(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162833
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】画像処理装置、読取装置、画像形成装置および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20231101BHJP
H04N 1/407 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H04N1/04 D
H04N1/04 101
H04N1/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073501
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小山 忠明
(72)【発明者】
【氏名】中澤 政元
(72)【発明者】
【氏名】橋本 歩
【テーマコード(参考)】
5C072
5C077
【Fターム(参考)】
5C072AA01
5C072BA19
5C072BA20
5C072CA07
5C072CA20
5C072QA16
5C077LL19
5C077MM03
5C077MM04
5C077MM21
5C077MP08
5C077PP25
5C077PP32
5C077PP37
5C077PP38
5C077PP44
(57)【要約】
【課題】不可視光が用いられる設定の場合に、対象物の原物の色づき方に合わせた画像生成モードの選択になるようにすること。
【解決手段】本発明にかかる画像処理装置は、少なくとも不可視光を対象物に照射する光源と、可視光波長域および不可視光波長域に感度を有する画像センサと、画像センサが出力する画像情報を基に画像を生成する画像処理部と、単一の色の画像である単一色画像を生成する単一色画像生成モードに画像処理部を切り替える切替部と、不可視光を照射する動作モードが選択されると、切替部により画像処理部を単一色画像生成モードへ切り替える制御部と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも不可視光を対象物に照射する光源と、
可視光波長域および不可視光波長域に感度を有する画像センサと、
前記画像センサが出力する画像情報を基に画像を生成する画像処理部と、
単一の色の画像である単一色画像を生成する単一色画像生成モードに前記画像処理部を切り替える切替部と、
前記不可視光を照射する動作モードが選択されると、前記切替部により前記画像処理部を前記単一色画像生成モードへ切り替える制御部と、
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、複数の画像生成モードを有し、
前記複数の画像生成モードは、RGBカラー画像を生成するカラー画像生成モードを含む
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像の地肌レベルを補正する地肌補正処理部を有し、
前記不可視光を照射する動作モードが選択された場合、前記単一色画像の地肌レベルが補正される、
請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記単一色画像の濃度を補正する印刷用補正処理部を有し、
前記不可視光を照射する動作モードが選択された場合、前記単一色画像の濃度が補正される、
請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記不可視光を照射する前記光源は、近赤外光源であり、
前記画像センサは、前記不可視光波長域として赤外波長域に感度を有する、
請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像センサは、赤外波長域にピーク感度を有する画素を有し、
前記画像処理部は、前記画像センサから出力される赤外画像情報を基に前記単一色画像を生成する
請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記地肌補正処理部の補正レベルを設定する設定部を有し、
前記設定部の前記補正レベルの設定が変更されると、前記単一色画像の前記地肌レベルが前記変更した値に補正される、
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記単一色画像生成モードは、単一色画像として白黒2値の画像を生成する、
請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記単一色画像生成モードは、単一色画像として単一色の多値画像を生成する、
請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記切替部は、前記単一色画像生成モードで画像の生成が行われた後、前記画像処理部を前記単一色画像生成モードから前記単一色画像生成モード以外のモードに切り替える、
請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項11】
請求項1または2に記載の画像処理装置において、
前記光源と前記画像センサとをスキャナとして備える、
読取装置。
【請求項12】
請求項1または2に記載の画像処理装置において、
前記光源と前記画像センサとをスキャナとして有し、
前記画像処理部の出力画像に基づき画像を形成する画像形成部を有する、
画像形成装置。
【請求項13】
対象物の画像処理方法であって、
少なくとも不可視光を前記対象物に照射するステップと、
可視光波長域および不可視光波長域に感度を有する画像センサが前記対象物の画像情報から出力するステップと、
前記画像センサが出力する前記画像情報を基に画像を生成するステップと、
前記不可視光を照射する動作モードが選択されると、単一の色の画像である単一色画像を生成する単一色画像生成モードに切り替えるステップと、
を含む画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、読取装置、画像形成装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、公的証明書などにおいて、可視光下では認識できない潜像が施されているものがある。潜像は、赤外光などの不可視光を照射する読取装置に読み取らせることで、読取装置の出力画像で目視可能になり、真贋性を判定することができるようになる。
【0003】
特許文献1には、監視カメラの夜間撮影モードで赤外画像の見づらさを解消するための技術が開示されている。開示の技術は、赤外光画像と可視カラー画像とを合成することにより画像の視認性を向上させるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般に、可視光を用いた画像生成モードが選択されているため、不可視光を用いた画像出力を行う場合には、都度、画像生成の設定を変更しなければならない。設定の変更が行われずに不可視光を用いた画像出力が実施されると、可視光を用いた場合のカラーの設定のままで画像処理が行われてしまう。この場合、出力画像の見た目が、対象物の原物の見た目とは異なる不自然な色づき方をして、画像の確認時に大きな違和感を与えるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、不可視光が用いられる設定の場合に、対象物の原物の色づき方に合わせた画像生成モードの選択になるようにすることが可能な画像処理装置、読取装置、画像形成装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる画像処理装置は、少なくとも不可視光を対象物に照射する光源と、可視光波長域および不可視光波長域に感度を有する画像センサと、前記画像センサが出力する画像情報を基に画像を生成する画像処理部と、単一の色の画像である単一色画像を生成する単一色画像生成モードに前記画像処理部を切り替える切替部と、前記不可視光を照射する動作モードが選択されると、前記切替部により前記画像処理部を前記単一色画像生成モードへ切り替える制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不可視光が用いられる設定の場合に、対象物の原物の色づき方に合わせた画像生成モードの選択になるようにすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる画像処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、一般的なシリコンの画像センサの分光感度特性の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、複数色画像生成モードと単一色画像生成モードとの出力画像の比較例を示す図である。
【
図4】
図4は、画像処理装置による画像処理フローの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、一般用紙と基準白板との分光反射特性の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例の変形例1にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、地肌補正処理を含む場合と含まない場合の出力画像の比較例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例の変形例2にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、一般的なシリコン製の画像センサの分光感度特性(
図2)と、NIR光源の発光分布特性との関係を示した図である。
【
図14】
図14は、実施例の変形例3にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
【
図16】
図16は、R画素、G画素、B画素の分光感度特性(
図2)と、IR画素の分光感度特性とを示した図である。
【
図17】
図17は、実施例の変形例4にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、実施例の変形例5にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
【
図20】
図20は、補正値を使用して地肌補正処理を行う場合と、補正値を使用しない場合の出力画像の比較例を示す図である。
【
図21】
図21は、実施例の変形例6にかかる読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
【
図22】
図22は、単一色多値画像と単一色2値画像との比較例を示す図である。
【
図23】
図23は、実施例の変形例7にかかる読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
【
図24】
図24は、単一色多値画像と単一色2値画像との比較例を示す図である。
【
図25】
図25は、実施例の変形例8にかかる読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
【
図26】
図26は、第2の実施の形態にかかる画像形成装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、画像処理装置、読取装置、画像形成装置および画像処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる画像処理装置の構成の一例を示す図である。
図1に示される画像処理装置1は、制御部11と、切替部12と、画像処理部13とを有する。制御部11と切替部12、および、切替部12と画像処理部13は、信号線などで接続されている。なお、撮像部2は、画像処理装置1の基板に搭載されてもよいし、画像処理装置1の外部端子に通信ケーブルを介して接続されてもよい。
【0011】
撮像部2は、光源21および画像センサ22を有する。光源21は、対象物Pに少なくとも不可視光を照射することが可能な光源を有する。また、光源21は、対象物Pに可視光を照射する光源を含んでもよい。画像センサ22は、可視光波長域および不可視光波長域に感度を有するCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary MOS)などの画像センサである。適宜、R(Red)画素と、G(Green)画素と、B(Blue)画素との3色の画素を有する画像センサを用いて説明するが、少なくとも2色以上のカラーであれば適用可能である。
【0012】
撮像部2は、制御部11から撮像開始の要求信号を受信すると、指定された動作モードで撮像を開始し、画像情報を画像処理部13に送信する。画像処理部13は、撮像部2から出力される画像情報を基に、撮像部2の動作モードに対応する画像生成モードで画像処理を行う。
【0013】
ここで、撮像部2の動作モードには、可視画像情報を出力する第1動作モードと、不可視画像情報を出力する第2動作モードとがある。可視画像情報は、可視光下において対象物Pからの反射光を画像センサ22が受光することで出力される画像情報である。不可視画像情報は、不可視光下において対象物Pからの反射光を画像センサ22が受光することで出力される画像情報である。
【0014】
一例として、撮像部2は第1動作モードにおいて、光源21の不可視光の点灯をオフにして対象物Pを撮像し、画像センサ22から対象物Pの可視画像情報を出力する。光源21が可視光光源を有する場合は、さらに可視光の点灯をオンにする。また、撮像部2は第2動作モードにおいて、光源21の不可視光の点灯をオンにして、画像センサ22から対象物Pの不可視画像情報を出力する。光源21が可視光光源を有する場合は、さらに可視光の点灯をオフにする。
【0015】
また、画像処理部13の画像生成モードには、複数の画像生成モードがある。一例として画像処理部13は、複数色画像生成モードと、単一色画像生成モードとを有する。複数色画像生成モードは、撮像部2からの各色の可視画像情報に色間の感度のバラツキを補正する係数を乗じて各色の出力画像を生成する画像生成モードである。複数の画像生成モードの一例として、RGBカラー画像を生成するカラー画像生成モードがある。単一色画像生成モードは、対象物Pの単一の色の出力画像を生成する画像生成モードである。
【0016】
制御部11は、ユーザなどが設定する操作部から操作命令を受け付ける。制御部11は、操作部から撮像開始命令と動作モードとを受け付け、それぞれに対応する信号を撮像部2に送信する。切替部12は、制御部11から撮像部2に送信される信号が第2動作モードの指示であるかを検出する。切替部12は、第2動作モードの指示を検出すると、画像処理部13に対し、画像生成モードを第2動作モードに対応する画像生成モードに切り替える信号を送信する。例えば画像処理部13の画像生成モードがデフォルトで複数色画像生成モードの場合、複数色画像生成モードから単一色画像生成モードに切り替わる。
【0017】
画像処理部13は、画像センサ22から出力される画像情報に対し、複数色画像生成モードまたは単一色画像生成モードの設定を適用し、その設定を適用した生成画像を出力画像として出力する。
【0018】
(複数色画像生成モードと単一色画像生成モードの違いについて)
図2は、一般的なシリコンの画像センサの分光感度特性の一例を示す図である。
図2に示される分光感度の特性は、R画素と、G画素と、B画素の分光感度を比べたものである。RとGとBとで、それぞれ特性曲線の形が異なるため、可視光を受光する場合に色間で感度のバラツキが生じる。従って同じ光量でも色により電気的に変換される値が異なる。第1動作モードでは、画像処理部13に複数色画像生成モードの設定を適用し、各色の可視画像情報に色間の感度のバラツキを補正する係数を乗じて各色の出力画像を生成する。これにより各色の感度のバラツキが補正され、それらの合成画像は原物に近い色で再現される。
【0019】
また、一般的なシリコンの画像センサは、
図2に示されるように可視光波長域(おおよそ波長400nm~780nm)の他に、不可視光波長域(一例として波長780nm以上)にも感度をもつ。不可視光波長域においては、R画素とG画素とB画素とで何れも特性曲線が略重なり、色間で感度のばらつきが殆ど生じていない。このため、不可視画像情報に対し、画像処理部13で複数色画像生成モードの設定のままで可視光と同様のバラツキ補正を行うと、原物の見た目とは異なる不自然な色づき方をした出力画像が生成される。例えばRGBのうちのGが強調され、全体的に緑がかった出力画像となり、原物と比較すると違和感のある画像となる。
【0020】
図3は、複数色画像生成モードと単一色画像生成モードとの出力画像の比較例を示す図である。
図3(a)~
図3(d)は、不可視画像情報に対して複数色画像生成モードを適用した場合の出力画像の一例である。
図3(e)は、不可視画像情報に対して単一色画像生成モードを適用した場合の出力画像の一例である。
【0021】
可視光下で撮像した画像を出力する場合には、画像センサ22から出力されるR画像情報、G画像情報、およびB画像情報に対し、画像センサ22の色間の感度のバラツキを補正する係数が決定され、その係数が適用される。一方、不可視光下で撮像した画像を出力する場合に、複数色画像生成モードのままで出力画像を生成すると、可視光波長域において有効である係数が適用され、不可視画像においては有効ではないので、例えばRとBに比べてGが強調されてしまう。このような場合に、
図3(d)に示されるように、原物とは異なる緑色に色づいた出力画像となる。
【0022】
一方、不可視光下で撮像した画像を出力する場合において、単一色画像生成モードに切り替えると、出力画像が色付くことはない。
図3(e)は、単一色画像として、例えばG画像情報から生成されたモノクロ画像のみで構成される。R画像情報とB画像情報は使用しないため、モノクロ画像として生成することができ、原物と比較しても違和感がない画像が得られるようになる。
【0023】
また、出力画像を記憶部に保存する場合においては、
図3(d)に示されるような複数色の画像から構成される合成画像ではなく、
図3(e)に示されるような単一色の画像で構成されるため、データ容量が1/3程度の容量となるという利点もある。
【0024】
図4は、画像処理装置1による画像処理フローの一例を示す図である。まず、制御部11は、操作部から撮像開始の要求があるまで待機する(ステップS1)。撮像部2についても、撮像開始の要求があるまで待機状態にあるものとする。
【0025】
制御部11は、撮像開始の要求がない場合(ステップS2:No)、ステップS1の待機状態を維持する。制御部11は、撮像開始の要求があると(ステップS2:Yes)、撮像開始の信号を切替部12を介して撮像部2に送信し、切替部12は、制御部11から送信された信号が第2動作モードで撮像を開始する第2撮像開始信号か、つまり不可視かを検出する(ステップS3)。
【0026】
切替部12は、制御部11が送信した撮像開始信号が第2撮像開始信号であることを検出すると(ステップS3:Yes)、画像処理部13に単一色画像生成モードに切り替える信号を送信し、画像処理部13をデフォルトの複数色画像生成モードから単一色画像生成モードに切り替える(ステップS4)。
【0027】
また、切替部12は、制御部11が送信した撮像開始信号が第2撮像開始信号でない場合には(ステップS3:No)、画像処理部13の設定を切り替えずにデフォルトの設定のままにする(ステップS5)。
【0028】
撮像部2は、画像処理部13の設定後に切替部12から送信された要求信号に対応する動作モードで撮像を開始し(ステップS6)、撮像部2から出力された画像情報に対し、画像処理部13がデフォルトまたは切替後の画像生成モードを適用して画像を生成し(ステップS7)、生成した画像を出力画像として出力する(ステップS8)。
【0029】
なお、出力画像の出力先は、構成に応じて任意に決めてよい。出力先の一例としては、表示部または記憶部などが考えらる。また、紙媒体などへの印字機構を有する構成であれば、印字部なども考えられる。
【0030】
このように画像処理装置1は、撮像部2の動作モードが不可視画像の第2動作モードの場合に、画像処理部13の設定を第2動作モードに対応する出力画像を得る設定に自動的に切り替える。従って、撮像部2が第2動作モードで動作する場合にも、原物と比較しても違和感がない画像が得られるようになる。
【0031】
本実施の形態に示される画像処理装置は、読取装置に対して適用可能である。また、この画像処理装置は、読取装置に限らず車載カメラなどにも適用可能である。以下では、一例として読取装置に適用した場合の実施例について示す。なお、以下において、実施の形態と主に異なる箇所を説明し、同様の説明は適宜省略する。
【0032】
(第1の実施の形態の実施例)
図5は、実施例にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。読取装置はスキャナである。
図5に示されるように、読取装置3は、読取部31と、制御部32と、切替部33と、画像処理部34とを有する。ここで読取部31は撮像部2に対応する。光源311と画像センサ312は、それぞれ、光源21と画像センサ22に対応する。また、制御部32、切替部33、画像処理部34は、それぞれ、制御部11、切替部12、画像処理部13に対応する。
【0033】
読取部31が読み取る対象物は原稿P1とする。原稿P1は、一例としては住民票等の公的証明書である。公的証明書には、真贋を判定するための潜像情報が含まれているものもある。このような原稿P1を一例として説明する。なお、可視光下で目視確認が可能な可視情報と、不可視光を照射して読み取った画像上で確認が可能な潜像情報とを含むものであれば、公的証明書等の原稿に限定されず、その他の形態のものであってもよい。
【0034】
公的証明書等の潜像情報の多くは赤外光による読み取りが可能である。なお、不可視光を赤外光に限定するものではない。不可視光として、紫外或いはX線等の短波長域の光を適用してもよい。
【0035】
一般的なイメージセンサは、近赤外領域(おおよそ750nm~1100nm付近)にも感度を持っている(
図2参照)。そのため、
図7に示されるようにR画素m1、G画素m2、およびB画素m3の画素センサを有する一般的なシリコンイメージセンサを使用する従来の読取装置にも適用できる。
【0036】
画像センサ312は、可視光下において、R画素m1はR波長域の光を読み取ってR画像情報51として可視画像情報を出力し、G画素m2はG波長域の光を読み取ってG画像情報52として可視画像情報を出力し、B画素m3はB波長域の光を読み取ってB画像情報53として可視画像情報を出力する。また、不可視光下においては、R画素m1、G画素m2、およびB画素m3の何れも不可視光波長域の光を読み取り、それぞれ、R画像情報51、G画像情報52、およびB画像情報53として不可視画像情報を出力する。これらの画像情報は、画像処理部34に送信され、画像処理部34において複数色画像生成モードまたは単一色画像生成モードの設定で出力画像が生成される。画像処理部34が出力した出力画像は、読取装置3が有する表示部または記憶部などに出力してもよいし、外部出力端子から外部機器に出力してもよい。
【0037】
実施例の読取装置3は、画像センサ312がRGBの画素を有するため、可視光下では3色の画像情報を取得して合成することでカラーの出力画像が得られる。すなわち、カラースキャナとモノクロスキャナとして利用可能である。さらに、読取装置3は、不可視光の光源を有し、不可視画像情報の出力も可能なため、特殊用途で使用する不可視光スキャナとしても利用可能で、この1台の読取装置で、切り替え併用することができるので利便性の飛躍的な向上が見込まれる。
【0038】
(実施例の変形例1)
実施例の変形例1として、原稿の地肌レベルを補正する地肌補正部を有する読取装置の構成を示す。近年、コンビニなどパブリックスペースの設置端末で、マイナンバーカードを用いた公的証明書の発行が可能になっている。このような場所の設置端末で発行される証明書は、役所で発行されるような厚紙の台紙やカラーの地紋が施されているものとは異なり、一般用紙へ印刷される。このため、設置端末によっては、一般用紙へ印刷される証明書に独自の不正防止機構により真贋判定用の情報を含めるものもある。証明書に含める真贋判定用の情報の1つに、赤外光光源を用いることで読取装置での読み取りが可能となる潜像画像がある。しかし、そのような設置端末で印刷が行われる用紙は、役所で発行されるものと異なり、厳密な規定はない。このため、使用される用紙が見た目上は同じ白色でも、各設置端末で印刷された証明書を、赤外光を用いて読取装置で読み取ると、各設置端末で使用されている用紙により、読取装置から出力される出力画像の地肌が白であったりグレーであったりと、濃度にバラツキが生じることになる。
【0039】
図6は、一般用紙と基準白板との分光反射特性の一例を示す図である。
図6には、一般用紙の一例として、同程度の白色に見える3種類の異なる一般用紙(用紙A、用紙B、および用紙C)の分光反射特性を示している。
【0040】
図6に示されるように、可視光で読み取る場合において同程度の白色の出力画像が得られる場合であっても、赤外光で読み取る場合においては、赤外波長域に示されるように用紙A、用紙B、および用紙Cで分光反射率に大きな差が生じる。
【0041】
このため、赤外光を用いて読取装置で読み取った証明書の画像において、地肌が原物の見た目とは異なる濃度、例えばグレーといった濃度になる場合もある。読取装置から出力される出力画像が、原物の証明書の地肌の濃度とならないことで、保存画像のエビデンスとして違和感を残すこととなる。
【0042】
図7は、実施例の変形例1にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。
図7に示されるように、変形例3の読取装置3は、画像処理部34に地肌補正処理部341を有する。
【0043】
画像処理部34は、第2動作モードにおいて複数色画像生成モードから単一色画像生成モードに切り替わるので、単一色画像生成モードにおいて地肌補正処理部341を動作させる。
【0044】
地肌補正処理部341は、第2動作モードにおいて出力される画像情報に対し、原稿の地肌レベルを補正する地肌補正処理を行う。例えば、地肌補正処理部341は、可視画像において「白」となる領域に対応する不可視画像の領域を、「白」の画像レベルに一律補正することにより、不可視画像でグレーとなる部分を原稿の地肌レベルに補正する。
【0045】
図8は、実施例の変形例1にかかる読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
図8に示されるように、このフローは、
図4に示されるフローに地肌補正の処理が追加されたフローである。
【0046】
図8の全体的なフローであるステップS11~ステップS18は、
図4で説明したステップS1~ステップS8に対応する。
図8のうち、ステップS14において、切替部33が、画像処理部13の複数色画像生成モードを単一色画像生成モードに切り替えた場合、地肌補正処理をオンにする。
【0047】
図9は、地肌補正処理を含む場合と含まない場合の出力画像の比較例を示す図である。
図9(a)、
図9(b)、および
図9(c)は、用紙A、用紙B、および用紙Cを、それぞれ読取装置3において第2動作モードで読み取り、地肌補正処理を行わずに出力した出力画像の一例である。なお、使用する用紙A、用紙B、および用紙Cは、いずれの用紙も見た目上は地肌が白色のものを使用している。
【0048】
図9(a)、
図9(b)、および
図9(c)の何れの出力画像も、地肌補正処理を行わないため、赤外波長域における用紙毎の反射率の違いがそのまま現れて、同じ白色の用紙でも用紙毎に濃度が異なってしまう。
【0049】
これに対し、
図9(d)、
図9(e)、および
図9(f)は、用紙A、用紙B、および用紙Cを、それぞれ読取装置3において第2動作モードで読み取り、地肌補正処理を行って出力した出力画像の一例である。
図9(d)、
図9(e)、および
図9(f)は、何れの出力画像も、地肌補正処理を行っているため、赤外波長域における用紙毎の反射率の違いによる濃度の差が補正され、地肌が原物の見た目と同じ白色になる。
【0050】
このように、地肌補正処理により、例えば地肌領域を白色に飛ばす処理を行うことで、不可視光波長域において反射率が異なる白色の用紙が使用された場合であっても、一律的に地肌を白にすることができるようになる。
【0051】
なお、ここでは用紙の地肌が白色であるものとし、地肌の画像レベルを一律的に白としたが、白に限定するものではない。用紙がもつ地肌の濃度や、用紙に印字されている黒の文字情報に応じて濃度を変更してもよい。例えば黒を0レベル、白を255レベルとすると、画像レベルをやや落として200~230前後のレベルとしてもよいし、さらに画像レベルを低くして黒い文字情報などの濃度すなわち視認性を損なうことなく地肌を一定レベルに補正することも可能である。
【0052】
このように変形例1の構成にすることより、第2動作モードで読み取りを行った不可視画像に地肌補正が実施される。使用される用紙の種類が決められたものでない場合でも、原物の証明書の見た目通りの出力画像が得られるので、この不可視の出力画像は、可視の保存画像のエビデンスとなり得る。
【0053】
(実施例の変形例2)
実施例の変形例2として、印刷に適した画像補正を行う印刷用補正処理部を有する読取装置の構成を示す。原稿に潜像されている潜像情報を、不可視光を用いて読取装置で読み取り、その出力画像を紙などに印刷するケースにおいて、潜像情報が視認できる程度でよけれは、潜像情報の濃度は薄くても問題はないが、潜像情報がコード情報などである場合、濃度が薄いとコードの読み取りエラーになるため、濃度の補正が必要になる。そこで、変形例2では、潜像情報を印刷する場合に潜像情報の濃度補正ができるように印刷用補正処理部を加えた構成を示す。
【0054】
図10は、実施例の変形例2にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。
図10に示されるように、読取装置3の画像処理部34に印刷用補正処理部342を有する。
【0055】
画像処理部34は、複数色画像生成モードから単一色画像生成モードに切り替わるので、単一色画像生成モードにおいて印刷用補正処理部342を動作させる。
【0056】
印刷用補正処理部342は、画像処理部34において印刷に適した画像補正を行う。
【0057】
図11は、実施例の変形例2にかかる読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
図11に示されるフローは、
図8に示されるフローに印刷用補正処理を追加した点で異なる。
図11のステップS24において、ステップS14の処理にさらに印刷用補正処理を追加している。
【0058】
ステップS24では、切替部33が、画像処理部13の複数色画像生成モードを単一色画像生成モードに切り替えた場合に、さらに印刷用補正処理をオンにする。
【0059】
図12は、印刷用補正処理の説明図である。
図12(a)は、ある文書であり、コード情報が不可視インクにて潜像している。
図12(b)は、
図12(a)に示される文書を不可視光を用いて読取装置3で読み取り、出力される不可視画像情報を、印刷用補正処理を行わずに紙出力した場合の一例である。潜像情報を視認することのみが目的であれば、
図12(b)に示されるように適度な濃度でコード情報x1が出力されても問題はない。
【0060】
しかし、複数の人が紙に印刷されたコード情報を各自のモバイルカメラなどの撮像デバイスで読み取って利用する場合、そのコード情報は、任意の撮像デバイスで認識可能なように、背景の白、ドットの黒ともに適切なレベルに補正処理しなければ、読取りができない。
【0061】
図12(b)に示される状態は、コード情報x1の部分が128レベルのグレーで、それ以外は255レベルの白である。この例に示される画像濃度では、紙に印刷されたコード情報を撮像デバイスで読み取っても認識は困難である。
【0062】
一方、画像処理部34で印刷用補正処理を実施すると、
図12(c)に示されるように、黒ドットを高濃度に、背景部分は低濃度に補正処理することができ、各自のモバイルカメラでのコード情報の認識率を高めることが可能である。
図12(c)に示される例では、コード情報x1の部分が16レベルの黒で、それ以外は200レベルの白に補正されている。
【0063】
このように、印刷用補正処理により、潜像情報がコード情報のように他のデバイスで読み取るものである場合には、認識率を高めることが可能になる。
【0064】
(実施例の変形例3)
可視光波長域と赤外波長域において異なる吸収透過特性を示す物質を使って原稿に印字を行うことにより、目視ができない潜像情報を埋め込むことが可能である。汎用的な画像センサは赤外光を読み取ることが可能であるため、赤外光での読取モードで単一色画像を出力することで、埋め込まれた潜像情報を可視化することが可能である。そこで、実施例の変形例3として、光源311に近赤外光光源(NIR光源)を使用する場合の読取装置の構成について説明する。
【0065】
図13は、一般的なシリコン製の画像センサの分光感度特性(
図2)と、NIR光源の発光分布特性との関係を示した図である。一般的な画像センサの画素を構成するシリコンは、
図13に示されるように可視光波長域に加えて、不可視である赤外光領域にも感度を有している。また、NIR光源は、赤外光領域の光であり、人間の目には認識することはできないが、画像センサでは受光し画像化することが可能である。このことから、不可視光として近赤外光源を使用することが有効となる。
【0066】
図14は、実施例の変形例3にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。
図14に示されるように、読取装置3の光源311に近赤外光源311aを使用する。
【0067】
第1動作モードでは、画像センサ312が可視光下でRGBの各画素で原稿P1を読み取り、RGB各色分の画像情報を出力する。また、第2動作モードでは、原稿P1に近赤外光が照射され、画像センサ312がRGBの各画素で原稿P1を単色で読み取る。この場合も、単色の画像情報が3色分出力される。第2動作モードでも3色分の画像情報が出力されるが、第2動作モードでは画像処理部34が単一色画像生成モードの設定に切り替わっているため、3色分のうちの一つの画像情報をモノクロ画像として出力したり、3色分の各画像情報をモノクロになるように調整して出力したりすることができ、複数色画像生成モードとは異なる方法で画像が生成される。
【0068】
図15は、実施例の変形例3にかかる読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
図15に示されるフローは、
図8に示されるフローのステップS13を、赤外光読取モードの判定(ステップS23)に置き換えたものである。なお、
図15に示す例では地肌補正処理も含めていないが、地肌補正処理が含まれてもよい。
【0069】
このように、汎用的な画像センサを使用することで、より容易で低コストな読取装置において、同様の効果を得ることができる。
【0070】
(実施例の変形例4)
実施例の変形例4として、R画素、G画素、B画素の他に、近赤外波長域にピーク感度を有するIR画素を設けた場合の読取装置の構成について説明する。
【0071】
図16は、R画素、G画素、B画素の分光感度特性(
図2)と、IR画素の分光感度特性とを示した図である。
図15に示されるように、IR画素は、可視光波長域の感度は低く、赤外波長域で感度がピークになる。
【0072】
図17は、実施例の変形例4にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。
図17に示されるように、読取装置3の画像センサ312aは、R画素m1、G画素m2、およびB画素m3とは別の感度特性をもつIR画素m4を有する。光源311は、赤外波長域の光を含む光源であれば、可視光と赤外光とを含む光源でもよい。
【0073】
第1動作モードでは、画像センサ312aがRGBの各画素(R画素m1、G画素m2、B画素m3)で原稿P1を読み取り、RGB各色分の画像情報(R画像情報51、G画像情報52、B画像情報53)を出力する。また、第2動作モードでは、画像センサ312aがIR画素m4で原稿P1を単色で読み取る。第2動作モードでは画像処理部34が単一色画像生成モードの設定に切り替わっているため、IR画素m4の画像情報54をモノクロ画像として出力することができる。ここで、IR画素m4の画像情報54は赤外画像情報に相当する。
【0074】
なお、
図17に示される読取装置のような構成の場合には、第1動作モードも第2動作モードも共に、光源311を点灯し、R画素m1、G画素m2、B画素m3、およびIR画素m4でそれぞれ読み取らせた画像情報51、52、53、54を画像処理部34に出力するように設定すれば、可視画像と不可視画像を、1回のスキャンで取得することが可能になる。画像処理部34は、R画素m1、G画素m2、およびB画素m3から出力される3色の画像情報51、52、53に対しては複数色画像生成モードの設定で可視画像として出力し、IR画素m4から出力される単色の画像情報54に対しては単色画像生成モードの設定でモノクロ画像として出力する。
【0075】
証明書の真贋性確認用のエビデンス画像を取得する際、可視画像も同時に取得することで、オリジナルの証明書画像も残すことができる。現状、役所などの申請にはオリジナル原稿のコピー、有事の際の対応には真贋性確認画像がそれぞれ必要になるため、これらを1度のスキャンで同時に取得可能となることで、より利便性が向上する。
【0076】
(実施例の変形例5)
実施例の変形例5として、地肌補正処理の補正レベルが変更可能な読取装置の構成を示す。
【0077】
図18は、実施例の変形例5にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。
図18に示されるように、変形例5の読取装置3は、「設定部」として地肌補正レベル設定部41を有する。
【0078】
地肌補正レベル設定部41は、制御部32から設定可能で、地肌補正レベル設定部41に設定された補正値が地肌補正処理部341に設定される。
【0079】
図19は、実施例の変形例5にかかる読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
図19に示されるように、このフローは、
図8に示されるフローに地肌補正レベル設定(ステップS21)が追加されたものである。
【0080】
第2動作モードの場合に、ステップS21において地肌補正レベル設定部41の補正値が地肌補正処理部341に設定される。その後、第2動作モードで読み取り動作が行われて(ステップS16)、画像処理部34で単一色画像生成が実施され、さらに補正値を使った地肌補正処理が実施される(ステップS17)。
【0081】
なお、この例では第2動作モード以外の読取モードで地肌補正を実施していないが、実施していてもよい。
【0082】
図20は、補正値を使用して地肌補正処理を行う場合と、補正値を使用しない場合の出力画像の比較例を示す図である。
図20(a)は、原稿である。
図20(b)は、原稿の不可視画像において固定値で地肌補正を行ったもの、
図20(c)は、原稿の不可視画像において設定を変更した補正値で地肌補正を行ったものである。
【0083】
図20(a)のように、不十分な塗布量の不可視光インクによって文字(A、B、C)が印字された原稿があるとする。このような原稿に地肌補正処理を掛けた場合、
図20(b)のように地肌を通常通り白に飛ばす場合には、潜像情報の可視化はされても、その文字「A、B、C」が薄く視認性が悪い出力画像が得られる。
【0084】
一方、
図20(c)のように、補正レベルをやや低めに設定し直した場合は、地肌は若干暗くなるが、文字も高濃度化され、視認性が格段に改善される。ここでは文字を一例に説明したが、潜像情報がコード情報である場合には、視認性が悪いと認識性能へ影響を及ぼす。よって、地肌補正レベルを任意に変更可能とすることで、可視化後の潜像情報が取り扱いやすくなる効果が得られる。
【0085】
(実施例の変形例6)
実施例の変形例6として、単一色画像モードを単一色2値画像生成モードとする場合の動作について説明する。単一色画像生成モードには、単一色多値画像生成モードと単一色2値画像生成モードとがある。このうち、単一色多値画像生成モードは、単一色多値(グレースケールとも呼ばれる)画像を生成するモードである。単一色2値画像生成モードは白黒2値の画像を生成するモードである。
【0086】
図21は、実施例の変形例6にかかる読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
図21に示されるように、このフローは、これまでの各画像処理フローのステップS14において単一色画像を単一色2値画像に設定したフローとなっている。
【0087】
図22は、単一色多値画像と単一色2値画像との比較例を示す図である。
図22(a)は、原稿である。
図22(b)は、原稿の不可視画像を多値で生成したもの、
図22(c)は、原稿の不可視画像を2値で生成したものである。画素あたり多値画像によって構成されたものと、2値画像によって構成されたものとでは、潜像情報を可視化する観点ではどちらも同等である。しかし、
図22(b)の画像のように、多値の場合は文字と背景とが共に多ビットの情報から構成されるが、
図22(c)の画像のように、2値の場合は文字は黒、背景は白といった1ビットの情報から構成される。このため、単一色2値の場合は、背景が白一色のため広い画像範囲が圧縮可能となり、より高い圧縮率を得ることができ、画像の容量を小さく抑えられることが可能である。
【0088】
(実施例の変形例7)
実施例の変形例7として、単一色画像生成モードを単一色多値画像生成モードとする場合の動作について説明する。
【0089】
図23は、実施例の変形例7にかかる読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
図23に示されるように、このフローは、これまでの各フローのステップS14において単一色画像を単一色多値画像に設定したフローとなっている。
【0090】
図24は、単一色多値画像と単一色2値画像との比較例を示す図である。
図24(a)は、原稿である。
図24(b)は、原稿の不可視画像を2値で生成したもの、
図24(c)は、原稿の不可視画像を多値で生成したものである。
【0091】
図24(c)に示されるロゴマークなどのように、濃度自体がデザインになっているものや、濃度の差異が意味をもつものは、2値にしてしまうと画像を再現することができなくなる。そこで、濃度に意味のあるものは、単一色多値画像で画像生成を行うことで、埋め込まれた不可視情報を、より忠実に再現する。
【0092】
(実施例の変形例8)
単一色画像生成モードでの動作完了後に、単一色画像生成モード以外のモード、例えばデフォルトのモードに切り替える場合の制御を示す。読取装置の場合、一般オフィスや公共スペースなどでは、不可視光でスキャンするよりも可視光でスキャンするカラースキャンまたはモノクロスキャンもしくはコピー動作が選択されるケースが多い。そのため、比較的特殊用途の不可視光スキャンモードではなく、例えばフルカラーモードや個別にデフォルト設定しているモードへ切り替わるようにすることで、ユーザの利便性を高める。
【0093】
図25は、実施例の変形例8にかかる読取装置の画像処理フローの一例を示す図である。
図25に示されるように、このフローは、画像出力後に単一色画像生成モード以外のモードに切り替えるステップS19を有する。なお、ここでは画像出力後にモードを切り替える例を示したが、動作に支障のない範囲であれば各種画像処理の後であってもよい。また、続けて不可視光読取を実施するケースも想定し、画像出力とモード切替の間にタイマなどによって一定時間の待機時間を設けてもよい。
【0094】
なお、スキャナは利便性を重視しデフォルト設定が自動カラーモード(原稿を読み取ってカラーかモノクロかを判別)あるいはフルカラーモードに設定されていることが多く、不可視光で読み取る際に意図せずそのままスキャンしてしまうことで、目視とは異なる不自然な色づきや濃度処理が施された画像として出力されるケースがあり、使用者に大きな違和感を与えてしまうという問題があった。その場合には正しいモードに設定し直し再度不可視光読み取りを行う必要があるが、それ自体が非常に手間であることや、預かった証明書のスキャン/コピー動作のみを確認後にすぐに所有者へ返却してしまうようなケースの場合には再読み取りが行えなくなってしまう。本実施の形態では、不可視光を用いて画像を生成する第2動作モードが選択された時点で単一色画像生成モードに自動的に切り替わる。このため、使用者に設定切り替えの手間をかけることなく、不可視光を用いた動作モードに最適な画像生成モードの設定が自動的になされ、出力画像の不自然な色付きを防止することができる。また、実施の形態に示す画像処理装置は、動体、静止物問わず不可視光を用いる動作モードの選択時に最も適した単一色画像生成モードに切り替えられるため、画質が向上する。また、1度目の読み取りの時点で正しい設定でスキャンやコピーを行うことが可能になる。
【0095】
(第2の実施の形態)
図26は、第2の実施の形態にかかる画像形成装置の構成の一例を示す図である。
図26において、画像形成装置の一例として示される複写機100は、読取装置としての機能を有する自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)3と、画像形成部4と、給紙部5とを有する。
【0096】
給紙部5は、用紙サイズの異なる記録紙を収納する給紙カセット521、522と、給紙カセット521、522に収納された記録紙を画像形成部4の画像形成位置まで搬送する各種ローラからなる給紙手段523とを有している。
【0097】
画像形成部4は、露光装置431と、感光体ドラム432と、現像装置433と、転写ベルト434と、定着装置435とを有する。画像形成部4は、ADF3内部の読取部により読み取られた原稿の画像データに基づいて、露光装置431により感光体ドラム432を露光して感光体ドラム432に潜像を形成し、現像装置433により感光体ドラム432に異なる色のトナーを供給して現像するようになっている。そして、画像形成部4は、転写ベルト434により感光体ドラム432に現像された像を給紙部5から供給された記録紙に転写した後、定着装置435により記録紙に転写されたトナー画像のトナーを溶融して、記録紙にカラー画像を定着するようになっている。
【0098】
このように、画像形成装置において、上述した実施例または変形例の読取装置の適用が可能である。
【0099】
以上、本発明の各実施の形態を説明したが、各実施の形態、実施例、および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態、実施例、および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの各実施の形態、実施例、および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1 画像処理装置
2 撮像部
11 制御部
12 切替部
13 画像処理部
21 光源
22 画像センサ
P 対象物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】