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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162146
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】熱伝導性積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/027 20190101AFI20231031BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20231031BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B32B7/027
H01L23/36 D
B32B15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070783
(22)【出願日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2022072122
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390015679
【氏名又は名称】ジャパンマテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】村上 信吉
(72)【発明者】
【氏名】沖 真人
(72)【発明者】
【氏名】塚本 勝朗
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩晃
【テーマコード(参考)】
4F100
5F136
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB10B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA41B
4F100DC11B
4F100DC30B
4F100DG01A
4F100DG01C
4F100DH02A
4F100DH02C
4F100EC18
4F100EJ33
4F100JJ01
4F100JJ01B
5F136BC07
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA14
5F136FA15
5F136FA16
5F136FA23
5F136FA52
5F136FA53
(57)【要約】
【課題】厚み方向における熱伝導性が向上した熱伝導性積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】シート状の金属材と、前記金属材を挟む位置に配置されたシート状の一対の積層材と、を備える熱伝導性積層体であって、前記金属材は、複数の穴と、前記穴の縁部から延びる複数の伝熱フィンと、を備え、前記伝熱フィンは、前記穴の縁部から前記積層材を貫通して前記積層材の表面に露出する起立部と、前記起立部の先端から、平面視において前記穴から離隔する方向に延びるフランジ部と、を備えることを特徴とする、熱伝導性積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の金属材と、前記金属材を挟む位置に配置されたシート状の一対の積層材と、を備える熱伝導性積層体であって、
前記金属材は、複数の穴と、前記穴の縁部から延びる複数の伝熱フィンと、を備え、
前記伝熱フィンは、前記穴の縁部から前記積層材を貫通して前記積層材の表面に露出する起立部と、前記起立部の先端から、平面視において前記穴から離隔する方向に延びるフランジ部と、を備えることを特徴とする、熱伝導性積層体。
【請求項2】
前記複数の穴は、前記穴の縁部から一方の前記積層材を貫通して延びる複数の前記伝熱フィンを備えた第1の穴と、前記穴の縁部から他方の前記積層材を貫通して延びる複数の前記伝熱フィンを備えた第2の穴とを有することを特徴とする、請求項1に記載の熱伝導性積層体。
【請求項3】
前記金属材に形成されている前記第1の穴の個数及び前記第2の穴の個数は、互いに異なることを特徴とする、請求項2に記載の熱伝導性積層体。
【請求項4】
前記第1の穴及び前記第2の穴のうち少なくとも一方が、千鳥状に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の熱伝導性積層体。
【請求項5】
前記金属材は、互いに前記穴の形成密度が異なる第1の領域と第2の領域を有することを特徴とする、請求項1に記載の熱伝導性積層体。
【請求項6】
前記フランジ部の先端には、先鋭部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝導性積層体。
【請求項7】
それぞれの前記フランジ部は、
前記積層材の表面に沿って延出し、前記積層材に埋没しない非埋没構成と、
前記積層材の表面に対して、該積層材に向かう方向に傾斜して延出し、少なくとも一部が該積層材に埋没する埋没構成と、
のうちいずれか一方の構成を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性積層体。
【請求項8】
前記熱伝導性積層体が備える前記フランジ部のうち、前記非埋没構成を備える前記フランジ部は、前記埋没構成を備える前記フランジ部より多いことを特徴とする請求項7に記載の熱伝導性積層体。
【請求項9】
それぞれの前記穴の縁部から延びる前記伝熱フィンは、3個以上6個以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性積層体。
【請求項10】
前記穴の開口率は、5%以上50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性積層体。
【請求項11】
前記金属材は、熱伝導率が20W/m・K以上の材質で構成されることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性積層体。
【請求項12】
前記積層材は、黒鉛材または炭素繊維複合材で構成されることを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一つに記載の熱伝導性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材と積層材とが積層された熱伝導性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維複合材や黒鉛材などの積層材を、金属材と積層させることで、強度を上げつつ、さらに熱伝導性を向上させた熱伝導性積層体が提案されている。このような熱伝導性積層体は、自動車やモバイル系電子機器、航空機器などの各種部品に幅広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、複数個の穴が形成された金属シートを、不織布状態にある炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で挟んで構成される熱伝導性積層体が開示されている。この構成によれば、(a)炭素繊維強化プラスチックの間に金属材を介在させることで、熱伝導性及び機械的強度が向上するとともに、(b)炭素繊維強化プラスチックが金属シートの穴を貫通することにより、金属面の両側の炭素繊維強化プラスチック同士が結合する結合力を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-22685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成では、積層材単体で用いる場合と比べて、熱伝導性積層体の平面方向における熱伝導性を向上させることができるものの、熱伝導性積層体の厚み方向において熱伝導性を十分に発現させることができず、改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、厚み方向における熱伝導性が向上した熱伝導性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、(1)シート状の金属材と、前記金属材を挟む位置に配置されたシート状の一対の積層材と、を備える熱伝導性積層体であって、前記金属材は、複数の穴と、前記穴の縁部から延びる複数の伝熱フィンと、を備え、前記伝熱フィンは、前記穴の縁部から前記積層材を貫通して前記積層材の表面に露出する起立部と、前記起立部の先端から、平面視において前記穴から離隔する方向に延びるフランジ部と、を備えることを特徴とする、熱伝導性積層体。
【0008】
(2)前記複数の穴は、前記穴の縁部から一方の前記積層材を貫通して延びる複数の前記伝熱フィンを備えた第1の穴と、前記穴の縁部から他方の前記積層材を貫通して延びる複数の前記伝熱フィンを備えた第2の穴とを有することを特徴とする、(1)に記載の熱伝導性積層体。
【0009】
(3)前記金属材に形成されている前記第1の穴の個数及び前記第2の穴の個数は、互いに異なることを特徴とする、(2)に記載の熱伝導性積層体。
【0010】
(4)前記第1の穴及び前記第2の穴のうち少なくとも一方が、千鳥状に配置されていることを特徴とする、(2)に記載の熱伝導性積層体。
【0011】
(5)前記金属材は、互いに前記穴の形成密度が異なる第1の領域と第2の領域を有することを特徴とする、(1)に記載の熱伝導性積層体。ただし、本構成は、(1)のほか、(2)~(4)のうちいずれか1つにも適用することができる。
【0012】
(6)前記フランジ部の先端には、先鋭部が形成されていることを特徴とする、(1)に記載の熱伝導性積層体。ただし、本構成は、(1)のほか、(2)~(5)のうちいずれか1つにも適用することができる。
【0013】
(7)それぞれの前記フランジ部は、前記積層材の表面に沿って延出し、前記積層材に埋没しない非埋没構成と、前記積層材の表面に対して、該積層材に向かう方向に傾斜して延出し、少なくとも一部が該積層材に埋没する埋没構成と、のうちいずれか一方の構成を備えることを特徴とする(1)に記載の熱伝導性積層体。ただし、本構成は、(1)のほか、(2)~(6)のうちいずれか1つにも適用することができる。
【0014】
(8)前記熱伝導性積層体が備える前記フランジ部のうち、前記非埋没構成を備える前記フランジ部は、前記埋没構成を備える前記フランジ部より多いことを特徴とする(7)に記載の熱伝導性積層体。
【0015】
(9)それぞれの前記穴の縁部から延びる前記伝熱フィンは、3個以上6個以下であることを特徴とする(1)に記載の熱伝導性積層体。ただし、本構成は、(1)のほか、(2)~(8)のうちいずれか1つにも適用することができる。
【0016】
(10)前記穴の開口率は、5%以上50%以下であることを特徴とする(1)に記載の熱伝導性積層体。ただし、本構成は、(1)のほか、(2)~(9)のうちいずれか1つにも適用することができる。
【0017】
(11)前記金属材は、熱伝導率が20W/m・K以上の材質で構成されることを特徴とする(1)に記載の熱伝導性積層体。ただし、本構成は、(1)のほか、(2)~(10)のうちいずれか1つにも適用することができる。
【0018】
(12)前記積層材は、黒鉛材または炭素繊維複合材で構成されることを特徴とする(1)~(11)のうちいずれか一つに記載の熱伝導性積層体。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る熱伝導性積層体によれば、厚み方向における熱伝導性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態における熱伝導性積層体の一部の平面図である。
図2図1に示す熱伝導性積層体のA-A断面図である。
図3】熱伝導性積層体の製造方法を示すフローチャートである。
図4】熱伝導性積層体を製造する際の金属材及び積層材の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(熱伝導性積層体の基本構成)
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明する。図1は、本実施形態における熱伝導性積層体の一部の平面図である。図2は、図1に示す熱伝導性積層体のA-A断面図である。図1及び図2において、X方向は熱伝導性積層体1の長手方向に相当し、Y方向は熱伝導性積層体1の短手方向に相当し、Z方向は熱伝導性積層体1の厚み方向に相当する。図1及び図2を参照して、熱伝導性積層体1は、シート状の金属材2と、金属材2を挟む位置に配置されるシート状の一対の積層材3、4と、から構成される。本実施形態では、積層材3を金属材2の表面に配し、積層材4を金属材2の裏面に配する。
【0022】
(金属材の構成)
金属材2は、複数の穴21と、各穴21の縁部から延びる複数の伝熱フィン22と、を備える。伝熱フィン22は、平面視において穴21から離隔する方向に延びており、穴21の縁部から積層材3(積層材4)を貫通して、積層材3(積層材4)の表面に露出する起立部221と、起立部221の先端から、平面視において穴21から離隔する方向に延びるフランジ部222と、を備える。起立部221の先端は、積層材3(積層材4)の表面から露出した後、積層材3(積層材4)の表面に沿うように屈曲する屈曲形状に形成されている。ただし、起立部221の先端形状は、これに限られず、例えば、起立部221の先端は、積層材3(積層材4)の表面からZ方向における高さHだけ露出した後、再び積層材3(積層材4)に向かうように屈曲する屈曲形状に形成されてもよい。
【0023】
伝熱フィン22の起立部221が、穴21の縁部から積層材3(積層材4)を貫通して、積層材3(積層材4)の表面に露出することにより、単に穴が複数配置された熱伝導性積層体(伝熱フィン22が設けられていない熱伝導性積層体)と比べて、起立部221を介した熱伝導が生じる分、熱伝導性積層体の厚み方向(Z方向)における熱伝導性を向上させることができる。
【0024】
起立部221を介して伝わる熱は、起立部221の先端に位置するフランジ部222から拡散し、輻射などによって外部に放出される。ここで、平面視において、フランジ部222を、穴21から離隔する方向に延出させることにより、同一の穴21に形成されるフランジ部222同士が重なることが抑制されるため、放熱が阻害されにくくなり、フランジ部222から十分な放熱を行うことができる。そのため、起立部221を介したフランジ部222への熱伝導が促進され、厚み方向(Z方向)における熱伝導性を向上させることができる。
【0025】
なお、フランジ部222は、平面視において、穴21から離隔する方向に延出する構成であればよい。したがって、図1及び図2に示すように、フランジ部222が、積層材3(積層材4)の表面に沿って延出し、積層材3(積層材4)に埋没しない構成(以下、非埋没構成と称す)であってもよい。この構成によれば、フランジ部222が積層材3(積層材4)の表面と略面一となるため、熱伝導性積層体1の表面を触った際のフランジ部222による引っかかりが抑制され、使い心地をより高めることができる。また、フランジ部222が、積層材3(積層材4)の表面に対して、積層材3(積層材4)に向かう方向に傾斜して延出し、フランジ部222の少なくとも一部が積層材3(積層材4)に埋没する構成(以下、埋没構成と称す)であってもよい。
さらに、金属材2に形成されたフランジ部222のうち、一部のフランジ部222が非埋没構成を有し、その他のフランジ部222が埋没構成を有してもよい。この場合、熱伝導性積層体1に、非埋没構成を有するフランジ部222が、埋没構成を有するフランジ部222よりも多く形成されていることが好ましい。この構成によれば、非埋没構成のフランジ部222が支配的となるため、熱伝導性積層体1の表面を触った際のフランジ部222による引っかかりが抑制され、使い心地をより高めることができる。
【0026】
フランジ部222は、略三角形状に形成されている。言い換えると、フランジ部222は、穴21から離隔するにつれて幅が細くなる先鋭部を有している。ただし、先鋭部を実現する構成は略三角形に限らない。フランジ部222を略多角形状に形成することによって、先鋭部を実現してもよい。略多角形状は、例えば、略三角形以外の略四角形、略五角形であってもよい。先鋭部の技術的意義については、後述する。
【0027】
1つの穴21が備える伝熱フィン22の数は、特に限定されないが、3個以上6個以下であることが好ましい。この構成によれば、1つの穴21が備える伝熱フィン22の数を7個以上にする場合と比べ、穴21が備える伝熱フィン22の形状にばらつきが生じにくくなるほか、フィンの強度がより向上して積層材3及び4をより貫通しやすくなる。そのため、厚み方向(Z方向)における熱伝導率を、熱伝導性積層体1の平面方向(XY方向)においてより均一に向上させることができる。
【0028】
穴21の配置は、本実施形態では、金属材2の全面に亘って格子状に均等に配置されている。しかしながら、穴21の配置はこれに限られず、所定の領域にのみ穴21を集中して配置する構成であってもよい。すなわち、金属材2が、互いに穴21の形成密度が異なる第1の領域及び第2の領域を備える構成であってもよい。この構成によれば、所定の領域において厚み方向(Z方向)の熱伝導率をより高めることができるため、局所的に高い放熱性が要求される領域を備えた部品など、より広範な用途に使用することができる。
【0029】
穴21は、縁部から積層材3を貫通して延びる伝熱フィン22を備える穴21a(請求項3における「第1の穴」に相当)と、縁部から積層材4を貫通して延びる伝熱フィン22を備える穴21b(請求項3における「第2の穴」に相当)と、から構成される。この構成によれば、積層材3及び積層材4の双方において、起立部221を介した熱伝導を生じさせ、厚み方向(Z方向)の熱伝導率を向上させることができる。そのため、熱伝導性積層体1の厚み方向(Z方向)の全体に亘って、熱伝導率を向上させることができる。
【0030】
本実施形態では、穴21aと穴21bとが、金属材2の長手方向(X方向)及び短手方向(Y方向)において交互に形成されている。これにより、金属材2には、穴21aと穴21bとが同じ数だけ形成されている。しかしながら、穴21aと穴21bの配置はこれに限られず、金属材2に形成された穴21aの個数と穴21bの個数とが互いに異なるように、穴21aと穴21bを配置してもよい。例えば、金属材2に形成された穴21aと穴21bとの個数比を2:1としてもよく、1:2としてもよい。この構成によれば、積層材3(積層材4)における厚み方向(Z方向)の熱伝導率を高めることができるため、表面(裏面)に特に高い放熱性が要求される部品など、より広範な用途に使用することができる。
【0031】
穴21aの配置は、特に限定されないが、好ましくは、本実施形態のように、金属材2の長手方向(X方向)に連続して並ぶ穴21aの列(第1穴列)と、金属材2の長手方向(X方向)に連続して並ぶ穴21aの列であって、金属材2の短手方向(Y方向)において第1穴列と隣り合う列(第2穴列)と、が短手方向(Y方向)において交互に形成され、第1穴列の穴21aと、第2穴列の穴21aと、は短手方向(Y方向)に見た場合において互いに重ならない位置に形成された配置(いわゆる千鳥状配置)である。この配置によれば、穴21aの他の配置方法と比べて、穴21aの開口率(後述)を高めることができるため、伝熱フィン22をより多く形成でき、厚み方向(Z方向)における熱伝導率をさらに向上させることができる。
穴21aの配置は、より好ましくは、本実施形態のように、上述の千鳥状配置において、第1穴列の所定の穴21aの中心と、該第1穴列と短手方向(Y方向)に隣り合う第2穴列の穴21aのうち該所定の穴21aに最も近接する2つの穴21aの中心と、を結んだ線分のなす角θが90度となる配置である(図1参照)。この配置によれば、他の千鳥状配置と比べて、穴21aの開口率(後述)をさらに高めることができるため、厚み方向(Z方向)における熱伝導率を一層向上させることができる。穴21bの好ましい配置及びより好ましい配置は、上記の穴21aの配置と同様である。穴21a及び穴21bの配置を、両方ともθが90度となるように配置することにより、穴21aと穴21bとの位置関係から、穴21が図1に示すような45度千鳥状配置となる。そのため、穴21の開口率(後述)をさらに一層高めることができ、これにより、厚み方向(Z方向)における熱伝導率をさらに一層向上させることができる。
【0032】
長手方向(X方向)に沿って連続する2つの穴21aの中心間の間隔d1(以下、縦ピッチと称す)及び短手方向(Y方向)に沿って連続する2つの穴21aの中心間の間隔d2(以下、横ピッチと称す)は、特に限定されないが、穴径の1.5倍以上4倍以下であることが好ましく、穴径の2倍以上3.5倍以下であることがより好ましい。この構成によれば、伝熱フィン22が形成されるように金属材2に穴あけ加工をおこなっても、金属材2に波うち等の変形が生じることをさらに抑制できるとともに、伝熱フィン22がX方向及びY方向において十分な間隔で形成されることにより、伝熱フィン22が互いに干渉することを抑制できる。また、縦ピッチd1と横ピッチd2とは、本実施形態のように同じ長さとしてもよいが、異なる長さとしてもよい。穴21bの縦ピッチ及び横ピッチに関しても同様である。
【0033】
本実施形態において、穴21は円形に形成されているが、穴21の形状はこれに限られず、多角形状などであってもよい。ただし、穴21を円形とすることにより、穴21の加工が容易となるため、好ましい。穴21が多角形状である場合、穴21の角の数は、3以上6以下であることが好ましい。この構成によれば、穴21の角の数を7以上にする場合と比べ、穴21が備える伝熱フィン22の形状にばらつきが生じにくくなるほか、フィンの強度がより向上して積層材3及び4をより貫通しやすくなる。そのため、厚み方向(Z方向)における熱伝導率を、熱伝導性積層体1の平面方向(XY方向)においてより均一に向上させることができる。
【0034】
穴21の径は、特に限定されないが、1mm以上5mm以下であることが好ましい。この構成によれば、伝熱フィン22を備えた多数の穴21を、金属材2に効率的に配置することができる。
【0035】
穴21の開口率は、特に限定されないが、5%以上50%以下であることが好ましい。ここで、穴21の開口率とは、穴21が形成される前の金属材2のXY平面における全体面積に対する、穴21の総面積の割合を示す。穴21の開口率は、例えば、穴21の径と縦ピッチd1及び横ピッチd2から、既知の方法によって計算することができる。穴21の開口率を5%以上50%以下とすることにより、厚み方向(Z方向)における高い熱伝導性を享受できることに加え、補強材としての役割も果たす金属材2を十分に残存させることができるため、熱伝導性積層体1の機械的強度をより高めることができる。穴21の開口率は、より好ましくは5%以上15%以下であり、最も好ましくは9%以上15%以下である。
【0036】
金属材2の材質は、特に限定されないが、熱伝導率が20W/m・K以上のものが好ましく、100W/m・K以上であることがより好ましく、銅またはアルミニウムとすることが最も好ましい。この構成によれば、熱伝導性積層体1の平面方向(XY方向)及び厚み方向(Z方向)における熱伝導率をさらにより一層向上させることができる。
【0037】
伝熱フィン22を除いた金属材2の厚みは、特に限定されないが、0.05mm以上1mm以下であることが好ましい。この構成によれば、伝熱フィン22の強度と熱伝導性の向上が図れるほか、厚み方向(Z方向)における熱伝導性積層体1の2次加工をより容易に行うことができる。
【0038】
厚み方向(Z方向)に見た場合における、積層材3または積層材4の面積に対する、積層材3、4と金属材2との重複面積の割合M(%)については、特に限定されない。
M(%)=100の場合、積層材3、4と金属材2とが完全に重なり合っているため、積層材3、4の全面に亘って熱伝導性を高めることができる。
また、0<M(%)<100の場合、積層材3、4の一部の面が、金属材2と重なり合っている。そのため、金属材2が配置された部分において、局所的に熱伝導性を高めることができる。この場合、例えば、積層材3、4と金属材2とが重複していない領域に、金属材と同じ厚さのシートが配置された構成とすることができる。この構成によれば、積層材3、4の全面に亘って、厚さを均一とすることができる。該シートの材質は特に限定されないが、例えば、金属材2より比重の軽い素材を用いることで、軽量化を図ることができる。
【0039】
金属板2は、積層材3及び4との接着性を高めるために、ケミカルエッチングやサンドブラスト等の化学的もしくは物理的な表面粗化や、トリアジンチオール化合物やカップリング剤などによる表面処理を行ってもよい。
【0040】
(積層材の構成)
積層材3及び4として、フィルムやシート状、粉末状の樹脂材、粘土鉱物、黒鉛材や、ロックウールやグラスウールなどによる短繊維や長繊維などの繊維シートのほか、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維基材に樹脂を含浸させた繊維強化複合材などが挙げられるが、熱伝導性積層体の熱伝導率を高める観点から、黒鉛材や炭素繊維複合材を用いることが好ましい。
【0041】
黒鉛材としては、膨張黒鉛や、膨張黒鉛と熱伝導性フィラー(人造黒鉛、窒化ホウ素、ピッチ系炭素繊維ミルド等)とを混合した混合グラファイト、ポリイミドフィルム等を黒鉛化したグラファイトシート等を用いることができる。黒鉛材は、接着剤を含んでもよく、含まなくてもよい。接着剤を用いる場合は、例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、石油樹脂などを主成分とする接着剤や粘着剤を用いることができるが、黒鉛粉、コークス、カーボンブラックなどが配合されたものであることが望ましい。
【0042】
炭素繊維複合材は、連続繊維系の炭素繊維または短繊維系の炭素繊維と、マトリックス樹脂と、を含有する。なお、炭素繊維にはPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維があるが、これらのうち一方のみを使用してもよく、併用してもよい。また、マトリックス樹脂としては、種々の樹脂を用いることができるが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂は例えば、フェノキシ樹脂や熱可塑性エポキシ樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィンやポリアミド6などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられるが、フェノキシ樹脂または熱可塑性エポキシ樹脂であることがより好ましく、熱可塑性エポキシ樹脂であることが最も好ましい。
炭素繊維複合材としては、連続した炭素繊維を平織りや綾織りした織布にマトリックス樹脂を含浸したクロス材や、連続繊維を一方向に引き揃えてマトリックス樹脂を含浸した一方向強化繊維材料(UD材)、前記一方向強化繊維材料を短冊状などの小片にして集成したランダムマット材料、フェルトや不織布といった短繊維の炭素繊維からなる繊維基材にマトリックス樹脂を含浸した短繊維材料、シートモールドコンパウンド(SMC)と呼ばれる成形材料等が挙げられる。ここで、炭素繊維複合材としてUD材を用い、積層材3及び4の繊維方向が一定の角度で交差する(疑似等方性とする)ように積層材3及び4を配置して積層することで、厚み方向(Z方向)の熱伝導性に加えて、平面方向(XY方向)の熱伝導性も高められる。そのため、炭素繊維複合材としてUD材を用いることが好ましい。
【0043】
積層材3及び4は、金属材2に形成された穴21に入り込んで互いに接着している。この構成によれば、穴21を形成しない場合と比べ、アンカー効果によって、積層材3及び4の結合力が向上する。そのため、金属材2から積層材3及び4が剥離することをより抑制できる。なお、本発明者らは、積層材3及び4として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使用すると、金属材2に穴21を形成しない場合や、伝熱フィン22を有しない穴21を形成した場合と比べ、上記の剥離抑制効果のみならず、熱伝導性積層体1の機械的強度も向上させることができることを見出した(実施例参照)。これには、金属材2が備える伝熱フィン22が寄与しているものと推測される。
【0044】
積層材3及び4の厚みは、特に限定されないが、少なくとも伝熱フィン22の高さ未満であり、0.1mm以上2mm以下であることが好ましい。この構成によれば、熱伝導性積層体1の機械的強度を向上させることができるとともに、熱伝導性積層体1の2次加工性を高めることができる。積層材3の厚みと積層材4の厚みとは、同一であってもよく、相違してもよい。
【0045】
(熱伝導性積層体の製造方法)
熱伝導性積層体1の製造方法について、図3及び図4を用いて以下に説明する。図3は、熱伝導性積層体の製造方法を示すフローチャートである。図4は、熱伝導性積層体を製造する際の金属材及び積層材の構成を示す概略図である。まず、シート状の金属材にパンチングを行うことにより、穴21と、穴21の縁部から表面又は裏面に突出した突出部22´と、が形成された金属材2´を製造する(S1)。穴21の形状、穴21の径及び穴21毎の突出部22´の数は、パンチングに用いられるピンの形状等によって決定される。次に、S1で得られた金属材2´を、シート状の積層材3、4で挟み込み、さらに上下からクッション材(不図示)で挟み込んで、第1プレスを行う(S2)。S2の第1プレスにより、S1で形成された突出部22´が、積層材3、4を突き抜け、積層材3、4の表面に露出する。その後、クッション材を取り除き、積層する金属材2´及び積層材3、4について、第2プレスを行う(S3)。S3の第2プレスにより、積層材3及び4が穴21に入り込んで互いに接着するとともに、S2の第1プレスで表面に突出した突出部22´が、平面視において穴21から離隔する方向に延びる形状に形成される(伝熱フィン22)。
【0046】
上記製造方法によれば、突出部22´の形状は、起立部221及びフランジ部222の形状と対応する。ここで、突出部22´が、穴21から離隔するにしたがって先が細くなる先鋭部を有することにより、S2において突出部22´が積層材3、4を突き抜ける際、積層材3、4の中の結合構造を切断せずにすり抜けやすくなるため、積層材自体の強度を維持することができる。この点に鑑み、上記製造方法によって形成されたフランジ部222は、穴21から離隔するにつれて幅が細くなる先鋭部を有することが好ましい。
【0047】
本発明の熱伝導性積層体1は、任意の3次元形状に加工することができる。3次元形状への加工は、金属材2と積層材3及び4を積層複合化させる際に金型を使用して同時に行ってもよいが、これに限られず、最初に熱伝導性積層体1を平板状に成形した後、2次的に金型を使用して3次元加工を行ってもよい。
【0048】
熱伝導性積層体1の表面に、めっきや塗装、金属箔を積層してもよい。塗装を行う場合は、一般的な塗料を用いることもできるが、放熱塗料を使用することが好ましい。これにより、熱伝導性積層体1のフランジ部222からの放熱に加えて、熱伝導性積層体1の表面からも放熱塗料を介した放熱が生じるため、放熱に関する相乗効果が得られる。
放熱塗料としては、アルミナや窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの高熱伝導性フィラーをエポキシ樹脂などに配合することによって熱伝導性を高めた熱伝導性塗料のほか、熱を遠赤外線として放射する効率(輻射率)が高いフィラー(炭化ケイ素や電気石など)と、樹脂材料と、からなる輻射性塗料が挙げられる。これらの放熱塗料は、熱伝導性積層体1の使用箇所に応じて適宜選択される。例えば、近年の高性能化した携帯情報端末(例えば、スマートフォンやタブレットPC、ノートPC、スマートウォッチなど)には、輻射性塗料を用いることが好ましい。これは、熱伝導性塗料を使用した場合、筐体容積には限界があることから、伝熱を主とした熱拡散では放熱性能が不足するのに対し、輻射性塗料を用いることで、伝熱ではなく遠赤外線として空間中に熱を放出することができ、より放熱性能を向上させることができるためである。このような輻射性塗料としては、QUATLON(ジャパンマテックス製)やクールテック(オキツモ製)、サーモジン(東京熱化学工業製)などが例示される。
【0049】
本発明の熱伝導性積層体は、上記の携帯情報端末や、熱を発する電気機器(例えば、LED照明やフラットディスプレイ)などの、筐体や放熱部材に用いられる。しかしながら、本発明の熱伝導性積層体の用途はこれに限られない。例えば、ECUボックスや排気関係の部材、車載電池ケース部材といった自動車分野などで広く利用することができる。特に好適には、軽量で高い放熱性能が要求とされる産業用ロボットやドローンで使用されるモーターのケースとして用いられる。
【0050】
(実施例)
本実施例では、本発明に係る熱伝導性積層体(実施例)と、従来の熱伝導性積層体(比較例)と、をそれぞれ作成し、厚み方向における熱伝導率を評価した。また、各実施例及び比較例について、機械的強度及び成型性の評価も行った。
【0051】
[実施例1、3に使用する金属材Aの製造]
厚さ0.2mmのアルミ製シートに、ピンを用いてパンチングを行い(上述のS1に相当)、穴と、穴の縁部から金属材の表面又は裏面に突出した突出部と、が形成された金属材A(上述の実施形態の金属材2´に相当)を作成した。穴は直径1.5mmの円形とした。穴は、本実施形態の図1に示す45度千鳥状配置とし、ピッチ(縦ピッチ及び横ピッチ)を6mmに設定した。各穴における突出部の数は4個とした。突出部の高さは1.0mmとした。突出部の形状は、穴から離れるにつれて幅が細くなる先鋭部を備えた形状とした。穴径、穴配置及びピッチから算出された開口率は9.8%であった。
【0052】
[実施例2、4に使用する金属材Bの製造]
厚さ0.3mmのアルミ製シートに、ピンを用いてパンチングを行い(上述のS1に相当)、穴と、穴の縁部から金属材の表面又は裏面に突出した突出部と、が形成された金属材B(上述の実施形態の金属材2´に相当)を作成した。穴は直径1.5mmの円形とした。穴は、本実施形態の図1に示す45度千鳥状配置とし、ピッチ(縦ピッチ及び横ピッチ)を5mmに設定した。各穴における突出部の数は4個とした。突出部の高さは1.0mmとした。突出部の形状は、穴から離れるにつれて幅が細くなる先鋭部を備えた形状とした。穴径、穴配置及びピッチから算出された開口率は14.1%であった。
【0053】
[実施例1]
上述の方法で作成した金属材Aの表面及び裏面に石油樹脂系粘着剤を塗布した後、該金属材Aを2枚のグラファイトシート(ジャパンマテックス社製 厚み0.2mm)で挟み込み、さらに上下からウレタン製のクッション材で挟み込んで、常温下でロールプレスにてプレスを行った(上述の実施形態のS2に相当)。その後、クッション材を取り除き、再度ロールプレスにてプレスした(上述の実施形態のS3に相当)。これにより、伝熱フィンを備えた熱伝導性積層体が得られた。得られた熱伝導性積層体は、冷却後、各種評価に供された。
【0054】
[実施例2]
上述の方法で得られた金属材Bを使用して、実施例1と同様の方法によって、伝熱フィンを備えた熱伝導性積層体を得た。得られた熱伝導性積層体は、冷却後、各種評価に供された。
【0055】
[実施例3]
金属材Aの両面にそれぞれ2枚の一方向炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成型材料(日鉄ケミカル&マテリアル製 NS-TEPreg 目付量:110g/mm、厚み0.1mm)を、その内層(金属材Aの隣接層)の繊維方向が0°、表面層の繊維方向が90°となるように積層し、さらに上下からウレタン製のクッション材で挟み込んで、加熱プレス機で180℃にて1MPa未満で1分間プレスした(上述の実施形態のS2に相当)。その後、クッション材を取り除き、SUS製鏡面板で挟み込み、再度加熱プレス機で180℃にて14MPaで1分間プレスした(上述の実施形態のS3に相当)。これにより、伝熱フィンを備えた熱伝導性積層体が得られた。得られた熱伝導性積層体は、冷却後、各種評価に供された。
【0056】
[実施例4]
上述の方法で得られた金属材Bを使用して、実施例3と同様の方法によって、伝熱フィンを備えた熱伝導性積層体を得た。得られた熱伝導性積層体は、冷却後、各種評価に供された。
【0057】
[比較例1]
上述の方法で得られた金属板Aの突出部を除去した後、実施例1と同様の方法によって、熱伝導性積層体を得た。得られた熱伝導性積層体は、冷却後、各種評価に供された。
【0058】
[比較例2]
上述の方法で得られた金属板Aの突出部を除去した後、実施例3と同様の方法によって、熱伝導性積層体を得た。得られた熱伝導性積層体は、冷却後、各種評価に供された。
【0059】
[比較例3]
金属材として、パンチングを施していない厚さ0.2mmのアルミ製シートを使用して、実施例1と同様の方法によって、熱伝導性積層体を得た。得られた熱伝導性積層体は、冷却後、各種評価に供された。
【0060】
[比較例4]
金属材として、パンチングを施していない厚さ0.2mmのアルミ製シートを使用して、実施例3と同様の方法によって、熱伝導性積層体を得た。得られた熱伝導性積層体は、冷却後、各種評価に供された。
【0061】
[厚み方向における熱伝導率の評価手法]
ASTM-D5470に準拠した方法により、実施例及び比較例で得られた熱伝導性積層体について、厚み方向における熱伝導率を評価した。なお、測定に際しては、熱伝導性積層体の表面を#1000のサンドペーパーを用いて研磨し、熱伝導性積層体の表面(伝熱フィンが形成されている場合には、伝熱フィンのうち熱伝導性積層体の表面に露出した部分を含む)に付着している樹脂を除去した。
【0062】
[機械的強度の評価方法]
機械的強度については、「曲げ強度及び曲げ弾性率」「衝撃強度」の2つの観点から評価を行った。曲げ強度及び曲げ弾性率については、JISK7074(1988年制定)の炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法に準拠した方法で、各実施例及び比較例で得られた熱伝導性積層体の曲げ強度および曲げ弾性率を測定し、最大応力を求めた。衝撃強度については、JIS K7110:1999 プラスチック-アイゾット衝撃強さの試験方法に準拠して試験温度23℃、ハンマー容量1Jにてノッチなしの試験片を用いて測定を行った。なお、機械的強度の評価のための試験片はいずれも、表面層の繊維方向が試験片の長手方向となるように配置して加工した。
【0063】
[成形性の評価方法]
スマートフォンの筐体を模した形状(縦135mm×横75mm×高さ5mm)の金型を準備し、各実施例および比較例で作製した平板状の積層体に、温度180℃、圧力10MPaで成形加工を施し、2次加工性を評価した。評価は目視によって行い、2次加工を行った成形体に割れやシワ、剥離などの欠陥がないものを○とし、2次加工を行った成形体に割れやシワ、剥離などの欠陥を生じたものを×とした。
【0064】
実施例及び比較例の評価結果を、表1に示す。なお、実施例3、4、比較例2、4の「CFRP」とは、上記の一方向炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成型材料を指す。
【表1】
【0065】
実施例1と比較例1とでは、伝熱フィンの有無のみが異なる。表1を参照して、実施例1では、比較例1よりも、厚み方向の熱伝導率が向上した。
【0066】
実施例1と比較例3とでは、穴及び伝熱フィンの有無が異なる。表1を参照して、実施例1では、比較例3よりも、厚み方向の熱伝導率が大幅に向上した。
【0067】
実施例2は、実施例1とは使用する金属材の厚さ及びピッチが異なる。表1を参照して、実施例2では、実施例1よりも、厚み方向の熱伝導率がさらに向上した。
【0068】
実施例3と比較例2とでは、伝熱フィンの有無のみが異なる。表1を参照して、実施例3では、比較例2よりも、厚み方向の熱伝導率が大幅に向上した。また、機械的強度(最大応力、衝撃強度)に着目すると、実施例3では、比較例2よりも最大応力及び衝撃強度が大きくなり、機械的強度が向上した。
【0069】
実施例3と比較例4とでは、穴及び伝熱フィンの有無が異なる。表1を参照して、実施例3では、比較例4よりも、厚み方向の熱伝導率が大幅に向上した。また、機械的強度(最大応力、衝撃強度)に着目すると、実施例3では、穴開加工を施しているにもかかわらず、比較例4よりも最大応力及び衝撃強度が大きくなり、機械的強度が向上した。
【0070】
実施例4は、実施例3とは使用する金属材の厚さ及びピッチが異なる。表1を参照して、実施例4では、実施例3よりも、厚み方向の熱伝導率がさらに向上した。
【0071】
(変形例)
上述の実施形態では、金属材2に穴21a及び穴21bが形成されている。しかしながら、これに限られず、金属材2に穴21aまたは穴21bの一方のみが形成される構成であってもよい。この構成では、伝熱フィン22の起立部221が、積層材3または4を貫通して表面に露出する。そのため、当該構成であっても、単に穴が複数配置された熱伝導性積層体(伝熱フィン22が設けられていない熱伝導性積層体)と比べて、起立部221を介した熱伝導が生じる分、熱伝導性積層体1の厚み方向(Z方向)における熱伝導性を向上させることができる。
【0072】
(変形例)
上述の実施形態では、金属材2には、フィンとして、起立部221およびフランジ部222を有する伝熱フィン22のみが形成されている。しかしながら、これに限られず、金属材2には、伝熱フィン22のほか、起立部221およびフランジ部222を有さずに積層材3または4に埋没する埋没フィンが形成されてもよい。埋没フィンは、例えば、金属材2の製造過程において、シート状の金属材へのパンチング(図3のS1)によって、穴21の縁部に強度が不十分なフィンが形成され、当該フィンが、第1プレス(図3のS2)及び第2プレス(図3のS3)によって積層材3または4に埋没したものである。ただし、埋没フィンは、起立部221およびフランジ部222を有しないため、熱伝導性積層体における厚み方向(Z方向)の熱伝導性の向上に十分に寄与しない。そのため、埋没フィンの数を減少させて伝熱フィン22の数を増加させることで、熱伝導性積層体における厚み方向(Z方向)の熱伝導性をより向上させることができる。したがって、金属材2に形成されたフィンの総数のうち、50%以上が伝熱フィン22であることが好ましく、80%以上が伝熱フィン22であることがより好ましい。
【0073】
なお、本発明は、その要旨を超えない限り、上述の実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0074】
1 熱伝導性積層体 2 金属材 3、4 積層材 21、21a、21b 穴 22 伝熱フィン 221 起立部 222 フランジ部

図1
図2
図3
図4