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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163918
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20231102BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B7/02 B
G02B7/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075143
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中本 篤
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA05
2H044AA15
2H044AB10
2H044AB12
2H044AH10
(57)【要約】
【課題】複数のレンズの形状または位置の変化を抑制可能なレンズユニットを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係るレンズユニットは、光軸に沿って並ぶ複数のレンズと、前記複数のレンズを収容する鏡胴と、前記鏡胴に収容された前記複数のレンズの少なくとも1つを支持する弾性部材と、前記鏡胴に収容された前記複数のレンズを押圧する押圧部材と、を備え、前記複数のレンズは、前記光軸に対して直交する面が押圧される平受けレンズを含む第1レンズ群と、前記光軸に対して傾斜する面が押圧される傾斜受けレンズを含む第2レンズ群と、を含み、前記弾性部材は、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って並ぶ複数のレンズと、
前記複数のレンズを収容する鏡胴と、
前記鏡胴に収容された前記複数のレンズの少なくとも1つを支持する弾性部材と、
前記鏡胴に収容された前記複数のレンズを押圧する押圧部材と、を備え、
前記複数のレンズは、前記光軸に対して直交する面が押圧される平受けレンズを含む第1レンズ群と、前記光軸に対して傾斜する面が押圧される傾斜受けレンズを含む第2レンズ群と、を含み、
前記弾性部材は、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に設けられている、レンズユニット。
【請求項2】
光軸に沿う方向に並ぶ複数のレンズと、
前記複数のレンズを内側に収容する鏡胴と、
前記鏡胴に収容された前記複数のレンズの少なくとも1つを保持する弾性部材と、
前記鏡胴に収容された前記複数のレンズを押圧する押圧部材と、を備え、
次の式(1)により表される、レンズユニット。
【数1】
(但し、Kは前記弾性部材の弾性係数を表す。Fは前記弾性部材がその弾性により前記複数のレンズを押す力である弾性力を表す。tは前記レンズユニットが使用可能な環境温度の範囲を表す。nは前記弾性部材の弾性力を主として押圧される部材の数を表す。αiは前記鏡胴に収容され、前記弾性部材の弾性力を主として押圧される複数の収容部材それぞれの線膨張係数を表す。Liは前記複数の収容部材それぞれの前記光軸に沿う方向における長さを表す。iは自然数を表す。α0は前記鏡胴の線膨張係数を表す。L0は前記鏡胴の前記光軸に沿う方向における長さを表す。)
【請求項3】
前記複数のレンズは、前記光軸に直交する面が押圧される平受けレンズと、前記光軸に対して傾斜する面が押圧される傾斜受けレンズと、を含み、
前記弾性部材は、前記平受けレンズを含む第1レンズ群と、前記傾斜受けレンズを含む第2レンズ群と、の間に設けられている、請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記光軸に沿う方向における前記弾性部材の長さは、前記押圧部材により押圧された状態において一定である、請求項1または請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記光軸に対して傾斜する面は球面である、請求項1または請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記光軸に対して略直交する面で前記弾性部材に接触する介在部材をさらに有し、
前記弾性部材は、前記複数のレンズのうち前記弾性部材により支持される被支持レンズを、前記介在部材を介して支持し、
前記被支持レンズにおける前記弾性部材が位置する側の面は、前記光軸に対して傾斜している、請求項1または請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記複数のレンズは、少なくとも1つの樹脂レンズを含む、請求項1または請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記弾性部材は、金属材料を含んで構成された板状のバネ部材を含む、請求項1または請求項2に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のレンズと、この複数のレンズを収容する鏡胴と、鏡胴に収容された複数のレンズを押圧する押圧部材と、を備えるレンズユニットが知られている。このようなレンズユニットは、自動車またはドローン等の移動体に搭載されるカメラや、建物等に設けられる監視カメラ等において使用される。
【0003】
上記レンズユニットとして、物体側に配置される第1レンズと、該第1レンズと像側で隣接する第2レンズと、を含む複数のレンズを鏡胴に収容し、第1レンズと第2レンズの間に第1レンズおよび第2レンズと接する弾性部材を配置する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、複数のレンズの形状または位置が変化することにより、レンズユニットの性能が変化する場合がある。
【0005】
本発明は、複数のレンズの形状または位置の変化を抑制可能なレンズユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るレンズユニットは、光軸に沿って並ぶ複数のレンズと、前記複数のレンズを収容する鏡胴と、前記鏡胴に収容された前記複数のレンズの少なくとも1つを支持する弾性部材と、前記鏡胴に収容された前記複数のレンズを押圧する押圧部材と、を備え、前記複数のレンズは、前記光軸に対して直交する面が押圧される平受けレンズを含む第1レンズ群と、前記光軸に対して傾斜する面が押圧される傾斜受けレンズを含む第2レンズ群と、を含み、前記弾性部材は、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のレンズの形状または位置の変化を抑制可能なレンズユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るレンズユニットの構成を例示する縦断面図である。
図2】傾斜受けレンズの位置ずれを例示する図であり、図2(a)は位置ずれがない状態を示す図、図2(b)は位置ずれした状態を示す図である。
図3】第1実施形態の変形例に係る第6レンズの支持方法を説明する図であり、図3(a)は第6レンズが変形していない状態を示す図、図3(b)は第6レンズの変形を示す図である。
図4図1のレンズユニットの後玉レンズ群における温度サイクルごとの各レンズの移動量評価結果を例示する図である。
図5図1のレンズユニットの第4レンズおよび第5レンズの拡大図である。
図6】第2実施形態に係るレンズユニットの構成を例示する縦断面図である。
図7】第3実施形態の第1例に係るレンズユニットの構成の縦断面図である。
図8】第3実施形態の第2例に係るレンズユニットの構成の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係るレンズユニットについて図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するためのレンズユニットを例示するものであって、以下に限定するものではない。実施形態に記載されている構成部の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。
【0010】
[第1実施形態]
<レンズユニット100の構成例>
図1は、レンズユニット100の構成を例示する縦断面図である。レンズユニット100は、前玉レンズ群10と、後玉レンズ群20と、鏡胴1と、前玉押圧部材2と、を有する。またレンズユニット100は、前玉遮光部材3と、前玉弾性部材4と、第1前玉スペーサ部材5と、第2前玉スペーサ部材6と、弾性部材7と、介在部材8と、押圧部材9と、を有する。
【0011】
前玉レンズ群10は、第1レンズ11と、第2レンズ12と、第3レンズ13と、を有する。後玉レンズ群20は、第4レンズ21と、第5レンズ22と、第6レンズ23と、を有する。
【0012】
第1レンズ11、前玉遮光部材3、前玉弾性部材4、第1前玉スペーサ部材5、第2レンズ12、第2前玉スペーサ部材6および第3レンズ13は、Z軸正方向からZ軸負方向にこの順に並んで鏡胴1に収容されている。また第4レンズ21、第5レンズ22、弾性部材7、介在部材8および第6レンズ23は、Z軸正方向からZ軸負方向にこの順に並んで鏡胴1に収容されている。
【0013】
なお、Z軸正方向は、Z軸を示す矢印が向く方向を示し、レンズユニット100の被写体が位置する方向に対応する。Z軸負方向は、Z軸負方向とは反対方向を示し、上記被写体の像が位置する方向に対応する。
【0014】
前玉押圧部材2は、内側部にネジ部が設けられている。鏡胴1は、Z軸正方向側における外側部の一部にネジ部が設けられている。前玉押圧部材2のネジ部と鏡胴1のネジ部とが結合することにより、第1レンズ11、前玉遮光部材3、前玉弾性部材4、第1前玉スペーサ部材5、第2レンズ12、第2前玉スペーサ部材6および第3レンズ13は、それぞれ押圧される。レンズユニット100は、前玉押圧部材2による押圧によって上記各部材を固定している。
【0015】
押圧部材9は、外側部にネジ部が設けられている。鏡胴1は、Z軸負方向側における内側部の一部にネジ部が設けられている。押圧部材9のネジ部と鏡胴1のネジ部とが結合することにより、第4レンズ21、第5レンズ22、弾性部材7、介在部材8および第6レンズ23は、それぞれ押圧される。レンズユニット100は、押圧部材9による押圧によって上記各部材を固定している。
【0016】
但し、鏡胴1への各部材の固定は、前玉押圧部材2または押圧部材9におけるネジ部の結合を利用するものに限らず、熱カシメまたは接着等によるものであってもよい。
【0017】
後玉レンズ群20に含まれる第4レンズ21、第5レンズ22および第6レンズ23は、光軸Aに沿って並ぶ複数のレンズに対応する。弾性部材7は、鏡胴1に収容された第6レンズ23を支持する。但し、レンズユニット100は、複数の弾性部材を有し、鏡胴1に収容された複数のレンズを、複数の弾性部材により支持してもよい。
【0018】
第4レンズ21では、第6レンズ23、介在部材8、弾性部材7および第5レンズ22を介して、押圧部材9により平面部21aが押圧される。第5レンズ22では、第6レンズ23、介在部材8、弾性部材7および第5レンズ22を介して、押圧部材9により平面部22aが押圧される。平面部21aおよび平面部22aは、それぞれ光軸Aに対して略直交する面である。このため、第4レンズ21および第5レンズ22は、それぞれ光軸Aに対して略直交する面が押圧される平受けレンズに対応する。
【0019】
第6レンズ23は、第1球面231と、第2球面232と、を含む両凸レンズである。第6レンズ23では、押圧部材9により第1球面231が押圧される。第1球面231は光軸Aに傾斜する面であるため、光軸Aに対して傾斜する面が押圧される傾斜受けレンズに対応する。
【0020】
介在部材8は、第6レンズ23を支持した状態において、光軸Aに対して略直交する面で弾性部材7に接触して配置されている。第6レンズ23は、複数のレンズのうち弾性部材7により支持される被支持レンズに対応する。介在部材8は、鏡胴1に嵌合し、光軸Aに沿う方向における弾性部材7の長さを規制する規制部材として機能する。
【0021】
介在部材8は、光軸Aに対して略直交する面が押圧される。弾性部材7は、介在部材8を介して第6レンズ23を支持する。弾性部材7が位置する側における第6レンズ23の第2球面232は、光軸Aに対して傾斜している。
【0022】
本実施形態では、光軸Aに沿う方向における弾性部材7の長さは、押圧部材9により押圧された状態において略一定である。
【0023】
第4レンズ21、第5レンズ22および第6レンズ23は、平受けレンズと、傾斜受けレンズと、を含んでいる。これらのうち、第4レンズ21および第5レンズ22は、平受けレンズを含む第1レンズ群30を構成している。第6レンズは、傾斜受けレンズを含む第2レンズ群40を構成している。なお、第1レンズ群30は、第4レンズ21および第5レンズ22以外の平受けレンズを含んでもよい。第2レンズ群40は、第6レンズ23以外の傾斜受けレンズを含んでもよい。
【0024】
弾性部材7は、第1レンズ群30と第2レンズ群40との間に設けられている。
【0025】
前玉レンズ群10および後玉レンズ群20に含まれる各レンズは、例えばガラス材料または樹脂材料を含んで構成される。前玉押圧部材2、前玉遮光部材3、第1前玉スペーサ部材5、第2前玉スペーサ部材6、介在部材8および押圧部材9は、金属材料または樹脂材料を含んで構成される。前玉弾性部材4および弾性部材7は、金属材料または樹脂材料を含んで構成される板ばねまたはコイルばねや、ゴム、接着剤等を含んで構成される。
【0026】
<レンズユニット100の作用効果>
前玉レンズ群10および後玉レンズ群20に含まれる各レンズは、鏡胴1または鏡胴1に支持された部材に対して位置決めされた状態で固定される。レンズの位置決め方法および固定方法には、圧入や隙間嵌め、接着等を用途に応じて適宜選択可能である。
【0027】
圧入では、圧入を行う際に、レンズに負荷がかかることにより、レンズが破損したり、レンズが異物に擦れて性能が劣化したりする場合がある。また車載等の用途では、レンズユニット100の使用環境の温度変化幅が広いため、膨張または収縮による負荷が加わり、レンズユニット100の構成部が破損する場合がある。
【0028】
一方、接着では、接着剤からのガス発生によりレンズが曇ったり、接着剤、レンズまたは鏡胴の膨張または収縮によって接着剤が剥がれ、レンズユニット100の構成部が破損したりする場合がある。
【0029】
以上のことから、使用環境の温度変化幅が広い車載等の用途にレンズユニット100を用いる場合には、レンズの位置決め方法および固定方法として、隙間嵌めを用いることが好ましい。但し、隙間嵌めでは、半径方向において、レンズと、鏡胴1またはレンズを支持する弾性部材7等と、の間に隙間があるため、膨張または収縮時にレンズがその半径方向に位置ずれして偏心する場合がある。
【0030】
また、第6レンズ23等の球面レンズは、非球面レンズ等と比較して形状が簡単なため廉価である反面、第1球面231等の光軸Aに対して傾斜する面が押圧されると、球面レンズが変形した場合等に押圧状態が変化して位置ずれする場合がある。図2は、傾斜受けレンズである第6レンズ23の位置ずれを例示する図である。図2(a)は位置ずれがない状態を示す図、図2(b)は位置ずれした状態を示す図である。
【0031】
図2(a)の状態では、第6レンズ23の光軸23cは、レンズユニット100の光軸Aと略一致している。押圧部材9から第6レンズ23への押圧力F0は、第6レンズ23の光軸23cを中心に略対称となる。押圧力F0に基づき、第6レンズ23を介して第5レンズ22および第4レンズ21に加えられる押圧力は、光軸Aを中心に略対称となる。
【0032】
一方、図2(b)に示すように、第6レンズ23が傾いた状態で鏡胴に配置される場合がある。図2(b)では、第6レンズ23の光軸23cは光軸Aに対して傾いている。第6レンズ23が傾いていると、押圧部材9による押圧力が光軸Aを中心に非対称となる。例えば第6レンズ23の一部には、押圧力F1が加えられ、第6レンズ23の他の一部には、押圧力F1よりも大きい押圧力F2が加えられる。この結果、押圧力F1および押圧力F2に基づき、第6レンズ23を介して第5レンズ22および第4レンズ21に加えられる押圧力は、光軸Aを中心に非対称となる。
【0033】
光軸Aに対して非対称な押圧力が加えられている状態において、レンズユニット周辺の環境温度変化等に応じてレンズユニットが膨張または収縮すると、レンズユニットに含まれる各レンズがその半径方向に個別に移動して偏心する場合がある。レンズの偏心により、コマ収差や歪曲等の収差が発生し、レンズユニットの性能が変化する。
【0034】
例えば、光軸Aに対して非対称な押圧力がかからないように、レンズの光学的な有効領域以外の領域に光軸Aに対して略直交する面を形成し、この面を押圧することも考えられる。このようにすると、光軸Aに対して非対称な押圧力がかかることによる位置ずれを防止できるが、光軸Aに対して略直交する面をレンズに形成するためにコストが増大する。また、光軸Aに対して略直交する面を形成するためにレンズに加工余裕領域(加工代)を設けると、レンズの厚みが厚くなり、レンズユニット100の設計において制約が生じる場合がある。さらに、レンズの光学有効面の外側に光軸Aに対して略直交する面を形成するため、レンズの外径自体を大きくする必要があり、レイアウト上の制約となる場合がある。
【0035】
本実施形態では、図1を用いて説明したように、弾性部材7は、第1レンズ群30と第2レンズ群40との間に設けられている。このため、第6レンズ23を含む第2レンズ群40に加えられる押圧力が光軸Aを中心に非対称であっても、この押圧力は、弾性部材7によりほぼ吸収され、第1レンズ群30にはほぼ伝達されない。これにより、光軸Aに対して非対称な押圧力が加えられることによる第1レンズ群30の偏心を抑制できる。
【0036】
第6レンズ23では、第1球面231が押圧されるため、その半径方向への移動は押圧力によって規制される。これにより、レンズユニット周辺の環境温度の変化等があってもほぼ動かない。
【0037】
以上の結果、本実施形態では、複数のレンズの形状または位置の変化を抑制可能なレンズユニット100を提供することができる。本実施形態では、複数のレンズの形状または位置の変化を抑制することにより、レンズユニット100の性能変化を抑制することができる。
【0038】
図3は、第1実施形態の第1変形例に係る第6レンズ23aの支持方法を説明する図である。図3(a)は第6レンズ23aが変形していない状態を示す図、図3(b)は第6レンズ23aの変形を示す図である。
【0039】
図3において、第6レンズ23aは、鏡胴1内に収容され、支持部材7aにより支持されている。支持部材7aは、領域71aにネジ部が設けられており、このネジ部を介して鏡胴1に固定されている。なお、支持部材7aの固定は、ネジ部の結合によるものに限らず、熱カシメや接着等によるものであってもよい。
【0040】
第6レンズ23aは、例えば、ポリカーボネート(Polycarbonate:PC)等の樹脂材料や、ガラス等を含んで構成される。鏡胴1は、アルミニウム等の金属材料や、ポリフェニレンスルファイド(Poly Phenylene Sulfide:PPS)等の樹脂材料を含んで構成される。すなわち第6レンズ23aと鏡胴1とは、材質が異なっている。材質の違いに応じて線膨張係数が異なるため、第6レンズ23aと鏡胴1は、周辺の環境温度の変化時に膨張量および縮小量が異なる。
【0041】
図3(b)において、第6レンズ23a1は、鏡胴1に対して相対的に収縮した状態を示している。一方、第6レンズ23a2は、鏡胴1に対して相対的に膨張した状態を示している。
【0042】
鏡胴1の線膨張係数に対して第6レンズ23aの線膨張係数が小さい場合には、レンズユニット周辺の環境温度の上昇に伴う第6レンズ23aの膨張量は、鏡胴1の膨張量に対して相対的に小さくなる。このため、第6レンズ23aは、第6レンズ23a1のように鏡胴1に対して相対的に小さくなり、支持部材7aによる支持力が低下する。
【0043】
一方、周辺の環境温度の低下に伴う第6レンズ23aの収縮量は、鏡胴1の収縮量に対して相対的に小さくなる。このため、第6レンズ23aは、第6レンズ23a2のように鏡胴1に対して相対的に大きくなり、支持部材7aによる支持力が上昇する。一方で、鏡胴1の線膨張係数に対して第6レンズ23aの線膨張係数が大きい場合には、これらとは逆の作用が得られる。つまり、支持部材7aによる支持力は、レンズユニット周辺の環境温度によって変化する。
【0044】
第6レンズ23aの材質が樹脂である場合には、樹脂のヤング率は低いため、支持力によって第6レンズ23aは変形しやすくなる。このため、レンズユニット周辺の環境温度の変化時に支持力が変化すると、第6レンズ23aの変形量も変化し、第6レンズ23aの性能変化が大きくなる。また樹脂では高温環境下においてクリープ現象が発生するため、時間とともに支持力が低下する。これにより第6レンズ23aの変形量が変わり、第6レンズ23aの性能が変化する。
【0045】
第6レンズ23aの材質がガラスである場合には、樹脂に比べてガラスは硬いため、ガラスの変形量は樹脂の変形量よりも小さく、第6レンズ23aの性能に対する影響は小さい。しかしながら、ガラスは割れやすいため、第6レンズ23aの支持力が上昇した際に、第6レンズ23aが割れて破損する場合がある。
【0046】
例えば、支持部材7aとして弾性を有する部材を用いると、レンズユニット100周辺の環境温度の変化により第6レンズ23aの鏡胴1に対する相対的な大きさが変化しても、支持部材7aがその弾性により大きさの変化を吸収できる。この結果、レンズユニット100では、温度変化時の部品の膨張および収縮による支持力変化に伴うレンズ変形およびレンズ破損を抑制できる。
【0047】
また、上述したように、第6レンズ23aを弾性部材7により支持すると、レンズユニット周辺の環境温度が変化した際に、押圧部材9から加えられる押圧力の変化を抑制できることが分かった。但し、弾性部材7を使用したとしても、周辺の環境温度が変化した際に、弾性部材7の弾性係数に応じて押圧部材9から加えられる押圧力は変化する。半径方向への移動は、押圧力に伴って発生する摩擦力により規制される。つまり、レンズユニット周辺の環境温度が変化した際には、押圧力の変化に伴い、摩擦力も変化する。このような摩擦力変化と、部材間の線膨張係数の差に伴う膨張量および収縮量の違いと、に応じてレンズが半径方向に移動することにより、レンズユニットの性能が変化する場合がある。
【0048】
発明者の鋭意検討の結果、以下の式(1)を満たす弾性部材7を用いることにより、周辺の環境温度変化の繰り返しによるレンズの偏心を抑制できることが分かった。
【数1】
【0049】
式(1)において、K(N/mm)は弾性部材7の弾性係数を表す。F(N)は弾性部材7がその弾性により第4レンズ21、第5レンズ22および第6レンズ23それぞれを押す力である弾性力を表す。t(℃)はレンズユニット100が使用可能な環境温度範囲を表す。nは弾性部材7の弾性力を主として押圧される部材の数を表す。αi(1/℃)は、第4レンズ21、第5レンズ22それぞれの線膨張係数を表す。第4レンズ21、第5レンズ22は、鏡胴1に収容され、弾性部材7の弾性力を主として押圧される部材である複数の収容部材に対応する。以下では、第4レンズ21および第5レンズ22を、単に複数の収容部材という。Li(mm)は複数の収容部材それぞれの光軸Aに沿う方向における長さを表す。iは自然数を表す。α0(1/℃)は鏡胴1の線膨張係数を表す。L0(mm)は鏡胴1の光軸Aに沿う方向における長さを表し、L0=ΣLiとなる。
【0050】
図4は、図1に示したレンズユニット100の後玉レンズ群20において、温度サイクルごとにおける各レンズの移動量をシミュレーションにより評価した結果の一例を示す図である。図4の横軸は、式(1)における左辺の値を示している。図4の縦軸は、温度サイクルの1回当たりにおける半径方向へのレンズ移動量を示している。
【0051】
シミュレーションでは、温度サイクルを30回実行し、最初と最後のレンズの移動量から傾きを算出した。温度サイクルは、常温→使用想定温度範囲の下限(例えば-40℃)→使用想定温度範囲の上限(例えば105℃)→常温のサイクルを1サイクルとした。
【0052】
鏡胴1に第4レンズ21と第5レンズ22を収容し、第5レンズ22の像側(-Z方向)の押圧力がかかる面に弾性部材7からの弾性力Fを加えた。周辺の環境温度が変化した際には、光軸Aに沿う方向における鏡胴1の長さの変化量と、光軸Aに沿う方向における第4レンズ21および第5レンズ22の各長さの変化量の差分に、弾性定数Kを乗じた押圧力の変化量を考慮して、押圧力を変化させた。
【0053】
図4に示す結果から、式(1)の左辺の値が約0.1を超えると、急激に半径方向におけるレンズの移動量が大きくなることが分かった。
【0054】
図5は、図1のレンズユニット100における第4レンズ21および第5レンズ22の拡大図である。例えば、第4レンズ21および第5レンズ22の材質を樹脂とし、鏡胴1の材質を金属、例えばアルミニウムとする。以下に示す変数および定数の値を上記式(1)に代入すると、式(1)の左辺は0.031となり、0.1未満となる。従って、式(1)を満足する。
弾性部材7の弾性係数:K=12(N/mm)
弾性部材7の弾性力:F=7(N)
第4レンズ21の線膨張係数:α1=60×10-6(1/℃)
第4レンズ21の長さ:L1=2(mm)
第5レンズ22の線膨張係数:α2=66×10-6(1/℃)
第5レンズ22の長さ:L2=2(mm)
鏡胴1の線膨張係数:α0=24×10-6(1/℃)
鏡胴1の長さ:L0=4(mm)
環境温度範囲:t=115(℃)(-30℃から85℃)
【0055】
弾性部材7は、例えば金属材料を含んで構成された板状のバネ部材を含む。具体的には、弾性部材7は、ステンレス鋼(SUS)の波座金(ウェーブワッシャ)である。波座金の外径は13mm、内径は9mm、厚みは0.1mm、山数は3、自由長は1.1mm、弾性部材7を一定に収縮させたときの弾性部材7の光軸Aに沿う方向における長さは0.5mmである。
【0056】
弾性部材7の材質をステンレス鋼等の金属とした理由は、樹脂やゴムと比較して、高温環境下でもクリープの影響が小さいためである。弾性部材7の材質が樹脂やゴムの場合、高温環境下でクリープが進行し、時間経過により弾性力が低下するため、安定して第6レンズ23を支持できない場合がある。これに対し、弾性部材7は、金属材料を含んで構成されているため、第6レンズ23を安定して支持できる。これにより、本実施形態では、複数のレンズの形状または位置の変化を抑制可能なレンズユニット100を提供でき、長期間にわたりレンズユニット100の良好な性能を維持可能になる。
【0057】
本実施形態では、光軸Aに沿う方向における弾性部材7の長さは、押圧部材9により押圧された状態において略一定である。これにより、弾性部材7の弾性力を略一定にし、レンズユニット100の各構成部を、位置が変化しないように安定させることができる。また、弾性部材7の光軸Aに沿う方向における長さが規制されるため、第5レンズ22と第6レンズ23との間の距離を略一定にでき、レンズユニット100の性能を安定化させることができる。
【0058】
本実施形態では、レンズユニット100は、光軸Aに対して略直交する面で弾性部材7に接触する介在部材8を有する。弾性部材7は、介在部材8を介して第6レンズ23(被支持レンズ)を支持する。第6レンズ23における第2球面232(弾性部材7が位置する側の面)は、光軸Aに対して傾斜している。
【0059】
例えば、弾性部材7と第6レンズ23における第2球面232とが接触すると、第6レンズ23における第2球面232は光軸Aに対して傾斜しているため、光軸Aを中心にして押圧力が非対称になる場合がある。
【0060】
本実施形態では、レンズユニット100は、弾性部材7と光軸Aに対して略直交する面で接触する介在部材8を介して第6レンズ23を支持するため、光軸Aを中心にして押圧力を略対称にすることができる。これにより、光軸Aを中心にして非対称な押圧力が加えられることによるレンズの移動を抑制し、レンズユニット100の性能変化を抑制できる。
【0061】
弾性部材7の安定した弾性力、並びにレンズユニット100の安定した光学性能を得る観点では、介在部材8は鏡胴1に接触させることが好ましい。そのため、弾性部材7により第6レンズ23を支持した時の弾性力に対して、介在部材8が第6レンズ23を介して押圧部材9からかかる押圧力を大きくすることが好ましい。
【0062】
本実施形態では、第4レンズ21、第5レンズ22および第6レンズ23(複数のレンズ)は、樹脂を材質とする樹脂レンズを少なくとも1つ含んでもよい。樹脂レンズを用いることにより、レンズユニット100のコストを削減することができる。
【0063】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るレンズユニットについて説明する。なお、第1実施形態と同じ構成部には同じ符号を付し、重複する説明を適宜省略する。但し、説明の便宜のため、順番等を示す数字を名称に含む構成部(第1レンズ等)には、第1実施形態と異なる構成部であっても同じ名称を使用する場合がある。これらの点は、以降に示す実施形態においても同じである。
【0064】
図6は、第2実施形態に係るレンズユニット100aの構成を例示する縦断面図である。レンズユニット100aは、第1レンズ群50と、第2レンズ群60と、第1介在部材31と、第2介在部材32と、遮光部材33と、弾性部材34と、押圧部材35と、を有する。第1レンズ群50は、第1レンズ36と、第2レンズ37と、第3レンズ38と、を有する。
【0065】
第1レンズ36、第1介在部材31、第2レンズ37、第2介在部材32、遮光部材33、弾性部材34、第3レンズ38および押圧部材35は、Z軸正方向側からZ軸負方向側にこの順に並んで鏡胴1aに収容されている。
【0066】
押圧部材35の外側部にはネジ部が設けられている。鏡胴1aのZ軸負方向側における内側部の一部にはネジ部が設けられている。押圧部材35と鏡胴1aの各ネジ部が結合することにより、鏡胴1aに収容された各部材が固定される。
【0067】
弾性部材34によって支持される第1レンズ36および第2レンズ37は、光軸Aに対して略直交する面が押圧される平受けレンズに対応する。押圧部材35によって押圧される第3レンズ38では、弾性部材34側(Z軸正方向側)の面は平面であって、押圧部材35側(Z軸負方向側)の面は球面である。このため、第3レンズ38は傾斜受けレンズに対応する。
【0068】
第3レンズ38は、隙間嵌めによって位置合わせおよび固定がなされている。第3レンズ38では半径方向に隙間がある。このため、第3レンズ38が位置ずれして配置されると、第3レンズ38は傾斜して押圧部材35に接触する。押圧部材35による押圧力は、光軸Aを中心に非対称となる。なお、第3レンズ38は、弾性部材34の光軸Aに沿う方向における長さを規制する規制部材の機能を有する。
【0069】
弾性部材34の材質を金属にした場合、Z軸正方向側から入射してきた光が弾性部材34により反射されると、正反射または拡散反射を繰り返して、レンズユニット100aの像側に配置される撮像素子に入射する場合がある。このような正反射光または拡散反射光は、撮影画像に含まれるフレアやゴーストとなる。
【0070】
本実施形態では、弾性部材34に隣り合う位置に遮光部材33を配置することにより、上記のフレア光やゴースト光の発生を抑制することができる。なお、遮光部材33を設ける代わりに、弾性部材34に塗装やメッキ処理を施して金属特有の光沢を低減することにより、弾性部材34による正反射光または拡散反射光を抑制してもよい。
【0071】
例えば、第1レンズ36の材質をガラスとし、第2レンズ37の材質を樹脂とする。また鏡胴1a、第1介在部材31、第2介在部材32の材質を金属、例えばアルミニウムとし、遮光部材33を金属、特にステンレス鋼とする。以下に示す変数および定数の値を上記式(1)に代入すると、式(1)の左辺は0.020となり、0.1未満となる。従って、式(1)を満足する。
弾性部材34の弾性係数:K=43(N/mm)
弾性部材34の弾性力:F=17(N)
第1レンズ36の線膨張係数:α1=10×10-6(1/℃)
第1レンズ36の長さ:L1=2(mm)
第1介在部材31の線膨張係数:α2=24×10-6(1/℃)
第1介在部材31の長さ:L2=3(mm)
第2レンズ37の線膨張係数:α3=66×10-6(1/℃)
第2レンズ37の長さ:L3=2(mm)
第2介在部材32の線膨張係数:α4=24×10-6(1/℃)
第2介在部材32の長さ:L4=1.5(mm)
遮光部材33の線膨張係数:α5=19×10-6(1/℃)
遮光部材33の長さL5=0.03(mm)
鏡胴1aの線膨張係数:α0=24×10-6(1/℃)
鏡胴1aの長さ:L0=8.53(mm)
環境温度範囲:t=145(℃)(-40℃から105℃)
【0072】
弾性部材34は、例えば金属材料を含んで構成された板状のバネ部材を含む。具体的には、弾性部材34は、ステンレス鋼(SUS)の波座金である。波座金の外径は16mm、内径は12mm、厚みは0.2mm、山数は3、自由長は0.8mm、弾性部材34を一定に収縮させたときの弾性部材34の光軸Aに沿う方向における長さは0.4mmである。
【0073】
押圧部材35による押圧力を100Nに設定すると、弾性部材34の弾性力17Nよりも大きい値となるので、第3レンズ38を鏡胴1aに突き当てることができる。本実施形態においても、第1実施形態と同じ作用効果を得ることができる。
【0074】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るレンズユニットについて説明する。
【0075】
図7は、第3実施形態の第1例に係るレンズユニット100bの構成を示す縦断面図である。レンズユニット100bは、第1レンズ群70と、第2レンズ群80と、弾性部材41と、第1介在部材42と、第2介在部材43と、押圧部材44と、を有する。第1レンズ群70は、第1レンズ45と、第2レンズ46と、を有する。第2レンズ群80は、第3レンズ47と、第4レンズ48と、を有する。
【0076】
第1レンズ45、第2レンズ46、弾性部材41、第1介在部材42、第3レンズ47、第2介在部材43、第4レンズ48および押圧部材44は、Z軸正方向側からZ軸負方向側にこの順に並んで鏡胴1bに収容されている。
【0077】
押圧部材44の外側部にはネジ部が設けられている。鏡胴1bのZ軸負方向側における内側部の一部にはネジ部が設けられている。押圧部材44と鏡胴1bの各ネジ部が結合することにより、鏡胴1bに収容された各部材が固定される。
【0078】
弾性部材41によって支持される第1レンズ45および第2レンズ46は、光軸Aに対して略直交する面が押圧される平受けレンズに対応する。押圧部材44によって押圧される第3レンズ47は、弾性部材41側(Z軸正方向側)の面および押圧部材44側(Z軸負方向側)の面ともに球面である。このため、第3レンズ47は、傾斜受けレンズに対応する。押圧部材44によって押圧される第4レンズ48は、光軸Aに対して略直交する面が押圧される平受けレンズに対応する。第1介在部材42は、鏡胴1bに嵌合し、弾性部材41の光軸Aに沿う方向における長さを規制する規制部材の機能を有する。
【0079】
例えば、第1レンズ45および第2レンズ46の材質を樹脂とし、鏡胴1bの材質を樹脂、例えばPPSとする。以下に示す変数および定数の値を上記式(1)に代入すると、式(1)の左辺は0.045となり、0.1未満となる。従って、式(1)を満足する。
弾性部材41の弾性係数:K=20(N/mm)
弾性部材41の弾性力:F=12(N)
第1レンズ45の線膨張係数:α1=60×10-6(1/℃)
第1レンズ45の長さ:L1=2.5(mm)
第2レンズ46の線膨張係数:α2=66×10-6(1/℃)
第2レンズ46の長さ:L2=2.5(mm)
鏡胴1bの線膨張係数:α0=26×10-6(1/℃)
鏡胴1aの長さ:L0=5(mm)
環境温度範囲:t=145(℃)(-40℃から105℃)
【0080】
弾性部材41は、例えば金属材料を含んで構成された板状のバネ部材を含む。具体的には、弾性部材34は、ステンレス鋼(SUS)の波座金である。波座金の外径は13mm、内径は9mm、厚みは0.12mm、山数は3、自由長は0.9mm、弾性部材41を一定に収縮させたときの弾性部材41の光軸Aに沿う方向における長さは0.3mmである。
【0081】
押圧部材44による押圧力を150Nに設定すると、弾性部材41の弾性力12Nよりも大きい値となる。このため、第1介在部材42は鏡胴1bに突き当て可能となる。レンズユニット100bにおいても、第1実施形態に係るレンズユニット100と同様の作用効果を得ることができる。
【0082】
図8は、第3実施形態の第2例に係るレンズユニット100cの構成を示す縦断面図である。レンズユニット100cは、第2レンズ群90と、第2介在部材51と、押圧部材52と、を有する。第2レンズ群90は、第3レンズ47と、第4レンズ53と、を有する。
【0083】
第1レンズ45、第2レンズ46、弾性部材41、第1介在部材42、第3レンズ47、第2介在部材51、第4レンズ53および押圧部材52は、Z軸正方向側からZ軸負方向側にこの順に並んで鏡胴1bに収容されている。
【0084】
押圧部材52の外側部にはネジ部が設けられている。鏡胴1bのZ軸負方向側における内側部の一部にはネジ部が設けられている。押圧部材52と鏡胴1bの各ネジ部が結合することにより、鏡胴1bに収容された各部材が固定される。
【0085】
押圧部材52によって押圧される第4レンズ53は、弾性部材41側(Z軸正方向側)の面および押圧部材52側(Z軸負方向側)の面ともに球面である。このため、第4レンズ53は、傾斜受けレンズに対応する。
【0086】
上述したレンズユニット100bのように、第2レンズ群80に第4レンズ48のような平受けレンズが含まれていると、レンズユニット100bの第4レンズ48には、光軸Aを中心に非対称な押圧力が第3レンズ47から加えられる。これにより、レンズユニット周辺の環境温度が変化してレンズユニットが膨張および収縮した場合に、第4レンズ48が半径方向に移動して偏心する場合がある。
【0087】
図8に示すように、レンズユニット100bにおける第4レンズ48に代えて、球面レンズである第4レンズ53を用いると、レンズユニット100cを低コスト化できるとともに、第4レンズ53の半径方向への移動を抑制できる。これ以外の効果は、第1実施形態に係るレンズユニット100と同じである。
【0088】
レイアウトの制約により球面レンズである第4レンズ53を配置することが困難な場合には、半径方向へ移動してもレンズユニットの性能に対する影響が少ない形状を有する第4レンズを用いることが好ましい。
【0089】
以上、上述した実施形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。このような実施形態及び実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0090】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 光軸に沿って並ぶ複数のレンズと、前記複数のレンズを収容する鏡胴と、前記鏡胴に収容された前記複数のレンズの少なくとも1つを支持する弾性部材と、前記鏡胴に収容された前記複数のレンズを押圧する押圧部材と、を備え、前記複数のレンズは、前記光軸に対して直交する面が押圧される平受けレンズを含む第1レンズ群と、前記光軸に対して傾斜する面が押圧される傾斜受けレンズを含む第2レンズ群と、を含み、前記弾性部材は、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に設けられている、レンズユニットである。
<2> 光軸に沿う方向に並ぶ複数のレンズと、前記複数のレンズを内側に収容する鏡胴と、前記鏡胴に収容された前記複数のレンズの少なくとも1つを保持する弾性部材と、前記鏡胴に収容された前記複数のレンズを押圧する押圧部材と、を備え、上記式(1)により表される、レンズユニットである。
但し、Kは前記弾性部材の弾性係数を表す。Fは前記弾性部材がその弾性により前記複数のレンズを押す力である弾性力を表す。tは前記レンズユニットが使用可能な環境温度の範囲を表す。nは前記弾性部材の弾性力を主として押圧される部材の数を表す。αiは前記鏡胴に収容され、前記弾性部材の弾性力を主として押圧される複数の収容部材それぞれの線膨張係数を表す。Liは前記複数の収容部材それぞれの前記光軸に沿う方向における長さを表す。iは自然数を表す。α0は前記鏡胴の線膨張係数を表す。L0は前記鏡胴の前記光軸に沿う方向における長さを表す。
<3> 前記複数のレンズは、前記光軸に直交する面が押圧される平受けレンズと、前記光軸に対して傾斜する面が押圧される傾斜受けレンズと、を含み、前記弾性部材は、前記平受けレンズを含む第1レンズ群と、前記傾斜受けレンズを含む第2レンズ群と、の間に設けられている、前記<2>に記載のレンズユニットである。
<4> 前記光軸に沿う方向における前記弾性部材の長さは、前記押圧部材により押圧された状態において一定である、前記<1>または前記<2>に記載のレンズユニットである。
<5> 前記光軸に対して傾斜する面は球面である、前記<1>から前記<4>のいずれかに記載のレンズユニットである。
<6> 前記光軸に対して略直交する面で前記弾性部材に接触する介在部材をさらに有し、前記弾性部材は、前記複数のレンズのうち前記弾性部材により支持される被支持レンズを、前記介在部材を介して支持し、前記被支持レンズにおける前記弾性部材が位置する側の面は、前記光軸に対して傾斜している、前記<1>から前記<5>のいずれかに記載のレンズユニットである。
<7> 前記複数のレンズは、少なくとも1つの樹脂レンズを含む、前記<1>から前記<6>のいずれかに記載のレンズユニットである。
<8> 前記弾性部材は、金属材料を含んで構成された板状のバネ部材を含む、前記<1>から前記<7>のいずれかに記載のレンズユニットである。
【符号の説明】
【0091】
1、1a、1b、1c 鏡胴
2 前玉押圧部材
3 前玉遮光部材
4 前玉弾性部材
5 第1前玉スペーサ部材
6 第2前玉スペーサ部材
7、34、41 弾性部材
7a 支持部材
71a 領域
8 介在部材
9、35、44、52 押圧部材
10 前玉レンズ群
11、36、45 第1レンズ
12、37、46 第2レンズ
13、38、47 第3レンズ
20 後玉レンズ群
21、48、53 第4レンズ
21a、22a 平面部
22 第5レンズ
23、23a、23a1、23a2 第6レンズ
231 第1球面
232 第2球面
23c 光軸
30、50、70 第1レンズ群
31、42 第1介在部材
32、43、51 第2介在部材
33 遮光部材
40、60、80、90 第2レンズ群
100、100a、100b、100c レンズユニット
A 光軸
F0、F1、F2 押圧力
【先行技術文献】
【特許文献】
【0092】
【特許文献1】特開2021-140043号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8