(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164464
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ロールフィルム、ロールフィルムの製造方法、銅張積層体の製造方法、及びプリント基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20231102BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20231102BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20231102BHJP
B29C 71/02 20060101ALI20231102BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231102BHJP
B65H 23/195 20060101ALI20231102BHJP
B65H 75/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C08J5/18 CEW
B29C48/08
B29C48/88
B29C71/02
B32B27/30 D
B65H23/195
B65H75/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135905
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2020514404の分割
【原出願日】2019-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2018081794
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小寺 省吾
(72)【発明者】
【氏名】笠井 渉
(72)【発明者】
【氏名】中村 順悦
(72)【発明者】
【氏名】八百板 隆俊
(57)【要約】
【課題】銅張積層体に用いたときに、前記銅張積層体から電食試験での安定性に優れたプリント基板が得られる誘電体フィルム及びその製造方法の提供。
【解決手段】イオン捕捉能を発揮する官能基を有するフッ素樹脂を含み、25℃における寸法を基準として150℃で30分間加熱し、その後25℃まで冷却した際のMD及びTD各々の寸法変化率の絶対値が0.1%以下である、銅張積層体用誘電体フィルム。イオン捕捉能を発揮する官能基を有するフッ素樹脂を含む誘電体フィルムに対し、80℃以上300℃以下の温度でアニール処理を行う、銅張積層体用誘電体フィルムの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃における寸法を基準として150℃で30分間加熱し、その後25℃まで冷却した際のMD及びTD各々の寸法変化率の絶対値が1.0%未満である、熱溶融性フッ素樹脂を主成分とする、厚さが1~100μmのロールフィルム。
【請求項2】
前記MDの寸法変化率の絶対値に対する巻き取りにおける張力の比が、100~1000000である、請求項1に記載のロールフィルム。
【請求項3】
銅張樹脂積層体に用いられる、請求項1又は2に記載のロールフィルム。
【請求項4】
前記熱溶融性フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンに由来する単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に由来する単位とを含むフッ素樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載のロールフィルム。
【請求項5】
前記熱溶融性フッ素樹脂が、イオン捕捉能を発揮する官能基を有するフッ素樹脂である、請求項1~4のいずれか1項に記載のロールフィルム。
【請求項6】
イオン捕捉能を発揮する官能基を有する熱溶融性フッ素樹脂と該熱溶融性フッ素樹脂以外の熱溶融性フッ素樹脂とを主成分とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のロールフィルム。
【請求項7】
熱溶融性フッ素樹脂の層とイオン捕捉能を発揮する官能基を有する熱溶融性フッ素樹脂の層とを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のロールフィルム。
【請求項8】
イオン捕捉能を発揮する官能基が、カルボニル基、カルボキシ基、カルボン酸無水物基(-C(=O)-O-C(=O)-)、カルボン酸エステル基、スルフォニル基、スルホ基及びスルフォン酸無水物基(-S(=O)2-O-S(=O)2-)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5~7のいずれか1項に記載のロールフィルム。
【請求項9】
厚さが、3~75μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載のロールフィルム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のロールフィルムの製造方法であって、
熱溶融性フッ素樹脂を主成分とする厚さが1~100μmのフィルムを、前記熱溶融性フッ素樹脂の溶融温度(Tm)より210℃低い温度からTmから20℃低い温度にてアニール処理してから巻き取る、方法。
【請求項11】
前記フィルムにかかる張力を10N/m以下として前記アニール処理をする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記フィルムにかかる張力を500N/m以下として前記フィルムを巻き取る、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載のロールフィルムを巻き出し、巻き出されたフィルムの表面に銅層を形成する、銅張積層体の製造方法。
【請求項14】
交流抵抗値が1.0×10-9Ω・cm超の銅層を形成する、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の製造方法により銅張積層体を製造し、前記銅層をエッチングしてパターン回路を形成する、プリント基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールフィルムと、ロールフィルム、銅張積層体及びプリント基板の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板の用途は、携帯電話、パソコン、自動車、オンラインシステム、人工衛星等、様々な電化製品やシステムに及んでいる。近年、情報の大容量化のため、信号の高周波化や、プリント基板のパターン回路の微細化が進んでいる。
【0003】
プリント基板の製造において、一般に、誘電体フィルムの表面に銅箔を積層した銅張積層体が用いられる。最も簡単な構造の片面基板の製造においては、銅張積層体の銅箔の上に、得ようとする回路パターンをスクリーン印刷又は感光性粘着フィルムの焼き付け及び現像によって形成し、これをエッチングレジストとして銅箔をエッチングする。
両面基板や多層基板の製造においては、層間接続のためにスルーホールめっきが多用されている。スルーホールめっきでは、一般に、パネルめっきと呼ばれる全面めっきで層間接続用の穴内と基板表面を銅めっき膜で被覆する。回路パターンは、銅箔とその上に形成された銅めっき膜を一括エッチングすることで形成される。最近の微細回路基板では、エッチング精度向上のため、厚さ12μm以下の薄銅箔が多用される。中でもライン幅50μm、スペース幅50μm程度のラインアンドスペースパターンのような微細回路の形成では、厚さ5μmの極薄めっき銅箔を用いることで、回路形成時の銅厚を低減し、エッチング精度向上を容易にしている。
スルーホールめっきされたプリント基板には、仕上り状態の評価及び信頼性試験が行われる。仕上り状態の評価は、めっき厚、めっき形状、めっき物性の3項目である。信頼性試験は、温度サイクルによる疲労寿命評価と、電食試験と呼ばれる恒温恒湿バイアス下での絶縁寿命評価が中心となる。電食試験では、くし型パターンを用いたパターン間絶縁信頼性試験が重要な信頼性試験であることが知られている(非特許文献1)。
【0004】
誘電体フィルムとしては、ポリイミドフィルム(特許文献1)、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂及びフッ素樹脂からなる群から選択された少なくとも1種で構成されたフィルム(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4880911号公報
【特許文献2】特開2015-146469号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hajime NAKAYAMA、表面技術 Vol.53、No.2、p.110-115(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電食試験は、スルーホール間やスルーホール-内層パターン間の恒温恒湿バイアス試験であり、めっき膜材や基材、製造状態等のスルーホールめっき部の安定性の総合評価試験として採用される。高精度なプリント基板を製造するためには、誘電特性と電食試験での安定性とに優れた誘電体フィルムが望まれる。しかし、特許文献1のフィルムは、比誘電率が高く、高い伝送性能を発現できない。特許文献2のフィルムは、電食試験での安定性に劣る。
フッ素樹脂フィルムは、誘電特性に優れることが知られている。しかし、そのロールフィルムを用いて製造されるプリント基板は電食試験での安定性が未だ充分ではない点と、その原因がロールフィルムの寸法安定性に起因する点とを、本発明者らは知見している。そのため、フッ素樹脂のロールフィルムを使用して、電食試験で優れた安定性を示すプリント基板を効率よく製造するのが困難である。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、高精度なプリント基板の製造に適した、所定の厚さの寸法安定性に優れたフッ素樹脂のロールフィルムを得た。
本発明の目的は、電食試験での安定性に優れたプリント基板の効率的な製造に適する、フッ素樹脂のロールフィルム及びその製造方法と、前記ロールフィルムを用いた、銅張積層体及びプリント基板の製造方法との提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の〔1〕~〔15〕の構成を有する、ロールフィルム、ロールフィルムの製造方法、銅張積層体の製造方法、及びプリント基板の製造方法を提供する。
[1] 25℃における寸法を基準として150℃で30分間加熱し、その後25℃まで冷却した際のMD及びTD各々の寸法変化率の絶対値が1.0%未満である、熱溶融性フッ素樹脂を主成分とする、厚さが1~100μmのロールフィルム。
[2] 前記MDの寸法変化率の絶対値に対する巻き取りにおける張力の比が、100~1000000である、[1]に記載のロールフィルム。
[3] 銅張樹脂積層体に用いられる、[1]又は[2]に記載のロールフィルム。
[4] 前記熱溶融性フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンに由来する単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に由来する単位とを含むフッ素樹脂である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のロールフィルム。
[5] 前記熱溶融性フッ素樹脂が、イオン捕捉能を発揮する官能基を有するフッ素樹脂である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のロールフィルム。
[6] イオン捕捉能を発揮する官能基を有する熱溶融性フッ素樹脂と該熱溶融性フッ素樹脂以外の熱溶融性フッ素樹脂とを主成分とする、[1]~[5]のいずれか1項に記載のロールフィルム。
[7] 熱溶融性フッ素樹脂の層とイオン捕捉能を発揮する官能基を有する熱溶融性フッ素樹脂の層とを有する、[1]~[6]のいずれか1項に記載のロールフィルム。
[8] イオン捕捉能を発揮する官能基が、カルボニル基、カルボキシ基、カルボン酸無水物基(-C(=O)-O-C(=O)-)、カルボン酸エステル基、スルフォニル基、スルホ基及びスルフォン酸無水物基(-S(=O)2-O-S(=O)2-)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[5]~[7]のいずれか1項に記載のロールフィルム。
[9] 厚さが、3~75μmである、[1]~[8]のいずれか1項に記載のロールフィルム。
[10] [1]~[9]のいずれか1項に記載のロールフィルムの製造方法であって、熱溶融性フッ素樹脂を主成分とする厚さが1~100μmのフィルムを、前記熱溶融性フッ素樹脂の溶融温度(Tm)より210℃低い温度からTmから20℃低い温度にてアニール処理してから巻き取る、方法。
[11] 前記フィルムにかかる張力を10N/m以下として前記アニール処理をする、[10]に記載の製造方法。
[12] 前記フィルムにかかる張力を500N/m以下として前記フィルムを巻き取る、[10]又は[11]に記載の製造方法。
[13] [1]~[9]のいずれか1項に記載のロールフィルムを巻き出し、巻き出されたフィルムの表面に銅層を形成する、銅張積層体の製造方法。
[14] 交流抵抗値が1.0×10-9Ω・cm超の銅層を形成する、[13]に記載の製造方法。
[15] [13]又は[14]に記載の製造方法により銅張積層体を製造し、前記銅層をエッチングしてパターン回路を形成する、プリント基板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロールフィルムによれば、電食試験での安定性に優れたプリント基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】未処理フィルムの製造装置100の一例を模式的に示す図である。
【
図2】未処理フィルムと基材とを貼合する貼合装置の一例の概略構成を示す図である。
【
図3】アニール処理装置の一例の概略構成を示す図である。
【
図4】銅張積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】銅張積層体の他の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】電食試験で用いるパターンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書における以下の用語の意味は、以下の通りである。
「MD」は、流れ方向(Machine Direction)を意味し、「TD」は、MDと直交する方向(Transverse Direction)を意味する。
「寸法変化率」は、25℃における寸法を基準として150℃で30分間加熱し、その後25℃まで冷却した際の寸法の変化率であり、詳しくは後述する実施例に記載の方法により求められる。
「熱溶融性樹脂」とは、溶融流動性の樹脂を意味し、荷重49Nの条件下、樹脂の融点よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が0.1~1000g/10分となる温度が存在する樹脂を意味する。
「溶融流れ速度」とは、JIS K 7210:1999(ISO 1133:1997)に規定される、樹脂のメルトマスフローレート(MFR)を意味する。
「溶融温度」とは、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した、樹脂の融解ピークの最大値に対応する温度を意味する。
「ガラス転移温度」(以下、Tgとも記す。)とは、樹脂のアモルファス領域の分子状態に起因する転移温度の一つで、Tgより低い温度では樹脂の主鎖の凍結が生じ、ガラス状態を示すようになる。Tgは、フィルムの固体動的粘弾性測定(DMA)法で測定したtanδピークの最大値を示す温度に対応する温度を意味する。
樹脂(重合体)における「単位」とは、単量体の重合により形成された前記単量体に由来する原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合体を処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、単量体に由来する単位を、単に「単量体の単位」とも記す。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
図1~
図7における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
【0013】
本発明のロールフィルムは、25℃における寸法を基準として150℃で30分間加熱し、その後25℃まで冷却した際のMD及びTD各々の寸法変化率の絶対値が1.0%未満であり、熱溶融性フッ素樹脂(以下、単に「フッ素樹脂」とも記す。)を主成分とし、厚さが1~100μmである。本発明のロールフィルムは、巻き取られたフィルムであり、ロール状に巻き取られた長尺(帯状)のフィルムが好ましい。
【0014】
本発明におけるフッ素樹脂は、フルオロオレフィンの単位を含む熱溶融性樹脂である。フルオロオレフィンは、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニリデン(VDF)又はフッ化ビニル(VF)が好ましく、TFEが特に好ましい。
フッ素樹脂の溶融温度は、260~320℃が好ましく、280~310℃が特に好ましい。
フッ素樹脂のMFRは、荷重49Nの条件下、フッ素樹脂の溶融温度よりも20℃以上高い温度において、0.1~100g/10分が好ましく、1~40g/10分がより好ましく、5~30g/10分が特に好ましい。この場合、フッ素樹脂の成形加工性とロールフィルムの機械強度とがバランスしやすい。
【0015】
フッ素樹脂の比誘電率は、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.2以下が特に好ましい。比誘電率の下限は、例えば1.8である。この場合、ロールフィルムの電気特性が優れ、伝送効率に優れたプリント基板が得られる。
フッ素樹脂の比誘電率は、例えば、フッ素樹脂に含まれるフルオロオレフィンの単位の種類や含有量により調整できる。
【0016】
フッ素樹脂の貯蔵弾性率は、例えば、後述するロールフィルムの製造方法におけるアニール処理の条件下にて、1MPa以上が好ましく、10MPa以上がより好ましく、20MPa以上が特に好ましい。上限値は、連続処理に必要とされるフッ素樹脂の可とう性の観点から、100MPaである。なお、貯蔵弾性率は、固体動的粘弾性等で測定できる。
【0017】
フッ素樹脂としては、TFEの単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)の単位とを含むフッ素樹脂(PFA)、TFEの単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の単位とを含むフッ素樹脂(FEP)、TFEの単位とエチレンの単位とを含むフッ素樹脂(ETFE)、VDFの単位を含むフッ素樹脂(PVDF)、CTFEの単位を含むフッ素樹脂(PCTFE)、エチレンの単位とクロロトリフルオロエチレンの単位とを含むフッ素樹脂(ECTFE)が挙げられ、寸法安定性と耐屈曲性により優れ、電食試験での安定性により優れたプリント基板が得られる観点から、PFAが好ましい。寸法安定性に優れ、所定の厚さのロールフィルムが得られる観点から、PFAは、全単位に対して、TFEの単位を92~99モル%含み、かつ、PAVEの単位を1~8モル%含むのが好ましい。
【0018】
フッ素樹脂は、イオン補足能を発揮する官能基(以下、「官能基i」とも記す。)を有するフッ素樹脂(以下、「フッ素樹脂i」とも記す。)が好ましい。
官能基iとは、80℃以上300℃以下の温度でアニール処理を行ったときにイオン性物質を捕捉する作用を有する官能基である。電食現象は、腐食現象が大きな要因と考えられる。腐食現象は、回路を形成する材料の電気化学的な反応又は変質により発生したイオンや、外部から表面付着等により取り込まれたイオン性物質(大気中の塩化水素、NOx,SOx等を吸着した粉塵や、油分等の付着物や、はんだフラックス、絶縁接着層等の他の基板構成材料に含まれる各種添加剤に由来するカウンターカチオン類。)が、マイグレーションや電気的な力によって移動し、電極作用をもつ物質表面にて電気化学的に反応して生じる。官能基iは、電食を引き起こす原因となりうるイオン性物質と反応し、不要なイオン性物質を固定化又は無害化すると考えられる。
【0019】
官能基iとしては、イオン捕捉能と熱安定性の点から、カルボニル基、カルボキシ基、カルボン酸無水物基(-C(=O)-O-C(=O)-)、カルボン酸エステル基、スルフォニル基、スルホ基及びスルフォン酸無水物基(-S(=O)2-O-S(=O)2-)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、イオン化していない観点から、カルボキシ基、カルボン酸無水物基又はカルボン酸エステル基が特に好ましい。
【0020】
フッ素樹脂iが有する官能基iは、官能基iを有する単量体に由来してもよく、重合開始剤や連鎖移動剤に由来してもよく、フッ素樹脂にグラフト重合された、官能基iを有する化合物に由来してもよい。
官能基iを有する単量体としては、後述するカルボン酸無水物基を含む環状単量体、ペルフルオロ[2-(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]、メチルペルフルオロ-5-オキシ-6-ヘプテノエート(以下、「MXM」とも記す。)等が挙げられる。
【0021】
フッ素樹脂i中の官能基iの含有量は、フッ素樹脂iの主鎖炭素数1×106個に対し、フッ素樹脂iの溶融温度の観点から、10~60000個が好ましく、300~5000個が特に好ましい。この場合、ロールフィルムを使用して製造される銅張積層体のプリント基板での電食試験の安定性と、巻き出されるロールフィルム及び銅層の密着性と、ロールフィルムの耐熱性、機械特性、電気特性とがバランスしやすい。
【0022】
官能基iの含有量は、核磁気共鳴分析、赤外吸収スペクトル分析等の方法によって測定でき、例えば、特開2007-314720号公報に記載の方法によってフッ素樹脂iの全単位中の官能基iを有する単位の割合(モル%)を求めて算出できる。
【0023】
フッ素樹脂iとしては、官能基iを有する単位や官能基iを有する末端基を含むフッ素樹脂が挙げられる。具体例としては、官能基iを有する熱溶融性ポリテトラフルオロエチレン、官能基iを有するPFA、官能基iを有するFEP、官能基iを有するエチレン/TFE系共重合体(ETFE)、TFE/ペルフルオロ[2-(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]系共重合体(Dupont社のNafion等。)、TFE/MXM共重合体及びその酸型イオン交換樹脂(AGC社のFlemion等。)が挙げられる。フッ素樹脂iは2種以上の混合物であってもよい。なお、これらの共重合体における「系」は、他の単量体の単位をさらに含んでいてもよいことを示す。
フッ素樹脂iは、含フッ素量と加工性を両立する観点から、官能基iを有するPFA、官能基iを有するFEP、TFE/MXM重合体が好ましい。
【0024】
フッ素樹脂iとしては、官能基iを有する単位を含むフッ素樹脂が好ましい。この場合、イオン捕捉能と、金属箔等の各種基材との接着性とがより向上しやすい。
【0025】
前記フッ素樹脂としては、巻き出したロールフィルム及び銅層の界面における密着性と、ロールフィルムの電気特性とがより優れる点から、TFE又はCTFEの単位u1と、カルボン酸無水物基を含む環状単量体又はMXMの単位u2と、含フッ素単量体の単位u3とを有するフッ素樹脂(以下、「フッ素樹脂ii」とも記す。)が好ましい。
【0026】
単位u1を構成する単量体としては、耐熱性が優れる点から、TFEが好ましい。
【0027】
前記環状単量体としては、無水イタコン酸(IAH)、無水シトラコン酸(CAH)、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(NAH)、無水マレイン酸等が挙げられる。前記環状単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記環状単量体は、IAH、CAH及びNAHが好ましく、前記密着性にさらに優れる観点から、IAH及びNAHが好ましい。
【0028】
フッ素樹脂iiには、単位u2におけるカルボン酸無水物基の一部が加水分解して形成されるジカルボン酸基(イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、マレイン酸等)を有する単位が含まれる場合がある。この場合、前記単位の含有量は、単位u2の含有量に含まれるとみなす。
【0029】
単位u3を構成する含フッ素単量体としては、TFE及びCTFEを除くフルオロオレフィン(VF、VDF、CF2=CHF、HFP、ヘキサフルオロイソブチレン等。)、PAVE、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO3H、CF2=CFCF2OCF=CF2、CF2=CFCF2CF2OCF=CF2、フルオロアルキルエチレン(FAE)、ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、2,2,4-トリフルオロ-5-トリフルオロメトキシ-1,3-ジオキソール、ペルフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン等が挙げられる。
【0030】
前記含フッ素単量体は、TFE及びCTFEを除いた含フッ素単量体であり、フッ素樹脂iiの成形性、ロールフィルムの耐屈曲性に優れる点から、HFP、PAVE及びFAEからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、PAVEが特に好ましい。
PAVEとしては、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3(PPVE)、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)8Fが挙げられ、PPVEが好ましい。
【0031】
FAEとしては、CH2=CF(CF2)2F、CH2=CF(CF2)3F、CH2=CF(CF2)4F、CH2=CF(CF2)5F、CH2=CF(CF2)8F、CH2=CF(CF2)2H、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H、CH2=CF(CF2)5H、CH2=CF(CF2)8H、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CH(CF2)5F、CH2=CH(CF2)6F、CH2=CH(CF2)8F、CH2=CH(CF2)2H、CH2=CH(CF2)3H、CH2=CH(CF2)4H、CH2=CH(CF2)5H、CH2=CH(CF2)8H等が挙げられ、CH2=CH(CF2)4F(PFBE)及びCH2=CH(CF2)2F(PFEE)が好ましい。
【0032】
フッ素樹脂ii中の単位u1と単位u2と単位u3との合計量に対する各単位の好ましい割合は、ロールフィルムの難燃性、耐薬品性等の観点から、下記のとおりである。
単位u1の割合は、90~99.89モル%が好ましく、95~99.47モル%がより好ましく、96~98.95モル%がさらに好ましい。
単位u2の割合は、0.01~3モル%が好ましく、0.03~2モル%がより好ましく、0.05~1モル%がさらに好ましい。この場合、フッ素樹脂iiにおける、巻き出したロールフィルムと銅層との界面における密着性にさらに優れる。
単位u3の割合は、0.1~9.99モル%が好ましく、0.5~9.97モル%がより好ましく、1~9.95モル%がさらに好ましい。この場合、フッ素樹脂iiの成形性、ロールフィルムの耐屈曲性等にさらに優れる。
【0033】
各単位の割合は、フッ素樹脂iiの溶融NMR分析、フッ素含有量分析、赤外吸収スペクトル分析等により算出できる。
【0034】
フッ素樹脂iiは、さらに他の単量体の単位u4を含んでいてもよい。
他の単量体としては、オレフィン(エチレン、プロピレン、1-ブテン等)、ビニルエステル(酢酸ビニル等)等が挙げられる。他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。この他の単量体としては、ロールフィルムの機械的強度等の観点から、エチレン、プロピレン、1-ブテンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
【0035】
フッ素樹脂iiの具体例としては、TFE/NAH/PPVE共重合体、TFE/IAH/PPVE共重合体、TFE/CAH/PPVE共重合体、TFE/IAH/HFP共重合体、TFE/CAH/HFP共重合体、TFE/IAH/PFBE/エチレン共重合体、TFE/CAH/PFBE/エチレン共重合体、TFE/IAH/PFEE/エチレン共重合体、TFE/CAH/PFEE/エチレン共重合体、TFE/IAH/HFP/PFBE/エチレン共重合体が挙げられる。
【0036】
フッ素樹脂iiとしては、官能基iを含むPFAが好ましく、官能基iを含む単位を含むPFAがより好ましく、TFE/NAH/PPVE共重合体、TFE/IAH/PPVE共重合体、TFE/CAH/PPVE共重合体が特に好ましい。
【0037】
本発明のロールフィルムは、フッ素樹脂を主成分とし、その含有量は50~100質量%が好ましく、80~100質量%が好ましい。ロールフィルムは、フッ素樹脂以外の他の樹脂、添加剤等をさらに含んでもよい。なお、フッ素樹脂を製造するために使用された成分(重合における界面活性剤等。)は、他の成分には含めない。
他の樹脂としては、非熱溶融性フッ素樹脂、含フッ素エラストマー、フッ素原子を含まない樹脂等が挙げられる。
【0038】
含フッ素エラストマーは、TFE、HFP、VDF及びCTFEからなる群から選ばれる少なくとも1種のフルオロオレフィンの単位を含むエラストマーが好ましい。具体的には、特開平05-78539号公報等に記載されたTFE/プロピレン系共重合体、特開平11-124482号公報等に記載されたVDF/HFP共重合体、VDF/HFP/TFE共重合体等、特開2006-089720号公報等に記載されたTFEの単位及びCF2=CFOCF3の単位を有する含フッ素重合体等が挙げられる。これらの重合体は、さらに他の単量体の単位を含んでいてもよい。
【0039】
フッ素原子を含まない樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、変性ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
添加剤としては、例えば、無機フィラー、有機フィラーが挙げられる。
無機フィラーとしては、シリカ、中空シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイト、炭素繊維、ガラスバルーン、炭素バルーン、木粉、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。無機フィラーは、多孔質であってもよく、非多孔質であってもよい。無機フィラーは、樹脂への分散性の向上の点から、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の表面処理剤による表面処理が施されてもよい。無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機フィラーとしては、他の樹脂を主成分とする粒子フィラー、特に低誘電特性を有する材料からなる粒子フィラーが好ましく、PTFE、ポリスチレン又はポリオレフィンの粒子フィラーや、それらの樹脂の中空フィラー等が挙げられる。
【0041】
ロールフィルムのフッ素樹脂は、1種のフッ素樹脂からなってもよく、2種以上のフッ素樹脂からなっていてもよい。後者の具体例としては、フッ素樹脂iとフッ素樹脂i以外のフッ素樹脂からなる態様が挙げられる。
前記態様において、フッ素樹脂iはフッ素樹脂iiが好ましく、フッ素樹脂i以外のフッ素樹脂は官能基iを有さないPFAが好ましい。
前記態様における、ロールフィルムのフッ素樹脂の全量に占める、フッ素樹脂iの割合は、0.1~49質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましい。フッ素樹脂i以外のフッ素樹脂の割合は、51~99.9質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましい。
ロールフィルムは、フッ素樹脂のフィルムのみからなっていてもよく、他の基材の表面に形成されていてもよい。前者の場合、1層のフッ素樹脂のフィルムからなっていてもよく、2層以上のフッ素樹脂のフィルムからなっていてもよい。後者の場合、他の基材として、フッ素樹脂のフィルムを使用してもよい。
【0042】
本発明のロールフィルムの厚さは、1~100μmであり、3~75μmがより好ましく、3~50μmが特に好ましい。ロールフィルムの厚さが前記範囲の下限値以上であると、銅張積層体の形成性に優れる。ロールフィルムの厚さが前記範囲の上限値以下であると、薄いプリント基板が形成でき、多層形成性に優れる。さらに具体的なロールフィルムの厚さの態様としては、3~30μmの薄い態様、30~60μmの厚い態様が挙げられる。
【0043】
本発明のロールフィルムにおいて、25℃における寸法を基準として150℃で30分間加熱し、その後25℃まで冷却した際のMD及びTD各々の寸法変化率の絶対値が、1.0%未満である。以下、前者の絶対値を「変化率MD」と、後者の絶対値を「変化率TD」とも記す。
通常の熱溶融性フッ素樹脂のロールフィルムは、その製法(押出成形による溶融成形法等)に起因する成形歪が残存する。そのため、そのロールフィルムの寸法変化率は1.0%を超える。そこで、本発明は、フッ素樹脂のフィルムの厚さと、後述する、アニール処理の条件やフィルムの巻取条件の調整とにより、ロールフィルムのMD及びTD各々の寸法変化率を所定の範囲に収束させつつ、電食現象を抑制している。そのため、本発明のロールフィルムを巻き出して銅層を形成すれば高精度な銅張積層体が得られ、電食現象が抑制されたプリント基板が得られる。
【0044】
変化率MDは、0.5%未満が好ましく、0.1%以下が好ましく、0.08%以下がより好ましく、0.05%以下が特に好ましい。
変化率TDは、0.5%未満が好ましく、0.1%以下が好ましく、0.08%以下がより好ましく、0.05%以下が特に好ましい。
【0045】
本発明のロールフィルムは、変化率MDに対する巻取張力の比は、100~1000000が好ましく、300~10000が特に好ましい。この場合、ロールフィルムの寸法安定率が、より向上しやすい。
さらに、変化率TDに対する変化率MDの比は、5以下が好ましく、3以下が特に好ましい。この場合、ロールフィルムが長尺であっても、より高精度なプリント基板を製造できる。前記比の下限は、通常、1である。
【0046】
ロールフィルムの比誘電率は、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.2以下が特に好ましい。比誘電率の下限は例えば1.8である。この場合、ロールフィルムから得られるプリント基板の伝送効率がより優れる。
【0047】
本発明のロールフィルムは、銅張積層体に用いられる。具体的には、ロールフィルムは、巻き出されて銅層と積層されて銅張積層体とされる。
【0048】
以上説明したロールフィルムにあっては、ロールフィルムを用いた銅張積層体から電食試験での安定性に優れたプリント基板が得られる。
また、フッ素樹脂が官能基iを有すれば、ロールフィルムと銅層の密着性も高まる。
【0049】
また、電食現象は、イオン性物質に起因する腐食現象が大きな要因と考えられる。
フッ素樹脂が官能基iを有すれば、イオン性物質が官能基iによってイオン性物質が固定化又は無害化されているため、電食試験での安定性により優れたプリント基板が得られる。また、官能基iがフッ素樹脂の主鎖に化学的に結合しているため、フッ素樹脂中に官能基iを含む低分子材料を含む場合に比べて、フィルム内での官能基iのモビリティが低い。そのため、回路通電時に生じる電場、磁場等によるイオン電導、拡散等を抑制でき、イオン性物質の固定化又は無害化効果が大きいと考えられる。
【0050】
本発明のロールフィルムの製造方法では、フッ素樹脂を主成分とする厚さが1~100μmのフィルム(以下、「未処理フィルム」とも記す。)を、フッ素樹脂の溶融温度(以下、「Tm」とも記す。)より210℃低い温度からTmから20℃低い温度にてアニール処理してから巻き取る。
未処理フィルムは、変化率MDと変化率TDは各々1.0%超であり、典型的には、各々1.0%超5%以下である。
【0051】
アニール処理における具体的な温度としては、(フッ素樹脂のガラス転移温度+10℃)以上(フッ素樹脂の溶融温度-20℃)であり、通常のフッ素樹脂(溶融温度が260℃~320℃のPFA等。)であれば、80~300℃である。
アニール処理においては、フィルムのMDに対して、張力をかけるのが好ましい。この際の張力は、10N/m以下が好ましく、5N/m以下が特に好ましい。この際の張力の下限は、通常、1N/mである。
アニール処理したフィルムの巻き取りにおいては、フィルムのMDに対して、張力(以下、「巻取張力」とも記す。)をかけるのが好ましい。巻取張力は、500N/m以下が好ましく、300N/m以下がより好ましく、150N/m以下が特に好ましい。この際の張力の下限は、通常、1N/mである。また、巻取張力は、変化率MDの絶対値に対する比が、100~1000000になるのが好ましく、300~10000になるのが特に好ましい。
【0052】
なお、それぞれの張力(N/m)は、フィルムのMD1m当たりの値であり、実際のフィルム処理装置においては、フィルム張力測定装置により測定された張力とその時のフィルム幅(m)により求められる。このようなフィルム張力測定装置としては、例えば、大倉インダストリー社製の商品名「Model 1FB-5000N」「Model HD-500」、(Bellmatic社製の非接触WEBテンションメーターが挙げられる。巻取張力は、かかる測定装置を接続した3インチABSプラ管(厚さ6mm)を巻取ロールに設置して測定できる。
【0053】
図1を用いて、未処理フィルムの製造方法の一例を説明する。
図1は、未処理フィルムの製造装置100の一例を模式的に示す図である。
製造装置100は、押出機101と、押出機101に取り付けられたTダイ102と、急冷ロール103と、複数の冷却ロール104と、一対のニップロール105と、巻取ロール106とを備える。
複数の冷却ロール104は、Tダイ102から吐出されたフィルム状の溶融体11が、一対のニップロール105側に向かって複数の冷却ロール104を順次通過するように直列に配置されている。なお、ここでは3つの冷却ロール104を示したが、冷却ロール104の数は3つに限定されず、1つでもよい。
急冷ロール103は、複数の冷却ロール104のうち最もTダイ102に近い冷却ロール104(以下、「第1の冷却ロール」とも記す。)に対向配置されている。
【0054】
製造装置100において未処理フィルムは、以下の手順で製造される。
押出機101によって、フッ素樹脂を含み、必要に応じて、フッ素樹脂以外の他の樹脂、添加剤等を含む材料を溶融し、押出機101から押し出された溶融樹脂をTダイ102に供給し、Tダイ102から溶融樹脂をフィルム状に吐出し、フィルム状の溶融体11を、急冷ロール103によって第1の冷却ロール104に押し付け、次いで残りの冷却ロール104に順次接触させて冷却し、一対のニップロール105の間を通過させて搬送し、未処理フィルム12とする。得られた未処理フィルム12は、巻取ロール106に巻き取る。必要に応じて、未処理フィルム12を裁断して枚葉状としてもよい。
【0055】
Tダイ102のリップ幅に制限はないが、例えば500~4000mmにできる。
成形速度、すなわちTダイ102からの溶融体11の吐出速度は、1~100m/分が好ましく、1~30m/分が特に好ましい。成形速度が前記範囲内であると、フィルム平坦性が優れる。成形速度が前記範囲の下限値未満であると、溶融体11が冷却ロールに接触する前に冷却されるので、フィルム平坦性が悪くなるおそれがある。成形速度が前記範囲の上限値超であると、フィルム冷却が遅れるので、フィルム平坦性が悪くなるおそれがある。
溶融体11がTダイ102から吐出されてから第1の冷却ロール104に接触点までの距離は、500mm以下が好ましく、300mm以下が特に好ましい。前記時間の下限は、例えば100mmである。
冷却ロール104の表面温度は、樹脂材料中のTm未満であり、室温以上かつ(Tm-20℃)以下が好ましい。
急冷ロール103の表面温度は、冷却ロール104の表面温度と同様であってよい。
【0056】
前記製造方法では、急冷ロール103によって溶融体11を第1の冷却ロール104に押し付けることにより、アニール処理時の変化率MDが少なくなり、より穏和なアニール処理条件で変化率MDの絶対値を抑制できる。これは、溶融体11が急冷されることで、フィルム端部に成形歪がたまることを抑制され、フィルムのMDにおける歪の均一性が高くなるためと考えられる。
【0057】
なお、前記製造方法において、急冷ロール103による押し付けを行わずに溶融体11を冷却してもかまわない。
【0058】
フッ素樹脂がフッ素樹脂iであれば、アニール処理における加熱により、腐食の原因となるイオン性物質が充分に官能基iによって固定化又は無害化され、ロールフィルムから電食試験での安定性に優れたプリント基板が得られやすい。また、アニール時のフィルム形態保持性にも優れる。
【0059】
アニール処理の時間は、ロールフィルムの所望の寸法変化率及びアニール処理の温度を考慮して適宜設定できる。アニール処理の時間は、1~60分間が好ましく、1~30分間が特に好ましい。アニール時間が前記範囲の下限値以上であると、ロールフィルムから電食試験での安定性に優れたプリント基板が得られやすい。アニール時間が前記範囲の上限値以下であると、処理効率が高く、工業的に製造しやすくなる。
【0060】
アニール処理は、未処理フィルムに張力をかけた状態で行われるのが好ましい。この場合の態様としては、ロール状の未処理フィルムをロールツーロールでMDに搬送しながら加熱する例が挙げられる。
【0061】
アニール処理の際に未処理フィルムにかかる張力は、10N/m以下が好ましく、5N/m以下が特に好ましい。前記張力が前記上限値以下であると、未処理フィルムにかかる応力が少なく、ロールフィルムの残存応力を少なくできる。ロールフィルムの残存応力が少ないと、ロールフィルムが寸法安定性により優れる。
未処理フィルムをロールツーロールでMDに搬送しながら加熱する場合、搬送時に未処理フィルムにかかる張力(以下、「搬送張力」とも記す。)は、アニール処理として加熱されている領域で1N/m以上が好ましい。搬送張力が前記下限値以上であると、フィルムを安定的に搬送できる。
【0062】
未処理フィルムに張力をかけた状態でアニール処理を行う場合、アニール処理の前に未処理フィルムに他の基材を積層し、基材が積層された状態でアニール処理を行うことが好ましい。これにより、未処理フィルムにかかる応力をより調整しやすい。
【0063】
他の基材としては、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、熱溶融性フッ素樹脂、非熱溶融性フッ素樹脂、非フッ素系樹脂等が挙げられる。非フッ素系樹脂としては、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等)、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、他の基材と未処理フィルムの線膨張係数が近く、アニール処理時にカールが発生しにくい点から、フッ素樹脂のフィルムが好ましい。フッ素樹脂のフィルムを構成するフッ素樹脂は、基材と未処理フィルムの線膨張係数がより近く、アニール処理時にカールがより発生しにくい点から、未処理フィルムに含まれるフッ素樹脂と同種のフッ素樹脂が好ましい。例えば、フッ素樹脂がPFAである場合、樹脂フィルムを構成する樹脂もPFAであることが好ましい。樹脂フィルムを構成するフッ素樹脂は、官能基iを有していなくてもよい。
基材の厚さは、25~100μmが好ましい。
【0064】
基材は、未処理フィルムに直接積層されてもよく、粘着層を介して積層されてもよい。
基材と未処理フィルムとが直接積層された積層体は、例えば、前記製造方法において、熱溶融性フッ素樹脂を含む樹脂材料とともに、基材フィルムを構成する樹脂材料を共押し出しする方法により得られる。共押し出しの手法としては、フィードブロック法、マルチマニホールド法等が挙げられる。
基材と未処理フィルムとを粘着層を介して積層する場合、粘着層を構成する粘着剤は、特に限定されず、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ポリオレフィン系等が挙げられる。
粘着層の厚さは、0.1~5μmが好ましく、0.5~2μmが特に好ましい。
【0065】
以下、
図2~3を用いて、本発明のロールフィルムの製造方法の一例を説明する。
図2は、未処理フィルムと基材とを貼合する貼合装置の一例の概略構成を示す図である。
図3は、アニール処理装置の一例の概略構成を示す図である。
【0066】
図2に示す貼合装置200は、ロール状に巻き取った未処理フィルム12を順次巻き出す第1巻出ロール201と、ロール状に巻き取った粘着層付き基材13を順次巻き出す第2巻出ロール202と、未処理フィルム12と粘着層付き基材13とを貼合して積層体14とする一対の貼合ロール203,204と、積層体14を巻き取る巻取ロール205と、を備える。
一対の貼合ロール203,204は、それらのロール間に未処理フィルム12と粘着層付き基材13とを挟持して加圧することで、それらを貼合する。
粘着層付き基材13は、基材の片面、具体的には基材が貼合ロール203を通過する際に未処理フィルム12と接する側の面に粘着層が設けられたものである。
【0067】
図3に示すアニール処理装置300は、ロール状に巻き取った積層体14を順次巻き出す巻出ロール301と、積層体14を加熱する加熱部302と、複数の搬送ロール303と、加熱後の積層体14、すなわちロールフィルムと粘着層付き基材13との積層体15を巻き取る巻取ロール304と、を備える。
加熱部302には、積層体14が搬送な空間Sが形成されており、空間S内に複数の搬送ロール303が配置されている。また、加熱部302には、空間Sに導入された積層体14を加熱するための加熱機構(図示せず)が設けられている。
アニール処理装置300においては、巻出ロール301及び巻取ロール304により、積層体14の巻き出し速度及び巻き取り速度を制御して、搬送される積層体14にかかる搬送張力と巻取張力とを制御できるようになっている。
【0068】
本例の製造方法では、ロールフィルムは、以下の手順で製造される。
まず、貼合装置200にて、未処理フィルム12を第1巻出ロール201から貼合ロール203,204に搬送し、粘着層付き基材13を第2巻出ロール202から貼合ロール203,204に搬送し、貼合ロール203,204にて未処理フィルム12と粘着層付き基材13とを貼合し、得られた積層体14を巻取ロール205に巻き取る。
次に、巻き取った積層体14をアニール処理装置300の巻出ロール301に移し、巻出ロール301から巻き出して加熱部302に搬送し、加熱部302にて加熱して未処理フィルム12をロールフィルムとし、ロールフィルムと粘着層付き基材13との積層体15を巻取ロール304に巻き取る。必要に応じて、積層体15を裁断して枚葉状としてもよい。必要に応じて、積層体15から粘着層付き基材13を剥離してもよい。粘着層付き基材13は通常、銅張積層体の製造時に剥離される。
【0069】
本発明のロールフィルムを用いた銅張積層体は、ロールフィルムから巻き出して形成される誘電体層と、前記誘電体層に接して設けられた銅層とを備える。
【0070】
図4は、銅張積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図4に示す銅張積層体40は、巻き出されたロールフィルムからなる誘電体層41と、誘電体層41の厚さ方向の第1の表面41aに積層された銅層42とを備える。
図5は、銅張積層体の他の一例を模式的に示す断面図である。
図5に示す銅張積層体50は、巻き出されたロールフィルムからなる誘電体層51と、誘電体層51の厚さ方向の第1の表面51aに積層された第1の銅層52と、誘電体層51の第1の表面51aとは反対側の第2の表面51bに積層された第2の銅層53と、を備える。
【0071】
銅層の厚さは、3~18μmが好ましい。微細回路を形成する場合には、銅層の厚さは12μm以下が好ましい。
銅層は、銅箔を用いて形成することが好ましい。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
【0072】
本発明の銅張積層体の製造方法では、本発明のロールフィルム(又はその製造方法により製造した製品フィルム)を巻き出して、その表面に銅層を形成する。
銅層を形成するのは、ロールフィルムの厚さ方向の第1の表面のみでもよく、第1の表面及び第1の表面とは反対側の第2の表面の両方でもよい。
【0073】
巻き出されたロールフィルムの表面に銅層を形成する方法としては、ロールフィルムの表面に銅箔を積層(貼着)する方法、蒸着法、めっき法等が挙げられる。
銅箔を積層する方法としては、熱プレスによる方法が挙げられる。熱プレスの温度は、誘電体フィルムの融点+20℃~誘電体フィルムの融点+100℃が好ましい。熱プレスの時間は、例えば1~30分間である。熱プレスの圧力は、例えば0.1~10MPaである。
【0074】
銅層と巻き出されたロールフィルムとの接着性を向上させるため、銅層を形成する前に、巻き出されたロールフィルムに対して表面処理を行うことが好ましい。表面処理としてはプラズマ処理、コロナ処理、紫外線(UV)照射法等が挙げられる。
【0075】
得られた銅張積層体は、プリント基板用材料として使用し得る。
プリント基板は、半導体やコンデンサチップ等の電子部品を電気的に接続すると同時に、限られた空間内に配置し固定するための板状部品である。
本銅張積層体から形成されるプリント基板の構成に特に制限はなく、公知のプリント基板の構成を採用できる。プリント基板は、リジッド基板、フレキシブル基板、リジッドフレキシブル基板のいずれであってもよい。プリント基板は、片面基板、両面基板、多層基板(ビルドアップ基板等)のいずれであってもよい。
【0076】
本発明のプリント基板の製造方法では、前記銅張積層体の製造方法により銅張積層体を製造し、前記銅層をエッチングしてパターン回路を形成する。
銅層のエッチング方法としては、公知の方法を採用できる。
【0077】
プリント基板の製造では、銅層をエッチングしてパターン回路を形成した後に、前記パターン回路上に層間絶縁膜を形成し、前記層間絶縁膜上にさらにパターン回路を形成してもよい。
プリント基板の製造では、前記パターン回路上にソルダーレジストを積層してもよい。
プリント基板の製造では、カバーレイフィルムを積層してもよい。カバーレイフィルムは、典型的には、基材フィルムと、その表面に形成された接着剤層とから構成され、接着剤層側の面がプリント基板に貼り合わされる。
銅張積層体の銅層をエッチングして得られた基板を内層回路基板としてビルドアップ基板を製造してもよい。
【0078】
本発明のプリント基板の製造方法で得られるプリント基板は、種々の電化製品やシステムに使用可能である。中でも、高周波特性が必要とされるレーダー、ネットワークのルーター、バックプレーン、無線インフラ等の電子機器用基板や自動車用各種センサ用基板、エンジンマネージメントセンサ用基板として有用であり、特にミリ波帯域の伝送損失低減を目的とする用途に好適である。
【実施例0079】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
各例で使用した測定又は試験方法、及び材料を以下に示す。
【0080】
(測定方法)
<MFR[g/10分]>
メルトインデクサー(テクノ・セブン社製)を用い、372℃、49N荷重下で、直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間に流出するフッ素樹脂の質量(g)を測定して求めた。
【0081】
<厚さ>
接触式厚み計OG-525H(小野測器社製)にて、測定子AA-026(φ10mm SR7)を使用して求めた。
【0082】
<寸法変化率[%]>
フィルムを長さ(MD)12cm×幅(TD)12cmに裁断した試料を調製し、下記の方法で求めた。
25℃において、試料に約10cmの長さの直線を、MD及びTDそれぞれの方向に沿って1本ずつ描き、各直線の端点間距離を初期長L0とする。次いで、前記試料を150℃で30分間熱処理し、25℃まで冷却した後、試料上に描かれた直線の端点間の直線距離L1を測定し、下式1により寸法変化率(%)を求めた。
寸法変化率(%)=(L1/L0-1)×100 ・・・式1
MDに沿った直線について求めた寸法変化率の絶対値をMDの寸法変化率(変化率MD)とし、TDに沿った直線について求めた寸法変化率の絶対値をTDの寸法変化率(変化率TD)とした。
【0083】
<剥離試験>
作製した銅層積層体を幅1cmにカットし、評価サンプルを作成した。評価サンプルの長さ方向の一端から50mmの位置まで誘電体フィルムと銅箔との間を剥離した。ついで、引張試験機を用いて、室温下、引張速度100mm/分で90°となるように剥離し、測定距離20mmから80mmの平均荷重を剥離強度(N/cm)とした。室温は25℃であった。
【0084】
<電食試験>
“ガラス基材銅張積層板の絶縁信頼性”,サーキットテクノロジ Vol.3,No.4,p212-219(1988)に記載された簡易電食性評価法に従った。
電食試験では、
図6に示す、2つのくし形パターン60が組み合わされたパターンを用いる。各くし形パターン60は、平行に配置された複数のライン部61と、それらのライン部61の長さ方向と直交する方向に延び、各ライン部61を接続する基部62とからなる。前記パターンにおいては、一方のくし形パターン60の複数のライン部61と他方のくし形パターン60の複数のライン部61とが、ライン部61の長さ方向と直交する方向に交互に配置され、かつ各くし型パターン60同士が接触していない。各くし形パターン60において、ライン部61の長さは100mm、ライン部61の幅は0.33mm、ライン部61の本数は100本とした。隣り合うライン部61間の間隔は0.10mmとした。
【0085】
作製した銅張積層体の銅層に、
図6に示すように2つのくし形パターンをエッチングし、汎用恒温恒湿オーブン(タバイエスペック社PL-1KTH)を用い、85℃85%RHの恒温恒湿条件で、500時間の処理時間保持し、試料71を得た。
図7に示すように、試料71の2つのくし形パターンをそれぞれ電源72の+極、-極に接続し、試料71を電解液L(1μmol/LのHCl水溶液)に浸漬し、電圧を印加した。印加電流は20VDC、印加時間は100分とした。その後、試料71を電解液Lから取り出し、10Hz、1Aの条件で、2つのくし形パターン間の交流抵抗値(Ω・cm)を測定した。
測定された交流抵抗値から、電食試験での安定性を以下の基準で判定した。2つのくし形パターンが変形する等により相互に接触すると、交流抵抗値が小さくなる。交流抵抗値が大きいほど、電食試験での安定性に優れる。
〇(良好):交流抵抗値が10
-9Ω・cm超。
×(不良):交流抵抗値が10
-9Ω・cm以下。
【0086】
<使用材料>
PFA1:国際公開第2016/017801号の[0124]と同様に合成して得たPFA。各単位の割合はTFE/NAH/PPVE=97.9/0.1/2.0モル%である。このPFAは官能基iとしてカルボン酸無水物基を有する。カルボン酸無水物基の含有量は主鎖炭素数1×106個に対し1000個であり、溶融温度は300℃であり、溶融流れ速度は17.0g/10分であった。
PFA2:旭硝子社製「P-63P」、官能基iを有しないPFA(MFR:15.0g/10分)。
PFA3:旭硝子社製「P-62XP」、官能基iを有しないPFA(MFR:25.0g/10分)。
ETFE1:旭硝子社製「C88AX」、官能基iを有しないETFE(MFR:15g/10分)。
銅箔:福田金属工業社製「CF-T4X-SVR」、電解銅箔、厚さ12μm。
【0087】
(例1)
PFA1のペレットを、700mm幅のTダイを有する65mmφ単軸押出機(東芝機械社製、L/D=25、圧縮比3.1)を用い、成形温度340℃、成形速度3.5m/分でフィルム状に押出成形し、厚さ50μm、幅510mmのフィルム(ロール状に巻き取られた未処理フィルム)を得た。
【0088】
このフィルムを、
図3に示す構成のアニール処理装置300を用い、巻出ロール301から巻き出し、5N/mの張力をかけて加熱部302に搬送し、加熱部302にて150℃、5分の条件で加熱し、62.5N/mの張力をかけて巻取ロール304に巻き取って、厚さ50μmのロールフィルムを得た。つまり、アニール処理条件は温度150℃、時間5分、搬送張力5N/mとし、巻き取り条件は巻取張力62.5N/mとした。
得られたロールフィルムを巻き出して、長さ15cm×幅15cmにカットし、一方の表面に同じ大きさの銅箔を配置し、真空プレス機を用い、340℃、15分、1.5MPaの条件で熱プレスして銅張積層体を得た。
得られた銅張積層体について、剥離試験及び電食試験をした結果を、表1に示す。
【0089】
(例2~14)
フッ素樹脂の種類、成形条件、ロールtoロール方式でのアニール処理条件、巻取条件を表1に示すように変更した以外は例1と同様にしてロールフィルムを得て、銅張積層体を製造し、その剥離試験及び電食試験をした。結果をまとめて、表1に示す。
【0090】
【0091】
表1中、例10における「PFA1(10)、PFA2(90)」の表記は、PFA1とPFA2をこの順に10質量%、90質量%の割合で併用したことを示す。他の例や他の表における、他の表記も同様である。
【0092】
(例15)
PFA1を、1900mm幅のTダイを有する65mmφ単軸押出機(東芝機械社製、L/D=25、圧縮比3.1)を用い、成形温度340℃、成形速度20m/分でフィルム状に押出成形し、厚さ25μm、幅1500mmのフィルムを得た。
【0093】
このフィルムを、
図2に示す構成の貼合装置200及び
図3に示す構成のアニール処理装置300を用い、以下の手順でアニール処理し、巻き取って、フィルムと基材とが粘着層を介して積層されたロールフィルムを得た。
まず、貼合装置200にて、未処理フィルム12を第1巻出ロール201から貼合ロール203,204に搬送し、粘着層付き基材13を第2巻出ロール202から貼合ロール203,204に搬送し、貼合ロール203,204にて、室温で、未処理フィルム12と粘着層付き基材13とを貼合し、得られた積層体14を巻取ロール205に巻き取った。
粘着層付き基材13の基材としては、PFA2のペレットを前記と同様に押出成形して得た厚さ50μmのフィルムを用いた。粘着層は、ウレタンアクリレート系粘着剤を用いて厚さ2μmに形成した。
次に、巻き取った積層体14をアニール処理装置300の巻出ロール301に移し、巻出ロール301から巻き出し、5N/mの張力をかけて加熱部302に搬送し、加熱部302にて150℃、5分の条件で加熱し、100N/m以下の張力をかけて巻取ロール304に巻き取ってロールフィルムを得た。つまり、アニール処理条件は温度150℃、時間5分、搬送張力5N/mとし、巻き取り条件は巻取張力100N/m以下とした。
【0094】
得られたロールフィルムを巻き出して、長さ15cm×幅15cmにカットし、ロールフィルム側の表面(PFA1側の表面)に同じ大きさの銅箔を配置し、粘着層付き基材を剥離した後、真空プレス機を用い、340℃、15分、1.5MPaの条件で熱プレスして銅張積層体を得た。
得られた銅張積層体について、剥離試験及び電食試験をした結果を、表2に示す。
【0095】
(例16~21)
フッ素樹脂の種類、基材およびロールtoロール方式でのアニール処理条件(温度、時間、搬送張力)を表2に示すように変更した以外は例15と同様にしてロールフィルムを得て、銅張積層体を製造し、その剥離試験及び電食試験をした。結果をまとめて、表2に示す。
【0096】
【0097】
表2中、例18及び19における基材13は、厚さ50μmのPFA2のフィルムにかえて、厚さ75μmのPFA2のフィルムを使用した。
【0098】
(例22)
以下の手順で、2層構造の共押出フィルムを作成した。400m幅2層マルチマニホールドダイの第1のマニホールドに、PFA1を、15mmφ単軸押出機(田辺プラスチック機械社製)を用い、設定温度340℃にて溶融させて供給し、第2のマニホールドに、ETFE1を、30mmφ単軸押出機(池貝社製)を用い、設定温度340℃にて溶融させて供給し、各溶融樹脂を前記マルチマニホールドダイから成形速度2m/分でフィルム状に押出成形し、第1の層(PFA1)の厚さが25μm、第2の層(ETFE1)の厚さが75μm、幅320mmの共押出フィルムを得た。この共押出フィルムを例1と同様にして、アニール処理して巻き取りロールフィルムを得た。このロールフィルムの変化率MDは0.03であり、変化率TDは0.02であった。このロールフィルムを用いて得られる銅張積層体の剥離強度は8.4N/mであり、交流抵抗値は8.4×10-9Ω・cmであり、判定は「○」であった。
11 溶融体、12 未処理フィルム、13 粘着層付き基材、14,15 積層体、40,50 銅張積層体 41,51 誘電体層、42 銅層、52 第1の銅層、53 第2の銅層、60 くし形パターン、61 ライン部、 62 基部、71 試料、72 電源、L 電解液、100 未処理フィルムの製造装置、101 押出機、102 Tダイ、103 急冷ロール、104 冷却ロール、105 ニップロール、106 巻取ロール、200 貼合装置、201 第1巻出ロール、202 第2巻出ロール、203,204 貼合ロール、205 巻取ロール