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特開2023-164021重合体、硬化性重合体、架橋剤、重合体の製造方法及びノルボルネン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164021
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】重合体、硬化性重合体、架橋剤、重合体の製造方法及びノルボルネン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/06 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
C08G61/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075315
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼田 司
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和美
(72)【発明者】
【氏名】森澤 義富
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032CA34
4J032CB01
4J032CB04
4J032CC03
4J032CD02
4J032CE03
4J032CF05
4J032CG07
(57)【要約】
【課題】高周波条件における誘電正接が小さい重合体を提供する。
【解決手段】下記式(a)で表される繰返し単位を含む重合体。式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、Rは、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、m及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、mが2、mが0、かつRが水素原子である場合、前記ビニル基の置換位置はo位又はm位である。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(a)で表される繰返し単位を含む重合体。
【化1】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、
が2、mが0、かつRが水素原子である場合、前記ビニル基の置換位置はo位又はm位である。)
【請求項2】
前記式(a)において、前記Rは水素原子又はビニルフェニル基であり、前記m及び前記mが共に0である、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
下記式(a)で表される繰返し単位を含む重合体からなり、
数平均分子量が1000~20000である、硬化性重合体。
【化2】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、
が2、mが0、かつRが水素原子である場合、前記ビニル基の置換位置はo位又はm位である。)
【請求項4】
前記重合体が共重合体である、請求項3に記載の硬化性重合体。
【請求項5】
プリプレグ、金属張積層板、又は配線基板の製造に用いられる樹脂組成物に含まれる、請求項3に記載の硬化性重合体。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の硬化性重合体と、他の架橋剤と、を含む樹脂組成物。
【請求項7】
下記式(a)’で表される構造を含む重合体からなる架橋剤。
【化3】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、
が2、mが0、かつRが水素原子である場合、前記ビニル基の置換位置はo位又はm位であり、
xは1~20の整数である。)
【請求項8】
前記式(a)’において、前記Rは水素原子又はビニルフェニル基であり、前記m及び前記mが共に0である、請求項7に記載の架橋剤。
【請求項9】
前記重合体が、前記式(a)’で表される構造からなる単独重合体である、請求項7に記載の架橋剤。
【請求項10】
プリプレグ、金属張積層板、又は配線基板の製造に用いられる樹脂組成物に含まれる、請求項7に記載の架橋剤。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか1項に記載の架橋剤と、他の硬化性重合体と、を含む樹脂組成物。
【請求項12】
金属-カルベン錯体触媒の存在下、下記式(1)で表されるノルボルネン誘導体を重合させる、下記式(a)で表される繰返し単位を含む重合体の製造方法。
【化4】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2である。)
【請求項13】
前記式(a)において、前記Rは水素原子又はビニルフェニル基であり、前記m及び前記mが共に0である、請求項12に記載の重合体の製造方法。
【請求項14】
下記式(1)で表されるノルボルネン誘導体を付加重合させる、下記式(b)で表される繰返し単位を含む重合体の製造方法。
【化5】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2である。)
【請求項15】
前記式(b)において、前記Rは水素原子又はビニルフェニル基であり、前記m及び前記mが共に0である、請求項14に記載の重合体の製造方法。
【請求項16】
下記式(1)で表されるノルボルネン誘導体。
【化6】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、
が2、mが0、かつRが水素原子である場合、前記ビニル基の置換位置はo位又はm位である。)
【請求項17】
前記式(1)において、前記Rが水素原子又はビニルフェニル基であり、前記m及びmが共に0である、請求項16に記載のノルボルネン誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノルボルネン誘導体の重合体、並びに、かかる重合体からなる、硬化性重合体及び架橋剤に関する。また、ノルボルネン誘導体の重合体の製造方法及びノルボルネン誘導体である新規化合物にも関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムの進化に伴い、通信の高速化、大容量化が急激に進み、信号の高周波化が進んでいる。特に第5世代移動通信システム(5G)の普及による高速通信、大容量通信の需要の増加に伴って、電気機器や電子機器等に用いられる配線基板には、高周波領域での伝送損失の低減が求められる。
【0003】
配線基板は、プリプレグを一対の金属箔で挟んで加熱加圧された金属張積層板に配線等の導体パターンが形成されたものである。金属張積層板の例は、金属箔が銅である銅張積層板(Copper Clad Laminate、CCL)が挙げられる。また、プリプレグとは、繊維基材、樹脂及びフィラーとも呼ばれる無機充填材等を含む基材である。
【0004】
伝送損失には、主に金属箔の表面抵抗に起因する導体損失と、コンポジット基材であるプリプレグの加熱加圧物の誘電正接(D)に起因する誘電損失とがある。
一般的に、誘電正接(D)は周波数に依存し、同じ材料であれば、周波数が高くなる程、誘電正接(D)が大きくなる傾向がある。そこで、プリプレグを構成する樹脂そのものの、高周波条件における誘電正接(D)を低くすることも重要である。
【0005】
このような要求に対し、特許文献1には、低誘電損失、高いガラス転移温度(Tg)及び絶縁信頼性を兼ね備えた樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2020/059562号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、従来の樹脂組成物を構成する樹脂は、極性基によって誘電特性を悪化させている可能性が考えられ、さらなる低誘電損失の実現が望まれる。上記は、樹脂組成物を構成する樹脂のみならず、架橋剤についても同様のことが言える。
【0008】
そこで本発明では、高周波条件における誘電正接が小さい重合体とその製造方法を提供することを目的とする。また、上記重合体からなる、硬化性重合体及び架橋剤、並びに、上記重合体のモノマーとなる化合物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に対し、(1)極性基を排除した炭化水素骨格、すなわち、低極性や基材との相溶性、(2)シクロペンタン環導入による架橋構造の運動性制御、すなわち、主鎖軸回転抑制や機械物性向上、(3)高い反応性を有する架橋性官能基の導入、すなわち、高密度架橋や主鎖軸回転抑制、及び(4)連鎖移動剤による重合度制御による高密度架橋といった観点から検討を進めた。その結果、特定のノルボルネン誘導体をモノマーとし、ノルボルネン部分を開環重合することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
[1] 下記式(a)で表される繰返し単位を含む重合体。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、
が2、mが0、かつRが水素原子である場合、前記ビニル基の置換位置はo位又はm位である。)
【0013】
[2] 前記式(a)において、前記Rは水素原子又はビニルフェニル基であり、前記m及び前記mが共に0である、前記[1]に記載の重合体。
【0014】
[3] 下記式(a)で表される繰返し単位を含む重合体からなり、数平均分子量が1000~20000である、硬化性重合体。
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、
が2、mが0、かつRが水素原子である場合、前記ビニル基の置換位置はo位又はm位である。)
【0017】
[4] 前記重合体が共重合体である、前記[3]に記載の硬化性重合体。
[5] プリプレグ、金属張積層板、又は配線基板の製造に用いられる樹脂組成物に含まれる、前記[3]に記載の硬化性重合体。
[5]’ プリプレグ、金属張積層板、又は配線基板の製造に用いられる樹脂組成物に含まれる、前記[3]又は[4]に記載の硬化性重合体。
[6] 前記[3]~[5]のいずれか1に記載の硬化性重合体と、他の架橋剤と、を含む樹脂組成物。
[6]’ 前記[3]、[4]又は[5]’に記載の硬化性重合体と、他の架橋剤と、を含む樹脂組成物。
【0018】
[7] 下記式(a)’で表される構造を含む重合体からなる架橋剤。
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、
が2、mが0、かつRが水素原子である場合、前記ビニル基の置換位置はo位又はm位であり、
xは1~20の整数である。)
【0021】
[8] 前記式(a)’において、前記Rは水素原子又はビニルフェニル基であり、前記m及び前記mが共に0である、前記[7]に記載の架橋剤。
【0022】
[9] 前記重合体が、前記式(a)’で表される構造からなる単独重合体である、前記[7]に記載の架橋剤。
[9]’ 前記重合体が、前記式(a)’で表される構造からなる単独重合体である、前記[7]又は[8]に記載の架橋剤。
[10] プリプレグ、金属張積層板、又は配線基板の製造に用いられる樹脂組成物に含まれる、前記[7]に記載の架橋剤。
[10]’ プリプレグ、金属張積層板、又は配線基板の製造に用いられる樹脂組成物に含まれる、前記[7]、[8]又は[9]’に記載の架橋剤。
[11] 前記[7]~[10]のいずれか1に記載の架橋剤と、他の硬化性重合体と、を含む樹脂組成物。
[11]’ 前記[7]、[8]、[9]’又は[10]’に記載の架橋剤と、他の硬化性重合体と、を含む樹脂組成物。
【0023】
[12] 金属-カルベン錯体触媒の存在下、下記式(1)で表されるノルボルネン誘導体を重合させる、下記式(a)で表される繰返し単位を含む重合体の製造方法。
【0024】
【化4】
【0025】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2である。)
【0026】
[13] 前記式(a)において、前記Rは水素原子又はビニルフェニル基であり、前記m及び前記mが共に0である、前記[12]に記載の重合体の製造方法。
【0027】
[14] 下記式(1)で表されるノルボルネン誘導体を付加重合させる、下記式(b)で表される繰返し単位を含む重合体の製造方法。
【0028】
【化5】
【0029】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2である。)
【0030】
[15] 前記式(b)において、前記Rは水素原子又はビニルフェニル基であり、前記m及び前記mが共に0である、前記[14]に記載の重合体の製造方法。
【0031】
[16] 下記式(1)で表されるノルボルネン誘導体。
【0032】
【化6】
【0033】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、
が2であり、mが0であり、かつRが水素原子である場合、前記ビニル基の置換位置はo位又はm位である。)
【0034】
[17] 前記式(1)において、Rが水素原子又はビニルフェニル基、mが0、かつmが0である、前記[13]に記載のノルボルネン誘導体。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る重合体は、高周波条件における誘電正接が小さい。そのため、プリプレグや金属張積層板、配線基板等の製造に用いられる樹脂組成物として非常に有用である。重合体は、上記樹脂組成物における硬化性重合体としても架橋剤としても有用であり、架橋剤として用いる場合には、揮発性の低さといったさらなる効果も期待される。
また、本発明に係るノルボルネン誘導体は、上記重合体のモノマーとして非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。
本明細書において、炭化水素基の炭素数とは、ある炭化水素基全体に含まれる炭素原子の総数を意味し、該基が置換基を有さない場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数を、該基が置換基を有する場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数に置換基中の炭素原子の数を加えた総数を表す。
本明細書において、「配線基板」は、多層配線基板を含む。
本明細書において、「高周波領域」は、周波数1GHz以上の領域を意味する。
本明細書において、特に明記しない限り、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0037】
<重合体>
本実施形態に係る重合体は、下記式(a)で表される繰返し単位を含む。
【0038】
【化7】
【0039】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、
が2、mが0、かつRが水素原子である場合、前記ビニル基の置換位置はo位又はm位である。)
【0040】
式(a)において、Rは、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、水素原子又はビニルフェニル基が合成容易性、原料入手性の観点から好ましい。式(a)中のビニルフェニル基におけるビニル基の置換位置は任意である。ただし、mが2、mが0、かつRが水素原子である場合、ビニル基の置換位置はo位又はm位である。
【0041】
炭素数1~20のアルキル基が有していてもよい置換基は、エイコシル基、オクタデシル基、ヘキサデシル基、ペンタデシル基、ドデシル基、デシル基、オクチル基、ブチル基、プロピル基、エチル基、メチル基等が挙げられ、ブチル基、エチル基、メチル基が好ましい。
炭素数1~20のアルキル基の炭素数は、合成容易性の観点から2以上が好ましく、8以上がより好ましい。また、誘電正接(D)の低減効果および合成容易性の観点から炭素数は18以下がより好ましい。またアルキル基は直鎖状でも分岐していてもよい。
【0042】
式(a)において、m及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、mは0又は1が好ましい。また、Rがビニルフェニル基である場合、mとmとは同じであり、式(a)が対称性を有することが、合成容易性、原料入手性の観点から好ましく、mとmが共に0であることがより好ましい。
【0043】
式(a)で表される繰り返し単位は、例えば下記が好ましい。
【0044】
【化8】
【0045】
式(a)で表される繰り返し単位は、例えば下記がより好ましい。
【0046】
【化9】
【0047】
また、式(a)で表される繰り返し単位は、Rが水素原子又はビニルフェニル基、mが0、かつmが0で表される下記も好ましく、ビニル基の置換位置はm位又はp位がより好ましい。Rがビニルフェニル基である場合、2つのビニル基の置換位置は同じであっても異なっていてもよいが、ビニル基の架橋反応性の点から、同じ置換位置であることが好ましい。
【0048】
【化10】
【0049】
<硬化性重合体>
本実施形態に係る硬化性重合体は、上記<重合体>における式(a)で表される繰返し単位を含む重合体からなり、数平均分子量が1000~20000である。
式(a)で表される繰返し単位の好ましい態様も、上記<重合体>に記載した式(a)で表される繰返し単位の好ましい態様と同様である。
【0050】
硬化性重合体の数平均分子量は1000~20000であるが、重合体の生産性の観点から、2000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。また、数平均分子量は、樹脂の成型性の観点から、15000以下が好ましく、10000以下がより好ましい。
なお、硬化性重合体の数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションンクロマトグラフィー(GPC)装置を用いて、移動相としてテトラヒドロフラン、標準ポリマーとしてポリスチレンを用いて測定される値である。
【0051】
硬化性重合体は、例えば、プリプレグ、金属張積層板、又は配線基板の製造に用いられる樹脂組成物におけるベース樹脂として用いられる場合、硬化収縮による割れ発生を抑制して成形性を向上できる点から、共重合体が好ましい。ただし、ベース樹脂として用いられる場合に、硬化性重合体を単独重合体とすることを何ら排除するものではない。
【0052】
共重合体である場合、式(a)で表される繰返し単位以外の繰り返し単位となるモノマーは、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、シクロブテン、シクロブテン誘導体、シクロペンテン、シクロペンテン誘導体、シクロオクテン、シクロオクテン誘導体、ジシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、7-オキサノルボルネン、7-オキサノルボルネン誘導体、ベンゾノルボルナジエン、アセナフチレン等が好ましい。
ノルボルネン又はその誘導体をモノマーとする繰り返し単位は、例えば下記式(b)で表される。
【0053】
【化11】
【0054】
式(b)中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基が挙げられる。
炭素数1~20のアルキルが有していてもよい置換基とは、例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基等が挙げられる。
、Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基が原料の入手性の点から好ましく、R及びRが共に水素原子がより好ましい。
【0055】
式(a)で表される繰返し単位以外の繰り返し単位となるモノマーがシクロブテン、シクロブテン誘導体、シクロペンテン、シクロペンテン誘導体、シクロオクテン、シクロオクテン誘導体である場合には、重合反応性の観点から、シクロブテン、シクロブテン誘導体、シクロオクテン、シクロオクテン誘導体が好ましく、シクロブテン誘導体がより好ましい。
【0056】
硬化性重合体が共重合体である場合、その配列には特に限定されない。すなわち、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。中でも、重合操作の容易性の観点から、ランダム共重合体が好ましい。
【0057】
硬化性重合体における、式(a)で表される繰返し単位の割合は、{(式(a)で表される繰返し単位数)/(式(a)で表される繰返し単位数+他の繰り返し単位数)×100%}で表される値が、耐熱性の観点から1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましい。また、硬化性重合体がホモポリマーである場合、上記値は本来100%となるが、スチリル基の一部が重合することがある。その際でも、上記値は、成型性向上の観点から、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。硬化性重合体は共重合体である場合、上記値は、積層体としたときの層間ピール強度の観点から、95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。
【0058】
本実施形態に係る硬化性重合体は、極性基を有さない炭化水素骨格を有することから、極性が小さい。また、シクロペンタン環の存在により、主鎖分子運動の運動性が制御されることで、機械物性が向上する。さらに、高い反応性を有する架橋性官能基となるビニルフェニル基の存在により、架橋剤を有さない場合であっても、高架橋密度を実現し得る。
そのため、本実施形態に係る硬化性重合体は、プリプレグ、金属張積層板、又は配線基板の製造に用いられる樹脂組成物に含まれることが好ましい。ただし、上記硬化性重合体の用途をこれらに限定するものではない。
【0059】
上記の樹脂組成物は、本実施形態に係る硬化性重合体のみでも、式(a)で表される繰返し単位のビニルフェニル基の存在により架橋できるが、機械物性、耐熱性向上の観点から、他の架橋剤をさらに含むことが好ましい。
【0060】
他の架橋剤は、従来公知のものを使用できる。例えば、変性ポリフェニレンエーテルと反応して硬化させる架橋剤等が挙げられる。変性ポリフェニレンエーテルと反応して硬化させる架橋剤は、通常、変性ポリフェニレンエーテルとの反応に寄与する官能基を1分子中に1個以上有する化合物である。そのため、変性ポリフェニレンエーテルと効率よく反応でき、樹脂組成物の高いガラス転移温度及び密着性を確保できる。
また、後述する式(a)’で表される構造を含む重合体からなる架橋剤を用いてもよい。
【0061】
樹脂組成物における、本実施形態に係る硬化性重合体の割合は、誘電特性の観点から、3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、100質量%、すなわち樹脂組成物が架橋剤等の他の成分を含まず、硬化性重合体のみからなってもよい。また、誘電特性、耐熱性の観点からは、硬化性重合体の割合は97質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。
【0062】
樹脂組成物は、硬化性重合体や任意での架橋剤に加え、他の任意の成分を含有してもよい。他の任意の成分は、充填材、難燃剤、消泡剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、分散剤等が挙げられる。これらは、従来公知のものを、従来公知の割合で使用できるが、機械特性や難燃性の観点から、充填材、難燃剤を含むことが好ましい。また、樹脂組成物を製造する際には、重合開始剤や溶媒を用いてもよい。
【0063】
樹脂組成物が本実施形態に係る硬化性重合体を含むことにより、高周波条件における誘電正接Dを低減できる。
例えば、樹脂組成物の周波数10GHzにおける誘電正接Dは、0.01以下が好ましく、0.005以下がより好ましく、0.004以下がさらに好ましく、0.003以下が特に好ましく、小さいほど好ましい。上記誘電正接Dの下限は特に制限されないが、例えば0.0001以上である。
なお、本明細書における周波数10GHzにおける誘電正接Dは、室温で、ベクトルネットワークアナライザを用いたスプリットポスト誘電体共振法(Split-Post Dielectric Resonator Techniques、SPDR法)により測定される値である。
【0064】
樹脂組成物の周波数10GHzにおける比誘電率Dは、3.0以下が好ましく、2.8以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましく、小さいほど好ましい。上記比誘電率Dの下限は特に限定されないが、例えば2.0以上である。
なお、本明細書における周波数10GHzにおける比誘電率Dは、室温で、ベクトルネットワークアナライザを用いたSPDR法により測定される値である。
【0065】
樹脂組成物のガラス転移温度Tgは、配線基板の信頼性確保の観点から150℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。また、ガラス転移温度Tgの上限は特に限定されないが、例えば300℃以下である。
なお、本明細書におけるガラス転移温度Tgは、動的粘弾性測定装置を用い、周波数10Hz、昇温速度2℃/min、温度範囲25~300℃の条件で動的粘弾性測定(DMA)を行うことにより得られる値である。
【0066】
樹脂組成物の熱膨張係数CTEは、70ppm/℃以下が好ましく、60ppm/℃以下がより好ましく、小さいほど好ましい。また、上記熱膨張係数CTEの下限は特に限定されないが、例えば1ppm/℃以上である。
なお、本明細書における熱膨張係数CTEは、昇温速度5℃/min、温度範囲-50~340℃の条件で熱機械分析装置を用いた測定により得られる値である。
【0067】
<架橋剤>
本実施形態に係る架橋剤は、下記式(a)’で表される構造を含む重合体からなる。
【0068】
【化12】
【0069】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、
が2、mが0、かつRが水素原子である場合、前記ビニル基の置換位置はo位又はm位である
xは1~20の整数である。)
【0070】
式(a)’で表される構造において、R、m及びmの好ましい態様は、上記<重合体>に記載した式(a)で表される繰返し単位におけるR、m及びmの好ましい態様と、それぞれ同様である。
【0071】
式(a)’中、xで表される繰り返し単位は、1~20の整数であるが、誘電特性、機械物性、架橋剤の沸点の観点から、xは2以上がより好ましい。また、硬化性重合体への相溶性の観点から、xは15以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0072】
架橋剤は、例えば、プリプレグ、金属張積層板、又は配線基板の製造に用いられる樹脂組成物に用いられる場合、誘電特性、機械物性の点から、上記式(a)’で表される構造からなる単独重合体、すなわちホモポリマーが好ましい。ただし、架橋剤が、上記式(a)’で表される構造を含む共重合体であることを何ら排除するものではない。共重合体である場合には、式(a)’で表される構造以外に、例えば、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、ジシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、7-オキサノルボルネン、7-オキサノルボルネン誘導体、ベンゾノルボルナジエン、アセナフチレン等をモノマーとする繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0073】
本実施形態に係る架橋剤は、極性基を有さない炭化水素骨格を有することから、極性が小さく、基材との相溶性も良好である。また、シクロペンタン環の存在により、架橋構造の運動性が制御されることで、機械物性が向上する。さらに、高い反応性を有する架橋性官能基となるビニルフェニル基の存在により、高密度架橋を実現できる。また、連鎖移動剤による重合度も良好に制御でき、それに伴い、沸点等の物性も調整し得る。
そのため、本実施形態に係る架橋剤は、プリプレグ、金属張積層板、又は配線基板の製造に用いられる樹脂組成物に含まれることが好ましい。ただし、上記架橋剤の用途をこれらに限定するものではない。
【0074】
上記の樹脂組成物は、本実施形態に係る架橋剤のみでも、式(a)’で表される構造のxの値によっては、硬化性重合体としての役目を兼ねられるが、機械物性向上の観点から、他の硬化性重合体をさらに含むことが好ましい。
【0075】
他の硬化性重合体は、本実施形態に係る架橋剤と架橋し得る2つ以上の架橋性官能基を有していれば、従来公知のものを使用できる。硬化性重合体は、熱硬化性でも活性エネルギー線硬化性でもよい。活性エネルギー線硬化性は、紫外線および電子線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する性質を有する。プリプレグ、金属張積層板、又は配線基板の製造に用いられる樹脂組成物の場合には、熱硬化性重合体が好ましい。
【0076】
他の硬化性重合体は、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、炭化水素エラストマー、ベンゾオキサジン樹脂、活性エステル樹脂、シアネートエステル樹脂、ブタジエン樹脂、水添または非水添スチレンブタジエン樹脂、ビニル系樹脂、シクロオレフィンポリマー、芳香族重合体、ジビニル芳香族重合体およびこれらの組合せ等が挙げられる。
【0077】
プリプレグ、金属張積層板、又は配線基板の製造に用いられる樹脂組成物の場合には、他の硬化性重合体として、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)を含むことが好ましい。なお、本明細書におけるポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)とは、特に明記しない限り、非変性ポリフェニレンエーテル樹脂および変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む概念である。
他の硬化性重合体として、上記<硬化性重合体>に記載した、式(a)で表される繰返し単位を含む重合体からなり、数平均分子量が1000~20000である、硬化性重合体を用いてもよい。なお、他の硬化性重合体として、上記<硬化性重合体>に記載した、式(a)で表される繰返し単位を含む重合体からなる硬化性重合体を用いる場合には、数平均分子量が上記範囲外であってもよい。すなわち、数平均分子量は1000未満であってもよいし、20000超であってもよい。例えば数平均分子量は300以上が好ましく、400以上がより好ましく、500以上がさらに好ましく、また、100000以下が好ましい。
【0078】
樹脂組成物における、本実施形態に係る架橋剤の割合は、誘電特性、機械物性の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、架橋剤の割合は、100質量%、すなわち樹脂組成物が硬化性重合体も兼ねて他の成分を含まなくてもよいが、硬化性樹脂組成物の流動性の観点からは、架橋剤の割合は70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0079】
樹脂組成物は、架橋剤や任意での硬化性重合体に加え、他の任意の成分を含有してもよい。他の任意の成分は、上記<硬化性重合体>に記載した樹脂組成物における他の任意の成分と同様である。
【0080】
樹脂組成物が本実施形態に係る架橋剤を含むことにより、高周波条件における誘電特性を良好にできる。
樹脂組成物の誘電正接D、比誘電率D、ガラス転移温度Tg、熱膨張係数CTEの好ましい態様は、上記<硬化性重合体>に記載した樹脂組成物の誘電正接D、比誘電率D、ガラス転移温度Tg、熱膨張係数CTEの好ましい態様と、それぞれ同様である。
【0081】
<プリプレグ、金属張積層板、配線基板>
本実施形態に係る硬化性重合体を含む樹脂組成物や、本実施形態に係る架橋剤を含む樹脂組成物が製造に用いられるプリプレグ、金属張積層板、配線基板は、いずれも従来公知のものを使用できる。
プリプレグは、硬化性組成物を、無機繊維、有機繊維又はこれらの組み合わせからなる繊維基材に含浸させ、熱硬化等により(半)硬化させることで製造できる。この硬化性組成物を(半)硬化させたものが、本実施形態における樹脂組成物である。
上記には、必要に応じて無機充填材等の添加剤を含んでもよい。
なお、本明細書における(半)硬化物とは、半硬化物と硬化物の総称である。半硬化物とはF層を示査走査熱分析測定した際に、HCポリマーの硬化に伴う発熱ピークが現れる状態にある硬化物を意味する。すなわち、半硬化物とは、F層中に未硬化のHCポリマーが残存している状態、いわゆるBステージの状態を意味する。
硬化物とは、硬化性組成物を、例えば170~220℃で60~150分間加熱して得られる。また、半硬化物とは、硬化性組成物を、例えば80~180℃で1~10分間加熱して得られる。
【0082】
金属張積層板および配線基板等の用途では、得られるプリプレグ中の樹脂含有量が40~80質量%の範囲内となるように、樹脂組成物の組成や硬化条件を調整することが好ましい。
【0083】
金属張積層板とは、本実施形態に係る樹脂組成物を含む絶縁層と、金属箔とを含む。金属箔は従来公知のものを使用でき、支持するためのキャリア金属箔を含んでいたり、表面に金属メッキ層を有したり、表面処理が施されていてもよい。また、片面金属張積層板でも両面金属張積層板でもよい。また、その他の層として、接着層等を有していてもよい。
絶縁層は、好ましくは、上記プリプレグの加熱加圧物からなる。加熱加圧条件は特に限定されない。
【0084】
配線基板とは、本実施形態に係る樹脂組成物を含む絶縁層と、配線とを含む。配線基板は、上記金属張積層板の最表面にある金属箔を用いて配線等の導体パターン(回路パターン)を形成することで、製造できる。配線等の導体パターンを形成する方法は従来公知の方法を適用できる。
【0085】
<重合体の製造方法>
本実施形態に係る重合体の製造方法は、製造方法Iとして、上記<重合体>に記載した重合体の製造方法、すなわち、下記式(a)で表される繰返し単位を含む重合体の製造方法である。また、製造方法IIとして、下記式(b)で表される繰り返し単位を含む重合体の製造方法である。
【0086】
【化13】
【0087】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2である。)
【0088】
製造方法Iは、金属-カルベン錯体触媒の存在下、下記式(1)で表されるノルボルネン誘導体を重合させる工程を含む。
製造方法IIは、下記式(1)で表されるノルボルネン誘導体を付加重合させる工程を含む。
上記製造方法I、製造方法IIは、重合させる工程又は付加重合させる工程の前に、下記式(1)で表されるノルボルネン誘導体を得る工程をさらに含んでいてもよい。
【0089】
【化14】
【0090】
(式中、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、
及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2である。)
【0091】
(ノルボルネン誘導体を得る工程)
原料モノマーとなる式(1)で表されるノルボルネン誘導体を得る方法の一例を下記に示す。
【0092】
【化15】
【0093】
上記スキームにおいて、式(1b)中、Haとはハロゲン原子、トリフリルオキシ基、トシルオキシ基を表し、mは0、1又は2である。また、式(1)のビニル基に相当するカルボニル基の置換位置は、o位、m位又はp位である。
式(1c)中、Zはカリウムトリフルオロボリル基または、BR1011で表される基であり、Rは、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、mは0、1又は2である。R10とR11はそれぞれ独立して、水酸基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基からなる群から選ばれ、R10とR11が互いに結合して環を形成してもよい。
ただし、式(1b)におけるmが2であり、式(1c)におけるmが0かつRが水素原子である場合、式(1b)におけるカルボニル基の置換位置はo位又はm位である。
式(1a)、式(1b)、式(1c)で表される化合物より最終的に得られる式(1)で表されるノルボルネン誘導体は、ビニル基の置換位置はo位、m位又はp位であり、Rは、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又はビニルフェニル基であり、m及びmはそれぞれ独立して、0、1又は2であり、mが2であり、mが0であり、かつRが水素原子である場合、ビニル基の置換位置はo位又はm位である。
ただし、Rが水素原子、mが0である場合、上記スキームにおける式(1c)で表される有機ホウ素試薬は不要である。
【0094】
式(1b)におけるHaがハロゲン原子であるとき、Cl、Br又はIが好ましく、Br又はIがより好ましく、Iがさらに好ましい。
式(1c)におけるZは、カリウムトリフルオロボリル基、ピナコールボリル基、ジアルキルボリル基、ジヒドロキシボリル基が好ましく、ジヒドロキシボリル基がより好ましい。
、m及びmの好ましい態様は、上記<重合体>におけるR、m及びmの好ましい態様とそれぞれ同様である。
【0095】
上記スキームに示すように、一段目の反応では、式(1a)で表される2,5-ノルボルナジエンと式(1b)で表されるハロベンズアルデヒド類と式(1c)で表される有機ホウ素化合物とを触媒、溶媒、塩基の存在下反応させ、2,5-ノルボルナジエンの2重結合に連続的にカップリングさせることで、式(1d)で表されるアルデヒド中間体が得られる。
次いで二段目の反応としてメチルトリフェニルホスホニウムブロミドなどのホスホニウム塩と塩基を反応させてメチレントリフェニルホスホランを調製して式(1d)で表されるアルデヒド中間体と反応させるWittig反応により、上記式(1)で表されるノルボルネン誘導体が得られる。本工程に適用される反応はWittig反応に限定されることはなく、改良法であるWittig-Horner反応、Horner-Wadsworth-Emmons反応なども同様に使用できる。
【0096】
一段目の反応における触媒はクロスカップリング反応用のパラジウム触媒、ニッケル触媒が挙げられる。
クロスカップリング反応用の触媒の具体例は、例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス[ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]パラジウム(0)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジアセタート、ビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)ジクロリド、[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)ジクロリド、[1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)ジクロリド、ジクロロ[9,9-ジメチル-4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン]パラジウム(II)、[1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)ビス(トリフルオロメタンスルホナート)、パラジウム-炭素、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)、塩化ニッケル(II)六水和物、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケル(II)ジクロリドなどが挙げられる。本触媒は単独で用いてもよく、適切な配位子を共存して使用してもよい。
【0097】
一段目の反応における溶媒は、反応に悪影響を及ぼさない範囲で特に制限はなく、有機溶媒、含フッ素有機溶媒、イオン液体、水等を単独または混合して使用できる。なお、これらの溶媒分子中、一部またはすべての水素原子が重水素原子で置換されていてもよい。
有機溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、o-,m-,p-キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、グライム、ジグライム等のエーテル系溶媒;N,N-ジメチルメタンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒を使用できる。
含フッ素有機溶媒は、例えば、ヘキサフルオロベンゼン、m-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α-トリフルオロメチルベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパンを使用できる。
イオン液体は、例えば、各種ピリジニウム塩、各種イミダゾリウム塩を使用できる。
【0098】
一段目の反応でRが水素原子、mが0である場合においては、還元的なHeck反応を進行させることを目的とした水素源としてギ酸、トリエチルアミン、トリメチルアミン、テトラメチルアミンギ酸塩などを添加できる。
【0099】
なお、一段目の反応では目的物収率向上の点で、上記溶媒は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。上記脱気及び脱水操作は通常触媒と接触させる前に行う。
【0100】
一段目の反応での雰囲気は、特に限定はないが、触媒の長寿命化の点で、不活性気体雰囲気下が好ましく、中でも窒素またはアルゴン雰囲気下が好ましい。
一段目の反応を行う容器は、反応に悪影響を与えない範囲で特に制限はなく、例えば金属製容器またはガラス製容器を使用できる。
一段目の反応温度は、特に制限はないが、通常-100~200℃の範囲で実施でき、反応速度の点で、0~150℃が好ましい。なお、低温では反応が開始せず、高温では錯体の速やかな分解が生じることがあるので、適宜温度の下限と上限を設定する必要がある。通常、用いる溶媒の沸点以下の温度で実施される。
一段目の反応時間は、特に制限はないが、通常1分~48時間の範囲で実施される。
一段目の反応圧力は、特に制限はないが、加圧下でも、常圧下でもよいし、減圧下でもよい。通常0.001~10MPa程度、好ましくは、0.01~1MPa程度である。
また、反応に悪影響を及ぼさない範囲で、一段目の反応混合物は攪拌してもよい。このとき、攪拌の方法は、メカニカルスターラーやマグネティックスターラーを使用できる。
一段目の反応が終了後には、目的物を公知の方法で単離してもよい。単離方法は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィー、リサイクル分取HPLCが挙げられ、必要に応じてこれらを単独または複数組み合わせて使用できる。
【0101】
二段目の反応におけるホスホニウム塩は、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムヨージド、メチルトリフェニルホスホニウムクロリドなどが挙げられる。ホスホニウム塩は公知の方法に従い合成して用いてもよい。
二段目の反応における塩基は、アルキルリチウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水素化ナトリウム、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムジイソプロピルアミドなどが挙げられる。
二段目の反応における溶媒は、反応に悪影響を及ぼさない範囲で特に制限はなく、有機溶媒、含フッ素有機溶媒、イオン液体を単独または混合して使用できる。なお、これらの溶媒分子中、一部またはすべての水素原子が重水素原子で置換されていてもよい。
有機溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、o-,m-,p-キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、グライム、ジグライム等のエーテル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒を使用できる。
含フッ素有機溶媒は、例えば、ヘキサフルオロベンゼン、m-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α-トリフルオロメチルベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパンを使用できる。
イオン液体は、例えば、各種ピリジニウム塩、各種イミダゾリウム塩を使用できる。
【0102】
二段目の反応においても目的物収率向上の点で、上記溶媒は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。前記脱気及び脱水操作は通常触媒と接触させる前に行う。
【0103】
二段目の反応での雰囲気は、特に限定はないが、反応中間体の安定化の点で、不活性気体雰囲気下が好ましく、中でも窒素またはアルゴン雰囲気下が好ましい。
二段目の反応を行う容器は、反応に悪影響を与えない範囲で特に制限はなく、例えば金属製容器またはガラス製容器を使用できる。
二段目の反応温度は、特に制限はないが、通常-100~200℃の範囲で実施でき、反応速度の点で、0~150℃が好ましい。なお、低温では反応が開始せず、高温では中間体の分解が生じることがあるので、適宜温度の下限と上限を設定する必要がある。通常、用いる溶媒の沸点以下の温度で実施される。
二段目の反応時間は、特に制限はないが、通常1分~48時間の範囲で実施される。
二段目の反応圧力は、特に制限はないが、加圧下でも、常圧下でもよいし、減圧下でもよい。通常0.001~10MPa程度、好ましくは、0.01~1MPa程度である。
また、反応に悪影響を及ぼさない範囲で、二段目の反応混合物は攪拌してもよい。このとき、攪拌の方法は、メカニカルスターラーやマグネティックスターラーを使用できる。
二段目の反応が終了後には、目的物を公知の方法で単離してもよい。単離方法は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィー、リサイクル分取HPLCが挙げられ、必要に応じてこれらを単独または複数組み合わせて使用できる。
【0104】
また、化合物(1b)と化合物(1c)について、標的とする分子構造に合わせて適切な部分構造を有する基質を選定することにより、得られる式(1)で表されるノルボルネン誘導体の構造を制御できる。例えば、化合物(1b)に置換するホルミル基の位置は、二段の反応の後に得られる式(1)のノルボルネン誘導体のベンゼン環上のビニル基の位置に反映される。化合物(1c)においても、式(1)のノルボルネン誘導体に導入したいと考える有機基が置換した有機ホウ素試薬を選択することで、所望の基を式(1)のノルボルネン誘導体に導入できる。より具体的には、化合物(1c)がホルミルフェニル基を有する分子構造である場合、ベンゼン環上のホルミル基の置換位置が異なる化合物(1b)と化合物(1c)を基質として選定すれば、二段の反応を経てビニル基の置換位置が異なる2種のビニルフェニル基が導入された式(1)のノルボルネン誘導体を合成できる。
【0105】
式(1)で表されるノルボルネン誘導体は、例えば下記が好ましい。
【0106】
【化16】
【0107】
式(1)で表されるノルボルネン誘導体は、例えば下記がより好ましい。
【0108】
【化17】
【0109】
また、式(1)で表されるノルボルネン誘導体は、Rが水素原子又はビニルフェニル基、mが0、かつmが0で表される下記も好ましく、ビニル基の置換位置はm位又はp位がより好ましい。Rがビニルフェニル基である場合、2つのビニル基の置換位置は同じであっても異なっていてもよいが、合成の容易性の点から、同じ置換位置であることが好ましい。
【0110】
【化18】
【0111】
(製造方法I)
製造方法Iにおける、金属-カルベン錯体触媒の存在下、式(1)で表されるノルボルネン誘導体を重合させる工程について説明する。
重合反応はメタセシス反応による開環重合(開環メタセシス重合、ROMP)により進行する。
金属-カルベン錯体触媒は一般的に[L]M=CAで表され、[L]は配位子、Mはルテニウム、モリブデン又はタングステン、AおよびAはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、またはヘテロ原子を含んでいてもよい一価炭化水素基、をそれぞれ意味する。重合時には幾何異性体(cis体とtrans体)も存在する。
【0112】
反応工程において、モノマーと触媒との反応による反応中間体として、下記に示した化合物のうち少なくともひとつが生成することが考えられる。なお、式中の記号は先述したものとそれぞれ同義である。
【0113】
【化19】
【0114】
上記反応中間体からそれぞれ二量体の化合物が生成され、そこからさらに重合が進んでいくことで重合体が得られる。なお前記二量体にも幾何異性体が存在する。
【0115】
共重合を行う場合には、二種以上のモノマーのうち少なくとも一種が、式(1)で表されるノルボルネン誘導体であればよい。
共重合体の配列は、原料であるモノマーの仕込み比や、重合条件によって所望のものとできる。
【0116】
金属-カルベン錯体触媒は、ルテニウム-カルベン錯体、モリブデン-カルベン錯体、又はタングステン-カルベン錯体が例示できる。金属-カルベン錯体化合物は反応条件下、配位子のいくつかが解離することで触媒活性を示すようになるものと、配位子の解離なしで触媒活性を示すものが知られているが、本実施形態ではいずれを用いてもよい。
これらの触媒のうち中心金属がルテニウムのものは一般的に「ルテニウム-カルベン錯体」と称されるものであり、例えばVougioukalakis,G.C.et al.,Chem.Rev.,2010,110,1746-1787.に記載されているルテニウム-カルベン錯体を利用できる。また、例えばAldrich社やUmicore社から市販されているルテニウム-カルベン錯体を利用できる。
【0117】
ルテニウム-カルベン錯体の具体例は、ビス(トリフェニルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)-3-メチル-2-ブテニリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジイソプロピルイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジシクロヘキシルイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチルイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3-ビス(2-メチルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3-ジシクロヘキシル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)[ビス(3-ブロモピリジン)]ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)(2-イソプロポキシフェニルメチリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)[(トリシクロヘキシルホスホラニル)メチリデン]ジクロロルテニウムテトラフルオロボラート、UmicoreM2、UmicoreM51、UmicoreM52、UmicoreM71SIMes、UmicoreM71SIPr、UmicoreM73SIMes、UmicoreM73SIPr等が挙げられる。中でも、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)(2-イソプロポキシフェニルメチリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)[(トリシクロヘキシルホスホラニル)メチリデン]ジクロロルテニウムテトラフルオロボラート、UmicoreM2、UmicoreM51、UmicoreM52、UmicoreM71SIMes、UmicoreM71SIPr、UmicoreM73SIMes、UmicoreM73SIPrが特に好ましい。なお上記錯体のうち、「Umicore」で始まる名称は、Umicore社の製品の商品名である。
なお、上記ルテニウム-カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
【0118】
これらの触媒のうち中心金属がモリブデン、タングステンであるものは一般的に「モリブデン-カルベン錯体」、「タングステン-カルベン錯体」と称されるものであり、例えばGrela,K.(Ed)Olefin Metathesis:Theory and Practice,Wiley,2014.に記載されているモリブデン-カルベン錯体又はタングステン-カルベン錯体を利用できる。また、例えばAldrich社やStrem社、Ximo社から市販されているモリブデン-カルベン錯体又はタングステン-カルベン錯体も利用できる。
なお、上記モリブデン-カルベン錯体又はタングステン-カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
【0119】
中心金属がモリブデン又はタングステンである触媒の具体例を下記に示す。なお、Meとはメチル基を、i-Prとはイソプロピル基を、t-Buとはターシャリーブチル基を、Phとはフェニル基を、それぞれ意味する。
【0120】
【化20】
【0121】
【化21】
【0122】
一方で、式(1)で表されるノルボルネン誘導体はビニルフェニル基の部位におけるセルフメタセシス反応、すなわちホモ二量化が進行する可能性もある。しかし、一般にセルフメタセシスを含むクロスメタセシスは、ROMPに比べて触媒活性が低い傾向があり、この主たる要因はROMPにおける環ひずみ開放などの駆動力が無いためであると考えられている。このことから式(1)で表されるノルボルネン誘導体は金属-カルベン錯体触媒の種類に因らずのROMPを優先的に進行させられると考えられる。
【0123】
このような触媒の中でも、(1,3-ジメシチル-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、2,6-ジイソプロピルフェニルイミドネオフィリデンモリブデン(VI)ビス(ヘキサフルオロ-t-ブトキシド)等がベンゼン環上のビニル基のセルフメタセシス活性が低い点から好ましい。
【0124】
具体的な手順は、原料となるモノマーを反応容器に投入する。2種以上のモノマーを用いて共重合体とする場合は、反応容器にそれらをあらかじめ混合してから投入しても、別々に投入してもよい。
【0125】
金属-カルベン錯体は試薬として投入しても、系内で発生させてもよい。
試薬として投入する場合、市販の金属-カルベン錯体をそのまま用いてもよく、あるいは市販試薬から公知の方法で合成した市販されていない金属-カルベン錯体を用いてもよい。系内で発生させる場合、公知の方法で前駆体となる金属錯体から調製した金属-カルベン錯体を用いる。
【0126】
金属-カルベン錯体の量は、特に制限定されないが、原料となるモノマーの内、式(1)で表されるノルボルネン誘導体を基準とし、同ノルボルネン誘導体1モルに対し、通常0.000001(1ppm)~1モル程度であり、好ましくは0.00001(10ppm)モル程度以上、また、0.2モル程度以下とする。
【0127】
金属-カルベン錯体は、通常固体のまま反応容器に投入するが、溶媒に溶解又は懸濁させて投入してもよい。この時用いる溶媒は、反応に悪影響を及ぼさない範囲で特に制限はなく、有機溶媒、含フッ素有機溶媒、イオン液体、水等を単独又は混合して使用できる。なお、これらの溶媒分子中、一部又はすべての水素原子が重水素原子で置換されていてもよい。
モノマーが液体である場合は、溶媒を用いずにバルク重合とすることが好ましい。この場合、式(1)で表されるノルボルネン誘導体に金属-カルベン錯体化合物が溶解することが好ましい。なお、モノマーが液体である場合とは、加熱して液化する場合も含む。
【0128】
有機溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、o-,m-,p-キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、グライム、ジグライム等のエーテル系溶媒等を使用できる。
含フッ素有機溶媒は、例えば、ヘキサフルオロベンゼン、m-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α-トリフルオロメチルベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン等を使用できる。
イオン液体は、例えば、各種ピリジニウム塩、各種イミダゾリウム塩等を使用できる。
上記溶媒の中でも、金属-カルベン錯体の溶解性等の点で、ベンゼン、トルエン、o-,m-,p-キシレン、メシチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ジエチルエーテル、ジオキサン、THF、ヘキサフルオロベンゼン、m-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α-トリフルオロメチルベンゼン等、及びこれらの混合物が好ましい。
なお、目的物収率向上の点で、上記溶媒は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。この脱気及び脱水操作は通常金属-カルベン錯体と接触させる前に行う。
【0129】
得られる重合体の分子量や分子量分布の制御の観点から、連鎖移動剤を使用してもよく、例えばオレフィンやジエンが挙げられる。これらは従来公知のものを使用できる。
オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィンまたはこれらのフッ素含有オレフィンを使用できる。さらには、ビニルトリメチルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリイソプロピルシラン等のケイ素含有オレフィンまたはこれらのフッ素およびケイ素含有オレフィン等も連鎖移動剤として使用できる。
ジエンは、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン等の非共役系ジエンまたはこれらのフッ素含有非共役系ジエンが挙げられる。これらオレフィン、フッ素含有オレフィンまたはジエンはそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0130】
モノマーと金属-カルベン錯体を接触させる雰囲気は、特に限定はないが、触媒の長寿命化の点で、不活性気体雰囲気下が好ましく、中でも窒素又はアルゴン雰囲気下が好ましい。ただし、反応条件において気体となる化合物を原料モノマーとして用いる場合、これらの気体雰囲気下で行える。
モノマーと金属-カルベン錯体を接触させる相は、特に制限はないが、反応速度の点で、通常は液相が用いられる。原料となるモノマーが反応条件下で気体の場合、液相で実施するのが難しいため、気-液二相でも実施できる。なお、液相で実施する場合には溶媒を使用できる。このとき用いる溶媒は、上記、金属-カルベン錯体の溶解又は懸濁に用いた溶媒と同様のものを利用できる。なお、原料として用いるモノマーに反応条件下で液体のものが含まれる場合、無溶媒で実施、すなわちバルク重合とできることがある。
【0131】
モノマーと金属-カルベン錯体を接触させる容器は、反応に悪影響を与えない範囲で特に制限はなく、例えば金属製容器又はガラス製容器等を使用できる。なお、反応条件下、気体状態のモノマー化合物を扱う場合には、高気密が可能な耐圧容器が好ましい。
【0132】
モノマーと金属-カルベン錯体を接触させる温度は、特に制限はないが、通常-100~200℃の範囲で実施でき、反応速度の点で、0~150℃が好ましい。なお、低温では反応が開始せず、高温では錯体の速やかな分解が生じることがあるので適宜温度の下限と上限を設定する必要がある。通常、用いる溶媒の沸点以下の温度で実施される。
モノマーと金属-カルベン錯体を接触させる時間は、特に制限はないが、通常1分~48時間の範囲で実施される。
モノマーと金属-カルベン錯体を接触させる圧力は、特に制限はないが、加圧下でも、常圧下でもよいし、減圧下でもよい。通常0.001~10MPa程度であり、好ましくは0.01MPa程度以上であり、また、1MPa程度以下である。
モノマーの仕込み比や、上記反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件を適宜調整することで、得られる重合体の分子量を目的のものとできる。
【0133】
モノマーと金属-カルベン錯体を接触させる際に、反応に悪影響を及ぼさない範囲で無機塩や有機化合物、金属錯体等を共存させてもよい。また、反応に悪影響を及ぼさない範囲で、モノマーと金属-カルベン錯体の混合物を攪拌してもよい。このとき、攪拌の方法は、メカニカルスターラーやマグネティックスターラー等を使用できる。
【0134】
モノマーと金属-カルベン錯体を接触させて重合反応を終えた後、目的物である重合体は公知の方法で単離してもよい。単離方法は、例えば溶液の場合、撹拌下の貧溶媒中に反応溶液を排出し重合体水素化物を沈殿させスラリーとし、濾過法、遠心分離法、デカンテーション法等により回収する方法、反応溶液にスチームを吹き込んで重合体を析出させるスチームストリッピング法、反応溶液から溶媒を加熱等により直接除去する方法等が挙げられる。スラリーの場合には、そのまま濾過法、遠心分離法、デカンテーション法等により回収する方法等が挙げられる。その他、カラムクロマトグラフィー、リサイクル分取HPLC等が挙げられ、必要に応じてこれらを単独又は複数組み合わせて使用できる。
【0135】
(製造方法II)
製造方法IIにおける、式(1)で表されるノルボルネン誘導体を付加重合させる工程について説明する。
付加重合は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合が挙げられ、中でもラジカル重合又は配位重合が好ましい。また、上記(製造方法I)におけるROMPと同様に、式(1)で表されるノルボルネン誘導体のみを用いたホモポリマーとしてもよいし、二種以上のモノマーを原料として共重合を行ってもよい。
【0136】
得られる共重合体は、例えば交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体が合成可能であり、原料であるモノマーの仕込み比や、重合条件によって所望の共重合体を得られる。
【0137】
式(b)で表される繰返し単位を含む重合体の数平均分子量は、重合体の生産性の観点から、2000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。また、樹脂の成型性の観点から、数平均分子量は15000以下が好ましく、10000以下がより好ましい。
【0138】
式(b)で表される繰返し単位を含む重合体は、高光透過性、高耐熱性等といった特性を有し、これら諸特性のバランスにも優れることから、高周波条件における低誘電損失材料、電気・電子材料、半導体材料、光学材料、医療器具・細胞培養材料、撥液材料、エラストマー材料、エアロゲル材料等の分野に利用できる。
【0139】
付加重合の条件については、従来公知の条件を適宜最適化して採用できる。
また、重合反応収量後の単離等も従来公知の方法を適用できる。
【実施例0140】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。また、特に明記しない限り、室温とは25℃程度である。
なお、合成例A-2、合成例B-2及び合成例C-2はノルボルネン誘導体に関する実施例である。重合例A-3、重合例A-4、重合例B-3、重合例C-3は重合体及び架橋剤に関する実施例である。重合例B-4は、重合体及び硬化性重合体に関する実施例である。
【0141】
<市販試薬>
本実施例において、触媒および試薬は、特に記載しない限り、市販品をそのまま反応に用いた。溶媒は、脱水及び脱酸素された市販品を用いた。
【0142】
<評価方法>
(構造)
合成したノルボルネン誘導体の構造は、核磁気共鳴装置(Bruker社製、AVANCE NEO400)を用い、H-NMR測定を行うことで同定した。
【0143】
(物性:評価用サンプルαの作製)
重合体の架橋剤としての物性を評価するための評価用サンプルであるフィルム状硬化物は、下記手順により作製した。なお、他の硬化性重合体として用いた2種類のポリフェニレンエーテルオリゴマーは下記のとおりである。
・SA9000:2官能メタクリル変性PPE(SABIC社製、SA9000)
・OPE-2St:2官能クロロメチルスチレン変性PPE(三菱ガス化学社製、OPE-2St)
SA9000とOPE-2Stの構造は、それぞれ下式で表される。
【0144】
【化22】
【0145】
2官能メタクリル変性PPE(SA9000)又は2官能クロロメチルスチレン変性PPE(OPE-2St)と、各例で合成したノルボルネン誘導体の重合体と、ラジカル重合開始剤としてのジクミルパーオキサイドと、トルエンとを、質量比7:3:0.1:7で混合し、室温で攪拌して、トルエン溶液(硬化性組成物)を調製した。
次に、アプリケータ(ヨシミツ精機社製)を用いて、厚み125μmのポリイミドフィルム上に、上記トルエン溶液を塗布して、厚さ250μmの塗布膜を形成した。
オーブンにて、空気雰囲気下、80℃で30分間加熱乾燥させた後、窒素雰囲気下、200℃で2時間加熱することで、塗布膜を熱架橋反応により熱硬化させて、厚み約100μmの評価用サンプルαとなるフィルム状硬化物を得た。
【0146】
(物性:評価用サンプルβの作製)
重合体の重合性硬化物としての物性を評価するための評価用サンプルであるフィルム状硬化物は、下記手順により作製した。
【0147】
各例で合成したノルボルネン誘導体の重合体、2官能メタクリル変性PPE(SA9000)又は2官能クロロメチルスチレン変性PPE(OPE-2St)と、ラジカル重合開始剤としてのジクミルパーオキサイドと、トルエンとを、質量比7:0.1:7で混合し、室温で攪拌して、トルエン溶液(硬化性組成物)を調製した。
次に、アプリケータ(ヨシミツ精機社製)を用いて、厚み125μmのポリイミドフィルム上に、上記トルエン溶液を塗布して、厚さ250μmの塗布膜を形成した。
オーブンにて、空気雰囲気下、80℃で30分間加熱乾燥させた後、窒素雰囲気下、200℃で2時間加熱することで、塗布膜を熱架橋反応により熱硬化させて、厚み約100μmの評価用サンプルβとなるフィルム状硬化物を得た。
【0148】
(物性:比誘電率D及び誘電正接D
評価用サンプルの10GHzにおける比誘電率D及び誘電正接Dを、室温で、ベクトルネットワークアナライザ(アジレントテクノロジー社製、E8361C)を用い、SPDR法により測定した。
【0149】
(物性:ガラス転移温度Tg)
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製、DVA-200)を用いて、評価用サンプルの動的粘弾性測定(DMA)を行い、ガラス転移温度(Tg)(℃)を測定した。測定は、周波数10Hz、昇温速度2℃/min、温度範囲25~300℃の条件で行った。
(物性:数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mw)
GPC装置(東ソー製)を用いて、下記条件にて数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定した。
(GPC測定条件)
装置:HLC-8320GPC
カラム:TSKgel SuperHZ2000,HZ2500,HZ3000,HZ4000の4本を直列に接続して使用
移動相:テトラヒドロフラン
標準ポリマー:ポリスチレン
【0150】
<合成例A-1:4-(Bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2-yl)benzaldehyde、化合物(1a)の合成>
窒素雰囲気下、200mLの四ツ口フラスコに、N,N-ジメチルホルムアミド(18.0mL)、4-ブロモベンズアルデヒド(10.0g、54.0mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(1.59g、2.27mmol)、2,5-ノルボルナジエン(19.8mL、195mmol)、トリエチルアミン(22.9mL、164mmol)及びギ酸(4.08mL、108mmol)を仕込み、75℃で22時間攪拌した。室温に戻した後、反応混合物にイオン交換水(100mL)とクロロホルム(100mL)を加えて分液した後、有機相を硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濃縮した後、粗物を、移動相をn-ヘキサンとするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、下記式(1a)で表される化合物(1a)を8.35g得た。収率は78%であった。
反応スキーム及び化合物(1a)のNMRによる分析結果は、以下の通りである。スキーム中、Phはフェニル基を、Etはエチル基を、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを、それぞれ示す。
【0151】
【化23】
【0152】
H-NMR(CDCl):δ(ppm)9.98(s,1H,CHO),7.81(d,2H,J=7.68Hz,Ar-H),7.43(d,2H,J=8.54Hz,Ar-H),6.27(dd,1H,J=2.99,5.55Hz,6.20(dd,1H,J=2.99,5.55Hz),3.01(brs,1H),2.95(brs,1H),2.78(dd,1H,J=5.12,8.54Hz),1.78~1.65(m,2H),1.56(d,1H,J=8.54Hz),1.47(d,1H,J=8.54Hz).
【0153】
<合成例A-2:4-(Bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2-yl)styrene、化合物(2a)の合成>
窒素雰囲気下、500mLの四ツ口フラスコに、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(15.9g、44.5mmol)、カリウムtert-ブトキシド(5.61g、50.0mmol)、及びテトラヒドロフラン(81mL)を仕込み、攪拌した。氷冷下で、上記合成例A-1で得られた化合物(1a)(7.34g、37.0mmol)のテトラヒドロフラン(81mL)溶液を16分かけて滴下した。フラスコを室温まで加温し、2.5時間攪拌した。反応混合物に4-tert-ブチルピロカテコール(0.60mg)を加えた後、30℃として減圧下で濃縮した。得られた混合物に水(120mL)とジエチルエーテル(120mL)を加え、抽出した。水相にジエチルエーテル(120mL)を加え再抽出し、有機相を併せた。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した後、減圧下で濃縮して粗混合物を得た。粗混合物にn-ヘキサン(96mL)とジエチルエーテル(24mL)を加え、30分間攪拌した。混合物をろ過して、ろ液を減圧濃縮し、オイル状の粗物を得た。粗物を、移動相をn-ヘキサンとするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、無色液体として下記式(2a)で表される化合物(2a)を6.04g得た。収率は83%であった。
反応スキーム及び化合物(2a)のNMRによる分析結果は、以下の通りである。スキーム中、t-Buとはtert-ブチル基を、THFはテトラヒドロフランを、それぞれ示す。
【0154】
【化24】
【0155】
H-NMR(CDCl):δ(ppm)7.34(d,2H,J=8.54Hz,Ar-H),7.23(d,2H,J=8.54Hz,Ar-H),6.69(dd,1H,J=11.10,17.93Hz),6.25(dd,1H,J=3.42,5.98Hz),6.16(dd,1H,J=3.42,5.98Hz),5.71(d,1H,J=17.93Hz),5.19(d,1H,J=10.24Hz),2.96(brs,1H),2.89(brs,1H),2.70(dd,1H,J=5.12,8.54Hz),1.73(m),1.64(dd,J=8.54,1.71Hz),1.57(d,1H,J=8.54Hz),1.42(d,1H,J=8.54Hz).
【0156】
<重合例A-3:4-(Bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2-yl)styrene、化合物(2a)の重合>
窒素雰囲気下、300mLの四ツ口フラスコに、上記合成例A-2で得られた化合物(2a)(5.40g、27.5mmol)、ジクロロメタン(162mL)、及び1-ヘキセン(3.43mL、27.5mmol)を仕込み、攪拌した。反応液にGrubbs第一世代触媒(226mg、0.275mmol)のジクロロメタン(15mL)溶液を滴下して17時間攪拌した。反応混合物にエチルビニルエーテル(2.63mL)を加えて、30℃で減圧濃縮して粗物を得た。粗物を、移動相をn-ヘキサンとするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、平均重合度mが1.0の、下記式(3a)で表されるオリゴマー(3a)1.97gと、平均重合度mが2.0の、下記式(4a)で表されるオリゴマー(4a)1.37gを得た。
反応スキーム及びオリゴマー(3a)、オリゴマー(4a)のNMRによる分析結果は、は、以下の通りである。スキーム中、n-Buとはn-ブチル基を、Grubbs 1stとはGrubbs第一世代触媒を、それぞれ示す。
【0157】
【化25】
【0158】
(オリゴマー3a、m=1.0)
H-NMR(CDCl):δ(ppm)7.39-7.29(m,2H,Ar-H),7.22-7.08(m,2H,Ar-H),6.69(dd,1H,J=11.10,17.93Hz,Ar-CH=CH),5.97-4.80(m,5H),5.70(d,1H,J=17.93Hz,Ar-CH=CH),5.19(d,1H,J=11.10Hz,Ar-CH=CH),2.96-0.71(m,16H).
(オリゴマー4a、m=2.0)
H-NMR(CDCl):δ(ppm)7.39-7.27(m,4H,Ar-H),7.22-7.01(m,4H,Ar-H),6.74-6.63(m,2H,Ar-CH=CH),6.40-4.78(m,7H),5.70(d,2H,J=17.93Hz,Ar-CH=CH),5.19(d,2H,J=11.10Hz,Ar-CH=CH),3.13-0.73(m,23H).
【0159】
<重合例A-4:4-(Bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2-yl)styrene、化合物(2a)の付加重合>
窒素雰囲気下、トリシクロヘキシルホスフィン(6.98mg、0.024mmol)を6mLスクリュー管瓶に秤取り、トルエン(0.4mL)に溶解させトリシクロヘキシルホスフィン溶液を調製する。次に、パラジウム(II)アセチルアセトナート(7.70mg、0.025mmol)を6mLのスクリュー管瓶に秤取り、トリシクロヘキシルホスフィン溶液を全量加えた後、トルエン(0.1mL)で洗い込み触媒溶液を調製する。次に、上記触媒溶液(30μL)とトルエン(1.47mL)をスクリュー管瓶に秤取り0.001Mの触媒溶液を調製する。上記合成例A-2で得られた化合物(2a)(0.314g、1.60mmol)、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(0.46mg、0.00058mmol)、トルエン(2mL)を6mLスクリュー管瓶に秤取り、先に調製した0.001Mの触媒溶液(0.288mL)を加え70℃で1.5時間反応させる。この反応液をメタノール(20mL)に連続添加した後、析出したポリマーを減圧濾過で回収し、60℃で減圧乾燥することより下記式(5a)で表される重合体(5a)を得る。
反応スキームは、以下の通りである。なお、スキーム中、「acac」とはアセチルアセトナートを、「Cy」とはシクロヘキシル基を、「Me」とはメチル基を、「Ph」とはフェニル基を、それぞれ表す。
【0160】
【化26】
【0161】
<合成例B-1:3-(Bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2-yl)benzaldehyde、化合物(1b)の合成>
素雰囲気下、200mLの四ツ口フラスコに、N,N-ジメチルホルムアミド(18.0mL)、3-ブロモベンズアルデヒド(10.0g、54.0mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(1.59g、2.27mmol)、2,5-ノルボルナジエン(19.8mL、195mmol)、トリエチルアミン(22.9mL、164mmol)及びギ酸(4.08mL、108mmol)を仕込み、75℃で21時間攪拌した。室温に戻した後、反応混合物にイオン交換水(100mL)とクロロホルム(100mL)を加えて分液した後、有機相を硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濃縮した後、粗物を、移動相を酢酸エチル/n-ヘキサン=1:20とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、下記式(1b)で表される化合物(1b)を8.71g得た。収率は81%であった。
反応スキーム及び化合物(1b)のNMRによる分析結果は、以下の通りである。
【0162】
【化27】
【0163】
H-NMR(CDCl):δ(ppm)10.01(s,1H,CHO),7.80(s,1H,Ar-H),7.69(dt,1H,J=1.31,7.51Hz,Ar-H),7.55(d,1H,J=7.75Hz,Ar-H),7.46(t,1H,J=7.63Hz,Ar-H),6.27(dd,1H,J=2.98,5.72Hz),6.19(dd,1H,J=2.98,5.72Hz),3.00(brs,1H),2.95(brs,1H),2.79(dd,1H,J=4.89,8.58Hz),1.78~1.66(m,2H),1.56(d,1H,J=8.70Hz),1.47(dt,1H,J=1.91,8.58Hz).
【0164】
<合成例B-2:3-(Bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2-yl)styrene、化合物(2b)の合成>
窒素雰囲気下、500mLの四ツ口フラスコに、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(17.7g、49.5mmol)、カリウムtert-ブトキシド(6.26g、55.8mmol)、テトラヒドロフラン(90mL)を仕込み、攪拌した。氷冷下で、上記合成例B-1で得られた化合物(1b)(8.71g、43.9mmol)のテトラヒドロフラン(90mL)溶液を18分かけて滴下した。フラスコを室温まで加温し、1.5時間攪拌した。反応混合物に4-tert-ブチルピロカテコール(2.46mg)を加えた後、30℃として減圧下で濃縮した。得られた混合物に水(120mL)とジエチルエーテル(120mL)を加え、抽出した。水相にジエチルエーテル(120mL)を加え再抽出し、有機相を併せた。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した後、減圧下で濃縮して粗混合物を得た。粗混合物にn-ヘキサン(96mL)とジエチルエーテル(24mL)を加え、30分間攪拌した。混合物をろ過して、ろ液を減圧濃縮してオイル状の粗物を得た。粗物を、移動相をn-ヘキサンとしたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、無色液体である、下記式(2b)で表される化合物(2b)を7.66g得た。収率は89%であった。
反応スキーム及び化合物(2b)のNMRによる分析結果は、以下の通りである。
【0165】
【化28】
【0166】
H-NMR(CDCl):δ(ppm)7.30(s,1H,Ar-H),7.28-7.22(m,2H,Ar-H),7.18(dt,1H,J=1.91,6.20Hz,Ar-H),6.71(dd,1H,J=10.97,17.64Hz),6.26(dd,1H,J=3.10,5.60Hz),6.17(dd,1H,J=2.98,5.60Hz),5.74(dd,1H,J=0.95,17.64Hz),5.23(dd,1H,J=0.83,10.85Hz),2.97(brs,1H),2.91(brs,1H),2.71(dd,1H,J=4.77,8.58Hz),1.77-1.72(m,1H),1.67-1.61(m,1H),1.59(d,1H,J=8.58Hz),1.47(dt,1H,J=2.03,8.46Hz).
【0167】
<重合例B-3:3-(Bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2-yl)styrene、化合物(2b)の重合>
窒素雰囲気下、300mLの四ツ口フラスコに、上記合成例B-2で得た化合物(2b)(7.00g、35.7mmol)、ジクロロメタン(162mL)、1-ヘキセン(4.45mL、35.7mmol)及びGrubbs第一世代触媒(147mg、0.179mmol)を仕込み、15時間攪拌した。反応混合物にエチルビニルエーテル(3.41mL)を加えて、30℃で減圧濃縮して粗物を得た。粗物を、移動相をn-ヘキサンとするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、平均重合度mが2.0の、下記式(3b)で表されるオリゴマー(3b)を2.00g得た。
反応スキーム及びオリゴマー(3b)のNMRによる分析結果は、以下の通りである。
【0168】
【化29】
【0169】
(化合物B、m=2.0)
H-NMR(CDCl):δ(ppm)7.34-7.02(m,8H,Ar-H),6.70(dd,2H,J=10.97,17.64Hz,Ar-CH=CH),6.38-4.85(m,7H),5.77-5.70(m,2H,Ar-CH=CH),5.25-5.20(m,2H,Ar-CH=CH),2.93-0.87(m,32H).
【0170】
<重合例B-4:3-(Bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2-yl)styrene、化合物(2b)の重合>
窒素雰囲気下、300mLの四ツ口フラスコに2-ノルボルネン(6.00g)、上記合成例B-2で得た化合物(2b)(1.91g、9.73mmol)、ジクロロメタン(180mL)、1-ヘキセン(605μL、4.85mmol)およびGrubbs第一世代触媒(51.9mg、0.0631mmol)を仕込み、23時間攪拌した。反応混合物にエチルビニルエーテル(6.04mL、63.1mmol)を加えて、30℃で減圧濃縮して粗物を得た。粗物を、移動相をクロロホルム/n-ヘキサン=1:3とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、平均重合度mが1.6、nが13.6で数平均分子量が1700程度の、下記式(4b)で表される共重合体(4b)を6.71g得た。
反応スキーム及び共重合体(4b)のNMRによる分析結果は、以下の通りである。
【0171】
【化30】
【0172】
(共重合体(4b)、m=1.6、n=13,6)
H-NMR(CDCl):δ(ppm)7.26-6.99(m,6.4H,Ar-H),6.73-6.66(m,1.6H),6.40-6.12(m,1.6H),6.84-5.75(m,1.6H),5.75-5.70(m,1.6H),5.46-4.80(m,31.8H),2.89-0.87(m,129H).
GPC分析:Mn:2018、Mw:6197.
【0173】
<合成例C-1:3,3’-(Bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2,3-diyl)dibenzaldehyde、化合物(1c)の合成>
窒素雰囲気下、300mLの四ツ口フラスコに、3-ヨードベンズアルデヒド(10.0g、43.1mmol)、3-ホルミルフェニルボロン酸(7.11g、47.4mmol)、トリフェニルホスフィン(0.679g、2.59mmol)、炭酸カリウム(17.8g、129mmol)、2,5-ノルボルナジエン(16.4mL、156mmol)、テトラヒドロフラン(108mL)及びイオン交換水(108mL)を仕込み、攪拌して溶解させた。混合物に酢酸パラジウム(II)(0.233g、1.04mmol)を加えて60℃で24時間反応させた。室温に戻した後、反応混合物にイオン交換水(50mL)とクロロホルム(100mL)を加えて抽出した。水相にクロロホルム(100mL)を加え再抽出し、有機相を併せた。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した後、減圧下で濃縮して粗混合物を得た。粗混合物を、移動相をクロロホルム/n-ヘキサン=1:1とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した後、クロロホルム/n-ヘキサン=1:2の溶液にて再結晶し、下記式(1c)で表される化合物(1c)を7.86g得た。収率は60%であった。
反応スキーム及び化合物(1c)のNMRによる分析結果は、以下の通りである。スキーム中、Acとはアセチル基を示す。
【0174】
【化31】
【0175】
H-NMR(CDCl):δ(ppm)9.27(s,2H,-CHO),7.43(m,2H,Ar-H),7.41(dm,2H,J=1.43Hz,Ar-H),7.16-7.11(m,4H,Ar-H),6.49(dd,2H,J=1.79,1.91Hz),3.33(d,2H,J=1.67Hz),3.19(dm,2H,J=1.67Hz),2.33(d,1H,J=9.18Hz),1.90(dt,1H,J=1.67,9.18Hz).
【0176】
<合成例C-2:3,3’-(Bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2,3-diyl)distyrene、化合物(2c)の合成>
窒素雰囲気下、500mLの四ツ口フラスコに、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(20.0g、56.0mmol)、カリウムtert-ブトキシド(7.07g、63.0mmol)、テトラヒドロフラン(101mL)を仕込み、攪拌した。氷冷下で、合成例C-1で得られた化合物(1c)(7.50g、24.8mmol)のテトラヒドロフラン(101mL)溶液を19分かけて滴下した。フラスコを室温まで加温し、1時間攪拌した。反応混合物に4-tert-ブチルピロカテコール(2.46mg)を加えた後、30℃として減圧下で濃縮した。得られた混合物にイオン交換水(140mL)とジエチルエーテル(140mL)を加え、抽出した。水相にジエチルエーテル(140mL)を加え再抽出し、有機相を併せた。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した後、減圧下で濃縮して粗混合物を得た。粗混合物にn-ヘキサン(112mL)とジエチルエーテル(28mL)を加え、15分間攪拌した。混合物をろ過して、ろ液を減圧濃縮してオイル状の粗物を得た。粗物を、移動相をn-ヘキサンとするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、無色液体である、下記式(2c)で表される化合物(2c)を7.44g得た。収率は100%であった。
反応スキーム及び化合物(2c)のNMRによる分析結果は、以下の通りである。
【0177】
【化32】
【0178】
H-NMR(CDCl):δ(ppm)6.98-6.92(m,6H,Ar-H),6.78(dm,2H,J=7.27Hz,Ar-H),6.53(dd,2H,J=10.85,17.52Hz),6.44(dm,2H,J=1.79Hz),5.52(dd,2H,J=0.95,17.52Hz),5.10(dd,2H,J=0.83,10.85Hz),3.19(d,2H,J=1.67Hz),3.12(ddm,2H,J=1,67,1.79Hz),2.30(d,1H,J=8.82Hz),1.78(dt,1H,J=1.61,8.82Hz).
【0179】
<重合例C-3:3,3’-(Bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2,3-diyl)distyrene、化合物(2c)の重合>
窒素雰囲気下、300mLの四ツ口フラスコに、上記合成例C-2で得られた化合物(2c)(5.00g、16.8mmol)、ジクロロメタン(150mL)、1-ヘキセン(2.09mL、16.8mmol)およびGrubbs第一世代触媒(69.0mg、0.0838mmol)を仕込み、1時間攪拌した。反応混合物にエチルビニルエーテル(160μL、1.67mmol)を加えて、30℃で減圧濃縮して粗物を得た。粗物を、移動相をn-ヘキサンとするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、平均重合度mが1.0の、下記式(3c)で表されるオリゴマー(3c)を1.87g、mが2.0の、下記式(4c)で表されるオリゴマー(4c)を1.58g得た。
反応スキーム及びオリゴマー(3c)、オリゴマー(4c)のNMRによる分析結果は、以下の通りである。
【0180】
【化33】
【0181】
(オリゴマー(3c)、m=1.0)
H-NMR(CDCl):δ(ppm)7.04-6.93(m,4H,Ar-H),6.84(tm,2H,J=7.15Hz,Ar-H),6.72-6.66(m,2H,Ar-H),6.53(dd,2H,J=10.85,17.52Hz,Ar-CH=CH),5.85(ddd,1H,H=7.39,10.25,17.41Hz),5.52(d,1.6H,J=0.95,17.52Hz,Ar-CH=CH),5.51(d,0.4H,J=0.95,17.52Hz,Ar-CH=CH),5.47-5.28(m,2H),5.10(d,1.6H,J=10.97Hz,Ar-CH=CH),5.09(d,0.4H,J=10.85Hz,Ar-CH=CH),5.00(dm,1H,J=17.05Hz),4.92(d,1H,J=10.25Hz),3.41-3.23(m,2H),3.16-3.01(m,2H),2.46-2.37(m,1H),2.00-1.85(m,2H),1.71-1.49(m,1H),1.43-1.09(m,4H),0.831(td,3H,J=7.03Hz).
(オリゴマー(4c)、m=2.0)
H-NMR(CDCl):δ(ppm)7.05-6.91(m,8H,Ar-H),6.86-6.61(m,8H,Ar-H),6.59-6.44(m,4H,Ar-CH=CH),6.44-6.36(m,0.64H),6.19(d,0.56H,J=15.74Hz),6.03-5.94(m,0.48H),5.91-5.75(m,1H),5.56-5.46(m,4H,Ar-CH=CH),5.42-5.37(m,2H),5.37-5.28(m,0.32H),5.16-4.99(m, 4H,Ar-CH=CH),4.99-4.84(m,2H),3.35-2.85(m,8H),2.51-2.14(m,2H),2.02-1.91(2H,m),1.82-1.48(m,2H),1.31-1.04(m,4H),0.94-0.77(m,3H).
【0182】
<評価1>
重合例A-3で得られたオリゴマー(3a)とオリゴマー(4a)について、他の硬化性重合体としてOPE-2Stを用いて、上記<評価方法>における(物性:評価用サンプルαの作製)に記載の手順に従って評価用サンプルαを作製した。また、ノルボルネン誘導体の重合体を用いなかった以外は同様にした評価用サンプルαも作製した。それらの誘電特性の評価結果を下記表1に示す。
重合例B-3で得られたオリゴマー(3b)について、他の硬化性重合体としてSA9000を用いて、同様に評価用サンプルαを作製した。また、ノルボルネン誘導体の重合体を用いなかった以外は同様にした評価用サンプルαも作製した。それらの誘電特性の評価結果を下記表2に示す。
合成例C-2で得られた化合物(2c)、重合例C-3で得られたオリゴマー(3c)、オリゴマー(4c)について、他の硬化性重合体としてSA9000を用いて、同様に評価用サンプルαを作製した。また、ノルボルネン誘導体の重合体を用いなかった以外は同様にした評価用サンプルαも作製した。それらの誘電特性及びガラス転移温度Tgの評価結果を下記表3に示す。表3中、ガラス転移温度Tgが「-」で示されているのは、得られた評価用サンプルの膜が脆く、測定できなかったことを示す。
【0183】
【表1】
【0184】
【表2】
【0185】
【表3】
【0186】
表1の結果から、本実施形態に係る重合体からなる架橋剤を用いることで、高周波条件における誘電正接Dを効果的に低減できることが分かった。また、重合度によらず同等の性能を発現することが分かった。
表2の結果からも、本実施形態に係る重合体からなる架橋剤を用いることで、高周波条件における誘電正接Dを効果的に低減できることが分かる。表1と表2の結果から、ノルボルネン重合体に置換したベンゼン環上のビニル基の位置が異なっていても、効果的に誘電正接Dを低減できることが分かった。
表3のうち、化合物(2c)の結果からは、スチリル基が複数置換したノルボルネン誘導体が効果的に誘電正接Dを低減できることが分かった。また、コポリマー(3c)、コポリマー(4c)の結果から、化合物(2c)をモノマーとする本実施形態に係る重合体からなる架橋剤を用いても、高周波条件における誘電正接Dを効果的に低減できることが分かる。すなわち、ノルボルネン重合体に置換したスチリル基の置換数が異なっても効果的に誘電正接Dを低減できることが分かった。また、表3ではガラス転移温度Tgも測定したが、これらの結果から、化合物(2c)であっても、コポリマー(3c)、コポリマー(4c)であっても、架橋剤として添加することでガラス転移温度Tgが充分に高い樹脂組成物が得られることが分かった。
【0187】
<評価2>
重合例B-4で得られた共重合体(4b)について、上記<評価方法>における(物性:評価用サンプルβの作製)に記載の手順に従って評価用サンプルβを作製した。また、硬化性重合体として、OPE-2ST又はSA9000を用いた以外は同様にした評価用サンプルβも作製した。それらの誘電特性の評価結果を下記表4に示す。
【0188】
【表4】
【0189】
表4の結果から、本実施形態に係る重合体からなる硬化性重合体は、高周波条件における誘電正接Dを効果的に低減できることが分かった。このことから、スチリルノルボルネンの共重合体が低誘電損失を実現する、樹脂組成物の硬化性重合体、すなわちベース樹脂としても好適であることが分かった。