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特開2023-163625プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163625
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20231102BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074645
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】南 祐太
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 久
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB11
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC09
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD23
2G084DD24
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
2G084FF27
2G084FF29
2G084HH02
2G084HH06
2G084HH16
2G084HH19
2G084HH21
2G084HH30
2G084HH56
5F004BA04
5F004BB07
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB28
5F004EA37
(57)【要約】
【課題】基板に形成される凹部の加工形状を制御するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供する。
【解決手段】プラズマ処理チャンバと、基板支持部と、ガス供給部と、プラズマ生成部と、磁場生成部と、2以上の磁場設定条件により、前記磁場生成部を制御する制御部と、を備え、前記磁場生成部は、3以上の複数のコイルを有し、前記2以上の磁場設定条件のうち少なくとも1つは、前記基板支持部に支持された前記基板の中心部の電子密度に対して、前記基板の外周側の電子密度が高くなるように磁場を設定する条件であり、前記2以上の磁場設定条件のうち少なくとも他の1つは、前記基板支持部に支持された前記基板の中心部の電子密度に対して、前記基板の外周側の電子密度が低くなるように磁場を設定する条件であり、前記制御部は、プラズマ処理中に前記2以上の磁場設定条件を切り替えることが可能に構成される、プラズマ処理装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に設けられ、基板を支持する基板支持部と、
前記プラズマ処理チャンバ内に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記プラズマ処理チャンバ内に前記処理ガスのプラズマを生成するプラズマ生成部と、
前記プラズマの密度分布を制御する磁場生成部と、
2以上の磁場設定条件により、前記磁場生成部を制御する制御部と、を備え、
前記磁場生成部は、3以上の複数のコイルを有し、
前記2以上の磁場設定条件のうち少なくとも1つは、前記基板支持部に支持された前記基板の中心部の電子密度に対して、前記基板の外周側の電子密度が高くなるように磁場を設定する条件であり、
前記2以上の磁場設定条件のうち少なくとも他の1つは、前記基板支持部に支持された前記基板の中心部の電子密度に対して、前記基板の外周側の電子密度が低くなるように磁場を設定する条件であり、
前記制御部は、
プラズマ処理中に前記2以上の磁場設定条件を切り替え可能である、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
0.01Hz以上1Hz以下の周期で前記2以上の磁場設定条件を切り替え可能である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
0.05Hz以上0.5Hz以下の周期で前記2以上の磁場設定条件を切り替え可能である、
請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記3以上の複数のコイルのうち1つ以上に流れる電流値を変えることにより、前記磁場設定条件を切り替え可能である、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
プラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバ内に設けられ、基板を支持する基板支持部と、前記プラズマ処理チャンバ内に処理ガスを供給するガス供給部と、前記プラズマ処理チャンバ内に前記処理ガスのプラズマを生成するプラズマ生成部と、前記プラズマの密度分布を制御する磁場生成部と、を備えるプラズマ処理装置のプラズマ処理方法であって、
プラズマ処理中に、
前記基板支持部に支持された前記基板の中心部の電子密度に対して、前記基板の外周側の電子密度が高くなるように磁場を設定するステップと、
前記基板支持部に支持された前記基板の中心部の電子密度に対して、前記基板の外周側の電子密度が低くなるように磁場を設定するステップと、を繰り返す、
プラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラズマイオン密度分布を制御するために、シーリングの上方に内側コイルおよび外側コイルを有するプラズマリアクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005-527119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一の側面では、本開示は、基板に形成される凹部の加工形状を制御するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、プラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバ内に設けられ、基板を支持する基板支持部と、前記プラズマ処理チャンバ内に処理ガスを供給するガス供給部と、前記プラズマ処理チャンバ内に前記処理ガスのプラズマを生成するプラズマ生成部と、前記プラズマの密度分布を制御する磁場生成部と、2以上の磁場設定条件により、前記磁場生成部を制御する制御部と、を備え、前記磁場生成部は、3以上の複数のコイルを有し、前記2以上の磁場設定条件のうち少なくとも1つは、前記基板支持部に支持された前記基板の中心部の電子密度に対して、前記基板の外周側の電子密度が高くなるように磁場を設定する条件であり、前記2以上の磁場設定条件のうち少なくとも他の1つは、前記基板支持部に支持された前記基板の中心部の電子密度に対して、前記基板の外周側の電子密度が低くなるように磁場を設定する条件であり、前記制御部は、プラズマ処理中に前記2以上の磁場設定条件を切り替えることが可能に構成される、プラズマ処理装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、基板に形成される凹部の加工形状を制御するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図の一例。
図2】コイルの配置を示す平面図の一例。
図3】本実施形態に係るプラズマ処理方法を示すフローチャートの一例。
図4A】参考例におけるエッチングレートのグラフの一例。
図4B】参考例における凹部の角度を示すグラフの一例。
図4C】第2の磁場設定条件におけるエッチングレートのグラフの一例。
図4D】第2の磁場設定条件における凹部の角度を示すグラフの一例。
図4E】第1の磁場設定条件におけるエッチングレートのグラフの一例。
図4F】第1の磁場設定条件における凹部の角度を示すグラフの一例。
図4G】本実施形態におけるエッチングレートのグラフの一例。
図4H】本実施形態における凹部の角度を示すグラフの一例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0009】
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図の一例である。
【0010】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30、排気システム40及び磁場生成部50を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0011】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0012】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0013】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0014】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0015】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0016】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0017】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0018】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0019】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0020】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0021】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0022】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0023】
磁場生成部50は、上部電極と下部電極との間のプラズマ処理空間10sに磁場を生成することにより、プラズマ処理空間10sのプラズマ密度の分布を制御する。
【0024】
磁場生成部50は、複数のコイル51~55と、コイル51~55を保持するヨーク56と、各コイル51~55に電流を印加するコイル電源57と、を有する。図2は、コイル51~55の配置を示す平面図の一例である。
【0025】
コイル51~55は、上部電極として機能するシャワーヘッド13の上方に配置される。コイル51は、基板支持部11の中心軸と同軸に巻回されて形成される。コイル52は、コイル51よりも径方向外側で、基板支持部11の中心軸と同軸に巻回されて形成される。コイル53は、コイル52よりも径方向外側で、基板支持部11の中心軸と同軸に巻回されて形成される。コイル54は、コイル53よりも径方向外側で、基板支持部11の中心軸と同軸に巻回されて形成される。コイル55は、コイル54よりも径方向外側で、基板支持部11の中心軸と同軸に巻回されて形成される。ヨーク56は、磁性体で形成され、コイル51~55によって形成される磁束をプラズマ処理空間10sの側に形成する。
【0026】
コイル電源57は、複数のコイル51~55に対して独立して印加する電流を制御することが可能に構成されている。
【0027】
なお、図1及び図2に示す例において、プラズマ密度の分布を制御するコイルは5つ(51~55)あるものとして説明したがこれに限られるものではない。プラズマ密度の分布を制御するコイルは3つ以上有していてもよい。
【0028】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0029】
次に、本実施形態に係るプラズマ処理方法について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係るプラズマ処理方法を示すフローチャートの一例である。ここで、プラズマ処理装置1は、エッチング処理(S102~S106)と、エッチング処理によって生じた反応副生成物を除去する処理(S107)とを繰り返すことにより、基板W上のエッチング対象膜にトレンチ、ホール等の凹部を形成する。
【0030】
ステップS101において、制御部2は、基板Wを準備する。具体的には、制御部2は、搬送装置(図示せず)を制御して、エッチング対象膜の上に開口パターンを有するマスクが形成された基板Wをプラズマ処理空間10sに搬送し、基板Wを基板支持部11に支持させる。また、プラズマ処理空間10sは、排気システム40によって所定の圧力に調整される。
【0031】
ステップS102において、制御部2は、エッチング処理を開始する。具体的には、制御部2は、ガス供給部20を制御してプラズマ処理空間10sにエッチング処理の処理ガスを供給し、電源30を制御して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極にソースRF信号を供給し、プラズマ処理空間10sにプラズマを生成する。また、制御部2は、電源30を制御して少なくとも1つの下部電極にバイアスRF信号を供給することにより、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込み、基板Wに凹部の加工形状を形成する。
【0032】
ステップS103において、制御部2は、第1の磁場設定条件(inner tilting条件)で磁場を設定する。具体的には、制御部2は、コイル電源57を制御して、コイル51~55に印加される電流を第1の磁場設定条件に制御する。ここで、第1の磁場設定条件は、プラズマ処理チャンバ10の基板支持部11に支持される基板Wの中心部の電子密度に対して、基板Wの外周部の電子密度が高くなるように磁場を設定する条件である。これにより、第1の磁場設定条件は、基板Wに引き込まれるイオン成分の入射角度が基板Wの径方向内周側に向かって傾く(inner tilting)ように磁場を生成する。所定時間経過すると、制御部2の処理はステップS104に進む。
【0033】
ステップS104において、制御部2は、第2の磁場設定条件(outer tilting条件)で磁場を設定する。具体的には、制御部2は、コイル電源57を制御して、コイル51~55に印加される電流を第2の磁場設定条件に制御する。ここで、第2の磁場設定条件は、プラズマ処理チャンバ10の基板支持部11に支持される基板Wの中心部の電子密度に対して、基板Wの外周部の電子密度が低くなるように磁場を設定する条件である。これにより、第2の磁場設定条件は、基板Wに引き込まれるイオン成分の入射角度が基板Wの径方向外周側に向かって傾く(outer tilting)ように磁場を生成する。所定時間経過すると、制御部2の処理はステップS105に進む。
【0034】
ステップS105において、制御部2は、ステップS103及びステップS104の処理を所定回数繰り返したか否かを判定する。所定回数繰り返していない場合(S105・NO)、制御部2の処理はステップS103に戻る。所定回数繰り返した場合(S105・YES)、制御部2の処理はステップS106に進む。
【0035】
なお、第1の磁場設定条件による磁場設定と第2の磁場設定条件による磁場設定との繰り返しは、例えば、第1の磁場設定条件による磁場設定を5秒行い、第2の磁場設定条件による磁場設定を5秒行い、10秒を1周期として繰り返してもよい。換言すれば、第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件との繰り返し周波数は、0.1Hzとしてもよい。なお、第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件との繰り返し周波数は、0.01Hz以上1Hz以下が好ましい。第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件との繰り返し周波数を0.01Hz以上とすることにより、凹部の加工形状の精度を向上させることができる。一方、第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件との繰り返し周波数を1Hz以下とすることにより、磁場制御に、実際の磁場強度の変更が追随しやすくなる。更に、第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件との繰り返し周波数は、0.05Hz以上0.5Hz以下がより好ましい。
【0036】
また、第1の磁場設定条件の時間第2の磁場設定条件の時間との比は、それぞれ5秒ずつ、換言すれば50:50であるものとして説明したがこれに限られるものではない。第1の磁場設定条件の時間第2の磁場設定条件の時間との比は、60:40から1:99の範囲内であってもよい。
【0037】
また、第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件とは、複数のコイル51~55のうち、少なくとも1つ以上のコイルの電流値を変化させる。より好ましくは、第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件とは、複数のコイル51~55のうち、少なくとも3つ以上のコイルの電流値を変化させる。また、第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件とは、複数のコイル51~55のうち、少なくとも1つ以上のコイルの電流値を維持する(変化させない)ようにしてもよい。
【0038】
ステップS106において、制御部2は、エッチング処理を停止する。具体的には、制御部2は、ガス供給部20を制御してプラズマ処理空間10sに処理ガスの供給を停止し、電源30を制御してソースRF信号及びバイアスRF信号の供給を停止し、プラズマ処理空間10sにおけるプラズマの生成を停止する。
【0039】
ステップS107において、エッチング処理中に生成された反応副生成物を除去する処理を実施する。
【0040】
ステップS108において、制御部2は、エッチング処理(S102~S106)及び反応副生成物を除去する処理(S107)を所定回数繰り返したか否かを判定する。所定回数繰り返していない場合(S108・NO)、制御部2の処理はステップS102に戻る。所定回数繰り返した場合(S108・YES)、制御部2の処理を終了する。
【0041】
図4Aから図4Hは、エッチングレート及びイオンの入射角度を説明するグラフの一例である。なお、図4A図4C図4E及び図4Gにおいて、横軸は基板Wの中心からの距離[mm]を示し、縦軸はエッチングレート[mm/min]を示す。図4B図4D図4F及び図4Hにおいて、横軸は基板Wの中心からの距離[mm]を示し、縦軸はエッチングレートの逆数の2点間変化量(slope)を示す。ここで、エッチングレートの逆数は、シースの厚さに対応する。そして、エッチングレートの逆数の2点間変化量(slope)は、シースの傾きに対応する。即ち、エッチングレートの逆数の2点間変化量(slope)は、基板Wに対するイオンの入射角度(tilting)に対応する。このため、エッチングレートの逆数の2点間変化量(slope)が0のとき、イオンの入射角度は0°に対応する。また、エッチングレートの逆数の2点間変化量(slope)が+の値の時、イオンの入射角度は、基板Wの内周側に傾く(inner tilting)。また、エッチングレートの逆数の2点間変化量(slope)が-の値の時、イオンの入射角度は、基板Wの外周側に傾く(outer tilting)。
【0042】
また、図4Aから図4Hの例において、600kWのソースRF信号を印加し、18kW、パルス周波数40kHz、Duty比80%のパルス化されたバイアスRF信号を印加した。
【0043】
図4Aは、参考例におけるエッチングレートのグラフの一例である。図4Bは、参考例における凹部の角度を示すグラフの一例である。参考例において、コイル51に0[G]、コイル52に3[G]、コイル53に0[G]、コイル54に9[G]、コイル55に0[G]の磁束密度を生成するようにコイル電源57からコイル51~55に電流を供給した。参考例のプラズマ処理方法では、単一の磁場設定条件で基板処理を施す。
【0044】
参考例においては、図4Aに示すエッチングレートの基板Wの径方向における変動を抑制するようにコイル51~55の生成する磁場を決定した。この参考例において、図4Bに示すように、基板Wの外周部(130~140mm付近)において、エッチングレートの逆数の2点間変化量(slope)が-の側に大きくなっている。即ち、基板Wの表面に対するイオンの入射角度が外周側に大きく傾いていることを示す。換言すれば、基板Wに形成される凹部の加工形状が外周側に傾くことを示す。
【0045】
図4Cは、第2の磁場設定条件におけるエッチングレートのグラフの一例である。図4Dは、第2の磁場設定条件における凹部の角度を示すグラフの一例である。第1の磁場設定条件において、コイル51に0[G]、コイル52に3[G]、コイル53に3[G]、コイル54に3[G]、コイル55に0[G]の磁束密度を生成するようにコイル電源57からコイル51~55に電流を供給した。
【0046】
ここでは、第2の磁場設定条件で磁場を生成した。図4Cに示すように、エッチングレートは基板Wの外周側で低下している。また、図4Dに示すように、基板Wの全体において、エッチングレートの逆数の2点間変化量(slope)が-の側にある傾向を示す。即ち、基板Wの全体において、基板Wの表面に対するイオンの入射角度が外周側に傾いていることを示す。
【0047】
図4Eは、第1の磁場設定条件におけるエッチングレートのグラフの一例である。図4Fは、第1の磁場設定条件における凹部の角度を示すグラフの一例である。第1の磁場設定条件において、コイル51に0[G]、コイル52に0[G]、コイル53に0[G]、コイル54に15[G]、コイル55に0[G]の磁束密度を生成するようにコイル電源57からコイル51~55に電流を供給した。
【0048】
ここでは、第1の磁場設定条件で磁場を生成した。図4Eに示すように、エッチングレートは基板Wの外周側で増加している。また、図4Fに示すように、基板Wの全体において、エッチングレートの逆数の2点間変化量(slope)が+の側にある傾向を示す。即ち、基板Wの全体において、基板Wの表面に対するイオンの入射角度が内周側に傾いていることを示す。
【0049】
図4Gは、本実施形態におけるエッチングレートのグラフの一例である。図4Hは、本実施形態における凹部の角度を示すグラフの一例である。本実施形態において、第1の磁場設定条件で5秒間磁場を生成し、第2の磁場設定条件で5秒間磁場を生成することを繰り返した。
【0050】
第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件とを切り替えて繰り返すことにより、図4Gに示すように、エッチングレートの基板Wの径方向における変動を抑制することができる。また、図4Hに示すように、エッチングレートの逆数の2点間変化量(slope)を小さくすることができる。
【0051】
ここで、基板Wへのイオンの入射角度は、基板Wの表面のシースの薄い側から厚い側に向かって曲げられる。図3のステップS103からステップS105に示すように、基板支持部11に支持された基板Wの中心部よりも外周部の方がシースが薄くなる磁場設定条件(inner tilting条件)と、基板Wの中心部よりも外周部の方がシースが厚くなる磁場設定条件(outer tilting条件)と、を切り替えて繰り返すことにより、イオンの入射角度を基板Wの表面に対して垂直とみなすことができる。これにより、基板Wに形成される凹部の加工形状を基板Wの表面に対して垂直となるように制御することができる。
【0052】
なお、エッチング処理において、第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件とを切り替えて繰り返すものとして説明したが、これに限られるものではない。エッチング処理において、第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件以外の複数の磁場設定条件を切り替えて繰り返してもよいし、第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件のいずれか一方のみを含む複数の磁場設定条件を切り替えて繰り返してもよい。また、反応副生成物を除去する処理(S107)において、複数の磁場設定条件を切り替えて繰り返してもよい。なお、基板Wに形成される凹部の加工形状は、主にエッチング処理において決定されるため、エッチング処理において第1の磁場設定条件と第2の磁場設定条件とを切り替えて繰り返すことが好ましい。
【0053】
また、参考例のプラズマ処理方法に示すように、単一の磁場設定条件で基板処理を施す場合、最適な磁場設定条件を導出することは容易ではない。これに対し、本実施形態のプラズマ処理方法では、少なくとも第1の磁場設定条件(inner tilting条件)と第2の磁場設定条件(outer tilting条件)とを有しておればよく、その組み合わせで基板Wに形成される凹部の加工形状を基板Wの表面に対して垂直となるように制御することができる。
【0054】
以上、プラズマ処理システムの実施形態等について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0055】
W 基板
1 プラズマ処理装置
2 制御部
10 プラズマ処理チャンバ
10s プラズマ処理空間
11 基板支持部
20 ガス供給部
30 電源
40 排気システム
50 磁場生成部
51~55 コイル
56 ヨーク
57 コイル電源
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H