(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163371
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ステータおよびキャンドモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/487 20060101AFI20231102BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H02K3/487
H02K3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074248
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 隆行
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604BB01
5H604BB03
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DA14
5H604DA25
5H604DB02
5H604DB03
5H604DB15
5H604DB28
5H604PB03
5H604PE07
5H604QA01
5H604QC01
5H604QC02
5H604QC09
(57)【要約】
【課題】ポッティング材の、スロット開口部からのはみ出しを防止することができるステータが提供される。
【解決手段】ステータコア15と、巻線26と、ポッティング材27と、スロット開口部25を塞ぐスペーサ32と、を備えるステータ4が提供される。スペーサ32は、絶縁材料から構成されており、かつポッティング材27よりも低い線膨張係数を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロット開口部を有するステータコアと、
前記ステータコアに装着された巻線と、
前記ステータコアのステータ室に封入されたポッティング材と、
前記スロット開口部を塞ぐスペーサと、を備え、
前記スペーサは、絶縁材料から構成されており、かつ前記ポッティング材よりも低い線膨張係数を有している、ステータ。
【請求項2】
前記ステータは、前記スペーサに隣接し、かつ前記巻線に接触するクサビを備えている、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記スペーサおよび前記クサビは、一体成形部材であり、
前記スペーサは、前記クサビから前記スロット開口部に向かって延びている、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記スペーサは、スポンジから構成されている、請求項1に記載のステータ。
【請求項5】
主軸と、
前記主軸に固定されたロータと、
前記ロータを取り囲むキャンと、
前記キャンの外周面に接触する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のステータと、を備える、キャンドモータ。
【請求項6】
前記キャンおよび前記スペーサは、一体成形部材である、請求項5に記載のキャンドモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータおよびキャンドモータに関する。
【背景技術】
【0002】
巻線をステータコアに装着したステータが知られている。発熱、騒音、絶縁などの対策として、樹脂から構成されたポッティング材をステータコアに形成されたステータ室に封入する場合がある。この場合、ステータコアの内周面に形成されたスロット開口部(すなわち、ステータコアに設けられた複数のティースの間の隙間)は、ポッティング材で埋められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-135343号公報
【特許文献2】実全昭52-40908号公報
【特許文献3】特開昭52-72402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポッティング材は、金属と比較して、一般的に大きな線膨張係数を有している。したがって、巻線の発熱による温度上昇に伴い、ステータ室に封入されたポッティング材が膨張し、結果として、ポッティング材は、スロット開口部からステータの内周側に向かってはみ出してしまうおそれがある。
【0005】
一般的なモータの場合、ステータの内周側には、ロータが配置されている。したがって、ポッティング材がスロット開口部からはみ出してしまうと、ポッティング材がロータに接触してしまうおそれがある。キャンドモータの場合、ステータの内周側には、円筒状のキャンが配置されている。したがって、ポッティング材がスロット開口部からはみ出してしまうと、キャンはポッティング材の押し付け力を受けてしまい、結果として、キャンが内側に変形してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、ポッティング材の、スロット開口部からのはみ出しを防止することができるステータおよびキャンドモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、スロット開口部を有するステータコアと、前記ステータコアに装着された巻線と、前記ステータコアのステータ室に封入されたポッティング材と、前記スロット開口部を塞ぐスペーサと、を備えるステータが提供される。前記スペーサは、絶縁材料から構成されており、かつ前記ポッティング材よりも低い線膨張係数を有している。
【0008】
一態様では、前記ステータは、前記スペーサに隣接し、かつ前記巻線に接触するクサビを備えている。
一態様では、前記スペーサおよび前記クサビは、一体成形部材であり、前記スペーサは、前記クサビから前記スロット開口部に向かって延びている。
一態様では、前記スペーサは、スポンジから構成されている。
【0009】
一態様では、主軸と、前記主軸に固定されたロータと、前記ロータを取り囲むキャンと、前記キャンの外周面に接触する、上記ステータと、を備える、キャンドモータが提供される。
【0010】
一態様では、前記キャンおよび前記スペーサは、一体成形部材である。
【発明の効果】
【0011】
スペーサは、スロット開口部を塞ぐように構成されているため、ポッティング材の、スロット開口部からのはみ出しを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】一体的に構成されたキャンおよびスペーサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0014】
図1は、回転機械の一実施形態を示す図である。
図2は、
図1に示す回転機械の拡大図である。
図1に示すように、回転機械1は、主軸2と、主軸2に固定されたロータ3と、ロータ3を取り囲むキャン41と、ロータ3の周囲に配置され、かつキャン41の外周面に接触するステータ4と、ステータ4の周囲に配置された筒状のフレーム5と、を備えている。本実施形態では、回転機械1は、キャンドモータであるが、一実施形態では、回転機械1は、キャンドモータ以外のモータであってもよく、発電機であってもよい。
【0015】
一実施形態では、回転機械1は液体を移送するポンプに連結されてもよい。図示しないが、ポンプは、羽根車と、羽根車が固定された回転軸と、羽根車が収容されたポンプケーシングと、を備えている。この回転軸は、回転機械1の主軸2に連結され、回転機械1の駆動によって、主軸2とともに回転軸および羽根車が回転する。このようなポンプおよび回転機械1の組み合わせはポンプ装置と呼ばれる。
【0016】
ステータ4は、フレーム5の半径方向内側に配置されており、ロータ3と同心状に配置されている。ロータ3はステータ4の半径方向内側に回転可能に配置されている。ロータ3とステータ4との間には、ロータ3の回転を許容するための隙間が形成されており、キャン41は、この隙間に配置されている。
【0017】
ロータ3は、主軸2と同心状であり、主軸2の軸方向と平行に延びている。ロータ3は、ステータ4に発生する回転磁界によって回転し、ロータ3とともに主軸2が回転する。
【0018】
図2に示すように、ステータ4は、スロット開口部25を有するステータコア15と、ステータコア15に装着された複数の巻線(線材)26と、を備えている。ステータコア15は、フレーム5の内面に固定された円筒状の円筒部21と、円筒部21の半径方向内側に配置された複数の(本実施形態では6つの)ティース22と、を備えている。円筒部21およびティース22は主軸2およびロータ3と同心状に配置されている。ティース22は、その先端部分に形成された幅広部22aを有しており、スロット開口部25は、互いに隣接する幅広部22aの間に形成されている。
【0019】
ステータコア15は、互いに隣接するティース22の間に形成されたステータ室24を有しており、ステータ室24はスロット開口部25に接続されている。巻線26および絶縁紙35(
図2参照)はステータ室24に配置されている。ステータ4は、ステータ室24に封入されたポッティング材27を備えている。ポッティング材27は、発熱、騒音、絶縁対策として配置されており、ステータコア15および巻線26に密着している。
【0020】
図1および
図2に示すように、ステータ4は、スロット開口部25を塞ぐスペーサ32を備えている。スペーサ32は、キャン41の外周面に沿うように、円弧形状を有する内面32aを有しており(
図2参照)、スペーサ32の内面32aは、キャン41に接触している。スペーサ32は、絶縁材料から構成されており、かつポッティング材27よりも低い線膨張係数を有している。
【0021】
本実施形態によれば、スペーサ32をスロット開口部25に配置することにより、ポッティング材27をスロット開口部25から排除することができる。したがって、ステータ室24内のポッティング材27が膨張したとしても、スロット開口部25にはポッティング材27が存在していないため、ステータ4は、ポッティング材27の、スロット開口部25からのはみ出しを防止することができる。結果として、ポッティング材27の押し付け力に起因するキャン41の変形を防止することができる。回転機械1がキャン41を備えていない場合であっても、本実施形態によれば、ポッティング材27の、ロータ3との接触を防止することができる。
【0022】
スペーサ32は、巻線26の発熱の影響と、ポッティング材27の膨張の影響と、を受けるため、耐熱性および機械強度を有していることが望ましい。スペーサ32として、熱可塑性樹脂(または熱硬化性樹脂)の一例である、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を挙げることができる。
【0023】
図1および
図2に示す実施形態では、ステータ4は、スペーサ32に隣接し、かつ巻線26の姿勢を維持するクサビ31を備えている。クサビ31は、絶縁機能を有しており、巻線26に接触している。スペーサ32およびクサビ31は、一体成形部材であり、これらスペーサ32およびクサビ31の組み合わせは、スペーサアッセンブリ30である。一実施形態では、ステータ4の構成に応じて、ステータ4は、クサビ31を備えていなくてもよい。例えば、巻線26が樹脂などの絶縁材から構成されたボビンに巻き付けられている場合、ステータ4は、クサビ31を備えていなくてもよい。
【0024】
図3は、スペーサアッセンブリを示す斜視図である。
図3に示すように、クサビ31は、ティース22の幅広部22aで支持可能な板形状を有しており、スペーサ32は、クサビ31からスロット開口部25に向かって凸状に延びている。クサビ31は、ステータコア15の積層方向に延びる長方形状を有しており、スペーサ32もクサビ31と同様に長方形状を有している。
【0025】
図4は、一体的に構成されたキャンおよびスペーサを示す図である。
図4に示すように、キャンドモータとしての回転機械1は、互いに一体的に構成されたキャン51およびスペーサ52を備えてもよい。これらキャン51およびスペーサ52の組み合わせは、スペーサアッセンブリ50である。スペーサアッセンブリ50は、円筒状のキャン51の外周面から外側に向かって凸状に延びるスペーサ52を備えている。スペーサアッセンブリ50をステータ4に装着したとき、スペーサ52は、スロット開口部25を塞ぐように構成されている。キャン51およびスペーサ52は、一体成形部材であり、例えば、樹脂成形などの方法により製造される。
【0026】
図5は、スペーサの他の実施形態を示す図である。本実施形態において、上述した実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
図5に示すように、ステータ4は、スポンジから構成されたスペーサ62を備えてもよい。本実施形態では、スポンジ状のスペーサ62は、クサビ31とは別部材から構成されている。一実施形態では、ステータ4は、クサビ31を備えておらず、スペーサ62のみを備える構造を有してもよい。
【0027】
スペーサ62の一例として、シリコン製の耐熱スポンジを挙げることができる。スペーサ62は、柔軟な形状を有しており、スロット開口部25に挿入される。スロット開口部25に挿入されたスペーサ62は、ポッティング材27の、スロット開口部25への侵入を防止するとともに、ポッティング材27の膨張を吸収することができる。
【0028】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 回転機械
2 主軸
3 ロータ
4 ステータ
5 フレーム
15 ステータコア
21 円筒部
22 ティース
22a 幅広部
24 ステータ室
25 スロット開口部
26 巻線
27 ポッティング材
30 スペーサアッセンブリ
31 クサビ
32 スペーサ
32a 内面
35 絶縁紙
41 キャン
50 スペーサアッセンブリ
51 キャン
52 スペーサ
62 スペーサ