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特開2023-163099有機酸および界面活性剤を含む除菌剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163099
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】有機酸および界面活性剤を含む除菌剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/02 20060101AFI20231101BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20231101BHJP
   A01N 37/06 20060101ALI20231101BHJP
   A01N 37/04 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 31/191 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20231101BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A01N37/02
A01P3/00
A01N37/06
A01N37/04
A61K31/19
A61K31/191
A61K31/194
A61P17/00 101
A61K8/362
A61K8/365
A61K8/39
A61K8/60
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098902
(22)【出願日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2022073524
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397056042
【氏名又は名称】セッツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西谷 巧太
(72)【発明者】
【氏名】國武 広一郎
【テーマコード(参考)】
4C083
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C083AB031
4C083AB032
4C083AC102
4C083AC291
4C083AC292
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD221
4C083AD222
4C083AD252
4C083BB04
4C083CC24
4C083DD21
4C083DD23
4C083DD27
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206DA36
4C206KA12
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA54
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA90
4H011AA02
4H011BA05
4H011BB06
4H011BC06
4H011DA02
4H011DA13
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、ノン・低アルコールタイプであっても、除菌効果の高い除菌剤組成物を提供することである。
【解決手段】除菌成分として有機酸および界面活性剤を含む液体除菌剤組成物であって、前記有機酸は、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、及び乳酸からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記液体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、0.2質量%以上1質量%以下であり、前記界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記液体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、0.01質量%以上5質量%以下であり、水、又は濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液を含有し、前記液体除菌剤組成物のpHが、3.0以上4.0以下である、液体除菌剤組成物とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除菌成分として有機酸および界面活性剤を含む液体除菌剤組成物であって、前記有機酸は、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、及び乳酸からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記液体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、0.2質量%以上1質量%以下であり、前記界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記液体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、0.01質量%以上5質量%以下であり、水、又は濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液を含有し、前記液体除菌剤組成物のpHが、3.0以上4.0以下である、液体除菌剤組成物。
【請求項2】
さらに、有機酸塩を含有する液体除菌剤組成物であって、前記有機酸塩は、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、及びクエン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記液体除菌剤組成物中の有機酸塩の総量が、0.01質量%以上1質量%以下である、請求項1に記載の液体除菌剤組成物。
【請求項3】
大腸菌および黄色ブドウ球菌を、対数減少値(LR)が3.0以上で除菌可能である、請求項1又は2に記載の液体除菌剤組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材。
【請求項5】
請求項3に記載の液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材。
【請求項6】
除菌成分として有機酸および界面活性剤を含む固体除菌剤組成物であって、前記有機酸は、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記固体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、3質量%以上96質量%以下であり、前記界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記固体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、3質量%以上96質量%以下である、固体除菌剤組成物。
【請求項7】
水溶液中の有機酸の濃度が0.2質量%以上1質量%以下になるように、前記固体除菌剤組成物を水もしくは濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させた場合、その溶液のpHが、3.0以上4.0以下となることを特徴とする、請求項6に記載の固体除菌剤組成物。
【請求項8】
さらに、有機酸塩を含有する固体除菌剤組成物であって、前記有機酸塩は、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、及びクエン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記固体除菌剤組成物中の有機酸塩の総量が、1質量%以上60質量%以下である、請求項6又は7に記載の固体除菌剤組成物。
【請求項9】
さらに、賦形剤を含む、請求項6又は7に記載の固体除菌剤組成物。
【請求項10】
さらに、賦形剤を含む、請求項8に記載の固体除菌剤組成物。
【請求項11】
請求項6に記載の固体除菌剤組成物を、水又は濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させた液体除菌剤組成物であって、前記液体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、0.2質量%以上1質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、0.01質量%以上5質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物のpHが、3.0以上4.0以下である液体除菌剤組成物。
【請求項12】
請求項8に記載の固体除菌剤組成物を、水又は濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させた液体除菌剤組成物であって、前記液体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、0.2質量%以上1質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、0.01質量%以上5質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物のpHが、3.0以上4.0以下である液体除菌剤組成物。
【請求項13】
請求項9に記載の固体除菌剤組成物を、水又は濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させた液体除菌剤組成物であって、前記液体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、0.2質量%以上1質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、0.01質量%以上5質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物のpHが、3.0以上4.0以下である液体除菌剤組成物。
【請求項14】
請求項10に記載の固体除菌剤組成物を、水又は濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させた液体除菌剤組成物であって、前記液体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、0.2質量%以上1質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、0.01質量%以上5質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物のpHが、3.0以上4.0以下である液体除菌剤組成物。
【請求項15】
請求項11に記載の液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材。
【請求項16】
請求項12に記載の液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材。
【請求項17】
請求項13に記載の液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材。
【請求項18】
請求項14に記載の液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材。
【請求項19】
請求項1又は2に記載の液体除菌剤組成物、又は請求項11に記載の液体除菌剤組成物を用いた環境表面、手、又は肌の除菌方法。
【請求項20】
請求項4に記載の除菌用基材を用いた環境表面、手、又は肌の除菌方法。
【請求項21】
請求項15に記載の除菌用基材を用いた環境表面、手、又は肌の除菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機酸および界面活性剤を含む除菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細菌やウイルスによる新興感染症および再興感染症が問題になっており、感染症対策として環境表面や手指を除菌する機会が顕著に増えてきている。そのため感染症対策に使用する除菌剤においては手肌荒れがしない、お子様からお年寄りまで安心して使える等のニーズが高まっている。
【0003】
そこで、手肌荒れが少ない、ノン・低アルコールタイプの除菌剤に注目が集まっているが、ノン・低アルコールタイプでは、アルコールによる除菌効果が期待できないため、十分に満足のいく除菌効果が得られにくいという課題があった。また、十分に満足のいく除菌効果を得るため、除菌剤の有効成分として有機酸を用いると、除菌剤のpHが酸性側となり、手肌荒れや皮膚刺激等の問題を引き起こしやすいという課題もあった。
【0004】
他方、液体状の除菌剤は輸送コストが高く、固体状の除菌剤を使用現場で液体に溶いて使いたいというニーズも高まっている。そして、ノン・低アルコールタイプの液体状の除菌剤は常温で腐敗しやすいため、ノン・低アルコールタイプでは、特に固体状の除菌剤に対するニーズが高まっている。さらに、固体状の除菌剤は購入と消費の間にストック期間を設けることができ、自然災害に備えることができるというメリットもある。
【0005】
これまでの報告では、ノン・低アルコールタイプの除菌剤として、1価の低級アルコールを用いなくても、殺菌力及びウイルス不活化効果に優れる消毒剤を提供することを目的とした、(a)クロルヘキシジンまたはその塩を0.01~1質量%、(b)パラオキシ安息香酸エステルを0.001~0.5質量%、(c)炭素数2~6のカルボン酸を0.1~10質量%、(d)炭素数3~8であり、かつ2価又は3価の多価アルコールを0.1~30質量%含有し、pHが2~5であり、1価の低級アルコールを含まない消毒剤、が知られている(特許文献1)。また、エタノールを使わずとも、誰でも手触り感よく使用できる食品用殺菌剤を提供することを目的とした、焼成カルシウム、多価アルコール(糖アルコールを除く)、および乳酸ナトリウムが配合されてなる水溶液または水分散体であってエタノールを含まないことを特徴とする食品用殺菌剤、が知られている(特許文献2)。
【0006】
さらに、液体に溶いて使用する固体状の除菌剤として、水に対する分散溶解性が高く、食材などの除菌処理に際して、水に添加、混合するだけの簡単な操作で短時間に水中に均一に分散溶解して安定な処理液を調製することができ、作業性がよく、かつ持ち運びや取り扱いが容易で、しかも、次亜塩素酸ナトリウムや酢酸のように食材の風味に影響を与えることがなく、また有機物の存在下でも除菌効果の低下が少なく、処理液が有機物により汚れやすく、次亜塩素酸ナトリウムによる除菌効果が低い魚介類や肉類などの除菌をも効果的に行うことが可能な食品用除菌洗浄剤を提供することを目的とした、粉体状フマル酸の粒子をHLB14~16の親水性ノニオン系界面活性剤で被覆してなり、前記フマル酸を95.0~99.9重量%、HLB14~16の親水性ノニオン系界面活性剤を5.0~0.1重量%を含有することを特徴とする親水性食品用除菌洗浄剤、が知られている(特許文献3)。また、殺菌成分であるサリチル酸の水に対する配合量を抑えて刺激性を低減しつつ、十分な殺菌効力も維持可能な水性殺菌組成物を提供することを目的とした、サリチル酸と、HLB値が15以上のノニオン系界面活性剤、及び/又は香料成分としてリナロール、メントール、テルピネオール、チモール、カルバクロール、及びカルベオールから選ばれた1種以上と、を水に溶解させて成り、前記サリチル酸の配合量が0.1質量%以下であることを特徴とする水性殺菌組成物、が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-063210号公報
【特許文献2】特開2021-166490号公報
【特許文献3】特許第3937810号公報
【特許文献4】特開2018-016620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ノン・低アルコールタイプであっても、除菌効果が高く安心して使える除菌剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、様々な成分を添加して、ノン・低アルコールタイプであって、除菌効果の高い除菌剤組成物について鋭意研究を行ったところ、驚くべきことに、有機酸として、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、及び乳酸からなる群から選ばれる1種または2種以上を用い、かつ、界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を用い、さらに、pHが3.0以上4.0以下に調整することによって、本課題が解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の態様を含み得る。
〔1〕除菌成分として有機酸および界面活性剤を含む液体除菌剤組成物であって、前記有機酸は、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、及び乳酸からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記液体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、0.2質量%以上1質量%以下であり、前記界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記液体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、0.01質量%以上5質量%以下であり、水、又は濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液を含有し、前記液体除菌剤組成物のpHが、3.0以上4.0以下である、液体除菌剤組成物。
〔2〕さらに、有機酸塩を含有する液体除菌剤組成物であって、前記有機酸塩は、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、及びクエン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記液体除菌剤組成物中の有機酸塩の総量が、0.01質量%以上1質量%以下である、〔1〕に記載の液体除菌剤組成物。
〔3〕大腸菌および黄色ブドウ球菌を、対数減少値(LR)が3.0以上で除菌可能である、〔1〕又は〔2〕に記載の液体除菌剤組成物。
〔4〕〔1〕又は〔2〕に記載の液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材。
〔5〕〔3〕に記載の液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材。
〔6〕除菌成分として有機酸および界面活性剤を含む固体除菌剤組成物であって、前記有機酸は、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記固体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、3質量%以上96質量%以下であり、前記界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記固体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、3質量%以上96質量%以下である、固体除菌剤組成物。
〔7〕水溶液中の有機酸の濃度が0.2質量%以上1質量%以下になるように、前記固体除菌剤組成物を水もしくは濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させた場合、その溶液のpHが、3.0以上4.0以下となることを特徴とする、〔6〕に記載の固体除菌剤組成物。
〔8〕さらに、有機酸塩を含有する固体除菌剤組成物であって、前記有機酸塩は、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、及びクエン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、前記固体除菌剤組成物中の有機酸塩の総量が、1質量%以上60質量%以下である、〔6〕又は〔7〕に記載の固体除菌剤組成物。
〔9〕さらに、賦形剤を含む、〔6〕又は〔7〕に記載の固体除菌剤組成物。
〔10〕さらに、賦形剤を含む、〔8〕に記載の固体除菌剤組成物。
〔11〕〔6〕に記載の固体除菌剤組成物を、水又は濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させた液体除菌剤組成物であって、前記液体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、0.2質量%以上1質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、0.01質量%以上5質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物のpHが、3.0以上4.0以下である液体除菌剤組成物。
〔12〕〔8〕に記載の固体除菌剤組成物を、水又は濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させた液体除菌剤組成物であって、前記液体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、0.2質量%以上1質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、0.01質量%以上5質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物のpHが、3.0以上4.0以下である液体除菌剤組成物。
〔13〕〔9〕に記載の固体除菌剤組成物を、水又は濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させた液体除菌剤組成物であって、前記液体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、0.2質量%以上1質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、0.01質量%以上5質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物のpHが、3.0以上4.0以下である液体除菌剤組成物。
〔14〕〔10〕に記載の固体除菌剤組成物を、水又は濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させた液体除菌剤組成物であって、前記液体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、0.2質量%以上1質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、0.01質量%以上5質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物のpHが、3.0以上4.0以下である液体除菌剤組成物。
〔15〕〔11〕に記載の液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材。
〔16〕〔12〕に記載の液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材。
〔17〕〔13〕に記載の液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材。
〔18〕〔14〕に記載の液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材。
〔19〕〔1〕又は〔2〕に記載の液体除菌剤組成物、又は〔11〕に記載の液体除菌剤組成物を用いた環境表面、手、又は肌の除菌方法。
〔20〕〔4〕に記載の除菌用基材を用いた環境表面、手、又は肌の除菌方法。
〔21〕〔15〕に記載の除菌用基材を用いた環境表面、手、又は肌の除菌方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、除菌効果に寄与する有機酸として、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、及び乳酸からなる群から選ばれる1種または2種以上を用い、かつ、除菌効果に寄与する界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種以上を用い、さらに、pHが3.0以上4.0以下の弱酸性に調整することにより、ノン・低アルコールタイプであっても、除菌効果の高い除菌剤組成物を製造することができる。本発明の除菌剤組成物は、ノン・低アルコールタイプであることに加え、手や肌への影響が少ない弱酸性であり、お子様からお年寄りまで安心して使いたい等のニーズに応えることができる。また、固体除菌剤組成物とし、使用現場において液体に溶いて使用することもできるため、輸送コストを抑制したい、購入と使用との間にストック期間を設け、自然災害に備えたい等のニーズにも応えることができる。さらに、pHが3.0以上4.0以下に調整しているため、ノン・低アルコールタイプであるにも関わらず、弱酸性領域において高い除菌効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1~7の液体除菌剤組成物の配合割合と評価結果を示す図である。
図2】実施例8~14の液体除菌剤組成物の配合割合と評価結果を示す図である。
図3】実施例15~20の液体除菌剤組成物の配合割合と評価結果を示す図である。
図4】比較例1~6の液体除菌剤組成物の配合割合と評価結果を示す図である。
図5】比較例7~12の液体除菌剤組成物の配合割合と評価結果を示す図である。
図6】実施例21~25の固体除菌剤組成物の配合割合と評価結果、及び調製した液体除菌剤組成物の評価結果を示す図である。
図7】実施例26~30の固体除菌剤組成物の配合割合と評価結果、及び調製した液体除菌剤組成物の評価結果を示す図である。
図8】実施例31~35、比較例13~14の固体除菌剤組成物の配合割合と評価結果、及び調製した液体除菌剤組成物の評価結果を示す図である。
図9】実施例36~38、比較例15の液体除菌剤組成物の配合割合と評価結果を示す図である。
図10】実施例39、40の固体除菌剤組成物の配合割合と評価結果、及び調製した液体除菌剤組成物の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の除菌剤組成物について順を追って記述する。
本発明において「除菌剤組成物」とは、ノン・低アルコールタイプの除菌剤組成物である。
ここで、「ノン・低アルコールタイプ」とは、ノンアルコールタイプ、又は低アルコールタイプの両方のことを示す造語で、除菌剤組成物の水溶液部分に、濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液を使用したタイプのものを意味し、好ましくは9質量%以下のアルコール含有水溶液を使用したタイプのものを意味し、より好ましくはアルコールを含まない水を使用したタイプのものを意味する。
したがって、本発明の「除菌剤組成物」に含まれるアルコール濃度は0質量%又は10質量%以下と低いので、本明細書中では、本発明の「除菌剤組成物」を「ノン・低アルコールタイプの除菌剤組成物」とも呼ぶこととする。
なお、除菌剤組成物の水溶液部分に使用する濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液は、それだけでは除菌効果はない。
また、このようにアルコール濃度が低いため、本発明の「除菌剤組成物」は食品など口に入るものにも適用することができる。この場合、後述する「有機酸」や「界面活性剤」は食品グレード品(食品添加物として認可されているもの)を用いる。
本発明における「アルコール」とは、除菌剤組成物において一般的なすべてのアルコール、例えば、エタノールやイソプロパノールを意味する。
【0014】
本発明に使用する有機酸として、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、及び乳酸が挙げられ、これらの群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
また、本発明に使用する界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルが挙げられ、これらの群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
これら有機酸及び界面活性剤は、除菌組成物が除菌効果を発揮するのに寄与する有効成分である。
本発明の「除菌剤組成物」には、例えば、水もしくは濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液で溶解した液体除菌剤組成物や、水もしくは濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液で溶解されていない固体除菌剤組成物が含まれる。
前記「液体」とは常温(25℃)で液体の状態を指し、前記「固体」とは常温(25℃)で固体(例えば、粉末、顆粒等)の状態を指す。また、有効成分とは、除菌効果に寄与する有機酸、界面活性剤を指す。
また、詳細については後述するが、液体除菌剤組成物のpHは、3.0以上4.0以下、好ましくは3.1以上3.6以下、より好ましくは3.2以上3.5以下に調節する必要がある。
【0015】
次に、本発明の固体除菌剤組成物、及び液体除菌剤組成物の製造方法について説明をする。
本発明の「固体除菌剤組成物」の製造方法は、通常の固体除菌剤製造時に使用される方法と同じでよく、例えば、有効成分である有機酸や界面活性剤と、後述する各種添加剤を適宜混合する方法が挙げられる。
混合には、V型混合機やリボンミキサー等の混合機を使用することができる。このようにして得られた粉末状の固体除菌剤組成物は、用途に応じて、造粒したり、固形化したりしても良い。
本発明の「液体除菌剤組成物」の製造方法は、固体除菌剤組成物を、水もしくは濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させることにより製造することができる。溶解は、機械で撹拌して行うのが好ましく、撹拌方法は特に制限されないが、ミキサー、コロイドル、パドルミキサー、アジテーター、ホモジナイザーなどを用いて行うことができる。
そして、「液体除菌剤組成物」の製造方法としては、前記のような「固体除菌剤組成物」を介さずに、水もしくは濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に対して、直接、有効成分である有機酸や界面活性剤と後述する各種添加剤を添加して撹拌する方法も挙げられる。撹拌は、機械で撹拌して行うのが好ましく、撹拌方法は特に制限されないが、ミキサー、コロイドル、パドルミキサー、アジテーター、ホモジナイザーなどを用いて行うことができる。
【0016】
本発明の「液体除菌剤組成物」は、ノン・低アルコールタイプの液体の除菌剤組成物であって、除菌効果に寄与する有機酸として、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、及び乳酸からなる群から選ばれる1種または2種以上を含み、その総量は0.2質量%以上1質量%以下、好ましくは0.2質量%以上0.8質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上0.5質量%以下であり、除菌効果に寄与する界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を含み、その総量は0.01質量%以上5質量%以下、好ましくは0.05質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上0.3質量%以下であり、残部が水、もしくは濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液からなり、前記組成物のpHが3.0以上4.0以下であり、好ましくは3.1以上3.6以下であり、より好ましくは3.2以上3.5以下である。
また、本発明の「固体除菌剤組成物」は、ノン・低アルコールタイプの固体の除菌剤組成物であって、除菌効果に寄与する有機酸として、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選ばれる1種または2種以上を含み、その総量は3質量%以上96質量%以下、好ましくは20質量%以上90質量%以下、より好ましくは40質量%以上90質量%以下であり、また、除菌効果に寄与する界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を含み、その総量は3質量%以上96質量%以下、好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上35質量%以下である。ここで、グルコン酸及び乳酸は液体であり、固体除菌剤組成物とするには不向きであるため、固体除菌剤組成物で用いる有機酸の選択肢からは除外される。
【0017】
本発明の「液体除菌剤組成物」では、有機酸は、その総量が0.2質量%以上1質量%以下、好ましくは0.2質量%以上0.8質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上0.5質量%以下となるように添加される。0.2質量%以上であれば、十分な除菌効果が得られ、また、1質量%以下であると、使用感が悪くならず、跡残りなどのおそれが少ない。
本発明の「固体除菌剤組成物」では、有機酸は、その総量が3質量%以上96質量%以下、好ましくは20質量%以上90質量%以下、より好ましくは40質量%以上90質量%以下となるように添加される。3質量%以上であれば、固体除菌剤組成物を水又はアルコール含有水溶液に溶解して得られる液体除菌剤組成物には十分な除菌効果が得られ、また、96質量%以下であると、水又はアルコール含有水溶液への溶解性が良好である。
【0018】
本発明の「除菌剤組成物」中には、除菌成分として界面活性剤が含まれているが、当該界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上である。これらは高HLBであることが好ましく、例えば、HLBが13以上、19以下であることが好ましく、14以上、19以下であることがより好ましく、15以上、19以下であることが特に好ましい。
ここで、HLBとは、界面活性剤中の親水基と親油基のバランスを表しており、公知の測定方法により求めた数値である。例えば、前記界面活性剤のHLB値の算出はアトラス法の算出法を用いることができる。
アトラス法の算出法は、以下の式からHLB値を算出する方法である。
HLB=20×(1-S/A)
S:ケン化価
A:エステル中の脂肪酸の中和価
【0019】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、具体的に、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等が挙げられ、親水性の点から、ショ糖ラウリン酸エステルが特に好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンの平均重合度が、2から12であることが好ましく、4から10であることがさらに好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、合成脂肪酸、動植物油脂由来の脂肪酸のいずれでもよく、炭素数8から18の脂肪酸が好ましく、炭素数8から14の脂肪酸がより好ましく、炭素数10から12の脂肪酸がさらに好ましい。このようなポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、テトラグリセリンカプリル酸エステル、ヘキサグリセリンカプリル酸エステル、ヘキサグリセリンラウリン酸エステル、デカグリセリンカプリル酸エステル、デカグリセリンラウリン酸エステル、デカグリセリンミリスチン酸エステル等が挙げられ、中でもテトラグリセリンラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンラウリン酸エステル、デカグリセリンラウリン酸エステルが好ましい。
【0020】
本発明の「液体除菌剤組成物」では、除菌成分である界面活性剤は、その総量が0.01質量%以上5質量%以下、好ましくは0.05質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上0.3質量%以下となるように添加される。0.01質量%以上であれば、十分な除菌効果が得られ、また、5質量%以下であると、使用感が悪くならず、跡残りなどのおそれが少ない。
本発明の「固体除菌剤組成物」では、除菌成分である界面活性剤は、その総量が、3質量%以上96質量%以下、好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上35質量%以下となるように添加される。96質量%以下であると、水又はアルコール含有水溶液への溶解性が良好である。
【0021】
本発明の「液体除菌剤組成物」において、除菌成分である有機酸及び界面活性剤を除く残部は、水、もしくは濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液、好ましくは、水、もしくは濃度が9質量%以下のアルコール含有水溶液、より好ましくは、水とすることができるが、残部には、後述する各種添加剤を配合することもできる。
なお、濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液だけでは、除菌効果はない。
水は、任意のものでよく、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水などを用いることができる。適宜、溶解性を高めるため、加熱して、温水などにしても良い。
なお、本発明の「固体除菌剤組成物」においては、軽量化や保存性を高めるため、水もしくはアルコール含有水溶液は実質的に含まれない。
【0022】
本発明の「除菌剤組成物」は、その除菌効果を高めるため、使用する際の溶液のpHを、3.0以上4.0以下に調節する必要があり、3.1以上3.6以下であることが好ましく、3.2以上3.5以下であることがより好ましい。この点が本発明における重要な特徴の1つである。このようなpHとすることで、弱酸性領域を維持しながら、十分な除菌効果を発揮することができる。
本発明の「液体除菌剤組成物」では、pHが3.0以上4.0以下となるように調節する必要があり、3.1以上3.6以下であることが好ましく、3.2以上3.5以下であることがより好ましい。
本発明の「固体除菌剤組成物」では、水もしくは低濃度アルコール含有水溶液に除菌成分である有機酸濃度が0.2質量%以上1質量%以下になるように溶解させた場合のpHが、3.0以上4.0以下となるように調節する必要があり、3.1以上3.6以下であることが好ましく、3.2以上3.5以下であることがより好ましい。
なお、当業者であれば、本発明の「除菌剤組成物」のpHは、主に有機酸の量(濃度)と後述する有機酸塩をはじめとする塩基性物質の量(濃度)によって調節可能である。強塩基性を示す水酸化物であっても調節は可能であるが、有機酸塩を用いることでより安全にpHを調節することができる。
【0023】
本発明の「除菌剤組成物」においては、上述した、除菌成分である有機酸、界面活性剤と、水もしくは低濃度アルコール含有水溶液以外に、さらにpH等を調節するため、有機酸塩を含むことが好ましい。そこで、本発明の「液体除菌剤組成物」においては、さらにフマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩及びクエン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上を0.01質量%以上1質量%以下含有することが好ましく、0.02質量%以上0.5質量%以下含有することがより好ましく、0.02質量%以上0.2質量%以下含有することがさらに好ましい。有機酸塩をさらに含ませることで、除菌剤組成物のpHをより安定化し、除菌効果をより高めることができる。
また、本発明の「固体除菌剤組成物」は、水もしくは低濃度アルコール含有水溶液に溶解したときのpHを調整するために、有機酸塩を配合するのが好ましい。有機酸塩として、例えば、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、グルコン酸塩、及びクエン酸塩を挙げることができ、これらの1種または2種以上を配合することができる。
本発明の固体除菌剤組成物中の有機酸塩の含量は、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、3質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。かかる範囲の含量とすることで、固体除菌剤組成物を、水もしくは低濃度アルコール含有水溶液に溶解して得られた液体除菌剤組成物のpHをより安定化し、除菌効果をより高めることができる。
また、本発明の「固体除菌剤組成物」には、賦形剤を配合することができる。賦形剤としては、澱粉、デキストリン、糖類等が挙げられ、これらの1種または2種以上を配合することができる。また、賦形剤としては、デキストリンの1種であるサイクロデキストリンを使用するのが好ましい。
本発明の固体除菌剤組成物中の賦形剤の含量は、0質量%以上60質量%以下であることが好ましく、0質量%以上55質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の「固体除菌剤組成物」を、水又は濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させて、「液体除菌剤組成物」とすることもできる。この場合、前記液体除菌剤組成物中の有機酸の総量が、1質量%以下、好ましくは0.2質量%以上0.8質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上0.5質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物中の界面活性剤の総量が、0.01質量%以上5質量%以下、好ましくは0.05質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上0.3質量%以下であり、前記液体除菌剤組成物のpHが、3.0以上4.0以下、好ましくは3.1以上3.6以下、より好ましくは3.2以上3.5以下の液体除菌剤組成物である。
【0024】
また、本発明の「液体除菌剤組成物」又は「固体除菌剤組成物」において、本発明の所望の効果に影響を与えない範囲で、防腐剤、着色料、酵素、殺菌剤、抗ウイルス剤、キレート剤、消臭剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステル以外の界面活性剤、漂白剤、撥水剤、無機酸塩、上述した以外のpH調整剤、増粘剤、ゲル化剤、成形性向上剤、緩衝剤、消泡剤、滑沢剤、コーティング剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0025】
本発明の「除菌剤組成物」は、ノン・低アルコールタイプであるにも関わらず、十分な除菌効果を奏する。ここで、十分な除菌効果とは、大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方を対数減少値(LR)3.0以上で除菌可能であることを意味する。
例えば、本発明の「液体除菌剤組成物」は、これを被検体に接触させた際に、大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方が対数減少値(LR)3.0以上で除菌することができ、好ましくは3.0~4.5で除菌することができる。また、本発明の「固体除菌剤組成物」は、これを水もしくは濃度が10質量%以下のアルコール含有水溶液に、有機酸の濃度が0.2質量%以上1質量%以下になるように溶解させた場合、溶解させたものを被検体に接触させた際に、大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方が対数減少値(LR)3.0以上で除菌することができ、好ましくは3.0~4.5で除菌することができる。
【0026】
ところで、以上述べたように、本発明の「液体除菌剤組成物」を被検体に接触させると、ノン・低アルコールタイプであるにも関わらず、十分な除菌効果除菌用基材」にも関する。このような除菌用基材の態様としては、例えば、おしぼり、ウェットテッシュ、ウェットシート等が挙げられる。
また、除菌用基材は基材と液体除菌剤組成物とからなり、液体除菌剤組成物の割合は、基材の質量に対して、100質量%以上とすることが好ましく、200質量%以上とすることが更に好ましく、500質量%以下とすることが好ましく、400質量%以下とすることが更に好ましい。
さらに、基材としては、例えば、不織布、織布、編み物地等が挙げられる。基材として不織布を用いる場合、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布などを用いることができる。また、これらの不織布の複合体を用いても良い。
【0027】
本発明の液体除菌剤組成物、又は本発明の固体除菌剤組成物を水又は濃度10質量%以下のアルコール含有水溶液に溶解させた液体除菌剤組成物は、直接、環境表面、手や肌に付けて除菌することができる。すなわち、本発明は、液体除菌剤組成物を用いた環境表面、手、又は肌指の除菌方法を提供する。ここで、「環境表面」とは、除菌剤組成物を適用する環境にある表面のすべてを意味し、例えば、テーブルや机の表面を意味する。
また、環境表面、手や肌を、上述した液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材除菌用基材で拭くことで、環境表面、手や肌の除菌をすることができる。すなわち、本発明は、液体除菌剤組成物を含侵させた除菌用基材除菌用基材を用いた、環境表面、手、又は肌の除菌方法を提供する。
【実施例0028】
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また、以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0029】
<原料>
〔コハク酸〕:扶桑化学工業株式会社製、商品名:コハク酸
〔フマル酸〕:扶桑化学工業株式会社社製、商品名:フマル酸
〔クエン酸〕:富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:くえん酸(和光特級)
〔酢酸〕富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:酢酸(和光一級)
〔アジピン酸〕富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:アジピン酸(和光特級)
〔酒石酸〕富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:DL-酒石酸(和光特級)
〔リンゴ酸〕富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:DL-リンゴ酸(和光特級)
〔グルコン酸〕富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:50%グルコン酸溶液
〔乳酸〕富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:乳酸(食品添加物)
〔コハク酸二ナトリウム〕:富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:こはく酸二ナトリウム(和光特級)
〔フマル酸二ナトリウム〕:富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:フマル酸二ナトリウム
〔フマル酸一ナトリウム〕:扶桑化学工業株式会社社製、商品名:フマル酸一ナトリウム
〔クエン酸三ナトリウム1〕:富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:くえん酸三ナトリウム(和光特級)
〔クエン酸三ナトリウム2〕:富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:くえん酸三ナトリウム二水和物(試薬特級)
〔酢酸ナトリウム〕富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:酢酸ナトリウム(試薬特級)
〔酒石酸ナトリウム〕富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:(+)-酒石酸ナトリウム二水和物(試薬特級)
〔リンゴ酸ナトリウム〕純正化学株式会社社製、商品名:DL-りんご酸二ナトリウム三水和物(純正特級)
〔グルコン酸ナトリウム〕扶桑化学工業株式会社社製、商品名:ヘルシャスA
〔乳酸ナトリウム〕富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:乳酸ナトリウム(食品添加物)
〔ポリグリセリン脂肪酸エステル〕:太陽化学株式会社社製、商品名:サンソフトM-12J(HLB16)
〔ショ糖脂肪酸エステル1〕:三菱ケミカル株式会社社製、商品名:リョ―トーシュガーエステルL-1695(HLB16)
〔ショ糖脂肪酸エステル2〕:第一工業製薬株式会社製、商品名:DKエステルSS(HLB19)
〔サイクロデキストリン〕:塩水港製糖株式会社製、商品名:イソエリートP
〔ポリソルベート〕富士フイルム和光純薬株式会社社製、商品名:ポリソルベート80, 植物由来(HLB15)
【0030】
<除菌効果測定方法>
除菌効果は以下のように測定した。
大腸菌もしくは黄色ブドウ球菌をSCD液体培地で培養後、生理食塩水で洗浄し10~10cell/mlに調整したものを菌液とした。図1~8に示す液体除菌剤組成物および固体除菌剤組成物を各図記載の割合で溶解させたものを試験液とし、試験液と菌液が99:1の比になるように混合、攪拌して接触処理を行った。接触処理開始から60秒経過後、接触処理液をSCD液体培地で10倍希釈して処理を停止させ、さらに10倍段階希釈系列を作製した。この希釈系列をSCD寒天培地に接種して35℃で48時間培養を行い、寒天培地上の観察可能なコロニーを生残菌として計測し、接触処理液1mlあたりの生残菌数を測定した。また、対照試験(ネガティブコントロール)として、試験液の代わりに滅菌したリン酸緩衝生理食塩水を用いて接触処理を行った。対照試験と試験液で処理したものとの生残菌数の対数値の差を菌数の対数減少値(LR)とした。
【0031】
大腸菌と黄色ブドウ球菌の両方に対する除菌効果がLR3以上の場合+++、大腸菌と黄色ブドウ球菌のどちらかまたは両方に対する除菌効果がLR3以下2以上の場合++、大腸菌と黄色ブドウ球菌のどちらかまたは両方に対する除菌効果がLR2以下の場合+と評価し、試験結果が+++である場合に、所望の除菌効果を有すると評価した。
【0032】
[実施例]
図1図3に示されるよう原料を配合し、液体除菌剤組成物(実施例1~20)を作成した。
そして、そのpHを測定し、さらに上述した除菌効果測定方法により、大腸菌および黄色ブドウ球菌について対数減少値(LR)を求め、前記段落に記載した評価基準に基づき除菌効果を評価した。その結果を図1図3にまとめた。
【0033】
[比較例]
図4及び図5に示されるよう原料を配合し、試験用除菌剤組成物(比較例1~12)を作成した。
そして、そのpHを測定し、さらに上述した除菌効果測定方法に基づき、大腸菌および黄色ブドウ球菌について、対数減少値(LR)を求めた。上述した評価基準に基づき除菌効果を評価した。その結果を図4及び図5にまとめた。なお、ポリソルベートは、除菌効果に寄与しない界面活性剤として加えられている。
【0034】
本発明の液体除菌剤組成物について評価を行ったところ、除菌成分として、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、及び乳酸からなる群から選ばれる1種または2種以上である有機酸が0.2質量%以上1.0質量%以下であり、かつ除菌成分としてポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上である、界面活性剤が0.01質量%以上5質量%以下であり、pHが3.0以上4.0以下である場合に、大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方において、対数減少値(LR)が3.0以上となり、除菌効果を有することがわかった。
【0035】
次に、各原料を図6図8に記載の割合で原料を配合し、乾燥させながら乳鉢上で均一になるように撹拌して固体除菌剤組成物(実施例21~35、比較例13~14)を作成した。
また、サイクロデキストリンは賦形剤として添加された。この時、粉末あるいは顆粒状の固体製剤となった組成を固体製剤化可能(○評価)と評価した。グルコン酸及び乳酸は液体であり、固体製剤化するには不向きであった。したがって、それ以降の試験・評価は行わなかった。
また、各実施例の固体除菌剤組成物は有機酸の濃度が0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲となるように水を添加して溶解し、液体除菌剤組成物を調製した。各固体除菌剤組成物の溶媒100mlあたりの溶解量(g)を図6図8に示す。
液体除菌剤組成物の調製において、10分以内に完全に溶解した固体除菌剤組成物は、溶解性あり(○評価)と判断した。また、調製した液体除菌剤組成物のpHを測定した。さらに上述した除菌効果測定方法に基づき、大腸菌および黄色ブドウ球菌について対数減少値(LR)を求め、上述した評価基準に基づき除菌効果を評価した。その結果を図6図8にまとめた。
【0036】
図6図8の結果から明らかであるように、本発明の固体除菌剤組成物は、有機酸の濃度が0.2質量%以上1.0質量%以下となるようにして水に溶解して、pHが3.0以上4.0以下である状態にした場合に、大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方において、対数減少値(LR)が3.0以上となり、除菌効果を有することがわかった。
【0037】
図9に示されるよう原料を配合し、液体除菌剤組成物(実施例36~38)を作成した。
なお、実施例36は、実施例2の水を9質量%エタノール水溶液に変えた配合、実施例37は、実施例6の水を9質量%エタノール水溶液に変えた配合、実施例38は、実施例13の水を9質量%エタノール水溶液に変えた配合である。
そして、そのpHを測定し、さらに上述した除菌効果測定方法により、大腸菌および黄色ブドウ球菌について対数減少値(LR)を求め、上述した評価基準に基づき除菌効果を評価した。その結果を図9にまとめた。
【0038】
[比較例]
9質量%エタノール水溶液の除菌効果を調べるために、図9に示されるよう原料を配合し、試験用除菌剤組成物(比較例15)を作成した。
そして、そのpHを測定し、さらに上述した除菌効果測定方法に基づき、大腸菌および黄色ブドウ球菌について、対数減少値(LR)を求め、上述した評価基準に基づき除菌効果を評価した。その結果を図9に示す。
【0039】
9質量%エタノール溶液を用いて調製した実施例36~38の液体除菌剤組成物について評価を行ったところ、大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方において、対数減少値(LR)が3.0以上となり、水を用いて調製した場合と同様、除菌効果を有することがわかった。
一方、9質量%エタノール水溶液である比較例15は、対数減少値(LR)が2以下となり、除菌効果を有さないことがわかった。この結果から、低濃度エタノール水溶液だけでは除菌効果がないことが確認された。
【0040】
次に、各原料を図10に記載の割合で原料を配合し、乾燥させながら乳鉢上で均一になるように撹拌して固体除菌剤組成物(実施例39、40)を作成した。
この時、粉末あるいは顆粒状の固体製剤となった組成を固体製剤化可能(○評価)と評価した。
また、各実施例の組成物は有機酸の濃度が0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲となるように、9質量%エタノール水溶液を添加して溶解し、液体除菌剤組成物を調製した。各固体除菌剤組成物の溶媒100mlあたりの溶解量(g)を図10に示す。
液体除菌剤組成物の調製において、10分以内に完全に溶解した固体除菌剤組成物は、溶解性あり(○評価)と判断した。また、調製した液体除菌剤組成物のpHを測定した。さらに上述した除菌効果測定方法に基づき、大腸菌および黄色ブドウ球菌について対数減少値(LR)を求め、
上述した評価基準に基づき除菌効果を評価した。その結果を図10にまとめた。
なお、実施例39の固体除菌剤組成物の配合は、実施例22の配合と同じで、固体除菌剤組成物の溶解に使用する水を9質量%エタノール水溶液に変えて液体除菌剤組成物を調製した。また、実施例40の固体除菌剤組成物の配合は、実施例29の配合と同じで、固体除菌剤組成物の溶解に使用する水を9質量%エタノール水溶液に変えて液体除菌剤組成物を調製した。
【0041】
図10の結果から、本発明の固体除菌剤組成物は、有機酸の濃度が0.5質量%又は0.25質量%となるように9質量%エタノール水溶液で溶解した場合であっても、大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方において、対数減少値(LR)が3.0以上となり、除菌効果を有することがわかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10