(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162189
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】化合物、及び有機膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 15/60 20060101AFI20231031BHJP
C07C 43/285 20060101ALI20231031BHJP
C07C 43/215 20060101ALI20231031BHJP
C07C 211/54 20060101ALI20231031BHJP
C07D 333/18 20060101ALI20231031BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20231031BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20231031BHJP
C07D 307/91 20060101ALN20231031BHJP
C07D 209/86 20060101ALN20231031BHJP
C07D 311/82 20060101ALN20231031BHJP
C07D 335/12 20060101ALN20231031BHJP
H05K 3/00 20060101ALN20231031BHJP
【FI】
C07C15/60 CSP
C07C43/285
C07C43/215
C07C211/54
C07D333/18
C08G61/12
H10K85/60
C07D307/91
C07D209/86
C07D311/82
C07D335/12
H05K3/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125533
(22)【出願日】2023-08-01
(62)【分割の表示】P 2019102009の分割
【原出願日】2019-05-31
(31)【優先権主張番号】16/013,672
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武
(72)【発明者】
【氏名】新井田 恵介
(72)【発明者】
【氏名】長井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】澤村 昂志
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー エドワード ヘス
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ブレイタ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ポール サンダース
(72)【発明者】
【氏名】ルディ ジェイ ウォジテッキ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、副生物が発生せず、耐熱性や基板上に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板加工時のドライエッチング耐性も良好な有機下層膜を形成できる化合物、及び該化合物を含む有機膜形成用組成物。
【解決手段】下式(1-1)で示される構造を分子内に2つ以上有する化合物。
(Arは置換/非置換の芳香環又はN及びSのうち1個以上を含む芳香環を示し、2つのAr同士が連結して環構造を形成してもよい。破線は、Yとの結合手であり、Yは、置換/非置換の芳香環または複素芳香環を有し、結合手が芳香環構造又は複素芳香環構造にある、炭素数が6~30個の2価又は3価の有機基である。RはH又は炭素数1~68の1価の基である。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(T1)及び(T2)で示されるいずれかの化合物であることを特徴とする化合物。
【化1】
(上記式(T1)中、pは、繰り返し単位数を示し、1~50である。)
【化2】
(上記式(T2)中の化合物の重量平均分子量は500~20,000であり、式中のかっこは繰り返し単位であることを示す。)
【請求項2】
有機膜を形成するための組成物であって、(A)下記式(T3)及び(T4)で示されるいずれかの化合物、及び(B)有機溶剤を含有するものであることを特徴とする有機膜形成用組成物。
【化3】
【化4】
(上記式(T4)中の化合物の重量平均分子量は500~20,000であり、式中のかっこは繰り返し単位であることを示す。)
【請求項3】
前記(A)成分が、重量平均分子量500~20,000であることを特徴とする請求項2に記載の有機膜形成用組成物。
【請求項4】
前記有機膜形成用組成物が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の有機膜形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置製造工程の不活性ガス中で使用される、化合物、当該化合物の製造方法ならびに当該化合物を含む有機膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の高集積化と高速度化は、汎用技術として光露光を用いたリソグラフィー技術(光リソグラフィー)における光源の短波長化によるパターン寸法の微細化によって達成されてきた。このような微細な回路パターンを半導体装置基板(被加工基板)上に形成するためには、通常パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板を加工する方法が用いられる。しかしながら、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法が存在しないため、近年では多層レジスト法による基板加工が一般化している。この方法は、フォトレジスト膜(以下レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、更に中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0003】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この方法は、被加工基板上に有機樹脂含有組成物からなる有機下層膜材料を用いて塗布、焼成することにより有機下層膜(以下、有機膜)を成膜し、その上にケイ素含有樹脂含有組成物からなるレジスト中間膜材料を用いて塗布、焼成することによりケイ素含有膜(以下、ケイ素中間膜)として成膜し、その上に一般的なレジスト上層膜を形成する。当該レジスト上層膜をパターニングした後、フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを行うと、有機系のレジスト上層膜はケイ素中間膜に対して良好なエッチング選択比を取ることが出来るため、レジスト上層膜パターンをケイ素中間膜に転写することができる。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持たないレジスト上層膜や、被加工基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持たないレジスト上層膜を用いても、通常、ケイ素中間膜はレジスト上層膜に比べて同等以下の膜厚であるため、容易にケイ素中間膜にパターンを転写することができる。続いてパターン転写されたケイ素中間膜をドライエッチングマスクとして酸素系又は水素系ガスプラズマによるドライエッチングで有機下層膜にパターン転写すれば、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持つ有機下層膜にパターン転写することができる。このパターン転写された有機下層膜パターンをフッ素系ガスや塩素系ガスなどを用いてドライエッチングで基板にパターン転写することが出来る。
【0004】
一方、半導体装置の製造工程における微細化は、光リソグラフィー用光源の波長に由来する本質的な限界に近づきつつある。そのため、近年においては微細化に頼らない半導体装置の高集積化が検討されており、その方法の一つとしてマルチゲート構造やゲートオールアラウンド等の複雑な構造を有する半導体装置が検討されており、一部は既に実用化されている。このような構造を多層レジスト法で形成する場合、被加工基板上で形成されたホール、トレンチ、フィン等の微小パターンを空隙なく有機膜材料で埋め込んだり、段差やパターン密集部分とパターンのない領域を有機膜材料で埋め込んで平坦化(planarization)可能な有機膜材料を適用することが出来る。このような有機膜材料を用いて段差基板上に平坦な有機下層膜表面を形成することによって、その上に成膜するケイ素中間膜やレジスト上層膜の膜厚変動を抑え、光リソグラフィーの焦点裕度やその後の被加工基板の加工工程におけるマージン低下を抑制することが出来る。これにより、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。一方、単層レジスト法では、段差やパターンのある被加工基板を埋めるためには、上層レジスト膜の膜厚が厚くなり、それによる露光現像後のパターン倒れや、露光時の基板からの反射によりパターン形状劣化など、露光時のパターン形成裕度が狭くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが困難である。
【0005】
更に次世代の半導体装置の高速度化の手法として、例えば、歪シリコンやガリウムヒ素などを用いた電子移動度の高い新規材料やオングストローム単位で制御された超薄膜ポリシリコン等の精密材料の適用も検討され始めている。しかしながら、このような新規精密材料が適用されている被加工基板では、上記のような有機下層膜材料による平坦化膜形成時の条件、例えば空気中、300℃以上の成膜条件においては、空気中の酸素によって当該材料が腐食され、半導体装置の高速度化が材料設計どおりの性能を発揮することが出来ず、工業的な生産として成り立つ歩留まりに達成しない可能性がある。そこで、このような高温条件下の空気による基板の腐食に起因する歩留まりの低下を避けるため、不活性ガス中で成膜出来る有機下層膜材料が期待されている。
【0006】
従来、フェノール系やナフトール系化合物に対して縮合剤としてケトン類やアルデヒド類などのカルボニル化合物や芳香族アルコール類を用いた縮合樹脂類が多層レジスト法用の有機膜形成用材料として知られている。例えば、特許文献1に記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特許文献2に記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特許文献3に記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特許文献4に記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂などが例示できる。このような材料は、架橋剤としてメチロール化合物による架橋や、空気中の酸素の作用による芳香環のα位での酸化とその後の縮合による架橋反応による硬化作用により、次工程で使用される塗布膜材料に対する溶剤耐性を持つ膜として成膜されている。
【0007】
更に、三重結合を硬化性樹脂の分子間架橋基として適用している材料の例として、特許文献5-10などが知られている。しかしながら、これらの材料では、硬化条件として実際に不活性ガス中での例示されておらず、これらの材料における不活性ガス中における硬化膜の形成や、高温条件下の熱分解による膜厚変動などについては知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-128509号公報
【特許文献2】特開2006-293298号公報
【特許文献3】特開2006-285095号公報
【特許文献4】特開2010-122656号公報
【特許文献5】特開2010-181605号公報
【特許文献6】WO2014-208324号
【特許文献7】特開2012-215842号公報
【特許文献8】特開2016-044272号公報
【特許文献9】特開2016-060886号公報
【特許文献10】特開2017-119671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、空気中のみならず、不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、揮発性の副生物が発生せず、耐熱性や、基板上に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板加工時のドライエッチング耐性も良好な有機下層膜を形成できる化合物、該化合物の製造方法、及び該化合物を用いた有機膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、下記一般式(1-1)で示される構造を分子内に2つ以上有する化合物を提供する。
【化1】
(式中、Arはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香環、または置換基を有してもよい、窒素原子及び硫黄原子のうち少なくとも1個を含む芳香環を示し、2つのAr同士が連結して環構造を形成してもよい。破線は、Yとの結合手であり、Yは、置換基を有してもよい芳香環または置換基を有してもよい複素芳香環を有し、結合手が芳香環構造又は複素芳香環構造にある、炭素数が6~30個の2価又は3価の有機基である。Rは水素原子又は炭素数1~68の1価の基である。)
【0011】
このような化合物であれば、空気中のみならず、不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、副生物が発生せず、耐熱性や、基板上に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板加工時のドライエッチング耐性も良好な有機下層膜を形成することができる。
【0012】
またこの場合、前記化合物が、下記一般式(2-1)および(2-2)で示される単位を有する化合物であることが好ましい。
【化2】
(式中、AR1、AR2は、炭素数が1~30個のアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基を有してもよいベンゼン環、ピリジン環またはナフタレン環であり、mは0又は1であり、m=0のとき、AR1とAR2の芳香環同士で橋かけ構造を形成せず、m=1のとき、AR1、AR2はXを介してAR1とAR2の芳香環同士で橋かけ構造を形成し、Xは単結合又は下記式(3)のいずれかである。nは2又は3であり、Yは、前述と同様である。Zは水素原子又は炭素数が1~30個の1価の有機基である。aはbと結合し、cは、水素原子又は炭素数が1~30個の1価の有機基であるか、aと結合する。)
【化3】
【0013】
このような上記一般式(2-1)および(2-2)で示される単位を有する化合物であれば、より確実に、不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、耐熱性や、基板上に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に更に優れるために好ましい。
【0014】
また本発明では、上記一般式(1-1)で示される構造を分子内に2つ以上有する化合物の製造方法であって、
下記式(4-1)で示される反応でジオールまたはトリオールを製造する工程、
【化4】
(式中、Ar及びYは上記と同じである。nは2又は3である。MはLiまたはMg-Halであり、HalはCl、Br、Iである。)
下記式(4-2)で示される反応でジハロゲン化物またはトリハロゲン化物を製造する工程、及び
【化5】
(式中、Ar、Y、Hal、nは上記と同じである。)
下記式(4-3)で示される反応で化合物を製造する工程、
【化6】
(式中、Ar、Y、n、Hal、Rは上記と同じである。M1はLiまたはMg-Halである。)
を含むことを特徴とする化合物の製造方法を提供する。
【0015】
このような化合物の製造方法であれば、半導体装置製造時のドライエッチング工程で欠陥の要因となる遷移金属を化合物の骨格形成時に触媒として使用することなく製造することが可能である。そのため、ドライエッチング時の遷移金属由来の欠陥が発生しないため、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。
【0016】
また、本発明では、上記一般式(2-1)および(2-2)で示される単位を有する化合物の製造方法であって、
下記式(5-1)で示される反応でジオールまたはトリオールを製造する工程、
【化7】
(式中、AR1、AR2、X、Y、m、nは上記と同じである。MはLiまたはMg-Halであり、HalはCl、Br、Iである。)
下記式(5-2)で示される反応でジハロゲン化物またはトリハロゲン化物を製造する工程、及び
【化8】
(式中、AR1、AR2、X、Y、m、n、Halは上記と同じである。)
下記式(5-3)で示される反応で重合体を製造する工程、
【化9】
(式中、AR1、AR2、X、Y、Z、n、m、Halは上記と同じである。M1はLiまたはMg-Halである。aはbと結合し、dは水素原子であるか、aと結合する。)
を含むことを特徴とする化合物の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、上記一般式(2-1)および(2-2)で示される単位を有する化合物の製造方法であって、
下記式(5-1)で示される反応でジオールまたはトリオールを製造する工程、
【化10】
(式中、AR1、AR2、X、Y、m、nは上記と同じである。MはLiまたはMg-Halであり、HalはCl、Br、Iである。)
下記式(5-2)で示される反応でジハロゲン化物またはトリハロゲン化物を製造する工程、
【化11】
(式中、AR1、AR2、X、Y、m、n、Halは上記と同じである。)
下記式(5-4)で示される反応で重合体を製造する工程、続いて下記式(5-5)で示される反応で化合物末端に置換基を導入する工程
【化12】
(式中、AR1、AR2、X、Y、Z、m、n、Halは上記と同じである。M1はLiまたはMg-Halである。aはbと結合し、eはM1であるか、aと結合する。fは炭素数が1~30個の1価の有機基であるか、aと結合する。)
を含むことを特徴とする化合物の製造方法を提供する。
【0018】
上記一般式(2-1)および(2-2)で示される単位を有する化合物の製造方法としては、これらの方法が挙げられる。
【0019】
また、本発明では、有機膜を形成するための組成物であって、(A)下記一般式(1-1)で示される構造を分子内に2つ以上有する化合物、及び(B)有機溶剤を含有するものであることを特徴とする有機膜形成用組成物を提供する。
【化13】
(式中、Arはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香環、または置換基を有してもよい、窒素原子及び硫黄原子のうち少なくとも1個を含む芳香環を示し、2つのAr同士が連結して環構造を形成してもよい。破線は、Yとの結合手であり、Yは、置換基を有してもよい芳香環または置換基を有してもよい複素芳香環を有し、結合手が芳香環構造又は複素芳香環構造にある、炭素数が6~30個の2価又は3価の有機基である。Rは水素原子又は炭素数1~68の1価の基である。)
【0020】
本発明の有機膜形成用組成物は、高い耐熱性、高いドライエッチング耐性、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成することができる有機膜形成用組成物となる。
【0021】
この場合、前記(A)の化合物が、下記一般式(2-1)及び(2-2)で示される単位を有する化合物であることが好ましい。
【化14】
(式中、AR1、AR2は、炭素数が1~30個のアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基を有してもよいベンゼン環、ピリジン環またはナフタレン環であり、mは0又は1であり、m=0のとき、AR1とAR2の芳香環同士で橋かけ構造を形成せず、m=1のとき、AR1、AR2はXを介してAR1とAR2の芳香環同士で橋かけ構造を形成し、Xは単結合又は下記式(3)のいずれかである。nは2又は3であり、Yは、前記と同様である。Zは水素原子又は炭素数が1~30個の1価の有機基である。aはbと結合し、cは水素原子又は炭素数が1~30個の1価の有機基であるか、aと結合する。)
【化15】
【0022】
上記の化合物を含む有機膜形成用組成物であれば、より確実に、不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、耐熱性や、基板上に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性により優れる有機下層膜を形成することができる。
【0023】
また、この場合、前記(A)成分が、重量平均分子量500~20,000であることが好ましい。
【0024】
このような分子量であれば、化合物の熱流動性が更に良好なものとなるため、組成物に配合した際に、基板上に形成されている微細構造を良好に埋め込むことが可能になるだけでなく、基板全体が平坦となる有機膜を形成することができる。
【0025】
またこの場合、前記有機膜形成用組成物が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0026】
本発明の有機膜形成用組成物は、その目的に応じて、上記(C)~(F)成分のうち1種以上を含有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の化合物は、基板の腐食が防止される不活性ガス中での成膜において揮発性の副生物を発生することなく硬化し、高度な埋め込みおよび平坦化特性を併せ持つ有機下層膜を形成するために有用な化合物となる。また、この化合物を含む有機膜形成用組成物は、優れた埋め込み/平坦化特性を有するとともに、耐熱性、エッチング耐性等の諸特性を兼ね備えた有機膜を形成する材料となる。そのため、例えば、2層レジスト法、ケイ素中間膜を用いた3層レジスト法、ケイ素中間膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジスト法といった多層レジスト法における有機膜材料、あるいは、半導体装置製造用平坦化材料として極めて有用である。また、本発明の有機膜形成用組成物から形成される有機膜は、耐熱性に優れるため、当該有機下層膜上にCVDハードマスクを形成する場合でも、熱分解による膜厚変動が無く、パターン形成に好適に用いられる。
また、本発明の化合物の製造方法であれば、遷移金属触媒を使用することなく重合体の骨格を形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】3層レジスト法によるパターン形成方法の一例の説明図である。
【
図3】実施例における埋め込み特性評価方法の説明図である。
【
図4】実施例における平坦化特性評価方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上述のように、基板の腐食を防止するため、不活性ガス中の成膜条件、例えば、300℃以上においても揮発性の副生物が発生することなく、また、基板上に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れ、基板加工時のドライエッチング耐性も良好な有機下層膜が必要とされている。更に、当該有機下層膜上にCVDハードマスクを形成する場合においても分解による膜厚変動のない有機膜が必要とされており、それら特性を実現する有機膜形成用化合物の開発が求められていた。
【0030】
通常、有機下層膜を形成する際には、有機膜形成用化合物を有機溶剤で溶解して組成物とし、これを半導体装置の構造や配線等が形成されている基板上に塗布して、焼成することで有機下層膜を形成する。組成物の塗布直後は基板上の段差構造の形状に沿った塗布膜が形成されるが、該塗布膜を焼成すると、硬化するまでの間に有機溶剤の殆どが蒸発し、基板上に残った有機膜形成用化合物によって有機膜が形成される。本発明者らは、このとき基板上に残った有機膜形成用化合物が十分な熱流動性を有するものであれば、熱流動によって塗布直後の段差形状を平坦化し、平坦な膜を形成することが可能であることに想到した。
【0031】
本発明者らは、更に鋭意検討を重ね、高い耐熱性を有するとともに、空気中の酸素による基板の腐食を防止するために不活性ガス中で硬化する材料を提供するため、このような硬化反応を達成する構造として、一般式(1-1)で示される構造、即ち、分子間架橋基として3個の芳香族置換基と1個の三重結合性炭素を置換基として有する4級炭素を有する構造を分子内に2つ以上有する化合物が、空気中および不活性ガス中の成膜条件で熱硬化性を有し、不活性ガス中においても従来の下層膜材料と同等の硬化性能を示すこと、かつ、硬化反応の際に揮発性の副生物が発生せず、また、効果的に配置された芳香環により高い耐熱性を有すことを見出した。また、熱流動性が良好であるため高度な埋め込み/平坦化特性を有し、良好なドライエッチング耐性を有し、CVDハードマスクを形成する場合においても熱分解による塗布膜厚変動の無い耐熱性を併せ持つ有機膜形成用組成物を与えることを見出し、本発明を完成させた。
【0032】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
<化合物(1)>
本発明の化合物は、下記一般式(1-1)で示される構造を分子内に2つ以上有する化合物である(以下、化合物(1)とする)。
【化16】
(式中、Arはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香環、または置換基を有してもよい、窒素原子及び硫黄原子のうち少なくとも1個を含む芳香環を示し、2つのAr同士が連結して環構造を形成してもよい。破線は、Yとの結合手であり、Yは、置換基を有してもよい芳香環または置換基を有してもよい複素芳香環を有し、結合手が芳香環構造又は複素芳香環構造にある、炭素数が6~30個の2価又は3価の有機基である。Rは水素原子又は炭素数1~68の1価の基である。)
【0034】
Arはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香環、または置換基を有してもよい、窒素原子及び硫黄原子のうち少なくとも1個を含む芳香環を示し、2つのAr同士が連結して環構造を形成してもよい。上記Arにおける芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。また、置換基としては、特に限定されないが、炭素数が1~30個のアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
【0035】
また、Yは、炭素数が6~30個の2価又は3価の有機基であり、該有機基中に、置換基を有してもよい芳香環または置換基を有してもよい複素芳香環を有し、結合手が芳香環構造又は複素芳香環構造にある基である。Yにおける芳香環または複素芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環等が挙げられる。置換基としては、Arにおける置換基として例示した上記と同様のものが挙げられる。尚、本発明において「有機基」とは、少なくとも炭素を含む基の意味であり、更に水素を含み、また窒素、酸素、硫黄、ケイ素等を含んでもよい。
【0036】
Rは、水素原子又は炭素数1~68の1価の基であるが、水素原子や、炭素炭素三重結合と、芳香環又は複素芳香環とを含む基が好ましい。
【0037】
本発明の化合物は、より具体的には、下記一般式(2-1)および(2-2)で示される単位を有する化合物である(以下、化合物(2)とする)。
【化17】
(式中、AR1、AR2は、炭素数が1~30個のアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基を有してもよいベンゼン環、ピリジン環またはナフタレン環であり、mは0又は1であり、m=0のとき、AR1とAR2の芳香環同士で橋かけ構造を形成せず、m=1のとき、AR1、AR2はXを介してAR1とAR2の芳香環同士で橋かけ構造を形成し、Xは単結合又は下記式(3)のいずれかである。nは2又は3であり、Yは、前述と同様である。Zは水素原子又は炭素数が1~30個の1価の有機基である。aはbと結合し、cは、水素原子又は炭素数が1~30個の1価の有機基であるか、aと結合する。)
【化18】
【0038】
ここで示される化合物(1)または(2)として、具体的には以下の構造を例示することができるが、本発明はこれらの構造に限定されるものではない。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
上記式中、pは、繰り返し単位数を示し、1~50である。
【0046】
また、本発明の化合物(1)から計算によって求められる重量平均分子量は、500~20,000であることが好ましく、平坦性、埋め込み特性の観点から重量平均分子量は15,000以下であることがより好ましい。このような分子量であれば、化合物の熱流動性が更に良好なものとなるため、組成物に配合した際に、基板上に形成されている微細構造を良好に埋め込むことが可能になるだけでなく、基板全体が平坦となる有機膜を形成することができる。
【0047】
[化合物の製造方法]
本発明の化合物(1)の製造方法として、下記ケトン化合物(i)に対する有機金属試薬(ii)の付加反応によりジオールまたはトリオールである(iii)を製造する工程(下記式(4-1))、(iii)をジハロゲン化物またはトリハロゲン化物(iv)に導く工程(下記式(4-2))、更に、(iv)に対して有機金属試薬(v)の置換反応を行い化合物(vi)を製造する工程(下記式(4-3)を含む方法を挙げることができる。
【化25】
(式中、Ar及びYは上記と同じである。nは2又は3である。MはLiまたはMg-Halであり、HalはCl、Br、Iである。)
【化26】
(式中、Ar、Y、Hal、nは上記と同じである。)
【化27】
(式中、Ar、Y、n、Hal、Rは上記と同じである。M1はLiまたはMg-Halである。)
【0048】
上記(4-1)において、式(i)のケトン化合物1モルに対して有機金属試薬(ii)を0.2/n~40/nモル、特に0.5/n~2/nモル使用することが好ましい。
有機金属試薬(ii)としては、Grignard試薬、有機リチウム試薬等が特に好ましい。尚、本発明の化合物を得るために、ケトン化合物と付加反応させる有機金属試薬として、上記(ii)以外の有機金属試薬も使用することができ、これらの有機金属試薬としては、有機亜鉛試薬、有機チタニウム試薬等が例示できる。Grignard試薬と有機リチウム試薬は対応するハロゲン化物と金属マグネシウムか金属リチウムとの直接メタル化で調製してもよいし、ハロゲン化イソプロピルマグネシウムやメチルリチウム、ブチルリチウム等の脂肪族有機金属化合物とのメタル-ハロゲン交換反応で調製してもよい。また、有機亜鉛試薬や有機チタニウム試薬は対応するGrignard試薬か有機リチウム試薬からハロゲン化亜鉛やハロゲン化チタニウム(IV)、アルコキシチタニウム(IV)等との反応により調製できる。これらの有機金属試薬(ii)の調製の際、及び/又はこれらの有機金属試薬とケトン化合物(i)との反応の際に金属塩化合物を共存させてもよい。金属塩化合物としてはシアン化物、ハロゲン化物、過ハロゲン酸塩が挙げられ、特に塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、過塩素酸リチウム等のリチウム塩類、シアン化銅(I)、シアン化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、ジリチウムテトラクロロキュープレート等の銅塩類を好ましく例示できる。これらの金属塩化合物は、有機金属試薬に対し0.01~5.0当量、好ましくは0.2~2.0当量加えることで、有機金属試薬の溶解性を増加させてその調製を容易にしたり、また、試薬の求核性やLewis酸性を調節することができる。有機金属試薬(ii)の調製及びケトン化合物(i)との反応に用いられる溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の炭化水素類、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒類を単独又は混合して用いる。反応温度は、ケトン化合物(i)や有機金属試薬(ii)の種類・反応条件に依存するが、好ましくは-70~150℃、例えば(ii)として有機リチウム試薬の場合は-70~10℃、Grignard試薬の場合は室温~溶媒の沸点での還流下等、種々選択できる。反応時間は、クロマトグラフィー等で反応を追跡し反応を完結させることが望ましいが、通常30分間から48時間実施するとよい。
【0049】
上記(4-2)のジオールまたはトリオール(iii)からジハロゲン化物またはトリハロゲン化物(iv)へ導く方法としては、ジオールまたはトリオール(iii)と、塩化水素、臭化水素、塩化チオニル、臭化チオニル、ホスゲン、塩化アセチル、臭化アセチル等のカルボン酸ハロゲン化物、といったハロゲン化合物との反応を用いることができる。この反応に用いられる溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロフォルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶媒類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類が例示でき、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。反応温度は-50℃~溶媒の沸点程度が好ましく、室温~100℃が更に好ましい。
【0050】
上記(4-3)ではジハロゲン化物またはトリハロゲン化物(iv)に対する有機金属試薬(v)の置換反応により上記化合物(vi)、即ち化合物(1)を得るが、この場合、有機金属試薬(v)としては、Grignard試薬、有機リチウム試薬が特に好ましい。尚、本発明の化合物を得るために、有機金属試薬として、上記(v)以外の有機金属試薬を使用することもでき、例えば、有機亜鉛試薬、有機チタニウム試薬等が例示できる。Grignard試薬と有機リチウム試薬は、対応するアセチレン化合物とハロゲン化アルキルマグネシウム、例えばメチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド等のGrignard試薬、あるいはメチルリチウム、n-ブチルリチウム等の脂肪族有機金属化合物との反応で調製できる。ジハロゲン化物またはトリハロゲン化物(iv)と有機金属試薬(v)との反応に用いられる溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の炭化水素類、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒類を単独又は混合して用いる。反応温度は、ジハロゲン化物またはトリハロゲン化物(iv)や有機金属試薬(v)の種類・反応条件に依存するが、好ましくは-70~150℃、例えば(v)がGrignard試薬の場合は室温~溶媒の沸点での還流下、有機リチウム試薬の場合は-70~10℃、等、種々選択できる。反応時間は、クロマトグラフィー等で反応を追跡し反応を完結させることが望ましいが、通常30分間から48時間実施するとよい。
【0051】
本発明の化合物(2)の製造方法として、下記ケトン化合物(vii)に対する有機金属試薬(ii)の付加反応によりジオールまたはトリオールである(viii)を製造する工程(下記式(5-1))、(viii)をジハロゲン化物またはトリハロゲン化物(ix)に導く工程(下記式(5-2))、更に、(ix)に対して有機金属試薬(x)の置換反応を行い、重合体を製造する工程(下記式(5-3)を含む方法を挙げることができる。
【化28】
(式中、AR1、AR2、X、Y、m、nは上記と同じである。MはLiまたはMg-Halであり、HalはCl、Br、Iである。)
【化29】
(式中、AR1、AR2、X、Y、m、n、Halは上記と同じである。)
【化30】
(式中、AR1、AR2、X、Y、Z、n、m、Halは上記と同じである。M1はLiまたはMg-Halである。aはbと結合し、dは水素原子であるか、aと結合する。)
【0052】
上記(5-1)において、上記(4-1)のケトン化合物(i)の代わりに(vii)を用いた同様の手法によりジオールまたはトリオールである(viii)を得ることができる。
上記(5-2)において、上記(4-2)のジオールまたはトリオール(iii)の代わりに(viii)を用いた同様の手法によりジハロゲン化物またはトリハロゲン化物(ix)を得ることができる。
上記(5-3)において、上記(4-3)のジハロゲン化物またはトリハロゲン化物(iv)の代わりに(ix)を用いた同様の手法により化合物(xi)、即ち化合物(2)を得ることができる。
【0053】
ここで、ジハロゲン化物またはトリハロゲン化物(ix)に対して有機金属試薬(x)の置換反応を行った後(下記式(5-4))、ハロゲン化物、塩化アシル、酸無水物、メシル酸エステル、トシル酸エステル、硫酸エステルを反応させて、化合物末端に炭素数1~30の1価の有機基を導入し、化合物(xiii)とすることもできる(下記式(5-5))。
【0054】
【化31】
(式中、AR1、AR2、X、Y、Z、m、n、Halは上記と同じである。M1はLiまたはMg-Halである。aはbと結合し、eはM1であるか、aと結合する。fは炭素数が1~30個の1価の有機基であるか、aと結合する。)
【0055】
(ix)に対して(x)の置換反応を行った後、同反応容器内で続けて反応を行い有機基を導入しても良いし、上記(5-3)の反応を後処理し単離した化合物(2)に対し脂肪族有機金属化合物と反応させて有機金属試薬を調製し、ハロゲン化物、メシル酸エステル、トシル酸エステル、硫酸エステルから選ばれる化合物と反応させて1価の有機基を導入しても良い。
【0056】
本発明の化合物(1)の設計思想について述べる。
本発明の化合物(1)は、分子の外側に三重結合が配置されたことで酸化架橋反応が起こらない無酸素条件下でも熱架橋反応を起こす。無酸素条件下で反応が可能な官能基としてプロパルギル基が知られているが、本発明の化合物(1)では、三重結合と4級炭素との間においてエーテル構造が排除されたことで一層高い耐熱性が得られる。更に、化合物の主骨格に複数の芳香環を効果的に配置されたことで、非常に高い耐熱性が実現されている。従って、不活性ガス中での硬化成膜が求められ、その際に副生成物が発生しないというリソグラフィー用有機下層膜に好適な化合物となる。
【0057】
以上のように、本発明の化合物は、不活性ガス中でも硬化が可能であり、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物を与えるものとなる。
【0058】
なお、本発明において、平坦化特性とは、基板の表面を平坦化する性能のことである。本発明の化合物を含有する組成物であれば、例えば、
図1に示されるように、基板1上に有機膜形成用組成物3’を塗布し、加熱して有機膜3を形成することによって、基板1における100nmの段差を30nm以下まで低減することが可能である。なお、
図1に示される段差形状は、半導体装置製造用基板における段差形状の典型例を示すものであって、本発明の化合物を含有する組成物によって平坦化することのできる基板の段差形状は、もちろんこれに限定されるものではない。
【0059】
<有機膜形成用組成物>
また、本発明では、有機膜形成用の組成物であって、(A)上記一般式(1-1)で示される構造を分子内に2つ以上有する本発明の化合物、及び(B)有機溶剤を含有する有機膜形成用組成物を提供する。なお、本発明の有機膜形成用組成物において、上述した本発明の化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
本発明の有機膜形成用組成物において使用可能な(B)有機溶剤としては、本発明の化合物、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007-199653号公報中の(0091)~(0092)段落に記載されている溶剤などの沸点が180℃未満の溶剤を使用することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0061】
このような組成物であれば、回転塗布で塗布することができ、また上述のような本発明の化合物を含有するため、良好なドライエッチング耐性を有するとともに、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物となる。
【0062】
さらに、本発明の有機膜形成用組成物には有機溶剤として、上記の沸点が180℃未満の溶剤に沸点が180℃以上の高沸点溶剤を添加する事も可能である(沸点が180℃未満の溶剤と沸点が180℃以上の溶剤を混合して用いることが可能である)。高沸点有機溶剤としては、本発明の化合物を溶解できるものであれば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の制限は特にはないが、具体例として1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n-ノニル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノー2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4―ブタンジオールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトン、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジヘキシル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチルなどを例示することができ、これらを単独または混合し用いても良い。
【0063】
上記、高沸点溶剤の沸点は、有機膜形成用組成物を熱処理する温度に合わせて適宜選択すればよく、添加する高沸点溶剤の沸点は180℃~300℃であることが好ましく、さらに200℃~300℃であることがより好ましい。このような沸点であれば沸点が低すぎることによってベーク(熱処理)した際に溶剤が瞬間的に揮発する恐れがないため、十分な熱流動性を得ることができる。また、このような沸点であればベーク後も膜中に揮発せず残存することがないため、エッチング耐性等の膜物性に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0064】
また、上記高沸点溶剤を使用する場合、高沸点溶剤の配合量は、沸点180℃未満の溶剤100質量部に対して1~30質量部とすることが好ましい。このような配合量であれば、配合量が少なすぎてベーク時に十分な熱流動性が得られなかったり、一方で配合量が多すぎて膜中に残存しエッチング耐性などの膜物性が劣化するといった恐れがない。
【0065】
このような有機膜形成用組成物であれば、上記の有機膜形成化合物に高沸点溶剤の添加による熱流動性が付与されることで、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物となる。
【0066】
本発明の有機膜形成用組成物においては、硬化反応を更に促進させるために(C)酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007-199653号公報中の(0061)~(0085)段落に記載されている材料を添加することができるがこれらに限定されない。
【0067】
上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸発生剤を添加する場合の添加量は、前記化合物(A)100質量部に対して好ましくは0.05~50質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0068】
本発明の有機膜形成用組成物には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(D)界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、特開2009-269953号公報中の(0142)~(0147)記載のものを用いることができる。
【0069】
また、本発明の有機膜形成用組成物には、硬化性を高め、上層膜とのインターミキシングを更に抑制するために、(E)架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤を例示できる。
【0070】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’-イソプロピリデンビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス4,5-ジフェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-フェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-tertブチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。
【0071】
また、本発明の有機膜形成用組成物には、平坦化/埋め込み特性を更に向上させるために、(F)可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013-253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。
【0072】
また、本発明の有機膜形成用組成物には、埋め込み/平坦化特性を可塑剤と同じように付与するための添加剤として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤、又は30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上であり、かつ重量平均分子量が300~200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)、(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。
【0073】
【化32】
(式中、R
6は水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価有機基である。Y
1は炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価有機基である。)
【0074】
【化33】
(式中、R
6aは炭素数1~4のアルキル基である。Y
aは炭素数4~10の飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。nは平均繰り返し単位数を表し、3~500である。)
【0075】
以上のように、本発明の有機膜形成用組成物は、良好なドライエッチング耐性を有するとともに、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成するものである。従って、2層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜又はケイ素含有無機ハードマスクを用いた3層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜又はケイ素含有無機ハードマスク及び有機反射防止膜を用いた4層レジスト法等といった多層レジスト法に用いる有機下層膜の形成材料として、極めて有用である。また、本発明の有機膜形成用組成物は、不活性ガス中における成膜においても副生物が発生することなく、優れた埋め込み/平坦化特性を有するため、多層レジスト法以外の半導体装置製造工程における平坦化材料としても好適に用いることができる。
【0076】
<有機膜形成方法>
有機膜を形成するための加熱成膜工程は、1段ベーク、2段ベークまたは3段以上の多段ベークを適用することが出来るが、1段ベークまたは2段ベークが経済的に好ましい。1段ベークによる成膜は、100℃以上600℃以下の温度で5~3600秒間の範囲、好ましくは150℃以上500℃以下の温度で10~7200秒間の範囲で行うのが好ましい。このような条件で熱処理することで、熱流動による平坦化と架橋反応を促進させることが出来る。多層レジスト法ではこの得られた膜の上に塗布型ケイ素中間膜やCVDハードマスクを形成する場合がある。塗布型ケイ素中間膜を適用する場合は、ケイ素中間膜を成膜する温度より高い温度で有機下層膜を成膜することが好ましい。通常、ケイ素中間膜は100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上350℃以下で成膜される。この温度より高い温度で有機下層膜を成膜すると、ケイ素中間膜形成用組成物による有機下層膜の溶解を防ぎ、当該組成物とミキシングしない有機膜を形成することができる。また、ケイ素中間膜形成中に有機下層膜が熱分解を起こし副生成物を生じる恐れがない。
【0077】
CVDハードマスクを適用する場合は、CVDハードマスクを形成する温度より高い温度で有機下層膜を成膜することが好ましい。CVDハードマスクを形成する温度としては、150℃以上500℃以下の温度を例示することが出来る。
【0078】
一方、2段ベークによる成膜において一段目のベークを空気中で行う場合、酸素による基板の腐食の起こり得る際には空気中での処理温度の上限は300℃以下好ましくは250℃以下で10~600秒間の範囲で行う。不活性ガス中での2段目のベーク温度としては、1段目のベーク温度より高く、600℃以下好ましくは500℃以下の温度で、10~7200秒間の範囲で行うのが好ましい。
【0079】
また、本発明の有機膜形成用組成物は、半導体装置の製造工程で使用される有機下層膜として機能する有機膜の形成方法であって、被加工基板の腐食を防止するため、被加工基板を酸素濃度1%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成する有機膜形成方法に適用できる。
【0080】
この有機膜形成方法では、まず、上述の本発明の有機膜形成用組成物を、被加工基板上に回転塗布する。回転塗布後、2段ベークでは、まず、空気中、300℃以下でベークした後、酸素濃度1%以下の雰囲気で2段目のベークをする。1段ベークの場合は、初めの空気中での1段目のベークをスキップすればよい。なお、ベーク中の雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを例示出来る。本発明の材料であれば、このような不活性ガス雰囲気中で加熱しても、昇華物の発生することなく十分に硬化した有機膜を形成することができる。
【0081】
また、上記有機膜形成方法は、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板に用いることが出来る。上述のように、本発明の有機膜形成用組成物は、埋め込み/平坦化特性に優れるため、被加工基板に高さ30nm以上の構造体又は段差(凹凸)があっても、平坦な硬化膜を形成することができる。つまり、上記有機膜形成方法は、このような被加工基板上に平坦な有機膜を形成する場合に特に有用である。
【0082】
なお、形成される有機膜の厚さは適宜選定されるが、30~20,000nmとすることが好ましく、特に50~15,000nmとすることが好ましい。
【0083】
また、上記の有機膜形成方法は、本発明の有機膜形成用組成物を用いて多層レジスト法の下層膜となる有機膜を形成する場合と、平坦化膜用の有機膜を形成する場合の両方に適用可能である。
【0084】
本発明の有機膜形成用組成物は、半導体装置の製造工程で使用される段差基板の表面を平坦化することのできる有機膜の形成に用いることができ、被加工基板上に本発明の有機膜形成用組成物を回転塗布し、該有機膜形成用組成物を塗布した基板を50℃以上250℃以下の温度で10~600秒間の範囲で空気中で熱処理し、続いて不活性ガス中250℃以上の温度で10~7200秒間熱処理することにより硬化膜を形成する有機膜形成方法に適用できる。
【0085】
この有機膜形成方法では、まず、上述した本発明の有機膜形成用組成物を、被加工基板上に回転塗布する。回転塗布法を用いることで、良好な埋め込み特性を確実に得ることができる。回転塗布後、熱流動による平坦化と架橋反応を促進させるためにベーク(熱処理)を行う。なお、このベークにより、組成物中の溶媒を蒸発させることができるため、有機膜上にレジスト上層膜やケイ素含有レジスト中間膜を形成する場合にもミキシングを防止することができる。
【0086】
<パターン形成方法>
[ケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法]
被加工基板上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素原子を含有する膜形成材料を用いてケイ素含有膜を形成し、該ケイ素含有膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法が可能である。
【0087】
被加工基板としては、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましく、より具体的には、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層として、上記の金属膜等が成膜されたもの等が用いられる。
【0088】
被加工層としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0089】
なお、被加工基板を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金であることが好ましい。
【0090】
また、被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0091】
被加工基板上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する際には、上述の有機膜形成方法を適用すればよい。
【0092】
次に、有機膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間膜材料を用いてレジスト中間膜(ケイ素含有レジスト中間膜)を形成する。ケイ素含有レジスト中間膜材料としては、ポリシロキサンベースの中間膜材料が好ましい。ケイ素含有レジスト中間膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、有機膜形成用組成物として芳香族を多く含み基板とのエッチング選択性の高い材料を用いると、k値が高くなり基板反射が高くなるが、ケイ素含有レジスト中間膜として適切なk値になるような吸収を持たせることで反射を抑えることが可能になり、基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト中間膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素-ケイ素結合を有する吸光基をペンダント構造又はポリシロキサン構造中に有し、酸あるいは熱で架橋するポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0093】
次に、ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成する。レジスト上層膜材料としては、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。レジスト上層膜材料を回転塗布後、60~180℃で10~300秒間の範囲でプリベークを行うのが好ましい。その後常法に従い、露光を行い、更に、ポストエクスポージャーベーク(PEB)、現像を行い、レジスト上層膜パターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30~500nmが好ましく、特に50~400nmが好ましい。
【0094】
次に、レジスト上層膜に回路パターン(レジスト上層膜パターン)を形成する。回路パターンの形成においては、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0095】
なお、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F2レーザー光(157nm)、Kr2レーザー光(146nm)、Ar2レーザー光(126nm)、3~20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線等を挙げることができる。
【0096】
また、回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤現像によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0097】
次に、回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する。レジスト上層膜パターンをマスクにして行うケイ素含有レジスト中間膜のエッチングは、フルオロカーボン系のガスを用いて行うことが好ましい。これにより、ケイ素含有レジスト中間膜パターンを形成する。
【0098】
次に、パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして有機膜にエッチングでパターンを転写する。ケイ素含有レジスト中間膜は、酸素ガス又は水素ガスに対して有機物に比較して高いエッチング耐性を示すため、ケイ素含有レジスト中間膜パターンをマスクにして行う有機膜のエッチングは、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。これにより、有機膜パターンを形成する出来る。
【0099】
次に、パターンが転写された有機膜をマスクにして被加工基板にエッチングでパターンを転写する。次の被加工基板(被加工層)のエッチングは、常法によって行うことができ、例えば被加工基板がSiO2、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wであれば塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスによるエッチングで行った場合、ケイ素含有レジスト中間膜パターンは基板加工と同時に剥離される。一方、基板加工を塩素系、臭素系ガスによるエッチングで行った場合は、ケイ素含有レジスト中間膜パターンを剥離するために、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0100】
本発明の有機膜形成用組成物を用いて得られる有機膜は、上記のような被加工基板のエッチング時のエッチング耐性に優れたものである。
【0101】
[ケイ素含有レジスト中間膜と有機反射防止膜を用いた4層レジスト法]
また、被加工基板上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にドライエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法も可能である。
【0102】
なお、この方法は、ケイ素含有レジスト中間膜とレジスト上層膜の間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0103】
有機反射防止膜は、公知の有機反射防止膜材料を用いて回転塗布で形成することができる。
【0104】
[無機ハードマスクを用いた3層レジスト法]
また、本発明の有機膜形成用組成物を用いた3層レジスト法によるパターン形成方法として、被加工基板上に上述の本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、及びチタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法も可能である。
【0105】
なお、この方法は、有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜の代わりに無機ハードマスクを形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0106】
ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)から選ばれる無機ハードマスクは、CVD法やALD法等で形成することができる。ケイ素窒化膜の形成方法としては、例えば特開2002-334869号公報、国際公開第2004/066377号公報等に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は好ましくは5~200nm、より好ましくは10~100nmである。無機ハードマスクとしては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成するときの基板温度は300~500℃となるために、下層膜としては300~500℃の温度に耐える必要がある。本発明の有機膜形成用組成物を用いて形成される有機膜は高い耐熱性を有しており、300℃~500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスクと、回転塗布法で形成された有機膜の組み合わせが可能である。
【0107】
[無機ハードマスクと有機反射防止膜を用いた4層レジスト法]
また、本発明の有機膜形成用組成物を用いた4層レジスト法によるパターン形成方法として、被加工基板上に上述の本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法も可能である。
【0108】
なお、この方法は、無機ハードマスクとレジスト上層膜の間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記の無機ハードマスクを用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0109】
特に、無機ハードマスクとしてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのレジスト上層膜パターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0110】
ここで、3層レジスト法によるパターン形成方法の一例を
図2(A)~(F)に示す。3層レジスト法の場合、
図2(A)に示されるように、基板1の上に形成された被加工層2上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜3を形成した後、ケイ素含有レジスト中間膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。次いで、
図2(B)に示されるように、レジスト上層膜5の露光部分6を露光し、PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行う。次いで、
図2(C)に示されるように、現像を行ってレジスト上層膜パターン5aを形成する。次いで、
図2(D)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aをマスクとして、フロン系ガスを用いてケイ素含有レジスト中間膜4をドライエッチング加工し、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを形成する。次いで、
図2(E)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aを除去後、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aをマスクとして、有機膜3を酸素プラズマエッチングし、有機膜パターン3aを形成する。更に、
図2(F)に示されるように、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを除去後、有機膜パターン3aをマスクとして、被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する。
【0111】
無機ハードマスクを形成する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜4を無機ハードマスクに変更すればよく、BARCを形成する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜4とレジスト上層膜5との間にBARCを形成すればよい。BARCのエッチングは、ケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングに先立って連続して行ってもよいし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングを行ってもよい。
【0112】
以上のように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジスト法によって、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【実施例0113】
以下、合成例、比較合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、分子量及び分散度としては、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0114】
合成例 高耐熱有機化合物の合成
【0115】
[合成例1]化合物(A1)の合成
ジオール(B1)200g、1,2-ジクロロエタン800g、アセチルクロリド76gを混合し、72時間加熱還流した。室温に冷却後、ジイソプロピルエーテル400mLを加え、固体をろ取、減圧乾燥して211gのジクロリド(B2)を得た。
氷冷したエチニルベンゼン10.2gとトルエン80gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液100mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B2)13.2gを加え、60℃で5時間加熱撹拌した。冷却後、希塩酸を加えて反応を停止した。水洗後、減圧濃縮を行い、目的物(A1)16.3gを得た。合成した化合物(A1)のIR、LC-MS分析結果を以下に示す。
【化34】
【0116】
IR(D-ATR):
ν=3285、3060、1600、1490、1448、815、754、744、690cm-1
LC-MS(MM-ES Positive/aq.AcONH4-MeCN):
m/z=683(C54H34+H+).
【0117】
[合成例2]化合物(A2)の合成
エチニルベンゼンの代わりに、1-エチニル-4-メトキシベンゼンを用いた以外は、[合成例1]に準じた方法により(A2)を合成した。合成した化合物(A2)のIR、LC-MS分析結果を以下に示す。
【化35】
【0118】
IR(D-ATR):
ν=3037、2955、2933、2835、1605、1509、1448、1290、1248、1170、1030、831、812、765、754、736cm-1
LC-MS(MM-ES Positive/aq.AcONH4-MeCN):
m/z=743(C56H38O2+H+).
【0119】
[合成例3]化合物(A3)の合成
ジクロリド(B2)6.9gとトルエン50gの混合物に、臭化エチニルマグネシウム0.5Nテトラヒドロフラン溶液100mLを加え、200分加熱還流した。冷却後、希塩酸を加えて反応を停止した。水洗後、減圧濃縮を行い、化合物(A3)6.6gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=1100、Mw/Mn=1.74となった。合成した化合物(A3)のIR、
1H-NMR分析結果を以下に示す。
【化36】
【0120】
IR(D-ATR): ν=3291、3061、3036、1604、1493、1475、1448、1005、920、815、753、730、650cm-1。
1H-NMR(600MHz、THF-d8): δ=2.85-2.90(2H、HC≡C-)、7.00-7.85(49H、Ar-H)。
【0121】
[合成例4]化合物(A4)の合成
氷冷した1,3-ジエチニルベンゼン11gとトルエン80gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液100mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B2)23gを加え、60℃で2時間加熱撹拌した。冷却後、希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、メタノールを加え、生じた固体をろ取、メタノール洗浄、減圧乾燥し、目的物(A4)27gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2000、Mw/Mn=1.58となった。
【化37】
【0122】
合成した化合物(A4)のIR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3291、3061、3028、1594、1493、1475、1448、813、794、753、732cm-1
【0123】
[合成例5]化合物(A5)の合成
N2雰囲気下で-20℃まで冷却したビス(4-ブロモフェニル)エーテル219gとt-ブチルメチルエーテル1000mLの混合液に、n-ブチルリチウム2.67Mヘキサン溶液500mLを加え、-20℃で20分間撹拌した。9-フルオレノン(B4)229gを加え、徐々に室温に昇温し、室温にて4時間撹拌した。水を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、ヘキサンを加え、生じた固体をろ取、ヘキサン洗浄、減圧乾燥して293gのジオール(B5)を得た。
ジオール(B5)265g、1,2-ジクロロエタン1000g、アセチルクロリド157gを混合し、室温にて22時間撹拌した。ヘキサン1000mLを加え、固体をろ取、減圧乾燥して181gのジクロリド(B6)を得た。
氷冷した1,3-ジエチニルベンゼン10.1gとトルエン50gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液50mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B6)11.4gを加え、40℃まで昇温して4時間撹拌した。希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、メタノールを加え、生じた固体をろ取、メタノール洗浄、減圧乾燥し、目的物(A5)13.3gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=1000、Mw/Mn=1.17となった。
【0124】
【0125】
合成した化合物(A5)のIR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3289、3062、1594、1496、1475、1448、1240、825、751、733cm-1
【0126】
[合成例6]化合物(A6)の合成
N2雰囲気下で-20℃まで冷却した2,8-ジブロモジベンゾフラン43.2gとt-ブチルメチルエーテル200mLの混合液に、n-ブチルリチウム2.65Mヘキサン溶液100mLを加え、-20℃で15分間撹拌した。9-フルオレノン(B4)45.4gを加え、徐々に室温に昇温し、室温にて5時間撹拌した。水を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、ヘプタンを加え、生じた固体をろ取、へプタン洗浄、減圧乾燥して60.2gのジオール(B7)を得た。
ジオール(B7)31.7g、1,2-ジクロロエタン150g、アセチルクロリド18.8gを混合し、40℃まで昇温して18時間撹拌した。室温に冷却後、ヘキサン300mLを加え、固体をろ取、減圧乾燥して24.9gのジクロリド(B8)を得た。
氷冷した1,3-ジエチニルベンゼン10.5gとトルエン140gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液100mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B8)23.6gを加え、40℃まで昇温して19時間撹拌した。室温に冷却後、希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、ジイソプロピルエーテルを加え、生じた固体をろ取、ジイソプロピルエーテル洗浄、減圧乾燥し、目的物(A6)21.4gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=1600、Mw/Mn=1.44となった。
【0127】
【0128】
合成した化合物(A6)のIR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3292、3061、1594、1476、1448、1205、812、793、746、733cm-1
【0129】
[合成例7]化合物(A7)の合成
N2雰囲気下で-20℃まで冷却した3,6-ジブロモ-9-フェニルカルバゾール31.1gとt-ブチルメチルエーテル200mLの混合液に、n-ブチルリチウム1.55Mヘキサン溶液100mLを加え、-10℃で30分間撹拌した。9-フルオレノン(B4)26.5gを加え、徐々に室温に昇温し、室温にて6時間撹拌した。水を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、ヘプタンを加え、生じた固体をろ取、へプタン洗浄、減圧乾燥して36.7gのジオール(B9)を得た。
ジオール(B9)18.1g、1,2-ジクロロエタン80g、アセチルクロリド9.4gを混合し、60℃まで昇温して21時間撹拌した。室温に冷却後、ジイソプロピルエーテル45mLを加え、固体をろ取、減圧乾燥して12.7gのジクロリド(B10)を得た。
氷冷した1,3-ジエチニルベンゼン5.0gとトルエン60gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液48mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B10)12.8gを加え、室温にて22時間撹拌した。希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、ジイソプロピルエーテルを加え、生じた固体をろ取、ジイソプロピルエーテル洗浄、減圧乾燥し、目的物(A7)15.7gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=1500、Mw/Mn=1.37となった。
【0130】
【0131】
合成した化合物(A7)のIR分析結果を以下に示す。IR(D-ATR):
ν=3292、3062、1596、1501、1483,1475、1448、1236、809、793、746、732cm-1
【0132】
[合成例8]化合物(A8)の合成
N2雰囲気下で-20℃まで冷却した3,3’-ジブロモ-4,4’-ジメトキシビフェニル28.8gとt-ブチルメチルエーテル200mLの混合液に、n-ブチルリチウム1.55Mヘキサン溶液100mLを加え、-20℃で10分間撹拌した。9-フルオレン(B4)26.5gを加え、徐々に室温に昇温し、室温にて4時間撹拌した。水を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、ヘプタンを加え、生じた固体をろ取、へプタン洗浄、減圧乾燥して36.0gのジオール(B11)を得た。
ジオール(B11)11.5g、1,2-ジクロロエタン50g、アセチルクロリド6.3gを混合し、60℃まで昇温して22時間撹拌した。室温に冷却後、ヘキサン30mLを加え、固体をろ取、減圧乾燥して6.7gのジクロリド(B12)を得た。
氷冷した1,3-ジエチニルベンゼン2.1gとトルエン30gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液20mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B12)5.1gを加え、60℃まで昇温して4時間撹拌した。室温に冷却後、希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、ジイソプロピルエーテルを加え、生じた固体をろ取、ジイソプロピルエーテル洗浄、減圧乾燥し、目的物(A8)4.2gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2100、Mw/Mn=1.64となった。
【0133】
【0134】
合成した化合物(A8)のIR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3289、3060、2933、2833、1594、1487、1475、1448、1251、1023、811、794、750、733cm-1
【0135】
[合成例9]化合物(A9)の合成
N2雰囲気下で-20℃まで冷却した5,5’-ジブロモ-2,2’-ビチオフェン42.9gとt-ブチルメチルエーテル200mLの混合液に、n-ブチルリチウム2.65Mヘキサン溶液100mLを加え、-20℃で20分間撹拌した。9-フルオレン(B4)45.4gを加え、徐々に室温に昇温し、室温にて5時間撹拌した。水を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、ヘキサンを加え、生じた固体をろ取、ヘキサン洗浄、減圧乾燥して50.2gのジオール(B13)を得た。
ジオール(B13)21.1g、1,2-ジクロロエタン100g、アセチルクロリド12.6gを混合し、60℃まで昇温して4時間撹拌した。室温に冷却後、ヘキサン150mLを加え、固体をろ取、減圧乾燥して18.6gのジクロリド(B14)を得た。
氷冷した1,3-ジエチニルベンゼン5.0gとトルエン30gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液25mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B14)5.6gを加え、室温にて7時間撹拌した。希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、メタノールを加え、生じた固体をろ取、メタノール洗浄、減圧乾燥し、目的物(A9)5.5gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=5800、Mw/Mn=3.21となった。
【0136】
【0137】
合成した化合物(A9)のIR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3294、3060、1593、1475、1446、1349、895、794、740、732cm-1
【0138】
[合成例10]化合物(A10)の合成
N2雰囲気下で-20℃まで冷却した4,4’-ジブロモビフェニル24.2gとt-ブチルメチルエーテル100mLとシクロペンチルメチルエーテル100mLの混合液に、n-ブチルリチウム2.67Mヘキサン溶液100mLを加え、-20℃で20分間撹拌した。4,4’-ジメトキシベンゾフェノン(B15)35.67gを加え、徐々に室温に昇温し、室温にて4時間撹拌した。水を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、へプタンを加え、生じた固体をろ取、へプタン洗浄、減圧乾燥して42.2gのジオール(B16)を得た。
ジオール(B16)19.2g、1,2-ジクロロエタン80g、アセチルクロリド9.42gを混合し、40℃まで昇温して23時間撹拌した。室温に冷却後、ジイソプロピルエーテル80mLを加え、固体をろ取、減圧乾燥して18.4gのジクロリド(B17)を得た。
氷冷した1,3-ジエチニルベンゼン4.21gとトルエン80gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液40mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B17)11.3gを加え、室温にて22時間撹拌した。希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、メタノールを加え、生じた固体をろ取、メタノール洗浄、減圧乾燥し、目的物(A10)11.3gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2100、Mw/Mn=1.40となった。
【0139】
【0140】
合成した化合物(A10)のIR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3290、3032、2997、2951、2930、2904、2833、1606、1506、1440、1298、1250、1177、1034、824、795、731cm-1
【0141】
[合成例11]化合物(A11)の合成
N2雰囲気下で-20℃まで冷却したビス(4-ブロモフェニル)エーテル43.5gとt-ブチルメチルエーテル200mLの混合液に、n-ブチルリチウム2.65Mヘキサン溶液100mLを加え、-20℃で30分間撹拌した。キサントン(B18)49.4gを加え、徐々に室温に昇温し、室温にて4時間撹拌した。水を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、ヘプタンを加え、生じた固体をろ取、へプタン洗浄、減圧乾燥して63.4gのジオール(B19)を得た。
ジオール(B19)33.8g、1,2-ジクロロエタン150g、アセチルクロリド18.8gを混合し、40℃まで昇温して24時間撹拌した。室温に冷却後、へプタン300mLを加え、固体をろ取、減圧乾燥して18.5gのジクロリド(B20)を得た。
氷冷した1,3-ジエチニルベンゼン5.26gとトルエン80gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液50mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B20)12.5gを加え、室温にて24時間撹拌した。希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、へプタンを加え、生じた固体をろ取、へプタン洗浄、減圧乾燥し、目的物(A11)10.4gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=1700、Mw/Mn=1.67となった。
【0142】
【0143】
合成した化合物(A11)のIR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3291、3036、1598、1495、1445、1242、825、752cm-1
【0144】
[合成例12]化合物(A12)の合成
ジオール(B21)9.3g、1,2-ジクロロエタン60g、アセチルクロリド5.0gを混合し、60℃まで昇温して20時間撹拌した。室温に冷却後、ヘキサン100mLを加え、固体をろ取、減圧乾燥して7.2gのジクロリド(B22)を得た。
氷冷した1,3-ジエチニルベンゼン1.6gとトルエン20gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液15mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B22)3.4gを加え、室温にて5時間撹拌した。希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、メタノールを加え、生じた固体をろ取、メタノール洗浄、減圧乾燥し、目的物(A12)3.7gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2500、Mw/Mn=2.38となった。
【0145】
【0146】
合成した化合物(A12)のIR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3291、3058、3027、1591、1491、1474、1457、1440、1393、1189、816、794、752cm-1
【0147】
[合成例13]化合物(A13)の合成
N2雰囲気下で-20℃まで冷却したトリス(4-ブロモフェニル)アミン42.6gとt-ブチルメチルエーテル300mLの混合液に、n-ブチルリチウム2.65Mヘキサン溶液100mLを加え、-20℃で30分間撹拌した。9-フルオレン(B4)45.4gを加え、徐々に室温に昇温し、室温にて5時間撹拌した。水を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、ヘプタンを加え、生じた固体をろ取、ヘプタン洗浄、減圧乾燥して33.3gのトリオール(B23)を得た。
トリオール(B23)23.6g、1,2-ジクロロエタン200g、アセチルクロリド14.1gを混合し、室温にて19時間撹拌した。ヘキサン150mLを加え、固体をろ取、減圧乾燥して22.0gのトリクロリド(B24)を得た。
氷冷した1,3-ジエチニルベンゼン9.7gとトルエン40gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液46mLを加え、徐々に室温に昇温した。トリクロリド(B24)10.0gを加え、室温にて4時間撹拌した。希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、メタノールを加え、生じた固体をろ取、メタノール洗浄、減圧乾燥し、目的物(A13)13.4gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2100、Mw/Mn=1.37となった。
【0148】
【0149】
合成した化合物(A13)のIR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3289、3060、3034、1595、1502、1447、1280、823、752、732、685cm-1
【0150】
[合成例14]化合物(A14)の合成
氷冷したエチニルベンゼン2.0gとトルエン20gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液20mLを加え、徐々に室温に昇温した。トリクロリド(B24)4.4gを加え、室温にて6時間撹拌した。希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、ヘキサンを加え、生じた固体をろ取、ヘキサン洗浄、減圧乾燥し、目的物(A14)4.9gを得た。
【0151】
【0152】
合成した化合物(A14)のIR、LC-MS分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3058、1599、1503、1447、1280、824、754、743、690cm-1
LC-MS(MM-ES Positive/aq.AcONH4-MeCN):
m/z=1038(C81H51N+H+).
【0153】
[合成例15]化合物(A15)の合成
ジオール(B25)7.0g、1,2-ジクロロエタン50g、アセチルクロリド3.0gを混合し、室温にて22時間撹拌した。ヘキサン45mLを加え、固体をろ取、減圧乾燥して3.9gのジクロリド(B26)を得た。
氷冷した1,3-ジエチニルベンゼン1.3gとトルエン20gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液12mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B26)3.8gを加え、40℃まで昇温して22時間撹拌した。希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、メタノールを加え、生じた固体をろ取、メタノール洗浄、減圧乾燥し、目的物(A15)3.4gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2400、Mw/Mn=1.57となった。
【0154】
【0155】
合成した化合物(A15)のIR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3284、3035、2917、2858、2301、2228、1606、1505、1448、1221、1005、821cm-1
【0156】
[合成例16]化合物(A16)の合成
3,5-ジブロモアニソール(B27)47.9g、2-メチル-3-ブチン-2-オール36.3g、ヨウ化銅1.71g、トリエチルアミン150g、テトラヒドロフラン75g、ジクロロビス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(II)6.32gを混合し、60℃まで昇温して7時間撹拌した。室温に冷却後、ろ過し、ろ液を減圧濃縮後、ヘキサンを加え、生じた固体をろ取、ヘキサン洗浄、減圧乾燥し、ジオール(B28)41.4gを得た。
ジオール(B28)35.0g、水酸化ナトリウム2.06g、トルエン150gを混合し、110℃まで昇温して2時間撹拌した。室温に冷却後、水洗、減圧濃縮して、得られた固体をカラムクロマトグラフィ―[シリカゲル N60(350g),ヘキサン:酢酸エチル=15:1]により精製し、ジエチニル化合物(B29)4.71gを得た。
【0157】
【0158】
合成した化合物(B29)のIR、1H NMR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3276、3075、3000、2960、2940、2838、1580、1448、1323、1294、1157、1060、881、858cm-1
1H NMR(600 MHz,DMSO-d6)δ7.11(dd,J=1.7,1.7 Hz,1H),7.06(d,J=1.7 Hz,2H),4.26(s,2H),3.77(s,3H).
【0159】
氷冷したジエチニル化合物(B29)2.6gとトルエン30gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液20mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B6)4.7gを加え、40℃まで昇温して5時間撹拌した。室温に冷却後、希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、ジイソプロピルエーテルを加え、生じた固体をろ取、メタノール洗浄、減圧乾燥し、目的物(A16)4.5gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2000、Mw/Mn=1.37となった。
【0160】
【0161】
合成した化合物(A16)のIR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3289、3063、2967、2934、2838、1580、1496、1448、1240、1014、849、749、728cm-1
【0162】
[合成例17]化合物(A17)の合成
2,4-ジブロモアニソール(B30)53.2g、2-メチル-3-ブチン-2-オール40.4g、ヨウ化銅3.81g、トリエチルアミン150g、テトラヒドロフラン75g、ジクロロビス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(II)14.0gを混合し、60℃まで昇温して7時間撹拌した。室温に冷却後、ろ過し、ろ液を減圧濃縮後、得られた油状物質をカラムクロマトグラフィ―[シリカゲル(600g),ヘキサン:酢酸エチル=2:1]により精製し、ジオール(B31)50.9gを得た。
ジオール(B31)50.2g、水酸化ナトリウム29.4g、トルエン200gを混合し、110℃まで昇温して5時間撹拌した。室温に冷却後、水洗、減圧濃縮して、得られた固体をカラムクロマトグラフィ―[シリカゲル N60(500g),ヘキサン:酢酸エチル=20:1]により精製し、ジエチニル化合物(B32)10.1gを得た。
【0163】
【0164】
合成した化合物(B32)のIR、1H NMR、LC-MS分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3304、3271、3009、2974、2948、2896、2843、1598、1496、1290、1259、1118、1020、897、821、812cm-1
1H NMR(600 MHz,DMSO-d6)δ7.48-7.46(m,2H),7.06(d,J=8.7 Hz,1H),4.29(s,1H),4.07(s,1H),3.83(s,3H).
LC-MS(MM-ES Positive/aq.AcONH4-MeCN):
m/z=157(C11H8O+H+).
【0165】
氷冷したジエチニル化合物(B32)2.6gとトルエン30gの混合物に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液20mLを加え、徐々に室温に昇温した。ジクロリド(B6)4.7gを加え、40℃まで昇温して4時間撹拌した。室温に冷却後、希塩酸を加えて反応を停止した。水洗、減圧濃縮後、メタノールを加え、生じた固体をろ取、メタノール洗浄、減圧乾燥し、目的物(A17)6.0gを得た。GPCにより、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=1800、Mw/Mn=1.55となった。
【0166】
【0167】
合成した化合物(A17)のIR分析結果を以下に示す。
IR(D-ATR):
ν=3288、3062、2940、2840、1597、1495、1448、1243、1016、818、744、734cm-1
【0168】
[合成例18]化合物(A18)の合成
(B―33)を58.7g、9-フルオレノン41.3g、3-メルカプトプロピオン酸5mlおよび1,2-ジクロロエタン300mlを窒素雰囲気下内温70℃で均一溶液とした後、メタンスルホン酸10mlをゆっくりと加え、内温70℃で24時間反応を行った。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン500gを加え、有機層を純水100gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF200gを加え均一溶液とした後、メタノール1500gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別、メタノール800gで2回洗浄を行い回収した。回収したポリマーを70℃で真空乾燥することで(A18)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A18):Mw=3500、Mw/Mn=2.94
【化53】
【0169】
[合成例19]化合物(A19)の合成
(B―33)を70.7g、ベンズアルデヒド29.3g、3-メルカプトプロピオン酸5mlおよび1,2-ジクロロエタン300mlを窒素雰囲気下内温70℃で均一溶液とした後、メタンスルホン酸10mlをゆっくりと加え、内温70℃で24時間反応を行った。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン500gを加え、有機層を純水100gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF200gを加え均一溶液とした後、メタノール1500gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別、メタノール800gで2回洗浄を行い回収した。回収したポリマーを70℃で真空乾燥することで(A19)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A19):Mw=3700、Mw/Mn=2.87
【化54】
【0170】
比較合成例 有機化合物の合成
【0171】
[比較合成例1]化合物(A20)の合成
窒素雰囲気下、マグネシウム26.4g(1.09mol)を秤量した5Lの4つ口フラスコ内に脱水THF(テトラヒドロフラン)1,000mlで予め溶解した4,4’-ジブロモビフェニル168g(0.54mol)、塩化リチウム23.0g(0.54mol)をマグネシウムが浸る程度に加えた。ジブロモエタンを少量加え、反応をスタートさせた後、発熱を維持したまま残りのTHF溶液を3時間かけ滴下した。滴下終了後、THF500mlを加え、還流下で8時間熟成してGrignard試薬を調製した。内温55℃まで冷却した後、予め脱水THF400mlに溶解した9-フルオレノン150g(0.83mol)を2時間かけ滴下した。滴下終了後、還流下で5時間半熟成を行い、氷浴でフラスコを冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液1,000mlと純水1,000mlで反応をクエンチした。このとき溶液は白色の析出物が生じ、懸濁液となった。反応溶液にMIBK(メチルイソブチルケトン)150mlを追加し、懸濁液のまま分液ロートに移し変え、水層を抜き出し、更に純水500mlで分液水洗を行った後、有機層を減圧濃縮した。ジイソプロピルエーテルで再結晶を行い、生じた白色の結晶を濾別し、乾燥することでビフェニル誘導体(B3)を109g、収率51.0%で得た。
【0172】
【0173】
ビフェニル誘導体(B3) :
IR(D-ATR):ν=3539,3064,3039,1605,1495,1447,1164,1030,909,820,771,754,736cm-1。
1H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=6.34(2H,-OH,s),7.24(4H,t),7.27(8H,d),7.36(4H,t-t),7.45(4H,d),7.81(4H,d)ppm。
13C-NMR(150MHz i n DMSO-d6):δ=82.44,120.10,124.66,125.66,126.28,128.07,128.51,138.41,139.14,144.19,151.23ppm。
【0174】
ビフェニル誘導体(B3)40.3g(78.4mmol)、2-ナフトール23.73g(164.6mmol)、1,2-ジクロロエタン240mlを1Lの3つ口フラスコに秤量した。30℃のオイルバス中で撹拌しながら、メタンスルホン酸7.3mlをゆっくり滴下した。滴下終了後オイルバスの温度を50℃に上げ、6時間反応を行った。室温まで放冷後、MIBK500mlで希釈し、不溶分を濾別して分液ロートに移し変え、300mlの超純水で分液水洗を9回繰り返した。有機層を減圧濃縮し、残渣にTHF800ml加え、溶解させた後、ヘキサン2,500mlで晶出後、結晶を濾別、乾燥することでビフェニル誘導体化合物(A20)を51.6g、収率85.8%で得た。
【0175】
【0176】
化合物(A20):
IR(KBr):ν=3528,3389,3059,3030,1633,1604,
1506,1493,1446,1219,1181,750,740cm-1。
1H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=6.98(2H,d-d),7.05(2H,s-d),7.17(4H,d),7.24(2H,d-d),7.29(4H,t),7.38(4H,t),7.40(2H,s),7.45(4H,d),7.50(6H,d),7.58(2H,d),7.93(4H,d),9.72(2H,-OH,s)ppm。
13C-NMR(150MHz in DMSO-d6):δ=64.59,108.35,118.77,120.58,125.19,126.11,126.36,126.62,126.94,127.16,127.71,127.88,128.20,129.35,133.39,138.14,139.26,139.59,144.82,150.56,155.39ppm。
【0177】
[比較合成例2]化合物(A21)の合成
ジオール(A20)7.7g、炭酸カリウム3.0g、N,N-ジメチルホルムアミド40gを混合し、55℃まで昇温した。プロパルギルブロマイド80%トルエン溶液3.3gをゆっくり滴下して、55℃で14時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、トルエン150gを加え、水洗、減圧濃縮し、プロパルギル体(A21)8.4gを得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A21):Mw=1000、Mw/Mn=1.09
【0178】
【0179】
[比較合成例3]化合物(A22)の合成
2,7-ジヒドロキシナフタレン32.0g、37%ホルマリン水溶液10.5g、及び2-メトキシ-1-プロパノール270gを窒素雰囲気下、内温80℃で均一溶液とした後、20%パラトルエンスルホン酸2-メトキシ-1-プロパノール溶液18gをゆっくり加え、内温110℃で8時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン600gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF400mlを加え、ヘキサン2,000mlでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥した。
続いて、得られた化合物、炭酸カリウム55.3g、N,N-ジメチルホルムアミド250gを混合し、55℃まで昇温した。プロパルギルブロマイド80%トルエン溶液59.5gをゆっくり滴下して、55℃で22時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、トルエン150gを加え、水洗、減圧濃縮し、プロパルギル体(A22)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A22):Mw=3500、Mw/Mn=2.75
【0180】
【0181】
[比較合成例4]化合物(A23)の合成
9,9-フルオレニリデン―ビスナフトール90.1g、37%ホルマリン水溶液10.5g、及び2-メトキシ-1-プロパノール270gを窒素雰囲気下、内温80℃で均一溶液とした後、20%パラトルエンスルホン酸2-メトキシ-1-プロパノール溶液18gをゆっくり加え、内温110℃で8時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン600gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF400mlを加え、ヘキサン2,000mlでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して化合物(A23)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A23):Mw=3700、Mw/Mn=2.82
【0182】
【0183】
有機膜材料(UDL-1~19、比較UDL1~8)の調製
上記化合物(A3)~(A13)、(A15)~(A16)、(A18)~(A23)、(B5)、添加剤として架橋剤(CR1)、酸発生剤(AG1)、高沸点溶剤として(S1)1,6-ジアセトキシヘキサン:沸点260℃または(S2)トリプロピレングリコールモノメチルエーテル:沸点242℃をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、FC-4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表1に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって有機膜材料(UDL-1~19、比較UDL-1~8)をそれぞれ調製した。
【0184】
【0185】
以下に、架橋剤として(CR1)、酸発生剤(AG1)を示す。
【化60】
【0186】
実施例1 窒素雰囲気中ベークでの溶媒耐性測定(実施例1-1~1-19、比較例1-1~1-8)
上記で調製した有機膜材料(UDL-1~19、比較UDL-1~8)をシリコン基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒間焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶媒をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、膜厚を測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めた。
【0187】
【0188】
表2に示されるように、本発明の有機膜材料(実施例1-1~1-19)は、PGMEA処理後の残膜率が99%以上あり、窒素雰囲気下においても架橋反応が起き十分な溶剤耐性を発現していることがわかる。それに対して架橋剤と熱酸発生剤が添加されていない比較例1-3~1-5ではPGMEA処理後の残膜率がすべて50%未満となり十分な溶剤耐性が発現せず、十分な溶剤耐性を発現させるためには架橋剤および熱酸発生剤の添加が必要となった。この結果より、本発明の三重結合を含む構造を有する化合物により熱硬化反応が起き、溶剤耐性が発現し硬化膜を形成していることがわかる。
【0189】
実施例2 大気中ベークでの溶媒耐性測定(実施例2-1~2-19、比較例2-1~2-8)
上記で調製した有機膜形成用組成物(UDL-1~19、比較UDL-1~8)をシリコン基板上に塗布し、大気中350℃で60秒間焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶媒をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、膜厚を測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めた。
【0190】
【0191】
表3に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例2-1~2-19)は、PGMEA処理後の残膜率が99%以上あり、大気中においても架橋反応が起き十分な溶剤耐性を発現していることがわかる。それに対して架橋剤と熱酸発生剤が添加されていない比較例2-4、2-5ではPGMEA処理後の残膜率が50%未満となり十分な溶剤耐性が発現せず、十分な溶剤耐性を発現させるためには架橋剤および熱酸発生剤の添加が必要となった。この結果より、本発明の三重結合を含む構造を有する化合物が大気中でも熱硬化反応を起こし、溶剤耐性が発現していることがわかる。
【0192】
実施例3 耐熱特性評価(実施例3-1~3-19、比較例3-1~3-8)
上記の有機膜形成用組成物(UDL-1~19、比較UDL-1~8)をそれぞれシリコン基板上に塗布し、大気中、180℃で焼成して115nmの塗布膜を形成し、膜厚を測定した。更に、この基板を酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下にて450℃で焼成し、膜厚を測定した(実施例3-1~3-19、比較例3-1~3-8)。これらの結果を表4に示す。
【0193】
【0194】
表4に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例3-1~3-19)は、450℃での焼成後も膜厚減少が1%未満であり、本発明の有機膜形成用組成物から形成される有機膜は高い耐熱性を有していることがわかる。それに対して比較例3-1~3-8では本発明の有機膜材料に比べて大きな膜厚減少が起きており、架橋剤を添加し硬化させた比較例3-6~3-8においても、10%以上の膜厚減少が起きている。
【0195】
実施例4 埋め込み特性評価(実施例4-1~4-19、比較例4-1~4-8)
図3のように密集ホールパターン(ホール直径0.16μm、ホール深さ0.50μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.32μm)を有するSiO
2ウエハー基板上に上記の有機膜形成用組成物(UDL-1~19、比較UDL-1~8)をそれぞれ塗布し、ホットプレートを用いて酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒間焼成し、有機膜8を形成した。使用した基板は
図3(G)(俯瞰図)及び(H)(断面図)に示すような密集ホールパターンを有する下地基板7(SiO
2ウエハー基板)である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ホール内部にボイド(空隙)なく、有機膜で充填されているかどうかを確認した。結果を表5に示す。埋め込み特性に劣る有機膜形成用組成物を用いた場合は、本評価において、ホール内部にボイドが発生する。埋め込み特性が良好な有機膜形成用組成物を用いた場合は、本評価において、
図3(I)に示されるようにホール内部にボイドなく有機膜が充填される。
【0196】
【0197】
表5に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例4-1~4-19)は、ボイドを発生すること無くホールパターンを充填することが可能であり、良好な埋め込み特性を有することが確認出来た。一方、比較例4-1~4-8では、ボイドが発生し埋め込み特性が不良であることが確認された。この結果から、本発明の有機膜形成用組成物は本発明の三重結合を含む構造を有する化合物により耐熱性が確保され、埋め込み特性が改善されていることがわかる。一方、比較例4-1~4-8は、窒素雰囲気下では耐熱性が不足していることから、ボイドが発生し、良好な埋め込み特性が得られなかった。
【0198】
実施例5 平坦化特性評価(実施例5-1~5-15、比較例5-1~5-8)
図4に示される巨大孤立トレンチパターン(
図4(J)、トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有する下地基板9(SiO
2ウエハー基板)上に有機膜形成用組成物(UDL-2~3、5~13、16~19、比較UDL-1~8)をそれぞれ塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下、450℃で60秒間焼成した。トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜10の段差(
図4(K)中のdelta10)を、パークシステムズ社製NX10原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。結果を表6に示す。本評価において、段差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。なお、本評価では、深さ0.10μmのトレンチパターンを通常膜厚約0.2μmの有機膜形成用組成物を用いて平坦化している。平坦化特性の優劣を評価するために厳しい条件を採用している。
【0199】
【0200】
表6に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例5-1~5-15)は、比較例5-1~5-8に比べて、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜の段差が小さく、平坦化特性に優れることが確認された。比較例の有機膜形成用組成物のうち、架橋剤を添加したものは、特に平坦性が悪い結果となっている。平坦化特性においても、本発明の三重結合を含む構造の優位性が示された。また、高沸点溶剤を添加した実施例5-12~5-13と添加していない実施例5-6と比較すると高沸点溶剤の添加により平坦性がより改善していることがわかる。
【0201】
実施例6 パターン形成試験(実施例6-1~6-15、比較例6-1~6-8)
上記の有機膜形成用組成物(UDL-2~3、5~13、16~19、比較UDL-1~8)を、それぞれ300nmのSiO2膜が形成されているシリコンウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下にて450℃で60秒焼成し、有機膜(レジスト下層膜)を形成した。その上にCVD-SiONハードマスクを形成し、更に、有機反射防止膜材料(ARC-29A:日産化学社製)を塗布して210℃で60秒間ベークして膜厚80nmの有機反射防止膜を形成し、その上にレジスト上層膜材料のArF用単層レジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。フォトレジスト膜上に液浸保護膜材料(TC-1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0202】
レジスト上層膜材料(ArF用単層レジスト)としては、ポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、FC-4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表7の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0203】
【0204】
用いたポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、及び塩基性化合物(Amine1)を以下に示す。
【化61】
【0205】
液浸保護膜材料(TC-1)としては、保護膜ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表8の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0206】
【0207】
用いたポリマー(PP1)を以下に示す。
【化62】
【0208】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、55nm1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0209】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによりレジストパターンをマスクにして有機反射防止膜とCVD-SiONハードマスクをエッチング加工してハードマスクパターンを形成し、得られたハードマスクパターンをマスクにして有機膜をエッチングして有機膜パターンを形成し、得られた有機膜パターンをマスクにしてSiO2膜のエッチング加工を行った。エッチング条件は下記に示すとおりである。
【0210】
レジストパターンのSiONハードマスクへの転写条件。
チャンバー圧力10.0Pa
RFパワー1,500W
CF4ガス流量75sccm
O2ガス流量15sccm
時間15sec
【0211】
ハードマスクパターンの有機膜への転写条件。
チャンバー圧力2.0Pa
RFパワー500W
Arガス流量75sccm
O2ガス流量45sccm
時間120sec
【0212】
有機膜パターンのSiO2膜への転写条件。
チャンバー圧力2.0Pa
RFパワー2,200W
C5F12ガス流量20sccm
C2F6ガス流量10sccm
Arガス流量300sccm
O2ガス流量60sccm
時間90sec
【0213】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)にて観察した結果を表9に示す。
【0214】
【0215】
表9に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例6-1~6-15)の結果より、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜形成用組成物は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。一方、比較例6-3~6-5は、窒素雰囲気下では耐熱性が不足するとともに、比較例1-3~1-5で示した通り十分に硬化されていないことから、パターン加工時にパターン倒れが発生し良好なパターンを得ることが出来なかった。比較例6-1~6-2、6-6~6-8においては、耐熱性が不足するもののパターンを形成することはできた。
【0216】
実施例7 パターン形成試験(実施例7-1~7-15、比較例7-1~7-8)
トレンチパターン(トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有するSiO
2ウエハー基板上に、上記の有機膜形成用組成物(UDL-2~3、5~13、16~19、比較UDL-1~8)をそれぞれ塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下にて450℃で60秒焼成した以外は、実施例6と同じ方法で積層膜を形成し、パターニング、ドライエッチングを行ない、出来上がったパターンの形状を観察した。
【表10】
【0217】
表10に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例7-1~7-15)の結果より、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜形成用組成物は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。一方、比較例7-3~7-5では、窒素雰囲気下では耐熱性が不足するとともに、比較例1-3~1-5で示した通り十分に硬化されておらず、また、パターンの埋め込みが不良であるために、パターン加工時にパターン倒れが発生し良好なパターンを得ることが出来なかった。比較例7-1~7-2、7-6~7-8では溶剤耐性が得られており硬化膜となっているものであるが、パターンの埋め込みが不良であるためにパターン加工時にパターン倒れが発生し、最終的に良好なパターンを得ることが出来なかった。
【0218】
以上のことから、本発明の化合物を含有する本発明の有機膜形成用組成物であれば、良好なドライエッチング耐性を有するとともに、酸素を含まない不活性ガス下においても450℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つため、多層レジスト法に用いる有機膜形成用組成物として極めて有用であり、また、これを用いたパターン形成方法であれば、被加工基板がパターンを有する基板であっても微細なパターンを高精度で形成できることが明らかとなった。
【0219】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。