(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165069
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】希土類アルミン酸塩焼結体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/44 20060101AFI20231108BHJP
C04B 35/50 20060101ALI20231108BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20231108BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C04B35/44
C04B35/50
C09K11/80
C09K11/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075673
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 稜
(72)【発明者】
【氏名】武富 正蔵
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001CA05
4H001CF02
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA39
4H001XA57
4H001XA64
4H001XA65
4H001XA71
(57)【要約】
【課題】光の取り出し効率の高い希土類アルミン酸塩焼結体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒と、前記希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相と屈折率が異なる希土類アルミン酸塩結晶相と、を含み、前記結晶凝集粒の周囲に前記希土類アルミン酸塩結晶相が配置される、希土類アルミン酸塩焼結体である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒と、前記希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相と屈折率が異なる希土類アルミン酸塩結晶相と、を含み、
前記結晶凝集粒の周囲に前記希土類アルミン酸塩結晶相が配置される、希土類アルミン酸塩焼結体。
【請求項2】
一断面視において、2つ以上の前記結晶凝集粒を含み、2つの前記結晶凝集粒の間に前記希土類アルミン酸塩結晶相が配置される、請求項1に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
【請求項3】
前記希土類アルミン酸塩結晶相が、希土類アルミン酸塩の一次粒子由来である、請求項1又は2に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
【請求項4】
希土類アルミン酸塩焼結体の表面又は断面における、前記結晶凝集粒の絶対最大長が10.0μm以上150.0μm以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
【請求項5】
前記希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相が、Y、La、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項1又は2に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
【請求項6】
前記希土類アルミン酸塩結晶相が、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項1又は2に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
【請求項7】
前記結晶凝集粒の絶対最大長を測定する希土類アルミン酸塩焼結体の測定範囲の領域が、走査型電子顕微鏡を用いて測定されたSEM画像における1209675μm2の領域である、請求項4に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
【請求項8】
前記結晶凝集粒と前記希土類アルミン酸塩結晶相の合計100体積%に対して、前記希土類アルミン酸塩結晶相が1.0体積%以上10.0体積%以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
【請求項9】
前記希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相が、下記式(I)で表される組成を有する、請求項1又は2に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
(R1
1-nCen)3(Al1-mM1
m)5kO12 (I)
(前記式(I)中、R1は、Y、La、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M1は、Ga及びScからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、m、n及びkは、それぞれ0≦m≦0.02、0.002≦n≦0.017、0.95≦k≦1.10を満たす。)
【請求項10】
前記希土類アルミン酸塩結晶相が、下記式(II)で表される組成を有する、請求項1又は2に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
R2Al1-jM2
jO3 (II)
(前記式(II)中、R2は、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M2は、Ga及びScからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、jは、0≦j≦0.02を満たす。)
【請求項11】
湿式混合した後に乾燥して得られる第1原料混合物を準備することと、
前記第1原料混合物と、希土類アルミン酸塩粒子と、を乾式混合することと、
前記第1原料混合物と前記希土類アルミン酸塩粒子とを乾式混合して得られる混合物を成形することと、
前記混合物を成形して得られる成形体を焼成すること、を含む希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法。
【請求項12】
前記第1原料混合物を準備するときに、第1原料混合物が、Y、La、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも1種の元素R1を含む第1酸化物粒子と、Ceを含む第2酸化物粒子と、Alを含む第3酸化物粒子と、必要に応じてGa及びScからなる群から選択される少なくとも1種の元素M1を含む第4酸化物粒子と、必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を含む、請求項11に記載の希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法。
【請求項13】
前記希土類アルミン酸塩粒子を準備するときに、
Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素R2を含む第5酸化物粒子と、Alを含む第6酸化物粒子と、必要に応じてGa及びScからなる群から選択される元素M2を含む第7酸化物粒子と、を湿式混合することと、
前記湿式混合して得られる第2原料混合物を1000℃以上1600℃以下の範囲内の温度で焼成すること、を含むことにより、前記希土類アルミン酸塩粒子が作製される、請求項11又は12に記載の希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法。
【請求項14】
前記成形体を焼成するときに、焼成温度が1300℃以上1800℃以下の範囲内である、請求項11又は12に記載の希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、希土類アルミン酸塩焼結体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)と、LEDやLDから発せられた光の波長を変換する蛍光体を含む波長変換部材を備えた発光装置が知られている。このような発光装置は、例えば車載用、一般照明用、液晶表示装置のバックライト、プロジェクター等の光源に用いられている。
【0003】
発光装置に備えられる波長変換部材として、例えば、特許文献1には、理論密度に対して特定の範囲の密度を有する単相の多孔質オプトセラミックスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
波長変換部材は、多孔性により光を散乱させる場合、多孔性によって波長変換部材の密度が低下すると光束が低下する傾向があり、波長変換部材の光の取り出し効率が低下する場合がある。
そこで本開示は、光の取り出し効率を高めることができる、希土類アルミン酸塩焼結体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様は、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒と、前記希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相と屈折率が異なる希土類アルミン酸塩結晶相と、を含み、前記結晶凝集粒の周囲に前記希土類アルミン酸塩結晶相が配置される、希土類アルミン酸塩焼結体である。
【0007】
第二態様は、湿式混合した後に乾燥して得られる第1原料混合物を準備することと、前記第1原料混合物と、希土類アルミン酸塩粒子と、を乾式混合することと、前記第1原料混合物と前記希土類アルミン酸塩粒子とを乾式混合して得られる混合物を成形することと、前記混合物を成形して得られる成形体を焼成すること、を含む希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、光の取り出し効率を高めることができる、希土類アルミン酸塩焼結体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法のフローチャートである。
【
図2】発光装置の一例を示す概略構成を示す図である。
【
図3】希土類アルミン酸塩焼結体を含む蛍光体デバイスの一例の概略構成を示す平面図である。
【
図4】希土類アルミン酸塩焼結体を含む蛍光体デバイスの一例の概略構成を示す側面図である。
【
図5】実施例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体のSEM写真である。
【
図6】実施例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体のSEM写真において、結晶凝集粒を粒界分離した状態を示すイメージ図である。
【
図7】比較例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体のSEM写真である。
【
図8】実施例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体のSEM写真において、酸化アルミニウム結晶相を粒界分離した状態を示すイメージ図である。
【
図9】実施例1及び2に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルと、比較例1に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルを示す図である。
【
図10】実施例3及び4に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルと、比較例1に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルを示す図である。
【
図11】実施例5に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルと、比較例1に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルを示す図である。
【
図12】実施例6及び7に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルと、比較例1に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルを示す図である。
【
図13】実施例8及び9に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルと、比較例1に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る希土類アルミン酸塩焼結体及びその製造方法を実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の希土類アルミン酸塩焼結体及びその製造方法に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係は、JIS Z8110に従う。
【0011】
希土類アルミン酸塩焼結体は、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒と、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相と屈折率が異なる希土類アルミン酸塩結晶相と、を含み、結晶凝集粒の周囲に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されたものである。本明細書において、希土類アルミン酸塩焼結体は、「焼結体」と記載する場合がある。また、本明細書において、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相は、「蛍光体結晶相」と記載する場合がある。蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒の周囲に、蛍光体結晶相とは屈折率が異なる希土類アルミン酸塩結晶相が配置されていると、焼結体に入射された励起光と、蛍光体結晶相で励起光を吸収して波長変換された波長変換光が、蛍光体結晶相と、蛍光体結晶相とは屈折率の異なる希土類アルミン酸塩結晶相との界面で散乱され、焼結体から出射される光の広がりを抑制することができる。希土類アルミン酸塩焼結体は、希土類アルミン酸塩焼結体から出射される光の広がりが抑制されるため、光の取り出し効率を高くすることができる。
【0012】
希土類アルミン酸塩焼結体は、一断面視において、2つ以上の結晶凝集粒を含み、2つ以上の結晶凝集粒の間に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されることが好ましい。一断面視は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定されたSEM画像における希土類アルミン酸塩焼結体の表面又は断面を見ることを示す。2つ以上の結晶凝集粒の間に、希土類アルミン酸塩結晶相が配置されていると、焼結体に入射された励起光と、蛍光体結晶相で波長変換された波長変換光が、蛍光体結晶相と、蛍光体結晶相とは屈折率の異なる希土類アルミン酸塩結晶相との界面でより散乱されやすくなり、焼結体から出射される光の広がりをより抑制することができる。希土類アルミン酸塩焼結体は、希土類アルミン酸塩焼結体から出射される光の広がりがより抑制されるため、光の取り出し効率を高くすることができる。
【0013】
希土類アルミン酸塩結晶相は、希土類アルミン酸塩の一次粒子由来であることが好ましい。希土類アルミン酸塩結晶相が、希土類アルミン酸塩の一次粒子由来であると、結晶凝集粒の周囲に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されやすくなる。また、希土類アルミン酸塩結晶相が、希土類アルミン酸塩の一次粒子由来であると、2つ以上の結晶凝集粒の間に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されやすくなる。
【0014】
希土類アルミン酸塩焼結体は、希土類アルミン酸塩焼結体の表面又は断面における、結晶凝集粒の絶対最大長が10.0μm以上150.0μm以下の範囲内であることが好ましい。希土類アルミン酸塩焼結体の表面又は断面における、結晶凝集粒の絶対最大長は、80.0μm以上148.0μm以下の範囲内であることがより好ましく、100.0μm以上145.0μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。希土類アルミン酸塩焼結体の表面又は断面における、結晶凝集粒の絶対最大長が、10.0μm以上150.0μm以下の範囲内であれば、焼結体に入射された励起光を、結晶凝集粒に含まれる蛍光体結晶相が吸収して波長変換しやすく、焼結体から出射される光束の低下を抑制して、高い光束を維持した光を焼結体から出射することができる。結晶凝集粒の絶対最大長は、希土類アルミン酸塩焼結体の表面又は断面の測定範囲において確認できる1つの結晶凝集粒の最も離れている2点の距離をいう。また、希土類アルミン酸塩焼結体の表面又は断面における結晶凝集粒の絶対最大長が10.0μm以上150.0μm以下の範囲内であれば、結晶凝集粒が、希土類アルミン酸塩の一次粒子由来の希土類アルミン酸塩結晶相よりも大きく、結晶凝集粒の周囲に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されやすくなる。また、結晶凝集粒が、希土類アルミン酸塩結晶相よりも大きいと、2つ以上の結晶凝集粒の間に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されやすくなる。
【0015】
結晶凝集粒の絶対最大長を測定する希土類アルミン酸塩焼結体の測定範囲の領域が、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定されたSEM画像における1209675μm2の領域であることが好ましい。希土類アルミン酸塩焼結体の表面又は断面において、結晶凝集粒の絶対最大長を測定する測定範囲が、SEM画像において1209675μm2の領域であれば、結晶凝集の絶対最大長を正確に測定することができる。
【0016】
希土類アルミン酸塩焼結体は、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相が主相であり、希土類アルミン酸塩結晶相が副相であることが好ましい。本明細書において、主相とは、主相と副相の合計100体積%において、51体積%以上100体積%以下の範囲内で存在する結晶相をいう。希土類アルミン酸塩焼結体において、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相が主相であり、希土類アルミン酸塩結晶相が副相であると、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒の体積割合が、希土類アルミン酸塩結晶相の体積割合よりも多くなり、結晶凝集粒の周囲に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されやすく、2つ以上の結晶凝集粒の間に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されやすくなる。
【0017】
希土類アルミン酸塩焼結体において、結晶凝集粒と希土類アルミン酸塩結晶相の合計100体積%に対して、希土類アルミン酸塩結晶相が1.0体積%以上10.0体積%以下の範囲内であることが好ましい。結晶凝集粒と希土類アルミン酸塩結晶相の合計100体積%に対して、希土類アルミン酸塩結晶相が1.2体積%以上8.0体積%以下の範囲内であることがより好ましく、1.5体積%以上5.0体積%以下の範囲内であることがさらに好ましい。希土類アルミン酸塩焼結体において、希土類アルミン酸塩結晶相が1.0体積%以上10.0体積%以下の範囲内であると、結晶凝集粒の周囲に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されやすく、2つ以上の結晶凝集粒の間に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されやすくなる。
【0018】
希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相は、Y、La、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相に、Y、La、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素が含まれると、入射された励起光を吸収して所望の波長に波長変換する組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を得られやすくなる。
【0019】
希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相は、下記式(I)で表される組成式に含まれる組成を有することが好ましい。希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相が、下記式(I)で表される組成を有していると、励起光を吸収して、所望の波長に波長変換した光を出射することができる。
(R1
1-nCen)3(Al1-mM1
m)5kO12 (I)
(前記式(I)中、R1は、Y、La、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M1は、Ga及びScからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、m、n及びkは、それぞれ0≦m≦0.02、0.002≦n≦0.017、0.95≦k≦1.10を満たす。)
【0020】
上記式(I)で表される組成において、R1は、2種以上の希土類元素が含まれていてもよい。Ceは、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相の賦活元素であり、変数nと3の積は、前記式(I)で表される組成において、Ceのモル比を表す。変数nは、より好ましくは0.002以上0.016以下(0.002≦n≦0.016)、さらに好ましくは0.003以上0.015以下(0.003≦n≦0.015)である。前記式(I)で表される組成において、変数mと5とkの積は、元素M1のモル比を表す。元素M1は、式(I)で表される組成において含まれていない、つまり、m=0であってもよい。前記式(I)で表される組成において、所望の色調に波長変換するために、変数mは、0.00001以上0.02以下(0.00001≦m≦0.02)であってもよく、0.00005以上0.018以下(0.00005≦m≦0.018)であってもよい。前記式(I)で表される組成において、変数kと5の積は、Al及び元素M1の合計のモル比を表す。変数kは、より好ましくは0.96以上1.09以下(0.96≦k≦1.09)であり、さらに好ましくは0.97以上1.08以下(0.97≦k≦1.08)である。
【0021】
希土類アルミン酸塩結晶相は、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。希土類アルミン酸塩結晶相に、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素が含まれると、入射された励起光を吸収して所望の波長に波長変換する組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を得られやすくなる。
【0022】
希土類アルミン酸塩結晶相は、下記式(II)で表される組成を有することが好ましい。希土類アルミン酸塩結晶相が、下記式(II)で表される組成を有していると、結晶凝集粒の周囲に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されやすく、2つ以上の結晶凝集粒の間に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されやすくなる。
R2Al1-jM2
jO3 (II)
(前記式(II)中、R2は、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M2は、Ga及びScからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、jは、0≦j≦0.02を満たす。)
【0023】
希土類アルミン酸塩焼結体は、その相対密度が90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましく、95%以上であることが好ましく、100%でもよく、99%以下でもよく、98%以下でもよい。希土類アルミン酸塩焼結体は、その相対密度が90%以上100%以下の範囲内であると、焼結体に入射された励起光と、蛍光体結晶相で波長変換された波長変換光が、蛍光体結晶相と、蛍光体結晶相とは屈折率の異なる希土類アルミン酸塩結晶相との界面で散乱され、焼結体から出射される光の広がりがより抑制される。
【0024】
希土類アルミン酸塩焼結体の相対密度は、希土類アルミン酸塩焼結体の見掛け密度及び希土類アルミン酸塩焼結体の真密度から下記式(1)により算出することができる。
【0025】
【0026】
希土類アルミン酸塩焼結体の見掛け密度は、希土類アルミン酸塩焼結体の質量を希土類アルミン酸塩焼結体の体積で除した値であり、下記式(2)により算出することができる。希土類アルミン酸塩焼結体の真密度は、下記式(3)により、希土類アルミン酸塩蛍光体の真密度と、希土類アルミン酸塩の真密度を用いることができる。希土類アルミン酸塩焼結体の空隙率は、100%から希土類アルミン酸塩焼結体の相対密度を差し引いた残部である。
【0027】
【0028】
【0029】
希土類アルミン酸塩焼結体は、励起光が入射される入射面(第1の主面)と、波長変化された光が出射する出射面(第1の主面)とが同一の面である反射型の波長変換部材として用いることができる。希土類アルミン酸塩焼結体を反射型の波長変換部材として用いる場合には、希土類アルミン酸塩焼結体の厚さには制限されず、希土類アルミン酸塩焼結体が板状体である場合には、光の取り出し効率をよくするために、板厚は、90μm以上250μm以下の範囲内であることが好ましく、100μm以上240μm以下の範囲内であることがより好ましい。
【0030】
希土類アルミン酸塩焼結体は、形状が板状であり、励起光が入射される入射面と光が出射される出射面が同一の面である場合に、入射光の光径を100%としたときに、出射光の光径が100%未満であることが好ましく、より好ましくは95%以下であり、さらに好ましくは94%以下である。このように、入射光の光径に対して、入射面と同一面から出射される出射光の光径が、入射光の光径100%に対して、100%未満であれば、出射光の光の広がりが抑制され、希土類アルミン酸塩焼結体から出射された光を目的の位置に集光することができる。希土類アルミン酸塩焼結体の一つの面に入射される入射光の光径は、光源から出射された光の光径である。入射光の光径は、例えば色彩輝度計によって測定することができる。入射光の光径は、好ましくは0.1mm以上5mm以下の範囲内であり、より好ましくは0.5mm以上4mm以下の範囲内である。希土類アルミン酸塩焼結体の入射光入射された面と同一の面から出射される出射光の光径は、希土類アルミン酸塩焼結体から出射される光の発光輝度を、色彩輝度計によって測定し、得られた発光スペクトルにおいて最大輝度を示す位置を中心(測定中心)とし、発光スペクトルにおいて最大輝度の100分の10となる輝度(以下、「10/100輝度」と称する場合がある。)となる2か所の位置の測定中心からの距離(mm)を絶対値として測定し、発光スペクトルにおける最大輝度から最大輝度の10/100輝度となる2か所の位置の測定中心からの距離(mm)の絶対値の和を出射光の光径として測定することができる。
【0031】
希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法は、湿式混合した後に乾燥して得られる第1原料混合物を準備することと、第1原料混合物と、希土類アルミン酸塩粒子と、を乾式混合することと、第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子とを乾式混合して得られる混合物を成形することと、混合物を成形して得られる成形体を焼成すること、とを含む。
【0032】
図1は、希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図1を参照にして、希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法を説明する。希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法は、第1原料混合物と、希土類アルミン酸塩粒子を準備するS101ことと、第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子を乾式混合するS102ことと、混合物を成形するS103ことと、成形体を焼成するS104ことを含む。
【0033】
第1原料混合物を準備するときに、第1原料混合物は、Y、La、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも1種の希土類元素R1を含む第1酸化物粒子と、Ceを含む第2酸化物粒子と、Alを含む第3酸化物粒子と、必要に応じてGa及びScから選択される少なくとも1種の元素M1を含む第4酸化物粒子と、必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を含むことが好ましい。
【0034】
第1酸化物粒子は、具体的には、酸化イットリウム粒子、酸化ランタン粒子、酸化ルテチウム粒子、酸化ガドリニウム粒子、酸化テルビウム粒子が挙げられる。第2酸化物粒子は、酸化セリウム粒子が挙げられる。第3酸化物粒子は、酸化アルミニウム粒子が挙げられる。第4酸化物粒子は、酸化ガリウム粒子、酸化スカンジウム粒子が挙げられる。
【0035】
第1原料混合物に含まれる各酸化物粒子は、前記式(I)で表される組成となるモル比となるように配合されることが好ましい。
【0036】
第1原料混合物に含まれる各酸化物が、例えば、前記式(I)で表される組成となるモル比となるように配合されている場合には、第1原料混合物に含まれる希土類アルミン酸塩蛍光体粒子は、前記式(I)で表される組成を有することが好ましい。
【0037】
第1原料混合物に希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を含む場合は、第1酸化物粒子、第2酸化物粒子、第3酸化物粒子、及び必要に応じて第4酸化物粒子の合計100質量%に対して、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の質量比率が10質量%以上90質量%以下の範囲内であることが好ましく、15質量%以上80質量%以下の範囲内であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下の範囲内であることがより好ましい。第1原料混合物中に前記質量比率の範囲内の希土類アルミン酸塩蛍光体粒子が含まれていると、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒の周囲に希土類アルミン酸塩結晶相が配置されるように、所望の大きさの結晶凝集粒を含む焼結体を得ることができる。第1原料混合物に含まれる希土類アルミン酸塩蛍光体粒子は、共沈法により形成された希土類アルミン酸塩蛍光体粒子でもよい。共沈法により形成された希土類アルミン酸塩蛍光体粒子は、大きな比表面積を有し、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒を形成しやすい。
【0038】
第1原料混合物は、湿式混合されることが好ましい。第1原料混合物は、湿式混合されることによって、第1から第4酸化物粒子、及び必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体粒子が液体に均一に分散され、均質な希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒が形成される。第1原料混合物を湿式混合するときに用いる液体は、脱イオン水、水、エタノール等が挙げられる。第1原料混合物を湿式混合するときに用いる液体は、第1原料混合物100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下の範囲内であることが好ましく、50質量部以上150質量部以下の範囲内でもよい。
【0039】
湿式混合される第1原料混合物は、分散剤を含んでいてもよい。分散剤は、例えば有機系分散剤を用いることができ、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤、ノニオン性分散剤等を用いることができる。第1原料混合物に分散剤を加える場合には、加熱脱脂や焼成によって分散剤が揮発する量であることが好ましく、第1原料混合物100質量%に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下でもよく、3質量%以下でもよい。
【0040】
第1原料混合物は、湿式混合後、乾燥して、第1原料混合物が得られる。乾燥温度は、50℃以上150℃以下の範囲内でよく、乾燥時間は1時間以上20時間以内でよい。第1原料混合物を湿式混合し、乾燥させることで、第1から第4酸化物及び必要に応じて含まれる希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の各原料が均一に混合された第1原料混合物を得ることができる。
【0041】
希土類アルミン酸塩粒子を準備するときに、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素R2を含む第5酸化物粒子と、Alを含む第6酸化物粒子と、必要に応じてGa及びScからなる群から選択される元素M2を含む第7酸化物粒子と、を湿式混合することと、湿式混合して得られる第2原料混合物を1000℃以上1600℃以下の範囲内の温度で焼成すること、を含むことが好ましい。第1原料混合物は、湿式混合されることによって、第5から第7酸化物粒子が均一に分散され、均質な希土類アルミン酸塩結晶相を有する希土類アルミン酸塩粒子が形成される。第2原料混合物を湿式混合するときに用いる液体は、第1原料混合物を湿式混合するときに用いる液体と同様の液体を用いることができる。第2原料混合物を湿式混合するときに用いる液体は、第2原料混合物100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下の範囲内であることが好ましく、50質量部以上150質量部以下の範囲内でもよい。
【0042】
第2原料混合物に含まれる各酸化物粒子は、前記式(II)で表される組成となるモル比となるように配合されることが好ましい。
第5酸化物粒子は、具体的には、酸化ガドリニウム粒子、酸化テルビウム粒子、酸化ルテチウム粒子が挙げられる。第6酸化物粒子は、酸化アルミニウム粒子が挙げられる。第7酸化物粒子は、酸化ガリウム粒子、酸化スカンジウム粒子が挙げられる。
【0043】
第2原料混合物は、湿式混合後、乾燥して得られる。乾燥温度は、50℃以上150℃以下の範囲内でよく、乾燥時間は1時間以上20時間以内でよい。
【0044】
第2原料混合物は、1000℃以上1600℃以下の範囲内の温度で焼成することによって、希土類アルミン酸塩粒子が得られる。得られる希土類アルミン酸塩粒子は、前記式(II)で表される組成式に含まれる組成を有することが好ましい。第2原料混合物の焼成は、酸素含有雰囲気のもとで行うことが好ましい。雰囲気中の酸素の含有量は、好ましくは5体積%以上である。第2原料混合物は、成形体は、大気(酸素含有量が20体積%以上)雰囲気のもとで焼成してもよい。雰囲気中の酸素の含有量が1体積%未満の雰囲気中では、各酸化物の表面が溶融し難く、希土類アルミン酸塩の組成を有する結晶構造が生成され難い場合がある。雰囲気中の酸素量の測定は、例えば焼成装置に流入する酸素量によって測定してもよく、20℃の温度、大気圧(101.325kPa)の圧力で測定してもよい。第2原料混合物を焼成するときの圧力は、大気圧(101.325kPa)であってもよい。
【0045】
第2原料混合物を焼成して得られた希土類アルミン酸塩粒子は、湿式解砕してもよい。希土類アルミン酸塩粒子は、乾燥粉砕混合してもよい。希土類アルミン酸塩粒子は、湿式解砕後、乾燥粉砕混合してもよい。希土類アルミン酸塩粒子は、液体に分散させ、例えばボールミル等を用いて湿式解砕することができる。希土類アルミン酸塩粒子は、50℃以上150℃以下の温度で乾燥させ、例えばボールミル等を用いて粉砕混合することができる。
【0046】
希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法は、湿式混合後乾燥させて得られた第1原料混合物と、希土類アルミン酸塩粒子とを乾式混合することを、を含む。乾式混合は、例えばボールミルで10分以上2時間以下行うことが好ましい。乾式混合後に、目開き350μm以下の篩を通してもよい。第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子が乾式混合されると、湿式混合された場合よりも均等に混合されない。湿式混合された場合ほど均等に混合されていない乾式混合された第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子が焼成されることによって、第1原料混合物から希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒が形成され、結晶凝集粒の周囲に配置された希土類アルミン酸塩粒子を含む焼結体が得られる。第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子を含む混合物は、一部が粉砕される、乾式粉体混合されてもよい。
【0047】
第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子の合計量100質量%に対して、希土類アルミン酸塩粒子の含有量は、1.0質量%以上20.0質量%以下の範囲内であることが好ましく、1.2質量%以上19.0質量%以下の範囲内であることがより好ましく、1.5質量%以上18.0質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子の合計量100質量%に対して、希土類アルミン酸塩粒子の含有量が1.0質量%以上20.0質量%以下の範囲内であれば、結晶凝集粒と希土類アルミン酸塩結晶相の合計100体積%に対して希土類アルミン酸塩結晶相が1.0体積%以上10.0体積%以下の範囲内である焼結体を得ることができる。
【0048】
希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法は、乾式混合して得られる混合物を成形することを含む。乾式混合して得られる混合物を成形する方法は、プレス成形法等の知られている方法を採用することができる。プレス成形法としては、例えば金型プレス成形法、JIS Z2500:2000、No.2109で用語が定義されている、冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)法等が挙げられる。その他に一軸で圧縮して成形してもよい。成形方法は、成形体の形状を整えるために、2種の方法を採用してもよく、例えば金型プレス成形をした後に、CIPを行ってもよく、ローラベンチ法により一軸で圧縮した後に、CIPを行ってもよい。CIPは、水を媒体とする冷間静水等方圧加圧法により成形体をプレスすることが好ましい。
【0049】
金型プレス成形時の圧力又は一軸で圧縮して成形する場合の圧力は、好ましくは5MPa以上50MPa以下の範囲内であり、より好ましくは5MPa以上30MPa以下の範囲内である。金型プレス成形時の圧力又は一軸で圧縮して成形する場合の圧力が前記範囲であれば、成形体を所望の形状に整えることができる。
【0050】
CIPにおける圧力は、好ましくは50MPa以上200MPa以下の範囲内であり、より好ましくは50MPa以上180MPa以下の範囲内である。CIPにおける圧力が50MPa以上200MPa以下の範囲内であると、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒と、結晶凝集粒の周囲に配置された希土類アルミン酸塩結晶相を含む焼結体を得ることができる。
【0051】
混合物を成形して得られる成形体は、加熱して、分散剤等を除去し脱脂してもよい。成形体を加熱して脱脂する場合は、大気及び窒素雰囲気中で、500℃以上1000℃以下の範囲内で加熱することが好ましい。大気及び窒素雰囲気中で500℃以上1000℃以下の範囲内で加熱することによって、成形体中に含まれる炭素の量が減り、炭素が含まれることによる光束の低下を抑制することができる。
【0052】
希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法は、成形して得られる成形体を焼成することを含む。成形体を焼成するときに、焼成温度(焼成炉内の温度)は、1300℃以上1800℃以下の範囲内であることが好ましく、1400℃以上1790℃以下の範囲内であることがより好ましく、1450℃以上1780℃以下の範囲内であることがさらに好ましく、1500℃以上1700℃以下の範囲内でもよく、1550℃以上1650℃以下の範囲内でもよい。成形体を焼成するときに、焼成温度が1300℃以上であれば、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒と、結晶凝集粒の周囲に配置された希土類アルミン酸塩結晶相を含む焼結体を得ることができる。成形体を焼成するときに、焼成温度が1800℃以下であれば、各結晶相の粒界がなくなるように溶解させることなく、希土類アルミン酸塩焼結体の断面において、各結晶相の周囲に分散した空隙を含み、各結晶相の粒界が区別できる焼結体を得ることができる。
【0053】
成形体を焼成するときは、酸素含有雰囲気のもとで行うことが好ましい。雰囲気中の酸素の含有量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上である。成形体は、大気(酸素含有量が20体積%以上)雰囲気のもとで焼成してもよい。雰囲気中の酸素の含有量が1体積%未満の雰囲気中では、酸化物の表面が溶融し難く、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒が形成され難く、結晶凝集粒の周囲に希土類アルミン酸塩結晶相が配置され難い場合がある。雰囲気中の酸素量の測定は、例えば焼成装置に流入する酸素量によって測定してもよく、20℃の温度、大気圧(101.325kPa)の圧力で測定してもよい。成形体を焼成するときの圧力は、大気圧(101.325kPa)であってもよい。
【0054】
得られた焼結体は、還元雰囲気でアニール処理してもよい。得られた焼結体を還元雰囲気でアニール処理することによって、焼結体中の希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相に含まれる酸化された賦活元素であるセリウムが還元されて、各結晶相における波長変換効率の低下と発光効率の低下を抑制することができる。還元雰囲気は、へリウム、ネオン及びアルゴンからなる群から選ばれる少なくとも1種の希ガス又は窒素ガスと、水素ガス又は一酸化炭素ガスとを含む雰囲気であればよく、雰囲気中に少なくともアルゴン又は窒素ガスと、水素ガス又は一酸化炭素ガスとを含むことがより好ましい。アニール処理は、加工後に行ってもよい。
【0055】
アニール処理の温度は、焼成温度よりも低い温度であり、1000℃以上1600℃以下の範囲内であることが好ましい。アニール処理の温度は、1100℃以上1400℃以下の範囲内であることがより好ましい。アニール処理の温度が、焼成温度よりも低い温度であり、1000℃以上1600℃以下の範囲内であれば、焼結体中の空隙を低下させることなく、焼結体中の希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相に含まれる酸化された賦活元素であるセリウムを還元し、波長変換の効率の低下と光束の低下を抑制することができる。
【0056】
得られた焼結体は、所望の大きさ又は厚さに切断する加工してもよい。切断する方法は、公知の方法を利用することができ、例えば、ブレードダイシング、レーザーダイシング、ワイヤーソーを用いて切断する方法が挙げられる。
【0057】
得られた焼結体は、面処理してもよい。面処理は、得られた焼結体を切断して得た切断物の表面を面処理する。この面処理により、希土類アルミン酸塩焼結体は、光の取り出し効率を高くするため、焼結体の表面を適切な状態とすることができるだけでなく、上述の加工と併せて、又は面処理単独で、焼結体を所望の形状、大きさ又は厚さにすることができる。面処理は、焼結体を所望の大きさ若しくは厚さに切断して加工する前に行ってもよく、加工後に行ってもよい。面処理する方法としては、例えば、サンドブラストによる方法、機械研削による方法、ダイシングによる方法、化学的エッチングによる方法等が挙げられる。
【0058】
前述の製造方法によって、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒と、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相と屈折率が異なる希土類アルミン酸塩結晶相と、を含み、結晶凝集粒の周囲に希土類アルミン酸塩結晶相が配置される、希土類アルミン酸塩焼結体が得られる。前述の製造方法によって得られた希土類アルミン酸塩焼結体に含まれる希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相は、前記式(I)で表される組成を有することが好ましい。
【0059】
得られる希土類アルミン酸塩焼結体は、波長変換部材として、光源と組み合わせることによって、プロジェクター用光源等の発光装置に用いることができる。
【0060】
前述の希土類アルミン酸塩焼結体を波長変換部材として用いた発光装置について、説明する。発光装置は、希土類アルミン酸塩焼結体と、励起光源とを備える。
【0061】
励起光源は、LEDチップ又はLDチップからなる半導体発光素子であることが好ましい。半導体発光素子は、窒化物系半導体を用いることができる。励起光源として半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。希土類アルミン酸塩焼結体は、半導体発光素子から発せられた光の波長を変換し、波長変換された混色光を発する発光装置を構成することが可能となる。半導体発光素子は、例えば350nm以上500nm以下の波長範囲の光を発するものであることが好ましい。希土類アルミン酸塩焼結体は、半導体発光素子からの励起光を波長変換して、500nm以上650nm未満の範囲に発光ピーク波長を有する出射光を発することが好ましい。
【0062】
発光素子は、レーザーダイオードであることがより好ましい。励起光源であるレーザーダイオードから出射された励起光を、波長変換部材に入射させ、波長変換部材のセラミックス複合体に含まれる蛍光体によって波長が変換された光を集光させて、レンズアレイ、偏光変換素子、色分離光学系等の複数の光学系によって赤色光、緑色光、及び青色光に分離して、画像情報に応じて変調し、カラーの画像光を形成してもよい。励起光源としてレーザーダイオードから出射された励起光は、ダイクロイックミラー又はコリメート光学系等の光学系を通じて波長変換部材に入射させてもよい。
【0063】
図2は、発光装置100の一例を示す構成を示す概略図である。
図2中の矢印は、光の光路を模式的に表した。発光装置100は、発光素子である励起光源101と、コリメートレンズ102と、3つのコンデンサレンズ103、105及び106と、ダイクロイックミラー104と、ロッドインテグレーダー107と、波長変換部材を含む波長変換デバイス120とを含むことが好ましい。励起光源101は、レーザーダイオードを用いることが好ましい。励起光源101は、複数のレーザーダイオードを用いてもよく、複数のレーザーダイオードをアレイ状又はマトリクス状に配置したものであってもよい。コリメートレンズ102は、複数のコリメートレンズがアレイ状に配置されたコリメートレンズアレイであってもよい。励起光源101から出射されたレーザー光は、コリメートレンズ102によって略平行光となり、コンデンサレンズ103によって集光され、ダイクロイックミラー104を通って、さらにコンデンサレンズ105によって集光される。コンデンサレンズ105によって集光されたレーザー光は、波長変換部材110と光反射板122と、を含む波長変換デバイス120によって波長変換され、所望の波長範囲に発光ピーク波長を有する光が、波長変換デバイス120の波長変換部材110側から出射される。波長変換デバイス120から出射された波長変換された光は、コンデンサレンズ106によって集光され、ロッドインテグレーダー107に入射され、被照明領域における照度分布の均一性を高めた光が発光装置100から出射される。
【0064】
図3は、波長変換デバイス120の一例の平面の構成を示す概略図である。なお、
図4では、発光装置100を構成する部材の一つとして、波長変換デバイス120を側面図で示している。波長変換デバイス120は、少なくとも波長変換部材110を備える。波長変換デバイス120は、円板状の波長変換部材110を備え、波長変換部材110を回転させるための回転機構121を備えていてもよい。回転機構121は、モータ等の駆動機構と連結され、波長変換部材110を回転させることによって放熱することができる。
【0065】
図4は、
図2で発光装置100を構成する部材の一つとして側面図で示した波長変換デバイス120の詳細について、波長変換デバイス120の一例の側面の構成を示す概略図である。波長変換デバイス120は、波長変換部材110として、希土類アルミン酸塩焼結体111と透光性薄膜112とを備える。波長変換デバイス120は、波長変換部材110の希土類アルミン酸塩焼結体111の透光性薄膜112が配置されている側と反対側に光反射板122を備えている。なお、希土類アルミン酸塩焼結体111からの光を透光性薄膜112が配置されている側に十分に出射させることができる場合には、光反射板122を省略することもできる。光反射板122は、希土類アルミン酸塩焼結体111からの光を透光性薄膜112が配置されている側に反射させる部材としてだけでなく、希土類アルミン酸塩焼結体111で発生した熱を伝達して外部に放熱する放熱部材として用いてもよい。
【実施例0066】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
原料の希土類アルミン酸塩蛍光体粒子(共沈法によるYAG蛍光体粒子)の製造例
塩化イットリウム(YCl3)、塩化セリウム(CeCl3)、塩化アルミニウム(AlCl3)を、Y2.99Ce0.01Al5O12で表される組成となるように計量して、脱イオン水に溶解し、混合溶液を作製した。この混合溶液を(NH3)2CO3溶液に投入し、共沈法により、Y2.99Ce0.01Al5O12で表される混合物を得た。この混合物をアルミナルツボに入れ、大気雰囲気下、1200℃から1600℃の範囲で10時間焼成して焼成物を得た。得られた焼成物を、乾式ふるいを通過させて分級し、Y2.99Ce0.01Al5O12で表される組成を有する原料のYAG蛍光体粒子(共沈YAG蛍光体粒子)を準備した。
【0068】
第1酸化物粒子として、酸化イットリウムの純度が98質量%である酸化イットリウム粒子を用いた。
【0069】
第2酸化物粒子として、酸化セリウムの純度が92質量%である酸化セリウム粒子を用いた。
【0070】
第3酸化物粒子又は第6酸化物粒子として、酸化アルミニウムの純度が99質量%である酸化アルミニウム粒子を用いた。
【0071】
第5酸化物粒子として、酸化ガドリニウムの純度が98質量%である酸化ガドリニウム粒子、酸化テルビウムの純度が98質量%である酸化テルビウム粒子、酸化ルテチウムの純度が99質量%である酸化ルテチウム粒子を用いた。
【0072】
実施例1
各酸化物粒子に含まれるY、Al、Ceの各元素のモル比がY2.988Ce0.012Al5.1O12で表される組成となるように、第1酸化物粒子として酸化イットリウム粒子、第2酸化物粒子として酸化セリウム粒子、第3酸化物粒子として酸化アルミニウム粒子、及び原料である希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を計量した。第1酸化物粒子、第2酸化物粒子、第3酸化物粒子、及び原料である得られたYAG蛍光体粒子の合計量100質量部に対して、分散剤(フローレンG-700、共栄社化学株式会社)を6.0質量部加え、さらにエタノールを50質量部加えて、ボールミルを用いて湿式混合し、130℃で10時間乾燥させた後、ボールミルを用いて乾式粉砕混合し、第1原料混合物を準備した。
【0073】
各酸化物粒子に含まれるGd、Alの各元素のモル比がGdAlO3で表される組成となるように、第5酸化物粒子として酸化ガドリニウム粒子、第6酸化物粒子として酸化アルミニウム粒子を計量した。第5酸化物粒子及び第6酸化物粒子の合計量100質量部に対して、分散剤(エスリームC-2093I、日油株式会社)を3.0質量部加え、さらにエタノールを50質量部加えて、ボールミルを用いて湿式混合し、130℃で10時間乾燥させて第2原料混合物を準備した。この第2原料混合物を、大気雰囲気(酸素含有量が20体積%以上、101.325kPa)で、1400℃で焼成し、焼成して得られた焼成物を、エタノールに分散させて、ボールミルを用いて湿式解砕し、130℃で乾燥させ、ボールミルを用いて乾式粉砕混合し、GdAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩粒子を準備した。
【0074】
得られた第1原料混合物と得られた希土類アルミン酸塩粒子を、ボールミルを用いて、20分乾式混合を行った。第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子の合計100質量%に対して、希土類アルミン酸塩粒子を2.6質量%添加し、得られる焼結体の全体量100体積%に対して、希土類アルミン酸塩結晶相の含有量が表1に示す量(体積%)になるようにして、乾式混合して、混合物を得た。希土類アルミン酸塩焼結体の全体量に対する希土類アルミン酸塩結晶相の含有(体積%)量は、第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子の合計量100質量%に対する希土類アルミン酸塩粒子の含有量(質量%)と、後述する希土類アルミン酸塩蛍光体の真密度及び希土類アルミン酸塩の真密度から算出することができる。
【0075】
得られた混合物を金型に充填し、5MPa(51kgf/cm2)の圧力で直径26mm、厚さ10mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を、包装容器に入れて真空包装し、冷間静水等方圧加圧装置(株式会社神戸製鋼所(KOBELCO)製)を用いて176MPaでCIPを行い、成形体を得た。得られた成形体を窒素雰囲気、700℃で加熱脱脂した。
【0076】
成形して得られた成形体を焼成炉(丸祥電気株式会社製)により焼成を行い、希土類アルミン酸塩焼結体を得た。焼成の条件は、大気雰囲気(101.325kPa、酸素濃度:約20体積%)であり、温度が1605℃であり、焼成時間が6時間であった。得られた希土類アルミン酸塩焼結体をワイヤーソーで適切な形状及び大きさに切断した後、その切断物の表面を平面研削機で研磨した。そして、最終的に板厚が230μmである実施例1に係る希土類アルミン酸塩焼結体を得た。実施例1に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、Y2.988Ce0.012Al5.1O12で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒とGdAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相を含んでいた。Y2.988Ce0.012Al5.1O12で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相の屈折率は1.83であり、GdAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相の屈折率は2.02である。
【0077】
実施例2
第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子を、第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子の合計100質量%に対して、希土類アルミン酸塩粒子を3.8質量%添加し、得られる焼結体の全体量100体積%に対して、希土類アルミン酸塩結晶相の含有量が表1に示す量(体積%)になるようにして、乾式混合して、混合物を得たこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る希土類アルミン酸塩焼結体を得た。実施例2に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、Y2.988Ce0.012Al5.1O12で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒とGdAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相を含んでいた。
【0078】
実施例3
各酸化物粒子に含まれるTb、Alの各元素のモル比がTbAlO3で表される組成となるように、第5酸化物粒子として酸化テルビウム粒子、第6酸化物粒子として酸化アルミニウム粒子を計量し、実施例1と同様にして、TbAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩粒子を準備した。
第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子を、第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子の合計100質量%に対して、希土類アルミン酸塩粒子を2.6質量%添加し、得られる焼結体の全体量100体積%に対して、希土類アルミン酸塩結晶相の含有量が表1に示す量(体積%)になるようにして、乾式混合して、混合物を得たこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体を得た。実施例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、Y2.988Ce0.012Al5.1O12で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒とTbAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相を含んでいた。TbAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相の屈折率は1.76である。
【0079】
実施例4
第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子を、第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子の合計100質量%に対して、希土類アルミン酸塩粒子を3.0質量%添加し、得られる焼結体の全体量100体積%に対して、希土類アルミン酸塩結晶相の含有量が表1に示す量(体積%)になるようにして、乾式混合して、混合物を得たこと以外は、実施例3と同様にして、実施例4に係る希土類アルミン酸塩焼結体を得た。実施例4に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、Y2.988Ce0.012Al5.1O12で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒とTbAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相を含んでいた。TbAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相の屈折率は1.95である。
【0080】
実施例5
各酸化物粒子に含まれるLu、Alの各元素のモル比がLuAlO3で表される組成となるように、第5酸化物粒子として酸化ルテチウム粒子、第6酸化物粒子として酸化アルミニウム粒子を計量し、実施例1と同様にして、LuAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩粒子を準備した。
第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子を、第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子の合計100質量%に対して、希土類アルミン酸塩粒子を4.4質量%添加し、得られる焼結体の全体量100体積%に対して、希土類アルミン酸塩結晶相の含有量が表1に示す量(体積%)になるようにして、乾式混合して、混合物を得たこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る希土類アルミン酸塩焼結体を得た。実施例5に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、Y2.988Ce0.012Al5.1O12で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒とLuAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相を含んでいた。
【0081】
比較例1
希土類アルミン酸塩粒子を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の希土類アルミン酸塩焼結体を得た。
【0082】
実施例6
実施例2と同様にして、第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子の合計100質量%に対して、希土類アルミン酸塩粒子を3.8質量%添加し、得られる焼結体の全体量100体積%に対して、希土類アルミン酸塩結晶相の含有量が表1に示す量(体積%)になるようにして、混合物を成形して得られた成形体を、1610℃で焼成したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例6に係る希土類アルミン酸塩焼結体を得た。実施例6に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、Y2.988Ce0.012Al5.1O12で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒とGdAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相を含んでいた。
【0083】
実施例7
第1原料混合物と、実施例4と同様にして得られたTbAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩粒子を乾式混合して、混合物を得て、実施例6と同様にして、実施例7に係る希土類アルミン酸塩焼結体を得た。実施例7に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、Y2.988Ce0.012Al5.1O12で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒とTbAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相を含んでいた。
【0084】
実施例8
第1原料混合物と、実施例5と同様にして得られたLuAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩粒子を、第1原料混合物と希土類アルミン酸塩粒子の合計100質量%に対して、希土類アルミン酸塩粒子を3.0質量%添加し、得られる焼結体の全体量100体積%に対して、希土類アルミン酸塩結晶相の含有量が表1に示す量(体積%)になるようにして、乾式混合して、混合物を得て、実施例6と同様にして、実施例8に係る希土類アルミン酸塩焼結体を得た。実施例8に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、Y2.988Ce0.012Al5.1O12で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒とLuAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相を含んでいた。
【0085】
実施例9
第1原料混合物と、実施例5と同様にして得られたLuAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩粒子を乾式混合して、混合物を得て、実施例6と同様にして、実施例9に係る希土類アルミン酸塩焼結体を得た。実施例9に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、Y2.988Ce0.012Al5.1O12で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒とLuAlO3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相を含んでいた。
【0086】
比較例2
希土類アルミン酸塩粒子を用いないこと以外は、実施例6と同様にして、比較例2の希土類アルミン酸塩焼結体を得た。
【0087】
比較例3
希土類アルミン酸塩粒子の代わりに、酸化アルミニウムの純度が99質量%である酸化アルミニウム粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の希土類アルミン酸塩焼結体を得た。
【0088】
各希土類アルミン酸塩焼結体について、比較例3の希土類アルミン酸塩焼結体を除き、以下の評価を行った。結果は表1に記載した。表1中、「-」の記号は、該当する項目又は数値がないことを表す。
【0089】
相対密度
実施例及び比較例の各希土類アルミン酸塩焼結体の相対密度を測定した。実施例及び比較例の希土類アルミン酸塩焼結体の相対密度は上述した式(1)により算出した。希土類アルミン酸塩焼結体の見掛け密度は、上述した式(2)より算出した。希土類アルミン酸塩焼結体の真密度は、上述の式(3)より算出した。希土類アルミン酸塩蛍光体の真密度は4.60g/cm3、GdAlO3の真密度は7.24g/cm3、TbAlO3の真密度は7.39g/cm3、LuAlO3の真密度は8.30g/cm3である。
【0090】
相対光束(%)
各実施例及び比較例各の希土類アルミン酸塩焼結体に対して、レーザーダイオードから波長が450nmのレーザー光を入射光の光径が2.2mmとなるようにして照射して希土類アルミン酸塩焼結体に入射し、レーザー光を入射した面と同一の面から出射された光の放射束を、積分球で測定した。比較例1の放射束を100%とし、比較例1の放射束に対する実施例1から9の各希土類アルミン酸塩焼結体及び比較例2の各希土類アルミン酸塩焼結体のサンプルを測定した放射束を相対光束(%)として表した。
【0091】
光径比(出射光の光径/入射光の光径)
実施例及び比較例の各希土類アルミン酸塩焼結体に対して、レーザーダイオードから波長が450nmのレーザー光を入射光の光径が、レーザー光が入射された第1の主面上で0.6mmとなるように照射し、レーザー光の光径を希土類アルミン酸塩焼結体の第1の主面に入射される入射光の光径とした。レーザー光が入射された第1の主面と同一の面から出射された出射光の光径は、各実施例及び比較例の希土類アルミン酸塩焼結体から出射された光の発光輝度を色彩輝度計で測定し、得られた発光スペクトルにおいて最大輝度を示す位置を中心(測定中心)とし、発光スペクトルにおいて最大輝度の100分の10となる輝度(10/100輝度)となる2か所の位置の測定中心からの距離(mm)を絶対値として測定し、最大輝度から最大輝度の10/100輝度となる測定中心から2か所の位置の距離(mm)の絶対値の和を第1の主面から出射された出射光の光径として測定した。第1の主面に入射される入射光に対する同一面である第1の主面から出射された出射光の光径の光径比を求めた。比較例1の光径比を100%とし、比較例1の光径比に対する実施例1から9の各希土類アルミン酸塩焼結体及び比較例2の希土類アルミン酸塩焼結体の各サンプルを測定した光径比を相対光径比(%)として表した。
【0092】
光の取り出し効率(%)
実施例及び比較例の各希土類アルミン酸塩焼結体に対して、測定した相対光束を相対光径比で除した値を光の取り出し効率(%)として算出した。
【0093】
絶対最大長の測定方法
実施例及び比較例の各希土類アルミン酸塩焼結体の表面又は断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影して得られたSEM画像において、面積が1209675μm2である領域を測定範囲とした。ここで、SEM画像の縦横のデータサイズが、縦×横=640×480画素であり、1画素が1.984375μmであったので、測定範囲の面積を1270μm×952.5μmとして計算し、1209675μm2とした。この測定範囲に含まれる1つの希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相の二次凝集粒を結晶凝集粒として、結晶凝集粒の輪郭の最も離れている2点の距離を絶対最大長として、Winroof2018画像解析ソフトウェア装置(三谷商事株式会社製)を用いて測定した。測定面積上の100個以上1000個以下の結晶凝集粒の絶対最大長を測定し、最も大きい絶対最大長の数値を各希土類アルミン酸塩焼結体の表面又は断面における結晶凝集粒の絶対最大長とした。希土類アルミン酸塩粒子の含有量が1.7体積%の場合(実施例1、3及び8)、又は、希土類アルミン酸塩粒子を含有しない場合(比較例1及び2)は、希土類アルミン酸塩粒子の結晶凝集粒の分離ができず、粒界分離した結晶凝集粒の測定ができなかった。
【0094】
SEM写真
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、実施例及び比較例の各希土類アルミン酸塩焼結体の表面のSEM画像を得た。なお、図に示したSEM画像は、100倍の倍率で得た画像であり、絶対最大長の測定に用いたSEM画像は、解析の精度を考慮して、100倍の倍率で得た画像とした。
図5は、実施例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体の表面のSEM写真である。
図7は、比較例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体の表面のSEM写真である。
【0095】
透過率(%)
分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、光源の光を分光器により、550nmの波長の単色光に変換し、変換された550nmの波長の光の光強度を測定して、入射光強度とし、550nmの波長の光を実施例及び比較例の各希土類アルミン酸塩焼結体に入射し、入射された側と反対側の希土類アルミン酸塩焼結体から出射する光の光強度を測定して透過光強度とし、入射光強度に対する透過光強度の割合を、下記式(4)に基づき、550nmの波長の光に対する透過率として測定した。下記式(4)中、I0は入射光強度であり、Iは各波長における透過光強度である。
【0096】
【0097】
透過スペクトル
分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、光源の光を分光器により各波長の単色光に変換し、変換された波長の光の光強度を入射強度とし、各波長の光を実施例及び比較例の各希土類アルミン酸塩焼結体に入射し、入射された側と反対側の希土類アルミン酸塩焼結体から出射する光の光強度を測定して透過光強度とし、入射強度に対する透過光強度の割合を、前記式(4)に基づき算出して、各波長の透過率を透過スペクトルとして表した。
図9から
図13に、実施例1から9に係る希土類アルミン酸塩焼結体の発光スペクトルと、比較例1に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルを記載した。
【0098】
【0099】
実施例2、実施例4から7及び実施例9に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、いずれも希土類アルミン酸塩蛍光体相を含む結晶凝集粒の絶対最大長が10.0μm以上150.0μm以下の範囲内であった。実施例1から9に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、比較例1の希土類アルミン酸塩焼結体よりも、相対光径比が小さく、出射光の広がりが抑制されていた。実施例1から9に係る希土類アルミン酸塩焼結体の相対光束は、比較例1よりも低くなったが、相対光径比が小さく、出射光の広がりが抑制されているため、比較例1よりも光の取り出し効率が高くなった。実施例1から9に係る希土類アルミン酸塩焼結体の550nmにおける透過率は、比較例1又は2に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過率よりも低く、希土類アルミン酸塩蛍光体相で光源からの光が有効に利用されていた。
【0100】
比較例2に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、比較例1に係る焼結体よりも相対光束が高くなったが、相対光径比が比較例1に係る焼結体よりも大きくなり、出射光が広がっているため、光の取り出し効率が低下した。
【0101】
図5は、実施例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体の表面のSEM写真である。
図6は、実施例1に係る希土類アルミン酸塩焼結体の表面の希土類アルミン酸塩蛍光体相を含む結晶凝集粒を粒界分離したイメージ図である。実施例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体の表面において、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒1の周囲に、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相とは屈折率の異なるTbAlO
3で表される組成を有する希土類アルミン酸塩結晶相2が配置されていた。実施例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、一断面視(希土類アルミン酸塩焼結体の表面SEM写真)において、2つ以上の結晶凝集粒1を含み、2つの結晶凝集粒1,1の間に希土類アルミン酸塩結晶2が配置されていた。実施例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、結晶凝集粒1と希土類アルミン酸塩結晶相2との界面で励起光及び波長変換光が散乱され、焼結体から出射される光の広がりを抑制されており、相対光径比が小さくなった。実施例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、希土類アルミン酸塩焼結体から出射される光の広がりが抑制されたため、光の取り出し効率が高くなった。
【0102】
図7は、比較例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体の表面のSEM写真である。
図8は、比較例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体の表面の酸化アルミニウム結晶相を粒界分離したイメージ図である。比較例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、希土類アルミン酸塩結晶相を含んでおらず、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒が形成されていなかった。比較例3に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、酸化アルミニウム結晶相3が形成され、酸化アルミニウム結晶相の間に希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相4が記載されていた。
【0103】
図9から
図13は、実施例1から9に係る希土類アルミン酸塩焼結体、及び比較例1に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルを示す。
図9から
図13に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルは、比較例1に係る希土類アルミン酸塩焼結体の透過スペクトルよりも低くなり、入射された光を吸収して効率よく希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相で波長変換され、実施例1から9に係る希土類アルミン酸塩焼結体は、光の取り出し効率が高くなった。
【0104】
本発明に係る実施形態は、以下の希土類アルミン酸塩焼結体及びその製造方法を含む。
【0105】
[項1]
希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相を含む結晶凝集粒と、前記希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相と屈折率が異なる希土類アルミン酸塩結晶相と、を含み、
前記結晶凝集粒の周囲に前記希土類アルミン酸塩結晶相が配置される、希土類アルミン酸塩焼結体。
[項2]
一断面視において、2つ以上の前記結晶凝集粒を含み、2つの前記結晶凝集粒の間に前記希土類アルミン酸塩結晶相が配置される、項1に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
[項3]
前記希土類アルミン酸塩結晶相が、希土類アルミン酸塩の一次粒子由来である、項1又は2に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
[項4]
希土類アルミン酸塩焼結体の表面又は断面における、前記結晶凝集粒の絶対最大長が10.0μm以上150.0μm以下の範囲内である、項1から3のいずれか1項に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
[項5]
前記希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相が、Y、La、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む、項1から4のいずれか1項に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
[項6]
前記希土類アルミン酸塩結晶相が、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む、項1から5のいずれか1項に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
[項7]
前記結晶凝集粒の絶対最大長を測定する希土類アルミン酸塩焼結体の測定範囲の領域が、走査型電子顕微鏡を用いて測定されたSEM画像における1209675μm2の領域である、項4に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
[項8]
前記結晶凝集粒と前記希土類アルミン酸塩結晶相の合計100体積%に対して、前記希土類アルミン酸塩結晶相が1.0体積%以上10.0体積%以下の範囲内である、項1から7のいずれか1項に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
[項9]
前記希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相が、下記式(I)で表される組成を有する、項1から8のいずれか1項に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
(R1
1-nCen)3(Al1-mM1
m)5kO12 (I)
(前記式(I)中、R1は、Y、La、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M1は、Ga及びScからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、m、n及びkは、それぞれ0≦m≦0.02、0.002≦n≦0.017、0.95≦k≦1.10を満たす。)
[項10]
前記希土類アルミン酸塩結晶相が、下記式(II)で表される組成を有する、項1から9のいずれか1項に記載の希土類アルミン酸塩焼結体。
R2Al1-jM2
jO3 (II)
(前記式(II)中、R2は、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M2は、Ga及びScからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、jは、0≦j≦0.02を満たす。)
[項11]
湿式混合した後に乾燥して得られる第1原料混合物を準備することと、
前記第1原料混合物と、希土類アルミン酸塩粒子と、を乾式混合することと、
前記第1原料混合物と前記希土類アルミン酸塩粒子とを乾式混合して得られる混合物を成形することと、
前記混合物を成形して得られる成形体を焼成すること、を含む希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法。
[項12]
前記第1原料混合物を準備するときに、第1原料混合物が、Y、La、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも1種の元素R1を含む第1酸化物粒子と、Ceを含む第2酸化物粒子と、Alを含む第3酸化物粒子と、必要に応じてGa及びScからなる群から選択される少なくとも1種の元素M1を含む第4酸化物粒子と、必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を含む、項11に記載の希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法。
[項13]
前記希土類アルミン酸塩粒子を準備するときに、
Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素R2を含む第5酸化物粒子と、Alを含む第6酸化物粒子と、必要に応じてGa及びScからなる群から選択される元素M2を含む第7酸化物粒子と、を湿式混合することと、
前記湿式混合して得られる第2原料混合物を1000℃以上1600℃以下の範囲内の温度で焼成すること、を含むことにより、前記希土類アルミン酸塩粒子が作製される、項11又は12に記載の希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法。
[項14]
前記成形体を焼成するときに、焼成温度が1300℃以上1800℃以下の範囲内である、項11から13のいずれか1項に記載の希土類アルミン酸塩焼結体の製造方法。
本開示にかかる希土類アルミン酸塩焼結体は、励起光源と組み合わせて、車載用や一般照明用の照明装置、液晶表示装置のバックライト、プロジェクター用光源の波長変換部材として利用することができる。
1:結晶凝集粒、2:希土類アルミン酸塩結晶相、3:酸化アルミニウム結晶相、4:希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相、100:発光装置、101:励起光源、102:コリメートレンズ、103、105及び106:コンデンサレンズ、104:ダイクロイックミラー、107:ロッドインテグレーダー、110:波長変換部材、111:希土類アルミン酸塩焼結体、112:透光性薄膜、120:波長変換デバイス、121:回転機構、122:光反射板。