(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164699
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】損傷図作成支援装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156246
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2020559982の分割
【原出願日】2019-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2018233657
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】堀田 修平
(72)【発明者】
【氏名】友野 雅文
(57)【要約】
【課題】マーキングの色を利用して、効率よく損傷図を作成できる損傷図作成支援装置を提供する。
【解決手段】構造物の表面をカラー撮影した画像を取得する。取得した画像を解析し、構造物の表面の損傷箇所に施されたマーキングを色ごとに検出する。色ごとのマーキングの検出結果に基づいて、損傷図を作成する。損傷図は、マーキングをトレースした図で構成され、色別のレイヤー構造を有する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
構造物を撮影した画像を取得し、
前記画像を解析し、前記構造物の表面の損傷に沿って引かれた線と前記線の色とを検出し、
前記線の色の意味の情報を取得し、
前記線及び前記線の色の検出結果と、前記線の色の意味の情報とに基づいて、損傷図を作成する、
損傷図作成支援装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記線の色の意味の情報の入力をユーザから受け付けて取得する、
請求項1に記載の損傷図作成支援装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記線の色ごとに分類した前記損傷図を作成する、
請求項1又は2に記載の損傷図作成支援装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記線の色ごとにレイヤーを分けたレイヤー構造の前記損傷図を作成する、
請求項3に記載の損傷図作成支援装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、各前記レイヤーに前記色の意味の情報を付して、前記損傷図を作成する、
請求項4に記載の損傷図作成支援装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記損傷図を表示先に出力する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の損傷図作成支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷図作成支援装置に係り、特に、構造物の点検結果に基づく損傷図の作成を支援する損傷図作成支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁などの構造物は、定期的に点検が行われる。点検作業は、外業(現場作業)と内業(事務所作業)とに分けて行われる。外業では、点検技術者が、現場に赴き、点検箇所を近接目視(着目部位に触れる程度の距離まで接近して目視)する作業が行われる(いわゆる近接目視点検)。この際、点検技術者は、目視による確認結果に基づいて、マーキング(損傷(変状ともいう)に沿ってチョークで線を引く作業(チョーキングともいう))、スケッチ及び写真撮影(現地状況写真の撮影)等の作業を行う。内業では、現場で得られたスケッチ及び写真を基に、報告書を作成する作業が行われる。報告書には損傷図(変状図ともいう)が含まれ、点検技術者は、スケッチ及び写真を基に、損傷箇所を点検箇所ごとの図面(たとえば、CAD(Computer-Aided Design)等の工業データの図面)に書き込んで、損傷図を作成する。
【0003】
しかし、このような手順で行われる従来の点検作業は、点検技術者の負担が大きく、また、損傷図の作成にもミス(たとえば、書き漏れ等)が発生しやすいという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、コンクリート構造物の表面を撮影した画像から自動的にマーキング、ひび割れ等を検出する技術が提案されている。また、特許文献2には、マーキング後にコンクリート構造物の表面に保水剤を散布することにより、撮影画像からマーキング箇所を検出しやすくする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-6222号公報
【特許文献2】特開2002-340805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、マーキングは、一般にチョークを用いて行われるが、その際、点検技術者は、チョークの色を使い分けてマーキングする場合がある。たとえば、損傷の程度、損傷の種類、点検時期などに応じて、色を使い分ける場合がある。一方、使用するチョークの色については、特に取り決めがないため、第三者が、現場作業の結果に基づいて、損傷図の作成等をしようとした場合、マーキングの色の情報を活用できない、という欠点があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、マーキングの色を利用して、効率よく損傷図を作成できる損傷図作成支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、次のとおりである。
【0009】
(1)構造物の表面をカラー撮影した画像を取得する画像取得部と、画像を解析し、構造物の表面の損傷箇所に施されたマーキングを色ごとに検出するマーキング検出部と、色ごとのマーキングの検出結果に基づいて、損傷図を作成する損傷図作成部と、を備えた損傷図作成支援装置。
【0010】
(2)マーキングの色ごとに定められた情報を記憶する記憶部を更に備え、損傷図作成部は、記憶部に記憶された情報を参照して、損傷図を作成する、上記(1)の損傷図作成支援装置。
【0011】
(3)記憶部には、マーキングの色ごとに定められた損傷の程度の情報が記憶され、損傷図作成部は、記憶部に記憶された情報を参照して、損傷の程度を分類した損傷図を作成する、上記(2)の損傷図作成支援装置。
【0012】
(4)記憶部には、マーキングの色ごとに定められたひび割れの程度の情報が記憶され、損傷図作成部は、ひび割れの程度を分類した損傷図を作成する、上記(3)の損傷図作成支援装置。
【0013】
(5)記憶部には、マーキングの色ごとに定められた漏水及び/又は遊離石灰の程度の情報が記憶され、損傷図作成部は、漏水及び/又は遊離石灰の程度を分類した損傷図を作成する、上記(3)又は(4)の損傷図作成支援装置。
【0014】
(6)記憶部には、マーキングの色ごとに定められた剥離及び/又は鉄筋露出の程度の情報が記憶され、損傷図作成部は、剥離及び/又は鉄筋露出の程度を分類した損傷図を作成する、上記(3)から(5)のいずれか一の損傷図作成支援装置。
【0015】
(7)記憶部には、マーキングの色ごとに定められた損傷の種類の情報が記憶され、損傷図作成部は、記憶部に記憶された情報を参照して、損傷の種類を分類した損傷図を作成する、上記(2)から(6)のいずれか一の損傷図作成支援装置。
【0016】
(8)記憶部には、マーキングの色ごとに定められた点検の時期の情報が記憶され、損傷図作成部は、記憶部に記憶された情報を参照し、点検の時期を分類した損傷図を作成する、上記(2)から(7)のいずれか一の損傷図作成支援装置。
【0017】
(9)記憶部には、マーキングの色ごとに定められた点検の時期の情報が記憶され、損傷図作成部は、記憶部に記憶された情報を参照し、点検の時期ごとの損傷図を作成する、上記(2)から(7)のいずれか一の損傷図作成支援装置。
【0018】
(10)記憶部には、マーキングの色ごとに定められた鋼部材の亀裂の程度、腐食の程度及び防食機能の劣化の程度の少なくとも一つの情報が記憶され、損傷図作成部は、記憶部に記憶された情報を参照して、鋼部材の亀裂の程度、腐食の程度及び防食機能の劣化の程度の少なくとも一つを分類した損傷図を作成する、上記(2)から(9)のいずれか一の損傷図作成支援装置。
【0019】
(11)構造物の表面をカラー撮影した画像を取得するステップと、画像を解析し、構造物の表面の損傷箇所に施されたマーキングを色ごとに検出するステップと、色ごとのマーキングの検出結果に基づいて、損傷図を作成するステップと、を含む損傷図作成支援方法。
【0020】
(12)構造物の表面をカラー撮影した画像を取得する機能と、画像を解析し、構造物の表面の損傷箇所に施されたマーキングを色ごとに検出する機能と、色ごとのマーキングの検出結果に基づいて、損傷図を作成する機能と、をコンピュータに実現させる損傷図作成支援プログラム。
【0021】
(13)ユーザ端末及びサーバを含む損傷図作成支援システムであって、ユーザ端末は、構造物の表面をカラー撮影した画像を入力する端末側画像入力部と、画像をサーバに送信する端末側送信部と、画像に基づいて作成された損傷図をサーバから受信する端末側受信部と、を備え、サーバは、ユーザ端末から画像を受信するサーバ側受信部と、画像を解析し、構造物の表面の損傷箇所に施されたマーキングを色ごとに検出するマーキング検出部と、色ごとのマーキングの検出結果に基づいて、損傷図を作成する損傷図作成部と、損傷図をユーザ端末に送信するサーバ側送信部と、を備えた損傷図作成支援システム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、構造物の表面をカラー撮影した画像からマーキングの色を検出し、画像解析して、効率よく損傷図を作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】損傷図作成支援システムの一実施形態を示すシステム構成図
【
図2】ユーザ端末のハードウェア構成の一例を示すブロック図
【
図4】サーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図
【
図10】本実施の形態の損傷図作成支援システムを使用した損傷図の作成の処理手順を示すフローチャート
【
図11】複数色のチョークでマーキングされた格間の撮影画像の一例を示す図
【
図14】本実施の形態の損傷図作成支援システムのユーザ端末が有する主な機能のブロック図
【
図15】本実施の形態の損傷図作成支援システムのサーバが有する主な機能のブロック図
【
図16】ひび割れの程度に応じて分類した損傷図の一例を示す図
【
図18】漏水の程度に応じて分類した損傷図の一例を示す図
【
図19】遊離石灰の程度に応じて分類した損傷図の一例を示す図
【
図20】漏水及び遊離石灰の評価基準の一例を示す表
【
図21】鉄筋露出の程度に応じて分類した損傷図の一例を示す図
【
図22】剥離及び鉄筋露出の評価基準の一例を示す表
【
図25】損傷の種類別に分類した損傷図の一例を示す図
【
図26】点検の時期ごとに分類した損傷図の構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0025】
《第1の実施の形態》
[損傷図作成支援システムのシステム構成]
図1は、損傷図作成支援システムの一実施形態を示すシステム構成図である。
【0026】
本実施の形態の損傷図作成支援システム10は、フロントエンド処理を行うユーザ端末20と、バックエンド処理を行うサーバ30と、で構成される。ユーザ端末20及びサーバ30は、ネットワーク40を介して、相互に通信可能に接続される。ネットワーク40には、たとえば、インターネットが利用される。
【0027】
[ユーザ端末]
ユーザ端末20は、たとえば、パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン等の汎用のコンピュータで構成される。
【0028】
図2は、ユーザ端末のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。同図に示すように、ユーザ端末20は、CPU(Central Processing Unit)21、RAM(Random Access Memory)22、ROM(Read Only Memory)23、HDD(Hard Disk Drive)24、通信IF(Interface)25、入力装置26、出力装置27及び光学ディスクドライブ28等を備えて構成される。HDD24には、フロントエンド処理を行うために必要なプログラム及びその処理に必要な各種データが記憶される。入力装置26は、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成される。出力装置27は、たとえば、ディスプレイ、プリンタ等で構成される。ユーザ端末20は、通信IF25を介して、ネットワーク40に接続される。
【0029】
図3は、ユーザ端末が有する主な機能のブロック図である。
【0030】
ユーザ端末20は、フロントエンド処理として、点検対象の構造物を撮影した画像の入力を受け付ける処理、入力された画像をサーバ30に送信(アップロード)する処理、サーバ30での処理結果を受信(ダウンロード)する処理、受信した処理結果を出力する処理及び受信した処理結果を記録する処理等を実施する。このため、ユーザ端末20は、
図3に示すように、画像の入力を受け付ける端末側画像入力部20A、入力された画像をサーバ30に送信する端末側送信部20B、サーバ30から処理結果を受信する端末側受信部20C、受信した処理結果を出力する端末側出力部20D、及び、受信した処理結果を記録する端末側記録部20Eの機能を有する。これらの機能は、ユーザ端末20を構成するコンピュータが、所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0031】
端末側画像入力部20Aは、点検対象を撮影した画像の入力を受け付ける処理を行う。端末側画像入力部20Aは、通信IF25を介して、デジタルカメラ等の外部機器から画像を入力する。この画像は、点検対象である構造物の表面をカラー撮影した画像である。したがって、カラー画像である。具体的には、画素単位でR(red;赤)、G(green;緑)及びB(blue;青)の各強度値(輝度値)を有する画像(いわゆるRGB画像)である。
【0032】
端末側送信部20Bは、入力された画像をサーバ30に送信(アップロード)する処理を行う。端末側送信部20Bは、ネットワーク40を介して、サーバ30に画像を送信する。
【0033】
端末側受信部20Cは、サーバ30から処理結果を受信する処理を行う。端末側受信部20Cは、ネットワーク40を介して、サーバ30から処理結果を受信する。後述するように、サーバ30は、ユーザ端末20から送信された画像に基づいて、損傷図(変状図ともいう)を作成する。作成した損傷図は、処理結果として、ユーザ端末20に送信される。端末側受信部20Cは、このサーバ30から送信される損傷図を受信(ダウンロード)する。
【0034】
端末側出力部20Dは、処理結果を出力する処理を行う。具体的には、処理結果である損傷図を出力装置27であるディスプレイに出力する。また、必要に応じて、入力された画像を出力装置27であるディスプレイに出力する。
【0035】
端末側記録部20Eは、処理結果を記録する処理を行う。具体的には、処理結果である損傷図をHDD24に記録する。この際、元となった画像を関連付けて記録する。
【0036】
[サーバ]
サーバ30は、一般的なサーバコンピュータで構成される。サーバ30は、実質的に損傷図作成支援装置を構成する。
【0037】
図4は、サーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。同図に示すように、サーバ30は、CPU31、RAM32、ROM33、HDD34、通信IF35、入力装置36、出力装置37及び光学ディスクドライブ38等を備えて構成される。HDD34には、バックエンド処理を行うために必要なプログラム及びその処理に必要な各種データが記憶される。入力装置36は、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成される。出力装置37は、たとえば、ディスプレイ、プリンタ等で構成される。サーバ30は、通信IF35を介して、ネットワーク40に接続される。
【0038】
図5は、サーバが有する主な機能のブロック図である。
【0039】
サーバ30は、バックエンド処理として、ユーザ端末20から送信される画像を受信する処理、点検箇所を分割して撮影した画像を受信した場合に分割された画像群をパノラマ合成する処理、画像を解析して構造物の表面に施されたマーキングを色ごとに検出する処理、マーキングの検出結果に基づいて損傷図を作成する処理、作成した損傷図を処理結果としてユーザ端末20に送信する処理等を実施する。このため、サーバ30は、
図5に示すように、ユーザ端末20から画像を受信するサーバ側受信部30A、分割された画像群をパノラマ合成するパノラマ合成部30B、画像からマーキングを検出するマーキング検出部30C、マーキングの検出結果に基づいて、損傷図を作成する損傷図作成部30D、作成した損傷図をユーザ端末20に送信するサーバ側送信部30E等の機能を有する。これらの機能は、サーバ30を構成するコンピュータが、所定のプログラムを実行することにより実現される。このプログラムは、実質的に損傷図作成支援プログラムを構成する。
【0040】
サーバ側受信部30Aは、ユーザ端末20から送信される画像を受信する処理を行う。サーバ側受信部30Aは、ネットワーク40を介して、ユーザ端末20から画像を受信する。サーバ側受信部30Aは、画像取得部の一例である。受信した画像はHDD34に格納される。画像は、点検箇所を分割して撮影した画像として取得することもできる。この場合、次のパノラマ合成部30Bでパノラマ合成される。
【0041】
パノラマ合成部30Bは、点検箇所を分割して撮影した画像を受信した場合に、分割された画像群をパノラマ合成する処理を行う。パノラマ合成自体は、公知の技術であるので、その詳細についての説明は省略する。パノラマ合成部30Bは、たとえば、画像同士の対応点を検出して、分割された画像群を合成する。この際、パノラマ合成部30Bは、必要に応じて、各画像に拡縮補正、あおり補正及び回転補正等の補正を施す。
【0042】
なお、点検箇所を分割して撮影する場合、撮影者(点検技術者)は、隣接する画像が互いに重複するように撮影する。
【0043】
マーキング検出部30Cは、画像を解析し、マーキングを色ごとに検出する処理を行う。たとえば、白色及び赤色の二色でマーキングが施されている場合、マーキング検出部30Cは、画像から白色及び赤色の色ごとにマーキングを検出する。マーキングの検出には、種々の手法を採用できる。たとえば、複数の色のマーキングを含む画像を学習用データとして機械学習した学習済みモデルを用いて、マーキングを色ごとに検出する手法を採用できる。機械学習アルゴリズムの種類については、特に限定されず、たとえば、RNN(Recurrent Neural Network;再帰型ニューラルネットワーク)、CNN(Convolutional Neural Network;畳み込みニューラルネットワーク)又はMLP(Multilayer Perceptron;多層パーセプトロン)等のニューラルネットワークを用いたアルゴリズムを用いることができる。また、たとえば、画像の輝度分布及びRGB値分布に基づいて、色ごとにマーキングを検出する手法を採用することもできる。マーキングが施されている領域は、他の領域とは異なる輝度分布及びRGB値分布となるため、輝度値及びRGB値の変化を探索することにより、画像からマーキングを色ごとに検出できる。
【0044】
損傷図作成部30Dは、マーキングの検出結果に基づいて、損傷図を作成する処理を行う。損傷図は、画像から検出されたマーキングをトレースした図として作成され、色ごとに分類して作成される。たとえば、色別のレイヤー構造で作成される。
【0045】
サーバ側送信部30Eは、作成した損傷図をユーザ端末20に送信する処理を行う。サーバ側送信部30Eは、ネットワーク40を介して、ユーザ端末20に損傷図を送信する。
【0046】
[損傷図の作成方法]
次に、本実施の形態の損傷図作成支援システム10を使用した損傷図の作成方法(損傷図作成支援方法)について説明する。ここでは、橋梁、特に、橋梁の床版を点検する場合を例に説明する。
【0047】
【0048】
同図に示す橋梁1は、主桁2、横桁3、対傾構4、横構5及び床版6を備えた立体的構造を有し、これらの部材が、ボルト、リベット、溶接等で連結された構造を有する。
【0049】
主桁2等の上部には、車輌等が走行するための床版6が打設されている。床版6は、鉄筋コンクリート製のものが一般的である。主桁2は、橋台又は橋脚の間に渡されて、床版6上の車輌等の荷重を支える部材である。主桁2は、床版6の面(水平面)と直交する面(鉛直方向の面)を有する。横桁3は、主桁2を連結する部材である。横桁3は、荷重を複数の主桁2で支持するために備えられる。対傾構4及び横構5は、主桁2を相互に連結する部材である。対傾構4及び横構5は、それぞれ風及び地震の横荷重に抵抗するために備えられる。
【0050】
[橋梁の点検]
一般に床版6の点検は、格間単位で実施される。格間は、床版6において、主桁2及び横桁3によって区分けされる一区画である。
【0051】
本実施の形態の損傷図作成支援システム10を使用した点検では、外業(現場作業)として、現地でマーキング及び写真撮影の作業が行われる。そして、その外業で得られた写真(画像)を基に、内業(事務所作業)として、損傷図の作成が行われる。
【0052】
[マーキング]
マーキングは、ひび割れ等の損傷(変状ともいう)に沿ってチョークで線を引く作業である(チョーキングともいう)。
【0053】
図7は、マーキングの一例を示す図である。同図は、構造物の表面に現れたひび割れに対して、マーキングする場合の例を示している。
【0054】
図7に示すように、マーキングは、構造物の表面に現れたひび割れに沿ってチョークで線Mを引くことによって行われる。この他、漏水、遊離石灰、剥離、鉄筋露出等の損傷については、損傷が発生している領域の外縁に沿って線を引くことによって行われる。また、必要に応じて、損傷の状態等を示す情報(文字及び記号等)が付される。
【0055】
[写真撮影]
図8は、床版の撮影手順の一例を示す図である。
【0056】
上記のように、床版の点検は、格間単位で行われる。格間GOは、主桁2及び横桁3で区分けされる区画の一区画である。したがって、撮影も格間GOごとに行われる。
図8は、y方向及びx方向に順次移動しながら、各格間GOを撮影する様子を示している(図中の矢印は、移動方向を示している。)なお、
図8では、床版6の長手方向(主桁2の方向)をx、床版6の面内でxと直交する方向(横桁3の方向)をy、床版6と直交する方向(垂直下方向)をzとしている。
【0057】
図9は、一つの格間での撮影手順の一例を示す図である。
【0058】
一回の撮影で格間GOの全領域を撮影できない場合、あるいは、撮影できる場合であっても高解像度の画像が得られない場合などには、撮影領域を分割し、複数回に分けて撮影する。
図9において、符号Aで示す枠は、一回の撮影範囲を示す枠である。
図9に示す例では、y方向及びx方向に順次移動しながら、格間GO内の各領域を撮影する様子を示している。
【0059】
撮影者(点検技術者)は、点検対象の面である床版に対して正対し、一定距離から撮影を行う。また、隣り合う撮影領域において、互いに一部が重なり合うように撮影する(たとえば、30%以上重複させて撮影する。)。これにより、パノラマ合成する際に、高精度に合成できる。
【0060】
なお、撮影は、カラー撮影が可能なデジタルカメラを用いて行う。
【0061】
[損傷図の作成]
ここでは、一つの格間GOについて、損傷図を作成する場合を例に説明する。
【0062】
図10は、本実施の形態の損傷図作成支援システムを使用した損傷図の作成の処理手順を示すフローチャートである。
【0063】
まず、ユーザ端末20において、画像の入力が行われる(ステップS1)。一つの格間GOを複数に分割して撮影した場合は、撮影したすべての画像を入力する。
【0064】
次に、入力した画像をサーバ30に送信(アップロード)する(ステップS2)。一つの格間GOを複数に分割して撮影した場合は、たとえば、撮影したすべての画像を一つのフォルダに格納して送信する。
【0065】
サーバ30は、ユーザ端末20から送信された画像を受信する(ステップS3)。受信した画像は、HDD34に格納される。
【0066】
サーバ30は、受信した画像に基づいて、パノラマ合成の要否を判定する(ステップS4)。複数の画像が受信されている場合、パノラマ合成が必要と判定する。
【0067】
サーバ30は、パノラマ合成が必要と判定すると、パノラマ合成の処理を実施する(ステップS5)。パノラマ合成により、格間GOを撮影した一枚の画像が得られる。
【0068】
次に、サーバ30は、格間GOの撮影画像からマーキングを検出する(ステップS6)。マーキングは、色ごとに検出される。
【0069】
図11は、複数色のチョークでマーキングされた格間の撮影画像の一例を示す図である。
【0070】
同図に示す画像Iの格間GOは、損傷の程度に応じて二色のチョークを使い分けてマーキングしている。具体的には、ひび割れ幅が0.2mm未満のひび割れを白色のチョークでマーキングし、ひび割れ幅が0.2mm以上のひび割れを赤色のチョークでマーキングしている。
図11において、符号MRは、赤色のチョークで施されたマーキングを示している。また、符号MWは、白色のチョークで施されたマーキングを示している。サーバ30は、画像Iを解析し、色ごとにマーキングを検出する。
【0071】
【0072】
同図は、検出したマーキングを線でトレースした図として表現している。同図において、符号LRは、赤色のマーキングとして検出されたマーキングをトレースした線を示している。また、符号LWは、白色のマーキングとして検出されたマーキングをトレースした線を示している。なお、同図では、両者を区別しやすくするため、便宜上、赤色のマーキングをトレースした線LRを太線、白色のマーキングをトレースした線LWを細線で示している。
【0073】
マーキングの検出後、
図10に示すように、サーバ30は、その検出結果に基づいて、損傷図を作成する(ステップS7)。損傷図は、画像から検出されたマーキングをトレースした図として作成される。本実施の形態では、色ごとに分類したレイヤー構造の損傷図を作成する。
【0074】
【0075】
同図は、白色及び赤色の二色でマーキングされた格間の損傷図の一例を示している。この場合、第1レイヤーL1と第2レイヤーL2とを備えた損傷
図DFが作成される。第1レイヤーL1は、白色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。第2レイヤーL2は、赤色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。損傷
図DFは、第1レイヤーL1及び第2レイヤーL2を重ね合わせた図で構成される。
【0076】
なお、各レイヤーにおいて、マーキングのトレースする線は、レイヤー同士を重ね合わせた際に互いに区別できるように、異なる線種及び/又は異なる色を使用することが好ましい。たとえば、検出した色と同じ色を使用できる。
【0077】
このように損傷
図DFを色ごとのレイヤー構造で構成することにより、点検箇所(本例では格間)に施されたマーキングを色ごとに確認できる。
【0078】
損傷図の作成後、
図10に示すように、サーバ30は、作成した損傷図をユーザ端末20に送信する(ステップS8)。
【0079】
ユーザ端末20は、処理結果として、サーバ30から送信された損傷図を受信(ダウンロード)する(ステップS9)。そして、受信した損傷図を出力装置27に出力する(ステップS10)。具体的には、出力装置27であるディスプレイに表示する。また、受信した損傷図をHDD24に記録する(ステップS11)。この際、ユーザ端末20は、損傷図の作成元となった写真データに関連付けて損傷図を記録する。
【0080】
以上一連の工程で撮影画像に基づく損傷図の作成処理が終了する。ユーザ(点検技術者)は、取得した損傷図を基に点検結果の報告書を作成する。この際、マーキングの色ごとの損傷図のデータが得られるので、マーキングの色ごとに意味付けがなされている場合には、効率よく報告書等を作成できる。たとえば、損傷の程度に応じて、使用するチョークの色を分けてマーキングしていた場合、損傷の程度に応じた損傷図を個別に得られる(レイヤーを切り換えることにより、損傷の程度ごとの損傷図を得られる。)。一方、マーキングは、コンクリートの色に応じて、使用するチョークの色を変える場合もある。たとえば、コンクリートの色に対し目立つ色のチョークを選択してマーキングする場合がある(たとえば、白っぽいコンクリート上では赤色のチョークを使用し、黒っぽいコンクリート上では白色のチョーク等を使用して、マーキングする。)。このような場合は、各レイヤーを重ねた損傷図を使用する。これにより、色の影響を受けずに損傷図を作成できる。一方、マーキングの際には、コンクリートの色の影響を受けずに、効率よくマーキングの作業を実施できる。また、画像からマーキングを検出する際には、精度よくマーキングを検出できる。
【0081】
《第2の実施の形態》
本実施の形態では、マーキングの色の情報を利用して、損傷を自動的に分類した損傷図を作成する場合について説明する。
【0082】
本実施の形態の損傷図作成支援システムでは、色分けされたマーキングの各色の意味の情報をユーザから取得し、その各色の意味の情報を利用して、損傷の情報を分類した損傷図を作成する。
【0083】
[ユーザ端末]
図14は、本実施の形態の損傷図作成支援システムのユーザ端末が有する主な機能のブロック図である。
【0084】
同図に示すように、本実施の形態のユーザ端末20は、マーキング色情報入力部20Fの機能を更に有する点で上記第1の実施の形態の損傷図作成支援システム10におけるユーザ端末20と相違する。したがって、ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0085】
マーキング色情報入力部20Fは、マーキングが色分けされている場合において、各マーキングの色の意味の情報(マーキング色情報)の入力を受け付ける処理を行う。マーキング色情報入力部20Fは、入力装置26を介して、各マーキングの色の意味の情報を入力する。たとえば、ひび割れ幅が0.2mm未満のひび割れを白色のチョークでマーキングし、ひび割れ幅が0.2mm以上のひび割れを赤色のチョークでマーキングしている場合、「白色」が「ひび割れ幅0.2mm未満のひび割れ」、「赤色」が「ひび割れ幅0.2mm以上のひび割れ」という情報を入力する。
【0086】
端末側送信部20Bは、入力された画像をサーバ30に送信する際、同時にマーキング色情報もサーバ30に送信する。
【0087】
[サーバ]
図15は、本実施の形態の損傷図作成支援システムのサーバが有する主な機能のブロック図である。
【0088】
同図に示すように、本実施の形態のサーバ30(損傷図作成装置)は、マーキング色情報記憶部30Fの機能を更に有する点で上記第1の実施の形態の損傷図作成支援システム10のサーバ30と相違する。したがって、ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0089】
ユーザ端末20から送信されたマーキング色情報は、サーバ側受信部30Aで受信され、マーキング色情報記憶部30Fに記憶される。マーキング色情報記憶部30Fは、たとえば、HDD34で構成される。
【0090】
損傷図作成部30Dは、損傷図を作成する際、マーキング色情報記憶部30Fに記憶された情報を参照して、損傷の情報を分類した損傷図を作成する。
【0091】
[損傷図の作成例]
(1)損傷の程度に応じてマーキングの色を使い分けた場合
この場合、損傷の程度に応じて分類した損傷図が作成される。ユーザは、色ごとの損傷の程度の情報(マーキング色情報)をユーザ端末20に入力する。入力されたマーキング色情報は、サーバ30に送信され、サーバ30のマーキング色情報記憶部30Fに記憶される。サーバ30は、そのマーキング色情報を参照して、損傷の程度に応じて分類した損傷図を作成する。
【0092】
(A)ひび割れの程度に応じてマーキングの色を使い分けた場合
この場合、ひび割れの程度に応じて使用するチョークの色が使い分けられる。たとえば、ひび割れ幅が0.2mm未満のひび割れを白色のチョークでマーキングし、ひび割れ幅が0.2mm以上のひび割れを赤色のチョークでマーキングする、等である。ユーザは、使用したチョークの色(マーキングの色)と、その色ごとの意味の情報(ひび割れの程度の情報)をユーザ端末20に入力する。たとえば、ユーザ端末20に「白色」が「ひび割れ幅0.2mm未満のひび割れ」、「赤色」が「ひび割れ幅0.2mm以上のひび割れ」という情報を入力する。
【0093】
上記のように、マーキングは色ごとに検出される。サーバ30は、色ごとのマーキングの検出結果と、マーキングの色の情報とに基づいて、損傷図を作成する。損傷図は、たとえば、損傷の程度ごとに分類したレイヤー構造の損傷図を作成する。
【0094】
図16は、ひび割れの程度に応じて分類した損傷図の一例を示す図である。
【0095】
同図は、ひび割れ幅が0.2mm未満のひび割れを白色のチョークでマーキングし、ひび割れ幅が0.2mm以上のひび割れを赤色のチョークでマーキングした格間の損傷図の一例を示している。この場合、第1レイヤーL1と第2レイヤーL2とを備えた損傷
図DFが作成される。第1レイヤーL1は、ひび割れ幅が0.2mm未満のひび割れをマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、白色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。第2レイヤーL2は、ひび割れ幅が0.2mm以上のひび割れをマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、赤色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。損傷
図DFは、第1レイヤーL1及び第2レイヤーL2を重ね合わせた図で構成される。
【0096】
各レイヤーには、分類した損傷の情報が付される。たとえば、第1レイヤーL1には、ひび割れ幅が0.2mm未満のひび割れの検出結果であることを示す情報If1が付される。また、第2レイヤーL2には、ひび割れ幅が0.2mm以上のひび割れの検出結果であることを示す情報If2が付される。また、第1レイヤーL1及び第2レイヤーL2を重ねた損傷
図DFには、全ひび割れの検出結果であることを示す情報If0が付される。
【0097】
なお、各レイヤーにおいて、マーキングをトレースする線は、レイヤー同士を重ね合わせた際に互いに区別できるように、異なる線種及び/又は異なる色を使用することが好ましい。たとえば、検出した色と同じ色を使用できる。
【0098】
本例によれば、ひび割れの程度に応じてマーキングの色を使い分けた場合に、そのマーキングの色の情報を利用して、自動的にひび割れの程度ごとに分類した損傷図を作成できる。これにより、効率よく点検の報告書を作成できる。
【0099】
ひび割れについては、この他、あらかじめ定められた評価基準に従って損傷を評価し、その評価に従って色を使い分けてマーキングすることもできる。この場合、色ごとに検出したマーキングの検出結果に基づいて、色ごとに分類した損傷図(色ごとにレイヤー化した損傷図)を作成することにより、評価基準に従って分類した損傷図を自動的に作成できる。判定基準には、独自に定めた基準の他、国、自治体及び企業等が定めた基準を利用できる。たとえば、橋梁の点検に関して国土交通省が規定する橋梁定期点検要領に定められた基準を利用できる。
【0100】
図17は、ひび割れの評価基準の一例を示す表である。
【0101】
同図に示す例では、最大ひび割れ幅に着目した程度(大、中、小)と、最小ひび割れ間隔に着目した程度(大、小)とを組み合わせて、ひび割れの損傷の程度を5段階(a、b、c、d、e)で評価している。
【0102】
マーキングする場合は、評価区分(a、b、c、d、e)に応じて、チョークの色を使い分ける。たとえば、区分bは白色のチョーク、区分cは青色のチョーク、区分dは黄色のチョーク、区分eは赤色のチョークを使用して、損傷箇所をマーキングする。
【0103】
損傷図を作成する場合は、マーキングの色ごとに分類した損傷図を作成する。これにより、損傷の評価区分ごとに分類した損傷図を自動的に作成できる。
【0104】
(B)漏水の程度に応じてマーキングの色を使い分けた場合
この場合、漏水の程度に応じて使用するチョークの色が使い分けられる。たとえば、通常の漏水箇所については、白色のチョークでマーキングし、さび汁を伴う漏水箇所については、赤色のチョークでマーキングする、等である。ユーザは、使用したチョークの色(マーキングの色)と、その色ごとの意味の情報(漏水の程度の情報)をユーザ端末20に入力する。たとえば、ユーザ端末20に「白色」が「通常の漏水」、「赤色」が「さび汁を伴う漏水」という情報を入力する。
【0105】
サーバ30は、色ごとのマーキングの検出結果と、マーキングの色の情報とに基づいて、漏水の程度ごとに分類したレイヤー構造の損傷図を作成する。
【0106】
図18は、漏水の程度に応じて分類した損傷図の一例を示す図である。
【0107】
同図は、通常の漏水箇所を白色のチョークでマーキングし、さび汁を伴う漏水箇所を赤色のチョークでマーキングした格間の損傷図の一例を示している。この場合、第1レイヤーL1と第2レイヤーL2とを備えた損傷
図DFが作成される。第1レイヤーL1は、通常の漏水箇所をマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、白色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。第2レイヤーL2は、さび汁を伴う漏水箇所をマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、赤色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。損傷
図DFは、第1レイヤーL1及び第2レイヤーL2を重ね合わせた図で構成される。
【0108】
各レイヤーには、分類した損傷の情報が付される。たとえば、第1レイヤーL1には、通常の漏水であることを示す情報If1が付される。また、第2レイヤーL2には、さび汁を伴う漏水であることを示す情報If2が付される。また、第1レイヤーL1及び第2レイヤーL2を重ねた損傷
図DFには、全漏水箇所の検出結果であることを示す情報If0が付される。
【0109】
本例によれば、漏水の程度に応じてマーキングの色を使い分けた場合に、そのマーキングの色の情報を利用して、自動的に漏水の程度ごとに分類した損傷図を作成できる。これにより、効率よく点検の報告書を作成できる。
【0110】
(C)遊離石灰の程度に応じてマーキングの色を使い分けた場合
この場合、遊離石灰の程度に応じて使用するチョークの色が使い分けられる。たとえば、通常の遊離石灰の箇所については、白色のチョークでマーキングし、さび汁を伴う遊離石灰及びつらら状の遊離石灰の箇所については、赤色のチョークでマーキングする、等である。ユーザは、使用したチョークの色(マーキングの色)と、その色ごとの意味の情報(遊離石灰の程度の情報)をユーザ端末20に入力する。たとえば、ユーザ端末20に「白色」が「通常の遊離石灰」、「赤色」が「さび汁を伴う遊離石灰及びつらら状の遊離石灰」という情報を入力する。
【0111】
サーバ30は、色ごとのマーキングの検出結果と、マーキングの色の情報とに基づいて、遊離石灰の程度ごとに分類したレイヤー構造の損傷図を作成する。
【0112】
図19は、遊離石灰の程度に応じて分類した損傷図の一例を示す図である。
【0113】
同図は、通常の遊離石灰の箇所を白色のチョークでマーキングし、さび汁を伴う遊離石灰及びつらら状の遊離石灰の箇所を赤色のチョークでマーキングした格間の損傷図の一例を示している。この場合、第1レイヤーL1と第2レイヤーL2とを備えた損傷
図DFが作成される。第1レイヤーL1は、通常の遊離石灰の箇所をマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、白色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。第2レイヤーL2は、さび汁を伴う遊離石灰及びつらら状の遊離石灰の箇所をマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、赤色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。損傷
図DFは、第1レイヤーL1及び第2レイヤーL2を重ね合わせた図で構成される。
【0114】
各レイヤーには、分類した損傷の情報が付される。たとえば、第1レイヤーL1には、通常の遊離石灰であることを示す情報If1が付される。また、第2レイヤーL2には、さび汁を伴う遊離石灰及びつらら状の遊離石灰であることを示す情報If2が付される。また、第1レイヤーL1及び第2レイヤーL2を重ねた損傷
図DFには、全遊離石灰の検出結果であることを示す情報If0が付される。
【0115】
本例によれば、遊離石灰の程度に応じてマーキングの色を使い分けた場合に、そのマーキングの色の情報を利用して、自動的に遊離石灰の程度ごとに分類した損傷図を作成できる。これにより、効率よく点検の報告書を作成できる。
【0116】
漏水及び遊離石灰についても、あらかじめ定められた評価基準に従って損傷を評価し、その評価に従って色を使い分けてマーキングすることもできる。この場合、色ごとに検出したマーキングの検出結果に基づいて、色ごとに分類した損傷図(色ごとにレイヤー化した損傷図)を作成することにより、評価基準に従って分類した損傷図を自動的に作成できる。
【0117】
図20は、漏水及び遊離石灰の評価基準の一例を示す表である。
【0118】
同図に示す例では、漏水及び遊離石灰の発生状況に応じて、損傷の程度を5段階(a、b、c、d、e)で評価している。
【0119】
マーキングする場合は、評価区分(a、b、c、d、e)に応じて、チョークの色を使い分ける。たとえば、区分cは白色のチョーク、区分dは黄色のチョーク、区分eは赤色のチョークを使用して、損傷箇所をマーキングする。
【0120】
損傷図を作成する場合は、マーキングの色ごとに分類した損傷図を作成する。これにより、損傷の評価区分ごとに分類した損傷図を自動的に作成できる。
【0121】
(D)剥離及び鉄筋露出の程度に応じてマーキングの色を使い分けた場合
この場合、剥離及び鉄筋露出の程度に応じて使用するチョークの色が使い分けられる。たとえば、通常の鉄筋露出の箇所については、白色のチョークでマーキングし、ひどい錆を伴う鉄筋露出の箇所については、赤色のチョークでマーキングする、等である。ユーザは、使用したチョークの色(マーキングの色)と、その色ごとの意味の情報(鉄筋露出の程度の情報)をユーザ端末20に入力する。たとえば、ユーザ端末20に「白色」が「通常の鉄筋露出」、「赤色」が「ひどい錆を伴う鉄筋露出」という情報を入力する。
【0122】
サーバ30は、色ごとのマーキングの検出結果と、マーキングの色の情報とに基づいて、鉄筋露出の程度ごとに分類したレイヤー構造の損傷図を作成する。
【0123】
図21は、鉄筋露出の程度に応じて分類した損傷図の一例を示す図である。
【0124】
同図は、通常の鉄筋露出の箇所を白色のチョークでマーキングし、ひどい錆を伴う鉄筋露出の箇所を赤色のチョークでマーキングした格間の損傷図の一例を示している。この場合、第1レイヤーL1と第2レイヤーL2とを備えた損傷
図DFが作成される。第1レイヤーL1は、通常の鉄筋露出の箇所をマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、白色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。第2レイヤーL2は、ひどい錆を伴う鉄筋露出の箇所をマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、赤色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。損傷
図DFは、第1レイヤーL1及び第2レイヤーL2を重ね合わせた図で構成される。
【0125】
各レイヤーには、分類した損傷の情報が付される。たとえば、第1レイヤーL1には、通常の鉄筋露出であることを示す情報If1が付される。また、第2レイヤーL2には、ひどい錆を伴う鉄筋露出であることを示す情報If2が付される。また、第1レイヤーL1及び第2レイヤーL2を重ねた損傷
図DFには、全鉄筋露出の検出結果であることを示す情報If0が付される。
【0126】
本例によれば、鉄筋露出の程度に応じてマーキングの色を使い分けた場合に、そのマーキングの色の情報を利用して、自動的に鉄筋露出の程度ごとに分類した損傷図を作成できる。これにより、効率よく点検の報告書を作成できる。
【0127】
剥離及び鉄筋露出についても、あらかじめ定められた評価基準に従って損傷を評価し、その評価に従って色を使い分けてマーキングすることもできる。この場合、色ごとに検出したマーキングの検出結果に基づいて、色ごとに分類した損傷図(色ごとにレイヤー化した損傷図)を作成することにより、評価基準に従って分類した損傷図を自動的に作成できる。
【0128】
図22は、剥離及び鉄筋露出の評価基準の一例を示す表である。
【0129】
同図に示す例では、剥離及び鉄筋露出の発生状況に応じて、損傷の程度を5段階(a、b、c、d、e)で評価している。
【0130】
マーキングする場合は、評価区分(a、b、c、d、e)に応じて、チョークの色を使い分ける。たとえば、区分cは白色のチョーク、区分dは黄色のチョーク、区分eは赤色のチョークを使用して、損傷箇所をマーキングする。
【0131】
損傷図を作成する場合は、マーキングの色ごとに分類した損傷図を作成する。これにより、損傷の評価区分ごとに分類した損傷図を自動的に作成できる。
【0132】
(2)損傷の種類に応じてマーキングの色を使い分けた場合
この場合、損傷の種類に応じて分類した損傷図が作成される。ユーザは、色ごとの損傷の種類の情報(マーキング色情報)をユーザ端末20に入力する。入力されたマーキング色情報はサーバ30に送信され、サーバ30のマーキング色情報記憶部30Fに記憶される。サーバ30は、そのマーキング色情報を参照して、損傷の種類に応じて分類した損傷図を作成する。
【0133】
たとえば、ひび割れは白色、漏水は青色、遊離石灰は緑色、剥離は黄色、鉄筋露出は赤色のチョークでマーキングする、等である。ユーザは、使用したチョークの色(マーキングの色)と、その色ごとの損傷の種類の情報をユーザ端末20に入力する。たとえば、ユーザ端末20に「白色」が「ひび割れ」、「青色」が「漏水」、「緑色」が「遊離石灰」、「黄色」が「剥離」、「赤色」が「鉄筋露出」という情報を入力する。
【0134】
サーバ30は、色ごとのマーキングの検出結果と、マーキングの色の情報とに基づいて、損傷図を作成する。損傷図は、損傷の程度ごとに分類したレイヤー構造の損傷図を作成する。
【0135】
【0136】
同図は、ひび割れの箇所を白色のチョークでマーキングし、漏水の箇所を青色のチョークでマーキングし、遊離石灰の箇所を緑色のチョークでマーキングし、剥離の箇所を黄色のチョークでマーキングし、鉄筋露出の箇所を赤色のチョークでマーキングした場合の損傷図の構成の一例を示している。この場合、5つのレイヤー(第1レイヤーL1~第5レイヤーL5)を備えた損傷
図DFが作成される。第1レイヤーL1は、ひび割れをマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、白色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。第2レイヤーL2は漏水をマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、青色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。第3レイヤーL3は、遊離石灰の箇所をマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、緑色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。第4レイヤーL4は、剥離をマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、黄色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。第5レイヤーL5は、鉄筋露出をマーキングした損傷図で構成される。この損傷図は、赤色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。全体の損傷
図DFは、すべてのレイヤーを重ね合わせた図で構成される。
【0137】
上記同様に、各レイヤーには、分類した損傷の情報が付される。また、各レイヤーにおいて、マーキングをトレースする線は、レイヤー同士を重ね合わせた際に互いに区別できるように、異なる線種及び/又は異なる色を使用することが好ましい。たとえば、検出した色と同じ色を使用できる。あるいは、あらかじめ設定した表示規則に従って表示してもよい。
【0138】
図24は、損傷図上で損傷の表示態様の一例を示す図である。
【0139】
同図に示すように、損傷の種類ごとに損傷図上での表示態様を設定し、その設定に従って損傷図上に損傷を表示する。たとえば、漏水のマーキング(本例では青色のマーキング)を検出した場合、損傷図上では、マーキングの箇所をハッチングで表示する。
【0140】
また、このようにあらかじめ設定した表示規則に従って損傷図上に損傷を表わした場合には、その凡例を損傷図上に表示あるいは添付してもよい。
【0141】
図25は、損傷の種類別に分類した損傷図の一例を示す図である。
【0142】
同図に示す例では、ひび割れ、漏水及び遊離石灰が生じた格間を撮影した画像から損傷図を作成した場合の例を示している。この場合、同図に示すように、ひび割れの箇所に施した白色のマーキング、漏水の箇所に施した青色のマーキング、及び、遊離石灰の箇所に施した緑色のマーキングが検出される。損傷図は、ひび割れの損傷図である第1レイヤーL1と、漏水の損傷図である第2レイヤーL2と、遊離石灰の損傷図である第3レイヤーL3が作成される(剥離の損傷図である第4レイヤーL4及び鉄筋露出の損傷図である第5レイヤーL5は白紙(透明)のレイヤーとなる。)。全体の損傷
図DFは、すべての損傷が表示された図となる。
【0143】
本例によれば、損傷の種類に応じてマーキングの色を使い分けた場合に、そのマーキングの色の情報を利用して、自動的に損傷の種類ごとに分類した損傷図を作成できる。これにより、効率よく点検の報告書を作成できる。
【0144】
(3)点検の時期に応じてマーキングの色を使い分けた場合
たとえば、最初の点検では、白色のチョークを使用し、次の点検では、赤色のチョークを使用し、その次の点検では、青色のチョークを使用する等、点検のたびにチョークの色を変えてマーキングする。この場合、点検の時期(回)に応じて分類した損傷図が作成される。ユーザは、色ごとの点検の時期(回)の情報(マーキング色情報)をユーザ端末20に入力する。入力されたマーキング色情報はサーバ30に送信され、サーバ30のマーキング色情報記憶部30Fに記憶される。サーバ30は、そのマーキング色情報を参照して、点検の時期に応じて分類した損傷図を作成する。損傷図は、たとえば、レイヤー構造の損傷図が作成される。すなわち、点検の時期(回)ごとに分類されて積層された構造の損傷図が作成される。
【0145】
図26は、点検の時期ごとに分類した損傷図の構成の一例を示す図である。
【0146】
同図は、これまでに3回の点検を実施した場合の損傷図の一例を示している。1回目(2008年12月1日)の点検では、白色のチョークで損傷箇所をマーキングし、2回目(2013年12月1日)の点検では、赤色のチョークで損傷箇所をマーキングし、3回目(2018年12月1日)の点検では、青色のチョークで損傷箇所をマーキングしている。この場合、3つのレイヤー(第1レイヤーL1~第3レイヤーL3)を備えた損傷
図DFが作成される。第1レイヤーL1は、第1回目の点検の損傷図で構成される。この損傷図は、白色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。第2レイヤーL2は、第2回目の点検の損傷図で構成される。この損傷図は、赤色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。第3レイヤーL3は、第3回目の点検の損傷図で構成される。この損傷図は、青色のマーキングをトレースした損傷図で構成される。全体の損傷
図DFは、すべてのレイヤーを重ね合わせた図で構成される。
【0147】
本例によれば、点検の時期(回)に応じてマーキングの色を使い分けた場合に、そのマーキングの色の情報を利用して、自動的に点検の時期(回)ごとに分類した損傷図を作成できる。これにより、効率よく点検の報告書を作成できる。また、このような損傷図を作成することにより、過去と今回の点検の差分(損傷の進展)を確認できる。
【0148】
《その他の実施の形態及び変形例》
[点検対象]
上記実施の形態では、橋梁を点検する場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、トンネル、ダム、建築物などの構造物を点検する場合にも同様に適用できる。また、点検対象の構造物は、コンクリート構造物に限らず、他の構造物の点検にも適用できる。また、点検箇所の表面構造は、コンクリートに限らず、タイル等で構成されていてもよい。更に、構造物の鋼部材を点検対象とする場合にも、本発明を適用できる。構造物の鋼部材を点検対象に含める場合、たとえば、鋼部材の亀裂の程度、腐食の程度、防食機能の劣化の程度及びボルトのゆるみの程度等に応じてマーキングの色を使い分ける。たとえば、亀裂に関して、(1)断面急変部、溶接接合部などに塗膜われが確認できる場合、及び、亀裂が生じているものの、線状でないか、線状であってもその長さが極めて短く、更に数が少ない場合は、白色のチョークでマーキングし、(2)線状の亀裂が生じている又は直下に亀裂が生じている疑いを否定できない塗膜われが生じている場合は、赤色のチョークでマーキングする。また、たとえば、腐食に関して、(1)損傷の深さが小さく(錆は表面的であり、著しい板厚減少等は視認できない場合)、かつ、損傷の面積が小さい(損傷箇所の面積が小さく局部的である)場合は、白色のチョークでマーキングし、(2)損傷の深さが小さく、かつ、損傷の面積が大きい(損傷着目部分の全体に錆が生じている又は着目部分に拡がりのある発錆箇所が複数ある)場合は、青色のチョークでマーキングし、(3)損傷の深さが大きく(鋼材表面に著しい膨張が生じている又は明らかな板厚減少等が視認できる)、かつ、損傷の面積が大きい場合は、黄色のチョークでマーキングし、(4)損傷の深さが大きく、かつ、損傷の面積が大きい場合は、赤色のチョークでマーキングする。また、防食機能の劣化に関して、塗装の場合、たとえば、(1)最外層の防食塗膜に変色が生じたり、局所的なうきが生じている場合は、白色のチョークでマーキングし、(2)部分的に防食塗膜が剥離し、下塗りが露出している場合は、黄色のチョークでマーキングし、(3)防食塗膜の劣化範囲が広く、点錆が発生している場合は、赤色のチョークでマーキングする。また、防食機能の劣化に関して、めっき及び金属溶射の場合、(1)局所的に防食皮膜が劣化し、点錆が発生している場合は、白色のチョークでマーキングし、(2)防食皮膜の劣化範囲が広く、点錆が発生している場合は、赤色のチョークでマーキングする。また、防食機能の劣化に関して、耐候性鋼材の場合、(1)錆の大きさは1~5mm程度で粗い場合は、白色のチョークでマーキングし、(2)錆の大きさは5~25mm程度のうろこ状である場合は、黄色のチョークでマーキングし、(3)錆の層状剥離がある場合は、赤色のチョークでマーキングする。また、ボルトのゆるみに関して、(1)ボルトにゆるみや脱落が生じており、その数が少ない(一群あたり本数の5%未満である。)場合は、白色のチョークでマーキングし、(2)ボルトにゆるみ及び脱落等が生じており、その数が多い(一群あたり本数の5%以上である。)場合は、赤色のチョークでマーキングする。損傷図を作成する際は、画像から検出したマーキングの色ごとの検出結果に従って損傷図を作成する。すなわち、検出した鋼部材の亀裂の程度、腐食の程度及び防食機能の劣化の程度等に応じて、損傷を分類した損傷図を作成する。
【0149】
[システム構成]
上記実施の形態では、本発明を損傷図作成支援システムとして、いわゆるクライアントサーバ型のシステムで構成しているが、本発明は、たとえば、損傷図作成支援システムとして、いわゆるスタンドアローンコンピュータで実現することもできる。
【0150】
[マーキング作業]
上記実施の形態では、チョークを用いてマーキングする場合を例に説明したが、マーキングの作業は、フェルトペン(マーキングペン)等のマーカーを使用して行うこともできる。色の使い分けができればよい。
【0151】
また、上記実施の形態では、ひび割れ、漏水、遊離石灰、剥離及び鉄筋露出等の点検及びマーキングを個別に行う場合を例に説明したが、これらの作業は複合的に行うことができる。たとえば、ひび割れ及び漏水の点検及びマーキングを同時に実施できる。この場合、ひび割れの程度及び漏水の程度に応じてチョークの色を使い分けてマーキングすることもできる。また、同時に損傷の種類に応じてチョークの色を使い分けてマーキングすることもできる。これにより、損傷の程度及び損傷の種類ごとに分類した損傷図を作成できる。
【0152】
[マーキング色情報の入力]
上記実施の形態では、マーキングの色ごとの情報をユーザがユーザ端末20に入力する構成としているが、マーキングの色ごとの情報が、あらかじめ定められている場合(たとえば、点検技術者が、あらかじめ定められた色の使用規則に従ってマーキングする場合など)は、当該情報をサーバ30が保持し(HDD34(記憶部)等に保持)、その情報を参照して、損傷図を作成する構成としてもよい。
【0153】
[損傷図の構成]
上記実施の形態では、マーキングの色ごとに分離可能なレイヤー構造の損傷図を作成しているが、損傷図の構成は、これに限定されるものではない。マーキングの色ごとに個別に損傷図を作成してもよい。あるいは、一つの損傷図の中でマーキングの色ごとに分離可能な形態で作成してもよい(たとえば、マーキングの色ごとにグループ化して、マーキングの色ごとに表示及び非表示を切り換えられるようにする。)。
【0154】
[ハードウェア構成の変形例]
本発明の損傷図作成支援装置を実現するハードウェアは、各種のプロセッサ(processor)で構成できる。各種プロセッサには、プログラムを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device;PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。損傷図作成支援装置を構成する1つの処理部は、上記各種プロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。たとえば、1つの処理部は、複数のFPGA、あるいは、CPUとFPGAの組み合わせによって構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第一に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第二に、システムオンチップ(System On Chip;SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種プロセッサを1つ以上用いて構成される。更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【符号の説明】
【0155】
1 橋梁
2 主桁
3 横桁
4 対傾構
5 横構
6 床版
10 損傷図作成支援システム
20 ユーザ端末
20A 端末側画像入力部
20B 端末側送信部
20C 端末側受信部
20D 端末側出力部
20E 端末側記録部
20F マーキング色情報入力部
21 CPU(Central Processing Unit)
22 RAM(Random Access Memory)
23 ROM(Read Only Memory)
24 HDD(Hard Disk Drive)
25 通信IF(Interface)
26 入力装置
27 出力装置
28 光学ディスクドライブ
30 サーバ
30A サーバ側受信部
30B パノラマ合成部
30C マーキング検出部
30D 損傷図作成部
30E サーバ側送信部
30F マーキング色情報記憶部
31 CPU(Central Processing Unit)
32 RAM(Random Access Memory)
33 ROM(Read Only Memory)
34 HDD(Hard Disk Drive)
35 通信IF(Interface)
36 入力装置
37 出力装置
38 光学ディスクドライブ
40 ネットワーク
DF 損傷図
GO 格間
I 画像
If0 情報
If1 情報
If2 情報
L1 第1レイヤー
L2 第2レイヤー
L3 第3レイヤー
L4 第4レイヤー
L5 第5レイヤー
S1~S11 損傷図の作成の処理手順