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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165156
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】気流形成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
H01L21/30 569C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075832
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】高木 功志郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 浩平
(72)【発明者】
【氏名】矢田 健二
(72)【発明者】
【氏名】安藤 和哉
(72)【発明者】
【氏名】有馬 裕
(72)【発明者】
【氏名】宮窪 祐允
【テーマコード(参考)】
5F146
【Fターム(参考)】
5F146JA07
5F146LA07
(57)【要約】
【課題】処理空間上風速の変化を抑えることにより液処理後の基板の膜厚のばらつきを抑えること。
【解決手段】気流形成ユニット2は、塗布処理部100の上方から該塗布処理部100の処理空間PSに向かう下方に気流を発生させる気流形成ユニットである。気流形成ユニット2は、導入した気体を、処理空間PSに対向する吹出面12aから下方に吹き出す気体供給部10を備える。また、気流形成ユニット2は、吹出面12aの下方且つ処理空間PSの上方において処理空間PSの直上の開口部300を囲うように配置された気流制御板50を備える。気流制御板50は、吹出面12aから下方に吹き出された気体について、開口部300の周辺にその外側の領域よりも強い気流が発生した環状の強気流形成領域SAを形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液処理部の上方から該液処理部の処理空間に向かう下方に気流を発生させる気流形成装置であって、
導入した気体を、前記処理空間に対向する第1面から下方に吹き出す気体供給部と、
前記第1面の下方且つ前記処理空間の上方において前記処理空間の直上の開口部を囲うように配置され、前記第1面から下方に吹き出された気体について、前記開口部の周辺にその外側の領域よりも強い気流が発生した環状の強気流形成領域を形成する気流形成部と、を備える、気流形成装置。
【請求項2】
前記気流形成部は、前記開口部を囲うように上下方向に延びる環状の壁部と、前記壁部の下端に連続すると共に前記第1面と対向するように水平に延びる底部と、を有し、
前記壁部は、その上端と前記第1面との間に狭GAPが形成されるように前記上下方向に延びている、請求項1記載の気流形成装置。
【請求項3】
前記底部には、気体を下方に送り出す複数の穴部が形成されており、
前記底部は、前記壁部の下端に連続する領域である第1領域と、前記第1領域よりも外側の領域である第2領域と、を有し、
前記第1領域における複数の前記穴部が占める割合である第1開口率は、前記第2領域における複数の前記穴部が占める割合である第2開口率よりも低い、請求項2記載の気流形成装置。
【請求項4】
上端が前記第1面に接続されると共に下端が前記底部に接続された複数のスペーサーを更に備え、
前記複数のスペーサーは、互いに、上下方向における高さが同じである、請求項2記載の気流形成装置。
【請求項5】
前記スペーサーは、前記壁部に沿って設けられている、請求項4記載の気流形成装置。
【請求項6】
平面視すると、前記開口部の領域は、前記処理空間に配置される基板の領域よりも狭い、請求項1記載の気流形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気流形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液処理部の上方から該液処理部の処理空間に向かう気流(ダウンフロー)を発生させる気流形成装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-93794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、装置環境状態によっては、上述した処理空間に向かう気流が安定せず、このことを原因として、液処理後の基板の膜厚にばらつきが生じてしまう(基板間で膜厚がばらつく)場合がある。例えば、隣接する塗布カップの排気状態や、日間差要因として挙げられる装置陽圧値によっては、処理空間に向かう気流が安定せず、基板の膜厚にばらつきが生じてしまうことがある。特に、気流感度が高い薬液・プロセスにおいては、気流が安定しないことによる膜厚のばらつきが顕著に現れてしまう。
【0005】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、気流変化のパラメータとして挙げられる処理空間上風速の変化を抑えることにより、液処理後の基板の膜厚のばらつきを抑えることができる気流形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る気流形成装置は、液処理部の上方から該液処理部の処理空間に向かう下方に気流を発生させる気流形成装置であって、導入した気体を、処理空間に対向する第1面から下方に吹き出す気体供給部と、第1面の下方且つ処理空間の上方において処理空間の直上の開口部を囲うように配置され、第1面から下方に吹き出された気体について、開口部の周辺にその外側の領域よりも強い気流が発生した環状の強気流形成領域を形成する気流形成部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、処理空間上風速の変化を抑えることにより液処理後の基板の膜厚のばらつきを抑えることができる気流形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る気流形成ユニットを含んだレジスト塗布装置の概略構成を示した垂直断面図である。
図2図2は、気流制御板の底面図である。
図3図3(a)は気体供給部及び気流制御板の垂直断面図であり、図3(b)は気流制御板の上面図である。
図4図4は、強気流形成領域を説明する図である。
図5図5は、装置陽圧値毎のセンター風速を示す図である。
図6図6は、装置陽圧値毎の基板膜厚を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係るレジスト塗布装置1の概略構成を示した垂直断面図である。レジスト塗布装置1は、基板に対し、感光性被膜の形成、当該感光性被膜の露光、及び当該感光性被膜の現像を施す基板処理システムに含まれる装置(基板処理装置)である。処理対象の基板としては、半導体ウエハ、ガラス基板、マスク基板、又はFPD(Flat Panel Display)等が挙げられる。基板は、半導体ウエハ等の上に、前段の処理において被膜等が形成されたものも含む。レジスト塗布装置1は、基板処理システムに含まれる露光装置(不図示)による露光処理の前に、基板の表面にレジスト膜を形成する処理を行う。より具体的には、レジスト塗布装置1は、レジスト膜形成用の塗布液を基板の表面に供給し、上記ベーク前レジスト膜を形成する。また、レジスト塗布装置1は、基板の表面にベーク前レジスト膜を形成した後に、基板の周縁部に除去液を供給することで、ベーク前レジスト膜の周縁部を除去する。
【0010】
レジスト塗布装置1は、図1に示されるように、塗布処理部100(液処理部)と、気流形成ユニット2(気流形成装置)と、を含んで構成されている。
【0011】
塗布処理部100は、2つの処理部100a,100bを有している。2つの処理部100a,100bは、互いに隣り合って並んで配置されており、互いに同じ構成とされている。2つの処理部100a,100bは、それぞれ、スピンチャック(不図示)及びカップ101を含んで構成されている。
【0012】
スピンチャック(不図示)は、基板Wの裏面中央部を吸着して水平に保持すると共に基板Wを回転させる回転保持部である。スピンチャックは、回転軸(不図示)を介して回転駆動機構(不図示)と接続されている。スピンチャックは、回転駆動機構を介して基板Wを保持した状態で鉛直軸回りに回転自在に構成されており、その回転軸上に基板Wの中心が位置するように設定されている。回転駆動機構は、制御部(不図示)からの制御信号を受けてスピンチャックの回転速度を制御する。
【0013】
カップ101は、スピンチャック上の基板Wを囲むようにして上方側に開口が形成されている。カップ101に囲われた領域が、基板Wに対する塗布処理の処理空間PSとされている。カップ101の下方には排気管路(不図示)が設けられている。また、カップ101内には、3本の昇降ピン(不図示)が設けられている。昇降ピンは、昇降機構(不図示)により昇降することで、レジスト塗布装置1に基板Wを搬送する図示しない基板搬送機構とスピンチャックとの間で基板Wの受け渡しを行うことができる。さらに、塗布処理部100は、基板Wにレジスト液を供給するための、図示しない種々の部品を有している。
【0014】
気流形成ユニット2は、塗布処理部100の上方から該塗布処理部100の処理空間PSに向かう下方に、気流を発生させる構成である。気流形成ユニット2は、気体供給部10と、気流制御板50(気流形成部)と、複数のスペーサー70(図3(a)及び図3(b)参照)と、を有している。
【0015】
気体供給部10は、導入した気体を処理空間PSに向けて吹き出す構成である。気体供給部10は、吹出ユニット11と、ULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタ12と、を有している。
【0016】
吹出ユニット11は、扁平な箱状の部材であり、その下面が開口して吹出面11aを構成している。吹出ユニット11の側部には、気体を導入するための導入穴が形成されている。吹出ユニット11の下部には、ULPAフィルタ12が取り付けられている。
【0017】
ULPAフィルタ12は、気体中の微細なパーティクルを除去するフィルタである。ULPAフィルタ12は、吹出ユニット11の吹出面11aから下方に流れ出た気体中のパーティクルを除去し、その下面である吹出面12a(第1面)から下方に気体を吹き出す。吹出面12aにおいては、くり抜かれた開口から、整流された気体がそのまま流れ出る構造とされている。吹出面12aから吹き出す気体の風量は、領域によらずに概ね一定とされている。すなわち、2つの処理部100a,100bのカップ101間で、ULPAフィルタ12からの気体の風量の差は生じていない。
【0018】
気流制御板50は、ULPAフィルタ12の吹出面12aの下方且つ処理部100a,100bの処理空間PSの上方に配置されている。気流制御板50は、処理空間PSの直上の開口部300を囲うように配置されている。気流制御板50は、吹出面12aから下方に吹き出された気体について、開口部300の周辺に、その外側の領域よりも強い気流が発生した環状の強気流形成領域SA(図1及び図4参照。詳細は後述)を形成する気流形成部である。なお、平面視すると、開口部300の領域は、処理空間PSに配置される基板Wの領域より狭い。すなわち、開口部300は、平面視した際の基板Wの外縁部よりも内側の領域にのみ形成されている。気流制御板50の詳細について、図2図4も参照しながら説明する。図2は、気流制御板50の底面図である。図3(a)は気体供給部10及び気流制御板50の垂直断面図であり、図3(b)は気流制御板50の上面図である。図4は、強気流形成領域を説明する図である。
【0019】
図2に示されるように、気流制御板50は、処理部100a,100bに対応する開口部300,300の領域を除いて(開口部300,300を囲うように)配置されている。図2及び図3(a)に示されるように、気流制御板50は、開口部300を囲うように上下方向に延びる環状の壁部51と、壁部51の下端に連続すると共に、ULPAフィルタ12の吹出面12aに対向するように水平に延びる底部52と、を有している。底部52は、吹出面12aの下方の領域の内、開口部300に対応する領域以外の全ての領域と対向するように、水平に延びている。
【0020】
図3(a)に示されるように、壁部51は、その上端とULPAフィルタ12の吹出面12aとの間に狭GAP51aが形成されるように、上下方向に延びている。狭GAP51aは、例えば吹出面12aと底部52との離間距離の50%程度の長さとされており、具体的には、例えば1.5~4.5mm程度の長さとされていてもよい。このような構成によれば、吹出面12aと底部52との間に一度蓄積された気体が、狭GAP51aから開口部300側に吹き出すこととなる(図1参照)。狭GAP51aにおける圧力損失によって、狭GAP51aから吹き出した気体が形成する気流の流速が速くなり、開口部300の周辺に、その外側の領域よりも強い気流が発生した環状の強気流形成領域SAが形成される(図1及び図4参照)。
【0021】
図3(a)及び図3(b)に示されるように、気流制御板50は、複数のスペーサー70を介してULPAフィルタ12に固定されている。スペーサー70は、上端がULPAフィルタ12の吹出面12aに接続されると共に、下端が底部52に接続されている。複数のスペーサー70は、互いに上下方向における高さが同じである。各スペーサー70は、図3(b)に示されるように、開口部300を囲うように立設した環状の壁部51に沿って、一定の間隔で設けられている。また、スペーサー70は、壁部51に沿った領域だけでなく、スペーサー70間の離間距離が大きくなり過ぎない程度に、底部52の各領域に設けられている(図3(b)参照)。このように、互いに同じ高さの複数のスペーサー70が満遍なく底部52に設けられることにより、吹出面12aと底部52との間の気体が蓄積される空間の大きさを一定とすることができ、領域によって差圧が生じ気流がばらつくことを抑制することができる。
【0022】
また、図2に示されるように、底部52には、気体を下方に送り出す複数の穴部55が形成されている。底部52は、壁部51に連続する領域である第1領域52a(中央側の領域)と、第1領域52aよりも外側の領域である第2領域52bと、を有している。そして、上述した複数の穴部55に関して、第1領域52aにおける複数の穴部55が占める割合である第1開口率は、第2領域52bにおける複数の穴部55が占める割合である第2開口率よりも低い。すなわち、第1領域52aと第2領域52bとを同じ面積の条件で比較すると、第1領域52aの方が、下方に気体を逃がす穴部55の領域が少ない。このことによって、相対的に、第1領域52aから吹き出す気体が形成する気流の流速が速くなり、壁部51の近傍(すなわち、開口部300の周辺)に、強気流形成領域SAが形成される(図1及び図4参照)。また、例えば、図2にも表れているように、第1領域52aにおける複数の穴部55は、円状の開口部300を基準とした周方向の間隔に規則性を持つような、開口部300から外側に向いた放射状の配置になっている。第2領域52bにおける複数の穴部55は、上記の第1領域52aにおける配置とは異なり全体的に均等な配置になっている。この全体的に均等な配置としての一例を、図2を基に説明すると、各穴部55間の間隔が図2における縦方向と横方向とで一定の規則性を持つ配置、と言える。この様な第1領域と第2領域での複数の穴部55の配置の違いにより、第2領域からは略均等なダウンフローを発生させ、その内側に強気流形成領域SAを周状に安定して形成し易くなると考えられる。
【0023】
なお、第2領域52bの第2開口率は、第2領域52bから下方に向かう気流の流速が、開口部300の中心付近においてULPAフィルタ12の吹出面12aから下方に向かう気流の流速よりも遅くなるように設定されていてもよい。このように、処理空間PSよりも外側の気流の流速が遅くされることにより、処理空間上風速の変化がより抑制される。
【0024】
図4では、各処理部100a,100bの処理空間PSにおける気流AFの流れが矢印で示されてる。図4に示されるように、環状の強気流形成領域SAが形成されている。このような強気流形成領域SAは、エアカーテンの機能を果たし、エアカーテンである強気流形成領域SAの外側の外乱因子の影響が強気流形成領域SAの内側(すなわち処理空間PS)の領域に及ぼされることを抑制することができる。このことにより、図4に示されるように、処理空間上風速の変化が抑制され、処理空間PS上の気流AFの流れが一定(概ね下方に向かう一直線の流れ)になる。
【0025】
次に、本実施形態に係る気流形成ユニット2(気流形成装置)の作用効果について説明する。
【0026】
本実施形態に係る気流形成ユニット2は、塗布処理部100の上方から該塗布処理部100の処理空間PSに向かう下方に気流を発生させる気流形成ユニットである。気流形成ユニット2は、導入した気体を、処理空間PSに対向する吹出面12aから下方に吹き出す気体供給部10を備える。また、気流形成ユニット2は、吹出面12aの下方且つ処理空間PSの上方において処理空間PSの直上の開口部300を囲うように配置された気流制御板50を備える。気流制御板50は、吹出面12aから下方に吹き出された気体について、開口部300の周辺にその外側の領域よりも強い気流が発生した環状の強気流形成領域SAを形成する。
【0027】
本実施形態に係る気流形成ユニット2では、処理空間PSの直上の開口部300の周辺に、環状の強気流形成領域SAが形成され、該強気流形成領域SAがエアカーテンとして機能する。このようにカップ101上の気流に分布をつけることにより、例えば強気流形成領域SAの外側において外乱因子が発生しても、強気流形成領域SAの内側、すなわち処理空間PSの領域では、外乱因子の影響を受けることが抑制される。すなわち、本実施形態に係る気流形成ユニット2では、強気流形成領域SAがエアカーテンとして機能することによって、処理空間上風速の変化が抑制される。以上のように、本実施形態に係る気流形成ユニット2によれば、気流変化のパラメータとして挙げられる処理空間上風速の変化を抑え、液処理後の基板Wの膜厚のばらつきを抑えることができる。
【0028】
図5は、装置陽圧値毎のセンター風速(処理空間の中央における風速)を示す図である。図5において、横軸は各装置陽圧値(0Pa、0.4Pa、0.8Pa、1.5Pa、2.0Pa)毎の2つの処理部100a,100bのカップ101(CUP1、CUP2)を示している。また、縦軸は、センター風速を示している。ここで、装置陽圧値が変わることにより、処理空間上の気流(すなわちセンター風速)が変化し、基板Wの膜厚にばらつきが生じることが考えられる。本実施形態に係る気流制御板50を備えない比較例に係る構成では、図5に示されるように、各装置陽圧値間で、最大で変動量Fe1だけセンター風速が変動する。これに対して、本実施形態に係る気流制御板50を備える構成では、図5に示されるように、各装置陽圧値間でのセンター風速の変動量が、上述した比較例における変動量Fe1と比べると明らかに小さく、センター風速のばらつきを抑えることができた。
【0029】
そして、センター風速のばらつきを抑えることができたことによって、図6に示されるように、基板Wの膜厚のばらつきを抑えることができる。図6は、装置陽圧値毎の基板膜厚を示す図である。図6において、横軸は基板Wの径方向の位置を示しており、縦軸は基板Wの膜厚を示している。図6の各グラフは、条件を変えて複数測定された各装置陽圧値における、基板Wの径方向の各位置の膜厚を示している。例えば、本実施形態に係る気流制御板50を備えない比較例に係る構成では、図6に示されるように、基板Wの中心において、各装置陽圧値間で最大で変動量Fe2だけ膜厚が変動する。これに対して、本実施形態に係る気流制御板50を備える構成では、図6に示されるように、各装置陽圧値間での基板Wの中心における膜厚の変動量が、上述した比較例における変動量Fe2と比べて明らかに小さく、基板Wの膜厚のばらつきを抑えることができた。
【0030】
気流制御板50は、開口部300を囲うように上下方向に延びる環状の壁部51と、壁部51の下端に連続すると共に吹出面12aと対向するように水平に延びる底部52と、を有する。壁部51は、その上端と吹出面12aとの間に狭GAP51aが形成されるように上下方向に延びている。このような構成によれば、気体供給部10から下方に吹き出された気体が、底部52と吹出面12aとの間に一度蓄積され、蓄積された気体が壁部51と吹出面12aとの間の狭GAP51aから吹き出すこととなる。狭GAP51aでの圧力損出によって、吹き出した気体が形成する気流の流速が速くなり、上述した強気流形成領域SAが形成される。これにより、開口部300の周辺に環状の強気流形成領域SAを確実に形成することができる。
【0031】
底部52には、図2に示されるように、気体を下方に送り出す複数の穴部55が形成されている。底部52は、壁部51の下端に連続する領域である第1領域52aと、第1領域52aよりも外側の領域である第2領域52bと、を有する。第1領域52aにおける複数の穴部55が占める割合である第1開口率は、第2領域52bにおける複数の穴部55が占める割合である第2開口率よりも低くてもよい。このように、底部52における壁部51寄りの第1領域52aの開口率が、外側の第2領域52bの開口率よりも低くされることにより、相対的に、第1領域52aの穴部55から吹き出す気体が形成する気流の流速が速くなる。このことで、壁部51の近傍(すなわち開口部300の周辺)に強気流形成領域SAを確実に形成することができる。
【0032】
気流形成ユニット2は、上端が吹出面12aに接続されると共に下端が底部52に接続された複数のスペーサー70を更に備え、複数のスペーサー70は、互いに、上下方向における高さが同じであってもよい。このような構成によれば、互いに同じ高さの複数のスペーサー70によって、吹出面12aと底部52との離間距離(隙間)を一定値とすることができる。このように、気体が蓄積される空間の大きさが一定値とされることにより、領域によって(例えば互いに隣り合う複数の処理空間PS間で)差圧が生じ気流がばらついてしまうことを抑制することができる。
【0033】
スペーサー70は、壁部51に沿って設けられていてもよい。これにより、狭GAP51aの大きさがばらつくことが回避され、領域による気流のばらつきをより抑制することができる。また、壁部51に沿って設けられたスペーサー70が気体の流れに対する抵抗として機能することにより、狭GAP51aの抵抗としての機能と相まって、狭GAP51aから吹き出す気流の流速を速くして強気流形成領域SAをより好適に形成することができる。
【0034】
平面視すると、開口部300の領域は、処理空間PSに配置される基板Wの領域よりも狭くてもよい。処理空間PSの直上に設けられる開口部300の領域が、処理空間PSに配置される基板Wの領域よりも狭くされることにより、開口部300の周辺に強気流形成領域SAを形成した場合において、基板W上の領域に適切にエアカーテンを形成することができる。これにより、液処理後の基板Wの膜厚のばらつきをより確実に抑えることができる。
【0035】
以上、本実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。例えば、気流形成ユニット2が、レジスト塗布装置1の塗布処理部100の処理空間PSに向かう気流を発生させるとして説明したが、これに限定されない。例えば、気流形成装置は、その他の液処理部(例えば現像処理部)の処理空間に向かう気流を発生させる装置であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
2…気流形成ユニット(気流形成装置)、10…気体供給部、12a…吹出面(第1面)、50…気流制御板(気流形成部)、51…壁部、51a…狭GAP、52…底部、52a…第1領域、52b…第2領域、55…穴部、70…スペーサー、100…塗布処理部(液処理部)、300…開口部、PS…処理空間、SA…強気流形成領域、W…基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6