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特開2023-163217成膜装置、成膜方法、および電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163217
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法、および電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20231102BHJP
   C23C 14/54 20060101ALI20231102BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231102BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C23C14/04 A
C23C14/54 G
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073968
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 博之
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 直之
(72)【発明者】
【氏名】渡部 新
(72)【発明者】
【氏名】金井 亮太
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG05
3K107GG33
3K107GG54
4K029AA02
4K029AA06
4K029AA09
4K029AA11
4K029AA24
4K029CA01
4K029CA05
4K029DA03
4K029HA01
4K029HA02
4K029JA01
4K029JA05
4K029KA01
4K029KA09
(57)【要約】
【課題】基板の所望の成膜位置と実際の成膜位置の間のずれを抑制する技術を提供する。
【解決手段】基板に設けた基板マークと、マスクに設けたマスクマークとを用いて基板とマスクとの位置合わせを行うアライメント手段と、位置合わせされた基板とマスクとを密着させる密着手段と、基板に密着されたマスクを介して基板に成膜を行う成膜手段を有する成膜装置であって、成膜手段による成膜が開始された後に、基板マークおよびマスクマークの少なくとも一方を撮影する撮影手段を有する成膜装置を用いる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けた基板マークと、マスクに設けたマスクマークとを用いて前記基板と前記マスクとの位置合わせを行うアライメント手段と、
前記アライメント手段によって位置合わせされた前記基板と前記マスクとを密着させる密着手段と、
前記密着手段によって前記基板と密着された前記マスクを介して前記基板に成膜を行う成膜手段と、
を有する成膜装置であって、
前記成膜手段による成膜が開始された後に、前記基板マークおよび前記マスクマークの少なくとも一方を撮影する撮影手段を有する
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記撮影手段の撮影した画像を解析して、前記アライメント手段で用いるオフセット量を算出して前記アライメント手段を制御する制御手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記アライメント手段は、前記位置合わせの際に、前記基板マークと前記マスクマークが所定の位置関係となるように、前記基板と前記マスクの相対的な位置を調整する
ことを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記位置合わせの際に、前記基板マークの座標値と前記マスクマークの座標値とが所定の位置関係となるように前記アライメント手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記撮影手段は、前記基板と前記マスクとを密着させた状態で、前記マスクのマスクフレームより内側の領域に設けられる前記マスクマーク及び前記基板マークの少なくとも一方を撮影する
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記撮影手段の撮影した画像から算出した前記基板と前記マスクの位置ずれ量が所定の閾値以上となった場合、成膜を停止するように、前記成膜手段を制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記位置ずれ量が前記所定の閾値以上となった後に、前記所定の閾値未満になった場合、成膜を再開するように、前記成膜手段を制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
アライメント手段と、密着手段と、成膜手段と、撮影手段と、を備える成膜装置を用いた成膜方法であって、
前記アライメント手段が、基板に設けた基板マークと、マスクに設けたマスクマークとを用いて前記基板と前記マスクとの位置合わせを行うアライメント工程と、
前記密着手段が、前記位置合わせ後に前記基板と前記マスクとを密着させる密着工程と、
前記成膜手段が、前記基板と前記マスクとを密着させた後、前記マスクを介して前記基板上に成膜を行う成膜工程と、
を有し、
前記撮影手段は、前記成膜工程における成膜が開始された後に、前記基板マークおよび前記マスクマークの少なくとも一方を撮影する
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
前記成膜装置は制御手段をさらに備え、
前記制御手段が、前記撮影手段の撮影した画像を解析して、前記アライメント手段で用いるオフセット量を算出して前記アライメント手段を制御する制御工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項8に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記アライメント工程において、前記アライメント手段は、前記位置合わせの際に、前記基板マークと前記マスクマークが所定の位置関係となるように、前記基板と前記マスクの相対的な位置を調整する
ことを特徴とする請求項9に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記アライメント工程において、前記制御手段は、前記位置合わせの際に、前記基板マークの座標値と前記マスクマークの座標値とが所定の位置関係となるように、前記アライメント手段を制御することを特徴とする請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記成膜工程において、前記撮影手段は、前記基板と前記マスクとを密着させた状態で、前記マスクのマスクフレームより内側の領域に設けられる前記マスクマーク及び前記基板マークの少なくとも一方を撮影する
ことを特徴とする請求項8に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記成膜工程において、前記制御手段は、前記撮影手段の撮影した画像から算出した前記基板と前記マスクの位置ずれ量が所定の閾値以上となった場合、成膜を停止するように前記アライメント手段を制御する
ことを特徴とする請求項9に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記成膜工程において、前記制御手段は、前記位置ずれ量が前記所定の閾値以上となった後に、前記所定の閾値未満になった場合、成膜を再開するように前記アライメント手段を制御する
ことを特徴とする請求項13に記載の成膜方法。
【請求項15】
請求項8に記載の成膜方法を用いて電子デバイスを製造する
ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、成膜方法、および電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置や液晶表示装置などのフラットパネル表示装置が用いられている。例えば有機EL表示装置は、2つの向かい合う電極の間に、発光を起こす有機物層である発光層を有する機能層が形成された、多層構成の有機EL素子を含んでいる。有機EL素子の機能層や電極層は、成膜装置のチャンバ内で、ガラスなどの基板にマスクを介して成膜材料を付着させることで形成される。製造されるパネルの品質を向上させるためには、成膜材料を基板に付着させる前に、基板とマスクを精度良くアライメント(位置調整)して密着させることが求められる。
【0003】
特許文献1(特開2019-083311号公報)は、基板とマスクを密着させる前に、カメラを用いて基板とマスクそれぞれのマークを撮影することで、基板とマスクをアライメントすることを開示している。また、特許文献2(特開2011-190536号公報)は、パターニングされたマスクを基板に対して相対的に移動させつつ、成膜源も移動させることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-083311号公報
【特許文献2】特開2011-190536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特に成膜源として高熱となる蒸発源を用いる場合などに、マスクや基板が成膜装置内で熱膨張する場合があることが知られている。その結果、成膜前にカメラを用いて基板とマスクそれぞれのマークを撮影して基板とマスクをアライメントしたとしても、成膜中の熱膨張の影響によってマスクと基板の位置関係がずれてしまい、実際に成膜がなされる位置が所望の成膜予定位置からずれてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、基板とマスクとの位置合わせの後に発生し得る、基板の所望の成膜位置と実際の成膜位置の間のずれを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
基板に設けた基板マークと、マスクに設けたマスクマークとを用いて前記基板と前記マスクとの位置合わせを行うアライメント手段と、
前記アライメント手段によって位置合わせされた前記基板と前記マスクとを密着させる密着手段と、
前密着手段によって前記基板と密着された前記マスクを介して前記基板上に成膜を行う成膜手段と、
を有する成膜装置であって、
前記成膜手段による成膜が開始された後に、前記基板マークおよび前記マスクマークの少なくとも一方を撮影する撮影手段を有する
ことを特徴とする成膜装置である。
【0008】
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、
アライメント手段と、密着手段と、成膜手段と、撮影手段と、を備える成膜装置を用いた成膜方法であって、
前記アライメント手段が、基板に設けた基板マークと、マスクに設けたマスクマークとを用いて前記基板と前記マスクとの位置合わせを行うアライメント工程と、
前記密着手段が、前記位置合わせ後に前記基板と前記マスクとを密着させる密着工程と、
前記成膜手段が、前記基板と前記マスクとを密着させた後、前記マスクを介して前記基板上に成膜を行う成膜工程と、
を有し、
前記撮影手段は、前記成膜工程における成膜が開始された後に、前記基板マークおよび前記マスクマークの少なくとも一方を撮影する
ことを特徴とする成膜方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板とマスクとの位置合わせの後に発生し得る、基板の所望の成膜位置と実際の成膜位置の間のずれを抑制する技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の成膜装置を含む電子デバイスの製造ラインの模式図
図2】実施例1の成膜装置の内部構成を示す断面図
図3】実施例1の基板を支持するための構成を示す斜視図
図4】実施例1の基板と基板マークの配置を示す平面図
図5】実施例1のマスクとマスクマークの配置を示す平面図
図6】実施例1の基板マークおよびマスクマークと撮像領域の関係を示す図
図7】実施例1の補正を説明するフロー図
図8】実施例1の基板Sの膨張および変形を説明する図
図9】実施例1のずれ量の算出を説明する図
図10】実施例2の補正を説明するフロー図
図11】電子デバイスの構成を説明する図
図12】従来の理想的な成膜の様子を説明する図
図13】熱膨張が成膜に与える影響を説明する図
図14】熱膨張の影響を補正する様子を説明する図
図15】従来技術で想定される熱膨張の補正を説明するフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成およびソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
本発明は、基板等の成膜対象物の表面に蒸着やスパッタリングにより成膜材料の薄膜を形成する成膜装置に好適である。本発明は、成膜装置、成膜方法、成膜装置の制御方法、として捉えられる。本発明はまた、電子デバイスの製造装置やその制御方法、電子デバイスの製造方法としても捉えられる。本発明はまた、アライメント方法、成膜方法や制御方法をコンピュータに実行させるプログラムや、当該プログラムを格納した記憶媒体としても捉えられる。記憶媒体は、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。
【0013】
本発明は、被成膜対象である基板の表面にマスクを介して所望のパターンの薄膜を形成する成膜装置に好ましく適用できる。基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属、シリコンなど任意のものを利用できる。成膜材料としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物)など任意のものを利用できる。なお、以下の説明における「基板」とは、基板材料の表面に既に1つ以上の成膜が行われたものを含む。本発明の技術は、典型的には、電子デバイスや光学部材の製造装置に適用される。特に、有機EL素子を備える有機ELディスプレイ、それを用いた有機EL表示装置などの有機電子デバイスに好適である。本発明はまた、薄膜太陽電池、有機CMOSイメージセンサにも利用できる。
【0014】
<実施例1>
[装置構成]
(電子デバイスの製造ライン)
図1は、電子デバイスの製造ラインの構成の模式的な平面図である。このような製造ラインは、成膜装置を含む成膜システムと言える。ここでは、有機ELディスプレイの製造ラインについて説明する。有機ELディスプレイを製造する場合、製造ラインに所定のサイズの基板を搬入し、有機ELや金属層の成膜を行った後、基板のカットなどの後処理工程を実施する。
【0015】
製造ラインの成膜クラスタ1は、中央に配置される搬送室130と、搬送室130の周囲に配置される成膜室110およびマスクストック室120を含む。成膜室110は成膜装置を含み、基板Sに対する成膜処理が行われる。マスクストック室120は使用前後のマスクが収納される。複数の成膜室110それぞれに異なる成膜材料を配置して、1つの成膜クラスタ1で複数の膜を基板上に形成するようにしてもよい。また、複数の成膜室110に同じ成膜材料を配置して、複数の基板Sに対して並列に成膜をおこなってもよい。
【0016】
搬送室130内に設置された搬送ロボット140は、基板SやマスクMを搬送室130に搬入および搬出する。搬送ロボット140は、例えば、多関節アームに基板SやマスクMを保持するロボットハンドが取り付けられたロボットである。成膜室110、マスクストック室120、搬送室130、パス室150、バッファ室160、旋回室170などの各チャンバは、有機EL表示パネルの製造過程で高真空状態に維持される。
【0017】
成膜クラスタ1には、基板搬送方向において上流側から流れてくる基板Sを搬送室130に搬送するパス室150と、搬送室130での成膜処理が完了した基板Sを下流側の他の成膜クラスタに搬送するためのバッファ室160が含まれる。搬送室130の搬送ロボット140は、パス室150から基板Sを受け取ると、複数の成膜室110のうちの一つに搬送する。搬送ロボット140はまた、成膜処理が完了した基板Sを成膜室110から受け取り、バッファ室160に搬送する。パス室150のさらに上流側や、バッファ室160のさらに下流側に、基板Sの方向を変える旋回室170が設けられる。製造ラインには、基板上への積層の数に応じて必要な数だけ、このような成膜クラスタ1を連結して配置してもよい。
【0018】
(成膜装置)
図2は、成膜装置の構成を模式的に示す断面図である。複数の成膜室110それぞれには、成膜装置108が設けられている。成膜装置108では、搬送ロボット140との基板SやマスクMの受け渡し、基板SとマスクMの相対位置の調整(アライメント)、マスクと基板Sの固定、成膜などの一連の成膜プロセスが行われる。
【0019】
以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を用いるが、本発明はそれに限定されるものではない。XYZ直交座標系において、成膜時に基板Sが水平面
(XY平面)と平行となるよう固定された場合、長辺と短辺を有する矩形の基板Sの長手方向をX方向、短手方向をY方向とする。また、Z軸まわりの回転角をθで表す。
【0020】
成膜装置108は、真空チャンバ200を有する。真空チャンバ200の内部は、真空雰囲気、または、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。真空チャンバ200の内部には、基板支持ユニット210、マスクM、マスク台228、冷却板230、および蒸発源240が設けられる。
【0021】
基板支持ユニット210は、搬送ロボット140から受け取った基板Sを支持する基板支持手段である。マスクMは、基板上に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンを持つ。マスクMとして例えば、剛性の高いフレームに、開口パターンが設けられた金属箔が張架された構成のメタルマスクが用いられる。枠状の構造を持つマスク台228は、その上にマスクMが設置されるマスク支持手段である。本実施例では、基板SとマスクMがアライメントされた後、マスク上に基板Sが載置されて、成膜が行われる。
【0022】
冷却板230は、成膜時には、基板Sの、マスクMと接触する面とは反対側の面に接触し、成膜時の基板Sの温度上昇を抑える板状部材である。冷却板230が基板Sを冷却することにより、有機材料の変質や劣化が抑制される。冷却板230はまた、基板Sを介して基板Sに接触しているマスクMを冷却することもできる。冷却板230はさらに、磁力によってマスクMを引き付けることで、成膜時の基板SとマスクMの密着性を高めるためのマグネット板を兼ねていてもよい。なお、基板SとマスクMの密着性を高めるために、基板支持ユニット210が基板SとマスクMを両方とも保持してもよい。
【0023】
蒸発源240は、蒸着材料を収容する容器であるルツボ、ルツボを加熱するヒータ、蒸着材料の飛散状況を制御するための開閉可能なシャッタ、蒸発レートモニタなどから構成される。成膜装置108は、蒸発源240を移動させる駆動機構を備えていてもよい。駆動機構の動作により、蒸発源240が移動しながら成膜を行うことで、基板上の膜厚を均質にできる。駆動機構は、成膜時以外は蒸発源240を所定位置(ホームポジション)に退避させておき、成膜が開始されると蒸発源240を移動させるような構成であってもよい。本実施例の成膜装置は蒸着装置であるため、成膜源として成膜材料(蒸着材料)を加熱して蒸発させる蒸発源240が用いられる。ただし、成膜源は蒸発源240には限定されず、例えばスパッタリングターゲットを用いるスパッタリング装置であってもよい。蒸発源240は、基板SとマスクMが密着した後、マスクMを介して基板上に成膜を行う、成膜手段である。なお、蒸発源240と制御部270を合わせて、成膜手段だと考えてもよい。
【0024】
真空チャンバ200の外側上部には、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、冷却板Zアクチュエータ252が設けられる。各アクチュエータは例えば、モータとボールねじ、モータとリニアガイドなどで構成される。真空チャンバ200の外側上部にはさらに、アライメントステージ280が設けられている。
【0025】
基板Zアクチュエータ250は、基板支持ユニット210全体をZ軸方向に昇降させる駆動手段である。クランプZアクチュエータ251は、基板支持ユニット210の挟持機構を開閉させる駆動手段である。冷却板Zアクチュエータ252は、冷却板230を昇降させる駆動手段である。
【0026】
アライメントステージ280は、基板SをXY方向に移動させ、またθ方向に回転させてマスクMとの位置を変化させる。アライメントステージ280は、基板SとマスクMの位置合わせであるアライメント工程を行うアライメント手段である。アライメントステージ280は、真空チャンバ200に接続されて固定されるチャンバ固定部281、XYθ
移動を行うためのアクチュエータ部282、基板支持ユニット210と接続される接続部283を備える。なお、アライメントステージ280と基板支持ユニット210を合わせてアライメント手段と考えてもよい。また、アライメントステージ280と基板支持ユニット210に、さらに制御部270を加えてアライメント手段だと考えても良い。
【0027】
アクチュエータ部282としては、Xアクチュエータ、Yアクチュエータおよびθアクチュエータを積み重ねられたアクチュエータを用いてもよい。また、複数のアクチュエータが協働するUVW方式のアクチュエータを用いてもよい。いずれの方式のアクチュエータ部282であっても、制御部270から送信される制御信号に従って駆動し、基板SをX方向およびY方向に移動させ、θ方向に回転させる。制御信号は、積み重ね方式のアクチュエータであればXYθ各アクチュエータの動作量を示し、UVW方式のアクチュエータであればUVW各アクチュエータの動作量を示す。
【0028】
アライメントステージ280は基板支持ユニット210をXYθ移動させる。なお、本実施例では基板Sの位置を調整する構成としたが、平面内における基板SとマスクMの相対的な位置関係を調整できればよい。したがって、マスクMの位置を調整する構成や、基板SとマスクM両方の位置を調整する構成でもよい。
【0029】
図3の斜視図を参照して、基板支持ユニット210の構成例を説明する。基板支持ユニット210は、基板Sの各辺を支持する複数の支持具300が設けられた支持枠体301と、複数の押圧具302が設けられたクランプ部材303を有する。複数の押圧具302と複数の支持具300は、間に基板Sを挟み込んで固定する。一対の支持具300と押圧具302が1つの挟持機構305を構成する。ただし、挟持機構305の数や配置はこれに限られない。また、挟持方式ではなく、基板Sを支持具に載置する方式でも良い。あるいは、静電気力により基板Sを吸着する静電チャックを用いてもよい。
【0030】
アライメントステージ280が、基板Sを保持した状態の基板支持ユニット210に駆動力を伝達することにより、基板SのマスクMに対する相対位置が微調整される。基板SのZ方向移動においては、基板Zアクチュエータ250が駆動して基板支持ユニット210を移動させ、基板Sを昇降させる。これにより、基板SとマスクMが接近または離間する。さらに基板Sを降下させることで、基板SとマスクMを密着させることができるので、基板Zアクチュエータ250は、基板SとマスクMの密着工程を行う密着手段である。なお、基板Zアクチュエータ250と制御部270を合わせて、密着手段と考えることもできる。基板SのXYθ移動においては、アライメントステージ280が基板SをXY方向に並進移動、またはθ方向に回転移動させる。アライメント時に基板Sが移動するのは、基板が配置されたXY平面内であり、当該XY平面はマスクMが配置された平面と略平行である。すなわち、基板SのXYθ移動のときには基板SとマスクMのZ方向の距離は変化せず、XY平面内において基板Sの位置が変化する。これにより、基板SとマスクMが面内で位置合わせされる。
【0031】
真空チャンバ200の外側上部には、撮影手段として、光学撮像を行って画像データを生成する、撮影手段としての複数のカメラが設けられている。複数のカメラには、基板SおよびマスクMの四隅を撮像領域とする、四つの第1のカメラ260(アライメント用カメラ)と、基板SおよびマスクMのY軸方向(長手方向)の二辺の中央部を撮像領域とする、2つの第2のカメラ261(追加カメラ、成膜中撮像用カメラ)が含まれる。第1のカメラ260は基板SとマスクMのアライメントに用いられる。また、第2のカメラ261は、成膜が開始された後(成膜開始後)に、基板マークとマスクマークの成膜中の様子を撮影するために追加されたカメラである。ただし、第2のカメラ261に加えて第1のカメラ260を成膜中の撮像に用いてもよい。また、第2のカメラ261を第1のカメラ260に加えてアライメントに用いてもよい。
【0032】
第1のカメラ260と第2のカメラ261は、真空チャンバ200の天板に設けられた窓を通して撮像を行う。なお、本実施例での基板SとマスクMのアライメントは、第1のカメラ260を用いた一段階アライメントである。しかし、大まかなアライメントであるラフアライメントと、精細なアライメントであるファインアライメントと、の二段階アライメントを行ってもよい。二段階アライメントを行う場合、成膜装置108に、低解像だが広視野のラフアライメント用のカメラと、狭視野だが高解像のファインアライメント用のカメラと、を設けるとよい。
【0033】
制御部270は、第1のカメラ260により撮像された画像データを解析することにより、第1の基板マーク103および第1のマスクマーク223の位置情報を取得する。制御部270は、第1の基板マーク103と第1のマスクマーク223の間の距離や角度を算出し、所定の許容範囲に収まっているかどうかを判定する。距離や角度が所定の許容範囲を超えていれば、基板Sを面内において移動させるときの移動量を算出する。そして、移動量に基づいてアライメントステージ280の制御量を算出し、基板Sを面内移動させる。
【0034】
制御部270は、制御手段として、アクチュエータ部282の各アクチュエータの動作制御、カメラ261の撮影制御および画像データ解析、基板SおよびマスクMの搬出入制御およびアライメント制御、成膜源の制御、成膜の制御、その他様々な制御工程を行う。制御部270は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/Oなどを有するコンピュータにより構成可能である。この場合、制御部270の機能は、メモリ又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部270の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置ごとに制御部270が設けられていてもよいし、1つの制御部270が複数の成膜装置を制御してもよい。
【0035】
図4図6を参照して、基板SとマスクMに配置されたマークと、各カメラの撮像領域との関係を説明する。図4は、基板Sに設けられた基板マークの配置を示す。本実施例の第1の基板マーク103は基板Sの四隅に設けられており、場所ごとに区別する必要がある場合は、a~dの添字を付けて、103a~103dと表記する。また本実施例の第1の基板マーク103は、正しくアライメントされると第1のマスクマーク223に隣接する位置に来る隣接マーク(図中では十字型で示す)と、主に角度のずれを算出するために用いられる角度マーク(図中では四角形で示す)の二種類を含む。それぞれを区別する必要がある場合は、隣接マークについては、103a1,103b1…と添字を付し、角度マークについては103a2,103b2…と添字を付す。ただし、必ずしも二種類の基板マークを用いる必要はなく、いずれか一方の基板マークと、マスクマークとを所定の位置関係とするような構成でもよい。
【0036】
基板Sにはさらに、二つの第2の基板マーク104が、基板Sの長辺(長手方向の辺)の中央部に設けられている。二つを区別する必要がある場合は添字を付けて、104a~104bと表記する。第2の基板マーク104にも、隣接マーク(104a1,104b1)と、角度マーク(104a2,104b2)の二種類が含まれる。
【0037】
図5は、マスクMに設けられたマスクマークの配置を示す。マスクMは、剛性の高い金属材料などで構成されるマスクフレームである枠体221に、金属箔などで構成される箔222が張架された構成である。箔222には、成膜パターンに応じた開口が設けられている。なお、枠体221に、パネルの切り分け時の切断ラインに沿った形状の桟を設けて
もよく、それにより強度の向上を期待できる。
【0038】
本実施例の第1のマスクマーク223はマスクMの四隅に設けられており、場所ごとに区別する必要がある場合は、a~dの添字を付ける。マスクMにはさらに、二つの第2のマスクマーク224(224a,224b)が、マスクMの長辺の中央部に設けられている。
【0039】
図6は、基板SとマスクMを重ねた様子を示す透過図である。本実施例では基板SとマスクMを平面視で同サイズとしているが、これには限定されない。本実施例では、第1のカメラ260は基板SおよびマスクMの四隅の上方それぞれに1つずつ、合計4つ配置されており、必要に応じて260a~260dと添字を付けて区別する。また第2のカメラ261(261a,261b)は基板SおよびマスクMの長辺の中央部の上方それぞれに1つずつ配置されている。
【0040】
破線の円は、各カメラの撮像領域を示している。第1のカメラ260a~260dの撮像領域は、第1の撮像領域263a~263dである。第2のカメラ261a~261bの撮像領域は、第2の撮像領域264a~264bである。基板SとマスクMが正しくアライメントされたとき、図示したように、第1の撮像領域263には、第1の基板マーク103の隣接マークと角度マーク、および、第1のマスクマーク223が、1つずつ含まれる。第2の撮像領域264には、第2の基板マーク104の隣接マークと角度マーク、および、第2のマスクマーク224が、1つずつ含まれる。
【0041】
本実施例では、第1の基板マーク103および第2の基板マーク104は、フォトリソグラフィーによって基板上に形成される。また、第1のマスクマーク223は、機械加工によってマスクMの枠体221に形成される。また、第2のマスクマーク224は、マスクMの箔222の部分に印刷により形成される。ただし、マークの形成方法や形成される位置はこれらに限られず、材料などに応じて適宜選択できる。また、マークの形状やサイズは、カメラの性能や画像解析の能力に応じて適宜設定できる。
【0042】
ただし、アライメントマークの数および設置場所、ならびに、カメラの数、設置場所および種類は、この例に限定されない。
【0043】
(熱膨張の影響と、従来のオフセット補正の想定例)
本出願の発明者が検討した結果、従来の成膜方法には改良の余地があることが分かった。具体的には、成膜前に基板SとマスクMをアライメントした場合であっても、成膜中の基板SおよびマスクMの少なくともいずれか一方の熱膨張により、実際の成膜位置が所望の成膜予定位置からずれてしまう課題が存在する。
【0044】
このような、成膜中に基板およびマスクの少なくとも一方が熱膨張することによる成膜への影響を検討する。図12(a)は、基板SおよびマスクMのマークと、カメラの撮像領域の関係を示す透過図である。図は、基板SとマスクMのサイズが同じであり、両者がアライメントされ重なり合った状態である。基板Sには基板マーク103(103a~103d)が、マスクMにはマスクマーク223(223a~223d)が設けられている。4台のカメラが撮像領域263(263a~263d)を撮影している。マスクMは、枠体221の内縁221aによって、枠体221と箔222に区分される。箔222は、点線で示す境界線222bによって、外側の余白領域222aと、成膜材料が通過する開口が設けられた内側のパターン形成領域222cに分けられる。
【0045】
図12(b)は、成膜中に基板SやマスクMに熱膨張が起こらなかった場合の、成膜済みの基板Sである。成膜済み基板Sの表面には、パターン形成領域222cに設けられた
開口に応じて、膜11が形成されている。
【0046】
一方、図13(a)は、成膜中に基板Sが蒸発源の加熱により、紙面で右下方向に大きく膨張した様子を示す。このような方位の偏った膨張は、例えば、熱源となる成膜源と基板Sとの相対的な位置関係によって起こり得る。この場合、成膜前には図12(a)に示すような精度良いアライメントを行われたとしても、成膜が進行して熱膨張が進むにつれて、図13(a)に示すように、撮像領域263内での基板マーク103とマスクマーク223との位置関係が所定の基準を満たさなくなってしまう。
【0047】
図13(b)は、このように熱膨張した状態で蒸着を行ったときの、基板S(b)と膜11(b)を示している。本想定例ではマスクMは熱膨張していないため、パターン形成領域222cの位置やサイズは元のままである。したがって、基板S(b)の右下方向への膨張に伴って、基板S(b)上の膜11(b)の相対的な位置がずれてしまう。図13(c)は、図13(b)の基板S(b)が冷却された様子を示す。基板S(c)のサイズは、冷却により収縮して元に戻っている。このとき、膜11(c)の形成される位置は、所望の成膜予定位置からずれている。
【0048】
このように、基板SとマスクMの熱膨張率に違いがあることで、基板Sに形成される薄膜の位置がずれる可能性がある。また、成膜室ごとに膨張の傾向が異なる場合、基板上に形成される層の間でパターンのズレが生じてしまう可能性もある。すなわち、図12(a)のようにアライメントしたとしても、図12(b)のように理想的な成膜が行われるとは限らず、図13(a)のような熱膨張の影響により、図13(b)~図13(c)に示すような成膜が行われてしまう課題である。
【0049】
本願の発明者は、かかる熱膨張の影響を低減するためのオフセット補正に注目して検討を行った。以下、従来のオフセット補正で起こると想定される課題について説明する。以下、図面を参照して、成膜の仮定で起こり得る熱膨張の影響と、従来の技術水準から想定される、その熱膨張に対するオフセット補正を説明するためのフローを説明する。なお、発明者は検討により、基板Sの方がマスクMよりも熱膨張率が高くなる傾向があることを認識した。ただし本発明は、マスクMの方が基板Sよりも熱膨張率が高い場合であっても適用できる。
【0050】
図14は、従来の技術水準で想定される補正の内容を説明する図である。図14(a)は、図13(c)に示したものと同じ基板S(c)であり、膜11(c)の位置が成膜予定位置からずれている。図14(b)は、図12(b)で示したものと同じ、熱膨張が起こらなかった場合の理想的な膜11(i)が成膜された基板S(i)である。以下に説明する図15のフローでは、従来の技術水準において、熱膨張の影響を低減する方法を示す。
【0051】
まず、ステップS101で、搬送ロボット140がマスクMを成膜室110に搬入する。ステップS102で、搬送ロボット140が基板Sを成膜室110に搬入する。ステップS103で、基板Zアクチュエータ250が、基板SとマスクMのZ方向の距離を所定のアライメント距離まで接近させる。ステップS104で、第1のカメラ260が第1の撮像領域263を撮像し、画像解析により第1の基板マーク103と第1のマスクマーク223を検出する。ステップS105で、制御部270が第1の基板マーク103と第1のマスクマーク223の位置関係に基づいて、XYθ各方向における基板Sの移動量を算出する。
【0052】
そして、ステップS106で、制御部270が、メモリ等の記憶部内に記憶されているオフセット量に基づいて、移動量を補正する。このオフセット量については後述する。な
お、オフセット量が未算出の場合には補正は行われない。ステップS107で、アライメントステージ280が、移動量をオフセット量で補正した制御量により、基板Sを麺内移動させる。そして、基板Zアクチュエータ250が、基板SをマスクMに載置して密着させる。ステップS108で、蒸発源240が加熱を開始して成膜材料を蒸発させ、マスクMの開口に応じた膜11を形成する。この工程では、加熱の影響による基板Sの膨張が起こっている。ステップS109で、搬送ロボット104が成膜済みの基板Sを成膜室110から搬出する。
【0053】
ステップS110で、制御部270が、あるマスクMを用いて所定の枚数の基板Sを処理したかどうかを判定する。所定枚数に到達していない(NO)の場合はステップS102に戻って次の基板Sを処理する。所定枚数に到達した場合(YES)は、ステップS111に進み、搬送ロボット104がマスクMを成膜室110から搬出する。ステップS112で、制御部270が、成膜処理全体が完了したかどうかを判定する。完了した場合(YES)は、処理を終了する。完了していない場合は、処理を続行する。
【0054】
ステップS113~S115はオフセット量の算出処理である。すなわち、この想定例では、マスクMの交換ごとに補正計算がやり直される。ステップS113で、制御部270は、第1のカメラ260を用いて、図14(a)に示す実際に成膜された基板S(c)を撮像し、膜11(c)が形成された領域の位置情報を取得する。例えば、膜11(c)の四隅が4つの第1のカメラ260それぞれの撮像領域に収まる場合は、四隅の位置に基づいて膜11(c)の範囲を特定してもよい。また、基板S(c)の全体を撮影できるようなカメラを用いてもよい。制御部270は、撮像画像を解析し、四隅の座標に基づいて膜11(c)の範囲の中心の座標(A,B)を算出する。
【0055】
ステップS114で、制御部270は、成膜パターンの想定位置からのずれ量を算出し、この想定例の場合は(A-C,B-D)となる。ステップS115で、制御部270は、ずれ量に基づいてアライメント時の基板Sのオフセット量を算出し、この想定例の場合は左上へのずれを補償するように、基板Sを右下に移動させるオフセット(C-A,D-B)を与える(矢印F)。なお、本想定例では簡易的に、図14(b)に示す理想的な成膜パターンにおける膜11(i)の中心の座標(C,D)と、実際に成膜されたときの中心の座標(A,B)を比較したが、より複雑な変形を考慮してオフセット量を算出することも好ましい。その場合、実際に形成された膜11(c)の四隅の座標や、辺の変形を解析し、XY方向オフセット量に反映する。また、膨張の過程における基板Sの回転成分を計測、算出し、θ方向オフセット量に反映することも好ましい。
【0056】
(想定例の問題点)
上記の、従来の技術水準からの想定例においては、マスクMを交換するタイミングで基板Sに形成された成膜パターンを解析して、ずれ量を算出し、アライメント時のオフセット量に反映していた。これにより、基板SとマスクMの相対位置が成膜前の計測時から変化する場合であっても、成膜の位置ずれを低減しようとしていた。しかしながら、マスクMを交換するタイミングは、所定の枚数の基板Sへの成膜が終了した後であるため、位置ずれ量をオフセット量に反映するまでに時間が経過してしまい、補正が間に合わないケースがあった。さらに、上記フローで成膜パターンを解析できるのは成膜が終了した後になるため、成膜中に実際に起こっている熱膨張の様子を測定することはできず、オフセットの精度向上の余地が残っていた。
【0057】
ここで、上記の想定例のフローを、基板Sを処理するごとに成膜パターンの位置ずれを計測するように変更することも考えられる。具体的には例えば、図15のフローのステップS109の後に基板上の成膜パターンを解析し、次の基板Sのオフセット量に反映する方法である。しかし、この場合は、基板Sを1枚成膜するたびに撮像、解析およびオフセ
ット計算の各処理が必要になるので、タクトタイムが長くなってしまうという問題がある。さらにこの場合でも、成膜中の熱膨張の様子を測定することはできない。
【0058】
(本実施例のオフセット補正)
発明者が上記の問題を鋭意検討した結果、成膜開始後に基板SおよびマスクMのマークを撮像して解析することで、成膜中の位置ずれを把握することが可能になり、よりリアルタイム性が高く、精度の良いオフセット補正が可能になることを見出した。以下に本実施例のオフセット補正を説明する。本実施例の基板SとマスクMに配置されたマークと、各カメラの撮像領域との関係は、図4図6を用いて上で説明した通りである。
【0059】
図7は、本実施例の処理を示すフロー図である。上記の想定例と同じ工程については、同じステップ番号を付しており、説明を簡略化する。ステップS101~S108では、成膜室110へのマスクMおよび基板Sの搬入、成膜前の事前アライメント(アライメント距離における撮像と、面内移動)、密着状態での加熱蒸着、が行われる。
【0060】
成膜装置が備える撮影手段は、成膜が開始された後であっても撮像が可能に構成されている。なお、成膜が開始された後に撮像を行うカメラは、アライメントに用いるものと同じであってもよく、別であってもよい。また、アライメント用カメラと、アライメント用以外のカメラが、ともに成膜中の撮像を行ってもよい。ステップS201では、第1のカメラ260a~260dが第1の撮像領域263a~263dを、第2のカメラ261a,261bが、第2の撮像領域264a,264bを、各々撮像する。そして、各撮像領域の撮像画像において画像認識処理を行って基板マークおよびマスクマークを検出する。
【0061】
ステップS202では、制御部270が、各マーク位置を解析して、成膜前のアライメントで撮影されたマーク間の相対位置と、成膜中に撮影されたマーク間の相対位置とのずれ量を算出する。そして、基板SとマスクMの熱膨張や変形の程度を算出する。図8は、本実施例での成膜中の基板SとマスクMの状態を示す。ここでは、基板Sが熱膨張により変形して、主に左上方向に拡張するとともに、僅かに右回転するような変形が起こっている。
【0062】
なお、成膜開始後に徐々に蒸発源が加熱されていく場合や、蒸発源を成膜室内でスキャンして広い範囲を成膜する場合、撮像のタイミングによって状態が変化することが考えられる。その場合、成膜開始後に十分な時間が経過した時点で撮像をする方法や、複数回の撮像を行い平均的な位置ずれ量を算出する方法などを用いてもよい。
【0063】
図9は、制御部270がずれ量の算出を行う際の解析手法の一例を説明するための図である。図9(a)~図9(d)はそれぞれ、第1の撮像領域263a~263dでの撮像画像を拡大したものである。図9(e),図9(f)はそれぞれ、第2の撮像領域264a、264bでの撮像画像を拡大したものである。
【0064】
図9(a)を例にすると、第1の基板マーク103aは、隣接マーク103a1の十字型の縦線を延長した先に、角度マーク103a2が来るように配置されている。そして、隣接マーク103a1の横線を延長した線と45°の角度で交わるような線を、角度マーク103a2から引く。このときの2つの線の交点を、ターゲットTaと置く。オフセット補正を実行しない場合は、ターゲットTaが、アライメント時に第1のマスクマーク223aが来るような目標となる位置である。同様に、ターゲットTb~Tdは、オフセット補正を実行しない場合の、アライメント時における第1のマスクマーク223b~223dの目標位置である。すなわち、オフセット補正が無く、かつ、アライメントが高精度に行われていれば、第1のマスクマーク223a~223dの位置は、ターゲットTa~Tdと一致する。したがって図9の場合、第1のマスクマーク223a~223dのター
ゲット位置からのずれ量は、矢印Va~Vdで示される。
【0065】
なお、本実施例において、第2の基板マーク104および第2のマスクマーク224を、オフセット補正だけでなくアライメントにも用いることも可能である。その場合にオフセット補正を行わないと仮定すると、ターゲットTe、Tfがそれぞれ、第2のマスクマーク224a,224bの目標位置となる。その場合、第2のマスクマーク224a,224bのターゲット位置からのずれ量は、矢印Ve,Vfで示される。
【0066】
続いて、ステップS203において、制御部270がオフセット量を算出し、記憶部に保存されている値を更新する方法を説明する。一つの例では、制御部270は、図9(a)~図9(f)のそれぞれにおいて、ターゲットTa~Tfと、各マスクマークの位置を解析する。これにより、基板Sの膨張の程度および回転の角度を反映したずれ量(Va~Vf)を算出できる。そして、基板Sが膨張する方向とは反対向きにアライメント時の基板Sを移動させて、算出されたずれ量を補償するようなXYオフセット量を算出する。また、熱膨張時の回転を補償するようなθオフセット量を算出する。
【0067】
なお、制御部270がオフセット量を算出する方法は上記に限られない。例えば、制御部270は、第1のマスクマークが本来位置するべきターゲットTa~Tdの座標を算出する。そして、TaとTdを結ぶ線と、TbとTcを結ぶ線の交点の座標を、基板Sの重心として算出する。続いて、第2のマスクマーク224aと224bを結ぶ直線の中央の位置を、マスクMの重心として算出する。そして、基板Sの重心の座標とマスクMの重心の座標のずれ量を補償するようにオフセット量を算出する。その他、カメラが、基板マーク及びマスクマークの少なくともいずれか一方を撮影し、制御部270のオフセット量算出に利用することが可能な構成であればよい。
【0068】
続いて、ステップS109で、搬送ロボット140が基板Sをチャンバから搬出する。そして、ステップS110で、現在のマスクでの成膜を続行するかを判定する。続行する場合(YES)、S102に戻って次の基板Sを搬入する。上記のS203で算出されたオフセット量が用いられるのは、この次の基板Sの成膜時である。すなわち本実施例では、基板Sごとに順次オフセット量が算出されるので、成膜室内部の状態をリアルタイムに反映したアライメントを行うことができ、成膜の精度が向上する。なお、本実施例では、ある基板Sに適用するオフセット量として、直前の基板Sから算出された値を用いた。しかし、ある基板の前の複数回の測定(例えば、ある基板(N枚目)の3枚前から直前までの3回(N-3枚目~N-1枚目))で得られた値を平均した値を用いてもよい。また、オフセット量算出に時間を要する場合は、全ての基板Sで算出するのではなく、何枚かおきに算出してもよい。
【0069】
続いて、ステップS111でマスクを搬出し、全ての基板Sの処理が終了していなければ(S112=NO)、マスクを交換して処理を続行し、終了していれば(S112=YES)、処理全体を終了させる。
【0070】
上記の説明における、熱膨張や変形の把握に用いるための基板マークやマスクマークの種類、数、または位置は、あくまでも一例であり、装置の構成や目標とするアライメント精度などに応じて適宜定めることができる。例えば、基板マークとして、必ずしも隣接マークと角度マークの二種類を用いる必要はなく、各撮像領域において基板マークとマスクマークを1対1で対応させてもよい。また、アライメントの際には基板SとマスクMのいずれを移動させても良いし、両方を移動させてもよい。アライメントのオフセット量については、基板SとマスクMのいずれに与えてもよいし、両方に与えてもよい。
【0071】
また、上記の説明においては、第1のマスクマーク223はマスクMの枠体221に設
けられ、第2のマスクマーク224はマスクMの箔222に設けられている。一般的なマスクマークのように、枠体にのみマークが形成される構成であっても、オフセット量算出は実施可能である。しかし、箔222にもマスクマークを設けることにより、箔222の熱膨張や変形を直接測定することができる。その結果、枠体221と箔222の素材の違い等が原因で両者の膨張率や変形の仕方が異なる場合であっても、熱膨張や変形の程度を的確に把握し、オフセット量に反映することが可能となるという、さらなる効果が得られる。
【0072】
(効果)
以上で説明した本実施例の処理フローによれば、成膜開始後に撮像を開始して位置ずれ量を把握し、オフセット量を算出するので、マスク交換の都度ではなく、基板ごとに熱膨張や変形を測定する。そのため、位置ずれ量が経時変化する場合であってもリアルタイム性の高いオフセット補正を行うことができる。それにより、1枚のマスクで多数(例えば、数十枚)の基板を処理するような場合でも、オフセット量を随時変更することができ、位置ずれ量の経時変化の影響を抑制できる。また本実施例によれば、成膜終了後ではなく、成膜中に実際に起っている熱膨張や変形を反映することができる。したがって、成膜装置においてアライメント後の成膜中に、基板とマスクの少なくとも一方が熱膨張した場合でも、希望における所望の成膜位置と実際の成膜位置のずれを低減できる。さらに、成膜後に別途測定する必要がないため、タクトタイムを長くすることがない。
【0073】
<実施例2>
本実施例では、成膜中の撮像、ずれ量の算出およびオフセット量の算出についての具体例を説明する。本実施例の装置構成は基本的に実施例1と同様であり、実施例1と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0074】
図10は、本実施例の処理を説明するフロー図である。本図は、図7のステップS107に相当する処理までが完了した時点から開始し、オフセット補正量を算出する方法を実施例1と違う観点から説明するためのフローを示している。
【0075】
ステップS301で、制御部270は第1のカメラ260と第2のカメラ261を始動させる。これ以降、各カメラによる撮像画像のデータが随時、制御部270に入力される。ステップS302で、制御部270は、各カメラの撮像画像に、対応する基板マークおよびマスクマークが検出されるかどうかを判定する。本来は、図7のフローのアライメント処理によって撮像領域内に各マークが入るようになっているが、何らかの原因でずれが生じる可能性があるため、S301~S302でこのような判定を行う。全てのマークを検出できればステップS303に進む。一方、いずれかのマークを検出できていなければ、再び検出を試みる。なお制御部270は、再検出を試みる前に、基板Zアクチュエータ250やアライメントステージ280を用いた基板Sの位置調整や、ユーザへの警報通知などを行ってもよい。
【0076】
ステップS303で蒸発源240が加熱を開始して、成膜が開始される。本フローでは、この加熱により基板SとマスクMの少なくともいずれかが膨張して、マークの座標ずれが生じるものとする。また、本フローでの成膜は、成膜室110の下部の平面内で蒸発源240がスキャンしながら広範囲に膜を形成するような処理だとする。ステップS304で、制御部270は、第1のカメラ260および第2のカメラ261の撮像画像から、各マーク(第1の基板マーク103、第1のマスクマーク223、第2の基板マーク104、第2のマスクマーク224)の座標値を算出する。
【0077】
ステップS305で、制御部270は、各マークのずれ量を算出して、記憶部に保存する。ずれ量は、例えば、アライメント時の撮像画像におけるマークの座標値と、本ステッ
プの時点での撮像画像におけるマークの座標値と、の比較により算出してもよい。ステップS306で、制御部270は、各マークのずれ量が、所定の許容範囲である所定の閾値未満か、それとも所定の閾値以上かを判定する。許容範囲内(閾値未満)であればステップS307に進み、成膜を継続する。
【0078】
一方、いずれかのマークでのずれが許容範囲外(閾値以上)であれば、ステップS308に進み、ユーザに警告を通知する。警告の通知は、画像表示、ランプ、音声など、方法を問わない。続いてステップS309では、成膜スキャンを一時的に停止する。これにより、冷却板230の働きや、成膜室内の温度状況が変化することで、ずれが許容範囲内に収まり、成膜を再開できることが期待できる。なお、本ステップの後にずれ量の判定ステップを再度設けておき、ずれが収まらない場合は処理を終了するようにしてもよい。ステップS310で、制御部270は、基板Sのうち膜が形成されるべき領域全てが成膜されたかどうかを判定する。判定がNOであれば成膜スキャンを続行するとともに、所定の間隔でずれ量の算出と判定を続ける。一方、成膜が終了していれば(S310=YES)、ステップS311に進み、次回の基板Sに適用するオフセット量を算出する。オフセット量の算出方法として例えば、複数回算出されたずれ量の最大値を用いる方法や、平均値を用いる方法がある。本フローによれば、実施例1と同様に成膜中の熱膨張の影響を次回の成膜用のオフセットとして算出でき、また、ずれ量が許容以上である場合に成膜の一時停止や警告表示を行うことができるため、基板及びマスクの少なくとも一方の熱膨張が成膜に与える影響を低減可能である。
【0079】
<変形例>
上記各実施例では、成膜の終了後ではなく成膜中にマークを撮像して位置ずれ量を把握し、オフセット量を算出することで、加熱の影響が反映された、リアルタイム性の高いオフセット補正を行うことができていた。特に、一般的にアライメントで用いられる、マスクMのフレームに設けられた第1のマスクマーク223を撮像する第1のカメラ260に追加して、マスクMの箔部分に設けられた第2のマスクマーク224を撮像する第2のカメラ261を設けることで、箔の変形を精度よく把握してオフセット量の算出に利用することが可能になっていた。このような第2のカメラ261の存在は、成膜中の変形だけではなく、基板SとマスクMの密着時のずれの把握にも役立てることが可能である。
【0080】
例えば、図7のS103~S106のようなアライメント距離におけるアライメントに加えて、S107において基板がマスクMに載置され密着した状態で再度撮像を行って、密着動作によるずれが生じていないかを判定する、成膜前計測を行う場合がある。このような成膜前計測において、追加された第2のカメラ261による撮像画像を用いることで、枠体221ではなく箔222の変形を把握することができる。すなわち、枠体221に張架された箔222が、部分的に枠体221とは異なる変形をすることがあっても、第2のカメラ261の画像を解析することでそれを把握し、密着をやり直したり、ユーザに異常発生を通知したりといった対応が可能になる。
【0081】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施例に係る成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成を示し、有機EL表示装置の製造方法を例示する。
【0082】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図11(a)は有機EL表示装置700の全体図、図11(b)は1画素の断面構造を表している。
【0083】
図11(a)に示すように、有機EL表示装置700の表示領域701には、発光素子を複数備える画素702がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、
発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域701において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子702R、第2発光素子702G、第3発光素子702Bの組み合わせにより画素702が構成されている。画素702は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組み合わせで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0084】
図11(b)は、図11(a)のB-B線における部分断面模式図である。画素702は、複数の発光素子からなり、各発光素子は、基板703上に、第1電極(陽極)704と、正孔輸送層705と、発光層706R、706G、706Bのいずれかと、電子輸送層707と、第2電極(陰極)708と、を有している。これらのうち、正孔輸送層705、発光層706R、706G、706B、電子輸送層707が有機層に当たる。また、本実施例では、発光層706Rは赤色を発する有機EL層、発光層706Gは緑色を発する有機EL層、発光層706Bは青色を発する有機EL層である。発光層706R、706G、706Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0085】
また、第1電極704は、発光素子毎に分離して形成されている。正孔輸送層705と電子輸送層707と第2電極708は、複数の発光素子702R、702G、702Bで共通に形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極704と第2電極708とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極704間に絶縁層709が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層710が設けられている。
【0086】
図11(b)では正孔輸送層705や電子輸送層707は一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によっては、正孔ブロック層や電子ブロック層を備える複数の層で形成されてもよい。また、第1電極704と正孔輸送層705との間には第1電極704から正孔輸送層705への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極708と電子輸送層707の間にも電子注入層が形成することもできる。
【0087】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0088】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1電極704が形成された基板(マザーガラス)703を準備する。
【0089】
第1電極704が形成された基板703の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極704が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層709を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0090】
絶縁層709がパターニングされた基板703を粘着部材が配置された基板キャリアに載置する。粘着部材によって、基板703は保持される。第1の有機材料成膜装置に搬入し、反転後、正孔輸送層705を、表示領域の第1電極704の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層705は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層705は表示領域701よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0091】
次に、正孔輸送層705までが形成された基板703を第2の有機材料成膜装置に搬入する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板703の
赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層706Rを成膜する。
【0092】
発光層706Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層706Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層706Bを成膜する。発光層706R、706G、706Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域701の全体に電子輸送層707を成膜する。電子輸送層707は、3色の発光層706R、706G、706Bに共通の層として形成される。
【0093】
電子輸送層707まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて第2電極708を成膜する。
【0094】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層710を成膜して、基板703への成膜工程を完了する。反転後、粘着部材を基板703から剥離することで、基板キャリアから基板703を分離する。その後、裁断を経て有機EL表示装置700が完成する。
【0095】
絶縁層709がパターニングされた基板703を成膜装置に搬入してから保護層710の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本実施例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【符号の説明】
【0096】
103:第1の基板マーク、104:第2の基板マーク、223:第1のマスクマーク、224:第2のマスクマーク、250:基板Zアクチュエータ、240:蒸発源、260:第1のカメラ、261:第2のカメラ、270:制御部、280:アライメントステージ、M:マスク、S:基板
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