(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164473
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】CMP研磨液及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20231102BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231102BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20231102BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136407
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2022500481の分割
【原出願日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/005602
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020085178
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】小林 真悟
(72)【発明者】
【氏名】南 久貴
(72)【発明者】
【氏名】大塚 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】小峰 真弓
(72)【発明者】
【氏名】ウ ジェナ
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寿登
(57)【要約】
【課題】高荷重時の研磨速度と低荷重時の研磨速度との差が大きいCMP研磨液、及び、当該CMP研磨液を用いた研磨方法を提供する。
【解決手段】本開示の一側面は、砥粒と、カチオン性ポリマーと、を含有し、カチオン性ポリマーが、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖と、前記炭素原子に結合した水酸基と、を有する、CMP研磨液を提供する。当該CMP研磨液は、アミノ基含有芳香族化合物及び含窒素複素環化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の環状化合物を更に含有してよい。本開示の他の一側面は、当該CMP研磨液を用いて被研磨材料を研磨する工程を備える、研磨方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と、カチオン性ポリマーと、を含有し、
前記カチオン性ポリマーが、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖と、前記炭素原子に結合した水酸基と、を有する、CMP研磨液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CMP研磨液、研磨方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の分野では、メモリデバイス(超LSIデバイス等)の高性能化に伴い、従来技術の延長線上の微細化技術では高集積化及び高速化を両立することは限界になってきている。そこで、半導体素子の微細化を進めつつ、垂直方向にも高集積化する技術(すなわち、配線、素子等を多層化する技術)が開発されている。
【0003】
配線、素子等が多層化されたデバイスを製造するプロセスにおいて、最も重要な技術の一つにCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)技術がある。CMP技術は、化学気相蒸着(CVD)等によって基板上に薄膜を形成して基体を得た後、その基体の表面を平坦化する技術である。平坦化後の基体の表面に凹凸があると、露光工程における焦点合わせが不可能となったり、微細な配線構造を充分に形成できなかったり等の不都合が生じる。CMP技術は、デバイスの製造工程において、プラズマ酸化膜(BPSG、HDP-SiO2、p-TEOS等)の研磨によって素子分離領域を形成する工程、層間絶縁膜を形成する工程、酸化ケイ素膜(酸化ケイ素を含む膜)を金属配線に埋め込んだ後にプラグ(例えばAl・Cuプラグ)を平坦化する工程などにも適用される。
【0004】
CMPは、通常、研磨パッド上に研磨液を供給することができる装置を用いて行われる。基体の表面と研磨パッドとの間に研磨液を供給しながら、基体を研磨パッドに押し付けることによって基体の表面が研磨される。CMP技術においては、高性能の研磨液が要素技術の一つであり、これまでにも種々の研磨液が開発されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板上に素子分離領域を形成する工程においては、基板の表面に予め設けられた凹凸を埋めるように被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)がCVD等によって形成される。その後、被研磨材料の表面をCMPによって平坦化することによって素子分離領域が形成される。素子分離領域を得るための凹凸が表面に設けられた基板上に被研磨材料を形成する場合、被研磨材料の表面にも、基板の凹凸に応じた凹凸が生じる。凹凸を有する表面の研磨においては、凸部が優先的に除去される一方、凹部がゆっくりと除去されることによって平坦化がなされる。
【0007】
半導体生産のプロセスマージン及び歩留まりを向上させるためには、基板上に形成した被研磨材料の不要な部分を基体の面内で可能な限り均一に且つ高速に除去することが好ましい。例えば、素子分離領域の狭幅化に対応すべく、シャロー・トレンチ分離(STI)を採用した場合、基板上に設けた被研磨材料の段差及び不要な部分を速い研磨速度で取り除くことが要求される。
【0008】
一般に、被研磨材料の研磨処理を二段階に分けることにより生産効率の向上を図る場合がある。第一の工程(荒削り)では、被研磨材料の段差の大部分を除去し、第二の工程(仕上げ工程)では、被研磨材料が任意の厚さに調整されると共に被研磨面が充分平坦化されるようにゆっくりと仕上げる。
【0009】
前記のように被研磨材料に対するCMPを二段階以上に分ける場合、第二の工程においては、ディッシングを最小限に抑え、被研磨面が充分に平坦化される必要がある。しかしながら、従来のCMP研磨液では、被研磨材料(絶縁材料等)の高い研磨速度に起因する高い段差除去性(段差を除去する性能)と、段差を除去した後の高い平坦性とを両立することについては改善の余地がある。
【0010】
本開示の一側面は、前記課題を解決しようとするものであり、高荷重時の研磨速度と低荷重時の研磨速度との差が大きい(研磨速度の非線形の荷重依存性を示す)CMP研磨液を提供することを目的とする。また、本開示の他の一側面は、前記CMP研磨液を用いた研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、高荷重時の研磨速度と低荷重時の研磨速度との差が大きいこと(研磨速度の非線形の荷重依存性を示すこと)が高い段差除去性と高い平坦性とを両立することに有効であることに着想した。凹凸を有する基体の研磨初期において基体の表面における段差が高い場合、研磨パッドが主に凸部に接触するため、被研磨面における研磨パッドとの接触部の単位面積当たりの荷重が高い。この場合、高荷重時において高い研磨速度が得られる研磨液を用いると、凸部の除去が進行しやすいことから高い段差除去性が得られる。一方、基体の研磨が充分に進行し、基体の表面における段差が低い場合、研磨パッドが凸部に加えて凹部にも接触しやすいため、被研磨面における研磨パッドとの接触部の単位面積当たりの荷重が低い。この場合、低荷重時において低い研磨速度が得られる研磨液を用いると、凹部の除去が進行しつらいことから高い平坦性が得られる。
【0012】
そして、本発明者らは、研磨速度の非線形の荷重依存性を示すCMP研磨液を得る観点から、CMP研磨液に配合する添加剤について鋭意検討を重ねた。本発明者らは、種々の化合物を添加剤として使用してCMP研磨液を多数調製した。これらのCMP研磨液を用いて、凹凸を有する基体を研磨し、高荷重時及び低荷重時の研磨速度の評価を行った。その結果、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖と、前記炭素原子に結合した水酸基と、を有するカチオン性ポリマーを用いることが、研磨速度の非線形の荷重依存性を得ることに有効であることを見出した。
【0013】
本開示の一側面は、砥粒と、カチオン性ポリマーと、を含有し、前記カチオン性ポリマーが、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖と、前記炭素原子に結合した水酸基と、を有する、CMP研磨液を提供する。
【0014】
本開示の他の一側面は、上述のCMP研磨液を用いて被研磨面を研磨する工程を備える、研磨方法を提供する。
【0015】
このようなCMP研磨液及び研磨方法によれば、高荷重時の研磨速度と低荷重時の研磨速度との差を大きくする(研磨速度の非線形の荷重依存性を得る)ことが可能であり、凹凸を有する基体を研磨した際に高い段差除去性と高い平坦性とを両立することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一側面によれば、高荷重時の研磨速度と低荷重時の研磨速度との差が大きい(研磨速度の非線形の荷重依存性を示す)CMP研磨液を提供することができる。また、本開示の他の一側面によれば、前記CMP研磨液を用いた研磨方法を提供することができる。これらのCMP研磨液及び研磨方法は、基体(例えば半導体ウエハ)の表面に設けられた絶縁材料(例えば酸化ケイ素)を研磨するために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】酸化ケイ素膜が研磨されてSTI構造が形成される過程を示す模式断面図である。
【
図2】凹凸を有する被研磨材料を研磨して凹凸が解消される過程を示す模式断面図である。
【
図3】凹凸を有する被研磨材料を研磨して凹凸が解消される過程を示す模式断面図である。
【
図4】凹凸を有する被研磨材料を研磨して凹凸が解消される過程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0019】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の使用量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、本明細書において「膜」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0020】
<CMP研磨液>
本実施形態に係るCMP研磨液(CMP用研磨液)は、砥粒(研磨粒子)と、カチオン性ポリマーと、を含有し、前記カチオン性ポリマーが、窒素原子(N原子)及び炭素原子(C原子)を含む主鎖と、前記炭素原子に結合した水酸基と、を有する。
【0021】
本実施形態に係るCMP研磨液によれば、研磨速度の非線形の荷重依存性を得ることが可能であり、凹凸を有する基体(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料を表面に有する基体)を研磨した際に高い段差除去性と高い平坦性とを両立することができる。本実施形態に係るCMP研磨液によれば、高荷重時と低荷重時とで大きな研磨速度差を達成することが可能であり、例えば、荷重4.0psi時と荷重3.0psi時とで大きな研磨速度差を達成することができる。窒素原子及び炭素原子を含む主鎖と、前記炭素原子に結合した水酸基と、を有するカチオン性ポリマーが、荷重が低いほど、被研磨材料における研磨パッドに接触する部分に吸着して保護することにより研磨速度の非線形の荷重依存性が得られると推測される。
【0022】
一般に、被研磨材料の研磨処理を二段階に分けることにより生産効率の向上を図る場合がある。第一の工程(荒削り)では、被研磨材料の段差の大部分を除去し、第二の工程(仕上げ工程)では、被研磨材料が任意の厚さに調整されると共に被研磨面が充分平坦化されるようにゆっくりと仕上げる。すなわち、第一の工程では、凹凸を有する被研磨材料を研磨するのに対し、第二の工程では、凹凸が非常に小さく、実質的に凹凸を有しない被研磨材料を研磨する。第一の工程においては、凹凸を有する被研磨材料の凹凸を速やかに解消するために、凹凸を有する被研磨材料の高い研磨速度を達成することが求められる。
【0023】
また、本発明者らの知見によれば、凹凸を有しない被研磨材料に対して、凹凸を有する被研磨材料の研磨速度比が高い場合には、凹凸を有する被研磨材料を研磨して凹凸を解消した際の平坦性が更に向上すると推測される。そして、被研磨材料として酸化ケイ素を用いる場合に、凹凸の有無に応じてこのような研磨速度比を得ることが求められる。
【0024】
本発明者らは、CMP研磨液に配合する添加剤について鋭意検討を重ねた。本発明者らは、種々の化合物を添加剤として使用してCMP研磨液を多数調製した。これらのCMP研磨液を用いて、凹凸を有する酸化ケイ素と、凹凸を有しない酸化ケイ素とを研磨し、凹凸の有無に対する研磨速度の依存性を評価した。その結果、特定の添加剤を用いることが有効であることを見出した。
【0025】
本実施形態の一態様である態様Aは、砥粒と、カチオン性ポリマーと、アミノ基含有芳香族化合物及び含窒素複素環化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の環状化合物と、を含有し、前記カチオン性ポリマーが、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖と、前記炭素原子に結合した水酸基と、を有する、CMP研磨液を提供する。
【0026】
態様Aに係るCMP研磨液によれば、凹凸を有する被研磨材料の高い研磨速度を達成しつつ、凹凸を有しない被研磨材料に対して、凹凸を有する被研磨材料の高い研磨速度比(凹凸を有する被研磨材料の研磨速度/凹凸を有しない被研磨材料の研磨速度。以下、単に「研磨速度比」という)を達成することが可能であり、特に、凹凸を有する絶縁材料(酸化ケイ素等)の高い研磨速度を達成しつつ、凹凸を有しない絶縁材料(酸化ケイ素等)に対して、凹凸を有する絶縁材料(酸化ケイ素等)の高い研磨速度比を達成することができる。このようなCMP研磨液によれば、凹凸を有しない被研磨材料に対して、凹凸を有する被研磨材料の高い研磨速度比を達成可能であることから、凹凸を有する被研磨材料を研磨して凹凸を解消した際の平坦性を更に向上させることができる。態様Aに係るCMP研磨液によれば、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立できる。
【0027】
これらの効果が奏される要因は必ずしも明らかではないが、下記のとおりであると推定される。
すなわち、上述の特定の構造を有するカチオン性ポリマーは、被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)に吸着可能であるが、荷重が強くかかる部分では、研磨中の摩擦によって容易に除去されるのに対し、荷重が強くかかりにくい部分では、除去されることなく吸着部を保護する。そのため、凹凸を有する被研磨材料を研磨する場合、主な研磨対象である凸部に荷重が強くかかることから、カチオン性ポリマーが除去されて研磨が進行するため凸部の高い研磨速度が得られる。一方、凹凸を有さない被研磨材料を研磨する場合、荷重が被研磨面の全体において分散されることから、被研磨材料に荷重が強くかかりにくい。そのため、カチオン性ポリマーが除去されず吸着部を保護することにより研磨が進行しづらいことから高い研磨速度が得られにくい。
また、凹凸を有する被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)の研磨においては、上述のとおり凸部の高い研磨速度が得られるのに対し、荷重がかかりにくい凹部では、カチオン性ポリマーが除去されることなく凹部が保護されるため研磨が進行しにくい。そのため、凹部に対して凸部が優先的に研磨され除去される。
そして、上述の特定の構造を有する環状化合物は、環状化合物中の窒素原子に起因して、砥粒に吸着することにより、被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)に対する砥粒の反応活性を高めることができる。そのため、凹凸を有する被研磨材料を研磨する場合において、荷重が強くかかりカチオン性ポリマーに保護されにくい凸部の研磨速度を高めやすい。
これらの作用により、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立できる。
【0028】
一般に、上述の第一の工程(荒削り)及び第二の工程(仕上げ工程)の二段階の研磨処理においては、第一の工程及び第二の工程で研磨液を変更する場合があるが、上述の態様Aに係るCMP研磨液によれば、第一の工程及び第二の工程の双方の研磨を行うことが可能であることから、生産性及び設備の簡素化を達成できる。
【0029】
本実施形態に係るCMP研磨液によれば、研磨対象の表面形状に大きく依存することなく、高い段差除去性と高い平坦性とを両立することができる。また、本実施形態に係るCMP研磨液によれば、高い段差除去性を得ることができるため、凹凸を有する基板上に設けられた被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)の研磨を好適に行うことができる。そのため、本実施形態に係るCMP研磨液によれば、従来のCMP研磨液では段差除去が比較的困難な基体(例えば半導体材料)であっても、その効果を発揮できる。例えば、メモリセルを有する半導体基板のように、高さ1μm以上の段差を有する被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)、又は、上から見たときに凹部又は凸部がT字形状又は格子形状に設けられた部分を有する被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)を研磨する場合であってもその効果を発揮できる。
【0030】
本実施形態に係るCMP研磨液は、絶縁材料を研磨するために用いられるCMP研磨液であってよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、絶縁材料の荒削りに用いることもできる。絶縁材料は、無機絶縁材料を含んでよく、酸化ケイ素を含んでよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、表面に被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)を有する基体の当該被研磨材料を研磨するための研磨液であってよい。
【0031】
(砥粒)
砥粒は、例えば、セリウム系化合物、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ムライト、窒化ケイ素、α-サイアロン、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素等を含むことができる。砥粒の構成成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。砥粒は、研磨速度の非線形の荷重依存性が得られやすく、凹凸を有する基体(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料を表面に有する基体)に対する高い段差除去性と高い平坦性とを両立しやすい観点、及び、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、セリウム系化合物を含むことが好ましい。
【0032】
セリウム系化合物を含む砥粒を用いたCMP研磨液は、被研磨面に生じる研磨傷が比較的少ないという特長を有する。被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)の高い研磨速度を達成しやすい観点から、砥粒としてシリカ粒子を含むCMP研磨液を用いることができる。しかし、シリカ粒子を用いたCMP研磨液は、一般に被研磨面に研磨傷が生じやすいという課題がある。配線幅が45nm世代以降の微細パターンを有するデバイスにおいては、従来問題にならなかったような微細な傷であっても、デバイスの信頼性に影響するおそれがある。
【0033】
セリウム系化合物としては、酸化セリウム、セリウム水酸化物、硝酸アンモニウムセリウム、酢酸セリウム、硫酸セリウム水和物、臭素酸セリウム、臭化セリウム、塩化セリウム、シュウ酸セリウム、硝酸セリウム、炭酸セリウム等が挙げられる。セリウム系化合物は、酸化セリウムを含むことが好ましい。酸化セリウムを使用することで、研磨速度の非線形の荷重依存性が得られやすく、高い段差除去性と高い平坦性とを両立しやすい観点、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点、及び、研磨傷が少ない被研磨面が得られやすい。
【0034】
酸化セリウムを使用する場合、砥粒は、結晶粒界を有する多結晶酸化セリウム(例えば、結晶粒界に囲まれた複数の結晶子を有する多結晶酸化セリウム)を含むことが好ましい。かかる構成の多結晶酸化セリウム粒子は、単結晶粒子が凝集した単なる凝集体とは異なっており、研磨中の応力により細かくなると同時に、活性面(細かくなる前は外部にさらされていない面)が次々と現れるため、被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)の高い研磨速度を高度に維持できると考えられる。このような多結晶酸化セリウム粒子については、例えば、国際公開公報WO99/31195号に詳しく説明されている。
【0035】
酸化セリウムを含む砥粒の製造方法としては、特に制限はないが、液相合成;焼成、又は、過酸化水素等により酸化する方法などが挙げられる。前記結晶粒界を有する多結晶酸化セリウムを含む砥粒を得る場合には、炭酸セリウム等のセリウム源を焼成する方法が好ましい。前記焼成時の温度は、350~900℃が好ましい。製造された酸化セリウム粒子が凝集している場合は、機械的に粉砕することが好ましい。粉砕方法としては、特に制限はないが、例えば、ジェットミル等による乾式粉砕;遊星ビーズミル等による湿式粉砕が好ましい。ジェットミルは、例えば、「化学工学論文集」、第6巻、第5号、1980、527~532頁に説明されている。
【0036】
砥粒がセリウム系化合物(例えば酸化セリウム)を含む場合、砥粒におけるセリウム系化合物の含有量は、被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)の高い研磨速度が得られやすい観点から、砥粒の全体(CMP研磨液に含まれる砥粒の全体)を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、97質量%以上が極めて好ましく、99質量%以上が非常に好ましい。セリウム系化合物を含む砥粒は、実質的にセリウム系化合物からなる態様(実質的に砥粒の100質量%がセリウム系化合物である態様)であってもよい。
【0037】
砥粒の平均粒径は、被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)の高い研磨速度が得られやすい観点から、50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、70nmを超えることが更に好ましく、75nm以上が特に好ましく、80nm以上が極めて好ましく、85nm以上が非常に好ましく、90nm以上がより一層好ましい。砥粒の平均粒径は、研磨傷を抑制しやすい観点から、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、280nm以下が更に好ましく、250nm以下が特に好ましく、200nm以下が極めて好ましく、180nm以下が非常に好ましく、160nm以下がより一層好ましく、150nm以下が更に好ましく、120nm以下が特に好ましく、100nm以下が極めて好ましく、90nm以下が非常に好ましい。これらの観点から、砥粒の平均粒径は、50~500nmが好ましい。
【0038】
砥粒の平均粒径を制御するためには、従来公知の方法を使用することができる。酸化セリウム粒子を例にすると、砥粒の平均粒径の制御方法としては、上述の焼成温度、焼成時間、粉砕条件等の制御;濾過、分級等の適用などが挙げられる。
【0039】
砥粒の平均粒径としては、砥粒のD50%粒径を用いることができる。「砥粒のD50%粒径」とは、砥粒が分散した研磨液サンプルを散乱式粒度分布計で測定した体積分布の中央値を意味する。砥粒の平均粒径は、例えば、株式会社堀場製作所製のLA-920(商品名)等を用いて、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0040】
砥粒の含有量は、CMP研磨液100質量部に対して下記の範囲が好ましい。砥粒の含有量は、高い研磨速度が達成されやすい観点から、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.08質量部以上が更に好ましく、0.1質量部以上が特に好ましく、0.15質量部以上が極めて好ましく、0.2質量部以上が非常に好ましく、0.3質量部以上がより一層好ましく、0.5質量部以上が更に好ましく、0.8質量部以上が特に好ましく、1.0質量部以上が極めて好ましい。砥粒の含有量は、砥粒の凝集を抑制しやすい観点、及び、高い研磨速度を達成しやすい観点から、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下が更に好ましく、2.0質量部以下が特に好ましく、2.0質量部未満が極めて好ましく、1.5質量部以下が非常に好ましく、1.0質量部以下がより一層好ましい。これらの観点から、砥粒の含有量は、0.01~10質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0041】
(カチオン性ポリマー)
本実施形態に係るCMP研磨液は、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖と、前記炭素原子に結合した水酸基と、を有するカチオン性ポリマー(以下、「特定カチオン性ポリマー」という)を含有する。水酸基は、主鎖の炭素原子に直接結合している。特定カチオン性ポリマーは、平坦化剤として用いることができる。「主鎖」とは、最も長い分子鎖をいう。「特定カチオン性ポリマー」は、カチオン基、又は、カチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーとして定義される。カチオン基としては、アミノ基、イミノ基等が挙げられる。特定カチオン性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
特定カチオン性ポリマーは、研磨速度の非線形の荷重依存性が得られやすい観点、及び、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖を有する構造単位を備えることが好ましい。特定カチオン性ポリマーは、研磨速度の非線形の荷重依存性が得られやすい観点、及び、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖を有する複数種(例えば2種)の構造単位を備えることも好ましい。
【0043】
特定カチオン性ポリマーは、研磨速度の非線形の荷重依存性が得られやすい観点、及び、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、下記特徴の少なくとも一つを満たすことが好ましく、下記特徴の少なくとも一つを満たす構造単位(窒素原子及び炭素原子を含む主鎖を有する構造単位)を備えることがより好ましい。
窒素原子及び炭素原子を含む主鎖は、窒素原子と、当該窒素原子に結合したアルキレン鎖と、を含むことが好ましい。アルキレン鎖の炭素原子に水酸基が結合していることが好ましい。アルキレン鎖の炭素数は、1以上であり、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。アルキレン鎖の炭素数は、6以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。アルキレン鎖の炭素数は、1~6が好ましい。
特定カチオン性ポリマーは、第四級アンモニウム塩を構成する窒素原子を含むことが好ましい。第四級アンモニウム塩は、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる少なくとも一種が結合した窒素原子を含むことが好ましく、メチル基が結合した窒素原子を含むことがより好ましい。第四級アンモニウム塩は、2つのアルキル基が結合した窒素原子を含むことが好ましく、2つのメチル基が結合した窒素原子を含むことがより好ましい。第四級アンモニウム塩は、アンモニウムカチオンと塩化物イオンとを含むことが好ましい。
特定カチオン性ポリマーは、酸付加塩を構成する窒素原子を含むことが好ましく、塩酸塩を構成する窒素原子を含むことがより好ましい。
【0044】
窒素原子と、水酸基が結合した炭素原子とは、隣接していてよく、隣接していなくてよい。特定カチオン性ポリマーは、研磨速度の非線形の荷重依存性が得られやすい観点、及び、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、窒素原子と、水酸基が結合した炭素原子との間に介在する炭化水素基を有することが好ましく、窒素原子と、水酸基が結合した炭素原子との間に介在する炭素数1の炭化水素基(例えばメチレン基)を有することがより好ましい。特定カチオン性ポリマーは、研磨速度の非線形の荷重依存性が得られやすい観点、及び、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖を有する構造単位として、窒素原子と、水酸基が結合した炭素原子との間に介在する炭化水素基を有する構造単位を備えることが好ましく、窒素原子と、水酸基が結合した炭素原子との間に介在する炭素数1の炭化水素基(例えばメチレン基)を有する構造単位を備えることがより好ましい。
【0045】
特定カチオン性ポリマーは、研磨速度の非線形の荷重依存性が得られやすい観点、及び、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、少なくともジメチルアミン及びエピクロロヒドリンを含む原料の反応物(例えば縮合物)を含むことが好ましい。特定カチオン性ポリマーは、研磨速度の非線形の荷重依存性が得られやすい観点、及び、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、少なくともジメチルアミン、アンモニア及びエピクロロヒドリンを含む原料の反応物(例えば縮合物)を含むことも好ましい。反応物を与える原料は、ジメチルアミン、アンモニア及びエピクロロヒドリン以外の化合物を含んでいてよい。特定カチオン性ポリマーは、研磨速度の非線形の荷重依存性が得られやすい観点、及び、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、下記式で表される構造を有する化合物を含むことが好ましい。特定カチオン性ポリマーは、研磨速度の非線形の荷重依存性が得られやすい観点、及び、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、ジメチルアミン/エピクロロヒドリン縮合物(重縮合物)及びジメチルアミン/アンモニア/エピクロロヒドリン縮合物(重縮合物)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。本実施形態に係るCMP研磨液は、特定カチオン性ポリマーとして、ジメチルアミン、エピクロロヒドリン及びエチレンジアミンを含む原料の反応物(例えば縮合物)を含有しなくてよい。
【0046】
【化1】
[式中、aは1以上の整数を示し、bは0以上(例えば1以上)の整数を示す。]
【0047】
特定カチオン性ポリマーの分子量(例えば重量平均分子量)は、特定カチオン性ポリマーが被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)と容易に反応して被研磨材料に強く吸着することにより、研磨速度の非線形の荷重依存性が得られやすいと共に高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、下記の範囲が好ましい。特定カチオン性ポリマーの分子量は、10000以上が好ましく、30000以上がより好ましく、50000以上が更に好ましく、80000以上が特に好ましく、100000以上が極めて好ましく、200000以上が非常に好ましく、300000以上がより一層好ましく、400000以上が更に好ましく、450000以上が特に好ましい。特定カチオン性ポリマーの分子量は、500000以上、600000以上、800000以上、1000000以上、又は、1200000以上であってよい。特定カチオン性ポリマーの分子量は、2000000以下が好ましく、1500000以下がより好ましく、1300000以下が更に好ましく、1200000以下が特に好ましく、1000000以下が極めて好ましく、800000以下が非常に好ましく、600000以下がより一層好ましく、500000以下が更に好ましい。これらの観点から、特定カチオン性ポリマーの分子量は、10000~2000000が好ましく、10000~1000000がより好ましく、50000~500000が更に好ましく、100000~500000が特に好ましい。特定カチオン性ポリマーの分子量(例えば重量平均分子量)は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0048】
特定カチオン性ポリマーは、水溶性であることが好ましい。水への溶解度が高い化合物を使用することにより、所望の量の特定カチオン性ポリマーを良好にCMP研磨液中に溶解させることができる。室温(25℃)の水100gに対する特定カチオン性ポリマーの溶解度は、0.005g以上が好ましく、0.02g以上がより好ましい。溶解度の上限は特に制限はない。
【0049】
特定カチオン性ポリマーの含有量は、CMP研磨液100質量部に対して下記の範囲が好ましい。特定カチオン性ポリマーの含有量は、段差除去性の効果が効率的に得られやすい観点、及び、平坦性が向上しやすい観点から、0.00001質量部以上が好ましく、0.00005質量部以上がより好ましく、0.0001質量部以上が更に好ましく、0.0005質量部以上が特に好ましく、0.0008質量部以上が極めて好ましく、0.001質量部以上が非常に好ましく、0.001質量部を超えることがより一層好ましく、0.0011質量部以上が更に好ましく、0.00112質量部以上が特に好ましく、0.00113質量部以上が極めて好ましい。特定カチオン性ポリマーの含有量は、砥粒の凝集を抑制しやすく、高い段差除去性を達成する効果が安定的且つ効率的に得られやすい観点、及び、CMP研磨液の劣化を防ぎやすく、安定した状態で保管しやすい観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2.5質量部以下が更に好ましく、2.5質量部未満が特に好ましく、2質量部以下が極めて好ましく、1質量部以下が非常に好ましく、0.5質量部以下がより一層好ましく、0.1質量部以下が更に好ましく、0.05質量部以下が特に好ましく、0.01質量部以下が極めて好ましく、0.01質量部未満が非常に好ましく、0.005質量部以下がより一層好ましく、0.004質量部以下が更に好ましく、0.003質量部以下が特に好ましく、0.002質量部以下が極めて好ましく、0.0015質量部以下が非常に好ましく、0.0013質量部以下がより一層好ましく、0.0012質量部以下が更に好ましく、0.00115質量部以下が特に好ましく、0.00113質量部以下が極めて好ましい。特定カチオン性ポリマーの含有量は、高い研磨速度が達成されやすい観点から、0.00112質量部以下が好ましく、0.0011質量部以下がより好ましく、又は、0.001質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、特定カチオン性ポリマーの含有量は、0.00001~10質量部が好ましく、0.00001~5質量部がより好ましく、0.00001~1質量部が更に好ましく、0.00005~0.5質量部が特に好ましく、0.0001~0.1質量部が極めて好ましい。特定カチオン性ポリマーの含有量は、特定カチオン性ポリマーの種類に応じて適宜調整することができる。
【0050】
上述の態様Aに係るCMP研磨液では、特定カチオン性ポリマーの含有量は、CMP研磨液100質量部に対して下記の範囲が好ましい。特定カチオン性ポリマーの含有量は、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、0.00001質量部以上が好ましく、0.00005質量部以上がより好ましく、0.0001質量部以上が更に好ましく、0.0005質量部以上が特に好ましく、0.0008質量部以上が極めて好ましく、0.001質量部以上が非常に好ましく、0.001質量部を超えることがより一層好ましく、0.0011質量部以上が更に好ましく、0.00113質量部以上が特に好ましく、0.0015質量部以上が極めて好ましく、0.002質量部以上が非常に好ましく、0.003質量部以上がより一層好ましく、0.004質量部以上が更に好ましい。特定カチオン性ポリマーの含有量は、特定カチオン性ポリマーの被研磨材料への過剰な吸着を抑制しやすく、高い段差除去性と高い研磨速度比とを安定的且つ効率的に両立しやすい観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2.5質量部以下が更に好ましく、2.5質量部未満が特に好ましく、2質量部以下が極めて好ましく、1質量部以下が非常に好ましく、0.5質量部以下がより一層好ましく、0.1質量部以下が更に好ましく、0.05質量部以下が特に好ましく、0.01質量部以下が極めて好ましく、0.01質量部未満が非常に好ましく、0.005質量部以下がより一層好ましく、0.004質量部以下がより一層好ましい。特定カチオン性ポリマーの含有量は、0.003質量部以下又は0.002質量部以下であってよい。これらの観点から、特定カチオン性ポリマーの含有量は、0.00001~10質量部が好ましく、0.00001~5質量部がより好ましく、0.00001~1質量部が更に好ましく、0.00005~0.5質量部が特に好ましく、0.0001~0.1質量部が極めて好ましい。
【0051】
(環状化合物)
本実施形態に係るCMP研磨液は、上述の態様Aに係るCMP研磨液として、アミノ基含有芳香族化合物(アミノ基含有芳香環化合物。含窒素複素環化合物に該当する化合物を除く)及び含窒素複素環化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の環状化合物(特定カチオン性ポリマーに該当する化合物を除く。以下、「特定環状化合物」という)を含有することができる。特定環状化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
アミノ基含有芳香族化合物は、アミノ基及び芳香環(含窒素複素芳香環を除く)を有する化合物である。アミノ基含有芳香族化合物は、芳香環に結合するアミノ基を有してよい。
【0053】
芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。アミノ基含有芳香族化合物は、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、ベンゼン環を有する化合物を含むことが好ましい。
【0054】
アミノ基含有芳香族化合物は、芳香環に結合する官能基(アミノ基を除く)を有してよい。このような官能基としては、カルボキシ基、カルボン酸塩基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキル基、エステル基、スルホ基、スルホン酸塩基、カルボニル基、アミド基、カルボキサミド基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。芳香環に結合する官能基の数は、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、1、2又は3が好ましい。アミノ基含有芳香族化合物は、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、芳香環に結合する官能基として、カルボキシ基及びカルボン酸塩基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する化合物を含むことが好ましい。
【0055】
アミノ基含有芳香族化合物としては、アミノベンゼン(アニリン)、アミノ安息香酸(2-アミノ安息香酸、3-ピリジンカルボン酸、4-ピリジンカルボン酸等)、アミノ安息香酸塩(例えばアミノ安息香酸ナトリウム)、アミノフェノール、アミノアルコキシベンゼン、アルキルアミノベンゼン、アミノ安息香酸エステル、アミノベンゼンスルホン酸等が挙げられる。アミノ基含有芳香族化合物は、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、芳香環に結合する官能基として、アミノ基と、カルボキシ基及びカルボン酸塩基からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を有する化合物を含むことが好ましく、アミノ安息香酸及びアミノ安息香酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0056】
含窒素複素環化合物は、含窒素複素環を有する化合物である。含窒素複素環としては、ピリジン環、イミダゾール環(ベンゾイミダゾール環も包含する)、ピロール環、ピリミジン環、モルホリン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピラジン環、ラクタム環(ピロリドン環、ピペリドン環、ε-カプロラクタム環等)などが挙げられる。含窒素複素環は、5員環又は6員環であってよい。含窒素複素環における窒素原子の数は、1又は2であってよい。含窒素複素環化合物は、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、含窒素複素芳香環を有する化合物を含むことが好ましく、ピリジン環を有する化合物(ピリジン化合物)を含むことがより好ましい。
【0057】
含窒素複素環化合物は、含窒素複素環に結合する官能基を有してよい。このような官能基としては、カルボキシ基、カルボン酸塩基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキル基、エステル基、スルホ基、スルホン酸塩基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、カルボキサミド基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。含窒素複素環に結合する官能基の数は、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、1、2又は3が好ましい。含窒素複素環化合物は、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、含窒素複素環に結合する官能基として、カルボキシ基、カルボン酸塩基、カルボニル基及びカルボキサミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する化合物を含むことが好ましい。
【0058】
含窒素複素環化合物としては、ピリジン、ピリジンカルボン酸(2-ピリジンカルボン酸、3-ピリジンカルボン酸、4-ピリジンカルボン酸等)、ピリジニルケトン(1-(2-ピリジニル)-1-エタノン等)、ピリジニルカルボキサミド(ピリジン-3-カルボキサミド等)、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、ピリミジン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピラジンなどが挙げられる。アミノ基含有芳香族化合物は、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、ピリジンカルボン酸、1-(2-ピリジニル)-1-エタノン、及び、ピリジン-3-カルボキサミドからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0059】
特定環状化合物の含有量、アミノ基含有芳香族化合物の含有量、又は、含窒素複素環化合物の含有量は、CMP研磨液100質量部に対して下記の範囲が好ましい。上述の各化合物の含有量は、高い段差除去性と高い研磨速度比とを安定して両立しやすい観点から、0.001質量部以上が好ましく、0.002質量部以上がより好ましく、0.005質量部以上が更に好ましく、0.01質量部以上が特に好ましく、0.03質量部以上が極めて好ましく、0.05質量部以上が非常に好ましく、0.08質量部以上がより一層好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.12質量部以上が特に好ましく、0.15質量部以上が極めて好ましく、0.2質量部以上が非常に好ましい。上述の各化合物の含有量は、特定環状化合物を充分に溶解性させやすく、高い段差除去性と高い研磨速度比とを両立しやすい観点から、1質量部以下が好ましく、0.8質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下が更に好ましく、0.3質量部以下が特に好ましく、0.2質量部以下が極めて好ましい。これらの観点から、上述の各化合物の含有量は、0.001~1質量部が好ましく、0.002~1質量部がより好ましい。
【0060】
本実施形態に係るCMP研磨液は、上述の態様Aとは異なる態様に係るCMP研磨液として、特定環状化合物を含有しなくてもよい。特定環状化合物の含有量、アミノ基含有芳香族化合物の含有量、又は、含窒素複素環化合物の含有量は、CMP研磨液100質量部に対して、0.0001質量部以下、0.0001質量部未満、0.00005質量部以下、0.00001質量部以下、0.00001質量部未満、又は、実質的に0質量部であってよい。
【0061】
(水)
本実施形態に係るCMP研磨液は、水を含有することができる。水としては、特に制限されるものではないが、脱イオン水、イオン交換水及び超純水からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0062】
(研磨速度向上剤)
本実施形態に係るCMP研磨液は、研磨速度向上剤を含有することが可能であり、研磨速度向上剤を含有しなくてもよい。研磨速度向上剤としては、サリチルアルドキシム等が挙げられる。サリチルアルドキシムは、被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)の研磨速度を向上させる研磨速度向上剤として用いることができる。
【0063】
研磨速度向上剤(例えばサリチルアルドキシム)の含有量は、CMP研磨液100質量部に対して下記の範囲が好ましい。研磨速度向上剤の含有量は、高い研磨速度が達成されやすい観点から、0.001質量部以上が好ましく、0.003質量部以上がより好ましく、0.005質量部以上が更に好ましく、0.01質量部以上が特に好ましく、0.02質量部以上が極めて好ましく、0.03質量部以上が非常に好ましい。研磨速度向上剤の含有量は、高い研磨速度が達成されやすい観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、1質量部以下が更に好ましく、0.5質量部以下が特に好ましく、0.1質量部以下が極めて好ましく、0.08質量部以下が非常に好ましく、0.05質量部以下がより一層好ましく、0.04質量部以下が更に好ましく、0.035質量部以下が特に好ましい。これらの観点から、研磨速度向上剤の含有量は、0.001~10質量部が好ましく、0.01~10質量部がより好ましい。研磨速度向上剤はサリチルアルドキシムを含んでよく、サリチルアルドキシムの含有量は、CMP研磨液100質量部に対して、上述の研磨速度向上剤の含有量の各範囲であることが好ましい。
【0064】
(界面活性剤)
本実施形態に係るCMP研磨液は、砥粒の分散安定性、及び/又は、被研磨面の平坦性を更に向上させる観点から、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられ、CMP研磨液中の砥粒の分散安定性が向上しやすい観点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
非イオン性界面活性剤として、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル誘導体、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリエチレングリコールのオキシエチレン付加体、メトキシポリエチレングリコールのオキシエチレン付加体、アセチレン系ジオールのオキシエチレン付加体等のエーテル型界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等のエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のアミノエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル等のエーテルエステル型界面活性剤;脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド等のアルカノールアミド型界面活性剤;アセチレン系ジオールのオキシエチレン付加体;ポリビニルピロリドン;ポリアクリルアミド;ポリジメチルアクリルアミド;ポリビニルアルコールなどが挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
(他の成分)
本実施形態に係るCMP研磨液は、所望とする特性に合わせてその他の成分を含有していてもよい。このような成分としては、後述するpH調整剤;pHの変動を抑えるためのpH緩衝剤;エタノール、アセトン等の有機溶媒;4-ピロン系化合物;アミノカルボン酸;環状モノカルボン酸などが挙げられる。
【0067】
炭酸グアニジンの含有量は、CMP研磨液100質量部に対して、0.001質量%以下、0.001質量%未満、又は、0.0001質量%以下であってよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、炭酸グアニジンを含有しなくてよい(炭酸グアニジンの含有量は、CMP研磨液100質量部に対して実質的に0質量部であってよい)。ヒドロキシアルキルセルロースの含有量は、CMP研磨液100質量部に対して、0.005質量%以下、0.005質量%未満、又は、0.001質量%以下であってよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、ヒドロキシアルキルセルロースを含有しなくてよい(ヒドロキシアルキルセルロースの含有量は、CMP研磨液100質量部に対して実質的に0質量部であってよい)。
【0068】
(pH)
本実施形態に係るCMP研磨液のpHは、下記の範囲が好ましい。pHは、CMP研磨液と被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)との濡れ性が向上する観点、砥粒の凝集を抑制しやすい観点、及び、特定カチオン性ポリマーを添加した効果が得られやすい観点から、8.0以下が好ましく、8.0未満がより好ましく、7.0以下が更に好ましく、6.0以下が特に好ましく、6.0未満が極めて好ましく、5.0以下が非常に好ましく、4.5以下がより一層好ましく、4.0以下が更に好ましく、3.5以下が特に好ましい。pHは、被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)のゼータ電位の絶対値を大きな値とすることが可能であり、更に高い研磨速度が達成されやすい観点から、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、2.5以上が更に好ましく、3.0以上が特に好ましく、3.0を超えることが極めて好ましく、3.2以上が非常に好ましく、3.5以上がより一層好ましい。これらの観点から、pHは、1.5~8.0が好ましく、2.0~5.0がより好ましい。pHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0069】
上述の態様Aに係るCMP研磨液のpHは、下記の範囲が好ましい。pHは、CMP研磨液と被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)との濡れ性が向上する観点、砥粒の凝集を抑制しやすい観点、及び、特定カチオン性ポリマーを添加した効果が得られやすい観点から、8.0以下が好ましく、8.0未満がより好ましく、7.0以下が更に好ましく、6.0以下が特に好ましく、6.0未満が極めて好ましく、5.0以下が非常に好ましく、4.5以下がより一層好ましく、4.0以下が更に好ましく、3.5以下が特に好ましい。pHは、被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)のゼータ電位の絶対値を小さな値とすることが可能であり、更に高い研磨速度が達成されやすい観点から、1.5以上が好ましく、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましく、3.0を超えることが特に好ましく、3.2以上が極めて好ましく、3.5以上が非常に好ましい。これらの観点から、pHは、2.0~8.0が好ましく、2.0~5.0がより好ましい。
【0070】
本実施形態に係るCMP研磨液のpHは、pHメータ(例えば、株式会社堀場製作所製の型番D-71S)で測定することができる。例えば、フタル酸塩pH緩衝液(pH:4.01)と中性リン酸塩pH緩衝液(pH:6.86)とホウ酸塩pH緩衝液(pH:9.18)とを標準緩衝液として用いてpHメータを3点校正した後、pHメータの電極をCMP研磨液に入れて、3分以上経過して安定した後の値を測定する。このとき、標準緩衝液とCMP研磨液の液温は共に25℃とする。
【0071】
CMP研磨液のpHを1.5~8.0(例えば2.0~8.0)の範囲内に調整することで、次の2つの効果が得られると考えられる。
(1)添加剤として配合した化合物にプロトン又はヒドロキシアニオンが作用して、当該化合物の化学形態が変化し、基体表面の酸化ケイ素及び/又はストッパ材料(例えば窒化ケイ素)に対する濡れ性及び親和性が向上する。
(2)砥粒が酸化セリウムを含む場合、砥粒と酸化ケイ素膜との接触効率が向上し、更に高い研磨速度が達成される。これは、酸化セリウムのゼータ電位の符号が正であるのに対し、酸化ケイ素膜のゼータ電位の符号が0又は負であり、両者の間に静電的引力が働くためであると考えられる。
【0072】
CMP研磨液のpHは、添加剤として使用する化合物の種類によって変化し得る。そのため、CMP研磨液は、pHを前記の範囲に調整するためにpH調整剤を含有していてもよい。pH調整剤としては、酸成分、塩基成分等が挙げられる。酸成分としては、プロピオン酸、酢酸等の有機酸(アミノ酸に該当する化合物を除く);硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸;グリシン等のアミノ酸などが挙げられる。塩基成分としては、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。本実施形態に係るCMP研磨液は、酸成分を含有してよく、有機酸を含有してよい。生産性が向上する観点から、pH調整剤を使用することなく調製されたCMP研磨液をCMPにそのまま適用してもよい。
【0073】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法は、本実施形態に係るCMP研磨液を用いて被研磨材料を研磨する研磨工程を備える。研磨工程は、例えば、本実施形態に係るCMP研磨液を用いて、表面に絶縁材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)を有する基体の当該絶縁材料を研磨する工程である。研磨工程は、例えば、本実施形態に係るCMP研磨液を被研磨材料(例えば絶縁材料)と研磨用部材(研磨パッド等)との間に供給しながら、研磨部材によって被研磨材料を研磨する工程である。被研磨材料は、絶縁材料を含んでよく、無機絶縁材料を含んでよく、酸化ケイ素を含んでよい。研磨工程は、例えば、各成分の含有量、pH等が調整されたCMP研磨液を使用し、表面に絶縁材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)を有する基体をCMP技術によって平坦化する工程である。被研磨材料は、膜状(被研磨膜)であってよく、酸化ケイ素膜等の絶縁膜であってよい。
【0074】
本実施形態に係る研磨方法は、以下のようなデバイスの製造過程において、表面に被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)を有する基体を研磨することに適している。デバイスとしては、例えば、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体;DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリー)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリー)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、フラッシュメモリ等の記憶素子;マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子;MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子;混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子などが挙げられる。
【0075】
本実施形態に係る研磨方法は、表面に段差(凹凸)を有する基体における当該表面の平坦化に特に適している。本実施形態では、高い段差除去性と高い平坦性とを両立することができることから、従来のCMP研磨液を用いた方法では達成することが困難であった各種基体を研磨することができる。基体としては、ロジック用の半導体デバイス、メモリ用の半導体デバイス等が挙げられる。被研磨材料は、高さ1μm以上の段差を有する被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)、又は、上から見たときに凹部又は凸部がT字形状又は格子形状に設けられた部分を有する被研磨材料であってよい。例えば、被研磨材料を有する研磨対象は、メモリセルを有する半導体基板であってよい。本実施形態によれば、メモリセルを有する半導体基板を備える半導体デバイス(DRAM、フラッシュメモリ等)の表面に設けられた絶縁材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)も高い研磨速度で研磨できる。本実施形態によれば、3D-NANDフラッシュメモリの表面に設けられた絶縁材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)についても、高い平坦性を確保しつつ高い研磨速度で研磨することができる。
【0076】
研磨対象は、表面全体を覆う酸化ケイ素を有する基体に限らず、表面に酸化ケイ素の他に窒化ケイ素、多結晶シリコン等を更に有する基体であってもよい。研磨対象は、所定の配線を有する配線板上に絶縁材料(例えば、酸化ケイ素、ガラス、窒化ケイ素等の無機絶縁材料)、ポリシリコン、Al、Cu、Ti、TiN、W、Ta、TaNなどが形成された基体であってよい。
【0077】
図1を参照して、本実施形態に係る研磨方法においてCMPによって基体(ウエハ)にSTI構造を形成するプロセスについて説明する。
図1は、酸化ケイ素膜が研磨されてSTI構造が形成される過程を示す模式断面図である。本実施形態に係る研磨方法は、高い段差除去性(高い研磨速度)で酸化ケイ素膜3を研磨する第一の工程(荒削り工程)と、酸化ケイ素膜3の残りの部分を任意の膜厚となるように低い研磨速度で研磨する第二の工程(仕上げ工程)とを備える。
【0078】
図1(a)は研磨前の基体を示す断面図である。
図1(b)は第一の工程後の基体を示す断面図である。
図1(c)は第二の工程後の基体を示す断面図である。これらの図に示すように、STI構造を形成する過程では、シリコン基板1上に成膜した酸化ケイ素膜3の段差Dを解消するため、部分的に突出した不要な箇所をCMPによって優先的に除去する。表面が平坦化した時点で適切に研磨を停止させるため、酸化ケイ素膜3の下には、研磨速度の遅い窒化ケイ素膜(ストッパ膜)2を予め形成しておくことが好ましい。第一の工程及び第二の工程を経ることによって酸化ケイ素膜3の段差(膜厚の標高差)Dが解消され、埋め込み部分5を有する素子分離構造が形成される。
【0079】
酸化ケイ素膜3を研磨するには、酸化ケイ素膜3の表面と研磨パッドとが当接するように研磨パッド上に基体を配置し、研磨パッドによって酸化ケイ素膜3の表面を研磨する。より具体的には、研磨定盤の研磨パッドに酸化ケイ素膜3の被研磨面を押し当て、被研磨面と研磨パッドとの間にCMP研磨液を供給しながら、両者を相対的に動かすことによって研磨パッドによって酸化ケイ素膜3を研磨する。
【0080】
本実施形態に係るCMP研磨液は、高い段差除去性と高い平坦性とを有するため、第一及び第二の工程のいずれにも適用可能であり、第二の工程において好適に使用することができる。ここでは、研磨工程を二段階に分けて実施する場合を例示したが、生産性及び設備の簡素化の観点から、
図1(a)に示す状態から
図1(c)に示す状態まで一段階で研磨処理することもできる。
【0081】
図2~4は、本実施形態に係る研磨方法において基体が研磨される過程を示す模式断面図であり、凹凸を有する被研磨材料を研磨して凹凸が解消される過程を示す模式断面図である。
図2~4の(a)は研磨前の基体を示す断面図である。
図2~4の(b)は研磨後の基体を示す断面図である。
【0082】
図2~4の(a)に示す基体100,200,300は、集積メモリセル110,210,310と、集積メモリセル110,210,310の周囲に配置されると共に集積メモリセル110,210,310上に配置された絶縁部材(例えば酸化ケイ素部材)120,220,320と、を備える。基体100,200は、集積メモリセル110,210を一つ有しており、基体300は、絶縁部材320を介して配置された複数の集積メモリセル310を有している。基体100における絶縁部材120は、集積メモリセル110の周囲に配置された下層部120aと、集積メモリセル110の外周部の上に配置されると共に集積メモリセル110の厚さ方向に延びる上層部120bと、を有している。基体200における絶縁部材220は、集積メモリセル110の周囲に配置された部分、及び、集積メモリセル210上において集積メモリセル210の全体を覆う部分からなる下層部220aと、集積メモリセル110の外周部の上方に位置すると共に集積メモリセル210の厚さ方向に延びる上層部220bと、を有している。基体300における絶縁部材320は、集積メモリセル310の周囲に配置された部分、集積メモリセル310の間に配置された部分、及び、集積メモリセル310上において集積メモリセル310の全体を覆う部分からなる下層部320aと、それぞれの集積メモリセル310の上方に位置すると共に集積メモリセル310の厚さ方向に延びる上層部320bと、を有している。
【0083】
本実施形態に係る研磨方法では、基体100,200,300の上層部120b,220b,320bを研磨して除去し、集積メモリセル110,210,310上を平坦化する。平坦化した時点で適切に研磨を停止させるため、研磨速度の遅いストッパ膜(窒化ケイ素膜等)を予め段差部の下に形成しておいてもよい。
【0084】
研磨装置としては、例えば、基体を保持するホルダーと、研磨パッドが貼り付けられる研磨定盤と、研磨パッド上にCMP研磨液を供給する手段と、を備える装置が好適である。研磨装置としては、株式会社荏原製作所製の研磨装置(型番:EPO-111、EPO-222、FREX200、FREX300等)、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置(商品名:Mirra3400、Reflexion等)などが挙げられる。研磨パッドとしては、特に制限はなく、例えば、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等を使用することができる。研磨パッドは、CMP研磨液が溜まるような溝加工が施されたものが好ましい。
【0085】
研磨条件として、特に制限はないが、基体が飛び出さないようにする観点から、研磨定盤の回転速度は200rpm(min-1)以下が好ましく、基体にかける圧力(加工荷重)は、被研磨面の傷を抑制しやすい観点から、100kPa以下が好ましい。研磨している間、ポンプ等によって研磨パッドにCMP研磨液を連続的に供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常にCMP研磨液で覆われていることが好ましい。
【0086】
研磨終了後、流水中で基体を充分に洗浄し、さらに、基体上に付着した水滴をスピンドライヤ等により払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【0087】
このように研磨することによって、表面の凹凸を解消し、基体全面にわたって平滑な面を得ることができる。被研磨材料の形成及び研磨を所定の回数繰り返すことによって、所望の層数を有する基体を製造することができる。
【0088】
このようにして得られた基体は、種々の電子部品及び機械部品として使用することができる。具体例としては、半導体素子;フォトマスク、レンズ、プリズム等の光学ガラス;ITO等の無機導電膜;ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路;光ファイバーの端面、シンチレータ等の光学用単結晶;固体レーザ単結晶;青色レーザLED用サファイヤ基板;SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶;磁気ディスク用ガラス基板;磁気ヘッドなどが挙げられる。
【0089】
本実施形態に係る部品の製造方法は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体を個片化する個片化工程を備える。個片化工程は、例えば、本実施形態に係る研磨方法により研磨されたウエハ(例えば半導体ウエハ)をダイシングしてチップ(例えば半導体チップ)を得る工程であってよい。本実施形態に係る部品の製造方法は、個片化工程の前に、本実施形態に係る研磨方法により基体を研磨する工程を備えてよい。本実施形態に係る部品は、例えばチップ(例えば半導体チップ)である。本実施形態に係る部品は、本実施形態に係る部品の製造方法により得られる部品である。本実施形態に係る電子デバイスは、本実施形態に係る部品を備える。
【実施例0090】
以下、本開示を実施例により更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
{実験A}
<砥粒の作製>
炭酸セリウム水和物40kgをアルミナ製容器に入れた後、830℃で2時間、空気中で焼成して黄白色の粉末を20kg得た。この粉末についてX線回折法で相同定を行い、当該粉末が多結晶体の酸化セリウムを含むことを確認した。焼成によって得られた粉末の粒径をSEMで観察したところ、20~100μmであった。次いで、ジェットミルを用いて酸化セリウム粉末20kgを乾式粉砕した。粉砕後の酸化セリウム粉末をSEMで観察したところ、結晶粒界を有する多結晶酸化セリウムを含む粒子が含まれていることが確認された。また、酸化セリウム粉末の比表面積は9.4m2/gであった。比表面積の測定はBET法によって実施した。
【0092】
<CMP研磨液の作製>
上述の酸化セリウム粉末15kg、及び、脱イオン水84.7kgを容器内に入れて混合した。さらに、1Nの酢酸水溶液0.3kgを添加して10分間撹拌することにより酸化セリウム混合液を得た。この酸化セリウム混合液を別の容器に30分かけて送液した。その間、送液する配管内で、酸化セリウム混合液に対して超音波周波数400kHzにて超音波照射を行った。
【0093】
500mLビーカー4個にそれぞれ500gの酸化セリウム混合液を採取し、遠心分離を行った。遠心分離は、外周にかかる遠心力が500Gになるような条件で2分間実施した。ビーカーの底に沈降した酸化セリウム粒子(砥粒)を回収し、上澄みを分取した。動的光散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製、商品名:LA-920)を用いて、砥粒含有量5質量%の砥粒分散液における砥粒の平均粒径を測定した結果、平均粒径は90nmであった。
【0094】
上述の砥粒と、表1に記載の添加剤Aと、サリチルアルドキシムと、プロピオン酸と、脱イオン水とを混合することにより、砥粒1.0質量%と、添加剤Aと、サリチルアルドキシム0.034質量%と、プロピオン酸0.09質量%と、脱イオン水(残部)と、を含有するCMP研磨液を得た。添加剤Aの含有量について、実施例A1、A2及びA4は0.00100質量%、実施例A3は0.00113質量%、比較例A1及びA3は0.00800質量%、比較例A2は0.02500質量%に調整した。ポリマー水溶液を用いて添加剤Aを供給する場合、添加剤Aの前記含有量は、ポリマー水溶液中のポリマーの質量に基づき算出した。添加剤Aとしては、下記の化合物を用いた。
【0095】
(添加剤A)
[特定カチオン性ポリマー]
A1:ジメチルアミン/アンモニア/エピクロロヒドリン重縮合物(センカ株式会社製、商品名:ユニセンスKHE1001L、重量平均分子量:100000~500000)
A2:ジメチルアミン/アンモニア/エピクロロヒドリン重縮合物(センカ株式会社製、商品名:ユニセンスKHE105L、重量平均分子量:479796(測定値))
A3:ジメチルアミン/アンモニア/エピクロロヒドリン重縮合物(センカ株式会社製、商品名:ユニセンスKHE1000L、重量平均分子量:1296145(測定値))
[特定カチオン性ポリマーに該当しない化合物]
A4:ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物(センカ株式会社製、商品名:ユニセンスFPA1000L)
A5:ビニルピロリドン/N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名:H.C.ポリマー2L)
A6:ベンゼンスルホン酸
【0096】
上述の特定カチオン性ポリマーA2及びA3の重量平均分子量の測定値は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリエチレンオキシド(東ソー株式会社製、SE-2、SE-5、SE-30及びSE-150)、プルラン(PSS製、pss-dpul 2.5m)、並びに、ポリエチレングリコール(富士フィルム和光純薬株式会社製、PEG400、PEG1000、PEG3000及びPEG6000)を用いて3次式で近似した。
ポンプ:株式会社島津製作所製、商品名「LC-20AD」
検出器:株式会社島津製作所製、商品名「RID-10A」
カラムオーブン:株式会社島津製作所製、商品名「CTO-20AC」
カラム:東ソー株式会社製の商品名「TSKGelG6000PWXL-CP」を2本直列に接続
カラムサイズ:7.8mmI.D×300mm
溶離液:0.1M硝酸ナトリウム水溶液
試料濃度:4mg/2mL(N.V.換算)
注入量:100μL
流量:1.0mL/min
測定温度:25℃
【0097】
CMP研磨液のpHを以下の条件により測定した。実施例及び比較例のいずれについてもpHは3.5であった。
測定温度:25℃
測定装置:株式会社堀場製作所製、型番D-71S
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃);ホウ酸塩pH緩衝液、pH:9.18)を用いて3点校正した後、電極をCMP研磨液に入れて、3分以上経過して安定した後のpHを前記測定装置により測定した。
【0098】
<研磨特性評価>
(研磨速度の荷重依存性の評価)
上述の各CMP研磨液を使用し、表面に酸化ケイ素膜を有するブランケットウエハを下記研磨条件で研磨して研磨速度(ブランケットウエハ研磨速度)を求めた。ブランケットウエハとして、直径300mmのシリコン基板上に配置された膜厚1000nmの酸化ケイ素膜を有するウエハを用いた。
【0099】
[研磨条件]
研磨装置:CMP用研磨機、Reflexion-LK(APPLIED MATERIALS社製)
研磨パッド:多孔質ウレタンパッドIC-1010(デュポン株式会社製)
研磨圧力(荷重):3.0psi又は4.0psi
定盤回転数:126rpm
ヘッド回転数:125rpm
CMP研磨液の供給量:250mL/min
研磨時間:30秒
【0100】
荷重3.0psi(低荷重)及び4.0psi(高荷重)における研磨速度の差「4.0psi値-3.0psi値」に基づき研磨速度の荷重依存性を評価した。表1に示すとおり、実施例では、荷重4.0psi時と荷重3.0psi時とで大きな研磨速度差を達成することが可能であり、研磨速度の非線形の荷重依存性を得ることができることが確認される。
【0101】
【0102】
{実験B}
<砥粒の作製>
炭酸セリウム水和物40kgをアルミナ製容器に入れた後、830℃で2時間、空気中で焼成して黄白色の粉末を20kg得た。この粉末についてX線回折法で相同定を行い、当該粉末が多結晶体の酸化セリウムを含むことを確認した。焼成によって得られた粉末の粒径をSEMで観察したところ、20~100μmであった。次いで、ジェットミルを用いて酸化セリウム粉末20kgを乾式粉砕した。粉砕後の酸化セリウム粉末をSEMで観察したところ、結晶粒界を有する多結晶酸化セリウムを含む粒子が含まれていることが確認された。また、酸化セリウム粉末の比表面積は9.4m2/gであった。比表面積の測定はBET法によって実施した。
【0103】
<CMP研磨液の作製>
上述の酸化セリウム粉末15kg、及び、脱イオン水84.7kgを容器内に入れて混合した。さらに、1Nの酢酸水溶液0.3kgを添加して10分間撹拌することにより酸化セリウム混合液を得た。この酸化セリウム混合液を別の容器に30分かけて送液した。その間、送液する配管内で、酸化セリウム混合液に対して超音波周波数400kHzにて超音波照射を行った。
【0104】
500mLビーカー4個にそれぞれ500gの酸化セリウム混合液を採取し、遠心分離を行った。遠心分離は、外周にかかる遠心力が500Gになるような条件で2分間実施した。ビーカーの底に沈降した酸化セリウム粒子(砥粒)を回収し、上澄みを分取した。動的光散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製、商品名:LA-920)を用いて、砥粒含有量5質量%の砥粒分散液における砥粒の平均粒径を測定した結果、平均粒径は90nmであった。
【0105】
上述の砥粒と、カチオン性ポリマー(ジメチルアミン/アンモニア/エピクロロヒドリン重縮合物、センカ株式会社製、商品名:ユニセンスKHE105L、重量平均分子量:479796(測定値))と、表2に記載の環状化合物と、プロピオン酸と、脱イオン水とを混合することにより、砥粒1.0質量%と、カチオン性ポリマーと、環状化合物と、プロピオン酸0.09質量%と、脱イオン水(残部)と、を含有するCMP研磨液を得た。カチオン性ポリマー及び環状化合物の含有量は表2に示すとおりであり、比較例B2及びB3では、カチオン性ポリマーを使用せず、比較例B1及びB2では、環状化合物を使用しなかった。カチオン性ポリマーの含有量は、ポリマー水溶液中のポリマーの質量に基づき算出した。
【0106】
CMP研磨液のpHを以下の条件により測定した。実施例及び比較例のいずれについてもpHは3.5であった。
測定温度:25℃
測定装置:株式会社堀場製作所製、型番D-71S
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃);ホウ酸塩pH緩衝液、pH:9.18)を用いて3点校正した後、電極をCMP研磨液に入れて、3分以上経過して安定した後のpHを前記測定装置により測定した。
【0107】
<研磨特性評価>
(研磨速度の荷重依存性の評価)
上述の各CMP研磨液を使用し、上述の実験Aと同様の手順で、荷重3.0psi(低荷重)及び4.0psi(高荷重)における研磨速度の差「4.0psi値-3.0psi値」に基づき研磨速度の荷重依存性を評価した。実施例では、荷重4.0psi時と荷重3.0psi時とで大きな研磨速度差(6500Å/min以上の差)を達成することが可能であり、研磨速度の非線形の荷重依存性を得ることができることが確認される。
【0108】
(研磨速度比の評価)
上述の各CMP研磨液を使用し、平坦な酸化ケイ素膜を表面に有するブランケットウエハ、及び、凹凸形状の酸化ケイ素膜を表面に有するパターンウエハを下記研磨条件で研磨して研磨速度を求めた。ブランケットウエハとして、直径300mmのシリコン基板上に配置された膜厚1000nmの酸化ケイ素膜を有するウエハを用いた。パターンウエハとして、直径300mmのシリコン基板上の一部を深さ3μmエッチングして直線状の凹部を形成することによりLine/Space=20/80μmの凹凸パターンを形成した後、厚さ4μmの酸化ケイ素膜を凸部上及び凹部内に成膜して得られたウエハを用いた。
【0109】
[研磨条件]
研磨装置:CMP用研磨機、Reflexion-LK(APPLIED MATERIALS社製)
研磨パッド:多孔質ウレタンパッドIC-1010(デュポン株式会社製)
研磨圧力(荷重):3.0psi
定盤回転数:126rpm
ヘッド回転数:125rpm
CMP研磨液の供給量:250mL/min
研磨時間:30秒
【0110】
ブランケットウエハにおける酸化ケイ素膜の除去量と研磨時間とに基づきブランケットウエハの研磨速度を算出した。パターンウエハにおける凸部の酸化ケイ素膜の除去量と研磨時間とに基づきパターンウエハの研磨速度を算出した。また、パターンウエハとブランケットウエハとの研磨速度比を算出した。結果を表2に示す。
【0111】
【0112】
表2の結果から、実施例では、比較例と比較して、パターンウエハの研磨速度が90000Å/min以上と速く、パターンウエハとブランケットウエハとの研磨速度比が3.0以上と高いことが示された。
【0113】
本発明者等は発明を実施する最良の形態を明細書に記述している。前記の説明を同業者が読んだ場合、これらに似た好ましい変形形態が明らかになる場合もある。本発明者等は、本開示の異なる形態の実施、及び、本開示の根幹を適用した類似形態の発明の実施についても充分意識している。また、本開示にはその原理として、請求の範囲中に列挙した内容の全ての変形形態、さらに、様々な前記要素の任意の組み合わせが利用できる。その全てのあり得る任意の組み合わせは、本明細書中において特別な限定がない限り、あるいは、文脈によりはっきりと否定されない限り、本開示に含まれる。
1…シリコン基板、2…窒化ケイ素膜、3…酸化ケイ素膜、5…埋め込み部分、100,200,300…基体、110,210,310…集積メモリセル、120,220,320…絶縁部材、120a,220a,320a…下層部、120b,220b,320b…上層部、D…段差。