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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162734
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ゲート駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/16 20060101AFI20231101BHJP
   H03K 17/691 20060101ALI20231101BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H03K17/16 F
H03K17/691
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073327
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】山口 大輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸二
(72)【発明者】
【氏名】八尾 惇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740AA04
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740KK01
5J055AX25
5J055AX66
5J055BX16
5J055CX01
5J055CX07
5J055CX19
5J055DX13
5J055DX22
5J055EY07
5J055EY10
5J055EZ10
5J055EZ29
5J055EZ34
5J055GX01
(57)【要約】
【課題】高速スイッチングを行う場合においても誤動作を抑制可能なゲート駆動回路を提供する。
【解決手段】本ゲート駆動回路は、第1の回路と、第2の回路と、第1の回路から第2の回路への信号を絶縁して伝送するための信号絶縁器とを有する。そして、第1の回路は、基準値を発生する基準発生器と、基準値を保持するための第1のバッファと、第1の回路と第2の回路とを同期させるための同期信号を発生する同期信号発生器とを有し、第2の回路は、第1の回路における第1のバッファから信号絶縁器を介して伝送された基準値を保持するための第2のバッファと、第1の回路から信号絶縁器を介して伝送された同期信号に同期したキャリア信号を発生するキャリア発生器と、第2のバッファが出力する基準信号とキャリア信号発生器が出力するキャリア信号とを比較してゲート駆動信号を出力する比較器とを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回路と、
第2の回路と、
前記第1の回路から前記第2の回路への信号を絶縁して伝送するための信号絶縁器と、
を有し、
前記第1の回路は、
基準値を発生する基準発生器と、
前記基準値を保持するための第1のバッファと、
前記第1の回路と前記第2の回路とを同期させるための同期信号を発生する同期信号発生器と、
を有し、
前記第2の回路は、
前記第1の回路における前記第1のバッファから前記信号絶縁器を介して伝送された前記基準値を保持するための第2のバッファと、
前記第1の回路から前記信号絶縁器を介して伝送された前記同期信号に同期したキャリア信号を発生するキャリア発生器と、
前記第2のバッファが出力する前記基準信号と前記キャリア信号発生器が出力するキャリア信号とを比較してゲート駆動信号を出力する比較器と、
を有するゲート駆動回路。
【請求項2】
前記第1のバッファは、ある期間において、前記基準発生器が発生した前記基準値を保持すると共に、前記信号絶縁器を介して前記第2の回路に伝送し、
前記第2のバッファは、前記ある期間に対応する期間において、前記第1の回路における前記第1のバッファから前記信号絶縁器を介して伝送された前記基準値を保持すると共に、前記ある期間に対応する期間の次の期間において、前記ある期間に伝送され且つ保持している前記基準値を出力する
請求項1記載のゲート駆動回路。
【請求項3】
前記第1のバッファは、前記ある期間において、前記基準発生器から前記基準値を受け取った後、前記ゲート駆動信号が変化する時間を避けるように、前記基準値を出力する
請求項2記載のゲート駆動回路。
【請求項4】
前記同期信号は、前記キャリア信号の最大値のタイミングを表す第1の信号と、前記キャリア信号の最小値のタイミングを表す第2の信号とのうち少なくともいずれかである
請求項1記載のゲート駆動回路。
【請求項5】
前記同期信号が前記第1の信号及び前記第2の信号を含む場合に、
前記キャリア発生器は、
前記第2のバッファが、ある期間において受信した前記基準値に基づき、前記ある期間の次の期間における、前記第1の信号のみの受信と、前記第2の信号のみの受信と、前記第1及び第2の信号の受信とを切り替えて、受信した信号に基づき前記キャリア信号を調整する
請求項4記載のゲート駆動回路。
【請求項6】
前記同期信号が前記第1の信号及び前記第2の信号を含む場合に、
前記第2のバッファは、
ある期間において受信した前記基準値に基づき、前記ある期間の次の期間における、前記第1の信号のみの受信と、前記第2の信号のみの受信と、前記第1及び第2の信号の受信とのいずれが適切であるか判定して、当該適切な信号を表す選択信号を前記キャリア発生器に出力し、
前記キャリア発生器は、
前記第2のバッファからの前記選択信号に基づき、前記第1の信号のみの受信と、前記第2の信号のみの受信と、前記第1及び第2の信号の受信とを切り替えて、受信した信号に基づき前記キャリア信号を調整する
請求項4記載のゲート駆動回路。
【請求項7】
前記キャリア発生器は、
前記第1の信号を受信した場合には、前記キャリア信号の値を最大値に調整し、
前記第2の信号を受信した場合には、前記キャリア信号の値を最小値に調整する
請求項4記載のゲート駆動回路。
【請求項8】
前記第2の回路は、
前記第1の回路から前記信号絶縁器を介して伝送された前記同期信号に同期した第2の同期信号を発生する第2の同期信号発生器をさらに有し、
前記第2のバッファは、前記第2の同期信号発生器からの第2の同期信号に応じて前記基準値を前記比較器に出力する
請求項2記載のゲート駆動回路。
【請求項9】
第1の回路と、
第2の回路と、
前記第1の回路から前記第2の回路への信号を絶縁して伝送するための信号絶縁器と、
を有し、
前記第1の回路は、
基準値を発生する基準発生器と、
前記基準値を保持するための第1のバッファと、
を有し、
前記第2の回路は、
前記第1の回路における前記第1のバッファから前記信号絶縁器を介して伝送された前記基準値を保持するための第2のバッファと、
キャリア信号を発生するキャリア発生器と、
前記第2のバッファが出力する前記基準信号と前記キャリア発生器が出力するキャリア信号とを比較してゲート駆動信号を出力する比較器と、
を有するゲート駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ、整流器やDC/DCコンバータなどの電力変換回路に用いるゲート駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
SiC MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)やGaN HEMT(High Electron Mobility Transistor)などのワイドバンドギャップ半導体を使ったパワーデバイスは、高速なスイッチング動作、すなわち電圧変化率(dv/dt)を大きくすることが可能である。この特長を活用することにより、電力変換回路においては、スイッチング損失を低減したり、キャリア周波数を高周波化してリプル除去フィルタの体積を低減したりすることができる。一方、電圧変化率(dv/dt)が大きくなるにつれて制御信号を伝送する伝送路上のコモンモードノイズも増大するため、ゲート駆動回路が誤動作する場合がある。
【0003】
このような問題に対する代表的な対策技術としては、信号絶縁部に光絶縁器を適用して制御信号を伝送する伝送路の浮遊容量を可能な限り小さくし、コモンモードノイズを抑制する方法がある。しかし、光絶縁器は信号伝送のジッタが大きいため、ワイドバンドギャップデバイスで期待される数百kHzから数MHz程度のスイッチング動作は困難である。これに対して、磁気結合方式や容量結合方式の信号絶縁器を用いることでジッタを低減することができるが、光絶縁器を用いる場合に比べて制御信号を伝送する伝送路の浮遊容量が増大するため、高速スイッチング時に上記伝送路に重畳するコモンモードノイズが増大し、ゲート駆動信号にノイズが発生するという問題がある。
【0004】
図1に、ゲート駆動信号を生成する従来のゲート駆動回路の一例を示す。この例では、ゲート駆動信号を生成して出力する信号処理器は、信号絶縁器により、ゲートドライバ、ゲート抵抗及びMOSFET等と絶縁されている。この信号処理器は、クロックCLKから同期信号(例えばカウンタの最大値のタイミングを表す信号peakと最小値のタイミングを表す信号bottom)を発生する同期信号発生器と、同期信号に応じて基準値を発生する基準発生器と、基準値を保持するためのバッファと、クロックCLKに応じて例えば三角波であるキャリア信号を発生するキャリア発生器と、バッファが出力する基準値とキャリア発生器が出力するキャリア信号とを比較する比較器とを含む。なお、信号処理器は、マイクロプロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)やCPLD(Complex Programmable Logic Device)などのプログラマブルロジックデバイス、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やTTL(Transistor-Transistor Logic)などの論理回路のいずれか、もしくはそれらの組み合わせで実現される。
【0005】
図2を用いて、図1に示したゲート駆動回路の動作を説明する。なお、基準値は0以上1以下の値となり、三角波であるキャリア信号も0以上1以下の値となるものとする。また、キャリア信号が最大となる時刻と最小となる時刻で、バッファが出力する基準値を更新するものとする。具体的には、キャリア信号が最小となる時刻t1で基準発生器は基準値の計算を開始し、時刻t2で計算を完了する。計算が完了した基準値はバッファで一時的に保持し、キャリア信号が最大となる時刻t3でバッファは保持している基準値を比較器に出力する。時刻t3で、基準発生器は次の基準値の計算を開始し、時刻t4で計算を完了する。計算が完了した基準値はバッファで一時的に保管し、キャリア信号が最小となる時刻t5でバッファは保持している基準値を比較器に出力する。以後同様である。比較器でキャリア信号と比較する基準値は離散的な値であり、キャリア信号の半周期分の遅延がある。比較器では、キャリア信号と基準値の大小関係を比較し、キャリア信号の方が大きい場合、ゲート駆動信号はオフ信号(L)を維持し、基準値の方が大きい場合、ゲート駆動信号はオン信号(H)を維持する。このような従来のゲート駆動回路の信号処理器は、信号絶縁器を介して、常にゲート駆動信号を送信することになる。
【0006】
このような従来のゲート駆動回路を降圧チョッパに適用する場合の構成例を、図3に示す。なお、図3の例においては、降圧インダクタンスは十分に大きいとして、負荷を定電流源Iとして表している。図3の例において、ゲート駆動回路の一次側の基準電位は、GND1となっている。一方、二次側では、MOSFETのソース端子電圧を、基準電位GND2としている。一般に、絶縁された異なる基準電位間(ここではGND1とGND2との間)には、数pFから数百pF程度の浮遊容量Cが存在している。
【0007】
このようなゲート駆動回路における動作を図4を用いて説明する。ここでは、時刻t6でゲート信号をオフ(L)からオン(H)に切り替える場面を表す。ターンオン遅延を経て、時刻t7でMOSFETのドレインソース間電圧v1が低下する。このとき、キルヒホッフの電圧則より、ダイオード電圧v2は上昇を開始する。一方、信号絶縁器の浮遊容量Cに印加される電圧は、ダイオード電圧v2に一致することを考慮すると、時刻t7から時刻t8までのダイオード電圧v2の上昇に伴い、GND2からGND1に向かって、C(dv2/dt)のコモンモード電流が流れる。
【0008】
磁気結合方式や容量結合方式の信号絶縁器では、このようなコモンモード電流が流れることにより誤動作する場合がある。例えば、信号絶縁器にオン信号(H)を入力しているにもかかわらずコモンモード電流による誤作動により誤ってオフ信号(L)が出力されると、MOSFETが誤ターンオフしてしまう。特に、ワイドバンドギャップデバイスにより高速スイッチングを行う場合、コモンモード電流が電圧変化率(dv/dt)に比例することから、信号絶縁器での誤動作が顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6111454号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J. Wang, S. Mocevic, R. Burgos and D. Boroyevich, “High-Scalability Enhanced Gate Drivers for SiC MOSFET Modules With Transient Immunity Beyond 100 V/ns,” in IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 35, no. 10, pp. 10180-10199, Oct. 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、一側面として、高速スイッチングを行う場合においても誤動作を抑制可能なゲート駆動回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面に係るゲート駆動回路は、第1の回路と、第2の回路と、第1の回路から第2の回路への信号を絶縁して伝送するための信号絶縁器とを有する。そして、第1の回路は、基準値を発生する基準発生器と、基準値を保持するための第1のバッファと、第1の回路と第2の回路とを同期させるための同期信号を発生する同期信号発生器とを有し、第2の回路は、第1の回路における第1のバッファから信号絶縁器を介して伝送された基準値を保持するための第2のバッファと、第1の回路から信号絶縁器を介して伝送された同期信号に同期したキャリア信号を発生するキャリア発生器と、第2のバッファが出力する基準信号とキャリア信号発生器が出力するキャリア信号とを比較してゲート駆動信号を出力する比較器とを有する。
【発明の効果】
【0013】
一側面によれば、高速スイッチングを行う場合においても誤動作を抑制可能なゲート駆動回路が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、従来技術の回路例を示す図である。
図2図2は、従来技術の回路の動作を説明するための図である。
図3図3は、従来技術の回路の応用例を示す図である。
図4図4は、従来技術の回路の応用例における電圧、電流及びゲート駆動信号の波形を示す図である。
図5図5は、第1の実施の形態に係るゲート駆動回路を示す図である。
図6図6は、第1の実施の形態に係るゲート駆動回路の動作を説明するための図である。
図7図7は、第1の実施の形態に係るゲート駆動回路の動作を説明するための図である。
図8図8は、第1の実施の形態に係るゲート駆動回路の動作を説明するための図である。
図9図9は、第2の実施の形態に係るゲート駆動回路を示す図である。
図10図10は、第2の実施の形態に係るゲート駆動回路の動作を説明するための図である。
図11図11は、第2の実施の形態に係るゲート駆動回路の動作を説明するための図である。
図12図12は、第2の実施の形態に係るゲート駆動回路を示す図である。
図13図13は、複数のゲート駆動信号を生成する場合の回路例を示す図である。
図14図14は、実験回路の一例を示す図である。
図15図15は、従来技術の回路で生成したゲート駆動信号を用いた場合の各種電圧、電流及び信号波形を示す図である。
図16図16は、第1の実施の形態に係るゲート駆動回路で生成したゲート駆動信号を用いた場合の各種電圧、電流及び信号波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態1]
本実施の形態に係るゲート駆動回路の構成例を図5に示す。図5に示すように、本実施の形態では、基準値(指令値とも呼ぶ)を生成する回路1と、基準値に基づきゲート駆動信号を生成する回路2とを、信号絶縁器1及び信号絶縁器2によって絶縁して接続し、ゲートドライバ及びゲート抵抗を介してゲート駆動信号でMOSFET等のゲートを駆動するようになっている。
【0016】
回路1には、信号処理器1が設けられており、当該信号処理器1は、同期信号発生器1と、基準発生器と、バッファ1とを含む。同期信号発生器1は、回路1側のクロック信号clk1に応じて、例えば0から1までカウントアップし、カウント値が1に達すると同期信号Peak1を出力し、カウント値が1に達すると逆に0までカウントダウンして、カウント値が0に達すると同期信号bottom1を出力する。同期信号peak1及びbottom1は、基準発生器と、バッファ1とに出力されると共に、信号絶縁器2を介して回路2側にも出力される。基準発生器は、同期信号peak1及びbottom1の各々で基準値の算出を開始し、算出した基準値をバッファ1に出力する。バッファ1は、クロック信号clk1及び同期信号Peak1及びBottom1でタイミングを計りつつ、基準発生器から出力された基準値を保持すると共に、信号絶縁器1を介して回路2側に出力する。
【0017】
信号絶縁器1及び2は、応答性から例えば磁気結合方式や容量結合方式の信号絶縁器である。また、信号処理器1及び2は、従来と同様に、マイクロプロセッサ、FPGAやCPLDなどのプログラマブルロジックデバイス、CMOSやTTLなどの論理回路のいずれか、もしくはそれらの組み合わせで実現される。
【0018】
回路2には、信号処理器2が設けられており、当該信号処理器2は、バッファ2と、同期信号発生器2と、キャリア発生器と、比較器とを含む。同期信号発生器2は、回路2側のクロック信号clk2に応じて、例えば0から1までカウントアップし、カウント値が1に達すると同期信号Peak2を出力し、カウント値が1に達すると逆に0までカウントダウンして、カウント値が0に達すると同期信号bottom2を出力する。但し、クロック信号clk1とクロック信号clk2とは同期していないので、同期信号発生器2は、信号絶縁器2を介して伝送された同期信号peak1及びbottom1の少なくともいずれかに応じて、カウント値が1となるタイミングや0となるタイミングを調整する。バッファ2は、信号絶縁器1を介して伝送された基準値を保持すると共に、同期信号発生器2からの同期信号peak2及びbottom2の少なくともいずれかに応じて、出力する基準値を次の基準値に切り替える。キャリア発生器は、クロック信号clk2に応じて、例えば0から1までカウントアップしながらカウント値を出力し、カウント値が1に達すると逆に0までカウントダウンしながらカウント値を出力することで、三角波のキャリア信号を出力する。なお、クロック信号clk1とクロック信号clk2とは同期していないので、キャリア発生器も、信号絶縁器2を介して伝送された同期信号peak1及びbottom1に応じて、カウント値が1となるタイミングや0となるタイミングを調整する。比較器は、基準値とキャリア信号とを比較して、キャリア信号が基準値より大きい場合、ゲート駆動信号はオフ信号(L)にし、基準値がキャリア信号以上である場合、ゲート駆動信号はオン信号(H)にする。
【0019】
図6に、図5に示した信号処理器1及び2の処理のタイムチャートを示す。図6において、第2段目に示すように、同期信号発生器1のカウンタ値が最初にカウントアップしている期間をnとし、次にカウントダウンしている期間をn+1とし、その後1ずつ増加するものとする。図6の第1段目に示すように、期間nが時刻t9で開始すると、基準発生器は、基準値の算出を開始する。時刻t10で基準値を算出し終えると、図6において矢印で示すように、基準値をバッファ1に出力する。バッファ1は、図6の第3段目及び第4段目に矢印で示すように、信号絶縁器1を介して基準値を回路2側に伝送する。ここでは、バッファ1は、時刻t10から時刻t11まで、基準値の伝送を行っている。なお、期間n+1では、時刻t12から時刻t13まで基準値の算出が基準発生器によって行われ、時刻t13で基準値はバッファ1に出力される。バッファ1は、時刻t13から時刻t15まで、基準値を、信号絶縁器1を介して回路2側に出力する。
【0020】
バッファ2は、回路1と回路2とが同期できていれば、図6の第5段目に示すように、期間nにおいて、信号絶縁器1を介して伝送された基準値を受信して、保持する。なお、バッファ2は、期間n-1で受信し且つ保持している基準値を、期間n(時刻t9乃至t12)で出力している。よって、バッファ2は、時刻t12で期間n+1が開始すると、期間nで受信して保持している基準値を出力する。そのため、図6では、第6段目に示すように、期間毎に基準値が変化するようになる。一方、キャリア発生器は、回路1と回路2とが同期できていれば、図6の第7段目に示すように、時刻t9から増加し、時刻t12から減少するキャリア信号を出力する。比較器は、図6の第8段目に示すように、基準値とキャリア信号とを比較して、キャリア信号が基準値より大きい場合には、ゲート駆動信号をオフにし、キャリア信号が基準値以下である場合には、ゲート駆動信号をオンにする。その他の期間でも同様に動作する。
【0021】
このように、信号絶縁器を介して基準値を伝送することで、常に信号絶縁器を介してゲート駆動信号を伝送する従来技術よりも短時間で通信が完了するために、信号絶縁部の誤動作の影響を受けにくくなる。例えば、バッファ1からバッファ2への基準値伝送を32ビット、100MHzのシリアル通信で行う場合、基準値伝送に要する時間(t11-t10)は、0.32μs(=32/100MHz)となる。よって、キャリア信号の1周期のうち、2×0.32=0.64μsの期間のみ、有意な信号が信号絶縁器1を通ることになる。
【0022】
このように有意な信号が伝送される期間が短くなっても、基準値によっては、バッファ1からバッファ2への通信の期間中に、ゲート駆動信号が変化する場合がある。図6の例では、期間nにおける時刻t10から時刻t11までは、ゲート駆動信号に変化は無いが、期間n+1における時刻t13から時刻t15の間の時刻t14で、ゲート駆動信号に変化が生じている。このような場合には、信号絶縁器1が誤動作する可能性があるので、バッファ1で基準値の出力タイミングを調整する。
【0023】
具体的には、図7に示すように、バッファ1は、基準値を出力するタイミングを遅延させる。図7では、期間n+1は時刻t16で開始するが、バッファ1は、時刻t17で基準値を基準発生器から受け取っても、時刻t17乃至t19まで基準値の出力を遅延させる。これによって、ゲート駆動信号が時刻t17乃至t19の間の時刻t18で変化したとしても、バッファ1は、時刻t19から基準値の出力を開始すれば、ゲート駆動信号の変化から影響を受けずに、信号絶縁器1を介して基準値を伝送できるようになる。
【0024】
なお、任意の期間i乃至i+1(i∈n,n±1,n±2・・・)において、バッファ1が基準値の出力を遅延させる条件は、次式を満たす場合のみである。
<tsw,i≦T+T (1)
なお、Tは、基準値の計算に要する時間であり、マイクロプロセッサやプログラマブルロジックのシミュレーションから得られる。また、Tは、基準値の伝送に要する時間であり、上記のように算出される。図7において、期間nについて、T及びTを示している。また、期間nの始期からの期間としてtswも示されている。このように、期間nにおいては、(1)の条件は満たされていない。
【0025】
一方、tsw,iは、期間iにおけるスイッチング時刻であり、基準値の計算を開始する点をt=0として表現している。スイッチング時刻は、キャリア信号と基準値の交点(又は、同期信号発生器2のカウンタ値と基準値の交点)から、以下のように算出される。
sw,i=(1-Di-1)/2fsw (2)
なお、fswはキャリア周波数、Di-1は、期間i-1の基準値である。すなわち、キャリア信号と比較される基準値は1期間前に算出された基準値なので、Di-1となる。
【0026】
よって、バッファ1は、(1)式が満たされるか否かを判断し、満たされないと判断した場合には、基準発生器から基準値を受け取ると直ぐに出力すれば良い。一方、(1)式が満たされると判断した場合には、その期間iの始期から(2)式で表されるtsw,i経過してから、基準値の出力を行うようにする。なお、基準値の転送は、次の基準値の計算を開始する前、すなわち次の期間が開始する前に完了するようにする。
【0027】
次に、図8を用いて、回路1と回路2との同期について説明する。同期信号発生器1は、図8の第1段目に示すような、カウントアップ及びカウントダウンを行って、図8の第2及び第3段目に示すような同期信号peak1及びbottom1を発生して、図8の第4段目に示すように、信号絶縁器2を介して回路2側に伝送する。同期信号発生器2及びキャリア発生器は、図8の第5段目に示すキャリア信号のようなカウントアップ及びカウントダウンを行うが、同期信号peak1の受信に応じて自らのカウント値を最大値(例えば1)に変更し、同期信号bottom1の受信に応じて自らのカウント値を最小値(例えば0)に変更する。すなわち、同期信号発生器2は、同期信号peak1を受信したタイミングで同期信号peak2を出力し、同期信号bottom1を受信したタイミングで同期信号bottom2を出力する。また、キャリア発生器は、同期信号peak1を受信したタイミングでキャリア信号となるカウント値を最大値に変更し、同期信号bottom1を受信したタイミングでキャリア信号となるカウント値を最小値に変更する。図8の例では、時刻t21では、同期信号bottom1に応じてカウント値を最小値0に調整し、時刻t22では、同期信号peak1に応じてカウント値を最大値1に調整し、時刻t23では、同期信号bottom1に応じてカウント値を最小値0に調整し、時刻t24では、同期信号peak1に応じてカウント値を最大値1に調整している。
【0028】
このようにして、信号処理器1及び2を信号絶縁器1及び2で絶縁するような構成においても、同期をとることができるようになる。なお、厳密には、回路1側の期間と、回路2側の期間とは同時にはならないが、上記の構成により回路1側の期間nと回路2側の期間nとには対応関係が付くようになっており、説明の都合上、図では同時であるものとして示している。
【0029】
なお、上では、同期信号peak1及びbottom1を、回路1側から回路2側に伝送する例を示したが、いずれか一方を伝送するようにしても良い。この場合、回路2側では、いずれか一方の受信タイミングで、カウント値の調整を行うようにする。
【0030】
さらに、同期信号発生器2及びキャリア発生器については、一部機能が重複するので統合するようにしても良い。
【0031】
[実施の形態2]
第1の実施の形態では、信号絶縁器2に対するゲート駆動信号の影響については考慮していなかったが、回路1側から信号絶縁器2を介して伝送される同期信号peak1及びbottom1のタイミングと、ゲート駆動信号の信号変化のタイミングとが重なると、影響がある場合もある。具体的には、基準値が小さい値である場合(上で述べた例では0に近い場合)、同期信号bottom1が出力されるタイミングと、ゲート駆動信号の信号変化のタイミングとが重なる可能性があり、基準値が大きい値である場合(上で述べた例では1に近い場合)、同期信号peak1が出力されるタイミングとが重なる可能性がある。よって、本実施の形態では、以下に述べるような構成を採用することで、このような問題に対処する。
【0032】
本実施の形態に係るゲート駆動回路の構成を図9に示す。回路1側は第1の実施の形態と同じであるが、回路2の信号処理器2に変更がある。具体的には、バッファ2は、基準値を受信した期間と同一期間内にすぐさま当該基準値を、同期信号発生器2及びキャリア発生器に出力するようになっており、同期信号発生器2及びキャリア発生器は、受け取った基準値に基づき、次の期間において、同期信号peak1及びbottom1のいずれかがゲート駆動信号の変化の影響を受けるか否かを判断し、影響を受ける場合には、影響を受ける同期信号peak1又はbottom1に応じた調整を行わず、他方の同期信号peak1又はbottom1に応じて調整を行うようにする。例えば、カウント値が0以上1以下である場合には、ある期間に受信した基準値が0.1未満である場合には、同期信号bottom1に影響が及ぶ可能性があるので、次の期間においては同期信号bottom1に基づく調整は行わず、同期信号peak1の受信に応じて調整を行う。また、ある期間に受信した基準値が0.9を超える場合には、同期信号peak1に影響が及ぶ可能性があるので、次の期間において同期信号peak1に基づく調整は行わず、同期信号bottom1の受信に応じて調整を行う。それ以外の場合には、次の期間において同期信号peak1と同期信号bottom1のいずれが来ても、当該同期信号に基づき調整を行う。
【0033】
図10に同期信号peak1のみを用いる場合の一例を示す。図10の例では、期間n-1に受信した基準値が例えば0.1未満であるため、キャリア信号の値も小さくなる短い時間のみゲート駆動信号がオンになり、同期信号bottom1が信号絶縁器2を介して伝送される時刻t25乃至t26は、ゲート駆動信号がオンである時間帯に包含されてしまう。よって、期間n-1に受信した基準値が0.1未満である場合には、次の期間nにおいて、同期信号bottom1に基づくカウント値の調整は行わない。一方、期間nに受信した基準値は0.9を超えていないので、期間n+1の時刻t27において同期信号peak1に基づきカウント値の調整を行う。同様に、期間n+1に受信した基準値が例えば0.1未満であるため、同期信号bottom1が信号絶縁器2を介して伝送される時刻t28乃至t29は、ゲート駆動信号がオンである時間帯に包含されてしまう。よって、期間n+1に受信した基準値が0.1未満である場合には、次の期間n+2において、同期信号bottom1に基づくカウント値の調整は行わない。一方、期間n+2における基準値は0.9を超えていないので、期間n+3の時刻t30において同期信号peak1に基づきカウント値の調整を行う。
【0034】
図11に同期信号bottom1のみを用いる場合の一例を示す。図11の例では、期間n-1に受信した基準値が例えば0.9を超えているため、期間nの時刻t31において同期信号bottom1に基づきカウント値の調整を行う。一方、期間nに受信した基準値が0.9を超えており、キャリア信号の値も大きくなる短い時間のみゲート駆動信号がオフになり、同期信号peak1が信号絶縁器2を介して伝送される時刻t32乃至t33は、ゲート駆動信号がオフである時間帯に包含されてしまう。よって、期間nに受信した基準値が0.9を超えている場合には、次の期間n+1において、同期信号peak1に基づくカウント値の調整は行わない。同様に、期間n+1に受信した基準値は0.9を超えているので、期間n+2の時刻t34において同期信号bottom1に基づきカウント値の調整を行う。さらに、期間n+2に受信した基準値が例えば0.9を超えており、同期信号peak1が信号絶縁器2を介して伝送される時刻t35乃至t36は、ゲート駆動信号がオフである時間帯に包含されてしまう。よって、期間n+2に受信した基準値が0.9を超えている場合には、次の期間n+3において、同期信号peak1に基づくカウント値の調整は行わない。
【0035】
なお、同期信号発生器2のカウント値を調整することで、カウント値の最大値又は最小値が連続する場合が生じ得る。そこで、バッファ2は、同種の同期信号が複数回入力される場合、2回目以降の同期信号は無視するように動作する。例えば、同期信号発生器2のカウント値が最大値を過ぎた後に、同期信号peak1を受信すると、同期信号発生器2は再びカウント値を最大値にする。そうすると、同期信号発生器2は同期信号peak2を2回連続で出力するが、バッファ2は2回目の同期信号peak2は無視するものとする。
【0036】
[実施の形態2の変形例]
第2の実施の形態では、バッファ2が基準値を同期信号発生器2及びキャリア発生器に出力して、各々が基準値に基づき同期信号peak1及びbottom1の受信の是非を判断していたが、バッファ2が基準値に基づき同期信号peak1及びbottom1の受信の是非を判定して、同期信号発生器2及びキャリア発生器に対して、同期信号の選択信号ENを出力するようにしても良い。例えば、このような構成のゲート駆動回路の例を図12に示す。
【0037】
図13の例では、バッファ2から、同期信号の選択信号ENが、同期信号発生器2及びキャリア発生器に出力されるようになっている。バッファ2は、基準値を信号絶縁器2を介して受信すると、すぐさま当該基準値が0.1未満であるか、0.9を超えるかを判断し、基準値が0.1未満であれば、同期信号peak1のみを選択する選択信号ENを出力し、基準値が0.9を超える場合には、同期信号bottom1のみを選択する選択信号ENを出力し、それ以外であれば、両方の同期信号peak1及びbottom1を選択する選択信号ENを出力する。
【0038】
同期信号発生器2及びキャリア発生器は、同期信号peak1のみを選択する選択信号ENを受信する場合には、自らのカウント値を同期信号peak1のみで調整し、同期信号bottom1のみを選択する選択信号ENを受信する場合には、自らのカウント値を同期信号bottom1のみで調整し、同期信号peak1及びbottom1を選択する選択信号ENを受信する場合には、自らのカウント値を同期信号peak1及びbottom1で調整するものとする。
【0039】
[複数のゲート駆動信号を生成する場合]
図13に2つのMOSFET等に対して2つのゲート駆動信号を生成するゲート駆動回路の構成例を示す。図13において、ゲート駆動信号1を生成する信号処理器2は、上で述べた実施の形態における信号処理器2であり、ゲート駆動信号2を生成する信号処理器3は、上で述べた実施の形態における信号処理器2と同じ構成を有する。一方、信号処理器1は、信号処理器2のためのバッファ1に加えて、信号処理器3のためのバッファ3が追加され、基準発生器は、バッファ2に蓄積され且つ信号処理器2に信号絶縁器1を介して伝送される基準値1と、バッファ3に蓄積され且つ信号処理器3に信号絶縁器3を介して伝送される基準値2とを生成するようになっている。なお、同期信号発生器1は、上で述べた実施の形態と同様に同期信号peak1及びbottom1(図13におけるpeak及びbottom)を出力する。
【0040】
このように、信号処理器1には、生成すべきゲート駆動信号の数分だけバッファを設けて、基準発生器は、生成すべきゲート駆動信号の数分の基準値を発生する。また、生成すべきゲート駆動信号の数だけ2次側の信号処理器2を設ければよい。
【0041】
[効果について]
図14に示すような降圧チョッパによる実験を行った。具体的には、上側アームのゲート駆動信号1としては、常にオフ信号(L)とし、下側アームのゲート駆動信号2としては、図1に示した従来技術の回路または本実施の形態に係る回路(例えば図5)で生成したもので、ダブルパルス波形とする。なお、電圧vsigは、ゲート駆動信号の電圧を表し、電圧vgは、ゲートドライバの出力電圧を表し、電圧vdsは、ドレインソース間電圧を表す。また、直流電源は500Vとした。これにより、ドレインソース間電圧vdsは、オン時には0Vであり、オフ時には500Vとなる。さらに、ゲート駆動信号は、オン(H)信号の時には、vsig=5Vであり、オフ(L)信号の時には、vsig=0Vである。ゲートドライバの出力電圧は、オン時にはvg=19V、オフ時にはvg=-5Vである。なお、Rgは、ゲート抵抗であり、Rg=3.3Ωである。
【0042】
図15に、図1に示した従来技術の回路でゲート駆動信号2を生成して、図15に示す回路に出力した場合の実験結果を示す。より具体的には、vds、vsig及びvgについて、ダブルパルス波形に対する測定結果を200回重ね書きした結果を示す。なお、ゲート駆動信号vsigを5Vから0Vに変化させることで、ターンオフのトリガーを与えた。そうすると、ドレインソース間電圧vdsが上昇した後、ゲート駆動信号vsigにリンギングが生じた。ゲートドライバの出力電圧vgに着目すると、ターンオフのトリガーの後にゲートドライバの出力電圧はvg=-5Vを維持すべきであるが、一時的に上昇している。これは、コモンモードノイズにより信号絶縁器が誤作動し、ゲート駆動信号にリンギングが生じてしまうことで誤ってオン信号を生成し、ゲートドライバを誤ターンオンしてしまったためと考えられる。その結果、ドレインソース間電圧が一時的に低下し、MOSFETも誤ターンオンしてしまった。
【0043】
一方、図16に、図5に示した本実施の形態に係る回路でゲート駆動信号2を生成して、図14に示す回路に出力した場合の実験結果を示す。より具体的には、vds、vsig及びvgについて、ダブルパルス波形に対する測定結果を200回重ね書きした結果を示す。ゲート駆動信号vsigを5Vから0Vに変化させることで、ターンオフのトリガーを与えた。そうすると、ターンオフ後にゲート駆動信号vsigに生ずるリンギングが大幅に低減している。よって、ゲートドライバの出力電圧もオフ状態を維持している。すなわち、ゲートドライバは誤ターンオンしていない。その結果、ドレインソース間電圧は誤ターンオンしていない。すなわち、コモンモードノイズに対応できるようになった。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、各実施の形態の任意の技術的事項を削除したり、いずれかの実施の形態の技術的事項を任意に組み合わせることも可能である。
【0045】
以上述べた実施の形態をまとめると以下のようになる。
【0046】
本実施の形態の第1の態様に係るゲート駆動回路は、第1の回路と、第2の回路と、第1の回路から第2の回路への信号を絶縁して伝送するための信号絶縁器とを有する。そして、第1の回路は、基準値を発生する基準発生器と、基準値を保持するための第1のバッファと、第1の回路と第2の回路とを同期させるための同期信号を発生する同期信号発生器とを有し、第2の回路は、第1の回路における第1のバッファから信号絶縁器を介して伝送された基準値を保持するための第2のバッファと、第1の回路から信号絶縁器を介して伝送された同期信号に同期したキャリア信号を発生するキャリア発生器と、第2のバッファが出力する基準信号とキャリア信号発生器が出力するキャリア信号とを比較してゲート駆動信号を出力する比較器とを有する。
【0047】
このように信号絶縁器を通過させる信号が基準値と同期信号となり、基準値については、ゲート駆動信号を伝送する場合に比して短時間で伝送することが出来るので、第2の回路側で生成するゲート駆動信号により信号絶縁器を通過する信号(すなわち基準値)に対して生ずる悪影響を抑制できるようになる。
【0048】
なお、上で述べた第1のバッファは、ある期間において、基準発生器が発生した基準値を保持すると共に、信号絶縁器を介して第2の回路に伝送し、第2のバッファは、上記ある期間に対応する期間において、第1の回路における第1のバッファから信号絶縁器を介して伝送された基準値を保持すると共に、上記ある期間に対応する期間の次の期間において、上記ある期間に伝送され且つ保持している基準値を出力するようにしても良い。ダブルバッファ構成で適切なタイミングで基準値を伝えてゆくことが出来るようになる。
【0049】
また、上で述べた第1のバッファは、上記ある期間において、基準発生器から基準値を受け取った後、ゲート駆動信号が変化する時間を避けるように、基準値を出力するようにしても良い。これによって、信号絶縁器を通過する信号に対するゲート駆動信号による悪影響を抑制できるようになる。なお、ゲート駆動信号が変化する時間は1つ前の期間における基準値から予測できるので、基準値を出力する時間が、ゲート駆動信号が変化する時間と重複する場合には、当該ゲート駆動信号が変化する時間より後に遅延させるようにするようにしても良い。
【0050】
さらに、上で述べた同期信号は、キャリア信号の最大値のタイミングを表す第1の信号と、キャリア信号の最小値のタイミングを表す第2の信号とのうち少なくともいずれかであってもよい。このような同期信号であれば、信号絶縁器を通過する時間が短く、ゲート駆動信号の影響を受けづらくなる。
【0051】
なお、上で述べた同期信号が第1の信号及び第2の信号を含む場合に、上で述べたキャリア発生器は、第2のバッファが、ある期間において受信した基準値に基づき、上記ある期間の次の期間における、第1の信号のみの受信と、第2の信号のみの受信と、第1及び第2の信号の受信とを切り替えて、受信した信号に基づきキャリア信号を調整するようにしても良い。これによって、ゲート駆動信号による悪影響を避ける形で、第1の回路と第2の回路との同期が計られるようになる。
【0052】
さらに、上で述べた同期信号が第1の信号及び第2の信号を含む場合に、上で述べた第2のバッファは、ある期間において受信した基準値に基づき、上記ある期間の次の期間における、第1の信号のみの受信と、第2の信号のみの受信と、第1及び第2の信号の受信とのいずれが適切であるか判定して、当該適切な信号を表す選択信号をキャリア発生器に出力するようにしても良い。この場合、上で述べたキャリア発生器は、第2のバッファからの選択信号に基づき、第1の信号のみの受信と、第2の信号のみの受信と、第1及び第2の信号の受信とを切り替えて、受信した信号に基づきキャリア信号を調整するようにしても良い。このような構成であっても、ゲート駆動信号による悪影響を避ける形で、第1の回路と第2の回路との同期が計られるようになる。
【0053】
また、上で述べたキャリア発生器は、第1の信号を受信した場合には、キャリア信号の値を最大値に調整し、第2の信号を受信した場合には、キャリア信号の値を最小値に調整するようにしても良い。
【0054】
さらに、上で述べた第2の回路は、第1の回路から信号絶縁器を介して伝送された同期信号に同期した第2の同期信号を発生する第2の同期信号発生器をさらに有するようにしても良い。この場合、第2のバッファは、第2の同期信号発生器からの第2の同期信号に応じて基準値を比較器に出力するような構成となる。
【0055】
本実施の形態の第2の態様に係るゲート駆動回路は、第1の回路と、第2の回路と、第1の回路から第2の回路への信号を絶縁して伝送するための信号絶縁器とを有する。そして、第1の回路は、基準値を発生する基準発生器と、基準値を保持するための第1のバッファとを有し、第2の回路は、第1の回路における第1のバッファから信号絶縁器を介して伝送された基準値を保持するための第2のバッファと、キャリア信号を発生するキャリア発生器と、第2のバッファが出力する基準信号とキャリア発生器が出力するキャリア信号とを比較してゲート駆動信号を出力する比較器とを有する。
【0056】
このように信号絶縁器を介して伝送される基準値は、ゲート駆動信号を伝送する場合に比して短時間で伝送することが出来るので、第2の回路側で生成するゲート駆動信号により信号絶縁器を通過する信号(すなわち基準値)に対して生ずる悪影響を抑制できるようになる。
【0057】
なお、第1の回路と第2の回路とを同期させる方法については様々な方式が可能であり、上で述べた実施の形態に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16