(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163517
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ポンプ設置装置、ポンプ設置方法、ポンプ取り出し方法
(51)【国際特許分類】
F04D 13/08 20060101AFI20231102BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20231102BHJP
F04D 7/02 20060101ALI20231102BHJP
F04D 29/60 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F04D13/08 N
F17C13/00 302Z
F04D7/02 A
F04D29/60 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074475
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】本田 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】笠谷 哲司
(72)【発明者】
【氏名】池田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】渡次 圭
(72)【発明者】
【氏名】菊池 日向
(72)【発明者】
【氏名】石見 光隆
【テーマコード(参考)】
3E172
3H130
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB11
3E172AB15
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
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3H130AA06
3H130AB23
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3H130BA87H
3H130BA87J
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3H130DF08X
3H130DG05Z
3H130DJ07X
3H130DJ08X
3H130ED00H
3H130ED00J
3H130ED00Z
3H130ED02H
3H130ED02J
3H130ED02Z
(57)【要約】
【課題】潜没式ポンプのポンプコラムへの搬入およびポンプコラムからの引き上げ時に、ボイルオフガス(BOG)のポンプコラムからの放出を防止するために使用されるパージガスの量を削減することができ、さらには安全な作業環境を構築できるポンプ設置装置を提供する。
【解決手段】ポンプ設置装置は、閉じられた作業空間15を形成する作業チャンバ1と、ポンプコラム3の上部開口3aを覆うアクチュエータ駆動型扉12と、潜没式ポンプ2をポンプコラム3内に吊り下げるための吊りケーブル23と、吊りケーブル23を上昇および下降させるためのクレーン40を備えており、ポンプコラム3の上部開口3a、アクチュエータ駆動型扉12、およびクレーン40は、作業空間15内に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを移送するために使用される潜没式ポンプをポンプコラム内に設置および前記ポンプコラムから取り出すためのポンプ設置装置であって、
閉じられた作業空間を形成する作業チャンバと、
前記ポンプコラムの上部開口を覆うアクチュエータ駆動型扉と、
前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内に吊り下げるための吊りケーブルと、
前記吊りケーブルを上昇および下降させるためのクレーンを備えており、
前記ポンプコラムの上部開口、前記アクチュエータ駆動型扉、および前記クレーンは、前記作業空間内に配置されている、ポンプ設置装置。
【請求項2】
前記吊りケーブルは、複数の分割吊りケーブルと、前記複数の分割吊りケーブルを連結する複数の連結リンクを有しており、
前記ポンプ設置装置は、前記連結リンクを操作して前記複数の分割吊りケーブルの連結および切り離しを前記連結リンクに実行させるリンク操作装置をさらに備えている、請求項1に記載のポンプ設置装置。
【請求項3】
前記作業チャンバは、前記作業空間に連通するパージガス入口ポートと、前記パージガス入口ポートに連結されたパージガス供給ラインを備えている、請求項1または2に記載のポンプ設置装置。
【請求項4】
前記潜没式ポンプの電動機に電気的に接続された第1電気接点と、
前記ポンプコラムに固定され、かつ前記第1電気接点に接触する第2電気接点と、
前記第2電気接点に電気的に接続された電力ケーブルを備えている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポンプ設置装置。
【請求項5】
液化ガスを移送するために使用される潜没式ポンプをポンプコラム内に設置する方法であって、
作業チャンバによって形成された、閉じられた作業空間内に配置されているアクチュエータ駆動型扉を開き、前記アクチュエータ駆動型扉は前記ポンプコラムの上部に連結されており、
前記作業空間内で吊りケーブルを前記潜没式ポンプに連結し、
前記作業空間内に配置されているクレーンにより、前記吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で下降させる工程を含み、
前記ポンプコラムの上部開口は、前記作業空間内に配置されている、方法。
【請求項6】
前記吊りケーブルは、複数の分割吊りケーブルと、前記複数の分割吊りケーブルを連結する複数の連結リンクを有しており、
前記吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で下降させる工程は、リンク操作装置により前記連結リンクを操作して前記複数の分割吊りケーブルを1つずつ連結しながら、前記クレーンにより、前記複数の分割吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で下降させる工程である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内に搬入する前に、前記作業空間内にパージガスを供給して、前記作業空間内で前記潜没式ポンプを前記パージガスにさらす工程をさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で下降させたときに、前記潜没式ポンプの電動機に電気的に接続された第1電気接点を、前記ポンプコラムに固定されている第2電気接点に接触させる工程をさらに含む、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
液化ガスを移送するために使用される潜没式ポンプをポンプコラムから取り出す方法であって、
作業チャンバによって形成された、閉じられた作業空間内に配置されているアクチュエータ駆動型扉を開き、前記アクチュエータ駆動型扉は前記ポンプコラムの上部に連結されており、
前記潜没式ポンプに連結されている吊りケーブルを、前記作業空間内に配置されているクレーンにより引き上げることで、前記吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で上昇させ、
前記吊りケーブルを前記潜没式ポンプから切り離し、
前記クレーンにより前記潜没式ポンプを前記ポンプコラムから前記作業空間内に引き上げる工程を含み、
前記ポンプコラムの上部開口は、前記作業空間内に配置されている、方法。
【請求項10】
前記吊りケーブルは、複数の分割吊りケーブルと、前記複数の分割吊りケーブルを連結する複数の連結リンクを有しており、
前記吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で上昇させる工程は、リンク操作装置により前記連結リンクを操作して前記複数の分割吊りケーブルを1つずつ切り離しながら、前記クレーンにより、前記複数の分割吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で上昇させる工程である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記潜没式ポンプを前記ポンプコラムから前記作業空間内に引き上げた後に、前記作業空間内にパージガスを供給して、前記作業空間内で前記潜没式ポンプを前記パージガスにさらす工程をさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で上昇させたときに、前記潜没式ポンプの電動機に電気的に接続された第1電気接点を、前記ポンプコラムに固定されている第2電気接点から切り離す工程をさらに含む、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化アンモニアや液化天然ガス(LNG)や液体水素などの液化ガスを昇圧するための潜没式ポンプをポンプコラム内に設置、およびポンプコラムから取り出すためのポンプ設置装置に関する。さらに、本発明はそのようなポンプ設置装置を用いて、潜没式ポンプをポンプコラム内に設置する方法、および潜没式ポンプをポンプコラムから取り出す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、火力発電や化学原料として広く利用されている。また、アンモニアや水素は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を発生しないエネルギーとして期待されている。エネルギーとしての水素の用途には、燃料電池およびタービン発電などが挙げられる。天然ガス、アンモニア、および水素は、常温では気体の状態であるため、これらの貯蔵および運搬のために、天然ガス、アンモニア、および水素は冷却され、液化される。液化天然ガス(LNG)や液化アンモニアや液体水素などの液化ガスは、一旦液化ガス貯槽に貯蔵された後、ポンプによって発電所や工場などに移送される。
【0003】
図19は、液化ガスが貯蔵された液化ガス貯槽と、液化ガスを汲み上げるためのポンプの従来例を示す模式図である。ポンプ500は、液化ガス貯槽501に設置された縦型ポンプコラム505内に設置される。ポンプコラム505の上端開口は、上蓋510で閉じられている。ポンプコラム505内は液化ガスで満たされ、ポンプ500の全体は液化ガス中に浸漬される。したがって、ポンプ500は、液化ガス中で運転可能な潜没式ポンプである。
【0004】
ポンプ500が運転されると、液化ガス貯槽501内の液化ガスはポンプコラム505内に吸い込まれ、ポンプコラム505を上昇し、そしてポンプコラム505から液化ガス排出ポート509を通じて排出される。ポンプコラム505には、パージガス導入ポート512が設けられている。このパージガス導入ポート512は、ポンプ500の運転時には閉じられている。
【0005】
図20は、ポンプ500をポンプコラム505内に搬入する作業、およびポンプ500をポンプコラム505から引き上げる作業を説明する図である。ポンプ500をポンプコラム505内に設置するとき、およびメンテナンスなどの目的でポンプ500をポンプコラム505から引き上げるとき、上蓋510が外され、ケーブル508は巻き上げ機513に接続される。ポンプ500はケーブル508に吊り下げられ、巻き上げ機513によってポンプコラム505内を上昇または下降される。
【0006】
ポンプコラム505内に残留する液化ガスはガス化して、ボイルオフガス(BOG)を形成する。ポンプ500の搬入および引き上げの間は、このボイルオフガス(BOG)が大気に放出されることを防ぐために、パージガス導入ポート512を通じてパージガスがポンプコラム505内に導入される。パージガスは、ポンプコラム505内への空気の侵入を防ぐ役割も持つ。パージガスには、N2ガス、Heガスなどの不活性ガスが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3197645号公報
【特許文献2】特許3198248号公報
【特許文献3】特許3472379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ポンプコラム505の上部開口は、ポンプ500の幅よりも大きいため、ボイルオフガス(BOG)のポンプコラム505外への放出を防ぎつつ、空気のポンプコラム505内への侵入を防ぐためには、大量のパージガスが必要となる。特に、Heガスは高価であり、ポンプ500の搬入および引き上げ作業のコストが上昇してしまう。
【0009】
また、ポンプ500の搬入および引き上げ作業時には、作業員はボイルオフガスにさらされる可能性があり、安全な作業環境が確保できないおそれがある。特に、ケーブル508をポンプコラム505から引き上げるとき、液化ガスに接触していたケーブル508は非常に低温であり、ケーブル508の取り扱いには危険を伴う。
【0010】
そこで、本発明は、潜没式ポンプのポンプコラムへの搬入およびポンプコラムからの引き上げ時に、ボイルオフガス(BOG)のポンプコラムからの放出を防止するために使用されるパージガスの量を削減することができ、さらには安全な作業環境を構築できるポンプ設置装置を提供する。また、本発明は、そのようなポンプ設置装置を用いて、潜没式ポンプをポンプコラム内に設置する方法、および潜没式ポンプをポンプコラムから取り出す方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、液化ガスを移送するために使用される潜没式ポンプをポンプコラム内に設置および前記ポンプコラムから取り出すためのポンプ設置装置であって、閉じられた作業空間を形成する作業チャンバと、前記ポンプコラムの上部開口を覆うアクチュエータ駆動型扉と、前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内に吊り下げるための吊りケーブルと、前記吊りケーブルを上昇および下降させるためのクレーンを備えており、前記ポンプコラムの上部開口、前記アクチュエータ駆動型扉、および前記クレーンは、前記作業空間内に配置されている、ポンプ設置装置が提供される。
【0012】
一態様では、前記吊りケーブルは、複数の分割吊りケーブルと、前記複数の分割吊りケーブルを連結する複数の連結リンクを有しており、前記ポンプ設置装置は、前記連結リンクを操作して前記複数の分割吊りケーブルの連結および切り離しを前記連結リンクに実行させるリンク操作装置をさらに備えている。
一態様では、前記作業チャンバは、前記作業空間に連通するパージガス入口ポートと、前記パージガス入口ポートに連結されたパージガス供給ラインを備えている。
一態様では、前記ポンプ設置装置は、前記潜没式ポンプの電動機に電気的に接続された第1電気接点と、前記ポンプコラムに固定され、かつ前記第1電気接点に接触する第2電気接点と、前記第2電気接点に電気的に接続された電力ケーブルを備えている。
【0013】
一態様では、液化ガスを移送するために使用される潜没式ポンプをポンプコラム内に設置する方法であって、作業チャンバによって形成された、閉じられた作業空間内に配置されているアクチュエータ駆動型扉を開き、前記アクチュエータ駆動型扉は前記ポンプコラムの上部に連結されており、前記作業空間内で吊りケーブルを前記潜没式ポンプに連結し、前記作業空間内に配置されているクレーンにより、前記吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で下降させる工程を含み、前記ポンプコラムの上部開口は、前記作業空間内に配置されている、方法が提供される。
【0014】
一態様では、前記吊りケーブルは、複数の分割吊りケーブルと、前記複数の分割吊りケーブルを連結する複数の連結リンクを有しており、前記吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で下降させる工程は、リンク操作装置により前記連結リンクを操作して前記複数の分割吊りケーブルを1つずつ連結しながら、前記クレーンにより、前記複数の分割吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で下降させる工程である。
一態様では、前記方法は、前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内に搬入する前に、前記作業空間内にパージガスを供給して、前記作業空間内で前記潜没式ポンプを前記パージガスにさらす工程をさらに含む。
一態様では、前記方法は、前記吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で下降させたときに、前記潜没式ポンプの電動機に電気的に接続された第1電気接点を、前記ポンプコラムに固定されている第2電気接点に接触させる工程をさらに含む。
【0015】
一態様では、液化ガスを移送するために使用される潜没式ポンプをポンプコラムから取り出す方法であって、作業チャンバによって形成された、閉じられた作業空間内に配置されているアクチュエータ駆動型扉を開き、前記アクチュエータ駆動型扉は前記ポンプコラムの上部に連結されており、前記潜没式ポンプに連結されている吊りケーブルを、前記作業空間内に配置されているクレーンにより引き上げることで、前記吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で上昇させ、前記吊りケーブルを前記潜没式ポンプから切り離し、前記クレーンにより前記潜没式ポンプを前記ポンプコラムから前記作業空間内に引き上げる工程を含み、前記ポンプコラムの上部開口は、前記作業空間内に配置されている、方法が提供される。
【0016】
一態様では、前記吊りケーブルは、複数の分割吊りケーブルと、前記複数の分割吊りケーブルを連結する複数の連結リンクを有しており、前記吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で上昇させる工程は、リンク操作装置により前記連結リンクを操作して前記複数の分割吊りケーブルを1つずつ切り離しながら、前記クレーンにより、前記複数の分割吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で上昇させる工程である。
一態様では、前記方法は、前記潜没式ポンプを前記ポンプコラムから前記作業空間内に引き上げた後に、前記作業空間内にパージガスを供給して、前記作業空間内で前記潜没式ポンプを前記パージガスにさらす工程をさらに含む。
一態様では、前記方法は、前記吊りケーブルおよび前記潜没式ポンプを前記ポンプコラム内で上昇させたときに、前記潜没式ポンプの電動機に電気的に接続された第1電気接点を、前記ポンプコラムに固定されている第2電気接点から切り離す工程をさらに含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業チャンバの外からクレーンおよびアクチュエータ駆動型扉を遠隔操作することで、潜没式ポンプのポンプコラムへの設置およびポンプコラムからの引き上げを自動で行うことができる。したがって作業員は危険雰囲気にさらされることがない。また、ポンプコラムの上部開口は、閉じられた作業空間内にあるので、ボイルオフガス(BOG)が大気に放出されることがない。結果として、ボイルオフガス(BOG)の大気への放出を防止するために使用されるパージガスの量を実質的に0にすることができる。さらに、潜没式ポンプのポンプコラムへの搬入時に、液化ガスの成分と同じ成分からなるガスで作業空間を満たすことにより、空気などの他の成分を含むガスのポンプコラムへの進入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】液化ガスを移送するためのポンプシステムの一実施形態を示す図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、第1電気接点および第2電気接点を、ポンプコラムの半径方向から見た図である。
【
図3】連結リンクの一実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は、リンク操作装置により第1リンク機構を第2リンク機構に連結する様子を説明する図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、リンク操作装置により第1リンク機構を第2リンク機構から切り離す様子を説明する図である。
【
図6】支持プレートの一実施形態を示す上面図である。
【
図7】吊りケーブルおよび潜没式ポンプがポンプコラム内に搬入される前の状態を示す図である。
【
図8】潜没式ポンプをポンプコラム内に設置する方法の一実施形態を説明する図である。
【
図9】潜没式ポンプをポンプコラム内に設置する方法の一実施形態を説明する図である。
【
図10】潜没式ポンプをポンプコラム内に設置する方法の一実施形態を説明する図である。
【
図11】潜没式ポンプをポンプコラム内に設置する方法の一実施形態を説明する図である。
【
図12】潜没式ポンプをポンプコラム内に設置する方法の一実施形態を説明する図である。
【
図13】潜没式ポンプをポンプコラム内に設置する方法の一実施形態を説明する図である。
【
図14】潜没式ポンプをポンプコラムから取り出す方法の一実施形態を説明する図である。
【
図15】潜没式ポンプをポンプコラムから取り出す方法の一実施形態を説明する図である。
【
図16】潜没式ポンプをポンプコラムから取り出す方法の一実施形態を説明する図である。
【
図17】潜没式ポンプをポンプコラムから取り出す方法の一実施形態を説明する図である。
【
図18】潜没式ポンプをポンプコラムから取り出す方法の一実施形態を説明する図である。
【
図19】液化ガスが貯蔵された液化ガス貯槽と、液化ガスを汲み上げるためのポンプの従来例を示す模式図である。
【
図20】ポンプをポンプコラム内に搬入する作業、およびポンプをポンプコラムから引き上げる作業を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、液化ガスを移送するためのポンプシステムの一実施形態を示す図である。
図1に示すポンプシステムによって移送される液化ガスの例としては、液化アンモニア、液体水素、液体窒素、液化天然ガス、液化エチレンガス、液化石油ガスなどが挙げられる。
【0020】
図1に示すように、ポンプシステムは、液化ガスを移送するための潜没式ポンプ2と、潜没式ポンプ2が内部に収容されたポンプコラム3と、ポンプコラム3の上部開口を閉じるヘッドプレート10を備えている。ポンプコラム3は、液化ガスが貯留される液化ガス貯槽5内に設置されている。ポンプコラム3は、鉛直方向に延びた中空状の容器であり、その上部は液化ガス貯槽5から上方に突出している。ポンプコラム3はパージガス導入ポート8および吐出しポート9を有している。吐出しポート9は、液化ガス貯槽5の内部から外部に延びる図示しない移送管に連結されている。
【0021】
ポンプコラム3の底部には吸込み弁6が設けられている。潜没式ポンプ2はポンプコラム3の吸込み弁6上に設置される。吸込み弁6は、ポンプコラム3の下部開口を覆う弁体6Aと、弁体6Aを上方に付勢する複数のばね6Bを有している。潜没式ポンプ2が弁体6A上の置かれていないときは、弁体6Aは複数のばね6Bによってポンプコラム3の下端に押し付けられ、ポンプコラム3の下部開口を閉じる。潜没式ポンプ2が弁体6A上に置かれると、潜没式ポンプ2の自重により弁体6Aはばね6Bの力に抗って下方に移動し、これにより吸込み弁6が開く。吸込み弁6は、アクチュエータ駆動型弁(例えば電動弁)でもよい。
【0022】
ヘッドプレート10は、ポンプコラム3の上端に置かれている。ヘッドプレート10は、アクチュエータ駆動型扉12によって覆われている。吊りケーブル23および連結構造体28は、ヘッドプレート10から吊り下げられている。吊りケーブル23は、ポンプコラム3内を鉛直方向に延びている。吊りケーブル23は、連結リンク24によって連結された複数の分割吊りケーブル23Bを有する。
【0023】
連結構造体28は、潜没式ポンプ2に取り付けられている。連結構造体28は吊りケーブル23の下端に連結されている。より具体的には、連結構造体28は、吊りケーブル23に連結されるリンク機構28Aと、リンク機構28Aと潜没式ポンプ2とを連結する連結部材28Bを備えている。連結部材28Bは、ケーブル、棒状部材などであってもよい。リンク機構28Aは、連結部材28Bよりも広い幅を有している。
【0024】
液化ガス貯槽5の側壁には電気端子35が取り付けられている。この電気端子35は、図示しない電源に接続されている。潜没式ポンプ2には、その電動機2aに電気的に接続された第1電気接点21が固定されており、ポンプコラム3の側壁には第1電気接点21に接触する第2電気接点22が設けられている。潜没式ポンプ2の電動機2aに電力を供給するための電力ケーブル36は、電気端子35から第2電気接点22まで延びている。
【0025】
第1電気接点21は、潜没式ポンプ2の外面に固定されており、潜没式ポンプ2の外面からその半径方向外側に突出している。第2電気接点22は、潜没式ポンプ2の半径方向外側に位置している。第1電気接点21は、潜没式ポンプ2と一体に移動可能であり、その一方で、第2電気接点22の位置は固定されている。第2電気接点22の一部はポンプコラム3外に配置されており、電力ケーブル36の全体はポンプコラム3の外に配置されている。第2電気接点22は、ポンプコラム3の側壁を貫通して延びている。したがって、第2電気接点22は、ポンプコラム3の外に位置する外側部分と、ポンプコラム3内に位置する内側部分を有する。電力ケーブル36の端部は、第2電気接点22の外側部分に接続されている。
【0026】
第1電気接点21および第2電気接点22は、液化ガスに接触しているが、本実施形態で使用される液化ガスは電気絶縁性を有している。したがって、第1電気接点21および第2電気接点22を通じて漏電は起こらない。
【0027】
図示しないが、他の実施形態では、第2電気接点22の全体がポンプコラム3内に配置され、電力ケーブル36はポンプコラム3の側壁を貫通して第2電気接点22まで延びてもよい。
【0028】
第1電気接点21は潜没式ポンプ2と一体に移動可能であり、かつ第2電気接点22に対して相対的に移動可能である。第1電気接点21は、潜没式ポンプ2をポンプコラム3内で下降させたときに、第2電気接点22に接触することができる。潜没式ポンプ2がポンプコラム3内の運転位置(
図1に示す潜没式ポンプ2の位置)まで下降されたとき、第1電気接点21は第2電気接点22に接触する。これにより第1電気接点21と第2電気接点22の電気的接続が確立される。電力は、電力ケーブル36から第2電気接点22および第1電気接点21を経由して潜没式ポンプ27の電動機2aに供給され、これにより潜没式ポンプ2が作動する。
【0029】
図2(a)は、第1電気接点21および第2電気接点22を、ポンプコラム3の半径方向から見た図である。第1電気接点21は、ポンプコラム3の長手方向に沿って延びる第1接触面21aを有する。同様に、第2電気接点22は、ポンプコラム3の長手方向に沿って延びる第2接触面22aを有する。本実施形態においては、第1電気接点21は平坦な板形状を有しており、第2電気接点22は、第1電気接点21を挟むクランプ形状を有している。一実施形態では、第2電気接点22は平坦な板形状を有しており、第1電気接点21は、第2電気接点22を挟むクランプ形状を有してもよい。
【0030】
図2(b)に示すように、第1接触面21aが第2接触面22aに接触するまで、第1電気接点21を第2電気接点22に向かって移動させることができる。第1接触面21aおよび第2接触面22aは互いに並行であり、かつポンプコラム3の長手方向に延びている。したがって、第1電気接点21および前記第2電気接点22は、互いに接触しつつ、ポンプコラム3の長手方向において互いに相対的に移動可能である。
【0031】
図1に戻り、潜没式ポンプ2の運転中は、液化ガス貯槽5内の液化ガスは、吸込み弁6を通じてポンプコラム3内に導入され、ポンプコラム3内は液化ガスで満たされる。潜没式ポンプ2の運転中、潜没式ポンプ2の全体は液化ガス中に浸漬される。したがって、潜没式ポンプ2は、液化ガス中で運転可能なように構成されている。潜没式ポンプ2によって昇圧された液化ガスは、吐出しポート9および図示しない移送管を通じて外部に移送される。潜没式ポンプ2の運転中は、パージガス導入ポート8は、図示しない弁により閉じられている。
【0032】
次に、潜没式ポンプ2をポンプコラム3内に設置およびポンプコラム3から取り出すためのポンプ設置装置について説明する。ポンプシステムは、以下に説明するポンプ設置装置を備えている。ポンプ設置装置は、閉じられた作業空間15を形成する作業チャンバ1と、ポンプコラム3の上部開口3aを覆う上記アクチュエータ駆動型扉12と、潜没式ポンプ2をポンプコラム3内に吊り下げるための上記吊りケーブル23と、吊りケーブル23を上昇および下降させるためのクレーン40と、上記第1電気接点21および上記第2電気接点22を備えている。ポンプコラム3の上部開口3a、アクチュエータ駆動型扉12、およびクレーン40は、作業空間15内に配置されている。作業チャンバ1は、潜没式ポンプ2や吊りケーブル23などを作業空間15内に搬入および作業空間15から搬出するための作業扉16を有している。この作業扉16は、通常は閉じられている。
【0033】
作業チャンバ1は、液化ガス貯槽5の上壁5Aに固定されている。作業チャンバ1は、その作業空間15に連通するパージガス入口ポート17およびガス出口ポート18を備えている。パージガス入口ポート17には、パージガス供給源70から延びるパージガス供給ライン71が連結され、ガス出口ポート18には、真空ライン74が連結される。真空ライン74は、真空ポンプなどの真空源(図示せず)に接続されている。パージガス供給源70の例としては、窒素ガス供給源、ヘリウムガス供給源、水素ガス供給源、またはこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、パージガス供給源70は、異なる種類の複数のパージガス供給源、例えば窒素ガス供給源およびヘリウムガス供給源および水素ガス供給源のうちの少なくとも2つを含んでもよい。この場合は、複数のパージガス供給源は、選択的にパージガス供給ライン71に接続されてもよい。
【0034】
使用されるパージガスは、潜没式ポンプ2が汲み上げる対象の液化ガスの沸点以下の沸点を持つ成分からなるガスである。これは、パージガスが液化ガスに接触したときに、パージガスが液化しないようにするためである。パージガスの例としては、窒素ガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスが挙げられる。例えば、潜没式ポンプ2が汲み上げる対象の液化ガスが液化天然ガスである場合、液化天然ガスの沸点(-162℃)よりも低い沸点(-196℃)を持つ窒素からなるガスである窒素ガスがパージガスに使用される。他の例では、潜没式ポンプ2が汲み上げる対象の液化ガスが液体水素である場合、水素の沸点(-253℃)よりも低い沸点(-269℃)を持つヘリウムからなるガスであるヘリウムガスがパージガスに使用される。
【0035】
パージガスの一部は、液化ガスの成分と同じ成分からなるガスであってもよい。ガス出口ポート18がガス処理装置に連結されている場合には、パージガスの全ては、液化ガスの成分と同じ成分からなるガスであってもよい。例えば、液化ガスが液体水素である場合は、パージガスの一部または全ては、水素ガスであってもよい。他の例では、液化ガスが液化アンモニアである場合は、パージガスの一部または全てはアンモニアガスであってもよい。
【0036】
アクチュエータ駆動型扉12は、ポンプコラム3の上部に連結されている。アクチュエータ駆動型扉12は、ポンプコラム3の上部開口3a、およびこの上部開口3aを閉じるヘッドプレート10を覆っている。アクチュエータ駆動型扉12は、電動機またはエアシリンダなどのアクチュエータ13を備えている。アクチュエータ駆動型扉12は、作業チャンバ1の外部から送信された指令信号を受けて、開閉するように構成されている。潜没式ポンプ2の運転中には、
図1に示すように、アクチュエータ駆動型扉12は、閉じられている。
【0037】
アクチュエータ駆動型扉12が閉じられているとき、アクチュエータ駆動型扉12とポンプコラム3の上部との間には、密閉された空間が形成される。ヘッドプレート10は、この密閉された空間内に位置している。アクチュエータ駆動型扉12は、ヘッドプレート10とポンプコラム3の上部との間の微小な隙間を通過したボイルオフガス(BOG)が作業チャンバ1の作業空間15内に漏洩することを防止することができる。
【0038】
クレーン40は、作業空間15で移動可能に構成されている。より具体的には、クレーン40は、矢印で示すように、作業空間15内に配置された支持レール41上を移動可能である。クレーン40は、ポンプコラム3の上方位置と、ポンプコラム3から離れた位置との間を移動することができる。クレーン40は、把持機構44と、把持機構44を吊り下げるワイヤー45と、ワイヤー45を繰り出し、および巻き取る巻き上げ機46を備えている。把持機構44は、ヘッドプレート10、吊りケーブル23、連結リンク24、連結構造体28などを把持することが可能に構成されている。巻き上げ機46の例としては、ホイスト、ウインチなどが挙げられる。クレーン40は、作業チャンバ1の外部から送信された指令信号を受けて、動作するように構成されている。
【0039】
吊りケーブル23は、複数の分割吊りケーブル23B、およびこれら分割吊りケーブル23Bを連結する複数の連結リンク24を含む。
図1では、1つの連結リンク24のみが描かれている。各分割吊りケーブル23Bの長さは、ポンプコラム3の長さよりも短い。複数の分割吊りケーブル23Bは、連結リンク24により直列に繋がれている。
【0040】
ポンプ設置装置は、各連結リンク24を操作して、分割吊りケーブル23Bを連結および切り離すリンク操作装置50と、リンク操作装置50を支持する支持プレート55と、支持プレート55をポンプコラム3の直上位置と退避位置との間で移動させるプレートアクチュエータ58をさらに備えている。リンク操作装置50は、支持プレート55上に配置されており、支持プレート55はプレートアクチュエータ58に連結されている。プレートアクチュエータ58は、リンク操作装置50と支持プレート55を一体に移動させることが可能である。さらに、リンク操作装置50は、リニアモータまたはエアシリンダなどのアクチュエータ52を有しており、リンク操作装置50は支持プレート55上で移動可能に構成されている。すなわち、リンク操作装置50は、支持プレート55に対して相対的に移動可能である。
【0041】
リンク操作装置50は、連結リンク24に向かって突出する操作ピン51を有している。この操作ピン51で連結リンク24が操作されたときに、連結リンク24は分割吊りケーブル23Bを連結し、または切り離すように構成される。
【0042】
図3は、連結リンク24の一実施形態を示す断面図である。
図3に示すように、連結リンク24は、第1リンク機構62と、第2リンク機構63を備えている。第1リンク機構62および第2リンク機構63は、各分割吊りケーブル23Bの両端に接続されている。
図3に示す実施形態では、第1リンク機構62は各分割吊りケーブル23Bの下端に接続され、第2リンク機構63は各分割吊りケーブル23Bの上端に接続されている。第2リンク機構63は、第1リンク機構62よりも広い幅を有している。
図1に示す連結構造体28のリンク機構28Aは、第2リンク機構63と同じ構成を有しているので、以下の説明は、連結構造体28のリンク機構28Aにも適用される。
【0043】
第1リンク機構62は、水平に延びる第1横穴62aを有している。第2リンク機構63は、第1リンク機構62が収容される窪み部65を有するハウジング66と、ハウジング66に形成された第2横穴67内に収容された連結ピン68を備えている。連結ピン68は、第2横穴67内を移動可能である。第2横穴67は、ハウジング66を水平方向に貫通している。第1リンク機構62の第1横穴62aの直径は連結ピン68の直径よりも大きく、連結ピン68は第1リンク機構62の第1横穴62aを通過することができる。
【0044】
図3に示すように、連結ピン68が第1リンク機構62の第1横穴62aを横切って配置されているときは、第1リンク機構62と第2リンク機構63は連結されている。一方、連結ピン68が第1リンク機構62の第1横穴62aの外にあるときは、第1リンク機構62は第2リンク機構63から切り離される。
【0045】
図4(a)および
図4(b)は、リンク操作装置50により第1リンク機構62を第2リンク機構63に連結する様子を説明する図である。
図4(a)に示すように、連結ピン68が窪み部65の外に位置しているとき、第1リンク機構62は第2リンク機構63の窪み部65内に進入する。第1リンク機構62の第1横穴62aと、第2リンク機構63の第2横穴67が直線状に並んだ状態で、
図4(b)に示すように、リンク操作装置50は、連結リンク24の第2リンク機構63に向かって移動し、リンク操作装置50の操作ピン51は連結ピン68を第1横穴62a内に押し込む。連結ピン68は第1横穴62a内に移動し、これにより第1リンク機構62と第2リンク機構63が連結される。
【0046】
図5(a)および
図5(b)は、リンク操作装置50により第1リンク機構62を第2リンク機構63から切り離す様子を説明する図である。
図5(a)に示すように、リンク操作装置50は、連結リンク24の第2リンク機構63に向かって移動し、リンク操作装置50の操作ピン51は連結ピン68を第1横穴62aから押し出す。その後、
図5(b)に示すように、リンク操作装置50の操作ピン51は第1横穴62aおよび第2横穴67から引き抜かれ、第1リンク機構62は、第2リンク機構63から切り離される。
【0047】
図6は、
図1に示す支持プレート55の一実施形態を示す上面図である。支持プレート55は、横長の切り欠き55aを有している。この切り欠き55aの幅は、分割吊りケーブル23Bの幅および連結構造体28の連結部材28Bの幅よりも大きく、かつ連結リンク24の第2リンク機構63の幅、および連結構造体28のリンク機構28Aの幅よりも小さい。したがって、分割吊りケーブル23Bおよび連結構造体28の連結部材28Bは、切り欠き55aを通過することはできるが、連結リンク24の第2リンク機構63および連結構造体28のリンク機構28Aは、切り欠き55aを通過することができない。
【0048】
図7は、吊りケーブル23および潜没式ポンプ2がポンプコラム3内に搬入される前の状態を示す図である。
図7に示すように、吊りケーブル23を構成する複数の分割吊りケーブル23B、および潜没式ポンプ2は、作業チャンバ1の作業空間15内において、ポンプコラム3から離れた場所に配置されている。潜没式ポンプ2には、連結構造体28および第1電気接点21が予め取り付けられている。各分割吊りケーブル23Bには連結リンク24が予め取り付けられており、1つの分割吊りケーブル23Bにはヘッドプレート10が予め取り付けられている。吸込み弁6の弁体6Aは複数のばね6Bによってポンプコラム3の下端に押し付けられ、ポンプコラム3の下部開口を閉じている。
【0049】
次に、潜没式ポンプ2をポンプコラム3内に設置する方法の一実施形態について、
図7乃至
図13を参照して説明する。
図7乃至
図13に示す一連の動作は、潜没式ポンプ2をポンプコラム3内で下降させる動作と、複数の分割吊りケーブル23Bを1つずつ吊りケーブル23に継ぎ足す動作を含む。以下に説明する動作の前に、ポンプコラム3から液化ガスが排出される。具体的には、アクチュエータ駆動型扉12が開かれた状態で、パージガスをパージガス入口ポート17を通じて作業空間15内に供給し、ポンプコラム3内の圧力を高めることにより、液化ガスをポンプコラム3から吸込み弁6を通じて排出する。その後、アクチュエータ駆動型扉12は閉じられる。
【0050】
ステップ101では、
図7に示すように、ポンプコラム3の上部開口3aがアクチュエータ駆動型扉12で閉じられた状態で、潜没式ポンプ2が収容された作業チャンバ1内の作業空間15をガス出口ポート18を通じて真空引きする。その後、パージガス(例えば、不活性ガス、および/または液化ガスの成分と同じ成分からなるガスを含む)をパージガス入口ポート17から作業空間15に供給し、作業空間15をパージガスで満たす。潜没式ポンプ2は作業空間15内でパージガスにさらされ(接触し)、これによって潜没式ポンプ2の表面から空気および水分が排除される。この工程は、潜没式ポンプ2から空気および水分を追い払うドライアップである。作業空間15の真空引きと、作業空間15へのパージガスの供給は繰り返し行われてもよい。
【0051】
ステップ102では、アクチュエータ駆動型扉12を開き、クレーン40により潜没式ポンプ2をポンプコラム3の上方位置まで搬送する。より具体的には、クレーン40の把持機構44は、潜没式ポンプ2に連結されている連結構造体28のリンク機構28Aを把持し、クレーン40は潜没式ポンプ2および連結構造体28を一体にポンプコラム3の上方位置まで搬送する。
ステップ103では、クレーン40により、潜没式ポンプ2および連結構造体28を一体に下降させ、潜没式ポンプ2をポンプコラム3内に移動させ、その一方で連結構造体28のリンク機構28Aをポンプコラム3の上方に位置させる。
【0052】
ステップ104では、連結構造体28のリンク機構28Aがポンプコラム3の上方ある状態で、プレートアクチュエータ58(
図1参照)により支持プレート55およびリンク操作装置50をポンプコラム3に向かって移動させ、支持プレート55でポンプコラム3の上部開口3aを覆う。
図6を参照して説明したように、支持プレート55は切り欠き55aを有しており、切り欠き55aの幅は連結構造体28の連結部材28Bの幅よりも大きく、かつリンク機構28Aの幅よりも小さい。
図8示すステップ104では、連結部材28Bが支持プレート55の切り欠き55a内に位置するように、支持プレート55がポンプコラム3上に移動する。
【0053】
ステップ105では、連結構造体28のリンク機構28Aが支持プレート55に接触するまで、クレーン40により連結構造体28および潜没式ポンプ2をさらに下降させる。潜没式ポンプ2は、連結構造体28によって支持プレート55から吊り下げられる。すなわち、潜没式ポンプ2の荷重は、支持プレート55によって支持される。
ステップ106では、クレーン40の把持機構44は、連結構造体28のリンク機構28Aを離し、次いでクレーン40は、予め用意されている複数の分割吊りケーブル23B(
図7参照)のうちの1つを、ポンプコラム3の上方位置まで搬送する。分割吊りケーブル23Bの上端には、連結リンク24の第2リンク機構63が予め取り付けられており、分割吊りケーブル23Bの下端には、連結リンク24の第1リンク機構62が予め取り付けられている。
【0054】
ステップ107では、分割吊りケーブル23Bの下端に取り付けられている第1リンク機構62が、支持プレート55上のリンク機構28Aの窪み部65(
図4(a)参照)内に進入するまで、分割吊りケーブル23Bがクレーン40により下降される。
ステップ108では、リンク操作装置50は、支持プレート55上のリンク機構28Aに向かって移動し、リンク操作装置50の操作ピン51によりリンク機構28Aの連結ピン68を第1横穴62a内に移動させる(
図4(b)参照)。これにより、第1リンク機構62はリンク機構28Aに連結され、分割吊りケーブル23Bは連結構造体28に連結される。
【0055】
ステップ109では、リンク操作装置50の操作ピン51がリンク機構28Aの外に位置するまで、リンク操作装置50がリンク機構28Aから離れる方向に移動する。その後、クレーン40により、分割吊りケーブル23B、連結構造体28、および潜没式ポンプ2を少しだけ引き上げる。潜没式ポンプ2の荷重は、クレーン40により支持される。
ステップ110では、プレートアクチュエータ58(
図1参照)により支持プレート55およびリンク操作装置50をポンプコラム3から離れる方向に移動させる。続いて、クレーン40により、分割吊りケーブル23B、連結構造体28、および潜没式ポンプ2が下降され、潜没式ポンプ2をポンプコラム3内に移動させ、その一方で連結リンク24の第2リンク機構63をポンプコラム3の上方に位置させる。
【0056】
ステップ111では、最も上にある分割吊りケーブル23Bに取り付けられた第2リンク機構63がポンプコラム3内に入る前に、プレートアクチュエータ58(
図1参照)により支持プレート55およびリンク操作装置50をポンプコラム3に向かって移動させ、支持プレート55でポンプコラム3の上部開口3aを覆う。
図6を参照して説明したように、支持プレート55の切り欠き55aの幅は分割吊りケーブル23Bの幅よりも大きく、かつ第2リンク機構63の幅よりも小さい。
図11示すステップ111では、分割吊りケーブル23Bが支持プレート55の切り欠き55a内に位置するように、支持プレート55がポンプコラム3上に移動する。
【0057】
ステップ112では、最も上にある分割吊りケーブル23Bに取り付けられた第2リンク機構63が支持プレート55に接触するまで、クレーン40により分割吊りケーブル23B、連結構造体28、および潜没式ポンプ2をポンプコラム3内でさらに下降させる。潜没式ポンプ2は、分割吊りケーブル23Bおよび連結構造体28によって支持プレート55から吊り下げられる。すなわち、潜没式ポンプ2の荷重は、支持プレート55によって支持される。
【0058】
そして、潜没式ポンプ2がポンプコラム3の底部に近づくまで、上記ステップ106から上記ステップ112と同様のステップを、複数の分割吊りケーブル23Bの残りを1つずつ追加しながら、繰り返す。すなわち、リンク操作装置50により連結リンク24を操作して複数の分割吊りケーブル23Bを1つずつ連結しながら、クレーン40により、複数の分割吊りケーブル23Bおよび潜没式ポンプ2をポンプコラム3内で下降させる。
【0059】
ステップ113では、潜没式ポンプ2がポンプコラム3の底部に近づいたとき、最後の分割吊りケーブル23Bを吊りケーブル23に追加する。この最後の分割吊りケーブル23Bの上端にはヘッドプレート10が予め連結されている。
ステップ114では、
図4(a)および
図4(b)を参照して説明したように、最も上にある分割吊りケーブル23Bの下端に取り付けられた第1リンク機構62と、支持プレート55上の第2リンク機構63を連結させる。
【0060】
ステップ115では、プレートアクチュエータ58(
図1参照)により支持プレート55およびリンク操作装置50をポンプコラム3から離れる方向に移動させる。続いて、クレーン40により、分割吊りケーブル23B、連結構造体28、および潜没式ポンプ2が下降され、ポンプコラム3の上部開口3aがヘッドプレート10で閉じられるとともに、潜没式ポンプ2は吸込み弁6上に置かれる。吸込み弁6は、潜没式ポンプ2の自重により開く。同時に、潜没式ポンプ2に固定されている第1電気接点21は、ポンプコラム3に固定されている第2電気接点22に接触し、これにより、潜没式ポンプ2の電動機2aと電力ケーブル36との電気的接続が確立される。
【0061】
ステップ116では、クレーン40の把持機構44がヘッドプレート10から離れ、アクチュエータ駆動型扉12が閉じられる。これにより、潜没式ポンプ2のポンプコラム3への設置が完了する。
【0062】
作業員は、作業チャンバ1の外からクレーン40、リンク操作装置50、およびアクチュエータ駆動型扉12を遠隔操作することで、潜没式ポンプ2のポンプコラム3への設置を自動で行うことができる。したがって、作業員は危険雰囲気にさらされることがない。また、ポンプコラム3の上部開口3aは、閉じられた作業空間15内にあるので、ボイルオフガス(BOG)が大気に放出されることがない。結果として、したがって、ボイルオフガス(BOG)の大気への放出を防止するために使用されるパージガスの量を実質的に0にすることができる。さらに、潜没式ポンプ2のポンプコラム3への搬入時に、液化ガスの成分と同じ成分からなるガスで作業空間15を満たすことにより、空気などの他の成分を含むガスのポンプコラム3への進入を防ぐことができる。
【0063】
次に、潜没式ポンプ2をポンプコラム3から取り出す方法の一実施形態について、
図1、
図14乃至
図18を参照して説明する。潜没式ポンプ2の取り出しでは、基本的に、
図7乃至
図13を参照して説明した工程が逆の順序で行われる。
図1、
図14乃至
図18に示す一連の動作は、潜没式ポンプ2をポンプコラム3内で上昇させる動作と、複数の分割吊りケーブル23Bを1つずつ吊りケーブル23から取り外す動作を含む。
【0064】
ステップ201では、
図1に示すように、ポンプコラム3の上部開口3aがヘッドプレート10およびアクチュエータ駆動型扉12で閉じられた状態で、作業チャンバ1内の作業空間15をガス出口ポート18を通じて真空引きする。その後、パージガス(例えば、不活性ガス、および/または液化ガスの成分と同じ成分からなるガスを含む)をパージガス入口ポート17から作業空間15内に供給し、作業空間15をパージガスで満たす。作業空間15の真空引きと、作業空間15へのパージガスの供給は繰り返し行われてもよい。
【0065】
ステップ202では、
図14に示すように、アクチュエータ駆動型扉12が開かれる。続いて、クレーン40の把持機構44でヘッドプレート10を把持し、クレーン40により、ヘッドプレート10、分割吊りケーブル23B、連結構造体28、潜没式ポンプ2を少しだけ引き上げ、吸込み弁6を閉じる。潜没式ポンプ2がその運転位置(
図1に示す潜没式ポンプ2の位置)から引き上げられたとき、第1電気接点21は第2電気接点22から切り離され、これにより潜没式ポンプ2の電動機2aと電力ケーブル36との電気的接続が遮断される。さらに、パージガスをパージガス入口ポート17を通じて作業チャンバ1内に供給し、ポンプコラム3内の圧力を上昇させる。ポンプコラム3内の圧力上昇に伴って液化ガスがポンプコラム3から吸込み弁6を通って排出される。
【0066】
ステップ203では、最も上にある分割吊りケーブル23Bの全体がポンプコラム3の上方に位置するまで、複数の分割吊りケーブル23B、連結構造体28、潜没式ポンプ2をクレーン40によって引き上げる。その後、プレートアクチュエータ58(
図1参照)により支持プレート55およびリンク操作装置50をポンプコラム3に向かって移動させ、支持プレート55でポンプコラム3の上部開口3aを覆う。
【0067】
ステップ204では、支持プレート55の直上にある第2リンク機構63が支持プレート55に接触するまで、クレーン40により分割吊りケーブル23B、連結構造体28、および潜没式ポンプ2を少しだけ下降させる。潜没式ポンプ2は、分割吊りケーブル23Bおよび連結構造体28によって支持プレート55から吊り下げられる。すなわち、潜没式ポンプ2の荷重は、支持プレート55によって支持される。
【0068】
ステップ205では、リンク操作装置50が支持プレート55上の第2リンク機構63に向かって移動し、リンク操作装置50の操作ピン51により第2リンク機構63の連結ピン68を第1横穴62aの外に移動させる(
図5(a)参照)。
ステップ206では、リンク操作装置50が支持プレート55上の第2リンク機構63から離れる(
図5(b)参照)。これにより、第1リンク機構62は第2リンク機構63から切り離され、最も上の分割吊りケーブル23Bを他の分割吊りケーブル23Bから切り離すことができる。
【0069】
ステップ207では、クレーン40により、最も上の分割吊りケーブル23Bが引き上げられ、さらにポンプコラム3から離れた位置(
図7参照)まで移動される。
ステップ208では、クレーン40により、支持プレート55上の第2リンク機構63が把持される。
【0070】
そして、クレーン40によって、全ての分割吊りケーブル23Bが取り除かれるまで、上記ステップ203から上記ステップ207と同様のステップを、複数の分割吊りケーブル23Bを1つずつ取り外しながら、繰り返す。すなわち、リンク操作装置50により連結リンク21を操作して複数の分割吊りケーブル23Bを1つずつ切り離しながら、クレーン40により、複数の分割吊りケーブル23Bおよび潜没式ポンプ2をポンプコラム3内で上昇させる。全ての分割吊りケーブル23Bが取り除かれたとき、潜没式ポンプ2に取り付けられた連結構造体28のリンク機構28Aは、支持プレート55に支持される。
【0071】
ステップ209では、把持機構44によって連結構造体28のリンク機構28Aを把持し、クレーン40により連結構造体28および潜没式ポンプ2を少しだけ引き上げる。続いて、プレートアクチュエータ58(
図1参照)により支持プレート55およびリンク操作装置50をポンプコラム3から離れる方向に移動させる。
ステップ210では、クレーン40により、連結構造体28および潜没式ポンプ2の全体をポンプコラム3から引き上げ、さらにポンプコラム3から離れた位置(
図7参照)まで搬送する。
ステップ211では、アクチュエータ駆動型扉12が閉じられる。
【0072】
ステップ212では、
図7に示すように、パージガス(例えば、不活性ガス、および/または液化ガスの成分と同じ成分からなるガスを含む)をパージガス入口ポート17を通じて作業チャンバ1の作業空間15に供給し、作業空間15をパージガスで満たす。潜没式ポンプ2はパージ容器1内でパージガスにさらされ(接触し)、これによって潜没式ポンプ2が加温される。この工程は、潜没式ポンプ2加温するホットアップである。これにより、潜没式ポンプ2のポンプコラム3からの取り出しが完了する。
【0073】
作業員は、作業チャンバ1の外からクレーン40、リンク操作装置50、およびアクチュエータ駆動型扉12を遠隔操作することで、潜没式ポンプ2のポンプコラム3からの取り出しを自動で行うことができる。したがって、作業員は危険雰囲気にさらされることがない。また、ポンプコラム3の上部開口3aは、閉じられた作業空間15内にあるので、ボイルオフガス(BOG)が大気に放出されることがない。結果として、したがって、ボイルオフガス(BOG)の大気への放出を防止するために使用されるパージガスの量を実質的に0にすることができる。さらに、潜没式ポンプ2のポンプコラム3からの引き上げ時に、液化ガスの成分と同じ成分からなるガスで作業空間15を満たすことにより、空気などの他の成分を含むガスのポンプコラム3への進入を防ぐことができる。
【0074】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0075】
1 作業チャンバ
2 潜没式ポンプ
2a 電動機
3 ポンプコラム
5 液化ガス貯槽
6 吸込み弁
8 パージガス導入ポート
9 吐出しポート
10 ヘッドプレート
12 アクチュエータ駆動型扉
13 アクチュエータ
15 作業空間
16 作業扉
17 パージガス入口ポート
18 ガス出口ポート
21 第1電気接点
22 第2電気接点
23 吊りケーブル
23B 分割吊りケーブル
24 連結リンク
28 連結構造体
35 電気端子
36 電力ケーブル
40 クレーン
41 支持レール
44 把持機構
45 ワイヤー
46 巻き上げ機
50 リンク操作装置
51 操作ピン
52 アクチュエータ
55 支持プレート
58 プレートアクチュエータ
62 第1リンク機構
62a 第1横穴
63 第3リンク機構
65 窪み部
66 ハウジング
67 第2横穴
68 連結ピン
70 パージガス供給源
71 パージガス供給ライン
74 真空ライン