(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165354
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】シリコーン粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/48 20060101AFI20231108BHJP
C08F 2/22 20060101ALI20231108BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20231108BHJP
C08F 299/08 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C08F2/48
C08F2/22
C08F2/00 Z
C08F299/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076287
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】竹脇 一幸
【テーマコード(参考)】
4J011
4J127
【Fターム(参考)】
4J011AA01
4J011AA05
4J011EC00
4J011KA27
4J011KB25
4J011KB26
4J011KB29
4J011QB25
4J011SA04
4J011SA16
4J011UA01
4J011VA02
4J011WA01
4J011WA02
4J011WA06
4J011WA10
4J127AA04
4J127BA041
4J127BA051
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD291
4J127BG381
4J127BG38X
4J127CA01
4J127EA13
4J127FA07
4J127FA46
(57)【要約】
【課題】表面に親水性基を有するシリコーン粒子を、反応効率を低下させることなく、高効率で製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを含むシリコーン組成物を、水中に分散させた状態で光ラジカル重合させて硬化させるシリコーン粒子の製造方法であって、前記シリコーン組成物の水分散液に光源が触れないように紫外線を照射して前記シリコーン組成物をラジカル乳化重合させるシリコーン粒子の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを含むシリコーン組成物を、水中に分散させた状態で光ラジカル重合させて硬化させるシリコーン粒子の製造方法であって、前記シリコーン組成物の水分散液に光源が触れないように紫外線を照射して前記シリコーン組成物をラジカル乳化重合させることを特徴とするシリコーン粒子の製造方法。
【請求項2】
前記シリコーン粒子を、
下記一般式(1)で表されるジアルキルシロキサン単位と、
R
4
2SiO
2/2 (1)
(式(1)中、R
4は互いに独立に炭素数1~6の1価炭化水素基である。)
下記一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)メチルシロキサン単位と
【化1】
(式(2)中、R
1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は互いに独立に炭素数1~10の2価脂肪族基である。nは1≦n≦50を満たす数である。)
を含み、かつ、表面にオキシアルキレン基を有するものとし、
前記シリコーン組成物を、下記(A)成分~(C)成分を含有するシリコーン組成物とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン粒子の製造方法。
(A)下記一般式(3)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部
【化2】
(式(3)中、R
3は、夫々独立に炭素原子数1~6の1価炭化水素基又は下記一般式(4a)若しくは(4b)で示される基であるが、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。a、b、c、及びdは夫々、2≦a≦10、0≦b≦1,000、0≦c≦5、0≦d≦5の範囲を満たす数である。)
【化3】
(式(4a)及び(4b)中、R
6は水素原子又はメチル基であり、R
1は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は炭素数1~10の2価脂肪族基である。)
(B)下記一般式(5)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーン:0.1-100質量部
【化4】
(式(5)中、R
3は上記の通りであり、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。R
5は、下記一般式(7)で表されるポリオキシアルキレン基である。w、x、x’、y、及びzは夫々、2≦w≦10、1≦x≦1,000、1≦x’≦300、0≦y≦5、0≦z≦5の範囲を満たす数である。)
【化5】
(式(4a)及び(4b)中、R
6、R
1、及びR
2は上記の通りである。)
-R
2O(CR
1HCH
2O)n-R
1 (7)
(式(7)中、R
1、R
2、及びnは上記の通りである。)
(C)光ラジカル重合開始剤:0.1-5質量部
【請求項3】
前記(A)成分として、下記一般式(8)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサンを用いることを特徴とする請求項2に記載のシリコーン粒子の製造方法。
【化6】
(式(8)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、mは0≦m≦1,000を満たす数である。)
【請求項4】
前記(B)成分として、下記一般式(9)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いることを特徴とする請求項2に記載のシリコーン粒子の製造方法。
【化7】
(式(9)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、lは1≦l≦300、m’は1≦m’≦1,000、nは1≦n≦50を満たす数である。)
【請求項5】
前記シリコーン粒子の体積平均粒径を0.1~100μmとすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシリコーン粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性基を有するシリコーン粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、架橋シリコーン粒子が提案されている。さらに、特許文献2には、塗膜に艶消し性を付与するため、このシリコーン粒子を水性塗料組成物に添加することが提案されている。また、特許文献3や特許文献4には、化粧料の使用感を向上させるため、このシリコーン粒子を水性化粧料に添加することが提案されている。
【0003】
従来のシリコーン粒子は疎水性のため、これらの水性組成物にシリコーン粒子を安定に分散させるために、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、またはこれらの混合物からなる界面活性剤が用いられている。
【0004】
しかし、例えば水性塗料組成物用途では界面活性剤による泡立ちの増加やそれによる塗膜への悪影響が、また化粧品用途では皮膚への刺激性が懸念されるため、界面活性剤の使用が敬遠されることがある。
【0005】
これらの問題に対して、特許文献5及び特許文献6では、シリコーン粒子の表面に親水性基を固定化することで、新たに界面活性剤を用いなくても水性組成物中に安定に分散させることができるシリコーン粒子及びその製造方法が提案されている。
【0006】
上述のシリコーン粒子の製造方法は、ラジカル発生剤を用いて、加熱分解法やレドックス反応、光照射によりラジカルを発生させ、ラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサン及び界面活性剤を重合させて架橋・硬化する方法が例示されている。
【0007】
しかし、加熱分解法には、界面活性剤の曇点が低温の場合や、重合前の反応性オルガノポリシロキサンを含むエマルジョンの安定性が悪い場合には、ラジカル発生剤の分解温度まで加温することができないといった問題がある。
【0008】
一方で、レドックス反応を用いた重合法は低温下でもラジカルを発生できるため、界面活性剤の曇点が低温の場合や、反応性オルガノポリシロキサンを含むエマルジョンの安定性が悪い場合でも重合反応を開始することができ、上述のシリコーン粒子の製造にも有効であるが、ラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサンの構造によっては重合度が十分に上がらないという問題がある。
【0009】
光照射による重合法は、紫外線などの光の照射により低温下でもラジカルを発生できる光ラジカル重合開始剤を用いた方法で、上述のシリコーン粒子の製造に有効である。
【0010】
光ラジカル重合開始剤に紫外線を照射するためには、一般的には高圧水銀ランプやメタルハライドランプ、UV-LEDなどの光源を含む装置を用いており、反応液が基板などに薄く塗工されるコーティング剤や接着剤、インクなどの場合は、前述の光源を含む装置を反応液に直接触れない形で設置して照射するのが一般的である。
【0011】
一方で、乳化重合によるシリコーン粒子の製造の場合は、光を高効率で照射するために前述の光源を含む装置を反応液に直接触れる形で設置して照射している。具体例としては特許文献5に記載の、(株)テクノシグマの光化学反応用LED光源(365nm波長;507mW)のプローブを溶液に差し込んで照射する方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11-140191号公報
【特許文献2】特開平05-009409号公報
【特許文献3】特開平10-139624号公報
【特許文献4】特開平10-175816号公報
【特許文献5】特開2021-88680号公報
【特許文献6】特開2021-88682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術では、紫外線などの光の照射により低温下でもラジカルを発生できる光ラジカル重合開始剤を用いる方法でのシリコーン粒子の製造においては、硬化後の生成物が光源を含む装置の表面(プローブ)に付着して反応効率を低下させることがあり、光源を含む装置の表面から硬化生成物を定期的に除去するなどの作業が必要であった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、表面に親水性基を有するシリコーン粒子を、反応効率を低下させることなく、高効率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明では、
ラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを含むシリコーン組成物を、水中に分散させた状態で光ラジカル重合させて硬化させるシリコーン粒子の製造方法であって、前記シリコーン組成物の水分散液に光源が触れないように紫外線を照射して前記シリコーン組成物をラジカル乳化重合させるシリコーン粒子の製造方法を提供する。
【0015】
このようなシリコーン粒子の製造方法であれば、光源を含む装置の表面から硬化生成物を定期的に除去するなどの作業が不要であるため、表面に親水性基を有するシリコーン粒子を、反応効率を低下させることなく、高効率で製造することができる。
【0016】
また、本発明は、
前記シリコーン粒子を、
下記一般式(1)で表されるジアルキルシロキサン単位と、
R
4
2SiO
2/2 (1)
(式(1)中、R
4は互いに独立に炭素数1~6の1価炭化水素基である。)
下記一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)メチルシロキサン単位と
【化1】
(式(2)中、R
1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は互いに独立に炭素数1~10の2価脂肪族基である。nは1≦n≦50を満たす数である。)
を含み、かつ、表面にオキシアルキレン基を有するものとし、
前記シリコーン組成物を、下記(A)成分~(C)成分を含有するシリコーン組成物とするシリコーン粒子の製造方法を提供することができる。
(A)下記一般式(3)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部
【化2】
(式(3)中、R
3は、夫々独立に炭素原子数1~6の1価炭化水素基又は下記一般式(4a)若しくは(4b)で示される基であるが、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。a、b、c、及びdは夫々、2≦a≦10、0≦b≦1,000、0≦c≦5、0≦d≦5の範囲を満たす数である。)
【化3】
(式(4a)及び(4b)中、R
6は水素原子又はメチル基であり、R
1は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は炭素数1~10の2価脂肪族基である。)
(B)下記一般式(5)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーン:0.1-100質量部
【化4】
(式(5)中、R
3は上記の通りであり、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。R
5は、下記一般式(7)で表されるポリオキシアルキレン基である。w、x、x’、y、及びzは夫々、2≦w≦10、1≦x≦1,000、1≦x’≦300、0≦y≦5、0≦z≦5の範囲を満たす数である。)
【化5】
(式(4a)及び(4b)中、R
6、R
1、及びR
2は上記の通りである。)
-R
2O(CR
1HCH
2O)n-R
1 (7)
(式(7)中、R
1、R
2、及びnは上記の通りである。)
(C)光ラジカル重合開始剤:0.1-5質量部
【0017】
このようなシリコーン粒子の製造方法であれば、界面活性剤の曇点が低温の場合や反応性オルガノポリシロキサンのエマルジョンの安定性が悪い場合であっても、新たに界面活性剤を用いなくても水性組成物中に安定に分散させることが可能な、表面に親水性基を有するシリコーン粒子を容易に製造することができる。
【0018】
また、前記(A)成分として、下記一般式(8)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。
【化6】
(式(8)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、mは0≦m≦1,000を満たす数である。)
【0019】
このような(A)成分であれば、表面に親水性基を有するシリコーン粒子を好適に製造できる。
【0020】
また前記(B)成分として、下記一般式(9)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いることが好ましい。
【化7】
(式(9)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、lは1≦l≦300、m’は1≦m’≦1,000、nは1≦n≦50を満たす数である。)
【0021】
このような(B)成分であれば、表面に親水性基を有するシリコーン粒子を好適に製造できる。
【0022】
また、前記シリコーン粒子の体積平均粒径を0.1~100μmとすることが好ましい。
【0023】
本発明で製造するシリコーン粒子をこのような体積平均粒径とすることにより、水性の材料における分散性をよりよいものとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のシリコーン粒子の製造方法によれば、前述の光源を含む装置を反応液に直接触れない形で設置して紫外線を照射することにより、光源を含む装置の表面から硬化生成物を定期的に除去するなどの作業が不要で、また反応効率を低下させることなく、高効率で表面に親水性基を有するシリコーン粒子を得ることができる。
【0025】
また、本発明のシリコーン粒子の製造方法であれば、界面活性剤の曇点が低温の場合や反応性オルガノポリシロキサンのエマルジョンの安定性が悪い場合であっても、新たに界面活性剤を用いなくても水性組成物中に安定に分散させることができ、表面に親水性基を有するシリコーン粒子を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明のシリコーン粒子の製造方法の一例を示す概略図である。
【
図2】従来のシリコーン粒子の製造方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上述のように、新たに界面活性剤を用いなくても水性組成物中に安定に分散させることができ、表面に親水性基を有するシリコーン粒子を、反応効率を低下させることなく、高効率で製造する方法の開発が求められていた。
【0028】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを乳化剤として使用し、ラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサンを乳化してエマルジョンを作製し、このエマルジョンを光ラジカル重合開始剤を用いて水分散液に光源が触れないように紫外線を照射して乳化重合、架橋することによって、表面に親水性基を有するシリコーン粒子が得られ、得られたシリコーン粒子はべたつきが無く、容易に水に分散させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0029】
即ち、本発明は、
ラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを含むシリコーン組成物を、水中に分散させた状態で光ラジカル重合させて硬化させるシリコーン粒子の製造方法であって、前記シリコーン組成物の水分散液に光源が触れないように紫外線を照射して前記シリコーン組成物をラジカル乳化重合させるシリコーン粒子の製造方法である。
【0030】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
[シリコーン粒子の製造方法]
本発明のシリコーン粒子の製造方法は、ラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを含むシリコーン組成物を、水中に分散させた状態で水分散液に光源が触れないように紫外線を照射してシリコーン組成物をラジカル乳化重合させることによりシリコーン粒子を得る方法である。
【0032】
ラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを、本発明で使用するシリコーン組成物に含むことで、エマルジョンの乳化安定性を向上させることができる。また、それとともに、製造した親水性シリコーン粒子の表面に固定される界面活性剤を非イオン性界面活性剤とすることができる。これにより、特性がよい親水性シリコーン粒子を得ることができる。
【0033】
上記シリコーン組成物に含まれるポリオキシアルキレン変性シリコーンが、ラジカル重合性基を有しないものであると、得られるシリコーン粒子は、単独で水に分散することができないものとなる。
【0034】
本発明のシリコーン粒子の製造方法であれば、光源を含む装置の表面から硬化生成物を定期的に除去するなどの作業が不要であるため、表面に親水性基を有するシリコーン粒子を、反応効率を低下させることなく、高効率で製造することができる。
【0035】
また、本発明のシリコーン粒子の製造方法として、
前記シリコーン粒子を、下記一般式(1)で表されるジアルキルシロキサン単位と、
R
4
2SiO
2/2 (1)
(式(1)中、R
4は互いに独立に炭素数1~6の1価炭化水素基である。)
下記一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)メチルシロキサン単位と
【化8】
(式(2)中、R
1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は互いに独立に炭素数1~10の2価脂肪族基である。nは1≦n≦50を満たす数である。)
を含み、かつ、表面にオキシアルキレン基を有するものとし、
上記シリコーン組成物を、下記(A)成分~(C)成分を含有するシリコーン組成物とするシリコーン粒子の製造方法を用いることが好ましい。
(A)下記一般式(3)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部
【化9】
(式(3)中、R
3は、夫々独立に炭素原子数1~6の1価炭化水素基又は下記一般式(4a)若しくは(4b)で示される基であるが、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。a、b、c、及びdは夫々、2≦a≦10、0≦b≦1,000、0≦c≦5、0≦d≦5の範囲を満たす数である。)
【化10】
(式(4a)及び(4b)中、R
6は水素原子又はメチル基であり、R
1は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は炭素数1~10の2価脂肪族基である。)
(B)下記一般式(5)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーン:0.1-100質量部
【化11】
(式(5)中、R
3は上記の通りであり、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。R
5は、下記一般式(7)で表されるポリオキシアルキレン基である。w、x、x’、y、及びzは夫々、2≦w≦10、1≦x≦1,000、1≦x’≦300、0≦y≦5、0≦z≦5の範囲を満たす数である。)
【化12】
(式(4a)及び(4b)中、R
6、R
1、及びR
2は上記の通りである。)
-R
2O(CR
1HCH
2O)n-R
1 (7)
(式(7)中、R
1、R
2、及びnは上記の通りである。)
(C)光ラジカル重合開始剤:0.1-5質量部
【0036】
以下、上記(A)~(C)成分について説明する。
【0037】
[(A)成分]
まず、(A)成分は、下記一般式(3)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサンである。
【化13】
(式(3)中、R
3は、夫々独立に炭素原子数1~6の1価炭化水素基又は下記一般式(4a)若しくは(4b)で示される基であるが、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。a、b、c、及びdは夫々、2≦a≦10、0≦b≦1,000、0≦c≦5、0≦d≦5の範囲を満たす数である。)
【化14】
(式(4a)及び(4b)中、R
6は水素原子又はメチル基であり、R
1は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は炭素数1~10の2価脂肪族基である。)
【0038】
上記のように、一般式(3)におけるR3は、夫々独立に炭素原子数1~6の1価炭化水素基又は一般式(4a)若しくは(4b)で示される基である。該1価炭化水素基としては、直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル及びシクロヘキシル等のアルキル基や、フェニル基等のアリール基などが挙げられる。これらの1価炭化水素基の中でも、炭素原子数1~6のアルキル基及びアリール基が好ましく、メチル基、エチル基、及びフェニル基がより好ましい。
【0039】
また、上記一般式(3)中のR3のうち少なくとも1つは、上記式(4a)又は(4b)で示される基である。上記式(4a)又は(4b)におけるR6は水素原子又はメチル基である。また、上記式(4b)におけるR1は、水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル及びシクロヘキシル等のアルキル基や、フェニル基等のアリール基などが挙げられる。これらの1価炭化水素基の中でも、炭素原子数1~6のアルキル基及びアリール基が好ましく、メチル基、エチル基、及びフェニル基がより好ましい。また、上記式(4a)又は(4b)におけるR2は、炭素原子数1~10の2価脂肪族基であり、直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、及びプロピレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。
【0040】
R3中、上記式(4a)又は(4b)で示される基の数は、1つ以上であれば特に限定されないが、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個、極めて好ましくは2個である。
【0041】
aは、2≦a≦10を満たす数であり、好ましくは2≦a≦4、より好ましくは2≦a≦3、さらに好ましくはa=2である。aが2以上であれば、(A)成分の粘度が高くなりすぎず作業性が良好なものとなる。またaが10以下であれば、(A)成分の粘度が低くなりすぎず得られるシリコーン粒子の性能が良好となる。
【0042】
bは、0≦b≦1,000を満たす数であり、好ましくは5≦b≦500、より好ましくは10≦b≦500、さらに好ましくは10≦b≦300、きわめて好ましくは10≦b≦200である。bが1,000以下であれば、(A)成分の粘度が高くなりすぎず作業性が良好なものとなる。
【0043】
cは、0≦c≦5を満たす数であり、好ましくはc=0である。cが5以下であれば、(A)成分の粘度が高くなりすぎず作業性が良好なものとなる。
【0044】
dは、0≦d≦5を満たす数であり、好ましくはd=0である。dが5以下であれば、(A)成分の粘度が高くなりすぎず作業性が良好なものとなる。
【0045】
a、b、c、及びdの値は、例えば29Si-NMR測定などにより平均値として算出できる。
【0046】
(A)成分としては、下記一般式(8)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。
【化15】
(式(8)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、mは0≦m≦1,000を満たす数である。)
【0047】
上記一般式(8)中、R2、R6は上記式(3)、(4a)、(4b)で説明したものと同じである。mは、0≦m≦1000を満たす数であり、好ましくは5≦m≦500、より好ましくは10≦m≦500、さらに好ましくは10≦m≦300、きわめて好ましくは10≦m≦200である。
【0048】
また、(A)成分のオルガノポリシロキサンの例としては、例えば下記式の化合物を挙げることができる。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
[(B)成分]
次に、(B)成分は、下記一般式(5)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンである。
【0056】
【化22】
(式(5)中、R
3は上記の通りであり、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。R
5は、下記一般式(7)で表されるポリオキシアルキレン基である。w、x、x’、y、及びzは夫々、2≦w≦10、1≦x≦1,000、1≦x’≦300、0≦y≦5、0≦z≦5の範囲を満たす数である。)
【0057】
【化23】
(式(4a)及び(4b)中、R
6、R
1、及びR
2は上記の通りである。)
-R
2O(CR
1HCH
2O)n-R
1 (7)
(式(7)中、R
1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は互いに独立に炭素数1~10の2価脂肪族基である。nは1≦n≦50を満たす数である。)
【0058】
(B)成分である、ラジカル重合性基(ラジカル重合反応性基)を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンは、上記(A)成分を水中に乳化分散でき、ラジカル重合性基を有するものである。すなわち、(B)成分は、反応において、界面活性剤としても作用すると言える。この(B)成分(界面活性剤)は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0059】
上記式(5)、(4a)、(4b)中、R1、R2、R3、R6は(A)成分のところで説明したものと同じである。またR3中、上記式(4a)又は(4b)で示される基の数は、1つ以上であれば特に限定されないが、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個、極めて好ましくは2個である。
【0060】
wは、2≦w≦10を満たす数であり、好ましくは2≦w≦4、より好ましくは2≦w≦3であり、さらに好ましくはw=2である。wが2以上であれば、(b)成分の粘度が高くなりすぎず作業性が良好なものとなる。wが10以下であれば、(A)成分を乳化するのに必要な乳化性が得られる。
【0061】
xは、1≦x≦1,000を満たす数であり、好ましくは5≦x≦500、より好ましくは10≦x≦300である。xが1,000以下であれば、粘度が高くなり過ぎず、作業性が良好なものとなる。
【0062】
x’は、1≦x’≦300を満たす数であり、好ましくは1≦x’≦100、より好ましくは1≦x’≦50であり、さらに好ましくは1≦x’≦10、きわめて好ましくは3≦x’≦5である。x’が300以下であれば、(A)成分を乳化するのに適当な親水性/疎水性のバランスを保つことができる。
【0063】
yは、0≦y≦5を満たす数であり、好ましくはy=0である。yが5以下であれば、(B)成分の粘度が高くなりすぎず作業性が良好なものとなる。
【0064】
zは、0≦z≦5を満たす数であり、好ましくはz=0である。zが5以下であれば、(B)成分の粘度が高くなりすぎず作業性が良好なものとなる。
【0065】
またR5である上記式(7)中、R1、R2は、後述するシリコーン粒子の一般式(2)中のR1、R2と同じである。
nは、1≦n≦50を満たす数であり、好ましくは2≦n≦48、より好ましくは2≦n≦46、さらに好ましくは3≦n≦45である。nが50以下であれば、(A)成分を乳化するのに適当な親水性/疎水性のバランスを保て、常温で液状になり作業性も良好になる。
【0066】
(B)成分として、下記一般式(9)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いることが好ましい。
【0067】
【化24】
(式(9)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、lは1≦l≦300、m’は1≦m’≦1,000、nは1≦n≦50を満たす数である。)
【0068】
lは、1≦l≦300を満たす数であり、好ましくは1≦l≦100、より好ましくは1≦l≦50であり、さらに好ましくは1≦l≦10、きわめて好ましくは3≦l≦5である。lが300以下であれば、(A)成分を乳化するのに適当な親水性/疎水性のバランスを保つことができる。
【0069】
m’は、1≦m’≦1,000を満たす数であり、好ましくは5≦m’≦500、より好ましくは10≦m’≦300である。m’が1,000以下であれば、粘度が高くなり過ぎず作業性が良好なものとなる。
【0070】
nは、1≦n≦50を満たす数であり、好ましくは2≦n≦48、より好ましくは2≦n≦46、さらに好ましくは3≦n≦45である。nが50以下であれば、(A)成分を乳化するのに適当な親水性/疎水性のバランスを保つことができ、常温で液状になり作業性にも優れるものとなる。
【0071】
また、(B)成分であるポリオキシアルキレン変性シリコーンの例としては、例えば下記式の化合物を挙げることができる。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【化28】
(上記式中、(C
3H
6O)は、(CH(CH
3)CH
2O)を表す。)
【0076】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1-100質量部の範囲内であり、好ましくは5-15質量部の範囲内である。(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量が0.1質量部以上であれば、得られる架橋シリコーン粒子の水分散性が低下せず、100質量部以下であれば、得られるシリコーン粒子が小さくなりすぎない。
【0077】
[(C)光ラジカル重合開始剤]
上記(C)成分である光ラジカル重合開始剤は、紫外線などの光を照射することによってラジカルが発生し、重合を開始させて上記シリコーン組成物を硬化させることができる。
【0078】
光ラジカル重合開始剤としては、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF製Irgacure 651)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF製Irgacure 184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF製Irgacure 1173)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチループロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF製Irgacure 127)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(BASF製Irgacure MBF)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(BASF製Irgacure 907)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(BASF製Irgacure 369)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(BASF製Irgacure 819)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(BASF製Irgacure TPO)及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0079】
上記(C)成分のうち、(A)成分との相溶性の観点から好ましいのは、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF製Irgacure 1173)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(BASF製Irgacure 819)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(BASF製Irgacure TPO)である。
【0080】
上記(C)成分の添加量は、(A)100質量部に対して、0.1-5質量部の範囲で配合され、好ましくは0.2-3質量部の範囲である。0.1質量部以上であれば硬化性が十分であり、5質量部以下であれば重合時のエマルジョンの安定性不良等の問題、及びその反応残渣等の混入(コンタミネーション)によるシリコーン粒子の臭いや特性低下等の問題が起こらない。
【0081】
本発明のシリコーン粒子の製造方法では、上記(A)~(C)成分の水中分散液を調製した後に紫外線を照射してラジカル重合してもよく、(A)成分及び(C)成分の水中分散液を調製した後に(B)成分を添加してもよく、また(A)成分及び(B)成分の水中分散液を調製した後に(C)成分を添加し、紫外線を照射してラジカル重合してもよい。
【0082】
[その他の添加剤]
本発明のシリコーン粒子の製造方法で用いるエマルジョンには、上記(A)~(C)成分以外に、目的に応じて、種々の添加剤を配合することができる。例えば、増粘剤、防腐剤、pH調整剤、酸化防止剤、重合禁止剤等が挙げられ、それぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて、適量用いることができる。
【0083】
また、分散媒である水の添加量は、(A)成分100質量部に対して20~1500質量部の範囲内であることが好ましい。
【0084】
上記の(A)~(C)成分を含有するラジカル重合性シリコーン組成物を水に均一に分散させるために一般的な乳化分散機を用いることができる。この乳化分散機としては、ホモミキサー、パドルミキサー、ヘンシェルミキサー、ホモディスパー、コロイドミル、プロペラ攪拌機、ホモジナイザー、インライン式連続乳化機、超音波乳化機、真空式練合機が例示される。
【0085】
このようにして得られるエマルジョンをラジカル重合させることにより、シリコーン粒子の分散液を調製することができる。重合温度としては特に限定はされないが、例えば0~50℃、好ましくは10~40℃、より好ましくは20~30℃である。
【0086】
このとき、上記シリコーン組成物の水分散液に光源が触れないように紫外線を照射してラジカル乳化重合させる。従来の光ラジカル重合では、
図2に示すように、LED発光部2を有するプローブをエマルジョン1に差し込んだ状態でLED発光部2から紫外線を照射する。これに対し本発明では、例えば
図1に示すように、フラスコ上部にLED発光部2を取り付け、エマルジョン1の上部から紫外線を照射する。したがって本発明では、光源であるLED発光部2が水分散液に触れないので、LED発光部に硬化物が付着して反応効率が低下することがない。なお、水分散液に光源が触れないように紫外線を照射する方法は、
図1の態様に限定されない。
【0087】
次いで、この分散液またはスラリーから水及び未反応の(B)成分及び(C)成分の反応残渣等を除去することによりシリコーン粒子を得ることができる。
【0088】
水及び未反応の(B)成分及び(C)成分の反応残渣等の除去方法としては、例えば、加熱脱水、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の方法により分散液を濃縮した後、目的に応じて水洗を行ない、さらに常圧もしくは減圧下で加熱乾燥する方法、加熱気流中に分散液を噴霧して加熱乾燥する方法、又は流動熱媒体を使用して加熱乾燥する方法が挙げられる。また、分散液を凝固させてから減圧し分散媒を除去する方法として、凍結乾燥も挙げられる。分散媒を除去して得られる架橋シリコーン粒子が凝集している場合には、それを乳鉢等やジェットミル等で粉砕してもよい。
【0089】
[シリコーン粒子]
本発明のシリコーン粒子の製造方法により得られるシリコーン粒子について詳細に説明する。
【0090】
本発明のシリコーン粒子の製造方法により得られるシリコーン粒子は、ラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを含むシリコーン組成物を、水中に分散させた状態で紫外線を照射して光ラジカル重合させて硬化させて得られるシリコーン粒子である。
【0091】
また、本発明のシリコーン粒子の製造方法により得られるシリコーン粒子は、下記一般式(1)で表されるジアルキルシロキサン単位と、
R
4
2SiO
2/2 (1)
(式(1)中、R
4は互いに独立に炭素数1~6の1価炭化水素基である。)
下記一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)メチルシロキサン単位と
【化29】
(式(2)中、R
1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は互いに独立に炭素数1~10の2価脂肪族基である。nは1≦n≦50を満たす数である。)
を含み、かつ、表面にオキシアルキレン基を有するものであることが好ましい。
【0092】
上記のように、一般式(1)中、R4は互いに独立に炭素数1~6の1価炭化水素基である。R4として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等のアルキル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基、並びに、フェニル基等のアリール基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。
【0093】
また、上記のように、一般式(2)中、R1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基である。R1の炭素数1~6の1価炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が例示され、R1は、好ましくは、水素原子、メチル基である。
【0094】
また、上記のように、一般式(2)中、R2は互いに独立に炭素数1~10の2価脂肪族基である。R2として、具体的には、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等のアルキレン基であり、好ましくは、エチレン基、プロピレン基である。
【0095】
また、一般式(2)中、nは1≦n≦50を満たす数であり、好ましくは、3≦n≦45である。
【0096】
このようなシリコーン粒子は、水性の材料に、分散剤、界面活性剤を使用することなく、容易に分散し得るシリコーン粒子とすることができる。このようなシリコーン粒子は、表面にオキシアルキレン基を有するため、特性がよい親水性シリコーン粒子とすることができる。具体的には、より親水性が高く、皮膚への刺激性の低い、化粧料に好適なものとなる。また、シリコーン粒子の使用時の配合組成において、陰イオン性界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤との組み合わせに制限が無くなる。
【0097】
なお、本発明により得られるシリコーン粒子は、界面活性剤を別途添加することなく水性の材料に容易に分散できるものであるが、目的に応じて、任意でシリコーン粒子に界面活性剤を併用することができる。
【0098】
本発明のシリコーン粒子の製造方法では、上記(B)成分が界面活性剤兼モノマーとして作用し得、水中油滴型エマルジョン(O/W型)を形成することができる。エマルジョン中では、上記(B)成分中の親水性のオキシアルキレン基は水相側(外層側)に配向しており、エマルジョン中で硬化反応が進行するため、硬化後も親水性のオキシアルキレン基の配向を維持することができ、シリコーン粒子の表面(外層側)にオキシアルキレン基を有する構造となり得ると考えられる。
【0099】
上記のように、本発明により得られるシリコーン粒子は、表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジアルキルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子である。シリコーン粒子の体積平均粒径は0.1~100μmであることが好ましく、0.5~40μmがより好ましく、1~20μmがさらに好ましく、1~10μmがきわめて好ましい。シリコーン粒子の体積平均粒径が0.1μm以上であると、凝集性が高すぎず、分散媒に対して一次粒子にまで容易に分散し得る。また、シリコーン粒子の体積平均粒径が100μm以下であれば、幅広い用途に使用できる。すなわち、シリコーン粒子の体積平均粒径が0.1~100μmであると、分散性がよく、化粧料や水性の塗料やインキなど様々な用途に使用できる。
【0100】
なお、シリコーン球状粒子の体積平均粒径は、その粒径に応じて、顕微鏡法、光散乱法、レーザー回折法、液相沈降法、電気抵抗法等から適宜選択された方法により測定される。例えば、0.1μm以上1μm未満の場合は光散乱法、1~100μmの範囲は電気抵抗法で測定すればよい。また、本明細書において、「球状」とは、粒子の形状が、真球だけを意味するものではなく、最長軸の長さ/最短軸の長さ(アスペクト比)が平均して、通常、1~4、好ましくは、1~2、より好ましくは、1~1.6、さらにより好ましくは、1~1.4の範囲にある、変形した楕円体も含むことを意味する。粒子の形状は、粒子を光学顕微鏡や電子顕微鏡にて観察することにより確認することができる。
【0101】
また、本発明のシリコーン粒子の製造方法によって製造されるシリコーン粒子は、粒子表面にポリオキシアルキレン基がラジカル重合による化学結合で固定されている。また、原料としてラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いているので、粒子表面にオキシアルキレン基を有するシリコーン粒子となる。このような、粒子表面に固定されたポリオキシアルキレン基は、重水によるNMR分析で確認できる。
【0102】
本発明で製造されるシリコーン粒子は、べたつきがないことが好ましく、そのゴム硬度は、JISK6253に規定されているタイプAデュロメーターによる測定で、5~90が好ましく、より好ましくは10~60の範囲である。ゴム硬度が5以上であれば、そのようなシリコーン粒子は、凝集性が高くなりすぎず、分散媒に対して一次粒子にまで分散しやすい。また、ゴム硬度が90以下であれば、シリコーン粒子の弾性的な特徴を有したままとすることができる。
【0103】
本発明のシリコーン粒子の製造方法で得られるシリコーン粒子は、ゴム弾性を有し、凝集性が低く、水分散性が高いため、水性化粧料、水性塗料、プリント基板、接着剤等に有用である。
【0104】
また本発明のシリコーン粒子の製造方法により得られるシリコーン粒子は、表面にオキシアルキレン基(親水基)を有するため、水性の材料に、分散剤、典型的には界面活性剤を使用することなく、容易に分散し得る。例えば、スキンケア化粧料、メークアップ化粧料、制汗化粧料、紫外線防御化粧料等の皮膚に外用される水性の化粧料用途においては、シリコーン粒子を配合するために別途界面活性剤を使用する必要がないため、皮膚刺激性の心配がない製品とすることができる。また、水性の塗料やインキにおいては、シリコーン粒子の分散用に界面活性剤を追加添加する必要がなく、塗膜強度の低下や気泡が抜け難くなる問題が低減できる。
【実施例0105】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中、動粘度は25℃においてオストワルド粘度計により測定した値であり、濃度及び含有率を表す「%」は「質量%」を示す。また、分散性の評価は各例中で説明した通りに行った。
【0106】
[実施例1]
下記式(10)で示される、動粘度が180mm2/sの二官能性メタクリルポリシロキサン((A)成分):150gと、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF製Irgacure 1173)((C)成分の光ラジカル重合開始剤):1.5gとを容量0.5リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて4000rpmで5分間攪拌溶解させた。次いで、下記式(11)で示される、動粘度が160mm2/s、1%水溶液での曇点65℃の二官能性メタクリルポリエチレングリコール変性ポリシロキサン((B)成分):15gと水:30gを加え、ホモミキサーを用いて7000rpmで攪拌したところ、水中油滴型となり、増粘が認められ、さらに15分間攪拌を継続した。次いで、2000rpmで攪拌しながら、水103.5gを加え希釈した。100MPaの圧力の条件でホモジナイザーに通し、均一な白色エマルジョンを得た。
【0107】
【0108】
このエマルジョンを錨型攪拌翼による攪拌装置の付いた容量0.5リットルのガラスフラスコ内で、20~25℃に温調した後、(株)ユーテクノロジー社製のダイレクトフラットUV照明(商品名:UDR-35UV70-F-365;365nm波長;8.6W)を用いて、
図1に示すようにエマルジョンの上部より照射を開始した。同温度で6時間撹拌しながら照射を続けることで、シリコーン粒子の水分散液を得た。
【0109】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.3μmであった。
【0110】
シリコーン粒子の水分散液約300gを錨型攪拌翼による攪拌装置の付いた容量2リットルのガラスフラスコに移し、水:950g、硫酸ナトリウム:50gの水溶液を添加し、30分間攪拌を行った後、下層の洗浄水を除いた。再び、水:950g、硫酸ナトリウム:50gの水溶液を添加し、30分間攪拌を行った後、下層の洗浄水を除き、シリコーン粒子の水分散液を得た。さらに70℃の温水1000gで2回水洗して得た、約15%のシリコーン粒子の水分散液を凍結乾燥させ、べたつきの無い白色のシリコーン粒子を得た。
【0111】
得られたシリコーン粒子を界面活性剤を用いずに水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーン粒子の水分散液と同等で、体積平均粒径は2.3μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認された。このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基が検出され、シリコーン粒子の表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジメチルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子と判断された。
【0112】
[実施例2]
実施例1で用いた構造式(10)の二官能性メタクリルポリシロキサンの代わりに下記式(12)で示される、動粘度が90mm2/sの化合物を用いた以外は実施例1と同じ方法でシリコーン粒子の水分散液を得た。
【0113】
【0114】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.5μmであった。実施例1と同様の精製方法から得たシリコーン粒子の、界面活性剤を用いずに水に分散させて測定したときの体積平均粒径は2.5μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認された。このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基が検出され、シリコーン粒子の表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジメチルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子と判断された。
【0115】
[実施例3]
実施例1で用いた2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF製Irgacure 1173)((C)成分の光ラジカル重合開始剤):1.5gの代わりに、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(BASF製Irgacure TPO)((C)成分の光ラジカル重合開始剤):1.5gを用いた以外は実施例1と同じ方法でシリコーン粒子の水分散液を得た。
【0116】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.3μmであった。実施例1と同様の精製方法から得たシリコーン粒子の、界面活性剤を用いずに水に分散させて測定したときの体積平均粒径は2.3μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認された。このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基が検出され、シリコーン粒子の表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジメチルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子と判断された。
【0117】
[実施例4]
実施例1で用いた動粘度が180mm2/sの二官能性メタクリルポリシロキサン((A)成分):150gと、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF製Irgacure 1173)((C)成分の光ラジカル重合開始剤):1.5gとを容量0.5リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて4000rpmで5分間攪拌溶解させた。次いで、実施例1で用いた動粘度が160mm2/s、1%水溶液での曇点65℃の二官能性メタクリルポリエチレングリコール変性ポリシロキサン((B)成分):15gと水:60gを加え、ホモミキサーを用いて7000rpmで攪拌したところ、水中油滴型となり、増粘が認められ、さらに15分間攪拌を継続した。次いで、2000rpmで攪拌しながら、水73.5gを加え希釈した。100MPaの圧力の条件でホモジナイザーに通し、均一な白色エマルジョンを得た後に、実施例1と同じ方法で重合させてシリコーン粒子の水分散液を得た。
【0118】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、14.3μmであった。実施例1と同様の精製方法から得たシリコーン粒子の、界面活性剤を用いずに水に分散させて測定したときの体積平均粒径は14.3μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認された。このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基が検出され、シリコーン粒子の表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジメチルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子と判断された。
【0119】
[実施例5]
実施例1で用いた動粘度が180mm2/sの二官能性メタクリルポリシロキサン((A)成分):60gと、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF製Irgacure 1173)((C)成分の光ラジカル重合開始剤):1.5gとを容量0.5リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて4000rpmで5分間攪拌溶解させた。次いで、実施例1で用いた動粘度が160mm2/s、1%水溶液での曇点65℃の二官能性メタクリルポリエチレングリコール変性ポリシロキサン((B)成分):6gと水:12gを加え、ホモミキサーを用いて7000rpmで攪拌したところ、水中油滴型となり、増粘が認められた。そこに上記と同様の動粘度が180mm2/sの二官能性メタクリルポリシロキサン((A)成分):90gと動粘度が160mm2/s、1%水溶液での曇点65℃の二官能性メタクリルポリエチレングリコール変性ポリシロキサン((B)成分):9gとを追加し、ホモミキサーを用いて7000rpmで15分間攪拌を継続した。次いで、2000rpmで攪拌しながら、水121.5gを加え希釈した。100MPaの圧力の条件でホモジナイザーに通し、均一な白色エマルジョンを得た後に、実施例1と同じ方法で重合させてシリコーン粒子の水分散液を得た。
【0120】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、0.4μmであった。実施例1と同様の精製方法から得たシリコーン粒子の、界面活性剤を用いずに水に分散させて測定したときの体積平均粒径は0.4μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認された。このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基が検出され、シリコーン粒子の表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジメチルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子と判断された。
【0121】
[実施例6]
実施例1で用いた動粘度が180mm2/sの二官能性メタクリルポリシロキサン((A)成分):150gと、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF製Irgacure 1173)((C)成分の光ラジカル重合開始剤):1.5gとを容量0.5リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて4000rpmで5分間攪拌溶解させた。次いで、下記式(13)で示される、動粘度が53,700mm2/s、1%水溶液での曇点50℃の二官能性メタクリルポリアルキレングリコール変性ポリシロキサン((B)成分):15gと水:30gを加え、ホモミキサーを用いて7000rpmで攪拌したところ、水中油滴型となり、増粘が認められ、さらに15分間攪拌を継続した。次いで、2000rpmで攪拌しながら、水103.5gを加え希釈した。100MPaの圧力の条件でホモジナイザーに通し、均一な白色エマルジョンを得た後に、実施例1と同じ方法で重合させてシリコーン粒子の水分散液を得た。
【0122】
【0123】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、1.4μmであった。実施例1と同様の精製方法から得たシリコーン粒子の、界面活性剤を用いずに水に分散させて測定したときの体積平均粒径は1.4μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認された。このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基が検出され、シリコーン粒子の表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジメチルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子と判断された。
【0124】
[比較例1]
実施例1と同じ方法で得られた白色エマルジョンを用い、錨型攪拌翼による攪拌装置の付いた容量0.5リットルのガラスフラスコ内で、20~25℃に温調した後、(株)テクノシグマの光化学反応用LED光源(365nm波長;507mW)のプローブを、
図2に示すように溶液に差し込み、照射を開始した。同温度で4時間撹拌しながら照射を続けることで、シリコーン粒子の水分散液を得た。反応後のプローブには固化したシリコーン粒子の凝集物と思われる硬化物が付着していた。
【0125】
実施例1と同様の精製方法から得たシリコーン粒子は、べたつきがあったことから、反応率が低いことに起因して(A)成分が残存していることが示唆された。このように、光源を含む装置を反応液に直接触れる形で設置して照射した場合は、固化したシリコーン粒子の凝集物が付着するため、反応を阻害する。
【0126】
[比較例2]
実施例1で用いた構造式(11)のメタクリルポリエチレングリコール変性ポリシロキサン((B)成分)の変わりに下記式(14)で示される、動粘度が120mm2/s、1%水溶液での曇点65℃の化合物を用いた以外は実施例1と同じ方法でシリコーン粒子の水分散液を得た。
【0127】
【0128】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.6μmであった。しかし、実施例1と同様の精製方法からべたつきの無いシリコーン粒子を得たが、このシリコーン粒子は単独では水に分散しなかったので、一般の界面活性剤を使用して体積平均粒径を測定したところ、2.6μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認されたが、このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基に起因するピークは検出されなかった。
【0129】
このように、(B)成分の代わりにラジカル重合性基を有しないポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いて重合反応を行った比較例2では、シリコーン粒子表面にオキシアルキレン基を固定することができなかった。
【0130】
[比較例3]
実施例1と同じ方法で得られた白色エマルジョンを用い、錨型攪拌翼による攪拌装置の付いた容量0.5リットルのガラスフラスコ内で、20~25℃に温調した後、
図2に示すように、(株)テクノシグマ社製の光化学反応用LED光源(365nm波長;507mW)のプローブを溶液に差し込み、照射を開始した。同温度での反応中に、プローブには固化したシリコーン粒子の凝集物と思われる硬化物が付着していたため、1時間毎にプローブの表面から付着物を除去し、4時間撹拌しながら照射を続けることで、シリコーン粒子の水分散液を得た。
【0131】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.0μmであった。実施例1と同様の精製方法から得たシリコーン粒子の、界面活性剤を用いずに水に分散させて測定したときの体積平均粒径は2.0μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認された。このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基が検出され、シリコーン粒子の表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジメチルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子と判断された。
【0132】
このように、定期的にプローブの表面からこの付着物を除去すれば、目的のシリコーン粒子を得ることはできるが、本発明のシリコーン粒子の製造方法と比較すると、効率が低くなることが示唆された。
【0133】
以上の結果より、本発明のシリコーン粒子の製造方法であれば、表面に親水性基を有するシリコーン粒子を、反応効率を低下させることなく、高効率で製造する方法を提供することができることが示された。
【0134】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]ラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを含むシリコーン組成物を、水中に分散させた状態で光ラジカル重合させて硬化させるシリコーン粒子の製造方法であって、前記シリコーン組成物の水分散液に光源が触れないように紫外線を照射して前記シリコーン組成物をラジカル乳化重合させるシリコーン粒子の製造方法。
[2]前記シリコーン粒子を、
下記一般式(1)で表されるジアルキルシロキサン単位と、
R
4
2SiO
2/2 (1)
(式(1)中、R
4は互いに独立に炭素数1~6の1価炭化水素基である。)
下記一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)メチルシロキサン単位と
【化34】
(式(2)中、R
1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は互いに独立に炭素数1~10の2価脂肪族基である。nは1≦n≦50を満たす数である。)
を含み、かつ、表面にオキシアルキレン基を有するものとし、
前記シリコーン組成物を、下記(A)成分~(C)成分を含有するシリコーン組成物とする上記[1]のシリコーン粒子の製造方法。
(A)下記一般式(3)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部
【化35】
(式(3)中、R
3は、夫々独立に炭素原子数1~6の1価炭化水素基又は下記一般式(4a)若しくは(4b)で示される基であるが、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。a、b、c、及びdは夫々、2≦a≦10、0≦b≦1,000、0≦c≦5、0≦d≦5の範囲を満たす数である。)
【化36】
(式(4a)及び(4b)中、R
6は水素原子又はメチル基であり、R
1は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は炭素数1~10の2価脂肪族基である。)
(B)下記一般式(5)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーン:0.1-100質量部
【化37】
(式(5)中、R
3は上記の通りであり、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。R
5は、下記一般式(7)で表されるポリオキシアルキレン基である。w、x、x’、y、及びzは夫々、2≦w≦10、1≦x≦1,000、1≦x’≦300、0≦y≦5、0≦z≦5の範囲を満たす数である。)
【化38】
(式(4a)及び(4b)中、R
6、R
1、及びR
2は上記の通りである。)
-R
2O(CR
1HCH
2O)n-R
1 (7)
(式(7)中、R
1、R
2、及びnは上記の通りである。)
(C)光ラジカル重合開始剤:0.1-5質量部
[3]前記(A)成分として、下記一般式(8)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサンを用いる上記[2]のシリコーン粒子の製造方法。
【化39】
(式(8)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、mは0≦m≦1,000を満たす数である。)
[4]前記(B)成分として、下記一般式(9)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いる上記[2]又は上記[3]のシリコーン粒子の製造方法。
【化40】
(式(9)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、lは1≦l≦300、m’は1≦m’≦1,000、nは1≦n≦50を満たす数である。)
[5]前記シリコーン粒子の体積平均粒径を0.1~100μmとする上記[1]、上記[2]、上記[3]又は上記[4]のシリコーン粒子の製造方法。
【0135】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。