(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163947
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】光走査装置及び異常検知方法
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075199
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 昌昭
(72)【発明者】
【氏名】直野 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】西浦 洋輔
【テーマコード(参考)】
2H045
【Fターム(参考)】
2H045AB13
2H045AB44
2H045AB81
2H045BA13
2H045BA14
(57)【要約】
【課題】ミラーの異常動作を動作中に高速に検知することを可能とする光走査装置及び異常検知方法を提供する。
【解決手段】本開示の光走査装置は、光を反射する反射面を有し、少なくとも1つの軸周りに揺動可能なミラーと、ミラーを揺動させるアクチュエータと、を含むマイクロミラーデバイスと、アクチュエータの動作を制御する制御装置と、ミラーの反射面とは反対側の裏面に照明光を照射する光照射装置と、ミラーにより反射された照明光の反射光が入射し、入射光の位置を表す位置信号を出力する検出装置と、位置信号の時間的な変動量に基づいて、ミラーの異常動作を検知する異常検知装置と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射する反射面を有し、少なくとも1つの軸周りに揺動可能なミラーと、前記ミラーを揺動させるアクチュエータと、を含むマイクロミラーデバイスと、
前記アクチュエータの動作を制御する制御装置と、
前記ミラーの前記反射面とは反対側の裏面に照明光を照射する光照射装置と、
前記ミラーにより反射された前記照明光の反射光が入射し、入射光の位置を表す位置信号を出力する検出装置と、
前記位置信号の時間的な変動量に基づいて、前記ミラーの異常動作を検知する異常検知装置と、
を備える光走査装置。
【請求項2】
前記検出装置は、前記入射光の光量重心位置を検出することを可能とする位置検出素子であり、
前記位置信号は、前記光量重心位置を表す、
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記アクチュエータを駆動することにより、一定の揺動周期で前記ミラーを共振させる、
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記異常検知装置は、前記揺動周期の5%より小さい時間間隔において前記位置信号が変動する量を前記変動量として検出する、
請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記異常検知装置は、前記揺動周期の5%より小さく、かつ0.05%より大きい時間間隔において前記位置信号が変動する量を前記変動量として検出する、
請求項3に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記異常検知装置は、前記変動量を検出する検出部と、前記変動量の閾値以上であるか否かを判定する判定部とを含む、
請求項3に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記検出部は、
前記検出装置から出力された前記位置信号を一定時間遅延させる遅延回路と、
前記検出装置から出力された前記位置信号と、前記遅延回路により遅延された前記位置信号との差を増幅して出力する差動増幅回路と、
で構成されている、
請求項6に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記判定部は、コンパレータである、
請求項7に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記検出装置は、前記入射光の光量重心位置及び光強度を同時に検出することを可能とする位置検出素子であり、
前記異常検知装置は、前記位置信号に加えて、前記検出装置から出力される前記光強度を表す強度信号に基づいて、前記異常動作を検知する、
請求項2に記載の光走査装置。
【請求項10】
前記ミラーは、互いに直交する第1軸及び第2軸の周りに揺動可能であり、
前記検出装置は、前記入射光の二次元的な位置を検出する、
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項11】
光を反射する反射面を有し、少なくとも1つの軸周りに揺動可能なミラーと、前記ミラーを揺動させるアクチュエータと、を含むマイクロミラーデバイスと、
前記アクチュエータの動作を制御する制御装置と、
を備える光走査装置の異常検知方法であって、
前記ミラーの前記反射面とは反対側の裏面に照明光を照射し、
前記ミラーにより反射された前記照明光の反射光の位置の時間的な変動量に基づいて、前記ミラーの異常動作を検知すること、
を含む異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、光走査装置及び異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)の微細加工技術を用いて作製される微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)デバイスの1つとしてマイクロミラーデバイス(マイクロスキャナともいう。)が知られている。マイクロミラーデバイスには、ミラーと、ミラーを揺動させるアクチュエータとが形成されている。このマイクロミラーデバイスは、小型かつ低消費電力であることから、LiDAR(Light Detection and Ranging)、HUD(Head-Up Display)などのレーザスキャナに用いられている。
【0003】
LiDAR、HUD等のレーザスキャナでは、ユーザの安全性を確保することが重要である。例えば、光源からのレーザ光の出力がオンの状態でミラーの動作が停止すると、レーザ光が同じ位置に連続的に照射されるので、危険である。そのため、ミラーの異常動作を動作中に検知することが求められる。ミラーの異常動作を検知するには、ミラーの動作中に、ミラーの振れ角を正確に検出する必要がある。
【0004】
特許文献1には、ミラーの裏面に光を照射し、ミラーにより反射された光を受光素子で受光し、受光素子の出力信号を演算することによりミラーの振れ角を検出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、ミラーの振れ角の検出については記載されているものの、ミラーの異常動作の検知については記載されていない。ミラーの異常動作を検知するには、ミラーの振幅を監視し、振幅が所定の範囲外となった場合に異常動作が生じたと判定する方法が考えられる。しかしながら、ミラーの振幅を検出するためには1揺動周期分の波形を取得して評価する必要があるので、ミラーの異常動作を高速に検知することはできない。
【0007】
本開示の技術は、ミラーの異常動作を動作中に高速に検知することを可能とする光走査装置及び異常検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の光走査装置は、光を反射する反射面を有し、少なくとも1つの軸周りに揺動可能なミラーと、ミラーを揺動させるアクチュエータと、を含むマイクロミラーデバイスと、アクチュエータの動作を制御する制御装置と、ミラーの反射面とは反対側の裏面に照明光を照射する光照射装置と、ミラーにより反射された照明光の反射光が入射し、入射光の位置を表す位置信号を出力する検出装置と、位置信号の時間的な変動量に基づいて、ミラーの異常動作を検知する異常検知装置と、を備える。
【0009】
検出装置は、入射光の光量重心位置を検出することを可能とする位置検出素子であり、位置信号は、光量重心位置を表すことが好ましい
【0010】
制御装置は、アクチュエータを駆動することにより、一定の揺動周期でミラーを共振させることが好ましい。
【0011】
異常検知装置は、揺動周期の5%より小さい時間間隔において位置信号が変動する量を変動量として検出することが好ましい。
【0012】
異常検知装置は、揺動周期の5%より小さく、かつ0.05%より大きい時間間隔において位置信号が変動する量を変動量として検出することが好ましい。
【0013】
異常検知装置は、変動量を検出する検出部と、変動量の閾値以上であるか否かを判定する判定部とを含むことが好ましい。
【0014】
検出部は、検出装置から出力された位置信号を一定時間遅延させる遅延回路と、検出装置から出力された位置信号と、遅延回路により遅延された位置信号との差を増幅して出力する差動増幅回路とで構成されていることが好ましい。
【0015】
判定部は、コンパレータであることが好ましい。
【0016】
検出装置は、入射光の光量重心位置及び光強度を同時に検出することを可能とする位置検出素子であり、異常検知装置は、位置信号に加えて、検出装置から出力される光強度を表す強度信号に基づいて、異常動作を検知することが好ましい。
【0017】
ミラーは、互いに直交する第1軸及び第2軸の周りに揺動可能であり、検出装置は、入射光の二次元的な位置を検出することが好ましい。
【0018】
本開示の異常検知方法は、光を反射する反射面を有し、少なくとも1つの軸周りに揺動可能なミラーと、ミラーを揺動させるアクチュエータと、を含むマイクロミラーデバイスと、アクチュエータの動作を制御する制御装置と、を備える光走査装置の異常検知方法であって、ミラーの反射面とは反対側の裏面に照明光を照射し、ミラーにより反射された照明光の反射光の位置の時間的な変動量に基づいて、ミラーの異常動作を検知することを含む。
【発明の効果】
【0019】
本開示の技術によれば、ミラーの異常動作を動作中に高速に検知することを可能とする光走査装置及び異常検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】可動ミラーの第1振れ角ついて説明する図である。
【
図4】可動ミラーの第2振れ角ついて説明する図である。
【
図5】第1アクチュエータ及び第2アクチュエータに与える駆動信号の一例を示す図である。
【
図6】角度検出装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図7】異常検知装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】可動ミラーが正常に動作している場合における出力信号、遅延信号、及び変動量の一例を模式的に示す図である。
【
図9】可動ミラーに異常動作が生じた場合における出力信号、遅延信号、及び変動量の一例を模式的に示す図である。
【
図10】検出装置から出力される位置信号及び強度信号の一例を示す図である。
【
図13】Δt/T=0.5%の場合における変動量の波形を示す図である。
【
図14】Δt/T=5%の場合における変動量の波形を示す図である。
【
図15】Δt/T=0.01%の場合における変動量の波形を示す図である。
【
図16】位置信号に基づく従来の判定方法による判定例を示す図である。
【
図17】位置信号に基づく従来の判定方法による判定例を示す図である。
【
図18】変形例に係る異常検知装置の構成を示すブロック図である。
【
図19】強度信号に基づく判定方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面に従って本開示の技術に係る実施形態の一例について説明する。
【0022】
図1は、一実施形態に係る光走査システム10を模式的に示す。光走査システム10は、光走査装置2と光源3とを含む。光走査装置2は、マイクロミラーデバイス(以下、MMD(Micro Mirror Device)という。)4と、制御装置5と、角度検出装置6と、異常検知装置7とで構成されている。光走査システム10は、LiDAR、HUDなどのレーザスキャナに用いられる。
【0023】
光走査装置2は、制御装置5の制御に従って、光源3から入射するレーザ光LaをMMD4で反射することにより、光走査を行う。光走査システム10がLiDARに用いられる場合には、光走査装置2は、例えば、レーザ光Laをヘリカル状に走査する。本実施形態では、光走査のパターンをヘリカル状とするが、光走査のパターンは、ヘリカル状に限られず、リサージュ状、ラスター状などであってもよい。
【0024】
MMD4は、第1軸a
1と、第1軸a
1に直交する第2軸a
2との周りに、可動ミラー20(
図2参照)を揺動させることを可能とする圧電型2軸駆動方式のマイクロミラーデバイスである。以下、第1軸a
1と平行な方向をX方向、第2軸a
2と平行な方向をY方向、第1軸a
1及び第2軸a
2に直交する方向をZ方向という。
【0025】
光源3は、レーザ光Laを発するレーザ装置である。光源3は、MMD4の可動ミラー20が静止した状態において、可動ミラー20が備える反射面20A(
図2参照)に垂直にレーザ光Laを照射する。レーザ光Laは、本開示の技術に係る「光」の一例である。
【0026】
制御装置5は、光源3及びMMD4にそれぞれ駆動信号を入力する。光源3は、入力された駆動信号に基づいてレーザ光Laを発生してMMD4に照射する。MMD4は、入力された駆動信号に基づいて、可動ミラー20を第1軸a1及び第2軸a2の周りに揺動させる。
【0027】
詳しくは後述するが、制御装置5は、可動ミラー20を第1軸a1及び第2軸a2の周りにそれぞれ共振させる。これにより、可動ミラー20で反射されるレーザ光Laは、平面上において円形を描くように走査される。
【0028】
詳しくは後述するが、角度検出装置6は、可動ミラー20の裏面側(すなわちレーザ光Laが照射される面とは反対側)に、角度検出用の照明光Lbを照射することにより、可動ミラー20の角度を検出する。角度検出装置6の検出動作は、制御装置5により制御される。例えば、制御装置5は、角度検出装置6から出力される信号に基づいて駆動信号を補正するフィードバック制御を行う。
【0029】
詳しくは後述するが、異常検知装置7は、角度検出装置6から出力される信号の時間的な変動量に基づいて、可動ミラー20の異常動作を動作中に検知する。
【0030】
次に、
図2を用いてMMD4の構成の一例を説明する。
図2は、MMD4の概略図である。
【0031】
MMD4は、可動ミラー20、第1アクチュエータ21、第2アクチュエータ22、支持枠23、第1支持部24、第2支持部25、接続部26、及び固定部27を有する。MMD4は、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板をエッチング処理することにより形成されている。可動ミラー20は、本開示の技術に係る「ミラー」の一例である。
【0032】
可動ミラー20は、入射光を反射する反射面20Aを有する。反射面20Aは、可動ミラー20の一面に設けられた、例えば、金(Au)又はアルミニウム(Al)等の金属薄膜で形成されている。反射面20Aは、例えば円形である。
【0033】
支持枠23は、可動ミラー20を囲うように配置されている。第2アクチュエータ22は、可動ミラー20及び支持枠23を囲うように配置されている。第1アクチュエータ21は、可動ミラー20、支持枠23、及び第2アクチュエータ22を囲うように配置されている。
【0034】
第1支持部24は、可動ミラー20と支持枠23とを、第1軸a1上で接続し、かつ可動ミラー20を第1軸a1周りに揺動可能に支持している。第1軸a1は、可動ミラー20が静止している場合の反射面20Aを含む平面内にある。例えば、第1支持部24は、第1軸a1に沿って延伸したトーションバーである。
【0035】
第2支持部25は、支持枠23と第2アクチュエータ22とを、第2軸a2上で接続し、かつ可動ミラー20及び支持枠23を第2軸a2周りに揺動可能に支持している。第2軸a2は、可動ミラー20が静止している場合の反射面20Aを含む平面内において第1軸a1と直交する。
【0036】
接続部26は、第1アクチュエータ21と第2アクチュエータ22とを第1軸a1上で接続している。また、接続部26は、第1アクチュエータ21と固定部27とを第1軸a1上で接続している。
【0037】
固定部27は外形が矩形状であり、第1アクチュエータ21を取り囲んでいる。固定部27のX方向及びY方向への長さは、それぞれ、例えば1mm~10mm程度である。固定部27のZ方向への厚みは、例えば5μm~0.2mm程度である。
【0038】
第1アクチュエータ21及び第2アクチュエータ22は、それぞれ圧電素子を備えた圧電アクチュエータである。第1アクチュエータ21は、可動ミラー20に第1軸a1周りの回転トルクを与える。第2アクチュエータ22は、可動ミラー20に第2軸a2周りの回転トルクを与える。これにより、可動ミラー20は、第1軸a1周り及び第2軸a2周りに揺動する。
【0039】
第1アクチュエータ21は、XY面内において可動ミラー20、支持枠23、及び第2アクチュエータ22を囲む環状の薄板部材である。第1アクチュエータ21は、一対の第1可動部21A及び第2可動部21Bで構成されている。第1可動部21A及び第2可動部21Bは、それぞれ略半環状である。第1可動部21Aと第2可動部21Bとは、第1軸a1に関して線対称となる形状であり、第1軸a1上で接続されている。
【0040】
支持枠23は、XY面内において可動ミラー20を囲む環状の薄板部材である。
【0041】
第2アクチュエータ22は、XY面内において可動ミラー20及び支持枠23を囲む環状の薄板部材である。第2アクチュエータ22は、一対の第1可動部22A及び第2可動部22Bで構成されている。第1可動部22A及び第2可動部22Bは、それぞれ半環状である。第1可動部22Aと第2可動部22Bとは、第2軸a2に関して線対称となる形状であり、第2軸a2上で接続されている。
【0042】
第1アクチュエータ21において、第1可動部21A及び第2可動部21Bには、それぞれ圧電素子が設けられている。また、第2アクチュエータ22において、第1可動部22A及び第2可動部22Bには、それぞれ圧電素子が設けられている。
【0043】
図3及び
図4は、可動ミラー20が揺動する際の振れ角について説明する。
図3は、可動ミラー20の第1軸a
1周りの振れ角(以下、第1振れ角という。)θ
1を示す。
図4は、可動ミラー20の第2軸a
2周りの振れ角(以下、第2振れ角という。)θ
2を示す。
【0044】
図3に示すように、可動ミラー20の反射面20Aの法線Nが、YZ平面において傾斜する角度を第1振れ角θ
1という。反射面20Aの法線Nが+Y方向に傾斜した場合には、第1振れ角θ
1は正の値をとり、-Y方向に傾斜した場合には、第1振れ角θ
1は負の値をとる。
【0045】
第1振れ角θ1は、制御装置5が第1アクチュエータ21に与える駆動信号(以下、第1駆動信号という。)により制御される。第1駆動信号は、例えば正弦波の交流電圧である。第1駆動信号は、第1可動部21Aに印加される駆動電圧波形V1A(t)と、第2可動部21Bに印加される駆動電圧波形V1B(t)とを含む。駆動電圧波形V1A(t)と駆動電圧波形V1B(t)は、互いに逆位相(すなわち位相差180°)である。
【0046】
図4に示すように、可動ミラー20の反射面20Aの法線Nが、XZ平面において傾斜する角度を第2振れ角θ
2という。反射面20Aの法線Nが+X方向に傾斜した場合には、第2振れ角θ
2は正の値をとり、-X方向に傾斜した場合には、第2振れ角θ
2は負の値をとる。
【0047】
第2振れ角θ2は、制御装置5が第2アクチュエータ22に与える駆動信号(以下、第2駆動信号という。)により制御される。第2駆動信号は、例えば正弦波の交流電圧である。第2駆動信号は、第1可動部22Aに印加される駆動電圧波形V2A(t)と、第2可動部22Bに印加される駆動電圧波形V2B(t)とを含む。駆動電圧波形V2A(t)と駆動電圧波形V2B(t)は、互いに逆位相(すなわち位相差180°)である。
【0048】
図5は、第1アクチュエータ21及び第2アクチュエータ22に与える駆動信号の一例を示す。
図5(A)は、第1駆動信号に含まれる駆動電圧波形V
1A(t)及びV
1B(t)を示す。
図5(B)は、第2駆動信号に含まれる駆動電圧波形V
2A(t)及びV
2B(t)を示す。
【0049】
駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)は、それぞれ下式(1A)及び下式(1B)により表される。
V1A(t)=A1sin(2πfdt) ・・・(1A)
V1B(t)=A1sin(2πfdt+π) ・・・(1B)
【0050】
ここで、tは時間である。fdは駆動周波数である。A1は、振幅である。駆動電圧波形V1A(t)と駆動電圧波形V1B(t)との位相差は、π(すなわち180°)である。
【0051】
駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)は、それぞれ下式(2A)及び下式(2B)により表される。
V2A(t)=A2sin(2πfdt+φ) ・・・(2A)
V2B(t)=A2sin(2πfdt+π+φ) ・・・(2B)
【0052】
ここで、A2は、振幅である。駆動電圧波形V2A(t)と駆動電圧波形V2B(t)との位相差は、π(すなわち180°)である。φは、駆動電圧波形V1A(t)と駆動電圧波形V2A(t)との位相差である。本実施形態では、可動ミラー20に歳差運動を行わせて、光走査のパターンをヘリカル状とするために、φ=90°とする。なお、振幅A1,A2を、時間tに応じて変化させてもよい。
【0053】
本実施形態では、駆動周波数fdを可動ミラー20の共振周波数とする。これにより、可動ミラー20は、一定の揺動周期Tで共振する。揺動周期Tは、T=1/fdで表される。
【0054】
図6は、角度検出装置6の構成の一例を示す。
図6に示すように、角度検出装置6は、光照射装置30、光偏向部材31、検出装置32、コリメートレンズ33、及び集光レンズ34を備える。光照射装置30は、角度検出用の照明光Lbを出射する。例えば、光照射装置30は、照明光Lbとして波長が約980nmのレーザ光を発するレーザダイオードである。
【0055】
光偏向部材31は、円柱の基材を、円柱の回転対称軸に対して斜めに切断することにより形成された切断面を有し、その切断面に反射面31Aが形成されている。光偏向部材31は、光照射装置30から出射された照明光Lbが反射面31Aに約45°の入射角で入射するように配置されている。
【0056】
光照射装置30と光偏向部材31との間には、コリメートレンズ33が配置されている。光照射装置30から出射された照明光Lbは、コリメートレンズ33を介して反射面31Aに入射する。光照射装置30から出射される照明光Lbの進行方向は、例えばY方向である。反射面31Aに入射した照明光Lbは、角度が90°偏向されてZ方向に進行して、可動ミラー20の裏面20Bに入射する。裏面20Bは、可動ミラー20の反射面20Aが設けられた面とは反対側の面である。なお、図示を省略しているが、裏面20Bには、可動ミラー20の強度を高めるために梁構造(リブとも称される。)が設けられている。
【0057】
光偏向部材31と可動ミラー20との間には集光レンズ34が配置されている。集光レンズ34は、例えば両凸レンズであって、その光軸AXに沿って、光偏向部材31により偏向された照明光Lbが進行するように配置されている。照明光Lbは、集光レンズ34の中央を通過して可動ミラー20の裏面20Bに入射する。
【0058】
可動ミラー20の裏面20Bに入射した照明光Lbは、可動ミラー20の振れ角(第1振れ角θ1及び第2振れ角θ2)に応じた反射角で反射される。可動ミラー20の裏面20Bによって反射された照明光Lbは、集光レンズ34を介して検出装置32の受光面32Aに入射する。受光面32Aの中央に光偏向部材31が配置されている。
【0059】
検出装置32は、入射光の光量重心位置を検出することを可能とする位置検出素子であり、光量重心位置を表す位置信号を出力する。本実施形態では、検出装置32として、入射光の二次元的な位置を検出する二次元PSD(Position Sensitive Detector)が用いられる。検出装置32は、受光面32Aにおける入射光のX方向に関する光量重心位置とY方向に関する光量重心位置とを検出する。検出装置32は、X方向に関する光量重心位置を表す位置信号Px(t)と、Y方向に関する光量重心位置を表す位置信号Py(t)とを出力する。
図6に示すように、位置信号Py(t)は、第1振れ角θ
1に応じて変化する。図示は省略するが、位置信号Px(t)は、第2振れ角θ
2に応じて変化する。
【0060】
なお、本実施形態の検出装置32は、入射光の光量重心位置及び光強度を同時に検出することを可能とし、位置信号Px(t),Py(t)に加えて、入射光の光強度を表す強度信号Ix(t),Iy(t)を出力する。強度信号Ix(t)は、X方向に関する光強度を表す。強度信号Iy(t)は、Y方向に関する光強度を表す。
【0061】
制御装置5は、角度検出装置6から出力される位置信号Px(t),Py(t)に基づいて第1駆動信号及び第2駆動信号を補正するフィードバック制御を行う。
【0062】
図7は、異常検知装置7の構成の一例を示す。異常検知装置7は、検出部40と判定部41とを有する。検出部40は、遅延回路42と差動増幅回路43とで構成されている。本実施形態では、異常検知装置7は、検出装置32から出力される位置信号Px(t),Py(t)のうち位置信号Py(t)を用いて異常検知を行う。
【0063】
位置信号Py(t)は、検出部40に入力される。具体的には、位置信号Py(t)は、遅延回路42と差動増幅回路43とに入力される。遅延回路42は、入力された位置信号Py(t)を一定時間Δtだけ遅延させて出力する。以下、遅延回路42から出力される信号を遅延信号Py(t-Δt)という。以下、時間Δtを、遅延時間Δtという。遅延時間Δtは、揺動周期Tよりも短い。
【0064】
遅延回路42から出力される遅延信号Py(t-Δt)は、差動増幅回路43に入力される。差動増幅回路43は、位置信号Py(t)と遅延信号Py(t-Δt)との差を増幅して出力する。すなわち、遅延回路42は、位置信号Py(t)の位相を調整して遅延信号Py(t-Δt)とする。以下、差動増幅回路43から出力される出力信号を、変動量ΔPy(t)という。変動量ΔPy(t)は、位置信号Py(t)の時間的な変動量を表す。換言すると、変動量ΔPy(t)は、揺動周期Tより小さい時間間隔においてΔPy(t)が変動する量を表す。
【0065】
差動増幅回路43から出力される変動量ΔPy(t)は、判定部41に入力される。判定部41は、コンパレータにより構成されている。判定部41は、変動量ΔPy(t)が閾値Vth以上であるか否かを判定し、判定結果を制御装置5へ出力する。ここで、変動量ΔPy(t)が閾値Vth以上であるとは、変動量ΔPy(t)の絶対値が閾値Vth以上であること、換言すると、ΔPy(t)≧Vthであるか、又はΔPy(t)≦-Vthであることをいう。
【0066】
制御装置5は、判定部41から出力される判定結果に応じて、光源3及びMMD4の動作を停止させる。具体的には、制御装置5は、判定部41により変動量ΔPy(t)が閾値Vth以上であると判定された場合には、光源3及びMMD4の動作を停止させる。
【0067】
図8は、可動ミラー20が正常に動作している場合における位置信号Py(t)、遅延信号Py(t-Δt)、及び変動量ΔPy(t)の一例を模式的に示す。
図8(A)は、位置信号Py(t)及び遅延信号Py(t-Δt)の一例を示す。
図8(B)は、変動量ΔPy(t)の一例を示す。
【0068】
可動ミラー20が一定の揺動周期Tで共振している場合には、
図8(A)に示すように、位置信号Py(t)は、理想的には略正弦波となる。
図8(A)において、位置信号Py(t)は実線で示されており、遅延信号Py(t-Δt)は破線で示されている。
図8(B)に示す変動量ΔPy(t)は、遅延時間Δtに対する位置信号Py(t)の変動電圧ΔVに対応する。変動量ΔPy(t)は、理想的には略正弦波となる。
【0069】
図9は、可動ミラー20に異常動作が生じた場合における位置信号Py(t)、遅延信号Py(t-Δt)、及び変動量ΔPy(t)の一例を模式的示す。
図9(A)は、位置信号Py(t)及び遅延信号Py(t-Δt)の一例を示す。
図9(B)は、変動量ΔPy(t)の一例を示す。
【0070】
図9に示すように、可動ミラー20に異常動作が生じた場合には、変動量ΔPy(t)が大きく変化して閾値Vth以上となり、判定部41により可動ミラー20の動作が異常と判定される。
【0071】
なお、可動ミラー20の動作が正常であっても、位置信号Py(t)は、可動ミラー20の裏面20Bからの反射光に迷光等が含まれることにより、波形にノイズが生じることがある。迷光は、例えば、裏面20Bに設けられた梁構造等で照明光Lbが反射されることにより生じる。ノイズによる影響によらず、可動ミラー20の異常動作を正確に検知するには、遅延時間Δtを適切な範囲内に設定する必要がある。具体的には、揺動周期Tに対する遅延時間Δtの割合(Δt/T)を適切な範囲内に設定することが好ましい。
【0072】
例えば、Δt/T<5%と、上限値を規定することが好ましい。この場合、検出部40は、揺動周期Tの5%より小さい時間間隔において位置信号Py(t)が変動する量を変動量ΔPy(t)として検出する。また、0.05%<Δt/T<5%と、上限値及び下限値を規定することがさらに好ましい。この場合、検出部40は、揺動周期Tの5%より小さく、かつ0.05%より大きい時間間隔において位置信号Py(t)が変動する量を変動量ΔPy(t)として検出する。
【0073】
[実験による効果の検証]
上記のように構成された異常検知装置7を用いることにより、可動ミラー20の異常動作を動作中に高速に検知することが可能となる。この効果を検証するために、本出願人は、複数のMMD4を作製して実験を行った。
【0074】
作製したMMD4を、駆動周波数f
dを約1420Hzとして、可動ミラー20に歳差運動を行わせた状態で、検出装置32から出力される信号を異常検知装置7に入力して異常検知の精度を評価した。揺動周期Tは、約704μsである。
図10は、検出装置32から出力される位置信号Px(t),Py(t)及び強度信号Ix(t),Iy(t)の一例を示す。本実験では、位置信号Py(t)を異常検知装置7に入力した。異常検知装置7では、遅延時間Δtを変化させることにより、複数の割合Δt/Tについて異常検知の精度を評価した。
【0075】
また、通常の環境下では異常動作が生じにくいため、負荷環境下でMMD4を動作させることにより異常動作を発生させた。負荷として、高温高湿度環境下でMMD4を駆動すること、外部からMMD4へ衝撃を印加すること、及び、高駆動電圧でMMD4を駆動することが含まれる。
【0076】
また、可動ミラー20の動作を光学的方法で直接計測することにより得られる計測値に基づく異常動作の判定結果を評価基準とした。
図11は、光学的方法の一例を示す。
図11に示すように、評価用光源50からコリメートレンズ51を介して可動ミラー20の反射面20Aに評価用レーザ光LEを照射し、反射面20Aによる反射光を、レンズ52,53を介して位置検出素子(PSD:Position Sensitive Detector)54に結像する。位置検出素子により得られる結像位置を、可動ミラー20の振れ角に変換する。なお、振れ角の変換精度を高めるために、MMD4に代えて、角度が既知の基準ミラーを設置し、角度と位置情報とを校正するキャリブレーションを実施することが好ましい。
【0077】
上記の光学的方法により可動ミラー20の振れ角(第1振れ角θ1及び第2振れ角θ2)を計測し、第1振れ角θ1と第2振れ角θ2とを合成した合成角を算出した。可動ミラー20が歳差運動を行っている場合には合成角は一定である。合成角が定常値から±10%の範囲を超えた場合に、異常動作が発生したと判定し、この判定した時間を基準時間とした。
【0078】
異常検知装置7による異常検知の精度を複数の評価項目について評価した。本実験で用いた評価項目は、「検知時間」、「検知漏れ」、及び「誤検知」である。検知時間は、異常動作を検知した時間(異常検知時間)に関する評価項目である。検知漏れは、異常動作を検知できたか否かに関する評価項目である。誤検知は、動作開始から異常動作が発生するまでの間に、異常動作と誤検知したか否かに関する評価項目である。
【0079】
図12は、評価結果を示す。実施例1~7は、本実施形態の異常検知装置7を用いた異常検知の実験例であり、それぞれ遅延時間Δtの設定値が異なることにより割合Δt/Tが異なる。比較例は、本実施形態の異常検知装置7は用いずに、位置信号Py(t)に基づく従来の判定方法を用いた異常検知の実験例である。
【0080】
検知時間の評価結果において、Pは、100個のサンプルを用いて実験を行った結果、最も遅い異常検知時間(ワースト検知時間)が、上記の基準時間から350μs未満であったことを表している。F1は、ワースト検知時間が基準時間から700μs未満であったことを表している。F2は、ワースト検知時間が基準時間から700μs以上であったことを表している。
【0081】
検知漏れの評価結果において、Pは、100個のサンプルを用いて実験を行った結果、全てのサンプルについて異常動作を検知することができたこと、すなわち検知漏れがなかったことを表している。Fは、少なくとも1つのサンプルについて異常動作を検知することができなかったこと、すなわち検知漏れがあったことを表している。
【0082】
誤検知の評価結果において、Pは、100個のサンプルを用いて実験を行った結果、誤検知したサンプル数を全サンプル数で割った値(誤検知率)が10%未満であったことを表している。F1は、誤検知率が50%未満であったことを表している。F2は、誤検知率が50%以上であったことを表している。
【0083】
検知時間の評価結果によれば、Δt/T<5%の場合に、ワースト検知時間が基準時間から350μs未満となることがわかる。すなわち、可動ミラー20の異常動作を動作中に高速に検知するうえで、Δt/T<5%とすることが好ましい。
【0084】
検知漏れの評価結果によれば、0.01%<Δt/T<10%の場合に、検知漏れが生じないことがわかる。すなわち、検知漏れの観点からは、Δt/Tの下限値を0.01%とすることが好ましい。
【0085】
誤検知の評価結果によれば、0.05%<Δt/Tの場合に、誤検知が生じないことがわかる。誤検知は、主に迷光によるノイズによって生じる。すなわち、ノイズ耐性の観点から、Δt/Tの下限値を0.05%とすることが好ましい。
【0086】
図13~
図15は、変動量ΔPy(t)の波形を示す。
図13は、Δt/T=0.5%の場合における変動量ΔPy(t)の波形を示す。
図14は、Δt/T=5%の場合における変動量ΔPy(t)の波形を示す。
図15は、Δt/T=0.01%の場合における変動量ΔPy(t)の波形を示す。
【0087】
図13は、0.05%<Δt/T<10%の場合に、高速かつ高精度に異常検知を行うことを可能とする波形の一例を示している。
図13に示す波形は、異常動作時の振幅が正常動作時の振幅より大きいので、異常動作を高速かつ精度よく検出することができる。また、
図13は、波形に迷光によるノイズが混入した場合であっても、上記振幅の関係が維持され、安定して異常動作を検出することができることを示している。
【0088】
図14は、Δt/T≧5%の場合に、検知漏れが生じる波形の一例を示している。
図14に示す波形は、異常動作時の振幅が正常動作時の振幅より小さいので、異常動作を検知することができず、検知漏れが生じる。
【0089】
図15は、Δt/T≦0.05%の場合に、誤検知が生じる波形の一例を示している。
図15に示す波形は、正常動作時及び異常動作時の振幅が小さいため、迷光等によるノイズの影響を受けやすく、誤検知が生じやすい。
【0090】
図16及び
図17は、位置信号Py(t)に基づく従来の判定方法による判定例を示す。従来の判定方法では、位置信号Py(t)を閾値Vth2と比較することにより異常検知が行われる。
図16及び
図17に示す波形は、いずれも異常動作発生後に振幅が低下しており、異常動作を検知することができず、検知漏れとなる。仮に、異常動作発生後に振幅が増加する場合には、従来の判定方法であっても異常動作が検知されるが、異常動作が発生した後、位置信号Py(t)が閾値Vth2を超えるまでに時間が掛かる。このため、高速に異常検知を行うことはできない。
【0091】
[各種変形例]
上記実施形態では、異常検知装置7は、位置信号Py(t)に基づいて異常検知しているが、位置信号Px(t)に基づいて異常検知を行ってもよい。また、異常検知装置7は、位置信号Py(t),Px(t)のそれぞれに基づいて異常検知を行ってもよい。この場合、例えば、異常検知装置7は、位置信号Py(t),Px(t)のいずれか一方の時間的な変動量が閾値以上となった場合に、異常動作が発生したと判定する。
【0092】
また、異常検知装置7は、位置信号に加えて、強度信号に基づいて異常検知を行ってもよい。
図18は、変形例に係る異常検知装置7Aの構成を示す。異常検知装置7Aは、検出装置32から出力される位置信号Py(t)に加えて、強度信号Iy(t)に基づいて異常検知を行う。異常検知装置7Aは、検出部40と、判定部41Aとを有する。判定部41Aは、位置信号Py(t)の変動量ΔPy(t)に基づいて上述の判定を行うとともに、強度信号Iy(t)に基づいて判定を行う。
【0093】
図19は、強度信号Iy(t)に基づく判定方法の一例を示す。強度信号Iy(t)は、可動ミラー20が正常動作を行っている場合は一定範囲D内で変動するが、可動ミラー20に異常動作が生じると一定範囲D外となる。このため、判定部41Aは、強度信号Iy(t)を監視し、強度信号Iy(t)が一定範囲D外となった場合に、異常動作が生じたと判定する。このように、位置信号に加えて、強度信号に基づいて異常検知を行うことで、異常検知の精度がさらに向上する。
【0094】
なお、位置信号Px(t),Py(t)及び強度信号Ix(t),Iy(t)のすべての信号に基づいて異常検知を行ってもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、検出部40を遅延回路42と差動増幅回路43とで構成しているが、検出部40を微分回路により構成してもよい。また、検出部40をハイパスフィルタにより構成してもよい。この場合、ハイパスフィルタのカットオフ周波数を、Δt/Tの上限値に応じて設定すればよい。また、検出部40をバンドパスフィルタにより構成してもよい。この場合、バンドパスフィルタの高周波側及び低周波側のカットオフ周波数を、Δt/Tの下限値及び上限値に応じて設定すればよい。
【0096】
また、上記実施形態では、異常検知装置7をアナログ回路で構成しているが、異常検知装置7の一部又は全部をデジタル回路で構成してもよい。例えば、位置信号Py(t)をADC(Analog to Digital Converter)でデジタル化した信号を、ソフトウエア(プログラム)により処理を行ってもよい。この場合、異常検知装置7として、汎用的なプロセッサを用いることができる。この汎用的なプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、プログラマブルロジックデバイス(PLD:Programmable Logic Device)、専用電気回路等が含まれる。プロセッサが検出処理及び判定処理を行う。
【0097】
また、上記実施形態では、2つの軸周りに揺動可能なミラーを有するマイクロミラーデバイスを用いているが、マイクロミラーデバイスは、1つの軸周りに揺動可能なミラーを有するものであってもよい。すなわち、マイクロミラーデバイスは、少なくとも1つの軸周りに揺動可能なミラーと、ミラーを揺動させるアクチュエータとを含むものであればよい。また、検出装置は、入射光の二次元的な位置を検出するものに限られず、入射光の一次元的な位置を検出するものであってもよい。
【0098】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0099】
2 光走査装置
3 光源
4 マイクロミラーデバイス(MMD)
5 制御装置
6 角度検出装置
7,7A 異常検知装置
10 光走査システム
20 可動ミラー
20A 反射面
20B 裏面
21 第1アクチュエータ
21A 第1可動部
21B 第2可動部
22 第2アクチュエータ
22A 第1可動部
22B 第2可動部
23 支持枠
24 第1支持部
25 第2支持部
26 接続部
27 固定部
30 光照射装置
31 光偏向部材
31A 反射面
32 検出装置
32A 受光面
33 コリメートレンズ
34 集光レンズ
40 検出部
41,41A 判定部
42 遅延回路
43 差動増幅回路
50 評価用光源
51 コリメートレンズ
52,53 レンズ
54 位置検出素子
AX 光軸
LE 評価用レーザ光
La レーザ光
Lb 照明光
N 法線