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特開2023-163218疎水性シリカ粉末およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163218
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】疎水性シリカ粉末およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
C01B33/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073974
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】福井 健太
(72)【発明者】
【氏名】岩田 徹
(72)【発明者】
【氏名】安村 健
(72)【発明者】
【氏名】小松原 胆治
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA28
4G072BB05
4G072CC16
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH18
4G072HH28
4G072LL02
4G072QQ07
4G072RR13
4G072RR17
4G072TT06
4G072TT30
4G072UU09
(57)【要約】
【課題】流動性と疎水性に優れ、様々なアプリケーションに適用できる疎水性シリカ粉末を提供する。
【解決手段】シリカ表面が化学構造(-Si(CH-O-)で修飾され、活性水素定量法による表面シラノール基数が1nmあたり2.0個以下であり、遊離オイル量が4.0~13.0質量%である疎水性シリカ粉末。ヒュームドシリカ粉末と環状ジメチルシロキサンを密閉系の反応器内で250~400℃の温度で混合する第1表面処理工程と、さらにシリコーンオイルを混合する第2表面処理工程により得られる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が化学構造(-Si(CH-O-)で修飾された疎水性シリカ粉末であって、
活性水素定量法による表面シラノール基数が1nmあたり2.0個以下であり、
遊離オイル量が4.0~13.0質量%であることを特徴に有する疎水性シリカ粉末。
【請求項2】
目開き355μmの篩、目開き250μmの篩および目開き150μmの篩(いずれも直径75mmの、JIS Z8801準拠の篩である。)を、上からこの順に2cm間隔で重ねた三段篩を準備し、最上段の篩上に粉末5gを乗せ、振幅1mmおよび振動数60Hzで上下に15秒間振とう後に各篩上に残存した粒子量から、下記式(1)によって算出した凝集度が60%以下である請求項1に記載の疎水性シリカ粉末。
凝集度(%)={(上段篩残+中段篩残×0.6+下段篩残×0.2)}÷疎水性シリカ粉末の初期質量×100・・・(1)
【請求項3】
BET比表面積が25~270m/gであり、メタノール滴定法により測定される疎水化度(M値)が60~80容量%であり、粉末表面に存在する炭素含有量が3.0~10.5質量%である請求項1または2に記載の疎水性シリカ粉末。
【請求項4】
ヒュームドシリカ粉末と環状ジメチルシロキサンを、密閉系の反応器内で250~400℃の温度で混合する第1表面処理工程と、さらに、シリコーンオイルを混合する第2表面処理工程とを有することを特徴とする疎水性シリカ粉末の製造方法。
【請求項5】
前記環状ジメチルシロキサンは沸点が300℃以下である請求項4に記載の疎水性シリカ粉末の製造方法。
【請求項6】
前記シリコーンオイルを75~150℃の温度に加熱した状態で噴霧する請求項4または5に記載の疎水性シリカ粉末の製造方法。
【請求項7】
前記第2表面処理工程を、反応容器内で250~400℃の温度でおこなう請求項4または5に記載の疎水性シリカ粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性シリカ粉末およびその製造方法に関する。詳しくは、表面が化学構造(-Si(CH-O-)で修飾され、表面シラノール基数が少なく、流動性に優れた特徴を有する該粉末を提供することである。
【背景技術】
【0002】
シリカ粉末は樹脂等へのチキソトロピー性の付与(増粘剤)や、ゴム・エラストマーの補強充填剤、粉体材料の流動化剤などの用途で幅広く使用されている。その中でも表面が疎水化処理された疎水性シリカ粉末は環境安定性、分散性、耐溶剤性、耐水性に優れており、好適に使用される。例えば、疎水性シリカ粉末を増粘剤や補強充填剤として用いる場合は、マトリクスとの濡れ性が変わることにより増粘性の向上や分散性の向上などの効果が発現する。これらの用途においては、シリカの吸湿や樹脂中での疎水基の脱離などによって上記効果が低下するため、高度な疎水性が要求される。
【0003】
また、粉体材料の流動化剤として疎水性シリカ粉末を用いると親水性シリカ粉末よりもシリカ表面のシラノール基による水素結合性の付着力が低減されるため、流動性が向上する。
【0004】
疎水性シリカ粉末の製造方法としては、例えば特許文献1には環状ジメチルシロキサンでの疎水化処理や特許文献2にはヘキサメチルジシラザンなどの低分子のトリメチルシリル化剤を気体で親水性シリカ粉末に接触させて疎水化処理することが報告されている。また特許文献3にはシリコーンオイルで疎水化処理することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-352606号公報
【特許文献2】特開2000-264621号公報
【特許文献3】特公昭57-2641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載された親水性シリカ粉末に気体の疎水化剤を接触させて得られる疎水性シリカ粉末は、表面を均一に疎水化処理でき、シリカ表面全体が同程度の疎水性を有する点や流動性が高い点で優れているが、一方で疎水化剤の修飾基が立体的にかさ高い構造をもつために反応点であるシリカ表面のシラノール基をすべて修飾することができず、未反応のシラノール基が残存するといった課題があった。そのため、シリカ表面の残存シラノール基によるシリカ粉末とマトリクスとの親和性の低下や流動性の低下を防ぐためにさらなる疎水性の向上が求められていた。
【0007】
また特許文献3に記載された疎水化方法はシリコーンオイルで疎水化しているため高い疎水性を有する点で優れているが、シリコーンオイルでは表面を均一に処理できず、シリカ表面のシラノール基がシリコーンオイルによって覆われていない部分が存在する。そのため、粒子間におけるシラノール基同士での水素結合性の相互作用によってシリカ粉末の凝集が起こり、流動性が低下するという課題があった。また、シリコーンオイルは高分子であるため粘性が高く、過剰なシリコーンオイルを添加した場合に流動性が低下するという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、さまざまなアプリケーションに適用可能な疎水性シリカ粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、反応温度が250℃以上の条件下において、環状ジメチルシロキサンで処理後にシリコーンオイルで処理した疎水性シリカ粉末は、環状ジメチルシロキサンにより修飾された部位がシリコーンオイルと親和性が高いため、シリコーンオイルがシリカ表面に固着しやすくなることを見出した。したがって、シリカ表面にシリコーンオイルが固着することにより、従来の方法の利点である疎水化処理の均一性と高い疎水性を維持しつつ、流動性を向上させた疎水性シリカ粉末を得ることに成功し、本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、本発明の疎水性シリカ粉末は、シリカ表面が化学構造(-Si(CH-O-)で修飾された疎水性シリカ粉末であって、活性水素定量法による表面シラノール基数が1nmあたり2.0個以下であり、遊離オイル量が4.0~13.0質量%である。また、本発明の疎水性シリカ粉末の製造方法は、ヒュームドシリカ粉末と環状ジメチルシロキサンを、密閉容器内で250~400℃の温度で混合する第1表面処理工程と、さらに、シリコーンオイルを混合する第2表面処理工程とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の疎水性シリカ粉末は、表面のシラノール基数が少なく高度な疎水性を示しており、また環状ジメチルシロキサン処理されたシリカ表面とシリコーンオイルの親和性が高いため、遊離オイル量が少なくなり、優れた流動性とともに高いシリカ表面の安定性を発揮するものである。従って、樹脂等の増粘剤や補強充填剤としての用途において、良好な性能を発揮することが可能であり、その工業的価値は極めて高いといえる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[疎水性シリカ粉末]
本発明の疎水性シリカ粉末は、シリカ表面が化学構造(-Si(CH-O-)で修飾された疎水性シリカ粉末であって、活性水素定量法による表面シラノール基数が1nmあたり2.0個以下であり、遊離オイル量が4.0~13.0質量%である。
以下、詳細に説明する。
【0012】
〈シリカ表面の化学構造〉
本発明の疎水性シリカ粉末は、化学構造(-Si(CH-O-)が表面に化学的に修飾されている。表面に化学的に修飾されている(-Si(CH-O-)の存在は、29Si DD/MAS NMR測定により確認できる。例えば、ヘキサンなどの有機溶媒によりシリカ表面に残存する遊離オイルを除去、乾燥させた疎水性シリカ粉末を測定すれば-21.0ppm付近にピークが検出される。
【0013】
〈シリカ表面のシラノール基数〉
本発明の疎水性シリカ粉末のシリカ表面における活性水素定量法によって求められる表面シラノール基数は1nmあたり2.0個以下である。
本発明の疎水性シリカ粉末の活性水素定量法によって求められる表面シラノール基数は1nmあたり2.0個以下であればよいが、好ましくは1.9個以下、より好ましくは1.8個以下である。
一般的に親水性ヒュームドシリカ粉末の表面シラノール基数は1nmあたり約5.0個であり、それに対して疎水性シリカ粉末は表面シラノール基が少ないほど高度な疎水化が行われていることを意味する。シラノール基数が2.0個を超えると、シラノール基による水素結合性の相互作用が強くなるため、流動性が低下する場合がある。
【0014】
〈遊離オイル量〉
本発明の疎水性シリカ粉末の遊離オイル量の下限は4.0質量%であり、上限は13.0質量%である。なお、シリコーンオイル処理されたシリカ粉末の表面上に存在するシリコーンオイルは、シリカ粉末と結合しているものと、表面に単に物理吸着により付着しているだけのものとに分かれる。シリカ粉末と結合しているシリコーンオイルとは、シリカ粉末の表面環状ジメチルシロキサンによって修飾された部位とシリコーンオイルの親和性の高さから化学結合により固定化されたものである。また、表面に単に付着しているシリコーンオイルは、ヘキサン等の炭化水素系の有機溶媒によって疎水性シリカ粉末から遊離させることができる。このように有機溶媒によって疎水性シリカ粉末から遊離させることができるシリコーンオイルを遊離オイルと呼ぶ。
当該遊離オイル量は疎水性シリカ粉末をノルマルヘキサンに浸漬させて溶出するシリコーンオイル量を測定することにより求めることができる。
本発明の疎水性シリカ粉末の遊離オイル量の下限は4.0質量%であり、上限は13.0質量%であればよいが、好ましくは、下限は4.5質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上である。また上限は好ましくは、12質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。遊離オイルが4.0質量%よりも少ないとシリカ表面を完全に被覆できず、疎水性が低下する場合がある。またシリカ表面のシラノール基が残存し、吸湿などによって環境安定性が低下するおそれがある。一方、遊離オイルが13.0質量%よりも多いと過剰な遊離オイルによって粉末が凝集し、流動性や分散性が悪化する場合がある。
【0015】
〈凝集度〉
本発明の疎水性シリカ粉末の凝集度は60%以下であることが好ましい。凝集度の値が小さいほど、流動性に優れる疎水性シリカ粉末であることを意味する。当該凝集度は、目開き355μmの篩、目開き250μmの篩および目開き150μmの篩(いずれも直径75mmの、JIS Z8801準拠の篩である)を、上からこの順に2cm間隔で重ねた三段篩を準備し、最上段の篩上に疎水性シリカ粉末5gを乗せ、振幅1mmおよび振動数60Hzで上下に15秒間振とう後に各篩上に残存した粒子量から、下記式(1)によって算出する。
凝集度(%)={(上段篩残+中段篩残×0.6+下段篩残×0.2)}÷疎水性シリカ粉末の初期質量×100・・・(1)
本発明の疎水性シリカ粉末の当該凝集度は60%以下が好ましいが、より好ましくは58%以下、さらに好ましくは56%以下である。当該凝集度が60%よりも大きいと増粘剤や補強充填剤、流動化剤として使用する場合、当該凝シリカ粉末同士の凝集によってシリカ粉末を樹脂等へ均一に分散しにくく、機能が低下する場合がある。
【0016】
〈BET比表面積〉
本発明の疎水性シリカ粉末のBET比表面積の下限は25m/gであり、上限は270m/gである。BET比表面積は窒素吸着BET1点法により測定する。
本発明の疎水性シリカ粉末のBET比表面積の下限は25m/gであり、上限は270m/gであればよいが、好ましくは、下限は70m/g以上、より好ましくは80m/g以上である。また上限は好ましくは、160m/g以下、より好ましくは120m/g以下である。疎水性シリカ粉末のBET比表面積が25m/gよりも小さいとシリカ粉末の粒子径が大きくなりすぎて流動性や分散性が低下する場合がある。またBET比表面積が270m/gよりも大きいとシリカ粉末の粒子径が小さくなりすぎて樹脂などへの分散時に粘度が高くなりすぎて混練ができなくなる場合や補強充填剤としての補強性が低下する場合がある。
【0017】
〈疎水化度(M値)〉
本発明の疎水性シリカ粉末のメタノール滴定法により測定される疎水化度(M値)は60容量%~80容量%であることが好ましい。なお、疎水化度(M値)が高いほど疎水性が高く、値が低いほど親水性が高いことを示す。
本発明の疎水性シリカ粉末のメタノール滴定法により測定される疎水化度(M値)は60容量%~80容量%が好ましいが、より好ましくは、下限は62容量%以上であり、さらに好ましくは64容量%以上である。疎水化度(M値)が高いほど湿度の影響を受けにくく、環境安定性の点で有利になる傾向がある。
【0018】
〈炭素含有量〉
本発明の疎水性シリカ粉末の表面に存在する炭素含有量の下限は3.0質量%であり、上限は10.5質量%が好ましい。炭素含有量は全窒素・全炭素測定装置(住化分析センター製スミグラフNC-22F)で測定する。
本発明の疎水性シリカ粉末の表面に存在する炭素含有量の下限は3.0質量%であり、上限は10.5質量%が好ましいが、より好ましくは、下限は3.5質量%以上であり、さらに好ましくは4.0質量%以上である。また上限はより好ましくは、8.0質量%以下であり、さらに好ましくは6.0質量%以下である。上記範囲内である場合、過剰なシリコーンオイルによる粉末の凝集を抑制でき、高い疎水性と高い流動性を両立することができる。
【0019】
[疎水性シリカ粉末の製造方法]
本発明の製造方法は、ヒュームドシリカ粉末と環状ジメチルシロキサンを、密閉系の反応器内で250~400℃の温度で混合する第1表面処理工程と、さらに、シリコーンオイルを混合する第2表面処理工程とを有する。以下、詳細に説明する。
【0020】
《ヒュームドシリカ粉末》
本発明の製造方法に使用される親水性シリカ粉末は、ヒュームドシリカ粉末であり、火炎中にケイ素化合物を供給して製造されるものであり、かかるシリカ粉末は水分や粗大粒子が少ないため、樹脂等へのチキソトロピー性の付与や粉体材料の流動性付与に優れる。ヒュームドシリカ粉末は特に制限されるものではなく公知のものが使用できるが、クロロシランの火炎熱分解によって製造されるシリカ粉末が好ましい。
本実施形態においては、上記のBET比表面積を有するために、ヒュームドシリカ粉末のBET比表面積は30~450m/gが好ましく、より好ましくは50~380m/gである。またヒュームドシリカ粉末は1種類を用いても2種類以上を併用しても差し支えない。
【0021】
《反応器》
本発明の疎水性シリカ粉末の疎水化処理反応の形式は特に限定されず、例えば、バッチ式、連続式のいずれでもよい。また、反応装置も流動床式、固定床式、あるいは撹拌器、混合器、さらには静置式であってもよい。ただし、反応の均一性や促進性を考慮すれば、加圧および撹拌により流動させた状態で処理できる密閉式ミキサーが好ましく、ミキサー中での撹拌においてはシリカ粉末が流動化し、且つ安定化した撹拌状態が得られるように、撹拌の回転数及び撹拌羽の形状を選定することが好ましい。また、第1表面処理工程と
第2表面処理工程は異なる反応器で処理しても良い。その場合、シリカ粉末は空気に接触させずに移送することが好ましい。
【0022】
《第1表面処理工程》
本発明の製造方法は、第1表面処理工程としてヒュームドシリカ粉末と環状ジメチルシロキサンを密閉系の反応器内で250~400℃の温度で混合する。当該工程で得られるシリカ粉末のメタノール滴定法により測定される疎水度(M値)の下限は47容量%、上限は63容量%が好ましい。より好ましくは下限は50容量%以上、さらに好ましくは55容量%以上である。前記条件を満たすことで、第1表面処理工程が充分に行われ、シリカ表面のシラノール基数を少なくすることができ、最終的に高い流動性を持つ疎水性シリカ粉末を得ることができる。
【0023】
〈環状ジメチルシロキサン〉
本発明である製造方法において第1表面処理工程で使用する環状ジメチルシロキサンには特に制限がなく、公知のものが特に制限なく使用される。例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(以下、「D3」ともいう)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(以下、「D4」ともいう)、デカメチルシクロペンタシロキサン(以下、「D5」ともいう)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(以下、「D6」ともいう)などを例示することができる。上記の環状ジメチルシロキサンのうち、反応性の良さや取扱いの容易さ等から、沸点が300℃以下であることが好ましい。さらに市場での入手が容易であることからD4が好ましい。また、上記環状ジメチルシロキサン類の混合物を処理剤に用いてもよい。
環状ジメチルシロキサンの添加量は、第1表面処理工程で得られるシリカ粉末が前記の疎水化度を満たす範囲であればよい。また、使用する環状ジメチルシロキサンによって異なるが、一般的には、ヒュームドシリカ粉末100質量部に対して、下限が20質量部であり、上限は150質量部であることが好ましい。さらにこの好ましくは、下限は40質量部であり、上限は130質量部である。
【0024】
〈反応条件〉
(反応雰囲気)
本発明である製造方法の第1表面処理工程は、ヒュームドシリカ粉末と気体の環状ジメチルシロキサンの接触反応を高効率に行うために密閉系で高圧条件下で実施する。また、副反応を防ぐために、窒素等の不活性ガスで充分にパージを行った後、窒素雰囲気で実施することが好ましい。さらに第1表面処理工程後、反応器内に残存する未反応の環状ジメチルシロキサンを窒素などの不活性ガスで十分に置換した後、以下の第2表面処理工程を実施することが好ましい。
【0025】
(反応温度)
本発明である製造方法において、第1表面処理工程の反応器内温度の下限は250℃であり、上限は400℃であれば良いが、好ましくは、下限は270℃以上であり、より好ましくは290℃である。また上限は好ましくは380℃以下であり、より好ましくは360℃である。反応器内温度が250℃より低いと噴霧した環状ジメチルシロキサンの気化による吸熱で反応器内温度が環状ジメチルシロキサンの沸点以下まで低下し、気相固相反応の処理が均一に起こらなくなるおそれがある。一方、反応器内温度が400℃より高いと反応器の耐圧性や加熱方法などによって使用可能な反応器が制限される。また第1表面処理工程後に連続して第2表面処理工程を行う場合に反応器内温度を下げるための冷却が必要となり、生産性が悪くなる。
【0026】
(反応時間)
第1表面処理工程の反応時間は特に制限されず、第1表面処理工程後に得られるシリカ粉末の疎水度(M値)が47容量%以上となるように適宜選択すればよい。一般的には30分~6時間であるが、シリカ粉末の疎水度を上げるために反応時間は1時間以上が好ましく、生産性を考慮すると3時間以下が好ましい。
【0027】
《第2表面処理工程》
本発明である製造方法の第2表面処理工程は、第1表面処理工程で得られたシリカ粉末とシリコーンオイルとを混合する。当該工程で噴霧するシリコーンオイルは75~150℃に加熱することが好ましい。シリコーンオイルを上記温度に加熱することでシリコーンオイルの粘度が低下し、充分に微細化した状態で噴霧することができるためシリカ表面を均一にシリコーンオイルで処理することができる。その結果、凝集体が少なく、流動性が良好な疎水性シリカ粉末を得ることができる。
上記シリコーンオイルを噴霧する方法は特に限定されず、トルエン等の溶液中にシリコーンオイルを溶解させ、該溶液中にシリカ粉末を分散させ、溶媒を蒸発させることによりシリカ表面にシリコーンオイルを付着させ、更に所定の熱処理を行うことによる方法(湿式処理法)、及びミキサー、あるいは流動層中で混合しながらシリカ粉末に対してシリコーンオイルを噴霧し、シリカ表面にシリコーンオイルを付着させ、所定の熱処理を行うことによる方法(乾式処理法)が挙げられる。
上記湿式処理法、乾式処理法のうち、より均一に処理されたシリカ粉末が得られること、及びコスト面、安全面、環境面において優れていることから乾式処理法を用いることが好ましい。
本発明の製造方法の第2表面処理工程においてシリコーンオイル処理を前記乾式処理法により行う場合には、シリコーンオイルを噴霧する際の噴霧粒径は80μm以下であることが好ましい。噴霧粒径を上記範囲内にすることで、より均一な処理が容易となる。シリコーンオイルの噴霧装置は、シリカ粉末に直接接触しないように反応器上部に取り付けた1流体ノズル、2流体ノズル等を用いることが可能である。より小さな粒径で噴霧が可能である理由から、2流体ノズルにより行うことが好ましい。
【0028】
〈シリコーンオイル〉
本発明の製造方法の第2表面処理工程で使用するシリコーンオイルは、特に限定されず、公知のものを制限なく使用できる。具体的にはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイルなどを例示することができる。上記のシリコーンオイルの中でも疎水性を維持しつつ、環状ジメチルシロキサンによる表面処理後の疎水性シリカ表面とシリコーンオイルを固定化させるためにはメチル基を主鎖に2つ持つジメチルシリコーンオイルが好ましい。
上記シリコーンオイルの粘度は特に制限されないが、20~500cStのものを好適に用いることができる。シリコーンオイルの粘度が上記範囲よりも小さい場合には、シリコーンオイルが揮発性になるため、所定の量をシリカ表面に付着させにくい傾向にある。一方、シリコーンオイルの粘度が上記範囲よりも大きい場合には処理が不均一になる傾向がある。また、官能基の異なる2種類以上のシリコーンオイルを混合して用いてもよいし、同じ官能基を持ち、粘度や分子量分布が異なる2種類以上のシリコーンオイルを混合して用いてもよい。
シリコーンオイルの添加量はシリカ粉末の比表面積に応じて異なるが、第2表面処理工程後に得られる疎水性シリカ粉末の遊離オイル量が前述の範囲となる量であればよい。一般的には、ヒュームドシリカ粉末100質量部に対して5~20質量部が好ましいが、疎水性シリカ粉末の疎水性と流動性を両立させるためには8~13質量部がより好ましい。また、シリコーンオイルはあらかじめ溶媒に溶かして使用しても良い。
【0029】
(反応雰囲気)
本発明である製造方法の第2表面処理工程は、開放系および密閉系のどちらで実施しても良い。また、第1処理工程と同様に副反応を防止するために、窒素等の不活性ガスで充分にパージを行った後、窒素雰囲気で実施することが好ましい。
【0030】
(反応温度)
本発明である製造方法の第2表面処理工程の反応器内温度は特に制限されないが、シリコーンオイル処理後に所定の熱処理を行うことが好ましい。例えば第2表面処理工程の反応器内温度の下限は250℃であり、上限は400℃が好ましい。より好ましくは、下限は280℃であり、さらに好ましくは300℃である。また上限はより好ましくは380℃であり、さらに好ましくは360℃である。反応器内温度が250℃よりも低いと環状ジメチルシロキサンにより修飾された部位とシリコーンオイルとの親和性が低くなり、遊離オイルが増加する場合がある。一方、反応器内温度が400℃よりも高いとシリコーンオイルの分解が起こり、所定の量を均一にシリカ表面に付着させにくい傾向がある。そのため、上記範囲内で処理することでシリコーンオイルの分解を抑えつつ、シリカ表面への固定化を行うことができるため、高い疎水性とシリカ表面の安定性を持つ疎水性シリカ粉末を得ることができる。
【0031】
(反応時間)
本発明である製造方法の第2表面処理工程の反応時間は特に制限されず、第2表面処理工程後に得られる疎水性シリカ粉末の遊離オイル量が4.0~13.0質量%となるように適宜選択すればよいが、通常は24時間以内で充分な反応率を得ることが可能であり、生産性を考慮すると6時間以下が好ましく、より好ましくは3時間以下である。
【実施例0032】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお作製したサンプルの諸物性は、下記の方法により評価した。
【0033】
(表面構造の測定)
疎水性シリカ粉末の表面構造(-Si(CH-O-)29Si DDMAS NMRにより測定した。測定試料にはノルマルヘキサンでシリカ表面に残存する遊離オイルを除去後、乾燥させた疎水性シリカ粉末を用い、また測定装置はBruker Biospin製AVANCEIIを用いた。具体的には、容量50mlの遠心管に試料0.5gとノルマルヘキサン32mlを入れ、超音波洗浄器(ヤマト科学製超音波洗浄器1510JMTH)にて30分間超音波分散し、懸濁させた。得られた懸濁液を遠心分離して、固相(シリカ)を分離回収した。回収したシリカに対し、さらにノルマルヘキサンを32ml加え、超音波分散および遠心分離の操作を計3回繰り返し、減圧乾燥(120℃、12時間)して乾燥粉末を得た。続いて、この粉末を4mmMASプローブを用い、測定核種29Si、MAS回転速度7kHz、パルスプログラムhpdec、繰返し時間20sec、積算回数30000回以上、外部標準はポリジメチルシランのピーク(34ppm)とし、解析用アプリケーションソフトBruker社製Topspin(Version3.2)を用いて算出した。本実施例の疎水性シリカ粉末の表面構造(-Si(CH-O-)は-21.0ppm付近にピークが検出される。
【0034】
(シリカ表面のシラノール基数の測定)
疎水性シリカ粉末のシリカ表面のシラノール基数は活性水素定量法により測定した。活性水素定量法では、CHMgIのGrignard試薬とシリカ表面のシラノール基との反応によって得られるメタンガス量とシリカの比表面積からシラノール基数を求めることができる。詳細は、T.MorimotoらによるBull.Chem.Soc.Jpn.,Volume46,p.2000-p.2003(1973)等に記載されている。具体的には、疎水性シリカ粉末1.5gを肉厚の薄いガラス球に入れ、0.1mmHg下、110℃で4時間乾燥した。続いて、ガラス球をガラス管に接合させ、ガスビュレットやマノメータ、ドライボックスを取り付けた。取り付けた後、ドライボックス側のコックを開け、窒素によって置換し、CHMgIであるGrignard試薬を三角フラスコ内に加えた。次に、回転子をガラス球にぶつけて割り、疎水性シリカ粉末とGrignard試薬との反応により発生したメタンの量をガスビュレットで測定した。測定したメタンガス量と下記式(2)によって、疎水性シリカ粉末1gあたりと反応して発生した標準圧力温度条件下でのメタンガス量V(mL/g)を算出した。算出されたメタンガス量(mL/g)からシリカ粉末1gあたりのシラノール基量(mol/g)を算出し、さらに疎水性シリカ粉末の比表面積を用いて疎水性シリカ粉末表面1nmあたりのシラノール基数(個/nm)を算出した。
V={V+(V-W/ρ)}・1/W・273/(273+t)・・・式(2)
なお、V、V、W、ρ、tは下記を示す。
:ガスビュレットにより測定した体積変化(mL)
:ガラス球の体積(mL)
W:シリカ粉末の重量(g)
ρ:シリカ粉末の密度(2.2g/mL)
t:測定温度(℃)(本測定は17~20℃の範囲で実施した。)
なお、活性水素定量法によるシラノール基数の算出に用いたシリカ粉末の比表面積は、事前に疎水性シリカ粉末を600℃で4時間焼成し、シリカ表面から有機基を脱離させた焼成シリカ粉末のBET比表面積である。
【0035】
(遊離オイル量の測定)
疎水性シリカ粉末の遊離オイル量は、ノルマルヘキサンに浸漬させて溶出するシリコーンオイル量を測定することにより求めた。具体的には、容量50mlの遠心管に試料の疎水性シリカ粉末0.5gとノルマルヘキサン32mlを入れ、超音波洗浄器(ヤマト科学製超音波洗浄器1510JMTH)にて30分間超音波分散し、懸濁させた。得られた懸濁液を遠心分離して、固相(シリカ)を分離回収した。回収したシリカに対し、さらにノルマルヘキサンを32ml加え、超音波分散および遠心分離の操作を計3回繰り返し、減圧乾燥(120℃、12時間)して乾燥粉末を得た。この粉末の炭素含有量を全窒素・全炭素測定装置(住化分析センター製スミグラフNC-22F)により測定した。予め、試料0.5g中の総炭素含有量を測定し、該総炭素含有量との差分から、抽出された遊離オイル量を算出した。
【0036】
(凝集度の測定)
疎水性シリカ粉末の凝集度は、ホソカワミクロン製のパウダテスタPT-Rにより測定した。具体的には、上段に目開き355μmの篩、中段に目開き250μmの篩および下段に目開き150μmの篩(いずれも直径75mmのJIS Z8801準拠の篩である)をそれぞれの篩の間隔が2cmとなるように重ねて、試料の疎水性シリカ粉末5gを上段の篩上に乗せ、振幅1mmおよび振動数60Hzで上下に15秒間振とう後、各篩上に残存した試料量から、下記式(3)によって凝集度(%)を算出した。なお、凝集度の値が小さいほど、流動性に優れる疎水性シリカ粉末であることを意味する。
凝集度(%)={(上段篩残(g)+中段篩残(g)×0.6+下段篩残(g)×0.2)÷5(g)}×100・・・(3)
【0037】
(BET比表面積の測定)
疎水性シリカ粉末、及びヒュームドシリカ粉末、前記活性水素定量法によるシラノール基数算出に用いる焼成シリカ粉末のBET比表面積はBET比表面積計(柴田科学器械工業製比表面積測定装置SA-1000)を用い、窒素吸着量によるBET1点法により測定した。
【0038】
(疎水化度の測定)
疎水化度(M値)はメタノール滴定法により測定した。まず、50mLの水を入れた250mLのビーカー中に疎水性シリカ粉末0.2gを添加した混合液中でその全量が湿潤されるまで、マグネチックスターラーで攪拌しながらビュレットからメタノールを滴下した。滴下終了時点での混合液中と滴下したメタノールとの総量に対するメタノールの百分率の値を疎水化度(M値)とした。疎水化度(M値)が高いほど疎水性が高いことを示す。
【0039】
(炭素含有量の測定)
疎水性シリカ粉末の炭素含有量は、前記の全窒素・全炭素測定装置(住化分析センター製スミグラフNC-22F)により測定した。
【0040】
実施例1
(第1表面処理工程)
親水性ヒュームドシリカ粉末としてレオロシールQS-10(トクヤマ社製、BET比表面積145m/g、嵩密度50g/L)50kgを容積2mのミキサーに入れ、撹拌しながら、窒素を供給し、容器内を窒素雰囲気にするとともに、330℃まで加熱した。容器を密閉し、環状ジメチルシロキサンとしてD4(信越シリコーン社製、製品名:KF-994)を40kg添加した。添加後、上記雰囲気、上記温度を保持した状態で1時間撹拌し保持した。
(第2表面処理工程)
容器を脱圧後、開放系の状態で窒素を供給し、容器内を窒素雰囲気とした。その後、容器を開放系で330℃に加熱した状態で110℃に加熱したシリコーンオイルKF-96-100cSt(信越シリコーン社製、粘度100cSt)5kgを2流体ノズルを用いて噴霧した。噴霧後、上記雰囲気、上記温度を保持した状態で1時間撹拌し疎水性シリカ粉末を得た。製造条件を表1、及び物性評価結果を表2に示す(以下同様)。
【0041】
実施例2
親水性ヒュームドシリカ粉末をQS-102(トクヤマ社製、BET比表面積200m/g、嵩密度50g/L)とした以外は実施例1と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0042】
実施例3
親水性ヒュームドシリカ粉末をQS-30(トクヤマ社製、BET比表面積300m/g、嵩密度50g/L)とし、第2表面処理工程のシリコーンオイルをKF-96-50cSt(信越シリコーン社製、粘度50cSt)とした以外は実施例1と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0043】
実施例4
第1表面処理工程の環状ジメチルシロキサンとしてD3(信越シリコーン社製、製品名:LS-8120)、D4(信越シリコーン社製、製品名:KF-994)、D5(信越シリコーン社製、製品名:KF-995)、D6(信越シリコーン社製、製品名:LS-9060)を容積比D3:D4:D5:D6=1:7:1:1の混合物とした以外は実施例1と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0044】
実施例5
第2表面処理工程のシリコーンオイルの添加量を2.5kgとした以外は実施例1と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0045】
実施例6
第1表面処理工程のD4の添加量を20kgとした以外は実施例1と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0046】
実施例7
親水性ヒュームドシリカ粉末をQS-05(トクヤマ社製、BET比表面積60m/g、嵩密度50g/L)とし、第2表面処理工程のシリコーンオイルの添加量を5kgとした以外は実施例1と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0047】
実施例8
親水性ヒュームドシリカ粉末をQS-40(トクヤマ社製、BET比表面積380m/g、嵩密度50g/L)とし、第2表面処理工程のシリコーンオイルの添加量を12.5kgとした以外は実施例1と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0048】
実施例9
第1表面処理工程および第2表面処理工程の温度を280℃とした以外は実施例2と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0049】
実施例10
第1表面処理工程および第2表面処理工程の温度を310℃とした以外は実施例2と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0050】
実施例11
第1表面処理工程および第2表面処理工程の温度を360℃とした以外は実施例2と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0051】
比較例1
第1表面処理工程を実施せず、第2表面処理工程のシリコーンオイルの添加量を10kgとした以外は実施例2と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0052】
比較例2
第2表面処理工程を実施しなかった以外は実施例1と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0053】
比較例3
第2表面処理工程のシリコーンオイルの添加量を10kgとした以外は実施例1と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0054】
比較例4
第1表面処理工程のD4の添加量を7.5kgとした以外は実施例1と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0055】
比較例5
第1表面処理工程および第2表面処理工程の温度を240℃とした以外は実施例1と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0056】
比較例6
第1表面処理工程および第2表面処理工程の温度を410℃とした以外は実施例1と同様に疎水性シリカ粉末を製造した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
実施例1~11の疎水性シリカ粉末はシラノール基数が2個/nm以下であり、かつ遊離オイル量が4.0~13.0質量%であって、これらの条件を満たすことで疎水性シリカ粉末の流動性の指標である凝集度が64%以下(実施例7を除くと60%以下)の優れた流動性を有し、疎水化度(M値)が60容量%以上であることから高い疎水性も有することが分かる。このことから上記条件を満たすことで高い流動性と高い疎水性を両立することができることが分かる。
【0060】
実施例1~11では第1表面処理でヒュームドシリカと環状ジメチルシロキサンを密閉容器で250~400℃の温度で混合したことで前述した高い流動性と高い疎水性を両立した疎水性シリカ粉末を得ることができた。一方、比較例5では第1表面処理工程の温度が240℃であるため、シラノール基数が2.1個/nm、かつ凝集度が66%となり、表面シラノール基が多く残存し、流動性も低い疎水性シリカ粉末であった。また比較例5の第1表面処理後のシリカ粉末の疎水化度(M値)は48%であり、実施例1~11の第1表面処理後のシリカ粉末よりも疎水化度が劣ることが分かる。このことから本実施形態の高い流動性と高い疎水性を両立する疎水性シリカ粉末を得るためには、第1表面処理の温度を250~400℃とする必要があることが分かる。