(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162641
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20231101BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20231101BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20231101BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20231101BHJP
B24B 7/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B23Q11/00 Z
B23Q11/00 N
B23Q11/08 Z
B24B55/02 B
B24B55/06
B24B7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073116
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】池田 壮志
【テーマコード(参考)】
3C011
3C043
3C047
【Fターム(参考)】
3C011BB02
3C011BB06
3C011BB22
3C011DD03
3C043BA03
3C043BA11
3C043BA16
3C043CC04
3C043CC11
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD06
3C047FF04
3C047GG01
3C047HH01
3C047HH12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加工室に接続されたダクト内の乾燥の度合を低減する。
【解決手段】チャックテーブル4と、加工工具28と、加工水供給ノズル32とを、上方から覆う加工室カバー34と、加工屑と霧状の加工水とを含む気体状の流体を一端部42から吸引するためのダクト40と、ダクト40の他端部44に接続されており、負圧を発生させるための吸引源50と、ダクト40の一端部42と他端部44との間に位置するダクトの絞り部46に上端部が接続されたパイプ48と、加工室カバー34の下方に位置し、加工室カバー34と共に加工室38を形成する底板部10と、を備え、加工室カバー34の内側からダクト40を介して気体状の流体を吸引する際に、底板部10に溜まっている液体状の加工水30が、パイプ48の下端部から吸い上げられて、ダクト40を流れる気体状の流体に混合され、ダクト40内に散布される加工装置2を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックテーブルで保持された被加工物に加工水を供給しながら、加工ユニットで該被加工物を加工する加工装置であって、
該加工ユニットは、加工工具が装着されるスピンドルと、該被加工物及び該加工工具に該加工水を供給可能な加工水供給ノズルと、を含み、
該加工装置は、
該チャックテーブルと、該加工工具と、該加工水供給ノズルとを、上方から覆う加工室カバーと、
該加工工具での該被加工物の加工の際に該加工室カバーの内側でそれぞれ発生する加工屑と霧状の該加工水とを含む気体状の流体を一端部から吸引するためのダクトと、
該一端部とは反対側に位置する該ダクトの他端部に接続されており、負圧を発生させるための吸引源と、
該ダクトの該一端部と該他端部との間に位置する該ダクトの絞り部に上端部が接続され、該上端部よりも下方に位置する下端部を含むパイプと、
該加工室カバーの下方に位置し、該加工室カバーと共に加工室を形成する底板部と、
を備え、
該加工室カバーの内側から該ダクトを介して該気体状の流体を吸引する際に、該底板部に溜まっている液体状の該加工水が、該パイプの該下端部から吸い上げられて、該ダクトを流れる該気体状の流体に混合され、該ダクト内に散布されることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該パイプの内側に設けられ、尖った先端部が下方を向く様に配置された針部と、
該パイプの内側に設けられ、該針部を支持するための環状の受け部と、
を更に備え、
該ダクトに吸引される該気体状の流体の流量に応じて該針部の該先端部の高さ位置が変動することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルで保持された被加工物に加工水を供給しながら、加工ユニットで被加工物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円盤状の半導体ウェーハや短冊状のパッケージ基板等に代表される被加工物に対してバイトと呼ばれる切削工具を用いて切削加工を施すためのバイト切削装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。バイト切削装置は、被加工物を吸引保持するためのチャックテーブルを有する。チャックテーブルは、所定方向(加工送り方向)に移動可能に構成されている。
【0003】
チャックテーブルの上方には、バイト切削ユニットが配置されている。バイト切削ユニットは、長手方向が鉛直方向に沿って配置されたスピンドルを有する。スピンドルの下端部には、円盤状のマウントを介してバイトホイールの上面側が装着されている。バイトホイールの下面側の一部には、切り刃を含むバイトが固定されている。
【0004】
被加工物を切削する際には、被加工物の一面側を吸引保持したチャックテーブルを所定の加工送り速度で加工送り方向に移動させながら、スピンドルを回転させてバイトを円軌道に沿って旋回させる。旋回するバイトの先端が被加工物の他面側に接触すると、被加工物の他面側が切削される。
【0005】
切削中には細長い糸状の切削屑(加工屑)が発生するので、バイトと被加工物との接触領域(切削領域)から加工屑を除去するために、バイト切削装置には、純水等の加工水を噴射するためのノズルが設けられる。ノズルから供給された加工水は、バイト切削が行われる切削室(加工室)の底板に落下したり、霧状になって切削室内に漂ったりする。
【0006】
霧状の加工水と、細かい加工屑と、が混ざった霧状の混合物(即ち、エアロゾル)を吸引して加工室から除去するために、バイト切削装置には吸引ユニットが設けられる場合がある(例えば、特許文献2参照)。吸引ユニットは、負圧を発生させる吸引源を含む。また、吸引源と加工室との間は、ダクトにより接続される。
【0007】
加工中には、加工室内に漂う霧状の混合物を、ダクトを介して吸引するが、ダクト内に加工屑が付着した状態でダクト内が乾燥すると、加工屑がダクト内に固着する。付着、乾燥及び固着のサイクルが進んで、ダクト内に加工屑が溜まると、圧力損失等により吸引ユニットの吸引力が低下する。
【0008】
吸引力が低下して、霧状の混合物が加工室から適切に吸引できなくなると、例えば、チャックテーブルの保持面に加工屑が付着するなどの不具合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-18942号公報
【特許文献2】特開2019-72786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、加工室に接続されたダクト内の乾燥の度合を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、チャックテーブルで保持された被加工物に加工水を供給しながら、加工ユニットで該被加工物を加工する加工装置であって、該加工ユニットは、加工工具が装着されるスピンドルと、該被加工物及び該加工工具に該加工水を供給可能な加工水供給ノズルと、を含み、該加工装置は、該チャックテーブルと、該加工工具と、該加工水供給ノズルとを、上方から覆う加工室カバーと、該加工工具での該被加工物の加工の際に該加工室カバーの内側でそれぞれ発生する加工屑と霧状の該加工水とを含む気体状の流体を一端部から吸引するためのダクトと、該一端部とは反対側に位置する該ダクトの他端部に接続されており、負圧を発生させるための吸引源と、該ダクトの該一端部と該他端部との間に位置する該ダクトの絞り部に上端部が接続され、該上端部よりも下方に位置する下端部を含むパイプと、該加工室カバーの下方に位置し、該加工室カバーと共に加工室を形成する底板部と、を備え、該加工室カバーの内側から該ダクトを介して該気体状の流体を吸引する際に、該底板部に溜まっている液体状の該加工水が、該パイプの該下端部から吸い上げられて、該ダクトを流れる該気体状の流体に混合され、該ダクト内に散布される加工装置が提供される。
【0012】
好ましくは、該パイプの内側に設けられ、尖った先端部が下方を向く様に配置された針部と、該パイプの内側に設けられ、該針部を支持するための環状の受け部と、を加工装置は更に備え、該ダクトに吸引される該気体状の流体の流量に応じて該針部の該先端部の高さ位置が変動する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る加工装置は、加工室カバー及び底板部を備える。加工室カバー及び底板部は、加工室を形成する。加工室カバーには、ダクトの一端部が接続されており、ダクトの他端部には、吸引源が接続されている。また、ダクトの一端部と他端部との間に設けられているダクトの絞り部には、パイプの上端部が接続されている。
【0014】
加工室カバーの内側からダクトを介して気体状の流体を吸引する際に、加工室の底板部に溜まっている液体状の加工水は、パイプの下端部から吸い上げられて、ダクトを流れる気体状の流体に混合され、ダクト内に散布される。それゆえ、パイプから吸い上げられる加工水をダクト内に散布しない場合に比べて、ダクト内の乾燥の度合を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るバイト切削装置(加工装置)2の一部断面側面図である。バイト切削装置2は、円盤状のチャックテーブル4を有する。
【0017】
チャックテーブル4は、円盤状の枠体を有する。枠体の中央部には円盤状の凹部が形成されており、この凹部には、円盤状の多孔質板が固定されている。枠体には、真空ポンプ等の吸引源(不図示)が接続されており、吸引源からの負圧が枠体を介して多孔質板に伝達されると、多孔質板の上面には負圧が生じる。
【0018】
枠体の上面と、多孔質板の上面とは、略面一となっており、被加工物11を吸引保持するための略平坦な保持面4aとして機能する。保持面4aは、X軸方向及びY軸方向で構成されるX‐Y平面と略平行に配置されている。X軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)、及び、Z軸方向(鉛直方向、上下方向)は、互いに直交する。
【0019】
本実施形態の被加工物11は、ウェーハ13を有する。ウェーハ13は、例えば、シリコン等で形成された単結晶基板と、樹脂領域及び金属領域を含む機能層と、の積層体である。機能層は、ウェーハ13の他面13b側に位置する。
【0020】
機能層の金属領域は、例えば、銅(Cu)で形成されたバンプやポストに対応する。また、機能層の樹脂領域は、例えば、ポリイミドで形成されている。なお、上述の機能層は、一例であり、機能層の構成は上述の例に限定されるものではない。
【0021】
ウェーハ13の一面13aには、樹脂製のテープ15が貼り付けられており、ウェーハ13及びテープ15により、被加工物11が構成されている。テープ15は、基材層と、粘着層とを有する。テープ15の粘着層は、ウェーハ13の一面13aに貼り付けられ、テープ15の基材層は露出している。
【0022】
図1に示す例では、テープ15の基材層をバイト切削して平坦にするために、ウェーハ13の他面13b側を保持面4aで吸引保持し、テープ15の基材層を上方に露出させている。なお、テープ15は、粘着層を有さず、基材層のみを有してもよい。この場合、テープ15は、例えば、熱圧着により一面13aに貼り付けられる。
【0023】
チャックテーブル4は、ボールねじ式のX軸方向移動機構6により移動可能に支持されている。なお、
図1では、X軸方向移動機構6の具体的構成は省略されており、その位置のみが示されている。X軸方向移動機構6は、チャックテーブル4を支持する支持板(不図示)を有する。
【0024】
支持板は、一対のガイドレール(不図示)によりスライド可能に支持されている。一対のガイドレールは、バイト切削装置2の基台上に固定され且つX軸方向に沿って配置されている。支持板の下面側には、ナット部(不図示)が設けられている。
【0025】
ナット部には、X軸方向に沿って配置されたねじ軸(不図示)が、ボール(不図示)を介して回転可能に連結されている。ねじ軸の一端部には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。回転駆動源を作動させると、チャックテーブル4はX軸方向に沿って移動する。
【0026】
X軸方向移動機構6の上方且つ保持面4aよりも下方には、上面視で矩形状の上面8aを有するテーブルカバー8が設けられている。テーブルカバー8のX軸方向の一端部には、伸縮可能な蛇腹状のカバー部材(不図示)が設けられている。
【0027】
テーブルカバー8のX軸方向の他端部にも、同様のカバー部材(不図示)が設けられている。各カバー部材は、チャックテーブル4と共に移動するテーブルカバー8に追従して、X軸方向に伸縮する。
【0028】
テーブルカバー8のY軸方向の両端部には、Z軸方向に沿って垂下する垂下部8bが設けられている。垂下部8bの下方には、バイト切削(加工)時に使用される加工水30を一時的に受けるための底板部10が設けられている。
【0029】
底板部10は、Y軸方向に比べてX軸方向が長い矩形環状である。矩形環状の底板部10の一箇所には、円形の開口(不図示)が設けられており、この開口には、排水ホース10aが連結されている。
【0030】
底板部10のY軸方向の外側は、バイト切削装置2の基台部2aの内壁に固定されている。また、底板部10のY軸方向の内側には、底板部10よりも上方に突出する折り返し板12が設けられている。折り返し板12は、テーブルカバー8の垂下部8bの内側に配置されている。
【0031】
同様に、底板部10のX軸方向の外側は、基台部2aの内壁に固定されている。矩形環状の底板部10のX軸方向の内側には、折り返し板(不図示)が設けられており、底板部10のX軸方向の内側に位置する折り返し板は、蛇腹状のカバー部材の端部に固定されている。
【0032】
底板部10、複数の折り返し板12等は、X軸方向移動機構6が加工水30に曝されることを防止する。チャックテーブル4の上方には、バイト切削ユニット(加工ユニット)14が設けられている。バイト切削ユニット14は、円筒状の保持部材16で支持されている。
【0033】
保持部材16は、ボールねじ式のZ軸方向移動機構(不図示)によりZ軸方向に沿って移動可能に構成されている。具体的には、保持部材16には、スライド板(不図示)の一面側が固定されている。このスライド板は、Z軸方向に沿って配置された一対のガイドレール(不図示)にスライド可能に取り付けられている。
【0034】
スライド板の他面側の一部には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸方向に沿って配置されたねじ軸(不図示)が、ボール(不図示)を介して回転可能に連結されている。
【0035】
ねじ軸の上端部には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。回転駆動源を作動させれば、スライド板と共に保持部材16がZ軸方向に沿って移動する。保持部材16の内部には、スピンドルハウジング18が設けられている。
【0036】
スピンドルハウジング18は、長手方向がZ軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル20を回転可能に保持している。スピンドル20の上側の一部には、モータ等の回転駆動源が設けられている。また、スピンドル20の下端部には、円盤状のマウント22が固定されている。
【0037】
マウント22の下面側には、バイトホイール24が装着されている。バイトホイール24の下面の外周部には、ダイヤモンド等で形成された切り刃を含むバイト26が固定されている。バイトホイール24及びバイト26は、加工工具28を構成している。
【0038】
この様に、加工工具28は、マウント22を介してスピンドル20に装着されている。加工工具28の近傍には、被加工物11及び加工工具28に対して純水等の加工水30を供給可能なノズル(加工水供給ノズル)32が設けられている。
【0039】
加工水30は、バイト26と、保持面4aで吸引保持された被加工物11と、の接触領域(加工領域)からの加工屑の除去、及び、加工領域の冷却のために使用される。ノズル32、加工工具28及びチャックテーブル4の上方には、これらを覆う態様で加工室カバー34が設けられている。
【0040】
加工室カバー34の下方には、底板部10が位置しており、底板部10は、加工室カバー34と共に、加工室38を構成する。加工室カバー34は、上面視で略矩形形状の上板34aと、側面視でそれぞれ略矩形形状の一対の側板34bと、前板及び後板(不図示)と、を含む。
【0041】
なお、加工室カバー34は、加工工具28やチャックテーブル4の交換時に作業者のアクセスを可能にするために、分解可能に構成されている。上板34aの一部には、スピンドル20の径よりも大きく且つマウント22の径よりも小さい貫通孔(不図示)が形成されている。
【0042】
一対の側板34b、前板及び後板の各下端部は、基台部2aの上面に固定されている。なお、前板には、チャックテーブル4の進退を許容する開口部(不図示)が形成されている。ノズル32の先端と対面する1つの側板34bには、円形の貫通孔36が形成されている。
【0043】
この貫通孔36には、ダクト40が挿入されている。ダクト40は、概略円筒形状であり、例えば、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:PVC)で形成されている。ダクト40は、それぞれ略同じ内径の円筒状の先端部(一端部)42及び基端部(他端部)44を有する。
【0044】
先端部42及び基端部44の内径(φ1)は、例えば75mm以上90mm以下の所定値である。基端部44は、ダクト40の長手方向において先端部42とは反対側に位置している。先端部42と基端部44との間には、先端部42及び基端部44よりも小さい内径を有するスロート(絞り部)46が設けられている。
【0045】
先端部42及びスロート46は一の円錐管により接続されており、スロート46及び基端部44は他の円錐管により接続されている。スロート46は、ダクト40よりも細径の円筒形状を有する。スロート46の内径(φ2)は、例えば40mm以上75mm以下の所定値であり、スロート46の長手方向の長さは、例えば100mmである。
【0046】
スロート46の底面側には、スロート46の長手方向に直交する態様で、細長い円筒状のパイプ48の上端部48a(
図2参照)が接続されている。
図1に示す例では、先端部42、基端部44及びスロート46を含むダクト40の長手方向は、Y軸方向と略平行であり、パイプ48の長手方向は、Z軸方向と略平行である。
【0047】
パイプ48は、ダクト40と同じ材料で形成されている。パイプ48の内径(φ3)は、例えば4mmであり、パイプ48の長手方向(Z軸方向)の長さは、例えば500mmである。
【0048】
本実施形態のスロート46及びパイプ48は、その全体が加工室カバー34の内側に配置されている。パイプ48の下端部48bは、Z軸方向において上端部48aよりも下方に位置し、底板部10の近傍に位置する。
【0049】
パイプ48の下端部48bは、加工中に底板部10に溜まる加工水30に接触可能な程度に十分に底板部10に近接している。例えば、下端部48bは、底板部10から約10mmだけ離れている。
【0050】
但し、パイプ48の下端部48bの直下に対応する底板部10の所定領域に窪みを形成し、当該窪みに加工水30が溜まる様にしてもよい。この場合、下端部48bの高さ位置は、底板部10の上面を構成する主要な平面と略同じ高さ位置であってもよい。
【0051】
ダクト40の基端部44側には、真空ポンプ、エジェクタ等の吸引源50が接続されている。吸引源50は、負圧を発生させることで、ダクト40を介して加工室38内の気体状の流体17を先端部42から吸引する。
【0052】
例えば、吸引源50は、加工室38内の雰囲気圧力よりも低い圧力を発生させる。なお、基端部44には、吸引源50を保護するためのフィルタ(不図示)が設けられており、ダクト40、フィルタ、吸引源50等は、吸引ユニット52を構成する。
【0053】
次に、
図2を参照し、パイプ48の構成について更に詳しく説明する。
図2は、スロート46近傍の部分拡大図である。パイプ48の内側には、尖った先端部を有する針部54が、その先端部が下方を向く態様で配置されている。針部54は、例えば、ポリ塩化ビニルで形成されており、約100gの重さを有する。
【0054】
パイプ48の内側には、環状の受け部56が設けられている。受け部56は、例えばポリ塩化ビニルで形成されている。受け部56には、針部54の先端形状に対応した逆円錐台形状の貫通孔56aが形成されている。吸引源50が作動していないときに、針部54は貫通孔56aに嵌合する態様で受け部56に支持され、貫通孔56aは針部54により塞がれる。
【0055】
これに対して、吸引源50を作動させて、ダクト40の先端部42から加工室38内の気体状の流体17を吸引すると、ベルヌーイの法則に従い、スロート46での流速v2は、ダクト40の先端部42での流速v1よりも高くなり、スロート46での圧力p2は、ダクト40の圧力p1に比べて低くなる(ベンチュリー効果)。それゆえ、針部54は上昇する。
【0056】
ところで、気体状の流体17の密度をρとすると、連続方程式に基づき、p1/ρ+(v1)2/2=p2/ρ+(v2)2/2…(1)が成り立つ。また、それぞれY軸方向に直交するX‐Z面での先端部42の断面積A1及びスロート46の断面積A2を用いると、v2=(A1/A2)v1…(2)が成り立つ。
【0057】
(1)及び(2)から、(p1-p2)/ρ={(A1/A2)2-1}(v1)2/2…(3)が得られる。(3)から明らかな様に、ダクト40内の圧力p1と、スロート46内の圧力p2と、の差圧(p1-p2)(>0)は、ダクト40での流速v1に応じて大きくなる。
【0058】
吸引源50で発生させる負圧の大きさ(即ち、絶対値)が大きくなるほど流速v1は大きくなるので、これに伴ない差圧(p1-p2)が大きくなる。差圧(p1-p2)が大きくなるほど、針部54は上昇する。
【0059】
つまり、吸引源50で発生させる負圧の大きさに応じて、ダクト40に吸引される気体状の流体17の流量が変動し、この変動に応じて、針部54の先端部54aの高さ位置が変動する。
【0060】
パイプ48を介して吸い上げられた加工水30は、針部54と受け部56との隙間からダクト40に散布される。それゆえ、本実施形態では、パイプ48から吸い上げられる液体状の加工水30をダクト内に散布しない場合に比べて、ダクト40内の乾燥の度合を低減できる。
【0061】
更に、使用済の加工水30をダクト40内の乾燥低減のために再利用することで、ダクト40内における乾燥の度合の低減のために未使用の加工水30を使用する場合に比べて、バイト切削装置2で消費される未使用の加工水30の量を低減できる。
【0062】
針部54と受け部56との隙間は、先端部54aが上昇するほど大きくなり、先端部54aが下降するほど小さくなる。針部54と受け部56との隙間は、パイプ48からダクト40内へ加工水30を散布するためのノズルとして機能する。
【0063】
つまり、パイプ48に針部54及び受け部56を設けない場合に比べて、パイプ48を介して吸い上げる加工水30を微粒化した状態で、加工水30をダクト40内に散布できる。この様に加工水30を微粒化することで、比較的大粒の加工水30がダクト40の上部に当たらずにダクト40の上部の乾燥が促進して加工屑が固着する可能性を低減できる。
【0064】
本実施形態では、吸引源50での負圧の大きさ、パイプ48のZ軸方向の長さ、針部54の重さ等を適宜調整することにより、ダクト40を流れる気体状の流体17の流量B1と、パイプ48を介して底板部10から吸い上げられダクト40へ供給される加工水30の流量B2と、の比(B1:B2)を、10:1に調整する。
【0065】
なお、加工中において、パイプ48から吸い上げられる加工水30の流量は、ノズル32から供給される加工水30の流量に比べて十分に小さいので、上述の流量比(B1:B2)を実現できる程度の十分な加工水30が底板部10には存在する。
【0066】
図1に戻って、バイト切削装置2の構成を説明する。X軸方向移動機構6、バイト切削ユニット14、ノズル32、Z軸方向移動機構、吸引ユニット52等の動作は、バイト切削装置2の制御ユニット(不図示)により制御される。
【0067】
制御ユニットは、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0068】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニットの機能が実現される。次に、
図1を参照し、加工工具28で被加工物11を加工する手順について説明する。
図1に示す例では、被加工物11のテープ15に対してバイト切削を施す。
【0069】
加工に際して、まず、保持面4aでウェーハ13の他面13b側を吸引保持する。次いで、バイト26の下端をテープ15の上面よりも僅かに低い所定の高さに位置付けた状態でスピンドル20を回転させながら、被加工物11及びバイト26に加工水30を供給する。
【0070】
この状態でチャックテーブル4を加工送りすることにより、テープ15がバイト切削される。ノズル32から供給された加工水30は、霧状になって加工室38内に漂ったり、底板部10に落下したりする。
【0071】
霧状になって加工室38内に漂う使用後の加工水30にも、樹脂の微小な加工屑が混合している。それゆえ、ダクト40の先端部42から吸引される気体状の流体17には、霧状の加工水30と、樹脂の微小な加工屑と、の混合物が含まれている。
【0072】
ダクト40内に加工屑が付着した状態でダクト40内が乾燥すると、加工屑がダクト40内に固着する。付着、乾燥及び固着のサイクルが進んで、ダクト40内に加工屑が溜まると、圧力損失等により吸引ユニット52の吸引力が低下する。
【0073】
これに対して、本実施形態では、加工室カバー34の内側からダクト40を介して気体状の流体17を吸引する際に、底板部10に溜まっている液体状の加工水30をパイプ48の下端部48bから吸い上げて、ダクト40を流れる気体状の流体17に混合する。
【0074】
この様に、液体状の加工水30がダクト40内に散布されるので、パイプ48から吸い上げられる液体状の加工水30をダクト内に散布しない場合に比べて、ダクト40内の乾燥の度合を低減できる。
【0075】
なお、底板部10に落下した使用後の加工水30には、加工時に発生した糸状の加工屑が混合しているが、パイプ48からの加工水30の吸い上げにおいて、糸状の加工屑の影響は略無視できる。なお、加工屑のパイプ48への進入をより確実に防止するために、下端部48bの側方、上方及び下方を網で囲ってもよい。
【0076】
また、加工屑として排出されるテープ15の屑は比較的軽量であるので、吸引源50での負圧の大きさを比較的大きくすることで、底板部10に落下する加工屑の量よりもダクト40から吸引する加工屑の量を多くしてもよい。例えば、略全ての加工屑をダクト40から吸引してもよい。
【0077】
例えば、8インチ(約200mm)の径を有するテープ15にバイト切削を施す際には、加工室38からダクト40への風量を10m3/minとし、12インチ(約300mm)の径を有するテープ15にバイト切削を施す際には、加工室38からダクト40への風量を20m3/minとする。これにより、略全ての加工屑をダクト40から吸引できる。
【0078】
次に、
図3を参照して、被加工物11のウェーハ13の機能層に対してバイト切削を施す例を説明する。
図3は、バイト切削装置2の一部断面側面図である。加工に際して、まず、テープ15を保持面4aに載置し、保持面4aでウェーハ13の一面13a側を吸引保持する。
【0079】
次いで、バイト26の下端を他面13bよりも僅かに低い所定の高さに位置付けてスピンドル20を回転させながら、被加工物11に加工水30を供給する。この状態でチャックテーブル4を加工送りすることにより、他面13b側(樹脂領域及び金属領域を含む機能層)がバイト切削される。
【0080】
ウェーハ13に対してバイト切削を施す際にも、ノズル32から供給された加工水30は、霧状になって加工室38内に漂ったり、底板部10に落下したりする。また、霧状になって加工室38内に漂う使用後の加工水30にも、樹脂及び金属の微小な加工屑が混合している。
【0081】
それゆえ、ダクト40の先端部42から吸引される気体状の流体17には、霧状の加工水30と、樹脂、金属等の微小な加工屑と、の混合物が含まれている。ダクト40内に加工屑が付着した状態でダクト40内が乾燥すると、加工屑がダクト40内に固着する。
【0082】
付着、乾燥及び固着のサイクルが進んで、ダクト40内に加工屑が溜まると、圧力損失等により吸引ユニット52の吸引力が低下する。しかし、本実施形態では、加工室カバー34の内側からダクト40を介して気体状の流体17を吸引する際に、底板部10に溜まっている液体状の加工水30をパイプ48の下端部48bから吸い上げて、ダクト40を流れる気体状の流体17に混合する。
【0083】
この様に、液体状の加工水30をダクト40内に散布するので、パイプ48から吸い上げられる液体状の加工水30をダクト内に散布しない場合に比べて、ダクト40内の乾燥の度合を低減できる。
【0084】
なお、底板部10に落下した使用後の加工水30には、加工時に発生した樹脂、金属等の材料で成る糸状の加工屑が混合しているが、パイプ48からの加工水30の吸い上げにおいて、糸状の加工屑の影響は略無視できる。
【0085】
また、
図3に示す例において加工屑として排出される樹脂及び金属の屑は、テープ15の屑に比べて重いので、吸引源50での負圧の大きさを比較的小さくし、ダクト40から吸引する加工屑の量を低減してもよい。例えば、8インチや12インチの径を有するウェーハ13のうち樹脂領域及び金属領域を含む機能層に対してバイト切削を施す際には、加工室38からダクト40への風量を9m
3/minとする。
【0086】
(第2の実施形態)次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、不図示の切削装置(加工装置)の加工室カバー34に、ダクト40が設けられている。第1の実施形態と同様に、ダクト40の基端部44には吸引源50が接続されており、ダクト40のスロート46には、パイプ48の上端部48aが接続されている。
【0087】
加工室カバー34内には、Y軸方向に長手部を有する筒状のスピンドルハウジング(不図示)が配置されている。スピンドルハウジングは、不図示の移動機構によりY軸方向及びZ軸方向に移動可能である。
【0088】
スピンドルハウジングには、Y軸方向に長手部を有する円柱状のスピンドル(不図示)を回転可能に保持している。スピンドルハウジングに収容されているスピンドルの一部には、モータ等の回転駆動源(不図示)が設けられている。
【0089】
スピンドルハウジングから突出しているスピンドルの他の一部には、円環状の切り刃を有する切削ブレード(加工工具)(不図示)が装着されている。また、切削ブレードの環状の両面を挟む様に、一対のノズル(加工水供給ノズル)(不図示)が設けられている。スピンドル、一対のノズル等は、切削ユニット(加工ユニット)を構成する。
【0090】
ウェーハ13を切削する際には、チャックテーブル4で吸引保持された被加工物11をX軸方向に沿って加工送りすることで、スピンドルを回転軸として高速回転させた切削ブレードをウェーハ13に切り込むと共に、各ノズルから切削ブレード及びウェーハ13に純水等の加工水30を供給する。
【0091】
第2の実施形態でも、加工室カバー34の内側からダクト40を介して気体状の流体17を吸引する際に、底板部10に溜まっている液体状の加工水30をパイプ48の下端部48bから吸い上げて、ダクト40を流れる気体状の流体17に混合する。
【0092】
これにより、液体状の加工水30がダクト40内に散布されるので、パイプ48から吸い上げられる液体状の加工水30をダクト内に散布しない場合に比べて、ダクト40内の乾燥の度合を低減できる。
【0093】
(第3の実施形態)次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、研削装置(加工装置)60を用いて被加工物11のウェーハ13を研削する。
図4は、研削装置60の要部を示す上面図である。
【0094】
なお、
図4に示す例において、X軸方向は、加工送り方向ではない。また、Y軸方向は、割り出し送り方向ではない。但し、Z軸方向は、鉛直方向、上下方向である。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに直交する。
【0095】
研削装置60は、円盤状のターンテーブル62を有する。ターンテーブル62は、その径方向中心に設けられた回転軸(不図示)の周りに回転可能である。ターンテーブル62上には、3つのチャックテーブル64が、ターンテーブル62の周方向に沿って略等間隔に配置されている。
【0096】
各チャックテーブル64は、非多孔質のセラミックスで形成された円盤状の枠体を有する。枠体の上部には、円盤状の凹部が形成されており、この凹部には多孔質セラミックスで形成された円盤状の多孔質板が固定されている。
【0097】
枠体には、溝、貫通孔等の流路が形成されており、この流路を介して多孔質板には、真空ポンプ等の吸引源(不図示)から負圧が伝達する。なお、各チャックテーブル64は、所定の回転軸(不図示)の周りに回転可能である。
【0098】
ターンテーブル62の領域Cに配置されたチャックテーブル64に対しては、被加工物11が搬入又は搬出される。領域Cから時計回りに略120度進んだ領域Dでは、チャックテーブル64で吸引保持された被加工物11(例えば、上述のウェーハ13の単結晶基板)に対して粗研削が施される。
【0099】
領域Dのチャックテーブル64の上方には、粗研削ユニット(加工ユニット)66が設けられている。粗研削ユニット66は、長手方向がZ軸方向に沿って配置されたスピンドルハウジング(不図示)を有する。スピンドルハウジングには、粗研削ユニット66をZ軸方向に沿って移動させるためのボールねじ式の移動機構(不図示)が連結されている。
【0100】
スピンドルハウジングは、長手方向がZ軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル(不図示)を回転可能に保持している。スピンドルハウジングに収容されているスピンドルの一部には、モータ等の回転駆動源が設けられている。
【0101】
スピンドルの下端部は、スピンドルハウジングから下方に突出している。スピンドルの下端部には、円盤状のマウント(不図示)を介して、円環状の粗研削ホイール(加工工具)(不図示)が装着されている。
【0102】
また、粗研削ユニット66の直下には、チャックテーブル64で吸引保持された被加工物11と、粗研削ホイールと、に純水等の加工水30を供給可能なノズル(加工水供給ノズル)68が設けられている。
【0103】
領域Dに配置されているチャックテーブル64と、粗研削ホイールと、ノズル68とは、加工室カバー70で覆われている。加工室カバー70の内側において、ターンテーブル62の径方向の外側には、粗研削時に使用された加工水30を一時的に受けるための底板部60aが設けられている。
【0104】
底板部60aは、加工室カバー70の下方に位置しており、加工室カバー70と共に粗研削用の加工室を形成する。なお、
図4では、加工室カバー70の上板を省略している。加工室カバー70には、上述のダクト40が設けられている。
【0105】
ダクト40の基端部44には吸引源50が接続されており、ダクト40のスロート46には、パイプ48の上端部48aが接続されている。また、パイプ48の下端部48bは、底板部60a近傍に位置している。
【0106】
ウェーハ13を粗研削する際には、まず、被加工物11を吸引保持したチャックテーブル64を領域Dに配置する。そして、ノズル68から加工水30を供給しながら粗研削ホイールを回転させると共に、所定の速度で粗研削ユニット66をZ軸方向に沿って下降させる。
【0107】
粗研削ホイールが他面13b側に接触すると、加工屑(研削屑)を含んだ加工水30がターンテーブル62から底板部60aに落下すると共に、微小な加工屑を含んだ霧状の加工水30が加工室カバー70の内側に発生する。
【0108】
第3の実施形態でも、微小な加工屑を含んだ霧状の加工水30等の気体状の流体17を加工室カバー70の内側からダクト40を介して吸引する際に、底板部10に溜まっている液体状の加工水30をパイプ48の下端部48bから吸い上げて、ダクト40を流れる気体状の流体17に混合する。
【0109】
これにより、液体状の加工水30がダクト40内に散布されるので、パイプ48から吸い上げられる液体状の加工水30をダクト内に散布しない場合に比べて、ダクト40内の乾燥の度合を低減できる。
【0110】
領域Dから時計回りに略120度進んだ領域Eでは、チャックテーブル64で吸引保持されたウェーハ13(例えば、上述のウェーハ13の単結晶基板)に対して仕上げ研削が施される。領域Eのチャックテーブル64の上方には、仕上げ研削ユニット(加工ユニット)72が設けられている。
【0111】
仕上げ研削ユニット72も、スピンドルハウジング、スピンドル、マウント等を有する。仕上げ研削ユニット72のスピンドルハウジングにも、仕上げ研削ユニット72をZ軸方向に沿って移動させるためのボールねじ式の移動機構(不図示)が連結されている。
【0112】
但し、マウントの下面側には、円環状の仕上げ研削ホイール(加工工具)(不図示)が装着されている。また、仕上げ研削ユニット72の直下には、チャックテーブル64で吸引保持された被加工物11と、仕上げ研削ホイールと、に純水等の加工水30を供給可能なノズル(加工水供給ノズル)74が設けられている。
【0113】
領域Eに配置されているチャックテーブル64と、仕上げ研削ホイールと、ノズル74とは、加工室カバー76で覆われている。加工室カバー76の内側において、ターンテーブル62の径方向の外側には、仕上げ研削時に使用された加工水30を一時的に受けるための底板部60bが設けられている。
【0114】
底板部60bは、加工室カバー76の下方に位置しており、加工室カバー76と共に仕上げ研削用の加工室を形成する。なお、
図4では、加工室カバー76の上板を省略している。また、加工室カバー70には、上述のダクト40が設けられている。
【0115】
ダクト40の基端部44には吸引源50が接続されており、ダクト40のスロート46には、パイプ48の上端部48aが接続されている。また、パイプ48の下端部48bは、底板部60b近傍に位置している。
【0116】
被加工物11を仕上げ研削する際には、被加工物11を吸引保持したチャックテーブル64を領域Eに配置する。そして、ノズル74から加工水30を供給しながら仕上げ研削ホイールを回転させると共に、所定の速度で仕上げ研削ユニット72をZ軸方向に沿って下降させる。
【0117】
仕上げ研削ホイールが他面13b側に接触すると、加工屑(研削屑)を含んだ加工水30がターンテーブル62から底板部60bに落下すると共に、微小な加工屑を含んだ霧状の加工水30が加工室カバー76の内側に発生する。
【0118】
仕上げ研削時においても、微小な加工屑を含んだ霧状の加工水30等の気体状の流体17を加工室カバー70の内側からダクト40を介して吸引する際に、底板部10に溜まっている液体状の加工水30をパイプ48の下端部48bから吸い上げて、ダクト40を流れる気体状の流体17に混合する。
【0119】
これにより、液体状の加工水30がダクト40内に散布されるので、パイプ48から吸い上げられる液体状の加工水30をダクト内に散布しない場合に比べて、ダクト40内の乾燥の度合を低減できる。
【0120】
その他、上述の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【0121】
一例において、上述の実施形態では、スロート46を加工室カバー34、70、76の内側に配置したが、パイプ48の下端部48bを加工室38等の内側において底板部10、60a、60b近傍に配置すれば、スロート46及びパイプ48の上端部48aを加工室カバー34、70、76の外部に配置してもよい。
【符号の説明】
【0122】
2:バイト切削装置(加工装置)、2a:基台部、4:チャックテーブル、4a:保持面
6:X軸方向移動機構、8:テーブルカバー、8a:上面、8b:垂下部
10:底板部、10a:排水ホース、12:折り返し板
11:被加工物、13:ウェーハ、13a:一面、13b:他面、15:テープ
17:気体状の流体
14:バイト切削ユニット(加工ユニット)、16:保持部材
18:スピンドルハウジング、20:スピンドル、22:マウント
24:バイトホイール、26:バイト、28:加工工具
30:加工水、32:ノズル(加工水供給ノズル)
34:加工室カバー、34a:上板、34b:側板、36:貫通孔、38:加工室
40:ダクト、42:先端部(一端部)、44:基端部(他端部)
46:スロート(絞り部)
48:パイプ、48a:上端部、48b:下端部
50:吸引源、52:吸引ユニット
54:針部、54a:先端部、56:受け部、56a:貫通孔
60:研削装置(加工装置)、60a、60b:底板部
62:ターンテーブル、64:チャックテーブル
66:粗研削ユニット(加工ユニット)、68:ノズル(加工水供給ノズル)
70:加工室カバー
72:仕上げ研削ユニット(加工ユニット)、74:ノズル(加工水供給ノズル)
76:加工室カバー
C、D、E:領域