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特開2023-162678表面処理酸化亜鉛粒子、分散液、化粧料、表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162678
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】表面処理酸化亜鉛粒子、分散液、化粧料、表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 9/02 20060101AFI20231101BHJP
   C09K 23/54 20220101ALI20231101BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20231101BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C01G9/02 A
C01G9/02 B
C09K23/54
A61K8/27
A61K8/04
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073189
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩和
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智海
【テーマコード(参考)】
4C083
4G047
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083EE06
4G047AA02
4G047AB04
4G047AC03
4G047AD04
(57)【要約】
【課題】ざらつき感が抑制された表面処理酸化亜鉛粒子、前記の表面処理酸化亜鉛粒子を含む分散液および化粧料、並びに前記の表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】表面処理剤で表面処理された酸化亜鉛粒子であって、前記酸化亜鉛粒子のBET比表面積は1.5m/g以上8m/g以下であり、前記表面処理剤は、炭素数が6以上10以下のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランであり、前記表面処理剤の含有量が0.70質量%以上0.92質量%以下であり、乾式粒度分布の累積体積百分率が98%の場合の粒径D98が40μm以下である、表面処理酸化亜鉛粒子である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理剤で表面処理された酸化亜鉛粒子であって、
前記酸化亜鉛粒子のBET比表面積は、1.5m/g以上8m/g以下であり、
前記表面処理剤は、炭素数が6以上10以下のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランであり、
前記表面処理剤の含有量が0.70質量%以上0.92質量%以下であり、
乾式粒度分布の累積体積百分率が98%の場合の粒径D98が40μm以下である、表面処理酸化亜鉛粒子。
【請求項2】
前記表面処理剤が、オクチルトリメトキシシランおよびオクチルトリエトキシシランの少なくとも一方である、請求項1に記載の表面処理酸化亜鉛粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面処理酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有する、分散液。
【請求項4】
請求項1または2に記載の表面処理酸化亜鉛粒子および請求項3に記載の分散液からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、化粧料。
【請求項5】
請求項1または2に記載の表面処理酸化亜鉛粒子を製造する方法であって、
酸化亜鉛粒子と表面処理剤を混合して、前記酸化亜鉛粒子を表面処理する工程と、
表面処理された酸化亜鉛粒子を熱処理する工程と、
熱処理後の前記表面処理された酸化亜鉛粒子を解砕する工程と、を有し、
前記酸化亜鉛粒子のBET比表面積は、1.5m/g以上8m/g以下であり、
前記表面処理剤は、炭素数が6以上10以下のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランであり、
前記酸化亜鉛粒子100質量部に対する、前記表面処理剤の混合量は1.2質量部以上3.5質量部以下であり、
前記酸化亜鉛粒子を表面処理する工程において、前記酸化亜鉛粒子と前記表面処理剤の合計質量に対して溶媒の含有量を2質量%以下とする、表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理酸化亜鉛粒子、分散液、化粧料、および表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線遮蔽性を有する酸化亜鉛粒子は、日焼け止め、ファンデーション等の化粧料に使用されている。
酸化亜鉛粒子を化粧料に適用する場合、酸化亜鉛粒子の表面状態を化粧品の性状に合わせたり、酸化亜鉛粒子の触媒活性を抑えたりするために、酸化亜鉛粒子の表面処理が行われている。このような酸化亜鉛粒子の表面処理剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、ジメチコンやハイドロゲンジメチコン等のシリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン等が用いられている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
中でも、上記アルキルアルコキシシランで表面処理した酸化亜鉛粒子は、アルキルアルコキシシランが酸化亜鉛粒子の表面に化学的に結合しているため、安定性が高い。
さらに、上記のような酸化亜鉛粒子は、置換基が異なる表面処理剤を用いることにより、粒子表面の性質を容易に変更可能である。
【0004】
このようにアルキルアルコキシシランで表面処理された酸化亜鉛粒子(以下、「表面処理酸化亜鉛粒子」と略記する場合がある。)は、そのまま化粧料に配合されたり、分散媒に分散させた分散液の状態で化粧料に配合されたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-362925号公報
【特許文献2】特開2001-181136号公報
【特許文献3】特開平08-104606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表面処理酸化亜鉛粒子は、表面処理の過程で酸化亜鉛粒子同士が凝集するという課題があった。凝集した表面処理酸化亜鉛粒子は、ざらつき感が大きく、化粧料に配合した時に優れた使用感が得られないという課題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、ざらつき感が抑制された表面処理酸化亜鉛粒子を提供することを目的とする。また、このような表面処理酸化亜鉛粒子を含む分散液、化粧料を提供することをあわせて目的とする。また、このような表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様の表面処理酸化亜鉛粒子は、表面処理剤で表面処理された酸化亜鉛粒子であって、前記酸化亜鉛粒子のBET比表面積は、1.5m/g以上8m/g以下であり、前記表面処理剤は、炭素数が6以上10以下のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランであり、前記表面処理剤の含有量が0.70質量%以上0.92質量%以下であり、乾式粒度分布の累積体積百分率が98%の場合の粒径D98が40μm以下である。
【0009】
本発明の第1の態様の表面処理酸化粒子は、前記表面処理剤が、オクチルトリメトキシシランおよびオクチルトリエトキシシランの少なくとも一方である構成としてもよい。
【0010】
本発明の第2の態様の分散液は、上記の表面処理酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有する。
【0011】
本発明の第3の態様の化粧料は、上記の表面処理酸化亜鉛粒子および上記の分散液からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。
【0012】
本発明の第4の態様の上記表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法は、上記の表面処理酸化亜鉛粒子を製造する方法であって、酸化亜鉛粒子と表面処理剤を混合して、前記酸化亜鉛粒子を表面処理する工程と、表面処理された酸化亜鉛粒子を熱処理する工程と、熱処理後の前記表面処理された酸化亜鉛粒子を解砕する工程と、を有し、前記酸化亜鉛粒子のBET比表面積は1.5m/g以上8m/g以下であり、前記表面処理剤は、炭素数が6以上10以下のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランであり、前記酸化亜鉛粒子100質量部に対する、前記表面処理剤の混合量は1.2質量部以上3.5質量部以下であり、前記酸化亜鉛粒子を表面処理する工程において、前記酸化亜鉛粒子と前記表面処理剤の合計質量に対して溶媒の含有量を2質量%以下とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ざらつき感が抑制された表面処理酸化亜鉛粒子を提供することができる。また、本発明によれば、このような表面処理酸化亜鉛粒子を含む分散液、化粧料を提供することができる。また、本発明によれば、このような表面処理酸化亜鉛粒子を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の表面処理酸化亜鉛粒子、分散液、化粧料、および表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。例えば、特に制限の無い限り、材料、量、種類、数、サイズ、比率、温度等の条件等を、必要に応じて変更、追加および省略してもよい。以下に述べる実施形態間において、互いの好ましい例を交換したり、共有したりしてもよい。
【0015】
[表面処理酸化亜鉛粒子]
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子は、表面処理剤で表面処理された酸化亜鉛粒子であって、前記酸化亜鉛粒子のBET比表面積は、1.5m/g以上8m/g以下であり、前記表面処理剤は、炭素数が6以上10以下のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランであり、前記表面処理剤の含有量が0.70質量%以上0.92質量%以下であり、乾式粒度分布の累積体積百分率が98%の場合の粒径D98(以下、「D98」と略記する場合がある。)が40μm以下である。本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子における表面処理とは、酸化亜鉛粒子の表面を表面処理剤で修飾することである。すなわち、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子における表面処理とは、酸化亜鉛粒子の表面の少なくとも一部に表面処理剤からなる被膜を形成することや、酸化亜鉛粒子の表面の一部に表面処理剤を付着させることである。
【0016】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子は、特定のBET比表面積を有する酸化亜鉛粒子を、特定のアルキルアルコキシシランで、特定の質量比で、溶媒を添加せずに表面処理している。そのため、酸化亜鉛粒子同士、表面処理酸化亜鉛粒子同士の凝集が抑制され、D98が小さい表面処理酸化亜鉛粒子を得ることができる。このように凝集が抑制された表面処理酸化亜鉛粒子は、肌に塗布した時のざらつき感が抑制されるため、化粧料に好適に用いられる。
【0017】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子は、Siの含有量が0.06質量%以上0.30質量%以下であることが好ましい。Siの含有量が前記範囲内であると、上記酸化亜鉛粒子の表面が充分に疎水化される。その結果、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子が化粧料に配合された場合、使用感に優れる。
【0018】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子は、水酸基処理率が98質量%以上であることが好ましい。水酸基処理率が98質量%以上であると、表面処理酸化亜鉛粒子同士の凝集が抑制され、D98が小さい表面処理酸化亜鉛粒子を得ることができる。
【0019】
本明細書において「BET比表面積」は、全自動比表面積測定装置(商品名:Macsorb HM Model-1201、マウンテック社製)を用い、BET法により測定された値を意味する。
【0020】
本明細書において「表面処理剤の含有量」とは、下記一般式(1)から算出される。
表面処理剤の含有量=(強熱減量-乾燥減量)×表面処理剤の分子量/表面処理剤のアルキル基の分子量・・・(1)
【0021】
本明細書において「乾燥減量」とは、105℃、2時間における乾燥減量を意味し、以下の方法により得ることができる。
まず、表面処理酸化亜鉛粒子2gを用意する。この表面処理酸化亜鉛粒子は、乾燥条件下で保管されている粒子であることが好ましい。この粒子を105℃に設定した乾燥機で2時間加熱し、加熱後の質量を測定し、その質量減少率を乾燥減量(質量%)とすることができる。
すなわち、乾燥減量は、下記の式(2)より得ることができる。
表面処理酸化亜鉛粒子の乾燥減量(質量%)=(加熱前の表面処理酸化亜鉛粒子の質量-加熱後の表面処理酸化亜鉛粒子の質量)/加熱前の表面処理酸化亜鉛粒子の質量×100・・・(2)
【0022】
本明細書において「強熱減量」とは、500℃、4時間における強熱減量を意味し、以下の方法により得ることができる。
まず、表面処理酸化亜鉛粒子2gを用意する。この表面処理酸化亜鉛粒子は、乾燥条件下で保管されている粒子であることが好ましい。この粒子を500℃に設定した電気炉で4時間加熱し、加熱後の質量を測定し、その質量減少率を強熱減量(質量%)とすることができる。
すなわち、強熱減量は、下記の式(3)により得ることができる。
表面処理酸化亜鉛粒子の強熱減量(質量%)=(加熱前の表面処理酸化亜鉛粒子の質量-加熱後の表面処理酸化亜鉛粒子の質量)/加熱前の表面処理酸化亜鉛粒子の質量×100・・・(3)
【0023】
オクチルトリエトキシシランを例にすると、表面処理剤の分子量、すなわち、オクチルトリエトキシシランの分子量は276.49である。そしてオクチルトリエトキシシランのアルキル基の分子量は113.08である。
乾燥減量は、表面処理酸化亜鉛粒子に含まれる水分や、未反応の表面処理剤等、表面処理酸化亜鉛粒子以外の不純物が105℃の加熱により除去された分の質量減少と考えることができる。
強熱減量は、酸化亜鉛粒子に付着したアルキルアルコキシシランのうち、アルキル基が500℃の加熱により除去された分の質量減少と考えることができる。
したがって、本実施形態では、上記一般式(1)で算出される表面処理剤の含有量が、表面処理によって実際に酸化亜鉛粒子に付着した表面処理剤の含有量とした。
【0024】
本明細書において「Siの含有量」とは、ICP発光分光分析装置 ICP-AES 700-ES(バリアン社製)により、以下の方法で測定した値を意味する。
測定対象の表面処理酸化亜鉛粒子0.2gを白金坩堝に入れて、電気炉で700℃まで徐々に温度を上げて、前記表面処理酸化亜鉛粒子を灰化する。この灰化した試料に四ほう酸リチウム2gを加え、電気炉にて925℃まで加熱して溶融させる。次いで、溶融した試料を白金坩堝ごと100mLのトールビーカーに入れる。次いで、このトールビーカーに温水70mL及び硝酸8mLを加え、ホットスターラにて加熱撹拌し、試料を溶解する。この溶解液を200mLメスフラスコに移し入れて定容し、これを検液とする。検液は適宜希釈してもよい。この検液に内標準物質としてY標準溶液をYが1000ppmとなるように加える。濃度既知の元素標準液により、検量線を作成する。なお、検量線作成用の元素標準液にも、内標準物質としてのYと、四ほう酸リチウムと、硝酸を、検液と同濃度になるように加える。検液をICP発光分光分析装置で測定し、検量線法により定量する。
本実施形態で用いられる表面処理剤は、アルキルアルコキシシランであるため、Si含有量から酸化亜鉛粒子に付着した表面処理剤の含有量を測定することもできる。
【0025】
本明細書において「D98」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置(型式:Mastersizer 3000、Malvern社製)を用いて、乾式で体積粒度分布を測定したときの、累積体積百分率が98%の場合の値を意味する。
【0026】
本明細書において「水酸基処理率」とは、下記一般式(4)で表される波長545nm付近の光を吸収する赤色色素を用いて測定される。
【0027】
【化1】
【0028】
一般式(4)の赤色色素は以下の用法により製造することができる。
2,2’-ジヒドロキシアゾベンゼン1mmolと、金属源としてジフェニル酸化スズ(IV)1mmolと、アセトン30mLとを混合して、混合液を調製する。
次いで、この混合液を70℃で3時間撹拌して、脱水反応を行い、ジフェニル酸化スズを、2,2’-ジヒドロキシアゾベンゼンに配位させる。
脱水反応後の混合液をろ過して、ろ液を回収し、ろ液から溶媒を留去することで、一般式(4)で表される赤色色素を得ることができる。
【0029】
上記一般式(4)で表される赤色色素は、酸化亜鉛粒子表面に存在する水酸基に選択的に吸着し、かつ、水やアルコール等の水酸基とは反応しない。そのため、水分の影響を受けずに、酸化亜鉛粒子や表面処理酸化亜鉛粒子に含まれる金属水酸基の量を定性的かつ定量的に評価することができる。すなわち、表面処理前の酸化亜鉛粒子への前記赤色色素の吸着量と、表面処理酸化亜鉛粒子への前記赤色色素の吸着量を調べることにより、酸化亜鉛粒子の表面の疎水度合いを調べることができる。すなわち、酸化亜鉛粒子表面の水酸基の処理率が大きければ大きいほど、酸化亜鉛粒子の表面に存在する水酸基が表面処理されて、疎水化されていることを意味する。
【0030】
具体的には、前記赤色色素による水酸基処理率(%)は以下の方法で測定することができる。
一般式(4)で表される赤色色素250nmol(0.12mg)をトルエンに溶解して5mLとすることにより、5×10-5mol/Lの評価用の溶液C1を得る。溶液C1の波長545nmにおける吸光度C2を測定する。
【0031】
前記評価用の溶液C1に、表面処理前の酸化亜鉛粒子をxg添加して、60℃で4時間撹拌混合し、混合液を調製する。xは約4×10-3gである。この混合液から酸化亜鉛粒子を遠心分離により除去し、評価用の混合液A1を得る。この混合液A1の波長545nmにおける吸光度A2を測定する。
評価用の溶液C1に、測定対象の表面処理酸化亜鉛粒子をyg添加して、60℃で4時間撹拌混合し、混合液を調製する。yは約4×10-3gである。この混合液から表面処理酸化亜鉛粒子を遠心分離により除去し、評価用の混合液B1を得る。この混合B1の波長545nmにおける吸光度B2を測定する。
【0032】
下記一般式(5)より、表面処理前の酸化亜鉛粒子への前記赤色色素の吸着量(mol/m)を算出する。
吸着量A3=((A2-C2)/C2)×250×10-9(mol)/x(g)・・・(5)
下記一般式(6)より、表面処理酸化亜鉛粒子への前記赤色色素の吸着量(mol/m)を算出する。
吸着量B3=((B2-C2)/C2)×250×10-9(mol)/y(g)・・・(6)
一般式(5)および(6)では、吸光度の減少は、色素が吸着していることを意味するので、吸光度の減少率=色素の吸着率と換算できるとの考えに基づき、前記赤色色素の吸着量を算出している。
【0033】
水酸基の処理率は下記一般式(7)で算出することができる。
水酸基の処理率(%)=100-(B3/A3×100)・・・(7)
【0034】
(表面処理酸化亜鉛粒子のBET比表面積)
前記表面処理酸化亜鉛粒子のBET比表面積は任意に選択できるが、1.5m/g以上であることが好ましく、2.5m/g以上であることがより好ましく、3.5m/g以上であることがさらに好ましく、3.5m/g以上であることが特に好ましい。また、表面処理酸化亜鉛粒子のBET比表面積は、8m/g以下であることが好ましく、7m/g以下であることがより好ましい。必要に応じて、表面処理酸化亜鉛粒子のBET比表面積は、6.5m/g以下であってもよく、6.0m/g以下であってもよい。表面処理酸化亜鉛粒子のBET比表面積の上記上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
表面処理酸化亜鉛粒子のBET比表面積が1.5m/g以上8m/g以下であれば、化粧料に配合した場合に透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
なお、表面処理する前の酸化亜鉛粒子のBET比表面積と、表面処理後の表面処理酸化亜鉛粒子のBET比表面積の値は大きくは変わらない。
【0035】
(表面処理酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径)
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、130nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることがさらに好ましい。また、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒の平均一次粒子径は、300nm以下であることが好ましく、270nm以下であることがより好ましく、250nm以下であることがさらに好ましい。
表面処理酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径が130nm以上300nm以下であれば、化粧料に配合した場合に透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
【0036】
上記表面処理酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、上記表面処理酸化亜鉛粒子のBET比表面積を用いて下記一般式(8)で算出することができる。
平均一次粒子径(nm)=6000/(BET比表面積(m/g)×ρ(g/cm)・・・(8)
(式中、ρは酸化亜鉛粒子の密度である5.61g/cmとする。)
または、前記表面処理酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、以下の方法で求めてもよい。すなわち、上記表面処理酸化亜鉛粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて観察した場合に、表面処理酸化亜鉛粒子を所定数、例えば、200個、あるいは100個を選び出す。そして、これら表面処理酸化亜鉛粒子各々の最長の直線部分(最大長径)を測定し、これらの測定値を算術平均する。
なお、表面処理酸化亜鉛粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している表面処理酸化亜鉛粒子(一次粒子)を所定数測定し、平均一次粒子径とする。
【0037】
(酸化亜鉛粒子)
本実施形態における酸化亜鉛粒子のBET比表面積は、1.5m/g以上8m/g以下であり、2.5m/g以上7.0m/g以下であることが好ましい。酸化亜鉛粒子のBET比表面積は、3.5m/g以上6.5m/g以下であってもよく、4.5m/g以上6.0m/g以下であってもよい。酸化亜鉛粒子のBET比表面積が前記下限値未満では、化粧料に配合した場合に透明性が低下するため好ましくない。酸化亜鉛粒子のBET比表面積が前記上限値を超えると、化粧料に表面処理酸化亜鉛粒子を高濃度で含有した場合に、粒子が凝集しやすくなる場合があるため好ましくない。
【0038】
本実施形態における酸化亜鉛粒子のBET比表面積とは、全自動比表面積測定装置(商品名:Macsorb HM Model-1201、マウンテック社製)を用い、BET法により測定された値を意味する。
【0039】
本実施形態における酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、130nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることがさらに好ましい。また、本実施形態の酸化亜鉛粒の平均一次粒子径は、300nm以下であることが好ましく、270nm以下であることがより好ましく、250nm以下であることがさらに好ましい。
上記酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径が130nm以上300nm以下であれば、化粧料に配合した場合に透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
【0040】
上記酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、上記表面処理酸化亜鉛粒子のBET換算粒子径と同様に、上記酸化亜鉛粒子のBET比表面積を用いて上記一般式(8)式によって算出することができる。
また、上記酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、上記表面処理酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径と同様に、透過型電子顕微鏡を用いて測定してもよい。
【0041】
本実施形態では、酸化亜鉛粒子を表面処理することにより、表面処理酸化亜鉛粒子のBET比表面積は、表面処理前の酸化亜鉛粒子のBET比表面積よりも小さくなる傾向にあるが、表面処理酸化亜鉛粒子のBET比表面積と表面処理前の酸化亜鉛粒子のBET比表面積は実質的には同程度の大きさである。同様に、酸化亜鉛粒子を表面処理することにより、表面処理酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、表面処理前の酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径よりも大きくなる傾向にあるが、表面処理酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径と表面処理前の酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は実質的には同程度の大きさである。ここで、実質的に同程度とは、酸化亜鉛粒子と表面処理酸化亜鉛粒子のBET比表面積の差が5m/g程度であることを意味する。
【0042】
本実施形態における酸化亜鉛粒子は、化粧料中での分散安定性を向上させる観点において、高純度の酸化亜鉛粒子を用いることが好ましい。
【0043】
(表面処理剤)
本実施形態における表面処理剤は、炭素数が6以上10以下のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランであり、下記一般式(9)で表されるシランカップリング剤のうち、化粧料に使用可能なものを用いることができる。
Si(OR4-n・・・(9)
(但し、Rは、炭素数6~10のアルキル基、Rは、炭素数1~4のアルキル基、nは1~3を示す。)
は、炭素数が7以上9以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数が8のアルキル基であることがより好ましい。
は、炭素数が1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、1以上2以下のアルキル基であることがより好ましい。
nは1以上2以下であることが好ましく、nは1であることがより好ましい。
【0044】
具体的には、本実施形態において表面処理剤としては、例えば、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、へプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン(トリエトキシカプリリルシラン)、ノニルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシランが挙げられる。これらの中でも、分子内にオクチル基を有するアルキルアルコキシシランが好ましい。
具体的には、官能基の極性が中程度であり、ナチュラルオイルやエステル油からシリコーンオイルまでの幅広い極性の油相に対応可能な、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランが好ましく、特にオクチルトリエトキシシランが好ましい。
【0045】
上記表面処理剤による表面処理は、酸化亜鉛粒子100質量部に対して、上記表面処理剤が1.2質量部以上3.5質量部以下となるように混合して行うことが好ましい。
後述する方法で、酸化亜鉛粒子100質量部に対して、上記表面処理剤を1.2質量部以上3.5質量部以下となるように表面処理した場合、上記一般式(1)で算出される表面処理剤の含有量は0.70質量%以上0.92質量%以下である。表面処理剤の含有量は、0.72質量%以上0.90質量%以下であることが好ましく、0.75質量%以上0.85質量%以下であることがより好ましい。
また、表面処理酸化亜鉛粒子の全量を100質量%として、上記ICP発光分光分析装置により測定されるSiの含有量は0.06質量%以上0.30質量%以下である。
【0046】
表面処理酸化亜鉛粒子に含まれる表面処理剤の含有量が上記範囲内であることにより、上記酸化亜鉛粒子の表面が充分に疎水化される。その結果、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子が化粧料に配合された場合、使用感に優れる。表面処理酸化亜鉛粒子に含まれる表面処理剤の含有量が上記下限値未満では、酸化亜鉛粒子の表面が充分に疎水化されず、酸化亜鉛粒子の未処理面同士で凝集しやすくなり、D98が大きくなるため好ましくない。また、表面処理酸化亜鉛粒子の感触が悪くなるため好ましくない。表面処理酸化亜鉛粒子に含まれる表面処理剤の含有量が上記上限値を超えると、余剰表面処理剤により表面処理酸化亜鉛粒子同士が凝集しやすくなり、D98が大きくなるため好ましくない。また、表面処理酸化亜鉛粒子の感触が悪くなるため好ましくない。
【0047】
また、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子は、BET比表面積が1.5m/g以上8m/g以下の酸化亜鉛粒子に対して、表面処理酸化亜鉛粒子の全質量を100質量%とした場合に、表面処理剤の含有量を0.70質量%以上0.92質量%として、表面処理剤の量が少ないことが重要である。
BET比表面積が1.5m/g以上8m/g以下の酸化亜鉛粒子に上記表面処理剤を少ない量で、かつ溶媒を添加しないで表面処理することにより、L表色系色度図におけるbの上昇が抑制され、D98が40μm以下の表面処理酸化亜鉛粒子を得ることができる。
【0048】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子は、上記一般式(7)の赤色色素により算出される水酸基の処理率が、98%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましく、99.5%以上であることがさらに好ましい。
水酸基処理率が上記範囲であることにより、酸化亜鉛粒子の表面が適切に表面処理されて疎水化されているため、表面処理酸化亜鉛粒子を油系の化粧料に容易に配合することができる。
【0049】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子のL表色系色度図におけるbは、6.3以下であることが好ましい。
の下限値は0であることが好ましいが、2.0以上であってもよく、3.0以上であってもよく、4.0以上であってもよく、5.0以上であってもよい。
表面処理酸化亜鉛粒子のL表色系色度図におけるbが6.3以下であることにより、表面処理酸化亜鉛粒子を化粧料に配合した場合の不本意な着色を抑制することができる。
表面処理酸化亜鉛粒子のL表色系色度図におけるbを測定する方法としては、分光色彩計を用いるなどの公知の方法、例えば、分光色彩計(東京電色工業社製、Spectro Color Meter SE7700)を用いることができる。
【0050】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子のD98は、40μm以下であり、38μm以下であることが好ましく、36μm以下であることがより好ましく、34μm以下であることがさらに好ましい。
D98が40μmを超えると、表面処理酸化亜鉛粒子のざらつき感が顕著になり、表面処理酸化亜鉛粒子を化粧料に配合した場合に、使用感に優れる化粧料が得られ難い。
【0051】
なお、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子の特性を阻害しない範囲であれば、上記のアルキルアルコキシシランに加え、化粧料に用いられる表面処理剤であって、上記アルキルアルコキシシラン以外のものを用いて、酸化亜鉛粒子を表面処理してもよい。
【0052】
上記アルキルアルコキシシラン以外の表面処理剤としては、例えば、シリカ、アルミナ等の無機材料や、シリコーン化合物、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステルおよび有機チタネート化合物等の有機材料を用いることができる。
【0053】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子は、特定のBET比表面積を有する酸化亜鉛粒子を、特定の表面処理剤を用いて、特定の質量比で、後述する溶媒を添加しない製造方法で製造されたものであり、D98が40μm以下である。そのため、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子は、酸化亜鉛粒子の表面が充分に疎水化され、ざらつき感が抑制され、bの上昇が抑制され、化粧料に配合された時の使用感に優れる。
【0054】
[表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法]
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法は、酸化亜鉛粒子と表面処理剤を混合して、前記酸化亜鉛粒子を表面処理する工程(以下、「表面処理工程」と言う。)と、表面処理された前記酸化亜鉛粒子を熱処理する工程(以下、「熱処理工程」と言う。)と、熱処理後の表面処理された亜鉛粒子を解砕する工程(以下、「解砕工程」と言う。)とを有し、前記酸化亜鉛粒子のBET比表面積は1.5m/g以上8m/g以下であり、前記表面処理剤は炭素数が6以上10以下のアルキル基を有するアルキルアルコキシシであり、前記酸化亜鉛粒子100質量部に対する、前記表面処理剤の混合量は1.2質量部以上3.5質量部以下であり、前記表面処理工程において、前記酸化亜鉛粒子と前記表面処理剤の合計質量に対して溶媒の含有量を2質量%以下とする。
ここで、表面処理工程において溶媒の含有量を2質量%以下とする、とは、酸化亜鉛粒子に含まれる吸着水や、表面処理剤の加水分解反応で発生するアルコール等の副反応による溶媒は存在するが、表面処理反応を進行させるために水や有機溶媒を添加しないことを意味する。すなわち、本実施形態の表面処理工程では、溶媒を添加せず、添加したとしても極微量であることを意味する。「溶媒の含有量を2質量%以下」とは、換言すれば「溶媒の添加量は0質量%」である。
酸化亜鉛粒子と表面処理剤は、上記と同じものを使用できる。
【0055】
粒子の表面に均一に表面処理を行うためには、湿式で行われることが一般的である。また、乾式で行われる場合であっても、アルコール等の有機溶媒を少量添加して表面処理する方法が一般的である。
本発明者等も、水やアルコール等の溶媒を添加して、乾式で酸化亜鉛粒子の表面処理を行っていた。
【0056】
しかしながら、本発明者等は、溶媒を除去する過程で酸化亜鉛粒子同士の凝集が発生しやすいことに気が付いた。
そこで、水や有機溶媒を添加しない方法で表面処理を行ったが、水や有機溶媒を添加しないと、酸化亜鉛粒子の表面を充分に疎水化することができなかった。
【0057】
種々の試行錯誤を繰り返した結果、本発明者等は、BET比表面積が1.5m/g以上8m/g以下である酸化亜鉛粒子を用いて、上記アルキルアルコキシシランを酸化亜鉛粒子100質量部に対して1.2質量部以上3.5質量部以下として表面処理すれば、アルコール等の有機溶媒や水を添加しなくても、表面処理が充分になされ、表面処理酸化亜鉛粒子同士の凝集が抑制されることを見出した。
化粧料で使用される酸化亜鉛粒子は、透明性が高いことが求められるため、BET比表面積が20m/g以上の酸化亜鉛粒子を用いられることが多い。しかし、本発明者等は、BET比表面積が1.5m/g以上8m/g以下の酸化亜鉛粒子を用いることにより、表面処理酸化亜鉛粒子の凝集が抑制され、化粧料に配合された時の透明性と紫外線遮蔽性に優れることは当然として、ざらつき感が抑制された表面処理酸化亜鉛粒子が得られることを見出した。
【0058】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法では、表面処理工程において、アルコール等の有機溶媒を添加しないことが好ましく、水と有機溶媒を添加しないことがより好ましい。
大気から吸収する水分を完全に除去することは難しく、吸着水が0になると表面処理反応が進行しないため、水は不可避的に酸化亜鉛粒子に含まれている。また、表面処理剤の加水分解反応が進行すると、アルコキシシラン由来のアルコールが発生する。しかしながら、表面処理工程において、水や有機溶媒を添加すると、それらの除去工程が必要となり、その除去工程により表面処理酸化亜鉛粒子が凝集する。そこで、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法では、表面処理工程において、酸化亜鉛粒子と表面処理剤の合計質量に対して溶媒の含有量を2質量%以下とする。有機溶媒の含有量が2質量%以下であれば、上記熱処理工程において、表面処理酸化亜鉛粒子の凝集を抑制することができる。有機溶媒の添加量は0質量%であり、水と有機溶媒の添加量も0質量%である。換言すれば、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法の全ての工程において、水と有機溶媒の添加量は0質量%である。すなわち、酸化亜鉛粒子の吸着水や表面処理剤の加水分解反応により発生するアルコール以外の溶媒の含有量は0質量%であることを意味し、本発明の効果に影響を及ぼさない程度に添加される添加剤、触媒や、不可避的に含まれる不純物を排除するものではない。
【0059】
上記表面処理工程では、原料としてのBET比表面積が1.5m/g以上8m/g以下の酸化亜鉛粒子、をヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等のミキサー中で撹拌しながら、酸化亜鉛粒子に対して上記アルキルアルコキシシランを液滴下あるいはスプレー噴霧にて加え、その後、酸化亜鉛粒子とアルキルアルコキシシランを一定時間高速で撹拌する。
撹拌は室温で行ってもよく、30℃~100℃で行ってもよい。
撹拌速度は、酸化亜鉛粒子とアルキルアルコキシシランが混合され、表面処理反応が進行する速度であれば特に限定されない。例えば、周速5m/s~60m/sで行うことができる。
撹拌時間は、酸化亜鉛粒子とアルキルアルコキシシランが混合され、表面処理反応が進行する時間であれば特に限定されない。例えば、1分~1時間、好ましくは、10分~30分程度撹拌することができる。
上記アルキルアルコキシシランの混合量は、上記酸化亜鉛粒子100質量部に対して、1.2質量部以上3.5質量部以下である。上記アルキルアルコキシシランの混合量は、1.4質量部以上3.0質量部以下であることが好ましく、1.6質量部以上2.5質量部以下であることがより好ましく、1.8質量部以上2.3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0060】
上記熱処理工程では、表面処理が進行して、酸化亜鉛粒子の表面が疎水化される温度と時間で適宜行えばよい。例えば、70℃~200℃の温度にて30分~24時間熱処理を行うことができる。熱処理中の雰囲気は、表面処理を阻害しなければ特に限定されず、大気雰囲気、酸素雰囲気、不活性雰囲気、減圧雰囲気又は真空雰囲気のいずれであってもよい。
熱処理工程は撹拌しながら行ってもよい。
【0061】
上記解砕工程は、熱処理後の表面処理された酸化亜鉛粒子のD98が40μm以下となるように解砕できる方法であれば特に限定されない。
熱処理後の表面処理された酸化亜鉛粒子の解砕は、例えば、公知の解砕機を用いて行うことができる。このような解砕機としては、例えば、アトマイザー、ハンマーミル、ジェットミル、インペラーミル、ピンミル等が挙げられる。
【0062】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子の製造方法によれば、BET比表面積が1.5m/g以上8m/g以下の酸化亜鉛粒子100質量部に対して、炭素数が6以上10以下のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランを1.2質量部以上3.5質量部以下混合し、酸化亜鉛粒子と表面処理剤の合計質量に対して溶媒の含有量を2質量%以下として表面処理しているため、凝集が抑制された表面処理酸化亜鉛粒子を得ることができる。
【0063】
[分散液]
本実施形態の分散液は、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有する。
なお、本実施形態の分散液は、粘度が高いペースト状の分散体も含む。
【0064】
分散媒は、化粧料に処方することが可能で、表面処理酸化亜鉛粒子が分散できるものであれば、特に限定されない。
分散媒としては、例えば、水、アルコール類、エステル類、エーテル類、ナチュラルオイル、エステル油、シリコーンオイル等が好適に用いられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、オクタノール、グリセリン等が挙げられる。
エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0065】
また、他の分散媒としては、ケトン類、芳香族炭化水素、環状炭化水素、アミド類、鎖状ポリシロキサン類、環状ポリシロキサン類、変性ポリシロキサン類、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、高級脂肪酸、高級アルコール等が用いられる。
【0066】
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。
環状炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン等が挙げられる。
アミド類としては、例えば、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
鎖状ポリシロキサン類としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0067】
環状ポリシロキサン類としては、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。
変性ポリシロキサン類としては、例えば、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0068】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等が挙げられる。
エステル油としては、例えば、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等が挙げられる。
シリコーン油としては、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。
【0069】
上記分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
本実施形態の分散液は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
【0071】
添加剤としては、例えば、防腐剤、分散剤、分散助剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、UV吸収剤等が好適に用いられる。
【0072】
本実施形態の分散液における粒度分布の累積体積百分率が50%の場合の表面処理酸化亜鉛粒子の粒径(D50)は、任意に選択できるが、600nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、400nm以下であることがさらに好ましい。
【0073】
D50の下限値は、特に限定されず、例えば、130nm以上であってもよく、140nm以上であってもよく、150nm以上であってもよい。D50の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0074】
また、本実施形態の分散液における粒度分布の累積体積百分率が90%の場合の表面処理酸化亜鉛粒子の粒径(D90)は、任意に選択できるが、1μm以下であることが好ましく、900nm以下であることがより好ましく、800nm以下であることがさらに好ましい。
【0075】
D90の下限値は、特に限定されず、例えば、150nm以上であってもよく、200nm以上であってもよく、250nm以上であってもよい。D90の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0076】
分散液のD50が600nm以下の場合には、この分散液を用いて作製した化粧料を皮膚に塗布した場合に、表面処理酸化亜鉛粒子が均一に分布し易く、紫外線遮蔽効果が向上するため好ましい。また、分散液のD90が1μm以下の場合には、分散液の透明性が高く、この分散液を用いて作製された化粧料の透明性も高くなるため好ましい。
【0077】
すなわち、本実施形態の分散液におけるD50とD90が上記範囲であることにより、透明性に優れ、紫外線遮蔽性に優れる分散液を得ることができる。また、この分散液を用いて作製した化粧料も、透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
【0078】
分散液における粒度分布の累積体積百分率は、動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0079】
本実施形態の分散液における表面処理酸化亜鉛粒子の含有量は、所望の特性に合わせて適宜調整すればよい。
【0080】
本実施形態の分散液を化粧料に用いる場合には、分散液における表面処理酸化亜鉛粒子の含有量は、任意に選択できるが、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、分散液における表面処理酸化亜鉛粒子の含有量は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。分散液における表面処理酸化亜鉛粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0081】
分散液における表面処理酸化亜鉛粒子の含有量が上記範囲であることにより、表面処理酸化亜鉛粒子が高濃度で含有される。このため、処方の自由度を向上することができるとともに、分散液の粘度を取り扱いが容易な程度とすることができる。
【0082】
本実施形態の分散液の粘度は、任意に選択できるが、5Pa・s以上であることが好ましく、8Pa・s以上であることがより好ましく、10Pa・s以上であることがさらに好ましく、15Pa・s以上であることが最も好ましい。また、分散液の粘度は、300Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましく、80Pa・s以下であることがさらに好ましく、60Pa・s以下であることが最も好ましい。分散液の粘度の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0083】
分散液の粘度が上記の範囲であることにより、固形分(表面処理酸化亜鉛粒子)を高濃度に含んでいても、取り扱いが容易な分散液を得ることができる。
【0084】
本実施形態の分散液の製造方法は、特に限定されない。例えば、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子と、分散媒とを、公知の分散装置で、機械的に分散する方法が挙げられる。
分散装置は、必要に応じて選択でき、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、サンドミル、ボールミル、ロールミル等が挙げられる。
【0085】
本実施形態の分散液は、化粧料の他、紫外線遮蔽機能やガス透過抑制機能等を有する塗料等に用いることができる。
【0086】
本実施形態の分散液によれば、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子を含むため、化粧料に配合された場合に、ざらつき感が抑制され、透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
【0087】
[組成物]
本実施形態の組成物は、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子と、樹脂と、分散媒と、を含有する。
【0088】
本実施形態の組成物における表面処理酸化亜鉛粒子の含有量は、所望の特性に合わせて適宜調整すればよい。上記含有量は、例えば、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0089】
組成物における表面処理酸化亜鉛粒子の含有量が上記範囲であることにより、固形分(表面処理酸化亜鉛粒子)を高濃度に含むため、表面処理酸化亜鉛粒子の特性が充分に得られ、かつ、表面処理酸化亜鉛粒子を均一に分散した組成物を得ることができる。
【0090】
樹脂としては、工業用途で一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0091】
本実施形態の組成物における樹脂の含有量は、特に限定されず、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。
【0092】
分散媒としては、工業用途で一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0093】
本実施形態の組成物における分散媒の含有量は、特に限定されず、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。
【0094】
本実施形態の組成物は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、重合開始剤、分散剤、防腐剤等が挙げられる。
【0095】
本実施形態の組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子と、樹脂と、分散媒とを、公知の混合装置で、機械的に混合する方法が挙げられる。
【0096】
また、上述した分散液と、樹脂とを、公知の混合装置で、機械的に混合する方法が挙げられる。
【0097】
混合装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。
【0098】
本実施形態の組成物を、ロールコート法、フローコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、はけ塗り法、浸漬法等の通常の塗布方法により、任意に選ばれる基材、例えば、ポリエステルフィルム等のプラスチック基材に塗布することにより、塗膜を形成することができる。これらの塗膜は、任意に選ばれる用途、例えば、紫外線遮蔽膜やガスバリア膜として活用することができる。
【0099】
本実施形態の組成物によれば、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子を含むため、樹脂との混合が容易であり、優れた透明性と紫外線遮蔽性を示すことができる。
【0100】
[化粧料]
本実施形態の一実施形態の化粧料は、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子および本実施形態の分散液からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。または、本実施形態の一実施形態の化粧料は、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子、本実施形態の分散液および本実施形態の組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。
【0101】
別の一実施形態の化粧料は、化粧品基剤原料と、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子および本実施形態の分散液からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。または、別の一実施形態の化粧料は、化粧品基剤原料と、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子、本実施形態の分散液および本実施形態の組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含有する。
【0102】
化粧品基剤原料は、化粧品の本体を形成する諸原料のことである。化粧品基剤原料としては、例えば、油性原料、水性原料、界面活性剤、粉体原料等が挙げられる。
油性原料としては、任意に選択でき、例えば、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油類等が挙げられる。
【0103】
水性原料としては、任意に選択でき、例えば、精製水、アルコール、増粘剤等が挙げられる。
【0104】
粉末原料としては、任意に選択でき、例えば、有色顔料、白色顔料、パール剤、体質顔料等が挙げられる。
【0105】
本実施形態の化粧料は、例えば、本実施形態の分散液を、乳液、クリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー等の化粧品基剤原料に、従来通りに配合することにより得られる。
【0106】
本実施形態の化粧料は、例えば、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子を油相または水相に配合して、O/W型またはW/O型のエマルションとしてから、化粧品基剤原料と配合することにより得られる。
【0107】
本実施形態の化粧料における表面処理酸化亜鉛粒子の含有量は、所望の特性に応じて適宜調整すればよい。例えば、前記表面処理酸化亜鉛粒子の含有量の下限は、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。また、表面処理酸化亜鉛粒子の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。化粧料における表面処理酸化亜鉛粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0108】
以下、日焼け止め化粧料について具体的に説明する。
日焼け止め化粧料において、紫外線を、特に長波長紫外線(UVA)を効果的に遮蔽し、かつ、粉っぽさやきしみの少ない良好な使用感を得るためには、表面処理酸化亜鉛粒子の含有量を調整することも好ましい。例えば、日焼け止め化粧料における表面処理酸化亜鉛粒子の含有量の下限は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。また、日焼け止め化粧料における表面処理酸化亜鉛粒子の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。日焼け止め化粧料における表面処理酸化亜鉛粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。また上記範囲の中で、5質量%~15質量%や、10質量%~20質量%など、好ましい範囲を任意に選択することができる。
【0109】
日焼け止め化粧料は、必要に応じて、疎水性分散媒、表面改質酸化亜鉛粒子以外の無機微粒子や無機顔料、親水性分散媒、油脂、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、pH調整剤、栄養剤、酸化防止剤、香料、防腐剤、分散剤、消泡剤、着色剤、美容成分、高分子物質、生体由来成分、植物由来成分、抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤、水性成分、油性成分、ビタミン剤、乳化剤、安定化剤、可溶化剤、真珠光沢剤、再脂肪化物質等を含んでいてもよい。
【0110】
疎水性分散媒としては、例えば、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、高級脂肪酸、高級アルコール等が挙げられる。
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等が挙げられる。
エステル油としては、例えば、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等が挙げられる。
シリコーン油としては、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。
【0111】
化粧料に含まれる表面処理酸化亜鉛粒子以外の無機微粒子や無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(アパタイト)、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、酸化チタン、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、γ-酸化鉄、チタン酸コバルト、コバルトバイオレット、酸化ケイ素等が挙げられる。
【0112】
日焼け止め化粧料は、さらに有機系紫外線吸収剤を少なくとも1種を含有していてもよい。表面処理酸化亜鉛粒子と有機系紫外線吸収剤をともに含有する化粧料は、ブースター効果により、紫外線遮蔽域が広くなり、紫外線遮蔽性も増大するため好ましい。
【0113】
有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0114】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0115】
ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、1-(4’-イソプロピルフェニル)-3-フェニルプロパン-1,3-ジオン、5-(3,3’-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等が挙げられる。
【0116】
安息香酸系紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸(PABA)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAメチルエステル等が挙げられる。
【0117】
アントラニル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等が挙げられる。
【0118】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-2-プロパノールフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0119】
ケイ皮酸系紫外線吸収剤としては、例えば、オクチルメトキシシンナメート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)、ジ-パラメトキシケイ皮酸-モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0120】
シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤としては、例えば、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-1-メチルプロピル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-3-メチルプロピル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-トリス(トリメチルシロキシ)シリル-1-メチルプロピル]-3,4-ジメトキシシンナメート等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、エチルヘキシルトリアゾン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、トリスビフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン等が挙げられる。
【0121】
上記以外の有機系紫外線吸収剤としては、例えば、3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、5-(3,3’-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、シリコーン変性紫外線吸収剤、フッ素変性紫外線吸収剤等が挙げられる。上記紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0122】
本実施形態の化粧料の臨界波長は、370nm以上であることが好ましい。化粧料の臨界波長が370nm以上であることにより、長波長紫外線(UVA)および短波長紫外線(UVB)の広範囲の紫外線を遮蔽することができる。
【0123】
本実施形態の化粧料によれば、本実施形態の表面処理酸化亜鉛粒子、本実施形態の分散液および本実施形態の組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。そのため、透明性と紫外線遮蔽性に優れ、表面処理酸化亜鉛粒子のざらつき感が抑制された使用感の良い化粧料を得ることができる。
【実施例0124】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0125】
[実施例1]
「表面処理酸化亜鉛粒子の作製」
酸化亜鉛粒子A1(BET比表面積:5m/g、住友大阪セメント社製)100質量部と、オクチルトリエトキシシラン(商品名:Silquest A-137、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)1.5質量部と、60℃に加温したヘンシェルミキサー内で周速15m/sで混合した。
次いで、この混合物を減圧下、95℃で6時間熱処理した。
【0126】
次いで、得られた乾燥物を、ハンマーミルで、16000回転で解砕することで、実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子B1を得た。
【0127】
(オクチルトリエトキシシランの含有量)
実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子2gの105℃、2時間における乾燥減量と、実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子2gの500℃、4時間における強熱減量を測定し、上記一般式(1)~(3)式を用いて算出した。結果を表1に示す。
【0128】
(Siの含有量)
実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子中のSiの含有量をICP発光分光分析装置(商品名:ICP-AES 700-ES、バリアン社製)を用いて以下の方法で測定した。
実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子0.2gを白金坩堝に入れて、電気炉で700℃まで徐々に温度を上げて、前記表面処理酸化亜鉛粒子を灰化した。この灰化した試料に四ほう酸リチウム2gを加え、電気炉にて925℃まで加熱して溶融した。
次いで、この溶融した試料を白金坩堝ごと100mLのトールビーカーに入れた。
次いで、このトールビーカーに温水70mLおよび硝酸8mLを加え、ホットスターラにて加熱撹拌し、試料を溶解した。この溶解液を200mLメスフラスコに移し入れて定容し、これを検液とする。この検液に内標準物質としてY標準溶液をYが1000ppmとなるように加えて、測定用の検液とした。この検液をICP発光分光分析装置で測定し、検量線法により表面処理酸化亜鉛粒子中のSiの含有量を定量した。なお、検量線は、濃度既知の元素標準液に、内標準物質としてのYと、四ほう酸リチウムと、硝酸を、検液と同濃度になるように加えて作成した。
【0129】
(粒度分布の測定)
レーザ回折式粒子径測定装置(商品名:マスターサイザー3000、マルバーン・パナリティカル社製)で、乾式分散ユニット(商品名:AeroS、マルバーン・パナリティカル社製)を装着し、乾式で、実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子の体積粒度分布を測定した。結果を表1に示す。
【0130】
(水酸基処理率の測定)
「赤色色素の作製」
2,2’-ジヒドロキシアゾベンゼン1mmolと、ジフェニル酸化スズ(IV)1mmolと、アセトン30mLとを混合して、混合液を調製した。
次いで、この混合液を70℃で3時間撹拌して、脱水反応を行い、ジフェニル酸化スズを2,2’-ジヒドロキシアゾベンゼンに配位させた。
脱水反応後の混合液をろ過して、ろ液を回収し、ろ液から溶媒を溜去することで、上記一般式(4)で表される赤色色素を得た。
【0131】
「評価用の溶液の作製」
得られた赤色色素250nmol(0.12mg)をトルエンに溶解して5mLとして、5×10-5mol/Lの評価用の溶液C1を得た。この評価用の溶液C1の545nmにおける吸光度C2を測定した。
【0132】
溶液C1に、酸化亜鉛粒子A1を4.0mg添加して、60℃で4時間撹拌混合し、混合液を調整した。この混合液をシリンジフィルター(0.2μm)で濾過し、濾過液の545nmにおける吸光度A2を測定した。
溶液C1に、実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子B1を4.0mg添加して、60℃で4時間撹拌混合し、混合液を調整した。この混合液をシリンジフィルター(0.2μm)で濾過し、濾過液の545nmにおける吸光度B2を測定した。
【0133】
酸化亜鉛粒子と、表面処理酸化亜鉛粒子への赤色色素の吸着量とを、上記式(5)(6)で算出した。
表面処理酸化亜鉛粒子の色素の吸着量B3=((B2-C2)/C2)×250×10-9(mol)/4×10-3(g)・・・(6)
酸化亜鉛粒子の色素の吸着量A3=((A2-C2)/C2)×250×10-9(mol)/4×10-3(g)・・・(5)
【0134】
実施例1の水酸基処理率を上記式(7)により算出した。結果を表1に示す。
水酸基処理率=100-(B3/A3×100)・・・(7)
【0135】
(限界エタノール法による疎水性評価)
限界エタノール法は、水とエタノールを混合した溶液に試料を添加し、その試料が沈殿するか否かを観察する方法である。また、限界エタノール法は、試料が沈殿しなければエタノール比率を増やし、試料が沈殿した場合には水の比率を増やすことで、試料が沈殿するのに必要なエタノール比率で、酸化亜鉛粒子表面の疎水化度を評価する方法である。エタノール比率が高いほど、酸化亜鉛粒子の表面が疎水化され、金属水酸基処理率が高いことを示す。
実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子を限界エタノール法で評価した。その結果、エタノール比率が40%の時に10粒以上の粒子が沈降するのが確認された。表面処理酸化亜鉛粒子が10粒以上沈降した時のエタノール濃度を表1に示す。
【0136】
(bの評価)
実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子のbを、分光色彩計(商品名:Spectro Color Meter SE7700、東京電色工業社製)を用いて測定した。反射(光2度視野)測定条件で、測定径10mmで、光源としてD65光源を用いて測定した。
測定サンプルは、30mLスクリュー管に、実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子10gを入れて、卓上で30回タップし、このスクリュー管の底面を測定面とした。結果を表1に示す。
【0137】
(使用感(感触)の評価)
実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子の感触を次のようにして評価した。表面処理酸化亜鉛粒子を、親指と人差し指で取り、すり合わせた時のざらつき感の有無を評価した。ざらつき感がないものを「〇」と評価し、僅かにざらつき感があるものを「△」と評価し、ざらつき感があるものを「×」と評価した。結果を表1に示す。
表面処理酸化亜鉛粒子のざらつき感が少ない方が、感触が良いため、「○」「△」「×」の順に感触が良いことを表す。
【0138】
[実施例2]
酸化亜鉛粒子100質量部、オクチルトリエトキシシラン2.0質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、表面処理剤の含有量、粒度分布、水酸基処理率、疎水性、b、使用感を測定した。結果を表1に示す。
【0139】
[実施例3]
酸化亜鉛粒子100質量部、オクチルトリエトキシシラン3.0質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、表面処理剤の含有量、粒度分布、水酸基処理率、疎水性、b、使用感を測定した。結果を表1に示す。
【0140】
[比較例1]
酸化亜鉛粒子100質量部、オクチルトリエトキシシラン0.5質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、表表面処理剤の含有量、粒度分布、水酸基処理率、疎水性、b、使用感を測定した。結果を表1に示す。
【0141】
[比較例2]
酸化亜鉛粒子100質量部、オクチルトリエトキシシラン1.0質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、表面処理剤の含有量、粒度分布、水酸基処理率、疎水性、b、使用感を測定した。結果を表1に示す。
【0142】
[比較例3]
酸化亜鉛粒子100質量部、オクチルトリエトキシシラン4.0質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、表面処理剤の含有量、粒度分布、水酸基処理率、疎水性、b、使用感を測定した。結果を表1に示す。
【0143】
[比較例4]
酸化亜鉛粒子100質量部、オクチルトリエトキシシラン5.0質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、表面処理剤の含有量、粒度分布、水酸基処理率、疎水性、b、使用感を測定した。結果を表1に示す。
【0144】
[比較例5]
酸化亜鉛粒子100質量部、オクチルトリエトキシシラン2.0質量部、イソプロピルアルコール36.0質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例5の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、表面処理剤の含有量、粒度分布、水酸基処理率、疎水性、b、使用感を測定した。結果を表1に示す。
【0145】
【表1】
【0146】
実施例1~実施例3と比較例1~比較例5を比較することにより、BET比表面積が1.5m/g以上8m/g以下の酸化亜鉛粒子とオクチルトリエトキシシランを質量比で100:1.2~100:3.5の範囲で作製した表面修飾酸化亜鉛粒子は、疎水性が高く、ざらつき感が抑制され、bが小さいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の表面処理酸化亜鉛粒子は、色と使用感に優れている。従って、本発明の表面処理酸化亜鉛粒子は、分散液、組成物、塗料および化粧料へ適用した場合の設計品質を担保し易く、その工業的価値は大きい。