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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163367
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】発熱部材
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20231102BHJP
   H05B 3/03 20060101ALI20231102BHJP
   H05B 3/84 20060101ALI20231102BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20231102BHJP
   B60S 1/02 20060101ALN20231102BHJP
   B60S 1/62 20060101ALN20231102BHJP
   B60R 13/00 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
H05B3/10 A
H05B3/03
H05B3/84
H05B3/20 355A
B60S1/02 300
B60S1/62 110Z
B60R13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074234
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】中川 優樹
(72)【発明者】
【氏名】沖本 智
(72)【発明者】
【氏名】畝村 毅
【テーマコード(参考)】
3D024
3D225
3K034
3K092
【Fターム(参考)】
3D024BA07
3D225AA02
3D225AA03
3D225AA04
3D225AA11
3D225AB01
3D225AC10
3D225AD01
3D225AD08
3D225AD09
3D225AD22
3K034AA02
3K034AA04
3K034BB05
3K034BB14
3K034BC12
3K034CA02
3K034CA31
3K034HA09
3K034JA10
3K092PP15
3K092QA05
3K092QB43
3K092QC25
3K092RF03
3K092RF12
3K092RF19
3K092RF22
3K092VV22
(57)【要約】
【課題】発熱領域における発熱の均一性を向上できる発熱部材を提供する。
【解決手段】発熱部材は、基材(11)と導電層(12)を含み、導電層(12)は発熱領域(R1)に配置された複数の発熱配線(W1~W4)と、周辺領域(R2)に配置された少なくとも一対のバス電極(B1、B2)を含み、発熱領域(R1)は複数の区画(T1~T4)に分割され、複数の区画(T1~T4)のそれぞれに1本の発熱配線が配置され、複数の発熱配線(W1~W4)のうち少なくとも1本の電極間距離が他の発熱配線の電極間距離とは異なり、複数の発熱配線(W1~W4)の50%以上が蛇行した形状を有し、複数の区画(T1~T4)のそれぞれの面積と、複数の区画(T1~T4)のそれぞれに配置された1本の発熱配線の長さとの積の変動係数は、5%以内である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に配置された導電層とを含み、
前記基材は、発熱領域と、前記発熱領域の周辺に配置された周辺領域とを含み、
前記導電層は、前記発熱領域に配置された複数の発熱配線と、前記周辺領域に配置され且つ前記複数の発熱配線の両端に接続する少なくとも一対のバス電極とを含み、
前記発熱領域は、それぞれ両端が前記一対のバス電極に接する複数の区画に分割され、
前記複数の区画のそれぞれに、前記複数の発熱配線のうち1本の発熱配線が配置され、
前記複数の発熱配線のうち、少なくとも1本の前記発熱配線の前記一対のバス電極間における電極間距離が前記複数の発熱配線のうち他の発熱配線の前記電極間距離とは異なり、
前記複数の発熱配線のうち50%以上の前記発熱配線が蛇行した形状を有し、
前記複数の区画のそれぞれの面積と、前記複数の区画のそれぞれに配置された前記1本の発熱配線の長さとの積の変動係数は、5%以内である、
発熱部材。
【請求項2】
前記複数の区画の面積の変動係数は、5%以内である請求項1に記載の発熱部材。
【請求項3】
前記発熱領域が複数の単位面積領域に区切られた場合に、
前記複数の単位面積領域における前記複数の発熱配線の占有面積率の変動係数は、5%以内である請求項1または2に記載の発熱部材。
【請求項4】
前記蛇行した形状を有する複数の前記発熱配線の長さの変動係数は、5%以内である請求項1または2に記載の発熱部材。
【請求項5】
前記蛇行した形状を有する複数の前記発熱配線のそれぞれにおける複数の蛇行ピッチの変動係数は、5%以内である請求項1または2に記載の発熱部材。
【請求項6】
前記蛇行した形状を有する全ての前記発熱配線における複数の前記蛇行ピッチの変動係数は、5%以内である請求項5に記載の発熱部材。
【請求項7】
前記複数の発熱配線のうち隣り合う一対の発熱配線間において、前記一対の発熱配線の隣り合う包絡線間の距離を平均することにより配線間距離が算出され、
前記複数の発熱配線において算出される全ての前記配線間距離の変動係数は、5%以内である請求項6に記載の発熱部材。
【請求項8】
前記複数の発熱配線における複数の前記蛇行ピッチに対する、前記複数の発熱配線間の前記配線間距離の比率の変動係数は、5%以内である請求項7に記載の発熱部材。
【請求項9】
前記導電層は、前記複数の発熱配線のうち隣り合う一対の発熱配線の等電位点を互いに接続する少なくとも1本の接続配線を有する請求項1または2に記載の発熱部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発熱配線を有する発熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の窓ガラス等における着雪および着氷の防止、結露等による曇りの除去等のために、シート状の発熱部材が使用されることがある。例えば、特許文献1に開示されるように、複数の発熱配線と、複数の発熱配線の両端に接続された一対のバス電極がガラス製の基材上に配置された発熱部材が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-204387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一対のバス電極の配置または基材の表面の形状等によっては、一対のバス電極を結ぶ複数の発熱配線の長さが一定ではない場合がある。通常、発熱配線の抵抗値は長さに比例するため、複数の発熱配線の長さが一定ではない場合には、一対のバス電極間に電圧を印加して複数の発熱配線を発熱させると、複数の発熱配線に均一に電流が流れず、複数の発熱配線が配置されている発熱領域において温度ムラが生じてしまうことがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたものであり、発熱領域における発熱の均一性を向上できる発熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の構成によれば、上記目的を達成できる。
〔1〕 基材と、
基材上に配置された導電層とを含み、
基材は、発熱領域と、発熱領域の周辺に配置された周辺領域とを含み、
導電層は、発熱領域に配置された複数の発熱配線と、周辺領域に配置され且つ複数の発熱配線の両端に接続する少なくとも一対のバス電極とを含み、
発熱領域は、それぞれ両端が一対のバス電極に接する複数の区画に分割され、
複数の区画のそれぞれに、複数の発熱配線のうち1本の発熱配線が配置され、
複数の発熱配線のうち、少なくとも1本の発熱配線の一対のバス電極間における電極間距離が複数の発熱配線のうち他の発熱配線の電極間距離とは異なり、
複数の発熱配線のうち50%以上の発熱配線が蛇行した形状を有し、
複数の区画のそれぞれの面積と、複数の区画のそれぞれに配置された1本の発熱配線の長さとの積の変動係数は、5%以内である、
発熱部材。
〔2〕 複数の区画の面積の変動係数は、5%以内である〔1〕に記載の発熱部材。
〔3〕 発熱領域が複数の単位面積領域に区切られた場合に、
複数の単位面積領域における複数の発熱配線の占有面積率の変動係数は、5%以内である〔1〕または〔2〕に記載の発熱部材。
〔4〕 蛇行した形状を有する複数の発熱配線の長さの変動係数は、5%以内である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の発熱部材。
〔5〕 蛇行した形状を有する複数の発熱配線のそれぞれにおける複数の蛇行ピッチの変動係数は、5%以内である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の発熱部材。
〔6〕蛇行した形状を有する全ての発熱配線における複数の蛇行ピッチの変動係数は、5%以内である〔5〕に記載の発熱部材。
〔7〕 複数の発熱配線のうち隣り合う一対の発熱配線間において、一対の発熱配線の隣り合う包絡線間の距離を平均することにより配線間距離が算出され、
複数の発熱配線において算出される全ての配線間距離の変動係数は、5%以内である〔6〕に記載の発熱部材。
〔8〕 複数の発熱配線における複数の蛇行ピッチに対する、複数の発熱配線間の配線間距離の比率の変動係数は、5%以内である〔7〕に記載の発熱部材。
〔9〕 導電層は、複数の発熱配線のうち隣り合う一対の発熱配線の等電位点を互いに接続する少なくとも1本の接続配線を有する〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の発熱部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発熱部材は、基材と、基材上に配置された導電層とを含み、基材は、発熱領域と、発熱領域の周辺に配置された周辺領域とを含み、導電層は、発熱領域に配置された複数の発熱配線と、周辺領域に配置され且つ複数の発熱配線の両端に接続する少なくとも一対のバス電極とを含み、発熱領域は、それぞれ両端が一対のバス電極に接する複数の区画に分割され、複数の区画のそれぞれに、複数の発熱配線のうち1本の発熱配線が配置され、複数の発熱配線のうち少なくとも1本の発熱配線の一対のバス電極間における電極間距離が、複数の発熱配線のうち他の発熱配線の電極間距離と異なり、複数の発熱配線のうち50%以上の発熱配線が蛇行した形状を有し、複数の区画のそれぞれの面積と、複数の区画のそれぞれに配置された1本の発熱配線の長さとの積の変動係数は、5%以内であるため、発熱領域における発熱の均一性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1に係る発熱部材の部分断面図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る発熱部材の部分平面図である。
図3】本発明の実施の形態1における複数の発熱配線を包絡する包絡線を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1における隣り合う発熱配線間の配線間距離を示す図である。
図5】本発明の実施の形態1の第1の変形例に係る発熱部材の部分平面図である。
図6】本発明の実施の形態1の第2の変形例における接続配線を示す図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る発熱部材の斜視図である。
図8】本発明の実施の形態2に係る発熱部材を上から見た平面図である。
図9】本発明の実施の形態2の第1の変形例に係る発熱部材の斜視図である。
図10】本発明の実施の形態2の第1の変形例に係る発熱部材を上から見た平面図である。
図11】本発明の実施の形態2の第2の変形例に係る発熱部材の斜視図である。
図12】本発明の実施の形態2の第2の変形例に係る発熱部材を上から見た平面図である。
図13】複数の発熱配線からなる配線パターンを決定する手順を示すフローチャートの例である。
図14】複数の発熱配線が配置される対象領域の例を示す図である。
図15】平面に沿って形成される発熱部材の例を示す平面図である。
図16】複数の発熱配線の例を示す部分平面図である。
図17】複数の発熱配線からなる配線パターンを決定する手順を示すフローチャートの他の例である。
図18】複数の発熱配線が配置される対象領域の他の例を示す図である。
図19】1つの区画に配置される1本の発熱配線の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同一」、「同じ」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
【0010】
また、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表す。また、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
なお、可視光に対して透明とは、特に断りがなければ、可視光透過率が、波長380nm~800nmの可視光波長域において、40%以上のことであり、好ましくは70.0%以上、より好ましくは90.0%以上のことである。また、以下の説明において、透明とは、特に断りがなければ、可視光に対して透明であることを示す。
可視光透過率は、JIS(日本工業規格) K 7375:2008に規定される「プラスチック-全光線透過率および全光線反射率の求め方」を用いて測定されるものである。
【0011】
実施の形態1
図1に本発明の実施の形態1の発熱部材を示す。発熱部材は、シート状の部材であり、絶縁性の基材11と、基材11の片面上に形成された導電層12を備えている。
【0012】
図2に示すように、基材11は、発熱領域R1と、発熱領域R1の周辺に配置された周辺領域R2を含んでいる。
【0013】
導電層12は、発熱領域R1に配置され且つ金属細線により構成される複数の発熱配線W1~W4と、周辺領域R2に配置され且つ複数の発熱配線W1~W4の両端に接続する一対のバス電極B1およびB2を含んでいる。複数の発熱配線W1~W4の線幅は10μm等の一定の値を有し、厚みは2μm等の一定の値を有する。また、一対のバス電極B1およびB2のうち一方のバス電極B1はX方向に沿って延び、他方のバス電極B2はX方向に対して直交するY方向とX方向の双方に対して傾斜する方向に沿って延びている。また、一対のバス電極B1およびB2は、Y方向において互いに間隔を空けて配置されている。
【0014】
本発明における複数の発熱配線W1~W4の線幅は、0.1μm~100.0μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm~20.0μmの範囲内であることがより好ましい。
また、本発明における複数の発熱配線W1~W4の厚みは、0.1μm~30.0μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm~10.0μmの範囲内であることがより好ましい。
【0015】
ここで、図2には、導電層12が4本の発熱配線W1~W4を含むことが示されているが、導電層12は、実際には多数の発熱配線を含んでいる。これらの複数の発熱配線の総数のうち50%以上の数の発熱配線は蛇行した形状を有している。蛇行した形状を有する発熱配線W1~W4は、Y方向における蛇行ピッチP毎に、片側振幅AによりX方向に沿って蛇行しながら、概ねY方向に沿って延びている。ここで、本発明では、発熱配線W1~W4が蛇行した形状を有するとは、発熱配線W1~W4の長さと、発熱配線W1~W4の後述する電極間距離との関係が、[(発熱配線の長さ)-(発熱配線の電極間距離)]/(発熱配線の電極間距離)≧0.05となることを言う。
【0016】
また、バス電極B1が延びるX方向とバス電極B2が延びる方向が互いに異なるため、複数の発熱配線W1~W4の一対のバス電極B1およびB2間における電極間距離がそれぞれ異なる。複数の発熱配線W1~W4は、電極間距離が短いほど大きい片側振幅Aを有している。
【0017】
なお、発熱配線W1~W4の電極間距離は、発熱配線W1~W4をそれぞれ包絡する2本の包絡線、すなわち、X方向の一方側から包絡する包絡線とX方向の他方側から包絡する包絡線の長さの調和平均により算出できる。
【0018】
例えば図3に示すように、発熱配線W3の電極間距離は、発熱配線をX方向の一方側から包絡する包絡線E31と、X方向の他方側から包絡する包絡線E32の長さの調和平均により算出される。このようにして算出された発熱配線W3の電極間距離は、Qを0以上1以下の実数として、包絡線E31上をバス電極B1側からQ:1-Qに内分する点と、包絡線E32をバス電極B1側からQ:1-Qに内分する点の中点を、複数のQの値について算出し、算出された複数の中点を結ぶことにより形成される屈曲線C4の長さに概ね相当する。同様にして、発熱配線W1の電極間距離は、包絡線E11およびE12の長さの調和平均により算出され、発熱配線W2の電極間距離は、包絡線E21およびE22の長さの調和平均により算出される。
【0019】
また、図2に示すように、発熱領域R1は、それぞれ両端が一対のバス電極B1およびB2に接し、且つ、複数の発熱配線W1~W4と同数の複数の区画T1~T4に分割される。複数の区画T1~T4のそれぞれに、複数の発熱配線W1~W4のうち1本の発熱配線が配置されている。
【0020】
ここで、複数の区画T1~T4は、例えば図3に示す分割線DL1およびDL2等により区画できる。分割線DL1は、Qを0以上1以下の実数として、発熱配線W1の包絡線E12をバス電極B1側からQ:1-Qに内分する点と、発熱配線W2の、包絡線E12に隣接する包絡線E21をバス電極B1側からQ:1-Qに内分する点の中点を、複数のQの値について算出し、算出された複数の中点を結ぶことにより形成される線である。また、分割線DL2は、発熱配線W2の包絡線E22をバス電極B1側からQ:1-Qに内分する点と、発熱配線W3の、包絡線E22に隣接する包絡線E31をバス電極B1側からQ:1-Qに内分する点の中点を、複数のQの値について算出し、算出された複数の中点を結ぶことにより形成される線である。
【0021】
このように、発熱領域R1を複数の区画T1~T4に分割する分割線DL1およびDL2は、隣り合う一対の発熱配線の隣り合う一対の包絡線において、Qを0以上1以下の実数として、一対の包絡線のうち一方の包絡線をバス電極B1側からQ:1-Qに内分する点と、他方の包絡線をバス電極B1側からQ:1-Qに内分する点の中点を、複数のQの値について算出し、算出された複数の中点を結ぶことにより形成される線として決定できる。
【0022】
本発明の実施の形態1の発熱部材においては、複数の区画T1~T4(全ての区画)のそれぞれの面積と、複数の区画T1~T4のそれぞれに配置された1本の発熱配線の長さとの積の変動係数が、5%以内である。ここで、変動係数とは、統計学において使用される係数であり、標準偏差を算術平均で除することにより算出される。ただし、複数の区画T1~T4において算出された、1つの区画の面積とその区画に対応する1本の発熱配線の長さの積の値のうち、算術平均の値の2倍よりも大きい値および0.5倍未満の値が存在する場合にはそれらの値を除去し、残った値に対して変動係数を算出する。本発明では、他の値について変動係数を算出する場合にも同様の方法で算出する。このように、複数の区画T1~T4の面積と、それぞれの区画T1~T4に対応する1本の発熱配線の長さとの積は、複数の区画T1~T4において概ね等しい。
【0023】
ここで、複数の発熱配線W1~W4の両端に一定の電圧が印加された場合に、抵抗値が低い発熱配線ほど流れる電流が大きいため発熱量が大きく、抵抗値が高い発熱配線ほど流れる電流が小さいため発熱量が小さい。また、発熱配線W1~W4の線幅および厚みは概ね一定であるため、発熱配線W1~W4のそれぞれの抵抗値は、発熱配線W1~W4の長さに比例する。したがって、短い発熱配線ほど流れる電流が大きいため発熱量が大きく、長い発熱配線ほど流れる電流が小さいため発熱量が小さい。
【0024】
このような関係から、短い発熱配線に対して比較的広い区画を割り当て、長い発熱配線に対して比較的狭い区画を割り当てることにより、発熱領域R1のそれぞれの区画T1~T4における単位面積当たりの発熱量を揃えられることがわかる。
【0025】
本発明の実施の形態1の発熱部材によれば、複数の区画T1~T4の面積と、それぞれの区画T1~T4に対応する1本の発熱配線の長さとの積は、複数の区画T1~T4において概ね等しいため、発熱領域R1のそれぞれの区画T1~T4における単位面積当たりの発熱量のバラつきを低減し、発熱領域R1における発熱の均一性を向上できる。
【0026】
また、発熱部材は、一対のバス電極B1およびB2を含むことが説明されているが、3つ以上の複数のバス電極を含むこともできる。
また、複数の発熱配線W1~W4の電極間距離が異なることが説明されているが、少なくとも1本の発熱配線の電極間距離が、その他の発熱配線の電極間距離と異なっていればよい。この場合でも、複数の区画T1~T4の面積と、それぞれの区画T1~T4に対応する1本の発熱配線の長さとの積は、複数の区画T1~T4において概ね等しいため、発熱領域R1のそれぞれの区画T1~T4における単位面積当たりの発熱量のバラつきを低減し、発熱領域R1における発熱の均一性を向上できる。
【0027】
また、蛇行した形状を有する複数の発熱配線W1~W4毎に一定の片側振幅Aを有することが説明されているが、蛇行した形状を有する1本の発熱配線に含まれる複数の片側振幅Aは互いに等しくなくてもよい。しかしながら、発熱領域R1を均一に加熱する目的で、発熱領域R1の区画T1~T4内において蛇行した形状を有する発熱配線W1~W4が占有する領域を均一に分布させるために、1本の発熱配線に含まれる複数の片側振幅Aを一定の範囲内に設定することが好ましい。この場合に、蛇行した形状を有する複数の発熱配線W1~W4は、電極間距離が短いほど平均蛇行振幅が大きい発熱配線を含む。
【0028】
また、発熱領域R1の複数の区画T1~T4の面積の変動係数は、5%以内であることが好ましい。この場合には、発熱領域R1の複数の区画T1~T4の面積が概ね等しいため、複数の区画T1~T4における熱の分布も概ね等しく、発熱領域R1をより均一に加熱できる。
【0029】
また、蛇行した形状を有する複数の発熱配線W1~W4の長さの変動係数は、5%以内であることが好ましい。この場合に、全ての発熱配線の長さは概ね等しいため、全ての発熱配線における発熱量も概ね等しく、発熱領域R1をより均一に加熱できる。
【0030】
また、発熱領域R1が、それぞれ少なくとも1本の発熱配線を含む複数の単位面積領域、例えば複数の1cm×1cmの矩形の領域に区切られた場合に、複数の単位面積領域において、複数の単位面積領域における複数の発熱配線の占有面積率の変動係数は、5%以内であることが好ましい。
【0031】
ここで、単位面積領域における少なくとも1本の発熱配線の占有面積率とは、少なくとも1本の発熱配線が1つの単位面積領域を占有している面積を1つの単位面積領域の面積で除することにより算出される比率である。複数の単位面積領域における複数の発熱配線の占有面積率の変動係数が5%以内である場合には、発熱領域R1において複数の発熱配線が占有する領域が均一に分布しているため、発熱領域R1をより均一に加熱できる。
【0032】
また、蛇行した形状を有する複数の発熱配線W1~W4は、一定の蛇行ピッチPを有することが説明されているが、複数の発熱配線W1~W4の蛇行ピッチPは不揃いであってもよい。しかしながら、発熱領域R1のそれぞれの区画T1~T4内において複数の発熱配線W1~W4のそれぞれを均一に配置するために、複数の発熱配線W1~W4の蛇行ピッチPを一定の範囲内に設定することが好ましい。例えば、蛇行した形状を有する複数の発熱配線W1~W4のそれぞれにおける複数の蛇行ピッチP(1本の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチP)の変動係数が、5%以内であることが好ましい。これにより、発熱領域R1のそれぞれの区画T1~T4においてそれぞれの発熱配線W1~W4が均一に配置され、それぞれの区画T1~T4を均一に加熱できる。
【0033】
また、蛇行した形状を有する全ての発熱配線W1~W4における複数の蛇行ピッチPの変動係数は、5%以内であることが好ましい。これにより、発熱領域R1において複数の発熱配線W1~W4が占有する領域を均一に分布させて、発熱領域R1の全体を均一に加熱できる。
【0034】
また、複数の発熱配線W1~W4のうち隣り合う一対の発熱配線間において、その一対の発熱配線の隣り合う包絡線間の距離の算術平均により配線間距離を算出できる。例えば図4に示すように、隣り合う一対の発熱配線W2およびW3間において隣り合う、発熱配線W2の包絡線E22と発熱配線W3の包絡線E31間の距離の算術平均により発熱配線W2および発熱配線W3間の配線間距離が算出される。包絡線E22と包絡線E31間の距離の算術平均は、例えば、Qを実数として、包絡線E22をバス電極B1側からQ:1-Qに内分する点F2から包絡線E31までの最短距離D2を0≦Q≦1の範囲で複数個所測定した測定値の算術平均の値と、包絡線E31をバス電極B1側からQ:1-Qに内分する点F3から包絡線E22までの最短距離D3を0≦Q≦1の範囲で複数個所測定した測定値の算術平均の値とを、さらに算術平均することにより算出できる。なお、最短距離D2は点F2から包絡線E31に下ろした垂線の長さにより算出され、最短距離D3は点F3から包絡線E22に下ろした垂線の長さにより算出される。
【0035】
このようにして複数の発熱配線において算出される全ての配線間距離の変動係数は、5%以内であることが好ましい。これにより、複数の発熱配線が概ね等しい間隔で配列されるため、発熱領域R1を均一に加熱できる。さらに、複数の発熱配線の線幅を0.5μm~20.0μmの範囲内に設定し、基材11を透明な材料により構成することで、透明な発熱部材を形成できる。
【0036】
また、複数の発熱配線における複数の蛇行ピッチPに対する、複数の発熱配線間の配線間距離の比率の変動係数は、5%以内であることが好ましい。ここで、複数の発熱配線における複数の蛇行ピッチPに対する、複数の発熱配線間の配線間距離の比率の変動係数は、複数の発熱配線における複数の蛇行ピッチPと、複数の発熱配線間の配線間距離の全ての組み合わせについて算出された複数の比率の変動係数を指す。これにより、複数の発熱配線の配列方向、例えばX方向、および、複数の発熱配線が概ね延びる方向、例えばY方向において、複数の発熱配線が占有する領域を均一に分布させて、発熱領域R1を均一に加熱できる。
【0037】
また、このようにして、発熱領域R1において複数の発熱配線が占める領域を均一に分布させることにより、発熱部材の観察者から複数の発熱配線を視認され難くできる。そのため、さらに、複数の発熱配線の線幅を5.0μm~15.0μmの範囲内に設定し、基材11を透明な材料により構成することで、優れた透明性を有する発熱部材を形成できる。このように、発熱領域R1において複数の発熱配線が占める領域を均一に分布させることは、例えば、自動車のエンブレム、センサーカバー、窓ガラス等に発熱部材を配置する場合等、発熱部材における発熱領域R1の部分に透明性が求められる場合に有利である。
【0038】
また、図2および図3で、蛇行した形状を有する複数の発熱配線W1~W4がX方向に沿った部分とY方向に沿った部分により構成される例が説明されているが、蛇行した形状を有する複数の発熱配線W1~W4は、X方向およびY方向に対して直交しない任意の方向に延びる部分を有することもできる。
【0039】
そのような発熱部材の例を図5に示す。図5において、X方向およびY方向の双方に対して傾斜した方向に沿って延びるバス電極B3と、バス電極B3が延びる方向に対して傾斜する方向に延びるバス電極B4が配置され、この一対のバス電極B3およびB4と両端が接続される発熱配線W5が配置されている。発熱配線W5は、X方向およびY方向に対して傾斜し且つ互いに異なる方向に沿って延びる複数の折り返し線部W5Aと、複数の折り返し線部W5Aと概ね直交して接続する複数の主線部W5Bにより構成され、屈曲しながら蛇行した形状を有している。この場合に、蛇行ピッチP5は、一対の折り返し線部W5A間の最短距離として定義できる。また、片側振幅Aは、折り返し線部W5Aの半分の長さとして定義できる。
【0040】
また、図6に示すように、導電層12は、複数の発熱配線のうち、隣り合う一対の発熱配線W2およびW3の等電位点を互いに接続する少なくとも1本の接続配線WCを有することができる。これにより、何らかの理由により一対の発熱配線W2およびW3のうち一方が断線してしまった場合でも、接続配線WCを通る電流の経路が確保されるため、発熱領域R1に温度ムラが生じることを防止し、発熱領域R1を均一に加熱できる。
【0041】
また、複数の発熱配線W1~W4の蛇行した形状は、直線が屈曲した形状であることが示されているが、蛇行しているのであれば、その他の形状は特に限定されない。蛇行した形状は、例えば曲線を含むこともできる。
【0042】
実施の形態2
実施の形態1の発熱部材は平面に沿った形状を有しているが、例えば半球等の立体の表面に沿った形状を有することもできる。
【0043】
図7および図8に、本発明の実施の形態2に係る発熱部材を示す。発熱部材は、X方向およびY方向の双方に直交するZ方向において凸の半球の表面に沿った形状を有している。基材11Aは、発熱領域R1と、発熱領域R1のY方向の両端に配置された周辺領域R2を有している。発熱領域R1には、蛇行した形状を有する複数の発熱配線Wが基材11Aの半球形状に沿って配置されている。発熱領域R1は、複数の区画Tに分割され、複数の区画Tのそれぞれに1本の発熱配線Wが配置されている。また、発熱領域R1のY方向の両端の周辺領域R2にはバス電極B5とバス電極B6が配置されており、複数の発熱配線WのY方向の両端に、一対のバス電極B5およびB6が接続されている。また、複数の発熱配線Wが半球の表面に沿って配置されているため、隣り合う発熱配線Wの電極間距離は互いに異なる。
【0044】
ここで、複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに配置された1本の発熱配線Wの長さとの積の変動係数が、5%以内である。そのため、一対のバス電極B5およびB6間に一定の電圧を印加した場合に、複数の区画Tのそれぞれにおける単位面積当たりの発熱量のバラつきが低減される。
そのため、本発明の実施の形態2の発熱部材によれば、発熱部材が半球の表面に沿った立体形状を有する場合でも、発熱領域R1における発熱の均一性を向上できる。
【0045】
なお、発熱部材は、半球の表面に沿った立体形状の他に、任意の立体の表面に沿った形状を有することもできる。発熱部材は、例えば、図9および図10に示すようなZ方向において凸の立体の表面に沿った形状を有することもできる。
【0046】
この発熱部材では、発熱領域R1のY方向の両端に位置する周辺領域R2にバス電極B7およびB8が配置されているが、Y方向の一端側のバス電極B7は、X方向の一端側に偏って配置され、Y方向の他端側のバス電極B8は、X方向の他端側に偏って配置されている。このような場合でも、発熱領域R1は複数の区画Tに分割されており、複数の区画Tのそれぞれに1本の発熱配線Wが配置されている。複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに配置された1本の発熱配線Wの長さとの積の変動係数が、5%以内である。ため、発熱領域R1における発熱の均一性を向上できる。
【0047】
また、発熱部材は、例えば、図11および図12に示すようなZ方向に凸の立体形状を有することもできる。この発熱部材では、発熱領域R1のY方向の一端に位置する周辺領域R2に一対のバス電極B9およびB10が配置されている。一方のバス電極B9はX方向の一端側に偏って配置され、他方のバス電極B10は、X方向の他端側に偏って配置されている。このような場合でも、発熱領域R1は複数の区画Tに分割されており、複数の区画Tのそれぞれに1本の発熱配線Wが配置されている。複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに配置された1本の発熱配線Wの長さとの積の変動係数が、5%以内である。ため、発熱領域R1における発熱の均一性を向上できる。
【0048】
以下では、実施の形態1の発熱部材を構成する各部材について詳細に説明する。なお、実施の形態2の発熱部材の各部材についても、以下の説明を適用する。
【0049】
<基材>
基材11は、絶縁性を有し且つ少なくとも導電層12を支持できれば特に限定されるものではないが、樹脂材料により構成されることが好ましい。
基材11を構成する樹脂材料の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(Polymethyl methacrylate:PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(Acrylonitrile butadiene styrene:ABS)、ポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate:PET)、ポリカーボネート(Polycarbonate:PC)、ポリシクロオレフィン、(メタ)アクリル、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene naphthalate:PEN)、ポリエチレン(Polyethylene:PE)、ポリプロピレン(Polypropylene:PP)、ポリスチレン(Polystyrene:PS)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride:PVC)、ポリ塩化ビニリデン(Polyvinylidene chloride:PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene difluoride:PVDF)、ポリアリレート(Polyarylate:PAR)、ポリエーテルサルホン(Polyethersulfone:PES)、高分子アクリル、フルオレン誘導体、結晶性シクロオレフィンポリマー(Cyclo Olefin Polymer:COP)、トリアセチルセルロース(Triacetylcellulose:TAC)等が挙げられる。
【0050】
ここで、基材11の耐久性の観点から、基材11は、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂のいずれかを主成分として構成されることが好ましい。ここで、基材11の主成分とは、基材11の構成成分のうち80%以上を占めることをいうものとする。
【0051】
基材11が透明である場合に、基材11の可視光透過率は、85.0%~100.0%であることが好ましい。
また、基材11の厚みは、特に制限されないが、取り扱い性等の点から、0.05mm以上2.00mm以下が好ましく、0.10mm以上1.00mm以下がより好ましい。
【0052】
<プライマー層>
導電層12を強固に支持するために、基材11と導電層12との間にプライマー層を設けてもよい。プライマー層は、導電層12を強固に支持できれば材料に限定はないが、特にウレタン系の樹脂材料により構成されることが好ましい。
【0053】
<発熱配線>
発熱配線W1~W4は、導電性を有する材料により構成される。発熱配線W1~W4としては、金属、金属酸化物、炭素素材および導電性高分子等が使用できる。例えば、発熱配線W1~W4が金属により構成される場合に、その金属の種類は特に限定されず、例えば、銅、銀、アルミニウム、クロム、鉛、ニッケル、金、すず、および、亜鉛等が挙げられるが、導電性の観点から、銅、銀、アルミニウム、金がより好ましい。金属性の発熱配線W1~W4を形成する方法として、セミアディティブ法、フルアディティブ法、サブトラクティブ法、銀塩法、金属含有インクまたはその前駆体の印刷、インクジェット方式、レーザーダイレクトストラクチャリング法を用いることができ、さらにこれらの組み合わせを用いることもできる。金属としてバルクの材料を用いることができ、ナノワイヤ、ナノ粒子を用いることもできる。発熱配線W1~W4が炭素素材により構成される場合に、発熱配線W1~W4として、その構造や組成特に限定はされないが、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノバッド、グラフェンおよびグラファイト等を使用することができる。発熱配線W1~W4が金属酸化物により構成される場合に、発熱配線W1~W4としてITO(Indium Tin Oxide:インジウムチンオキサイド、酸化インジウムスズ)を用いることができる。発熱配線W1~W4が導電性高分子により構成される場合に、発熱配線W1~W4としてPEDOT-PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) polystyrene sulfonate)等を使用することができる。
【0054】
<バス電極>
一対のバス電極B1およびB2は、導電性を有する材料により構成される。一対のバス電極B1およびB2は、複数の発熱配線W1~W4を構成する材料と同一の材料により構成されることができ、複数の発熱配線W1~W4を構成する材料と異なる材料により構成されることもできる。しかしながら、一対のバス電極B1およびB2は、容易に製造を行うために、複数の発熱配線W1~W4を構成する材料と同一の材料により構成されることが好ましい。
【0055】
一対のバス電極B1およびB2としては、金属、金属酸化物、炭素素材および導電性高分子等が使用できる。例えば、一対のバス電極B1およびB2が金属により構成される場合に、その金属の種類は特に限定されず、例えば、銅、銀、アルミニウム、クロム、鉛、ニッケル、金、すず、および、亜鉛等が挙げられるが、導電性の観点から、銅、銀、アルミニウム、金がより好ましい。金属性の一対のバス電極B1およびB2を形成する方法として、セミアディティブ法、フルアディティブ法、サブトラクティブ法、銀塩法、金属含有インクまたはその前駆体の印刷、インクジェット方式、レーザーダイレクトストラクチャリング法を用いることができ、さらにこれらの組み合わせを用いることもできる。金属としてバルクの材料を用いることができ、ナノワイヤ、ナノ粒子を用いることもできる。一対のバス電極B1およびB2が炭素素材により構成される場合に、一対のバス電極B1およびB2として、その構造や組成特に限定はされないが、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノバッド、グラフェンおよびグラファイト等を使用することができる。一対のバス電極B1およびB2が金属酸化物により構成される場合に、一対のバス電極B1およびB2としてITO(Indium Tin Oxide:インジウムチンオキサイド、酸化インジウムスズ)を用いることができる。一対のバス電極B1およびB2が導電性高分子により構成される場合に、一対のバス電極B1およびB2としてPEDOT-PSS等を使用することができる。
【0056】
以下では、蛇行した形状を有する複数の発熱配線の配線パターンの決定方法の例を図13のフローチャートを用いて説明する。この決定方法は、例えばコンピュータプログラム上で実行できる。
【0057】
まず、ステップS1において、入力データとして、例えば図14に示すように、複数の発熱配線が配置される対象領域RA、一対のバス電極B11およびB12の位置、および、一定の蛇行ピッチPの値が入力される。図14に示す例では、対象領域RAは台形状の領域である。
【0058】
次に、ステップS2において、複数の発熱配線が配置される座標系として例えば、互いに直交するX軸とY軸を有する2次元座標系が設定される。ここで、+X方向を右方向、-X方向を左方向、+Y方向を上方向、-Y方向を下向きとして設定できる。
【0059】
ステップS3において、対象領域RAの右端に、蛇行しない直線形状を有し且つ上下向に平行な1本の発熱配線を配置する。この発熱配線の長さをLとする。
【0060】
ステップS4において、現在までで最も左の発熱配線の左端のX座標値であるXMを基準として、1本の発熱配線を新たに配置する。ステップS4を初めて行う場合には、XMはステップS3で生成された発熱配線のX座標値である。下側のバス電極B12と対象領域RAとの境界で且つXM未満のX座標値XLを持つ位置から、上方向に蛇行ピッチPの距離を進み、右方向に(XM)-(蛇行ピッチP)-(XL)の距離を進み、上方向に蛇行ピッチPの距離を進み、左方向にX座標値がXLである位置まで進み・・・という処理を繰り返すことにより、蛇行した形状を有する1本の発熱配線が配置される。なお、X座標値XLは、ステップS4で生成される発熱配線の長さがステップS3で生成された発熱配線の長さLに等しくなるように決定される。
【0061】
ステップS5において、配置された発熱配線の本数が、予め定められた数以上であるかが判定される。配置された発熱配線の本数が定められた数より小さいと判定された場合に、ステップS4に戻り、発熱配線が新たに配置される。このように、配置された発熱配線の本数が定められた数より小さいとステップS5で判定される限り、ステップS4およびステップS5の処理が繰り返される。
【0062】
ステップS5において、配置された発熱配線の本数が、予め定められた数以上であると判定されると、ステップS6に進む。ステップS6において、ステップS4およびステップS5の繰り返しにより配置された複数の発熱配線からなる配線パターンが決定される。これにより、例えば図15に示すように、上底の長さLA、下底の長さLBおよび高さLCを有する台形の領域に複数の発熱配線Wが配置された配線パターンが決定される。複数の発熱配線Wは、図16に示すように片側振幅Aにより蛇行した形状を有する。左側に位置する発熱配線Wほど片側振幅Aが大きく、右側に位置する発熱配線Wほど片側振幅Aが小さい。
このようにして、図13のフローチャートに従う配線パターンの決定方法の手順が終了する。
【0063】
以下では、発熱部材が図7図12に示すような立体に沿った形状を有する場合の、複数の発熱配線Wの配線パターンの決定方法の例を図17のフローチャートを用いて説明する。特に、図7および図8に示すような半球の表面に沿った形状を有する発熱部材における配線パターンを例として説明する。この決定方法は、例えばコンピュータプログラム上で実行できる。
【0064】
まず、ステップS7において、入力データとして、例えば図18に示すように、複数の発熱配線Wが配置される対象領域RA、対象領域RAの表面形状、一対のバス電極B5およびB6の位置、および、一定の蛇行ピッチPの値が入力される。図18に示す例では、対象領域RAは、半球の曲面に沿って湾曲した部分RA1を有している。また、この際に、バス電極B6と接する対象領域RAの縁部RA2、バス電極B5と接する対象領域RAの縁部RA3、一対のバス電極B5およびB6とは接しない対象領域RAの縁部RA4およびRA5が特定される。
【0065】
次に、ステップS8において、対象領域RA上の位置を記述する2次元直交座標系O-U1U2が設定される。座標値U2は、対象領域RAの縁部RA2でU2=0、対象領域RAの縁部RA3でU2=1となるように設定される。また、座標値U1は、対象領域RAの縁部RA4でU1=0、対象領域RAの縁部RA5でU1=1となるように設定される。また、座標値U1およびU2は、対象領域RA上で同一のU2の値を有し且つ連続する複数の点を結んだ線を等U1線(座標値U1についての等位線)、対象領域RA上で同一のU2の値を有し且つ連続する複数の点を結んだ線を等U2線(座標値U2についての等位線)として、等U1線と等U2線が対象領域RA上で互いに直交するように設定される。
【0066】
以下では、対象領域RAの表面に沿って縁部RA2から縁部RA3に向かう方向、すなわち、座標値U2が増加する方向を+U2方向、対象領域RAの表面に沿って縁部RA3から縁部RA2に向かう方向、すなわち、座標値U2が減少する方向を-U2方向と呼ぶ。また、対象領域RAの表面に沿って縁部RA4から縁部RA5に向かう方向、すなわち、座標値U1が増加する方向を+U1方向、対象領域RAの表面に沿って縁部RA5から縁部RA6に向かう方向、すなわち、座標値U1が減少する方向を-U1方向と呼ぶ。
【0067】
ステップS9において、等U1線に基づいて対象領域RAが複数の区画に分割される。この際に、例えば、対象領域RAを等U1線で等面積となるように複数の区画に分割した場合に、区画の幅の最小値が、ステップS7で入力された蛇行ピッチP以上となるような分割数のうち最大のものを、最終的な分割数として設定できる。このようにして分割された複数の区画は、それぞれ両端がバス電極B5およびB6に接する区画である。
【0068】
ステップS10において、ステップS9で得られた複数の区画のそれぞれにおいて、蛇行した形状を有する1本の発熱配線Wの頂点が算出される。以下では、図19を用いて、1つの区画における1本の発熱配線Wの頂点を算出する方法を説明する。
【0069】
図19に、両端が一対のバス電極B5およびB6に接し、ステップS9で設定された2本の分割線DL3およびDL4により分割された1つの区画Tを示す。
まず、2本の分割線DL3およびDL4のうち、一方の分割線DL3上の複数の点を等U2線に沿って+U1方向に向かって距離G1だけ移動させた複数の点を結ぶことにより、曲線CL3を算出する。また、他方の分割線DL4上の複数の点を等U2線に沿って-U1方向に向かって距離G1だけ移動させた複数の点を結ぶことにより、曲線CL4を算出する。
【0070】
次に、区画Tが対象領域RAの左端すなわち-U1方向の端部から奇数番目の区画である場合に、+U1方向側の曲線CL4とバス電極B6との交点を、発熱配線Wの最初の頂点として算出する。
【0071】
算出された頂点から等U1線に沿って+U2方向に向かって距離G2だけ移動した位置を次の頂点として算出する。この頂点は、曲線CL4上に位置しているとは限らないが、区画T内に位置する。この頂点から、等U2線に沿って-U1方向に向かって曲線CL3に到達するまで移動する。このようにして到達した曲線CL3上の点を次の頂点として算出する。このような処理を、バス電極B5に到達するまで繰り返すことにより、発熱配線W1の複数の頂点を算出できる。
【0072】
なお、区画Tが対象領域RAの左端すなわち-U1方向の端部から偶数番目の区画である場合に、-U1方向側の曲線CL3とバス電極B6との交点を、発熱配線Wの最初の頂点として算出する。その後は同様の処理により発熱配線Wの複数の頂点を算出できる。
このようにして、ステップS10の処理が完了する。
【0073】
続いて、ステップS11において、ステップS10で算出された複数の頂点を有する複数の発熱配線Wの片側振幅Aが調整される。この際に、例えば、複数の発熱配線Wの長さの最小値と最大値が、複数の発熱配線Wの長さの平均値(算術平均の値)の0.1%以内に収まるように、複数の区画Tにおける距離G1の値を調節することにより、片側振幅Aが調整される。
【0074】
最後に、ステップS12において、片側振幅Aが調整された複数の発熱配線Wからなる配線パターンが決定される。これにより、図17のフローチャートに従う配線パターンの決定方法の手順が終了する。
【実施例0075】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができ、本発明の範囲は、以下の実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0076】
<実施例1>
(基材の準備)
厚み250.0μmのポリカーボネート樹脂フィルム(帝人製パンライトPC-2151)を基材として準備した。
【0077】
(プライマー層形成用組成物の調製)
以下の成分を混合し、プライマー層形成用組成物を得た。
Z913-3(アイカ工業社製) 33質量部
IPA(イソプロピルアルコール) 67質量部
【0078】
(プライマー層の形成)
得られたプライマー層形成用組成物を、基材上に、平均乾燥膜厚が0.5μmとなるようにバー塗布し、80℃で3分間乾燥させた。その後、形成されたプライマー層形成用組成物の層に対して、1000mJの照射量で紫外線(Ultraviolet:UV)を照射し、厚み0.4μmのプライマー層を形成した。
【0079】
(被めっき層前駆体層形成用組成物の調製)
以下の成分を混合し、被めっき層前駆体層形成用組成物を得た。
IPA(イソプロピルアルコール) 38.00質量部
ポリブタジエンマレイン酸 4.00質量部
FOM-03008(富士フイルム和光純薬社製) 1.00質量部
IRGACURE OXE02(BASF社製、ClogP=6.55)
0.05質量部
なお、FOM-03008は、以下の化学式で表される化合物を主成分として含む。
【化1】
【0080】
(被めっき層前駆体層付き基材の作製)
得られた被めっき層前駆体層形成用組成物をプライマー層上に膜厚0.2μmとなるようにバー塗布し、120℃の雰囲気下で1分間乾燥させた。その後、直ちに、被めっき層前駆体層形成用組成物上に厚み12.0μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせることにより、被めっき層前駆体層付き基材を作製した。
【0081】
(被めっき層付き基材の作製)
図15および図16に示す複数の発熱配線Wと、一対のバス電極B11およびB12に対応する露光パターンが形成された石英ガラス製のフォトマスク(厚み6.00mm)を用意した。このフォトマスクでは、53本の発熱配線Wに対応する露光パターンが配置されており、発熱配線Wの配線間距離が0.43mm、蛇行ピッチPが0.43mmとなるように発熱配線Wが蛇行している。また、このフォトマスクでは、複数の発熱配線Wは、上底の長さLAが16.329mm、下底の長さLBが80.544mm、高さLCが37.773mmの台形の領域に配置されている。また、発熱配線Wの線幅に対応する露光パターンの線幅は0.004mmである。
【0082】
このフォトマスクを被めっき層前駆体層付き基材に対してフィルムマスク越しに紫外線(エネルギー量200mJ/cm、波長365nm)を照射した。次に、紫外線が照射された後の被めっき層前駆体層付き基材を純水シャワーにより5分間現像処理し、被めっき層付き基材を作製した。
【0083】
(導電層の形成)
被めっき層付き基材を、35℃の1質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液に5分間浸漬させた。次に、被めっき層付き基材を、55℃のパラジウム触媒付与液RONAMERSE SMT(ロームアンドハース電子材料株式会社製)に5分間浸漬させた。被めっき層付き基材を水洗した後、続けて35℃のCIRCUPOSIT6540(ロームアンドハース電子材料株式会社製)に5分間浸漬させ、その後、再び水洗した。さらに、被めっき層付き基材を、45℃のCIRCUPOSIT4500(ロームアンドハース電子材料株式会社製)に20分間浸漬させた後、水洗して、被めっき層上に導電層を形成した。これにより、基材上に、図15に示すような複数の発熱配線Wおよび一対のバス電極B11およびB12を有する、実施例1の発熱部材を得た。発熱配線Wの線幅は0.010mmであった。
【0084】
実施例1の発熱部材では、発熱領域R1の複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに対応する1本の発熱配線Wとの積の変動係数が1%であった。また、複数の区画Tの面積の変動係数が1%であった。また、発熱領域R1を1cm×1cmの単位面積領域に区切った場合に、複数の単位面積領域における複数の発熱配線Wの占有面積率の変動係数は0%であった。
【0085】
また、全ての発熱配線Wの長さの変動係数が3%であった。また、蛇行した形状を有する複数の発熱配線Wのそれぞれにおける複数の蛇行ピッチP(1本の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチP)の変動係数が0%であった。また、複数の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチPの変動係数が0%であった。また、複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の変動係数が0%であった。また、複数の発熱配線Wにおける蛇行ピッチPに対する複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の比率の変動係数が0%であった。
【0086】
<実施例2>
蛇行した形状を有する全ての発熱配線Wの片側振幅Aの平均値を、実施例1における片側振幅Aの平均値の0.90倍になるような露光パターンを有するフォトマスクを使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2の発熱部材を作製した。
【0087】
実施例2の発熱部材では、発熱領域R1の複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに対応する1本の発熱配線Wとの積の変動係数が2%であった。また、複数の区画Tの面積の変動係数が1%であった。また、発熱領域R1を1cm×1cmの単位面積領域に区切った場合に、複数の単位面積領域における複数の発熱配線Wの占有面積率の変動係数は2%であった。
【0088】
また、全ての発熱配線Wの長さの変動係数が5%であった。また、蛇行した形状を有する複数の発熱配線Wのそれぞれにおける複数の蛇行ピッチP(1本の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチP)の変動係数が0%であった。また、複数の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチPの変動係数が0%であった。また、複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の変動係数が7%であった。また、複数の発熱配線Wにおける蛇行ピッチPに対する複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の比率の変動係数が7%であった。
【0089】
<実施例3>
複数の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチPの変動係数が6%になるように複数の蛇行ピッチPを変更した露光パターンを有するフォトマスクを使用した以外は、実施例2と同様にして実施例3の発熱部材を作製した。
【0090】
実施例3の発熱部材では、発熱領域R1の複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに対応する1本の発熱配線Wとの積の変動係数が2%であった。また、複数の区画Tの面積の変動係数が1%であった。また、発熱領域R1を1cm×1cmの単位面積領域に区切った場合に、複数の単位面積領域における複数の発熱配線Wの占有面積率の変動係数は2%であった。
【0091】
また、全ての発熱配線Wの長さの変動係数が5%であった。また、蛇行した形状を有する複数の発熱配線Wのそれぞれにおける複数の蛇行ピッチP(1本の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチP)の変動係数が6%であった。また、複数の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチPの変動係数が6%であった。また、複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の変動係数が7%であった。また、複数の発熱配線Wにおける蛇行ピッチPに対する複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の比率の変動係数が7%であった。
【0092】
<実施例4>
蛇行した形状を有する全ての発熱配線Wの片側振幅Aの平均値を、実施例1における片側振幅Aの平均値の0.80倍になるような露光パターンを有するフォトマスクを使用した以外は、実施例3と同様にして実施例4の発熱部材を作製した。
【0093】
実施例4の発熱部材では、発熱領域R1の複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに対応する1本の発熱配線Wとの積の変動係数が4%であった。また、複数の区画Tの面積の変動係数が1%であった。また、発熱領域R1を1cm×1cmの単位面積領域に区切った場合に、複数の単位面積領域における複数の発熱配線Wの占有面積率の変動係数は5%であった。
【0094】
また、全ての発熱配線Wの長さの変動係数が7%であった。また、蛇行した形状を有する複数の発熱配線Wのそれぞれにおける複数の蛇行ピッチP(1本の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチP)の変動係数が6%であった。また、複数の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチPの変動係数が6%であった。また、複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の変動係数が13%であった。また、複数の発熱配線Wにおける蛇行ピッチPに対する複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の比率の変動係数が13%であった。
【0095】
<実施例5>
蛇行した形状を有する全ての発熱配線Wの片側振幅Aの平均値を、実施例1における片側振幅Aの平均値の0.75倍になるような露光パターンを有するフォトマスクを使用した以外は、実施例4と同様にして実施例5の発熱部材を作製した。
【0096】
実施例5の発熱部材では、発熱領域R1の複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに対応する1本の発熱配線Wとの積の変動係数が5%であった。また、複数の区画Tの面積の変動係数が1%であった。また、発熱領域R1を1cm×1cmの単位面積領域に区切った場合に、複数の単位面積領域における複数の発熱配線Wの占有面積率の変動係数は6%であった。
【0097】
また、全ての発熱配線Wの長さの変動係数が8%であった。また、蛇行した形状を有する複数の発熱配線Wのそれぞれにおける複数の蛇行ピッチP(1本の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチP)の変動係数が6%であった。また、複数の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチPの変動係数が6%であった。また、複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の変動係数が16%であった。また、複数の発熱配線Wにおける蛇行ピッチPに対する複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の比率の変動係数が16%であった。
【0098】
<実施例6>
複数の発熱配線Wの長さの変動係数が2%になるように、且つ、区画Tの面積の変動係数が6%となるように複数の発熱配線Wの片側振幅Aと配線間隔を変更した露光パターンを有するフォトマスクを使用した以外は、実施例4と同様にして実施例6の発熱部材を作製した。
【0099】
実施例6の発熱部材では、発熱領域R1の複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに対応する1本の発熱配線Wとの積の変動係数が5%であった。また、複数の区画Tの面積の変動係数が6%であった。また、発熱領域R1を1cm×1cmの単位面積領域に区切った場合に、複数の単位面積領域における複数の発熱配線Wの占有面積率の変動係数は6%であった。
【0100】
また、全ての発熱配線Wの長さの変動係数が2%であった。また、蛇行した形状を有する複数の発熱配線Wのそれぞれにおける複数の蛇行ピッチP(1本の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチP)の変動係数が6%であった。また、複数の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチPの変動係数が6%であった。また、複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の変動係数が16%であった。また、複数の発熱配線Wにおける蛇行ピッチPに対する複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の比率の変動係数が16%であった。
【0101】
<比較例1>
蛇行した形状を有する全ての発熱配線Wの片側振幅Aの平均値を、実施例1における片側振幅Aの平均値の0.70倍になるような露光パターンを有するフォトマスクを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例1の発熱部材を作製した。
【0102】
比較例1の発熱部材では、発熱領域R1の複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに対応する1本の発熱配線Wとの積の変動係数が6%であった。また、複数の区画Tの面積の変動係数が1%であった。また、発熱領域R1を1cm×1cmの単位面積領域に区切った場合に、複数の単位面積領域における複数の発熱配線Wの占有面積率の変動係数は7%であった。
【0103】
また、全ての発熱配線Wの長さの変動係数が9%であった。また、蛇行した形状を有する複数の発熱配線Wのそれぞれにおける複数の蛇行ピッチP(1本の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチP)の変動係数が6%であった。また、複数の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチPの変動係数が6%であった。また、複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の変動係数が19%であった。また、複数の発熱配線Wにおける蛇行ピッチPに対する複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の比率の変動係数が19%であった。
【0104】
以上のようにして得られた実施例1~6および比較例1の発熱部材に対して、以下に示す評価を行った。
(昇温均一性評価)
発熱部材の一対のバス電極の全体にそれぞれ導電テープを貼り付けた。次に、導電層が水平面に対して直交するように発熱部材を固定した。この際に、導電層の両面側の150mmの範囲にはいかなる障害物をも配置しないようにした。次に、電源装置(菊水電子工業製DME1600;デジタルマルチメータ)に接続されたワニ口クリップを、一対のバス電極に貼り付けられた導電テープにそれぞれ取り付けた。その後、発熱部材を、温度25℃、相対湿度60%、無風の条件に設定した恒温槽内に配置し、導電層の最高温度が90℃に維持されるように、電源装置を用いて一対のバス電極間に電圧を印加した。この際に、発熱部材における発熱領域の各点の温度を、サーモメータ(FLIR社製ETS320)を用いて測定した。さらに、測定した発熱領域の温度範囲に関する以下のAA~Dの評価基準に従って、昇温均一性の評価結果を算出した。
AA:発熱領域の温度範囲が3℃以内。
A:発熱領域の温度範囲が3℃よりも大きく5℃以内。
B:発熱領域の温度範囲が5℃よりも大きく8℃以内。
C:発熱領域の温度範囲が8℃よりも大きく12℃以内。
D:発熱領域の温度範囲が12℃よりも大きい。
【0105】
(劣化評価)
まず、発熱部材の一対のバス電極の全体にそれぞれ導電テープを貼り付けた。次に、導電層が水平面に対して直交するように発熱部材を固定した。この際に、導電層の両面側の150mmの範囲にはいかなる障害物をも配置しないようにした。次に、電源装置(菊水電子工業製DME1600;デジタルマルチメータ)に接続されたワニ口クリップを、一対のバス電極に貼り付けられた導電テープにそれぞれ取り付けた。この状態で、発熱部材の一対のバス電極に貼り付けられた導電テープ間の抵抗値N1を測定した。なお、事前に、同一のバス電極に対して、2枚の導電テープを互いに接触しないように貼合し、それらの抵抗を測定することにより、バス電極を介した接触抵抗を測定した。接触抵抗は、0.05Ω以下であり、抵抗値N1に対して十分に無視できることを確認した。
【0106】
その後、発熱部材を、温度25℃、相対湿度60%、無風の条件に設定した恒温槽内に発熱部材を配置し、導電層の温度が100℃に維持されるように、電源装置を用いて一対のバス電極間に対して4000時間電圧を印加し続けた。この際に、発熱部材における発熱領域の各点の温度を、サーモメータ(FLIR社製ETS320)を用いて測定した。一対のバス電極間に電圧を印加して4000時間が経過した後に、一対のバス電極に取り付けられたそれぞれの導電テープ間の抵抗値N2を測定し、抵抗値N1に対する抵抗値N2の比により、劣化係数N2/N1を算出した。
【0107】
算出された劣化係数N2/N1が1.1以下の発熱部材に対して、劣化が非常に抑制されているとして評価AAを付し、劣化係数N2/N1が1.1よりも大きく1.2以下の発熱部材に対して、劣化が抑制されているとして評価Aを付し、劣化係数N2/N1が1.2よりも大きく1.3以下の発熱部材に対して、劣化が実用上問題がないとして評価Bを付し、劣化係数N2/N1が1.3よりも大きく1.4以下である発熱部材に対して、実用上問題がある程度に劣化が発生しているとして評価Cを付し、劣化係数N2/N1が1.4よりも大きい発熱部材に対して、著しい劣化が発生しているとして評価Dを付すことにした。
AA:劣化係数N2/N1が1.1以下。
A:劣化係数N2/N1が1.1よりも大きく1.2以下。
B:劣化係数N2/N1が1.2よりも大きく1.3以下。
C:劣化係数N2/N1が1.3よりも大きく1.4以下。
D:劣化係数N2/N1が1.4よりも大きい。
【0108】
以下の表1に、実施例1~6および比較例1に対する昇温均一性評価および劣化評価の結果を示す。なお、表1では、各項目毎に変動係数の値を記載しているが、それらの項目について、発熱領域R1の複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに対応する1本の発熱配線Wとの積の変動係数を「区画の面積と発熱配線の長さの積」欄に記載し、複数の区画Tの面積の変動係数を「区画の面積」欄に記載し、複数の単位面積領域における複数の発熱配線Wの占有面積率の変動係数を「発熱配線の占有面積率」欄に記載し、全ての発熱配線Wの長さの変動係数を「発熱配線の長さ」欄に記載し、蛇行した形状を有する複数の発熱配線Wのそれぞれにおける複数の蛇行ピッチPの変動係数を「1本の発熱配線の蛇行ピッチ」欄に記載し、複数の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチPの変動係数を「複数の発熱配線の蛇行ピッチ」欄に記載し、複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の変動係数を「配線間距離」欄に記載し、複数の発熱配線Wにおける蛇行ピッチPに対する複数の発熱配線W間の複数の配線間距離の比率の変動係数を「蛇行ピッチと配線間距離の比率」欄に記載している。
【0109】
【表1】
【0110】
表1に示すように、実施例1~6の発熱部材は、昇温均一性評価と劣化評価がいずれもC以上であり、発熱部材に連続的に通電したとしても、発熱領域R1を十分に均一に加熱できることが分かる。実施例1~6の発熱部材では、発熱領域R1の複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに対応する1本の発熱配線Wとの積の変動係数が5%以内であるため、区画Tの面積と、その区画Tに対応する1本の発熱配線Wとの積が複数の区画Tにおいて概ね等しい。そのため、発熱領域R1の複数の区画Tにおける単位面積当たりの発熱量のバラつきが抑制され、発熱領域R1において均一に発熱できる。
【0111】
実施例1の発熱部材は、各項目の変動係数がいずれも5%以内であり、昇温均一性評価および劣化評価がいずれもAAであった。
【0112】
実施例2の発熱部材は、劣化評価がAである点で実施例1の発熱部材に劣るが、これは、配線間距離の変動係数が7%であり、複数の発熱配線W間の複数の配線間距離にバラつきがあることから、ある程度の時間、連続的に発熱領域R1を加熱した際に部分的に高温になる箇所があり、この箇所で発熱配線Wの劣化が生じたためであると考えられる。
【0113】
実施例3の発熱部材は、昇温均一性評価がAである点で実施例2に対して劣るが、これは、複数の発熱配線Wのそれぞれにおける複数の蛇行ピッチPの変動係数および複数の発熱配線Wにおける複数の蛇行ピッチPの変動係数が6%であり、蛇行ピッチPにバラつきがあることから、発熱領域R1を加熱した際に温度ムラが生じたためであると考えられる。
【0114】
実施例4の発熱部材は、劣化評価がBである点で実施例3に対して劣るが、これは、配線間距離の変動係数が13%であり、実施例3よりも複数の発熱配線W間の複数の配線間距離にバラつきがあることから、ある程度の時間、連続的に発熱領域R1を加熱した際に部分的にさらに高温になる箇所があり、この箇所で発熱配線Wの劣化が生じたためであると考えられる。
【0115】
実施例5の発熱部材は、昇温均一性評価がBである点、および、劣化評価がCである点で実施例4の発熱部材に劣るが、これは、配線間距離の変動係数が16%であり、実施例4よりも複数の発熱配線W間の複数の配線間距離にバラつきがあることと、複数の発熱配線Wの配線占有率の変動係数が6%であることから、発熱領域R1を加熱した際に温度ムラが生じたことに加え、ある程度の時間、連続的に発熱領域R1を加熱した際に部分的にさらに高温になる箇所があり、この箇所で発熱配線Wの劣化が生じたためであると考えられる。
【0116】
実施例6の発熱部材は、昇温均一性がCである点で実施例5の発熱部材に劣るが、これは、複数の区画Tの面積の変動係数が6%であり、複数の区画Tのサイズにバラつきがあることから、発熱領域R1を加熱した際に、発熱領域R1の全体として温度ムラが生じたためであると考えられる。
【0117】
このように、実施例1~6の発熱部材が、昇温均一性評価と劣化評価の両方でC以上である一方で、比較例1の発熱部材は、昇温均一性と劣化評価がいずれもDであった。比較例1では、発熱領域R1の複数の区画Tのそれぞれの面積と、複数の区画Tのそれぞれに対応する1本の発熱配線Wとの積の変動係数が6%と、5%以上であるため、複数の区画Tにおいて、区画Tの面積と、その区画Tに対応する1本の発熱配線Wとの積にバラつきがある。そのため、複数の区画Tにおける単位面積当たりの発熱量がバラつき、発熱領域R1において均一に発熱できなかったと考えられる。
【0118】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上において、本発明の発熱部材について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施態様に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0119】
11,11A 基材、12 導電層、A 片側振幅、B1~B12 バス電極、C4 屈曲線、CL3,CL4 曲線、D2,D3 最短距離、DL1~DL4 分割線、E11,E12,E21,E22,E31,E33 包絡線、F2,F3 点、G1,G2 距離、P,P5 蛇行ピッチ、R1 発熱領域、R2 周辺領域、RA 対象領域、RA1 部分、RA2~RA5 縁部、LA, LB 長さ、LC 高さ、T,T1~T4 区画、W,W1~W5 発熱配線、W5A 折り返し線部、W5B 主線部、WC 接続配線。
図1
図2
図3
図4
図5
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