(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164662
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】粘着剤用組成物、粘着フィルム、及び表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 133/00 20060101AFI20231102BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231102BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231102BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20231102BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231102BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J133/14
C09J7/38
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023152514
(22)【出願日】2023-09-20
(62)【分割の表示】P 2019086702の分割
【原出願日】2019-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】岡田 詩織
(72)【発明者】
【氏名】栗本 茂
(72)【発明者】
【氏名】戸梶 翔太
(72)【発明者】
【氏名】亀井 淳一
(57)【要約】
【課題】帯電防止性及び低汚染性に優れた粘着フィルムを製造することができる粘着剤用
組成物を提供すること。
【解決手段】一実施形態は、(メタ)アクリルポリマー(A)、アルカリ金属塩(B)、
及び式(I)で表される化合物(C)を含有する、粘着剤用組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルポリマー(A)、アルカリ金属塩(B)、及び式(I)で表される化
合物(C)を含有する、粘着剤用組成物。
【化1】
(式中、Xは、それぞれ独立に、酸素原子又は窒素原子を表し、Rは、それぞれ独立に、
水素原子、アルキル基、又はフルオロアルキル基を表す。)
【請求項2】
架橋剤(D)を更に含有する、請求項1に記載の粘着剤用組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリルポリマー(A)が、アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由
来する構造単位、及び、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモ
ノマーに由来する構造単位を含む、請求項1又は2に記載の粘着剤用組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤用組成物を用いて得られる、粘着フィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤用組成物を用いて得られる粘着フィルムと、基
材フィルムとを有する、表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、粘着剤用組成物、粘着フィルム、及び表面保護フィルムに関する
。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイには、偏光板等の光学フィルムが使用されている。光学フィルムの表面に
は、表面保護フィルムが貼り合わされることがある。表面保護フィルムにより光学フィル
ムの表面が保護され、搬送及びディスプレイの製造工程等における傷付き及び汚れの付着
を防止することができる。
【0003】
表面保護フィルムが光学フィルムからずれないように、一般的に、表面保護フィルムは
、基材フィルムと、基材フィルムの片面に形成された粘着フィルムとを備えている。光学
フィルムの外観検査が、表面保護フィルムが光学フィルムに貼り合わされた状態で行われ
ることがあるため、粘着フィルムには、透明性の高いアクリル系粘着剤が広く使われてい
る。また、表面保護フィルムは、必要がなくなった時点で光学フィルムから剥離して取り
除かれる。表面保護フィルムを剥離して取り除くときに、容易に剥離できるよう、通常、
粘着フィルムには微粘着力の粘着剤が用いられる。
【0004】
表面保護フィルムを剥離して取り除くとき、特に高速で剥離する場合は、騒音が発生す
るという現象が起きることがある。また、剥離して取り除くときに発生する剥離帯電によ
り、光学フィルムの表面に埃が付着する現象及び回路部品が破壊される現象等が起きるこ
とがある。生産性を上げるために、表面保護フィルムの剥離速度は大きくなる傾向がある
。剥離速度が大きくなると剥離帯電圧も高くなり、これらの現象に起因する不具合が起き
やすくなる。
【0005】
また、近年、ディスプレイの高精細化が進んでいることから、光学フィルムの外観に対
する要求が高くなっている。そのため、表面保護フィルムには、剥離後に光学フィルムに
粘着剤が残りにくいという特性が求められている。
【0006】
引用文献1には、表面保護フィルムの形成に使用される粘着剤組成物として、イオン性
液体並びにアクリル系ポリマーを含有してなることを特徴とする粘着剤組成物が開示され
ている。また、引用文献2には、基材フィルム表面に形成した粘着剤層を有し、粘着剤層
を構成するアクリル系粘着剤に、少なくとも、帯電防止剤と、フッ素或いはケイ素を含有
する化合物を外添されてなることを特徴とする表面保護フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-330464号公報
【特許文献2】特開2011-63712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施形態は、帯電防止性及び低汚染性に優れた粘着フィルムを製造すること
ができる粘着剤用組成物を提供することを課題とする。また、本発明の他の一実施形態は
、帯電防止性及び低汚染性に優れた粘着フィルムを提供することを課題とする。さらに、
本発明の他の一実施形態は、帯電防止性及び低汚染性に優れた粘着フィルムを有する表面
保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明には様々な実施形態が含まれる。実施形態の例を以下に列挙する。本発明は以下
の実施形態に限定されない。
【0010】
一実施形態は、(メタ)アクリルポリマー(A)、アルカリ金属塩(B)、及び式(I
)で表される化合物(C)を含有する、粘着剤用組成物に関する。
【化1】
(式中、Xは、それぞれ独立に、酸素原子又は窒素原子を表し、Rは、それぞれ独立に、
水素原子、アルキル基、又はフルオロアルキル基を表す。)
【0011】
一実施形態において、前記粘着剤用組成物は、架橋剤(D)を更に含有してもよい。
【0012】
一実施形態において、前記(メタ)アクリルポリマー(A)は、アルキル(メタ)アク
リレートモノマーに由来する構造単位、及び、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有す
る(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0013】
他の一実施形態は、前記粘着剤用組成物を用いて得られる、粘着フィルムに関する。
【0014】
他の一実施形態は、前記粘着剤用組成物を用いて得られる粘着フィルムと、基材フィル
ムとを有する、表面保護フィルムに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態によれば、帯電防止性及び低汚染性に優れた粘着フィルムを製造す
ることができる粘着剤用組成物を提供することができる。また、本発明の他の一実施形態
によれば、帯電防止性及び低汚染性に優れた粘着フィルムを提供することができる。さら
に、本発明の他の一実施形態によれば、帯電防止性及び低汚染性に優れた粘着フィルムを
有する表面保護フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態である表面保護フィルムの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0018】
<粘着剤用組成物>
本発明の実施形態である粘着剤用組成物は、(メタ)アクリルポリマー(A)、アルカ
リ金属塩(B)、及び式(1)で表される化合物(C)を含有する。粘着剤用組成物は、
架橋剤(D)、各種の添加剤等の任意の成分を更に含有してもよい。
【0019】
表面保護フィルムに帯電防止性を付与する方法として、被着体に接する粘着フィルムに
帯電防止剤を添加する方法がある。しかし、帯電防止性を高めるために帯電防止剤の含有
量を増加させると、被着体に付着する帯電防止剤の量も増加し、被着体が汚染されやすく
なる。一般的に、帯電防止性と低汚染性とにはトレードオフの関係があり、両立させるこ
とは難しい傾向がある。本発明の実施形態においては、(メタ)アクリルポリマー(A)
、アルカリ金属塩(B)、及び式(1)で表される化合物(C)を含有する粘着剤用組成
物によって、優れた帯電防止性と低汚染性との両立を実現することができる。
【0020】
[(メタ)アクリルポリマー(A)]
(メタ)アクリルポリマー(A)は、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を
含むポリマーである。(メタ)アクリルモノマーは、分子内に少なくとも1つの(メタ)
アクリロイル基を有する。本明細書において、「(メタ)アクリルモノマー」はアクリル
モノマー及びメタクリルモノマーの総称であり、「(メタ)アクリロイル基」はアクリロ
イル基及びメタクリロイル基の総称である。
【0021】
(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位は、アルキル(メタ)アクリレートモノ
マー(M1)に由来する構造単位を少なくとも1種含むことが好ましい。(メタ)アクリ
ルモノマーに由来する構造単位は、アルキル(メタ)アクリレートモノマー(M1)に由
来する構造単位を2種以上含んでもよい。
【0022】
アルキル(メタ)アクリレートモノマー(M1)は、好ましくは、下記式(m1)で表
されるモノマー(以下、「モノマー(m1)」という場合がある。)を含む。
【0023】
【0024】
式中、R1aは、水素原子又はメチル基を表し、R1bは、アルキル基を表す。
【0025】
アルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってよい。アルキル基は、直鎖状アルキ
ル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、1~22であることが好ましく、1
~16であることがより好ましく、1~12であることが更に好ましい。
【0026】
アルキル(メタ)アクリレートモノマー(M1)は、例えば、メチル(メタ)アクリレ
ート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メ
タ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペ
ンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリ
レート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチ
ルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)ア
クリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシ
ル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレ
ート、テトラデシル(メタ)アクリレート(ミリスチル(メタ)アクリレート)、イソミ
リスチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メ
タ)アクリレート(セチル(メタ)アクリレート)、イソセチル(メタ)アクリレート、
ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(
メタ)アクリレート)、及びイソステアリル(メタ)アクリレートからなる群から選択さ
れる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0027】
(メタ)アクリルポリマー(A)の構造単位を形成するモノマーがアルキル(メタ)ア
クリレートモノマー(M1)を含む場合、その含有量は、全てのモノマーの合計100質
量部を基準として、50質量部以上であることが好ましく、55質量部以上であることが
より好ましく、60質量部以上であることが更に好ましい。含有量が50質量部以上であ
る場合、粘着フィルムと被着体との良好な密着性が得られやすい傾向がある。アルキル(
メタ)アクリレートモノマー(M1)の含有量は、他のモノマーを用いることを考慮する
と、全てのモノマーの合計100質量部を基準として、99質量部以下であることが好ま
しく、95質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることが更に好ま
しい。
【0028】
(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位は、ヒドロキシル基又はカルボキシル基
を有する(メタ)アクリルモノマー(M2)に由来する構造単位を少なくとも1種含むこ
とが好ましい。(メタ)アクリルモノマー(M2)は、ヒドロキシル基、カルボキシル基
、又は、ヒドロキシル基とカルボキシル基の両方を少なくとも有する。(メタ)アクリル
モノマーに由来する構造単位は、(メタ)アクリレートモノマー(M2)に由来する構造
単位を2種以上含んでもよい。
【0029】
(メタ)アクリルモノマー(M2)は、好ましくは、下記式(m2-1)で表されるモ
ノマー(以下、「モノマー(m2-1)」という場合がある。)、下記式(m2-2)で
表されるモノマー(以下、「モノマー(m2-2)」という場合がある。)、及び(メタ
)アクリル酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む。(メタ)アクリルモノマ
ー(M2)は、より好ましくは、モノマー(m2-1)を含む。
【0030】
【0031】
式中、R2aは、水素原子又はメチル基を表し、R2bは、2価の連結基を表す。
【0032】
【0033】
式中、R3aは、水素原子又はメチル基を表し、R3bは、2価の連結基を表す。
【0034】
モノマー(m2-1)とモノマー(m2-2)のそれぞれにおいて、2価の連結基は、
例えば、アルキレン基、オキシ基、及びカルボニル基からなる群から選択される1種以上
の基を含むことが好ましい。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってよい。
アルキレン基は、直鎖状アルキレン基であることが好ましい。アルキレン基の炭素数は、
1~22であることが好ましく、1~16であることがより好ましく、1~12であるこ
とが更に好ましい。2価の連結基は、アルキレン基であることがより好ましく、直鎖状ア
ルキレン基であることが更に好ましい。
【0035】
(メタ)アクリルモノマー(M2)は、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリ
レート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)
アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(
メタ)アクリレート;N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(
メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル
基含有(メタ)アクリルアミド;2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、5-カル
ボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒ
ドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(
メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルテト
ラヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2
-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチ
ルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2-(メタ)アクリロ
イルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、カ
ルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)
アクリレート;及び(メタ)アクリル酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む
ことが好ましい。(メタ)アクリルモノマー(M2)は、例えば、ヒドロキシアルキル(
メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸からなる群から選択される少なくとも1種を
含むことがより好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むことが更に好
ましい。
【0036】
(メタ)アクリルポリマー(A)の構造単位を形成するモノマーが(メタ)アクリルモ
ノマー(M2)を含む場合、その含有量は、全てのモノマーの合計100質量部を基準と
して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ま
しく、2質量部以上であることが更に好ましく、2.5質量部以上であることが特に好ま
しい。含有量が0.1質量部以上である場合、十分な粘着性が得られやすい傾向がある。
(メタ)アクリルモノマー(M2)の含有量は、全てのモノマーの合計100質量部を基
準として、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ま
しく、14質量部以下であることが更に好ましく、12質量部以下であることが特に好ま
しい。含有量が20質量部以下である場合、被着体の汚染を防止する効果が得られやすい
傾向がある。
【0037】
(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位は、アルキル(メタ)アクリレートモノ
マー(M1)に由来する構造単位及び(メタ)アクリレートモノマー(M2)に由来する
構造単位とは異なる、他の(メタ)アクリルモノマー(M3)に由来する構造単位を少な
くとも1種含んでもよい。(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位は、(メタ)ア
クリルモノマー(M3)に由来する構造単位を2種以上含んでもよい。
【0038】
(メタ)アクリルモノマー(M3)は、例えば、(ポリ)アルキレングリコールモノア
ルキルエーテルモノ(メタ)アクリレート等の(ポリ)オキシアルキレン基含有(メタ)
アクリルモノマーを含むことが好ましい。本明細書において、「(ポリ)アルキレングリ
コール」は「アルキレングリコール」及び「ポリアルキレングリコール」の総称であり、
「(ポリ)オキシアルキレン」は「オキシアルキレン」及び「ポリオキシアルキレン」の
総称である。
【0039】
(メタ)アクリルポリマー(A)の構造単位を形成するモノマーが(メタ)アクリレー
トモノマー(M3)を含む場合、その含有量は、全てのモノマーの合計100質量部を基
準として、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく
、3質量部以上であることが更に好ましい。(メタ)アクリルモノマー(M3)の含有量
は、全てのモノマーの合計100質量部を基準として、20質量部以下であることが好ま
しく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ま
しい。
【0040】
(メタ)アクリルポリマー(A)は、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位と
は異なる、他の構造単位を含んでもよい。他の構造単位として、例えば、酢酸ビニル等の
ビニルエステル系モノマー;スチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等のスチレン系モ
ノマー;ブタジエン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、テトラフルオロエチレン等
のハロゲン含有モノマーなどのビニル基含有モノマーに由来する構造単位が挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリルポリマー(A)は、(メタ)アクリルモノマー(M2)に由来する構
造単位を含むことが好ましく、アルキル(メタ)アクリレートモノマー(M1)に由来す
る構造単位と、(メタ)アクリルモノマー(M2)に由来する構造単位とを含むことがよ
り好ましい。
【0042】
(メタ)アクリルポリマー(A)の重合方法は特に限定されるものではない。(メタ)
アクリルポリマー(A)の重合方法として、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等
の公知の重合方法を使用可能である。
【0043】
(メタ)アクリルポリマー(A)を重合する際の重合開始剤としては、熱によりラジカ
ルを発生する化合物を用いることができる。具体的には、過酸化ベンゾイル、ラウロイル
パーオキシド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-ア
ゾビス(2-メチルブチロニトリル)等のアゾ系化合物などが挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリルポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)は、0℃以下であることが
好ましく、-5℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることが更に好まし
い。(メタ)アクリルポリマー(A)のガラス転移温度は、-50℃以上であることが好
ましく、-40℃以上であることがより好ましく、-25℃以上であることが更に好まし
い。
【0045】
本明細書において、(メタ)アクリルポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)は、次
のFOX式により求められる理論計算値を意味する。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
(式中、Tgは(メタ)アクリルポリマー(A)のガラス転移温度(℃)であり、W1、
W2、・・・、Wnは、それぞれ、全モノマーの質量を基準とする各モノマーの質量分率
であり、Tg1、Tg2、・・・、Tgnは、それぞれ、各モノマーのホモポリマーのガ
ラス転移温度である。この計算に用いるホモポリマーのガラス転移温度として、文献値を
用いることができる。各種ホモポリマーのガラス転移温度は、例えば、三菱レイヨン株式
会社のアクリルエステルカタログ(1997年度版)、及び、新高分子文庫7、「塗料用
合成樹脂入門」高分子刊行会、北岡協三著に記載されている。
【0046】
(メタ)アクリルポリマー(A)のガラス転移温度を調整する方法として、次の方法が
挙げられる。例えば、炭素数が大きいアルキル(メタ)アクリレートを用いることでガラ
ス転移温度を低くすることができる。一方、炭素数が小さいアルキル(メタ)アクリレー
トを用いることでガラス転移温度を高くすることができる。メタクリレートを用いること
でもガラス転移温度が高くなる傾向がある。
【0047】
(メタ)アクリルポリマー(A)の重量平均分子量は、50,000以上であることが
好ましく、80,000以上であることがより好ましく、100,000以上であること
が更に好ましい。(メタ)アクリルポリマー(A)の重量平均分子量は、800,000
以下であることが好ましく、700,000以下であることがより好ましく、600,0
00以下であることが更に好ましい。本明細書中において、重量平均分子量は、ゲルパー
ミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレンの検量線を用いて換
算して求められる値である。具体的には、実施例に記載の測定方法に従えばよい。重量平
均分子量が50,000以上である場合、良好な粘着力を有する粘着フィルムが得られる
傾向がある。重量平均分子量が800,000以下である場合、粘着剤用組成物が高粘度
になることを防止しやすい。
【0048】
粘着剤用組成物は、(メタ)アクリルポリマー(A)を1種のみ含有しても、2種以上
の(メタ)アクリルポリマー(A)を含有してもよい。
【0049】
[アルカリ金属塩(B)]
アルカリ金属塩(B)は、アルカリ金属イオンと対アニオンとを含む。粘着剤用組成物
がアルカリ金属塩(B)を含むことにより、粘着フィルムに導電性が付与され、粘着フィ
ルムが良好な帯電防止性を示すものとなると考えられる。アルカリ金属塩(B)は、アル
カリ金属イオンとして、リチウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンからな
る群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、リチウムイオン及びナトリウ
ムイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、リチウム
イオンを含むことが更に好ましい。リチウムイオンを含む場合、より良好な帯電防止性が
得られる。
【0050】
対アニオンは、例えば、塩素イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、
ヘキサフルオロヒ酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン
、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
イオン、及びビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオンからなる群から選択
される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0051】
アルカリ金属塩(B)の例として、下記式で表される塩を挙げることができる(以下、
式(b1)で表される塩を「塩(b1)」という場合がある。式(b2)~(b6)のい
ずれかで表される塩についても同様である。)。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
各式中、Mは、アルカリ金属イオンを表し、Rは、フッ素原子、アルキル基、フルオロ
アルキル基、アリール基、又はフルオロアリール基を表し、R1及びR2は、それぞれ独
立に、フッ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、又はフルオロアリー
ル基を表す。
【0059】
アルキル基及びフルオロアルキル基の炭素数は、1~6であることが好ましく、1~4
であることがより好ましい。フルオロアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一
部がフッ素原子により置換されたフルオロアルキル基であっても、水素原子の全部がフッ
素原子により置換されたフルオロアルキル基(すなわち、パーフルオロアルキル基)であ
ってもよく、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。アリール基及びフルオロア
リール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~10であることがより好まし
い。フルオロアリール基は、アリール基に含まれる水素原子の一部がフッ素原子により置
換されたフルオロアリール基であっても、水素原子の全部がフッ素原子により置換された
フルオロアリール基(すなわち、パーフルオロアリール基)であってもよく、パーフルオ
ロアリール基であることが好ましい。
【0060】
アルカリ金属塩(B)は、塩(b1)~塩(b6)からなる群から選択される少なくと
も1種を含むことが好ましく、塩(b1)、塩(b5)、及び塩(b6)からなる群から
選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、塩(b1)及び塩(b5)からな
る群から選択される少なくとも1種を含むことが更に好ましい。特に、(メタ)アクリル
ポリマー(A)との相溶性が良好である、塩素を含まない、アルカリ金属イオンを遊離し
やすい等の観点から、アルカリ金属塩(B)は、塩(b5)を含むことが好ましい。
【0061】
アルカリ金属塩(B)は、具体的には、塩化リチウム(LiCl)、過塩素酸リチウム
(LiClO4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ヘキサフルオロヒ酸
リチウム(LiAsF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、テトラフェ
ニルホウ酸リチウム(LiB(C6H5)4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム
(LiCF3SO3)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN
(CF3SO2)2)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(Li
N(C2F5SO2)2)等のリチウム塩;塩化ナトリウム(NaCl)、過塩素酸ナト
リウム(NaClO4)、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF6)、ヘキサフル
オロヒ酸ナトリウム(NaAsF6)、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF4)
、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(NaB(C6H5)4)、トリフルオロメタンスル
ホン酸ナトリウム(NaCF3SO3)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
ナトリウム(NaN(CF3SO2)2)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イ
ミドナトリウム(NaN(C2F5SO2)2)等のナトリウム塩;及び、塩化カリウム
(KCl)、過塩素酸カリウム(KClO4)、ヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF
6)、ヘキサフルオロヒ酸カリウム(KAsF6)、テトラフルオロホウ酸カリウム(K
BF4)、テトラフェニルホウ酸カリウム(KB(C6H5)4)、トリフルオロメタン
スルホン酸カリウム(KCF3SO3)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
カリウム(KN(CF3SO2)2)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド
カリウム(KN(C2F5SO2)2)等のカリウム塩からなる群から選択される少なく
とも1種を含むことが好ましい。
【0062】
アルカリ金属塩(B)は、融点が25℃超であり、室温(例えば、25℃)で固体の塩
であることが好ましい。室温で固体の塩は、粘着フィルムから流出しにくいために、粘着
フィルムによる被着体の汚染を防止する観点から好ましい。
【0063】
粘着剤用組成物は、アルカリ金属塩(B)を1種のみ含有しても、2種以上のアルカリ
金属塩(B)を含有してもよい。アルカリ金属塩(B)の含有量は、(メタ)アクリルポ
リマー(A)の100質量部を基準として、0.1質量部以上であることが好ましく、0
.2質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることが更に好ましい
。0.1質量部以上である場合、より良好な帯電防止性を得ることができる。アルカリ金
属塩(B)の含有量は、(メタ)アクリルポリマー(A)の100質量部を基準として、
10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、5質量
部以下であることが更に好ましい。10質量部以下である場合、より良好な低汚染性を得
ることができる。
【0064】
[式(I)で表される化合物(C)]
粘着剤用組成物は、下記式(I)で表される化合物(C)を含有する。粘着フィルムに
おいて、化合物(C)によりアルカリ金属塩(B)に含まれるアルカリ金属イオンの移動
が促され、帯電防止性が高められると考えられる。
【0065】
【0066】
式(I)中、Xは、それぞれ独立に、酸素原子又は窒素原子を表し、Rは、それぞれ独
立に、水素原子、アルキル基、又はフルオロアルキル基を表す。
【0067】
アルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってよい。アルキル基は、-CnH2n
+1(nは1以上の整数)で表される基であることが好ましい。nは、好ましくは、1~
12であり、より好ましくは1~8であり、更に好ましくは1~4である。
【0068】
フルオロアルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってよい。フルオロアルキル基
として、アルキル基に含まれる水素原子の一部がフッ素原子により置換されたフルオロア
ルキル基と、アルキル基に含まれる水素原子の全部がフッ素原子により置換されたフルオ
ロアルキル基(すなわち、パーフルオロアルキル基)とが挙げられる。フルオロアルキル
基は、-CnHmF2n+1-m(nは1以上の整数であり、mは0以上の整数である。
ただし、mは、2n以下の整数である。)で表される基であることが好ましい。nは、好
ましくは1~12であり、より好ましくは1~8であり、更に好ましくは1~4である。
mは、好ましくは0~2nであり、より好ましくは0~nであり、更に好ましくは0であ
る。
【0069】
式(I)において、Rが、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12であるアルキル
基、又は炭素数1~12であるフルオロアルキル基である化合物は、粘着フィルムの低汚
染性を向上させる観点から好ましい化合物である。
【0070】
化合物(C)として、環状カーボネート化合物及び環状尿素化合物が挙げられる。化合
物(C)は、具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブ
チレンカーボネート、トランス-2,3-ブチレンカーボネート、シス-2,3-ブチレ
ンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、トランス-2,3-ペンチレンカー
ボネート、シス-2,3-ペンチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ト
リフルオロメチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート等の
環状カーボネート化合物;及び、2-イミダゾリジノン等の環状尿素化合物からなる群か
ら選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。環状カーボネート化合物は、式(I
)で表され、2つのXが酸素原子である化合物である。環状尿素化合物は、式(I)で表
され、2つのXが窒素原子である化合物である。化合物(C)は、環状カーボネート化合
物を含むことが好ましく、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートからなる群
から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。導電性の観点から、化合物(
C)は、エチレンカーボネートを少なくとも含むことが好ましい。
【0071】
帯電防止性と低汚染性との両立の観点から、化合物(C)は、融点が25℃超である化
合物であることが好ましい。融点が25℃超である化合物は、粘着フィルムから流出しに
くいために、粘着フィルムによる被着体の汚染を防止する観点から好ましい。
【0072】
粘着剤用組成物は、化合物(C)を1種のみ含有しても、2種以上の化合物(C)を含
有してもよい。化合物(C)の含有量は、(メタ)アクリルポリマー(A)の100質量
部を基準として、0.2質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であること
がより好ましく、1質量部以上であることが更に好ましい。0.2質量部以上である場合
、より良好な帯電防止性を得ることができる。化合物(C)の含有量は、(メタ)アクリ
ルポリマー(A)の100質量部を基準として、15質量部以下であることが好ましく、
10質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることが更に好ましい。1
5質量部以下である場合、より良好な低汚染性を得ることができる。
【0073】
[架橋剤(D)]
粘着剤用組成物は、架橋剤(D)を含有してもよい。架橋剤(D)は、例えば、イソシ
アネート化合物、エポキシ化合物、(メタ)アクリレート化合物、及び金属キレート化合
物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。加熱により架橋反応
を進めることができることから、架橋剤(D)は、例えば、イソシアネート化合物及びエ
ポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、イソ
シアネート化合物を含むことが更に好ましい。
【0074】
イソシアネート化合物は、2官能以上のイソシアネート化合物であればよい。イソシア
ネート化合物は、好ましくは、2官能イソシアネート化合物及び3官能以上のイソシアネ
ート化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。イソシアネート化合物は、
2官能イソシアネート化合物のみを含んでも、又は、3官能以上のイソシアネート化合物
のみを含んでもよい。イソシアネート化合物は、2官能イソシアネート化合物と、3官能
以上のイソシアネート化合物とを含んでもよい。
【0075】
2官能イソシアネート化合物は、1分子中に2個のイソシアネート(-NCO)基を有
する化合物から選択される1種又は2種以上であればよい。2官能イソシアネート化合物
として、例えば、脂肪族系ジイソシアネート;芳香族系ジイソシアネート;脂肪族系ジイ
ソシアネート及び芳香族系ジイソシアネートから選択される少なくとも1種のアダクト体
;脂肪族系ジイソシアネート及び芳香族系ジイソシアネートから選択される少なくとも1
種のアロファネート体等が挙げられる。「脂肪族系ジイソシアネート及び芳香族系ジイソ
シアネートから選択される少なくとも1種のアダクト体」は、例えば、脂肪族系ジイソシ
アネート及び芳香族系ジイソシアネートから選択される少なくとも1種と2官能のポリオ
ールとのアダクト体である。2官能のポリオールは、1分子中に2個のヒドロキシル(-
OH)基を有する化合物である。2官能のポリオールとして、エチレングリコール、プロ
ピレングリコール等が挙げられる。
【0076】
脂肪族系ジイソシアネートとしては、具体例には、ヘキサメチレンジイソシアネート(
HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソ
シアネート(TMDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)等が挙げられ
る。芳香族系ジイソシアネートとしては、具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネー
ト(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジメチルジフェニレンジイソシ
アネート(TOID)、トリレンジイソシアネート(TDI)等が挙げられる。
【0077】
3官能以上のイソシアネート化合物は、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有す
る化合物から選択される1種又は2種以上であればよく、1分子中に3個のイソシアネー
ト基を有する化合物から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。3官能以上
のイソシアネート化合物として、例えば、2官能イソシアネート化合物のアダクト体;2
官能イソシアネート化合物のイソシアヌレート体;2官能イソシアネート化合物のビウレ
ット体等が挙げられる。「2官能イソシアネート化合物のアダクト体」は、例えば、2官
能イソシアネート化合物と3官能以上のポリオールとのアダクト体である。3官能以上の
ポリオールは、1分子中に3個以上のヒドロキシル(-OH)基を有する化合物である。
3官能以上のポリオールとして、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセリン等が挙
げられる。
【0078】
イソシアネート化合物の例として、下記式で表されるイソシアネート化合物を挙げるこ
とができる(以下、式(d1)で表される塩を「イソシアネート化合物(d1)」という
場合がある。式(d2)~(d6)のいずれかで表されるイソシアネート化合物について
も同様である。)。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
各式中、Rは、それぞれ独立に、2価の有機基を表し、R1は、1価の置換基を表し、
R2は、2価の有機基を表し、R3は、3価の有機基を表す。
【0086】
Rは、置換又は非置換の炭化水素基であることが好ましく、直鎖状又は分岐状の脂肪族
炭化水素基;脂環式炭化水素基;又は、芳香族炭化水素基であることがより好ましい。脂
肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基は、置換又は非置換であって
よい。脂肪族炭化水素基は、アルキル基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素
数は、1~22であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~8であ
ることが更に好ましい。脂環式炭化水素基は、シクロアルキル基であることが好ましい。
脂環式炭化水素基の炭素数は、3~12であることが好ましく、5~8であることがより
好ましく、6であることが更に好ましい。芳香族炭化水素基の炭素数は、6~20である
ことが好ましく、6~10であることがより好ましく、6であることが更に好ましい。芳
香族炭化水素基は、直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基、及び、脂環式炭化水素基から
なる群から選択される少なくとも1種の置換基を有してもよい。
【0087】
Rの例として、炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメ
チレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチ
ルトリメチレン基、ペンタメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラ
メチレン基、ヘキサメチレン基、1-メチルペンチレン基、2-メチルペンチレン基、3
-メチルペンチレン基、1-エチルテトラメチレン基、2-エチルテトラメチレン基、ヘ
プタメチレン基、オクタメチレン基等の直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基;シクロペ
ンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の脂環式炭化水素基;フェニレン基、
トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0088】
R1は、ヒドロキシル基を含む置換基であってもよい。R2は、置換又は非置換の炭化
水素基であることが好ましく、置換又は非置換のアルキレン基であることが好ましい。R
3は、置換又は非置換の炭化水素基であることが好ましく、置換又は非置換のアルカン-
トリイル基であることが好ましい。炭化水素基が置換基を有する場合、置換基として、ヒ
ドロキシル基が挙げられる。
【0089】
イソシアネート化合物は、イソシアネート化合物(d1)~(d6)からなる群から選
択される少なくとも1種を含むことが好ましく、イソシアネート化合物(d2)~(d6
)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。特に、良好な帯
電防止性と密着性とを得る観点から、イソシアネート化合物は、イソシアネート化合物(
d3)及び(d4)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、イ
ソシアネート化合物(d3)を含むことがより好ましい。
【0090】
粘着剤用組成物が架橋剤(D)を含有する場合、架橋剤(D)の含有量は、アクリルポ
リマー(A)の100質量部を基準として、0.1質量部以上であることが好ましく、0
.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが更に好ましい。架
橋剤(D)の含有量は、アクリルポリマー(A)の100質量部を基準として、20質量
部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以
下であることが更に好ましい。粘着剤用組成物は、架橋剤(D)を、1種単独で含有して
も、2種以上組み合わせて含有してもよい。
【0091】
粘着剤用組成物は、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤は、好ましくは、(メタ
)アクリルポリマーに含まれる官能基と硬化剤(D)に含まれる官能基の反応速度を促進
させるものである。ここで、官能基とは、(メタ)アクリロイル基、ヒドロキシル基、カ
ルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等をいう。
【0092】
硬化促進剤として、例えば、有機金属化合物、3級アミン系化合物等を用いることがで
きる。有機金属化合物として、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロ
ライド、ジブチル錫オキサイド等の錫系触媒が挙げられる。
【0093】
粘着剤用組成物は、溶剤を含有してもよい。溶剤は有機溶剤であることが好ましい。有
機溶剤として、例えば、蟻酸、酢酸、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルセ
ロソルブ、セロソルブ、アセトン、アセチルアセトン、アセトニトリル、ヘキサン、ベン
ゼン、トルエン、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロベンゼン、ジクロロ
ベンゼン等が挙げられる。
【0094】
[他の任意成分]
粘着剤用組成物は、他の任意成分を含有してもよい。他の任意成分として、界面活性剤
、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤等が挙げられる。粘
着剤用組成物は、他の任意成分を、1種単独で含有しても、2種以上組み合わせて含有し
てもよい。
【0095】
<粘着フィルム>
本発明の実施形態である粘着フィルムは、前記粘着剤用組成物を用いて得られるフィル
ムである。粘着フィルムにおいて、(メタ)アクリルポリマー(A)は、架橋されていて
もよい。粘着フィルムの製造方法は特に限定されず、公知の製造方法でよい。粘着フィル
ムは、例えば、支持フィルムの表面に粘着剤用組成物の層を形成し、粘着剤用組成物の層
を乾燥及び/又は硬化させることによって得ることができる。又は、粘着フィルムは、例
えば、押し出し法により形成することができる。支持フィルム上に形成された粘着フィル
ムは、支持フィルムから剥離した後に使用してもよいし、支持フィルムから剥離せずに、
粘着フィルムと支持フィルムとを有する積層体の状態で使用してもよい。
【0096】
粘着剤用組成物の層を形成する方法には、公知の塗工方法、公知の印刷方法等を適用で
きる。例えば、キャストコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、デ
ィップコーティング、バーコーティング、コンマコーティング、ブレードコーティング、
ダイコーティング等の塗工方法;グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印
刷等の印刷方法などが挙げられる。
【0097】
粘着剤用組成物の層の乾燥及び硬化は、加熱によって行うことができる。加熱温度は、
例えば、50~150℃とできる。加熱時間は、例えば、1分~10時間とできる。
【0098】
粘着フィルムの厚さは特に限定されない。粘着フィルムの厚さは、例えば、1μm以上
であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが
更に好ましい。粘着フィルムの厚さが1μm以上である場合、十分な強度を保つことがで
き、良好な粘着性が得られやすい傾向がある。粘着フィルムの厚さは、例えば、20μm
以下であることが好ましく、18μm以下であることがより好ましく、15μm以下であ
ることが更に好ましい。20μm以下である場合、十分な柔軟性を保つことができ、粘着
フィルムが被着体の形状に追従しやすくなり、粘着フィルムが被着体から剥離することを
防止しやすい傾向がある。
【0099】
粘着フィルムの表面抵抗率は、1.0×1012Ω/□以下であることが好ましく、5
.0×1011Ω/□以下であることがより好ましく、2.5×1011Ω/□以下であ
ることが更に好ましい。1.0×1012Ω/□以下である場合、粘着フィルムを被着体
から剥離する際に、帯電による静電気の発生を効果的に抑えることができる。その結果、
粘着フィルムを被着体から剥がすときに発生する、静電気に起因する剥離帯電圧が低減さ
れ、被着体への影響を抑制することができる。剥離帯電圧が高いと、被着体に埃が付着す
る現象、被着体の近傍に配置された回路部品が破壊される現象等に起因する不具合が生じ
ることがある。
【0100】
粘着フィルムは、次の評価において被着体への粘着剤の付着が無いことが好ましい。粘
着剤の付着があると、被着体の外観不良の原因となる場合がある。
粘着フィルムを被着体に貼り付け、85℃85%RH(RH:相対湿度)の高温高湿条
件に所定の時間にわたり静置後する。その後、粘着フィルムを被着体から剥離し、被着体
への粘着剤の付着の有無を目視で確認する。「所定の時間」は、3日間、20日間、又は
40日間とすることができる。
【0101】
<表面保護フィルム>
本発明の実施形態である表面保護フィルムは、前記粘着剤用組成物を用いて得られる粘
着フィルムと、基材フィルムとを有する。表面保護フィルムは、カバーフィルム等の他の
任意のフィルムを有してもよい。表面保護フィルムの例として、基材フィルムと、基材フ
ィルムの一方の面上に設けられた粘着フィルムとを有する表面保護フィルム;基材フィル
ムと、基材フィルムの一方の面上に設けられた粘着フィルムと、粘着フィルムの基材フィ
ルムとは反対側の面上に設けられたカバーフィルムとを有する表面保護フィルム等が挙げ
られる。
【0102】
図1は、表面保護フィルムの一例を示す断面模式図である。
図1中、表面保護フィルム
1は、基材フィルム4と、基材フィルム4の一方の面上に設けられた粘着フィルム3と、
粘着フィルム3の基材フィルム4とは反対側の面上に設けられたカバーフィルム2とを有
する。
【0103】
基材フィルムは、プラスチックフィルムを有することが好ましい。基材フィルムは、プ
ラスチックフィルムと、プラスチックフィルムの少なくとも一方の面上に設けられた、帯
電防止層、防汚層、密着性付与層等の任意の層を有してもよい。基材フィルムが帯電防止
層及び/又は防汚層を有する場合、帯電防止層及び/又は防汚層は、基材フィルムの粘着
フィルムとは反対側の面上に設けられていることが好ましい。基材フィルムは、任意の層
を1種のみ有しても、2種以上組み合わせて有してもよい。
【0104】
プラスチックフィルムの少なくとも一方の面には、帯電防止処理、防汚処理、密着性付
与処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。帯電防止処理と
しては、帯電防止剤の塗布、練り込み等が挙げられる。基材フィルムに帯電防止処理及び
/又は防汚処理が施されている場合、帯電防止処理及び/又は防汚処理は、基材フィルム
の粘着フィルムとは反対側の面に施されていることが好ましい。基材フィルムには、表面
処理が1種のみ施されていても、2種以上組み合わせて施されていてもよい。
【0105】
帯電防止層及び帯電防止処理には、公知の帯電防止剤を使用することができる。防汚層
及び防汚処理には、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤等の公知の離型剤;シリカ微粒
子などの公知の防汚剤を使用することができる。
【0106】
プラスチックフィルムは、ポリエステルフィルムであることが好ましい。プラスチック
フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース
(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMM
A)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプ
ロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シク
ロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、含ノルボル
ネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、及び芳香族ポリアミドからなる群から選
択される少なくとも1種を含むフィルムであることが好ましい。
【0107】
基材フィルムの厚さは特に限定されない。基材フィルムの厚さは、例えば、10μm以
上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上である
ことが更に好ましい。基材フィルムの厚さが10μm以上である場合、十分な強度を保つ
ことができ、良好なフィルム巻取り性及び加工性が得られやすい傾向がある。基材フィル
ムの厚さは、例えば、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であること
がより好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。200μm以下である場合
、十分な柔軟性を保つことができ、表面保護フィルムが被着体の形状に追従しやすくなり
、表面保護フィルムの被着体からの剥離を防止しやすい傾向がある。
【0108】
カバーフィルムは、プラスチックフィルムを有することが好ましい。カバーフィルムは
、プラスチックフィルムと、プラスチックフィルムの粘着フィルム側の面上に設けられた
離型層とを有することが好ましい。又は、プラスチックフィルムの粘着フィルム側の面に
は、離型処理が施されていることが好ましい。離型層及び離型処理には、シリコーン系離
型剤、フッ素系離型剤等の公知の離型剤を使用することができる。
【0109】
プラスチックフィルムは、例えば、前記基材フィルムの説明においてプラスチックフィ
ルムの例として挙げたポリマー及び樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む
フィルムであることが好ましく、ポリエステルフィルムであることがより好ましい。
【0110】
カバーフィルムの厚さは特に限定されない。カバーフィルムの厚さは、例えば、10μ
m以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上で
あることが更に好ましい。カバーフィルムの厚さは、例えば、200μm以下であること
が好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更
に好ましい。
【0111】
プラスチックフィルムの製造方法は特に限定されず、公知の方法でよい。表面保護フィ
ルムは、例えば、基材フィルムの一方の面上に粘着フィルムを形成することによって得る
ことができる。具体的には、表面保護フィルムは、基材フィルムの一方の面上に粘着剤用
組成物の層を形成し、粘着剤用組成物の層を乾燥及び/又は硬化させることによって得る
ことができる。又は、表面保護フィルムは、例えば、共押し出し法により形成することが
できる。
【0112】
粘着フィルムを形成する方法としては、前記粘着フィルムの説明において挙げた粘着フ
ィルムの製造方法を使用することができる。粘着フィルムの製造方法において、支持フィ
ルムに代えて基材フィルムを用いればよい。
【0113】
表面保護フィルムによる保護対象は特に限定されない。表面保護フィルムは、粘着フィ
ルム側の面が保護対象に接するように貼り付けて使用することができる。表面保護フィル
ムがカバーフィルムを有する場合、カバーフィルムを剥離した後に表面保護フィルムを保
護対象に貼り付ければよい。保護対象として、例えば、偏光板等の光学部材、液晶表示装
置(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、陰極線管(CRT)、電界放出ディス
プレイ(FED)、有機ELディスプレイ、3Dディスプレイ、電子ペーパー等の表示装
置、自動車用部品、家電用部品、携帯端末、電子部品、建材などが挙げられる。
【実施例0114】
以下に、実施例により本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。
【0115】
<粘着剤用組成物の製造>
[実施例A1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、2-エチルヘキシル
アクリレート90質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート10質量部、溶剤として酢
酸エチル50質量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を加え
た。次いで、窒素ガスを導入して、1時間かけて反応系内の空気を窒素ガスで置換した。
その後、75℃で7時間反応させ、重量平均分子量50万の(メタ)アクリルポリマー(
A-1)の溶液を得た。
【0116】
得られた(メタ)アクリルポリマー(A-1)の溶液((メタ)アクリルポリマー(A
-1)100質量部を含有する。)に対して、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1
質量部、及び、エチレンカーボネート3質量部を加え撹拌した。次いで、デュラネートA
E700-100(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアロファネート体)6.0
質量部、アセチルアセトン5.0質量部、ジブチルスズジラウレート0.005質量部を
加えて撹拌混合し、更に酢酸エチル及び酢酸ブチル(質量比1:1)を加えて濃度を調節
して、実施例A1の粘着剤用組成物(不揮発分濃度20質量%)を得た。
【0117】
(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ
ィー(GPC)法により測定し、標準ポリスチレン検量線によって換算して得た値である
。GPC法の測定条件は以下の通りである。
【0118】
装置:東ソー株式会社製 HLC-8320GPC(RI検出器内蔵)
検出器:RI(示差屈折計)
溶媒:純正1級THF(テトラヒドロフラン)
ガードカラム:TSK-guard column Super MP(HZ)-H
(1本)
ガードカラムサイズ:4.6mm(ID)×20mm
カラム:東ソー株式会社製 TSK-GEL Super Multipore H
Z-H(3本連結)
カラムサイズ:4.6mm(ID)×150mm
温度:40℃
試料濃度:0.01g/5mL
注入量:10μL
流量:0.35mL/min
【0119】
(メタ)アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、上述のFOX式により求めた
。ホモポリマーのガラス転移温度として、前記「塗料用合成樹脂入門」に記載の値を用い
た。
【0120】
[実施例A2~10及び比較例A1~7]
表1に記載のモノマーを用いた以外は実施例A1と同様にしてアクリルポリマー(A-
2)~(A-4)の溶液を得た。次いで、表2及び3に記載の成分を用いた以外は実施例
A1と同様にして、実施例A2~A10及び比較例A1~A7の粘着剤用組成物を得た。
アクリルポリマー(A-5)は、綜研化学株式会社製「SKダイン(登録商標)1499
M」である。表1~3には、各成分の固形分の量(質量部)を示した。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
表1~3に用いた略記号の説明を表4に示す。
【0125】
【0126】
(B-1)及び(B-2)は、融点が25℃超であり、温度25℃で固体のアルカリ金
属塩である。(b-1)は、融点が25℃超であり、温度25℃で固体のアルカリ土類金
属塩である。
【0127】
(C-1)は、式(I)で表される化合物(C)であって、融点が36℃であり、温度
25℃において固体の化合物である。(C-2)は、式(I)で表される化合物(C)で
あって、融点が-55℃であり、温度25℃において液体の化合物である。
【0128】
(c-1)~(c-3)は、ポリアルキレングリコールであり、(c-1)と(c-2
)はともに温度25℃において液体の化合物である。(c-3)は、ポリアルキレングリ
コールであり、温度25℃において固体の化合物である。
【0129】
<表面保護フィルムの作製>
[実施例B1]
実施例A1の粘着剤用組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上
に塗布し、110℃で2分間加熱し、乾燥及び硬化させることによって、厚さが10μm
である粘着フィルムを形成した。その後、シリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレ
フタレート(PET)フィルムを、粘着フィルムの上にラミネートし、積層フィルムを得
た。積層フィルムを40℃で3日間エージングし、「PETフィルム(基材フィルム)/
粘着フィルム/シリコーン樹脂コートされたPETフィルム(カバーフィルム)」を有す
る実施例B1の表面保護フィルムを得た。
【0130】
[実施例B2~B10及び比較例B1~B7]
実施例B1と同様にして、実施例A2~A10及び比較例A1~A7の粘着剤用組成物
を用い、実施例B2~B10及び比較例B1~B7の表面保護フィルムを得た。
【0131】
<試験方法及び評価>
実施例B1~B10及び比較例B1~B7の表面保護フィルムについて、粘着フィルム
の表面抵抗率、粘着力、及び低汚染性を評価した。評価結果を表5及び6に示す。
【0132】
<表面抵抗率>
評価は、温度23℃湿度50%RHの環境下で行った。表面保護フィルムからカバーフ
ィルムを剥離し、抵抗率計(三菱電機株式会社製「Hiresta-UX MCP-HT
800高抵抗率計」)を用いて粘着フィルムの表面抵抗率(Ω/□)を測定した。表5及
び6中、「aE+b」は「a×10b」を表す。
【0133】
<粘着力>
表面保護フィルムを切断し、幅25mm、長さ150mmの評価用フィルムを得た。評
価用フィルムからカバーフィルムを剥がし、粘着フィルム側の面が脱脂したガラス板の表
面に接するように、評価用フィルムをガラス板に貼り合わせ、測定試料とした。測定試料
から、評価用フィルムを、引張試験機装置(株式会社島津製作所製「オートグラフAG-
X/R」)を用いて、室温(25℃)、180°方向、剥離速度300mm/minの条
件で剥がして、剥離強度を測定した。得られた剥離強度を粘着力(N/25mm)とした
。
【0134】
<低汚染性>
片面に粘着層を有する偏光板(住友化学株式会社製「スミカラン(登録商標)」)を、
ガラス板に、偏光板の粘着層側の面がガラス板の表面に接するように、ローラーを用いて
貼り合わせた。その後、表面保護フィルムを、偏光板に、粘着フィルムが偏光板の表面に
接するように、ローラーを用いて貼り合わせ、積層体を得た。積層体を85℃85%RH
の環境下で、1日間、3日間、20日間、又は40日間の期間にわたって保管した後に、
表面保護フィルムを剥がした。剥離後の偏光板の表面の汚染状態を目視にて観察した。
【0135】
評価基準は次のとおりである。「汚染あり」は、偏光板の表面が白くなり、一見して汚
染されていることがわかる状態をいい、「わずかに汚染あり」は、一見すると汚染されて
いないように見えるが、偏光板の端部付近又は気泡付近が白くなっている状態をいう。
20日間保管及び40日間保管のいずれにおいても「汚染なし」の場合 5点
20日間保管において「汚染なし」だが40日間保管において「わずかに汚染あり」の
場合 4点
3日間保管において「汚染なし」だが20日間保管において「わずかに汚染あり」の場
合 3点
20日間保管において「汚染あり」の場合 2点
3日間保管において「汚染あり」の場合 1点
【0136】
【0137】
【0138】
実施例B1~B10の表面保護フィルムは、全て表面抵抗率が1.0×1012Ω/□
以下であり、優れた帯電防止性を有していた。特に実施例B1及びB2の表面保護フィル
ムは、被着体に対する優れた粘着性が得られ、かつ、高い帯電防止性と高い低汚染性とを
両立できた。
【0139】
比較例B1~B3の表面保護フィルムは、粘着フィルムにアルカリ金属塩(B)又は式
(I)で表される化合物(C)が含まれていないため、優れた帯電防止性を発現しなかっ
た。また、比較例B4、B6、及びB7の表面保護フィルムは、低汚染性が劣っていた。
原因の一つとして、アルカリ金属塩(B)及び式(I)で表される化合物(C)に代えて
使用したアルキレングリコールが、粘着フィルムの微小な凝集破壊を引き起こしたためで
あると推測される。また、比較例B5では炭酸カルシウムが粘着剤用組成物中で溶解しな
かったために、粘着フィルムを作製することができなかった。
【0140】
本発明の実施形態である粘着剤用組成物用いて形成された粘着フィルムは、優れた粘着
性、帯電防止性、及び低汚染性を示し、粘着フィルムを備えた表面保護フィルムは、光学
部材等の保護に適していた。