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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162790
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】光接続構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/13 20060101AFI20231101BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20231101BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20231101BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20231101BHJP
   B29D 11/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G02B6/13
H01L21/30 502D
G02B6/122
G02B6/26
B29D11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073428
(22)【出願日】2022-04-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】中村 文
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
4F213
5F146
【Fターム(参考)】
2H137AB01
2H137AB16
2H137BA55
2H137BC51
2H137BC52
2H137EA06
2H147CA13
2H147CA15
2H147CD12
2H147EA16A
2H147EA16B
2H147EA16D
2H147FA17
2H147FD01
4F213AA44
4F213AG03
4F213AH33
4F213AR12
4F213WA39
4F213WB01
4F213WC02
5F146AA31
(57)【要約】
【課題】 インプリントプロセスを用いて基板表面に傾斜したミラー面を基板からの高さ位置を正確に形成し得る光接続構造のミラー部分の製造方法の提供。
【解決手段】 光学基板上の光学樹脂層の表面に形成された凹部の壁面の一部をミラー面とする光接続構造の製造方法である。凹部を形成する部分を包囲するように光学基板上に所定高さの高さガイドを設ける高さガイド形成工程と、高さガイドの内部を光学樹脂で満たす光学樹脂付与工程と、モールド基板の表面に、ミラー面を転写させる凸状部を有するモールドを基板に近接させて凸状部を光学樹脂に押し込み、モールド基板の表面を高さガイドの上に配置させる転写工程と、光学樹脂を硬化させる硬化工程と、モールドを脱離させる脱離工程と、を含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学基板上の光学樹脂層の表面に形成された凹部の壁面の一部をミラー面とする光接続構造の製造方法であって、
前記凹部を形成する部分を包囲するように前記光学基板上に所定高さの高さガイドを設ける高さガイド形成工程と、
前記高さガイドの内部を光学樹脂で満たす光学樹脂付与工程と、
モールド基板の表面に、前記ミラー面を転写させる凸状部を有するモールドを前記光学基板に近接させて前記凸状部を前記光学樹脂に押し込み、前記モールド基板の前記表面を前記高さガイドの上に配置させる転写工程と、
前記光学樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記モールドを脱離させる脱離工程と、を含むことを特徴とする光接続構造の製造方法。
【請求項2】
前記転写工程は、前記所定高さよりも低い高さを有する前記凸状部を前記モールド基板の前記表面を前記高さガイドの上に当接させることを特徴とする請求項1記載の光接続構造の製造方法。
【請求項3】
前記凹部の底部下部には、前記光学基板の内部の光進行方向に形成された第1の導波路を横切って与えられ下部ミラーを内部に配置された下部ミラー部を有し、かつ、前記光学基板の上に前記光進行方向に沿って第2の導波路が積層されており、
前記高さガイド形成工程及び転写工程は、前記第1の導波路で前記光学基板に沿って進行し前記下部ミラーで上方に反射された光を受けかつこれを反射し前記第2の導波路に導く位置に前記ミラー面を形成させることを特徴とする請求項1記載の光接続構造の製造方法。
【請求項4】
前記凹部の側面の一部に前記第2の導波路の断面を露出させるように前記高さガイドを設けることを特徴とする請求項3記載の光接続構造の製造方法。
【請求項5】
前記高さガイドは前記転写工程で前記モールドを近接させたときに前記光学樹脂を前記下部ミラー部の上部から前記第2の導波路の側部に沿って流動させる逃げ部を有することを特徴とする請求項4記載の光接続構造の製造方法。
【請求項6】
前記光学樹脂は光硬化性樹脂であって、前記硬化工程は前記モールドを介して光を照射して前記光学樹脂を硬化させることを特徴とする請求項1記載の光接続構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリントプロセスを用いた光接続構造の製造方法に関し、特に、光接続構造のミラー部分の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(大規模集積回路)と光IC(光集積回路)とを単一のSi基板上に形成するコパッケージングが提案されている。かかる光IC構造部分の製造においては、シリコンフォトニクスと称されるシリコン電子デバイスの製造技術が用いられ得る。
【0003】
例えば、特許文献1では、外部から光回路に光を入力する光入出力(光I/O)ポートについて、特に、基板の表面にほぼ直交する方向(上方)へ光進路を変更させるミラー面の製造にフォトリソグラフィによるパターニングを用いることを開示している。光透過率分布が位置に依存して変動するマスクにて樹脂層を露光しこれを現像すると、照射された光の量の差に依存して樹脂層の表面の一部が傾斜したミラー面となって得られるとしている。
【0004】
また、特許文献2では、空洞部の内部の光導波路からの光を受けるミラー面の形成にインプリントプロセスを用いることを開示している。樹脂からなるコア層及びクラッド層の積層構造体の上部から、空洞部の内壁面に合致した外形を有するインプリント用型を押しつけ成型するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2018/083966
【特許文献2】特開2015-87711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1及び2の上方に向けて傾斜したミラー面を有する下部ミラーに対して、下方に向けて傾斜したミラー面を有する上部ミラーは、基板表面から上方(該表面に直交する方向)へ進んだ光を水平方向(該表面に沿った方向)へ光進路を変更させるのに用いられ得る。かかる上部ミラーは、高さ位置を正確に形成しないと、光進路を変更させた後に導かれる導波路の高さ位置に整合しない。一方、インプリントプロセスでは、モールド(インプリント用型)を基板に向けて押しつけて成型を行うため、押しつけ圧力などに依存し、基板方向、つまり高さ位置の制御が難しくなる。
【0007】
本発明は、上記したような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、インプリントプロセスを用いて基板表面に傾斜したミラー面、特に上部ミラーを基板からの高さ位置を正確に形成し得る光接続構造のミラー部分の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光学基板上の光学樹脂層の表面に形成された凹部の壁面の一部をミラー面とする光接続構造の製造方法であって、前記凹部を形成する部分を包囲するように前記光学基板上に所定高さの高さガイドを設ける高さガイド形成工程と、前記高さガイドの内部を光学樹脂で満たす光学樹脂付与工程と、モールド基板の表面に、前記ミラー面を転写させる凸状部を有するモールドを前記基板に近接させて前記凸状部を前記光学樹脂に押し込み、前記モールド基板の前記表面を前記高さガイドの上に配置させる転写工程と、前記光学樹脂を硬化させる硬化工程と、前記モールドを脱離させる脱離工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
上記した特徴によれば、光学基板の表面に対して傾斜した上部ミラーのようなミラー面を該基板からの高さ位置を正確に形成し得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による実施例としての製造方法による光接続構造の断面図である。
図2】本発明による実施例としての光接続構造の製造方法のフロー図である。
図3】光接続構造の製造方法の各工程を示す断面図である。
図4】光接続構造の高さガイド形成工程での(a)側断面図及び(a)上面図である。
図5】製造実験に用いた(a)構造体及びモールドの側断面図、(b)構造体の上面図である。
図6】製造実験により得た凹部の断面プロファイルと凸状部の形状との比較結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明による1つの実施例である光接続構造の製造方法について、図1乃至図4を用いて説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施例の製造方法によって製造される光接続構造10は、光学基板1上に光学樹脂からなる樹脂層2が形成された構造を有する。樹脂層2の底部近傍には、紙面左から右へ向けて延びる第1の導波路として下部導波路3が形成されており、下部導波路3の内部を通過してきた光をその先端から樹脂層2内の下部ミラー部4に導出させることができる。下部ミラー部4は、下部導波路3を横切るように備えられ、その内部に配置された下部ミラー4aによって、下部導波路3から導出された光(図中点線矢印参照)を光学基板1の表面に対して垂直上方に反射させることができる。
【0013】
一方、下部ミラー4aの上方には、右に向けて上へ傾斜するミラー面5が形成されている。ミラー面5は、下部導波路3に沿って進行し下部ミラー4aで上方に反射された光を受け、かつこれを紙面右方向へ反射させることができる。ミラー面5の右側には、反射された光を導く第2の導波路として上部導波路6が形成されている。上部導波路6は、例えば、樹脂によるコア材及びクラッド材の積層によって形成される。このように、光接続構造10は、光進行方向(紙面左から右)に向けて形成された下部導波路3からの光を、下部導波路3よりも光学基板1からの距離を大とする位置に光進行方向に沿って形成された上部導波路6に導くものである。
【0014】
ここで、ミラー面5は、樹脂層2に形成された凹部7の壁面の一部に形成されている。つまり、凹部7は、その底部下部に形成された下部ミラー部4からの光を右に向けて反射させて上部導波路6へ導く位置にミラー面5を備えていなければならない。そのため、ミラー面5を含む凹部7は、光学基板1からの高さ位置を正確に形成されている必要がある。
【0015】
以下、ミラー面5の高さ位置を正確に形成できる光接続構造10の製造方法について説明する。なお、主として、凹部7の形成とこれに伴うミラー面5の形成について説明する。その他の下部ミラー部4や導波路などについての形成方法は公知であるため、ここでは説明を省略する。
【0016】
図2に沿って、図3を併せて参照すると、まず、光学基板1の表面から所定高さを有する高さガイド11(11a、11b)を光学基板1の上に図示しない導波路の長手方向に沿ってその両側部に形成する(S1:高さガイド形成工程、図3(a)参照)。高さガイド11は、後述する板状のモールドを押し込んだ際にその光学基板1からの高さを定めるために形成される。また、モールドとしては、硬質材料よりも剛性のより低い柔軟な材料を用いることがモールド自体の成形性の観点からは好適である。一方で、モールドがたわみやすくもなるため、光学基板1の表面に平行な平面として複数設けられる高さガイド11の上端によって、モールドを光学基板1へと押し付けられたときにその平板形状と平行を維持できるようにするのである。例えば、凹部7を形成する部分を包囲するように近接高さガイド11aを配置するとともに、これらから離間した位置に広域高さガイド11bを配置し、モールドの高さと平板形状を維持するのである。なお、下部ミラー部4、下部導波路3、上部導波路6などは、高さガイド11を形成する前に既に設けられているが、図示を省略する。
【0017】
次いで、近接高さガイド11aの内部を満たすように光学樹脂12をスピンコート法などで付与する(S2:光学樹脂付与工程、図3(b)参照)。近接高さガイド11aの内部は、凹部7を形成する部分である。光学樹脂12としては、後述するモールドで成型可能な硬化前の樹脂を用いる。例えば、光硬化性樹脂を好適に使用し得る。
【0018】
次いで、モールド20に設けられた凸状部22の形状を光学樹脂12に転写させる(S3:転写工程、図3(c)参照)。詳細には、凸状部22を有する略平板状のモールド20を光学基板1の上から近接させ、凸状部22を近接高さガイド11aの内部に付与した光学樹脂12に押し込む。モールド20は板状のモールド基板21とその表面21a上に設けられた凸状部22とを備える。そしてモールド基板21の表面21aを高さガイド11の上に配置させ、表面21aと高さガイド11とを当接させる。もしくは、所定厚さの光学樹脂12を表面21aと高さガイド11の間に残存させてもよい。これにより、凸状部22の形状を光学樹脂12に転写させる。凸状部22は、上記した所定高さに光学樹脂12の所定厚さを合わせたよりも低い高さを有する。つまり、凸状部22の表面21aからの高さは、高さガイド11の光学基板1の表面からの高さよりも低い。そのため、凸状部22は、その形状を光学樹脂12に転写させたときに、形成される凹部7の底部分を光学基板1の表面から離間して位置させ、その間に配置される下部ミラー4aなどに凸状部22を干渉させないようにされる。また、凸状部22は、その側面の一方を傾斜面とし、かかる傾斜面の転写によってミラー面5を形成する。
【0019】
なお、モールド20の材料としては、上記したように柔軟な材料であると、凸状部22などを含む形状に精密に造形することも容易となる。例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に代表されるシリコーンエラストマなどが好適に使用できる。これらの材料の中には、ガス透過性に優れているものも多く、光学樹脂12からの気泡の除去を容易にすることもできる。
【0020】
次に、モールド20の凸状部22を光学樹脂12に押し込んだまま、光学樹脂12を硬化させる(S4:硬化工程、図3(d)参照)。光学樹脂12を光硬化性樹脂とした場合はモールド20を介して光を照射して硬化させる。つまり、この場合は、モールド20の材料としては光学樹脂12を硬化させるために照射する光に対して透明なものを用いる。照射する光としては例えば紫外線を用いる。この点、上記したPDMSをモールド20の材料として好適に使用し得る。なお、下部ミラー部4や導波路等に悪影響を与えない範囲で、熱硬化などその他の公知の硬化方法を用いてもよい。
【0021】
最後に、モールド20を脱離させる(S5:脱離工程、図3(e)参照)。これによって、光学樹脂12にミラー面5を有する凹部7が形成される。なお、形成されるミラー面5の高さ方向の寸法精度としては、大きくとも15μm以下とすることができる。なお、凹部7の水平方向(図3紙面左右及び手前奥方向)の位置は、モールド20と光学基板1の両者の複数個所にアライメントマークを設けておき、転写工程(S3)においてこれらを合わせるなど、公知の技術によって正確な位置とすることができる。
【0022】
図4(a)に示すように、高さガイド11としては、凹部7を形成する部分の周囲の構造物をそのまま用いてもよい。例えば、凹部7を形成するための、光学樹脂12を付与する空間13の端面に上部導波路6の断面を露出させ、上部導波路6の周囲の樹脂層2を高さガイドとする。これによって、空間13に光学樹脂12を付与して凹部7を形成すれば、凹部7の側面の一部に上部導波路6の断面を露出させ、凹部7のミラー面5からの光を上部導波路6に導くことができる。
【0023】
また、同図(b)に示すように、空間13には光学樹脂12の逃げ部14を接続させることも好ましい。逃げ部14は、例えば、下部ミラー部4の上部にある空間13に接続されて、高さガイド11の間を通って上部導波路6の両側部に沿って、紙面右側に向けて延びている。空間13に硬化前の光学樹脂12を付与し、転写工程(S3)でモールド20を近接させて光学樹脂12に凸状部22を押し込むと、空間13に対して余分な光学樹脂12が逃げ部14に流動することになり、気泡を逃げ部14に捕捉させることができる。これによって、凸状部22の形状を正確に転写して凹部7を形成させることができる。
【0024】
[製造実験]
次に、上記したような方法で、凹部7を実際に形成した実験結果について図5及び図6を用いて説明する。
【0025】
図5に示すように、Siウエハーからなる光学基板1の上に樹脂層2によって高さガイド11を設け、その間に空間13と逃げ部14を形成させて実験用の構造体50を得た。なお、かかる構造体においては、実験に不要となる下部ミラー部4及び導波路は形成しなかった。なお、モールド20の凸状部22の高さは26μm、高さガイド11の上端面から光学基板1の表面までの高さは44μmとした。また、空間13の光進行(紙面左右)方向の寸法を271μm、幅を700μmとし、逃げ部14においては上面から見て略くさび形であるが外側よりも内側へ向けてより開いたくさび形形状を与えた。
【0026】
図6に示すように、光学樹脂12を付与し、モールド20による転写、硬化、脱離を経て得られた凹部7(図3参照)の断面プロファイルを計測し、モールド20の凸状部22の形状と比較した。凹部7の形成を2回行ったが、どちらも凸状部22の形状と非常に近い形状となった。つまり、凹部7に形成されるミラー面5の光学基板1からの高さ位置を正確に形成できた。
【0027】
以上、本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0028】
1 光学基板
2 樹脂層
3 下部導波路
4 下部ミラー部
4a 下部ミラー
5 ミラー面
7 凹部
10 光接続構造
S1 高さガイド形成工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6