(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165291
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】貨物コンテナおよび貨物コンテナ管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20231108BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231108BHJP
B65D 88/12 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J7/00 301D
B65D88/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076151
(22)【出願日】2022-05-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公益社団法人応用物理学会東北支部,2021年(令和3年)応用物理学会東北支部第76回学術講演会予稿集,第92頁~第93頁,令和3年11月25日 2021年(令和3年)応用物理学会東北支部第76回学術講演会,令和3年12月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓樹
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】デトモド ティタポーン
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 健治
(72)【発明者】
【氏名】大坊 真洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 旭飛
【テーマコード(参考)】
3E170
5G503
【Fターム(参考)】
3E170AA21
3E170CA10
3E170CB10
3E170CC02
3E170VA16
3E170VA20
3E170WE01
3E170WE02
3E170WE03
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB03
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】 貨物コンテナへの給電を安定的にかつ継続的に非接触で可能にする。
【解決手段】 貨物コンテナ1において、ベクトルポテンシャルコイル11は、鉄道のトロリー線4またはレール5を導通する交流電流により発生するベクトルポテンシャルを非接触で感受しそのベクトルポテンシャルによって誘起する電流を導通させ、電源装置14は、そのベクトルポテンシャルコイル11に誘起される電流に基づいて電子機器に電力供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道によって輸送される貨物コンテナにおいて、
電子機器と、
前記鉄道のトロリー線またはレールを導通する交流電流により発生するベクトルポテンシャルを非接触で感受し前記ベクトルポテンシャルによる電圧差から生じられた電流を導通させるベクトルポテンシャルコイルと、
前記ベクトルポテンシャルコイルに誘起される電流に基づいて前記電子機器に電力供給する電源装置と、
を備えることを特徴とする貨物コンテナ。
【請求項2】
当該貨物コンテナは、磁気遮蔽性を有する部材で構成され、
前記ベクトルポテンシャルコイルは、当該貨物コンテナ内に配置されていること、
を特徴とする請求項1記載の貨物コンテナ。
【請求項3】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、当該貨物コンテナの妻壁、屋根、および床のいずれかに配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の貨物コンテナ。
【請求項4】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、湾曲したコイル軸に沿って延びているソレノイドコイルであって、前記トロリー線が前記湾曲の内側方向に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の貨物コンテナ。
【請求項5】
前記ベクトルポテンシャルコイルの内部に配置され、前記ベクトルポテンシャルコイルのコイル軸に沿った形状の強磁性体部材をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の貨物コンテナ。
【請求項6】
前記強磁性体部材は、前記湾曲の外側に延びて閉磁路を形成することを特徴とする請求項5記載の貨物コンテナ。
【請求項7】
前記電源装置は、前記電子機器とともに、前記貨物コンテナが載置された台車の電子機器に電力供給することを特徴とする請求項1記載の貨物コンテナ。
【請求項8】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、互いに同一のコイル軸を有する、コイル径の互いに異なる内側ソレノイドコイルおよび外側ソレノイドコイルを備え、
前記内側ソレノイドコイルの一方のコイル端と前記外側ソレノイドコイルの一方のコイル端とが電気的に接続されていること、
を特徴とする請求項1記載の貨物コンテナ。
【請求項9】
前記内側ソレノイドコイルの内部に配置され、前記コイル軸に沿った形状の強磁性体部材をさらに備えることを特徴とする請求項8記載の貨物コンテナ。
【請求項10】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、直線状のコイル軸に沿って巻回されており、また、前記コイル軸の方向に沿って、巻回方向の傾斜角が徐々に変化するように巻回されていることを特徴とする請求項1記載の貨物コンテナ。
【請求項11】
前記ベクトルポテンシャルコイルとともに共振回路を構成するキャパシタをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の貨物コンテナ。
【請求項12】
前記電子機器は、センサと、前記センサの出力に対応する信号を無線送信する無線送信装置とを備えることを特徴とする請求項1記載の貨物コンテナ。
【請求項13】
請求項12記載の貨物コンテナと、
前記貨物コンテナが載置された台車を牽引する機関車に設置された無線受信装置とを備え、
前記無線受信装置は、前記無線送信装置により無線送信された前記信号を受信すること、
を特徴とする貨物コンテナ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物コンテナおよび貨物コンテナ管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある貨物コンテナでは、当該貨物コンテナに着脱可能なスキャンセンサノードで当該貨物コンテナに積み込まれた物品の状態が検出されている(例えば特許文献1参照)。このスキャンセンサノードは、1次電池、2次電池、太陽電池などを含む電源装置を備え、当該電源装置によってこのスキャンセンサノードの内部装置への給電が行われている。
【0003】
他方、ソレノイドコイルを円環状に巻回したベクトルポテンシャルコイルを使用した交流のベクトルポテンシャルの検出装置が開発されている(例えば特許文献2参照)。また、ベクトルポテンシャルが電磁シールドを透過する特性を利用したシールド透過装置が開発されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-23358号公報
【特許文献2】特許第6950925号明細書
【特許文献3】国際公開WO2015/099147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のスキャンセンサノードにおいて、電源装置に1次電池を使用する場合には、1次電池の交換が定期的に必要になり、電源装置に2次電池を使用する場合には、2次電池の充電が定期的に必要になる。太陽電池により発電された電力で2次電池を充電することが可能ではあるが、夜間、雨季など継続的に十分な日射量が得られない場合には、当該スキャンセンサノードが継続的に動作するのは困難である。また、電源装置に2次電池を使用する場合において、充電ステーションで2次電池を充電することも考えられるが、貨物コンテナでの輸送距離が長い場合には、多くの充電ステーションを設置しなければならず、コスト高となってしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、貨物コンテナへの給電を安定的にかつ継続的に非接触で可能にする貨物コンテナおよび貨物コンテナ管理システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る貨物コンテナは、鉄道によって輸送される貨物コンテナであり、電子機器と、その鉄道のトロリー線またはレールを導通する交流電流により発生するベクトルポテンシャルを非接触で感受しそのベクトルポテンシャルによる電圧差から生じられた電流を導通させるベクトルポテンシャルコイルと、そのベクトルポテンシャルコイルに誘起される電流に基づいて電子機器に電力供給する電源装置とを備える。
【0008】
本発明に係る貨物コンテナ管理システムは、上記の貨物コンテナと、その貨物コンテナが載置された台車を牽引する機関車に設置された無線受信装置とを備え、無線受信装置は、無線送信装置により無線送信された信号を受信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、貨物コンテナへの給電を安定的にかつ継続的に非接触で可能にする貨物コンテナおよび貨物コンテナ管理システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る貨物コンテナ管理システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す係る貨物コンテナ管理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11の設置位置の一例について示す正面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11の設置位置の他の例について示す正面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態2に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11および強磁性体部材11Aの一例を示す正面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態3に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11および強磁性体部材11Bの一例を示す正面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態4に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11の一例を示す正面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態5に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11および強磁性体部材11Cの一例を示す正面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態6に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11および強磁性体部材11Dの一例を示す正面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態7に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11の一例を示す正面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態8に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11の一例を示す上面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態9に係る貨物コンテナ1における共振回路について説明する回路図である。
【
図13】
図13は、実施の形態9における電源装置14の出力電圧のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
実施の形態1.
【0013】
図1は、本発明の実施の形態1に係る貨物コンテナ管理システムの構成を示す図である。
図1に示す貨物コンテナ管理システムは、貨物コンテナ1、台車2、機関車3、トロリー線4(架線)、およびレール5を備える。貨物コンテナ1は、交流電化された鉄道によって輸送される貨物コンテナであり、台車2に着脱可能であるが、例えば
図1に示すように、鉄道輸送時には台車2に固定される。例えば、貨物コンテナ1の躯体にはJR貨物の12フィートコンテナ、31フィートコンテナなどの既成の貨物コンテナが使用される。なお、貨物コンテナ1のサイズは、特に限定されるものではない。また、貨物コンテナ1は、トレーラーなどで道路上を輸送されてもよいし、貨物船で海上を輸送されてもよい。機関車3は、パンタグラフをトロリー線4に接触させて、トロリー線4およびレール5を介して受電する交流電力で動作する交流モータ(図示せず)を内蔵し、交流モータの駆動力で、貨物コンテナ1が載置された台車2を牽引しつつレール5上を走行する。
【0014】
図2は、
図1に示す係る貨物コンテナ管理システムの電気的構成を示すブロック図である。
図1および
図2に示すように、貨物コンテナ1は、ベクトルポテンシャルコイル11、センサ12、無線送信装置13、および電源装置14を備える。また、機関車3は、無線受信装置31および制御装置32を備える。
【0015】
ベクトルポテンシャルコイル(以下、VPコイルともいう)11は、鉄道のトロリー線4またはレール5を導通する交流電流により発生するベクトルポテンシャルを非接触で感受しそのベクトルポテンシャルによって誘起する電流を導通させる。
【0016】
なお、上記実施の形態において、機関車3、および貨物コンテナ1が載置された台車2が走行しておらず停車中であっても、トロリー線4に交流電流が導通していれば、VPコイル11において上述の交流電流が誘起される。
【0017】
また、センサ12は、当該貨物コンテナ1の状態を検出するセンサであり、ここでは、貨物コンテナ1の扉1Aの開閉状態を検出する開閉センサである。なお、
図1に示す扉1Aはスライド式の扉であるが回動式の扉でもよい。例えば、貨物コンテナ1の躯体がJR貨物の12フィートコンテナである場合には、扉1Aは回動式である。
【0018】
無線送信装置13は、センサ12の出力(つまり、当該貨物コンテナ1の状態)に対応する信号を無線送信する。無線送信装置13は、貨物コンテナ1の内部に設置されてもよいし、貨物コンテナ1の外部(例えば妻壁上)に設置されてもよい。また、無線送信装置13の図示せぬ送信アンテナのみを貨物コンテナ1の外部(例えば妻壁上)に設置し、無線送信装置13の本体(回路部分など)は貨物コンテナ1の内部に設置するようにしてもよい。ここでは、無線送信装置13は、その信号を機関車の無線受信装置31へ無線送信する。無線受信装置31は、その信号を受信し、制御装置32に出力する。制御装置32は、その信号に基づいて、貨物コンテナ1の状態を運転士に報知したり、その信号を外部へ送信したりする。なお、無線受信装置31および制御装置32は、パンタグラフでトロリー線4を介して供給される電力で動作する。
【0019】
ここで、無線送信装置13および無線受信装置31は、既存の無線通信規格(ブルートゥース(登録商標)、LTEなどの携帯電話通信、無線LAN、LoRaなど)に準拠した送信装置および受信装置である。また、この無線送信装置13は、例えば比較的小型の筐体に収容され、その筐体が貨物コンテナ1の所定位置(例えば妻壁上)に設置される。
【0020】
電源装置14は、VPコイル11に誘起される電流に基づいて、当該貨物コンテナ1に設置された電子機器(ここでは、センサ12および無線送信装置13)に電力供給する。例えば、電源装置14は、AC/DCコンバータ回路およびキャパシタを内蔵し、VPコイル11に誘起された交流電力をAC/DCコンバータ回路で直流電力に変換し、直流電力(電荷)をキャパシタに保持しておき、AC/DCコンバータ回路から出力される直流電力および/またはキャパシタに蓄積された電力を上述の電子機器に供給する。
【0021】
この実施の形態では、当該貨物コンテナ1は、磁気遮蔽性を有する部材(スチール製、ステンレス製などの屋根、妻壁、側壁など)で構成されており、VPコイル11は、当該貨物コンテナ1内に配置されている。
【0022】
図3は、
図1に示す貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11の設置位置の一例について示す正面図である。
図4は、
図1に示す貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11の設置位置の他の例について示す正面図である。
【0023】
例えば
図3および
図4に示すように、この実施の形態では、VPコイル11は、当該貨物コンテナ1の妻壁1Bに配置されている。この実施の形態では、妻壁1Bの内側にVPコイル11が設置されるが、妻壁1Bの外側にVPコイル11を設置してもよい。
【0024】
また、VPコイル11は、例えば
図3に示すように1つのコイルでもよいし、VPコイル11は、例えば
図4に示すように複数のコイル(
図4では3つ)でもよい。複数のVPコイル11を使用する場合には、必要に応じて、複数のVPコイル11は電気的に直列または並列に結線される。複数のVPコイル11は、
図4に示すように水平方向に配列されていてもよいし、垂直方向に配列されていてもよい。また、(例えば後述の
図12のように)電源装置14が複数のVPコイル11に対して複数のAC/DCコンバータ回路をそれぞれ備え、複数のAC/DCコンバータ回路の出力を直列または並列に接続し、直列または並列された出力で、蓄電用のキャパシタや上述の電子機器に電力供給するようにしてもよい。なお、
図4では、3本のVPコイル11が設けられているが、2本でも4本以上でもよい。
【0025】
さらに、この実施の形態では、VPコイル11は、例えば
図3および
図4に示すように、湾曲したコイル軸に沿って延びているソレノイドコイルであって、トロリー線4が、コイル軸の湾曲の内側方向に位置するように配置されている。また、トロリー線4に対する垂直面内でコイル軸(VPコイル11の巻回中心線)が延びるようにVPコイル11が配置されている。ここでは、コイル軸の形状は、開曲線状とされ、VPコイル11の一端から他端までコイル軸の各位置についての、トロリー線4から見た角度が単調に増加または減少するような形状を有する。なお、例えば
図4に示すように、複数のVPコイル11のコイル軸が単一平面内に配置されるように複数のVPコイル11が配置されている場合でも、各VPコイル11のコイル軸は、その一端から他端までコイル軸の各位置についての、トロリー線4から見た角度が単調に増加または減少するような形状を有する。
【0026】
なお、コイル軸の形状は、トロリー線4(つまり、トロリー線4を導通する交流電流)を中心とした円弧状であることが好ましく、また、コイル軸の曲率中心にトロリー線4が配置されるようにVPコイル11が配置されることが好ましい。このため、コイル軸の曲率(曲率半径)は、VPコイル11の設置高さ(つまり、台車2への貨物コンテナ1の載置時のトロリー線4からVPコイル11までの距離)に応じて設定されるようにしてもよい。さらに、VPコイル11は、交流電流(つまり、トロリー線4)から近い位置に配置されるのが好ましく、例えば、トロリー線4から2m以下、あるいは1m以下の位置にVPコイル11が配置される。また、この実施の形態では、コイル軸の円弧の中心角(円弧を外周とした扇形の中心角)が180度以下とされる。この中心角に比例して、感受されるベクトルポテンシャルが大きくなるため、この中心角が大きいほうが好ましい。この中心角は、0度より大きく360度未満のいずれかの角度とされ、さらに、(a)0度より大きく180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(b)0度より大きく90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(c)0度より大きく45度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(d)0.5度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(e)0.5度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(f)0.5度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(e)0.5度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(f)0.5度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(g)2度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(h)2度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(i)2度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(j)2度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(k)2度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(l)5度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(m)5度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(n)5度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(o)5度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(p)5度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよい。
【0027】
なお、コイル軸の形状については円の一部である円弧が理想的な曲線であるが、製造や配置の都合上で、必ずしも円弧である必要はなく、なめらかな曲線の形状であればよく、その凹側(内側)方向にトロリー線4が配置されれば、比較的大きなベクトルポテンシャルを感受できる。
【0028】
ここで、VPコイル11に誘起する交流電流について説明する。交流電流の方向(つまり、トロリー線4の方向)に平行にベクトルポテンシャルが発生し、その交流電流(つまり、トロリー線4)からの距離に反比例して、ベクトルポテンシャルの強度は小さくなる。ベクトルポテンシャルの時間微分が、電界に比例し、その電界を巻線の経路で線積分した結果が誘導電圧になる。そのため、VPコイル11において、トロリー線4に近い部分には高い電圧が、トロリー線4から遠い部分には低い電圧が発生し、それらは同相であるので、両者の電圧差が誘導電圧となり、VPコイル11の巻数を増やせば、それに比例した電圧が発生する。したがって、トロリー線4の交流電流によるベクトルポテンシャルが時間変化することでVPコイル11に交流電流が誘起する。
【0029】
また、上述の特許文献3で示されているようにベクトルポテンシャルの誘導電圧は電磁シールドによって減衰しないため、貨物コンテナ1の躯体(屋根や妻壁など)が磁気遮蔽性を有していても、トロリー線4の交流電流によるベクトルポテンシャルが時間変化することでVPコイル11に交流電流が誘起する。
【0030】
ここで、数式を用いてベクトルポテンシャルに関する理論的な説明を行う。
【0031】
【0032】
この式は、磁束Φの関係式であり、Bは磁束密度であり、∇×AはベクトルポテンシャルAの回転である。最後の項は、ストークスの定理によるものであり、磁束をベクトルポテンシャルで表すことができる。
【0033】
【0034】
この式は、磁束を用いたファラデーの電磁誘導を、ベクトルポテンシャルで表現したものである。ファラデーの電磁誘導は、コイルの内側にある磁束が時間変化すると、それに比例した電圧が発生するというものである。マイナスの符号は、磁束の変化を妨げる方向に電圧が発生するというレンツの法則を意味している。ここで、磁束をベクトルポテンシャルで表すと上述の磁束Φの関係式を用いて周回積分となり、周回積分は閉じた線積分である。しかし、ベクトルポテンシャルで表した場合は、積分経路は必ずしも閉じている必要はなく、線積分の積分経路の長さに応じた電圧が発生する(つまり、周回積分ではなく、角度が0からθまでの周回しない(一周しない)線積分で、その部分の電圧が与えられる)。すなわち、積分経路に開口部があっても電圧が発生する。そのため、コイルの内部に磁束がなくても、ベクトルポテンシャルが誘起されれば、電圧の誘導が可能となる。なお、θはコイル軸による円弧の中心角であり、例えばθがπの時は、出力電圧V2が一周の時の半分になる。
【0035】
次式は、ベクトルポテンシャル収束コイルの形状パラメーターと磁性材料の特性により、トロリー線4に導通する電流からVPコイル11の両端に発生する開放電圧を求める理論式である。ここで、VPコイル11は円弧状であり、トロリー線4が円弧を含む円の中心にあるものとする。
【0036】
【0037】
ここで、V2はVPコイル11の出力電圧であり、NはVPコイル11の巻層数であり、rはVPコイル11の巻線コイル半径であり、dはVPコイル11のコイル線の直径であり、RはVPコイル11の曲げ半径であり、I0はトロリー線4の電流振幅であり、ωは上述の交流電流の角周波数であり、μ0は真空透磁率であり、μreは後述の強磁性体部材の実効比透磁率であり、θはVPコイル11の円弧角度(中心角)であり(0<θ<360[deg])、kは巻線隙間率であり、tは時間である。
【0038】
例えば、この式において、N=2、r=0.1m、d=0.002m、R=0.5m、I0=100A、ω=2π×1000rad/s、μre=100、θ=π/4rad、およびk=0.01の場合、VPコイル11の出力電圧V2(振幅)は、約310Vとなる。
【0039】
また、この式において、N=1、r=0.1m、d=0.002m、R=1m、I0=100A、ω=2π×50rad/s、μre=100、θ=π/4rad、およびk=0.01の場合、VPコイル11の出力電圧V2(振幅)は、約7.7Vとなる。
【0040】
ここで、当該VPコイル11によるベクトルポテンシャルの、電磁シールドの透過についての検証実験の結果について説明する。
【0041】
検証実験では、直線状の導体部分に5Aおよび10kHzの交流電流を導通させ、他の導体部分は1mm厚の鋼管で電磁シールドを施した状態で、直線状の導体部分の垂直面に平行になるようにVPコイル11(中心角:約180度)を配置し、VPコイル11と直線状の導体部分との間に5mm厚の鉄板がある場合およびない場合について、VPコイル11の出力電力を測定した。VPコイル11に接続する負荷抵抗を10.2Ωから50.8Ωまで変化させた際に、42.1~44.1%の電力透過率(シールドなしの場合の出力電力とシールドありの場合の出力電力との比率)が確認された。このように、磁束が遮蔽されている状態でも、ベクトルポテンシャルで電力が伝達されることが確認された。
【0042】
次に、実施の形態1に係る貨物コンテナ管理システム装置の動作について説明する。
【0043】
鉄道のトロリー線4およびレール5には、機関車3に供給される交流電流I(t)の他、他の機関車3や電車に供給される交流電流Io(t)が導通している。そのため、トロリー線4およびレール5には、この交流電流に基づく磁場やベクトルポテンシャルが発生している。
【0044】
そして、貨物コンテナ1がトロリー線4の下に位置するとき、トロリー線4を導通する交流電流I(t),Io(t)によって、VPコイル11の設置位置に、(屋根や妻壁の存在に拘わらず)時間変化するベクトルポテンシャルが発生しており、この時間変化するベクトルポテンシャルによってVPコイル11に交流電流が誘起する。
【0045】
電源装置14は、VPコイル11に誘起した交流電流に基づく交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を、所定の定電圧で、貨物コンテナ1に内蔵される電子機器(ここでは、センサ12および無線送信装置13)に供給する。また、電源装置14は、その直流電力による電荷を内蔵のキャパシタで保持し、VPコイル11から電力が得られない期間においては、キャパシタから得られる電力をその電子機器に供給する。
【0046】
この実施の形態では、無線送信装置13は、電源装置14により供給される電力を使用して、常時または定期的にセンサ12の出力値を示す信号(またはその出力値に対応する信号)を無線通信で機関車3内の無線受信装置31へ送信する。そして、無線受信装置31は、その信号を受信すると、センサ12の出力値を制御装置32に出力し、制御装置32は、そのセンサ12の出力値に対応する各貨物コンテナ1の状態を、機関車3の運転士に報知したり、外部へ送信したりする。
【0047】
以上のように、上記実施の形態1によれば、ベクトルポテンシャルコイル11は、鉄道のトロリー線4またはレール5を導通する交流電流により発生するベクトルポテンシャルを非接触で感受しそのベクトルポテンシャルによって誘起する電流を導通させ、電源装置14は、そのベクトルポテンシャルコイル11に誘起される電流に基づいて電子機器に電力供給する。
【0048】
これにより、貨物コンテナ1への給電が安定的にかつ継続的に非接触で可能となる。
【0049】
実施の形態2.
【0050】
図5は、実施の形態2に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11および強磁性体部材11Aの一例を示す正面図である。
【0051】
実施の形態2では、例えば
図5に示すように、VPコイル11の内部に、強磁性体部材11Aが配置されている。この強磁性体部材11Aは、VPコイル11のコイル軸に沿った形状を有する。また、強磁性体部材11Aは、導電性のある強磁性材料(例えばパーマロイなどといった金属磁性体)の部材であり、強磁性体部材11Aの一方の端部11A1に、VPコイル11の一方のコイル端が電気的に接続されている。これにより、VPコイル11の他方のコイル端、およびその他方のコイル端に近接する強磁性体部材11Aの他方の端部から電源装置14までの2本の配線をまとめて敷設することができ、2本の配線の敷設が簡単になる。
【0052】
具体的には、例えば、VPコイル11は、円弧状に形成された強磁性体部材11Aとしての強磁性体の太線の周囲に細い銅線を巻きつけることで形成されている。
図5に示すように、この細い銅線の一端は、強磁性体部材11A(端部11A1)に電気的に接続され、他端は、一方の端子に接続される。そして、強磁性体部材11Aは、電流の戻り経路を兼ねており、他方の端子に接続される。なお、強磁性体部材11Aの代わりに同様の形状の常磁性体の部材を使用してもよい。強磁性体の場合の方が、実効透磁率に応じてベクトルポテンシャルが増強される。
【0053】
なお、実施の形態2に係る貨物コンテナ1のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0054】
実施の形態3.
【0055】
図6は、実施の形態3に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11および強磁性体部材11Bの一例を示す正面図である。
【0056】
実施の形態3では、例えば
図6に示すように、VPコイル11の内部に、強磁性体部材11Bが配置されている。この強磁性体部材11Bは、VPコイル11のコイル軸に沿った形状を有し、さらに、VPコイル11の湾曲(VPコイル11のコイル軸の部分)の外側に延びて閉磁路を形成している。
【0057】
強磁性体部材11Bは、導電性のある強磁性材料(例えばパーマロイなどといった金属磁性体)の部材であり、VPコイル11の一方のコイル端側の接続点11B1において、VPコイル11の一方のコイル端が、強磁性体部材11Bに電気的に接続されている。
【0058】
また、VPコイル11の他方のコイル端側の接続点11B2において、引き出し線が電気的に接続されており、VPコイル11の他方のコイル端、およびその引き出し線から電源装置14まで2本の配線をまとめて敷設することができ、2本の配線の敷設が簡単になる。
【0059】
なお、この強磁性体部材11Bには、VPコイル11の湾曲の外側においてギャップ11B3が形成されており、ギャップ11B3によって、強磁性体部材11Bにおける、VPコイル11の湾曲の外側の部分を電流が導通しないようになっている。
【0060】
また、強磁性体部材11Bにおける内側部分と外側部分との移行部分は、磁束の漏洩や曲げ加工による透磁率減少の影響を小さくするために、急峻な屈曲箇所のないように、連続的に滑らかな曲線状とされることが好ましい。また、強磁性体部材11Bは複数部材を連結して形成されるようにしてもよい。
【0061】
なお、実施の形態3に係る貨物コンテナ1のその他の構成および動作については実施の形態2と同様であるので、その説明を省略する。
【0062】
実施の形態4.
【0063】
図7は、実施の形態4に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11の一例を示す正面図である。
【0064】
実施の形態4では、例えば
図7に示すように、VPコイル11は、互いに同一のコイル軸を有する、コイル径の互いに異なる内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2を備え、内側ソレノイドコイル11-1の一方のコイル端と外側ソレノイドコイル11-2の一方のコイル端とが電気的に接続されている。内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2は、それぞれ1本のVPコイルとして機能するものであり、したがって、実施の形態4のVPコイル11は、電気的には、2本のVPコイルを同相で直列接続した構成となっている。なお、内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2は、内側ソレノイドコイル11-1によって発生するベクトルポテンシャルおよび磁界と外側ソレノイドコイル11-2によって発生するベクトルポテンシャルおよび磁界とがそれぞれ同一方向となるように巻回され接続されている。
【0065】
したがって、内側ソレノイドコイル11-1の他方のコイル端および外側ソレノイドコイル11-2の他方のコイル端から電源装置14まで2本の配線をまとめて敷設することができ、2本の配線の敷設が簡単になる。
【0066】
なお、実施の形態4に係る貨物コンテナ1のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
実施の形態5.
【0068】
図8は、実施の形態5に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11および強磁性体部材11Cの一例を示す正面図である。
【0069】
実施の形態5では、例えば
図8に示すように、VPコイル11は、実施の形態4と同様の内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2を備える。さらに、実施の形態5では、例えば
図8に示すように、VPコイル11(内側ソレノイドコイル11-1)の内部に、強磁性体部材11Cが配置されている。この強磁性体部材11Cは、上述の強磁性体部材11Aと同様のものである。ただし、VPコイル11と強磁性体部材11Cとは電気的に接続されておらず、強磁性体部材11Cは、導電性を有していなくてもよい。
【0070】
なお、実施の形態5に係る貨物コンテナ1のその他の構成および動作については実施の形態4と同様であるので、その説明を省略する。
【0071】
実施の形態6.
【0072】
図9は、実施の形態6に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11および強磁性体部材11Dの一例を示す正面図である。
【0073】
実施の形態6では、例えば
図9に示すように、VPコイル11は、実施の形態4と同様の内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2を備える。さらに、実施の形態6では、例えば
図9に示すように、VPコイル11(内側ソレノイドコイル11-1)の内部に、強磁性体部材11Dが配置されている。この強磁性体部材11Dは、VPコイル11のコイル軸に沿った形状を有し、さらに、VPコイル11の湾曲(VPコイル11のコイル軸の部分)の外側に延びて閉磁路を形成している。なお、VPコイル11と強磁性体部材11Dとは、電気的に接続されておらず、上述のようなギャップを設ける必要はない。また、強磁性体部材11Dは、導電性を有していなくてもよい。
【0074】
なお、実施の形態6に係る貨物コンテナ1のその他の構成および動作については実施の形態5と同様であるので、その説明を省略する。
【0075】
実施の形態7.
【0076】
図10は、実施の形態7に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11の一例を示す正面図である。
【0077】
実施の形態7では、例えば
図10に示すように、VPコイル11は、直線状のコイル軸に沿って巻回されているが、コイル軸の方向に沿って、巻回方向の傾斜角(コイル軸方向と巻回方向とのなす角度)A0~A5が徐々に変化するように巻回されている。具体的には、VPコイル11の中心の傾斜角が90度となっており、中心から離れるほど、傾斜角が小さくなっている(A0>A1>A2>A3>A4>A5)。これにより、湾曲したVPコイル11と同様に効率的に上述のベクトルポテンシャルを感受できる。
【0078】
なお、実施の形態7に係る貨物コンテナ1のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0079】
実施の形態8.
【0080】
図11は、実施の形態8に係る貨物コンテナ1におけるベクトルポテンシャルコイル11の一例を示す上面図である。
【0081】
実施の形態8では、例えば
図11に示すように、VPコイル11は、直線状のコイル軸に沿って巻回されており、貨物コンテナ1の屋根1C(屋根1Cの内側または外側)に配置されている。なお、この実施の形態では、複数のVPコイル11が配置されており、この複数のVPコイル11は電気的に直列または並列に結線される。また、(例えば後述の
図12のように)電源装置14が複数のVPコイル11に対して複数のAC/DCコンバータ回路をそれぞれ備え、複数のAC/DCコンバータ回路の出力を直列または並列に接続し、直列または並列された出力で、蓄電用のキャパシタや上述の電子機器に電力供給するようにしてもよい。なお、
図11では、4つのVPコイル11が設けられているが、1本~3本のいずれかでもよく、5本以上でもよい。
【0082】
トロリー線4に対する垂直面において、屋根1Cに沿ってコイル軸が延びるように各VPコイル11が配置されており、トロリー線4の方向に沿って、複数のVPコイル11が配置されている。
【0083】
なお、実施の形態8に係る貨物コンテナ1のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0084】
実施の形態9.
【0085】
図12は、実施の形態9に係る貨物コンテナ1における共振回路について説明する回路図である。
【0086】
例えば
図12に示すように、実施の形態9に係る貨物コンテナ1では、VPコイル11に並列にキャパシタC1,C3が接続されている。なお、キャパシタC1,C3は、VPコイル11ごとに設けられており、
図12では、2つのVPコイル11に2つのキャパシタC1,C3がそれぞれ接続されている。
【0087】
また、
図12に示す電源装置14は、各VPコイル11について、全波整流回路(ダイオードD1~D4のダイオードブリッジおよびダイオードD5~D6のダイオードブリッジ)、並びに平滑用のキャパシタC2,C4を備える。そして、2つのVPコイル11の全波整流回路および平滑用のキャパシタC2,C4の出力が直列に接続されており、電源装置14の出力とされている。キャパシタC5は蓄電用のキャパシタであって、キャパシタC5にはスーパーキャパシタなどが使用される。電源装置14の出力電圧は負荷Zに印加される。ここでは、負荷Zは、上述の電子機器である。なお、ここでは、VPコイル11が2個であるが、1個または3個以上でもよく、直列接続する段数が増えるほど高電圧が得られる。なお、上述の全波整流回路は、より低電圧でも動作する能動型のFETブリッジでもよい。
【0088】
ここで、出力電圧のシミュレーション結果について説明する。
図13は、実施の形態9における電源装置14の出力電圧のシミュレーション結果を示す図である。
図13は、一次導線(トロリー線4に相当)とVPコイルとの結合係数が0.1であり、長さLenの一次導線(直線導体)の自己インダクタンスL00(=μ0×Len/8π)が5μHであり、一次導線の交流電流の周波数が1kHzである場合の出力電圧のシミュレーション結果を示している。
図13における破線は、一段目の電圧(ダイオードD3,D4とダイオードD5,D6との接続点の電圧)の時間遷移を示しており、
図13における実線は、電源装置14の出力電圧(つまり、二段目の電圧)の時間遷移を示している。
図13に示すように、段数に応じた直流出力電圧が得られることがわかる。
【0089】
なお、実施の形態9に係る貨物コンテナ1のその他の構成および動作については実施の形態1~8のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。
【0090】
以上のように、上記実施の形態9では、トロリー線4の交流電流の周波数と同一の共振周波数を有する、VPコイル11を含めた共振回路が設けられており、VPコイル11に導通する交流電流を大きくなる。
【0091】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0092】
例えば、上記実施の形態において、電源装置14は、上述の電子機器とともに、貨物コンテナ1が載置された台車2の電子機器に電力供給するようにしてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態において、電源装置14は、AC/DCコンバータ回路、2次電池、および2次電池の充電回路を内蔵し、VPコイル11に誘起された交流電力をAC/DCコンバータ回路で直流電力に変換し、充電回路で、その直流電力に基づき2次電池を充電し、その直流電力および/または2次電池に蓄積された電力を上述の電子機器に供給するようにしてもよい。
【0094】
また、上記実施の形態では、例えば
図3および
図4に示すように、貨物コンテナ1の前方および後方の妻壁の一方に1または複数のVPコイル11が配置されているが、貨物コンテナ1の前方および後方の妻壁の両方に1または複数のVPコイル11を配置してもよい。
【0095】
また、上記実施の形態において、貨物コンテナ1の躯体は、アルミやFRP(Fiber Reinforced Plastics)で構成されていてもよく、また、貨物コンテナ1の躯体がFRPである場合には、妻壁などの躯体にVPコイル11を内蔵させて、躯体と一体的にVPコイル11を形成してもよい。
【0096】
また、上記実施の形態において、VPコイル11は、トロリー線3の交流電流による磁束密度の変化を感受して交流電流を誘起するようにしてもよい。
【0097】
また、上記実施の形態では、VPコイル11は湾曲内側方向にトロリー線4が位置するように配置されているが、その代わりに、VPコイル11の湾曲内側方向にレール5が位置するようにVPコイル11が配置されるようにしてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態では、VPコイル11は妻壁または屋根に配置されているが、その代わりに、床に配置されていてもよい。例えば、VPコイル11が湾曲内側方向にレール5が位置するように配置されるようにして床に配置されるようにしてもよい。
【0099】
また、上記実施の形態4,5では、VPコイル11が、径方向において、内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2の2層構造となっているが、層数が偶数であれば、4層以上の層数でもよい。その場合、すべての層のソレノイドコイル11-iが電気的に直列接続されるように、ソレノイドコイル11-iのいずれかの端部で次層のソレノイドコイル11-(i+1)に接続される。
【0100】
また、上記実施の形態において、無線送信装置13は、上述の無線送信によって、センサ12の出力とともに、当該無線送信装置13が設置されている貨物コンテナ1に固有なコンテナIDを無線受信装置31に通知するようにし、無線受信装置31は、センサ12の出力およびコンテナIDの通知を受信すると、制御装置32に出力し、制御装置32は、コンテナIDに基づき、複数の貨物コンテナ1の状態をそれぞれ個別的に監視するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、例えば、着脱可能な貨物コンテナへの給電に適用可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 貨物コンテナ
1B 妻壁
1C 屋根
2 台車
3 機関車
4 トロリー線
5 レール
11 ベクトルポテンシャルコイル
11A,11B,11C,11D 強磁性体部材
12 センサ
13 無線送信装置
14 電源装置
31 無線受信装置