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特開2023-163542緩慢解凍用冷凍調理済み麺皮食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163542
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】緩慢解凍用冷凍調理済み麺皮食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20231102BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20231102BHJP
【FI】
A23L7/109 C
A23L7/109 D
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074509
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】津田 恭征
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝義
(72)【発明者】
【氏名】増田 久美子
(72)【発明者】
【氏名】針谷 康平
【テーマコード(参考)】
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B036LF12
4B036LH07
4B036LH12
4B036LH15
4B036LH22
4B036LP01
4B036LP17
4B036LP22
4B046LA09
4B046LB10
4B046LC20
4B046LE11
4B046LG09
4B046LG16
4B046LG20
4B046LG29
4B046LP03
4B046LP69
4B046LQ03
(57)【要約】
【課題】緩慢解凍したときに食感や外観の低下の少ない冷凍調理済み麺皮食品の提供。
【解決手段】緩慢解凍用冷凍調理済み麺皮食品の製造方法であって、小麦粉とタピオカ澱粉とを含有する原料粉を、有機酸及び/又は有機酸塩とともに混捏してpH4.0~5.6の麺皮生地を調製することを含み、該原料粉における該小麦粉と該タピオカ澱粉との質量比が20:80~90:10である、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩慢解凍用冷凍調理済み麺皮食品の製造方法であって、
小麦粉とタピオカ澱粉とを含有する原料粉を、有機酸及び/又は有機酸塩とともに混捏してpH4.0~5.6の麺皮生地を調製することを含み、
該原料粉における、該小麦粉と該タピオカ澱粉との質量比が20:80~90:10である、
方法。
【請求項2】
前記原料粉中における、前記小麦粉と前記タピオカ澱粉との合計含有量が50質量%以上である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記タピオカ澱粉がエーテル化タピオカ澱粉及びアセチル化タピオカ澱粉からなる群より選択される1種以上である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記原料粉がグルテンを含有し、該原料粉中における前記タピオカ澱粉と該グルテンとの質量比が10:1~3:1である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記麺皮生地の調製に用いる有機酸及び/又は有機酸塩の量が、該有機酸と有機酸塩の合計量として、前記原料粉100質量部あたり0.01~3質量部である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記麺皮食品が、餃子、焼売、小籠包、及びワンタンからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記緩慢解凍が冷蔵下での解凍である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記麺皮生地から麺皮を製造すること、
該麺皮で具材を包み、加熱調理して麺皮食品を製造すること、
該麺皮食品を冷凍すること、
をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩慢解凍用冷凍調理済み麺皮食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
餃子、焼売、小籠包などの麺皮食品は、加熱調理されていない生の状態では、保存性に劣るため広域に流通させるには不向きである。麺皮食品を調理して冷凍保存し、適時に緩慢解凍して販売することにより、保存性の問題を解決できるだけでなく、広域流通が可能になるため大量生産によるコスト低下が可能となる。しかし、従来の冷凍後に緩慢解凍された麺皮食品には、皮の食感の低下や外観の透明感の低下などの品質低下が生じていた。
【0003】
特許文献1には、麺生地の調製用の水及び得られた麺の茹で水に、1質量%水溶液のpHが4.0~5.5である有機酸及び/又は有機酸塩を添加することで、酸味や酸臭がなく、コシがありほぐれやすく、かつ保存性に優れた茹で麺が得られることが記載されている。特許文献2には、有機酸及び有機酸塩を含むpH5.6~6.0の水溶液を用いて麺生地を製造することにより、粘弾性のある良好な食感を有する麺類又は麺皮類が得られることが記載されている。特許文献3には、麺類をアントシアニン系色素で赤色に着色するに際して、麺生地に、当該色素とともに、有機酸又はその酸性塩の粒子の表面に炭酸アルカリ土類金属(例えば炭酸カルシウム)との中和反応生成物を含むコーティングが施された有機酸製剤である、コーティング有機酸を併用することで、麺類を鮮やかな明るい赤色に着色できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-027930号公報
【特許文献2】特開2019-083815号公報
【特許文献3】特開平5-344858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、緩慢解凍したときにも食感及び外観の低下が少ない冷凍調理済み麺皮食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、小麦粉とタピオカ澱粉とを所定比率で含む原料粉を、有機酸及び/又は有機酸塩とともに混捏して調製した所定のpHの麺生地から製造した冷凍調理済み麺皮食品が、緩慢解凍後にも良好な食感及び外観を有することを見出した。
【0007】
本発明は、以下を提供する。
〔1〕緩慢解凍用冷凍調理済み麺皮食品の製造方法であって、
小麦粉とタピオカ澱粉とを含有する原料粉を、有機酸及び/又は有機酸塩とともに混捏してpH4.0~5.6の麺皮生地を調製することを含み、
該原料粉における、該小麦粉と該タピオカ澱粉との質量比が20:80~90:10である、
方法。
〔2〕前記原料粉中における、前記小麦粉と前記タピオカ澱粉との合計含有量が50質量%以上である、〔1〕記載の方法。
〔3〕前記タピオカ澱粉がエーテル化タピオカ澱粉及びアセチル化タピオカ澱粉からなる群より選択される1種以上である、〔1〕又は〔2〕記載の方法。
〔4〕前記原料粉がグルテンを含有し、該原料粉中における前記タピオカ澱粉と該グルテンとの質量比が10:1~3:1である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の方法。
〔5〕前記麺皮生地の調製に用いる有機酸及び/又は有機酸塩の量が、該有機酸と有機酸塩の合計量として、前記原料粉100質量部あたり0.01~3質量部である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の方法。
〔6〕前記麺皮食品が、餃子、焼売、小籠包、及びワンタンからなる群より選択される、〔1〕~〔5〕のいずれか1項記載の方法。
〔7〕前記緩慢解凍が冷蔵下での解凍である〔1〕~〔6〕のいずれか1項記載の方法。
〔8〕前記麺皮生地から麺皮を製造すること、
該麺皮で具材を包み、加熱調理して麺皮食品を製造すること、
該麺皮食品を冷凍すること、
をさらに含む、〔1〕~〔7〕のいずれか1項記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、緩慢解凍後にも食感や外観が良好な冷凍調理済み麺皮食品を提供することができる。より詳細には、本発明により得られた冷凍調理済み麺皮食品は、緩慢解凍後にも、粘弾性に優れかつ老化によるぼそつきが少ない良好な皮の食感と、皮に透明感のある良好な外観を有することができ、さらに緩慢解凍後に再加熱した場合でも、良好な皮の食感を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において製造される麺皮食品の種類は特に限定されないが、例えば、餃子、焼売、小籠包、ワンタンなどの、麺皮で具材を包み込んだ食品が挙げられる。
【0010】
前記麺皮食品に用いられる麺皮の原料粉は、小麦粉及びタピオカ澱粉を含有する。該原料粉に用いる小麦粉は、麺皮の製造に一般に使用されるものであればよく、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉などが挙げられる。これらの小麦粉は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0011】
前記原料粉に用いるタピオカ澱粉は、食用に一般に使用されるタピオカ澱粉であればよく、未加工タピオカ澱粉でも加工タピオカ澱粉でも、それらの組み合わせでもよい。好ましくは加工タピオカ澱粉が使用される。該加工タピオカ澱粉は、好ましくはエーテル化タピオカ澱粉及びアセチル化タピオカ澱粉からなる群より選択される1種以上である。エーテル化タピオカ澱粉の例としては、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉、カルボキシメチル化タピオカ澱粉などが挙げられる。アセチル化タピオカ澱粉の例としては、酢酸タピオカ澱粉などが挙げられる。該エーテル化タピオカ澱粉及びアセチル化タピオカ澱粉は、架橋処理されていてもよく、例えばヒドロキシプロピル化リン架橋タピオカ澱粉、アセチル化アジピン酸架橋タピオカデンプン、アセチル化リン酸架橋タピオカデンプンなどを含み得る。
【0012】
前記原料粉は、全量中に、前記小麦粉とタピオカ澱粉とを合計で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含有する。該原料粉における該小麦粉(A)と該タピオカ澱粉(B)との質量比は、(A):(B)=20:80~90:10であればよく、好ましくは30:70~70:30である。該原料粉におけるタピオカ澱粉の含有量が少なすぎると、緩慢解凍後の麺皮の食感や外観が不充分になる。一方で、該原料粉における小麦粉の含有量が少なすぎると、緩慢解凍後に再加熱したときに麺皮の食感が不充分になることがあり、また麺皮食品の製造時の作業性(例えば製麺作業性、包餡作業性)や、麺皮の穀粉の風味が低下することがある。
【0013】
前記原料粉は、前述した小麦粉とタピオカ澱粉に加えて、麺皮の製造に従来用いられる他の材料をさらに含有していてもよい。当該他の材料としては、例えば、小麦粉以外の穀粉類;タピオカ澱粉以外の澱粉類;グルテン、大豆蛋白質、乳蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の蛋白質;動植物油脂、乳化油脂、ショートニング、粉末油脂等の油脂類;ショ糖、ブドウ糖、麦芽糖、オリゴ糖、糖アルコール等の糖類;食塩;かんすい;甘味料;焼成カルシウム;食物繊維;香辛料;調味料;ビタミン、ミネラル、栄養強化剤;色素;香料;デキストリン(難消化性含む);膨張剤;乳化剤;増粘剤;保水剤;保存剤;酵素剤;pH調整剤;酸化還元剤などが挙げられるが、これらに限定されない。該小麦粉以外の穀粉の例としては、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉などが挙げられる。また、該タピオカ澱粉以外の澱粉類の例としては、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉などが挙げられ、これらは未加工澱粉でも加工澱粉でもよい。これらの他の材料は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。本発明で用いる原料粉中における該他の材料の合計含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。該原料粉中における他の材料の各々の配合量は、目的とする麺皮の種類に応じて適宜決定することができる。
【0014】
好ましくは、前記原料粉はグルテンを含有する。該原料粉中におけるグルテンの含有量は、該原料粉中における穀粉類と澱粉類の合計量100質量部あたり、好ましくは1~15質量部、より好ましくは2~15質量部、さらに好ましくは2~12質量部である。また、該原料粉中におけるタピオカ澱粉(B)とグルテン(C)の質量比が、(B):(C)=10:1~3:1であると好ましい。また麺皮の食感向上の観点から、前記原料粉は油脂類及び糖類からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましい。あるいは、油脂類及び糖類は、各々、麺皮生地の製造の際に該原料粉に対して別途添加されてもよい。該原料粉又は後述する麺皮生地中における該油脂類及び糖類の含有量は、該原料粉中における穀粉類と澱粉類の合計量100質量部あたり、油脂類は1~10質量%が好ましく、糖類は0.5~5質量%が好ましい。
【0015】
本発明では、前述の原料粉から麺皮生地を調製する。該麺皮生地は、常法に従って前記原料粉を練水と混捏することにより調製することができる。ただし、本発明で製造される麺皮生地のpHは、pH4.0~5.6であり、好ましくはpH4.2~5.45、より好ましくはpH4.2~5.35である。該生地のpHが高すぎると、緩慢解凍後の麺皮の食感と外観が不充分になる。一方、該生地のpHが低すぎると、麺皮食品の製造時の作業性が低下し、また緩慢解凍後の麺皮の粘弾性が低下する傾向がある。本明細書において、麺皮生地のpHとは、麺皮生地(調製後、加熱調理又は乾燥していないもの)10gを水90mLに懸濁させた懸濁液のpH(25℃)をいう。
【0016】
本発明では、麺皮生地の製造の際に、前記原料粉を有機酸及び/又は有機酸塩とともに混捏する。これによって、前述したpH範囲の麺皮生地が調製される。例えば、本発明の方法においては、該原料粉に有機酸及び/又は有機酸塩を予め配合し、これに練水(例えば水、塩水等)を加えて混捏してもよく、又は、該原料粉に、有機酸及び/又は有機酸塩、及び練水をそれぞれ添加して混捏してもよく、又は、有機酸及び/又は有機酸塩を含有する弱酸性水溶液を、練水として該原料粉に添加して混捏してもよい。好ましくは、該麺皮生地は、有機酸及び/又は有機酸塩を含有する弱酸性水溶液を、練水として用いて調製される。該麺皮生地の調製に用いられる練水の量は、練水の水分量として、原料粉100質量部あたり、好ましくは25~65質量部、より好ましくは35~50質量部である。
【0017】
麺皮生地の調製に用いられる有機酸の例としては、一価~三価の有機酸、例えばクエン酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、コハク酸、アジピン酸、乳酸、酢酸、イタコン酸、フィチン酸及び酒石酸からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられ、好ましくはクエン酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸及び酢酸からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは乳酸が挙げられる。有機酸の塩の例としては、クエン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、イタコン酸塩、フィチン酸塩及び酒石酸塩からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられ、好ましくはクエン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、乳酸塩及び酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくはクエン酸塩及び/又は乳酸塩が挙げられる。該塩の種類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられるが、ナトリウム塩及びカリウム塩が好ましい。本発明で用いられる有機酸及び有機酸塩は、特許文献3に記載されるいわゆるコーティング有機酸(有機酸又はその酸性塩の粒子の表面に炭酸アルカリ土類金属との中和反応生成物を含むコーティングが施された有機酸製剤)のような、生の生地中では有機酸がコーティングされたままで、加熱調理時に有機酸が溶け出すものではない。該麺皮生地の調製には、前述した有機酸及び有機酸塩のどちらかを使用すればよく、又は両方を使用してもよい。有機酸及び有機酸塩の両方を使用する場合、有機酸と有機酸塩の質量比は、それらの種類により異なり得るが、通常は有機酸:有機酸塩=1:0.3~20であればよい。また、有機酸及び有機酸塩の両方を使用する場合、該有機酸塩の有機酸は、併用される有機酸と同じ種類のものであっても異なる種類のものであってもよいが、好ましくは同じ種類のものである。
【0018】
麺皮生地の調製に用いる有機酸及び/又は有機酸塩の量は、原料粉や練水の量、所望される麺皮生地のpHなどに応じて適宜調整され得る。好ましくは、該有機酸及び/又は有機酸塩の使用量は、有機酸と有機酸塩の合計量として、原料粉100質量部あたり0.01~3.0質量部、好ましくは0.03~2.0質量部、より好ましくは0.1~1.0質量部である。
【0019】
得られた麺皮生地から本発明の冷凍調理済み麺皮食品が製造される。詳細には、該麺皮生地から麺皮を製造し、該麺皮で具材を包んで生の麺皮食品を製造する。次いで、製造した生の麺皮食品を加熱調理して調理済み麺皮食品を製造する。続いて、該調理済み麺皮食品を冷凍する。麺皮生地からの麺皮の製造には、通常の手段を用いることができる。例えば、調製した生地をまとめ、次いで分割及び圧延するか、又は圧延及び成形することで麺皮を製造することができる。あるいは、麺皮生地の調製、及び生地からの麺皮の製造には、市販の麺皮製造機を用いることができる。製造された麺皮は、麺皮食品の皮として使用され得る。麺皮で具材を包み込む作業(包餡)にも通常の手段を用いることができ、例えば包餡は手作業で行っても、又は市販の包餡機を使用して行ってもよい。
【0020】
麺皮食品の加熱調理の手段としては、焼き、蒸し、茹でなどが挙げられる。該茹でに用いる水としては、水、食塩水、酸性水などが使用できる。好ましくは、該加熱調理により麺皮食品を喫食可能にα化する。したがって、本発明の方法で製造される調理済み麺皮食品の具体的な例としては、焼き餃子、茹で餃子、蒸し餃子、蒸し焼売、蒸し小籠包、焼き焼売、焼き小籠包、茹でワンタン、などが挙げられる。該加熱調理した麺皮食品は、必要に応じて湯切り、冷却等された後、冷凍処理される。該冷凍処理は、急速冷凍、緩慢冷凍のいずれでもよいが、急速冷凍が好ましい。冷凍の際には、麺皮食品を個別に凍結させてもよく、又は1~数人分ごとに小分けして凍結させてもよい。例えば、該調理済み麺皮食品を個別に凍結させ、次いで1~数人分取り分けて包装してもよく、又は、該調理済み麺皮食品を1~数人分取り分けて包装した後、凍結させてもよい。凍結した調理済み麺皮食品は、通常の冷凍保存条件下で保存すればよい。
【0021】
以上の手順により、本発明の冷凍調理済み麺皮食品を製造することができる。本発明の方法に従って製造された冷凍調理済み麺皮食品は、緩慢解凍された後に喫食される。本発明の冷凍調理済み麺皮食品を緩慢解凍する場合、冷凍状態の麺皮食品を、常温解凍、流水解凍、又は冷蔵下で解凍すればよい。好ましくは、本発明の冷凍調理済み麺皮食品は、冷蔵下(好ましくは0~10℃)で解凍される。
【0022】
本発明の冷凍調理済み麺皮食品は、冷凍状態で流通又は販売されてもよいが、緩慢解凍されて流通又は販売されてもよい。好ましくは、本発明の冷凍調理済み麺皮食品は、緩慢解凍された後に販売され、喫食される。例えば、本発明の冷凍調理済み麺皮食品は、流通から販売までの間に冷蔵下で緩慢解凍され、冷蔵又はチルド食品として販売され得る。解凍された麺皮食品は、必要に応じて喫食の前に再加熱されてもよい。本発明の冷凍調理済み麺皮食品は、緩慢解凍しても食感及び外観の劣化が少なく、さらに緩慢解凍後に再加熱したときにも良好な食感を維持することができるという利点を有する。
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0024】
〔試験1.餃子の製造〕
表1~4記載の配合で、原料粉に対して、有機酸及び/又はその塩を含有する練水を加えて混合し、次いで市販の横型ミキサーにて高速で10分間混捏して生地を調製した。得られた生地を圧延及び切断し、厚さ約0.8mm、直径約80mmの餃子皮を製造した。製造した餃子皮の上に、皮1枚につき約15gの餃子具材を載せ、常法に従って具材を皮で包み込んで(包餡)生餃子を製造した。該包餡の際の作業性を10名の訓練されたパネラーにより下記評価基準で評価し、選択した人数が最も多かった評点を採用した。
【0025】
製造した生餃子を蒸し器で3分間蒸した。該蒸し餃子を油をひいたフライパンで焼き調理した。得られた焼き餃子を6個ずつ容器に入れてショックフリーザー(-30℃)で急速冷凍した。得られた冷凍餃子を7日間-20℃の冷凍庫で保管した後、4℃の冷蔵庫で15時間かけて緩慢解凍した。緩慢解凍後の餃子の皮の食感(粘弾性、老化感)及び外観(透明感)を10名の訓練されたパネラーにより下記評価基準で評価した。食感については10名の評価の平均点を求めた。外観については選択した人数が最も多かった評点を採用した。さらに、緩慢解凍した餃子を電子レンジで85℃になるまで再加熱した。再加熱後の餃子を40℃に冷まし、皮の食感(粘弾性、老化感、ヒキ)を10名の訓練されたパネラーにより下記評価基準で評価し、平均点を求めた。結果を表1~4に示す。
【0026】
<評価基準>
(作業性)
○:包餡作業について支障が無い
△:生地が繋がりにくく、包餡作業にやや支障がある
×:生地が非常に繋がりにくく、包餡作業に支障がある
(皮の食感:粘弾性)
5点:対照よりも粘弾性に非常に優れる
4点:対照よりも粘弾性に優れる
3点:対照よりも粘弾性にやや優れる
2点:対照と同等の粘弾性である
1点:対照よりも粘弾性に劣る
(皮の食感:老化感)
5点:対照よりもぼそつき感が非常に少ない
4点:対照よりもぼそつき感が少ない
3点:対照よりもぼそつき感がやや少ない
2点:対照と同等のぼそつきである
1点:対照よりもぼそつきを感じる
(皮の食感:ヒキ)
5点:対照よりもヒキが非常に弱い
4点:対照よりもヒキが弱い
3点:対照よりもヒキがやや弱い
2点:対照と同等のヒキである
1点:対照よりもヒキを感じる
(皮の外観:透明感)
5点:対照よりも非常に透明感が高い
4点:対照よりも透明感が高い
3点:対照よりも透明感がやや高い
2点:対照と同等の透明感である
1点:対照よりも透明感が低い
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
〔試験2.焼売の製造〕
表5記載の配合で、原料粉に対して、有機酸及び/又はその塩を含有する練水を加えて10分間混合し、そぼろ状の生地を調製した。得られた生地を製麺ロールにてロール間隙3.2mmで圧延して麺帯に成形し、2時間熟成させた。熟成後の麺帯を再度製麺ロールにて圧延して約0.5mm厚の麺帯に成形した後、形状6×6cmの正方形に裁断して焼売皮を得た。製造した焼売皮に1枚あたり約18gの具材を詰め(包餡)、生焼売を製造した。該包餡の際の作業性を、試験1と同様の手順で評価した。
【0032】
製造した生焼売を0.5気圧で8分間蒸しあげた。該蒸し焼売を6個ずつ容器に入れてショックフリーザー(-30℃)で急速冷凍した。得られた冷凍焼売を7日間-20℃の冷凍庫で保管した後、4℃の冷蔵庫で15時間かけて緩慢解凍した。緩慢解凍後の焼売の皮の食感(粘弾性、老化感)及び外観(透明感)を試験1と同様の手順で評価した。さらに、緩慢解凍した焼売を別途電子レンジで85℃になるまで再加熱した。40℃に冷ました焼売の皮の食感(粘弾性、老化感、ヒキ)を試験1と同様の手順で評価した。結果を表5に示す。
【0033】
【表5】
【0034】
〔試験3.小籠包の製造〕
表6記載の配合で、原料粉に対して、有機酸及び/又はその塩を含有する練水を加えて10分間混合し、生地を調製した。得られた生地を熟成させ、製麺ロールにて圧延して約1.1mm厚の麺帯に成形した後、形状10×10cmの正方形に裁断して小籠包皮を得た。製造した皮に1枚あたり約16gの具材を詰め(包餡)、生小籠包を製造した。該包餡の際の作業性を、試験1と同様の手順で評価した。
【0035】
製造した生小籠包を0.5気圧で8分間蒸しあげた。該蒸し小籠包を4個ずつ容器に入れてショックフリーザー(-30℃)で急速冷凍した。得られた冷凍小籠包を7日間-20℃の冷凍庫で保管した後、4℃の冷蔵庫で15時間かけて緩慢解凍した。緩慢解凍後の小籠包の皮の食感(粘弾性、老化感)及び外観(透明感)を試験1と同様の手順で評価した。さらに、緩慢解凍した小籠包を別途電子レンジで85℃になるまで再加熱した。40℃に冷ました小籠包の皮の食感(粘弾性、老化感、ヒキ)を試験1と同様の手順で評価した。結果を表6に示す。
【0036】
【表6】