(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163142
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ケーブル中間接続構造
(51)【国際特許分類】
H02G 15/068 20060101AFI20231101BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H02G15/068
H02G1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064317
(22)【出願日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2022073753
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520307713
【氏名又は名称】関西電力送配電株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520320446
【氏名又は名称】中部電力パワーグリッド株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】八木 正史
(72)【発明者】
【氏名】丸一 真二
(72)【発明者】
【氏名】木村 心哉
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 公裕
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智
(72)【発明者】
【氏名】上野 辰也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 克久
(72)【発明者】
【氏名】矢郷 大規
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 臣人
【テーマコード(参考)】
5G355
5G375
【Fターム(参考)】
5G355AA03
5G355BA01
5G355BA11
5G355BA14
5G355BA17
5G355CA02
5G375AA02
5G375CA02
5G375CA14
5G375CB06
5G375CB15
5G375CB38
5G375DB35
5G375DB44
(57)【要約】
【課題】熱放散特性に優れ、簡便な方法で短時間に組み立て可能なケーブル中間接続構造を提供する。
【解決手段】ケーブル中間接続構造は、第1電力ケーブルの端部および第2電力ケーブルの端部を接続し、前記第1電力ケーブルの第1ケーブル導体の端部および前記第2電力ケーブルの第2ケーブル導体の端部を接続する導体接続部と、前記導体接続部の外周を覆うゴムユニットと、前記ゴムユニットの外周を覆う遮蔽層と、前記遮蔽層の外周を覆う保護層と、前記保護層の周方向に亘って分割して配置される複数のコンパウンドブロック、前記保護層の外周に巻回されるコンパウンドシート、および前記保護層の外周に被せて配置される筒型コンパウンドブロックの少なくとも1つを含み、前記保護層の外周を覆う樹脂製のコンパウンド部と、前記コンパウンド部の外周を覆う金属管とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電力ケーブルの端部および第2電力ケーブルの端部を接続するケーブル中間接続構造であって、
前記第1電力ケーブルの第1ケーブル導体の端部および前記第2電力ケーブルの第2ケーブル導体の端部を接続する導体接続部と、
前記導体接続部の外周を覆うゴムユニットと、
前記ゴムユニットの外周を覆う遮蔽層と、
前記遮蔽層の外周を覆う保護層と、
前記保護層の周方向に亘って分割して配置される複数のコンパウンドブロック、前記保護層の外周に巻回されるコンパウンドシート、および前記保護層の外周に被せて配置される筒型コンパウンドブロックの少なくとも1つを含み、前記保護層の外周を覆う樹脂製のコンパウンド部と、
前記コンパウンド部の外周を覆う金属管と
を備えることを特徴とするケーブル中間接続構造。
【請求項2】
前記筒型コンパウンドブロックは、長手方向の全体に亘って設けられる1つの切り込み部を備え、前記切り込み部の間隔は、拡張可能である、請求項1に記載のケーブル中間接続構造。
【請求項3】
前記コンパウンド部の仕上がり外径Aと、前記金属管の内径Bとして、前記コンパウンド部の外周と前記金属管の内周との間のクリアランスcを(B-A)/2としたときに、前記クリアランスcは前記金属管の内径Bの1.2%以上7.7%以下である、請求項1または2に記載のケーブル中間接続構造。
【請求項4】
前記保護層と前記コンパウンド部との間に設けられる接着層をさらに備える、請求項1または2に記載のケーブル中間接続構造。
【請求項5】
前記コンパウンド部のポアソン比は、0.48以上0.50以下である、請求項1または2に記載のケーブル中間接続構造。
【請求項6】
前記コンパウンド部と前記金属管との間に、前記コンパウンド部の動摩擦係数よりも小さい動摩擦係数を有する低摩擦層をさらに備える、請求項1または2に記載のケーブル中間接続構造。
【請求項7】
前記低摩擦層は、低摩擦テープから構成される、請求項6に記載のケーブル中間接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーブル中間接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力ケーブルの端部同士を接続したケーブル中間接続構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、各電力ケーブルの端部において露出されるケーブル導体の端部同士を接続する導体接続部と、前記導体接続部の外周を覆うゴムユニットと、前記ゴムユニットの外周を、所定の空間をあけて覆う保護管と、前記空間に充填されるコンパウンドとを備える、電力ケーブルの中間接続構造が記載されている。特許文献1の電力ケーブルの中間接続構造では、前記保護管は、前記コンパウンドを前記空間に注入する注入孔を備え、前記保護管における前記導体接続部の外周を覆う中間領域の内径は、前記保護管における前記ゴムユニットの各端部の外周を覆う外側領域の内径よりも小さい。
【0004】
また、特許文献2には、2本の電力ケーブルの端部においてそれぞれ露出されるケーブル導体同士を接続する導体接続部と、前記導体接続部の外周を覆うゴムユニットと、前記ゴムユニットの外周を、所定の空間をあけて覆う保護管と、前記空間に充填されるコンパウンドとを備える電力ケーブルの中間接続構造が記載されている。特許文献2の電力ケーブルの中間接続構造では、前記ゴムユニットの一端部と一方の前記電力ケーブルとの第一境界部、及び前記ゴムユニットの他端部と他方の前記電力ケーブルとの第二境界部を含んで前記ゴムユニットの外周面に密着して設けられる収縮チューブと、前記収縮チューブの外周面に設けられ、前記収縮チューブと前記コンパウンドとを密着させる第一粘着層とを備える。
【0005】
特許文献1や特許文献2のように、従来のケーブル中間接続構造の組み立てでは、まず、電力ケーブルの端部同士を接続する前に、インナーコアや拡径パイプなどの拡径保持材で拡径されたゴムユニットや保護管を、電力ケーブルに通して、電力ケーブルの端部以外の部分で待機させる。電力ケーブルの端部同士を接続した後、事前に電力ケーブルに待機しているゴムユニットを接続部に移動し、拡径保持材をゴムユニットから引き抜いて、ゴムユニットを接続部に装着する。その後、事前に電力ケーブルに待機している保護管をゴムユニットの位置まで移動する。続いて、保護管に設けられる注入孔から、ゴムユニットと保護管との間の空間に、液状のコンパウンドを注入する。液状のコンパウンドを注入した後、保護管の注入孔に蓋をして閉塞する。こうして、注入孔に対する防水処理を行う。
【0006】
しかしながら、上記のように、従来のケーブル中間接続構造には液状のコンパウンドを使用している。そのため、ケーブル中間接続構造の組み立て時に、現場で、液状のコンパウンドの原料を混合して撹拌する作業が必要である。さらに、液状のコンパウンドを注入して硬化するために、コンパウンドに費やす作業時間が長い。また、注入した液状のコンパウンドに含まれる液状の成分がゴムユニットや電力ケーブルに浸入することによって、ゴムユニットや電力ケーブルにおける半導電部材の電気抵抗が低下することがある。
【0007】
また、保護管は不透明であり、液状のコンパウンドの注入後に注入孔に蓋をするので、ゴムユニットと保護管との間の空間に注入した液状のコンパウンドの充填状態が把握できない。そのため、硬化後のコンパウンドであるコンパウンド部の内部に多量の気泡が混入する、コンパウンド部とゴムユニットとの間やコンパウンド部と保護管との間に大きな隙間が生じる、コンパウンド部が不均一に充填するなどによって、ケーブル中間接続構造の均一な熱放散がされない。
【0008】
また、注入孔からの液状のコンパウンドの溢れや、液状のコンパウンドの注入時の不具合などによって、液状のコンパウンドが注入孔の周囲に付着することがある。このような状態の注入孔に対して現場で蓋をするため、注入孔の密閉性が非常に不安定である。注入孔の密閉性が低いと、ケーブル中間接続構造の絶縁性能は低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-41465号公報
【特許文献2】特開2019-92322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の目的は、熱放散特性に優れ、簡便な方法で短時間に組み立て可能なケーブル中間接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1] 第1電力ケーブルの端部および第2電力ケーブルの端部を接続するケーブル中間接続構造であって、前記第1電力ケーブルの第1ケーブル導体の端部および前記第2電力ケーブルの第2ケーブル導体の端部を接続する導体接続部と、前記導体接続部の外周を覆うゴムユニットと、前記ゴムユニットの外周を覆う遮蔽層と、前記遮蔽層の外周を覆う保護層と、前記保護層の周方向に亘って分割して配置される複数のコンパウンドブロック、前記保護層の外周に巻回されるコンパウンドシート、および前記保護層の外周に被せて配置される筒型コンパウンドブロックの少なくとも1つを含み、前記保護層の外周を覆う樹脂製のコンパウンド部と、前記コンパウンド部の外周を覆う金属管とを備えることを特徴とするケーブル中間接続構造。
[2] 前記筒型コンパウンドブロックは、長手方向の全体に亘って設けられる1つの切り込み部を備え、前記切り込み部の間隔は、拡張可能である、上記[1]に記載のケーブル中間接続構造。
[3] 前記コンパウンド部の仕上がり外径Aと、前記金属管の内径Bとして、前記コンパウンド部の外周と前記金属管の内周との間のクリアランスcを(B-A)/2としたときに、前記クリアランスcは前記金属管の内径Bの1.2%以上7.7%以下である、上記[1]または[2]に記載のケーブル中間接続構造。
[4] 前記保護層と前記コンパウンド部との間に設けられる接着層をさらに備える、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のケーブル中間接続構造。
[5] 前記コンパウンド部のポアソン比は、0.48以上0.50以下である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のケーブル中間接続構造。
[6] 前記コンパウンド部と前記金属管との間に、前記コンパウンド部の動摩擦係数よりも小さい動摩擦係数を有する低摩擦層をさらに備える、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のケーブル中間接続構造。
[7] 前記低摩擦層は、低摩擦テープから構成される、上記[6]に記載のケーブル中間接続構造。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、熱放散特性に優れ、簡便な方法で短時間に組み立て可能なケーブル中間接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態のケーブル中間接続構造の一例を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のケーブル中間接続構造を構成するコンパウンド部の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態のケーブル中間接続構造を構成するコンパウンド部の他の例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態のケーブル中間接続構造を構成するコンパウンド部の他の例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すコンパウンド部の装着方法を説明するための概略図である。
【
図6】
図6は、実施形態のケーブル中間接続構造を構成する金属管の接続部の一例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、実施形態のケーブル中間接続構造を構成する金属管の接続部の他の例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、実施形態のケーブル中間接続構造を構成する金属管の接続部の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0015】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、コンパウンド部の構成に着目することで、熱放散特性の向上、ならびに組み立ての簡便化および組み立て時間の短縮化を図った。
【0016】
実施形態のケーブル中間接続構造は、第1電力ケーブルの端部および第2電力ケーブルの端部を接続するケーブル中間接続構造であって、前記第1電力ケーブルの第1ケーブル導体の端部および前記第2電力ケーブルの第2ケーブル導体の端部を接続する導体接続部と、前記導体接続部の外周を覆うゴムユニットと、前記ゴムユニットの外周を覆う遮蔽層と、前記遮蔽層の外周を覆う保護層と、前記保護層の周方向に亘って分割して配置される複数のコンパウンドブロック、前記保護層の外周に巻回されるコンパウンドシート、および前記保護層の外周に被せて配置される筒型コンパウンドブロックの少なくとも1つを含み、前記保護層の外周を覆う樹脂製のコンパウンド部と、前記コンパウンド部の外周を覆う金属管とを備える。
【0017】
図1は、実施形態のケーブル中間接続構造の一例を示す縦断面図である。なお、
図1では、第1電力ケーブル10aの第1ケーブル導体11a、第1ケーブル絶縁体12a、第1外部半導電層13a、第1半導電テープ層14a、第1ケーブル遮蔽層15a、第1ケーブルシース16a、および第2電力ケーブル10bの第2ケーブル導体11b、第2ケーブル絶縁体12b、第2外部半導電層13b、第2半導電テープ層14b、第2ケーブル遮蔽層15b、第2ケーブルシース16bは、便宜上、側面図である。
【0018】
図1に示すように、実施形態のケーブル中間接続構造1は、第1電力ケーブル10aの端部および第2電力ケーブル10bの端部を接続する電力ケーブルの中間接続構造である。ケーブル中間接続構造1は、導体接続部2と、ゴムユニット3と、遮蔽層4と、保護層5と、コンパウンド部7と、金属管9とを備える。
【0019】
第1電力ケーブル10aは、中心から、第1ケーブル導体11a、第1ケーブル導体11aの外周を覆う第1ケーブル絶縁体12a、第1ケーブル絶縁体12aの外周を覆う第1ケーブル遮蔽層15a、第1ケーブル遮蔽層15aの外周を覆う第1ケーブルシース16aを有する。第1ケーブル絶縁体12aの内周部分には、不図示の内部半導電層が設けられる。第1ケーブル絶縁体12aの外周部分には、内側から順に、第1外部半導電層13a、第1半導電テープ層14aが設けられる。第1電力ケーブル10aの段剥処理により、第1電力ケーブル10aの端部では、第1ケーブル導体11a、第1ケーブル絶縁体12a、第1外部半導電層13a、第1半導電テープ層14a、第1ケーブル遮蔽層15aが第1ケーブルシース16aから露出する。
【0020】
第1電力ケーブル10aと同様に、第2電力ケーブル10bについても、中心から、第2ケーブル導体11b、第2ケーブル絶縁体12b、第2ケーブル遮蔽層15b、第2ケーブルシース16bを有する。第2ケーブル絶縁体12bの内周部分には、不図示の内部半導電層が設けられる。第2ケーブル絶縁体12bの外周部分には、内側から順に、第2外部半導電層13b、第2半導電テープ層14bが設けられる。第2電力ケーブル10bの段剥処理により、第2電力ケーブル10bの端部では、第2ケーブル導体11b、第2ケーブル絶縁体12b、第2外部半導電層13b、第2半導電テープ層14b、第2ケーブル遮蔽層15bが第2ケーブルシース16bから露出する。
【0021】
第1ケーブル導体11aおよび第2ケーブル導体11bは、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの導電性の高い金属から構成される。第1ケーブル絶縁体12aおよび第2ケーブル絶縁体12bは、架橋ポリエチレンなどの電気絶縁性の高い樹脂から構成される。内部半導電層、第1外部半導電層13aおよび第2外部半導電層13b、第1半導電テープ層14aおよび第2半導電テープ層14bは、半導電性を有する樹脂などから構成される。第1ケーブル遮蔽層15aおよび第2ケーブル遮蔽層15bは、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの導電性の高い金属から構成される。第1ケーブルシース16aおよび第2ケーブルシース16bは、ポリエチレンまたはポリ塩化ビニルなどの樹脂から構成される。
【0022】
第1電力ケーブル10aや第2電力ケーブル10bは、例えばCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)である。このような、第1電力ケーブル10aや第2電力ケーブル10bは、高圧用ケーブルや超高圧用ケーブルに好適に用いられる。
【0023】
ケーブル中間接続構造1は、中心から外側に向かって、導体接続部2と、ゴムユニット3と、遮蔽層4と、保護層5と、コンパウンド部7と、金属管9とを備える。ケーブル中間接続構造1を構成する導体接続部2は、第1電力ケーブル10aの第1ケーブル導体11aの端部および第2電力ケーブル10bの第2ケーブル導体11bの端部を接続する。ケーブル中間接続構造1は、例えば、ケーブル中間接続構造1の中心軸に対して概ね対称であると共に、第1ケーブル導体11aおよび第2ケーブル導体11bの接続部において、ケーブル中間接続構造1の軸方向に垂直な方向に対して概ね対称である。
【0024】
導体接続部2は、第1電力ケーブル10aおよび第2電力ケーブル10bの各々の端部の段剥処理によって露出している、第1ケーブル導体11aの端部および第2ケーブル導体11bの端部を接続する。例えば、導体接続部2は、円筒状である。導体接続部2の一端側から第1電力ケーブル10aを挿入し、導体接続部2の他端側から第2電力ケーブル10bを挿入した状態で、導体接続部2を圧縮することによって、導体接続部2は第1電力ケーブル10aの第1ケーブル導体11aおよび第2電力ケーブル10bの第2ケーブル導体11bを電気的に接続する。
【0025】
高い導電性および圧縮性の観点から、導体接続部2は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金から構成されることが好ましい。導体接続部2の外周面や、露出している第1ケーブル導体11aおよび第2電力ケーブル10bの外周面には、半導電テープ層などが設けられてもよい。
【0026】
ケーブル中間接続構造1を構成するゴムユニット3は、導体接続部2の外周を覆う。ゴムユニット3は、円筒状であり、ケーブル中間接続構造1の主絶縁部である。ここでは、ゴムユニット3は、第1電力ケーブル10aの第1外部半導電層13aから第2電力ケーブル10bの第2外部半導電層13bまでの外周部分を連続して覆う。ゴムユニット3は、拡径した状態で、導体接続部2を含む第1電力ケーブル10aおよび第2電力ケーブル10bの外周を被覆して装着される。そのため、ゴムユニット3の内周面は、ゴムユニット3の復元力によって、導体接続部2を含む外周に密着する。
【0027】
ゴムユニット3は、主絶縁部31、ケーブル中間接続構造1の軸方向における主絶縁部31の中央部の内周部分に設けられる円筒状の内周半導電部32、主絶縁部31の両端部に設けられる端部半導電部33、および主絶縁部31の軸方向中央部の外周部分に設けられる円筒状の外周半導電部34を有する。
【0028】
ゴムユニット3の主絶縁部31は、第1電力ケーブル10aの第1ケーブル絶縁体12aから第2電力ケーブル10bの第2ケーブル絶縁体12bまでの外周部分を覆う。主絶縁部31は、電気絶縁性の高いゴム、好ましくは絶縁性シリコーンゴムや絶縁性エチレンプロピレンゴムから構成される。
【0029】
内周半導電部32は、導体接続部2の外周を覆う。各端部半導電部33は、第1外部半導電層13aおよび第2外部半導電層13bにそれぞれ接続される。各端部半導電部33と外周半導電部34との間には、主絶縁部31の一部が介在されている。端部半導電部33および外周半導電部34は電気的に絶縁されている。内周半導電部32、端部半導電部33、および外周半導電部34は、半導電性を有するゴム、好ましくは半導電性シリコーンゴムや半導電性エチレンプロピレンゴムから構成される。
【0030】
また、ゴムユニット3の両端部には、台座スペーサ36がそれぞれ設けられる。台座スペーサ36は、第1外部半導電層13aまたは第2外部半導電層13bの外周面と主絶縁部31の外周面との間に傾斜面を形成する。ゴムユニット3が台座スペーサ36を備えると、遮蔽層4、保護層5、コンパウンド部7などの装着が容易になる。台座スペーサ36の周囲の隙間には、半導電テープ層35が設けられる。
【0031】
ケーブル中間接続構造1を構成する遮蔽層4は、ゴムユニット3の外周を覆う。ゴムユニット3を被覆する遮蔽層4は、第1電力ケーブル10aの第1ケーブル遮蔽層15aまたは第2電力ケーブル10bの第2ケーブル遮蔽層15bとゴムユニット3の外周半導電部34とを接続する。遮蔽層4は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの導電性の高い金属から構成される。
【0032】
ケーブル中間接続構造1を構成する保護層5は、遮蔽層4の外周を覆う。遮蔽層4を被覆する保護層5は、遮蔽層4を保護する。保護層5は、ブチルゴムなどの電気絶縁性の高いゴムから構成される。
【0033】
ケーブル中間接続構造1を構成する樹脂製のコンパウンド部7は、保護層5の外周を覆う。コンパウンド部7を構成する材料は、例えば従来の液状のコンパウンドを構成する材料と同じである。コンパウンド部7は、熱放散性および電気絶縁性の高い熱硬化性樹脂から構成されることが好ましく、絶縁性シリコーンゴム、ウレタン樹脂、または絶縁性エチレンプロピレンゴムから構成されることがより好ましい。コンパウンド部7は、
図2に示すような複数のコンパウンドブロック、
図3に示すようなコンパウンドシートおよび
図4に示すような筒型コンパウンドブロックの少なくとも1つを含む。なお、
図2~4では、便宜上、コンパウンド部7で覆われている保護層5などの構成要素を省略すると共に、コンパウンド部7の詳細なテーパー形状を省略している。
【0034】
図2に示すように、コンパウンド部7は、保護層5の周方向に亘って分割して配置される複数のコンパウンドブロック7a~7dから構成される。複数のコンパウンドブロック7a~7dは、保護層5の周方向に亘って互いに接触して、保護層5の外周に装着される。複数のコンパウンドブロック7a~7dから構成されるコンパウンド部7は、円筒状であり、保護層5の外周の全周を覆う。ケーブル中間接続構造1の組み立て時において、コンパウンドブロック7a~7dは、従来のような液状のコンパウンドではなく、固体状であり、例えば樹脂の成型体である。
【0035】
図2では、コンパウンド部7は、周方向の長さおよび厚さの等しい4つのコンパウンドブロック7a、7b、7c、7dから構成される一例を示すが、コンパウンド部7が上記構成を満たしていれば、コンパウンド部7は同一形状の複数のコンパウンドブロックから構成されなくてもよい。例えば、コンパウンドブロックの個数は、2つや3つでもよいし、5つ以上でもよい。また、コンパウンドブロックの周方向の長さや厚さが異なってもよい。コンパウンドブロックの厚さが同じであると、コンパウンド部7に対する金属管9の装着が容易になると共に、ケーブル中間接続構造1の熱放散特性が良好である。
【0036】
また、
図3に示すように、コンパウンド部7は、保護層5の外周に巻回されるコンパウンドシート7eから構成される。コンパウンドシート7eは、保護層5の外周の少なくとも1周を巻回する。コンパウンドシート7eから構成されるコンパウンド部7は、円筒状であり、保護層5の外周の全周を覆う。ケーブル中間接続構造1の組み立て時において、コンパウンドシート7eは、従来のような液状のコンパウンドではなく、固体状であり、例えば樹脂のシート体である。
【0037】
図3では、コンパウンド部7が1つのコンパウンドシート7eから構成される一例を示すが、コンパウンド部7が上記構成を満たしていれば、コンパウンド部7は1つのコンパウンドシート7eから構成されなくてもよい。例えば、コンパウンド部7は2つ以上のコンパウンドシート7eから構成されてもよい。この場合、保護層5の外周の長さよりも短い長さの複数のコンパウンドシート7eを保護層5の外周に亘って設置してもよい。
【0038】
また、
図4に示すように、コンパウンド部7は、保護層5の外周に被せて配置される筒型コンパウンドブロック7fから構成される。筒型コンパウンドブロック7fは、筒型コンパウンドブロック7fの長手方向の全体に亘って設けられる1つの切り込み部71を備え、切り込み部71の間隔は、拡張可能である。切り込み部71は、筒型コンパウンドブロック7fの一端から他端に亘って設けられる。例えば、切り込み部71の形状は、
図4に示すように直線状である。また、筒型コンパウンドブロック7fは、切り込み部71の間隔が拡張可能な弾性体である。筒型コンパウンドブロック7fは円筒状であり、保護層5の外周の全周を覆う。ケーブル中間接続構造1の組み立て時において、筒型コンパウンドブロック7fは、従来のような液状コンパウンドではなく、固体状であり、例えば樹脂の成型体である。
【0039】
図5は、
図4に示す筒型コンパウンドブロック7fで構成されるコンパウンド部7の装着方法を説明するための概略図である。筒型コンパウンドブロック7fの切り込み部71の間隔は、外部からの力によって拡張可能である。具体的には、切り込み部71によって形成される第1分割面72aおよび第2分割面72bが互いに離れるような外力を筒型コンパウンドブロック7fに付与すると、
図5に示すように切り込み部71は拡張し、筒型コンパウンドブロック7fに付与されていた当該外力を解除すると、拡張されていた切り込み部71が収縮し、
図4に示すように第1分割面72aおよび第2分割面72bが接触する。こうして、筒型コンパウンドブロック7fは保護層5の外周に被せるように配置される。
【0040】
図4では、コンパウンド部7が1つの筒型コンパウンドブロック7fから構成される一例を示すが、コンパウンド部7が上記構成を満たしていれば、コンパウンド部7は1つの筒型コンパウンドブロック7fから構成されなくても良い。例えば、コンパウンド部7は2つ以上の筒型コンパウンドブロック7fから構成されてもよい。
【0041】
このように、ケーブル中間接続構造1の組み立て時において、ケーブル中間接続構造1を構成するコンパウンド部7は、従来のような液状のコンパウンドではなく、固体状である。複数のコンパウンドブロック7a~7dもしくは筒型コンパウンドブロック7fを設置またはコンパウンドシート7eを巻回することによって、コンパウンド部7を保護層5の外周に装着できる。従来のような組み立て現場での液状のコンパウンドの混合や撹拌、注入のような作業が不要になり、さらには液状のコンパウンドを硬化するまでに待機することが不要になる。そのため、コンパウンド部7を簡便な方法で設置できると共に、コンパウンド部7に費やす作業時間が大幅に短縮できる。なお、複数のコンパウンドブロック7a~7dの側面には、組み立て時にコンパウンドブロック7a~7d同士を仮止めするための不図示の接着材が設けられてもよい。また、同様の目的で、コンパウンドシート7eの表面や筒型コンパウンドブロック7fの第1分割面72aおよび第2分割面72bには、不図示の接着材が設けられてもよい。
【0042】
また、保護層5の外周に取り付けるコンパウンド部7は、固体状である。液状のコンパウンドに含まれる液状の成分がゴムユニット3、第1電力ケーブル10a、第2電力ケーブル10bなどに浸入することがない。そのため、液状のコンパウンドに含まれる液状の成分による、ケーブル中間接続構造1の電気絶縁性および半導電の導電性の低下を回避できる。
【0043】
上記のコンパウンド部7は、上記の複数のコンパウンドブロック7a~7dのみから構成されてもよいし、コンパウンドシート7eのみから構成されてもよいし、筒型コンパウンドブロック7fから構成されてもよい。また、コンパウンド部7は、上記のコンパウンドブロックおよびコンパウンドシート7eから構成されてもよい。
【0044】
また、コンパウンド部7のポアソン比は、0.48以上0.50以下であることが好ましい。コンパウンド部7のポアソン比が上記範囲内であると、金属管9をコンパウンド部7の外周に装着するときに、コンパウンド部7の外周に局所的な力がかかっても、コンパウンド部7の復元力によって、保護層5および金属管9の間におけるコンパウンド部7の充填率を常に所定以上に維持できる。
【0045】
保護層5の外周に設けられるコンパウンド部7の外周には、金属管9が装着される。金属管9は、円筒状であり、コンパウンド部7の外周を覆う。ここでは、金属管9は、第1電力ケーブル10aの第1ケーブル遮蔽層15aから第2電力ケーブル10bの第2ケーブル遮蔽層15bまでの外周部分を連続して覆う。
【0046】
実施形態のケーブル中間接続構造1では、既に装着されているコンパウンド部7に対して、金属管9を装着する。金属管9は、従来のような液状のコンパウンドを注入するための注入孔を具備しない。金属管9の内周の形状は、コンパウンド部7の外周の形状に応じて適宜設定される。ここでは、金属管9の各々の端部側では、端部内面が第1ケーブル遮蔽層15aおよび第2ケーブル遮蔽層15bに電気的に接続され、端部が防水部100によって防水処理される。金属管9は、金属から構成され、好ましくは、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金から構成される。
【0047】
また、金属管9は、複数の金属部材から構成される。例えば、金属管9は、ケーブル中間接続構造1の軸方向に亘って複数の金属部材を接続することによって、または、ケーブル中間接続構造1の周方向に亘って複数の金属部材を接続することによって、組み立てられる。
【0048】
ケーブル中間接続構造1の軸方向に亘って複数の金属部材を接続して金属管9を組み立てる場合、金属管9は、例えば
図6~8に示すように、2つの金属部材である第1金属部材9aおよび第2金属部材9bから構成される。第1金属部材9aは、ケーブル中間接続構造1の軸方向において、第1電力ケーブル10a側のコンパウンド部7の外周を被覆し、第2金属部材9bは、第2電力ケーブル10b側のコンパウンド部7の外周を被覆する。
【0049】
一例として、
図6に示すように、第1金属部材9aおよび第2金属部材9bの接続部では、第1金属部材9aおよび第2金属部材9bのそれぞれの端部に設けられる凹部91に、Oリングなどのシール部材92が装着される。また、
図7に示すように、第1金属部材9aおよび第2金属部材9bのそれぞれの端部に設けられる、凹部91にOリングなどのシール部材92を装着し、孔93にボルト94を挿通して締めることによって、第1金属部材9aおよび第2金属部材9bが接続される。また、
図8に示すように、第1金属部材9aおよび第2金属部材9bのそれぞれの端部に形成されるフランジ部95に設けられる、凹部91にOリングなどのシール部材92を装着し、貫通孔96にボルト97を挿通して締めることによって、第1金属部材9aおよび第2金属部材9bが接続される。
【0050】
上記のように、コンパウンド部7は、ケーブル中間接続構造の組み立て現場で液状のコンパウンドを注入して硬化したものではない。また、既に設置されているコンパウンド部7に対して、金属管9が装着される。そのため、従来のように、コンパウンド部を設置していない保護層に対して、保護層との間に所定の空間をあけて金属管9を設置する必要がない。さらには、液状のコンパウンドの充填率を向上させるために、金属管9の内部形状を設計する必要もない。金属管9の設計の自由度は従来よりも高い。
【0051】
実施形態のケーブル中間接続構造1では、コンパウンド部と保護層との間やコンパウンド部と金属管との間に大きな隙間が生じるなど、従来のような注入して硬化したコンパウンド部による充填の不具合を回避でき、保護層5と金属管9との間に所定の割合のコンパウンド部を均一に確実に設けることができる。すなわち、ケーブル中間接続構造1では、コンパウンド部7を取り付ける構成であるため、保護層5および金属管9の間におけるコンパウンド部7の充填率は、非常に安定し、常に所定以上である。ケーブル中間接続構造1は、安定した熱放散特性を示すことができる。
【0052】
また、ケーブル中間接続構造1では、コンパウンドブロックやコンパウンドシート、筒型コンパウンドブロックから構成されるコンパウンド部7の仕上がり外径Aと、金属管9の内径Bとして、コンパウンド部7の外周と金属管9の内周との間のクリアランスcを(B-A)/2としたときに、クリアランスcは金属管9の内径Bの1.2%以上7.7%以下であることが好ましい。コンパウンド部7の仕上がり外径Aとは、保護層5の外周に装着した後のコンパウンド部7の外径、換言すると、保護層5の外周に配置したコンパウンド部7の外径である。以下では、例えばクリアランスcが金属管9の内径Bの1.2%のことを、単にクリアランス1.2%と記載することもある。
【0053】
クリアランスcが0mmのとき、ケーブル中間接続構造1の熱放散性が最もよくなるが、クリアランスcが金属管9の内径Bの1.2%以上であると、金属管9の取り付け性が向上する。
【0054】
また、導体接続部2から遠方(温度解析より、リファレンスとして設定した温度が変動しない距離。4m以上。)のケーブル導体を最大温度(以下、ケーブル導体最高温度という)としたときに、クリアランスcが金属管9の内径Bの7.7%以下であれば、ケーブル導体最高温度に対する、ケーブル導体最高温度とケーブル中間接続構造内のケーブル導体の最大温度(以下、ケーブル中間接続構造内の導体最高温度という)との差の比率(|ケーブル導体最高温度-ケーブル中間接続構造内の導体最高温度|×100/ケーブル導体最高温度)は、11%未満にすることが出来る。この比率、すなわち温度上昇率が11%未満であれば、ケーブル導体を温度制御点としても、ケーブル中間接続構造が熱的な弱点になることはない。より好ましくは、クリアランスcは金属管9の内径Bの6.0%以下である。
【0055】
金属管9の内径Bを130mm(内半径65mm)または148mm(内半径74mm)と固定し、仕上がり外径Aを変えてクリアランスCを変化させ、コンパウンド部の熱伝導率3.7×10-4W/(mmK)、導体接続部から遠方(4m以上。)のケーブル導体温度を約90℃とした場合の計算結果を示す。
【0056】
1)B=130mmの場合
クリアランス0%で、ケーブル導体最高温度90.1℃、ケーブル中間接続構造内の導体最高温度95.0℃(温度上昇率5.4%)。
クリアランス1.2%(=0.8mm)で、ケーブル導体最高温度90.1℃、ケーブル中間接続構造内の導体最高温度96.0℃(温度上昇率6.6%)。
クリアランス6.0%(=3.9mm)で、ケーブル導体最高温度90.1℃、ケーブル中間接続構造内の導体最高温度98.0℃(温度上昇率8.8%)。
クリアランス7.7%(=5.0mm)で、ケーブル導体最高温度90.1℃、ケーブル中間接続構造内の導体最高温度99.1℃(温度上昇率10.0%)。
コンパウンド部無しで、ケーブル導体最高温度90.1℃、ケーブル中間接続構造内の導体最高温度106.2℃(温度上昇率17.9%)。
【0057】
2)B=148mmの場合
クリアランス0%で、ケーブル導体最高温度90.1℃、ケーブル中間接続構造内の導体最高温度95.6℃(温度上昇率6.1%)。
クリアランス1.2%(=0.9mm)で、ケーブル導体最高温度90.1℃、ケーブル中間接続構造内の導体最高温度96.3℃(温度上昇率6.9%)。
クリアランス6.0%(=4.4mm)で、ケーブル導体最高温度90.1℃、ケーブル中間接続構造内の導体最高温度98.5℃(温度上昇率9.3%)。
クリアランス7.7%(=5.7mm)で、ケーブル導体最高温度90.1℃、ケーブル中間接続構造内の導体最高温度99.3℃(温度上昇率10.2%)。
コンパウンド部無しで、ケーブル導体最高温度90.1℃、ケーブル中間接続構造内の導体最高温度110.7℃(温度上昇率22.9%)。
【0058】
実施形態のケーブル中間接続構造では、ケーブル中間接続構造内の温度上昇率を、ケーブル導体最高温度に対して、11%未満に抑えることが出来る。
また、コンパウンド部が無い場合は、ケーブル中間接続構造内の導体最高温度が100℃を超え、ケーブル導体の接続部の温度がネックとなることで、電力ケーブルに十分な電流を通電できず、送電容量を下げざるを得ない。
【0059】
また、ケーブル中間接続構造1では、液状のコンパウンドの注入作業がなくなるため、金属管9には、液状のコンパウンドを注入するための注入孔が不要である。従来のような、注入孔の周囲に付着した液状のコンパウンドによる、注入孔の密閉性の不安定状態が解消される。金属管9の気密性および水密性は、例えば
図6~8に示すようなOリングなどのシール部材によって、常に安定して高い状態を維持できる。そのため、ケーブル中間接続構造1の絶縁性能の低下を抑制できる。
【0060】
また、ケーブル中間接続構造1は、
図1に示すように、保護層5とコンパウンド部7との間に設けられる接着層6をさらに備えてもよい。遮蔽層4の外周を被覆する保護層5は、遮蔽層4を保護する。保護層5は、ブチルゴムなどの電気絶縁性の高いゴムから構成される。保護層5の外周とコンパウンド部7の内周との間に設けられる接着層6は、保護層5およびコンパウンド部7を接着させる。接着層6が設けられると、ケーブル中間接続構造1の組み立て時に、コンパウンド部7の装着が容易になる。ケーブル中間接続構造1の組み立て時には、接着層6が保護層5の外周のみに設けられてもよいし、接着層6がコンパウンド部7の内周のみに設けられてもよいし、接着層6が保護層5の外周およびコンパウンド部7の内周に設けられてもよい。例えば、接着層6は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂から構成される。
【0061】
また、ケーブル中間接続構造1は、
図1に示すように、コンパウンド部7と金属管9との間に、コンパウンド部7の動摩擦係数よりも小さい動摩擦係数を有する低摩擦層8をさらに備えることが好ましい。低摩擦層8がコンパウンド部7の外周と金属管9の内周との間に設けられると、ケーブル中間接続構造1の組み立て時において、コンパウンド部7の外周に対する金属管9の装着が容易になる。
【0062】
その中でも、低摩擦層8は、低摩擦テープから構成されることが好ましい。低摩擦テープは、好ましくはニトフロンテープ、バルフロンテープ、テフロンテープなどである。
【0063】
例えば、ケーブル中間接続構造1の組み立て時において、低摩擦層8は、コンパウンド部7の外周のみに設ける。
【0064】
次に、実施形態のケーブル中間接続構造の組み立て方法について説明する。
【0065】
上記のケーブル中間接続構造1の組み立て方法は、主に、ケーブル導体を接続する工程(工程1)と、ゴムユニットを設置する工程(工程2)と、遮蔽層を設置する工程(工程3)と、保護層を設置する工程(工程4)と、コンパウンド部を設置する工程(工程5)と、金属管を設置する工程(工程6)とを有する。
【0066】
工程1では、第1電力ケーブル10aの端部から露出している第1ケーブル導体11aと第2電力ケーブル10bの端部から露出している第2ケーブル導体11bとを導体接続部2に挿入した状態で、導体接続部2を圧縮することによって、第1電力ケーブル10aおよび第2電力ケーブル10bを接続する。
【0067】
第1電力ケーブル10aの端部では、段剥処理により、第1ケーブル導体11a、第1ケーブル絶縁体12a、第1外部半導電層13a、第1半導電テープ層14a、第1ケーブル遮蔽層15aが第1ケーブルシース16aから露出している。同様に、第2電力ケーブル10bの端部では、段剥処理により、第2ケーブル導体11b、第2ケーブル絶縁体12b、第2外部半導電層13b、第2半導電テープ層14b、第2ケーブル遮蔽層15bが第2ケーブルシース16bから露出している。
【0068】
第1電力ケーブル10aおよび第2電力ケーブル10bを接続する前に、ゴムユニット3は、拡径保持材で拡径された状態で、第1電力ケーブル10aや第2電力ケーブル10bに通して、電力ケーブルの端部以外の部分で待機させる。また、第1金属部材9aを第1電力ケーブル10aに通して第1電力ケーブル10aの端部以外の部分で待機させると共に、第2金属部材9bを第2電力ケーブル10bに通して第2電力ケーブル10bの端部以外の部分で待機させてもよい。
【0069】
工程1の後に実施する工程2では、導体接続部2の外周にゴムユニット3を設置して、ゴムユニット3で導体接続部2の外周を覆う。導体接続部2で第1電力ケーブル10aおよび第2電力ケーブル10bを接続した後、拡径された状態のゴムユニット3を導体接続部2の外周まで移動し、ゴムユニット3から拡径保持材を取り去る。ゴムユニット3の復元力によって、ゴムユニット3は導体接続部2の外周に密着する。
【0070】
工程2の後に実施する工程3では、ゴムユニット3の外周に遮蔽層4を設置して、遮蔽層4でゴムユニット3の外周を覆う。例えば、上記工程1において、遮蔽層4を外周に予め装着しているゴムユニット3を電力ケーブルの端部以外の部分で待機させ、上記工程2において、遮蔽層4を外周に備えるゴムユニット3を導体接続部2に装着してもよい。また、工程2で装着したゴムユニット3に対して、遮蔽層4を被覆してもよい。
【0071】
工程3の後に実施する工程4では、遮蔽層4の外周に保護層5を設置して、保護層5で遮蔽層4の外周を覆う。例えば、上記工程1において、保護層5および遮蔽層4を外周に予め装着しているゴムユニット3を電力ケーブルの端部以外の部分で待機させ、上記工程2において、保護層5および遮蔽層4を外周に備えるゴムユニット3を導体接続部2に装着してもよい。また、工程3で装着した遮蔽層4に対して、保護層5を被覆してもよい。
【0072】
工程4の後に実施する工程5では、保護層5の外周にコンパウンド部7を設置して、コンパウンド部7で保護層5の外周を覆う。コンパウンド部7が複数のコンパウンドブロック7a~7dから構成される場合、複数のコンパウンドブロック7a~7dを保護層5の外周に設置する。また、コンパウンド部7がコンパウンドシート7eから構成される場合、コンパウンドシート7eを保護層5の外周に巻回する。また、コンパウンド部7が筒型コンパウンドブロック7fから構成される場合、筒型コンパウンドブロック7fを保護層5の外周に設置する。
【0073】
工程5では、従来のように液状のコンパウンドの混合や撹拌、注入の作業が不要になると共に液状のコンパウンドを硬化するまでに待機することが不要になる。そのため、簡便な方法で短時間にコンパウンド部7を設置できる。
【0074】
ケーブル中間接続構造1が接着層6を備える場合、工程5の前に、接着層6を保護層5の外周やコンパウンド7の内周に設ける。例えば、上記工程1において、接着層6、保護層5および遮蔽層4を外周に予め装着しているゴムユニット3を電力ケーブルの端部以外の部分で待機させ、上記工程2において、接着層6、保護層5および遮蔽層4を外周に備えるゴムユニット3を導体接続部2に装着してもよい。また、工程4で装着した保護層5に対して、接着層6を設けてもよい。また、工程5において、内面に接着層6を備えるコンパウンド部7を保護層5に装着してもよい。すなわち、コンパウンド部7を保護層5に装着する前に、接着層6を保護層5の外周のみに設けてもよいし、接着層6をコンパウンド部7の内周のみに設けてもよいし、接着層6を保護層5の外周およびコンパウンド部7の内周に設けてもよい。
【0075】
工程5の後に実施する工程6では、コンパウンド部7の外周に金属管9を設置して、金属管9でコンパウンド部7の外周を覆う。電力ケーブルの端部以外の部分で予め待機させている第1金属部材9aおよび第2金属部材9bをコンパウンド部7の外周まで移動して互いに接続させる。こうして、金属管9を組み立てる。金属管9の他の組み立て方法として、第1金属部材9aおよび第2金属部材9bを事前に電力ケーブルで待機させずに、工程4において、金属管9を構成する複数の金属部材をコンパウンド部7の外周に亘って設置して接続させる。
【0076】
ケーブル中間接続構造1が低摩擦層8を備える場合、工程6の前に、コンパウンド部7の外周に低摩擦層8を設ける。こうして、ケーブル中間接続構造1が組み立てられる。
【0077】
上記したように、実施形態のケーブル中間接続構造1によれば、コンパウンド部7の構成に着目し、従来のような液状のコンパウンドではなく、コンパウンドブロックやコンパウンドシート、筒型コンパウンドブロックからコンパウンド部7を構成することによって、熱放散特性に優れ、簡便な方法で短時間に組み立て可能である。
【0078】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0079】
次に、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0080】
(実施例1および比較例1~2)
実施例1として、
図1から接着層6および低摩擦層8を除いたケーブル中間接続構造を組み立てた。また、比較例1として、
図1から接着層6、コンパウンド部7、および低摩擦層8を除いたケーブル中間接続構造を組み立てた。すなわち、比較例1のケーブル中間接続構造はコンパウンド部7を具備しなかった。また、比較例2として、液状のコンパウンド原料を用いた。
【0081】
具体的には、実施例1では、コンパウンドシートとして、厚さ2mmのウレタン樹脂シートを用いた。コンパウンドシートを保護層5の外周(外径108mm)に巻回して、厚さ18mmのコンパウンド部7(仕上がり外径144mm)を形成した。その後、コンパウンド部7の外周に金属管9(内径148mm)を設置した。クリアランスcは2mmであり、金属管の内径に対して1.4%であった。こうして、ケーブル中間接続構造を組み立てた。
【0082】
比較例1では、保護層の外周と金属管の内周との間に空間を設けるように、保護層に対して金属管を設置した。
【0083】
比較例2では、比較例1の上記空間に、金属管の注入孔から撹拌したウレタン樹脂の原料である液状のポリイソシアネートおよび液状のポリオールを注入した。その後、ポリオール反応が終わるまで待機して、上記空間に充填した。こうして、ケーブル中間接続構造を組み立てた。
【0084】
(実施例2)
実施例1について、コンパウンド部の構成をコンパウンドシートから複数のコンパウンドブロックに変更した以外は、実施例1と同様にして、ケーブル中間接続構造を組み立てた。具体的には、厚さ18mmのコンパウンドブロックを4つ用いた。4つのコンパウンドブロックを保護層5の周方向に亘って保護層5の外周(外径108mm)に設置して、厚さ18mmのコンパウンド部7(仕上がり外径144mm)を形成した。その後、コンパウンド部7の外周に金属管9(内径148mm)を設置した。クリアランスcは2mmであり、金属管の内径に対して1.4%であった。こうして、ケーブル中間接続構造を組み立てた。
【0085】
(実施例3)
実施例1について、コンパウンド部の構成をコンパウンドシートから筒型コンパウンドブロックに変更した以外は、実施例1と同様にして、ケーブル中間接続構造を組み立てた。具体的には、長手方向の全体に亘って設けられる1つの切り込み部を持つ、厚さ18mmの筒型コンパウンドブロックを用いた。筒型コンパウンドブロックを保護層5の外周(外径108mm)に装着して、厚さ18mmのコンパウンド部7(仕上がり外径144mm)を形成した。その後、コンパウンド部7の外周に金属管9(内径148mm)を設置した。クリアランスcは2mmであり、金属管の内径に対して1.4%であった。こうして、ケーブル中間接続構造を組み立てた。
【0086】
実施例1~3および比較例1~2で組み立てたケーブル中間接続構造について、下記の測定を行った。結果を表1に示す。
【0087】
[組み立て時間]
ケーブル中間接続構造の組み立て時間を測定した。
【0088】
[ゴムユニットの外周面温度]
ケーブル中間接続構造の通電評価として、電力ケーブルに電流を流し、導体接続部から遠方(4m以上。)のケーブル導体の温度が90℃になったときの、ケーブル中間接続構造内部の最大導体温度とゴムユニット3の外周の表面温度を測定した。ゴムユニット3の表面温度を測定した外周の位置は、ケーブル導体同士の接合部の外側とした。
【0089】
【0090】
表1に示すように、実施例1~3では、液状のコンパウンドを注入した比較例2に比べて、組み立て時間が大幅に短縮され、ゴムユニットの外周面温度のばらつきが抑制された。特に、実施例1に比べて、複数のコンパウンドブロックを用いた実施例2の組み立て時間はさらに短くなり、筒型コンパウンドブロックを用いた実施例3の組み立て時間は最も短かった。ケーブル中間接続構造内部の最大導体温度は、実施例1~3と比較例2で差は2℃程度であり、導体接続部の遠方部の温度と同じであり、ゴムユニット内部の絶縁性能は維持されていた。
【0091】
一方、液状のコンパウンドを注入した比較例2では、コンパウンドの注入やコンパウンドの硬化のため、組み立て時間が非常に長かった。また、コンパウンド部の充填状態が非常に不均一であったため、ゴムユニットの外周表面では、8℃の温度の大きなばらつきが生じた。また、コンパウンド部を具備しない比較例1では、ゴムユニットからコンパウンド部への熱の拡散がないため、ケーブル中間接続構造内部の最大導体温度は101℃と高く、ゴムユニット表面でも89℃になり、絶縁性能の低下も懸念される。