赤外分光法の透過法での分析を行う場合、成膜装置100は、図2に示したように、載置台2からリフターピン6を突出させ、基板Wを載置台2から上昇させる。窓80a及び照射部81は、照射部81から照射された赤外光が窓80aを介して、上昇させた基板Wの上面に照射されるように位置が調整されている。また、窓80b及び検出部82は、上昇させた基板Wを透過した赤外光による透過光が窓80bを介して検出部82に入射するように位置が調整されている。
【0028】
照射部81は、照射した赤外光が窓80aを介して、上昇させた基板Wの中央付近の所定の領域に当たるように配置されている。例えば、照射部81は、基板Wの1~10mm程度の範囲の領域に赤外光を照射する。検出部82は、基板Wの所定の領域を透過した透過光が窓80bを介して入射するよう配置されている。
【0029】
本実形態に係る成膜装置100は、赤外分光法により、基板Wを透過した透過光の波数毎の吸光度を求めることで、基板Wに成膜した膜の状態を検出する。具体的には、成膜装置100は、フーリエ変換赤外分光法により、基板Wを透過した透過光の波数毎の吸光度を求めることで、基板Wに成膜した膜に含まれる物質を検出する。
【0030】
照射部81は、赤外光を発する光源や、ミラー、レンズ等の光学素子を内蔵し、干渉させた赤外光を照射可能とされている。例えば、照射部81は、光源で発生した赤外光が外部へ出射されるまでの光路の中間部分を、ハーフミラー等で2つの光路に分光し、一方の光路長を、他方の光路長に対して変動させて光路差を変えて干渉させて、光路差の異なる様々な干渉波の赤外光を照射する。なお、照射部81は、光源を複数設け、それぞれの光源の赤外光を光学素子で制御して、光路差の異なる様々な干渉波の赤外光を照射可能としてもよい。
【0031】
検出部82は、基板Wを透過した様々な干渉波の赤外光による透過光の信号強度を検出する。本実施形態では、照射部81、検出部82などの赤外分光法の測定を実施する部分が本開示の計測部に対応する。
【0032】
上記のように構成された成膜装置100は、制御部60によって、その動作が統括的に制御される。制御部60には、ユーザインターフェース61と、記憶部62とが接続されている。
【0033】
ユーザインターフェース61は、工程管理者が成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボード等の操作部や、成膜装置100の稼動状況を可視化して表示するディスプレイ等の表示部から構成されている。ユーザインターフェース61は、各種の動作を受け付ける。例えば、ユーザインターフェース61は、プラズマ処理の開始を指示する所定操作を受け付ける。
【0034】
記憶部62には、成膜装置100で実行される各種処理を制御部60の制御にて実現するためのプログラム(ソフトウエア)や、処理条件、プロセスパラメータ等のデータが格納されている。なお、プログラムやデータは、コンピュータで読み取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用してもよい。或いは、プログラムやデータは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0035】
制御部60は、例えば、プロセッサ、メモリ等を備えるコンピュータである。制御部60は、ユーザインターフェース61からの指示等に基づいてプログラムやデータを記憶部62から読み出して成膜装置100の各部を制御することで、後述する基板処理方法の処理を実行する。
【0036】
制御部60は、データの入出力を行う不図示のインタフェースを介して、照射部81及び検出部82と接続され、各種の情報を入出力する。制御部60は、照射部81及び検出部82を制御する。例えば、照射部81は、制御部60からの制御情報に基づいて、光路差の異なる様々な干渉波を照射する。また、制御部60は、検出部82により検出された赤外光の信号強度の情報が入力する。
【0037】
ここで、図1及び図2では、赤外分光法の透過法での分析が可能なように、成膜装置100を、基板Wを透過した透過光を測定する構成とした場合の例を説明した。しかし、成膜装置100は、赤外分光法の反射法での分析が可能なように構成してもよい。図3は、実施形態に係る成膜装置100の他の一例を示す概略構成図である。図3に示した成膜装置100は、基板Wを反射した反射光を測定する構成とした場合の例を示している。
【0038】
図3に示す成膜装置100では、チャンバ1の側壁の載置台2を介して対向した位置に、窓80a、窓80bが設けられている。窓80aの外側には、赤外光を照射する照射部81が設けられている。窓80bの外側には、赤外光を検出可能な検出部82が設けられている。窓80a及び照射部81は、照射部81から照射された赤外光が窓80aを介して基板Wに照射されるように位置が調整されている。また、窓80b及び検出部82は、基板Wで反射された赤外光が窓80bを介して検出部82に入射するように位置が調整されている。また、チャンバ1の窓80a、窓80bと異なる側壁には、基板Wを搬入出するための不図示の搬入出口が設けられている。この搬入出口には、当該搬入出口を開閉するゲートバルブが設けられている。
【0039】
照射部81は、照射した赤外光が窓80aを介して基板Wの中央付近の所定の領域に当たるように配置されている。例えば、照射部81は、基板Wの1~10mm程度の範囲の領域に赤外光を照射する。検出部82は、基板Wの所定の領域で反射された赤外光が窓80bを介して入射するよう配置されている。このように、図3に示す成膜装置100は、赤外分光法の反射法での分析が可能とされている。
【0040】
ところで、半導体デバイスは、微細化が進み、基板Wに形成されるパターンもナノスケールの複雑な形状を有する。プラズマを用いた成膜では、微細なパターンに含まれる凹部の側壁・底部の膜質が悪くなりやすい。図4は、実施形態に係るプラズマによる成膜を説明する図である。図4には、基板Wが示されている。基板Wには、ナノスケールの凹部90aを含むパターン90が形成されている。例えば、図4では、基板Wは、複数の凹部90aを含むパターン90としてトレンチ92が形成されている。プラズマを用いた成膜では、イオンやラジカルが凹部90aの側壁や底部に届きづらく、凹部90aの側壁・底部の膜質が悪くなりやすい。膜質改善するために、凹部90aの側壁・底部の膜の組成を分析する必要がある。図5は、実施形態に係る膜を成膜した基板Wの一例を示す図である。図5は、凹部90aを有するパターン90にプラズマALDにより膜91を成膜した状態を模式的に示している。例えば、図5では、基板Wに形成されたトレンチ92に膜91が成膜されている。
【0041】
成膜した膜を分析する技術としては、例えば、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR:Fourier transform Infrared spectroscopy)などの赤外分光法がある。
【0042】
図6は、従来のFT-IR分析を説明する図である。従来、FT-IR分析は、半導体デバイスを製造する実際の基板Wとは別に、平坦なモニタ用基板に成膜を行い、モニタ用基板に赤外光を照射し、モニタ用基板を透過した光を分析することで、実際の基板Wに成膜した膜の状態を類推する。図6には、モニタ用として平坦なシリコン基板95に、膜91と同様の成膜条件でプラズマALDにより、膜96を成膜した状態を模式的に示している。図6では、シリコン基板95に赤外光を照射し、シリコン基板95を透過した光を検出器で検出してFT-IR分析を行っている。FT-IR分析では、透過光の波数毎の赤外光の吸光度を示すスペクトルを求める。FT-IR分析では、スペクトルから化学結合の情報が得られる。また、FT-IR分析では、スペクトルから原子、分子の振動を観測でき、水素などの軽い原子を検出できる。例えば、膜96では、赤外光を吸収して分子が振動するため、FT-IR分析により、SiN、SiO、SiH、NHなどの化学結合を検出できる。
【0043】
しかし、半導体デバイスを製造する実際の基板Wとモニタ用のシリコン基板95では、成膜される膜の状態が異なり、シリコン基板95に成膜した膜96を赤外分光法で分析しても、基板Wに成膜した膜91の状態を求めることができない。
【0044】
そこで、実際の基板Wに対して、以下のような処理を実施して、基板Wに成膜した膜の状態を検出する手法が考えられる。例えば、成膜前の基板Wに対して赤外分光法により測定を実施する。また、成膜後の基板Wに対して赤外分光法により測定を実施する。成膜前の基板Wで測定した光のスペクトルと成膜後の基板Wで測定した光のスペクトルとの差分を示す差分スペクトルを抽出し、抽出された差分スペクトルから、基板Wに成膜した膜の状態を検出する。
【0045】
ところで、半導体デバイスの高集積化、微細化に伴い、基板Wに形成されるパターン90の高アスペクト比化が進み、パターン90の凹部90aが深くなっている。例えば、3D NANDの製造では、基板Wに形成されるトレンチやビアなどのパターン90の凹部90aが深くなっている。赤外分光法では、基板Wに形成されたパターン90の凹部90aの深さが、赤外光の波長に近くなると、パターン90内での赤外光の多重反射に起因した干渉信号の強度が顕著に大きくなる。この干渉信号の影響で基板Wに成膜した膜の状態が検出し難い。
【0046】
図7A及び図7Bは、干渉信号の発生原因を説明する図である。図7Aは、赤外分光法の透過法での分析を行う場合を示している。図7Bは、赤外分光法の反射法での分析を行う場合を示している。図7A及び図7Bでは、700nm以上の深さの凹部90aを含むパターン90が基板Wに形成されている。このような基板Wに赤外光を照射すると、パターン90(トレンチ92)内で赤外光の多重反射が発生する。基板Wを透過した透過光を検出して赤外分光法により分析した場合、分析結果には、パターン90(トレンチ92)での多重の反射による干渉信号が発生する。このような試料内内での多重の反射は、薄膜干渉と呼ばれる。図8は、分析結果の一例を示す図である。図8は、C-H結合、C=O結合を含んだ膜91を成膜した基板Wを赤外分光法により分析結果であり、基板Wを透過した赤外光(透過光)の波数毎の吸光度が示されている。図8の横軸は、赤外光の波数である。縦軸は、赤外光の吸光度である。図8には、波数ごとの吸光度を示すスペクトルの波形L1が示されている。波形L1は、薄膜干渉により、周期的な変化が発生している。図8には、薄膜干渉による周期的な変化の成分を破線により波形L2として示している。このような干渉信号は、基板Wに形成されたパターン90の凹部90aの深さが、赤外光の波長に近づくほど信号強度が大きくなる。具体的には、干渉信号は、パターン90の凹部90aの深さが700nm以上で顕著な大きさとなる。また、干渉信号は、凹部90aの深さが深くなるにつれて周期的な変化の周期が短くなる。波形L1は、基板Wに含まれる組成の成分に対応した波数の位置で吸光度が上昇する。例えば、波形L1は、C-H結合、C=O結合に応じた波数の位置で吸光度が変化している。しかし、波形L1は、干渉信号の周期的な変化の影響により、C-H結合、C=O結合による吸光度の変化が判別し難い状態となっている。例えば、どこをベースラインとするのかの判断が難しく、ベースラインの引き方に依存して定量結果が変わってしまう。
【0047】
基板Wのパターン90部分での赤外光の多重反射は、基板Wに対する赤外光の入射角と赤外光の偏光を制御することで低減できる。図9は、基板Wに対する赤外光の入射角と赤外光の偏光の制御を説明する図である。赤外光の光路には、P偏光の赤外光のみを透過する偏光子83が設けてられている。図9では、無偏光の赤外光を偏光子83に照射し、偏光子83を透過したP偏光の赤外光を基板Wに照射し、基板Wを透過した透過光を検出部82で検出する例を示している。基板Wには、パターン90が示されている。P偏光の赤外光は、基板Wに対する入射角θに応じてパターン90とその下地膜の界面で一部が反射する。図10は、実施形態に係る基板Wを概略的に示した図である。基板Wには、ナノスケールの凹部90aを含むパターン90が形成されている。例えば、図10では、基板Wは、複数の凹部90aを含むパターン90としてトレンチ92が形成されている。P偏光の赤外光は、基板Wに対する入射角θに応じてトレンチ92と、トレンチ92の下地膜93との界面で一部が反射する。P偏光の赤外光がパターン90とその下地膜の界面を透過する透過率は、基板Wに対する入射角θによって変化する。図11は、基板Wに対する赤外光の入射角と透過率の変化の一例を説明する図である。図11には、P偏光の赤外光とS偏光の赤外光の基板Wに対する入射角の変化に対する透過率の変化を示している。S偏光の赤外光は、入射角が大きくなるほど透過率が低下する。一方、P偏光の赤外光は、入射角が大きくなると一旦上昇して透過率が1(100%)となった後、透過率が低下する。この透過率が1となる入射角は、ブリュースター角と呼ばれる。ブリュースター角では、パターン90とその下地膜の界面をP偏光の赤外光が全て透過する。このブリュースター角は、膜91の成分等によって変化する。なお、基板Wでは、P偏光の赤外光がブリュースター角で入射した場合でも、例えば、パターン90の空気との界面や下地膜93と空気との界面など、パターン90と下地膜の界面以外でP偏光の赤外光が一部反射する。このため、基板Wに対してP偏光の赤外光をブリュースター角で入射させた場合であっても、赤外分光法の反射法による分析は、可能である。
【0048】
そこで、実施形態に係る成膜装置100では、照射部81の赤外光の光路に、P偏光の赤外光のみを透過する偏光子83を設けて、照射部81からP偏光の赤外光を照射するように構成する。
【0049】
また、実施形態に係る成膜装置100では、成膜前の基板Wに対して、第1の入射角でP偏光の赤外光を照射して赤外分光法により測定を実施する。また、成膜装置100では、成膜後の基板Wに対して、第2の入射角でP偏光の赤外光を照射して赤外分光法により測定を実施する。第1の入射角及び第2の入射角は、照射されたP偏光の赤外光が基板Wを透過又は反射した光のスペクトルにおいて、干渉信号が基板Wでの吸光による変化よりも低下する入射角とする。図1に示した実施形態に係る成膜装置100では、第1の入射角及び第2の入射角は、照射されたP偏光の赤外光が基板Wを透過した光のスペクトルにおいて、干渉信号が基板Wでの吸光による変化よりも低下する入射角とする。図3に示した実施形態に係る成膜装置100では、第1の入射角及び第2の入射角は、照射されたP偏光の赤外光が基板Wを反射した光のスペクトルにおいて、干渉信号が基板Wでの吸光による変化よりも低下する入射角とする。第1の入射角及び第2の入射角は、同じ角度であってもよく、異なる角度であってもよい。第1の入射角及び第2の入射角は、予め定められていてもよい。第1の入射角及び第2の入射角を具体的に特定する手法は、後述する。
【0050】
実施形態に係る成膜装置100は、基板Wの所定の領域に対して、照射部81から照射したP偏光の赤外光が第1の入射角及び第2の入射角で入射するように、照射部81の位置を調整して配置してもよい。例えば、図1に示した成膜装置100は、載置台2からリフターピン6を突出させて上昇させた基板Wの所定の領域に対して、照射部81から照射したP偏光の赤外光が第1の入射角及び第2の入射角で入射するように、照射部81の位置を調整して配置してもよい。また、成膜装置100は、基板Wの所定の領域を透過した透過光が窓80bを介して検出部82に入射するように、検出部82の位置を調整して配置してもよい。また、図3に示した成膜装置100は、載置台2に載置された基板Wの所定の領域に対して、照射部81から照射したP偏光の赤外光が第1の入射角及び第2の入射角で入射するように、照射部81の位置を調整して配置してもよい。また、成膜装置100は、基板Wの所定の領域を反射した反射光が窓80bを介して検出部82に入射するように、検出部82の位置を調整して配置してもよい。第1の入射角及び第2の入射角は、照射されたP偏光の赤外光の基板Wに対するブリュースター角を基準とした所定角度範囲内の入射角とする。干渉信号は、入射角に対して連続的に変化し、ブリュースター角から若干ずれていても、干渉信号の強度は小さくなる。所定角度範囲は、干渉信号の信号レベルが基板Wに含まれる物質による信号レベルと同等以下になるような角度範囲であればよい。例えば、所定角度範囲は、ブリュースター角から-40°~+10°の範囲であればよく、ブリュースター角から-30~+7.5°の範囲とすることが好ましく、ブリュースター角から-20°~+5°の範囲とすることがより好ましい。角度範囲について、マイナスの範囲は、入射角が小さくなり、基板Wに対して、より垂直方向から入射することを示す。また、プラスの範囲は、入射角が大きくなり、基板Wに対して、より水平方向から入射することを示す。第1の入射角及び第2の入射角は、同じ角度であってもよく、異なる角度であってもよい。例えば、第1の入射角及び第2の入射角は、照射されたP偏光の赤外光の基板Wに対するブリュースター角とする。
【0051】
また、実施形態に係る成膜装置100は、照射部81から基板Wに入射するP偏光の赤外光の入射角を変更可能に構成してもよい。例えば、図1及び図3では、不図示の駆動機構により、照射部81を上下方向に移動可能及び回転可能に構成して、照射部81から基板Wに入射するP偏光の赤外光の入射角を変更可能に構成している。制御部60は、照射部81の位置及び回転角度を変えて、基板Wに対するP偏光の赤外光の入射角を第1の入射角や第2の入射角に調整する。第1の入射角や第2の入射角は、成膜装置100で特定してもよく、ユーザインターフェース61から指定されてもよく、ネットワーク等を介して他の装置から指定されてもよい。
【0052】
第1の入射角及び第2の入射角を特定する手法について説明する。以下では、図1及び図3に示したように照射部81から基板Wに入射するP偏光の赤外光の入射角を変更可能に構成した成膜装置100を用いて第1の入射角及び第2の入射角を特定する場合を例に説明する。
【0053】
例えば、実施形態に係る成膜装置100は、実際の基板Wを用いて調整用の測定を実施する。調整用の測定では、凹部90aを含むパターン90が表面に形成された基板Wが載置台2に載置される。成膜装置100では、基板Wに対して複数の入射角でP偏光の赤外光を照射し、複数の入射角でそれぞれ基板Wの透過光又は反射した反射光を測定する。例えば、図1に示したように透過光を測定する場合、制御部60は、載置台2からリフターピン6を突出させ、リフターピン6で基板Wを裏面から支持して基板Wを載置台2から上昇させる。制御部60は、照射部81の位置及び回転角度を変えて、照射部81から基板Wに対して複数の入射角でP偏光の赤外光を照射し、複数の入射角でそれぞれ基板Wの透過光を検出部82で検出する。なお、図3に示したように反射光を測定する場合、リフターピン6で基板Wを上昇させなくてもよい。
【0054】
制御部60は、検出部82で検出されたデータから、複数の入射角について、各入射角での透過光又は反射光の波数毎の赤外光の吸光度を示すスペクトルを求める。各入射角のスペクトルには、薄膜干渉による干渉信号が含まれる。干渉信号は、入射角によって変化する。制御部60は、複数の入射角でそれぞれ測定された透過光又は反射光のスペクトルから、干渉信号が最も小さくなる入射角を求める。例えば、各入射角のスペクトルは、基板Wに含まれる各物質に応じて、物質に対応した波数の信号レベルが変化する。このため、基板Wに含まれる物質によって、信号レベルの変化が小さい波数範囲が定まる。例えば、基板Wに含まれる物質において、信号レベルに変化が生じない波数範囲を、信号レベルの変化が小さい波数範囲と定める。基板Wに含まれる物質による信号レベルの変化が小さい波数範囲について、各入射角のスペクトルの周期的な強度変化の振幅が変化している場合、その振幅の変化は、干渉信号によるものであると推測される。制御部60は、各入射角のスペクトルについて、基板Wに含まれる物質による信号レベルの変化が小さい波数範囲の信号レベルを比較し、干渉信号が最も小さくなる入射角を求める。例えば、制御部60は、各入射角のスペクトルから、信号レベルの変化が小さい波数範囲内での周期的な強度変化の振幅をそれぞれ求め、振幅が最も小さくなる入射角を求める。そして、制御部60は、実際に基板Wに照射した複数の入射角の中から、干渉信号が最も小さくなる入射角を求める。なお、制御部60は、実際に基板Wに照射した複数の入射角での信号レベルのピークから、入射角と信号レベルのピークとの関係を回帰分析等で分析して信号レベルのピークが最も小さくなる入射角を求めてもよい。例えば、制御部60は、回帰分析して得られた入射角と信号レベルのピークとの関係から入射角を信号レベルのピークが最も小さくなる入射角と求めてもよい。すなわち、制御部60は、実際に基板Wに照射した複数の入射角以外の入射角を信号レベルのピークが最も小さくなる入射角と求めてもよい。
【0055】
制御部60は、干渉信号が最も小さくなる入射角から第1の入射角及び第2の入射角を特定する。例えば、制御部60は、第1の入射角及び第2の入射角を干渉信号が最も小さくなる入射角と特定する。成膜装置100は、第1の入射角及び第2の入射角を干渉信号が最も小さくなる入射角とすることで、第1の入射角及び第2の入射角でそれぞれ測定された透過光又は反射光のスペクトルに含まれる干渉信号を小さくすることができる。
【0056】
ここで、第1の入射角及び第2の入射角が、干渉信号が最も小さくなる入射角から若干ずれていても、干渉信号を十分に小さくすることができる。
【0057】
そこで、制御部60は、干渉信号が最も小さくなる入射角を基準とした所定角度範囲から第1の入射角及び第2の入射角を特定してもよい。所定角度範囲は、干渉信号の信号レベルが基板Wに含まれる物質による信号レベルと同等以下になるような角度範囲であればよい。例えば、所定角度範囲は、干渉信号が最も小さくなる入射角から-40°~+10°の範囲であればよく、干渉信号が最も小さくなる入射角から-30~+7.5°の範囲とすることが好ましく、干渉信号が最も小さくなる入射角から-20°~+5°の範囲とすることがより好ましい。例えば、制御部60は、干渉信号が最も小さくなる入射角から-40°~+10°の範囲から第1の入射角及び第2の入射角を特定する。第1の入射角及び第2の入射角は、同じ角度であってもよく、異なる角度であってもよい。
【0058】
また、実施形態に係る成膜装置100は、膜を成膜する成膜前の基板W、及び膜を成膜した成膜後の基板Wに対して、それぞれ調整用の測定を実施してもよい。成膜後の基板Wは、成膜装置100で成膜を実施した基板であってもよく、他の成膜装置で成膜を実施した基板であってもよい。
【0059】
この場合、調整用の測定では、成膜前の基板Wが載置台2に載置される。成膜装置100では、成膜前の基板Wに対して複数の入射角でP偏光の赤外光を照射し、複数の入射角でそれぞれ基板Wの透過光又は反射光を測定する。制御部60は、成膜前の基板Wの透過光のスペクトルから干渉信号が最も小さくなる入射角を求める。また、調整用の測定では、成膜後の基板Wが載置台2に載置される。成膜装置100では、成膜後の基板Wに対して複数の入射角でP偏光の赤外光を照射し、複数の入射角でそれぞれ基板Wの透過光を測定する。制御部60は、成膜後の基板Wの透過光又は反射光のスペクトルから干渉信号が最も小さくなる入射角を求める。制御部60は、成膜前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角と成膜後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角から第1の入射角及び第2の入射角を特定する。
【0060】
例えば、制御部60は、成膜前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角を基準とした所定角度範囲から第1の入射角を特定してもよい。所定角度範囲は、干渉信号の信号レベルが基板Wに含まれる物質による信号レベルと同等以下になるような角度範囲であればよい。例えば、所定角度範囲は、成膜前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角から-40°~+10°の範囲であればよく、干渉信号が最も小さくなる入射角から-30~+7.5°の範囲とすることが好ましく、干渉信号が最も小さくなる入射角から-20°~+5°の範囲とすることがより好ましい。例えば、制御部60は、成膜前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角から-40°~+10°の範囲から第1の入射角を特定する。また、制御部60は、成膜後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角を基準とした所定角度範囲から第2の入射角を特定してもよい。所定角度範囲は、干渉信号の信号レベルが基板Wに含まれる物質による信号レベルと同等以下になるような角度範囲であればよい。例えば、所定角度範囲は、成膜後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角から-40°~+10°の範囲であればよく、干渉信号が最も小さくなる入射角から-30~+7.5°の範囲とすることが好ましく、干渉信号が最も小さくなる入射角から-20°~+5°の範囲とすることがより好ましい。例えば、制御部60は、成膜後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角から-40°~+10°の範囲から第2の入射角を特定する。
【0061】
また、例えば、制御部60は、成膜前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角と成膜後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角の中間の角度を基準とした所定角度範囲から第1の入射角と第2の入射角を同じ角度として特定してもよい。例えば、制御部60は、成膜前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角と成膜後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角の間の中央となる角度を基準とした所定角度範囲から第1の入射角と第2の入射角を同じ角度として特定してもよい。所定角度範囲は、干渉信号の信号レベルが基板Wに含まれる物質による信号レベルと同等以下になるような角度範囲であればよい。例えば、所定角度範囲は、中間の角度から-40°~+10°の範囲であればよく、中間の角度から-30~+7.5°の範囲とすることが好ましく、中間の角度から-20°~+5°の範囲とすることがより好ましい。例えば、制御部60は、成膜前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角と成膜後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角の中間の角度から-40°~+10°の範囲から、第1の入射角と第2の入射角を同じ角度として特定する。
【0062】
ところで、ブリュースター角は、屈折率から演算により算出できる。例えば、図10のようにトレンチ92と下地膜93との界面でのブリュースター角は、トレンチ92部分と下地膜93部分の屈折率から演算により算出できる。トレンチ92部分の屈折率をntrenchとし、下地膜93部分の屈折率nsubstrateとすると、ブリュースター角θは、以下の式(1)から算出できる。
【0063】
θ = Arctan(nsubstrate/ntrench) ・・・(1)
【0064】
例えば、基板Wの凹部90a部を含むパターン90は、大気とシリコン(Si)で形成されており、大気とシリコンの体積比が0.35とする。この場合、ntrenchは、以下の式(2)から算出できる。
【0065】
trench = 0.65nsi+0.35nair ・・・(2)
= 0.65×3.5+0.35×1
= 2.63
ここで、nsiは、シリコンの屈折率である。
airは、凹部、つまり大気の屈折率である。
【0066】
この場合、式(1)から、ブリュースター角θは、式(1)から以下の式(3)のように53°と算出できる。
【0067】
θ = Arctan(3.5/2.63)=53degree ・・・(3)
【0068】
そこで、制御部60は、調整用の測定を実施せずに、演算により第1の入射角及び第2の入射角を特定してもよい。例えば、制御部60は、基板Wに形成されたパターン90部分(トレンチ92部分)と当該パターン90部分の下層(下地膜93)の屈折率から演算によりブリュースター角を算出する。制御部60は、算出したブリュースター角を基準とした所定角度範囲から第1の入射角及び第2の入射角を特定してもよい。所定角度範囲は、干渉信号の信号レベルが基板Wに含まれる物質による信号レベルと同等以下になるような角度範囲であればよい。例えば、所定角度範囲は、ブリュースター角から-40°~+10°の範囲であればよく、ブリュースター角から-20°~+5°の範囲とすることが好ましく、ブリュースター角から-30~+7.5°の範囲とすることがより好ましい。例えば、制御部60は、ブリュースター角から-40°~+10°の範囲から第1の入射角及び第2の入射角を特定する。
【0069】
次に、実施形態に係る成膜装置100が実施する処理の流れを説明する。最初に、実施形態に係る成膜装置100が、第1の入射角及び第2の入射角を特定する特定方法の流れを説明する。図12は、実施形態に係る特定方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【0070】
最初に、基板Wに対して複数の入射角でP偏光の赤外光を照射し、複数の入射角でそれぞれ基板Wの透過光又は反射光を測定する(ステップS10)。例えば、凹部90aを含むパターン90が表面に形成された基板Wが載置台2に載置される。成膜装置100では、制御部60が、照射部81を制御し、照射部81から複数の入射角で基板WにP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光又は反射した反射光を検出部82で検出する。
【0071】
次に、複数の入射角でそれぞれ測定された透過光又は反射光のスペクトルに基づいて、第1の入射角及び第2の入射角を特定し(ステップS11)、処理を終了する。例えば、制御部60は、検出部82により検出したデータから、複数の入射角について、各入射角での透過光の波数毎の赤外光の吸光度を示すスペクトルを求める。制御部60は、複数の入射角でそれぞれ測定された透過光又は反射光のスペクトルから、干渉信号が最も小さくなる入射角を求める。制御部60は、干渉信号が最も小さくなる入射角を基準とした所定角度範囲から第1の入射角及び第2の入射角を特定する。例えば、制御部60は、第1の入射角及び第2の入射角を干渉信号が最も小さくなる入射角と特定する。
【0072】
次に、実施形態に係る成膜装置100が実施する基板処理方法の流れを説明する。図13は、実施形態に係る基板処理方法の流れの一例を示すフローチャートである。本実施形態では、基板処理を成膜処理とし、基板処理方法により、基板に成膜を行う場合を例に説明する。
【0073】
最初に、成膜前の凹部を含むパターン90が形成された基板に対して第1の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板を透過した透過光又は反射した反射光を測定する(ステップS20)。例えば、凹部90aを含むパターン90が表面に形成された基板Wが載置台2に載置される。成膜装置100では、制御部60が、照射部81を制御し、成膜前に、照射部81から基板Wに対して第1の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光を検出部82で検出する。
【0074】
次に、CVD、ALDなどを用いて基板に膜を成膜する(ステップS21)。例えば、制御部60は、ガス供給部15、高周波電源10を制御し、プラズマALDにより基板Wの表面に膜91を成膜する。
【0075】
次に、成膜後の基板に対して第2の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板を透過した透過光又は反射した反射光を測定する(ステップS22)。例えば、成膜装置100では、制御部60が、照射部81を制御し、成膜後に、照射部81から基板Wに対して第2の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光又は反射した反射光を検出部82で検出する。
【0076】
次に、ステップS20で測定した成膜前の基板Wの透過光のスペクトルと、ステップS22で測定した成膜後の基板Wの透過光又は反射光のスペクトルとの差分スペクトルを抽出する(ステップS23)。例えば、制御部60は、ステップS20で検出部82により検出したデータから、成膜前の基板Wの透過光又は反射光のスペクトルを求める。また、制御部60は、ステップS22で検出部82により検出したデータから、成膜後の基板Wの透過光又は反射光のスペクトルを求める。制御部60は、成膜前の基板Wの透過光又は反射光のスペクトルと成膜後の基板Wの透過光又は反射光のスペクトルの差分スペクトルを抽出する。例えば、制御部60は、波数毎に、成膜後の赤外光のスペクトルから成膜前の赤外光のスペクトルを減算して、膜91による波数毎の赤外光の吸光度を示す差分スペクトルを差分データとして抽出する。図14は、実施形態に係る差分データを説明する図である。図14には、「成膜前」として、凹部90aを含むパターン90が形成された基板Wが示されている。また、「成膜後」として、パターン90上に膜91が形成された基板Wが示されている。成膜後の透過光又は反射光のスペクトルから成膜前の透過光又は反射光のスペクトルとの差分を抽出することで、差分スペクトルとして膜91のスペクトルの信号を抽出できる。
【0077】
次に、抽出された差分スペクトルに基づき、基板Wに成膜した膜の状態を表示する(ステップS24)。例えば、制御部60は、差分データが示す差分スペクトルに基づき、膜91に含まれる化学結合を検出し、検出した化学結合をユーザインターフェース61に表示する。
【0078】
また、抽出された差分スペクトルに基づき、成膜のプロセスパラメータを制御する(ステップS25)。例えば、制御部60は、差分データが示す差分スペクトルに基づき、膜91に含まれる化学結合を検出し、検出した化学結合に応じてプロセスパラメータを制御する。
【0079】
図12に示した特定方法の処理は、図13に示した基板処理方法の処理とは、別に実施してもよく、図13に示した基板処理方法の前や、基板処理方法の後に実施してもよい。例えば、特定方法の処理は、成膜装置100の導入時やメンテナンス終了時など、定期的に実施してもよい。これにより、成膜装置100は、第1の入射角及び第2の入射角を定期的に調整できる。また、特定方法の処理は、基板処理方法の処理の前に実施してもよい。これにより、成膜装置100は、成膜する基板W毎に、基板Wに対して第1の入射角及び第2の入射角を適切に調整できる。また、特定方法の処理は、基板処理方法の処理の前と、基板Wに膜を成膜した後(ステップS21とステップS22の間)にそれぞれ実施してもよい。これにより、成膜装置100は、成膜前の基板Wに対して第1の入射角を適切に調整でき、成膜後の基板Wに対して第2の入射角を適切に調整できる。
【0080】
ここで、具体的な検出結果の一例を説明する。実施例として、第1の入射角及び第2の入射角を同じ角度として、凹部90aを含むパターン90が形成された基板Wに、実施形態に係る基板処理方法により、膜91を成膜し、成膜した膜91のスペクトルの入射角依存性を調査した。
【0081】
図15Aは、成膜した膜のスペクトルの一例を示す図である。図15Aの横軸は、赤外光の波数である。縦軸は、赤外光の吸光度である。図15Aでは、入射角ごとのスペクトルを重ならないように任意にシフトさせて示しており、入射角ごとのスペクトルにそれぞれ対応させて入射角を示している。図15Aでは、膜91に含まれる物質による信号レベルの変化が小さい波数範囲のスペクトルを示している。すべてのスペクトルは、干渉信号により、周期的に変化が発生している。しかしながら、入射角度に依存して干渉信号の強度は変化している。例えば周期的な変化の中点をなぞってベースライン処理をすることで、干渉信号を抽出し、その強度を算出することができる。図15Bは、干渉信号を抽出した結果の一例を示す図である。図15Bでは、周期的信号の中点でベースライン処理したものを、図15Aと同様に、縦方向にシフトさせて示しており、入射角ごとの干渉信号にそれぞれ対応させて入射角を示している。図15Cは、干渉強度の入射角依存性の一例を示す図である。図15Cは、周期的ノイズの中点でベースライン処理したデータについて、1900~2600cm-1の範囲で1周期分の信号から振幅を算出したものである。干渉強度は、入射角に依存して変化し、ブリュースター角付近である57.5°では、入射角0°に対して干渉信号が1/5に減少している。このように、入射角をブリュースター角に近づけて測定することで、干渉信号が小さく抑えられているため、膜91の状態を精度良く検出できる。
【0082】
上述のように、パターン90の凹部90aの深さが700nm以上となると、干渉信号の影響により、膜91による吸光度の変化が判別し難くなる。パターン90の凹部90aの深さが700nm以上の場合は、実施形態に基板処理方法により、差分スペクトルを求めることで、干渉信号を小さく抑えることができる。干渉信号は、基板Wに形成されたパターン90の凹部90aの深さが、赤外光の波長に近づくほど信号強度が大きくなる。また、干渉信号は、凹部90aの深さが深くなるにつれて周期的な変化の周期が短くなる。このため、パターン90の凹部90aの深さが深くなるほど、実施形態に基板処理方法により、差分スペクトルを求めることが好ましい。例えば、パターン90の凹部90aの深さが1000nm以上となると、干渉信号の影響により、膜91による吸光度の変化がより判別し難いなり、パターン90の凹部90aの深さが1500nm以上となると、干渉信号の影響により、膜91による吸光度の変化がさらに判別し難くなる。このため、パターン90の凹部90aの深さが700nm以上の場合は、本実施形態に基板処理方法により、差分スペクトルを求めることで、干渉信号を小さく抑えて膜91の状態を精度良く検出できる。特に、パターン90の凹部90aの深さが1000nm以上、より好ましくは、パターン90の凹部90aの深さが1500nm以上の場合は、基板処理方法により、差分スペクトルを求めることで、干渉信号の影響を抑えて膜91の状態を精度良く検出できる。
【0083】
一方、パターン90の凹部90aの深さが2mmを超えると、干渉信号の周期が極端に短くなり、装置分解能の範囲で平均化されて目立たなくなる。このため、実施形態に基板処理方法は、パターン90の凹部90aの深さが700nm以上、2mm以下の範囲である場合に適用することが好ましい。
【0084】
次に、実施例として、第1の入射角及び第2の入射角をブリュースター角近傍である57.5°として、凹部90aを含むパターン90が形成された基板Wに、実施形態に係る基板処理方法により、膜91を成膜し、成膜した膜91のスペクトルを求めた。
【0085】
また、比較例として、第1の入射角及び第2の入射角をブリュースター角近傍である57.5°として、平坦なシリコン基板95に、膜91と同様の成膜条件で、膜96を成膜し、成膜した膜96のスペクトルを求めた。
【0086】
図16は、成膜した膜のスペクトルの一例を示す図である。図16の横軸は、赤外光の波数である。縦軸は、赤外光の吸光度である。図16には、凹部90aを含むパターン90が形成された基板Wに成膜した膜91のスペクトルを示す線L5が示されている。また、比較例として、平坦なシリコン基板95に成膜した膜96のスペクトルを示す線L6が示されている。図5に示したように、凹部90aを含むパターン90が形成された基板Wでは、膜91が、パターン90の凹部90aの側壁や底部にも成膜される。このため、基板Wに成膜した膜91は、平坦なシリコン基板95上の膜96よりも体積が大きい。このため、基板Wに成膜した膜91のスペクトルを示す線L5は、平坦なシリコン基板95に成膜した膜96のスペクトルを示す線L6も吸光度が大きい。線L5の方が線L6よりも微弱な信号も検出できるため、線L5の方が微量の物質も検出できる。赤外光は、波長が短いほど波数が大きくなる。また、吸収する赤外光の波数は、物質によって異なる。よって、FT-IR分析は、赤外光の波数からどのような物質が含まれるかを特定できる。また、FT-IR分析は、波数ごとの吸光度から物質の含有量を推定できる。また、FT-IR分析は、波数ごとの吸光度から成膜された膜の体積(膜厚)を推定できる。
【0087】
また、基板Wに成膜した膜91は、パターン90の凹部90aが深くなるほど、凹部90aの側壁の膜の部分の体積が大きくなる。よって、凹部90aが深くなるほど、線L5は、凹部90aの側壁の成分が支配的となる。すなわち、凹部90aが深くなるほど、線L5は、凹部90aの側壁の状態を表すようになる。
【0088】
図17は、成膜した膜のスペクトルの一例を示す図である。図17の横軸は、赤外光の波数である。縦軸は、ピーク強度で規格化した赤外光の吸光度である。図17には、パターン90を有する基板Wに成膜した膜91のスペクトルを示す線L7と、比較例として、平坦なシリコン基板95に成膜した膜96のスペクトルを示す線L8が示されている。図17は、SiOの化学結合を検出可能な波数範囲を示している。線L7と線L8は、スペクトルの形状が異なる。このことから、パターン90が形成された基板Wと平坦なシリコン基板95では、成膜された膜91と膜96の状態が異なる。例えば、膜に含まれるSiOの結合が強いほどスペクトルのピーク波数が高くなる。また、膜に含まれるSiOの構造乱れが小さい程、スペクトル幅は小さくなる。このことから、膜96は、膜91よりも膜質がよく、膜91は、相対的に構造乱れの大きい状態であることが推測できる。
【0089】
制御部60は、差分スペクトルに基づき、基板Wに成膜された膜91の状態を表示する。例えば、制御部60は、成膜された膜91のスペクトルをユーザインターフェース61に表示する。また、例えば、制御部60は、成膜された膜91のスペクトルにおける、物質や化学結合ごとの吸収される赤外光の波数の位置での吸光度から、膜91に含まれる物質や化学結合を特定し、特定した物質や化学結合をユーザインターフェース61に表示する。なお、制御部60は、波数ごとの吸光度から、膜91の膜厚を推定し、推定した膜厚をユーザインターフェース61に表示してもよい。
【0090】
また、制御部60は、差分スペクトルに基づき、成膜された膜91の状態を検出し、検出した膜91の状態に応じてプロセスパラメータを制御する。例えば、制御部60は、膜91が酸化や窒化不足である場合、反応を促進するように成膜のプロセスパラメータを制御する。これにより、成膜装置100は、以降の成膜においてパターン90上に成膜される膜91の膜質を改善できる。
【0091】
なお、本実施形態では、膜91の成膜前と成膜後のFT-IR分析を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。成膜装置100は、成膜中の特定の工程の前後でFT-IR分析を行って透過光又は反射光の測定を行い、特定の工程での差分スペクトルを抽出してもよい。例えば、成膜装置100は、膜91をプラズマALDで成膜するものとする。プラズマALDでは、プリカーサの吸着工程、改質工程、反応工程、排気工程となどの各種の工程を順に実施する。成膜装置100は、プラズマALDの特定の工程の前後でFT-IR分析を行って透過光又は反射光の測定を行い、特定の工程での差分スペクトルを抽出してもよい。これにより、成膜装置100は、プラズマALDの特定の工程の状態を検出できる。また、プラズマALDでプリカーサの吸着工程、改質工程、反応工程、排気工程となどの各種の工程を複数回繰り返す際に、所定の回数を繰り返した時点で測定してもよい。これにより、成膜装置100は、プラズマALDの各種の工程を所定の回数を繰り返した時点での膜91の状態を検出できる。また、成膜装置100は、各工程中に常時、FT-IR分析を行い、各工程前の透過光又は反射光のスペクトルと、リアルタイムに測定される透過光又は反射光のスペクトルとの差分スペクトルを求めて、リアルタイムモニターしてもよい。これにより、成膜装置100は、プラズマALDの各工程の状態をリアルタイムに検出できる。制御部60は、差分スペクトルに基づき、プロセスパラメータを制御する。例えば、制御部60は、吸着工程、改質工程、反応工程において、差分スペクトルから吸着や、改質、反応の状態を検出した結果、吸着や、改質、反応が不足している場合、不足した工程を実施するようにプロセスパラメータを制御する。これにより、吸着や、改質、反応の不足を抑制でき、成膜される膜91の膜質を改善できる。また、不必要に長時間処理を行っている場合は、プロセス時間を短くし、生産性を高めることができる。また、例えば、成膜装置100は、プラズマALDの各工程の前又は後でFT-IR分析を行って透過光又は反射光を測定し、それぞれ工程で前の工程のスペクトルとの差分スペクトルを抽出することで、各工程の差分スペクトルを取得してもよい。これにより、成膜装置100は、各工程の差分スペクトルから各工程の状態をリアルタイムで検出できる。
【0092】
このように、実施形態に係る基板処理方法は、第1の測定工程(ステップS20)と、基板処理工程(ステップS21)と、第2の測定工程(ステップS22)と、抽出工程(ステップS23)とを有する。第1の測定工程は、凹部90aを含むパターン90が形成された基板Wに対して第1の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光又は反射した反射光を測定する。基板処理工程は、第1の測定工程の後、基板Wに対して基板処理を行う。例えば、基板処理工程は、基板Wに膜91を成膜する。第2の測定工程は、基板処理工程の後、基板処理された基板Wに対して第2の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光又は反射した反射光を測定する。例えば、第2の測定工程は、膜91が成膜された基板Wに対して第2の入射角でP偏光の赤外光を照射し、透過光又は反射光を測定する。抽出工程は、第1の測定工程により測定した透過光又は反射光の波数毎の赤外光の吸光度を示すスペクトルと第2の測定工程により測定した透過光又は反射光の波数毎の赤外光の吸光度を示すスペクトルとの差分スペクトルを抽出する。第1の入射角及び第2の入射角は、照射されたP偏光の赤外光が基板Wを透過した透過光又は反射した反射光のスペクトルにおいて、干渉信号が基板Wでの吸光による変化よりも低下する入射角である。これにより、実施形態に係る基板処理方法は、抽出された差分スペクトルから、基板処理による試料の状態を検出できる。例えば、実施形態に係る基板処理方法は、抽出された差分スペクトルから、基板Wに成膜した膜91の状態を検出できる。
【0093】
また、実施形態に係る基板処理方法は、特定工程(ステップS11)をさらに有する。特定工程は、基板Wに応じた第1の入射角及び第2の入射角を特定する。第1の測定工程は、基板Wに対して、特定工程により特定した第1の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wの透過光又は反射光を測定する。第2の測定工程は、基板処理工程の後、基板Wに対して、特定工程により特定した第2の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wの透過光又は反射光を測定する。これにより、実施形態に係る基板処理方法は、基板Wに応じた第1の入射角及び第2の入射角を特定して測定を実施できるため、干渉信号の影響を抑えて基板処理による試料の状態を検出できる。例えば、実施形態に係る基板処理方法は、干渉信号の影響を抑えて基板Wに成膜した膜91の状態を検出できる。
【0094】
また、実施形態に係る基板処理方法は、調整測定工程(ステップS10)をさらに有する。調整測定工程は、基板Wに対して複数の入射角でP偏光の赤外光を照射し、複数の入射角でそれぞれ基板Wの透過光又は反射光を測定する。特定工程は、調整測定工程により複数の入射角でそれぞれ測定された透過光又は反射光のスペクトルに基づいて、第1の入射角及び第2の入射角を特定する。これにより、実施形態に係る基板処理方法は、複数の入射角で基板Wの透過光又は反射光をそれぞれ測定した結果から、基板Wでの干渉信号が基板Wでの吸光による変化よりも低下する第1の入射角及び第2の入射角を特定できる。
【0095】
また、特定工程は、調整測定工程により複数の入射角でそれぞれ測定された透過光又は反射光のスペクトルから、干渉信号が最も小さくなる入射角を求め、求めた入射角を基準とした所定角度範囲から第1の入射角及び第2の入射角を特定する。これにより、実施形態に係る基板処理方法は、基板Wでの干渉信号が小さくなる第1の入射角及び第2の入射角を特定できる。
【0096】
また、特定工程は、基板Wに形成されたパターン部分(トレンチ92部分)と当該パターン部分の下層(下地膜93)の屈折率から演算によりブリュースター角を算出し、算出したブリュースター角を基準とした所定角度範囲から第1の入射角及び第2の入射角を特定する。これにより、実施形態に係る基板処理方法は、調整測定工程を行わなくても、演算により、基板Wでの干渉信号が基板Wでの吸光による変化よりも低下する、基板Wに対応した第1の入射角及び第2の入射角を特定できる。
【0097】
また、特定工程は、第1の入射角及び第2の入射角を同じ角度として特定する。このように、第1の入射角及び第2の入射角を同じ角度とすることより、第1の測定工程の透過光又は反射光のスペクトルと第2の測定工程の光のスペクトルには、基板Wによる同様の信号が発生する。実施形態に係る基板処理方法は、第1の測定工程の透過光又は反射光のスペクトルと第2の測定工程の透過光又は反射光のスペクトルの差分スペクトルを求めることで、基板Wの信号を打ち消すことができ、基板Wに成膜した膜の状態を検出できる。
【0098】
また、調整測定工程は、基板処理前の基板W、及び基板処理後の基板Wに対して複数の入射角からP偏光の赤外光を照射し、複数の入射角で基板Wの透過光又は反射光を測定する。特定工程は、基板処理前の基板W及び基板処理後の基板Wに対して複数の入射角でそれぞれ測定された透過光又は反射光のスペクトルから、基板処理前の基板Wと基板処理後の基板Wについてそれぞれ干渉信号が最も小さくなる入射角を求める。特定工程は、基板処理前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角と基板処理後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角から第1の入射角及び第2の入射角を特定する。例えば、調整測定工程は、膜91を成膜する成膜前の基板W、及び膜91を成膜した成膜後の基板Wに対して複数の入射角からP偏光の赤外光を照射し、複数の入射角で透過光又は反射光を測定する。特定工程は、成膜前の基板W及び成膜後の基板Wに対して複数の入射角でそれぞれ測定された光のスペクトルから、成膜前の基板Wと成膜後の基板Wについてそれぞれ干渉信号が最も小さくなる入射角を求める。そして、特定工程は、成膜前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角と成膜後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角から第1の入射角及び第2の入射角を特定する。これにより、実施形態に係る基板処理方法は、第1の測定工程及び第2の測定工程でそれぞれ基板Wでの干渉信号が小さくなる第1の入射角及び第2の入射角を特定できる。
【0099】
また、特定工程は、基板処理前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角を基準とした所定角度範囲から第1の入射角を特定し、基板処理後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角を基準とした所定角度範囲から第2の入射角を特定する。例えば、特定工程は、成膜前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角を基準とした所定角度範囲から第1の入射角を特定し、成膜後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角を基準とした所定角度範囲から第2の入射角を特定する。これにより、実施形態に係る基板処理方法は、基板処理前の基板Wに合わせて第1の測定工程で干渉信号が小さくなる第1の入射角を特定でき、基板処理後の基板Wに合わせて第2の測定工程で干渉信号が小さくなる第2の入射角を特定できる。例えば、実施形態に係る基板処理方法は、成膜前の基板Wに合わせて第1の測定工程で干渉信号が小さくなる第1の入射角を特定でき、成膜後の基板Wに合わせて第2の測定工程で干渉信号が小さくなる第2の入射角を特定できる。
【0100】
また、特定工程は、基板処理前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角と基板処理後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角の中間の角度を基準とした所定角度範囲から第1の入射角と第2の入射角を同じ角度として特定する。例えば、特定工程は、成膜前の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角と成膜後の基板Wで干渉信号が最も小さくなる入射角の中間の角度を基準とした所定角度範囲から第1の入射角と第2の入射角を同じ角度として特定する。これにより、実施形態に係る基板処理方法は、第1の測定工程と第2の測定工程でそれぞれ干渉信号が小さくなる第1の入射角と第2の入射角特定できる。また、第1の入射角と第2の入射角を同じ角度とすることより、第1の測定工程の光のスペクトルと第2の測定工程の光のスペクトルには、基板Wによる同様の信号が発生する。実施形態に係る基板処理方法は、第1の測定工程の光のスペクトルと第2の測定工程の光のスペクトルの差分スペクトルを求めることで、基板の信号を打ち消すことができ、成膜した膜のスペクトルを抽出できる。
【0101】
また、基板Wは、パターン90の凹部90aの深さが700nm以上とされている。このような基板Wでは、基板Wを透過又は反射した赤外線の光に大きな干渉信号が重畳するが、実施形態に係る基板処理方法により、干渉強度を低減して、基板処理による試料の状態を検出できる。例えば、実施形態に係る基板処理方法により、基板Wに成膜した膜91の状態を検出できる。
【0102】
また、抽出工程は、第2の測定工程により測定した透過光又は反射光のスペクトルから第1の測定工程により測定した透過光又は反射光のスペクトルを減算して波数毎の赤外光の吸光度を示す差分スペクトルを抽出する。これにより、実施形態に係る基板処理方法は、抽出された差分スペクトルから、基板処理による試料の状態を検出できる。例えば、実施形態に係る基板処理方法は、差分スペクトルから、基板Wに成膜した膜91の状態を検出できる。
【0103】
また、実施形態に係る基板処理方法は、表示工程(ステップS24)をさらに有する。表示工程は、抽出工程により抽出された差分スペクトルに基づき、基板処理工程により基板Wに成膜された膜の状態を表示する。これにより、実施形態に係る基板処理方法は、基板処理による試料の状態を提示できる。例えば、実施形態に係る基板処理方法は、基板Wに実際に成膜した膜の状態を工程管理者に提示できる。
【0104】
また、実施形態に係る基板処理方法は、制御工程(ステップS25)をさらに有する。制御工程は、抽出工程により抽出された差分スペクトルに基づき、基板処理工程のプロセスパラメータを制御する。これにより、実施形態に係る基板処理方法は、基板処理による試料の状態に応じてプロセスパラメータを調整でき、以降の基板処理において試料の状態を改善できる。例えば、実施形態に係る基板処理方法は、基板Wに実際に成膜した膜の状態に応じてプロセスパラメータを調整でき、以降の成膜において基板Wに成膜される膜91の膜質を改善できる。
【0105】
以上、実施形態について説明してきたが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上述した実施形態は、多様な形態で具現され得る。また、上述した実施形態は、請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0106】
例えば、上記の実施形態では、照射部81を上下方向に移動可能及び回転可能に構成して、基板Wに入射するP偏光の赤外光の入射角を変更可能に構成した場合を説明したが、これに限定されない。例えば、照射部81から照射される赤外光の光路や、検出部82に入射する赤外光の光路にミラー、レンズ等の光学素子を設け、光学素子により基板Wに入射するP偏光の赤外光の入射角を変更可能に構成してもよい。図18は、実施形態に係る成膜装置100の他の一例を示す概略断面図である。図18に示す成膜装置100は、照射部81から照射される赤外光の光路や、検出部82に入射する赤外光の光路にミラー84が設けられている。ミラー84は、不図示の駆動機構により移動及び回転が可能に構成されている。成膜装置100は、ミラー84の位置及び角度を変えることで基板Wに入射するP偏光の赤外光の入射角を変更可能に構成してもよい。
【0107】
また、上記の実施形態では、基板Wの中央付近で赤外光を透過させて基板Wの中央付近の膜の状態を検出する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、チャンバ1内に赤外光を反射するミラー、レンズ等の光学素子を設け、光学素子により基板Wの中央付近、周辺付近など複数の個所に照射し、それぞれの個所で透過光又は反射光を検出して基板Wの複数の個所それぞれの基板処理された基板Wの状態を検出してもよい。例えば、成膜前と成膜後に、基板Wの面内の複数個所でFT-IR分析を行って検出した光のスペクトルを取得する。制御部60は、複数個所のそれぞれについて、成膜前の基板Wで検出した光のスペクトルと成膜後の基板Wで検出した光のスペクトルとの差分スペクトルを抽出する。制御部60は、抽出した複数個所の差分スペクトルに基づいて基板処理工程のプロセスパラメータを制御する。例えば、制御部60は、何れかの個所で膜91が反応不足である場合、反応を促進するように成膜のプロセスパラメータを制御する。制御部60は、複数個所の差分スペクトルに基づいて、基板Wの複数の個所で膜厚を推定して、膜厚の分布を検出してもよい。そして、制御部60は、膜厚の分布を均一化しつつ所定の膜質となるようにプロセスパラメータを制御してもよい。例えば、制御部60は、膜91の膜厚の分布が不均一であり、何れかの個所で膜91が反応不足である場合、膜91を均一化しつつ反応を促進するように成膜のプロセスパラメータを制御する。
【0108】
また、上記の実施形態では、1つの基板Wの差分スペクトルから基板処理工程のプロセスパラメータを制御する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。複数の基板Wの差分スペクトルから基板W間の差分スペクトルの比較に基づいて基板処理工程のプロセスパラメータを制御してもよい。例えば、成膜装置100は、複数の基板Wに成膜を行うと経時的な変化等に伴い、成膜される膜の状態が変化する場合がある。制御部60は、基板W間の差分スペクトルの比較に基づいて、膜の状態の変化を抑制するように基板処理工程のプロセスパラメータを変更する。例えば、制御部60は、膜91が反応不足する場合、窒化を促進するよういに成膜のプロセスパラメータを制御する。これにより、複数の基板Wに成膜される膜の状態の変化を抑制できる。
【0109】
また、上記の実施形態では、1つの基板Wの差分スペクトルから基板処理工程のプロセスパラメータを制御する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。成膜装置100は経時的にコンディションが変化し、同じ成膜条件(レシピ)で成膜を実施しても成膜される膜の状態が変化する場合がある。そこで、成膜装置100は、数日毎や所定のタイミング毎など定期的に同じ成膜条件で成膜し、成膜前後でFT-IR分析を行い、FT-IR分析の結果から成膜装置100のコンディション診断を行ってもよい。例えば、成膜装置100は、定期的に同じ成膜条件で基板Wに膜を成膜する。制御部60は、同じ成膜条件で成膜された複数の基板Wの差分スペクトルから基板W間の差分スペクトルの比較に基づいて成膜装置100のコンディションを診断する。これにより、成膜装置100は、同じ成膜条件で成膜された膜の状態の変化からコンディションの変化を検出できる。
【0110】
また、上記の実施形態では、本開示の基板処理装置を、チャンバを1つ有するシングルチャンバータイプの成膜装置100とした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。本開示の基板処理装置は、チャンバを複数有するマルチチャンバタイプの成膜装置であってもよい。
【0111】
図19は、実施形態に係る成膜装置200の他の一例を示す概略構成図である。図19に示すように、成膜装置200は、4つのチャンバ201~204を有するマルチチャンバタイプの成膜装置である。成膜装置200では、4つのチャンバ201~204においてそれぞれプラズマALDを実施する。
【0112】
チャンバ201~チャンバ204は、平面形状が七角形をなす真空搬送室301の4つの壁部にそれぞれゲートバルブGを介して接続されている。真空搬送室301内は、真空ポンプにより排気されて所定の真空度に保持される。真空搬送室301の他の3つの壁部には3つのロードロック室302がゲートバルブG1を介して接続されている。ロードロック室302を挟んで真空搬送室301の反対側には大気搬送室303が設けられている。3つのロードロック室302は、ゲートバルブG2を介して大気搬送室303に接続されている。ロードロック室302は、大気搬送室303と真空搬送室301との間で基板Wを搬送する際に、大気圧と真空との間で圧力を制御するものである。
【0113】
大気搬送室303のロードロック室302が取り付けられた壁部とは反対側の壁部には基板Wを収容するキャリア(FOUP等)Cを取り付ける3つのキャリア取り付けポート305が設けられている。また、大気搬送室303の側壁には、基板Wのアライメントを行うアライメントチャンバ304が設けられている。大気搬送室303内には清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。
【0114】
真空搬送室301内には、搬送機構306が設けられている。搬送機構306は、チャンバ201~チャンバ204、ロードロック室302に対して基板Wを搬送する。搬送機構306は、独立に移動可能な2つの搬送アーム307a,307bを有している。
【0115】
大気搬送室303内には、搬送機構308が設けられている。搬送機構308は、キャリアC、ロードロック室302、アライメントチャンバ304に対して基板Wを搬送するようになっている。
【0116】
成膜装置200は、制御部310を有している。成膜装置200は、制御部310によって、その動作が統括的に制御される。
【0117】
このように構成された成膜装置200では、基板Wを赤外分光法により測定する測定部をチャンバ201~チャンバ204以外に設けてもよい。例えば、成膜装置200は、基板Wを赤外分光法により測定する測定部を、真空搬送室301、ロードロック室302、大気搬送室303、及びアライメントチャンバ304の何れかに設ける。測定部には、P偏光の赤外光を照射する照射部と、赤外光を検出する検出部を配置する。照射部は、基板Wの所定の領域に対して、照射したP偏光の赤外光が第1の入射角及び第2の入射角で入射するように、位置を調整して配置してもよい。第1の入射角及び第2の入射角は、照射されたP偏光の赤外光の基板Wに対するブリュースター角を基準とした所定角度範囲内の入射角とする。第1の入射角及び第2の入射角は、同じ入射角としてもよい。検出部は、基板Wの所定の領域を透過又は反射した光が検出部に入射するように、位置を調整して配置してもよい。また、照射部は、基板Wに入射するP偏光の赤外光の入射角を変更可能に構成してもよい。例えば、照射部は、上下方向に移動可能及び回転可能に構成して、基板Wに入射するP偏光の赤外光の入射角を変更可能に構成してもよい。
【0118】
成膜装置200は、FT-IR分析を行う場合、搬送機構306により基板Wを測定部に配置する。測定部は、照射部からP偏光の赤外光を基板Wに対して第1の入射角で照射し、基板Wを透過した透過光または反射した反射光を検出部で検出する。
【0119】
制御部310は、成膜前の基板Wを測定部により測定する。制御部310は、チャンバ201~チャンバ204の何れかにより基板Wに膜を成膜する。制御部310は、成膜後の基板Wを測定部により測定する。測定部は、照射部からP偏光の赤外光を基板Wに対して第2の入射角で照射し、基板Wを透過又は反射した光を検出部で検出する。
【0120】
制御部310は、成膜前の基板Wの透過光または反射光のスペクトルと成膜後の基板Wの透過光または反射光のスペクトルとの差分スペクトルを抽出する。これにより成膜装置200においても、凹部90aを含むパターン90が形成された基板Wに成膜した膜の状態を検出できる。
【0121】
また、上記の実施形態では、基板処理工程を基板Wに成膜する成膜工程とし、本開示の技術を適用して基板処理による基板Wの状態として、基板Wに成膜した膜の状態を検出する例を説明してきたが、これに限定されるものではない。基板Wの状態を検出する基板処理工程は、例えば、成膜工程、エッチング工程、改質工程、レジスト塗布工程、洗浄工程、リソグラフィ工程、化学機械研磨工程、検査工程など半導体デバイスを製造する半導体製造工程に係る任意の工程であってもよいし、任意の工程の組合せを含む複数工程であってもよい。また、半導体製造工程に係る任意の工程及び/又はその組合せを含む複数工程の観点から、任意の工程や複数工程の前後に本開示の技術を適用することで、本開示の技術を工程内、工程間の診断、監視として適用してもよい。例えば、半導体製造の生産性(稼働率や歩留まりなど)に関わる各種トリガー(パーティクルや面内/面間分布など)に適用してもよい。
【0122】
ここで、基板処理工程を成膜工程以外とした例を説明する。図20は、実施形態に係る基板処理工程の一例を示す図である。図20は、基板処理工程をドライエッチング工程とした場合を示している。図20では、左側に、ドライエッチング前の基板Wが示されており、右側に、ドライエッチング後の基板Wが示されている。基板Wには、ナノスケールの凹部90aを含むパターン90が形成されている。パターン90には、SiN膜110が成膜されている。図20は、基板Wに対して、NFガスを用いたドライエッチングを実施した場合を示している。基板処理装置は、ドライエッチングを行うエッチング装置とする。本実施形態に係る基板処理方法は、基板Wに対して第1の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光又は反射した反射光を測定する。基板処理方法は、測定後、基板Wに対して、基板処理としてドライエッチングを行う。基板処理方法は、ドライエッチングの後、ドライエッチング後の基板Wに対して第2の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光又は反射した反射光を測定する。基板処理方法は、測定したドライエッチング前の透過光又は反射光のスペクトルとドライエッチング後の透過光又は反射光のスペクトルとの差分スペクトルを抽出する。図21は、スペクトルの一例を示す図である。図21の横軸は、赤外光の波数である。縦軸は、赤外光の吸光度である。図21には、ドライエッチング前のスペクトルを示す線L11とドライエッチング後のスペクトルを示す線L12が示されている。また、図21には、NH、SiNに対応する波数の位置が示されている。ドライエッチングの前後で、スペクトルを示す線L11、L12は、変化している。例えば、SiNに対応する波数部分のスペクトルの信号が変化している。図22は、差分スペクトルの一例を示す図である。図22の横軸は、赤外光の波数である。縦軸は、赤外光の吸光度である。図22には、ドライエッチング前のスペクトルとドライエッチング後のスペクトルとの差分スペクトルを示す線L13が示されている。また、図22には、NH、SiNに対応する波数の位置が示されている。本実施形態に係る基板処理方法は、差分スペクトルから、基板処理による基板Wの状態を検出できる。例えば、ドライエッチングなどのエッチングでは、スペクトルでエッチングされた成分の信号が減少する。このため、差分スペクトルでは、エッチングされた成分に対応した波数の信号が負の値となる。よって、信号が負の値となる波数に対応する成分がエッチングされた成分であると検出できる。例えば、図22では、SiNやNHの位置で線L13の信号が減少していていることから膜中にNHを含むSiN膜110がエッチングされたことを検出できる。
【0123】
図23は、実施形態に係る基板処理工程の一例を示す図である。図23は、基板処理工程をウェットエッチング工程とした場合を示している。図23では、左側に、ウェットエッチング前の基板Wが示されており、右側に、ウェットエッチング後の基板Wが示されている。基板Wは、ナノスケールの凹部90aを含むパターン90が形成されている。図23は、パターン90に形成されたSiO膜をウェットエッチングによりエッチングした場合を示している。基板処理装置は、ウェットエッチングを行うエッチング装置とする。本実施形態に係る基板処理方法は、基板Wに対して第1の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光又は反射した反射光を測定する。基板処理方法は、測定後、基板Wに対して、基板処理としてウェットエッチングを行う。基板処理方法は、ウェットエッチングの後、ウェットエッチング後の基板Wに対して第2の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光又は反射した反射光を測定する。基板処理方法は、測定したドライエッチング前の透過光又は反射光のスペクトルとドライエッチング後の透過光又は反射光のスペクトルとの差分スペクトルを抽出する。図24は、差分スペクトルの一例を示す図である。図24の横軸は、赤外光の波数である。縦軸は、赤外光の吸光度である。図24には、差分スペクトルを示す線L20が示されている。また、図24には、SiOに対応する波数の位置が示されている。本実施形態に係る基板処理方法は、差分スペクトルから、基板処理による基板Wの状態を検出できる。例えば、図24では、線L20から、SiOがエッチングされたことを検出できる。
【0124】
図25は、実施形態に係る基板処理工程の一例を示す図である。図25は、成膜工程やエッチング工程などの基板処理工程により、基板Wに副生成物(byproduct)120が付着した場合を示している。基板Wは、凹部を含むパターンとしてトレンチ121が形成されている。本実施形態に係る基板処理方法は、基板Wに対して第1の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光又は反射した反射光を測定する。基板処理方法は、測定後、基板Wに対して、基板処理を行う。基板処理方法は、基板処理の後、基板処理後の基板Wに対して第2の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光又は反射した反射光を測定する。基板処理方法は、測定した基板処理前の透過光又は反射光のスペクトルと基板処理後の透過光又は反射光のスペクトルとの差分スペクトルを抽出する。図26は、差分スペクトルの一例を示す図である。図26の横軸は、赤外光の波数である。縦軸は、赤外光の吸光度である。図26には、差分スペクトルを示す線L30が示されている。また、図26には、NHClに対応する波数の位置が示されている。本実施形態に係る基板処理方法は、差分スペクトルから、基板処理による基板Wの状態を検出できる。例えば、基板処理の結果で意図しない成分の信号に変化が差分スペクトルに生じているかから、基板Wの状態を検出できる。例えば、図25に示したように、基板Wに副生成物120が付着した場合、差分スペクトルでは、副生成物120の成分に対応する波数の信号に変化が生じる。例えば、図26では、副生成物120の成分であるNHClに対応する波数の信号に変化が生じている。このことから、本実施形態に係る基板処理方法は、基板処理により、基板Wに副生成物120が付着したことを検出できる。
【0125】
図27は、実施形態に係る基板処理工程の一例を示す図である。図27は、基板処理工程を、プラズマトリートメントなどの改質工程とした場合を示している。図27では、図20では、左側に、プラズマトリートメント前の基板Wが示されており、右側に、プラズマトリートメント後の基板Wが示されている。基板Wには、ナノスケールの凹部90aを含むパターン90が形成されている。プラズマトリートメント前のパターン90には、SiO膜130が存在している。図27は、基板Wに対して、プラズマトリートメントを実施してSiO膜130をSiN膜131に改質した場合を示している。基板処理装置は、プラズマトリートメントを行うプラズマ処理装置とする。本実施形態に係る基板処理方法は、基板Wに対して第1の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光又は反射した反射光を測定する。基板処理方法は、測定後、基板Wに対して、基板処理としてプラズマトリートメントを行う。基板処理方法は、プラズマトリートメントの後、プラズマトリートメント後の基板Wに対して第2の入射角でP偏光の赤外光を照射し、基板Wを透過した透過光又は反射した反射光を測定する。基板処理方法は、測定したプラズマトリートメント前の透過光又は反射光のスペクトルとプラズマトリートメント後の透過光又は反射光のスペクトルとの差分スペクトルを抽出する。図28は、差分スペクトルの一例を示す図である。図28の横軸は、赤外光の波数である。縦軸は、赤外光の吸光度である。図28には、差分スペクトルを示す線L40が示されている。また、図28には、SiO、SiNに対応する波数の位置が示されている。本実施形態に係る基板処理方法は、差分スペクトルから、基板処理による基板Wの状態を検出できる。例えば、図24では、線L40から、SiOがSiNに改質されたことを検出できる。
【0126】
また、上述の通り、本開示の基板処理装置は、シングルチャンバやチャンバを複数有するマルチチャンバタイプの基板処理装置を例に開示してきたが、このかぎりではない。例えば、複数枚の基板を一括で処理可能なバッチタイプの基板処理装置であってもよいし、カルーセル式のセミバッチタイプの基板処理装置であってもよい。
【0127】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0128】
W 基板
1 チャンバ
2 載置台
6 リフターピン
10 高周波電源
15 ガス供給部
16 シャワーヘッド
60 制御部
61 ユーザインターフェース
62 記憶部
80a 窓
80b 窓
81 照射部
82 検出部
83 偏光子
84 ミラー
90 パターン
90a 凹部
91 膜
95 シリコン基板
96 膜
100 成膜装置
200 成膜装置
201~204 チャンバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28