(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165280
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】フィルム状接着剤、及び、回路接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20231108BHJP
C09J 175/14 20060101ALI20231108BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20231108BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20231108BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20231108BHJP
H05K 3/32 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J175/14
C09J9/02
H01B1/22 D
H01R11/01 501C
H05K3/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076123
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由佳
(72)【発明者】
【氏名】福田 雪乃
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 弘行
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5E319
5G301
【Fターム(参考)】
4J004AA01
4J004AA14
4J004AB04
4J004BA03
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4J004CB03
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4J040PA33
5E319AA03
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5G301DA03
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5G301DD03
5G301DD08
(57)【要約】
【課題】 シリコン基板への仮付け性に優れるフィルム状接着剤を提供すること。
【解決手段】フィルム状接着剤は、第1の絶縁性接着剤層と、導電粒子を含有する導電性接着剤層と、第2の絶縁性接着剤層とがこの順に積層されている積層構造を有し、第1の絶縁性接着剤層の厚みT1と第2の絶縁性接着剤層の厚みT2とが、T1<T2の関係を満たし、第1の絶縁性接着剤層が、(A)ラジカル重合性化合物と、(B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、且つ、(A)成分として、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁性接着剤層と、導電粒子を含有する導電性接着剤層と、第2の絶縁性接着剤層とがこの順に積層されている積層構造を有し、
前記第1の絶縁性接着剤層の厚みT1と前記第2の絶縁性接着剤層の厚みT2とが、T1<T2の関係を満たし、
前記第1の絶縁性接着剤層が、(A)ラジカル重合性化合物と、(B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、且つ、前記(A)成分として、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、フィルム状接着剤。
【請求項2】
前記ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物が、下記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項1に記載のフィルム状接着剤。
【化1】
[式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、jは1~3の整数を示し、kは2~7の整数を示し、mは4~8の整数を示し、nは5~7の整数を示す。]
【請求項3】
前記第1の絶縁性接着剤層は、50℃における溶融粘度が4000~10000である、請求項1又は2に記載のフィルム状接着剤。
【請求項4】
導電粒子を含有するフィルム状接着剤であって、
前記導電粒子が存在しない第1の絶縁性領域と、前記導電粒子が存在する導電性領域と、前記導電粒子が存在しない第2の絶縁性領域とを、前記フィルム状接着剤の厚み方向にこの順に備え、
前記第1の絶縁性領域の前記フィルム状接着剤の厚み方向の長さL1と、前記第2の絶縁性領域の前記フィルム状接着剤の厚み方向の長さL2とが、L1<L2の関係を満たし、
前記第1の絶縁性領域が、(A)ラジカル重合性化合物と、(B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、且つ、前記(A)成分として、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、フィルム状接着剤。
【請求項5】
前記ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物が、下記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項4に記載のフィルム状接着剤。
【化2】
[式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、jは1~3の整数を示し、kは2~7の整数を示し、mは4~8の整数を示し、nは5~7の整数を示す。]
【請求項6】
前記第1の絶縁性領域は、50℃における溶融粘度が4000~10000である、請求項4又は5に記載のフィルム状接着剤。
【請求項7】
テープ状の基材と、該基材の一方面上に設けられた、請求項1に記載のフィルム状接着剤と、を備え、
前記基材を有する状態で前記第1の絶縁性接着剤層側から前記フィルム状接着剤を貼付することができる、接着剤テープ。
【請求項8】
テープ状の基材と、該基材の一方面上に設けられた、請求項4に記載のフィルム状接着剤と、を備え、
前記基材を有する状態で前記第1の絶縁性領域側から前記フィルム状接着剤を貼付することができる、接着剤テープ。
【請求項9】
巻芯と、該巻芯に巻き付けられた請求項7又は8に記載の接着剤テープと、を備える、リール体。
【請求項10】
第1の電極を有する第1の回路部材と第2の電極を有する第2の回路部材とが接続された回路接続構造体を製造する方法であって、
前記第1の回路部材がシリコン基板を有し、
請求項7に記載の接着剤テープを、前記基材を有する状態で前記第1の絶縁性接着剤層が前記シリコン基板と接するように前記第1の回路部材に前記フィルム状接着剤をラミネートする工程と、
前記第1の回路部材と前記第2の回路部材との間に、前記基材が剥離された前記フィルム状接着剤を介在させ、前記第1の回路部材及び前記第2の回路部材を熱圧着して、前記第1の電極及び前記第2の電極を互いに電気的に接続する工程と、
を備える、回路接続構造体の製造方法。
【請求項11】
第1の電極を有する第1の回路部材と第2の電極を有する第2の回路部材とが接続された回路接続構造体を製造する方法であって、
前記第1の回路部材がシリコン基板を有し、
請求項8に記載の接着剤テープを、前記基材を有する状態で前記第1の絶縁性領域が前記シリコン基板と接するように前記第1の回路部材に前記フィルム状接着剤をラミネートする工程と、
前記第1の回路部材と前記第2の回路部材との間に、前記基材が剥離された前記フィルム状接着剤を介在させ、前記第1の回路部材及び前記第2の回路部材を熱圧着して、前記第1の電極及び前記第2の電極を互いに電気的に接続する工程と、
を備える、回路接続構造体の製造方法。
【請求項12】
第1の電極を有する第1の回路部材と、
第2の電極を有する第2の回路部材と、
前記第1の回路部材及び前記第2の回路部材の間に配置され、前記第1の電極及び前記第2の電極を互いに電気的に接続する回路接続部と、
を備え、
前記第1の回路部材及び前記第2の回路部材の少なくとも一方が、シリコン基板を有し、
前記回路接続部が、請求項1又は2に記載のフィルム状接着剤の硬化物を含む、回路接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状接着剤、及び、回路接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路接続を行うために各種の接着材料が使用されている。例えば、液晶ディスプレイとテープキャリアパッケージ(TCP)との接続、フレキシブルプリント配線基板(FPC)とTCPとの接続、又はFPCとプリント配線板との接続のための接着材料として、接着剤中に導電粒子が分散された異方導電性を有するフィルム状の接着剤が使用されている。
【0003】
精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。このため、導電粒子を含むフィルム状接着剤によって微小電極上に効率良く導電粒子を捕捉させ、高い接続信頼性を得ることが必ずしも容易ではなくなっている。
【0004】
これに対し、例えば特許文献1では、導電粒子を異方導電性接着シートの片側に偏在させ、導電粒子同士を離間させる手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/54388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、回路接続用のフィルム状接着剤は、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)などの基材上に形成され、用途に適した幅となるようにテープ状に切断した接着剤テープの形態で利用される。このような接着剤テープを用いて回路接続を行う場合、一方の回路部材上にフィルム状接着剤を貼り付けた後、PETフィルムを剥離してから他方の回路部材を搭載することが一般的である。
【0007】
ところで、シリコン基板に先にフィルム状接着剤を貼り付ける製造方式が採用されるようになっている。このような製造方式においては、低温、短時間、低加圧の条件(例えば、70℃、3秒間、1MPa)で、シリコン基板にフィルム状接着剤が貼り付けられる。しかしながら、上述した従来のフィルム状接着剤は、PETフィルムを剥がす際に接着剤がPETフィルム側に追従してしまい、シリコン基板上に転写されにくいこと(以下、フィルム状接着剤の基板への転写し易さを「仮付け性」という場合もある。)が、本発明者らの検討により判明した。
【0008】
そこで、本発明は、シリコン基板への仮付け性に優れるフィルム状接着剤、それを備える接着剤テープ、及び接着剤テープを用いる回路接続構造体の製造方法、並びに、回路接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、第1の絶縁性接着剤層と、導電粒子を含有する導電性接着剤層と、第2の絶縁性接着剤層とがこの順に積層されている積層構造を有し、第1の絶縁性接着剤層の厚みT1と第2の絶縁性接着剤層の厚みT2とが、T1<T2の関係を満たし、第1の絶縁性接着剤層が、(A)ラジカル重合性化合物と、(B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、且つ、前記(A)成分として、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、フィルム状接着剤を提供する。
【0010】
上記一側面のフィルム状接着剤は、第2の絶縁性接着剤層側に基材を配置して、第1の絶縁性接着剤層側からシリコン基板上にラミネートした場合に、優れた仮付け性を発現することができる。
【0011】
上記一側面のフィルム状接着剤において、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物は、下記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。
【化1】
[式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、jは1~3の整数を示し、kは2~7の整数を示し、mは4~8の整数を示し、nは5~7の整数を示す。]
【0012】
また、第1の絶縁性接着剤層は、50℃における溶融粘度が4000~10000であってもよい。
【0013】
本発明の別の側面は、導電粒子を含有するフィルム状接着剤であって、導電粒子が存在しない第1の絶縁性領域と、導電粒子が存在する導電性領域と、導電粒子が存在しない第2の絶縁性領域とを、フィルム状接着剤の厚み方向にこの順に備え、第1の絶縁性領域のフィルム状接着剤の厚み方向の長さL1と、第2の絶縁性領域のフィルム状接着剤の厚み方向の長さL2とが、L1<L2の関係を満たし、第1の絶縁性領域が、(A)ラジカル重合性化合物と、(B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、且つ、前記(A)成分として、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、フィルム状接着剤を提供する。
【0014】
上記別の側面のフィルム状接着剤は、第2の絶縁性領域側に基材を配置して、第1の絶縁性領域側からシリコン基板上にラミネートした場合に、優れた仮付け性を発現することができる。
【0015】
上記別の側面のフィルム状接着剤において、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物は、下記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。
【化2】
[式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、jは1~3の整数を示し、kは2~7の整数を示し、mは4~8の整数を示し、nは5~7の整数を示す。]
【0016】
また、第1の絶縁性領域は、50℃における溶融粘度が4000~10000であってもよい。
【0017】
本発明の別の側面は、テープ状の基材と、該基材の一方面上に設けられた、上記一側面のフィルム状接着剤と、を備え、基材を有する状態で第1の絶縁性接着剤層側からフィルム状接着剤を貼付することができる、第1の接着剤テープを提供する。
【0018】
このような接着剤テープによれば、シリコン基板上にフィルム状接着剤を良好に転写することができる。
【0019】
本発明の別の側面は、テープ状の基材と、該基材の一方面上に設けられた、上記別の側面のフィルム状接着剤と、を備え、基材を有する状態で第1の絶縁性領域側からフィルム状接着剤を貼付することができる、第2の接着剤テープを提供する。
【0020】
このような接着剤テープによれば、シリコン基板上にフィルム状接着剤を良好に転写することができる。
【0021】
本発明の別の側面は、巻芯と、該巻芯に巻き付けられた、上記第1又は第2の接着剤テープと、を備える、リール体を提供する。
【0022】
本発明の別の側面は、第1の電極を有する第1の回路部材と第2の電極を有する第2の回路部材とが接続された回路接続構造体を製造する方法であって、第1の回路部材がシリコン基板を有し、上記第1の接着剤テープを、基材を有する状態で第1の絶縁性接着剤層がシリコン基板と接するように第1の回路部材にフィルム状接着剤をラミネートする工程と、第1の回路部材と第2の回路部材との間に、基材が剥離されたフィルム状接着剤を介在させ、第1の回路部材及び第2の回路部材を熱圧着して、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続する工程と、を備える、回路接続構造体の製造方法を提供する。
【0023】
本発明の別の側面は、第1の電極を有する第1の回路部材と第2の電極を有する第2の回路部材とが接続された回路接続構造体を製造する方法であって、第1の回路部材がシリコン基板を有し、上記第2の接着剤テープを、基材を有する状態で第1の絶縁性領域がシリコン基板と接するように第1の回路部材にフィルム状接着剤をラミネートする工程と、第1の回路部材と第2の回路部材との間に、基材が剥離されたフィルム状接着剤を介在させ、第1の回路部材及び第2の回路部材を熱圧着して、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続する工程と、を備える、回路接続構造体の製造方法を提供する。
【0024】
本発明の別の側面は、第1の電極を有する第1の回路部材と、第2の電極を有する第2の回路部材と、第1の回路部材及び第2の回路部材の間に配置され、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続する回路接続部と、を備え、第1の回路部材及び第2の回路部材の少なくとも一方が、シリコン基板を有し、回路接続部が、上記一側面又は別の側面のフィルム状接着剤の硬化物を含む、回路接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、シリコン基板への仮付け性に優れるフィルム状接着剤、それを備える接着剤テープ、及び接着剤テープを用いる回路接続構造体の製造方法、並びに、回路接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】フィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】フィルム状接着剤の他の実施形態を示す模式断面図である。
【
図4】
図3に示したリール体における接着剤テープの端部を示す拡大模式断面図である。
【
図5】回路接続体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図6】回路接続体の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」等の他の類似の表現においても同様である。また、「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0028】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0029】
<フィルム状接着剤(第1実施形態)>
第1実施形態のフィルム状接着剤は、第1の絶縁性接着剤層と、導電粒子を含有する導電性接着剤層と、第2の絶縁性接着剤層とがこの順に積層されている積層構造を有し、第1の絶縁性接着剤層の厚みT1と第2の絶縁性接着剤層の厚みT2とが、T1<T2の関係を満たす。
【0030】
図1は、第1実施形態に係るフィルム状接着剤を示す模式断面図である。
図1に示されるフィルム状接着剤1は、第1の絶縁性接着層2と、導電性接着剤層3と、第2の絶縁性接着剤層4とがこの順に積層されてなる。
【0031】
第1及び第2の絶縁性接着剤層2,4は、それぞれ接着剤成分2a,4aで構成されている。接着剤成分2a,4aは、(A)ラジカル重合性化合物(以下、「(A)成分」ともいう。)と、(B)ラジカル重合開始剤(以下、「(B)成分」ともいう。)と、(C)熱可塑性樹脂(以下、「(C)成分」ともいう。)と、を含有するものであってもよい。
【0032】
(A)成分としては、1以上のラジカル重合性基を有する化合物を用いることができる。ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、アルケニル基、アルケニレン基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられる。ラジカル重合性化合物が有する重合性基の数は、重合後、接続抵抗を低減するために必要な物性(例えば、架橋密度等)を得る観点から、2以上であってよく、重合時の硬化収縮をより抑える観点から、10以下であってもよい。なお、架橋密度と効果収縮とのバランスを保つ観点から、重合性基の数が上記範囲内(2~10)のラジカル重合性化合物に、重合性基の数が上記範囲外の他のラジカル重合性化合物を加えて用いてもよい。
【0033】
ラジカル重合性化合物の具体例としては、(メタ)アクリレート化合物、マレイミド化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、スチレン誘導体、アクリルアミド誘導体、ナジイミド誘導体、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム等が挙げられる。
【0034】
(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーンアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフォスフェート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス〔4-(アクリロキシメトキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルフォスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0035】
マレイミド化合物としては、例えば、1-メチル-2,4-ビスマレイミドベンゼン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-トルイレンビスマレイミド、N,N’-4,4-ビフェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジメチル-ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-3,3-ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-s-ブチル-4-8(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’-シクロヘキシリデン-ビス(1-(4マレイミドフェノキシ)-2-シクロヘキシルベンゼン、2,2’-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0036】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0037】
アリル化合物としては、例えば、1,3-ジアリルフタレート、1,2-ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0038】
ラジカル重合性化合物は、硬化反応速度に優れ、硬化後により良好な物性が得られる観点から、(メタ)アクリレート化合物であってもよい。ラジカル重合性化合物は、接続抵抗を低下させるための凝集力と接着力を向上させるための伸びとを両立させることができ、より優れた接着特性が得られる観点から、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物であってもよい。また、ラジカル重合性化合物は、接続抵抗を低下させるための凝集力をより向上させる観点から、ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物等の高Tg(ガラス転移点)を有する化合物などであってもよい。
【0039】
ラジカル重合性化合物は、架橋密度と効果収縮とのバランスを保ち、接続抵抗を低下させ、接続信頼性を向上させる観点から、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の末端又は側鎖にビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等の重合性基を導入した化合物(例えば、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物)であってもよい。このようなラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、架橋密度と効果収縮とのバランスを保つ観点から、3000以上、5000以上、又は10000以上であってもよい。また、ラジカル重合性化合物の重量平均分子量は、他成分との相溶性の観点から、1000000以下、500000以下、又は250000以下であってもよい。なお、重量平均分子量は、実施例に記載の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
【0040】
本実施形態においては、シリコン基板への仮付け性を向上させる観点から、第1の絶縁性接着剤層2(接着剤成分2a)が、(A)成分として、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むことができる。
【0041】
ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、下記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0042】
【化3】
[式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、jは1~3の整数を示し、kは2~7の整数を示し、mは4~8の整数を示し、nは5~7の整数を示す。]
【0043】
上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート化合物は、その分子中に(メタ)アクリロイル基とともにポリカーボネートポリオール由来の構造を有する。上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートにおいて、(メタ)アクリロイル基は、分子中に2個存在している。
【0044】
上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート化合物を製造する方法としては、例えば、ポリイソシアネート(i)とポリカーボネートポリオールを含むポリオール(ii)とを、ポリイソシアネート(i)の有するイソシアネート基(NCO)とポリオール(ii)の有する水酸基(OH)との当量割合が[NCO/OH]=2~1.25の範囲、さらに好ましくは、1.6~1.25となる条件で反応させることによって分子末端にイソシアネート基を有するウレタン樹脂(iii)を製造する工程(I)と、上記ウレタン樹脂(iii)と、1個の水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリル化合物(iv)とを、(メタ)アクリル化合物(iv)の有する水酸基がウレタン樹脂(iii)の有するイソシアネート基に対してほぼ等量となる条件で反応させる工程(II)とからなる方法が挙げられる。
【0045】
ここで、上記ポリカーボネートポリオール(ii)としては、一般式(1)中のmが4~8の整数を示し、nが5~7の整数を示すウレタン(メタ)アクリレートが得られるようなポリカーボネートポリオールを使用する必要があり、1,6-ヘキサンジオールベースポリカーボネートを使用することができる。ポリカーボネートポリオール(ii)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記反応工程(I)は、例えば窒素雰囲気下で、室温~100℃程度の範囲で行うことができる。また、この反応工程は、無溶剤下で行うこともできる。また、上記反応工程(I)では、必要に応じて触媒を使用してもよい。
【0047】
上記触媒としては、例えばテトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネート等の有機チタン化合物、オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、シブチル錫ジラウレート等の有機錫化合物、さらには、塩化第一錫、臭化第一錫、ヨウ化第一錫等の酸やアルカリ等、公知の触媒を用いることができる。これらの触媒の添加量は、全仕込み量に対して10~10,000ppmであってもよい。
【0048】
また、上記反応工程(II)は、室温~90℃程度の範囲で行うことができる。また、上記反応工程(II)は、無溶剤下で行うこともできる。また、上記反応工程(II)では、必要に応じて上記反応工程(I)で使用できるものとして例示した触媒と同様のものを使用してもよい。
【0049】
また、上記(メタ)アクリル化合物(iv)の有する重合性不飽和二重結合のラジカル重合を抑制するために、必要に応じてラジカル重合禁止剤を使用することができる。ラジカル重合禁止剤としては、例えばトルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、d-t-ブチルハイドロキノン、p-t-ブチルカテコール、フェノチアジン等を使用することができる。上記ラジカル重合禁止剤の使用量は、全仕込み量に対して10~10,000ppmであってもよい。
【0050】
上記一般式(1)において、jは1~3の整数であり、材料調達のコストの面から2であってもよい。
【0051】
上記一般式(1)において、kは2~7の整数であり、3~5の整数であってもよい。
【0052】
上記一般式(1)において、mは4~8の整数であり、5~7の整数であってもよい。
【0053】
上記一般式(1)において、nは5~7の整数であり、6であってもよい。
【0054】
また、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート化合物は、テトラメチルシランを内標準とした1HNMRにおいて、ケミカルシフト値が2.75~3.10ppmで測定されるスペクトルの積分値をS1とし、3.90~4.25ppmで測定されるスペクトルの積分値をS2としたときに、S2/S1の値が10以上14以下であってもよく、11以上13以下であってもよい。
【0055】
上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート化合物の重量平均分子量は、更に優れた接着特性を得る観点から、11000~25000であってもよく、15000~20000であってもよい。
【0056】
上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート化合物は、「WB-351」(日立化成株式会社製商品名、分子量:15000)、「UN5500」(根上工業株式会社製商品名、分子量:50000)等の市販品を用いてもよい。
【0057】
シリコン基板への仮付け性を向上させる観点から、第1の絶縁性接着剤層におけるポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレート化合物の含有量は、フィルム状接着剤中の導電粒子以外の成分の合計量を基準として、25~70質量%であってもよく、30~70質量%であってもよく、35~65質量%であってもよく、40~60質量%であってもよい。
【0058】
第1及び第2の絶縁性接着剤層2,4(接着剤成分2a,4a)は、(A)成分として、下記一般式(2)で表されるリン酸エステル構造を有する(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。この場合、無機物(金属等)の表面に対する接着強度が向上するため、例えば、回路電極同士の接着に好適である。
【0059】
【化4】
[式中、nは1~3の整数を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。]
【0060】
上記リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリレート化合物は、例えば、無水リン酸と2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0061】
(A)成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(B)成分としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物等の化合物から任意に選択することができる。
【0063】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(3-メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。
【0064】
(B)成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
ラジカル重合開始剤の含有量は、速硬化性により優れる観点から、ラジカル重合性化合物の全質量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってもよい。ラジカル重合開始剤の含有量は、貯蔵安定性により優れる観点から、ラジカル重合性化合物の全質量を基準として、50質量%以下、25質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。
【0066】
(C)成分としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ブチラール樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の樹脂が挙げられる。
【0067】
硬化時の応力緩和の観点から、(C)成分は、ポリウレタン樹脂であってもよい。
【0068】
第1及び第2の絶縁性接着剤層2,4における(C)成分の含有量は、接着剤層の全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってもよく、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってもよく、5~95質量%であってもよく、10~90質量%であってもよく、15~85質量%であってもよい。
【0069】
第1及び第2の絶縁性接着剤層2,4(接着剤成分2a,4a)は、その他の成分をさらに含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、カップリング剤、充填剤、軟化剤、促進剤、劣化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤等が挙げられる。
【0070】
カップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、イミダゾール基等の有機官能基を有するシランカップリング剤、テトラアルコキシチタネート誘導体、ポリジアルキルチタネート誘導体などが挙げられる。
【0071】
充填剤としては、例えば、非導電性のフィラー(例えば、非導電粒子)が挙げられる。充填剤は、無機フィラー及び有機フィラーのいずれであってもよい。無機フィラーとしては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、シリカ-アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子等の金属酸化物微粒子;窒化物微粒子などの無機微粒子が挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、シリコーン微粒子、メタクリレート-ブタジエン-スチレン微粒子、アクリル-シリコーン微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子などの有機微粒子が挙げられる。これらの微粒子は、均一な構造を有していてもよく、コア-シェル型構造を有していてもよい。
【0072】
その他の成分の含有量は、接着剤層の全質量を基準として、例えば、0.1~50質量%であってもよい。
【0073】
第1の絶縁性接着剤層は、50℃における溶融粘度が4000~10000Pa・sであってもよく、5000~8000Pa・sであってもよい。
【0074】
第2の絶縁性接着剤層は、50℃における溶融粘度が500~12000Pa・sであってもよい。
【0075】
導電性接着剤層3は、接着剤成分3aと、導電粒子5とを含有する。接着剤成分3aは、上述した第1及び第2の絶縁性接着剤層2,4を構成する接着剤成分2a,4aとして説明した接着剤成分と同様であってよく、また、第1及び第2の絶縁性接着剤層2,4を構成する接着剤成分2a,4aのそれぞれと同一であっても異なっていてもよい。
【0076】
接着剤成分3aは、(A)成分として、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよく、その含有量は、(A)成分の全質量を基準として、10~90質量%であってもよく、30~70質量%であってもよい。
【0077】
導電粒子5は、接着剤成分3a中に分散している。導電粒子は、導電性を有する粒子であれば特に制限されず、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属で構成された金属粒子、導電性カーボンで構成された導電性カーボン粒子などであってもよい。導電粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック(ポリスチレン等)などを含む核と、上記金属又は導電性カーボンを含み、核を被覆する被覆層とを備える被覆導電粒子であってもよい。これらの中でも、熱溶融性の金属で形成された金属粒子、又はプラスチックを含む核と、金属又は導電性カーボンを含み、核を被覆する被覆層とを備える被覆導電粒子が好ましく用いられる。この場合、導電粒子を加熱又は加圧により変形させることが容易であるため、回路電極同士を電気的に接続する際に、回路電極と導電粒子との接触面積を増加させ、電極間の導電性をより向上させることができる。
【0078】
導電粒子は、上記の金属粒子、導電性カーボン粒子、又は被覆導電粒子と、樹脂等の絶縁材料を含み、該粒子の表面を被覆する絶縁層とを備える絶縁被覆導電粒子であってもよい。導電粒子が絶縁被覆導電粒子であると、導電粒子の含有量が多い場合であっても、粒子の表面が樹脂で被覆されているため、導電粒子同士の接触による短絡の発生を抑制でき、また、隣り合う回路電極回路間の絶縁性を向上させることもできる。導電粒子は、上述した各種導電粒子の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
導電粒子の平均粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、1.0μm以上、2.0μm以上、又は2.5μm以上であってもよい。導電粒子の平均粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、50μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってもよい。なお、本明細書において、導電粒子の平均粒径は、任意の導電粒子300個について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により粒径の測定を行い、得られた粒径の平均値を意味する。
【0080】
導電粒子の含有量は、短絡をより抑制し易い観点から、接着剤層における導電粒子以外の成分(接着剤成分3a)の固形分全質量を基準として、50質量%以下であってもよく、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってもよい。導電粒子の含有量は、導電性をより向上させることができる観点から、接着剤層における導電粒子以外の成分(接着剤成分3a)の固形分全質量を基準として、0.1質量%以上であってもよい。導電粒子の含有量は、0.5質量%以上、1質量%以上、又は2質量%以上であってもよい。
【0081】
フィルム状接着剤1において、第1の絶縁性接着剤層の厚みT1と第2の絶縁性接着剤層の厚みT2とが、T1<T2の関係を満たす。
【0082】
また、第1の絶縁性接着剤層の厚みT1と導電性接着剤層の厚みTとが、T1<Tの関係を満たしてもよい。
【0083】
第1の絶縁性接着剤層の厚みT1は、5μm以上、又は10μm以上であってよく、50μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0084】
第2の絶縁性接着剤層の厚みT2は、0.5μm以上、又は1μm以上であってよく、10μm以下、5μm以下、又は3μm以下であってよい。
【0085】
導電性接着剤層3の厚みTは、1μm以上、3μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよく、30μm以下、又は20μm以下であってよい。
【0086】
<フィルム状接着剤(第2実施形態)>
第2実施形態のフィルム状接着剤は、導電粒子を含有するフィルム状接着剤であって、導電粒子が存在しない第1の絶縁性領域と、導電粒子が存在する導電性領域と、導電粒子が存在しない第2の絶縁性領域とを、フィルム状接着剤の厚み方向にこの順に備え、第1の絶縁性領域のフィルム状接着剤の厚み方向の長さL1と、第2の絶縁性領域のフィルム状接着剤の厚み方向の長さL2とが、L1<L2の関係を満たす。
【0087】
図2は、第2実施形態に係るフィルム状接着剤を示す模式断面図である。
図2に示されるフィルム状接着剤11は、接着剤成分11aと、導電粒子5とを含有する。フィルム状接着剤11は、導電粒子5が存在しない第1の絶縁性領域R1と、導電粒子5が存在する導電性領域Rと、導電粒子5が存在しない第2の絶縁性領域R2とを、フィルム状接着剤11の厚み方向にこの順に備える。
【0088】
なお、導電領域Rは、導電粒子5に接し、かつフィルム状接着剤11の第1の絶縁性領域R1側の表面11bに略平行な平面のうち、該表面11bから最短距離に存在する平面である第1の接平面と、導電粒子5に接し、かつフィルム状接着剤11の第2の絶縁性領域R2側の表面11cと略平行な平面のうち、該表面11cから最短距離に存在する平面である第2の接平面との間の領域として定義される。
【0089】
第1の絶縁性領域R1は、第1の接平面からフィルム状接着剤11の第1の絶縁性領域R1側の表面11bへ向けてフィルム状接着剤11の厚み方向に広がる、導電性領域R以外の領域として定義される。
【0090】
第2の絶縁性領域R2は、第2の接平面からフィルム状接着剤11の第2の絶縁性領域R2側の表面11cへ向けてフィルム状接着剤11の厚み方向に広がる、導電性領域R以外の領域として定義される。
【0091】
接着剤成分11aは、上述の第1実施形態で説明した接着剤成分2a,3a,4aと同様の接着剤成分であってよく、導電粒子5は、上述の第1実施形態で説明した導電粒子5と同様の導電粒子であってよい。接着剤成分11aは、第1の絶縁性領域R1、導電性領域R、及び第2の絶縁性領域R2ごとに異なる成分を有していてよい。
【0092】
第2実施形態においては、第1の絶縁性領域R1、導電性領域R、及び第2の絶縁性領域R2がそれぞれ、第1実施形態で説明した第1の絶縁性接着剤層、導電性接着剤層、及び第2の絶縁性接着剤層と同様の構成を有していてもよい。
【0093】
第1の絶縁性領域R1は、50℃における溶融粘度が4000~10000Pa・sであってもよく、5000~8000Pa・sであってもよい。
【0094】
第2の絶縁性領域R2は、50℃における溶融粘度が500~12000Pa・sであってもよい。
【0095】
フィルム状接着剤11において、第1の絶縁性領域R1の長さL1と第2の絶縁性領域R2の長さL2とが、L1<L2の関係を満たす。
【0096】
また、第1の絶縁性領域R1の長さL1と導電性領域Rの長さLとが、L1<Lの関係を満たしてもよい。
【0097】
第1の絶縁性領域R1の長さL1は、5μm以上、又は10μm以上であってよく、50μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0098】
第2の絶縁性領域R2の長さL2は、0.5μm以上、又は1μm以上であってよく、10μm以下、5μm以下、又は3μm以下であってよい。
【0099】
導電性領域Rの長さLは、1μm以上、3μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよく、30μm以下、又は20μm以下であってよい。
【0100】
<フィルム状接着剤の製造方法>
上述の第1及び第2実施形態に係るフィルム状接着剤1,11は、例えば、第1の絶縁性接着剤層2と、導電粒子5を含有する導電性接着剤層3と、第2の絶縁性接着剤層4とをこの順に積層することにより得られる。
【0101】
具体的には、例えば、まず、第1の絶縁性接着剤層2と導電性接着剤層3とをラミネーター等を用いて積層して積層体を得て、次いで、同様にして、該積層体の導電性接着剤層3側に第2の絶縁性接着剤層4を更に積層することにより、フィルム状接着剤1,11を得ることができる。あるいは、まず、導電性接着剤層3と第2の絶縁性接着剤層4とをラミネーター等を用いて積層して積層体を得て、次いで、同様にして、該積層体の導電性接着剤層3側に第1の絶縁性接着剤層2を更に積層することにより、フィルム状接着剤1,11を得ることもできる。
【0102】
第1の絶縁性接着剤層2、導電性接着剤層3、及び第2の絶縁性接着剤層4の各層は、例えば以下の方法により作製される。まず、接着剤成分2a,4a、又は接着剤成分3aと導電粒子5とを溶剤に溶解させて塗工液を調製する。次いで、この塗工液を、例えば基材の離型処理された表面上に塗布して、例えば接着剤成分2a,3a,4aに含有されるラジカル重合開始時剤の活性温度以下で乾燥し、溶剤を除去することにより各層が得られる。溶剤は、芳香族炭化水素系溶剤、含酸素系溶剤等であってよい。溶剤の沸点は、150℃以下であってよく、60~150℃又は70~130℃であってもよい。
【0103】
この製造方法において用いられる第1の絶縁性接着剤層2の厚みT1、導電性接着剤層3の厚みT、第2の絶縁性接着剤層4の厚みT2はそれぞれ、上述の第1実施形態で説明した条件を満たしてもよい。
【0104】
<接着剤テープ及びリール体>
本実施形態の接着剤テープは、テープ状の基材と、該基材の一方面上に設けられたフィルム状接着剤と、を備える。フィルム状接着剤は、上述した第1実施形態又は第2実施形態のフィルム状接着剤であってもよい。本実施形態の接着剤テープは、第1実施形態のフィルム状接着剤を備える場合(以下、「第1の接着剤テープ」という場合もある)、基材を有する状態で第1の絶縁性接着剤層側からフィルム状接着剤を貼付することができ、第2実施形態のフィルム状接着剤を備える場合(以下、「第2の接着剤テープ」という場合もある)、基材を有する状態で第1の絶縁性領域側からフィルム状接着剤を貼付することができる。これにより、シリコン基板に対しても優れた仮付け性を発現することができる。
【0105】
また、本実施形態のリール体は、巻芯と、該巻芯に巻き付けられた、本実施形態の接着剤テープと、を備える。
【0106】
図3は、リール体の一実施形態を示す斜視図である。
図3に示されるリール体21は、筒状の巻芯22と、巻芯22の軸方向の両端面にそれぞれ設けられた円盤状の側板23とを備える。巻芯22の外面22aには、長尺の接着剤テープ24が巻かれており、これにより接着剤テープ24は巻重体にされている。接着剤テープ24は、テープ状の基材25と、該基材25の一方面上に設けられたフィルム状接着剤26とを備えている。巻芯22の内面は、例えば回路接続時に用いる圧着装置の回転軸に装着するための軸穴22bとなっている。巻芯22の外径は、取扱い性に優れる観点から、例えば4~15cmであってもよい。
【0107】
図4は、
図3に示したリール体21における接着剤テープ24の拡大模式断面図である。
図4の(a)に示される接着剤テープ24Aは、テープ状の基材25と、該基材25の一方面上に設けられたフィルム状接着剤26として、第1実施形態に係るフィルム状接着剤1とを備える。
図4の(b)に示される接着剤テープ24Bは、テープ状の基材25と、該基材25の一方面上に設けられたフィルム状接着剤26として、第2実施形態に係るフィルム状接着剤11とを備える。
【0108】
基材25としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム系、液晶ポリマー等で形成されたテープ状の基材を使用することが可能である。基材25を構成する材質は、これらに限定されるものではない。基材25のフィルム状接着剤26との接着面には、離型処理が施されていてもよい。
【0109】
フィルム状接着剤26の幅は、使用用途に合わせて調整すればよく、例えば0.5~5mmであってもよく、0.5~3.0mmであってもよい。
【0110】
なお、上述の実施形態では、接着剤テープ24がリール体21の形態で用いられているが、接着剤テープ24は、例えば枚葉の形態(予め所望の大きさ、形状に切り取られた形態)で用いられてもよい。
【0111】
<回路接続体の製造方法及び回路接続体>
本実施形態の回路接続体の製造方法は、第1の電極を有する第1の回路部材と第2の電極を有する第2の回路部材とが接続された回路接続構造体を製造する方法である。
【0112】
第1実施形態の方法は、第1の回路部材がシリコン基板を有し、上記第1の接着剤テープを、基材を有する状態で第1の絶縁性接着剤層がシリコン基板と接するように第1の回路部材にフィルム状接着剤をラミネートする工程と、第1の回路部材と第2の回路部材との間に、基材が剥離されたフィルム状接着剤を介在させ、第1の回路部材及び第2の回路部材を熱圧着して、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続する工程と、を備える。
【0113】
第2実施形態の方法は、第1の回路部材がシリコン基板を有し、上記第2の接着剤テープを、基材を有する状態で第1の絶縁性領域がシリコン基板と接するように第1の回路部材にフィルム状接着剤をラミネートする工程と、第1の回路部材と第2の回路部材との間に、基材が剥離されたフィルム状接着剤を介在させ、第1の回路部材及び第2の回路部材を熱圧着して、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続する工程と、を備える。
【0114】
本実施形態の回路接続体は、第1の電極を有する第1の回路部材と、第2の電極を有する第2の回路部材と、第1の回路部材及び第2の回路部材の間に配置され、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続する回路接続部と、を備え、第1の回路部材及び第2の回路部材の少なくとも一方が、シリコン基板を有し、回路接続部が、上述した第1実施形態又は第2実施形態のフィルム状接着剤の硬化物を含む。
【0115】
図面を参照しながら、上述した接着剤テープ24を用いる回路接続体の製造方法について説明する。
図5は、回路接続体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【0116】
まず、
図5の(a)に示すように、第1の回路基板31と、第1の回路基板31の主面31a上に形成された第1の回路電極32とを備える第1の回路部材33を用意し、第1の回路部材33の第1の回路電極32と、接着剤テープ24Aの第1の絶縁性接着剤層2とが対向するように、第1の回路部材33上に接着剤テープ24Aを載置する。
【0117】
第1の回路基板31は、シリコン基板である。回路部材は、一般的に多数の回路電極を有している。第1の回路電極32は、金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金及びインジウム錫酸化物(ITO)から選ばれる1種又は2種以上で構成されていてよい。複数存在する第1の回路電極32の材質は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0118】
なお、上述のリール体21を用いる場合は、例えば、圧着装置の回転軸にリール体21を装着し、接着剤テープ24Aの第1の絶縁性接着剤層2が第1の回路部材33の第1の回路電極32に対向するように、リール体21から接着剤テープ24Aを引き出した後、接着剤テープ24Aを所定の長さに切断して、第1の回路部材33上に載置すればよい。
【0119】
次に、第1の回路部材33及び接着剤テープ24Aを矢印A及びB方向に加圧し、フィルム状接着剤26を第1の回路部材33に仮接続する。このときの圧力は、第1の回路部材33に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、例えば0.1~30.0MPaであることが好ましい。仮接続時には、加熱しながら加圧してもよい。この場合の加熱温度は、フィルム状接着剤1が実質的に硬化しない温度であればよく、例えば50~100℃であることが好ましい。加圧(及び加熱)は、0.1~2秒間行うことが好ましい。
【0120】
次に、
図5の(b)に示すように、接着剤テープ24Aの基材25をフィルム状接着剤1から剥離する。
【0121】
本実施形態においては、接着剤テープの仮接続及び基材の剥離を連続的に行ってもよい。
【0122】
次に、
図5の(c)に示すように、第2の回路基板34と、第2の回路基板34の主面34a上に形成された第2の回路電極35とを備える第2の回路部材36を用意し、第1の回路電極32と第2の回路電極35とが対向するように、第1の回路部材33及びフィルム状接着剤1を第2の回路部材36上に載置する。
【0123】
第2の回路部材36の具体例としては、電極が形成されているガラス基板又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンICチップ等が挙げられる。第2の回路電極35は、金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金及びインジウム錫酸化物(ITO)から選ばれる1種又は2種以上で構成されていてよい。複数存在する第2の回路電極35の材質は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0124】
そして、加熱しながら、矢印C及びD方向に全体を加圧する。このときの加熱温度は、フィルム状接着剤1の接着剤成分2a,3a,4aが硬化可能な温度であればよく、好ましくは60~180℃、より好ましくは70~170℃、更に好ましくは80~160℃である。加熱温度が60℃以上であると適切な硬化速度を維持でき、180℃以下であると望まない副反応を抑制できる。加熱時間は、好ましくは0.1~180秒間、より好ましくは0.5~180秒間、更に好ましくは1~180秒間である。
【0125】
上記の接続の条件は、得られる回路接続体の用途、並びにフィルム状接着剤及び回路部材の種類に応じて適宜選択される。フィルム状接着剤1の接着剤成分2a,3a,4aが光によって硬化する接着剤成分である場合には、接続時にフィルム状接着剤1に対して活性光線又はエネルギー線を適宜照射すればよい。活性光線としては、紫外線、可視光、赤外線等が挙げられる。エネルギー線としては、電子線、エックス線、γ線、マイクロ波等が挙げられる。
【0126】
このようにして、接着剤成分2a,3a,4aが硬化することにより、接着剤成分2a,3a,4aの硬化物37と導電粒子5とを含有する接続部38が形成されて、
図6に示すような回路接続体39が得られる。
【0127】
回路接続体39は、本実施形態の回路接続体の一実施形態である。回路接続体39は、第1の回路部材33と、第2の回路部材36と、第1の回路部材33及び第2の回路部材36の間に設けられた接続部38とを備え、第1の回路部材33はシリコン基板である第1の回路基板31を有している。回路接続体39では、第1の回路電極32と第2の回路電極35とが導電粒子5を介して電気的に接続されている。
【0128】
上述の実施形態では、接着剤テープとして、第1実施形態に係るフィルム状接着剤1を備える接着剤テープ24Aを用いたが、接着剤テープとして、第2実施形態に係るフィルム状接着剤11を備える接着剤テープ24Bを用いてもよい。
【0129】
本発明はまた、下記[1]~[12]に記載の発明に関する。
[1] 第1の絶縁性接着剤層と、導電粒子を含有する導電性接着剤層と、第2の絶縁性接着剤層とがこの順に積層されている積層構造を有し、第1の絶縁性接着剤層の厚みT1と第2の絶縁性接着剤層の厚みT2とが、T1<T2の関係を満たし、第1の絶縁性接着剤層が、(A)ラジカル重合性化合物と、(B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、且つ、前記(A)成分として、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、フィルム状接着剤。
[2] ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物が、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、上記[1]に記載のフィルム状接着剤。
[3] 第1の絶縁性接着剤層は、50℃における溶融粘度が4000~10000である、上記[1]又は[2]に記載のフィルム状接着剤。
[4] 導電粒子を含有するフィルム状接着剤であって、導電粒子が存在しない第1の絶縁性領域と、導電粒子が存在する導電性領域と、導電粒子が存在しない第2の絶縁性領域とを、フィルム状接着剤の厚み方向にこの順に備え、第1の絶縁性領域のフィルム状接着剤の厚み方向の長さL1と、第2の絶縁性領域のフィルム状接着剤の厚み方向の長さL2とが、L1<L2の関係を満たし、第1の絶縁性領域が、(A)ラジカル重合性化合物と、(B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、且つ、(A)成分として、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、フィルム状接着剤。
[5] ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物が、上記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、上記[4]に記載のフィルム状接着剤。
[6] 第1の絶縁性領域は、50℃における溶融粘度が4000~10000である、上記[4]又は[5]に記載のフィルム状接着剤。
[7] テープ状の基材と、該基材の一方面上に設けられた、上記[1]~[3]のいずれかに記載のフィルム状接着剤と、を備え、基材を有する状態で第1の絶縁性接着剤層側からフィルム状接着剤を貼付することができる、接着剤テープ。
[8] テープ状の基材と、該基材の一方面上に設けられた、上記[4]~[6]のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤と、を備え、基材を有する状態で第1の絶縁性領域側からフィルム状接着剤を貼付することができる、接着剤テープ。
[9] 巻芯と、該巻芯に巻き付けられた上記[7]又は[8]に記載の接着剤テープと、を備える、リール体。
[10] 第1の電極を有する第1の回路部材と第2の電極を有する第2の回路部材とが接続された回路接続構造体を製造する方法であって、第1の回路部材がシリコン基板を有し、上記[7]に記載の接着剤テープを、基材を有する状態で第1の絶縁性接着剤層がシリコン基板と接するように第1の回路部材にフィルム状接着剤をラミネートする工程と、第1の回路部材と第2の回路部材との間に、基材が剥離されたフィルム状接着剤を介在させ、第1の回路部材及び第2の回路部材を熱圧着して、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続する工程と、を備える、回路接続構造体の製造方法。
[11] 第1の電極を有する第1の回路部材と第2の電極を有する第2の回路部材とが接続された回路接続構造体を製造する方法であって、第1の回路部材がシリコン基板を有し、上記[8]に記載の接着剤テープを、基材を有する状態で第1の絶縁性領域がシリコン基板と接するように第1の回路部材にフィルム状接着剤をラミネートする工程と、第1の回路部材と第2の回路部材との間に、基材が剥離されたフィルム状接着剤を介在させ、第1の回路部材及び第2の回路部材を熱圧着して、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続する工程と、を備える、回路接続構造体の製造方法。
[12] 第1の電極を有する第1の回路部材と、第2の電極を有する第2の回路部材と、第1の回路部材及び第2の回路部材の間に配置され、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続する回路接続部と、を備え、第1の回路部材及び第2の回路部材の少なくとも一方が、シリコン基板を有し、回路接続部が、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤の硬化物を含む、回路接続構造体。
【実施例0130】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0131】
<第2の絶縁性接着剤層の作製>
ウレタン樹脂(商品名:UR4800、東洋紡株式会社製)を30質量部、DCP型アクリレート(製品名:DCP-A、共栄社化学株式会社製)を15質量部、イソシアヌレート型アクリレート(製品名:M-315、東亜合成株式会社製)を15質量部、及び、ラジカル重合開始剤(商品名:パーヘキサ250、日油株式会社製)を5質量部配合し、第2の絶縁性接着剤層の材料を調製した。これを、剥離処理されたPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、60℃のオーブンで3分間乾燥させ、厚み9μmの絶縁性接着剤層2を作製した。
【0132】
<導電性接着剤層の作製>
ウレタン樹脂(商品名:UR8210、東洋紡株式会社製)を50質量部、ポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレート(商品名:WB-351、日立化成株式会社製、分子量:15000)を25質量部、DCP型アクリレート(製品名:DCP-A、共栄社化学株式会社製)を10質量部、イソシアヌレート型アクリレート(製品名:M-315、東亜合成株式会社製)を10質量部、導電粒子を25質量部、及び、ラジカル重合開始剤(商品名:パーヘキサ250、日油株式会社製)を2.5質量部配合し、導電性接着剤層の材料を調製した。これを、剥離処理されたPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、60℃のオーブンで3分間乾燥させ、厚み5μmの導電性接着剤層1を作製した。
【0133】
[接着剤テープの作製]
(実施例1)
<第1の絶縁性接着剤層の作製>
ウレタン樹脂(商品名:UR8210、東洋紡株式会社製)を35質量部、ポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレート(商品名:WB-351、日立化成株式会社製、分子量:15000)を25質量部、DCP型アクリレート(製品名:DCP-A、共栄社化学株式会社製)を13質量部、イソシアヌレート型アクリレート(製品名:M-315、東亜合成株式会社製)を10質量部、及び、ラジカル重合開始剤(商品名:パーヘキサ250、日油株式会社製)を2.5質量部配合し、第1の絶縁性接着剤層の材料を調製した。これを、剥離処理されたPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、60℃のオーブンで3分間乾燥させ、厚み1μmの絶縁性接着剤層Aを作製した。
【0134】
<接着剤テープの作製>
第1の絶縁性接着剤層として絶縁性接着剤層Aと、導電性接着剤層として導電性接着剤層1と、第2の絶縁性接着剤層として絶縁性接着剤層2とを重ね合わせ、50℃に加熱したラミネーターを用いて貼り合わせることで、3層構造を有するフィルム状接着剤を備える接着剤テープを得た。なお、接着剤テープは、PETフィルム/絶縁性接着剤層A/導電性接着剤層1/絶縁性接着剤層2/PETフィルムの構成を有する。
【0135】
(実施例2)
<第1の絶縁性接着剤層の作製>
ウレタン樹脂及びポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレートの配合量をそれぞれ30質量部及び30質量部に変更したこと以外は実施例1の絶縁性接着剤層Aと同様にして、厚み1μmの絶縁性接着剤層Bを作製した。
【0136】
<接着剤テープの作製>
絶縁性接着剤層Aに代えて絶縁性接着剤層Bを重ね合わせたこと以外は実施例1と同様にして、3層構造を有するフィルム状接着剤を備える接着剤テープを得た。なお、接着剤テープは、PETフィルム/絶縁性接着剤層B/導電性接着剤層1/絶縁性接着剤層2/PETフィルムの構成を有する。
【0137】
(実施例3)
<第1の絶縁性接着剤層の作製>
ウレタン樹脂及びポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレートの配合量をそれぞれ30質量部及び40質量部に変更したこと以外は実施例1の絶縁性接着剤層Aと同様にして、厚み1μmの絶縁性接着剤層Cを作製した。
【0138】
<接着剤テープの作製>
絶縁性接着剤層Aに代えて絶縁性接着剤層Cを重ね合わせたこと以外は実施例1と同様にして、3層構造を有するフィルム状接着剤を備える接着剤テープを得た。なお、接着剤テープは、PETフィルム/絶縁性接着剤層C/導電性接着剤層1/絶縁性接着剤層2/PETフィルムの構成を有する。
【0139】
(実施例4)
<第1の絶縁性接着剤層の作製>
ウレタン樹脂及びポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレートの配合量をそれぞれ30質量部及び45質量部に変更し、DCP型アクリレート及びイソシアヌレート型アクリレートの配合量をそれぞれ8質量部及び5質量部に変更したこと以外は実施例1の絶縁性接着剤層Aと同様にして、厚み1μmの絶縁性接着剤層Dを作製した。
【0140】
<接着剤テープの作製>
絶縁性接着剤層Aに代えて絶縁性接着剤層Dを重ね合わせたこと以外は実施例1と同様にして、3層構造を有するフィルム状接着剤を備える接着剤テープを得た。なお、接着剤テープは、PETフィルム/絶縁性接着剤層D/導電性接着剤層1/絶縁性接着剤層2/PETフィルムの構成を有する。
【0141】
(実施例5)
<第1の絶縁性接着剤層の作製>
ウレタン樹脂(商品名:UR8210、東洋紡株式会社製)を30質量部、ポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレート(商品名:UN5500、根上工業株式会社製、分子量:50000)を45質量部、DCP型アクリレート(製品名:DCP-A、共栄社化学株式会社製)を4質量部、イソシアヌレート型アクリレート(製品名:M-315、東亜合成株式会社製)を4質量部、及び、ラジカル重合開始剤(商品名:パーヘキサ250、日油株式会社製)を2.5質量部配合し、第1の絶縁性接着剤層の材料を調製した。これを、実施例1の絶縁性接着剤層Aと同様にして、厚み1μmの絶縁性接着剤層Eを作製した。
【0142】
<接着剤テープの作製>
絶縁性接着剤層Aに代えて絶縁性接着剤層Eを重ね合わせたこと以外は実施例1と同様にして、3層構造を有するフィルム状接着剤を備える接着剤テープを得た。なお、接着剤テープは、PETフィルム/絶縁性接着剤層E/導電性接着剤層1/絶縁性接着剤層2/PETフィルムの構成を有する。
【0143】
(比較例1)
<第1の絶縁性接着剤層の作製>
ウレタン樹脂(商品名:UR8240、東洋紡株式会社製)を60質量部、DCP型アクリレート(製品名:DCP-A、共栄社化学株式会社製)を13質量部、イソシアヌレート型アクリレート(製品名:M-315、東亜合成株式会社製)を10質量部、及び、ラジカル重合開始剤(商品名:パーヘキサ250、日油株式会社製)を2.5質量部配合し、第1の絶縁性接着剤層の材料を調製した。これを、実施例1の絶縁性接着剤層Aと同様にして、厚み1μmの絶縁性接着剤層Fを作製した。
【0144】
<接着剤テープの作製>
絶縁性接着剤層Aに代えて絶縁性接着剤層Fを重ね合わせたこと以外は実施例1と同様にして、3層構造を有するフィルム状接着剤を備える接着剤テープを得た。なお、接着剤テープは、PETフィルム/絶縁性接着剤層F/導電性接着剤層1/絶縁性接着剤層2/PETフィルムの構成を有する。
【0145】
(比較例2)
<絶縁性接着剤層Gの作製>
ウレタン樹脂(商品名:UR8210、東洋紡株式会社製)を60質量部、DCP型アクリレート(製品名:DCP-A、共栄社化学株式会社製)を13質量部、イソシアヌレート型アクリレート(製品名:M-315、東亜合成株式会社製)を10質量部、及び、ラジカル重合開始剤(商品名:パーヘキサ250、日油株式会社製)を2.5質量部配合し、第1の絶縁性接着剤層の材料を調製した。これを、実施例1の絶縁性接着剤層Aと同様にして、厚み1μmの絶縁性接着剤層Gを作製した。
【0146】
<接着剤テープの作製>
絶縁性接着剤層Aに代えて絶縁性接着剤層Gを重ね合わせたこと以外は実施例1と同様にして、3層構造を有するフィルム状接着剤を備える接着剤テープを得た。なお、接着剤テープは、PETフィルム/絶縁性接着剤層G/導電性接着剤層1/絶縁性接着剤層2/PETフィルムの構成を有する。
【0147】
[50℃における溶融粘度]
絶縁性接着剤層A~Gと同じ材料をそれぞれ、剥離処理されたPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、60℃のオーブンで3分間乾燥させ、厚み500μmの絶縁性接着剤層を形成し、これを測定用試料とした。測定用試料について、ティー・エイ・インスツルメント社製の回転式粘弾性測定装置(ARES)を用いて、以下の条件で溶融粘度を測定し、50℃における溶融粘度を求めた。
測定用試料を、直径8cmの2枚の平行板の間に挟み、回転式粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント株式会社製、ARES)を用いて、試験片の溶融粘度(複素粘性率)を測定した。溶融粘度は、Dynamic temperature rampの測定モードで、周波数は10Hzで1%の歪みを与えながら10℃/分の昇温速度で0℃から200℃まで昇温しながら測定された。得られた溶融粘度と温度との関係を示すグラフから、50℃における溶融粘度を求めた。
[測定条件]
測定厚み:400μm
測定温度範囲:0℃~200℃
昇温速度:10℃/min
【0148】
[仮付け性評価]
実施例及び比較例で作製した接着剤テープ(サイズ:0.8mm×40mm)を、PETフィルムを剥離した第1の絶縁性接着剤層側から、シリコン基板に対して、70℃、3秒の条件で1MPaの加重をかけて圧着した。その後、第2の絶縁性接着剤層側のPETフィルムを、90°剥離、剥離速度50mm/分の条件で剥がし、シリコン基板へのフィルム状接着剤の転写状態を観察し、下記判定基準に従って仮付け性を評価した。
[判定基準]
A:剥離性フィルムのみが剥離され、接着層がシリコン基板上に残存した
B:剥離性フィルムに同伴して、接着層の一部がシリコン基板から剥離した
C:剥離性フィルムに同伴して、接着層の大部分がシリコン基板から剥離した
【0149】
1,11,26…フィルム状接着剤、2…第1の絶縁性接着剤層、3…導電性接着剤層、4…第2の絶縁性接着剤層、5…導電粒子、21…リール体、22…巻芯、24,24A,24B…接着剤テープ、25…基材、R…導電性領域、R1…第1の絶縁性領域、R2…第2の絶縁性領域。